06/10/25 社会保障審議会福祉部会平成18年10月25日議事録        社会保障審議会福祉部会議事録 1 日時:平成18年10月25日(水)10:00〜12:00 2 場所:東海大学校友会館「阿蘇の間」 3 出席委員:岩田部会長、石原委員、石橋委員、井部委員、江草委員、小島委員(代 理:飯倉氏)、京極部会長代理、鴻江委員、木間委員、駒村委員、白澤 委員、高岡委員、鶴委員、中島委員、福田委員(代理:田中氏)、村尾 委員、森委員   欠席委員:堀田委員 4 議事 (1)介護福祉士のあり方について (2)社会福祉士のあり方について 5 審議の内容 ○岩田部会長 皆様、おはようございます。定刻となりましたので、第2回「社会保障 審議会福祉部会」を開催いたします。 まず本日の委員の出席状況について、事務局より御説明いただきます。 ○矢ア総務課長 本日の委員の皆様方の出欠状況について御報告いたします。本日は、 小島委員、福田委員及び堀田委員が御欠席でございます。小島委員の代理といたしまし て連合生活福祉局部長の飯倉さんが、福田委員の代理として栃木県保健福祉部長の田中 さんがお見えになっておられます。 井部委員はまだ御着席ではございませんけれども、特段の御連絡もいただいておりま せんので、間もなくお見えになると思います。 また、本日は介護福祉士の在り方に関する議論に関連いたしまして、前回の部会にお いて議論となりました福祉系高校の実情などについてお話をいただくため、全国福祉高 等学校長会の高橋理事長、文部科学省の合田大臣官房審議官にそれぞれお越しいただい ております。 このほか、9月26日付で私ども事務局の方にも異動がございましたので、御紹介い たします。福祉基盤課長の木下でございます。 ○木下福祉基盤課長 木下でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢ア総務課長 なお、本日でございますが、社会・援護局長の中村、審議官の御園は 国会関係用務がございまして、11時30分ごろ退席させていただくことになっており ますので、あらかじめお伝えいたします。 次にお手元に配付させていただいてる資料の関係ですが、最後の資料8に前回の部会 の議事録がございます。これは前回の部会において御了解いただきました、部会の公開 に係る取扱いに基づきまして、事前に各委員の皆様方に送付して御確認いただいた上で 公表させていただいておりますので、申し添えます。 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 大分分厚い資料がテーブルの上にありますが、今日も多分時間一杯使う ことになると思いますが、2つの専門職についての御議論をいただきたいと思います。 まず、介護福祉士の在り方の議論の方から入ります。前回ここで大分議論をいたしま したけれども、事務局の方でその整理をしていただきまして、これを踏まえて検討事項、 検討の視点というものをつくっていただいております。本日はこれに沿って各論点ごと に議論を進めたいと思います。 前回の議論の整理と「【論点1】専門資格としての介護福祉士の養成の在り方」につ いて、事務局より御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、御説明をさせていただきます。本日は資料が たくさんございますが、事務局からは資料1から7まで御用意をさせていただいてお ります。 資料1が、前回9月20日の当福祉部会の議論における主な指摘事項をまとめたもの。 資料2から4までが、介護福祉士制度の見直しについて、3つの論点ごとに資料を整 理したもの。 資料5から7までが、社会福祉士関係の資料でございます。 まず、資料1と2について御説明をさせていただきます。 資料1の1ページからが「介護福祉士制度の見直し関係」でございます。 2ページ「1 介護福祉士制度の見直しに当たっての基本的視点」ということで、専 門資格としての介護福祉士の養成の在り方の側面と、介護の担い手の人材確保の側面を どのように調和させていくのかという問題提起がございました。 2点目といたしまして「2 専門資格としての介護福祉士の養成の在り方」につきま して、これからの介護ニーズに対応するために求められる介護福祉士像を踏まえ、介護 福祉士資格の取得方法の在り方について検討していくべきではないか。資格を取得する までの教育内容だけではなく、いわゆる専門介護福祉士に係る制度など、資格取得後の さらなる知識・技能の取得という側面も含めて考えるべきではないか。その資格の在り 方については、一方で介護福祉士は人間性・倫理性も大切であり、少しでも人生経験を 積んでいただいてから介護の現場に出ていただくのが望ましく、他の保健医療福祉専門 職と同様、普通高等学校を卒業後2年以上の専門教育を受けて国家試験を受けて受験す る仕組みとすべきという御意見が出されました。一方で、介護福祉士は、一定水準以上 の教育内容を前提として、多様であってもよいのではないか。ボランティア等を通じて 小さいときから福祉に対して素養を持って育ってきた者等が、高等学校で福祉の道を志 し、資格を取るために努力をしていくというルートを排除すべきではないのではないか という御意見が出されたところでございます。 3ページ「3 介護の担い手としての介護福祉士の人材確保」という点につきまして、 介護福祉士の資格を取得している者のうち、実際に就業している者が少ない現状をどう 分析するのか、社会の中できちんと認知されるようにするには、どうしたらよいのかを 考えるべきではないかという御指摘があったところでございます。 「4 その他」といたしまして、介護福祉士の定義等につきましても、例えば身体介 護だけではなく、心理的・社会的支援の側面にも配慮すべきといった観点から点検を行 っていく必要があるのではないかといった御意見が出されたところでございます。 4ページからが「社会福祉士制度の見直し関係」でございます。 5ページ「1 求められる社会福祉士像について」ということで、法制定時と現在と では、求められる社会福祉士像が変わってきているのではないか。社会福祉士に求めら れる専門性や担うべき業務として、家族や地域社会への働きかけや地域福祉における役 割等について整理すべきではないかという御意見があったところでございます。 「2 社会福祉士の養成課程の課題について」ということで、教育・職能団体・職域 の三者の役割分担と連携について、改めて整理する必要があるのではないか。実践能力 を有した人材を育成するために、実習等の在り方について検討してはどうか。その際、 実習指導者などの在り方について検討してはどうか。行政による規制の対象となってい ない大学等における教育内容について、その格差の実態も踏まえつつ検討してはどうか といった御意見が出されたところでございます。 「3 社会福祉士の任用・活用における課題について」ということで、社会福祉士の 職域を拡大するため、現在、社会福祉主事が中心となっている社会福祉専門職の任用要 件の在り方等について検討してはどうかといった御意見があったところでございます。 続きまして、資料2に沿いまして、介護福祉士関係の最初の論点の専門資格としての 介護福祉士の養成の在り方について御説明をさせていただきたいと思います。 まず1ページから「検討の視点」を整理しております。全体的考え方といたしまして、 今後介護ニーズが増大し、また介護ニーズの変化に対応するためにも、介護職員の量的 確保とともに質的向上が必要ではないか。介護福祉士の質の全般的向上を図るために、 教育内容の充実を行うとともに、すべての者について一定の教育プロセスを経た後に国 家試験を受験するという方法で一元化を図ることとしてはどうか。また、介護福祉士の 国家資格は「幅広い利用者に対する基本的な介護を提供できる能力を有する資格」と位 置づけ、資格を取得した後も生涯にわたって自己研鑽し、知識・技能を修得するという 考え方について、どのように考えるかといった論点を挙げさせていただいております。 2ページの「福祉系高校ルート」については、資格取得方法の一元化に当たり、教育 内容とは別に年齢・学歴により、国家試験の受験資格に制限を加えることとすべきかと いう論点があり、この点につきましては、人間性・倫理性の涵養のためには人生経験を 積むべきであるという観点、明確な職業意識と志を持って学ぶ福祉系高校を含め、介護 の分野には多様な人材を確保するべきであるという観点、現に福祉系高校を卒業した者 に介護福祉士の受験資格が付与されている観点等を踏まえつつ、どのように考えるかと いうことになろうかと思います。 「実務経験ルート」につきましては、理論的・体系的学習を行うために一定の養成課 程を課す場合において、現に就労している者の負担の観点をどのように評価するかとい うことがございます。 3ページ目からは、この論点に関する資料を付けております。3ページは、前回も御 紹介をいたしました「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検 討会」の報告書の抜粋であり、資格取得方法の見直しの方向について書かれている部分 でございます。 4ページ目は、前回もお出しいたしました「介護福祉士の資格取得方法の見直し案」 で、上が現行、下が見直し案でございます。見直し案をイメージでお示ししたものが5 ページの図でございます。これも前回お出ししたものでございますけれども、白い部分 が現行、グレーの部分が見直し案で追加される部分でございます。それぞれのルートを ごらんいただきますと、3ページの報告書の抜粋にありますとおり、多様な人材を確保 する観点から、それぞれのルートを残しつつも教育内容の充実を行うとともに、図の上 にも書いてございますが、すべての者について一定の教育プロセスを経た後に国家試験 を受験するという方向での一元化を図ろうとする見直し案になっております。 6ページで「福祉系高校」という言葉について整理しております。社会福祉士及び介 護福祉士法におきましては、第40条第2項で、介護福祉士国家試験の受験資格を有す る者として、第1号で3年以上介護等の業務に従事した者と、第2号でこの実務経験者 と同等以上の能力を有すると認められる者で、厚生労働省令で定める者とされており、 この法律の施行規則におきましては、この同等以上の能力を有する者として、第21条 第1号で、中学校を卒業して高等学校において3年以上一定の科目を修めて卒業した者、 また第3号で、高等学校卒業後に高等学校の専攻科において一定の科目を修めて卒業し た者が挙げられております。この専攻科の例といたしましては、例えばNHK学園等が あり、通信制で教育を行っております。この第1号から第3号までの高等学校を総称し て、いわゆる福祉系高校と呼んでいるところでございます。 7ページ「実務経験・福祉系高校ルートの現行法での位置付け」でございます。昭和6 2年の臨時教育審議会の答申を引用しておりますが、ア.で公的職業資格の受験等に必要 な要件を見直し、原則として学歴要件を除去するという考え方があり、また当時既にホ ームヘルパーとして就業している者にも資格取得の道を開く必要性があったことから、 (1)で、制度施行当初より実務経験ルートが設置されているところでございます。 またウ.で、高等学校職業科などで、専門的な職業教育等を受ける者に対し、公的職 業資格の取得の道を拡大するという考え方があり、実務経験ルートにおいては、中学卒 業で実務に就いた者は、最短で18歳で受験資格を取得するということとのバランスも考 慮いたしまして、(2)の制度施行当初より福祉系高等ルートが設置されたところでござい ます。 8ページ「『資格』の種類と実務経験ルートの意義」でございます。業務独占資格に おきましては、有資格者以外の者はその業務ができませんので、就労前に集中的に勉強 して資格を取得していただいた上で業務を行っていただくことになります。一方、介護 福祉士のような名称独占資格におきましては、例えば家族やボランティアの方など、有 資格者以外の方もその業務を行っていただくことも法的には可能でございます。したが いまして、就労前に集中的に勉強をして資格を取る方法だけではなく、働きながら勉強 をして資格を取る方法も必要であると考えられるところでございます。 9ページ「介護福祉士の登録者数等の状況」でございます。