06/10/27 労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会第1回議事録 第1回労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会 日時 平成18年10月27日(金) 13:00〜 場所 霞ヶ関東京會舘シルバースタールーム ○労働衛生課長(金井) ただいまから、「労働安全衛生法における定期健康診断等に関 する検討会」を開催いたします。私は厚生労働省の労働衛生課長、金井でございます。 座長が選出されるまでの間、進行させていただきたいと存じます。まず、小野安全衛生 部長から、開催に当たりご挨拶申し上げます。 ○安全衛生部長(小野) 安全衛生部長の小野でございます。よろしくお願いいたしま す。  各委員の皆様方にはいろいろな機会を通じ、私どもの安全衛生行政について日ごろか らご指導をいただいていますこと、まず御礼申し上げたいと思います。また、今回、お 忙しい中にもかかわらず、検討会に参加をいただきありがとうございます。どうぞ、よ ろしくお願いいたします。  もう既にご承知のとおりですが、労働安全衛生法における定期健康診断、働く方々の 健康を確保するということで、非常に重要な位置づけが法律の中でもなされているとこ ろです。いままでもさまざまな形で、定期健康診断のあり方については逐次検討され、 いろいろな見直しが過去も行われてまいりました。  とりわけ平成元年、それから平成11年だったと思いますけれども、脳・心臓疾患の早 期発見、その後の健康管理等に資するという観点から、健康診断の項目の大幅な見直し が行われて現在に至っています。こうした中で、先般、「高齢者医療法」が先の国会で成 立いたしました。生活習慣病の減少を目的として、平成20年度から医療保険者に特定健 康診査等の実施が義務づけられるという法改正がありました。また、標準的な健診・保 健指導プログラムというものが具体的に示され、現在に至っているという状況です。  こういった動きを踏まえ、私どもとしては労働者の健康の保持増進、とりわけ脳・心 臓疾患予防という観点から、労働安全衛生法における定期健康診断、あるいは保健指導 等のあり方を検討する必要が生じていると考えています。そういった目的で、この検討 会を設置したということでございます。のちほど、担当課長から具体的にお願いする検 討項目、検討の論点等についてご説明させていただきたいと思います。  そういった趣旨ですので、その趣旨をお汲み取りいただき、これから委員の皆様方に 精力的にご審議をお願いしたいと思っています。  簡単ですが、心よりお願い申し上げ、私の冒頭の挨拶にさせていただきます。どうぞ よろしくお願いいたします。 ○労働衛生課長 第1回会合ですので、委員のご紹介をさせていただきたいと思います。 資料2に名簿がございます。その順に沿ってご紹介させていただきます。北里大学医学 部長の相澤好治様です。日本医師会常任理事、今村聡様です。産業医科大学教授、堀江 正知様です。東京大学名誉教授、和田攻様です。よろしくお願い申し上げます。  続いて、座長の選出に移りたいと思います。事務局としましては、労働政策審議会安 全衛生部会の座長でもいらっしゃる、和田先生に座長をお願いしたいと思います。いか がでしょうか。 (異議なし) ○労働衛生課長 ありがとうございます。それでは、和田先生に座長をお願いしたいと 思います。以降の議事進行、よろしくお願い申し上げます。 ○和田座長 ご指名と皆様のご承認を得まして、進行係を務めさせていただきます。ど うぞよろしくお願いいたします。  本日は第1回の会議でして、本委員会の趣旨や役割、あるいは全体的な背景、問題点 を理解していただくことが第1の目的であると思います。早速ですが、まず事務局より 本検討会を設置する目的等についてご説明いただきたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○衛生専門官 事務局からご説明いたします。まず、資料1をご覧ください。「労働安全 衛生法における定期健康診断等に関する検討会開催要綱」です。1.に「目的」とあり ます。先ほど部長のご挨拶にもありましたけれども、高齢者の医療の確保に関する法律 が成立し、平成20年度から40歳以上の被保険者に対する特定健康診査・特定保健指導 の実施が医療保険者に義務づけられているところです。また、高齢者医療法においては、 労働安全衛生法に基づき事業者が実施した定期健康診断の結果については、医療保険者 が事業者に対して提出を求めることができることとなっています。また特定健康診査、 特定保健指導の実施に当たり参考とする、標準的な健診・保健指導プログラム、「暫定版」 と呼ばれていますけれども、これが健康局の検討会より示されているところです。  この検討会においては、プログラムに示されている内容と労働安全衛生法に基づき実 施されている定期健康診断等との考え方を整理して、労働安全衛生行政における定期健 康診断等のあり方を医学的な観点から取りまとめを行っていただくということで、検討 会を開催したところです。  検討内容ですが、そこにありますとおり、いちばん大きい問題点は健診項目をどのよ うにするか。もう1つが、保健指導についてどのように考えていくのか。そのほかとし て、先ほども言いましたように、医療保険者から事業者にデータの提出を求める際の提 出の方法など、そういったことについてもご議論いただければと考えています。  資料3をご覧いただきたいと思います。「労働安全衛生法における定期健康診断等に関 する検討会の必要性」と書いている資料です。まず1番目、労働安全衛生法における定 期健康診断の考え方について整理していきたいと思っています。まず、労働安全衛生法 では事業者に対し、労働者の健康保持増進、疾病の早期発見・予防のみならず、労働者 の就業の可否、適正配置、労働環境の評価などを判断するために、年1回の定期健康診 断等の健康診断を実施し、それを義務づけているところです。  その中でも、定期健康診断の項目については、近年問題になっている脳・心臓疾患に 適切に対応するという観点から、先ほどもありましたが平成元年、平成11年に項目の追 加・改正を行っているところです。今後とも、新たな医学的知見が出てくれば、適正な 健康診断の項目とするために必要な改正を行っていく必要があると考えています。これ が労働安全衛生法における定期健診の考え方です  続いて、いま言ったように、周りの関係法令との関係です。まず1番目、健康増進法 に基づく健康診査等指針との関係についてです。参考資料5に指針自体は付いています けれども、これはあとでお読みいただきたいと思います。まず、労働安全衛生法の第70 条の3に、定期健康診断等の健康診査については、健康増進法に基づく健康診査等指針 と調和が保たれていなければならないという調和規定が入っているということがありま す。  健康診査等指針とは何者であるかについては、健康増進実施事業者、健診を実施する ような主体についてですけれども、生涯にわたる国民の健康の増進に向けた自主的な努 力を促進するため、健康診査等の実施に関し、共通する基本的な事項を定めて示してい ます。また、健康診査等指針については、健康局の検討会で示された「標準的な健診・ 保健指導プログラム(暫定版)」、あとで矢島室長からご説明いただくことになっていま すが、こういったことを踏まえ、今後必要な改正を実施していく予定になっています。 また、平成20年度から実施される高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、医療保 険者が実施する特定健康診査・特定保健指導については、この指針と健康局が示してい る標準的な健診・保健指導プログラムを踏まえ実施される予定となっています。  次に高齢者医療法との関係です。高齢者医療法では、医療保険者が40歳から74歳の 被保険者に対し、脳・心臓疾患等に結びつく生活習慣病患者、および予備群を抑制する ために、1年に1回特定健康診査、および特定健康指導を行わなければならないとされ ているところです。  労働安全衛生法というか、事業者とのかかわりですけれども、先ほどから申し上げて いるとおり、事業者は医療保険者の求めに応じて、労働安全衛生法に基づいて実施した 定期健康診断の結果を医療保険者に提供しなければならないことになっています。  カッコの中は補足ですが、こういった定期健診、あるいは健診のプログラムの運用と いったものについて健康局、保険局においても検討会が開催され、いま現在議論してい ます。やはり、労働安全衛生法との関係についても議論が及んでいるところです。  「検討の必要性」と書いていますが、今後、脳・心臓疾患に適切に対応するために、 健康局で示していただいている標準的な健診・保健指導プログラム、暫定版に含まれて いる健康診断の項目を、労働安全衛生の観点からどのように取り扱うべきか。もう1つ は、高齢者医療法で行われる特定保健指導と労働安全衛生法で現在努力義務で行われて いる保健指導、こういったものの取扱いについてどのように整理すべきかについて、本 検討会で検討していただきたいということです。