06/11/10 労働政策審議会労働条件分科会 第67回議事録 第67回労働政策審議会労働条件分科会  日時 平成18年11月10日(金)     14:30〜   場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○分科会長 ただいまから第67回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたします。 本日は今田委員、岩出委員、久野委員、奥谷委員、山下委員、谷川委員が欠席されてい ます。  それでは本日の議題に入ります。本日は労働時間法制について事務局で改めて資料を 用意してもらっていますので、そちらをご議論いただきたいと思います。まずは事務局 から資料の説明をお願いします。 ○監督課長 それでは資料No.1の説明をします。いままでのこの審議会のご議論を踏ま えまして、今後の労働時間法制について検討すべき具体的論点(素案)ということで、 こちらの資料の説明をいたします。最初の頁です。考え方ですが、産業構造の変化が進 む中で、ホワイトカラー労働者の方々が増加してきており、就業形態が非常に多様化し てきているという面があるのではないか。このような中で、企業においては高付加価値 かつ創造的な仕事の比重が高まってきているとともに、組織のフラット化、あるいはス タッフ職等の中間層の労働者に対して権限や裁量を与えていっているという例が見られ ているのではないかという点。あるいはまた、労働時間に関してはいわゆる労働時間の 長短二極化というような議論があろうかと思います。  30代男性の約4人に1人が週60時間以上働いているなど、長時間労働者の割合が高 止まりしていること。こういった中で仕事と生活のバランスを確保するとともに、過労 死防止や少子化対策の観点からも長時間労働の抑制を図ることも喫緊の課題になってい るわけです。  このため、仕事と生活のバランスを実現するための働き方の見直しという観点から、 長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため、労働時間制度について必要 な整備を行うこととしてはどうかということです。これが1枚目です。  2枚目です。時間外労働の削減のための法制度の整備です。(1)時間外労働の限度 基準です。この限度基準というのは現在労働基準法の義務の限度基準として定めている 現行のものですが、限度基準において、労使自治により、特別条項付き協定を締結する 場合には延長時間をできる限り短くするよう努めること、特別条項付き協定では割増賃 金率も定めなければならないこと、及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように 努めることとしてはどうか、というのが(1)です。(2)で法律において限度基準で定める事 項に、割増賃金に関する事項を追加してはどうかということです。  (2)長時間労働者に対する割増賃金率の引上げです。使用者は労働者の健康を確保 する観点から、一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、現行より高い一 定率により割増賃金を支払うこととすることによって、長時間の時間外労働の抑制を図 ることとしてはどうか。  (2)割増率の引上げ分については、(1)の割増賃金の引上げ分については、労使協定によ り、金銭の支払いに代えて、有給の休日を付与するという仕組みについて、そういうこ とができるとしてはどうかということです。  次の○は、長時間労働削減のための支援策の充実です。長時間労働を削減するため、 時間外労働の削減に取り組む中小企業等に対する支援策を講ずることとしてはどうか。 次の○は特に長い長時間労働削減のための助言指導等の推進です。特に長い長時間労働 を削減するためのキャンペーン月間の設定、あるいは上記の(1)の時間外労働の限度 基準に係る特に長い時間外労働についての現行法の規定に基づく助言指導等を総合的に 推進することとしてはどうかということです。  最後の○は年次有給休暇制度の見直しです。法律において上限日数を設定した上で、 労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時 間単位での年次有給休暇の取得を可能とするとしてはどうかということです。  続いて3枚目です。自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設です。一定の要件を 満たすホワイトカラー労働者について、個々の働き方に応じた休日の確保及び健康・福 祉確保措置の実施を確実に担保しつつ、労働時間に関する一律的な規定の適用を除外す ることを認めることとしてはどうかということです。  (1)制度の要件です。(1)は対象労働者の要件として、次のいずれにも該当する者で あることとしてはどうかということで、i、ii、iii、iVとなります。iは労働時間では 成果を適切に評価できない業務に従事する者であること。iiは業務上の重要な権限及び 責任を相当程度伴う地位にある者であること。iiiは業務遂行の手段及び時間配分の決定 等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること。iVは年収が相当程度 高い者であること。  (2)制度の導入に際しての要件として、労使委員会を設置し、下記の(2)に掲げる事 項を決議し、行政官庁に届け出ることとしてはどうか。(2)は労使委員会の決議事項 です。(1)労使委員会は次の事項について決議しなければならないとしてはどうか、とい うことで、iからViiまでです。iは対象労働者の範囲、iiは賃金の決定、計算及び支払 方法。iiiは週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること。iVは労 働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施。Vは苦情処理措置の 実施。Viは対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと。 Viiはその他、決議の有効期間、記録の保存等ということです。  (2)ですが、健康・福祉確保措置として、1週当たり40時間を超える在社時間等がおお むね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導 を行うことを労使委員会で必ず決議していただいて、実施することとしてはどうかとい うことです。  (3)制度の履行確保です。(1)対象労働者に対して4週4日以上かつ一年間を通じて 週休2日分の日数、104日以上の休日を確実に確保できるような法的措置を講ずること としてはどうかということです。(2)対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚 生労働大臣の指針を定めることとしてはどうか。(3)、(2)の指針において、使用者は対象 労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うこととしてはどうかということ。 (4)行政官庁は制度の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、使用者に対 して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付 すこととしてはどうか。  (4)対象労働者には年次有給休暇に関する規定は適用することとしてはどうか。  最後の頁の○、企画業務型裁量労働制の見直しです。(1)中小企業については労使委員 会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関す る事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者につい て、当該業務以外も含めた全体についてみなし労働時間を定めることにより、企画業務 型裁量労働制を適用することができることとしてはどうかということです。  (2)事業場における記録保存により実効的な監督指導の実施が確保されていることを前 提として、労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止す ることとしてはどうか。(3)苦情処理措置について、健康確保や業務量等について苦情が あった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとしてはどうか ということです。  次の○、管理監督者の明確化です。(1)スタッフ職の範囲の明確化です。管理監督 者となり得るスタッフ職の範囲について、ラインの管理監督者と企業内で同格以上に位 置付けられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当する ものであるという考え方により明確化することとしてはどうか。(2)の賃金台帳への 明示ですが、管理監督者である旨を賃金台帳に明示することとしてはどうか。  最後の○です。事業場外みなし制度の見直しです。事業場外みなし制度について、制 度の運用実態を踏まえ、必要な場合には適切な措置を講ずることとしてはどうかという ことです。以上がこの素案の内容です。  資料No.2については、統計の数字等ですが、これは従前この審議会で配付していたも のを、ある程度集約したものですので、個々の内容についての説明は、時間の関係で省 略させていただきます。 ○分科会長 それでは資料No.1の今後の労働時間法制について検討すべき具体的論点 (素案)で、整理されている項目ごとにご議論をお願いしたいと思います。2頁では長 時間労働削減のための論点が挙げられています。これらの論点について、ご意見をいた だきたいと思います。 ○小山委員 資料No.2で、労働時間関係の資料をお配りいただいていますが、以前、私 がお願いをして過重労働による健康障害を発生させた事業場に対する監督指導結果の昨 年度の東京労働局の集計したものを、提出していただいたわけです。その際に、東京労 働局だけではなくて、全国的な集計したものを是非取りまとめていただきたいとお願い 申し上げました。その点についてはどのようになっているのでしょうか。 ○監督課長 現在取りまとめを確認しているところです。17年度の脳・心臓疾患等の過 労死等の事案の労災補償状況の件だと思いますが、現在これが管理監督者と推察される ものについて、調整しているところです。現時点では私どもの精査がまだ少し残ってい ますが、管理監督者と推察されるものの割合は、概ね7%程度となっていますので、さ らにその内容については後ほどご紹介させていただきたいと思います。 ○小山委員 7%というのは。 ○監督課長 330件のうち20数件がそれに当たるのではないかということです。 ○小山委員 東京労働局の集計をしていただいたのでは、22.9%が管理監督者というこ とで、この場でご報告いただいているのですが、全国的にはそんなに比率はないという ことなのですか。 ○監督課長 それは東京労働局との関係でのご指摘ということで、私どももそういう観 点から精査をしているところですが、いままでの精査の結果では、東京労働局の数字に 比べると、約7%という低い数字ということです。 ○小山委員 具体的な数字を見ないことには何ともいえませんので。いつごろいただけ るのですか。審議が終わるころでは困るのですが。 ○監督課長 いえいえ、それは審議の途中で提出させていただきます。 ○小山委員 ご説明いただいた点について、まずこの説明だけではよくわからないもの ですから意見を申し上げる前に、いくつか質問をさせていただきたいと思います。