06/10/30 第6回生協制度見直し検討会の議事録掲載について 第6回生協制度見直し検討会議事録 日  時:平成18年10月30日(月)13:00〜15:00 場  所:厚生労働省7階 専用第15会議室 出席委員:清成座長、大塚委員、小川委員、品川委員、土屋委員、山下委員、吉野委員 議  題:(1)これまでの議論の整理      (2)その他 ○ 清成座長  それでは定刻になりましたので、まだお二方、委員がお見えになっていませんけれど も、ちょっと遅れるという御連絡がありますので、第6回生協制度見直し検討会を開催 させていただきます。  初めに委員の出席状況を……といいましても、先ほど申し上げましたように、お二方 遅れてお見えになるということでございます。  早速議事に入りますが、初めに前回の議論について、確認のため事務局から資料の説 明をお願いいたします。 ○ 花咲課長補佐  資料1について御説明いたします。第5回において御議論いただきまして利用事業、 組織・運営規定の見直しについて御意見の概要を事務局で取りまとめさせていただいて おります。  まず1ページ、I 、利用事業でございます。1、医療・福祉の非営利性の徹底につい てでございますが、福祉事業と他の事業を兼業している場合に、区分経理をして収益の 状況をきっちり把握して、その中で健全性を確保することは必要だが、共通経費もあり、 剰余金は法人トータルとしてしか出ないのではないかとの御意見がありました。また、 持ち分の払戻しをすべきかどうかは政策論の問題であるとの御意見がございました。  2、医療・福祉の員外利用限度の緩和につきましては、員外利用規制全体での緩和が なされないと、医療・福祉事業について員外利用限度を100分の100と定めることは規制 強化にしかなりかねないとの御意見がございました。  3、剰余金の使途たる事業の拡大につきましては、生協の社会貢献は福祉だけではな く、低価格商品を提供するなど、時代ごとの消費者問題の一助となる社会的活動を行う ことが中心との御意見もございましたが、購買事業における活動は競争の中で解決でき る問題であることが福祉事業とは異なる、購買事業と福祉事業とは別に考えるべきであ るとの御意見や、地域の中での支え合いのため、組合員による福祉活動と福祉事業の両 方を育てていかなければならないとの御意見がございました。  続いてII、組織・運営規定でございます。1、見直しの方向性でございますが、今日 の生協の事業規模、社会的責任からは規定を整備することが適当との御意見や、事前規 制から事後規制への流れの中で、意思決定の自由度を拡大する一方、自己責任が求めら れ、第三者のチェックも必要とされている、また、その限りにおいて行政の関与も必要 との御意見がございました。  2、員外監事設置の義務付けにつきまして、組合員でないことを員外監事の要件とす ると、事業を利用していない者を監事にしなければならず、おかしいのではないかとの 御意見や、地域生協は組織率が5割に及ぶ場合もあり、組合員以外の監事を設置するこ とは困難との御意見がございました。一方、生協の経営や組合員としての関与を持たな い専門的な者による監査を求めるという員外監事の趣旨からすれば、あえて非組合員か ら意見を求める体制をつくることも一つの考え方であるとの御意見がございました。  3、その他の組織・運営規定に関する事項としまして、一定規模以上の生協には常勤 監事が必要との御意見や、会計帳簿等の閲覧請求時には正当な理由がなければ請求を拒 める旨や、拒否事由を明文化すべきとの御意見、さらに、理事会議事録の組合債権者に よる閲覧については裁判所の許可を必要とすべきとの御意見がございました。また、組 合員の意思を反映するに当たっては、小さな生協がきちんと存在することが必要であり、 連合会会員の出資一口額の制限を撤廃することをどうとらえるかが問題との御意見がご ざいました。  以上でございます。 ○ 清成座長  ありがとうございました。ただいまの説明について、この時点で何か御意見がござい ましたら、お出しいただきたいと思います。  特にございませんようでしたら、時間も限られておりますので、もし何かありました ら後ほどでも結構でございますし、会議終了後でも結構でございますので、事務局にお 伝えいただければと思います。  それでは本日の議題に入ります。前回までの検討会で見直し項目の議論は一巡したわ けでございますが、本日はさらに検討が必要な項目について議論することになるわけで ございます。そこで、事務局にこれまでの議論の整理をまとめた資料を作成していただ いておりますので、まず初めにその説明をしていただきまして、その後、残された検討 項目についても説明をお願いしたいと思います。  それでは事務局から御説明をお願いいたします。 ○ 花咲課長補佐  それでは資料2〜5までまとめて御説明させていただきます。まず資料2、これまで の議論の整理(案)でございます。本資料はこれまでの検討会における議論及び事務局 からの説明等を踏まえて、事務局の方で取りまとめたものでございます。本資料を取り まとめるに当たりましては、検討会での議論の順序とは異なり、生協全体に話が及ぶ組 織・運営規定から始め、その後、各事業に関する御議論をまとめております。  I 、組織・運営規定についてまず御説明させていただきます。一部は先ほどの資料1 と重複する部分がございますが、議論全体のまとめということで、改めて御説明させて いただきますので、御容赦いただきたいと思います。  1、基本的な考え方でございます。今日の生協の事業規模、社会的責任にかんがみ、 組織・運営規定を整備する必要があるとされ、その際の考え方については、組織におけ る意思決定の自由度を拡大する一方、自己責任の徹底、第三者による監視機能の強化を 行うこととなる、また、一定範囲内での行政の関与が必要であるとされました。  2、員外監事の設置の義務付けでございます。組合員でないことを員外監事の要件と すると、事業を利用していない者を監事にしなければならないこととなり、地域生協の 組織率からは組合員以外の監事を設置することが困難な場合があるのではないかとの御 意見がございました。一方で、生協の経営や組合員としての関与を持たない専門的な者 による監査を求めるとの員外監事の趣旨からは、設置を義務付けることについてそれを どのように考えるかとの御議論がございました。  3、常勤監事の設置の義務付けとしまして、一定規模以上の生協には常勤監事の設置 を義務付けるべきではないかとの御意見がございました。  II、購買事業でございます。1、基本的な考え方でございますが、員外利用規制や県 域規制の見直しに当たっては、生協の本旨やその公共性・公益性と見直しの必要性との バランスをとりながら見直しを行うことが必要である、また、生協が公共性・公益性を 発揮するための基盤整備も必要とされました。  2、員外利用規制でございます。員外利用規制の見直しについては、生協は一般消費 者の相互扶助組織であるという基本的考え方に基づき、員外利用の許可制度を維持し、 可能な場合を法令上個別具体的に限定列挙するという考え方と、定款に定めれば許可な く2割の範囲内で員外利用を認めるという考え方が両方出されておりまして、これにつ いてどのように考えるかが御議論となっております。また、災害時の緊急物資提供等の 公共政策の観点から必要となる場合など、一定の場合について員外利用を可能とすべき ではないかとの御議論がございました。さらに、員外利用規制の見直しを検討するに当 たり、他の協同組合と生協の性格の異同についてどのように考えるかが御議論となって おります。  3、県域規制でございます。広域で生活圏や生協の活動範囲をとらえて問題なく、組 合員サービスの向上にもポジティブに働くことから、県域規制を見直して問題ないので はないかという方向性が出されております。その範囲については、「一定の地域による 人と人との結合」という生協の本旨を踏まえ、一定の範囲を限って都道府県の区域を越 えて地域生協の区域を設定することができるとしてはどうかとの御議論がございまし た。また、その場合、生協の本旨と合理的な事業実施のためのエリアとの関係で具体的 な区域の範囲をどのように考えるかという御議論がございました。  III 、利用事業でございます。1、基本的な考え方ですが、少子高齢化や地域におけ るつながりの希薄化が進む中で、介護など福祉に関する組合員ニーズを受けて、地域で 支援が必要な人をコミュニティで受けとめ、支え合うため、福祉事業と福祉活動の両方 を育てていくことが必要であるとされております。  2、医療・福祉の非営利性の徹底でございます。医療の非営利性など、医療・福祉の 性格にかんがみ、生協が行う医療・福祉事業についてもその非営利性を高めるため、区 分経理をし、各会計から他の会計への資金移動を行わないこととするほか、対象事業に 係る剰余金の割戻しの禁止や、対象となる事業の残余財産の帰属先を制限する措置を講 ずるべきではないかということについて御議論いただいております。また、この場合、 共通の資産や経費を分離して経理することは実務的に可能かとの御意見がございまし た。  3、剰余金の使途たる事業の拡大でございますが、生協が実施する事業のうち、福祉 事業には購買事業とは異なる性質があることを踏まえ、組合員による福祉活動を推進す るための手段を講じることが必要であるとされております。  