資料の説明は以上です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関し、何かご質問等 はありますでしょうか。 ○堀江委員 資料3、冒頭のところですが、労働安全衛生法における定期健康診断の目 的について記載しています。この部分というのは、これまでの行政の法令・規則、ある いは通達等に出てきている文章というように理解してよろしいのですか。 ○衛生専門官 そのようにご理解くださって結構です。 ○和田座長 よろしいですか。特にないようですので、まず先ほどお話に出た「標準的 な健診・保健指導プログラム(暫定版)」についてご理解いただくということで、本検討 会にオブザーバーとして参加いただいている健康局の矢島生活習慣病対策室長よりご説 明をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○生活習慣病対策室長(矢島) お手元の資料4に基づいてご説明させていただきます。 まず最初に28頁をお開きください。今回の「標準的な健診・保健指導プログラム」で対 象にしています疾患の概念がここに入っています。今回、内臓脂肪型肥満に着目した生 活習慣病対策ということで、まず対象とするのは頁の右、「重症化・合併症」のところを ご覧ください。私どもが念頭に置いているのは虚血性心疾患、脳卒中、例えば人工透析 等の糖尿病との合併症の疾患を防ぐために、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの生活習 慣病を予防するという考え方でこのプログラムを作っています。これがまず最初の考え 方であります。不健康な生活習慣から来る予備群があり、糖尿病、高血圧症、高脂血症 を引き起こす。その結果として虚血性心疾患、脳卒中、人工透析というようなものが出 てくるということで、このプログラムを考えています。  表紙の裏の頁はプログラムの全体的な流れです。健康局で先ほどの考え方に基づき、 標準的な生活習慣病対策、心筋梗塞や脳卒中等を予防するために具体的にどのようにや るかをまとめたものです。一応、まだ暫定版となっています。実はこれをもとにして全 国数カ所、具体的には3県ですけれども、準備事業という形で暫定版に基づいて中身の 検証を行っているところです。  まず第1編が理念の転換、考え方です。第2編が健診、第3編が保健指導、第4編が 体制・基盤整備、総合評価というような大きな流れになっています。次の頁の下に書い てありますが、暫定版のポイントは時間の関係で省略したいと思います。  第1編の「健診・保健指導の理念の転換」のところ、2頁をご覧ください。これから 実施を予定している健診・保健指導の基本的な考え方について、これまでの健診・保健 指導の考え方とこれからの健診・保健指導の考え方を整理したものです。従来の健診は 早期発見、早期治療も大事だったわけですが、糖尿病等の有病者予備群を25%減少させ ることがすごく重要である。虚血性心疾患、脳卒中にならないためにも、糖尿病等の有 病者予備群を25%減少させる。そのためには早期に介入して、行動変容をしていくとい うプログラムを作ることが重要だと考えています。そのような観点からメタボリックシ ンドロームの考え方を導入した健診・保健指導が重要であると考えています。  次の3頁ですが、具体的にどのような流れなのか。この中で健診では、40歳から74 歳の方の被扶養者を含む被保険者を対象に、内臓脂肪に着目した予備群も抽出できるよ うな健診を行うということであり、生活習慣病対策をしていくというものです。その結 果に基づき、保健指導が必要な方に対して保健指導を実施し、将来の生活習慣病になる リスクを減らしていく保健指導を実施していこうという大きな流れを考えています。4 頁は保健指導実施者が有すべき資質ですが、ここは省略させていただきます。  6頁が今回、この検討会の中で先生方の検討の項目として非常に重要になってくると ころかと思います。今回、健診を行うに当たり健診項目、および質問項目というものを 定めました。今後の新たな健診において、糖尿病等の生活習慣病を予防するために、特 にメタボリックシンドロームの考え方に着目をして健診をしていくという考え方であり ます。虚血性心疾患、脳卒中、そういうようなものを予防するために、内臓脂肪が原因 で血圧が高くなり、高血圧症になって脳卒中になる。また、内臓脂肪が原因で血糖が高 くなって、高血糖になって糖尿病になり、例えば心筋梗塞などに発展する。そういうよ うな疾患を予防するための仕組みとして、どのような健診項目、質問が必要かという観 点で検討したものがここにございます。  基本的な健診の項目ですが、質問項目のほかに身体計測として、例えば「腹囲」とい う新しい考え方を取り入れています。血液検査におきましても、中性脂肪、HDLコレ ステロールのほかにLDLコレステロール、これはどちらかというと動脈硬化の指標で すが、例えば高血糖、糖尿病というものにより血管の変化が起こって、最終的には虚血 性心疾患などを考えると、動脈硬化の指標としてLDLコレステロールなどが重要では ないかという観点でここに入っています。  また、新しい考え方では、特にヘモグロビンA1cについてもこの中に入れています。 尿酸についてもメタボリックシンドロームの中、特に診断基準には入っていませんけれ ども、検討すべき課題ということになっています。このような形の血液検査を使い、健 診を行っていくということが必要ではないかという考え方でございます。  次の頁は各種健診項目の比較です。従来、老人保健事業で実施しておりました健診の 項目と、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目、今回新たな健診項目との比較の 図をここに入れています。これについてはのちほど細かい説明があるかもしれませんが、 このような形で比較を行っています。  8頁、保健指導対象者の選定と階層化です。内臓脂肪の蓄積により、例えば虚血性心 疾患等のリスク要因が増えることが報告されています。そういう意味で、リスクを減ら すという観点で、内臓脂肪に着目した階層化というものを考えています。まず、腹囲を 1つの基準にして内臓脂肪蓄積のリスクを判定し、それぞれのグループに分けます。例 えば、男性でしたら腹囲が85cm以上から、女性は90cm以上からとなります。仮に85 cm以上でなくても、従来の肥満の対象であった方々、それ以外の方々という形で対象者 をグループ分けしました。  そのあと、それぞれリスクの数、血糖や脂質、血圧などに着目し、それらのリスクの 数をカウントし、その数に応じて保健指導をする。積極的保健指導、動機づけ保健指導、 情報提供という3つの保健指導を考えているわけです。  具体的には、例えば積極的支援と言うと、私どもがイメージしているのは3カ月から 6カ月程度具体的なプログラムを作って、積極的に内臓脂肪を減らすための運動、食事 指導というようなものを実施することを念頭に置いています。動機づけ支援というのは まだリスクが少ない、出始めた段階できっかけを作る。1回、保健指導をして、問題点 について具体的に面接で保健指導をしていただく。あとはきっかけを作って、自分で努 力をしていただくという考え方です。3番目の情報提供は、内臓脂肪などの問題点はあ るものの、健診結果からは何も異常値が出てこない段階の方には情報提供する。そのよ うな保健指導が必要ではないかということで考えています。8頁と9頁がいまご説明し たところですが、これに基づき、現在準備事業を行い、この流れの中でのいろいろな検 証を行っているところです。  10頁、健診の精度管理です。特に血液検査の項目については精度管理が大変重要であ ります。そういう意味で、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)という団体がありま す。また、経済産業省の団体で産業技術総合研究所というところがあり、そこで標準物 質の開発をお願いし、トレーサビリティも含めた十分な内部精度管理が定期的に行われ るような仕組みを今回、新たに入れたいと思います。外部精度管理としては、現在、既 に実施しているいろいろな管理があります。日本医師会、日本臨床検査技師会、全国労 働衛生団体連合会などの外部精度管理事業がありますので、こういうようなものを引続 きやることが必要ではないかと考えています。  10頁の真ん中のところ、標準物質のご説明ですが、例えばどういうような標準物質か。 先ほどの判定のところ、例えばヘモグロビンA1cであれば境界型の判定である5.5%、 糖尿病型の判定の基準になる6.1%という標準物質を開発することによって、判定のと ころがいちばん精度が高くなる、バラつきがいちばん小さくなることにより、判定の精 度を上げるというやり方で、内部精度管理を図っていく方法がいいのではないかとまと めています。  11頁、12頁は健診データの電子化の様式です。いま、データはコンピューターの時代 ですので、健診データについても電子的に提出していただいて、そのデータを分析して いく。経年的な分析も含めて、データを分析していくことが非常に重要です。また、個々 の対象者の方にとっても過去のデータを見ながら、経年的な変化を追いながら疾病の予 防をしていくという観点も必要です。そういう意味で、健診のデータを電子的な様式で 提出する。