現在約54万5千人の登 録者のうち、約4割が養成施設の卒業者、約6割が国家試験の合格者でございますが、 国家試験の合格者の欄をごらんいただきますと、今年の約6万人の合格者のうち実務経 験ルートで約5万6千人、NHK学園の卒業者が約1,800人、それ以外の福祉系高校が約 3,300人と、それぞれのルートを通じて介護福祉士となっておられる方がいらっしゃいま す。 10ページ「福祉・医療関連資格取得に必要とされる要件について」でございます。さ まざまな資格につきまして、上下に資格試験の受験の要否、左右に一定の学歴・教育・ 実務経験の要否に分けて整理しております。上の中央の四角でございますが、看護師、 理学療法士、作業療法士等は、高校卒業後一定の教育を受けた上で国家試験を受けてい ただくことになっております。その左側でございますが、一定の実務経験や中卒、ある いは中卒プラス一定の教育で国家試験を受ける者で、保育士の一部、準看護師などのほ か、一番下の下線の介護福祉士の実務経験ルートや福祉系高校ルートが該当いたします。 一方、下の中央の四角でございますが、高卒後一定の教育を受け、国家試験なしに資格 を取得する者で、介護福祉士の養成施設ルートのほか、保育士の一部や栄養士が該当し ております。今回の見直し案では、介護福祉士について、左上の四角の中のルートを残 しつつ、中央下のルートを中央上の四角に移動しようとするものでございます。  このそれぞれのルートを残すことにつきまして、11ページですが、福祉系高校ルート と養成施設ルートについて見てみますと、養成施設の定員充足率を都道府県別に見た場 合に、左側の図で、15〜18歳人口1人当たりの福祉系高校の定員数の多いところが、必 ずしも定員充足率が低いとは言えず、右側の図で、養成施設の定員が15〜18歳人口に比 べて少ないところが定員充足率が高くなっております。福祉系高校の定員と養成施設の 定員充足率に相関関係が余りないことから、福祉系高校ルートにより介護福祉士を目指 す方と、養成施設ルートにより介護福祉士を目指す方は、それぞれ別におられて、それ ぞれのルートが必要ではないかと考えられるところでございます。 12ページは、「実務経験ルートについて」です。現在は、実務経験3年以上で国家試 験を受けていただくことができるわけですが、検討会報告書における見直し案では、実 務経験に加え、例えば6か月以上の養成課程を課す等とされていることを御紹介してお ります。 以上でございます。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。要領よく前回の議論をおさらいしてい ただきました。ただいまから、論点1に関しての議論を開始いたしますけれども、先ほ ど事務局から御案内がありましたように、本日は全国福祉高等学校長会の高橋理事長と、 文部科学省の合田審議官においでいただいておりますので、福祉系高校の実情について お二人から説明をお願いしたいと思います。 まず合田審議官、よろしくお願いいたします。 ○合田審議官 文部科学省の合田でございます。本日は、こういう御説明の機会を与え ていただきまして、本当にありがとうございます。福祉系高校の位置づけ等につきまし て、まず私の方から、できるだけ簡潔に御説明を申し上げたいと思います。 お手元に、私ども提出資料「福祉系高校における介護福祉士の養成について」という 資料が配付されておろうかと思いますけれども、それに沿って御説明をさせていただき たいと思います。 まず1ページでございますが、高等学校における職業教育につきまして、近年御案内 のように、若者の働く意識、あるいは意欲が希薄化するといったようなことが言われて おります。そういう中で、職業教育は非常に重要なものというふうに考えております。 勿論、これまでも工業高、農業高校なども非常に重要な役割を果たしてきたわけでござ いますけれども、今日におきましても高校生全体に占める専門高校生の割合は一貫して 2割を超えるといったようなことで、非常に重要な位置を高校教育の中で占めていると いうことでございます。 2ページ、その中で福祉系高校ということでございますけれども、先ほど御説明がご ざいましたように、介護福祉士制度創設以来、いわゆる福祉系高校ルートというものを 位置づけてきていただいているわけでございますけれども、その背景といたしましては、 先ほども申し上げましたような高校における職業教育の意義に加えまして、多様な人材 の確保、そして臨時教育審議会第三次答申における御指摘、公的職業資格、高等学校職 業科などに、公的職業資格取得の道を拡大するといったような御指摘があったこと等が 背景にあるものというふうに理解しております。 そこで、福祉系高校の生徒さんたちでございますけれども、非常に明確な目的意識を 持って一生懸命勉強していただいております。必要な知識、技術を修得するということ のみならず、豊かな人間性が非常に重要であるということで、そういったようなことも 含めて教育が行われているということでございます。 とりわけ、私ども小・中学校段階で奉仕体験活動を充実するということを近年重視し ております。そういったような体験活動の中から、是非福祉の分野で貢献したいという 興味・関心・意欲を芽生えさせるといったようなことで、福祉系高校に進学してくる生 徒さんたちが多いということでございます。 そういう流れの中で、平成15年に、農業・工業・商業といったようなものと並ぶ専門 教科として福祉科が発足いたしました。この3月に初めての卒業生が出たということで ございます。こういったようなことも、国民的な期待が結実したものではないかと考え ております。福祉系高校は、教育体系全体の中で既に重要な柱として位置づけられるよ うになっているということでございます。 4ページ、その福祉系高校は、いわゆる福祉科高校68校を含めまして187 校ございま すけれども、介護福祉士国家試験合格率は49.7%、実務経験者ルートが46.2%でござい ます。その中でも、福祉科高校の卒業生につきましては65.1%ということで非常に高い 合格率をいただいております。 また、卒業後の進路につきましても、先ほど申し上げましたようなことで、進路も目 的意識も明確な生徒さんたちが多いということで、就職するにせよ、進学するにせよ、 福祉分野に多数の生徒さんが進路を取っている。67.3%という状況になってございます。 就職をした後どうかということでございますけれども、いわゆる離職率、この統計で は3年半経った時点での離職率が13.5%ということでございます。これは、高校卒業後 就職した者全体の3年後の離職率が49.8%に比べて明らかに低い、つまり定着率が非常 に高いということになっております。ちなみに大卒の離職率は35.7%ということでござ いますので、それに比べても更に定着率が高いということでございます。 そういったようなことで、福祉系高校の子どもたちは一生懸命頑張っております。5 ページにございますように、去る7月の「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの 見直し等に関する検討会」の御報告を私どももちょうだいしてございます。福祉系高校 についても、教育内容の充実等の見直しをするようにということでございます。私ども といたしましては、この教育時間を1,190 時間から1,800 時間に大幅に引き上げる、カ リキュラムの抜本的な見直しをする。あるいはこれにより難い場合の実務経験コースの 設置、あるいは教育環境の整備充実といったことについて必要な検討を行ってまいりた いと考えております。 そういうことでございますので、よろしく御審議のほど願い申し上げます。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 それでは、続きまして、高橋理事長さんからお願いいたします。 ○高橋理事長 全国福祉高等学校長会理事長の高橋でございます。福祉系高校の現状に つきまして、現場で教育に携わっている者といたしまして、審議委員の皆様の御理解を いただきたく、福祉系高校の現状と今後の一端を御報告申し上げたいと思います。 福祉教育に私が関わったのは、昭和63年に本校に福祉科が開設されて以来18年になり ます。15年度からは、全国福祉高校学校長会の副理事長として2年、そして昨年からは 理事長といたしまして、福祉系高校における福祉教育の充実、進化、発展のために取り 組んでまいっておるところでございます。私は、高校福祉教育の現場の実態の生の姿を 御報告することにさせていただきたいと思います。 資料の1ページをごらんいただきたいと思います。まず福祉系高校卒業生の評価のう ち、就職、離職率についてでございますが、福祉分野への就職割合がおおよそ8割と大 変高く、しかもその離職率は、先ほど文科省からも発表がございましたけれども、高校 全体、あるいは大学の3分の1以下と驚くほど低くなっておるのが現状でございます。 これは、福祉に携わる夢と希望を実現し、充実した職業生活を送っていることを表して いるものと考えます。 2ページ目をごらんいただきたいと思います。次に福祉系高校の教育を受けて、施設 に就職した卒業生の評価でございます。平成18年1月に加盟校を通しまして、全国の各 施設にアンケート調査を実施させていただきました。私ども福祉系高校が、生徒を送り 出してから15年を経ておりますが、その卒業生たちが施設でどのような評価を受けてい るのか。カリキュラムに定められた教育課程を実施することは勿論のことでございます けれども、それに加えて施設から見て生徒に不足しているもの、求められているものを 把握して、より教育レベルを上げて、これからの福祉教育にいかに生かしていくかのた めに行ったものでございます。 第1点といたしましては、福祉系高校卒業生を採用する理由を尋ねてみました。素直 であり、施設方針になじみやすいが43.5%、若さがあり明るく元気であるが22.6%、一 生懸命であるが21%と、若いときから介護という職を目指して、それを実現している喜 びを一生懸命その職場で励み成長しようと努力していることが表されているものと考え ております。 3ページ目をごらんいただきたいと思います。第2点といたしましては、教育の成果 がどのようなところに表れ、示されているのかを把握するために、施設として評価する ところを尋ねてみました。素直であり指示されたとおりに業務を遂行するが42.1%、若 さと向上心があるが28.8%、明るく元気であるが16.7%で、学んできたことに加えて実 社会でよりよい介護福祉士になるために、求められていることを素直に受け入れて、自 分のものとして更に職務を全うするだけでなく、より一層レベルを向上させようとする 意欲が評価されているものと私どもは受け止めております。 最後に、若いときから意欲を持って臨んだ仕事に就いてはいるが、ほかの介護福祉士 と比較し、若いことがハンディになっているかと思い尋ねさせていただきました。それ は、個人差の問題であるが60.7%、差がないが10.3%で、資格取得時あるいは就職時の 年齢経験を施設では余り問題にしておらず、さきの第1点、第2点で評価を受けている ように、非常に期待され、福祉系高校資格者が施設で高く評価されていることがわかり ました。 これらの高い評価は、先ほど申し上げました低い離職率が裏づけているのではないか とも考えております。 4ページ目をごらんいただきたいと思います。次に教員については、教員としての資 格に加えて、専門教育のための知識・技能を修得して、教育に当たっています。介護福 祉士資格を始めとして、資格取得者が多く、教員は自己研鑽を重ねて、次に指導力並び に専門性を高めておるところでございます。今後、福祉系高校が受験資格を得る方法と して、1,800 時間の履修後に付与される方法。従来の1,190 時間の履修に対して、9か 月以上の実務経験を経た後に付与される方法の2つが考えられておるようですが、これ らの見直しの方向につきましては、福祉系高校においては真摯に受け止めて、高校にお ける福祉教育の充実に今後ますます努めてまいります。 以上、福祉系高校の現場からの現状と、今後の一端を御報告いたしましたが、私ども 福祉系高校は、教育の現場にある者に共通して言えることでありますけれども、特に若 いときから介護という人と接して、他人の介護を必要とする皆さんの役に立ちたいとい う意欲を持って進路を選んだ生徒たちに対して、いかに教育をし、知識と技術だけにと どまらずに、人間として人格を尊重して職務を遂行するということ、全人的な知識・情 熱を傾け教育しており、そのために他の教科に劣らない努力・研鑽を続けていることを 御理解いただきたいと思います。 