IV、共済事業でございます。1、基本的な考え方でございますが、生協共済と保険に は一定の差異が認められるものの、破綻時に契約者に与えるリスクが大きいことを踏ま えれば、一定の規制が必要であるとされております。また、そのスタンスですが、協同 組合の特性を今後とも維持、発展していけるよう、他の協同組合法における規定の整備 状況を参考にしながら法改正を行うことが必要であるとされております。  2、契約者保護に関する規制の振り分けでございますが、高度な規制とそうでない規 制を行う場合には、加入者に自己責任で損失を負担させてもいいか(少額かどうか)、 実質的な自治が機能しているかという視点があるとされております。また、共済制度の 見直しに当たっては、他の協同組合法にならうこととするが、生協の特質を踏まえ、特 に配慮すべきことはあるか、具体的には兼業規制について、生協が総合的に事業を実施 していることや、組合員のニーズに応えて事業を実施していることについてはどのよう に考えるかが御議論となっております。  V 、その他でございますが、職域生協と地域生協の混合組合を認めるべきではないか との御意見や、大学生協において学生は、大学という職域の附近に居住する者として組 合員になっているが、本来の組合員として位置付けるべきではないかとの御意見がござ いました。  続きまして資料3でございます。残された検討項目の御説明をさせていただきます。 これまでの検討会でいろいろな御議論があった項目や、委員から新たな論点として出さ れた項目についてまとめた資料でございます。全部で8つの項目について御議論いただ きたいと思っております。  まずは組織・運営規定に関する項目として、員外監事の設置の義務付けと常勤監事の 設置の義務付けの2つがございます。員外監事の設置の義務付けでございますが、前回 までに事務局が提案した方向性は1ページのとおりでございます。  前回の御議論を踏まえてまとめ直した資料が2ページでございます。前回、その趣旨 を踏まえて検討してはどうかという御意見をいただいた員外監事設置の趣旨でございま すが、客観的、第三者的な立場で業務執行の是非について意見を述べることができるこ とと、組合内の常識とされている事柄でも、組合外の第三者の立場から評価することが 必要であり、透明性の高い、公正な経営監視体制が確立できることとされております。 一方、生協の組織運営の性格でございますが、生協では株式会社の株主とは異なり、そ れぞれの組合員が出資・利用・運営のすべてについて参画することが本旨となっており、 組合員としての立場と業務に対する中立性を求められる監事の立場とが相反する場合が 想定し得るとなっております。ちなみに、前回、品川委員から御意見がございました地 域生協の組織率の関係でございますが、最も組織率が高い組合で約6割となっておりま すが、全国47都道府県で最も組合員数の多い地域生協の平均組織率を見ますと約25%と なっております。  そこで対応案としまして、員外の範囲については、組合員でないことを要件にするこ とが適当でないかと考えております。また、その義務付けの範囲については、購買事業、 利用事業、生活文化事業及び共済事業のうち、いずれかの事業を行う組合または連合会 としてはどうかと考えております。  3ページ、常勤監事の設置の義務付けでございます。前回、監事機能の強化を図るの であれば一定規模以上の組合については常勤監事を置くことも必要ではないかとの御意 見がございました。  そこで4ページでございますが、生協の現状としては、法令上、常勤監事の設置を義 務付ける規定はございません。他制度の状況はページの一番下にあるとおりでございま す。  対応案としましては、生協が行う経済事業が高度化、複雑化していること等も考慮し、 組合の業務全般にわたる深い知識と経験等を有し、組合の日常の業務執行を監査する役 割を担う者として、購買事業、利用事業、生活文化事業及び共済事業のうちいずれかの 事業を行う組合または連合会には、その事業の規模が一定以上の場合には常勤監事を設 置しなければならないと義務付けることとしてはどうかと考えております。  続きまして、購買事業に関する論点が2つございます。1つ目は5ページ、員外利用 規制でございます。事務局が提案した方向性はそこにあるとおりでございます。  6〜8ページまでは、前回の御議論で生協と農協の異同について御意見が出たことか らまとめた資料でございます。  まず6ページは、他の協同組合における組合員資格をまとめた表でございます。表自 体は再提出資料でございますので詳細は割愛させていただきますが、農協は正組合員た る農業者がいなければ成立しないこととなっており、このため、その地区においても農 村を中心とする地域になると考えられます。一方、生協は自然人一般を対象にしており、 農協のような実質的な地域の制限はございません。  7ページをごらんください。実際に地域購買生協と農協の区域を比較してみたもので ございます。ごらんいただきますと差は歴然としておりまして、地域購買生協について は都道府県区域全体をその組合の区域とする生協が6割を超えているのに対し、農協で は0.4%にすぎないという状況になっております。  8ページは、地域購買生協と総合農協の取扱商品を比較したものでございます。地域 購買生協の取扱商品を見ますと食品が約8割を占めておりますが、農協では生産資材が 約7割を占めており、食品は1割強にとどまっております。  9ページでございます。農協は准組合員として各農協の区域に居住する者が加入でき る点と、生協の員外利用規制の関係をどのように考えるかという御議論がございました。 それを踏まえての検討でございます。農協の地区は農村を中心として設定されており、 その取扱商品は生産資材が約7割となっております。事業協同組合は一般消費者は加入 できないこととされております。一方、生協については、「一定の地域または職域にお ける人と人との結合」であり、一般消費者の相互扶助組織という性格がございます。そ の購買事業における取扱商品は食品を中心とした消費財であり、展開地域も広域となっ ております。また、員外利用の禁止・許可制度は、農協等他の協同組合とは異なる、こ のような生協の特質を踏まえ、中小商工業者との関係から設けられた規制でございます。 これらを踏まえますと、員外利用の禁止・許可制度を撤廃し、定款に定めれば許可なく 組合員の利用分量の一定割合まで員外利用を可能とすることは、一般小売業等との相違 を曖昧にしてしまうのではないかと考えております。  そこで、これまでの御議論を踏まえた対応案でございます。員外利用の禁止・許可制 度を引き続き維持することとしてはどうかと考えております。また、行政庁の許可によ り員外利用が例外的に認められる場合については、法令上、個別具体的に限定して定め ることとしてはどうかと考えております。また、具体的な事由として、生協が社会に貢 献することが求められている現状を踏まえ、現行の離島、へき地等で生協以外に利用で きる施設が存在しない場合のほか、合理的な理由のあるものを追加してはどうかと考え ております。さらに、行政庁の許可により員外利用が認められる場合の員外利用の限度 を原則100分の20として法令上定めることとしてはどうかと考えております。  続きまして10ページ、購買事業に関する残された論点、県域規制でございます。前回 までにお示しした方向性はそこにあるとおりでございます。  11ページをごらんください。県域規制の緩和の必要性として挙げられております県境 問題について解説したものでございます。左の図は、道路整備、モータリゼーションの 進展、都市の広域化等により生活圏が拡大する前の状態を示したものでございます。左 がA県、右がB県となっておりますが、B県には水色部分で示した生活圏が存在してお り、その中にB生協の店舗が2店ある図でございます。右上にはB県民のための共同購 入拠点としてB生協配送センターが設けられております。  右の図は、道路整備が進み、主要幹線道路がA、B県境をまたいで整備されたことに 伴い、都市化が進み、付近住民が格段に増加しております。このような状況と現行の県 域規制の関係でございますが、県境付近の主要幹線道路が交差する地点付近にB生協3 号店が既に出店している場合のことを想定していただきたいと思います。その場合、B 生協3号店はA県の住民にとって利用の便がよい場所であるにもかかわらず、B生協が 他県の生協のため、組合員となって利用することができません。  県境問題はヒアリングでも、県境付近にある店舗を利用できないという御意見が出て いたように、このような付近住民から見た視点での問題が主たる問題ではございますが、 それを事業実施主体である生協の側から見ると次のような問題があるのも事実かと思い ます。すなわち、B生協がこれから3号店を出店しようとしている場合を考えていただ きますと、B生協は県境付近の立地条件のよいところに店舗を出店しても、同一生活圏 内のすべての住民を事業実施の対象とできないこととなります。これは、A県内まで続 く主要幹線道路沿いに共同購入の配送センターを設けた場合でも同様となります。この 場合、仮に前回までにお示しした改正の方向性に従って連接都府県まで区域設定を可能 としますと、これらの問題が解消され、組合員の利便性や事業の効率性が高まり、組合 員サービスの向上等に資することとなります。  そこで12ページでございます。