そのような標準的様式というものをこの中でお示ししています。これについ ては電子カルテ、電子レセプト、そういうようなものを実際にやっています工業会の関 係の方々の意見も聞きながら、現場の方々が対応できるような仕組みをいまこの中で検 討させていただいています。  13頁以降は具体的な健診項目、例えば電子化したときの標準コードの設定の考え方な どをお示ししています。15頁はアウトソーシングです。実際には、医療保険者、事業者 ですべてを実施することはなかなか難しくなります。例えば、地域の老人保健事業でも そうですが、地域の医師会の先生方等にアウトソーシング、外部委託をお願いするとい うことがあります。そういうときの1つの考え方です。その場合には、例えば健診をし ていただく施設は敷地内は全面禁煙が必要なのではないか。精度管理は先ほどの標準物 質による内部精度管理が定期的に行われる。それから、外部精度管理を定期的に受けて いることが必要である。電子的な様式により、健診データを出していただくことが必要 ではないか。受診率を上げるためにも、例えば土日や祝日など、対象者の方々が受診し やすいような方策にも取り組むことが大事なのではないかということをこの中にお示し しています。  第3編、「保健指導」ですが、従来はどちらかというと健診後の事後指導という形でし た。健診と一体的に行われてきた保健指導を、健診と分けた形で保健指導を実施する仕 組みを今回の中で提示させていただいています。具体的には18頁、健診の結果を受け、 先ほどご説明した3種類の保健指導、情報提供、動機づけ支援、積極的支援という形の 保健事業を実施していく。それをすることによって、内臓脂肪型肥満に起因する生活習 慣病の予防を図っていくという考え方であります。  具体的には20頁、情報提供、動機づけ支援、積極的支援とあり、先ほど私が説明させ ていただいたものをまとめますとこのようなものになります。  21頁、22頁は保健指導の実際の評価の仕方、アウトソーシングのところになります。 特に22頁のところは、保健指導を実際にアウトソーシングする場合の委託の基準の考え 方をここに示しています。ここについてはまだ検討途中のところもありますけれども、 基準については、実際に保健指導をする事業所の管理者は医師、または保健師、管理栄 養士であること。さらに国、地方公共団体、医療保険者、日本医師会、日本看護協会、 日本栄養士会等が実施する研修を受けていることが必要である。動機づけ支援、積極的 支援については面接がございます。そのときの初回面接、行動目標、支援計画の作成、 評価に関する業務を行うものは医師、保健師、または管理栄養士であることが必要では ないかと考えています。そのような基準をこの中に示しました。  保健指導を実施する施設についても、敷地内が全面禁煙であること、電子的様式にお いてデータを出していただくことが必要である。具体的な保健指導をやる場合には土日 祝日以外にも、夜間、仕事が終わったあとにも保健指導するような体制が必要ではない だろうかということをこの中に示しています。  次の「体制・基盤整備」ですが、24頁のところは人材育成の仕組みについて、国、都 道府県、市町村、医療保険者、医療関係団体等の役割をここにお示ししています。25頁 が実際に研修の体系であります。26頁はデータをどのように活用するかということで、 そのための体制整備をここにお示ししています。26頁、27頁は電子的に集められたデー タをどのように分析するのかという考え方をこの中にお示ししています。  28頁、これはいちばん最初にご説明させていただきましたが、このような流れ、不健 康な生活習慣から予備群、生活習慣病になって、先ほど申しました虚血性心疾患、脳卒 中というようなものを予防する観点で、このような客観的なデータを使いながら、分析 をしながら評価をしていくという考え方をこの中にお示ししています。  29頁以降は具体的な評価のときに使う、どういうような分析の仕方があるかというも のが次の30頁、31頁、32頁に出ています。ここのところは省略させていただきます。 それから、研修のガイドラインを34頁のところに入れています。一応、どのような研修 かということのイメージを34頁、35頁でお示ししています。また、今回、具体的な学 習指導も作っています。どのような保健指導をするのかというイメージですが、37頁、 38頁のような教材を使って、具体的には39頁、40頁に示す流れの保健指導が1つ考え られるのではないか。「こうしなければならない」ということではなくて、これは1つの 例示でございます。教材の例ですので、このような形の保健指導が1つの例示として考 えられるのではないかというものを以下に示しています。  43頁は今後のスケジュールです。平成20年4月から新たな健診・保健指導が始まり ます。いま、いろいろな意味での準備をしております。各都道府県の健康増進計画、各 都道府県の医療費適正化計画との連携を図りながら、19年度においては計画の改定作業 をお願いしています。また、いまご説明させていただいたプログラムについては今年度 末までには確定し、19年度には準備事業を行う形を考えています。人材の育成について も並行して、国、都道府県、各医療保険者等の関係団体にお願いし、人材育成について も引続き予定しています。  44頁、45頁は都道府県健康増進計画に位置づける目標項目です。それをこの中にお示 ししています。以上です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、何かご質問 がありましたらどうぞご自由にご発言ください。 ○堀江委員 資料4、暫定版の7頁、「新健診と各種健診の健診項目の比較」というわか りやすい表が出ています。いちばん最初の行、「質問(問診)」という項目があります。 これはいずれも現行の安衛法は○で、新健診が○となっています。おそらく、目的から して、中身は相当に違っているのではないかと理解しています。  新健診の質問の中身で、現行の労働安全衛生法が調査している例えば業務歴というよ うなものは入っていないのではないかと思います。その辺、今後、どのようにお考えな のでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 そこのところについては、それぞれの目的の部分で少し増やす と言うのでしょうか。例えば、各医療保険者においてもこれに追加する場合があるかと 思います。例えば人間ドックの場合もあります。人間ドックの場合にも、ここにあるよ うな健診項目にプラスしていろいろほかの健診を追加することも考えられます。そうい う意味で、これはあくまでも今回私どもが行った、最低限と言うと語弊があるでしょう か。一応、共通な、標準的な部分をお示ししました。いまご指摘がありました業務歴と か、そのようなものは今後、労働安全衛生法の部分については必ず入ってくる項目にな るのではないかと認識しています。 ○堀江委員 そうすると、逆に新健診の中に含まれている項目で、現行の安衛法にない 項目もあると考えてよろしいでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 はい。心筋梗塞、脳卒中等を予防する観点で、このような質問 項目が必要ではないかという意味でまとめています。そこのところは今後、よくご相談 をさせていただく必要があるのではないかと思っています。 ○相澤委員 全体的なことで質問します。予備群から生活習慣病になるのが25%という ことでした。その25%という数字がどの辺から根拠というか、実現性が出てきたのか教 えていただきたいと思います。 ○生活習慣病対策室長 今回の医療制度改革の中で、将来の医療費の伸びを抑えること を念頭に置いて考えています。生活習慣病というのはなかなか難しいということはわか っています。気持としてはもっと減らすことができればと思っていますが、個人の生活 習慣を変えるということはなかなか難しいことであります。その意味で実現の可能性な ども加味しつつ、将来の医療費の伸びを抑えるという観点でこのような数値を設定して います。 ○相澤委員 今回、糖尿病や肥満が中心で、がんはほとんど入っていないと理解してい ます。将来的にこのプロジェクトがうまく行けば、がんの抑制のほうに行くという考え 方でよろしいでしょうか。例えば喫煙とか、あまり強調されていないところがあるもの ですから。 ○生活習慣病対策室長 がんについては1つ別の流れがあります。これについては今年、 がん対策基本法が成立いたしました。がんについては引続きやらせていただきたいと思 っています。がん検診についてもいま、市町村で実施していただいているのですが、こ れはこれでまた重要であります。これを今後、どのようにやっていくかということは、 これまたきちんと詰めていかなければいけない項目だと認識しています。 ○和田座長 ちょっと、基本的なことを教えてください。まず新しい健診、特に健診項 目というのは40歳から74歳に限って、保健指導が必要であるのかどうかの選定をする ための検査と位置づけてよろしいでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 まず、保健指導が必要かというより、対象者の抽出ということ も一応念頭に置いています。