06/10/23 次期治験活性化計画策定に係る検討会第5回議事録 第5回次期治験活性化計画策定に係る検討会          日時 平成18年10月23日(月)          16:00〜          場所 厚生労働省17階18・19・20会議室 ○楠岡座長 定刻となりましたので「第5回次期治験活性化計画策定に係る検討会」を 始めたいと存じます。本日はご多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうござ います。まず最初に、事務局より、本日の出席の確認をお願いしたいと思います。 ○研究開発振興課課長補佐(佐藤) お手元の資料2「次期治験活性化計画策定に係る 検討会構成員名募」の構成員のうち、辻本委員が欠席ということで、連絡をいただいて います。本日は各調査班からそれぞれの調査報告をいたしますので各調査班の班長に出 席をお願いしています。また、医療機関の治験実施体制に関する現状調査班の中野重行 先生に、参考人として出席いただいています。事務局としましては、厚生労働省及び文 部科学省の関係課より出席をしています。よろしくお願いします。 ○楠岡座長 ありがとうございました。続いて配付資料の確認をお願いしたいと思いま す。 ○研究開発振興課課長補佐 配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料です が、まず議事次第、その次に座席表、資料1、資料2とありまして、資料3が1〜4ま であります。こちらは、各調査班の報告書になっています。最後に資料4、「次期治験活 性化計画中間とりまとめ骨子(案)があります。それから、資料3−1〜3−4までは、 各調査班の報告書の概要ですが、構成員の先生方には報告書の本体の暫定版を本日配付 させていただいています。以上が、本日の配付資料です。  なお、構成員の方々の机上にのみ、前回の議事録(案)をお配りしています。また、 参考資料集として黄色い紙ファイルも併せてお配りしています。前回の繰り返しになり 恐縮ですが、このファイルは各回共通の資料ですので、お持ち帰りにならないようお願 いします。それから、今回の参考資料は傍聴の皆様方にはお配りしていませんが、厚生 労働省のウェブサイトに掲載しますので、ご覧いただきますようお願いします。以上、 過不足等ありましたら事務局までお知らせいただければと思います。よろしくお願いし ます。 ○楠岡座長 ありがとうございました。では、早速議事に入りたいと思います。本日は、 各調査班の調査報告と次期治験活性化計画の中間まとめの骨子案に関する討議を、議題 として予定しています。この骨子は、次回の検討会で固める予定としています。本日は、 まず各調査班の調査報告として、各班長もしくは事務局より紹介します。そのあと、資 料4の「中間とりまとめ骨子(案)」を説明しまして、議論に入りたいと思います。よろ しくお願いします。  それでは、まず早速最初の調査班の報告としまして、医療機関の治験の実施体制に関 する現状調査班の報告を、班長の中野先生からお願いしたいと思います。 ○中野参考人 中野です。よろしくお願いします。資料3−1をご覧ください。私ども の調査の目的班は、概要の冒頭にありますように、治験の実施体制に関して最も重要と 思われる4つの事項、治験ネットワークの機能強化、治験施設支援機関(SMO)の利 用状況、被験者候補登録システムと個人情報への配慮、治験施設における治験審査体制 について調査をして、この会議で報告するということでした。4回の班会議をし、アン ケートによる実態調査と、実地調査を行っています。詳細はご覧いただければと思いま すが、ポイントだけ掻い摘んでお話します。  大規模治験ネットワークに登録している医療機関及び治験推進協議会に加盟している 施設、約2,000施設を対象にアンケート調査を行い、346施設から回答を得ています。 回答は20%には満ちていませんので、そういう数値であることを考えた上でこの内容は 評価すべきだろうと思います。  まず実態調査ですが、治験ネットワークについては45施設のうち31施設から回答を 得まして、回答率は約70%です。SMOについては、56施設のうち33施設からの回答 を得まして、回答率は約60%です。それから、治験を除く臨床試験に関する実態調査で すが、この回答率は20%を少し下回っています。