これまでの御議論を踏まえまして、生協における地域 のとらえ方でございますが、法制定当初は、「地域組合は、家族を中心とする消費者の 地縁的結合体で組合の地域は組合員の住所の連鎖的結合を必要とする」とされておりま した。その後、生協を取り巻く状況の変化として、都道府県域を越えたチェーンストア の展開、道路整備、モータリゼーションの進展、都市の広域化が進み、約65%の地域生 協が都道府県全域を区域としているように生協の区域は広域化し、その地域の概念は実 質的に変化してきております。これに伴い、法制定当初は想定していなかった県境問題 が発生するに至っております。  御議論を踏まえての検討としまして、地域の変化に伴い発生してきた県境問題への対 応の必要性がございます。連接都府県まで生協の区域設定を認めることにより、この県 境問題は解決できると考えております。さらに、地域生協が「一定の地域における人と 人との結合」である以上、一定の地域制限をかけることは必要なのではないかと考えて おります。  そこで、購買事業の実施のために必要と認める場合には、主たる事務所の所在地であ る都府県の連接都府県まで、都府県の区域を越えて地域制限の区域を設定できることと してはどうかと考えております。  続きまして、利用事業に関して残された論点にまいりたいと思います。項目は1つで ございまして、13ページ、医療・福祉事業の非営利性の徹底でございます。事務局が提 案した方向性はそこにあるとおりでございます。  14ページでございます。医療・福祉に関する特別会計を創設するに当たっては、医療 事業や福祉事業に係る貸借対照表や損益計算書の作成が必要でございます。例えば網か けの部分などはそれぞれの事業に共通する部分も含まれております。  これらを踏まえて15ページでございます。前回の御議論を踏まえての検討でございま すが、共通資産や経費などがある中で事業ごとに区分することは困難ではないかという 御意見に対して、医療・福祉に関する特別会計を創設するに当たって医療事業や福祉事 業に係る貸借対照表や損益計算書を作成する場合、それらの財務諸表中の各科目につい て、医療事業に係るものや福祉事業に係るものへの仕訳を行うことといたします。特に 出資金の帰属先や固定資産、人件費等の共通経費については一定の合理的配分基準を設 け、それをもとに按分していただいてはどうかと考えております。  そこで対応案でございますが、16ページに図示しておりますので、そちらをごらんい ただけますでしょうか。共通資産、経費を按分し、事業ごとに区分した上で、割戻しを 禁止することや対象事業に係る剰余金の資金移動を行うことを禁止すると定めてはどう かと考えております。また、その際の対象事業でございますが、医療については病院、 診療所の業務、訪問介護等の業務のほか、組合が定款で定める事業を含めてはどうかと 考えております。具体的には、医療事業に係る特別会計に社会福祉等の業務を含めるこ とを可能にしてはどうかと考えております。逆に、福祉事業の特別会計については、社 会福祉事業等のほかに、定款で病院等の事業を定めることも可能にしてはどうかと考え ております。  続きまして、共済事業に関して残された論点にまいりたいと思います。17ページ、共 済事業とのリスク遮断でございます。事務局が提案した方向性はそこにあるとおりでご ざいます。  18ページでございます。兼業規制の趣旨ですが、他の事業の財務状況による影響を受 けることを防ぐことにより、共済事業の独立した健全性を確保し、もって契約者を保護 するものということでございます。御議論を踏まえての検討につきまして、まず生協の 現状については検討会でも大塚委員を初めとする委員から御発言がありましたように、 生協は組合員の相互扶助組織として各種サービスを総合的に提供することが基本であ り、これまでも共済事業と他の事業それぞれの健全性を確保しながら兼業しているとい う例が存在しております。続きまして、農協にならい、単位組合については兼業を禁止 しないとすることについての検討でございます。農協では連合会が共同元受で、かつ支 払い責任を全額負っていることから、連合会にのみ兼業規制が講じられているものと考 えられます。一方、生協では同様の仕組みをとっていないため、農協法と同じ考え方は とれないと考えております。最後に、完全な兼業禁止の代わりに区分経理等で対応する ことの適否でございますが、外部債権者との関係を考えた場合は兼業を禁止することが より適当なのではないかと考えております。  これらを踏まえて対応案でございますが、生協は連合会、単位組合であるとを問わず、 組合員のニーズに応じて各種サービスを総合的に提供しており、その意義は確かに大き なものがございます。しかしながら、一方で、事業規模が一定以上の組合については利 害関係人が多数かつ広範囲にわたるため、共済事業以外の事業の財務状況が悪化し、そ れが共済事業に影響を及ぼした場合に契約者に与える影響は大きくなっております。し たがって、再共済または再々共済を実施する連合会に加え、共済事業が一定規模以上の 場合には単位組合及び連合会を問わず、他の事業を行うことができないこととしてはど うかと考えております。  最後に、その他としまして2点ございます。19ページをごらんください。1点目は、 混合組合を認めるべきではないかとの御意見に関するものでございます。  20ページでございます。混合組合を認めるという御要望の趣旨をわかりやすくするた めに、これまでの検討会での御意見をお示ししております。もし御意見の趣旨が異なっ ているようであれば、その旨、後で品川委員に御指摘いただければ幸いです。職域生協 のうち、職域のその県内における広がりゆえに生協の事業展開が地域に広がっており、 地域生協的な要素を有する職域組合について、現在では組合員の過半数が地域の組合員 になった場合には職域生協から地域生協に転じるよう通知で指導しているのですが、そ のようにして地域生協に転じた場合には県域規制を受けるため、当該企業が工場等を他 県に展開するに当たって支障が生じているという事実を解消してほしいとの御主張かと 思います。  そこで21ページでございますが、現行生協法における混合組合の取扱いでございます が、現行生協法においては地域、職域、両方の要素を持つ生協についても職域組合とし て設立可能であるとするとともに、あわせて都道府県を区域とできることとされており ます。  また、22ページでございますが、地域と職域の両方の要素が混在している組合につい て、組合員数の過半数により、これを地域組合か職域組合とするとされております。そ こで、仮に地域住民である組合員が過半数となった場合には、職域生協から地域生協に 転ずることとなりますが、その場合には県域規制がかかることとなります。しかしなが ら、地域の組合員数が過半数となっている組合でも、特段の理由がある場合には職域組 合として存続し、都道府県の区域を越えることが可能となっておりますので、現在でも 地域的な要素を含む生協が母体企業の他県への工場進出等に伴って都道府県の区域を越 えて他県工場の職域、あるいはその付近での事業実施を行うことも可能とされておりま す。  23ページ、大学生協の組合員資格でございます。大学生協に加入する際に、学生は大 学という職域の附近に居住する者として組合員になっているが、本来の組合員として位 置付けてはどうかという御意見がございました。  そこで24ページをごらんください。対応案でございますが、御意見のとおり、法令上 明確に位置付けてはどうかと考えております。  続きまして資料4、これまでの検討会に提出した改正の方向性一覧でございます。第 3〜5回までの検討会において事務局が提出した資料中、改正の方向性を抽出し、テー マごとに並べ直すなどして一覧としたものでございます。また、ただいま御説明しまし た、資料3で残された検討項目として御説明した項目は一覧から除外しております。こ ちらの資料はこれまでにお示ししたものでもございますし、時間の関係もございますの で、説明は省略させていただきます。  最後に資料5、生協の事業種別寄与度でございます。これは先日吉野委員から、何の 事業で生協を支えているのかという御質問がございまして、その事業ごとの寄与度につ いて御質問に答えるために御用意した資料でございます。過去にお示しした資料と同様、 日本生活協同組合連合会会員のうち福祉事業を実施している組合について、兼業状況別 に経常剰余の事業種別寄与度をお示ししたものでございます。兼業状況による区分でご ざいますが、いずれをごらんいただきましても購買事業の影響は大きく、共同購入はプ ラスの寄与、店舗事業はマイナスの寄与を示しております。  長くなりましたが、以上でございます。 ○ 清成座長  どうもありがとうございました。ただいまの御説明に対して御意見をいただきたいわ けでございますが、どこからでも結構でございますので御意見をちょうだいしたいと思 います。いかがでしょうか。 ○ 大塚委員  事務局にこれだけまとめていただいてから重大なことを申し上げるのは、ぶっ飛ばさ れそうで、もうお会いできないかと思うんですけれども、組織・運営規定をまとめてい ただいて、この2点が一番の論点であることは私も重々承知して今まで考えてきたんで すが、総会の位置付けなんですね。現行生協法を見てどこに書いてあるかを探してみま すという話を前にしたと思うんですけれども、43条に総会の位置付けがあるんですね。 