資料5-6

検査を実施する各種機関の運営に関する一般要求事項
ISO/IEC 17020、JIS Q17020
−抜粋−


 国際規格ISO/IEC 17020「検査を実施する各種機関の運営に関する一般要求事項」は、業務範囲に検査(製品設計,製品,サービス,プロセス又はプラントの調査及びそれらの特定要求事項への適合性の評定、又は,専門的判断に基づく一般要求事項への適合性の評定を行うこと。)を行う機関(機関は一つの組織又は組織の一部であってもよい。)の機能を対象とした国際規格であり、内容を変更することなく日本工業規格JISとして2000年に発行された。

 適用範囲
 この規格は、関係する分野にかかわりなく、検査を行う公平な機関の能力に関する一般基準を規定する。また、この規格は、独立性についての基準も規定する。

(2 定義)

 管理上の要求事項
3.1 検査機関又は検査機関がその一部を形成する組織は,法律上存在を確認できなければならない。
3.2 検査機開が,検査以外の機能に関係する組織の一部である場合は,その組織内で識別可能でなければならない。
3.3 検査機関は,その機能の記述及び能力のある技術的活動の範囲の記述を含む文書をもたなければならない。
 検査の範囲の詳細は,個々の契約又は作業注文書の条件によって確定する。
3.4 検査機関は,適切な賠償責任保険の下になければならない。ただし,その責任を国内法に従って国がとるか,又は検査機関の属する組織がとる場合を除く。
3.5 検査機関は,業務を行う条件を記述した文書を維持しなければならない。ただし,検査機関が親組織の一部であり,その組織に対してだけに検査業務を提供する場合を除く。
3.6 検査機関又はそれが属する組織は,独立に監査される会計を維持しなければならない。

 独立性,公平性及び完全性
4.1 一般 検査機関の要員は,判断行為に影響を与えるおそれのあるいかなる商業的,金銭的及びその他の圧力からも免れていなければならない。業務手順は,実施した検査の結果に,検査機関の外部の者又は組織が影響を与えることができないことを確保するように実施しなければならない。
4.2 独立性 検査機関は,自身の業務を実施する条件に照らして,要求する程度の独立性をもっていなければならない。
 これらの条件に応じて,検査機関は,規格の一部である附属書A,附属書B又は附属書Cのいずれかに定めた最低限の基準を満たさなければならない。
 4.2.1 タイプAの検査機関 “第三者”業務を提供する検査機関は,附属書A(規定)の基準を満たさなければならない。
 4.2.2 タイプBの検査機関 検査機関が,検査対象である品目の設計,製造,供給,据付け,使用又は保全に関与する組織の分離された識別可能な一部を形成し,検査薬務をその親組織だけに提供するために設立されている場合,そのような検査機関は附属書B(規定)の基準を満たさなければならない。
 4.2.3 タイプCの検査機関 検査機関が,検査対象である品目又は類似の競合品の設計,製造,供給,据付け,使用又は保全に関与し,親組織以外の当事者に対しても検査業務を提供することがある場合,そのような検査機関は附属書C(規定)の基準を満たさなければならない。

(5 機密保持)

 組織及び管理
6.1 検査機閑は,その技術的機能を満足に実施する能力を維持できる組織をもたなければならない。
6.2 検査機関は,組織の責任及び報告体系を規定し,文書化しなければならない。検査機関が認証及び/又は試験業務も提供する場合,その機能間の関係を明瞭に定義しなければならない。
6.3 検査機関は,いかなる名称でもよいが,資格を与え,検査機関の運営に経験があり,検査活動をこの規格に従って実施することに総合的な責任をもつ技術管理者を保持しなければならない。技術管理者は,常用雇用者でなければならない。
6.4 検査機関は,検査方法及び手順,検査の目的並びに調査結果の評価に精通している者による効果的な監督体制を備えていなければならない。
6.5 検査横閑は,どのような名称であっても,検査業務に責任をもつ管理者が不在の場合,その代理を務める者を指名しなければならない。
6.6 検査業務の品質に影響するそれぞれの役職を規定しなければならない。これらの職務規定書は,教育,訓練,技術的知識及び経験に対する要求事項を含まなければならない。

