産業医等について
労働者の健康診断の実施、労働者の健康障害の原因の調査と再発防止のための対策の樹立等労働者の健康管理を効果的に行うためには、医師の医学的活動が不可欠なことから、一定規模以上の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について一定の要件を備えた医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等の事項を行わせなければならない。
1 | .産業医の要件
次のいずれかに該当する医師とする。
(1 | )厚生労働大臣の定める研修(日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学の産業医学基本講座)の修了者 |
(2 | )労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分の合格者 |
(3 | )大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授、常勤講師の経験のある者 |
(4 | )産業医として3年以上経験のある者(平成10年9月末時点) |
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2 | .産業医の選任
(1 | )労働者数50人以上3,000人以下の規模の事業場
産業医1名選任 |
(2 | )労働者数3,001人以上の規模の事業場
産業医2名選任 |
また、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場と、一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。
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3 | .産業医の職務
(1 | )健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。(事業者は、健康診断結果に基づく労働者の健康を保持するための措置について、産業医の意見を聴かなければならないこととされている。) |
(2 | )作業環境の維持管理、作業の管理、労働者の健康管理、労働衛生教育に関すること。 |
(3 | )健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。 |
(4 | )労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。 |
(5 | )上記に掲げる事項について、事業者又は、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。 |
(6 | )少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状況に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者に健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 |
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参照条文
労働安全衛生法(昭和四十七年六月八日法律第五十七号)
(産業医等)
第 | 十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。 |
2 | 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。 |
3 | 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。 |
4 | 事業者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。 |
(保健指導等)
第 | 六十六条の七 事業者は、第六十六条第一項の規定による健康診断若しくは当該健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。 |
2 | 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。 |
(健康教育等)
第 | 六十九条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。 |
2 | 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。 |
労働安全衛生法施行令(昭和四十七年八月十九日政令第三百十八号)
(産業医を選任すべき事業場)
第 | 五条 法第十三条第一項 の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。 |
労働安全衛生規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十二号)
(産業医の選任)
第 | 十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行なわなければならない。
一 | 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。 |
二 | 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。
イ | 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 |
ロ | 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 |
ハ | ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務 |
ニ | 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務 |
ホ | 異常気圧下における業務 |
ヘ | さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務 |
ト | 重量物の取扱い等重激な業務 |
チ | ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 |
リ | 坑内における業務 |
ヌ | 深夜業を含む業務 |
ル | 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務 |
ヲ | 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務 |
ワ | 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務 |
カ | その他厚生労働大臣が定める業務 |
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三 | 常時三千人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、二人以上の産業医を選任すること。 |
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2 | 第二条第二項の規定は、産業医について準用する。ただし、学校保健法 (昭和三十三年法律第五十六号)第十六条 の規定により任命し、又は委嘱された学校医で、当該学校において産業医の職務を行うこととされたものについては、この限りでない。 |
3 | 第八条の規定は、産業医について準用する。この場合において、同条中「前条第一項」とあるのは、「第十三条第一項」と読み替えるものとする。 |
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第 | 十四条 法第十三条第一項 の厚生労働省令で定める事項は、次の事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
一 | 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。 |
二 | 作業環境の維持管理に関すること。 |
三 | 作業の管理に関すること。 |
四 | 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。 |
五 | 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。 |
六 | 衛生教育に関すること。 |
七 | 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。 |
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2 | 法第十三条第二項 の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一 | 法第十三条第一項 に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した者 |
二 | 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの |
三 | 学校教育法 による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者 |
四 | 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者 |
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3 | 産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。 |
4 | 事業者は、産業医が法第十三条第三項 の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。 |
5 | 事業者は、令第二十二条第三項 の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については、第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。 |
6 | 前項の事業場の労働者に対して法第六十六条第三項 の健康診断を行なつた歯科医師は、当該事業場の事業者又は総括安全衛生管理者に対し、当該労働者の健康障害(歯又はその支持組織に関するものに限る。)を防止するため必要な事項を勧告することができる。 |
(産業医の定期巡視及び権限の付与)
第 | 十五条 産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 |
2 | 事業者は、産業医に対し、前条第一項に規定する事項をなし得る権限を与えなければならない。 |