実地調査ですが、時間の関係で3つし かできませんでしたが、比較的うまく機能しているかなというところを選択し、地域の 中核病院主体として行っている福岡治験ネットワーク、大学病院主体で行われている岡 山治験ネットワーク、それから医師会主体で行われている名古屋市医師会臨床試験ネッ トワーク支援センターを実地調査しました。まず、実態調査の結果ですが、概して治験 ネットワークはうまく機能していないというのが印象です。2頁の下にありますが、ど のようなことが必要になるかということですが、(1)多施設における一元的な対応による 治験の効率化。(2)ネットワーク内での治験を含む臨床研究に関わる人的資源の効率的活 用。これは、CRCを中心とした配置、派遣その他です。(3)ネットワーク全体の質の向 上。これは、教育を含めて、中央IRBないしは共同IRBの設置・活用というような ものになろうかと思います。(4)被験者の情報管理体制の構築。これは、情報漏えい防止 対策も十分しながら行っていく、管理の徹底が重要だろうということです。  (2)、治験を除く臨床研究の実態調査。これは予想どおりですが治験と比べて未整備 であって、研究者の負担が非常に大きくなっています。現状では、質の高い臨床研究を 多くこなすということは、非常に困難な状況になっていると思われます。  次に実地調査ですが、これは現地に赴いて担当の方々にいろいろインタビューをさせ ていただきました。そこでのポイントは、次の3つになろうかと思います。第一に、ど のネットワークも比較的うまくいっているというところは、ネットワークの運用に熱意 を持ち、かつ周りからの協力を得られるようなキーパーソンが存在していると。これは、 ネットワークのためのお金が出て動き出したというよりも、それ以前からこういうこと に非常に興味を持ち、また使命を感じてやっておられた方が中心になって、それに周囲 の人たちが協力するという形で、非常に時間をかけて作り上げてきているという印象で す。  第二に、共通して出てきている問題は、治験に携わる医師のインセンティブをどのよ うに維持していくか、ということです。ネットワークになってきますと、多くの医療機 関が関係してきますので、審査体制の確保も大きなテーマになってきます。第三に、そ れ以外に治験書式の統一化といったような、治験業務の効率運用に関わる課題が共通し て挙げられました。  次に今後の課題ですが、これは次の頁の図の1をご覧いただきながらお話したほうが いいかと思います。治験は質が良くなければなりませんが、日本国内の治験の質は相当 向上してきたと思います。問題は、速度とコスト(費用)だと思います。ここでは、特 に速度が遅い、コストが高いというところに焦点を当てて、どのようにこれを改善して いったらいいかということを図に表して、治験における3つのクリティカルパスとして 表現したものです。プロセスとして、3つに分けて考えてみます。最初の機構相談の段 階は規制当局が関与するわけですが、この段階は機構と企業の努力によって時間を短く することができるだろうということです。  次に治験届から承認・契約までのプロセスですが、これは医療機関と企業の努力によ る申請手続きの段階です。モニターのコストの軽減にも繋がってくると思われます。こ こでは、様式・手順の標準化、手順の簡略化、それから少数例多施設の治験が費用がか かることに繋がってきますので、その辺りをどのように今後解決していくかが大きな問 題だろうと思います。  3番目のプロセスですが、これは被験者のリクルート及び医師が協力した形での速度 に関係た段階です。ここでは、医師の実施インセンティブが大きな問題になろうと思い ます。現在、治験を実施することが適正に評価されていないと思われます。4頁の(3)に 少し書いてありますが、治験に係る研究費について、治験を実施する医師に適正に配分 されるような、医療機関内での工夫が必要だろうと思います。それから、治験及び臨床 研究の実績を評価することが、行政機関の研究費の申請要件の際も必要でしょうし、そ の次にありますように学会等が認定の要件に入れる、あるいは学位取得の際や人事等の 際にも臨床研究の業績を正しく評価することがとても重要になってくると思われます。  次に、治験活性化のための方向性ですが、治験ネットワークを中心にして調査を行っ ています。7頁の図の2をご覧ください。この図のようにまとめることができるだろう と思います。医療機関の規模の大きいものから小さいもの、あるいは中核ないしは拠点 になるような医療機関から診療所まであります。