まず優先順位、リスクの多い人からやらなければいけない わけですから。 ○和田座長 いろいろな段階があるでしょうけれども。 ○生活習慣病対策室長 そういうことがこの中できちんとわかるような健診という意味 であります。 ○和田座長 選定のための検査という意味ですね。 ○生活習慣病対策室長 はい。 ○和田座長 それが一応、目的と考えてよろしいということでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 はい。心筋梗塞、脳卒中等を予防するために必要な保健指導の 対象者を、どう抽出するかという観点でやっていくという考え方です。 ○和田座長 かなり趣旨が違うということになりますね。メタボリックシンドロームを 中心にされた理由というのはどういうことですか。 ○生活習慣病対策室長 まず、ここについてはエビデンスが最近かなり明確になってき たということと、例えば内臓脂肪に起因する高血糖、内臓脂肪に起因する高血圧、脂質 の代謝の異常というようなものが原因で糖尿病、高血圧になるという1つの流れが明確 になってきています。そういう流れを少なくとも、内臓脂肪に着目する部分については 対策を取ることができる。その観点で、まずそこは将来的な心筋梗塞、脳卒中の予防に 大変有効であるという点、今回明確になった部分をまずここできちんとできる仕組みが 大事ではないかと考えています。 ○和田座長 メタボリックシンドローム以外で、そういった病気を起こすものは基本的 に全体から見て少ないから、外してしまえという意味なのですか。 ○生活習慣病対策室長 そういうことではなくて、ここにある健診項目を見ていく中で、 そういうようなものも合わせて見ていただくことができますが、保健指導の効果がいち ばん期待できるところ、内臓脂肪の減少に着目した保健指導をするところは従来の保健 指導よりもよりやりやすいというか、ターゲットを絞った保健指導の効果が期待できる ところをまず明確にさせていただいたということです。 ○和田座長 目的がはっきりしたところだけをやりましょうということですか。 ○生活習慣病対策室長 だけというわけではなくて、もちろん、この検査結果から高血 糖、高血圧、高脂血症というようなものの予備群を見ていくことはもちろんできるわけ です。決して、そこだけをやるということではありません。ただ、そこにターゲットを 絞ることが非常に効果が期待できる。まず、いまの流れからすると効果が期待できでき るところではないかと考えています。 ○和田座長 もちろん、コレステロールはメタボリックシンドロームとは一次的な関係 はありませんが、別に加えたということですか。 ○生活習慣病対策室長 総コレステロールはトリグリセライドと、HDLとLDLで、 数式である程度トータルに予測することができると思います。むしろ、いままでのLD Lを測ろうとすると、逆に総コレステロールから引き算をしていくようなやり方だった かと思います。 ○和田座長 コレステロールではなくて、メタボリックシンドロームのメタボリックの 代謝の中にコレステロールという概念は入ってきていないですよね。それをあえて加え たというのは、それが非常に重要であるからという意味なのですか。 ○生活習慣病対策室長 はい、HDLコレステロールは1つの指標になっているかと思 います。その意味ではそこのところは重要かと思います。 ○和田座長 LDLに対して。 ○生活習慣病対策室長 LDLはその結果のものとして重要かと思います。メタボリッ クシンドロームの下流のほうとして、結果的に心筋梗塞、脳卒中を予防する。血管の病 変を早期にチェックして予防する、動脈硬化の変化を見ていくという観点でLDLが重 要だと考えています。 ○和田座長 6頁、基本検査と精密検査とあります。どうしてこういうような、基準と か何かあるのですか。 ○生活習慣病対策室長 ここのところはいま現在、老人保健法の事業の中のいろいろな 判定基準があり、それを参考にして、医師が必要と判断した場合に精密健診、詳細な健 診をするという流れになっています。 ○和田座長 老人保健法の趣旨をそのまま受け継いだということですか。特にはっきり した基準を設けて、これは医師が必要としたもの、これは全員でやるという基準は特に ないわけですか。その根拠とか。 ○生活習慣病対策室長 いま考えていますのは、老人保健事業の基準の考え方を1つの 考え方とする。もし、必要があればそこのところは今後議論をして詰めていく必要があ るのではないかと思っています。 ○和田座長 あと、ここでないとお聞きするチャンスがないかもしれませんので、少し 具体的になるかもしれませんが。尿酸とクレアチニンを入れた理由というのはどういう 理由なのですか。 ○生活習慣病対策室長 まず、尿酸については、メタボリックシンドロームの診断基準 には入っていません。日本内科学会が発表したメタボリックシンドロームの中にも、代 謝の流れとして、尿酸が出てくる記述がありました。1つの流れとして、尿酸について はメタボリックシンドロームとの関連が強く言われているという認識でこれを入れてい ます。 ○和田座長 診断するときに、尿酸がなければ不可欠であるという理由があるのでしょ うか。腹囲、コレステロールなどで、きちんとした指導体制まで持っていけるような気 もするのですが、どうしても尿酸が必要なのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 ここのところはリスクの数として、まず判定のところは最初の 血糖、血圧、脂質のところで見ます。そこでリスクがあった場合に、保健指導のレベル をどのレベルにしていくのか。先ほど申しました保健指導を積極的支援にするのか、き っかけだけにするのかという、保健指導のレベルをより精緻にするためにこのような項 目が付加されています。そういう意味で喫煙、尿酸、LDLコレステロールというもの があれば、1つ進めた形で、保健指導のレベルを加味するリスクの数として増やしてい くという考え方であります。 ○和田座長 それがないときちんと整理できないという意味もあるのですか。 ○生活習慣病対策室長 保健指導をする立場からすると、なるべくこのような項目につ いては、リスクがあった場合にはそれを軽減することが将来的なメタボリックシンドロ ームにつながっていく流れを予防するのに意味、価値があるのではないかという、実際 に保健指導をする現場の声も踏まえて、こういうものが入ったという経緯があります。 ○和田座長 そのような項目であると、例えばアルブミンとか、もっとほかにいろいろ なものがあると思いますが。 ○生活習慣病対策室長 肝機能だとかの、例えばGPT、γ−GTPなどは既に入って いたのですが、こういうようなものもかなり保健指導には役に立つのではないかという ことは言われています。 ○和田座長 確かにカロリー・オーバー、アルコール・オーバーに対しての保健指導と いう、それをとらえてということは。普通、脂肪肝の場合にはそれほど悪化するはずは ないですし。ちょっと、……やγ−GTPが高い人はいまの労働者にはざらにいます。 そういう人が将来、肝硬変になるというリスクというのは非常に少ないような気がしま す。そういう意味ではそのものというより、むしろ生活習慣に対しての指標と捉えてと いうことでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 はい、実際に保健指導をする中身という考え方になると思いま す。 ○和田座長 血清のクレアチンを採用されているというのは。 ○生活習慣病対策室長 それについても腎機能の1つの指標として、これも血清の尿酸 と同じように、ここのところの影響が出てくるというご指摘もあり、これを今回入れま した。従来の老人保健事業の中にも入っているという流れになっています。 ○和田座長 クレアチニンが上がっている、これは臨床家であれば知っていると思うの ですが、……が50%以下にならなければ上がってこないし、全部上がってくるのは20% 以下になる。かなり進まないと上がってきませんよね。そういう意味では、あくまでも 3次予防のための検査ということになると思います。それをあえて、最初に全部やらせ るという考えというのはどうなのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 ここの点、老人保健事業のいままでの流れも少し加味したとこ ろはございます。 ○和田座長 確かにクレアチニンが下がったままで、全然自覚症状がなくて受診してい ない人もいる。そういう人に対してたんぱく質の制限、食事の制限をすればある程度改 善して、腎不全になるのをある程度長びかせる証拠はあると思います。そこまできちん と、3次予防までやるということでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 重症化を防止する観点でというように考えています。 ○和田座長 下がっていればかなり重症だと考えるのですがね。それよりも、普通の臨 床家であれば、たぶん腎臓がおかしいと考えるのは尿の蛋白、鮮血、血圧、こういうも ので腎臓の疑いを持つと考えるわけです。それが初期の1次予防につながると思います。 あえて、3次予防だけをもってくるというのはちょっとおかしな感じがしました。 ○生活習慣病対策室長 この点、先生のご指摘のようなご意見もありましたが、老人保 健事業で従来からやってきたという経緯も非常に重要かと認識しています。 ○和田座長 これがあれしてくると、病院などでは電子カルテで全部電子化されていま すけれども、普通の事業所ではとてもではないですが電子化されていないと思います。 それを電子化しろということですか。 ○生活習慣病対策室長 これについては、研究班で簡単な入力ソフト等を提供する用意 があります。今後、健診項目が整理された段階で、労働安全衛生法の健診項目にも対応 できるソフトをいま準備しています。特に規模が小さい、データ数が少ないところの方々 はたぶん、そのソフトをご活用いただければ電子的にデータを提出いただくことが可能 ではないかと思います。 ○和田座長 わかりました。この機会でないと質問できないので、いろいろなことを聞 いてすみませんでした。ほかに何かありますか。よろしいですか。どうもありがとうご ざいました。  続きまして、保険局の深田医療費適正化推進室長にオブザーバーとして来ていただて います。平成20年4月に施行される、高齢者医療法に基づく特定健診・特定保健指導の 趣旨および概要についてご説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○医療費適正化推進室長(深田) 資料5をご覧ください。特定健診・特定保健指導は 平成20年4月から施行となります。今回、医療構造改革ということで、医療費適正化対 策を講じようということであります。先ほど矢島室長からもお話がありましたように、 生活習慣病対策を一生懸命やっていこう。そのための健診、あるいは保健指導を導入し ていくという点が法律上入れられたということです。  これまでは老人保健法とか、医療保険各法でそれぞれ保健事業を行う規定があって行 われていたわけです。ただ、なかなかそれぞれの役割分担が明確になっていない。ある いは、その後のフォローアップが不十分といった指摘もありました。今回、医療保険者 の義務として40歳以上の被保険者、被扶養者に対して、糖尿病などの生活習慣病に着目 した健診、あるいは保健指導を行う義務づけを行ったということです。  1枚目が趣旨、2枚目が、どういう仕組みになっているかを法律の条文に則して記述 しています。まず、国で特定健診等基本指針を定めることになっています。具体的には、 これから検討していくことになりますが健診などの実施方法、それぞれの目標、あるい は計画作成に関する事項などを基本指針として定めることを計画しています。まず、こ れを定めて世の中に示すことになっています。具体的には、本年度の3月末には、でき れば案のようなものを示したいと考えています。  それを踏まえて、各保険者による特定健診等の実施計画を作っていただくことになっ ています。各保険者には5年を1期とする実施計画を作って定めていただくことになっ ています。先ほどの指針にあったものを各保険者がどう具体的に行うかを、実施方法な り目標、あるいはその他必要な事項について定めることになっています。指針の案を示 したあと、平成19年度中には定めていただきたいと考えています。  具体的には(3)の「実施」で、医療保険者は実施計画に基づいて、40歳から74歳 の加入者に対して特定健診などを実施することになっています。これは被扶養者を含め て行うことになっています。  3頁、ここが他の制度との関係であります。労働安全衛生法に基づいて事業者が健診 を行う事業主健診という制度がありますが、事業者が行った健診の部分については、事 業者から健診データの提供を保険者が受けて、それを行ったことにしていいと法律上規 定されています。「健診を行ったものとみなす」と規定されています。  ただ、健保組合の例ですが、事業者が労働安全衛生法に基づいて行う健診の実施を保 険者に委託することも別に可能となっています。その際には、保険者に費用を支払う規 定が置かれています。  被扶養者についてはほかの保険者に実施を委託することができる。例えば、家族がど こに住んでいるかというと、必ずしも同じ所に一緒に生活しているわけではないケース もあります。ほかの保険者に委託してもかまわないということが規定されており、費用 は委託先に保険者が支払うということであります。加入者から費用の一部をいただくこ とは可能です。  4頁が、結果の通知と保存です。特定健診を行った際、その結果を様式を定めて加入 者に提供することになっています。記録の保存というのは、どれぐらいの期間をするか というのはこれからの検討になりますが、被保険者・被扶養者が加入者となっている間 は保存することになっています。異動があった際は、異動元から異動先に記録を提供す ることが規定されています。常に記録はいまある保険者がきちんと見る前提でできてい るということです。  5頁、結果の報告ですが、各保険者は実施結果についてメタボリックシンドロームの 該当者予備群の割合など、必要なデータを支払基金に対して報告することになっていま す。後期高齢者の医療制度ができあがることになっていますが、平成25年度からは支援 金についてこれに基づいて加算・減算措置を講じる。各保険者がそれぞれ拠出する支援 金について10%内外、プラス10、マイナス10ということですが、その範囲で成績によ っては加算・減算の措置があるということです。  6頁、各保険者が行う健診事業等については、まず本人の健診は労働安全衛生法の健 診との場合分けで、費用の負担関係が決まることになっています。それ以外に、被扶養 者の健診については国民健康保険、あるいは被養者保険、それぞれについて一部、国に よる補助、あるいは負担の制度があります。以上です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関して、何かご質問 はありますでしょうか。 ○相澤委員 3頁の、「加入者から健診等に要する費用の一部を徴収することは可能」と いうこと、6頁の(6)の1つ目の○、「特定健診に相当する検査項目実施のための費用 (差分)については、保険者が負担」というのは、本人が負担するということはないわ けですか。 ○医療費適正化対策室長 すみません、事業主健診のほうですか。 ○相澤委員 要するに。 ○医療費適正化対策室長 3頁は、保険者が行う健診については本人の負担分を決めて もかまわないということです。もともと、義務である保険者が当然お金を支払うわけで すが、一部は自己負担が当然あり得るわけです。 ○相澤委員 いままではなかったということですか。 ○医療費適正化対策室長 いや、いままでもありました。例えば人間ドックに行ったり、 健康診断に行ってもありました。これは取らなければならないということではなくて、 やってもかまわないとうことですので。 ○相澤委員 いわゆる、会社の。 ○医療費適正化対策室長 それは事業主健診のほうですね、これは医療保険者が行う健 診の関係ですので。事業主健診は事業主の責務でやられていますが、これは保険者が行 う健診ということです。 ○相澤委員 事業主が行う健診と、特定健康診断というのは内容が変わってきますから、 その部分だけは負担があるということですか。 ○医療費適正化対策室長 事業主健診として行われたものは、医療保険者としてはデー タをいただくということで、健診をしたことにしていいとなっています。そういう分担 関係としました。法律上そうなっていますので、もらえばそれで終わりということです。 ○相澤委員 それから、健康診断の結果、データが保険者に集まるわけですね。労働者 が別の会社に行った場合、別の会社に保険者から前の会社のデータを移すということに なると思います。そのときに、事業者がそれを知ることもできるわけですか。 ○医療費適正化対策室長 その関係の規定は4頁の3つ目の○かと思います。保険者間 で加入者の異動があった場合です。データを持っているのは保険者ですので、例えば会 社が変わってA健保からB健保に健保組合も変わったというケースかと思います。そう いった異動があった場合は、当然、Bの新しい健保組合からデータをくださいと言われ ると、Aはそれまでのデータを提供する関係になっています。これは保険者間の話で、 事業主の話ではありません。 ○相澤委員 ただ、B保険者に入っている事業主が今度、そのデータがほしいといった 場合はどうなるのですか。 ○医療費適正化推進室長 たぶん、駄目でしょう。あるのでしたか。 ○医療費適正化推進室企画官 そこは事業者として見ていただいてもいい情報と保険組 合までしか駄目な情報がありますので、移った場合、移らない場合に関係なく、事業者 が見られる情報と健保組合が見られる情報との壁というのは行った先でも同じ扱いとな ろうかと思います。これは保険者間での異動の話です。 ○相澤委員 ただ、特定健診のほうが内容が多いわけですか。 ○医療費適正化推進室長 それぞれ出入りがあるということだと思います。 ○相澤委員 私が心配しているのは、労働者の不利になるような情報が行ってしまうよ うなことがあってはいけないなと思います。 ○医療費適正化推進室長 法律上は保険者間同士でデータがほしいと言ったらあげない といけない、という規定になっていますけれども、本人がどう考えるかというのは、当 然個人のデータですので、加味しながらしなければいけないのではないかと思っていま す。