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第3回 企業年金研究会 資料4
平成18年11月27日


確定拠出年金制度に対する要望


在日米国商工会議所
2006年11月27日



在日米国商工会議所(ACCJ)について

ACCJとは
米国40社の企業の代表により、1948年に創設された
東京、大阪および名古屋にオフィスを擁し、1,400社以上の企業、約3200名のビジネスパーソンを会員とする
現在、日本における、最大かつ、もっとも影響力のある外国ビジネス組織


会員の中に、確定拠出年金ビジネスをグローバルに展開している企業、確定拠出年金制度を採用している企業もあり、今回の改正の動向に注目している。


本日のプレゼンテーション

1) 確定拠出年金に関わる日本の現状
2) 確定拠出年金制度改革の普及率
3) 確定拠出年金制度改革の必要性
4) ACCJの提案項目
 (1) 雇用主による拠出の上乗せとして、従業員による拠出を認める
 (2) 非課税拠出限度額の引き上げ
 (3) 一定の条件下での、60歳前の積立金引出し
 (4) 事業主の提供する投資アドバイス・サービス
 (5) 公務員に対する確定拠出年金制度の導入


確定拠出年金に関わる日本の現状

加速する高齢化社会
家計貯蓄率の著しい低下
政府に対する退職後の所得保障への期待
労働流動性の上昇
人口の減少
雇用率の減少



参照資料
全米退職者協会/HarrisInteractive Survey(2005)
退職後の生活に関する意識調査「AXAリタイアメントスコープ」(2006)
内閣府経済社会総合研究所 統計及び Discussion Paper No.167(2006)



確定拠出年金制度の普及率

日本は、これらの問題に直面しており、抜本的な改革が必要なところ、他の発展国に比べ、日本の確定拠出年金制度の普及率は低い。

確定拠出年金の加入者数は、約200万人であるが、これは日本の労働者数における4%にも満たない。
(内閣府経済社会総合研究所 平成18年3月14日にアップデートされた「平成15年度県民経済計算」の全雇用者数53,506,425を元に計算)

これに対し、確定給付年金の加入者は、約1,000万人で確定拠出年金加入者の約5倍にあたる。
(厚生労働省資料)
米国では、1億2200万人の労働者数に対し、4200万人が確定拠出年金制度による資産形成を選択
(Building Futures Volume VI, フィデリティ・インベストメンツによる分析および、”The Future of the Money Management Industry 2003” by Empirical Research Partners, Feb.2003)


確定拠出年金制度改革の必要性

確定拠出年金制度は、制度設計上の問題から未だ浸透していないが、有効活用されれば、以下のような効果がある。

労働者に退職に備えた貯蓄に自己責任を持たせる。
労働者が投資について理解を深め、投資を促す。
  → 「貯蓄」から「投資」への構造改革を促進
公的年金制度を補完する。


雇用主による拠出の上乗せとして、従業員による拠出を認める

日本の確定拠出年金制度は、個人による拠出を認めていない。
英国、米国、香港等は従業員拠出を認めている。

従業員の75%が退職後資金を自己責任でまかなうことを望んでいる。
(参考:2005年の全米退職者協会調査、AXA社による退職後の生活に関する意識調査「AXAリタイアメントスコープ」))

従業員拠出を認めることによって、退職後の資金形成ができる。これにより、事業主が提供する年金に対する従業員の関心が高まり、退職に備えるために積極的に投資方法を理解し、老後資産の管理するようになる。

他国の取組み
米国では、確定拠出年金の魅力を高めるために従業員の拠出を認めている。
企業拠出額の他に、1万5千ドル(加入時に50歳以上の場合には、5千ドル追加拠出できる)までの従業員拠出を非課税としている。
また、従業員拠出による税収低下を防ぐため、2006年に確定拠出年金に対する税引き後の従業員拠出「ロス401(k)」を導入。