疾患からいきますと、上のほうはより 重症な患者が集まりますし、下のほうは比較的軽症な患者が受信します。実際の医薬品 にはいろいろな種類があります。医薬品の種類によって、上のほうの医療機関が中心と なって実施しなければならないようなものもありますし、下のほうの医療機関が中心と なって実施する生活習慣病を中心とするような治験もあります。上のほうはここでは全 国型のネットワークと名付けましたが全国的に連携して、がんや非常に稀な疾患、難病 あるいは特殊な領域の疾患を行っていくというシステムづくりが必要だと思います。そ れから、上のほうではいわゆる軽症の生活習慣病などは受診しませんので、地域ネット ワークを中心とした治験体制が必要になってきます。これを今後さらに育てていくこと が必要だろうと思います。  右のほうに臨床研究と書いてありますが、上だけが臨床研究の対象になっているわけ ではなく、全体が臨床研究の対象になります。特に上は、臨床研究を実施する医師の養 成などを意識して、特に上のほうに臨床研究という言葉が付けられています。5頁は、 大体いま説明したようなことでいいかと思います。  また、治験の拠点中核となる医療機関が必要だろうということです。これは、かなり 意識して育てなければいけないだろうということで、特に教育の面も含めてそういった 臨床研究をしっかりやれる人材を育成するという点でも重要になってくるだろうと思い ます。しかし、そこに「ただし」と書いてありますが、治験の拠点中核となる医療機関 を作るということが、逆に治験の実施医療機関を結果的に絞り込んでしまうというもの になってはならないということが、注意すべき点だろうと思います。強い副作用として 働かないようにすることが必要だろうと思います。  二番目はSMOの利用状況です。多くの治験実施医療機関がSMOを利用しているこ とが明らかになりました。どのような点で利用しているかといいますと、SMOにCR Cの派遣をしてもらっているのが大部分ですが、治験の事務局機能を支援していただい てもいます。このようなことから考えますと、我が国の治験の向上のためには、SMO の質の向上、連携ということも望まれるだろうと思います。  三番目として、被験者候補登録システムと個人情報への配慮。これは、治験のスピー ドを上げるという点では医療機関が被験者候補を登録しておくことは、非常に有効だろ うと思います。しかし同時に、個人情報への配慮がとても重要になってまいります。そ こで、医療機関において管理手順書のようなものを作成する。院外の登録システムを利 用する場合でも、契約等に明記する等の取組を、今後していくことが必要だろうと思い ます。  四番目ですが、治験施設における治験審査体制。当然のことながら、GCPにIRB が義務付けられているわけですが、実際には日本にIRBがいくつあるかということも 正しい数字がわからないような現状です。これからはIRBの実態を把握するというこ とが必要だと思います。設置状況、構成委員あるいはその審査の中身といったものの調 査が今後必要になってくると思います。そのうえで、IRBの質を高めていくことが必 要だろうと思います。そのためには、人材の育成が重要となります。特に治験の教育の アンケートのところで明らかになったことですが、IRB委員の教育が最も行われてい ないと思われます。非専門家、外部委員の方々がIRB委員に入っていても、なかなか 自由な発言が行いがたいような雰囲気では困るということで、IRB委員への教育が今 後なされる必要があると思います。それから、IRBの評価も必要だろうと思います。 IRBはただ設置していればいいということではなくて、IRB委員への研修の実施の 有無、議事録の保存、情報開示などについて、今後外部から評価していくというような ことが必要だろうということです。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。細かい議論は後ほどまとめて行いますので、こ こでは主に説明だけに留めさせていただきますが、何かいまの説明に質問等がありまし たらお願いしたいと思います。よろしいですか。そうしましたら、後ほどまた議論して いただくことにしたいと思います。  引き続きまして、資料3−2、治験を実施する人材に関する現状調査班の説明を行い たいと思います。この調査班は、私が担当しましたので私から説明させていただきたい と思います。資料3−2をご覧ください。