06/10/30 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」 第7回議事録 06/10/30 厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」 第8回議事録 第7回科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」    第8回厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」            議  事  録 日時:平成18年10月30日(月)15:00〜17:00 場所:厚生労働省5階共用第7会議室 議事: 1.開会 ○笹月座長  まだおそろいではありませんけれども、時間になりましたのでただ今から第8回の「ヒ ト胚研究に関する専門委員会」および第7回の「生殖補助医療研究専門委員会」を開きま す。  それではまず事務局から委員の出席状況と配布資料についてご説明をお願いいたしま す。 ○齋藤課長補佐  それでは事務局から委員の出席の状況と資料の確認をさせていただきます。  本日は中辻委員、町野委員、秦委員がご欠席で15人の委員が出席でございます。次 にお手元にお配りしました資料につきまして順番に確認をさせていただきます。  まず1枚紙の座席表、次にクリップ留めで綴っております資料一式の1枚目に議事次 第、それから資料の一覧表、配布資料をおつけしています。これに沿ってご確認をいた だけますでしょうか。  まず資料1です。こちらは横置きのパワーポイント資料で「採卵を受けることはどの くらい負担になりどのようなリスクを伴うのか」ということで、石原委員からご提供い ただいている資料です。  資料2は縦置きで、検討事項(たたき台)という資料です。こちらの資料2は前回の委 員会での検討結果を踏まえて整理したものです。この資料2は、前もって委員の皆様に お送りをしたものと同様のものです。また、この資料2には、前回議論となりました遺 伝的改変を伴う操作を禁止事項とするかどうかという論点につきまして議論がしやすい ように、どのような操作が考えられるのかをまとめた資料を添付しております。これに つきましては、後ほど議論の際に詳しくご説明をいたします。  次に横置きの資料3です。検討のためのたたき台(2−3・ヒト受精胚の作成・利用の ための配偶子・ヒト受精胚の入手方法について)という資料で、これは今回の議論の元に なる論点を整理した資料でございまして、後ほど詳細をご説明いたします。  その他、今回、参考資料といたしまして、参考1と2にそれぞれ委員の名簿をお付け しています。また、参考3としまして、現段階ではまだ案の段階ですけれども、前回の 委員会の議事録をご参考までにお付けしています。また、参考4−(1)と参考4−(2)とい う横置きの資料がありますが、こちらは前回の委員会の資料に使用しました検討のため のたたき台です。以上です。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。 2.議事 (1)ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討   について    (1) 前回委員会での決定事項の確認 ○笹月座長  それでは議事に入りたいと思います。本日の議事はこの議事次第にありますように、 ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討について ということですが、まず前回の委員会で決定したこと、そして最終的に決定できずにさ らに検討が必要であるということを資料2にまとめていただいております。●の項目が 前回決定したこと、○の項目はなお検討が必要であることです。まず、前回のこれらの ことにつきまして整理をしたいと思いますので、事務局から説明をお願いします。 ○長野対策官  それでは資料2に基づきましてご説明申し上げます。今、笹月座長がおっしゃいまし たように●は整理された事項、○は今後整理が必要な事項としてまとめさせていただい ております。太枠で囲んだところが前回の委員会で議論した範囲ということで書かせて いただいております。  最初に1ページの「1総論的事項」です。この中で、「1.指針(ガイドライン)に定める 内容のあり方」「(1)何を規定することとするか」、「(2)国の関与のあり方について」 については、後ほど議論することになっております。それから、「2.規制対象の範囲」 は前回ご議論いただいたところですけれども、「議論は、はじめにヒト受精胚の作成・利 用について議論して、その後配偶子のみ取り扱う研究について議論する」を留意事項とし て挙げさせていただいております。「(1)ヒト受精胚の作成・利用について」ですが、 前回の議論で整理されたこととしまして、最初に、受精胚は、総合科学技術会議の意見 において、「人」そのものではないとしても「人の生命の萌芽」として位置付け、特に尊重 されるべきものであるとの考え方が示されていることから、ヒト受精胚を取り扱う研究 について規制が必要である。こういった前提の中で、胚の胎内への移植を行うもの、こ れには移植を前提に行うが、有効性や安全性を検討の上、結果的に移植をしない場合も あるというものですが、これは「医療」であると考え、本ガイドラインで検討する範囲外 とする。これについては、今後厚生労働省において、規制のあり方などについて必要に 応じて検討を行うこととなったということです。  2ページ目をご覧ください。続きまして、そのヒト受精胚の作成・利用に必要である ヒト卵子についても、同様に総合科学技術会議の意見において、採取に伴う肉体的侵襲 や精神的負担、人間の道具化・手段化といった懸念があるといったことがありますので、 それにかんがみて入手制限や提供女性保護のための枠組みの整備が必要であるという認 識を示しております。  次に、ヒト卵子のみを取り扱う研究について、ヒト精子のみを取り扱う研究について です。これについてはご議論がございましたけれども、まずはヒト受精胚の作成・利用 に関する議論を行ってから議論するということで、整理させていただきました。  次に、これは前回、ご議論まで至っておりませんが、(4)生殖補助医療研究の性質 について、胚・配偶者の提供者が過去の生殖補助医療研究の成果による恩恵を受けてい る受益者であるという点を、規制のあり方を考えるに当たって考慮することが必要であ ると考えてよいかということが、一つの問題提起としてございます。  最後に、指針(ガイドライン)の実効性の確保については、前回ご議論いただいており ませんでした。  次に、3ページ目の各論です。各論の中で、まずはヒト受精胚の作成・利用における 研究についてご議論いただいておりますが、その研究の目的についてです。(1)認め られる研究の範囲の一つ目は定義についてです。本ガイドラインの対象とする生殖補助 医療研究とは、当面のところ「作成・利用した胚を胎内に戻さないことを前提として行わ れる生殖補助医療の向上に資する研究」と定義するということで、当面はこのような定義 で議論をスタートしましょうというご決定があったと思います。この定義については、 各論の検討を終えた後にもう一度検討しなおすということになっていたと承知しており ます。その際、幾つかご意見がございましたけれども、上記の定義を再度検討する際に は、整理が必要な点としまして、例えば、研究当初から生殖補助医療の向上を目的とせ ずに行ったものの、結果として研究成果が生殖補助医療に効果があるようなものを、「生 殖補助医療の向上に資する」と併せて整理することでよいのかどうか。あるいは、得られ るであろう研究成果が将来的に生殖補助医療への波及が見込まれるものも同様に考えて よいのかどうかといったことについて、整理が必要なのではないかということでここに まとめさせていただきました。  それから次の太枠ですが、これについてもある程度ご意見がまとまったかと思ってお りますが、研究の範囲については、受精メカニズムに関する研究、2番目として胚発生・ 胚発育に関する研究、これには遺伝的異常発生機序解明に関する研究も含めるというこ とで、ご意見がまとまったと思っております。  3番目として、着床のメカニズムに関する研究、4番目として、配偶子・胚の保存に 関する研究です。この場合、ここでは胚の作成・利用ということでまとめさせていただ いておりますので、配偶子の保存に関する研究についても新たに胚を作成することまで を一連のプロセスと考える研究ということで、ここの項目については考えるということ です。  ここまでがご意見をまとめていただいたところですが、この際、事務局としましては、 ガイドラインの実際の運用を考えたときに、例えばその研究の目的を規定する必要性と いうことを考慮しますと、以下の4つのポツに書いてありますけれども、個別の研究項 目について具体的に目的を示すという観点で書き換えると、こういう整理の仕方があり 得るのかどうか。また、そうではなくて、個別にはそれぞれ目的を書かずに、全体とし て目的を規定するという方法もあり得るかと思っております。  次に太枠の外です。検査について、新規性のある検査でその技術向上のために胚作成 をする場合というのは、研究の一部であってガイドラインの対象となるとも考えられま すが、新規性のない検査目的で胚を作成する場合は、研究であるとは考えにくいもので すから、胚を胎内に戻さないものであってもガイドラインの対象とするのか、あるいは しないのかといったことで整理をいただければと思っております。  もう一点については、生物学的な発生の比較ということでヒト胚の作成・利用を行う といった研究は、その研究の目的というのが単純に生物学的な発生の比較を行うといっ たことであればヒト受精胚の作成・利用の目的として認めず、ガイドラインの対象とし ないとしてよいかどうかということです。以上が研究の目的・範囲についての整理事項 です。  次に4ページ目です。2.ヒト受精胚の作成・利用における禁止事項の一つ目として、 研究のため作成した胚の取扱いですが、ここの太枠にかかれたことが、前回の委員会で 意見をまとめられたものと思っております。  1番目として、作成・利用した胚の胎内(人・動物)への移殖については行わないこと とする。2番目として、胚の取扱い期間については、受精後14日以内とし、14日以 内であっても原始線条が形成された場合には利用しないこととする。また、作成・利用 した胚については凍結を認めることとする。この凍結については目的を限定する必要は ないとしていいかどうかということを、念のため確認していただきたいと思います。そ れから、胚を凍結する場合には、その凍結期間については胚の取扱い期間に算入しない こととする。以上が前回の委員会でご意見をまとめられたものと承知しております。  それから、(2)胚・配偶子に加えてはならない操作ですが、ここにつきましては様々 なご意見があったと記憶しておりますが、それについて整理させていただきましたとこ ろ、まず、遺伝子治療臨床研究ということを考えましたときに、「遺伝子治療臨床研究に 関する指針」の施行通知に示された考え方を見てみますと、胚への遺伝的改変のおそれの ある操作については、現時点では個体に与える影響について科学的に未解明の部分が多 いこと、導入された遺伝子が次世代に受け継がれる可能性が高く、その影響が被験者だ けにとどまらない恐れが大きいこと等から慎重な取扱いが必要である。