運用の問題として少し内部で議論させていただいています。 ○堀江委員 ちょっと確認します。いまの話、A事業者からB事業者に労働者が転職を したような場合、元の記録について新たに勤めるB事業者が見てもよい記録があるとい うお話だったと思うのですが。 ○医療費適正化推進室企画官 そういうことはありません。保険者の話です。 ○堀江委員 保険者ですね。 ○医療費適正化推進室長 これはあくまでも保険者間のことです。 ○堀江委員 結構です。事業者が保険者に事業者の実施した部分の健康診断結果を提供 する義務があるようですが、たまたまそうはなっておらずに、保険者が特定健康診査を 実施した。その後になって、保険者が実施した記録があれば、その記録を提供していた だけないかと保険者に申し出た場合、保険者が本人の承諾を得れば、それは提供してよ いことになりますか。 ○衛生専門官 法律上は健診の実施は労働安全衛生法が優先です。保険者が先に立って、 事業者がくださいというのは、たぶん保険局サイドとしては想定していないことだろう と思います。要するに、保険者と一緒になって、事業者が保険者に対して、健診を委託 することはあっても、事業者抜きで保険者だけが特定健診をやって、そのあとデータを 事業者がくださいということは、想定していないと思っています。 ○堀江委員 しかし、今回保険者が実施義務があるということです。相当実施の効力が 広がるというか、実施されていくだろうと思います。どこの会社でも、おそらく健保な どに行けば、労働者の一定の健診があるのがわかります。この制度の悪用といったらい けないのでしょうが、当然安全衛生法に従って実施しなければならない健診の結果を保 険者に問い合わせて貰ってしまう抜け道ができてもいけないと思います。 ○医療費適正化推進室長 それは別な話だと思います。それは安衛法違反にたぶんなる のだろうと思います。 ○堀江委員 違反になりますか。 ○医療費適正化推進室長 義務ですから、果たしていませんので。逆に一緒にやる、あ るいは項目が違うままという前提で考えると、一緒にやろうということがあるかもしれ ませんが、非常に手続的にはかなりややっこしいのではないかと個人的には思っていま す。そうなると、資料3枚目の2つ目○だと思いますが、おそらく保険者が事業主から 委託を受けたというケースではないかと思います。ということであれば、当然データを 出すことはできるかと思いますが、その場合費用負担は当然事業主の負担です。2つ併 せた健診をやって、費用は案分していただくことになるのではないかと思います。 ○堀江委員 保険者側ではそういう依頼があっても、受けてはいけないとおっしゃるの でしょうか。 ○医療費適正化推進室長 受けてはいけないというか、出すべき根拠がないです。出し てはいけないという規定はどこにもないと思うのですが、プライバシーは保護されるべ きだと思います。 ○堀江委員 本人が了解していることが条件についていれば、あとはデータの用だけだ となります。 ○衛生専門官 安全衛生法上の義務を事業者が果たしていないとなると、我々安全衛生 の担当としては、それはあり得ないと考えています。基本的には安衛法で事業者が定期 健診をやっていただくことが大前提にあります。 ○労働衛生課長 結論的には労働安全衛生法の健診項目を事業所でやっていただければ それでいい。それ以上保険者がやったものを貰うことは法律にはありません。特に求め る必要はないというか、求められないかというと、求められますが、それはまさに保険 者の判断になります。いくら労働者本人の同意があるといっても、すぐに出せるもので はない。それぞれのケースバイケースで対応せざるを得ないのではないかと思います。 ○今村委員 教えていただきたいのですが、現状で事業主がやらなくてはいけない法律 に位置づけられている健診を健保に委託してやっているケースは、実態として結構あり ますか。先ほど委託というお話が出ましたが、つまり事業主がやる法律に位置づけられ ている健診だから、当然事業主はその健診データを知って当たり前の話です。健保に委 託して、健保が結果として持っているデータを事業主が知るのは当然のことです。それ はいま現状ではどうなっているのか。 ○衛生専門官 いまの場合は、たぶん事業者と一体となっている健保組合などが、一体 的に福利厚生の一環としての項目を付加して健保組合が健診を実施して、事業者に労働 安全衛生法の部分を返しているやり方になっているのかもしれません。あと、中小事業 者は政管健保などでやっている事業の健診を受診していることもあるかと思いますが、 数字などの細かいところはわかりません。 ○今村委員 実際上は一体といっても、やはり法律的にはあくまでも事業主がやってい るものをたまたま健保がやっている位置づけになります。それは今後も同じですね。 ○衛生専門官 いや、今後はまた若干違ってくるのかと思う。40歳から74歳まで。 ○今村委員 そういう細かいところは違うが、大きな法律的な位置づけとしては同じで す。 ○衛生専門官 基本的には事業者が先に健診をする。 ○堀江委員 特定健康診査には、被保険者の受診義務は規定されていないということで よろしいですか。 ○医療費適正化推進室企画官 被保険者に関する規定はありません。保険者だけです。 ○堀江委員 労働安全衛生法は労働者の受診義務が課せられています。例えば、事業者 が行った健診の結果を保険者に提供することであっても、本人が特定健康診査について は、自分は受けたくなかったとおっしゃった場合は、そのデータを保険者に提供するこ とは、本人の権利を守っていない部分があるように思うのです。これは本人に確認をし て、本人が同意したものだけを保険者に提供する仕組みを考えていかれるのでしょうか。 ○医療費適正化推進室企画官 そこは個別の同意を想定していませんが、法律上のルー ルとして、事業主は保険者に対して情報提供することになっています。個別の同意なく 提供するのは可能なルールにはなっています。ただ、実際の健診する場面では保険者に 提供することを……なりでお伝えすることは大事なことだとは思いますが、法令上の整 理としては法令に基づく提供ですので、同意はなくともよいと整理できるかと思います。 ○医療費適正化推進室長 特定健康診査に相当する健康診断を受けた場合、あるいは受 けることができる場合は、全部または一部を特定健康診査を行ったものとするというの が法律の規定です。 ○堀江委員 事業者のやった健診を受けた時点で、すでに特定健康診査を受けたことに なるということですか。 ○医療費適正化推進室長 そうです。加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、 あるいは保険者が記録の送付を受けたときは、特定健康診査を保険者はしなくてよいと なっています。たぶん、来なければしなくてはいけないということでしょう。これは労 働安全衛生法の世界のことですのでわかりませんが、健保法の世界でいうと、おそらく いただけないことになれば、それはやるしかないと思います。 ○堀江委員 特定保健指導も保険者の義務でよろしいのですね。費用も保険者が負担す るということですね。 ○医療費適正化推進室長 そうです。 ○堀江委員 これは今後の討論の議題かもしれませんが、安衛法における特定という名 前のつかない保健指導が規定されていますが、この内容についても、求めがあれば保険 者に提供する必要があるのでしょうか。 ○衛生専門官 高齢者医療法上は保健指導についての記述はないです。それをどうする かが論点です。これからご説明する資料にあります。 ○医療費適正化推進室長 資料6にある論点の1つではないかと思います。努力義務と して規定されていることです。 ○堀江委員 もう1つ細かい確認です。先ほどの資料の4頁の保険者が変更された場合、 前の保険者が次の保険者に記録を提供しますが、それは保険者になったときからのすべ ての記録になるのでしょうか。 ○医療費適正化推進室企画官 我々のいまの頭の整理としては、元保険者は被保険者加 入員が保険者に属している間のデータはすべて持っていてくださいということです。そ の持っているものすべてで考えたいと思っています。 ○医療費適正化推進室長 ですから、おっしゃりたいのは、おそらく前から職を変わっ ていけば、それぞれのデータがずうっと引き継がれてきていることかと思いますが、引 き継がれているデータを持っているならば、それらはすべてということになると思いま す。 ○堀江委員 この制度が長く続きますと、どこかの保険者の被保険者になったところの データから全部その後移動していくことになります。相当長い期間のデータがその人と ともに移動していく制度ができるということですね。 ○医療費適正化推進室長 必ずそうなるかどうかは言えませんが、長期間にわたって、 データがしっかりとあって、その人がどう変化してきたかがわかるのが非常に重要なこ とではないか。是非そうしたいとは思いますが、保険者が欲しいと言うか、言わないか。 貰わなければいけないとはなっていませんから、それが1つあります。それから、本人 に関係なくデータが保険者の間でうろうろするのがいいのかは議論があります。その辺 の議論をしっかりと詰めていかないといけないと思っています。