2頁、1の概要ですが、治験あるいは臨床試 験を実施する人材である治験実施医師、治験コーディネーター、CRC、IRB委員、 生物統計家、データマネージャー(DM)、それから関連する事務職員の養成課程、業務 内容について、現状把握、課題抽出を行い、人材に関する養成、研修、インセンティブ 向上策について検討した結果です。調査方法は、先ほど体制に関する現状調査班と同じ ように、まず2,000余施設に対して調査を行っています。一次調査として、そのうち778 施設から回答をいただいています。その中で、二次調査に協力するといっていただいた 346施設、それからCRCに関しては日本SMO協会のご協力も得まして二次調査を行 い、結果としては医師1,620名、CRC2,459名、IRB委員826名、生物統計家8名、 DM26名から回答をいただいています。これらの回答に基づいて分析した結果が、次の とおりです。  まず、治験を担当している医師に関しては、インセンティブとしては医学の発展に貢 献できる等治験の学術的側面を非常に評価していて、自らの専門領域に合致する治験は 是非引き受けたいという、比較的良好な状況が見られました。また、治験の適切な実施 に意識は向いていましたが、一方受託しない理由としては、業務が多忙である、治験が 業績として評価されない、他の医師や患者からの理解、協力を得られないというものが 主要な理由でした。治験を実施している施設のうち、医師に対して治験に関する研修の 機会を提供しているのは、全体の2、3割とでした。  2番目のCRCに関してですが、回答者のうちの65.8%がSMOに所属するCRCで した。職種としては、約47%が看護師、次で臨床検査技師、薬剤師の順でした。医療職 の免許を持たずにCRCになっている方も若干おられました。CRCの経験年数は、平 均3.1年、80%が何らかの養成研修を受講しておられます。1人当たりの年間の担当は、 プロトコル4.6本、17.7症例でした。業務量は、5割以上の方が大体適当であると考え ていましたが、逆に3割が過多と感じておられました。業務内容の中で特に困難に感じ るものとしては、重篤な有害事象の対応、他部門との調整等であり、また薬事法・GC P・各種指針、疾患に関する知識等が、必要ではあるけれども不足していると感じてお られました。3割がCRC業務を、今後も続けたいけれども難しいと考えておられて、 その理由は、勤務条件や処遇が合わないとか、あるいは自分がCRCに向いていないと いうことでした。  IRBに関しては、85%の施設でIRBは大体2カ月に1回以上開催されており、I RBの定員は平均10名程度です。治験を実施している施設からは、外部委員、治験の知 識を有する委員の選任が非常に困難であるという回答がありました。しかし、委員への 研修を実施しているという施設は、非常に少ない状況です。9割以上の委員の方々は、 ほぼ毎回IRBに出席されていますが、2回に1回以上発言されているというのは全体 の4割程度で、特に院内の非専門委員の発言頻度が非常に少ないという結果が出ていま す。発言しない理由は、質問や意見が思い浮かばないというものが非常に多く見られま した。発言内容に関しては、安全性への強い関心が見られますが、しかし、治験を確実 に実施できるかという視点での発言は少ないようです。なお、このIRB委員の調査に おいては、なるべく院外委員、非専門家の方に答えていただくように、各施設にお願い しています。  生物統計家に関しては、医療機関におられる生物統計家は非常に数が少なく、回答数 も8名でした。それらの方々は、多施設共同で行う臨床試験に関与しておられ、治験に はあまり関与しておられず、むしろ、臨床試験の準備段階に関わっているという状況で した。インセンティブとしては、学術的な問題あるいは担当研究の社会的意義にあるよ うです。  DMも、医療機関に存在している数は非常に少なかった状況ですが、医療職免許保持 者、IT関係者等、そのバックグラウンドは多種多様です。医療免許保持者が、やはり 半数でした。経験は1年未満が非常に多いわけですが、5年以上の経験を持つ方も23% おられました。DMに関しては、確立した養成システムがなく、どのようなところで知 識を得ているかというと、病院内職員からの説明やセミナーや研修参加という答えが多 くありました。治験業務はあまり行っていないという結果です。インセンティブは、生 物統計家と同様、担当研究の社会的意義や学術的なところにありました。  