順番 に最初の頁から質問させていただきます。最初に時間外労働の限度基準が(1)であっ て、(2)で長時間労働に対する割増賃金の引上げとあるのですが、ちょっとどういう 意味なのかがよくわからなかったのですが、要するに(1)のところは、特別条項付き 協定を締結する場合ということですから、月45時間を超える部分について割増賃金を労 使の合意で現行法よりも高い比率で定めるように努力義務として定める。法定割増賃金 があって、その上に限度基準を超えたところに自主的な任意の基準を作って、その上に (2)のところで一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、現行より高い 比率、一定率による割増賃金をと言っていることは、これは30とか45の数字ではなく、 80とか100という高い数字をイメージして書かれているのかと推察したのですが、私の 推察は間違いでしょうか。 ○田島委員 関連して、この(2)の長時間労働者に対する割増賃金率の引上げという ふうに表題がなっていますが、いままでの4月に出された検討の資料でも、すべて時間 外労働削減のために割増率の引上げという形で議論してきたと思うのです。この点がな ぜこの表題そのものが、見出しそのものが長時間労働者に対するという形でなっている のかということも、合わせて関連してお答えいただければと思います。 ○監督課長 いまの(1)と(2)の関係については、具体的な数字は別として、基本 的な考え方としてはいま小山委員がご指摘のとおりで、限度基準がもちろんあるわけで すが、これを超えた場合、労使で自主的に、例えばどうすればこの労働時間を減らすこ とができるか。あるいは割増賃金率についてどういう率がいいのか、このお話合いを是 非していただきたい。そういった中で時間外労働の削減の取組がひとつできるのではな いか。そういうことを踏まえた上で、それよりも長いというところで、この長時間にな った方については、法律としても一定時間を超える時間外労働を行った当事者について は、現行より高い一定率の割増賃金という形で、さらに強い形での押さえということで、 2段になっています。  田島委員のご指摘についてはいま申し上げた観点から、いわゆる特に長時間の時間外 労働についてどのようにするのかという観点で、こういう見出しになっているというこ とです。 ○田島委員 そうすると、公益の先生にお聞きしたいのですが、いま監督課長の説明で すと、いわゆる一般の残業は25%、限度基準を超えたら労使で決めなさいという2段階 目、そしてそれよりも長いのはもう一度法定で割増をしましょうという、3つの割増率 があるのですが、時間外の割増でこんな複雑な形態を取っているのが、諸外国にあるの かどうなのか、お聞きしたいのですが。 ○調査官 法律レベルとしてはフランスがあります。フランスでは週35時間を超えて労 働させた場合には、拡張適用される産業部門労働協約・労働協定によって定められる 10%以上の割増率の割増賃金を支払わなければならないとされています。また、拡張適 用される産業部門労働協約・労働協定がない場合には、週35時間を超え43時間以下の 時間を労働をさせた場合には25%の割増賃金を、それを超える部分については50%の割 増賃金を支払わなければならないとなっています。 ○田島委員 3段階と違うでしょう。いまのは2段階でしょう。 ○調査官 制度において、法制度において複数の段階の率を定めているものがあります ということです。 ○田島委員 そうすると、使用者側委員の人にお聞きしたいのですが、いままで例えば 裁量労働でもより中小企業にとっては煩雑で、書類作成も大変だということで対応し切 れないという、この間いろいろな意見があったのですが、いわゆるこういう時間外割増 を3つの段階でやるという、こういう煩雑なことが本当に日本の中小企業で対応できる のかという感じがするのです。もっと割増率というのはシンプルに何パーセントだとい うのがあるべき姿だろうと思うのですが、その点、使用者の特に中小企業の代表の方の 意見はどうなのか。たぶん私と一緒だろうと思うのですが、いかがでしょうか。こんな 煩雑なことをやってもいいのでしょうかという思いがするのですが。 ○紀陸委員 私どもはそもそもここにある長時間労働を是正するための割増賃金の引上 げ自体に、非常に疑問を持っています。いまお話のように、それが例えば多段階ではど うかという、そういうことはあまり論議のレベルが違うのではないかと思っています。 裁量の手間が云々という話と、この3段階でやったときにどうかというのは、ちょっと 筋が違うのではないでしょうか。  私どもは本当にこれは何遍も申し上げていますが、企業は大企業であれ中小企業であ れ、同じだと思うのですが、所定労働時間のほかに、時間外労働をやるということは、 実は当然のことながらコスト負担ですし、決してそれを是としているわけではないわけ です。仕事が突発的に舞い込むとか、あるいは新しい事業展開のために準備をするとか、 そういうことでもって時間外労働は発生するわけです。それをなくすために割増賃金を 引き上げるというのはどういうことなのか、これだけ厳しい競争の中で、企業のコスト 負担をこういう形でアップするということは、企業はもちろん従業員の方にとってもい いことなのかどうか。コストがアップすることはもっとトータル的に安い賃金コストの 対策を考えなければいけなくなる事態が起こり得ます。  前にも申し上げましたが、何としても国外に事業展開をしないがために国内で頑張っ ている企業は非常に多い。中堅企業にいけばいくほど多いのではないでしょうか。そう いういろいろな対策の中で、コスト対策というのは非常に大きなものなので、それに覆 いかぶせるような形で割賃を上げるのは、本当に労使のためにいいことなのかどうか。 ここのところは私どもとしても、本当に真面目に考えていただきたいのです。従業員の 方々だって、前にも申し上げましたが、2割5分を3割とか、3割5分に上げてくれと、 強く動くことがあるわけではないでしょう。現実問題として。何となくボヤっと対策を 考えておられるようですが、実は非常に厳しいコスト負担になるということは、目に見 えている話でして、非常に大きな国際競争の最中にあるとか、これからますますそうい ったように入っていくことはお考えいただかなければいけない。  従来と労働状況、職場環境は随分変わってきているのです。それがために安衛法の改 正も大事で、この時間の設定改善法も大事で、それに我々はそれは大事だな、健康確保 は大事だなということで賛同して、それが4月から施行されたばかりです。  さらになおかつこういうような話がなんで出てくるのか。非常に理解に苦しむところ で、雇用の確保のために何をすべきかということは、労働組合の方々も、そういった観 点から考えていただかなければいけないような問題ではないかと思っております。 ○小山委員 いま紀陸委員のおっしゃられたことで、共感できるところが1つあります。 割増賃金を引き上げることが長時間労働の抑制策だと言って、週80時間、月80時間と か100時間という過労死の認定ラインに達するところにより高い割増賃金を付けるとい うのは、まさに本末転倒というか、逆に言えばそれ以上の労働を抑制することが必要で あって、そこに割賃を付ければ抑制できるかどうかといったら、そこまで働いている状 況があったら、いくら割賃を付けたとしても、抑えられないのです。それはなぜかとい うと、問題は業務量にあるわけですから、私たちもいたずらにコストアップを望んでい るわけでもありません。いちばん問題になるのは、いま超長時間労働と言われているよ うな実態を、どう労使が抑制していくのかということが問われているのです。そのこと を申し上げているので、お金の話をしているわけではないのです。ですから、そういう 観点での我々は主張として割増賃金率は50%にすべきなのだと。そうすれば、時間外労 働をやるよりも、新しく人を雇って企業の運営をしていったほうが、これも労使にとっ てプラスではないですかという意味で、50%という主張をしているわけです。そこのと ころはたぶん紀陸委員と違うのかもしれませんが、最初におっしゃられた長時間労働抑 制策としての割増賃金というのは、それは筋違いもいいところだと思います。  やはり雇用、多過ぎる業務量に対して、人をきちんと配置していくという仕組みを、 労働行政の中でも誘導していく意味合いからも、50%という割増率が必要なのだという 主張をしているわけです。もっと正常な働き方をしようではないか。ちょっと日本は異 常な状態になっているのではないですか。これほど過労死が多発する、過労自殺が多発 する、メンタルヘルスで悩む人たちが本当に多発しているこの状態をどうしたらいいの かということで、いまこの労働基準法をどうするかを私たちは審議しなければいけない のではないか。だから、いたずらにコスト問題というところに、もちろんお考えになる のは当然だと思いますが、そこの働く人たちの健康を一体どうしておくのかというとこ ろから、きちんとした議論をしていかなければならないのだということを、改めて申し 上げておきたいと思います。 ○紀陸委員 いまの小山委員の話は、雇用拡大のために50%の割増をしようということ なのですか。 ○小山委員 過剰な業務を今みんなやっているわけです。 ○紀陸委員 そのためにそういう時間外労働を避けるために、雇用量を増やすために。 ○小山委員 そうです、雇用量を増やすしかないではないですか。 ○紀陸委員 それで競争が維持できればいいわけですが、現実はいかがですか。本当に 現実は。 ○小山委員 現実は過去最高の利益を上げている企業が続出しているわけではないです か。みんな上方修正しているわけです。 ○紀陸委員 それはほんの一部ではないですか。全体の景気状況というのは、そういう 認識では私どもはありません。現実に中堅企業の声を聞いていただいたら、それこそ皆 さん方も実感されているのではないですか。 ○小山委員 それはそういう議論になると。 ○紀陸委員 そういう都合のいい話でね。 ○小山委員 それこそ、そちらの都合のいい話でね。 ○紀陸委員 いやいや、世の中の現実はそんなものではないと思います。本当に先ほど 申し上げているように、ここで日本の国内でビジネス展開するというのは、大変なコス トになっている。だから折を見て海外に展開したいという企業は非常に多いわけです。 それはわかりますよね。その上になおかつそういうことをやって。 ○小山委員 過去最大の収益を上げて、それをもう少し中小企業に配分したら、そんな に困ることはなくなるわけです。 ○紀陸委員 そんな簡単な論議というのはあるのですか。 ○小山委員 あります。 ○田島委員 いわゆる50%引き上げることで国際競争力がとおっしゃられるけれども、 国際的にはアメリカでも韓国でもフィリピンでも、あるいはヨーロッパ協定で4割増に なっていますし、日本は25%であまりにも安過ぎると。これは以前にも発言をさせてい ただいていますが、人を雇うよりは25%の割増だったら、そっちのほうが割安だという のが現実問題としてあるわけです。さらに加えて、いまは賞与、いわゆる一時金にだん だんシフトしているけれども、それは残業の割増のベースに入っていないわけです。そ れをベースに入れたら25%増しどころか、もっと低くなるという計算が出てくるはずな のです。そういう中で残業させたほうが企業にとってはメリットがあるという現実があ るわけです。  そうではなくて、国際的な水準というか、5割増に残業そのものを引き上げるという シンプルな引上げをしたほうが、素案の冒頭で言っている長時間労働の抑制というか、 あるいは過労死防止、少子化対策に資するだろうと思います。