その規定を見ていたところ、我々の目から見ると会社法的な目で見てしまいまして、現 行会社法は295条という条文で、まず総会がどんなものかという位置付けが2つの方向 に分かれて規定されていて、1項では株主総会は何でもできると書いてあるんですね。 2項では株主総会は本法で定めることしかできないと書いてあって、株式会社の場合は 営利事業をやりますので、生協法で言う管理ではなくて業務ということになるんですけ ども、その違いを捨象すると、まず総会の位置付けがどっちだというのを規定して話が 進むようになってるんです。新会社法の前までは株式会社といえば株主総会は黙ってろ と、本法に規定されたこと、あるいは定款で定めたことしか決められないと。現行でい うと295条の2項の方が唯一あった規定なんですね。それが会社法改正で、有限会社と か中小規模、零細規模の会社が入ってきたので、株式会社はそういうパターンであれば 株主総会が万能で何でも決めることもできるんだというので1項が入ったという経緯が ございます。  その会社法的な業務執行の一番の基礎論からすると、生協法43条の規定というのは、 どっちかわからないというのが感覚的に総会の位置付けを難しくしてるんじゃないかと 思うんですね。43条を見ますと、「左の事項は、総会の議決を経なければならない。」 と書いてあるものですから、感覚的に読むと総会はこれしか決められないと書いてある、 会社法295条2項の感覚も持てるんですが、ところが内容を見ますと、いろいろ定まっ てるんですね。1〜11号までを見ますと、組合の事業管理については総会は何でもタッ チはできるというようにも読めるわけでして、そこの43条をこのまま生かしたままでい くのか、あるいは、総会は何でも定められるとするのか、総会は左の事項しか決められ ないとするのか、基本方針を入れることができるのかできないのかという問題は大きな 問題としてあるのかなと思ったところでして、僕個人の考えで言わせていただくと、こ こで前々から申し上げていたとおり、生協の特徴からすると、理念として組合員の総意 ということをどこかで書いておいた方がいいんじゃないかなという気がしないでもない んですね。そうすると43条は、総会というのは何でも決められるんだよと、特に左に掲 げるようなことねとかいうニュアンスの規定になるのかなと。あるいは、それだとどこ かに差しさわりが出てしまうのかなと。その点をここで新たに論議し出すと大変かなと 思うんですが、重要なことかなと思って指摘させていただきたいんです。  以上です。長くなりました。 ○ 清成座長  今の点で、山下委員、何か御意見ございますでしょうか。 ○ 山下委員  大塚委員の今の御意見というのは、株式会社でいえば人的な色彩が濃い方の会社に合 わせて総会が最高機関であると。だから今の公開会社のように総会で決議できる事項と いうのは限定して、なるべく取締役会にゆだねるという方向とは違う方向を明らかにし ておいた方がいいのではないかと。それは確かに、協同組合の考え方からいけば、いか に組合員が多数いて、実際には総会といってもなかなか機能しないけど、理念としては 総会が最高機関になるというのはあり得る話だろうと思います。そこが相互会社とは違 うと。それはあり得る話だろうと思いますが、具体的にどこまでをというあたりになる と、なかなか一般論では決まらないところもあるかなと思うんですね。2号で規約の設 定、変更とか、こういうのは共済の約款も総会の決議事項になってたりするというあた りが実際的かなと。理念としてはわかるけど実際的かとか、いろいろ細かい問題を考え ていくと問題がありそうなので、少し事務局に問題点を洗ってもらってから考えた方が いいかなと。私も結論らしいものがよくわからないです。 ○ 清成座長  この点は事務局で御検討いただきたいと思います。 ○ 品川委員  ほかの点で発言させていただきます。資料2の基本的考え方のところで補強なり、つ け加えていただけないかと思う点が2つございます。  一つは、2ページですが、購買事業の基本的考え方のところで、生協の本旨、公共性 ・公益性とのバランスということで御指摘いただいておりまして、これは確かに必要な 観点の一つだと思います。同時に、この検討会での各委員の御議論なり、あるいは座長 の御指摘にもあったかと思うのですけれども、全体として経済的関係での規制というの はできるだけ緩和なり撤廃をし、生協の組織の本旨にかかわる問題について今日的な規 制のあり方を検討するという考え方が必要なのではないかという御指摘があります。特 に今日的にいいますと、各種日本の社会における制度、システムについて行政による事 前規制から事後チェック型へと大きく転換しているという流れでもありますし、そうい う内容をもう一つ基本的考え方に一本立てて、購買事業のあり方について御検討いただ くということを、まず基本点として押さえていただけないかということが一つです。  それからもう一つは、3ページに、利用事業の基本的考え方という御指摘をいただい ています。具体的には福祉事業と福祉活動を両方育てていくことが必要であるという結 論でございまして、このこと自体は私も賛同するのでありますけれども、これも前回の 論議にありましたように、福祉事業なり福祉活動というのを狭義にとらえるのではなく、 育児支援ですとか、消費者トラブルの相談、自立支援、事業を通じてのコミュニティの 再興なり活性化なり、いろんな意味で公共性・公益性という面の諸活動が存在するので ありまして、福祉事業、福祉活動について狭い意味ではなくて、極力広い意味でとらえ るんだということを基本的考え方の中で明示していただけないものだろうかというのが 2つ目です。  これまでの議論の整理ということで、基本的考え方をそんなふうに補強していただき たいというのが私のこの時点での発言でございます。 ○ 清成座長  どうもありがとうございました。問題は経済運営の方針みたいなものがここにきて大 きく変わったという、それが定着する考え方なのか、あるいはまた変わり得るのかとい う話が一つあると思うんですけれども、現実に少子高齢化ということが進んでいて、そ うなるとどうしても労働力人口が減ってきますよね。イノベーションなんて言ってます けど、経済成長率3%を想定していてもなかなか難しいということになると、現実には 税収はそれほど上がらない、成長率もそんなに高くならないという可能性があって、社 会保障負担が強まっていくと財政危機ということが当然出てきますよね。そうなると事 前規制から事後チェックへということは、どうやら21世紀に定着しそうなフレームだと 思うんですね。その辺を考え方としてはっきり出すか出さないかというあたりが一つあ ります。  そういう問題と、もう一つは、今言ったようなことが国際的にどうなのかということ になると、先進諸国、大体そういう傾向になってきているということも確かなんですね。 そういう枠組みを前提にした場合、生協のテリトリー、存在意義というのは一体何なの かと。生協の役割とか存在意義を改めて整理し直すというときに、全体のフレームとの かかわりをどうするかというのは非常に重大な問題が残されてきていると。生協法制定 の頃と今とでは相当状況が違うんじゃないかということは認識しておかなきゃならない かもしれませんですね。  そのほかいかがでしょうか。 ○ 吉野委員  県域規制についての具体的な対応案の説明、これ変じゃないですか。A県とB県の間 でこういう問題があるからという理由でA県とB県の間の県域規制を外すんだったら、 B県とC県の間でも同じことが起こりうるんだから、これをどんどん展開していったら 全国境がなくなっちゃうはずで、こういう説明は成立しないんじゃないですか。私自身 は購買事業に関しては県域規制などは撤廃しちゃえばいいと思ってるんですけども、し かし、この説明はおかしいんじゃないかという気がします。  それからもう一点、今の話は揚げ足を取ってるわけではなくて、今座長がおっしゃっ たお話は、言い方を変えると、今日の地域社会において生協がどういう役割を持ってい るかという話でもあります。そういう意味では、今日極めて深刻な、急がれる問題は、 地域社会がいろいろな場面でいろいろな形で変質あるいは崩壊しているということです ね。この問題に関して生協に課せられた課題は相当大きなものがあるんじゃないかと思 います。県域がどうしたこうしたという話は全く形式的なことで、もっと現実に基づい て話をしなければいけないんじゃないかと思うんです。  さらに、員外利用規制の話も現実に即した話をすべきだ。員外利用規制について資料 3の9ページに、対応案の根拠として、一般小売業等との相違を曖昧にしてしまうので はないかということが書いてあるんですが、実態としては一般小売業との違いなんてな いわけで、なくていいわけです。それは地域住民にとってみれば生協の店舗と隣の小売 店との違いなんて全然意識してないからです。それを意識させる必要性がもしあるとす れば、それは生協内部の運動として、これは小売業とは違う理念でやっているんだとい う話から出てくるのではないかと思いますが、そうでなければ、国民的な視点からいえ ばこんな違いはむしろなくす方向でやっていかなければならないのではないかと私は思 うんです。そういう意味でも購買事業に関しては員外利用規制も撤廃して構わないと私 は思ってるんです。 ○ 清成座長  どうなんですかね。