英国では、個人拠出にかかる税制優遇は、3,600ポンド(約80万円)もしくは所得の100%のいずれか高い金額まで認められる。


非課税拠出限度額の引き上げ

現行の非課税拠出額の上限引き上げれば、確定拠出年金制度によって十分な労働者の退職後資金の準備が可能になる。

現行の税制では、確定拠出年金に低い拠出限度額を設けている一方で、確定給付型年金への拠出額は無制限とし、また中小企業退職共済によって中小企業の年金制度を助成している。
確定拠出年金の拠出額の上限を引き上げが必要。


米国の取組み
米国では、2006年の確定拠出型年金に対する拠出額の上限は44,000ドルか給与の100%のうち、いずれか低い金額となっている。


一定の条件下での、60歳前の積立金引出し

確定拠出年金制度を採用している企業の85%が早期引出しの制限に不満を抱いている。
(フィデリティ投信の調査レポート Japan survey in 2006)


確定拠出年金は引き出し制限がある一方、確定給付企業年金と退職金制度では、雇用が終了した場合に給付を早期に受給することを認めている。
早期引出しが可能となれば、確定拠出年金はより魅力的なシステムになる。


海外諸国の取組み
資金難など一定の状況下ではペナルティ課税等が課されることなく引出しができ、住宅購入や、従業員または扶養家族の教育費等の出費に対し、確定拠出年金の積立資産を担保にローンを組むといった仕組みが採り入れられている。このローン制度の存在が誘因となって、米国では、確定拠出年金への従業員の加入と拠出が増えている(米国政府調査)


事業主の提供する投資アドバイス・サービス

退職後の保障の改善策として、投資アドバイスの環境作りが重要

最近の研究では、日本を含めた多くの発展国における人々の財務知識の不足が指摘されている。よりよい退職後の財務計画のため、人々の投資能力の向上が必要である。
(OECD July 2006 Policy Brief “The Importance of Financial Education”)

また、日本の団塊世代の91%が老後の資金不足に対する不安を持っており、10人中6人は、極度に不安であると回答しており、投資教育の必要性が指摘されている。
(Global Worrying:New International Survey by The Hartford Hones In On Rising Retirement Anxiety In the U.S., United Kingdom and Japan, October 18, 2006)

具体的には、
加入者がポートフォリオの資産配分の調整などの適切な措置をタイムリーに実行するための専門的な投資アドバイスサービスを、確定拠出年金運営管理機関等、事業主を通じて行うインフラを整備していく必要がある。


公務員に対する確定拠出年金制度の導入

公務員の確定拠出年金制度への加入は認められていないが導入を検討すべき

期待される効果
  民間に、確定拠出年金制度が、今後も維持される重要な制度として認識され、確定拠出年金制度の発展につながる。

米国の取組み
  1986年、連邦政府職員に対して優遇度合いが非常に高い401(k)タイプの年金制度(TSP)を制定した。この改正により民間企業に勤める従業員が自ら拠出をすることができる確定拠出年金制度に対する安心感および制度の継続性に対する信頼感が大幅に向上した。以来、401(k)プランは米国において最も急激に成長した退職金制度のひとつとなった。
米国従業員福利厚生研究所(EBRI) FACTS レポート「米国における401(k)プランの歴史」


参照資料

全米退職者協会/HarrisInteractive Survey(2005)
退職後の生活に関する意識調査「AXAリタイアメントスコープ」(2005)
内閣府経済社会総合研究所 統計及び Discussion Paper No.167 (2006)
Building Futures Volume VI, フィデリティ・インベストメンツによる分析および、”The Future of the Money Management Industry 2003” by Empirical Research Partners, Feb.2003
フィデリティ投信の調査レポート Japan survey in 2005
OECD July 2006 Policy Brief “The Importance of Financial Education”
Global Worrying:New International Survey by The Hartford Hones In On Rising Retirement Anxiety In the U.S., United Kingdom and Japan, October 18, 2006
米国従業員福利厚生研究所(EBRI) FACTS レポート「米国における401(k)プランの歴史」

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