そういう意味で引上げを、 あくまでも国際競争力を云々で引上げ反対というのは、私はいまは国際的な水準からし て話は合わないのではないかと思います。  残業させたほうが企業にとっては超過利潤が得られるという構造があるという問題 を、メスを入れていかないと駄目だろうと思います。 ○紀陸委員 時間外割増率が国際的に50%標準などと、そんなことはあり得るのです か。アメリカの50%といったって、連邦法で決まっているのですか。大体アメリカの場 合はエグゼンプションが非常に多いわけでしょう。全然話の筋が違います。それから、 アジアと比べた場合に、前からこれも申し上げているのですが、賃金水準自体が違うわ けです。アジアで5割増しの割賃やっているところがどのくらいなのか、ほとんど例を 思い出せないくらいですが、聞いているのは韓国ぐらいですか。  国際的云々というのは、そういう数字の話ではなくて、企業の雇用維持、活力、どう やって失わしめずにいけるかという話です。それと同時に私どもはやはり仕事が増えて くる中で、従業員の方々の健康確保は大事だと思って、安衛法をきちんと守りましょう とか、改善性といって改善法をきちんとやりましょうとか、まだ、いずれも始まったば かりです。大企業ですらなかなか守られないので、中小企業は時間を置いてやるという ことですが、そういうことをこれから進めなければいけないという段階です。本当の意 味の健康確保の措置の充実というのは。まさに今はそういう段階なのです。それなのに、 なんで割賃の話がポコッと出てくるかというのは、やはり私どもはなかなか釈然としな いのです。これは、非常にたくさんの、7割5分の方が中小企業で働いているわけです。 そちらのほうの企業の機能と雇用の維持と健康確保の措置がどうかというのを見て、論 議をすべき話ではないのでしょうか。 ○原川委員 いま紀陸委員がおっしゃいましたように、私どもではそもそも割増賃金の 引上げのこと自体に反対しているスタンスです。したがって、段階的に云々という議論 をするつもりはないということです。  いまお話にも出ましたが、中小企業の場合、前にも申し上げましたように取引実態が 1つあり、1年間に閑繁の時期はあるわけです。1年の間に突発的な短納期発注という ようなことが頻繁に行われているということですから、なかなか1年を通して人を増や すということが難しい。最近の景気の状況もイザナギを超えたというようなことを言い ますが、景気の回復度が以前とはまるで違うということですから、景気の回復の実感が ほとんどないわけです。国際競争の中で厳しいコスト競争を東アジアをはじめ多くの国 と競争しているので、ぎりぎりの状態で経営をしているということがあります。したが って、中小企業の現状は、活力をどう維持していくかが最大の課題であって、50%上げ ればいいではないかという、そういう簡単な「はい、そうですか」というような問題で はないと強調しておきたいと思います。  こういうことがもし行われれば、企業経営自体に大きな影響を与える。いま出ました ように、従来から働いておられる従業員の方々にも影響を与えるということにもなりか ねない。それはぎりぎりの経営をしているということですから、当然そういうことは懸 念されます。ですから私どもはあくまでも割増賃金の割増率については賛成できないと いうことです。 ○渡邊(佳)委員 私の会社の子会社なのですが、配電盤を作っています。配電盤はう ちなどは大きいほうですが、完璧な中小企業の分野です。いわゆる受注形態からいうと、 大手のゼネコンがあって、サブコンというのがあり、その下でやっている大変な下請け 的なところです。我々としては大変に厳しい受注競争をやっているのですが、いかに残 業を少なくするかということが、原価率を確保するいちばんの基なのですが、お客さん の都合によって波がものすごくあり、深夜残業等々があります。そうすると、やはり採 算がほとんど割れているという状況です。例えば、1月とか5月というのは国の法定休 日が結構多いので、稼働日がものすごく減って、残業をしなくてはいけないというよう な所もあります。そういう月というのは極めて原価率が悪いということで、我々として はいかに仕事を平準化して残業のない仕事をすることがいかに儲かるかというようなポ イントだと我々としてはやっていますので、是非そういう残業をやって、なおかつ儲か るというような商売はまずないのではないかと思っています。 ○八野委員 いまお伺いしていることは前からお話していることとそれほど変わらない のではないかと思うのですが、いろいろな産業の中においても、長時間労働の発生の原 因はさまざまなところがあると思います。いまのようにお休みがとれるところはいいで すが、私どもの業界のように365日営業しているところは、その中で工夫をしながらや っていっているということで、一斉休日があるだけうらやましいと思います。そういう 中で、いままでの長時間労働というのは、正社員が減ってきて、パートや契約社員が増 えてきた辺りから、かなりの長時間労働が発生してきている。また、正社員のところに 業務負荷がかかっていることも事実だと思っています。  長時間労働は先ほど言ったような安衛法の問題や時間管理の指針であるなど、さまざ まなことをやらなければ、長時間労働といういまの現状を是正することはできません。 それと過労死の問題もありますし、また、ここの中では出てきていませんが不払い残業 の問題は、何度もお話させていただいたように是正勧告を受けている数も非常に上がっ ているし、未だにそれが続いているという現状もあるのではないか。そこまで入れてい った長時間という本当の数値を、実際に労使できちんと見ていかなければいけない。  そのときに、もう1つの手段として割増賃金を出してきているととらえていくことは できないのか。割増賃金がここで50に上がったら、日本の競争力は落ちて負けてしまう のか。本当にそんなに小さなエネルギーしかいまないのか。それともう1つは、あまり ここでコスト、コストというと、次に出てくるものも、これはコスト削減の自由度の高 い働き方なのかなと見られてしまう。意味するところは違うかもしれませんが、あまり コストの削減、またはものを作るときと要因の問題を言っているだけでは、次のステッ プもあるわけなので、あまりコストがここで上がるからというと、次に出てくるものは コスト削減のためにやる制度のように映ってくるかと思いますので、その辺のところに ついても、両方を見ながら言われていったほうがいいのではないかと思います。 ○小山委員 ちょっといまの点で事務局に質問させていただきます。いまの割増賃金の ところで特別条項付きの協定を締結する場合とあるのですが、研究開発とかあるいは自 動車の運転業務は除外されているわけです。そこはどのように考え方を整理したらよろ しいのでしょうか。 ○監督課長 自動車の運転、開発については、現在個々にある特別条項については適用 がないことになっています。こうした考え方、労働時間をできる限り短くするというこ とについては、共通する点もあるのではないかと考えております。 ○小山委員 制度的にどうなるかをお聞きしているのです。 ○監督課長 制度的にはこの特別条項については直接は入っていないという現状です。 ○小山委員 その場合の割増賃金の定めについてはどのように考えておいたらいいので すか。 ○監督課長 個々のいまの特別条項のカバーする範囲での引上げの努力ということで す。 ○紀陸委員 いま八野委員から右肩の頁の自由度の高い働き方云々の話が出ましたの で、割賃の話はまた後で細かい点のことは改めて論議するとして、こちらの論議をさせ ていただきたいと思います。ここの「自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設」と いうこの点は前から私どもは主張していますが、ご指摘のようにコストということより も本当の意味で、いわゆるホワイトカラーの方々の量が増えていますし、働き方も働く 人のニーズも相当に変わってきている。だったら、こういうものを選択肢の1つとして 増やして、本当の意味で会社の効率を上げる、あるいは働く人の家庭の事情もさまざま ですから、少子高齢化というのはまさに子育ての家庭、介護の家庭と非常に世帯状況は どんどん変わってきているのだと思うのです。それは相当に深刻にもなってきている。 だから、会社と個人の事情を調和させて、結果的に両方がいいような働き方を目指そう ということで、それによって私どももガラッと世の中が変わるということにはなるもの ではないと思っているのです。少しずつどういう働き方をしたら自分のためにも会社の ためにもなるかという、そういうような制度の内容になるのではないかと思うのです。  だから、決してここは残業代とか、抑制するとか、節約するという観点の制度ではな いと思うのです。結果的にそういうことになるかもしれませんが、狙いはまさにここの 仕事と生活の調和で、仕事と生活の調和の中にいろいろな意味合いが含まれていて、結 果的には少子化対策になるでしょうし、男女共同参画にもなるのでしょうが、とらえ方 はさまざまで、これをどうとらえるかによって制度の位置付けも変わってくると思うの です。いずれにしてもいままでなかった制度ですから、会社の中でも仮に制度が入れら れた場合に、どういう形で運用するのかというのは、まさにこれからで、それによって 少しずつ柔軟な働き方が、いろいろな会社の中に出てくるのではないかと思うのです。 決してそういう狙いではないということを、本当に繰り返し繰り返し申し上げているの ですが、その点のご理解はいただきたいと思っています。  そういう意味でここにある端的に年収が相当程度高いとかという話、休日確保の条件 も相当に厳しく書いてありますが、要するにチャレンジをしようというような制度です から、ごく一部の企業だけでそういうものを狙ってやったからといって、それが本当に あまねくほかの業種の、あるいはほかの中堅企業が入るかどうかはまた別の問題です。 そういう意味で、ある程度バーを低くしてやってみる。チャレンジをするという機会を、 たくさんの業種、レベルの企業にやっていただくというのが意図なので、あまりコスト 抑制で云々かんぬんという点からだけで目をつけて、バーを高くするということには基 本的には反対です。この辺は本当の意味で私どもも従来から申し上げている趣旨はご理 解いただきたいと思っています。 ○渡邊(佳)委員 それでは紀陸委員の補足をさせていただきたいと思います。年収要 件で、年収が相当程度高いとありますが、私どもとしては紀陸委員とともに年収要件は 一切必要ないのではないかと考えています。本来、働き方で区分するものであり、制度 に該当する働き方を労使で定義すればよいわけで、年収で区別するというのは馴染まな いのではないかと思っています。仮に年収要件を設けるならば、アメリカのホワイトカ ラー・エグゼンプションの制度のように、最低限の基準、つまりそれ以下の年収では制 度にとうてい馴染まないであろうという基準、例えば私どもとしては400万円程度にす べきではないかと思っています。仮に年収要件が1,000万円などという高い数字になっ てしまいますと、いわゆる多くの管理監督者、中小企業ですと社長の年収も上回ってし まうようになり、企業に混乱を生じると思っています。中小企業では課長クラスで大体 年収で600万円に届くか届かないかというのが現状です。年収要件がそれ以上になって しまうと、中小企業で使うなと言っているようなものです。大企業も中小企業も一律に 規定する労働基準法の考え方からしても、許されないのではないかと思っています。  そして、もう1つ、資料には業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある 者とあります。そもそも働き方で区分するのですから、地位は本来関係ないと思ってい ます。