例えば社会的規制について企業よりも生協の方が敏感であるとい うことは言えなくもないだろうと。例えば安全性とかいうところですね。企業が鈍感だ というわけではもちろんないわけですから、程度の差かもしれないんですけども。とい って生協ならではの生協開発商品で非常にはっきりしたものがあるのかないのかという 問題もありますけどね。 ○ 吉野委員  それはもしあるとすれば、地域住民の側から見た時に、その生協店舗の特徴として認 識される話で、それがあるから別の事業であるというふうにしなければいけない理由に はならないのではないかと。 ○ 清成座長  それはそうかもしれませんね。 ○ 品川委員  今の点についていいますと、行政による規制の枠組みがあるから、例えば安全性の問 題について一般企業より敏感だという問題ではなくて、生協の組織の構造が株式会社の 形態ではなくて協同組合の組織構造によります。利用者である消費者が総代会を構成し、 理事も大半が消費者の選ばれた人たちが理事会を形成し、各種の日常運営についてもそ ういう人たちの声を反映する仕組みがいろんな形でとられることがあって、そういう点 では安全について敏感な消費者の声が事業運営にスムーズに、あるいは強く反映される 組織の形になっていることからくることであって、員外利用規制なり県域規制なりがあ るからそういうことになってるということとは違うのではないかと実態としては思って おります。 ○ 清成座長  もちろんそれはそのとおりで、規制があるからという話ではないと思いますけどね。 ただ、今の世の中だと、企業も消費者の動向には敏感になってくるし、マーケットの方 が敏感に動くという場面もあるんですよね。そこのところをどう考えるかですね。 ○ 吉野委員  その問題については規制を撤廃してしまった方がいいと私はさっき言ったんですけ ど、でも残るのは優遇措置を受けているという事実です。税制の優遇措置を放棄しない んだと生協が言うのだとすれば、どこかで何らかの折り合いをつけなければいけないと いう話にならざるを得ないと思います。 ○ 清成座長  議論が生協の本質論に行っちゃったわけですが。 ○ 小川委員  ずっとこれを繰り返しているので、今日は意見書を出させていただきました。これが 今日でタイムリーだったのかどうかはわからないんですが、吉野委員がおっしゃるよう に、員外規制、あるいは県域規制の問題だけで生協法の改正ではないということは局長 もおっしゃったとおりで、私がかかわってきた福祉という切り口で生協の社会的な存在 価値、あるいは公共性がここまで高まってきているということを整理させていただきま した。  その考えからしますと、税の優遇を受けているということが、生協が広義の福祉と人 材育成に非常に寄与できてきたこと、あるいは食の安全や環境問題、平和問題に積極的 に取り組みができたことというのは、社会的な存在価値を認められて税の優遇を受けて きたことによって、生活者の活動の資本をストックできてきたのではないかなというこ とを書かせていただいて、そのことはこれからより重要であろうと。これだけ社会保障 が後退している状況の中で、経済的弱者にされてしまっている人たちが増えるというこ とに対して、生協がこれからどういう視点で福祉事業、福祉サービスをつくっていくの か。これは介護保険事業者になることが目的ではないと思っているわけです。  そういう意味で、市民社会の暮らし、安心なセーフティネットをつくるための資本と して、これからどういう資本をストックしていくかということがとても重要だと思って いますので、県域の問題も、員外利用の問題も含めて、事務局案である種条件をつけた、 一定の基準の中でということを私は支持していると思っています。  これから公共性を担うという中で、分権社会の中で国発の提言というのは徐々に縮小 し、都道府県、市町村の権限委譲になっていくと思いますけれども、そうなると2つの 県にまたがるということは、2つの県あるいは市町村のそれぞれの地域の条例だとか、 その事情に合わせて生協も福祉活動も対応していくということ、対応する都道府県の面 が増えていくというふうにも思っていますけれども、そういう人材も育成していかなけ ればならないと。そういう意味で、市民の資本をどうやって形成するのかというのを書 かせていただいたのはそういうところにあります。 ○ 清成座長  そういう運動論というのも一つありますけれども、客観的に見て、第1セクターの市 場セクター、それから第2セクターで政府セクター、第3セクターで非営利セクターと いう、そういう3つに分けてみて、非営利セクターの中でも公共性・公益性の強い分野 と全くそうでないのがありますよね。マンションの管理組合とか学校の同窓会なんてい うのは公共性ないですよね。そういうものと公共性・公益性が強い学校法人とか生協と か、その中間に商工会議所とか商工会というのがあるのかもしれない。そこと農協は割 と近いかかわりになるのかもしれませんけど、生協と農協の違いというのはやっぱりあ るような感じもしますね。地域社会のコアになるという点では一定の意味を持つだろう と。政府セクターが財政問題からどうしても社会保障負担がどんどん増えてきますから、 どこかで歯止めをかけなきゃならないという話にもなりますよね。そうなった場合に相 対的に第3セクター、その中でも公共性・公益性の強い協同組合が重要性を増してくる ということは当然あり得ると思うんですね。そうすると、全体の非営利セクターの中で 生協が一番なじみやすい事業って何なのかと。生協がやっているものでも購買事業と共 済、福祉は違うと思うんですね。市場セクターでもやれる部分というのがあるわけです よね。それは何なのかということですよね。  市場セクターと生協のセクターが重なり合う部分もあるし、政府セクターと生協セク ターが重なり合う部分もあるんですよね。場合によってはそこは協力した方がいいのか もしれないとか、そういうことがあると思うんですね。生協というのはマーケットメカ ニズムを支えるセーフティネットの一つだろうとは思います。その役割がこれから一番 強くなるのかもしれない。特に地域社会のコアになるようなという点ではですね。これ は生協法制定時には想定されなかったことなんだろうという感じがします。だから、そ このところの整理をどういうふうにするか。非営利セクターの中で仕分けてみて、生協 に一番なじみやすい分野って何なのかという、そこの議論が余り議論の対象になってな いんですよね。これは学問分野としてもそういうことを議論する学会とか研究者ってそ んなにいないんですね。そこは学者の怠慢だと思いますけどね。 ○ 大塚委員  この際はっきりしておきたいと思うことがありまして、吉野委員や小川委員の御発言 を聞いてて、なるほどと感じるところや疑問に思うところがあったんですけれども、例 えば先ほどの資料で、B県の生協は絶対これはA県の人間には使わせてくれるなという 総意を持っている生協だとしますよね。そのときでも生協であるがゆえに、こういうセ クターに属するんだという性質を帯びているがゆえに、基本的には県境のAの方に利便 を与えるんだったら使わせてやるべきなのか、あるいはつくった生協自身が、これはお れたちが出資金払ってやった組合員の互助組織であるんだからほかには絶対使わせてく れるなと。もしほかには絶対使わせてくれるなという取り決めがあるんだとすれば員外 も何もなくなるわけで、どっちなんですかね、基本的に。 ○ 清成座長  多分、現実の地域社会というのは行政の区域とはかかわりないんですよね。それを越 えてしまうという話と、もう一つは、ローカルな地域社会の壁というのはどんどん壊れ ているわけですよね。そういう問題が一方であって、道州制なんていうのが実施された ら県域規制なんてナンセンスになってしまうんですね。今問われているのは、県域その もののあり方が問われちゃってるんですね。  日本にいるとよくわかりませんけど、例えばEUなんかを見たら、ライン川流域を見 ると、国境を越えた地域形成というのは当たり前になってるんですよね。フランスとド イツとか。バーゼルのあたりになると南バーデンと南アルザスとバーゼルの都市地域で 一つの地域になってるんですよね。完全に言葉もバイリンガルだし、混合文化だしとい う、むしろそれを推し進めるべきではないかという話になっていくわけです。日本のよ うに周りが海になっていますと、なかなかそうはっきりは言えないわけですけども。グ ローバリゼーションが進むときには地域の単位というのももう一回問われてしまうよう なことがあるんですね。フランスでもEU統合の中で83年でしたか、地域分権一括法と いうのができて、分権化すると同時に特定地域にはてこ入れしなきゃならないといった ようなことが起こってきたわけです。これは各国でそういうことが起こっているわけで す。それを考えると、余り既存の行政区分というのを絶対視するのも、これから長い目 で見た場合に現実に合わないのかなという感じがしてならないんですけどね。 ○ 小川委員  生協にかかわっている組合員たちは、自分たちの共同購入しているものに対してこだ わり、自信を持って生産者に開発してもらっているわけです。生産から物流までこだわ ってサイクルしているわけですけれども、自分たちが選ぶものをより多くの人に使って もらいたいというのは閉鎖性ではなくて、むしろ共有したいと。