今年開催いたしました全国福祉高等学校長会全国大会におきまして、生徒の体験発表 を実施いたしましたけれども、その中で発表したいずれの生徒も福祉にかける情熱、施 設での体験の苦労、難しさ、その中で理解をしてもらうための工夫・努力を、堂々と胸 を張り発表いたしております。 その内容、姿には、福祉への情熱、使命感、満足感、そして達成感がひしひしと伝わ ってまいりました。これは、学んでいる生徒たちが私どもの教育の域を超えて成長して いる姿として見せ付けられた思いがいたしました。施設の評価にも出ていましたが、素 直さ、向上心、意欲、その成長力を実感させられました。福祉教育に携わってから20年 になろうといたしておりますが、私が携わった教育に間違いはないと確信いたしており ます。今後、教育界に何年身を置くことになるかわかりませんけれども、最近更に福祉 教育に対する意欲をかき立てられ精進いたしております。 福祉系高校の福祉教育への取組み、教員のレベル、研鑽状況、そして卒業生の進路、 その施設での評価を審議委員の皆様に御紹介し、福祉系高校の現状と今後の一端を教育 現場からの御報告とさせていただきます。何とぞ御理解賜りますよう、お願い申し上げ ます。 以上でございます。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。 それでは、今日のお二方の御報告と、先ほどのまとめ、前回の議論を踏まえまして、 御意見、御質問をいただきたいと思います。どなたからでも、どうぞ。 ○井部委員 文部科学省の合田審議官に伺いたいのですが、高校における職業教育の意 義ということで御説明がありましたが、この福祉科ではなくて、ほかにも農業とか工業 とかいう職業教育がされているという御説明がありましたが、その農業や工業の職業教 育におきまして、どのような資格を取ることができるようになっているのかを教えてい ただきたいと思います。 ○合田審議官 「福祉系高校における介護福祉士の養成について」という関係資料の1 ページ目に統計表が出てございますけれども、そこの黒枠で囲っている部分、農業、工 業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の8つの分野が職業教科として整理している ものでございます。そこで取れる資格は、これは非常に多様でございましてたくさんご ざいますけれども、職業学科の生徒さんたちが、意欲を持って勉強していく上で、各種 の職業資格を目指して勉強することが教育上非常に効果的だということで、それぞれど の分野の職業高校におきましても、そういった各種の資格取得に向けて、例えば商業で ございますと簿記といったようなものも含めて、資格取得を目指して学習するというこ とを非常に重要な位置づけに置いているといったようなことでございます。 もし詳細な資格リストがお入り用でしたらば、後ほど資料として御提出させていただ きたいと存じます。 ○岩田部会長 よろしいでしょうか。 ○井部委員 ありがとうございました。 ○岩田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○江草委員 ただいま審議官がおっしゃいました資格についてですが、私がお尋ねした いのは国家資格でございます。簿記ができるとか、1級、2級とかではなくて国家資格 でございます。 ○岩田部会長 よろしいですか。どうぞ。 ○合田審議官 先ほどお話のありました準看護師、看護師関係のもののほか、例えば調 理師でございますとか、ソフトウェア開発技術者とかがございます。手元に網羅的なリ ストがございませんので、その点は申し訳ございません。例えばそういうものがあると いうことでございます。 ○岩田部会長 よろしいですか。 ○江草委員 はい。 ○岩田部会長 それでは、森委員、どうぞ。 ○森委員 今、合田審議官と高橋理事長さんのお話を承りまして、私は介護の現場は7 月の冊子の中にもございますように、多様な人材が介護の現場におられるということが、 例えばそこの中で研鑽していくことを含めて、そういう中で利用者の立場からしても大 変意義が深いものだと思います。あるいはまた利用者の家族にとりましても、大変すば らしいことだと思います。 そういう中で違いを認めることとして、特に職業系のことも含めて、いろんなコース によって介護福祉士を目指すということで、介護の現場に多様な人材の確保ができると 思います。 先ほど高橋理事長さんもおっしゃいましたように、とりわけ福祉マインドの醸成をし た人たちが、地域社会、あるいは現場におられるということが、どれほど大きな支えで あるかということで、是非とも福祉高等学校、今回の方向として一元化をしていく中で、 更に教育内容の抜本的な見直しを含めて充実していかれるという御決意を持って臨まれ るのならば、なおさらその道をとざすべきではないかと思います。 たまたまこの11月に市内の高等学校の福祉科の生徒が、私どもの市の福祉関係の行事 に毎年参加しておりますけれども、やはり地域の住民の皆様方から高い信頼を得ておる。 そういうことが、地域社会あるいは施設と住民とが結び付いていくということで、是非 とも多様な人材確保のためにも、この福祉系高等学校の道を、高いハードルかもしれま せんけれども、今後もやっていただける皆様方の熱意を買いたいと思っております。 ○岩田部会長 そのほか、いかがでしょうか。 ○鴻江委員 介護福祉士を受け入れております現場から質問させていただきたいと思い ますけれども、職種別で言うとどういった方々が指導者に多いのか、その辺を教えてい ただきたいと思います。看護師の方が多いとか、介護の現場からの指導者が多いとか、 その辺は学校教育の中ではどういった職種の方が多いのでしょうか。 ○高橋理事長 生徒を指導している教員の内容でございますか。 ○鴻江委員 そうです。 ○高橋理事長 福祉系高校では、専門科目を担当する者は、教科「福祉」の免許を所持 することは基本的なことですが、先生方の中では、看護大学を出て、看護師資格や、生 徒と一緒に介護福祉士を受験し合格するなど、又、社会福祉士・公民・地歴・家庭・情 報等の資格者が、少なくとも当学園福祉科におります。  全国の加盟校に対しても、教科「福祉」以外の免許について調査致しましたところ、 多くの先生は、介護福祉士・社会福祉士・看護師等の資格を持って福祉教育に臨んでい ることがわかりました。  また、併せて、指導力向上のために、厚労省とも関係するかも知れませんが、ダイヤ 財団の先生方のご協力をいただきながら、福祉系全国大会、ブロック大会等で研修を深 め、資質向上に努めております。決して、教科「福祉」だけで福祉教育を行っておりま せん。 ○鴻江委員 ありがとうございます。今お尋ねしましたのも、現場の中で専門性が非常 に問われておりまして、学問的な専門性であるのか、あるいは技能的なものなのかとい うことを考えてみますときに、今、実際現場の中でも認知症の研修であったり、ユニッ ト、いろんな体制が変わってまいっております。そういった多様性に対応するために、 現在でもそういった研修を受けている中で、学校の指導者の方たちがどのような方たち になってらっしゃるのかというのは、非常に私たちも問われるんです。 こういう実習、実務レベルの時間が長くなるということは、受け入れる施設にとりま しては直接的な業務をやっていただくには責任問題がありますので、なかなかそういっ たものを理解していただくには、時間が長ければいいということではないと思っており ます。養成学校等が、どういった実務レベルの指導者をそろえていらっしゃるかという のは、私たちも非常に気になっている部分ですので、ちょっとお尋ねをいたしました。 ○岩田部会長 今の点と係ってですけれども、福祉系高校という場合に、先ほどの御説 明にもありましたように、福祉科を置いているところとその他で定着率も含めて大分違 うような感じですね。 実は、私の勤務している大学でも、高校の福祉科の先生の養成をしているものですか ら、実習をお願いしたりしているんですけれども、福祉科を置いている学校では非常に 優れた先生がいらっしゃる一方で、そうではない福祉系高校の場合は、むしろ私どもの 学生が教えてと言われたというようなこともあって、私もややその辺りの危惧というか、 そういう意味でなかなか実習に出せなくなっているんです。その辺りはいかがでしょう か。 ○高橋理事長 青森県に限り申し上げますが、東奥学園高校と光星学院高校に福祉科が あり、他に公立高校では、大湊高校・七戸高校・青森中央高校等に福祉コースが設けら れ、介護福祉士の受験校となっております。  先生が今おっしゃったことは、どこの高校か分かりませんが、青森県の場合には教員 等が充実致しております。  合格率も100%の学校もあり、福祉系高校は今、一丸となって、これからの日本の高齢 化社会を支えたいということで一生懸命頑張っているところです。 ○合田審議官 ごく手短に制度的なことを御説明させていただきますと、制度的には教 員資格においても、教員数等の基準につきましても、全く差はございません。ただ、実 態としては福祉科高校以外の高校の方が、専任の教員よりも非常勤を含む講師の方が割 合としては多いという実態はございます。 それは、私ども福祉科の教員免許のほかに、特別非常勤講師とか特別免許状という実 務を持っている方の教育についてのトレーニングを若干受けて教育資格を取るというル ートを別に用意しておりまして、そちらのルートを活用して講師の資格で教育に携わっ ているケースが多いためではないかと考えております。 ○石橋委員 それに関係してですが、確かに教育内容を充実するということも非常に大 切だと思いますけれども、やはりそれを教える教員の質の向上も非常に大切だと思いま す。養成校の教員の方が、それこそ厚労省の方から300 時間の教員研修が義務化されて おり、非常に資質の向上に努めているところでありますが、福祉系高校の場合は何らか の縛りがないというのもいかがなものかという気がいたしますので、今の介護ニーズに 合った教育ができるためにも、そういった教員の質の養成については、もう少し検討し ていただければと思います。 ○京極部会長代理 福祉校の話が今、中心になっておりますけれども、介護福祉士の原 点を思い出して、更に将来に向けてどう考えたらいいかということだと思います。 実は、皆様御案内だと思いますけれども、当初介護福祉士の原案は高卒1年だったん です。しかし、保育並みにしようということで、中には3年というドイツ並みのことを おっしゃっていた方もいらっしゃいますけれども、現実論として高卒2年をベースにし たということです。ただ、そのとき先ほどの御説明にもありましたけれども、社会的は しご、ソーシャルラダー、いろんな人にチャンスを与えようということで、現場経験者 にも与えるし、福祉校にも与えるということで、多面的なはしごを架けた。 これは社会福祉士にも同じでありまして、4大が基準ですけれども、短大でも2年の 実務経験があれば受けられるという形で、これはかなりイギリスを参考にして、アメリ カのような学歴主義ではなくて、そういう形でチャンスを与えようとした。しかし、レ ベルは統一しましょうということでスタートしたわけでございます。 ただ、当時はなかなか養成校と教育施設の関係が整理されてなくて、ちなみに今、石 橋委員からございましたように、介護福祉士においては4大においても養成校の基準で ありまして、厳しく縛りがあるわけでございます。勿論養成校側にも縛りがある。とこ ろが、福祉校は養成校から外れた感じになっているわけで、そこの問題点に指摘がたく さんあったと思います。 逆に今度は社会福祉士の方もそうですけれども、実は社会福祉士の養成校は厳しい縛 りがあるんですけれども、4大ないし短大においては縛りがないんです、養成施設では ないんです。大学を尊重したために養成校から外れているという、法制的に見ますと不 十分なままスタートしたというのが現状です。 今後、今、問題になっている介護福祉士を考えた場合、レベルアップしていくときに、 養成校の縛りをある程度かけていかなければいけないという点で、私は福祉校の中でも 福祉科は非常にレベルが高いし、またそういう動きがありますけれども、その辺をどう していくか。