そもそも地位というのはどのような考え方なのか、よくわからないので、その辺 のところは若干質問させていただきたいと思います。 ○監督課長 ご質問の点も含めて、年収要件についてはここの提案の趣旨ですが、業務 量の調整について労使委員会という仕組みの中で労使で話合いをしていくということも あるわけです。労働者として使用者に対する交渉力の担保という観点から、一定の年収 の方というのが普通日本の場合想定されるのではないか。あるいは資料にあるように労 働時間に関する一時的な規定の適用の除外ということがあるわけですが、これはそうい うことでも保護にかけない程度の処遇というのが考え方として必要なのではないかとい うことで、(1)のiVは、年収が相当程度高い者であることという要件を入れているわけで す。  それともう1つの地位の件ですが、これはもしかしたら地位イコール職位職階、よく 言われている課長、部長というようなところで、イコールでご意見を頂戴したかと思い ますが、これは相当程度重要な権限及び責任を伴う程度のそういうポジションにある方 ということのご説明のほうがいいのかもしれませんが、必ずしもこれが職位職階制度の 課長ならアプリオリにイエスとかノーというわけではなくて、こういう部署ごとの権限 の大小などによって、具体的な実態的な判断もあり得るのではないか。そういう意味と しての単語とお考えいただきたいと思います。 ○八野委員 何かちょっと勘違いされているようですが、私たちが言っているのは、ま ずは長時間労働の是正に向けて何に取り組むのか。タイトルが急に変わった自律的労働 にふさわしい制度から、急に変わった自由度の高い働き方にふさわしい制度に変わって いますが、このことについては前から言っているように、これ自体の根拠がなかなか見 出せないということを労働側はずっと言ってきたと思うのです。いま話していかなくて はいけないのは、話題をすり替えていただきたくないのですが、長時間労働といういま 日本で抱えている大きな問題に対して、どのようにしていったらそれが是正できるのか。 過労死の問題、また不払い残業の問題を抱えていくのが本当に日本の企業の実力なのか。 まず、時間外労働削減のための法の整備をきちんとやらなくては、次のステップの中に 行けないのではないか。コスト、コストと言われますが、人に対しての費用をコスト、 またはものに関するものもコストということになりますが、そういったことだけでなく、 働いている人たちに対していま問題が起きている。その問題に対してどうしていくのか、 そこについて議論を戻すべきではないかと思います。 ○平山委員 先ほど小山委員から史上最高の利益ではないかというお話がありました し、いま八野委員からそれほど割増率の話をするだけで沈む弱い企業ではないかという 話がありました。なぜいま日本の企業が利益を上げ得る競争力を持っている、あるいは 利益を上げられているというのはいくつかあると思うのですが、パッと思いつくという ことで言いますと、別に世の中が利益を上げてくれているわけではありません。利益を 上げ切れるマーケットで、利益を上げ切れる競争力を持って事業活動をやっているとい うことだと思います。マーケットとは何かというと、やはり世界の需要が拡大している ということで、需要が拡大しているからそれを補足している。あるいは供給が追い付か ないところは一時的には需給が非常にタイトになっている。供給側が有利になっている という面もあるかもしれません。いまはたぶん中国とか東アジアで起こっている成長は それぐらいの勢いの成長だと思います。  何を言っているかというと、国内の需要の中で循環的に良くなったり悪くなったり、 あるいは何か同じ条件にいても、黙っていても儲かりますみたいなことではなくて、国 境を越えたところで競争力をきちんと持ててやれているのです。その伸びる需要を補足 しているのだと思います。そういう中で、データが国際的な比較のデータというのはい ままでほとんど出てきておりませんのでよくわかりません。私が自分の業界、あるいは 関連する業界ということで見聞きしているというか、承知しているということで言えば、 欧米を含めて労務費の単価自体が、日本は高いレベルだと思います。世界一とは事実か どうか、はっきり確認できませんからそこまでは申しませんが、国際的に見て人件費の 単価は相当に高いレベルだし、東アジアで言えば競争相手もすごく広がってきているし、 競争条件も広がってきていて、圧倒しています。ただし、たぶんいろいろな努力をして、 先ほど八野委員からもお話がありましたが、努力しているではないかと。1単位当たり の人件費投入額は、日本も相当努力をして、競争力を担保できていると思います。これ がたぶん需要が伸びているところを、国際競争力を持ちながら保存しているという極面 が1つと、もう1つは日本が世界の先端品を供給できている。世界のマーケット自体を ユースなり品質でリードしている部分は非常に大きいです。  何がそれをもたらし切れているかというと、もちろん作る力は現場力を含め、あるい は現場での製造技術のリーダー群もたくさん抱えているということも含め、物を造ると いう意味での力があるというのもそうでしょうけれども、どういう物を造り出すかとい うことについて非常に力を持っているということが、いまは結構証明されているのだと 思います。いろいろな商品で世界の中で日本の商品というのは、ある意味では商品とし て勝ち組になっているという部分が多いのだろうと思います。  では何がそういうことをもたらしているのか。製造現場の強さと併せて、そういうも のを造り出す努力、あるいはそういう集団がきちん、きちんと力を出し切れている、こ ういうことだと思います。例えば「自由度の高い働き方にふさわしい制度」云々という ところで、制度の要件の(1)で対象としてはこういうことでしょうねと4点書いてある。 年収が云々というのは別にして、地位や権限ということで特に1番です。やはり成果と いうのをどうやって出すのか。そういう働き方が必要な集団が多くをこれは生み出して、 世界のマーケットで先頭を切れている。それが日本で働く場所を担保している大きな力 になっているということだと思います。すべてがそうだとは言いませんが、製造業のか なりの分野でそういうことは事実だろうと思います。  これは、我々鉄鋼業界もまさにそうです。これがなければ本当に世界のマーケットの 中で呑み込まれてしまう。いろいろな業界がそういう努力をしてきている。そういう意 味で、ある意味でコストというだけでなく、こういうことも含めて小山委員が言われた ような今の企業業績があるということだと思います。  ただ、ある意味で言うと、労務費の単価自体は相当高いレベルにありますから、そこ のところを一律にこうというのは、これは経営側としては避けたい議論だというのは当 然なのです。ただ、長時間労働対策についてどういう手を打っていくのかというのは、 そんなに真っ向から意見が違うということでなくて、共通の課題だと思います。これは 紀陸委員から当初お話があったとおりです。過重労働対策、健康対策は、今、どれほど の企業に、どれほどきちんと浸透しているかというのは分かりませんが、多くの企業は 労働時間をきちんと把握し、その中で必要な人については保健指導する。こういうこと を回し始めているというふうに思います。そういったことが始まったということです。  あるいは、この労働時間設定改善といったものについても、いろいろな仕組みが労働 時間というものを減らしていく。あるいは休み方というのを広げていくいろいろな仕組 みというのは、こういう新しい法律の中でガイドが示されて、それを普及していくとい うのは、これからのステージだと思います。  長時間のところを割増でなければ何が何でもというと、あまりに尖鋭的になるという ことです。広くいろいろなことを現実にやっていくことが大事だということだと思いま す。そういう意味では八野委員が言われた点は、そのとおりだと思います。ただ、紀陸 委員が言われたようにスタートしたところということだから、むしろこれをきちんと浸 透させて定着させていく。そのためにいろいろなチェックをかけていく。そういうのが 大事な時期になるのではないかと思います。 ○渡辺(章)委員 長時間労働に対して、どういうふうに対応していくかという平山委 員の問題意識自体は、労使が共有していると。具体的な問題はともかくとして、それを お聞きして一部はほっとしているわけです。前半のお話で、製造の力ということと同時 に技術開発、その他について、それを指導し、それを進めていく人材力というものが日 本の中に育っている。その人たちに対してどういう働き方をしてもらうかということが、 非常に問われてきているというお話でした。  1987年に始まった労働基準法の改正以来、そういう全体的な動きに法律制度が全く手 をこまねいて、対策を打ってこなかったかというと、そうではなくて、専門業務型裁量 労働制を作り、その業務の範囲をさらに拡大し、また別個に、業務の専門業務というと ころにとらわれない企画、調査、分析、立案という別の面から、企画業務型裁量労働制 というものができ、労使委員会制度というのができている。みなし労働時間制によって 労使が、そういう人たちの働き方として何時間働いたことにするということで、実績と いうよりも、むしろ現場感覚で労使が合意できる時間働いたものとみなすという、柔軟 な労働時間管理の方法を編み出して今日まできているわけです。  その制度でどこがどう足りないのか。今までも言われてきたことですけれども、新し いそれと別個の制度を作るということを、国民に対してこの場で提案する以上は、既存 のそういう柔軟な労働時間管理の制度のどこがまずいので、新たなものを作らなければ いけないのかということを、しっかりと出していただきたい。そこが十分議論されない まま、1つの新しい選択肢を増やすなどと言われても、法政策を進める上の議論として、 それで十分なのかということを私は非常に強く感じます。  先ほど渡邊委員が、年収要件についてアメリカ並と言いましたが、アメリカには裁量 労働制なんてないのです。日本にあって、さらに自由度の高いものをプラスアルファし ようというわけです。それならばそれなりの要件が入るのは当然だと私は思います。都 合のよいところでどこかの国の例を取り出すというのは、私はバランスのある政策を考 えるときの態度ではないと思いますので、そのことを申し上げておきたいと思います。  いま私の申し上げたことについて、単に新しい選択肢を増やすということではなく、 時間管理の必要の上で、こういうエグゼンプンションという制度が、いまある制度のど こがまずくて必要なのかを経営者サイドなりにしっかり分析して、お聞きしたいという 気持が非常に強いのです。 ○紀陸委員 特に企画業務型のところだと私どもは思っているのです。何でこれだけ制 度ができているのに、導入している企業の割合が少ないのか。本当に寥々たるものです。 何でなのか。やはり非常に対象範囲が限定されて、本社の中であるいは事業場の大きい 所で企画、立案と言っても、そこの1部門だけです。そのためにこの労使委員会を作っ て、いろいろな届けもしていって、果たしてそこまで手間をかけてやるか、まずそこな のです。  これは何千人いようが何万人いようが、あるいは300人の所だろうが、要するに本社 や大きな事業所のそこの仕事のごく一部のところだけを対象にした制度で、しかもいろ いろな本人同意とか、まさにこういうものを作る場合には違った働き方になるのでしょ うから、そこはいろいろ要件をかぶせるのは分かりますけれども、でも全体の組織の中 でここの部門だけといったら、そこでもう企業は本当の必要性があれば別でしょうけれ ども、そういう制度をあえて導入しようという意欲が湧かないわけです。だから広がら ない。まさにそれで状況分析は尽きてしまっていると私は思います。  