しかし、一方で一人一 票という組織としてのメンバーシップの民主主義をどうするかという問題を勘違いして しまうと、メンバーシップ論と員外利用が相殺されるような話になってしまうんですが、 そうではないんですね。一人一票をどのように組合員の中で考えるかという議論がない まま地域の問題や員外利用の問題が出てしまうことを、どこまで日本の生協全体で議論 しているかもありますけれども、私たちとしたら安全なものをより多くの人と共有して、 その生産にもコストの問題、消費の部分でもコストの問題で全部はね返ってくるわけで すから、そのことは悩んで考えていると思います。 ○ 品川委員  大塚先生が言われたこととの関係では、行政なり法律による地域制限というのが緩和 なり一部なくなったとしても、実際にその生協が隣の県の住民まで組合員にするかどう かというのは、基本的にそれは定款で定めること、それぞれの組合の自治によって定め ることということですから、定款で定めないところまで行政が命令することは当然でき ないでしょうし、許可したからといってそうしなければいけないということはない。そ こはまさに組合の自治にゆだねられている範囲だろうと思います。  それから、県域規制の問題が論点になっておりますので、今日事務局から説明されま した県域規制にかかわる資料の12ページのところで、結論的には、購買事業の実施のた めに必要と認める場合には主たる事務所の所在地云々という形になっております。前回 までは、「購買事業の実施のために必要と認める場合には」という条件がなく提示され ていたと思うのであります。先ほど来論議のありますような生活圏というのが都道府県 あるいは行政区域に縛られているわけではないということでいいますと、購買事業だけ じゃなくて利用事業にしても、その他の事業にしても、生協の事業全般にかかわってそ れは言えるわけでありまして、今回からこの条件つきというふうになったのは解せない と思っているところでございます。  もう一つの論点であります員外利用の問題についてですが、これについての結論は9 ページの一番下にあると思いますけれども、この間縷々説明されておりますように、現 在の法律では員外利用は禁止だと。正当な理由がある場合に例外を省令で定めると。3 つ目に行政による許可と。員外利用についてはそういう3通りの扱いをされているとい うのが現行法であります。そういう中で、省令による正当な理由による例外規定という ことについては、それこそヒアリングに際して日本商工会議所の方もおっしゃっていた ように、そういう例外事項をはっきりさせることは必要だろうという御指摘があったの ですけれども、今日お示しいただいている案は、省令による正当な理由という部分がな くて、すべて行政の許可によるというふうになってしまっているように読めるのですけ れども、それはいかがかという点が一つ。  それから2つ目に、行政庁の許可による場合も法令上個別具体的に限定して定めると いうことがあるんですけれども、現行法は行政庁の許可について、都道府県認可の組合 の場合は都道府県知事にゆだねられているわけであります。これを今回法令上個別具体 的に限定するとなると、地方自治法の流れ等ともむしろ逆行する、法令で員外利用許可 について新たな枠がはめられるということになるのではないかということが一つ。  例示としてその下に出ております現行の離島、へき地等というのがございますけれど も、離島、へき地等についての員外利用許可を出してもいいという行政通知は、それこ そ法制定直後の昭和20年代に出されている行政通知でして、今の時点でこれがまた出さ れて例示されるというのは、これも解せないところです。  加えて、現在、行政庁の許可によって員外利用が認められる場合、多くが100分の20 などという制限なく認められているんですけれども、今回出されているものですと行政 庁の許可は100分の20という枠をはめようということですから、そんな点でいいますと、 この9ページの案は現行の員外利用規制について、さらに規制を強める案というふうに 理解せざるを得ないというのが率直なところでございます。そういう点では、この間縷 々出ておりますように、現実の生活の実態なり、消費行動のありようなりということか らさまざまな支障があったり、地域社会なり公益性なりという面で生協が役割を果たす という点でどうなのか。そんな点を含めて、方向としてはぜひ、員外利用規制について 今日的にどういう方向で緩和するかということでの施策の検討をお願いしたいと思って おります。 ○ 山下委員  法律家なものですから、制度の面からつい考えてしまいがちなんですが、経済活動と して見れば、一般の株式会社が提供している事業であれ、生協が提供しているものであ れ、公益法人が、公的な機関がやるものも、経済的な機能としては全く同じ、一つのマ ーケットの中で競争しているということは当然あると思うんですけれども、制度として 一般の企業形態と違うものとして生協という形態が認められていると。消費者が同じ理 念を共有しながら組合員となって企業を一つつくり上げて活動していくと。そこに意味 があるものとして法律上こういう企業形態が認められているということではないかと思 うので、そういう面からいくと、員外利用規制と県域規制について考えると、員外利用 規制というのは組合には非常になじみやすい規制だろうという気はするんですね。とは いいながら、じゃあこれを厳格に適用して員外は一切認めないということでいいのかと いうと、そこは現実とのいろいろな妥協、政策的な考慮を持って例外を認めていくと。 それがどこまでかという議論を今しているわけで、員外利用がなぜこれを広げていくこ とが必要なのか、その説明をどうするかということだろうと思うんですね。生協も事業 者だから活動の規制は極力外して、普通の会社と同じようにだれにでもサービスを提供 させるようにしてほしいということがあるとすると、ちょっとこれは組合の制度とはな じまないものがある。でも現実に地域社会の中でやっているから、ある程度の規模の範 囲内であれば地域の人が必ずしも組合員にならなくても利用できるぐらいのことを認め ていいんじゃないかとか、組合としても厳格にメンバーに限って事業をやるよりも、員 外の人も利用してくれればそれだけ経済的な利益も出てきて、より活動がしっかりした ものになるとか、そういういろんな理由があるかと思うので、そこをどう整理するかと いうことで、私もある程度柔軟にするという方向を認めていいかなと思っています。  それから、県域規制の方については、一定の地域とか職域における人の結合で相互扶 助をする組織だから組合があるという理屈から、一定の地域の制限というのは当然にあ るでしょうと。それがたまたま歴史的な事情で県の境界ということになってきたかと思 うんですけれども、人と人との結合で相互扶助をするというのが文字どおりの地域とい うことでないと成り立たない話なのか、県なんかよりもずっと広い範囲でやってても理 念として組合員が共有できるようなものがあるということであれば、それだって生協に ふさわしい事業範囲として認めるという考え方は十分にあるように思うので、生協がど ういう事業をやるか、事業の類型によっても随分違ってくるかと思うんですね。県域規 制ということだけを取り上げて議論すると、もう一つナンセンスのような気もするんで すけれども、実際どういう事業でどこまで広げていくことが必要なのか。その場合に組 合員の間にどういう連帯関係のようなものが残るのか。そのあたりを少し議論しないと、 11ページのような案が少しおかしいねということから、一挙になくなっていいという話 でもないし、これもまたどこまで広げるかを少し知恵を出さないといけないところじゃ ないかと思っています。 ○ 清成座長  大変重要な御指摘だと思うんですが、例えば小川委員のおっしゃるような理念が、既 存の地域社会というふうに考えないで、例えば購買事業等でも、生協独自の商品をつく ったと。それに同調する人は全国にいると。そうするとネットを通して、組合員という のは既存の県とはかかわりなく全国に、場合によっては外国にもいるかもしれないとい う、その地域のあり方というのが、ある意味でローカルで固まってるものが残りながら、 他方では際限なく外に広がっていってネットでつながるような、そういうふうに地域の あり方も変わってきちゃってるような感じがするんですよね。生協で開発したいい商品 を皆さんに利用してほしいというんだったら、これはもう全国という話になりますよね。 その方がコストも下がるということになるし。しかし、そういうことをそのものが人と 人との結びつきであって、株式会社とは違う。だけど県域に関係なく広がっていくとい う側面と、福祉のようにローカルなコミュニティのようなものがベースになって地域の 中で助け合うという側面と、事業の類型によって地域の広がり方がだいぶ違うのかなと いう感じはしますね。 ○ 小川委員  山下委員がおっしゃったように、例えば福祉でも、自治体の福祉施策を軸にして動い たり、あるいは国の施策で動いたりする、それに合わせて私たちは生きてるわけじゃな いんですね、本当は。地域に区切って生きてるわけではない。それは食の安全にしろ、 平和や環境問題というのは地球規模の問題だし、その発信もしてきている。自分の県さ えよければいいという福祉でもなければ、私だけ安全なものを食べればいいという食の 安全でもないということでは、規制がかかっているのはおかしい。