(7 品質システム)

 要員
8.1 検査機関は,その通常の機能を果たすために必要な範囲の専門技術をもつ十分な数の常用雇用の要員をもたなければならない。
8.2 検査に責任を負う職員は,適切な資格,訓練,経験及び実施する検査の要求事項に関する十分な知識をもっていなければならない。その職員は,調査結果を使用して一般的な要求事項への適合性に関する専門的判断を行い,それについて報告する能力をもっていなければならない。
 また,その職員は,検査する製品の製造のために使用する技術に関する知識,検査に提出された製品又はプロセスの,使用する又は使用を意図する方法に関する知識,及び使用中又は稼働中に生じる欠陥に関する知識ももっていなければならない。
 その職員は,当該製品又はプロセスの通常の使用に関して検出された異常の重大さを理解しなければならない。
8.3 検査機関は,その要員が関与する予定の業務の技術的及び管理的な面で,要員の訓練が機関の方針に従って最新の状態を維持することを確保するために,文書化された訓練システムを確立しなければならない。要求される訓練は,関係する人物の資格,能力及び経験による。検査機関は,各要員に必要な訓練の段階を設定しなければならない。これらは,次の事項を含んでもよい。
a)新人研修期間。
b) 熟練した検査員の監督下で業務を行う期間。
c) 技術進歩に追随するための雇用期間中を通じた追加の訓練。
8.4 各要員の学歴又はその他の資格,訓練及び経験の記録は,検査機関によって維持しなければならない。
8.5 検査機関は,職員の品行に関する指針を規定しなければならない。
8.6 検査活動に従事する人物の報酬は,実施した検査の数に直接的に依存してはならない。また,いかなる場合でも決してそれらの検査の結果に依存してはならない。

 施設及び設備
9.1 検査機関は,実施すべき検査業務に付帯するすべての活動を可能とする適切,かつ,十分な施設及び設備を,機関が使用できる状態で保有しなければならない。
9.2 検査機関は,規定した施設及び設備へのアクセス,及びそれらの使用に関する明確な規則をもたなければならない。
9.3 検査機閑は,9.1で規定した施設及び設備が,それらの意図された用途に対して継続して適切であることを確保しなければならない。
9.4 それらの設備は,すべて適切に識別できなければならない。
9.5 検査機関は,文書化した手順及び指示に従って,それらの設備すべてを適切に保全することを確保しなければならない。
9.6 検査機関は,適切な場合,使用に供する前及びその後において,設備が設定されたプログラムに従って,校正することを確保しなければならない。
9.7 設備の校正の全体的なプログラムは,検査機関によって行う測定を適用する場合は,いつでも国家計量標準又は国際計量標準にトレーサブルであることを確保するように設計し,運用しなければならない。国家計量標準又は国際計量標準への測定のトレーサビリティが適用できない場合,検査機関は,検査結果の相互関係又は正確さについて十分な証拠を提供しなければならない。
9.8 検査機関が維持する測定の参照標準は,校正だけに使用し,他の目的に使用してはならない。測定の参照標準は,国家計量標準又は国際計量標準への測定のトレーサビリティを提供する能力のある機関によって校正しなければならない。
9.9 該当する場合,設備は定期的な再校正と再校正の間において、使用状態でチェックを受けなければならない。
9.10 可能な場合,標準物質は国家的又は国際的な標準物質にトレーサブルでなければならない。
9.11 検査業務の品質に関係する場合,検査機関は(購買に関して)次の手順をもたなければならない。
a)適格な供給者の選択  b)適切な購入伝票の発行
c)受領した物資の検査  d)適切な保管施設の確保
9.12 適用可能な場合,劣化を検出するために,保管品の状態を適切な間隔で評定しなければならない。
9.13 もし検査機関が,コンピュータ又は自動設備を検査に関連して使用するならば,次の事項を確保しなければならない。  a)〜d)
9.14 検査機関は,欠陥のある設備の取扱いに関する文書化した手順をもたなければならない。欠陥のある設備は,隔離、目立つラベル付け又はマーク付けによって,使用から撤去しなければならない。検査機関は,以前の検査に対するその欠陥の影響を調べなければならない。
9.15 設備についての必要情報は,記録しなければならない。通常,これは、識別,校正及び保全管理を含む。

