資料1−3

健康増進法第9条に規定する健康診査の実施等に関する指針改正案

改正案 改正理由
一 基本的な考え方
 健康診査は、疾病を早期に発見し、早期治療につなげること及び健康診査結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導(運動指導等生活習慣の改善のための指導を含む。以下同じ。)を行うことにより、疾病の発症及び重症化の予防及び進行の防止並びに生涯にわたる健康の増進に向けた自主的な努力を促進する観点から実施するものである。
 現在、健康診査及びその結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導は、健康増進法第六条に掲げる各法律に基づいた制度において各健康増進事業実施者により行われているが、次のような現状にある。
   制度間で健康診査における検査項目、検査方法等が異なる場合がある。
   精度管理が適切に行われていないため、検査結果の比較が困難である。


○予防の概念が、発症予防と重症化予防の2段階の概念であることを明確化(進行の防止は重症化の予防に含まれるため削除)
      健康診査の結果が、受診者に対する栄養指導その他の保健指導必要な者に対する再検査、精密検査及び治療のための受診並びに健康の自己管理に必ずしもつながっていない。
      健康診査の結果を踏まえた集団に対する健康課題の明確化及びそれに基づく栄養指導その他の保健指導が十分でない。
      健康診査の結果等(栄養指導その他の保健指導の内容を含む。以下同じ。)が各健康増進事業実施者間で継続されず、有効に活用されていない。
○新たに、がん検診等が健康増進事業に位置付けられる予定であるため、再検査や受診の勧奨と生活習慣の改善のための保健指導を分けて記載。また、疾病の重症化の観点を明示。
      健康診査の結果等に関する個人情報の保護について必ずしも十分でない。
 また、このような状況の中、平成十七年四月に、メタボリックシンドロームの我が国における定義及び診断基準が日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会及び日本内科学会から構成されるメタボリックシンドローム診断基準検討委員会において策定された。この定義及び診断基準においては、内臓脂肪の蓄積に着目し、健康診査の結果を踏まえた効果的な栄養指導その他の保健指導を行うことにより、過栄養により生じる複数の病態を効率良く予防し、心血管疾患等の発症予防が期待されることが示された。
 このため、この指針においては、各健康増進事業実施者により適切な健康増進事業が実施されるよう、健康診査の実施、健康診査の結果の通知及びその結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導の実施等、健康手帳等による健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方及び個人情報の取扱いについて、各制度に共通する基本的な事項を定めることとし、各健康増進事業実施者は以下に定める事項を基本的な方向として、国民の健康増進に向けた自主的な取組を進めるよう努めること。
 また、健康増進事業実施者は、健康診査の実施等に当たり、個人情報の保護等について最大限に配慮すること。
 なお、この指針は、必要に応じ、適宜見直すものとする。


○今般の改正契機となった平成18年の医療構造改革の内容について記載するため。





○健診結果を踏まえた保健指導の実施を明確化するため。
二 健康診査の実施に関する事項
   健康診査の在り方
     健康増進事業実施者は、健康診査の対象者に対して、その目的、意義及び実施内容について十分な周知を図り、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた健康診査の実施等により対象者が自らの健康状態を把握し、もって生涯にわたる健康の増進に資するように努め、未受診者に対して受診を促すよう特に配慮すること。
     健康増進事業実施者は、生涯にわたる健康の増進の観点等から、健康診査の実施について、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた健康課題に対して配慮しつつ、他の制度で健康診査が実施された場合の対応等、各制度間及び制度内の整合性を取るために必要な相互の連携を図ること。