このことからそ の実施は行ってはならないこととされております。すなわち、遺伝子治療を目的とする 遺伝的改変を伴う操作は医療において安全面のみならず倫理的な観点からも認められな いと読み取れます。そういうことから基礎的研究においても、同様に遺伝子治療を目的 とする操作の場合には科学的合理性および社会的妥当性が認められないのではないかと 考えられます。  こういった背景がある中で、ほかの目的またはプロセスとしまして、遺伝的改変の恐 れがある操作についてどのように考えるかということで、今回整理させていただきまし た。7ページの添付資料に、考えられる範囲への遺伝的改変を伴う操作を整理させていた だきました。  上の方の囲いにあります、(1)核に含まれる遺伝情報の改変に伴う操作ですが、一 つ目が先ほど申し上げました遺伝子治療を目的とするような研究、考え方としてはこう いったものは行ってはならないということでよろしいでしょうかと、一番右側の欄が考 え方の案になっています。それから2番目としまして、遺伝子操作を行うのですが、遺 伝子治療を目的とせず、遺伝子治療と同様の手法を用いて研究を行い、その技術そのも のではなくて研究の結果得られた知見、例えば受精にかかわる新たな因子の特定などと いった知見を将来の生殖補助医療に応用するための研究。こういったものが考えられま すが、こういったものについては胚そのものへの受け継がれる影響というものはありま すけれども、その科学的合理性と社会的妥当性を十分に検討を行った上で実施すること を認めるということでよろしいかどうかというようにまとめさせていただいております。  核そのものへの遺伝情報の改変というのは伴わないのですが、それ以外に影響があり 得るものとして3つ挙げております。1つ目として、核置換です。卵子の核を取り除い て、他の卵子の核を移植する方法、これについて、核については影響はないかと思いま すけれども、ミトコンドリアについてはあり得るということです。2つ目に、細胞質置 換です。卵子の細胞質の一部を取り出して、他の卵子に注入する方法です。これについ ても同様の影響が考えられます。それから、細胞質内に個別の遺伝子を導入して、特定 のタンパク質を生成させるもの。これはミトコンドリアではなく細胞質の中の方に特定 のタンパク質を生成させるような遺伝子を導入するものということで、これについても 遺伝子治療と同様の手法を用いて研究を行うけれども、その技術そのものではなくて得 られた成果・知見を将来の生殖補助医療に応用するための研究として位置付けておりま す。これについては、核についてもミトコンドリアについても影響はないものと考えら れますけれども、3つ例としてあげておりますが、こういったものについては考え方と しまして、それぞれ個別に科学的合理性と社会的妥当性を十分に検討を行った上で実施 するということを認めることとしてよいかということでまとめさせていただいておりま す。  4ページに戻りまして、こういった整理が可能であれば4ページの下にあります核に 含まれる遺伝情報の改変を伴う操作について、それから、細胞核に含まれる遺伝情報の 改変を伴わない操作について、それぞれ禁止事項とするのではなくて、個別に科学的合 理性と社会的妥当性を検討したうえで実施をすることを認めることとしてよろしいです かというようにまとめさせていただいております。  最後に5ページ目ですが、もう一つあり得る操作としまして、胚への紫外線等の照射 のような物理的な操作ですとか、培養液のpH変化等をさせるなどの化学的な操作につ いては、遺伝的改変の恐れというのはあり得ますが、生殖補助医療の向上を目的とする 研究であってその研究の実施にあたって当該操作が必要不可欠な場合に限り、その科学 的合理性と社会的妥当性を検討を行った上で実施し、禁止事項とまではしないこととし てよろしいかどうかということで挙げさせていただいております。ここまでが前回の委 員会でご議論いただいたことで、それ以降については今後ご議論いただくと承知してお ります。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。今、ご説明いただきましたように、資料2の四角で 囲んだところが前回議論したものでありますので、本日はこの四角で囲んだところの● についてはこれでよろしいかどうか、○については今日結論を出せれば出すということ で、一つ一つ検討していきたいと思います。全体としてただ今のご説明に対しまして、 何かご質問があればいただき、なければ一つずつ検討していきたいと思います。ご質問 はございますか。  それでは一つずつ検討していきたいと思います。まず、1ページの2.規制対象の範 囲の(1)ヒト受精胚の作成・利用についてです。先ほど読んでいただきましたので繰 り返しませんけれども、3つの項目について総論的なバックグラウンド、考え方を確認 するということですが、これでよろしいでしょうか。 ○鈴木委員  この資料をいただいたのが木曜日でしたので、自分でも十分に読み込めているとはい えないのですけれども、2つ目の●の部分に関して幾つか疑問があります。胚の胎内へ の移植を伴うもの(移植を前提に行うが、有効性や安全性を議論のうえ、結果的に移植を しない場合もある)は、「医療」であると考えと書いてあるのですけれども、これはつまり 移植を行うものは「医療」であるという言い方になっているのですね。 ○笹月座長  はい。 ○鈴木委員  議論の中でも何をもって「医療」とするか、「研究」と「医療」の境をどうするのかという 議論がずいぶんあったと思うのですが、少なくとも人を対象に何かをする場合は、普通、 基礎研究というカテゴリーがあって人を対象に何かをする場合には臨床研究あるいは一 般的な医療という段階があるのではないかと思うので、この文脈ですと移植を行うので あれば「医療」という言い方は乱暴すぎるのではないかと、個人的には考えております。 ○笹月座長  もう一度言ってください。 ○鈴木委員  胎内に胚を戻すのであれば「医療」だという言い方は、本会議で検討することの範囲外 であるということは理解しているのですが、「医療」だという言い方はいかがなものかと 考えます。 ○笹月座長  わかりました。その時点でも臨床研究と呼ぶべき段階があるだろうということですね。 それはそうだろうと思いますけれども、今回はとにかく胎内に戻すものはあえて医療と いわずに対象外ですと。 ○鈴木委員  そういう言い方でも良いのではないかと考えます。 ○笹月座長  それはそうだと思います。ここで医療を提示する必要はないと思います。 ○鈴木委員  それから、同じ項目についてお願いが可能であれば、子宮に戻すものの範囲について 必要に応じて検討を行うと書いてあるのですが、この必要に応じてというのが非常にあ いまいで、誰が必要と感じたときなのかというように、このようなあいまいな言い方で はない表現を希望します。 ○笹月座長  これは今後厚生労働省において規制のあり方等について検討を行う。 ○鈴木委員  行うことを私としては希望しますけれども、そこまで規定していいのかどうかわかり ませんが。 ○笹月座長  この2行はあえてここに書く必要もないですね。 ○位田委員  私は前回欠席しましたので、既にご議論が終わっているのであれば無視していただい て結構なのですが。そこのところで結果的に移植をしない場合もあるということですと、 その場合は医療であると考えてこのガイドラインの範囲外であるとすると、その範囲外 の部分はどうやって規制するのか。この点が前提にならないと、結果的に移植しません でしたという形でこのガイドラインからも外れて、しかし現実には研究が行われるとい うケースもあり得るのではないか。そこをどうするか。恐らく鈴木委員がおっしゃった のもそこと関連していると思うのですけれども、片方ではガイドラインができて、もう 片方の医療の方ではガイドラインができないままであるとすると問題が残るという気が します。 ○笹月座長  それは、最初から私もくどいくらい申してきたことでありまして、ここでは胎内へ戻 すところは範囲外なので触れませんということでいいと思うのですが、では、その戻す ところは誰がどのようなルールで決めるのか、審査するのかということがなければ、生 殖補助医療研究というものがつながらないわけですから、あり得ないということになり ますので、それは別途検討するということで、そのことについて誰がどのように行うべ きかということは我々がここで言う必要はないのでしょうから、別途検討するというぐ らいのことでいかがでしょうか。どういうような文言がいいかはご意見があればお聞か せいただきたい。 ○石原委員  今のお話をもう少し明確にすると、胚の胎内への移植を目的に行う行為は本ガイドラ インで検討する範囲外とするというようにした方が明確になると思います。結果として、 目的としていてもうまくいかない場合もあるということはそれで含まれるので、そうす るとこの括弧内は不要になると思います。 ○笹月座長  しかし、後で移植しないということがわかるわけですから、初めから申請はしないこ とですので、それは時間的に矛盾が出てくると思います。初めから移植しないというこ とがわかっていればこのガイドラインに申請して審査してもらわなければいけませんけ れども、移植すると思ってやったことに関しては医療行為としてやるのですから、申請 はしないわけです。 ○石原委員  それでいいと思うのですが、これは括弧がたくさんついていて非常にわかりにくい文 章なので、もっと簡単に括弧がない方がいいと思ったわけです。 ○笹月座長  文言は実際にガイドラインを作るときに修文していただくということで、今回は中身 についてご意見をいただくということでよろしいでしょうか。位田委員がおっしゃった 戻すところはどうするのか。これはどこかでぜひやってもらわなくてはいけないという ことです。この3つの●についてはよろしいでしょうか。  それでは、次のヒト卵子のみを取り扱う研究について、これについてご意見はござい ますか。次の(3)ヒト精子のみを取り扱う研究についても同じセンスでお考えいただ ければと思います。この2つについてどなたかご意見がございますか。いわゆる文言通 りにヒト胚の作成・その取扱いというところだけに絞るというと、これまでにも何度か 議論がありましたように配偶子だけを用いた研究というものまでには踏み込まなくても いいのではないかというご意見もありましたけれども、一方では生殖補助医療に資する 研究ということになると、やはり精子だけを用いたもの・卵子だけを用いた研究という ものが当然行われなければ生殖補助医療に資する研究とはならないと思いますので、そ こは縛りをかけることがあれば縛りをかけるということが必要かと思いまして、このよ うな文面になっています。 ○加藤委員  ここで取り扱うのは受精してから14日以内の胚であるという意味でしたね。 ○笹月座長  はい、そうです。 ○加藤委員  そうするとこの卵子のみとか精子のみというのは受精してから14日以内のものとい うのには入らないですね。 ○笹月座長  その14日以内というのは、受精後の胚としての14日以内です。その前の配偶子と しての取扱いをどうするか。入手方法とそれにかかわる研究について縛りをかけるので あれば、このガイドラインでどう縛りをかけるのかというのがテーマです。後の禁止事 項にも出てきますけれども、例えば遺伝子操作をするというようなことは配偶子を対象 とした遺伝子操作もあるのかもしれませんけれども、いえ、配偶子ではなくて、むしろ 胚を対象とした遺伝子操作というのもあるのかもしれない。 ○加藤委員  その受精卵を作る前提となる配偶子について、規制対象とするかどうかということで すね。 ○笹月座長  はい、そうです。   ○奥山委員  精子に関しましては基本的には比較的非侵襲的に取れまして、場合によっては研究者 や科学者の自分のものを使って、いろいろな精子の機能とかを調べますが、遺伝子的な 解析は現実にはまだ技術的にも困難でして、いわゆる受精機能のレベルで取り扱うとい うことで、ぞんざいな取扱いは避けるというぐらいで私はいいと考えております。縛り をあまり入れなくてもいいのではないかと思っております。 ○笹月座長  規制の対象として、例えば遺伝子操作を認めるのかどうかというようなことも後で問 題になりますが、いずれにしましてもここでは各項目の議論というよりもそれを対象と するかどうかという議論だと思います。この(2)(3)はよろしいですか。もし問題が ありましたら、また後でどうぞご意見をお聞かせください。  次の3ページのヒト受精胚の作成・利用における研究の目的について、認められる研 究の範囲ということが前回に限らずこれまでも議論が大変集中したところでありますが、 とにかく胚を胎内に戻さないことを前提として行われる生殖補助医療の向上に資する研 究ということで、まず、大きく枠としてくくって、そしてその次のところにその研究の 範囲というのが幾つか例示がありますが、最初のくくりのところで。 ○安達委員  細かいことですが、「胎内に戻さないことを前提として行われる」は「研究」にかかる言 葉だと思うので、ここに「、」を入れればよいのではないかと思います。 ○笹月座長  生殖補助医療にかかると見えるということですね。わかりました。生殖補助医療にか かるのではなく、研究にかかるということを明らかにするということですが、よろしい ですか。  その次の枠外のところに、これは漠とした議論になりますけれども、生殖補助医療の 向上を目的とせずに行ったけれども、結果的に資することになったということですが、 これは最初の定義で生殖補助医療の向上を目的とせずに行うものはだめですということ に当然なると思いますし、その後の将来的に波及が見込まれる生殖補助医療の向上に資 するというのは、即、向上に資する研究というものはそんなにありませんので、将来、 生殖補助医療に資することを目指した研究ということですから、後段のところはこれで よろしいかと思いますが、上のところは目的としないというのであれば初めから論外で あるという理解でよろしいですか。それではこれもそのように整理させていただきます。  次の枠の中の研究の範囲については、これは前回出た文言ですが、受精メカニズムに 関する研究、胚発生・胚発育に関する研究、着床のメカニズムに関する研究、配偶子・ 胚の保存に関する研究、この4つの研究の成果をもって生殖補助医療に資することがで きるだろうということで、このように課題としてあげましたけれども、前回はこれでい いのではないかということになりましたが、前回ご欠席の方もいらっしゃいますし、何 か追加した方が良いというようなことがあればお聞かせください。  その次の○を少し具体化したということで4つ書いていただいておりますが、これは いかがでしょうか。 ○位田委員  もうご議論なさったことかもしれませんけれども、例えば受精のメカニズムの研究の 範囲について、生殖補助医療を目的とするという大きな枠はかかっているわけですね。 ○笹月座長  頭に全部に付きます。 ○位田委員  そうですね。その確認です。そうでなければ生物学の研究としてということがあり得 るかと思いましたので。 ○笹月座長  ですから、頭に生殖補助医療に資するあるいは技術の向上を目的としたとあり、そう いう意味では下の欄に書いてあります4つ、「これこれの向上を目指した」、そして上に 戻って受精メカニズムに関する研究ということにすれば、より良く明確になると思いま すので、一応これこれの向上を目指した受精メカニズム、2番目は少し難しいのですが、 つもりとしては、支援を目指した正常な胚発育・胚発生に関する研究、後の2つは向上 を目指したという言葉がありますからそのまま使えば、向上を目指した着床のメカニズ ム、向上を目指した配偶子・胚の保存に関する研究ということでご理解いただけるかと 思います。これも細かな修文は実際に文章化するときにお願いするとして、このような ことでよろしいですか。  その枠の下に、新規性のない検査目的で胚を作成する場合、例えば受精能力の検査目 的で第三者間で胚を作成する等であっても、生殖補助医療の対象としてこのガイドライ ンの対象とするのかどうか。この新規性のない検査目的での受精能力の検査、これはど なたか具体的に産科・婦人科の方でご説明いただけますか。吉村委員、何か具体例を提 示していただけるとありがたいです。 ○吉村委員  ちょっと私はわからないです。ハムスターテストといったことをいっているのか、こ れが具体的にどういうものを示すのか私にはわかりません。 ○笹月座長  石原委員はいかがですか。 ○石原委員  これは恐らく例えば、未熟卵子とか未熟精子を体外成熟して、十分成熟しているとい うことを機能的に確認するために受精をするかしないかを見ないとわからないというよ うなことを想定しているのではないかと思います。新規性のないという意味がよくわか らないのですが、受精能があるかないかを確認する目的で胚を作成すると書いてあれば もっと理解しやすいのですが。 ○笹月座長  そのときは、卵はその人由来の当事者の卵だけれども、精子は第三者の。 ○石原委員  正常精子です。あるいは逆の場合もあります。 ○笹月座長  なるほど、その組み合わせを変えて受精能力をまず検査するということですね。それ は普通に行われていることですか。 ○石原委員  行われていないです。 ○小幡委員  それは究極的には受精率の向上を目的としたという研究に入るような感じがします。 ○石原委員  そうです。 ○笹月座長  ここであえて新規性がないと書かれたのは、何か現実に生殖補助医療を行う場合に検 査のために受精胚を作成するというようなことが行われているということで、こういう 言葉が出てきたのかと理解していたのですが、そういう検査は何も行われていないとい うことですか。 ○長野対策官  ここであえて新規性のないと書かせていただいたのは、新規性があるような検査の場 合はその検査技術を向上させるということで研究的要素があるので研究の一環になるで しょうが、新規性のないような、研究要素がないような検査で、もしもこういった胚を 作成するようなものがあるのであれば、そういった場合はどうでしょうかということで す。もし、それが全く想定されないのであれば、そもそもご検討いただく必要はないか もしれません。 ○笹月座長  今のでよろしいですか。 ○吉村委員  あまり必要ないです。 ○笹月座長  あえてこういうことが出てくる必要はないですか。 ○加藤委員  新規性のない研究というのは認めないのでしょう。 ○吉村委員  小幡委員がおっしゃったように、それは受精メカニズムの研究になるので、それはそ れでいいと思います。 ○笹月座長  現実に生殖補助医療の一環として、ルーチンの検査としてこういうことが行われてい るということはないわけですね。それではこれは必要ないですね。 ○位田委員  読んでいて少しわからなかったのですが、新規性のない検査をするという目的なので すね。新規性のない目的で胚を作成するという場合はどうなのでしょうか。つまりこの 新規性のないというのがどこにかかるのかよくわからない。 ○笹月座長  これは新規性のない「検査」です。 ○位田委員  検査ですね。それは今おっしゃったことで話はついたのですが、生殖補助医療のため の研究だとしても、ありふれた結果がよくわかっているような研究である、したがって 新規性のない研究というのはあり得るのでしょうか。 ○笹月座長  それは、新規性がなければ我々は研究とは称さないので。 ○位田委員  仮にそれは研究だといわれて研究結果が出てきても、それは認めないという主旨でよ ろしいですか。 ○笹月座長  それは研究ではないということです。 ○位田委員  わかりました。 ○木下委員  この生殖補助医療研究と一緒にガイドラインの対象としなかった場合には、全て禁止 ということになってしまうのですか。このガイドラインに入るということは逆に認めら れる研究の範囲ですから、あってもいいということですか。 ○笹月座長  そうです。 ○木下委員  そうすると、現状ではそういう研究はないのですけれども、これから石原委員が言っ たようなことの方向性は当然あるわけで将来はわからないので、特に胚ではないのです からそういうものを幅広く入れておいてもらった方が安心かという気がしますが、いか がですか。 ○笹月座長  それは入るわけです。この文章をなくしたのは、新規性のない検査というのが現実に は行われていないので、こういう文章はやめましょうということです。 ○木下委員  では、少なくとも広く研究なら入るということですね。 ○笹月座長  はい、入るということです。 ○木下委員  わかりました。 ○笹月座長  その次の○の単純に生物学的な発生の比較を行うといった研究はヒト受精胚の作成・ 利用の目的として認めない。これは前回も認めないということでしたので、ここでは新 たに確認ということで出てきたのですが、それでよろしいですか。今日は中辻委員がお られませんが、これは認めないということでよろしいですね。  それでは、次の4ページです。ヒト受精胚の作成・利用における禁止事項について、 研究のため作成した胚の取扱い、胎内への移植、培養期間に関して、胎内への移植は行 わない、取扱い期間は受精後14日以内であっても原始線条が形成された場合にはそこ で終わりである。それから作成・利用した胚については凍結を認める。次は○になって いますが、凍結については目的を限定する必要はないとしてよいかどうか。それから、 胚を凍結する場合には、その凍結期間については胚の取扱い期間に算入しないというこ とでいいと思いますが、この○はいかがですか。 ○鈴木委員  ○について直接というわけではないのですが、これを読んでいて少し気になったこと は、例えばこれ以外に研究目的で作成した胚を他の研究者に譲渡してよいのかとか、売 買も含めてですが、そういったことも検討項目に入れた方が良いかと思いました。まし てや凍結を認めることとなると、途中まで使うつもりでとか、凍結しておいて結局研究 計画が中止になってどうしようかということも起こり得るのではないかと思いました。 もう一つは、作成した胚を着床前診断のときのようにばらばらにしてそれぞれ何かに使 うということもあり得るのか。