これを少しずつ要件緩和してきましたが、要件緩和してきたから増えてきたのかとい うと、実はそうではないだろう。こういう実態を把握するのは難しいかもしれませんが、 でも制度緩和してきたところで、ほとんど広がっていないのが実態だと思います。私ど もはあまりそういう声を強く聞かないのです。そういう違った働き方を望むとか、本当 のニーズは企画、立案だけではないのです。何となくこういう制度で柔軟性の仕組みと して専門型を入れ、企画型を入れていろいろやってきたのはそうですね。でも時間にか かわりなく働く人は現実に多いわけです。そういう人たちのニーズを満たしているかと いうと、そうではないなと思います。これはPRも不足しているのかもしれませんが、 それにしてもニーズを満たしていないものは広がりようがないわけです。  ではどういう形であったらばニーズが満たされるのか。基本的には対象範囲を広げる のがいちばんだと私どもは思っています。しかも、その中で自己管理ができる仕事のや り方というのは企画、立案だけではないですよね。だからそこは広げる余地があるので はないですかというのが、私どもの1つの提案です。  かつ、裁量というのはならしてここまでということですよね。そうではなくてもう一 歩進めて、かつ健康確保ですとか、あるいは成果評価とか、きちんとしたことが条件と してあれば徐々に、これ、やってみようかという企業が増えてくるのだと私どもは思い ます。それが本当の意味で企業と事業主のニーズを踏まえた政策になっていくだろう。 要するにニーズを満たしていない制度だと思うのです。だから、それはどういう形で満 たし得るのか。まさにそこがひとつの大きな論点ではないかと思うのです。 ○渡辺(章)委員 専門業務というのが最初に出てきて、それはまさに専門性を備えた ものでなければならないということで、客観的に決まるべきものであるから省令で決め るという立場をとって、それが当初は6〜7業務で今は26、そんなに多くないか、施行 規則で決まっているわけです。しかし、それと違って業務の種類で限定するのではなく、 業務の性質というか、企画、立案、調査、分析と特定の業務に限定しないけれども、あ らゆる業務に普遍的にあるであろう企画、立案、調査、分析という、いわば重要な核と なるような身分で働く人たちについて、みなし労働時間制を新しく導入したというふう に私は理解しています。  これで専門業務で限定されない、それ以外の業務について、こういう事業の重要な部 分で中核的な立場で働く人たちについて、労使委員会方式によってみなし労働時間制を 作った。ですから、私はもともとそんなに狭いものだと、いま言われたように、これを 運用していくことによってそのように狭く限定的に捉えられて、普及率の低い原因がそ ういうところにあるのかなと。労使委員会という馴染みのない合議制がなかなか普及し 難い条件なのであって、普及しない原因は何かということについて、いま言われた業務 の縛りがきついからという形で、いま理解していなかったものですから、そういう現場 にいらっしゃる方が、そういうことが1つの普及し難い原因だということを、いま教え ていただいたというふうにお聞きしておきたいと思います。 ○小山委員 いまの議論からいっても、先ほどの紀陸委員のお話を聞いても、なぜここ で、この新しい制度が必要なのかということが未だにわからないわけです。裁量労働制 を使えばできるではないかということは何度も申し上げたけれども、結局、今日、企画 業務型裁量労働制が使いにくいからだということを明確に、いまお話があったので、だ ったらもっと違う議論の仕方があったのではないの、と思うわけです。要するに、裁量 労働制をどうしていくのかという議論の仕方もあったのではないですかということ。と ころが、話はどうもそうではなくて、すべての労働時間規制を適用除外にしたいという ことのほうが強かったようなので、未だにその疑問は解けないのです。  そこで、事務局にお聞きしたいのですが、ホワイトカラーの要件について教えていた だきたいというのが1つです。2つ目は、この制度要件に対象労働者の要件として4つ が掲げられています。いずれも極めて抽象的な文言で、すべての人に当てはまるような 文言だなと私は理解しているのですが、特にiの「労働時間では成果を適切に評価でき ない業務に従事する者であること」というのは、以前も何度も何度も申し上げたとおり です。大半の日本の労働者の場合は時間で成果を評価されているのではなくて、それぞ れの能力や成果に応じて、仮に時間給であっても賃金の水準は定められるのです。時間 の長さで評価されて、賃金が決定されているなんていう所があったら教えていただきた い。少なくとも我々の組合の組合員では、すべてが時間で評価されている業務には就い ておりません、すべての組合員が。何のための1項目の要件なのかということを、お伺 いしたいというのが2つ目です。  3つ目、この間、これも何度も何度も議論をしてまいりました。時間の自由度という のは、問題は業務量の問題なのだということは、これも何度も議論した話であります。 いくら時間を自由に使えるとしても、業務量がいっぱいあったら、その納期までにやら なければならない仕事がある。そうすれば夜中まで仕事をする、徹夜でも仕事をする。 業務量についての裁量がなければ自由な働き方なんていうのはできないのだし、このこ とは当然、厚生労働省としても十分ご承知だっただろうと思います。労働時間問題の研 究会報告でも、その業務量ということにかなり注目して議論もされ、執筆もされていた と思いますけれども、今回のこの要件の中に業務量に関わることは一切載っていません。 これは今までの議論をどのように考えて、このようなものをお書きになったのか事務局 にお聞きしたいと思います。3点です。 ○監督課長 ホワイトカラーの定義につきましては、現在、統計上はご承知のように管 理監督的な地位にある者、販売的業務に従事する者、事務的業務に従事する者というこ とでおおむね55%というところが入っているということです。ここに書いてあるホワイ トカラー労働者というのが、それを全部満たすわけではないわけです。  もちろん、ホワイトカラーという大きな枠組みがあるわけですが、そうした中で、労 働時間で成果を適切に評価できない業務に従事する者であること、というのをiに書か せていただいているわけです。いま小山委員が言われたように、これはすべての人につ いて直線的に1対1で対応するのがないというのは誠に事実ですが、ただ、そうは言っ ても、作業に携わっている時間と成果のアウトプットが、相当程度の相関関係にあるよ うな業務というのは考えられるのではないかと思います。  例えば工場とか作業場とかで物を直接造っている方については、手を動かして組み立 てている時間とそのアウトプットというのは、もちろん創意工夫で大小はあるにしても、 おおむねの増減はあるのではないか。さらに申し上げると、そのライン自体がパタッと 電気を落として止まると、そこから先はその個人が頑張っても成果は出てこないわけで すから、そういう範囲での相関関係にあるか、ないかというのが1つのポイントです。 iで言うと、そういうような相関関係というのがないほどの成果、適切に労働時間では 評価できないという範囲が1つあると思います。  逆に言うと、いま典型的に申し上げた例えば工場、作業場における現場の業務である とか、あるいは内容とか遂行方法がかなり定型的に決まっている帳簿の整理とか、そう いった業務というのは創意工夫によって、多少の時間の増減で成果が変わってしまった としても、こういうところには入ってこない業務ではないかという具合に考えているわ けです。  そういった意味で、たぶん最後の納期に追われるという点については、例えば営業活 動の業務などがありますが、これについても若い方がたくさん回って来いということで 営業する場合、あるいはコンピューターのSEの方が、いついつまでにこれをちゃんと 修理しろということで、そういう若い方がどうしてもそれに時間を合わせてという時に は、一定程度の自由度は低いということになろうかと思います。  業務量の調整のお話が最後に出ましたが、ここのところについては資料で言うと(3) の(3)です。業務を断われる人はなかなかいないという指摘もあり、実態としてそういう ことも加味すると、使用者と対象労働者で業務内容や業務の進め方について話し合う、 これは1つ考えられるのではないか。ここに想定している自由度の高い働き方にふさわ しい方というのは、これに限るという意味でなく、典型的なパターンとして、成果型の 例えば半年に1回の目標管理でここまでやりましょうという方がいれば、そういう方は 上司の方と半年に1回ぐらい面談して、次の半年ではこういう事をやりましょうといっ た面談を行うことは、企業において通常行われていることではないかと思います。そう いう機会などを捉えて、こういった業務内容、業務の進め方についての話合いを行う機 会を通じて、過大な業務量を防いでいくというのもできると考えて、こういう(3)の (3)というのを提案した次第です。 ○小山委員 これも法律での要件を書くわけですから、何でも対象になるようなことで はなくて、それなりに、きちっと要件に合うか合わないかという判断をすることになる と思います。これで監督行政の中で監督官が判断できるのですかね。先ほど労働時間で は成果を適切に評価できない業務とありました。これはおおむね時間と関連性があるの ではないかみたいなことを言われましたが、物の製造でも、例えばNCの工作機械を扱 える製造業務は人によって全然能力が違うわけです。だから賃金の差もあるわけです。 そういうのはどうなりますか。もう1つ、例えばファーストフードの店長などは、そう いう基準からいくとどうなりますか。 ○監督課長 まず旋盤のほうですが、もしかしたら失礼にあたるといけないのですが、 基本的には製造工程に直接携わっている方について、例えば工場が電気を消している間 にも働けるとか、そういうものはないと考えています。自分1人で機械を回してという のが本当に日本国であるのかというのは、完全にないと申し上げるつもりはありません が、いま小山委員が言われた前のほうの方については、ごく例外的な方を除いては、工 場、作業場の現場における業務に該当する感じなので、私どもとしてはここの提案の中 には入らないと考えています。  また具体的な店舗名はさておき、いわゆる小規模小売店舗の店長さん等についても、 通常営業時間内の仕事をやっているということで、その方々について、もちろん営業努 力によってお店の売上げが伸びたり減ったりすることはありますが、決められた時間内 でやるわけです。勝手に営業時間を短縮するというわけではないと思いますから、そち らも基本的にはほとんど入らないと考えています。  ここの「労働時間で成果を適正に評価できない業務」というのは、長く働く場合もあ れば、成果を上げれば当然労働時間を短くして切り上げて帰ることも含めて、そういう ことが考えられるという観点から、いずれもなかなか入らないと考えて提案した次第で す。 ○小山委員 確認ですが、いま私は2つの例を言いましたけれども、これは(1)のiの要 件から見て、適用されることはないということで理解していいのですか。 ○監督課長 いまお聞きした範囲では、提案の中には含まれていないと理解していただ ければと思います。 ○小山委員 iの要件に合わないと言っているわけですね。 ○監督課長 そういうことです。 ○小山委員 iiやiiiではないということですね。 ○監督課長 iの要件の話をしています。iです。 ○小山委員 ローマ数字の。 ○監督課長 ローマ数字のiです。 ○小山委員 労働時間で成果を適切に。 ○監督課長 はい、そういうことです。 ○島田委員 事務局に確認ですが、この自由度の高い働き方の3行目です。