いまおっしゃられるよ うな履歴のすべてを取るというのは、もう少しかかるのではないかと思います。 ○和田座長 指導に関して、安全衛生法で事業者は努力義務としてやりなさいと言って いますが、このように細かい保健指導などはやらないです。健診データはそちらに渡す ことができてそれでできる。保健指導はまた別個に労働者を呼んでやることになるので すか。 ○医療費適正化推進室長 健診データを渡すというのは、保険者は健診データをいただ くということですか。 ○和田座長 それはいただけますと。しかし、保健指導などはやっていないですね。 ○医療費適正化推進室長 それは事業主がということですね。それは保険者がやること になります。 ○和田座長 もう一度、労働者がそちらに行って、保健指導だけを受けに行くというこ とですか。 ○医療費適正化推進室長 事業主は努力義務ですから。 ○和田座長 やらなければやらないということですね。 ○医療費適正化推進室長 やらないと言われれば当然。 ○和田座長 当然、労働者の場合は細かくわけて保健指導などはしないわけですね。 ○医療費適正化推進室長 しないとは言いませんが、私としては何とも言えません。 ○労働衛生課長 まさにその辺はこれからご議論いただいて、労働安全衛生法における 保健指導のあり方についてご提言をいただければありがたいということです。 ○和田座長 なるべく1つのところで1回でという基本がありますから、健診は1回で いいが、保健指導はそちらで2回受けなくてはいけない事態が生じてしまう可能性があ ると思うのです。 ○医療費適正化推進室長 論点としては資料6の話になるかもしれませんが、努力義務 ではあっても、やられている労働安全衛生法に基づいて行われている保健指導は、健康 保険法で言うところの保健指導とはどういう関係になるのかが1つ。そして、やらない 場合はどうするのかが1つ議論としてはあるのではないかと思います。それはまさにこ れからご議論いただければと思います。 ○和田座長 事業者が管掌する段階などで、そのようなことをわけて保健指導などはや るわけはないと思います。 ○今村委員 矢島室長がいらっしゃるので、私がお話するまでもないのですが、今回の 特定健診も健診と保健指導をわけていますから、健診を受けた人が必ずしも健診の場で 保健指導を受けるとは限らない。全く別の機会に別のところで行うという位置づけもあ りえます。そういう意味では労働者と全く同じと理解しています。 ○堀江委員 労働安全衛生法が主眼にしています職場の環境、あるいは仕事の様子との 関係ですが、そういうように分けて保健指導をされる。データだけは手元にある。しか し、業務歴は聞いていないことになると、仕事との関連について特に深く検討をするよ うな保健指導はあまり想定されていないのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 それはまさにこれからの議論です。そのときに議論ができると 我々は思っています。 ○堀江委員 そのときに議論しましょう。 ○和田座長 精度管理は基本的にはたぶんこれからでしょうか。要するに、技術的にや らせるのか。安かろう、悪かろうで突っ放されるのをなるべく防いでほしい。かなり規 制をかけてしっかりとやるのか、自主性に任せるのか。 ○生活習慣病対策室長 今回、医療保険者の委託基準の中に、例えば先ほど申しました が、敷地内禁煙や電子的にデータを出してもらうことなどがあります。それから今回は 内部精度管理として標準物質の使用、またいろいろな外部精度管理を行いますが、やは り定期的にしっかりと外部精度管理を受けることなどが委託をするときの基準、考え方 になると思います。そこのところは非常に大事な議論です。 ○和田座長 受けることは受けても、成績は悪くても受けていればいいということにな るのですか。 ○生活習慣病対策室長 そこはまた内部精度管理がどうなっているかは、外部精度管理 のところの議論でまたあるのかと思っていますが、そこは大事なポイントです。どうい うように質を保っていくのが大事なのか。 ○和田座長 保険者はいちばん初めにお金のことを考えて、そこでたたんじゃおうなど のことがないように是非お願いします。 ○生活習慣病対策室長 いま先生のおっしゃるようなことがあったときに、特に血液検 査について、その議論が出ましたので、安かろう、悪かろうとならないように、血液検 査のところの質が担保できるように、しっかりと判定が正確にできるようにと標準物質 の考え方を出させていただきました。これはまさに判定の標準の値を示す物質をつくる ので、それを必ず使う。そうすると、そこのところがいちばんばらつきが少なくなりま す。それをやることによって精度管理をします。血液検査の判定のところの精度管理を 高めていくことができると考えています。 ○和田座長 いまの老人保健法で健診検査をやっていました。それと労働安全衛生法と の関係は、交換や費用の問題で、あまり齟齬はなかったのですか。 ○衛生専門官 いままで老人保健法と労働安全衛生法は全く関係がなく、別個にやって いました。対象者も違っていました。 ○和田座長 そうですか。関係がなく別個にやっていたのですね。 ○医療費適正化推進室長 それぞれが、それぞれの仕事として一生懸命頑張ろうという ことです。役割分担をしようというのが今回のテーマです。 ○和田座長 そうですか。わかりました。ほかに何かありますか。 ○堀江委員 今回、調和規定があって、このように調整をしようという流れになってい るという理解でよろしいですか。 ○衛生専門官 正確に申し上げますと、調和規定は前々からあります。項目自体などに ついては調和規定を図らなければいけないと書いてはありますが、対象者が老人保健事 業、基本健康診査といわれているものでは、専業主婦や国民健康保険の方などを対象に していて、我々労働安全衛生法の対象者とダブるところがほとんどなかったので、問題 にはなりませんでした。しかし、今回の高齢者医療法の対象者は40歳から74歳までの 被保険者が全部入ります。労働者も高齢者医療法でやらなければいけない。労働安全衛 生法でもやらなければいけない。項目についての目安は健康局の健康増進指針で示され ています。この両方の法律が指針を眺めながら、どういう健診項目がいいかを考えなけ ればいけないということで、初めて法律がダブったので、我々としてはその検討をしな ければいけないというのが今回の大きな目的です。 ○堀江委員 そうなると、お互い対等ですから、労働安全衛生法が変わったら、今度は 保険局で検討していただけることになるのですか。 ○労働衛生課長 それを補足しますと、いわゆる地域保健と職域保健はそれぞれ目的が 違います。少なくとも労働安全衛生法における健診については、労働者の健康管理の観 点もあります。先ほどの資料3にありましたとおり、労働者の事後措置について、例え ば配置転換、適正配置などに使うという目的に、労働安全性の健診は適う必要があるの ではないか。そういうことを踏まえながら、当然健康増進法なり、高齢者医療法との調 和規定がありますので、それとの整合性をどう見ていくのか。そういう面から先生方に いろいろご意見を賜って、最終的に健診項目が労働安全衛生行政から見て、どういう形 が好ましいのかをご議論いただきたい。 ○和田座長 はい、よろしいですか。それでは、いままでの説明を踏まえまして、本検 討会の論点について事務局より説明していただきます。 ○衛生専門官 資料6と資料7に基づいてご説明させていただきます。資料6は論点の 案と書いてあります。まずは項目についてですが、これは問診項目についても併せて議 論していただければと思います。今回矢島室長からご説明がありましたように、厚生科 学審議会地域保健健康増進栄養部会において、標準的な健診・保健指導プログラムがで きて、脳・心臓疾患等に対応する観点から新たな医学的知見等を基にして、健診・保健 指導の方向性について検討されて、方向性が示されている。資料7と見比べるとわかり やすいのですが、現在の労働安全衛生法に基づいて行われている定期健康診断の項目と 標準的な健診・保健指導プログラムで示されている項目でずれが生じている。例を挙げ ますと、LDLコレステロールの検査を、血清クレアチニン、ヘモグロビンA1c、血 清尿酸の検査、ヘマトクリット、尿潜血、眼底検査、腹囲等々です。これが項目につい てで、もう1つは問診についてプログラムとずれているところがあります。標準的プロ グラムでは喫煙歴、服薬歴について聴取することが書いてありますが、労働安全衛生法 においては、問診の詳細な項目を決めていません。既往歴、業務歴がありますが、そう いうものが入っていません。従来から労働安全衛生法の健診項目の考え方や、先ほどか ら出ています法律上の調和規定などを勘案していきますと、今回健康局から示された健 診項目についても、労働安全衛生法でどこまで定期健康診断で考えていくか。その医学 的な観点と併せて、労働安全衛生の観点から検討していただく必要があるのではないか。 このようなものが健診項目についてです。  もう1つ大きな問題に保健指導があります。高齢者医療法では先ほども言ったように、 特定保健指導の実施を医療保険者に義務付けています。一方、労働安全衛生法では保健 指導を事業者の努力義務としていまして、少し違いがあります。