そうすると、吉野委 員の論で、市場のスーパー、シルバービジネス、公共の福祉サービスと協同組合がする ものは何が違うかを論じないまま員外や県域というのは危険だろうというので、一生懸 命論じなきゃいけないというのでペーパーを書いたり、いろいろしているわけですが、 先ほど品川委員がおっしゃったように、ある種自分たちのルール、自己管理基準みたい なものをどこまで生協自身が示せるかということにもかかってきてるかなと。今までは 法律で規制されていることに合わせて動いてきてるけれども、それが緩和されるとなっ たときには、今度は自分たちの自己ルールを協同組合間共同で、あるいは生協間共同で、 どうするかというのがないといけないかなというふうには思っています。  それからもう一つは、非常にこだわるようですけれども、規制緩和、地域の問題、県 域の問題と、税制の問題というのが非常にリンクされて考えられてしまうことに対して、 新たな公共性をつくっていく資本をどこにつくっていくのか。株式会社と違うところは、 そこが圧倒的に強いと思ってますけれども、そういうふうに考えています。ただ、現実 的には、福祉事業をしていましても、最近では営利であっても非営利であっても協同組 合であっても、顧客サービスとしては非常に営利も努力していますし、どこが違うのか ということを問われがちですが、今日のペーパーの2ページにありましたように、福祉 事業と福祉活動というのがあって、生協の中での組合員の福祉活動というのは、ニーズ の発信者としての声を集約する、福祉事業としてサービスをつくったら、それをまたチ ェックをかけるという、内部でのチェック機能としては、それがメンバーシップのよさ でもあるかもしれませんが、そういうことは機能してきているのは、消費者が近いとい うことは福祉でも食の安全でも出てきているなと思っています。 ○ 吉野委員  税金の話は軽い問題ではありません。言葉を変えれば生協に公的な補助をしていると いう話ですから、自治体レベルの話であっても、国レベルの話であっても、生協に対す る税優遇という形でもって福祉の問題を解決するのがいいのか、それともほかの形の方 がいいのかということは根本から考えてやるべきときに来ているという話だと思うんで すね。それだけ生協はそれに対する答えをきちんとまじめに出さなきゃいけない局面に 今来ているんだと私は思います。生協にはそれだけの実績があるということは私は認め るんです。それを主張なさることは大いに結構なんだけれども、それは情緒的な話では なくて、国民の選択にたえ得るものであるかという基準で説明しなければならないので はないのでしょうか。  その話の文脈で購買事業に関する県域規制などの問題を考え直す必要があると思いま す。これは私ではなくて生協側が言うべき話だと思うんですけれども、生協は現実問題 としては購買事業がなきゃ成り立たないということはさっきの参考資料で明らかなわけ です。本来、優遇措置がなくても、住民のニーズにこたえる事業として福祉なり医療を やっていけるようにする必要があるとすれば、あるいは、これ以上公的な補助に頼るこ とのないようにやっていこうとするならば、購買事業をもっとちゃんと確立していかな きゃいけないという話に生協としてはなるのではありませんか。だから、購買事業につ いては具体的な中身をもっと検討する必要がある。そうするとどういうことになるか。 さっき言ったB県からC県、C県からD県という話は理屈の話として言ったんですけれ ども、実態としては別の意味がある。つまり生協の購買事業の業態は食品スーパーしか ないわけです。食品スーパーには全国チェーンなんてあり得ないわけだから、そういう 意味でいえば一定のローカルエリアというものの限界はあるわけで、そこまでは生協の 購買事業に関して員外利用なり県域規制というものを緩和してあげなければ、生協とし ては他の事業が成り立たないんじゃありませんか。本当は生協の方がそういうことなん ですよと言うべき話だと私は思うんです。そうじゃないと、税金に頼る姿勢に疑問を持 たれることになりかねないと思うのですが。 ○ 清成座長  まあ、そうなんでしょうね。ほかにいかがでしょうか。 ○ 花咲課長補佐  資料について品川委員から御指摘がありましたので御説明させていただきたいんです けれども、員外利用規制について、今回「許可により」と書いてあるのは、委員が御懸 念されているような、省令に規定したものを全部許可に変えるという趣旨ではなく、前 回までの御議論が、法令に個別具体的に許可事由を書いた上での許可制度という考え方 と、定款で書けばそれでいいではないかという、員外利用の禁止の解除事由として、行 政庁の許可と各生協の定款の定めという2つの考え方があるが、それについてどう考え るかという御議論でしたので、それで許可制度を採用してはいかがかと書いただけであ って、特に御懸念のような、省令に書いてあるようなものも許可に変えていきたいとか、 そういった意図はございません。 ○ 品川委員  関連してお伺いしたいんですけれども、省令によって正当な理由がある場合というの がありますよね。例外規定を省令によって正当な理由がある場合に列挙して認めるとい う内容を広げるという考え方は表現できないんでしょうか。 ○ 赤澤企画官  現行の厚生労働省令で定める場合というのは、いわゆる自賠責の関係でございます。 自賠責に入っている車が他の方に譲渡された場合など、これはそれを認めないとどうし ようもないというのが、だれの目から見ても明らかな場合と理解できるんじゃないかと 思っております。生協法上は、員外利用が可能な場合には、許可を受けた場合と厚生労 働省で定める場合と2通りございまして、あえて厚生労働省で定める場合には許可がい らないとしているのは、法の趣旨からしますと、だれが考えても公共性が高くて外さな いといけないというケースに限られるのではないかと考えております。そういう意味で、 品川委員が御指摘されているケースがどういうケースかというのはまたあるかと思いま すが、厚生労働省令で定める場合というのはかなり限定されたケースにならざるを得な いのではないかと考えているところでございます。でなければ、厚生労働省令で許可制 度を逸脱してしまうということになりますので、そういうのが法の趣旨ではないかと考 えているところでございます。 ○ 品川委員  9ページの一番下にあります対応策というのは、いずれにしても員外利用規制につい て全体としては強化の方向にしか読めないということなんですけれども、今日的に緩和 の方向というのをどんなふうにお考えなのかということを重ねて伺わせてください。 ○ 中村社会・援護局長  資料の9ページが、品川委員は強化としか読めないというふうにお読みになっている ようですが、最初の○で言っていることは、員外利用は原則禁止されるという考え方、 員外利用という規制を撤廃してしまえという議論もあるようだけれども、員外利用は基 本的にはだめだよという考え方は維持していこうということが最初の○でございます。 ヒアリングやいろいろな御意見がありましたので、しかし例外は認めようと。例外を認 める場合はどういう決め方をするかということですが、事前規制とか行政庁の裁量で左 右されることがあってはならないし、農協法みたいに員外利用を認める場合、20%まで は員外利用を認めていいという認め方もあるけれども、そういうのは勘弁してくれとい う御議論もあったので、個別具体的に法令上限定して認めることにしようというのが2 つ目の考え方です。その認める場合に、品川委員から例示として適切ではないという御 発言がありましたけれども、現在でも離島、へき地などで生協以外に利用できる施設が 存在しない場合みたいな、ちゃんとそういう理由が書いてあるじゃないかと。そういう 理由のほか、合理的な理由があるものは追加したらどうかと言っていますので、追加の 範囲にはいろいろ御懸念があるかもしれませんが、終戦直後に認められた話以外にも合 理的なものがあるんだったら追加していってはどうかということでありますので、追加 の範囲次第によっては品川委員が御心配される規制強化になるかどうかわかりませんけ ど、追加していこうという判断が示されているとお読みいただきたいと思います。  じゃあ員外利用を認める場合に、青天井でいいかどうかという話はあるけれども、そ の場合は員外利用の限度を法令上定めてはどうかと。その場合、ここも「原則として」 ですので、例外もまた出てくるかもしれませんが、これは農協法などで100分の20とさ れているので、そういう限度を設けてはどうかという考え方でございます。今の員外利 用規制は原則禁止でございますので、例外もきちんとされていないということからする と、きちんとルールをお示ししてやることになるので、現場でのビジネスの安定性に寄 与するのではないかと思って提案しているところでございます。 ○ 清成座長  先ほど品川委員が例示として適切ではないのではないかとおっしゃった、離島、へき 地の現象というのは、例えば東京のような大都市の中でも起こってることなんですね。 一方では高齢社会になっていて、他方では商業施設が集中しちゃうんですね。既存の商 店街が解体していくというような状況からすると、高齢者が購買しにくい地域が東京の 中で広がってるんです。そういうところに生協の意義というのは相当あることも確かな んですね。高齢社会という状況であるとか、小売商業の集積とか、そういうようなこと を考えてみたら、それを補完する存在として生協の意義というのが当然あるわけなんで すね。