「労働時間 に関する一律的な規定の適用を除外することを認めることとしてはどうか」という、こ の「除外」は全部を除外するという意味ですか。労働時間に関する規定をすべて除外す る、あるいはこれを除外するとか何かあるのですか。 ○監督課長 基本的には全部を除外するというわけですが、最後のページにある労働基 準法39条の年次有給休暇の規定は適用除外になっていません。あと(3)の(1)の休日を 確実に確保できるような法的措置については、労働基準法35条の法定休日類似の規定で すので、提案の趣旨としてはここもプラスアルファで書いているわけですが、そういう 部分は適用除外になっていないというか、新しく法的措置をとるというのは言い方はあ ると思いますが、35条の考え方に関する部分については適用除外になっていなくて、そ のほかの部分を適用除外ということです。 ○島田委員 そうすると、前から言っている論理なので何遍も申し上げませんが、要す るに働き方として労働時間に関わらず自由に働きたい、いろいろな働き方が出てきた。 いまの法律の中でどれを除外したら、その働き方が実現するのかという部分で基本的に 論議するべきなのではないかと思っているわけです。何ですべての労働時間管理なりを 外さなければいけないのか。これを外したら自由な働き方ができるというのは一体何な の、と思います。  さっき紀陸委員がコスト論ではないと言いましたが、多少はコストが入っているのは 事実だと思います。経営としてはそれは考える部分だと思います。だから我々は企画裁 量労働を改善することによってできるのだったら、そっちのほうが話が早いですねとい うことを言っているわけで、なぜ働き方がいろいろ自由になったのに、すべて一律的な 労働時間の適用除外をしてまでやらなければいけないと、そう考えなければいけないの か。本当にそれがあったら、何を外していったらそれができると最初に考えないのか、 私は不思議だなと思っています。 ○田島委員 いまの島田委員の発言にも関連しますが、いわゆる今までは自律的な働き 方、今度は自由度の高いというふうに出ていますけれども、本当にそういう人が自分の 決めた働き方ができるのか。先ほどの割増賃金のところで、原川委員や渡邊委員は、中 小企業においては取引先からの納期などがあって、仕事がほぼ決められてくるのだと、 残業だってしないほうがいいけれど、そういうのがあるから残業せざるを得ないのだと。 いわゆる自律的なあるいは自由度の高い労働者でさえ、職場でのチームワークや取引先 の関係できちんと規制されるわけです。そうすると、この自由度の高いということはあ たかもいるようだけれども、結果的にはそういう周辺というか、取引の問題もあれば職 場の仲間との関係もあるし、研究職でも私は一緒だろうと思います。そういう意味では、 こんな自由度の高い働き方、いわゆる独立変数的に働いている労働者なんかいないです。 こういう労働者がどこにいるのですか。  これは先ほど渡邊委員や原川委員が言われたように、中小企業においては取引先から 言われて、仕事の繁閑などがどうしても出てくるのです。そのときに「俺は自由な働き 方だから半日にしますよ」なんてできっこないでしょう。こういう労働者がどこにいる のですか。そういう現実があるからこそ裁量労働もなかなか広がらないというのは、み んなが共同作業という日本の良い働き方をぶち壊すことになるのではないかと思いま す。本当に結果的に何なのかといったら、適用除外、残業割増あるいは労働時間管理を 外しましょうと、しかし労働時間管理を外そうと思っても、アメリカと違って安全配慮 とか健康確保があるから、(2)の時間状況の把握というように、一方では適用除外と 言っておきながら、一方では労働時間の状況の把握なんていう矛盾したことが平気で出 せるのです。そう思いますが、いかがですか。 ○原川委員 いまの田島委員からのご意見ですが、私がさっき申し上げたのは一般の労 働者ということで、この労働時間の適用除外というのはホワイトカラーということだと 私は理解しています。裁量労働というのは、企画、立案、調査、分析という業務を行う。 だから、そこは先ほど監督課長からの回答にもあったように、適用される人と適用され ない人がいるわけですから、その議論をあまり混同しないようにしていただきたい。 ○八野委員 ちょっと今の発言は違うのではないかと思います。実はこれはページは違 いますけど、左のページの「自由な働き方」と右のページの「企画業務型裁量労働制」 は同じ労働時間ということで連動しているわけです。労働時間ですよ、こっちは時間外 ということでやっていますけども、こっちは労働時間ということでは一緒になっていま す。長時間労働ということ、でもそういうものを抱えている中でこういうものをやって いるということなので、あれは違う、これは違う、確かに対象範囲を違えているという ことはありますけども、企業の全体の動きの中で、そこに携わる職務に就いている人た ちの話になっているというだけで、企業の生産性を上げるという動きの中では、同じ動 きの中で見てきているというふうにとれると思います。ですから、先ほどから言ってい るように左のページと右のページを別々に捉えて、あまり話さないほうがいいのではな いかというふうに思います。  質問ですが、なぜ「自律的労働にふさわしい制度」が「自由度の高い働き方にふさわ しい制度」に変わったのか。もう1点は、(1)のiで外食の話をちょっとされていま したが、営業時間が24時間だったらどうなるのですか。ここで言っている労働時間とい うのは、ある程度所定の労働時間というものがあって、そこを見ているのではないか。 現状の中でも成果主義というのは目標をきちんと設定し、そこのプロセスを見、その結 果としての業績、その全体を見て成果として評価をしていく。それが、いま賞与や月例 の賃金として支払われている。  成果主義の考え方と時間外で支払われた賃金というのは別に考えなければいけない。 時間外というのは、もちろん健康だとか自由というもので、もともと36協定のところか らきている問題です。それと賃金というのは生活の水準ということで見てきている。そ こに成果主義というものがかなり導入されてきている。  いまの現状の中でも、ある程度決められた企業の労使の中で、または就業規則の中で 決められた時間内でいかに成果を上げるのかということで評価が付いている。これが基 本的なので、労働時間では成果が適切に評価できない業務というのを絞るのは非常に難 しい。いま現状はそれで動いているわけです。  もしかしたら管理監督者でなくて、管理職と言われている人たちが管理監督者という 括りの中に入っていて、その人たちがこの業務をやっているのかもしれない。本来、管 理監督者ということがもっと明確になった場合には、いま管理職と言われている人たち が、かなりこういうスタンスの中でやられているのではないか。質問と意見が交じって しまいましたが。 ○監督課長 最初の質問ですが、自律的な働き方ということで、自律という単語は本来、 自分で考えてそれに従って行動するという意味もあるわけですが、他方で多少自由奔放 にという語感もある単語でした。当然、労働者という会社の中で働いている方を前提と した仕組みとして、どういうものがいいか議論しているわけですので、自由奔放にとい う意味での自律という方は、本来、なかなか対象に入ってこないということです。言葉 として誤解を招くということもあり、労働時間に関して業務の遂行方法あるいはどうい う行動をするかということで、自由度が比較的高い方という言葉がいいのではないかと いうことで、この言葉について置き換えをしたわけです。  2つ目の成果主義と時間外の関係、あるいは先ほど島田委員からご指摘のあった何を 外したらというところもありますが、一定の時間を設定して、その中で自由度を高めて やってくださいということと、一定の枠組みを超えたときには、リニアに時間外のとこ ろで計算しましょうというところが、今回、マッチしないのではないか。そこの一定の 枠を超えたところで時間外ということで、リニアに時間と成果というところの結び付き が強まるということから、ここは労働時間では成果を適切に評価できない。そういうの も一体に捉えて長くしたり短くしたりということですね。仕事の状況を見て今日は少し ゆっくり来るとか、そういうことも含めて出来るようになるのではないかということで す。  成果主義と時間外のことについては、時間の中でどういう成果を上げるかという業務 があるのは、もちろんそういうことです。そういう時間の中でどういう成果を上げるか というところでは、労働時間の枠組みの中での議論になるかと思いますので、そういう ことではない方として(1)のiが捉えられるのではないかと考えています。  先ほども申し上げたように、例えばこういう方は当たるだろうとか、こういう方は当 たらないというのはあるわけです。監督の現場でどのようにするのかという質問もあっ たかと思いますが、そういう点についてはここの資料でも指針ということで、もしそう いうことが必要であれば、こういう方は当たらないのではないかということも含めて整 理をしていくというのも、1つの考え方ではないかと思っています。 ○新田委員 いま説明があったのですが、研究会報告発表以来、直感的にこんなものを 作られたら危ないというものがありますね。今日の議論でも経営のほうは、ここに書い てある要件のiiとiVは要らないのだという話まで出てくる。これは後で聞かせてもらい たいと思いますが、経営のほうは、エグゼンプションやってもらいたいのだということ を、どんなイメージで描いているのかさっぱり分からない。みんな入ってくれと言って いるぐらいにしか聞こえない。  これから、全く新しく労働者を保護をしている時間とか休日とか、さまざまな規制を 適用除外しようという大変なことを決めようというときに、これまで柔軟な働き方とい うことで言えば、具体的に専門とか企画というところで裁量労働を認めてきたわけです。 具体的にそれは決められていますよね。ところが、今日の話を聞いていてまず厚生労働 省の方が説明されても、どんな人が該当するのかわからない。そこへもってきてiiとiV、 400万円がどうこうという話まで出てくると、いよいよ普通の労働者がこれは危ないと。 それについてどう答えるのかということが、いま問われているのではないか。具体的な 姿を見せるということがなくて法律を作るというのは、どういうことなのだろうかとい うふうに私は思っているのです。  これを見せないで、結局、指針でなんて言われたら、法律の枠はいまのような形で作 られて、結局、何だか運用で、あるいは労使委員会の省の案で言えば、労使委員会でこ ういうことを決めなさいと、本人合意だということを言っているわけですけれども、本 当に自分に関わってくるものなのか、ということが見えないというものを出してこれを つくるとかつくらないとかの議論をするべきではないと私は思います。  だから、もう1回必要だとおっしゃるならば、渡辺委員が疑問を投げかけられました けれども、私も前の自律的なときに聞きましたけれども、どんな人が必要なんですかと いったら、例えばということでコンサルタントが出たけれども、そのほかあまり出てこ ない。そういうものを出してもらいたい。そういう議論をしていかないと、もう一遍言 いますけど、これは乱暴すぎるのではないですか。適用除外という大変なことをやろう というときに、乱暴すぎるのではないですかと私は考えています。ですから省の案で質 問したいんですけども、「次のいずれにも」ということは全部満たせということですね。 そういうことですね。 ○監督課長 全部満たせです。 ○新田委員 それから、労使委員会で議決するのも全部満たしなさいと。 ○監督課長 全部です。 ○新田委員 そういうことですね。 ○監督課長 はい。 ○新田委員 そうでないと省のほうは、これだけのことをして適用除外をというふうに 考えているのだということですね。そこのところは省の考えはわかりましたけれども、 その上でどういうふうに具体的にやるのかというのは、また議論になるのでしょうけど も、曖昧なものでやってはならないと思います。 ○紀陸委員 私ども、こういうものを入れるについて、基本のところは労使で決めると いう考え方ですよね。例えばいまの管理監督者の方々がおられますよね。そのほかに我 が社は従来の専門型の裁量制、あるいは企画型の裁量制をやったことがあるかもしれな い。それで十分だったら、その会社はもう要らない。だけども企画型というのは何か使 い勝手が悪い。かなり管理職の下の層でも、実はもうご存じでしょうけども会社の組織 はどんどん変わっています。昔は本当に何階層かあって、次長さんがおられたり代理の 方々がおられた。今は圧縮して、会社の組織みたいなのは大会社は本当に小分けになっ て事業運営をしている実態ですよね。いわゆるいろいろな意味でリスクを分散しなけれ ばいけないから、そういう組織形態をとっている所が多いわけです。  そうすると、1人の人が稟議をずっと上げてなんて待っていられないから、権限を持 ってスピード感で対応するということをやらなければいけない。そういう人たちが従来 の管理監督者の脇におられるわけです。そういう人たちに対してこの制度を適用しまし ょうかという、労使の本当の意味での合意がないと、私どもはこういうものに乗らない と思っているのです。  例えば年収がいくらぐらいで、この辺で切ったらば対象労働者は何百名になる。ある いはもうちょっと年収がよくなければ人数的に1,000万超えてしまう。そういうことを 言うけども実はそんな話でなくて、我が社で従来の柔軟な制度のほかに、こういうもの を入れてみて本当にそれが両方、従業員の方にも会社のためにもいいなというところが、 この制度の対象になるのだと思っているのです。めった闇雲にずっと広がってガラッと なるのではない。そこがだから本当の意味で、ここは労使でいろいろな条件を決めなけ ればいけないわけです。  私どもはこれでも労使委員会の決議事項で、あらかじめ休日を指定すること、こうい うことまで検討要件として、それこそ柔軟に自律的に運用できるようにと言っている方 が、あらかじめ休日を特定すると、こういうことを言われても困ってしまうのではない か。  制度の履行確保の(1)もそうですよね。4週4日はあれでしょうけども、1年を通じて 云々で(104日)以上と、本当にその取り方はどうするのだとか、問題は本人同意です。 本人同意がなければ駄目だと書いてあるのですが、でも仕事の性格だとか、もちろん客 観的に見て仕事の性格というのは明らかでないといけないわけですから、本当に本人同 意というのが要るのかどうか。仮にある職場の中の同質の仕事の固まりの中で、1人が 「そんなの嫌だよ」となればチームワークが乱れるし、その人本人もあまりハッピーで ないかもしれない。  確かに問題は仕事の配分の仕方だと思いますが、そういうものがうまくやられて、実 際、この適用の対象になる方々にあまり凸凹がないように、うまくやるような形で何と か本人同意に代わる形を会社が整えれば、こういう制度運用はうまくいくと私どもは思 うのです。あらかじめ休日を使って、本人同意というのは要件としてなくても、かえっ てあるとやりにくい。でもやりにくいけれども、これをどかすということは決して闇雲 に制度が、ご心配のようにそんなめったやたらと広がる制度ではないだろうと、そうい うふうに思っています。どうやって逆に、例えば組合のないところにこの労使委員会を 作っていくのか、実はそういう話が非常に大事で、この問題だけではないのです。どう やっていろいろな協議の仕組みを作るか。我々はこっちのほうが非常に大事な話だと思 っています。こういうものを仕掛ける傍らで、何か従来と違った協議の仕組みが、いろ いろな会社とかに広がっていくような、そういう機会にもなるのではないかと私どもは 思っています。決してそんな母型のところは良くはないのではないかと思っています。 ○石塚委員 先ほどからずっと議論を聞いていて、あまりたいしたことないので、とに かく可能性だけ開いてくれればいいよみたいな話がよく言われるわけですけれども、こ れは私どもからすると、物の考え方の基本的な転換点なのではないかと思っているので す。ですから懸念表明になってしまうかもわかりませんが、先ほど労働時間にすると一 律的な規定の適用除外というのは、当初、37条の関係だけかと思っていたら、そうでは なくて39条以外全部除けてしまいますということですから、基本的に日本の労働基準法 の第4章が39条除きですべて適用除外になってしまいます。ということは、どの層かは 別にして、その層に関しては労働基準法は適用しませんよという世界を作ろうというこ とです。  アメリカの場合には、エグゼンプションと言っていますけれども、あれは別に時間外 手当の話だけで、それをそのまま支払い義務の話だけで、時間外手当を支払うか支払わ ないかの話だけでエグゼンプションという話をしているわけです。アメリカの場合、労 働時間そのものを規制しようという発想がもともとありません。  ということは、この発想でいきますと、これまでは労働時間とかをきっちり把握して やってきた。それを今度は基本的に除外しましょう、基本的に180度転換だと私は思っ ているのです。ですから、この種の転換というものが、こんな簡単な議論だけでいいの かなという問題意識をものすごく持ちます。  最初に私が思ったのは、賃金の支払い方と労働時間の把握の結び方を、少し柔軟にし ようということのご提起かと思ったのですけれども、そうではないと。もっとそんなレ ベルでなくて、本当に労働時間規制そのもの自体を外さないと、もうやっていけないの だと、そういう層が増えてきたという問題意識だとお聞きしますので、本当にそうなん だろうかと思うのです。  いろいろ考えますと、先ほどから労働側が言っているように、ある意味、これまで厳 重に労働時間というものを規制してきたやり方から、基本的に変えるときに柔軟化はし てきていると思っています。これは先ほどから言っている裁量労働制の世界で、専門型 あり企画型ありだと思うのです。そこの世界になると必ず使い勝手が悪いという話にす ぐなってしまうのですが、使い勝手が悪い点があるのは私たちは否定しません。ただ、 使い勝手が悪いと言うときに、法的なレベルにおいて使い勝手が悪いのか、企業内にお ける制度設計の使い勝手が悪いのか、制度設計に基づいて具体的運用の使い勝手が悪い のか、そういう議論が全然されていないではないですか。  だから、その議論をやるべきだろうと思います。その上で本当に、おっしゃるように 従来からの発想を超えて、時間管理そのものを変えないと駄目なんだということであれ ば、それはまた議論のレベルとしてあると思いますけれども、議論が飛躍しすぎている のではないかと思います。それぐらい日本の労働基準法の持ってきたものの根本的な転 換だと思っているので、もう少し議論というものは、そういう手順を踏んでもおかしく ないのではないか。一朝一夕にこの段階で基本的な転換をやるには、ちょっとどうかな と思います。  したがって、私どもとしては企画型のいろいろな意味、それから日本の労働法を少し 柔軟化してきたことの評価というものを、もっと真剣に突き詰めてやるべきなのではな いか。運用においては労働法を変えなくても、企業における制度設計なり運用というも のを変えることによって、企画型なり裁量労働制は使い勝手が良くなるかもしれません から、そういう意味における議論というのは必要ではないかと申し上げたいと思います。 ○紀陸委員 石塚委員は驚天動地みたいな話をされますが、いまの管理監督職はエグゼ ンプションですよね。いまの管理監督職の方が、そんなめったやたらと時間の規制に関 わりなく働いているのですか、実際はそうではないでしょう。 ○石塚委員 ですよ。 ○紀陸委員 ですよね。だって1日24時間で1週間の時間は決まっているわけです。そ の中の時間の使い方を自分でコントロールするという話ですよ。それを今の管理監督者 の方々のほかにも枠を広げる。その枠をどういう対象に広げるかというのは、労使がお 決めくださいという話ですよね。私どもは基本的には、最低限のところは労働基準法が ありますけれども、労使の自治でできるところは労使の自治でやるべきだと本当に思っ ているのです。だって会社の内容というのはさまざまなのですから。  それで年収要件がいくらかという話がかかっていますけれども、現実問題として地方 間の格差、地域間格差の賃金というのは相当に開きがありますでしょう。良し悪しでな くて現実にあるわけです。それが是か否かというのは会社の中の本人たちが判断するこ とであって、脇からとやかく言う話ではないわけです。自分の会社の中で労働組合があ れば労働組合に決めていただく。 ○長谷川委員 日本国民の人材を、どう使うかというのは重要な問題です。 ○紀陸委員 日本国民でなくて、個別企業の労使関係が日本の労使関係の基礎ですから、 個別企業の中のことは個別の労使で決めていただければいい。それが非常に大事なこと なのです。その枠をこの法律では担保しているわけでしょう。 ○長谷川委員 してないです。 ○紀陸委員 しているじゃないですか。 ○長谷川委員 してないと思います。 ○紀陸委員 労使の話合いがなければ駄目なのではないですか。 ○長谷川委員 労使が24時間働いていいと決めたら、それでいいということなの。 ○紀陸委員 そんな極端なこと決めますか。 ○長谷川委員 そういうことだってあり得るということですよ、書いてなければ。 ○紀陸委員 そうしたらば労働組合がきちんと頑張って、そういう要求する方法もある んじゃないですか。 ○長谷川委員 労働組合のない所はどうなんですか。 ○紀陸委員 ない所も、きちんと。 ○長谷川委員 労働組合のない所はどうするんですか。 ○紀陸委員 そんな無茶なことはできませんよ。 ○長谷川委員 そんなことないです。無茶なこといっぱいしている。何で過労死と過労 自殺が起こるんですか、じゃ。 ○紀陸委員 あのね、そういう点は。 ○長谷川委員 あの、紀陸委員の話はちょっと飛躍しすぎるんですよ。私が喋っている んです、許可もらって。私が喋っているんです。 ○紀陸委員 失礼しました。 ○長谷川委員 日本の使用者がそのように立派だったら、何で過労死とか過労自殺とか、 うつが起きるんですか。まずその反省をしてくださいよ、何回も言っていますけど。私 たちの所に自分の家族が亡くなった人、自殺した人、うつで未だに職場に復帰できない 人がたくさんいてですね、そういう人たちの労働相談みんな受けていますよ。日本経団 連には行かないかもしれませんけども、私たちのほうには来ていますよ。そういう人た ちがどういう働き方をしたと思いますか。過労自殺とか過労死のときの労災の認定が2 カ月で80時間、1カ月100時間ですよね。そういう人たちが過労死や過労自殺、メンタ ル不調をおこしているのは事実じゃないですか。それを誰がしたんですか。まずそこを 使用者はきっちりと反省してくださいよ。その反省の上で、労働時間がこんなに病んで しまった日本国民、労働者をどのように健康にするのかというのがまず最前提だと思う んですよ。必ず家に帰って、家族でご飯を食べて、風呂に入って、子供の宿題を見て、 寝て、次の日健康でまた職場に来て働いて。それを確保するために労働基準法は週40 時間、1日8時間を決めておいたわけじゃないですか。  それは何でそんなふうに決めたかって言ったら、過去に奴隷的な働き方があったから でしょう。10時間労働だとか12時間労働だとか、労働基準法というのはそういう法律 だったはずですよ。だからそれは何でかと言ったら、日本国憲法にもですね、健康で文 化的な生活をするためには、労働時間については原則週40時間、1日8時間と決めたわ けです。