養成施設の面を福祉校においてもきちっと持って、養成施設の基準を満た しているところと満たしていないところというふうにしていかないと、ペーパーテスト ではできたかもしれませんけれども、技能というものがきちっと身に付いているかとい うのはなかなかこういう資格においては困難だということもあります。 これは検討会の座長のときは言えなかったんですけれども、今は委員ですから申し上 げますけれども、将来的にはドイツ並みの3年制ということを考えていいと思うんです。 ただ、当面全体のレベルを上げるということが、国家試験を課してきちっとすることは、 介護報酬においてもいろんな点で反映されますし、これは養成校においても当然卒業生 の身分保証になっていくわけで、非常にレベルが上がる。福祉校も、今までのように簡 単に受かる試験かどうかわかりませんので、厳しい試練だと思います。これはどうして も越えなければいけない壁で、そして今、専門介護福祉士という提案も介養協から出て おりますから、そういうものが定着したら、これをまた国家資格として2プラス1の資 格にしていくという方向の下で考えていく必要があるのではないかということで、余り 福祉校と養成校の対立図式を描くのは正しくないと、共存共栄の道を考えていかなけれ ばいけないと結論的には思っております。 ○岩田部会長 ありがとうございました。高校の場合は、教員免許の問題もあって、福 祉科の教員養成をどうするかというのが、やはりかなり大きいのではないかと思います。 福祉系の大学で高校の教員免許を福祉で取りたいという意欲ある学生がいるんですけれ ども、まだなかなか実習の受け皿がないんです。青森はきっとそうじゃないと思うんで すけれども、たまたま地域が悪かったのかもしれません。 ですから、多様なルートを担保しながら専門性の統一を図るためには、福祉系高校の 教員養成が非常に大事ではないかという感じがしますけれども、私の狭い体験だけです ので、事情が違うところも勿論おありだと思いますが。 ○中島委員 私はこういう社会保障系の委員会に出るのは初めてなので、非常に素人的 な考えなんですけれども、伺っているとわかるんですけれども、ある意味では非常に違 和感を感じるところがあります。というのは、結局、問題の所在がどこなのかよくわか らない。つまり、今の介護の現場で介護を受けてらっしゃる方がどういう問題を抱えて いて、それが実際に介護福祉士の資格を持った人たちが現場で働かないために離職が多 くて、だから結果として介護の現場でこういう問題が起きている。こういうニーズがあ るのにそれが満たされない。本来ならこういう勉強をしてきてほしいはずなのに、そう いう勉強を受けてきてない人がたくさん働いている。だから、もっとこういう資格要件 を加えてくれと。また、福祉系高校を卒業した学生たちは、こういう問題があるからも っとこういうことを勉強してくれという話が、私の知識不足かもしれませんけれども、 ほとんど議論がされてなくて、結局資格を持っている人たちが働く場がない。あるいは 資格は取ったけれども、実際にはほとんどすぐ辞めてしまう。資格は制度としてつくっ てしまったけれども、それが十分に生かされてないという、働く側の人たちのことが主 題になっているわけです。 ですから、私の素人の感じだと、主客が逆転していると。本来誰のためにある資格な のかということを基本に据えた上で、そのためにどういう資格が必要なのか。また、こ れは保険ですから、その資格を取るための必要最小限の介護のレベルというのはどこに あるべきなのかということを教えていただきたいと思います。 ○岩田部会長 この点は、論点2、論点3とも非常に関わり合いがあると思いますけれ ども、要するに介護福祉士はどんな役割を、何のためにあるのかという、むしろ根本の 問題ですね。論点2と一緒にこの点も議論させていただいてよろしいでしょうか。 それでは、論点2について事務局より御説明いただけますでしょうか。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、資料3で、論点2の介護福祉士の役割につい て御説明させていただきます。 まず1ページの「検討の視点」でございますが、資料1でも御紹介したように、前回 介護福祉士の定義等につきましても、18年間の状況の変化を踏まえつつ、例えば心理 的・社会的支援の側面にも配慮すべきといった観点から検討を行っていく必要があるの ではないかといったような御指摘があったところでございます。 2ページは、介護福祉士の検討会の報告書で示されました「求められる介護福祉士像」 の12の項目を改めて御紹介しているものでございます。 3ページは、社会福祉士及び介護福祉士法の規定でございます。第2条は、前回も御 紹介した介護福祉士の定義でございます。この法律におきましては、定義規定のほかに も社会福祉士及び介護福祉士の義務規定といたしまして、第45条で「信用失墜行為の 禁止」、第46条で「秘密保持義務」、第47条で「医師その他の医療関係者との連携 を保たなければならない」といった規定がございます。以上でございます。 ○岩田部会長 それでは、今のようなどういう介護福祉士が求められているのかという 観点を、先ほど中島委員からの御質問も含めて、是非現場の方から御意見をいただけた らと思います。 ○鴻江委員 今の現状と申しますと、人材不足が非常に言われておりますので、ここで 今、議論されております、専門性を高くしていくということは、人材確保の面では非常 に不安がある。ただ、今、利用者の方々は非常に流動化が進んだり、あるいは施設の中 で看取りまでやっている。それから、認知症の数も非常に増えてくる中で、利用者の状 態が非常に不安定であるということも言われております。 そういった中で、今までは三大介護と言われておりました身体介護の排泄、食事、入 浴といったものを重点的にやっていけばいいというようなことであったわけですけれど も、利用者の方々がそういうふうに多様性を持ってまいりますと、それに対応する質を 介護の方も持っていただかなければならないということで、今回のこういった資格問題 も出てきているというふうに私は受け取っております。 非常に簡単でございますけれども、現状はそういった部分で、人材確保は非常に難し い部分で、余りハードルを高くするといかがなものかという不安と、今度はただ利用者 の方々が非常にそういう状況の方々たちが増えている中で、やはり専門性に対応してい けるだけの学問的な知識であるとか技術といったものを備えていなければ、なかなか対 応が難しくなってきているということでございます。 ○高岡委員 今ほど鴻江委員からも、施設現場における利用者像の変化についての話が ありましたが、介護現場で今一番の課題となっているのが慢性疾患をはじめとする利用 者への重度化対応です。利用者には、その疾患に応じて、たんの吸引、血圧測定、胃瘻 など、時にさまざまな対応が必要になりますが、現状では医療行為とされるために介護 現場では対応できない事項が少なからず存在します。今年の6月にまとめられた「介護 福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会」報告書の中では、求 められる介護福祉士像として12項目の人材養成における目標があり、特に6番目の項 目には、「予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態の変化に対応でき る」ということが掲げられています。こうしたことからも、「生活の場」である介護施 設における利用者の健康問題については、少なくとも家庭で可能な範囲程度の事項につ いてはきちんと対応できるような仕組みにしていただきたいと強く願います。 また昨年、ALS患者に対する家族以外の介護者が行うたんの吸引が認められたこと に端を発し、高齢者介護現場や障害者介護現場における医療行為とはされないもの等が 通知として示されましたが、現場からの声を聞きますと、まだ内容について十分浸透し ておらず、実行のうえでいまだ躊躇せざるを得ない状況や判断に困窮する事態もあるよ うです。  こうした介護福祉士をはじめとする介護現場における介護職員の医療行為等の問題に ついては、ぜひ先般開始された「介護施設等の在り方に関する委員会」においても議論 いただくなど、その役割や範囲についてしかるべき整理をしていただく必要があると思 います。 ○石橋委員 やはり介護保険制度が創設されて、措置制度から契約制度に変わり、より 利用者本位の介護を求められるようになりましてから、介護のありよう、介護ニーズと いうのは非常に大きく変わってきたと思います。時間がないから詳しくは述べられませ んが、2ページに書いてありますような、今、求められる介護福祉士像、12の項目が ありますが、まさしく今このようなことが求められているというふうに思います。 ○石原介護技術専門官 介護技術専門官の石原と申します。先生方に、なかなかどのよ うな教育内容の見直しをするのかという報告なく、今、資格取得ルートの御議論をして いただくのは、なかなかイメージが持ちにくいと思います。事務局としても次回の審議 会でもう少し具体的な中身のイメージを資料として提出させていただこうと思っており ます。 こちらの中身につきましては、7月にまとめられました検討会の報告書をもとにしま して、その後、養成校の先生や現場の方々、有識者にお集まりいただきまして、作業チ ームを今、走らせて検討いただいております。  前回1回目の資料、お手元に青いファイルがございますけれども、17ページに履修科 目・教育内容の抜本的見直しという資料がございますのでお開きいただければと思いま す。 こちらの資料でございますが、今回1,800 時間に充実させたらどうかということで、 教科の内容の柱としましては、人間と社会、こころとからだのしくみ、介護ということ で、3つの柱立てをしております。この議論の中で、従来の介護福祉士の養成教育の中 では、施設入所の方の全介助の方がモデルになって介護を教えているということで、今、 非常に強調されております自立支援という観点からの介護というところが欠けていると いう御指摘も受けております。 2点目は、高齢者の方々が今まで介護の中心ではございますけれども、今後は障害の 方々、特に知的発達障害とか、そういう方々も支援に入れたような教育にするべきでは ないか。それから、高齢者におきましても、社会的にも認知症のニーズが非常に高くな っておりますが、今までの教育の内容では若干認知症については不十分ということです。 3点目は、特にこころとからだのしくみについてでございます。介護技術、例えば食 事介助におきましても、それぞれに必要な、例えばのどの構造、気管と食道がクロスし ているので誤嚥をしてしまうとか、そういったように介護技術に合わせたこころとから だのしくみを教えたらどうか。今までは医学一般ということで、医学的な内容を若干薄 目に広く教えていたんですけれども、それらを介護技術に応じてきちんと根拠として理 解ができるように教えたらどうか。そのような御指摘を主にはされておりまして、この ようなことが現在の介護の現場では求められているということを御報告したいと思いま す。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 ○木間委員 全国に消費生活センターは約500ございます。そこで受けました相談が国 民生活センターに寄せられます。年間130万件あるいは180万件という件数ですが、介 護に関しては少ない件数ではあります。 その中で苦情内容、相談内容は大きく分けて3つに分かれます。介護サービスの質が 1つです。もう一つが価格の問題、3つ目が安全性の問題。安全性、すなわち介護事故 の問題です。 特に介護事故の問題を今、申し上げたいのですが、介護事故に関しては500 例ぐらい 調査をしたことがございます。そのときに、実際現場に行きまして、どういう人が、ど ういう事故を起こしているのかを見ますと、原因はさまざまありますけれども、1つは 介護技術が未熟ということがあります。どの人ですかと聞くと、あの人ですと。それが、 先ほどから議論されています福祉系高校卒業なのか、そういうことは私の見た範囲では わかりません。いろいろな年代の人が、いろいろな場で事故を起こしております。 