0 検査方法及び手順
10.1 検査機関は,適合性を確定するための基準となる要求事項の中で規定された検査の方法及び手順を使用しなければならない。
10.2 検査機関は,指示書がないと検査プロセスの有効性が危うくなる場合,検査計画,標準的サンプリング及び検査手法に関する適切な指示書を維持し,使用しなければならない。適用可能な場合,これは統計的に妥当なサンプリング手順並びに結果の正確な処理及び解釈を確保するために,統計的手法に関する十分な知識を必要とする。
10.3 検査機関が,標準化されていない検査の方法又は手順を使用しなければならない場合は,そのような方法と手順は適切なものでなければならない。また,完全に文書化していなければならない。
10.4 検査機関の業務に関係するすべての指示書・規格又は手順書,ワークシート,チェックリスト及び参照データは,最新の状態に維持し,職員がいつでも利用できなければならない。
10.5 検査機関は,次の事項を確保するための契約又は業務発注書の管理システムをもっていなければならない。
a)請け負う業務が機関の専門範囲内にあり、組織が要求事項を満たすために十分な経営資源をもつ。
b)必要な業務を行う職員に対してあいまいでない指示を出すことができるように、検査機関のサービスを必要とする者の要求事項を十分に明確化し,特別な条件を理解する。
c)請け負った業務を,定期的な見直し及び是正措置によって管理する。
d)完了した業務を,要求事項の充足を確認するために見直す。
10.6 検査の過程で得られた観察事項及び/又はデータは,関係情報の紛失を防止するために遅滞なく記録しなければならない。
10.7 すべての計算及びデータ伝送は,適切なチェックを行わなければならない。
10.8 検査機関は,検査を安全に行うための指示書をもっていなければならない。

11 検査サンプル及び検査品目の取扱い
12 記録
13 検査報告書及び検査証明書
14 下請負契約
15 苦情及び異議申立て
16 協力



附属書A(規定)     タイプAの検査機関の独立性の基準

 4.2.1で規定した検査機関は,次の基準を満たさなければならない。
 A.1 検査機関は,当事者から独立していなければならない。
 検査機関及び検査を実施する責任を負う職員は、検査対象である品目の設計者,製造業者,供給者,据付け者,購入者,所有者、使用者又は保全管理者であってはならない。また,これらの当事者から権限を委任された代表者であってはならない。
 A.2 検査機関及びその職員は,判断の独立性及び検査活動に関する誠実性と矛盾するいかなる活動にも従事してはならない。特に,検査対象である品目又はそれらと競合する類似品目の設計,製造,供給,据付け,使用又は整備に直接関与してはならない。
 A.3 すべての利害関係者が,検査機関のサービスを利用できなければならない。不当な金銭的又はその他の条件を課してはならない。検査機関の運営手順は,非差別的な方法で管理しなければならない。


附属書B(規定)    タイプBの検査機関の独立性の基準

 4.2.2で規定した検査機関は,次の基準を満たさなければならない。
 B.1 検査要員の責任と他の機能において雇用された要因の責任との明確な分離を親組織内における組織の識別によって,また,検査機関の報告方法によって確立しなければならない。
 B.2 検査機関及びその職員は,判断の独立性及び検査活動に関する誠実さと矛盾するいかなる活動にも従事してはならない。特に,検査対象である品目又はそれらと競合する類似品目の設計,製造,供給,据付け,使用又は整備に直接関与してはならない。
 B.3 検査業務は,検査機関がその一部を形成する組織に対してだけに提供しなければならない。


附属書C(規定)    タイプCの検査機関の独立性の基準

 4.2.3で規定した検査機関は,次の基準を満たさなければならない。
 C.1 検査機関は,検査業務の提供における責任及び説明義務の十分な分離を確保するために,組織規定及び/又は文書化された手順によって,組織内に保護手段を備えなければならない。

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