それをですね、何らかの形で緩和するとなれば、それなりの重要な理由と合理 的な理由がない限りできないはずですよ。それをですね、あたかも年収400万円以上の 人はとかですね、自由な働き方だったら企業とか、だからむろん企業の理由も必要です よ。だとしてもですね、労働者を健康に維持することが大前提なんです。  地域に行ってみなさいよ、子供の教育はどうしてますか、お父さんは全然帰って来な い、ご飯はいつも1人で食べている、朝ご飯は食べない、そういう家族をどうするんで すか。地域が崩壊しているじゃないですか。毎日、毎日夜の11時、12時まで働いて、 土曜日も日曜日も働いている。いつ近所の町内会に出る時があるんですか。PTAだっ て町内会だって全部妻ばっかりじゃないですか。こういうのをどうしますか。そういう 中で、どうやって労働時間というものの原則を考えましょうかという話じゃないですか。  だっていまの話をしたら、紀陸委員の話を聞いていたらば、年収400万の人は24時間 働けということと同じですよ。それでは駄目だから、週40時間、1日8時間決めている っていう、この大原則は絶対忘れるべきじゃないですよ。そういう上で、こういう制度 設計を考えるときに現行制度のどこに矛盾があるのか、どこが使い勝手が悪いのか、ど こを直せばみんな企業も労働者も幸せになるのかということを、もう少し私はちゃんと 考えてほしい。真面目に考えてほしいと思っていますよ。  だから連合としてもアメリカにも調査に行きましたよ。そのときに日本の労働時間制 とアメリカの労働時間制を見たときに、ほぼ同じような制度があるわけです。でも使い 勝手が悪いということは聞いていますよ、だから時々変えてきましたよね。だとすれば、 どこが使い勝手が悪いのか、どこをどうすればいいのか、もっと真剣に考えてください よ。そんな24時間働けみたいな法律作ろうなんていうのは冗談じゃないですよ。 ○紀陸委員 私どもは決してそんなこと言っていないし。 ○長谷川委員 それと同じことを言っているじゃないですか。 ○紀陸委員 違います、違います。私どもが考えているのは、従業員のニーズと会社の ニーズをどうやって合わせるかということだと思っているのです。 ○長谷川委員 だから企業間で決めて。 ○紀陸委員 いやいや、ちょっと聞いてください。何とか110番とか、そういう目線で ばっかり日本の労働市場とか企業環境とか見るべきじゃないと思っているのです。もち ろん、いまおっしゃられたような事実がないとは絶対私ども言いません。あるでしょう、 事実はね。そういうご相談があるんだから。でもその傍らでですね、企業環境なり就業 環境なり、どんどんどんどん変わってきているのは事実でしょう。そっちのほうに目を 向けないで法の改正の論議をするというのは、どうしても全然先へ進まないわけです。  こっちのことはきちんとやる。だから繰り返し申し上げているように、健康管理とか それは重要なことなんだ。だからその手立てをしながらこういう制度を入れましょう。 それが結局は、いままさに長谷川委員が言われたようなことを是正する機会にもなり得 るわけですよ。この働き方の中身を労使で本当に直す。自分でこういうふうに日程管理 ができれば、家庭の条件も仕事のスケジュールの中に織り込み得るわけです。そういう 働き方をしようというのは、実は結構望んでいる人たちが多いじゃないか。こっちの目 だけでですね、そのように労働市場を見るというのは私どもとしては、ちょっと焦点の 当て方が偏っている。もっと大きくいろんな就労のニーズがあるでしょうし、それこそ 本当にこれからどういうふうに変わっていくか、もっと先のことを見なければいけない。  いま長谷川委員が言うようなことは、私ども脇に置いてということでなくて、それも きちんと対処しながら、この制度の中でもそういうことの対処はできるだろう。もちろ んそれが前提条件です、このエグゼンプション制度の拡大というのはですね。それがな いと根付かないと思うのです。もっと前よりひどくなるような状況が起きれば、そした らこの制度はその会社において存続できる余地がない、そういうふうに思っています。 入り口のところの話が非常に大事だし、それを担保するための健康確保なり労働条件、 特に賃金体系の運用が非常に大事だ。これはセットになっていると私どもは思っている のです。 ○長谷川委員 何も私は電話相談のことばかり言っているのではないのですよ。じゃ、 何で少子化が起きたんですか。女の人たちがああいう働き方では子供を産めない、育て られないから産まないのでしょう。何で妊娠して一人目の子供は産むけども、二人目産 まないんですか。そのことだって労働時間と関係があるってどこでも言われているじゃ ないですか。  だから、私たちは何も一方だけで言っているんじゃないんですよ。そういうことも何 で少子化で労働力人口が少ないかと言われたときに、女たちが何で産まないかって聞い たら、みんなあの働き方では子育てできないって言っているわけでしょう。だから労働 時間というのは今や、女性の働き方、それから健康問題、家庭教育の問題、地域の問題 まで非常に広がっているんで、そこをトータルで考えるべきでしょう。そうすると、ど ういうふうな労働時間設定がいいのか。いまのところでは何が不都合なのか、そこをき っちり議論しましょうと言っているんです。 ○紀陸委員 全く同感です。仕事と生活の調和です。 ○長谷川委員 でも経団連が言っていることは、全然違います。 ○紀陸委員 いや、そんなことはありませんよ。 ○長谷川委員 違います。 ○紀陸委員 当然、このM字のカーブをどうやって上げ得るか考えているのです。現実 問題として仕事をしながら、働いている人のほうが子供を産んだらば2子目の出生率高 いというのは、長谷川委員もご存じでしょう。 ○長谷川委員 2人目は産まないです。 ○紀陸委員 出生率は高いんですよ。働いている人のほうの出生率は高い。問題はそれ をどうやってもっと広げるか。M字のカーブの底を上げていけるか、それはまさに本人 の事情とか会社の事情とか、組み合わせて働くというのが、まさに仕事と生活の調和の 理念だと思っています。それとこれがどういう形でうまく、それぞれの会社の中で制度 として根付いていけるのか、そういう契機だと思うのです。抽象的に労働時間の制度と いうのは、生活の仕方と働き方とつながっているわけですからね。個別の会社でそれぞ れ考えていただくのは非常にいい機会だと私は思います。 ○小山委員 事務局にもお願いしたいのですが、先ほどからの議論からいけば明らかに 裁量労働なり、あるいはフレックスタイム制の使い方、運用の仕方等でどこに問題があ るのか。本当に自由な働き方があるとすれば、そこで障害になっているのは何なのかと いうことを、そこからもう一度議論し直しましょうよ。こんな訳のわからないペーパー で議論するのではなくて、もっときちっとした現実に合わせた議論をし直しましょうよ。 是非、そのご検討をお願いします。 ○荒木委員 長時間労働にどう対応するかという議論が、時間外労働に対する割増賃金 でも自由度の高い働き方でも出ましたけれども、前半の割増賃金については双方に働く。 すなわち経済的コストを課すことによって長時間労働抑制にも働きますが、同時に、長 時間働いてそれでより高い報酬がもらえるとすれば長時間へのインセンティブにもなり かねない。そこの兼合いについても考えなければいけない問題です。  今回のペーパーでは、その問題についてお金で払うのではなくて時間で返そうという のが見えてきている。これは新しい点だと思います。これで十分かどうかは議論すべき だと思いますが、お金で報いるというのは双方に働くから実際に時間外抑制効果を持つ かどうかはよくわからない。それで時間で返そうという新しい方向が出されているよう に思います。  自由度の高い働き方のほうですが、これも休日規制を外すとは言っていますが、同時 に提案されているのは、104日の休日は確保してください。1日1日の労働時間につい ては自由度を認めるけれども、休むときは確実に週に2日分は休むということで、休み の確保というものをメインに考えられている。その要件について、(1)の(1)のi、ii、 iii、iVというのはある程度抽象的かもしれませんが、同時に手続的な労使委員会の決議 を課している。現在の41条2号の適用除外がどこまでカバーしているかが今はほとんど 補足されていない状況にある。これをきちんと位置づけようということもある。加えて 休日取得を確保する。さらに年収要件も課す。現在の裁量労働制では年収要件は課して いないわけです。それに対して割増賃金規制を外しても、保護に欠けないかどうかをき ちんとチェックしよう。そしてそういう働き方を労働者本人が選択するかどうかを確認 するということで、個人の同意も見る。そういう新しい点も出てきていることを踏まえ て議論してはどうかと考えます。 ○小山委員 先ほどからの議論で、現実にどういう問題があって、どういう働き方の中 で今の労働時間制度が障害になっているのか。そこでどういう制度を我々は考えなけれ ばいけないのか。その中でいちばん問題になっているのが長時間労働という話なのです よ。紀陸委員だって、結局、企画業務型裁量労働制がいちばん使いにくいのだと、そう いうところからのお話だったでしょう。そこで何で突然、事務局のペーパーが出てきて 新しい提起だと言うんですか。何で新しい提起なんですか。これまで今年の初めからず っと議論してきたわけですよ。そこで論点は何度も整理されてきた。議論は尽くされて きた。最後にきて、やっぱり今の企画業務型裁量労働制に問題があったんだというお話 だったじゃないですか。じゃ、もう一度原点に入って議論しましょうと言っているとき に、何でこのペーパーを基にして議論しようなんて先生がおっしゃるんですか。 ○荒木委員 いや、そういうことを言っているのではありません。企画業務型にもいろ いろ問題はあるということは従来のヒアリングでも出ました。つまり4業務全部をやっ ていなければいけないとか、ほかの業務をやっていては使えないとか、そういうことが 問題だと。かつ、企画業務型は年収要件など何もないわけです。ここで議論しているの は適用除外の問題ですから、裁量労働の延長線上でどこまで捉えるべきか。適用除外、 すなわち保護を外しても大丈夫かどうかを裁量労働とは異なる視点からチェックをかけ るという点が新しいということを言っているのでありまして、ほかの制度との関係を整 理しなければいけないというのは、私もそのとおりだと考えています。 ○分科会長 そろそろ時間が来ました。今日は長時間労働の削減の必要性及び自由度の 高い働き方にふさわしい制度の創設の必要性について、さまざまなご意見をいただきま した。この点についてはこれからも議論いただきたいと思います。次回は労働契約法制 についてご議論いただきたいと思います。次回の日程について事務局からお願いします。 ○監督課長 次回の労働条件分科会は11月21日(火)、17時から19時まで、場所は 厚生労働省17階の第18、19、20会議室で開催予定です。 ○長谷川委員 前回のときの積み残したものは、どこかで議論するのですか。 ○監督課長 企画業務。 ○長谷川委員 でなくて、過半数だとか何か残っていましたよね。 ○監督課長 過半数のところは、契約法制の部類で、前回の議論で残っている企画業務 型裁量のほうは、いまここのところにご提案ということで入っていまして、今日もご意 見をいただいたということで理解しています。 ○分科会長 それでは本日のこの部会は、これで終了いたします。本日の議事録の署名 は八野委員と紀陸委員にお願いします。ありがとうございました。                  (照会先)                     労働基準局監督課企画係(内線5423)