これからは各々の保健 指導を一体的に行っていく必要があるのか。それとも、全く違うものとしてやるのか。 行う場合はどこが実施主体として行っていくべきか。どのようにすればいいかというよ うな課題があります。事業者が行う保健指導に関しては、産業医を初めとして、産業保 健スタッフあるいはTHP等で養成した人材等がいるわけですが、そういう人材の活用 という点については、現在標準的な健診・保健指導プログラムには明示されていない状 況です。これから議論していただきたいのは、保健指導について、事業者が行っている 保健指導と特定保健指導について、一体的な運用や人材の活用という観点でもっと運用 上検討すべき項目はないかです。下に高齢者医療法と労働安全衛生法の対象者、費用負 担の違いなどを簡単にまとめたものを参考に付けています。  2頁は参考ですが、いままで2回大きな定期健康診断の項目の改正が行われています。 1回目は平成元年、2回目は平成10年と書いてありますが、施行されたのは平成11年 です。いずれもいまの労働政策審議会の前身である中央労働基準審議会で建議をしてい ただいて、検討会を開いて報告書を受けた形で改正を行っています。平成元年のときに は、脳・心臓疾患で関連するところでは血中脂質、心電図。平成10年についてはHDL コレステロールと血糖検査と、いずれも脳・心臓疾患に着目した形で健康診断の項目が 追加されてきています。これは今回の健診項目はこれまでの考え方を踏襲しています。  資料7は先ほども言いましたように、現在健康局でお出しいただいている標準的な健 診・保健指導プログラムで示されている項目と、安衛則で規定しています健診項目に若 干ずれがあります。赤、黄、青の各色でわかれています。赤の部分は標準的なプログラ ムで出されている必須な項目であって、労働安全衛生法で必須の項目になっていないも の、黄がプログラムで医師の判断により実施される項目で労働安全衛生法にない項目、 青はプログラムになくて、安衛則で実施することになっている項目です。上からいきま すと、問診でいう喫煙歴、服薬歴が抜けています。身長については労働安全衛生規則に おいて、20歳以上については医師の判断において省略可ですが、プログラム上は毎年取 らなくてはいけないということになっています。腹囲については安衛則では一切記載が ありません。ヘマトクリットについても安衛則では記載がありません。血清の総コレス テロールはLDLコレステロールと交換する形にプログラム上はなっています。血糖検 査は安衛則上は血糖検査は空腹時血糖、もしくはヘモグロビンA1cのどちらかでいい となっていますが、プログラム上は両方とも必須項目になっています。潜血と眼底検査 は医師の判断による項目ですが、これは安衛則には入っていません。血清クレアチニン と尿酸はプログラム上の必須項目ですが、安衛則上は記載がないというずれがあります。 こういう健診のずれや保健指導の考え方を中心にご議論いただくことを考えています。 以上です。 ○和田座長 いま、主な論点について整理していただいていますが、何かご質問があり ますか。 ○堀江委員 先ほども言いましたが、労働安全衛生法では作業環境や仕事の様子につい て詳しく問診をし、またその結果についてはそういうものに反映をしていくことによっ て、結果を生かすのが主眼になっています。これについては保険者の健康診断をこのま まの暫定版の形でやったとしても、業務歴等聴取されていないわけですし、血液データ については保険者の求めに応じて事業者が提供するのだと思いますが、作業環境の様子 等については特に提供することにもなっていません。実際上、無理であると思われます が、この辺は働いている人の場合はそれを十分聴くことが有効な保健指導になるのだと いう考えがあればお聞かせください。例えば、特定保健指導の中に必ず仕事についての 問診をしてアドバイスをしていくという改正を考えていく余地があるのか。また、もし それがないのであれば、どのようにして両者の整合性を取るか。たまたま保健指導で話 題がそこに及んだときに、これは仕事に対して何か改善をしなければ、この人の健康状 態は改善されないことを気づかれる保健師さんも多勢いらっしゃると思う。そういう場 合に、どのようにして事業者にその情報を戻していくのか。その辺についてはいかがで しょうか。 ○衛生専門官 基本的に保健指導を労働安全衛生法で全くやらなくてもいいということ ではなくて、従来の作業環境に応じた保健指導は当然労働安全衛生法に基づいて、今後 も事業者の皆さんにはやっていただきたいのは変わりがないのです。保険者がやらなけ ればいけない保健指導というのは、まさにメタボリックシンドロームというか、生活習 慣病に着目した部分だけをやると義務づけられています。むしろ、保険者に作業歴をや ってもらうというよりは、いま事業主がやっている保健指導の中の一部の生活習慣病の ところをいかに特定保健指導と見なすことができるようにしていくかというところまで、 事業主の中で頑張っていただくかどうか。要するに、事業主がやっている大きな保健指 導の中の一部分を保険者がやるべき特定保健指導と見なすことができるようになれば、 そのデータを保険者がやったこととするのか、アウトソーシングとするのか、そういう 一体的な運用ができるのではないか。事業者も保健指導をやり、特定保健指導ではない から、保険者ももう1回やりというと、2回やることになります。事業者がやっている 保健指導の中で、特定保健指導相当の保健指導のレベルまで上げていただければ1回で 終わる。事業者の中で特定保健指導も含めてやっていただくことができるのではないか と考えています。 ○今村委員 これは具体的な議論というか、意見というか、踏み込んだ話になってもよ ろしいのでしょうか。 ○和田座長 次回やる予定です。 ○今村委員 私はいま専門官のおっしゃったような、国民として今回共通の健診・保健 指導をまず保険局でおつくりになったものがあるとすれば、それは労働者であっても一 般の国民であっても、みんなそこはやっていただく考えがベースにあって、その上にさ らに労働者としての作業環境等によって起こってくるいろいろな問題があることについ ての保健指導、健診項目があるという位置づけがいちばんわかりすいのかとは思ってい るのです。ただ、そのときに先ほど座長からご指摘があったように、医学的にどうして この項目が必要だというものについて、この安全衛生法の中でもやっていくのかどうか。 私の考えとしてはそれはいま労働者であっても、今度違う立場になっていく。辞めて従 来でいえば老人保健事業の対象者になっていく健診を受けていく方たち、いわゆる標準 特定健診だけを受ける方にしてみると、前はクレアチンはなかったが、今度はある。ま た次はありませんというような、保険者が変わるごとにいろいろな生涯の健診データが あったりなかったりするのは、やはりよくない。基本のコアな部分だけはある程度共通 にあった上で、労働安全衛生法の中に特殊なそれに応じた健診項目があるのがいいので はないかと思っています。 ○和田座長 その場合、事業者の安全配慮義務の中にメタボリックシンドロームの保健 指導まで入るのかどうか。 ○今村委員 保健指導は取りあえず置いておいて、健診項目だけにおいてです。 ○医療費適正化推進室長 それは資料6の2枚目の中にもありますように、基本的には 心疾患など、そういうものも一応労働安全衛生法の世界では取り込んできています。そ れは医学的にどうかがポイントの1つではないかと思います。 ○労働衛生課長 そうは言っても、そのままいまの暫定版の健康診査の項目を持ってこ られるのかどうかは、議論が必要だと思います。その辺をご議論いただきます。 ○和田座長 そうですね。法律の趣旨も目的もかなり違うわけですから、それは全部一 緒にしろというのは、あるいは無理が来るかもしれないです。次回からいろいろご論議 いただくことになると思います。よろしいですか。では、先ほど申し上げたように、も う少し論点を明確にしまして、次回から検討を進めていきます。事務局から何かありま すか。 ○衛生専門官 それでは次回の会合までにもう少し詳細に議論を整理させていただいて 資料を準備します。次回以降の日程ですが、第2回は11月6日、月曜日の12時半から 14時、第3回目は11月27日、月曜日17時から19時を予定していまして、場所はいず れも厚生労働省6階の共用第8会議室で行う予定です。2回目は詳細な議論をしていた だきますが、3回目の検討会では事業者側、労働者側、健診機関の代表等からヒアリン グを予定しています。日程については以上です。 ○和田座長 ほかに何かありますか。 ○労働衛生課長 全体的なスケジュールですが、第3回まで11月にやるという話でした が、我々としては、できれば今年中にまとめていただいて成案をいただければと考えて います。それは保険局も健康局もそういうスケジュールを考えていまして、我々だけ取 り残されるよりは一緒にいきたいということを含めまして、そういうことでお願いしま す。 ○和田座長 そういうことですので、よろしくお願いします。本日の検討会はこれで終 了しました。どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(TEL03−5253−1111内線5495,5181)