○後期高齢者医療制度の創設等を踏まえ、ライフステージの例示を追加。
   健康増進事業実施者は、関係法令を踏まえ、健康診査における検査項目及び検査方法に関し、科学的知見の蓄積等を踏まえて、必要な見直しを行うこと。
   健康増進事業実施者は、各制度の目的を踏まえつつ、健康診査における検査項目及び検査方法を設定又は見直す場合、ライフステージや性差に応じた健康課題に対して配慮するとともに、科学的知見の蓄積等を踏まえて、疾病の予防及び発見に係る有効性等について検討すること。
   健康増進事業実施者は、健康診査の検査項目について受診者にあらかじめ周知するとともに、法令上の実施義務が課されている検査項目を除き、受診者が希望しない検査項目がある場合、その意思を尊重すること。また、法令上の実施義務が課されている検査項目を除き、特に個人情報の保護等について最大限に配慮することが望ましい検査項目があるときには、あらかじめ当該検査項目の実施等につき受診者の同意を得ること。
   二  健康診査の精度管理
   1  健康増進事業実施者は、健康診査の精度管理(健康診査の精度を適正に保つことをいう。以下同じ。)が生涯にわたる個人の健康管理の基盤として重要であることにかんがみ、健康診査における検査結果の正確性を確保するとともに、検査を実施する者や精度管理を実施する者が異なる場合においても、受診者が検査結果を正確に比較できるようにすること。また、必要のない再検査及び精密検査を減らす等必要な措置を講じることにより健康診査の質の向上を図ること。
   2  健康増進事業実施者は、健康診査を実施する際には、この指針に定める内部精度管理(健康診査を行う者が自身で行う精度管理をいう。以下同じ。)及び外部精度管理(健康診査を行う者以外の者が行う精度管理をいう。以下同じ。)を適切に実施するよう努めること。また、当該精度管理の実施状況を当該健康増進事業の対象者に周知するよう努めること。
 
   3  健康増進事業実施者は、健康診査の実施に関する内部精度管理として、標準物質が存在する健診項目については当該健診項目に係る標準物質を用いるとともに、次に掲げる事項を考慮した規程を作成する等適切な措置を講じるよう努めること。
   (一)  健康診査の実施の管理者の配置等管理体制に関する事項
   (二)  健康診査の実施の手順に関する事項
   (三)  健康診査の安全性の確保に関する事項
   (四)  検査方法、検査結果の基準値、判定基準等検査結果の取扱いに関する事項
   (五)  検体の採取条件、検体の保存条件、検体の提出条件等検査の実施に関する事項
   (六)  検査用機械器具、試薬、標準物質等の管理について記録すること及びその記録を保存することに関する事項
   (七)  検査結果の保存及び管理に関する事項

○内部精度管理として標準物質を用いることを追加。
   健康増進事業実施者は、健康診査に関する外部精度管理として、全国規模で実施される外部精度管理調査を定期的に受けること、複数の異なる外部精度管理調査を受けること等により、自ら実施する健康診査について必要な外部精度管理を実施するよう努め、それにより検査値の精度等が保証された結果となるよう努めること。
   健康増進事業実施者は、健康診査の実施の全部又は一部を委託する場合は、委託先に対して前二号に規定する内部精度管理及び外部精度管理を適切に実施するよう要請するとともに、当該内部精度管理及び外部精度管理を適切に実施しているかについての報告を求める等健康診査の実施につき委託先に対して適切な管理を行うこと。
   健康増進事業実施者は、研修の実施等により健康診査を実施する者の知識及び技能の向上を図るよう努めること。
三 健康診査の結果の通知及び結果を踏まえた栄養指導その他の保健指導に関する事項
   健康増進事業実施者は、健康診査の実施後できる限り速やかに受診者に健康診査の結果を通知すること。
   健康増進事業実施者は、健康診査の結果を本人に通知することにとどまらず、その結果に基づき、必要な者には、再検査、精密検査及び治療のための受診の勧奨を行うとともに、疾病の発症及び重症化の予防又は生活習慣の改善のために栄養指導その他の保健指導を実施すること。栄養指導その他の保健指導の内容には、食生活、運動、休養、飲酒、喫煙、歯の健康の保持その他の生活習慣の改善を含む健康増進に関する事項、疾病を理解するための情報の提供、再検査、精密検査及び治療のための受診の勧奨を含むこと。