私は今、御説明がありましたけれども誤嚥の問題にしましても、どうして誤嚥が起き るのかというところを、勿論やってらっしゃると思いますが、事故の事例から、苦情の 実態の中から、事故をいかに未然に防ぐのかといった実習をしていただけたらと思いま す。特養でしたけれども、もし事故が起きてしまった場合どうするのかという対応が雲 泥の差です。それだけ現場で差があるということを感じております。 今回、実技試験は免除されるということですが、その事情は理解いたしましたけれど も、試験で免除するならばより実習には力を入れていただけたら、消費者としては安心 して介護サービスを利用できるということを申し上げたいと思います。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。 ○江草委員 求められる介護福祉士像というのがありますが、これの十分な説明を伺う ほどの時間もまだなかったわけでありますけれども、これはとてもよくできていると思 います。 そうしたものを考えますと、カリキュラムは当然こうしたものを実現するためのカリ キュラムでなければいけない、実習でなければいけないわけです。そうすると、ただい まお話ありましたような事故などの減少にも通じるんではないか。介護の質も向上する んではないかと思います。そうすれば、当然のことでありますが、昭和62年にできまし た法律にあります介護についての定義は、その後多分変える時期がなかったんだろうと 思いますけれども、例えば入浴、排泄、食事、その他の介護とありますが、実はその他 の介護の需要が非常に高くなっておりまして、その他の中身をすべて挙げるわけにはい かないでしょうけれども、少し重みのある表現ができないものかと思うわけであります。 といいますのは、介護福祉士養成施設の方から見ますと、どうも私たちが養成してい る人は、入浴、排泄、食事が重点かと、なかなか寂しいものだということについついな ってしまうわけであります。これはもうちょっとしたことでありますけれども、そうい うことです。 それから、先ほど経営協の会長からお話がございましたが、これは義務規定の連携の ところに、医師その他の医療関係者との連携を保たなければならないというところがあ りますが、これは先ほどのお話との関係でありますが、医師関係との連携になっており まして、社会で生きていくわけでありますので、そこら辺りを重視したような表現がも う一つ、何とか何とかの連携というのがあった方がいいのではないか。これは、恐らく 今回の議論が終わるころに定義の問題と義務規定の問題が整備されるだろうと思います が、議論を進めるためにもただいまのようなことが言えるのではないかと思います。 これはちょっと違う話でございますけれども、教員の方で申しますと、養成施設の教 員の資格の中に社会福祉概論を始め、福祉系8科目については大学・短大で教授・助教 授または講師に選考された者、あるいは修士もしくは博士の学士を有する者となってい るわけです。これは、高等学校の方ではどういうふうになっているんだろうか。高等学 校は別世界だということになっているのかもしれませんけれども、こういうものがある ということは、高橋先生は御承知でしょうか。 ○高橋理事長 先生おっしゃっているのは、介養協の教員と高等学校の教員の任用のこ とですか。 ○江草委員 いいえ、そうではなくて、こういうことで養成施設においては定められて おるわけです。したがって、これに合う人でないと教員でないわけです。高等学校では、 それを教える先生は、どういう先生なんでしょうかとお尋ねしているわけです。 ○高橋理事長 高等学校では、先ほど教員の資質のところでも申し上げさせていただい ておりますが、高校福祉科の担当教科等においては、結局のところ人それぞれでもあり ますけれども、一般的には4大、そして福祉教員免許状、教科は福祉です。これが基本 にはなっております。うちの学校だけを見て言えば、福祉科の主任は介護福祉士並びに 社会福祉士の免許も取っております。他の教員もそうです。 それから、看護に関わる者については、大学を卒業した看護師さんです。そういった 者がその科目を担当しております。やはり看護の免許を持って、福祉科だからといって 福祉科だけではありません。 私は、福祉の高校の校長会の理事長であるけれども、自分のところへ帰れば介養協の メンバーでもございます。つまり専門学校も経営していますので、その意味で専門学校 の先生方が、何の科目はどういう資格を持って担当するかは、万般承知いたしており、 条件を満たして学校経営をいたしております。 ○岩田部会長 議論は尽きないと思いますが、石原委員、どうぞ。 ○石原委員 私は、こういう実務に携わる人を育てるには、絶対現場での実習の量、質 がものすごく大事だと思っておりまして、たとえ高校であろうが、養成校であろうが、 どこであっても、実習施設の重要性を高く入れていただきたいと思います。 私たちは毎週現場へ学生が行きますから、例えば尊厳を支えるという尊厳という抽象 的な言葉は、現場でしか教えられませんね。実態からしか、言葉だけで今の若い人たち にそれを教えるということは、ほとんど不可能なことで、実態の中から彼らはわかって いくわけですので、たとえ高校でも専門学校でも、どんなコースであっても、現場での 実習というのを質ということも併せて重要に考えていただきたいと思います。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○鶴委員 私もハードルは基本的に低い方がいいと根本原則として思っているんですけ れども、先ほどから中島先生とか木間委員がおっしゃった利用者の立場に立ちますとこ れだけは最低必要だというものがありますね。利用者にとってこれだけは欠かせない基 準といいますか、最低要件だというところについては、やはり利用者の立場からアプロ ーチすべきだと思うんです。 今、木間委員がおっしゃった安全性基準が一番最初に来るんだと思うんですけれども、 それに加えて、実際に利用者はどんなものを介護福祉士とかに求めているのか。これに 関するデータとか調査とかがあるのかどうかを教えていただきたいと思います。議論の 前提として、あれば非常に助かるんではないかと思います。 ○岩田部会長 その点、事務局、いかがでしょうか。 ○石原介護技術専門官 それでは、幾つかの団体の調査、利用者の調査を調べまして準 備させていただきたいと思います。 ○岩田部会長 それでは、それは次回の議論にさせていただきたいと思います。 論点の3番目、もう一つ人材確保をどうするかというのが大変大きいわけですけれど も、この点について事務局の方からお願いいたします。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、資料4で論点3の「介護の担い手の人材確保 について」説明させていただきたいと思います。 人材確保の問題につきましては、今後、人材確保指針の見直しについて、この審議会 において御検討いただく際に、より詳細に御議論いただく点かとも思いますが、前回介 護福祉士の養成の在り方の側面と介護の担い手の人材の確保の面があるといったような こと、1ページの最初の○にございますけれども、介護福祉士の資格取得者のうち、介 護業務を行っていない方、いわゆる潜在的介護福祉士がかなり多いという現状をどのよ うにとらえるのかといったような御指摘もございましたので、関連する資料を整理させ ていただいております。 2つ目の○でございますが、介護福祉士の検討会報告書においても指摘されておりま すように、介護福祉士は資格取得後も生涯にわたって能力の向上に努めることが求めら れている中で、こういった能力開発とキャリアアップへの支援として、どのような対策 が必要かといったような点。介護福祉士の能力向上とキャリアアップのためには、介護 職員が働く職場が魅力と働きがいのある職場となり、介護の仕事を続けていけることが 重要でございますが、その支援として、どういう対策が必要かといったような点を挙げ ております。 2ページから関連する資料でございますが、まず「介護職員数の将来推計」は、前回 もご紹介したもので、3ページの表の左側にあるように、平成26年の介護職員数が140 〜155 万人程度で、今後10年間で、年間平均約4〜5.5 万人の増加が見込まれていると ころでございます。 4ページは「潜在的介護福祉士の状況」を整理したものでございます。中央の楕円形 が介護福祉士の資格取得者数で、データの時点をそろえるために、一昨年9月の数字に なっておりますが約41万人、左上の四角で介護保険事業に従事する介護職員約100 万人 のうち、介護福祉士が約22万人、左下の四角で介護保険事業以外に従事する介護職員約 2万6千人のうち、介護福祉士が約9,000 人、引き算をいたしますと、楕円の右側でご ざいますが潜在的介護福祉士が約18万人という推計になります。 一方、仕事をしていない、あるいは介護を行っていないという介護福祉士の方に対し て、今後、介護に携わる仕事をしたいかと尋ねたところ、約半数の方がいずれは介護を 仕事にしたいと回答しているという調査もございますので、厚生労働省といたしまして も、都道府県人材センターによる潜在的介護福祉士に対する再研修の実施等を行ってい るところでございます。 5ページは、前のページで紹介をいたしました潜在的介護福祉士の就労意向について のバックデータでございます。 6ページでございますが「資格取得後の生涯を通じた能力開発とキャリアアップ」と いうことで、前回紹介をいたしましたように、検討会の報告書で資格取得後の能力開発 とキャリアアップの具体的な支援策として、現任研修、専門介護福祉士の仕組みの導入、 施設長、生活指導員等の要件の見直し、潜在的介護福祉士への研修などが挙げられてお ります。 7ページでございますが「魅力と働きがいのある職場づくり」ということで、 これも検討会の報告書では、具体的な支援策として、人材確保指針の見直し、介護労働 者の雇用管理の改善、能力開発等の取組みのほか、優れた人材の確保・育成に重点を置 いた経営モデルへの転換、介護報酬等における介護福祉士の評価等を挙げております。 8ページは、介護職員の入職率・離職率でございますが、いずれも全労働者に比べて 介護職員が高くなっております。 9ページは「賃金の状況」ということで、「年収試算額」については、福祉施設介護 員の賃金は男女とも、それぞれ男性労働者、女性労働者よりも低くなっております。ま た、「年齢」もそれぞれ低く「勤続年数」も短くなっております。 10ページは、福祉施設介護員の賃金を年齢別に見たものでございます。 11ページは資格別賃金水準で、中央の「月給」のところを見ていただきますと、「ホ ームヘルパー」の賃金に比べまして、「介護福祉士」の賃金の方が高くなっております。 12ページは、介護職員を募集する際に提示する賃金額でございます。高卒以上の方が 専門学校卒以上よりも低くなっておりますが、介護福祉士資格を必須としている求人は、 必須としていない求人よりも若干高くなっており、介護福祉士資格を持つ者を採用しよ うとする場合には、提示する賃金額も高くなっております。 13ページは、事業者が賃金を決定する際の要素を調査したものでございます。「責任 の程度」「知識・技能・技術・資格等」「経験、経歴」などの職務内容を決定要素とす る事業者が多い半面「年齢・学歴」を決定要素とする事業者は、必ずしも多くなってお りません。 以上でございます。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 これはこれでまた大変な問題です。今日は非常に時間が押しておりますけれども、時 間の範囲内で、御議論いただければと思います。飯倉さんどうぞ。 ○飯倉氏 小島の代理で出席させていただいております飯倉と申します。 制度の担い手の人材確保というところなんですけれども、先ほどの論点1にも関わり が出てくるかと思うんですが、実務ルートからの介護福祉士への資格取得といったとこ ろについても、少し充実といいますか、そうした視点での検討が必要だと思っておりま す。 現行は、いわゆる経験が豊かなヘルパーの方々、先ほどのお話の中でも、現場の経験 を積み重ねるのが重要だという御意見もございましたけれども、そういう方が仕事をし ながらでも介護福祉士に挑戦できる仕組みといいますか、もっと言えば、仕事と両立し ながら、介護福祉士の勉強をして、自らその資格を取りたくなる仕組みというのが重要 になるのではないか。