また、今の細胞バンクというような考え方も胚に適用さ れるのかなどの話も見据えたうえで考えておいた方が良いのではという気もしました。 ○笹月座長  作成・利用した胚の凍結は認めるけれども、目的は当然生殖補助医療研究に資すると いうことですが。 ○加藤委員  これは研究の継続を目的として凍結するわけですね。 ○笹月座長  そうです。 ○加藤委員  凍結することによって別途の目的に使うということになれば、別に改めて認可が必要 になります。 ○笹月座長  そうですね。ですから、凍結された胚の入手、一つのソースとして考えればいい。 ○加藤委員  今回の場合にはきちんと終わって廃棄したというところまで見極めるわけで、途中で 凍結して全く別の研究を始めるというようなことは本来認められないわけです。 ○笹月座長  そうです。ただ、凍結された胚が生殖補助医療に資する研究を目的として、凍結され た胚を第三者が使いたいといったときに、新たにそういう申請をすれば認められるのか どうかということがテーマになると思います。それはいかがでしょう。 ○石原委員  合理性があれば道は残しておいた方がよろしいと思います。 ○笹月座長  そうですね。 ○石原委員  合理性があるかどうかの判断が難しいと思います。 ○位田委員  凍結をする理由は、当然その研究を継続する、ということですか。 ○笹月座長  あるいは余剰胚というか、研究のために作ったけれども余剰になったという胚です。 ○位田委員  研究上、余剰になった胚ということですね。それもお尋ねしようと思っていたのです が、つまり、胚を作成する研究をして胚ができると一旦研究の目的は終わるわけですか ら、その研究後の取扱いはどうするかということをどこかで決める必要があるのではな いかと思います。それは凍結していいのか、もしくは廃棄しないといけないのか。もし、 凍結すると、一旦作成した胚を凍結するということは当然その後にまた利用するという 意味で、研究に利用し、研究以外には利用できないですね。 ○笹月座長  はい。 ○位田委員  それは一連の研究であって、その研究の続きとして利用する場合には新たに研究計画 を出す必要はないけれども、作成されたものがあって、それを別の研究に利用する場合 にはそれは可能であると考えるのでしょうか。 ○笹月座長  そこが問題ですね。研究上の余剰胚を凍結して、それを第三者が使いたいといったと きには、新たにその第三者が受精胚を作るよりもその余剰胚を使ったほうがいいのでは ないかという考え方は当然あり得ます。 ○位田委員  あり得ると思います。それが、合理的な理由があればという話なのだと思うのですけ れども。 ○石原委員  現実問題として想定されるのは、一つにはその時点では十分に開発されていない技術 や方法論が凍結されている期間に開発されて、少し違うことができるようになるという 可能性と、もう一つはその場所ではできないことがある別の場所では既にできるので、 そこに移して研究を継続することが合理的であるという二つの場合が一番容易に想像さ れることだと思います。 ○小幡委員  研究は研究なのですけれども、先ほど研究のカテゴリーが4つありました。その一つ 一つについてインフォームド・コンセントのとり方とか全て絡んでくるのかもしれませ んが、つまり、どこまで特定した形でとっておくかということと絡むと思うのですが、 およそ生殖補助医療研究に使うといってとっておいて、例えば受精率向上を目的とした 研究にとりあえず使っていて、当初から凍結するということもインフォームド・コンセ ントに入れておいて、例えば似たような胚の着床率向上などのそのほかのことに使うと いうことを初めから前提としておくとり方にしておくかどうかということかと思います。 そうであればその範囲内であっても、もちろん研究者も変わるわけですし、もう一度適 切な研究であるかどうかということは審査しないといけないと思いますけれども、イン フォームド・コンセントのとり方との関係ではないかと思います。 ○位田委員  その同意の取り方の点ですが、保存をするということについても同意を取っておかな いといけないと思います。そこからまた次の問題となると思います。 ○笹月座長  そうですね。第三者に移譲し、生殖補助医療研究の範囲内ではあるけれども、別の課 題で利用されるということまでいっておかないといけませんね。本当に皆さんに利用し てもらうとすれば。 ○吉村委員  この○につきましては、二つのことを考えていかなくてはいけないと思います。受精 メカニズムの研究で胚を作り、それを凍結します。凍結に耐えられる胚であるかという 凍結の操作そのものの効果を見るためにも必要な研究も当然あると思うのです。凍結に 耐えられる胚を作ることができるのか。そしてその胚が余剰胚となって、一般に行われ ている体外受精の余剰胚と同じように胚が新たな研究に使われる場合があります。この 二つがありますので、新たな研究を行う際には改めてその研究の申請を行うべきである というように決めていけばよろしいのではないでしょうか。前の前段は胚の凍結の研究 で済むのではないかと感じます。 ○木下委員  本来リサーチの時には、フレッシュの胚そのもので研究などできるはずはなくて、ま ず凍結という操作をしなければきちんとした再現性のあるデータを出すことは難しいと 思うのです。凍結は研究上の当たり前の処置だと思うのです。一度使った胚を再び使う ということはあり得ないので、常に新しいものを使うことになると思います。凍結して 一つの研究のシリーズが終わったときに、また新しい研究を行うということは、当然余 剰胚を使って行われますが、そのときにはまず行ってもよい研究の枠がありますから、 その枠の中でやる研究であればどのような胚を使おうと、そこで縛りがかかっているわ けですから、新たにする必要はないのではないでしょうか。 ○笹月座長  新たにというのは、どういうことですか。 ○木下委員  つまり第三者に渡したとしましても、そこでの研究は、あくまでも認められた研究の 枠の中でしかできないわけです。第三者に渡せないですが幅広くリサーチがあちらこち らでできることになりますので、凍結胚を第三者が再び使おうと、研究の内容はあくま でも許された研究の枠内で行うこととなりますので、当然凍結したものを使ってもいい ということになるのではないでしょうか。つまり、あまり難しい規制をかける必要はな いと思います。 ○笹月座長  ただ、それが利用される胚の立場に立つとそうなのですが、それを研究を行う側から 見ればやはり新たな研究を行うわけですから、きちんと申請して、その胚はどこから入 手してどういうものかということはきちんとしなくてはいけないと思います。 ○木下委員  それは当然なのです。少なくとも正規の手続きをする必要はあります。しかし、研究 内容に関しては、ここに書いてあるようなレベルで行う限り規制する必要はないと思い ます。 ○笹月座長  はい、それは全くその通りです。そういう全体のコンセンサスということでよろしい でしょうか。 ○鈴木委員  今のお話の確認なのですが、少なくとも研究の中身が変わるのであればインフォーム ド・コンセントを取り直すのは当然であるという考え方なのですか。 ○笹月座長  いいえ、もし初めから研究上の余剰分は凍結し、生殖補助医療に資する研究の範囲で はあるけれども、別の課題で第三者に使われることがありますというところまできちん といったうえで、インフォームド・コンセントとしてサインをしてもらっていればいい のではないかということです。 ○鈴木委員  手続き上はわかります。今、ほかの分野においてもおよそそのようなやり方がとられ ているのでしょうか。例えば現状で血液のゲノム情報の問題なども起きていますけれど も、あれも最初はこういうように分析しますと言っていたのを、別の目的で使っていた から問題になったケースもありました。そういうことが起こらないように手続き上クリ アにすることは可能なのでしょうか。 ○笹月座長  そうだと思います。ゲノム情報解析とは少し種類が違うと思います。例えば糖尿病に かかりやすい遺伝子を調べさせてください、はい結構ですと言っておいて、その人の知 能に非常に大きな影響を及ぼす遺伝子が最近わかったので勝手にその人の知能の遺伝子 を調べますというのは許されないことだと思いますから。 ○後藤委員  その余剰胚のようなできあがったものをいただいて、新たに研究を立てる人は申請す るわけですね。 ○笹月座長  はい、そうです。 ○後藤委員  最初のときに他人に譲渡してもよろしいですかという一項目をもちろん出すわけです ね。 ○笹月座長  はい、そうです。あるいは最初の時点でそこまではできないとすれば、新たな研究を したいという人がそれを利用したいときに、その都度インフォームド・コンセントを取 り直すということになります。それはまた検討の余地があると思います。 ○位田委員  インフォームド・コンセントをどの範囲でとるかということは非常に難しくて、具体 的にこの研究に用いるからというのが一番簡単なのですけれど、例えばゲノム研究の場 合はゲノム遺伝子解析研究に使います、具体的なAという研究以外にゲノム遺伝子解析 研究にも使いますというとり方と、医学研究一般について使いますというとり方があっ て、どんどん広がっていって、あまり広げすぎると何でもかんでも使っていいという話 になるので、どこで歯止めをかけるかということは一度議論はしておいた方がいいと思 うのです。現場ではおそらく包括的同意というのが実際に利用されていると思いますし、 幾つかの病院でそうされているという話も聞いています。ただ、生命倫理の議論をされ ている方の間では、包括的同意というのは妥当ではないという意見がありますので、具 体的にどこまで認めるかというのは一応議論をした方がいいと思います。小幡委員に補 足していただいた方がいいと思います。 ○小幡委員  私も位田委員と同じ意見ですが、この4つのものは割と近いという感じがしていて、 これを小分けにするのはあまり意味がないのかと印象論としては思います。先ほど凍結 の保存効率はそもそも凍結の場合必ず入るというようなお話もありましたけれども、生 殖補助医療研究というだけでよいか、包括的といえば包括的ですが難しいところです。 ただ、見たところここは近いものが並んでいると感じました。 ○高木委員  インフォームド・コンセントのときに現場で見ていると、再度取ってくださいといっ てもほとんどそれは無理という感じなのです。ですから最初にどういう形で取るかとい うことはきちんとしておいた方がいいと思います。 ○鈴木委員  生命倫理専門調査会の結論というのはクローン胚以外に生殖補助医療研究でヒト胚作 成を認めていいというのはかなりぎりぎりの情報というのか共用できるというお話だっ たと思うのです。今の話であるとどんどん使って子宮に戻さなければどんどん研究者で 使いまわししてもいいのかと聞こえてしまいまして、むしろこの委員会での結論は例え ば一旦その一つの研究の中で枠があったりすれば廃棄するという選択。私は十分倫理的 な意味ではあり得ると感じますけれども、使いまわしはしないというヒト胚の尊重とい う感覚的な話ですけれども、それはもちろん皆さんで検討していただいてと思いますが、 そういうことはありうると私は思います。 ○加藤委員  誰かが研究計画を出すときに別の先生の余剰胚を使ってやる研究ですという形で研究 計画を出してそしてそれは誰かがやって凍結したものであるというふうにしてそのつど 目的を変えたりする場合に目的や利用する研究者が変わった場合には必ずもう一度認可 を通すという方式にすればいいのではないですか。 ○鈴木委員  その場合にそれがその包括的同意でいいのか私は疑問であると申し上げているわけで す。 ○笹月座長  その場合の包括的同意というのはどういう意味ですか。 ○鈴木委員  というかインフォームド・コンセントとも困難かもしれませんが取り直すのが原則で はありませんかと申し上げたいです。 ○加藤委員  インフォームド・コンセントのとり方についてそれはそのとき議論したらいいのでは ないですか。 ○長野対策官  インフォームド・コンセントの手続きですとかまた他人への譲渡という話は、研究実 施の要件等の議論の際に後ほど詳細にご議論いただけるかと思います。 ○笹月座長  今のようなことが問題になるということで、また委員の先生方お考えいただければと 思います。 ○位田委員  原始線条が形成された後の14日以後なのですが、これは受精後14日を越してしま えば廃棄するということでいいのでしょうか。いわゆる観察研究というのがありうるか と思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。 ○笹月座長  それはインビトロで胚の発生をどこまでやっていいのか何も手は加えていませんとい うけれども、インビトロで培養液で栄養を与えて胚発生をさせてどこまで見ていいのか それですよね。それをどこまで見ていいか線引きをしようとして14日。あるいは14 日以内でも原始線条が現われたときにはそこで終わりですと決めたわけですよね。 ○位田委員  それ以降は廃棄でいいですね。それは明記すべきかなと思って。 ○笹月座長  それは大前提で最初のところで書かれているように移植はしません。利用はこれこれ ですとこの2項目で満足しています。  それから胚・配偶子に加えてはならない操作というところでいわゆる遺伝情報の改変 を伴う操作。それも3添付資料のところにありますように遺伝子そのものには操作を加 えないけれども核とそれから卵子内のミトコンドリアの持っている遺伝情報とがミック スすることがありますということでこれらについての問題が出てきております。  それから遺伝子操作を実際に配偶子あるいは胚に加えた場合には、遺伝子治療のガイ ドラインでは、配偶子に遺伝子操作をしてはならないと明記されておりますが、それは もちろん遺伝子治療の場合には、その細胞は体内へ移入されるわけなので、そういうこ とが明記されているわけですが、この生殖補助医療に資する研究というのは体内には戻 しませんということが大前提なので遺伝子操作はするけれども、そしてそれが本当にす ばらしい方法であったとした場合に、その成果をそのまま、生殖補助医療に応用するの ではなく、その遺伝子操作をしたがゆえに得られた新しい遺伝子産物、すなわち蛋白を 配偶子に入れるということで、生殖補助医療が行われるとすれば、この研究段階での遺 伝子操作は容認できるのではないかとそういう考え方ですが、これについて今日はご意 見を。 ○鈴木委員  質問と確認です。事務局から資料でいただいているこれは添付資料メモ7ページ目な のですが、核置換は特定胚指針ではそもそも作成してはいけないことになっていたので はなかったですか。 ○長野対策官  特定胚指針でいっているのは、少しお待ちください。 ○鈴木委員  前これに含まれているというご説明と回答いただいたように記憶しておりますが。 ○吉村委員  私が覚えていることだけ言いますとヒト胚核移植胚は禁止なのですが、胚ではないの で、ですから禁止ではないと思います。特定胚で決められているのから除外される項目 がここに出てくると思います。ですから未受精卵ですので、未受精卵の核ですから特定 胚指針には入らないと思いますけれども。 ○鈴木委員  卵子だからということですか。 ○吉村委員  はい。 ○笹月座長  今のよろしいですか。そうしたら遺伝子操作のところですけれども今の4ページの四 角い囲った下に胚・配偶子に加えてはならない操作で「遺伝子治療においてはだめだ。」 ところが最後の3行のところで「これらの操作は基礎的研究においても、人の生命の萌 芽として特に尊重しなければならないヒト受精胚に対して行うことは科学的合理性及び 社会的妥当性が認められないと考えられる」とこう書いていますが、これはこれでいい ですか。 ○小澤委員  最後の3行のところの議論は別として、この場合には配偶子をヒトの体内に戻さない わけですから当然遺伝子治療臨床研究の対象になりませんので問題ないと思います。ま た遺伝子操作は、直接的に遺伝子治療につながるアプローチもあれば本当にツールとし ていろいろな目的で使われますから、遺伝子操作自体を縛ってしまうと、かなりやりに くくなりますので、遺伝子操作自体は問題ないというふうにしてよろしいのではないか と思うのですが。 ○笹月座長  この事務局で用意されたこの最後の3、これはどこから出てきた言葉ですか。この4 ページの四角い枠の下の文章、遺伝子治療研究に対して云々の最後の3行です。 ○長野対策官  核への遺伝子情報の改変を伴う操作についての前の3行でしょうか。 ○笹月座長  そうです。 ○長野対策官  ここで申し上げたのは遺伝子治療を目的として、遺伝子治療につながる技術として遺 伝子操作を行うというものはこれは認めない。認められないということでこれは禁止に なるというふうな定義で書いております。 ○笹月座長  ただこの最後の3行の1行目に「これらの操作は基礎的研究においても」と書いてい るので、ここでいう生殖補助医療に資する研究を対象としたような書きぶりになってい ますよね。 ○吉村委員  もう一度確認をしたいのですが座長がおっしゃられているようにこれらの操作以下の 3行と添付資料の1の(2)というのは、これは矛盾はしないですか。 ○笹月座長  そうですね。だから。 ○長野対策官  添付資料の(1)(2)にあたりますのは4ページ目で言いますと細胞核に含まれ遺伝子 情報の改変をともなう操作の○の部分という定義です。 ○笹月座長  はい、その文章とその上の3行。だからこの3行がどこからでてきたのか今お伺いし たのですが。この最後の3行を読むとこの研究においてはヒト胚に対しては遺伝子操作 は科学的合理性もないし社会的妥当性もないということを述べてしまっているので。 ○長野対策官  そういう意味ではこの3行は舌足らずだったかもしれません。ここで意味するところ は遺伝子治療を目的としたような操作の場合はということです。 ○笹月座長  遺伝子治療という大きな枠の中での文章の最後の3行ということですね。 ○長野対策官  はいそうです。 ○笹月座長  はいわかりました。 ○吉村委員  申し訳ないのですがもう一度確認したいのですが、何か深い意味があるのではないか と私は思ったのですが。胚を遺伝子操作してはいけないのだけれども未受精卵、卵子は 遺伝子操作をして研究してもいいですよということではないですか。例えば筋ジストロ フィーの人がいたとします。その卵子を遺伝子操作して、そして受精をさせて胚をつく るという研究は非常に有意義な研究だと思うのです。だけれどもできた胚の尊厳という 点から遺伝子操作はしてはいけませんよと。これは私は一つ非常に見識のあるお考え方 だと思うのですね。そういう意味でもっと高度な見地から言われたのではないかなと思 うのです。 ○笹月座長  小澤委員、胚、要するにディプロイド、2倍体になった胚の遺伝子操作と比べれば配 偶子1倍体のほうが遺伝子操作はしやすいですよね。それはわかりませんか。 ○小澤委員  ちょっとわからない。 ○笹月委員  もしそういうことが言えれば科学的合理性からも遺伝子操作をするなら胚になってせ ずに配偶子のときにしておけよという。 ○大隅委員  実際に精子への遺伝子対応は論文でマウスとかもでています。 ○笹月座長  ただどうしても必要なのはRNAiを入れるようなことは配偶子になってからの発現 を操作しなければいけないことでしょうからそうするとせざるを得ない。 ○長野対策官  すみません。確認ですが参考としまして5ページ目のところ参考3つ並んでおります けれども、参考の3番目のところに遺伝子治療臨床研究に関する指針の施行通知という ものがありまして、この中では遺伝子治療には体細胞を対象とするものと生殖細胞を対 象とするものがあるということですが生殖細胞に対するものは云々ということで次世代 への影響もあるということで慎重な扱いが必要である。  従ってこの臨床研究には体細胞を対象とするものだけに限って生殖細胞に影響を与 える恐れのあるものには実施してはならないとなっていてこれは遺伝子治療です。そも そも臨床研究の段階では生殖細胞すべてについて行わないとなっているのが現状です。 ○笹月座長  先ほど小澤委員が言われたように遺伝子操作というものはいうなれば現代の分子細胞 生物学・生命科学において非常に有力な手段方法であります。これを禁止した生殖補助 医療に資する研究というのは随分ランクが落ちてしまうということなので、遺伝子操作 は認めますと大前提。遺伝子操作は積極的に認めます。遺伝子操作は禁止しない。 ○鈴木委員  素人考えなのかもわかりませんが先ほど申し上げたように生命倫理専門調査会の宿題 ということの文脈で考えると全ての遺伝子操作が必ずしも生殖補助医療技術と直結する ものではないというふうに思うのですね。研究の中身にもよると思うのですが先ほど例 えば吉村委員がおっしゃった筋ジストロフィー等の研究がイコール生殖補助医療研究と いえるかどうかわからないですけれども。  いずれにしてもこの委員会でヒト胚の研究の中にその遺伝子操作に関してこの範囲 までいい悪いといえる任に私はないような気がするのですけれども、そこまでこの委員 会で決められるのかなという素朴なちょっと疑問があります。 ○笹月座長  生殖補助医療に資する先ほどの4項目の研究を研究の範囲として認めたわけですから いろいろな手段方法を用いた研究がなされるでしょう。その中には当然遺伝子操作とい うことも入るでしょう。ですからそういうことにあえて何も触れなくて黙っていてよろ しいということであれば私はそれでいいと思いますがいかがですか。 ○加藤委員  今の委員長の提案はこの3行を除くということですね。 ○笹月座長  この3行というのは遺伝子治療のことを言っているところの3行ですのでそこは忘れ ていただいて。 ○加藤委員  我々のガイドラインに関係ないということですね。 ○笹月座長  そこは関係ないです。ですから遺伝子操作云々ということは禁止条項の中に入れなけ ればどこにも触れないということで、当然やろうとする人はやります。もし後で何かご 意見がありましたらまた議論するとして。  時間が押してきましたので、一応核の操作、これについて最後に確認いただけますか。 核の交換あるいは卵子の細胞質の交換ということはいかがかということです。これは体 内に戻す医療としてはいろいろな配慮が必要なのでしょうが、研究としては当然やるべ きことですからあえて何も触れないということでよろしいでしょうか。