○調査の結果が保証されたものであることを明確化。
   3  健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導の実施に当たっては、健康診査の結果(過去のものを含む)、健康診査の受診者の発育・発達の状況、生活状況、就労状況、生活習慣等を十分に把握し、生活習慣の改善に向けての行動変容の方法を本人が選択できるよう配慮するとともに、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた内容とすること。例えば、壮年期においては、内臓脂肪の蓄積を共通の要因として、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧の状態が重複した場合に、心血管疾患等の発症可能性が高まることから、これらの発症及び重症化の予防の効果を高めるため、栄養指導その他の保健指導は、健診結果から対象者本人が身体状況を理解し、生活習慣改善の必要性を認識し、行動目標を自らが設定し実行できるよう、個人の行動変容を促すものとすること。また、栄養指導その他の保健指導は、個人又は集団を対象として行う方法があり、それぞれの特性を踏まえ、適切に組み合わせて実施すること。個人に対して、栄養指導その他の保健指導を行う際は、その内容の記録を本人へ提供するよう努めること。また、健康診査の受診者の勤務形態に配慮した上で栄養指導その他の保健指導の時間を確保する等栄養指導その他の保健指導を受けやすい環境づくりに配慮すること。
   4  健康増進事業実施者は、健康診査の結果を通知する際に適切な栄養指導その他の保健指導ができるように、その実施体制の整備を図ること。さらに受診者の求めに応じ、検査項目に関する情報、健康診査の結果、専門的知識に基づく助言その他の健康の増進に向けて必要な情報について提供又は受診者の相談に応じることができるように必要な措置を講じること。
   5  健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導に従事する者に対する研修の実施、栄養指導その他の保健指導の評価に努めること等により栄養指導その他の保健指導の質の向上を図ること。
   6  健康増進事業実施者は、栄養指導その他の保健指導の実施の全部又は一部を委託する場合は、委託先が栄養指導その他の保健指導を適切に行っているかについて、報告を求める等委託先に対して適切な管理を行うこと。





○健康増進事業実施者が複数想定される壮年期における保健指導の意義を追加。
   7  地方公共団体、健康増進事業実施者、医療機関その他の関係者は、健康診査の結果の通知等の実施に関し、健康づくり対策、介護予防老人保健及び産業保健等の各分野における対策並びに医療保険の保険者が実施する対策を講じるために、相互の連携(以下「地域・職域の連携」という。)を図ること。
 地域・職域の連携の推進に当たり、健康診査の結果等に関する情報(以下「健診結果等情報」という。)の継続、栄養指導その他の保健指導の実施の委託先に関する情報の共有など健康診査及び栄養指導その他の保健指導の実施等に係る資源の有効活用、自助努力では充実した健康増進事業の提供が困難な健康増進事業実施者への支援等の観点から有益であるため、関係機関等から構成される協議会等を設置すること。この場合、広域的な観点で地域・職域の連携を推進するため都道府県単位で関係機関等から構成される協議会等を設置するとともに、より地域の特性を生かす観点から、地域単位(保健所の所管区域等)においても関係機関等から構成される協議会等を設置するよう努めること。なお、関係機関等から構成される協議会等が既に設置されている場合は、その活用を行うこと。
 協議会等の事業については、参考として次に掲げるものが考えられる。
     (一 ) 都道府県単位
   情報の交換及び分析
   都道府県における健康課題の明確化
   各種事業の共同実施及び連携
   研修会の共同実施
   各種施設等の相互活用
   その他保健事業の推進に必要な事項
     (二 ) 地域単位
   情報の交換及び分析
   地域における健康課題の明確化
   保健事業の共同実施及び相互活用
   健康教育等への講師派遣
   個別の事例での連携
   その他保健事業の推進に必要な事項