こういう人材の確保の中でも重要な論点になるのではないか。 それに対しては、当然、事業者に対しても、より積極的にそうしたヘルパーの方に資 格を取らさせていくといいますか、そういう仕組みづくり、環境づくりを求める必要が 出てくる。特にヘルパーの側からすると、今回の見直しの中で、介護の中心が介護福祉 士でいくという報告書なりも出ておりますので、職場がなくなるのではないかみたいな 話も出ていますけれども、むしろ、そうした現場の経験豊かなヘルパーの方にこそ、率 先して介護福祉士の資格を目指してもらって、より高いレベルで、豊かな経験を生かし てもらうといった仕組みであるということを、是非はっきり示しておく必要があると思 っております。 そういう意味では、勿論、本人の意識も大事なんですけれども、ヘル パーの仕事の在り方を見れば、例えば在宅のヘルパーさんでしたら、直行直帰ですとか、 そうした実態がありますので、事業者側がどれだけそういった資格取得に対してのバッ クアップができるのかといったところも、非常に重要ですし、また資格取得後の生涯を 通じた能力開発という点についても、事業主がそれに対してサポートしていくといった 仕組みづくり、環境整備といったものが非常に重要だと思っております。 そういう意味では、先ほどの議論になりますが、より幅広い人材からの育成を求める ということで、福祉系の高校からのルートは非常に重要だろうと思っております。また、 幾つかの論点として出ておりました専門介護士のような資格も前向きに検討する必要が あるのではないかなと思っています。 ○岩田部会長 それでは、石橋委員、駒村委員の順でお願いいたします。 ○石橋委員 報告書の7ページに書いてありますが、確かに入り口のところの議論もい ろいろあると思いますけれども、今、介護現場の方で人材不足というような報告もある 中で、やはり介護職員の働く職場が魅力と働きがいがある職場とならなければ、幾ら入 り口のところでいろいろ議論しても、先細りになるのではないかなと思います。ここの 部分をしっかりと、これから議論していくことが非常に大切かなと感じております。そ れだけはっきりしておこうと思います。 ○駒村委員 資料の9ページ「賃金の状況」のデータを見せていただいているんですけ れども、もう少し細かいスタッフに関するデータが必要ではないのかなと思って、ここ へ集計されてしまって、いろいろな情報が落ちているのではないかと思います。どこま で賃金の状況を厚労省としては把握されているのかということで、こういう情報以外に も、例えば経営形態によって、どれだけ賃金に差が出ているのかとか、そういうデータ も必要ではないかと思います。 というのは、今後、資格を持たせる。例えば専門介護福祉士の認定を持たせるような インセンティブは、経営者側も持たなければいけないと思うんですけれども、経営者側 の方に、こういう資格、採用後あるいは採用時のキャリアアップを応援するとメリット があるということも考えなければいけないと思います。そういうのも含めて、もう少し 実態に関する調査が必要なのではないかなと思います。あれば教えていただきたいし、 なければもうちょっと本格的な情報がないと、集計されてしまったデータでは、まだわ からないところが多いのではないかと思います。 ○岩田部会長 京極委員どうぞ。 ○京極部会長代理 介護の担い手の確保ということになりますと、勿論より技能や知識 を持った介護福祉士ができるということはいいんですけれども、やはり介護保険のとき の議論にあったように、現在、例えば介護福祉士を持っていても、介護報酬上は別に何 の特典もないんです。今度、国家試験をきちっとやった場合は、きちっとした特典を決 めていただきたい。これは経営者にとっても単価報酬が上がるわけですから、駒村委員 の御質問と関係していますけれども、財務省のこともあるので、ここで予算をどうのこ うのということは言えませんけれども、一般論として、そういう単価の問題は非常に大 きな問題で、実は介護福祉士ができる前の無資格時代は、ケアワーカーの給料というの はすごく低かったんです。国家資格ができて、ぐっと引き上がった。そして、今回また 新しい時代を迎えていますので、財政的にはみんな緊縮の時代で、そんなばかなことを 言うなということはありますけれども、やはりきちっとした資格に見合った労働報酬と いうのがあれば、人材確保にとっても大きな刺激になりますし、ちゃんとした介護を受 けられる資格に対しては、少し上げてもいいのではないかという国民的な世論も出てく れば、大分変わってくるのではないか。その点も考えていいのではないかということで、 一言蛇足でございます。 ○岩田部会長 では、森委員、中島委員の順番でお願いします。 ○森委員 今度、私ども自治体として、介護保険者という立場で、確かに保険料の高騰 というのは抑えなければいけないんですけれども、しかし、サービスの質がよければ、 私は利用者にとって、それはなるほど、これならば出してもいいというようになってい くと思います。 私ども現場でもそうなんですけれども、先ほど国民センターの方もおっしゃいました ように、やはりいろんな意味で、事故、そういうものの後のトラブルをどのようにとい うのは、施設側も含めてきちっと対応していく。そういう危機管理を含めたいろんなこ とが、最終的には利用者に評価をされるということを含めて、介護報酬の問題になるか もしれませんけれども、私は保険者の立場からしても、やはりいいサービスを提供する。 先ほどもお話がございましたように、常に私は利用者の立場というものが一番先に立 って、その中でどうしてやっていくかという視点を是非お願いしたいと思います。 ○中島委員 先ほど駒村さんがおっしゃったように、この資料だけでは議論できないと 思います。 幾つか申し上げたいんですけれども、まず「入職率・離職率」のところで、やはり転 職というのをデータとして入れてほしいと思います。特に施設から施設へ移っている人 です。そのときに、キャリアアップがされているかどうかということを非常に知りたい わけです。というのは、私は介護施設は余り詳しくないんですけれども、施設をいろい ろと回ってくると、明らかに働きがいのありそうな施設とそうでない施設というのは、 はっきりしていまして、いきいきと働いている人とそうでない人がいるというのは明ら かなので、そういった施設間での働かせ方の差が、そういうところに出ているかどうか ということも是非この資料と同じように知りたい。 もう一つは、定着率を高めることがなぜ必要かというところを、もう少し具体的なデ ータでもいいですし、情報でもいいので示していただきたい。つまり、ブランクという ものがあることで、どのぐらいマイナスになるのか。つまり、高校でも大学でもいいで すけれども、資格を取って施設に入ってずっと働いていく。途中で結婚して退職する。 また将来復帰したいと思っているというような回答もありましたけれども、それが果た して望ましいことなのか、望ましくないことなのか。その間に10年なり、場合によっ ては20年なりのブランクがあると、雇う側としては、それでどういう問題が生じるの かという人的資本の蓄積といいますか、そこの部分での問題はやはり調査結果を示して いただきたい。 3番目は、ワークシェアリングがどの程度できるものなのかどうかということを、こ こでも示していただきたい。つまり、特定の人が特定の方について、とにかく24時間 ずっと専門的にやっていなければ難しい仕事なのか、それとも複数の方が時間で手分け をして、うまくサービスができるものなのか。その辺りのことも、技術的な問題も入る と思うんですけれども、情報として示していただきたい。そういうことがあれば、もう 少しこの制度の問題について、具体的な議論ができると思います。 ○岩田部会長 最後の点はかなり重要だと思いますけれども、技術そのものという労働 工程といいますか、労働の流れの特殊性がどのぐらいあるかということだと思います。 御議論は尽きないと思いますが、幾つか資料の要求も出ております。そして、キャリ アアップの問題もありますね、私はこの間NHK学園のアンケートを見せてもらったん ですけれども、その中に介護福祉士を取る理由として、ケアマネージャーになりたいか らというのが結構多いんです。つまり、介護福祉士が基礎資格なので、目標は実はケア マネージャーの方にあって、介護福祉士は手段というか、そういう受け止め方の場合も あるわけですね。例えばこの資料で潜在的というときに、そういうケースはどうなりま すかね?、これらの点について既存の資料で結構ですから、わかる範囲でお願いしたい と思います。 それでは、残り時間も大変少なくなったんですが、もう一つの社会福祉士の在り方の 方に移りたいと思います。 先ほど既に資料1の前回の検討事項については、まとめて御報告いただいていますの で、資料5から、事務局で御説明いただけますでしょうか。 ○潮谷社会福祉専門官 それでは、お手持ちの資料5、6、7に基づき、社会福祉制度 の在り方に関して説明をさせていただきます。時間も余りございませんので、簡潔に説 明させていただきたいと思います。 資料5でございますが、先ほど事務局から説明させていただきました資料1の5ペー ジにお示ししてある3つの事項を踏まえ、社会福祉制度の見直しについて、論点別に整 理させていただいております。 1ページは「【論点1】求められる社会福祉士像について」ということでございます。 2ページの「検討の視点」につきましては、先ほど説明させていただいた資料1と同 じものでございますので、省略させていただきます。 3ページにつきましては、前回出させていただいたものとほぼ同様のものでございま す。社会福祉士制度創設後、社会福祉を取り巻く状況は大きく変化してきており、今日 では社会福祉の対象は広く普遍化し、福祉サービスを必要とする者の自立と尊厳を重視 したサービスの提供というものが求められるようになっているということでございます。 4ページ、5ページにつきましては、前回と同じものでございますので、省略させて いただきたいと思います。 6ページでございますが、お示ししております社会福祉士を取り巻く状況の変化を踏 まえまして、社会福祉士の任用・活用が期待される分野といたしまして、権利擁護や成 年後見活動を始めとする7つの分野を提示させていただいております。 7ページでございますけれども「これまでの社会福祉士の任用・活用のイメージ図」 ということで、横軸に「行政」と「民間」。縦軸に相談援助としての「個人・家族への サービスマネジメント」下の方に「地域福祉の計画的推進・組織運営のためのマネジメ ント」という領域を設定いたしまして、社会福祉士の任用・活用に係る法令、通知を基 に、それぞれをプロットし、整理したものでございます。 イメージ図をごらんになっても明らかなように、これまでの社会福祉士の任用・活用 は、行政関係及び施設関係の職種が主たるものとなっているところでございます。 8ページでございますが、社会福祉士を取り巻く状況の変化を踏まえ、行政や施設関 係以外の職種や事業においても、新たに社会福祉士の役割が期待されているのではない かというようなことから、これからの社会福祉士の任用・活用のイメージ図といたしま して、先ほどのイメージ図に色つきでお示ししておりますが、社会福祉士に新たに期待 される分野をプロットしてみました。 その結果、左側の方でございますが、司法分野におきます社会復帰調整官や地域福祉 計画等への参画など、新しい行政ニーズへの対応というような分野。 また、右側の方でございますが、地域福祉権利擁護事業や成年後見制度を始め、第三 者評価事業や苦情解決事業など、措置制度から契約制度への移行などをはじめとする社 会福祉の実施体制の変化に伴って、必要とされるようになりましたサービスの利用支援 というような分野。 更に真ん中の方でございますが、地域生活支援の重視や相談支援システムの変化に伴 います地域包括支援センターの職員、また障害者分野におけます相談支援事業や就労支 援を始めとする地域を基盤をいたしました相談援助というような分野など、新しい分野 も見られるようになってきております。 このような状況を踏まえまして、求められる社会福祉士像について整理すべきではな いか。また、これらの分野における社会福祉士の積極的な任用・活用を行うべきではな いかということをお示しさせていただいております。 