禁止事項に入れ ないということでよろしいですか。それでは一応今日新たにいくつかのご意見をいただ きましたのでまた同じように事務局で整理していただいて委員の先生方にお送りすると いうことにさせていただきます。   (2) ヒアリング「採卵を受けることはどのくらい負担になりどのようなリスクを     伴うのか」<石原 理委員> ○笹月座長  それでは時間が限られておりますので次の議題に入りたいと思います。ヒト受精胚の 作成利用のための配偶子と受精胚の入手方法について、特に総合科学技術会議から指摘 がありますように卵子のボランティアによる提供をどう考えるかが非常に大きなテーマ になりますので、この議論を進めるためにご専門の石原委員に採卵に関する実地の状況、 ご本人に対する心身の負担ということに関してレクチャーをお願いすることにしたいの で、先生よろしくお願いします。 ○石原委員  本日はこのような機会を頂戴いたしまして感謝しております。お話が際限なく広がり 得ますので、今日は非常に限定したお話を差し上げるということをまずご了解いただき たいと思います。  今座長のほうからご指摘がありましたように、どうやって卵子を得るかというのは非 常に大きな問題があるわけですが、まず可能性を三つほどお話をいたします。  まず、このような研究に用いる卵子の質を考えた場合に、クォリティの低いものを使 うということでは研究の必要性や意義があまりないということをまず確認しておく必要 があります。すなわち胚移植にいたる高い質を伴うような提供卵子や胚でないと意義が ない。これはさまざまな報告が既に外国で出ております。つまり受精がうまくいかなか った卵子を流用する、あるいは発生異常の途中のものを流用するというのでは、研究の 意義が乏しいということが言われております。  もう一つの候補といたしましては、しばしば私ども議論してまいりましたように、未 成熟の未熟卵子、未成熟な卵子をいただいてそれを体外成熟して卵子として扱えばいい のではないかという可能性がもちろんあるわけです。これは手術時に摘出した卵巣から 由来する卵子などを想定しているわけですが、この体外成熟技術自体がまだ今オンゴー イングの段階で、もちろん非常にうまくいっているという報告がありますし、そうした 未成熟卵子から最終的に子どもさんがもう生まれているという事例ももちろんあります が、現時点ではむしろ研究対象であると考えるべきであると思いますので、これを主な ものにするというのも考えにくい。  そうしますと本審議会でずっと議論が行われておりますように、生殖補助医療の対象 となってきた女性の余剰卵子、あるいは認めない方向の議論が強いわけですが、ボラン ティアの女性などいずれにいたしましても、若い女性に由来する正常卵子あるいは胚の 提供が必要になるということが背景にございます。つまりどういうことかといいますと、 基本的に卵巣刺激をして採卵するという操作が必要になる。こういう前提で今日はお話 をさせていただきます。  この卵巣刺激や採卵というのは、その操作を受ける女性にどのような負担になるかと いうことをまず整理いたします。もちろん体の負担や時間の負担以外に費用の負担、心 の負担その他仕事を休む、いろいろあると思いますが、全部扱えませんので今日は主に 体と時間、少し費用のことを話したいと思います。  体の負担でありますが、生殖補助医療の時にすることをまず想定いたします。生殖補 助医療を行う必要性・必然性があるということを判定するための検査がありますが、そ のあと生殖補助医療をするということになりますと、排卵誘発・卵巣刺激と呼ばれる操 作が行われます。十分成熟した卵巣が卵巣に発育した時点で採卵をして、その後もちろ ん受精させ胚移植、最終的に妊婦健診までいたるわけです。今回のことに関連しますの は赤い字で示しております。二つの部分、つまり排卵誘発・卵巣刺激と採卵という二段 階と考えていいと思います。  まず卵巣刺激・排卵誘発の話ですが、この卵巣刺激の方法論自体が近年非常に変わっ てきております。これにはいくつか理由があります。第一の理由として、IVFあるい はICSIといったこうした生殖補助医療が日常診療となり経験が蓄積されております。 世界中では年間に約100万周期卵巣刺激・排卵誘発は行われているといわれています。 日本だけで10万周期であります。  もう一つはいろいろな技術的な進歩があります。新しい薬が使用可能になり負担が軽 減している部分があります。その一つがGnRHアンタゴニストです。  それからFSH製剤。これが卵巣を刺激する性腺刺激ホルモンの製剤でありますがこ れもレコンビナント製剤への移行が進み質が良くなって安全性が向上している。こうし た技術面さらには薬剤その他の進歩というのはこの10年間にありました。  さらにこれと一つは関連する部分がございますが、ARTによる多胎というのが非常 に大きな問題となっており移植胚数がどんどん減少してきております。いわゆるSingle Embryos Transferといって1個の胚を子宮に戻すというのが、世界中でいろいろなとこ ろで治療の主流となってきております。つまり以前のように例えば20個30個卵を採 るという排卵誘発ではなく、必要最小限の数を得ればいいという考え方になってきます。 そうしたことによって、排卵誘発や卵巣刺激の方向が相当変わってきております。  外国の事例を挙げますともう既にスウェーデンなどでは数年前から一胚移植になって おりますが、いろいろな国で一胚移植がだんだん義務付けられる方向に向かっておりま す。代表的な卵巣刺激法というのは幾つかあるわけですが、従来用いられた方法でロン グプロトコールとショートプロトコールという方法があります。どんな方法をする場合 にも、卵巣刺激の最大の問題は卵巣を刺激して卵をたくさん育てていきますと、内因性 のLHという排卵を起こすホルモンが出てきてしまって、卵を取りにいく前に排卵して しまうということです。それをどのように防ぐかというと、従来広く用いられてきたの がGnRHアゴニストです。商品名を挙げますとスプレキュアという薬がしばしば使わ れてきたわけです。ロングプロトコールといって前の周期の黄体期から薬を使う方法と 月経が来た時点で使い始めるショートプロトコールという方法があるわけですが、主流 はロングプロトコールです。そうした方法についででてきたのがGnRHのアンタゴニ ストです。これは商品名でいいますとセトロタイドという薬で、日本でも使えるように なりましたが、卵胞期にまず普通に卵巣刺激を行ってその途中で1回アンタゴニストを 投与するというような操作で採卵へもっていくという方法です。  このほかにも幾つも方法はあるわけですが、標準的なロングプロトコールと最近5、 6年でかなり広く用いられるようになりましたアンタゴニストについて体と時間がどれ くらい負担になるか比べてみます。ロングプロトコールというのは先ほど申し上げまし たように前の周期からやるのです。前の周期の黄体中期から薬を使い始めますのでその 排卵の時期をまず決めていかなくてはいけません。ざっくり言いまして標準的な通院期 間が前の周期一周期28日分を含みますので、採卵までに40日くらいかかるわけです。 アンタゴニストだと月経が始まったところから始めますので、月経が始まって3,4日 目からとすると大体10日ぐらいですむわけです。通院回数は当然違ってまいります。  アンタゴニストの場合は内因性のホルモンを使いますのでFSHの投与日数投与量が 減少いたします。患者さんが実際にやることは何かというとロングプロトコールだとそ のスプレーを1日3回するわけですが、基本的にはアンタゴニストの場合は何もなし。 ただしこの話は日本の話をしているわけで、日本以外の国ではこうした注射に用いるF SHなどは自己注射がほとんどでありますのでこの通院回数のうちFSHだけを注射し にくるという必要性は全くないです。したがってどちらの方法でも実際のところは通院 回数としては数回しかきていないというのが実態であります。  こういったことがなぜ起こっているかということを示す一つの材料としてICMA RT(イクマート)という世界中のARTの統計を集積しているチームがありまして、私 もそのメンバーの1人なのですが、そこが先週アメリカの生殖医学会で発表したデータ をお示しいたします。これはどういう比較かといいますと、いろいろな国において女性 の平均年齢、出生率、そして人口の増加、25〜40歳の女性のうちIVF、ICSI などのARTへどれだけいっているかを比較したものであります。  スウェーデン、デンマークそれからイギリスというのは平均女性年齢が40歳前後で す。そして出生率が1.67%ぐらいであります。人口の増加率が0.2もしくは0. 3%。ART周期数を25から40歳の女性人口で割ると、IVFあるいはICSIな どのARTに行っている方というのが20〜67%もいるのです。日本はどうかといい ますと、平均年齢はもっと高いです。女性の老齢化が進んでおります。そして出生率は 2002年のもので1.4%と書いていますが今年は1.2台です。2002年の時点 で人口の増加率は0.1%で非常に低い。しかし先進諸国に比べますとIVFあるいは ICSIを受けている人が非常に少なく4.5%です。アメリカは出生率が非常に高い。 人口も増加しているわけですがIVFは12.8%あります。先進国以外はどうかとい うのが最後で、ブラジル、アルゼンチン、チリ、エジプトなどを示しておりますが、こ ういうところはさすがにIVF、ICSIを受けている方は非常に少ない。日本の経済 力とかを考えますとこのアクセスが低いというのは時間の負担とかいうことを考えるの が妥当ではないかということを今私は考えております。  もう一つ考えるべきことは金銭的なものであります。デンマーク、スウェーデン、イ ギリス、フランスは体外受精その他の生殖医療は公費で行われる国になります。これら の国では2002年の時点で戻されている胚の数は2個前後です。そうしますと品胎以 上の妊娠は0.2から0.7%になってまいります。この下にありますのが自分のお金、 私費です。私費で治療を受けている国です。そうするとどうなるかというと移植胚数が 増えるのです。そして多胎率が非常に増えるわけです。日本が特異なのは、日本は幸い 最近多少の援助がでるようになったのですが、この中間ぐらいの胚の数が移植されて多 胎率もその中間である。そうだとすると金銭的な負担が多胎率にかなり大きな意味を持 ってインパクトを与えている可能性があるわけです。  移植胚数の制限が、いろいろな国で行われているわけです。英国は1978年にルイ ーズ・ブラウンが生まれて最初に体外受精が行われた国ですが、90年にHFE法が施 行され移植胚数が2004年に法で2個に規制されました。つい先週10月19日報告 が出まして来年の4月からは1個に規制されることになりました。40歳未満は1個で す。  スウェーデンは、実は英国よりも早く体外受精などに関する法律を作りまして200 3年に法律で移植胚数を1個に既に規制しております。これはあくまでも原則で非常に 複雑な前提条件がありますのでそれは省略いたします。一方、米国と日本は世界中で数 少ない法律が全くない国で、ガイドラインだけで運用されております。