予想外に東京でそれが広がっているように私は思いますし、地方へ行くともっと そうですよね。郊外にショッピングセンターができてしまってということになりますか ら、高齢者は非常に買いにくくなっていることも事実だし、例示としてへき地的現象と いうのはあちこちで起こってるんじゃないかという感じがするんですね。 ○ 土屋委員  18ページのところに、共済事業のリスク遮断、兼業規制についてというものがあるん ですけれども、生協の共済事業と農協の共済事業はやり方が同じじゃないというのは承 知しておりますし、ここで共済事業のリスク遮断をやらなきゃいけないということにつ いては、保険会社でもどんどんつぶれておりますし、契約者に対して健全性を維持する というのは大変重要なことなんですけれども、結論が兼業をやめさせるということにな っているんですが、リスク遮断の方法については、農協がやっているようなやり方もあ りますし、必ずしも兼業をやめるということだけではないんじゃないかなと思います。  特に連合会の場合と単位組合の場合でそこは違っていて、連合会は会員が組合などに 対して、単位組合の場合は組合員というのは一般消費者であり、生活者であるわけです から、そこの生活上のニーズに幅広く対応する中の一つに共済事業があるというふうに なってるんじゃないか。そこをどうしても分けて別の生協にしなさいというのは、そこ までする必要はないんじゃないか。リスクの遮断をするのであれば、さっき言ったよう なことに加えて、例えばソルベンシーマージンの規制を厳しくして、早期是正措置を導 入するとか、共済事業で集めた資金を他部門には運用させないという規制を入れるとか、 やり方はあるんじゃないかなと思います。  ちょっと戻りますが、16ページのところで、医療・福祉事業に係る非営利性の徹底に ついてということで、前回も申し上げたんですけど、医療・福祉に係るものから出た剰 余をほかのところに使うなということなんですけど、これについての説明が14ページで 貸借対照表と損益計算書が示されているんですけれども、一般的な会計の考え方ですと、 こうした事業別に考えることが可能なのは、損益計算書でいけば事業剰余金、営業利益 ということで、そこだけは事業別に通常やります。その上にあります人件費だとかこう いったものは区分してできる。しかし、そこから下のところは全部が全部区分すること は無理なのではないかと思うわけです。  16ページの方で、剰余というのをどこで考えていくのか。最後のところの当期剰余金 みたいなものであれば、これは事業ごとには出なくて、法人全体として出てくるんじゃ ないかなという感じがしています。  それからもう一点、これも前回申し上げたんですけれども、員外監事の設置の義務付 けのところで、監事というのはそもそも独立性がないと監事の機能を果たせないわけで ありますけれども、その中でも員外監事を置くのは、より独立性の高い人を置こうとい うことだと思うんですけれども、一番のポイントは、組合員であるかないかというのが ポイントじゃなくて、そこの生協の業務執行をやっていた役員ですとか、それを監督し ている役員であるとか、実際に業務に従事している職員であるとか、そういう出身者ば かりで監事を構成すると独立性が十分じゃないというのが趣旨なんじゃないかと思うん ですね。  株式会社の株主との比較で、出資・利用・運営というふうに出ておりますけれども、 株主だって出資はしますし、運営にも参加をするわけです。生協の組合員、大きなとこ ろですと総代会制ですから、総代にもなっていない組合員が大半という状況ですので、 あえてここで組合員を排除するというのはおかしいんじゃないかなと。今の仕組みです と利用者イコール組合員ということになりますから、監事になったら利用もしないのか という非常に妙なことになるんじゃないかなと思っています。 ○ 品川委員  土屋委員に御指摘いただいた3点について私も基本的に同感なのですけれども、意見 を述べさせてください。共済事業のリスク遮断、兼業規制ということについていいます と、生活協同組合という、生活を協同しようという生活点での協同組合の形成の仕方と いうことでいいますと、いろんな生活の必要に応じて事業が生まれ、それを利用すると いうことですので、単位生協における兼業規制というのはいかがなものかと思っている というのが一つ。  それから、医療・福祉事業について経理区分云々ということですが、介護保険事業と いうことに限れば、介護保険の適用給付を受けるという場合には購買事業と一体の決算 ではだめでして、損益計算書の一定部分について配賦基準もはっきりさせて、その限り での区分経理をし、行政指導として福祉事業・介護保険事業から生じた利益について、 配当については自粛せよという通知もございまして、そんな点では、その限りの区分を した損益計算書によって配当についても自粛するということをやっているわけです。た だ、今回、貸借対照表まで含めて区分をしようということになりますと、実態問題とし て、例えば購買生協の店舗は閉鎖し、ただ閉鎖するだけではなくてデイサービスに使お うとかいうケースも全国に幾つもあるわけです。あるいは購買生協の施設の一部を使っ てホームヘルプのステーションをつくったりということが多々あって、それを一つ一つ 貸借対照表区分をしなければということになりますと、実態の運営とは非常に齟齬が生 じてくるという関係だと思っています。  それから、員外監事の件ですけれども、前回までは「一定規模の組合については」と いうことで員外監事の義務付けが出されていたのですけれども、今回2ページに出され ているところでいいますと、区分なく、購買事業、利用事業、生活文化事業、共済事業、 いずれかをやる場合には組合または連合会が員外監事を義務付けるということになって いるわけですが、例えば農協さんの場合ですと、責任準備金一定額以上の農協の場合に は員外監事を義務付けるという、一定の規模という範囲があるんですけれども、生協の 場合は規模を問わない案になっている。それこそ小規模零細生協というのもたくさん全 国にございますし、現行法では員外監事というのは全部禁止されているのが現状なんで すね。そういう意味では、員外監事を「禁止」ではなくて、「入れられる」ようにして ほしいというのが私どもが求めているところですけれども、それを一挙に、小規模の生 協まで含めて義務付けるというのはいかがなものか。この間の論議にもありますように、 小規模生協についても目配りをしたガバナンスのありようということは必要だろうと思 いますので、その点についてぜひ御検討いただきたいと思います。 ○ 山下委員  共済の兼業の件は、助け合い事業をやっているから購買事業等と共済事業を兼業する ことがふさわしいという理屈でこれを認めるというのは、なかなか難しいのではないか。 共済というのは一種の金融事業なわけで、特別な規制に服するので、原則は兼業禁止と いうことになるんだろうと思いますけれども、実際にはそれだけの強い規制をかけられ るかという問題があって、そこは今日の18ページでも、一定以上の規模というあたりで 切るという考え方が提示されていて、これは他の種類の協同組合の共済事業でもとられ ているところであって、現実的にはこういう考え方はやむを得ないところかと思います。 規模をどうするかというのがまず問題となるし、全体としての規模だけじゃなくて、個 々の共済契約でどのくらいのお金が動くかという、少額短期かというあたりの視点も組 み合わせて考えていくと、そんなに広い範囲の兼業というのは認められないのかなとい うふうに私自身は思っております。農協のような仕組みをとって組合員のリスクを軽減 するとか、そういうことはもちろん可能かと思うので、それができるのであれば、それ は有力な一つの方向ではあろうかと思います。  それから、員外監事の点は、組合員であることとないことで何か違うのかというのは 疑問な点もあるというのはもっともな面があると思うんですけれども、こういう制度と いうのは公認会計士が会計監査するかわりの機能を果たすところがあるわけで、あえて 組合とかかわりを持たない人に見てもらうというところに意味があると思うので、員外 の点を外しちゃうと、事業にいろんな形でかかわりを持つ人が入ってくるようなことに もなりかねないので、大した意味はないんだろうけども、ここはあえて監事としての任 務を遂行していくことに対する信頼性を高めるという意味で、員外というのにこだわる のも一つの考え方だろうと私は思っております。 ○ 清成座長  どうもありがとうございました。予定された時間がそろそろ近づいておりますが、何 かそのほかにぜひ言っておきたいという御意見がございましたら。  それでは、予定の時間でございますので、本日の検討会はここまでとしたいと思いま す。次回の日程について事務局から説明をお願いいたします。 ○ 千田課長補佐  次回の日程につきましては、11月15日の水曜日、16時から18時までを予定させていた だいております。開催場所等、詳細につきましては後日改めて御連絡させていただきま す。ありがとうございました。 ○ 清成座長  それでは、以上で本日の検討会を終了いたします。どうも大変ありがとうございまし た。                                     (了) (照会先)  生協制度見直し検討会事務局          厚生労働省社会・援護局地域福祉課(内線 2854、2875)