9ページは「『社会福祉士及び介護福祉士』上の定義規定及び義務規定」でございま す。 次、「【論点2】社会福祉士の養成課程の課題について」でございます。 11ページでございます。「検討の視点」ということでございますが「社会福祉士を取 り巻く状況が大きく変化している中で、求められる社会福祉士像を踏まえ、福祉に関す る相談援助の専門的知識と技術を有し、適切な福祉サービスの提供を可能にする実践力 の高い社会福祉士の養成が必要ではないか」ということ。 また、「実践力の高い社会福祉士を養成するために、今日的状況において求められる 専門的知識と技術について実践的な観点から検討し、社会福祉士の養成課程における教 育内容を見直すとともに、その標準化を図るべきではないか」ということでございます。 12ページは、前回出させていただいたものと同じ「社会福祉士の資格取得方法」につ いてでございます。 13ページの「福祉系大学等ルート」についてでございますが、養成施設と大学等との 間に実習や演習等について、差異違が見られることもあるといったような課題を踏まえ まして「(3)論点」として「個々の大学等の独自性を生かしながら、特色ある社会福祉教 育の中で社会福祉士の養成教育を行うことを基本とすべきであると考えるが、少なくと も社会福祉士として求められる技能の修得に必要となる実習や演習等については、それ らの修得を法制度的に担保するという観点から、福祉系大学等ルートの在り方について 検討してはどうか」ということをお示しさせていただいております。 14ページの「養成施設ルート(一般・短期)」についてでございますが、お示しされ ていただいております「(1)現状」と「(2)課題」を踏まえまして「(3)論点」として「昼間・ 夜間課程と通信課程との間の整合性を図り、実践力の高い社会福祉士を養成するという 観点から、通信課程の実習等の時間数の在り方について検討してはどうか」ということ。 また、「社会福祉主事の任用資格を有する者のうち、既に社会福祉に関する基礎知識 や実務経験を一定水準以上有していると考えられる者については、社会福祉専門職とし てのスキルアップを促す観点から、養成施設ルートにおける取扱いについて検討しては どうか」ということをお示しさせていただいております。 15ページでは、参考までに「社会福祉主事の資格取得方法及び社会福祉主事要請機関 のカリキュラム」について、お示しさせていただいております。 16ページの「行政職ルート」についてでございますが、お示しさせていただいており ます「(1)現状」と「(2)課題」を踏まえ「(3)論点」といたしまして「社会福祉士として必 要な知識と技能のうち、特に技能について体系的に修得する機会を確保するという観点 から、行政職ルートの在り方について検討してはどうか」ということをお示しさせてい ただいております。 次に、「【論点3】社会福祉士の任用・活用における課題について」でございます。 18ページの「検討の視点」でございますが「実践力の高い社会福祉士を養成・確保し、 社会福祉士の地位向上を図るために、社会福祉士の任用・活用に関する現状と課題につ いて整理し、何らかの方策を講ずる必要があるのではないか」ということ。 「社会福祉士の職域を拡大するため、社会福祉主事が中心となっている現在の社会福 祉専門職の任用要件の在り方等について検討してはどうか」ということでございます。 19ページは、前回出させていただきました「社会福祉士の任用」に関する「現行法令上 の規定」と、その任用の「実情」についてでございます。 20ページでございますが、参考としまして「社会福祉主事を要件とする職種の社会福 祉士への準用例」といたしまして、特別養護老人ホームにおけます施設長と生活相談員 の場合について、お示しさせていただいております。 21ページでございますが、前回出させていただいた「社会福祉士資格の活用状況」に なっております。 最後に「社会福祉士の任用と活用をめぐる現状と課題」ということでございますが、 社会福祉士の任用・活用をめぐる悪循環のサイクルということで、図にお示しさせてい ただいておりますが「社会福祉士が福祉の現場で任用、活用されていない」こと。 「社会福祉士の社会的認知度が低い」ということ。 「実践力の高い社会福祉士が養成されていない」のではないかということ。 「資格取得後の能力開発、キャリア開発を支援する研修体系の未整備」ではないかと いうこと。 このようなことから、社会福祉士の任用・活用をめぐる悪循環のサイクルを好循環の サイクルへと転換を図るために取り組むべき課題として「(1)社会福祉士の各分野におけ る任用、活用のための法制度の整備が必要ではないか」ということ。 「(2)相談援助に関する専門的知識と技術を有する実践力の高い社会福祉士を養成・確 保するために、行政、養成校、社会福祉施設等や事業者が、職能団体が一体となった取 組みが必要ではないか」ということをお示しさせていただいております。 次に、資料6をごらんいただきたいと思います。 前回の議論の中で大学等の実態に関する指摘がございましたので、事務局といたしま しても、その一端をお示しすべきであるというような観点から、資料6といたしまして 「大学等における社会福祉士養成にかかる実習・演習について」ということ。 また、資料7といたしまして「第18回社会福祉士試験学校別合格率」に関する参考資 料を作成いたしましたので、簡単に報告させていただきたいと思います。 資料6の1ページでございます、まず関係法令通知に基づく「社会福祉士養成施設に おける実習の基本的考え方(実習指導体制について)」お示しさせていただいておりま す。 2ページでは、「社会福祉士養成施設における実習の基本的考え方(実習内容につい て)」についてお示しさせていただいております。 3ページでは、「大学等における実習指導体制の実態」として、社会福祉士の指定科 目の読替照会の際に大学等から入手した資料から、実習指導体制に関する問題事例とし て、我々が認識しているものもお示しさせていただいております。なお、この事例につ きましては、養成施設においては当然のこととして、法令に基づく指導対象となります が、大学等の場合には、そもそも法令に基づく基準がないため、このような事例であっ ても法令違反ではなく、当然指導対象にもならないということをつけ加えておきたいと 思います。 4ページでは、「大学等における実習内容の実態<A大学の例>」といたしまして、 社会福祉士の指定科目の読替照会の際に入手した資料から、A大学の例をお示しさせて いただいておりますが、☆印を付けましたような面接や記録など、社会福祉士の実習と して重要な項目については、実施割合がそれほど高くなく、その他の項目の割合が高く なっているというようなことが明らかになっております。 同様に資料に基づき、学生個人が行っております実習の主要な内容を、先ほどお示し させていただきました実習の基本的考え方と照らして検討し「望ましい例」と「望まし くない例」に分類してみましたので、参考にしていただけたらと思っております。 最後になりますが、資料7をごらんください。資料7につきましては「第18回社会福 祉士試験学校別合格率」に関するものとなっております。 本資料におきましては、2ページ以降に「(1) 福祉系大学等ルート(福祉系大学等)」 「(2) 福祉系大学等ルート(福祉系短大等+実務経験)」また「(3) 一般養成施設ルー ト」の3つのルートの合格率について、お示しさせていただいておりますので、参考に していただけたらと思っております。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 社会福祉士の方に関して、白澤委員から「大学等における社会福祉士養成にかかる教 育内容の現状について」という資料が提出されておりますので、簡単に御説明いただけ ますか。 ○白澤委員 それでは、前回宿題がございまして、社会福祉士養成協会でデータをとい うことでございましたので、説明させていただきます。これは「委員等提出資料III」で ございます。 1ページをごらんいただければと思いますが、ただいまの説明にもございましたよう に、一般養成施設というのは、規制の中で教育をやっているわけでございますが、大学 等については、規制というのがかかっていないわけでございます。そういうことで規制 のかかっていない大学の実態ですが、必ずしも正確な数字かどうかわからないんですが、 平成17年度の会員名簿より転記をし、分析をしたものでございます。 1ページの「4年制大学」のところを見ていただくとよくわかるかと思いますが、随 分多様な形で時間を設定しているのが現状でございます。例えば「地域福祉論」「社会 福祉援助技術論」あるいは「心理学」「社会学」「法学」「介護概論」の辺りについて は、一般養成施設の基準以上の時間の教育をやっているところも多いわけでございます。 一方「社会福祉援助技術演習」「社会福祉援助技術現場実習」「社会福祉援助技術現 場実習指導」については、基準時間未満の学校数は網線がかかっておりますが、結構多 いというのが現状でございます。いろいろな理由があると思いますが、ソーシャルワー クの実践能力を高めていくというところに大きく関わっているのではないかというのも 事実としてあるかと思います。 2ページ、3ページは、それをグラフにしたものでございます。 もう一つ、社会福祉・医療事業団委託研究として、北星学園大学の米本先生を代表と する委員会で調査をした報告書がございます。『社会福祉専門職における現場実習の現 状とこれからのあり方に関する調査研究報告書』でございますが、この中には、大学だ けではなく、専門学校の中に一般養成施設が調査項目に入っておりますので、必ずしも 大学や短大の全体像を説明しているものではございません。 1点目は、実習指導や現場実習専任教員がいるのかどうかということでございますが、 いるというのが61%、いらないというのが38.3%になっております。ただし、これは大 変ファジーな調査でございますので、例えは本当に実習指導だけで教員を置いているの かどうかというような見方もございますので、必ずしもこの数字をどう評価するかは難 しいかなと思います。 2点目ですが、一般養成施設等には、国で実習指導の内容についてのガイドラインが 決まっているわけでございますが、そういう中で、例えば実習計画書を作成するといっ た内容が80.9%実施となっております。そういうものが大学の中で必ずしもやられてい るのかどうかは、我々の中に少し問題があるのかなという認識をしております。1〜11 のすべてが、おそらくガイドラインではなく、一部が一般養成施設のガイドラインとな っている。 そして、もう一つは、巡回指導でございますが、現実問題として、一般養成施設には、 週1回の巡回指導を義務づけられているわけでございますが、大学を併せた実態として は、週1回実施しているというのは19.7%にとどまっている。我々もこれについては、 必ずしも実習指導を定期的にやること自体が高い質に上がるかどうかというのは別にい たしまして、実態としてこういう形になっているというのが現状でございます。 ○岩田部会長 ほとんど時間がないのですが、10分か15分ぐらい延長することをお許し いただきまして、社会福祉士の方は、論点1から論点3までまとめて御意見をいただき たいと思います。 ○石原委員 先ほども申し上げましたけれども、介護福祉士にしても、社会福祉士にし てもですけれども、本当に現場の中で対人間的な業務をやる専門職を養成するときには、 絶対的に現場の質の高い実習というものが欠かせないと思います。 例えば医師の養成でも大学病院が附属してあるように、こういう職種を養成する学校 は、自分のところで自前で持てとまでは言いませんけれども、やはり非常に質の高いと ころときちっと提携してやる。そして、現場の質というのをきちっと評価して、実習施 設になったということが、その施設では1つの社会的なステータスになるというような、 そういったシステムといいますか、そういったものをつくって、教育に携わったらどう かなと思います。そういうところには、きちっとした専門職も配置されているというよ うな、ハードルを高くしてやるということを是非提案したいと思います。 ○白澤委員 今の石原委員と同じ話です。