○老人保健事業が、医療保険者が実施する対策及び介護予防対策に移行することに伴う修正。

○健診・保健指導の実施に係る資源として健診・保健指導の委託先に関する情報の共有を例示として追加。
四 健康手帳等による健康診査の結果等に関する情報の継続の在り方に関する事項
   健康増進事業実施者においては、健診結果等情報を継続させていくことが受診者の健康の自己管理に役立ち、疾病の発症及び重症化の予防及び疾病の進行の防止の観点から重要であり、生涯にわたる健康の増進に重要な役割を果たすことを認識し、健康増進事業の実施に当たっては、利用目的の特定、利用目的による制限、第三者提供の制限等個人情報の保護を規定した法令(以下「個人情報保護法令」という。) を遵守しつつ、健診結果等情報を継続させるために必要な措置を講じることが望ましいこと。例えば、健康増進法第六条に掲げる各法律に基づいた制度間において、法令上、健診結果の写しの提供が予定されている場合には、健診結果を標準的な電磁的記録の形式により提供するよう努めること、又は、健康診査の実施の全部又は一部を委託する場合には、委託先に対して標準的な電磁的記録による健診結果の提出を要請するよう努めること。
   生涯にわたり継続されていくことが望ましい健診結果等情報は、健康診査の結果、栄養指導その他の保健指導の内容、既往歴(アレルギー歴を含む)、主要な服薬歴、予防接種の種類、接種時期等の記録、輸血歴等であること。
   健診結果等情報の継続は、健康手帳等を活用することにより、健康の自己管理の観点から本人が主体となって行うことを原則とすること。この場合、将来的には統一された生涯にわたる健康手帳の交付等により、健診結果等情報を継続することが望まれること。一方、各制度の下で交付されている既存の健康手帳等はその目的、記載項目等が異なり、また、健康手帳等に本人以外の個人情報が含まれる場合等があるなど、既存の健康手帳等を統一し生涯にわたる健康手帳等とする場合に留意しなければならない事項があることから、まずは健康増進事業実施者が各制度の下において既に交付し又は今後交付する健康手帳等を活用することにより、健診結果等情報の継続を図っていくこととすること。
   生涯にわたり健診結果等情報を継続させるための健康手帳等は、ライフステージ及び性差に応じた健康課題に対して配慮しつつ、その内容として、健康診査の結果の記録に係る項目、生活習慣に関する記録に係る項目、健康の増進に向けた自主的な取組に係る項目、受診した医療機関等の記録に係る項目、健康の増進に向けて必要な情報及び知識に係る項目等が含まれることが望ましいこと。また、その様式等としては、記載が容易であること、保管性及び携帯性に優れていること等について工夫されたものであることが望ましいこと。
   健康増進事業実施者は、健診結果等情報の継続のため、次に掲げる事項を実施するよう努めること。
   (一 ) 健診結果等情報を継続して健康管理に役立たせていくように本人に働きかけること。
   (二 ) 職場、住所等を異動する際において、本人が希望する場合には、異動元の健康増進事業実施者が一定期間保存及び管理している健康診査の結果を本人に提供するとともに異動先の健康増進事業実施者に同情報を提供するように本人に対し勧奨し、又は、個人情報保護法令により必要な場合には本人の同意を前提として、異動先の健康増進事業実施者に健診結果等情報を直接提供する等健康結果等情報を継続するために必要な工夫を図ること。









○個人情報の保護を規定した法令を遵守することを明示。

○「IT新改革戦略」(平成18年1月19日・IT戦略本部)を踏まえ、健診結果を継続させていくために標準的な電子的記録の形式により提供すること等を例示として追加。
五 健康診査の結果等に関する個人情報の取扱いに関する事項
   健康増進事業実施者は、健康診査の結果等に関する個人情報について適正な取扱いの厳格な実施を確保することが必要であることを認識し、利用目的の特定、利用目的による制限、第三者提供の制限等個人情報の保護を規定した法令(以下「個人情報保護法令」という。)を遵守すること。
   取り扱う個人情報の量等により個人情報保護法令の規制対象となっていない健康増進事業実施者においても、健康診査の結果等に関する個人情報については特に厳格に取扱われるべき性質のものであることから、個人情報保護法令の目的に沿うよう努めること。
   健康増進事業実施者は、その取り扱う個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置として、守秘義務規程の整備、個人情報の保護及び管理を行う責任者の設置、従業者への教育研修の実施、苦情受付窓口の設置、不正な情報入手の防止等の措置を講じるよう努めること。
   健康増進事業実施者は、個人情報の取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人情報の安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督として、委託契約の内容に記載する等により、委託を受けた者に前号に規定する措置を講じさせること。
   健康増進事業実施者は、前号までに掲げた内容を含む個人情報の取扱いに係る方針を策定、公表及び実施し、必要に応じ見直し及び改善を行っていくよう努めること。
   健康増進事業実施者が、個人情報保護法令等に従いその取扱う個人情報を公衆衛生の向上を目的として行う疫学研究のために研究者等に提供する場合、あらかじめ当該研究者等に対して、関係する指針を遵守する等適切な対応をすることを確認すること。



○個人情報保護法上必要とされない場合も想定されるため追加。




○用語の整理(第四に記載しているため)

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