資料4

ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討

論点の整理


論点1 石油業界の検査技術力、管理能力について

 (1)自主検査を行う技術力、管理能力を有しているか。
 製油所等において設備の経年損傷による火災・爆発等の事故が発生しているが、これらの原因として工学的に未知又は予測不能であったものは少なく、大部分は過去の経験・知見の集積により経年損傷の防止及び管理を適切に行えば防ぐことができた事故と考えられる。

 連続運転認定事業場の社内検査を経たボイラー等に対する第三者検査機関による性能検査において、社内検査後の補修等が十分でないことから補修等を求められた例が少なからずある。

 連続運転のボイラー等において、余寿命予測の測定箇所でない箇所で事業場の想定外の腐食などが起こり、予定外の補修、主要構造部分の取替え等を行ったものがあり、損傷の発生しやすい箇所等を必ずしも特定できていない状況が認められる。


 (2)石油業界は、経年損傷による事故の防止対策及び設備の整備・社内検査の水準の確保向上について取組みを行い、実績を示す必要があるのではないか。



論点2 社内検査の公正性・独立性の確保について

 (1)社内検査において、定められた検査手順・方法を遵守し、判断基準をゆがめないよう検査の公正性・独立性が担保されているか。
 石油業界の事故及び不正事案の発生状況からは、定められた社内検査等がきちんと行われていない例が少なからず見られる。

 経営や競争が厳しいときであっても、行うべき検査の水準が下がらないようにすることが重要であるが、社内の検査部門が会社の経営から独立して公正な判断を行うことができる体制を確保するのは難しい。

 石油業界の提案の経営トップによる意思表明や企業倫理委員会は、一定の効果はあると考えられるが、それだけでは不正防止の担保とするのは難しい。


 (2)石油業界は、連続運転の認定事業場等において不正事案等の問題が生じていることに鑑み、検査手順・方法等が適正に守られる体制・仕組み等についてさらに検討するとともに、今後そうした事案の発生防止について自らが実績を示す必要があるのではないか。



論点3 社会的環境について

 (1)一定の安全管理基準を満たす事業者に対して自主検査制度を導入することは社会的に受容されるか。
 最近、第三者機関の監査の必要性が見直される気運がある例(建築構造確認制度、企業の会計監査)、第三者機関の監査の有効性を示す例(銀行・証券・保険会社の監査と営業停止)、第三者の監査の必要性を示す例(自動車のリコール、瞬間湯沸かし器、原子炉機器の不具合)が見られる。

 製油所等における事故が跡を断たない状況にあるが、企業活動における安全確保について企業の社会的責任の観点から、厳しい目が向けられていることを認識する必要がある。

 第三者検査機関による検査は、それがあることにより、外部に対する公開性、透明性、信頼性が確保され、緊張感が働き、社内における適正な整備及び検査が確保されている。



論点4 現行制度におけるコストの問題について

 (1)製油所での性能検査における現行制度のデメリット(自主検査のメリット)と業界が主張している点については、第三者検査機関と調整することにより解消可能ではないか。
 自主検査化することにより、性能検査受検日にとらわれることなく一連の工事を連続して予定できること、また受検対象設備全数の社内検査終了を待って性能検査を受ける必要がなくなることで、社内検査と並行して設備を停止しての工事工程が1、2日短縮できるとしているが、第三者検査機関が検査の実施日時について受検者の希望に柔軟に対応すること、随時検査を実施できるようにすること等により対応できると考えられる。

 自主検査化することにより、性能検査時の立会いのため保全・運転・保安担当者が多数拘束されることがなくなるとしているが、第三者検査機関は性能検査時の立会いは担当者1、2名程度で足りるとしており、運用の改善によりこのような負担は軽減できると考えられる。

 自主検査化することにより、性能検査終了後の合格内示を待つことなく運転に向けた復旧に着手できるようになり、設備を停止しての工事工程が1日程度短縮できるとしているが、第三者検査機関は合格の内示を原則として検査の現場で出すようにしているとしており、連絡調整を円滑に行うことにより解消できると考えられる。


 (2)第三者検査機関によるチェックシステムのもとでの現行のボイラー等の連続運転を確実に運用し、長期連続運転の認定を得ることが大きなメリットがあるのではないか。
 連続運転の制度においては、安全性を担保しつつ、外国と比べて遜色ない程度の経済性が実現されている。

 自主検査の導入による設備を停止しての工事工程の短縮(1,2日)は、連続運転の実現による短縮(約30日)に比べれば相当小さい。



論点5 自主検査制度の導入の可否について

 (1)石油業界の一定の安全管理基準を満たす事業者に自主検査を認めることは適当か。
 石油業界に自主検査を行うことが可能と認められる事業場はあるか。
 一定の安全管理基準を満たす事業者に自主検査を認めることが適当な場合、どのような要件が満たされれば自主検査が可能な事業場と認められるか。

 (2)石油業界の一定の安全管理基準を満たす事業者に自主検査を認めることが適当でない場合、今後条件整備に向けて、業界はどのようなことを行えばよいか。
 その他業界に対する提言がないか。

 (3)性能検査制度に関して、第三者検査機関、行政に対する提言はないか。

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