これは前回も私たちが申し上げたことなんで すが、そういう意味では、大学等で実習に関わる教科が少し弱いのかなというのが実態 かと思います。そういう意味では、ある程度一定の要件づくりというのが必要な要素も あるように感じるわけであります。ただ、座学の部分については、試験ということもご ざいますから、当然試験ということで一定の競争原理が働いているし、そこの部分と演 習や実習といったソーシャルワークの部分については、少し整理をして議論する必要が あるのではないかなというのが1点です。さらに、先ほどの事務局の説明でございます が、少し気になるのは、1つは確かに機能として例えば権利擁護の役割が社会福祉士に 求められているとされているわけですが、一体それはどういう職場で実施するのかとい うことです。我々としては、目に見える形の職場の議論を設定していく必要があると思 います。介護の方は非常に見えやすいんですが、社会福祉士はなかなか見えにくい。も う一点は、先ほど魅力と働きがいのある施設というのは介護の議論であるわけですが、 実は社会福祉士においても、実は同じような議論が必要なのではないか。そういう意味 では、先ほど京極委員がおっしゃっていた加算の議論、前回にも提案をさせていただき ました介護保険等での加算議論というのは、介護福祉士だけではなくて、社会福祉士に ついても、是非一緒に御検討いただきたいと思います。 ○井部委員 実習、演習についての資料で、大変興味深く拝見したんですけれども、4 ページに「大学等における実習内容の実態<A大学の例>」ということで、説明でもご ざいましたけれども、重要な項目の実習がされていなくて、その他の項目の、これを見 ますと、※印のところを見る限りは、介護福祉士がやる内容についての実習の内容が多 いんですけれども、社会福祉士の相談業務などに関する実習は、まず1つは教育方法を どんなふうにしているのかということと、なぜ介護福祉士の役割の実習が多かったのか という、その2つについて、もしおわかりでしたら、教えていただきたいです。 ○岩田部会長 白澤委員でも事務局でも、どちらでもどうぞ。 ○白澤委員 では、私の方からお答えします。 現実には先ほどの石原委員の意見とも非常に近い部分があるんですが、現場の中でも、 社会福祉士の職務というものの専門性がなかなか確立できていない。 一方で、大学の方でも、先ほど言いました座学と演習、実習が連続性のあるものとし て教育され、相談支援という形で学生を送り出すという仕組みができていない。そうい うミスマッチも大変大きかったのではないか。 同時に、我々は必ずしも介護という実習をしてするわけでは決してなくて、介護も社 会福祉士を養成する上で、ごく一部としては非常に重要なんですが、それが非常に大き なウェートを占めていたという事実もあって、社会福祉士養成校協会も相談援助実習に しようという形で随分運動をしてきたわけですが、そこまではいっていない大学が、悪 い事例ということでございます。 ○井部委員 つまり、悪い事例が一般的であったということでしょうか。 ○白澤委員 全てがそうではなくて、例えば私の大学であれば、必ず相談援助というこ とを条件でお願いをし、我々もそこにきちっと関わって、老人ホームでも対応している というのが事実でございます。 ○森委員 実はこの4月から、地域包括支援センターというものがスタートいたしまし た。そのときに、今まで社会福祉士としての役割は、どちらかというとケアワークを中 心としていて、本来ソーシャルワークというのが非常に重要なものであるということ、 これがある面では、今回の包括支援センターではっきりと打ち出されたと思います。 そういう中で、高齢者の問題は勿論そうなんですけれども、私は地域包括支援センタ ーそのものが、例えば障害者自立支援法がスタートして、3障害の問題を含めて、幅の 広い立場でソーシャルワークをやっていくということの中で、私は認知度も含めて、あ るいはステータスも含めて上がっていく。そういう積み重ね、仕組みを是非ともつくっ ていくことが、ある面では社会福祉士そのもの存在がこれから地域にとってすごく大事 である。 特に地域福祉という論点からいったら、社会福祉士というのは、地域というものをき ちっととらえて、そこの中で権利擁護の問題あるいは虐待の問題などいろんなことがあ る。そういう中で地域支援をどのように発掘をして、アプローチしていくかというのは、 社会福祉士の大きな役割だと思っていますので、そういう点で、是非ともこの議論とい うのは、特に自治体にとって、これからすごく大きな役割を持つ、そういう位置づけだ と考えていただきたいと思います。 ○岩田部会長 従来がやや施設に偏り過ぎているので、介護職と少し重なってしまうと いうか、受け入れる側がそのように位置づけてしまったり、あるいは大学の方も福祉バ ブルで、社会福祉士をお客さん集めに扱っていったきらいもあるのではないでしょうか。 多分こういう例が出ると、大学はみんなめちゃくちゃなことをやっていると思われてし まうのは、はなはだ私も不愉快なんですけれども、長く福祉の教育をやってきた大学は、 勿論そんなことは全然ありません。非常に努力しておりますけれども、言わばそういう 競争条件の中で、実習先を確保しなければなりませんので、こういうことも場合によっ ては起こることはあるだろなとは思います。 今おっしゃったように、新しく地域とか施設というだけではなくて、ある施設にいて も、その施設の内部で仕事が終わるわけではなくて、むしろ外との調整というのが非常 に大きな仕事になりますから、社会福祉士の実践力というときの中身をはっきりさせて いかないといけませんね。その意味で、社会福祉士の専門内容や教育は介護より更に非 常に難しい課題だろうなとは思います。 ○村尾委員 今のお話と先ほどの森委員のお話に関連して、専門職団体としての立場で お話を申し上げますと、社会福祉の在り方、または専門職の養成について、社会福祉の 専門職団体がどんな役割を果たせるかということが浮き彫りになってきていると思いま す。 日本の場合は、人を育てる文化だと言われておりますけれども、従来は学校教育、企 業の職域でということでしたけれども、お話がありましたように、学校教育でこれだけ の利用者サイドに立った十分なニーズに応えるのは、やり切れない部分がかなり出てき ているのではないか。それから、企業も体力がいろいろあって、かつては終身雇用で育 てたということですが、それはなかなか難しい。一人前にして、教育して育ててくれと いうお話もあるわけですけれども、そういうことに対して、専門職団体が教育の立場と 企業の間に立って、専門職団体として、役割が十分あるのではないかと。 ソーシャルワーカーにつきましては、御承知のように50年前に日本ソーシャルワーカ ー協会というのができておりますし、国際ソーシャルワーカー協会に加盟しまして、ち ょうど50年になりましたが、今年50年の世界大会をやりまして、仲村優一先生も行かれ たわけですけれども、その後、いろいろな専門職団体が出てきております。 では、社会福祉士会がそれに応えられる足腰があるのかということがまず問題だと思 いますが、今のところは、これにかなり力を注いできまして、全国に支部をつくり、こ れを社団法人化するということで、今13支部、会員の多いところは、ほとんど法人化で きました。会員の総数でいきますと、約六割の方が社団法人化の組織の中に属している 実態になっております。社会福祉の仕事は、やはり生活全般にわたりますけれども、な かなか答えがでないんです。それで非常に孤立化して悩みが多いということで、それに 対して、どう支えるか、バックアップしていくか。また、ネットワークをつくってあげ るかということが非常に大事になってきておりますし、地域福祉、個別支援、自立支援、 こういうテーマに対して、しっかり応えていくような役割を果たしていかなければいけ ないと思っています。 今日は時間がございませんが、もしお時間をいただけるようでしたら、具体的にどう いうことができるのか。何をやっているかということを説明するお時間をいただければ ありがたいと思います。 ○京極部会長代理 今日、社養協から大変きちっとした資料が出ましたので、日本社会 福祉士会からも1つ資料があれば、参考になると思います。 前とダブるとまずいんですけれども、専門職の養成は、基本的には、特に実習、演習 の部分に関しましては、普通はその資格を持った人が指導するんですけれども、社会福 祉士だけは例外でありまして、精神保健福祉士は精神保健福祉士を持っている人が指導 しますし、介護福祉士は介護福祉士を持っている人が看護師と並んで指導しております。 保育士は保育士を持った人が指導している。社会福祉士の場合は、必ずしもそこがうま くいっていないのではないか。これは20年経ちますと、やはり社会福祉士を持った人が 指導する、また社会福祉士を持った人も実習指導ができるような、あるいは演習指導が できるような、介護でやっているような仕掛けもつくって、大学だとか学校側だけの努 力ではなくて、社会的なシステムをつくっていかないと、指導力が増していかないので はないかと思っていますので、その辺りを検討していただきたいと思っています。 ○鴻江委員 先ほどからおっしゃっているように、社会福祉士は相談援助業務というこ とで最初出てまいりましたので、求められる介護福祉士像の中で、施設の中でしたら、 介護福祉士がこれからは家族の相談業務等に当たっていくのがベターだろうと私も思っ ております。 そうした中で、社会福祉士の役割が見えなくなってきているという中で、先ほど地域 包括の問題もございました。やはりこれから目を向けていかなければならないのは、地 域の中で、特に施設の中におきましても、マンパワー不足というのがございます。そう いった中のボランティア、あるいは私も地域でお話をしますと、老人クラブとか民生委 員さんたち単独での行動というのは非常にあるんですけれども、横のつながりがなかな かできていない。そういった中でのリーダーが必要になってくるということを、非常に 言われるんです。地域のネットワークという言葉はよく出てくるんですけれども、なか なか実現していない部分がございますので、是非そういった部分も受け持っていただく ような役割を持っていただきたいなと思っております。 ○岩田部会長 本来そういう諸資源の調整とか開発というのは、ソーシャルワークの基 本なので、相談援助というのは仕事の中心ではありますけれども、むしろ資源開発とか 資源調整といったようなことを、もっとはっきり出してやっていかないといけないので はないでしょうか、おっしゃるように介護福祉士の資格の方でも、もっと社会的な側面 が求められているということになりますと、そことの仕切りも重要になってくると思い ますから、その辺はもっとはっきりさせていく。開発的な仕事だというところで、どう いう実習が必要かというようなことがおのずと違ってくるかもしれないです。 いずれにしましても、社会福祉士の方も、先ほどの介護福祉士の人材確保の面と同じ ような労働条件とかキャリアアップの問題も多分あると思いますので、社会福祉士の方 でどのぐらいできるかというのは、ちょっと難しいかもしれませんけれども、先ほどの 資料と似たようなものがあれば、ついでにおつくりいただいて、その辺も含めて、1つ の専門職を職種として、さまざまな任用資格とともに職域をきちっと確定していくこと が、社会的な認知にもつながっていくと思いますので、その辺りの資料も少し補足して いただきながら、次の議論に続けたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。 時間が超過になりますが、今日の御議論で、まだどうしてもという方がいらっしゃい ましたら、どうぞ。よろしいでしょうか。 どうもありがとうございます。少し延長してしまいまして、申し訳ございません。 次回は、今日の議論を踏まえまして、また補足の資料を含めまして、更に審議を深め たいと思います。 それでは、最後に次回の日程について、事務局よりお願いいたします。 ○矢ア総務課長 本日は長時間にわたり、ありがとうございました。 次回の日程につきましては、11月20日月曜日10時からとさせていただきたいと思いま す。よろしくお願い申し上げます。 ○岩田部会長 それでは、長時間にわたる御審議どうもありがとうございました。本日 の部会は以上で終わります。 照会先:社会・援護局総務課総務係     03-5253-1111(内線2814)