以上のような結果から、検討班でまとめた今後の課題としては、以下のとおりです。 まず、基本教育・養成に関しては、医療職の卒前教育で治験・臨床試験、生物統計、研 究倫理に関する内容を基本カリキュラムに含め、また関係するすべての医療職の国家試 験のガイドラインにも入れていただく必要があるのではないかと思っています。  2番目に、医師の卒後臨床研修、生涯教育においても、臨床研究の意義、その結果を 批判的に評価できる技能の獲得、臨床研究の実施に係る内容の理解を促す内容が、やは り必要であると考えます。特に、卒後臨床研修ガイドラインの到達目標には、この臨床 試験等に関するものも入っていますが、その達成に向けた取組を引続き推進する必要が あると考えています。  CRCには、臨床試験に関する幅広い知識と、On the Job Training(OJT)が不可 欠であり、引き続き継続的な養成が必要と考えられます。これは、養成数としてはかな りの数になっていますが、実際現場で働いている方たちが少ないということ、それから 医療機関では今後もCRCは必要であるという意見が多いので、継続的養成が必要と考 えています。養成研修は、各団体の特徴を生かしながらも、治験の実務上必要な専門知 識(規制等)、あるいは業務内容に関して、各団体が連携し、達成度の共通の基準をもっ て取り組むことが必要だと思います。また、開催時期や場所も分散させ、受講しやすい 環境を整えることが望ましいと思います。  CRCの質的向上を図るために、就業前の養成研修受講、あるいは養成研修の受講に 当たっても、医療職としての一定の技能・能力を要件とすることが望ましいと考えられ ます。それから、CRCに臨床試験全体のコーディネートを望む声も多く、現在CRC の呼称が治験コーディネーターとなっていますが、臨床研究コーディネーターという名 前に変えていくことによって、臨床試験現場での定着が進むという意見もありました。  医療機関に在籍する生物統計家は、多施設共同臨床研究に関与している現状から、中 核となるような医療機関では、是非とも生物統計家が院内にいる必要性を非常に強く訴 えていまして、養成と処遇面の問題解決が非常に喫緊の課題と考えられます。DMは、 臨床試験の品質管理のうえで非常に不可欠ですが、職種・業務内容がいまのところまだ 明確ではなく、確立された養成システムがありません。DMの必要性を医療機関が認知 すること、その定義、業務内容を明確化すること、そして教育プログラムを作成する必 要があると思います。  現行の治験制度では、IRBは被験者の安全を護る盾でありますが、非専門家、外部 委員の発言が少ないという指摘があり、またIRB委員に対する教育研修も十分に行わ れていない現状があります。IRBでの議論が十分になされるよう、IRB委員に対し 各施設で実施すべき研修について、基本的内容を統一化し、その実施を推進することが 望まれます。治験のスムーズな実施を図る上では、治験に関わる事務職員の教育・養成 も非常に重要です。治験・臨床研究に関する基礎的教育、GCP、臨床研究倫理指針等 に関する教育、医療保険・保険外併用療養費、これは旧の特定療養費制度のことですが、 これに関する教育が必要と考えられます。  2番目に、関係職員の確保ですが、養成している人たちが養成が終わったあとも現場 で働く必要がありますので、これについての検討も必要です。ここにありますように、 養成された方々が治験・臨床試験に熱意をもって取り組める体制の構築が非常に重要だ ということです。以下に、職種ごとの問題点と対策について意見をまとめています。ま ず治験実施医師に関しては、キャリアパスとインセンティブの問題が大きいと考えます。 治験を実施している医師は、経済的なインセンティブよりも研究成果に関心があるとい う結果が得られています。成果が得られやすい環境となるよう、治験・臨床研究の拠点 となるような医療機関では、治験・臨床研究へのエフォート配分を考慮し、研究時間が 確保できるようにすること、それから、公的研究費や企業からの受託研究費の柔軟な運 用等が必要であると考えます。  医師の治験・臨床試験への参加のインセンティブの増加には、治験等の実施をキャリ ア形成に反映させる仕組みが実現されなければならないと考えます。これには、いろい ろな関係機関との調整が必要と考えます。