米国ではSAR TとASRMがガイドラインで2003年に2個にしていたのですが、つい先頃200 6年に1個に制限されました。  日本はどうかといいますと産科婦人科学会の会則で96年に3個に制限されており ます。現在生殖医学会ではガイドラインが検討されておりまして、1胚移植にどこかで 規制するべきだろう。できれば来年の春までに1個にしよう。そういう検討がされてい る状況です。卵巣刺激や採卵のリスクを考えた場合、従来OHSS(卵巣過剰刺激症候 群)が非常に強く言われていました。今回は卵子提供という話でありますので多胎のこ とを申し上げる必要はないのですが、今申し上げましたが多胎をいかに防ぐかという試 みの中で卵巣刺激の技術は非常に向上いたしました。それでOHSSのリスクは非常に 低下しています。さらにもし卵子提供のことだけを考えるとしますと胚移植はいたしま せんのでそのリスクはより小さくなります。ただし採卵時の麻酔合併症や出血感染症、 腸管膀胱損傷など手技に伴う合併症の可能性というのは通常の生殖補助医療を受ける場 合と全く同様に発生すると言わざるを得ないと思います。  問題はどれくらい起こるか。日本におきましてもARTにおいてOHSSによる死亡 例が過去に報告されているわけです。実際のところ後遺障害がどれだけ残るかというこ とは正直なところわかりません。データがないです。ただし死亡率ということに関して これはICMARTの統計ですが2002年で世界中の60万周期を集積しております がその中で3例が死亡しております。20万回に1回です。ただしこれは落ちているも のがある可能性は否定はできませんけれども、大体全体としてこれくらいとお考えいた だいてよろしいです。  これは学生の講義にしばしば使うスライドですので半分冗談と思ってお聞きいただ きたいのですが、100万人に1人が死ぬのにどれだけ時間がかかるかということが私 がよく用います避妊の本に書いてあります。オートバイに1分乗ると100万人に1人 死ぬ。ロッククライミングを1.5分すると100万人に1人死ぬ。65歳以上の人が 5分生きていると100万人に1人死ぬ。自動車を1時間乗ると100万人に1人死ぬ。 たばこ6本を5時間で吸うと100万人に1人死ぬ。それとこれは本日の題と関係ない ですがピルの安全性を示すために言っているわけです。ピルを1カ月飲むと100万人 に1人死ぬとこういう比較がなされているのですがこれをどう考えるかだと思うのです。  事務局からこの間から骨髄移植ドナーのリスクがどうかということを比較できないか という話をいただきました。私も情報のソースがないので、インターネットで骨髄移植 推進財団というホームページを見ました。そのデータについて真偽のことについて私は 責任がもてませんが、骨髄採取に伴う死亡報告例は国内で1例、世界で4例あると書い てありました。92年から2005年に日本で実際に提供したドナーは6,341名と 書いてあります。私は詳細はわかりませんが骨髄移植に関して日本において後遺障害保 険というのがあるのだそうです。これの適用例というのが過去に6例あるということが 記載してありましたので大体骨髄移植のリスクというもののイメージはご理解いただけ るのではないかと思います。  時間の関係で触れられませんでしたが心の負担とかその他の負担について少しだけお 示ししますが、従来いろいろな国で既に卵子提供が行われております。これについては 卵子を提供することによってARTの費用を軽減する。これはエッグシェアリングの試 みが行われているわけですが、実際にはARTを受ける患者さんから卵子提供をうける というのは心の負担が残るという心理学者の報告がたくさん出ております。無償ボラン ティアによる卵子提供というのは理想的なコントロールがあればその提供者の心の負担 はむしろ少ないです。必要なことはむしろ有給休暇などの時間や費用の保証のサポート をしていくことが重要だということがイギリスから報告されています。  成果のフィードバックというのは先ほど来、話が出ておりますようにこうした生殖医 療に資する研究をするということであれば、このARTを受ける患者さんとか、あるい は研究者・医療側には非常にフィードバックが大きいわけですが、そうしたことを考え るとボランティアのあるいはその他の方に無償で卵子の提供を要求するのはむしろアン フェアだということをピ−ター・ブロードというロンドンのキングスカレッジの教授で すが、その先生がおっしゃっています。  むしろ有償にするということでしばしば日本で問題になる家族や周囲から提供への 圧力が逆に軽減する可能性があるのではないかということもおっしゃられています。  まとめますが、卵巣刺激あるいは採卵に伴う負担は最近の経験の蓄積と薬剤器具の進 歩で近年明らかに低下しつつあります。ただしその時間負担軽減についての日本の現況 はさきほど自己注射のことを申し上げましたが、先進諸国より遅れていると言わざるを 得ません。卵子提供に伴うリスクは極めて高いものではありませんがゼロではないとい うことも知っておく必要があると思います。  今我々が考えるべきことは既にいろいろな国で走っているシステム、あるいは事例に 学んで実際日本という場所で実現可能性があることを考えなければいけない。その方法 に関して一般の理解を深めるためのさまざまな政策的な配慮をしていただくということ がまず行うべきことと思います。以上です。 ○笹月座長  大変ありがとうございました。ただ今の石原委員の話に対しましてどなたかご質問を どうぞ。 ○加藤委員  最初のグラフでアクセスレスキューのところでスウェーデン42.8という数字がで ているのですが、これはスウェーデンの女性の25歳から40歳までのうちの42.8% はARTを受けているという趣旨ですか。 ○石原委員  そういう意味ではなくて、行われている周期を25歳から40歳の女性の数で割った ものです。つまり1人の人が何回も受けている可能性がありますので必ずしもそういう わけではありません。例えば日本のこの年齢の女性が何人いるかちょっと私はわかりま せんが、日本で行われたARTの周期をその人数で割っているということです。 ○笹月座長  他にどなたかご質問はありませんか。外国での幾つかの例を示されましたが、例えば スウェーデン、デンマーク、イギリス、アメリカこれらでは卵子のボランティアという のはどういう状況ですか。 ○石原委員  米国は全く法律がありません。ただ国からのお金はブッシュ政権になって全く出てい ないのですが、プライベートの金、いろいろな所のお金を集めれば実験・研究は可能で す。イギリスはHFEAアクトで非常によくコントロールされておりまして研究するた めの施設は登録は行われています。その研究の登録を行われた施設では卵子をボランテ ィアあるいはエッグシェアリング、今行われているのは10個以上採卵できた患者さん について、2個の未受精卵を提供してもらうという同意書ができておりまして、そうい うやり方で2個ずつ提供してもらったものを使って研究が行われているのが現状です。 ○笹月座長  それは生殖補助医療を受ける方の。 ○石原委員  その通りです。 ○笹月座長  それとは関係ないボランティアもある。 ○石原委員  あります。生殖補助医療の人からもらった場合のその問題点は今いろいろ言われてお りまして、ボランティアとどちらがいいのかというそういう話になったところと思いま す。 ○大隅委員  実際私は今年たまたまニューヨークのコロンビア大学に行きましたときに、エレベー ターホールにエッグボランティア員というポスターがはってあって、結構安くてびっく りしたのですが日本円に直すと数万円くらいです。 ○石原委員  英国では今基本的に無償なのです。コンペンセーションで交通費であるとかあるいは 仕事を休んだ場合の給料であるというのが、1日上限が、今数字を思い出せませんです が規定された金額しか払えない。それをもう少し充実すべきだというのが今議論になっ ていて恐らく英国で今行われている見直しの結果はパブリックコメントで問題がなけれ ば来年の4月からある程度の支払いがなされるようになると聞いています。 ○高木委員  例えばある程度支払いがなされるというのはその不妊症の患者さんに卵を提供する場 合か研究に卵を提供する、それ両方とも現在無償でしばらくしたら有償になるというこ とですか。 ○石原委員  不妊症の患者さんについては純然たる卵子ドナーという場合と、エッグシェアリング、 エッグシェアリングというのは自分のとれた卵を一部ほかの不妊の人のために提供する、 その場合には体外受精の治療費を一部安くしてくれるという、もう少し安い値段で体外 受精を受けることができるという仕組みがいろいろな国で行われているのです。そうい う場合が一つと、先ほど申し上げました研究をするためにその卵子をエッグシェアリン グのような形で一部いただくということについての認可を受けている施設がある。それ はだから二つ別のシステムです。つまりエッグの提供というのに関してはほかの患者さ んの治療のための提供というスタイルと研究のための提供というスタイルが2本あるわ けです。それによってちょっと状況が違ってくると思います。 ○高木委員  それはどちらかを選ぶわけですか。どっちに提供するかということ。 ○石原委員  その通りです。 ○高木委員  最初に選ぶわけですか。 ○石原委員  それは提供する人が選ぶわけです。 ○高木委員  イギリスも両方とも今のところ無償だということですか。 ○石原委員  基本的には無償です。無償というのは先ほど言いましたリーズナブルエクスペンスと いう部分以外は無償という形です。 ○木下委員  教えてください。体外受精のときは1個返しますね。今では1個返そうとしている。 アンタゴニストを使ったときには卵は平均すると何個くらい取れますか。 ○石原委員  これはFSHの打ち方によって違うと思いますが、たくさん投与すればたくさん取れ るわけですがSingle Embryos Transferの動きが強くなってきてたくさん取ろうとしな くなってきています。ですからそういう意味でどれくらい使えばいくつ取れるかコント ロールしやすくなって、以前だったら例えばFSHで225とか300単位ぐらいから 始めて打っていたわけですが今150ぐらいでいきますので、そうすると5,6個です。 ○木下委員  卵巣刺激の方法として卵がたくさん取れるほうがいいわけですね。不妊治療で行う体 外受精のときのプロトコールとは違ってこういうような場合には危険でない範囲でたく さん取る方法を採用することはどうでしょうか。 ○石原委員  本日のお話の趣旨はつまりその負担とリスクという話なので、負担とリスクを軽減で きる可能性がないかという文脈の話をしましたので、もし例えば40個取りたいとかと いう話になるとどういうやり方がいいのかまた違うお話をしなければいけないのかもし れませんが、今現実の臨床の場で40個取る排卵を誘発することはめったにないという か、しない。ありえない。 ○木下委員  せめて体外受精のときよりは多少多いほうがいいのではないか、むろん安全な範囲で、 つまりOHSS卵巣過剰刺激症候群にならない範囲でですが。 ○石原委員  実際にはイギリスですと10個以上取れた場合に限って2個提供していただくという ことになっていると、実際には20個取れる人はどれくらいいるのかというところは私 もわからない。