例えば、臨床研究・治験業績を公的研究費に よる臨床研究への申請の要件化をするとか、学会専門医の認定の要件にする、あるいは 治験・臨床試験の実績による学位取得の機会の提供など、いろいろな形が考えられると 思いますが、ここはこの一例として示したものです。  それから、臨床試験を軸とした医師のキャリアパスというものも、いままであまり考 慮されていませんでした。医療機関における実施以外に、規制当局における審査業務あ るいは産業界における医薬品開発業務等、いろいろな働く場面があると思われますので、 そこでのキャリアを積んで、ここは昇進と書いてありますが英語でプロモーションとい う考え方で繋がっていく体制の構築が必要だろうと考えています。  2番目の研修制度ですが、治験実施前の制度も含めた臨床研究に関する総合的知識を 獲得する機会を系統的に提供することが不可欠です。例えば、公的研究費で臨床研究を 実施する医療機関においては、臨床研究倫理指針遵守等の調査を国が実施すること等を 踏まえて、研究者の規制に関する知識の取得と遵守の徹底を図る、あるいは、治験担当 医師の研究機会を増加させるために、院内での研修以外に院外での研修機会を提供する 必要があると考えています。  次にCRCに関してですが、やはりキャリアパスとインセンティブの問題があると思 われます。CRCのライフスタイルの変化に応じたCRCの配置、業務、労働条件に関 し、医療機関の理解と環境改善の努力が必要であり、これがCRCのインセンティブを 高め、専門職としての質的な保証に繋がっていくものと考えています。例えば、SMO 雇用と病院雇用のCRC業務、あるいは処遇の差の改善には、派遣の問題等があるかと 思われます。業務過多という回答もありましたので、そのような労働環境要因の分析と 改善、認定CRCの処遇の改善、CRCとしてのキャリアパスの確立が必要だと考えま す。治験・臨床研究の拠点医療機関を形成して、症例集積性を向上させる必要があると いうのも、CRCのインセンティブの中に出てきています。その結果、安定した研究受 託が確保され、治験・臨床試験を通常業務化することにより、CRCの安定雇用を推進 するように医療機関も努力する必要がある。それから、CRCが人事ローテーションに より別部署で勤務することで、結果として当該医療機関全体での治験・臨床研究に対す る認識の向上を図りつつ、CRCとしての実働数の確保を行う必要があると考えます。  日本でのCRCのモチベーションを高めるよう、各職種の認定機関においても医療専 門職としての専門性を考慮した研修認定制度の拡充を図る必要があると考えます。医療 機関において認定CRC数や配置が評価されるよう、その情報の公開が促進される必要 があるということです。CRCの研修制度については、治験のみならず臨床試験全体に 関わる等、CRCに求められる業務は拡大しつつあります。また、CRCは臨床試験に 関し、院内の医療職に対してさまざまな教育的役割を担っていることも踏まえ、CRC に対して継続教育が必要であり、キャリアアップに繋がる上位研修も視野に入れた検討 が必要であると考えています。  3番目のIRB委員に関してですが、IRB委員に対する研修を行い、「意見・質問が 思い浮ばない」、あるいは「施設や研究者への遠慮がある」、これは、意見が言いにくい 理由であったわけですが、これらの障害を除去し、非専門家であるIRB委員であって も発言しやすくなるように、知識等の取得をできるようにする必要があると思われます。 それから、科学性に関する事項よりも倫理性、信頼性に関する事項が主として必要であ ると思われます。全国的に標準化された教材や機会も必要であす。患者の立場を代表す る者を委員として選任する工夫も、質的向上に必要であると考えます。IRBの質的向 上に役立つよう、IRBの実施状況や研修の実施状況を医療機関が公開していく必要が あると思います。将来的には、医療機関の実施情報を統一的に把握できるシステムの作 成や、IRBの中央登録などの仕組みを検討することが望まれます。  次に生物統計家に関してですが、日本では生物統計家が臨床試験組織の重要なメンバ ーとして必要であることが、まだ十分に理解されていません。治験・臨床試験における 生物統計の意義について、関係職員の研修プログラムに盛り込むべきだと考えます。公 的な研究費で行われる臨床試験においては、研究計画における生物統計家参画を要件と する必要があります。生物統計家は医療職でない場合もあり、臨床研究を実施する中核 となる病院においては、生物統計家を定員化することも検討すべきです。これは、雇用 環境の改善ということです。生物統計家自体が不足している現状では、中核病院では、 関連拠点病院に対して生物統計的な観点からアドバイスを提供できるリソースと機能を 整備する必要があると考えます。生物統計家は、医療機関での雇用が進んでいないもの の、国内外の研究機関、あるいは企業では活躍している現状を踏まえ、これらのリソー スを活用し医療機関内で生物統計家を養成したり、あるいは研究機関等から医療機関へ の雇用を促進したりできるよう、産官学が連携し、生物統計家の交流・連携を促進する ような方策も必要であると考えます。  DMに関しては、治験のみならず、臨床試験、医師主導治験の品質を高水準に維持す るためには、DMを配置することが必要であり、治験・臨床試験の中核拠点病院にはD M業務を実施できるスタッフを確保または雇用する必要があると考えています。  3番目には、関係職員の活用についてです。(1)治験の中核ないし拠点となる医療機関 は、関連する医療機関での治験も含め、その質の向上のため、自施設の職員のみならず 関連医療機関内の治験関係職員のための研修の機会や治験・臨床試験に係る疑問に答え る機能などが期待されます。そのための窓口や部門などを設置し、医師、CRC等の治 験・臨床試験に関する知識、経験を研修、相談に利用できる体制を整備する必要がある と考えています。  (2)治験・臨床試験は担当職員のみが行うものではなく、医療機関全体で行うものであ ることを施設内に徹底させ、治験等に直接関与しない職員にも理解を促す施設内の啓発 活動が必要です。それにより、治験に関する患者の問い合わせ等に適切に対応でき、被 験者のリクルートにも繋がると期待できます。  以上のような検討ですが、医療機器に関しては実施している施設数が非常に少なかっ たこともありまして、今回の検討においてはここにありますように医療機器の治験に関 する人材についての検討は、ほとんど行えませんでした。したがって、医療機器治験に 関わる人材の確保・育成は、今後の課題と考えています。以上です。  何かご質問はありますか。よろしいですか。それでは、次の報告に移りたいと思いま す。続いて、治験の啓発活動に関する現状調査班の説明を、事務局からお願いしたいと 思います。 ○研究開発振興課課長補佐 事務局でございます。啓発班は本日班長のご都合がつかな かったということで、調査報告については事務局のほうからご説明を申し上げます。  資料3−3です。治験の啓発活動に関する現状調査班ということです。最初に申し上 げますが、必ずしもこの班だけではないのですけれども、全体的に、今回班からの報告 を、アンケート調査に基づいて挙げていただいているという性格もありまして、必ずし も、班の報告の中で言われているような意見、考察という部分については、完全な実現 可能性というものを、きちんと検証した上で書いているものだけではございません。こ の後の検討の中でもそういった部分からもご議論、ご指摘をいただければと思っており ます。  資料の3−3の2頁目ですが、こちらの調査については、いわゆる啓発活動というこ とで、治験参加者が189人、一般患者の方が300人、一般生活者が822人。ヘルスクリ ックのユーザー、日経リサーチのインターネットモニターといった方々が一般生活者で すけれども、この中から1311人の回答を得まして、アンケートという形での取りまとめ をさせていただきました。治験の啓発の状況におきましては、治験参加者及び一般の患 者さんの6割、一般生活者の8割程度の方が、認知をしているという状況。治験の参加 者においては、参加のきっかけとなった情報は、医師や治験コーディネーターなどの病 院の職員から入手をしている。一般の患者さんにおいては、新聞、雑誌、広告等からの 情報というのが一番多いという状況です。2番目の治験に関する考え方という部分です けれども、治験の必要性については、治験の参加者、一般の方も、比較的高い割合で理 解を示しています。治験の印象については、医療の進歩に貢献できる、新薬の開発に貢 献できるという回答が多数を占めておりますが、一方で副作用等に対する不安があると いうことを挙げています。  3頁目ですが、治験の情報提供の現状及び現状に関する考え方及びニーズということ で、全体的には、情報提供という部分では、治験参加者の7割程度の方が「情報が十分 ではない」、一般の患者においても、5割の方が「情報提供の機会が十分に行われていな い」という回答をしております。