今現状で行われている。ただインフォームド・コンセントはそれ以前に 取っておりますので、インフォームド・コンセントがとられたけれど10個できなかっ たという方がいらっしゃるのかもしれませんがちょっとわからないです。 ○高木委員  今先ほど患者さんが結局は不妊症の方か研究にどちらかに選択できるということです けども、どういう割合で選択しているかというデータはないですか。 ○石原委員  圧倒的に、ほかの患者さんに提供する方です。 ○高木委員  が多いわけですか。 ○石原委員  圧倒的です。つまりまず研究のためのライセンスを持っている施設がちょっと現時点 でわからないですが去年一昨年ぐらいの段階では、二つか三つくらいですのでそういう 意味では非常に限られた施設です。 ○大隅委員  先ほどのたくさん取れればいいということに関して私は非常にリスクが大きいと思っ ておりまして、結局卵巣過剰刺激症候群というのはその人それぞれでどのくらいそうい う反応を示すかやってみないとわからないということが非常にあります。そうしますと もちろん最初に研究のためであれなんであれやってもいいですと同意をするわけですが、 その方に対する安全性を最大に考えたプロトコールを取るべきではないかと私自身は思 います。 たくさん取れたほうがいいというのは研究サイド側からの要求であって、こ ういったものは非常に倫理的なものでありますとか女性の体の負担を考えるべきではな いかと思います。 ○木下委員  卵を多く取るということは誤解を招いた表現かもしれません。これは決して無理なこ と、つまり女性の身体に負担をかけるようなことをするわけではありません。1人の方 に、そういうお願いをするときには、最低この範囲であれば安全で大丈夫だという範囲 があると思います。例えば1人の方から10個以内で、OHSSにならない範囲ででき れば安全だと思います。決して研究サイドは倫理や女性の安全を無視して多くの卵をと るという趣旨ではないことをご理解ください。 ○位田委員  スウェーデン、デンマーク、UKはわかったのですが、それ以外の国で先進国でボラ ンティアを認めている国もしくはエッグシェアリングを認めている国はどのくらいある のでしょうか。 ○石原委員  私も厚生労働省の金と文部科学省の補助金をもらってもう8年くらい調査しているわ けですが私がいっているのは北欧と英国だけですのでそれ以外のことにつきましては伝 え聞き以上あるいは本で読んだあるいは論文で読んだ以上の知識はありません。申しわ けありません。私が調査した範囲でそういった意味でシステムとしてきちんとできてい るのは英国とスウェーデンが圧倒的に早いです。ただそれはシステムがどんどん変わっ てきておりまして例えば最近問題になっているのは、提供された卵子とか精子に由来す る子どものアイデンティティ。アノニミティが段々ノンアノニマスに向かっているとい う流れがある。それも全部一斉にそちらにいっているのかと思いましたら、フランスで は逆方向に今度はアノニマスを認めるようについ数カ月前になったという話を先週聞き まして、まだ確定しているわけではないです。アノニマスはアノニマスで問題がありま すので、アノニマスが全ていいということではない。各国でかなりさまざまな取組がな されているのは事実です。 ○位田委員  禁止をしている国もあるという意味ですか。 ○石原委員  いろいろなことを禁止している国というのは、はっきり言うとドイツとオーストリア とスイス、その三つは非常に厳しい。あとはイタリアが先日法律が変わったのは先生方 もご存知だと思いますが、あれも今度政権が変わりましたのでまた変わるかもしれませ ん。 ○鈴木委員  確認ですけれども今のイギリスとスウェーデンに関してはガイドライン以外に法のあ り方というのは第三者に提供するときはこちらの指針なり法律で研究に適用するときは こちらでという感じではなかったと思うのです。基本的に一つの法律の中でということ ではなかったかと。 ○石原委員  一般的には卵子提供を認めるかどうか認めるか認めないかという話なのです。卵子提 供を認めるとしている国の中で、それをどう取り扱うか。つまり私はこの会議の最初の 方で少し発言した記憶があるのですが患者さんへの利用ということを全く視野に置かず に研究にだけ使うというというのはやはりちょっと難しい部分があって卵子提供をした いという患者さんの多くは恐らく他の女性のためにあるいは不妊のカップルのために何 とか役に立ちたいというそういう動機の方が多分大きいと思うのです。そうだとすると 卵子の提供者をもしボランティアレベルで求めるのだとすると今私たちがやっている議 論というのは必ずその不妊カップルが使えるようなためにはどうすればいいのかという ことを視野に入れた上で、議論しないといけないのではないかと思います。 ○笹月座長  以前もちょっとお伺いしたかと思うのですが北欧とイギリスだけに限られたというの はどうしてですか。 ○石原委員  私は英語しかできないのでコミュニケーションが十分にとれないというのが最大の問 題です。 ○位田委員  リスクの話に戻って恐縮なのですが、卵巣刺激によるOHSSの可能性というところ で、卵子提供の場合、胚移植しないのでリスクはより小さいというのは意味がよくわか りません。 ○石原委員  実は体外受精の周期で非常に卵巣がはれてしまってOHSSのリスクがものすごく高 いという場合には僕らはどうするかというと、すべての胚を凍結してその周期は胚移植 しないのです。そのあと次のサイクルになってから移植すると、そうした仕組みを我々 のところは何年もやっています。ここ4,5年体外受精の方でOHSSで入院した方は ゼロなのです。OHSSで入院するのは体外受精ではなくて、採卵をせずに人工授精を したとかですね。単に排卵誘発をした人がOHSSになることはあるのです。採卵して しまったあとのその周期で入院するということほとんど皆無になりましたので、そうい う意味では比較的安全になったといえると思います。93,4年ごろは正直大変多かっ たです。 ○位田委員  その次のスライドでOHSSによる死亡例が過去に報告されているというのは少し古 いことなのでしょうか。 ○石原委員  そうですね。何年だか記憶がはっきりしませんが。 ○位田委員  リスクの率を考えるときに、例えば先ほどおっしゃったできるだけ少なく取る方がリ スクが少ないというお話でしたが、木下委員の話でも40個といわなくても20個くら いというときに、1個取るときのリスクと20個取るときのリスクと確率的には20個 のほうがかなりリスクは大きくなるのですか。 ○石原委員  採卵手技にともなうものはほとんど同じだと思います。先ほどのお話というのは純然 たるOHSSリスクの問題だと思います。麻酔は施設によりますし採卵する手技自体は、 1個であろうが20個であろうが多少はたくさんさすほうがリスクは高くなるかもしれ ませんが20倍になるということは少なくともないと思います。 ○吉村委員  私も石原委員と全く同じなのです。大隅委員が先ほどおっしゃったようにこの4,5 年本当に生殖医療というのはリスクを減らすということが第一義になっております。た くさん取るということはもう考えなくなってきている。せいぜいとっても7,8個まで と、ほとんどそういったリスクはもう考えなくて私はいいのではないかと思います。逆 に何回も体外受精をするという人は増えてきています。 ○大隅委員  私が申し上げたかったことは、先ほど木下委員がどうせ取るのなら20個一度に取れ たほうが効率的ではないかというご発言がありましたので、普段要するに臨床の先生が 安定したプロトコールでやっていること以上のことをこの研究目的の採卵をするときに そういったそのプロトコールを使うべきではないのではないかということを申し上げた かったわけです。 ○吉村委員  その通りだと思いますし韓国で問題になったのもそういった若い女性に排卵誘発で卵 を取るためだけに排卵誘発をしたケースにOHSSが起こっていますのでそういったこ とは当然ながら研究者のモラルとして考えていかなくてはいけない。 ○位田委員  今の吉村委員のご説明では、結局は排卵誘発剤を何回も使う機会が増えてきて、結果 的にリスクが増えているということでしょうか。 ○吉村委員  そういうことではなくて、フレンドリーといいまして、ほとんど排卵誘発を使わない で体外受精する場合もあります。1個か2個しか取れないということになりますと体外 受精を何度も受けなくてはいけない。要するに10個取りまして10個受精しますとそ れを凍結して次の周期に戻すことができます。ですから1個か2個しかとれないとその 周期で終わってしまいますから体外受精を何回も受けるというケースが増えてきます。 ○位田委員  そうするとそのたびに排卵誘発剤は使われるわけですか。 ○吉村委員  使う場合もありますがほとんど使わないでこういったものを使わないでやっている所 も最近は非常に多く増えてきた。ですから本当の正常周期と同じ変わらない程度に例え ば飲み薬だけでやっている所もあります。要するに石原委員のおっしゃった排卵誘発は 使わないでやっているところも増えてきています。しかし回数はやはりそうしますと従 来なら10個取れてそれをどんどん少しずつ凍結して返しておけば4回ぐらいできるの に、何回もしなくてはいけない。例えば1年に8回とか10回とかやっている人もおみ えになります。一度に20個とれればそういったことはしなくてもいいわけですね。 ○位田委員  リスクも含めて女性の負担としては1回に例えば10個取るほうが、いい悪いという 話ではないでしょうが、安全ですか。 ○吉村委員  一概には言えないと思います。そういったリスクは、例えば今全胚凍結とおっしゃい ましたしそうすればOHSSが予防できるわけです。患者さんにとってどちらがいいか ということについては、一概に言い得るものではない。 ○高木委員  余剰胚は減っているのですか。 ○吉村委員  余剰胚は増えてはいないと思います。私のところでは完全に減ってきています。ほと んど戻してしまいますし高齢になってきますと妊娠率は当然悪くなってまいりますので 余剰胚は減っていると思います。 ○笹月座長  ありがとうございました。本当はここから配偶子の入手に関して議論を進めるべきと ころなのですが、時間がまいりましたので次回に配偶子あるいは受精胚の入手方法につ いてというところを議論したいと思います。 (2)その他 ○笹月座長  それでは事務局から。 ○齋藤課長補佐  次回でございますけれども12月8日金曜日の16時から18時となってとなってお ります。また会場などはご連絡させていただきます。ありがとうございました。 3.閉会 ○笹月座長  それではこれで。一つ積み残してしまいましたが今日の合同委員会を終わりにしたい と思います。大変ありがとうございました。 −終了−  事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室       電話:03−6734−4108(直通)      厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課       電話:03−5253−1111(内線7938)