情報提供の機会については、満足が得られていないと いう状況でございます。一方で、知りたい治験に対する情報という意味では、治験につ いての一般的な知識以外に、治験の対象となる病気の名前、どのような薬が治験中かと いうこと、「メリット、デメリット」という具体的な治験の実施に関する情報を、患者や 一般生活者もほぼ同等に求めているということです。あとは繰り返しになりますが、治 験の一般的な情報の入手先は、テレビ、雑誌、インターネット等が多いということです。 治験に対して望むことという部分では、十分な情報提供というものに対するニーズが高 いというところがございます。最後に、治験の参加におけるインセンティブ、デメリッ トという部分においては、治験に参加してよかったということについては、参加者の方 のご意見として、よく先生と話ができた、コーディネーターが相談に乗ってくれたとい うこと。よくなかったことは、安全性の不安ということがございました。治験に参加し た方に次回も参加しますかということを問いかけると、約6割の方が希望したいという ことで、治験に参加された方の印象としては、まずまずではないかという評価だと思い ます。  4頁目の考察に移りますが、今回のアンケート調査の結果からどのようなことが考え られるかということです。やはり1番目、治験啓発情報ですが、インターネット等の報 道媒体経由の治験啓発情報の提供が全般的に望まれると。2番目として、医療機関経由 の治験啓発情報ですけれども、治験を実施する医療機関においては、患者に情報を求め られやすい傾向にある。医療機関内の医療関係者に対して、広く治験に関する理解を促 す教育を行っていくということだけではなく、治験コーディネーターと医療関係者を通 じて、啓発情報が行われる体制が望まれるということです。2番目に患者向け情報室と いうのが書いてございますけれども、医療機関において、パンフレット、治験に関する 情報を一元的に集約して、一般患者さんを対象に、いろいろな相談の機会やセミナーな どを推進、提供できるような、そういう室を設置したらどうかというご意見がありまし た。あと、その他のご意見としましては、大人だけではなくて、小さい時から医薬品と か医療機器に関する一般的な知識が重要であり、そういう中で治験というものに触れる ような機会を得たほうがいいのではないかというご意見、また、治験は患者さんに対す る助け合いという部分もあり、そういった社会貢献的な意識というものも育てていって はどうかというようなご指摘がございました。5頁目に、治験の実施情報という、啓発 情報と実施情報をこの調査報告では書き分けてございますが、先ほど来の啓発情報とは 一般的な治験とはどういうものかとか、そういう一般的な情報ですが、5頁目の治験の 実施情報というのは、むしろ、もう少し具体的に、どういう治験をやっているかとか、 実際参加するに当たって、治験についてどのようなことが知りたいかという、かなり参 加に近い部分での具体的な情報を実施情報とここでは呼んでおります。テレビ、新聞・ 雑誌、インターネット等の媒体経由で治験をやっているという情報については、臨床研 究の登録データベースというものができてきている状況もありまして、こういうものが 一般の方にとっても、わかりやすい形で検索ができるように、ポータルサイトのような ものを整備してはどうかと、そういうご提案が(1)に書かれています。 テレビや新聞・雑誌・広告といった幅広い層に受け入れられやすい報道媒体経由のもの は、頻度とか、地域性も踏まえて活用を図る必要があると(2)に書いてあります。  2)医療機関経由の治験実施情報の提供という部分で、被験者の候補となる一般の患 者や被験者が最も望んでいるのは、医療関係者から情報をいただくということでござい まして、特に双方向のコミュニケーションができるような、患者向けの情報室、先ほど 治験の一般情報のほうでもお話しましたけれども、そういうものを整備して行ってはど うかと。2番目ですけれども、患者が医師や治験コーディネーターなどの治験業務に関 わる医療関係者とコミュニケーションを効果的に行うためには、患者向け情報室という ところだけではなく、一般的に相談を受けたり、意見を問われるような医療機関の医療 関係者、事務職員に至るまで、ある程度の治験の実施情報を理解する機会を、医療機関 の中で提供されていってはどうかというご意見がございました。  治験参加者へのインセンティブのあり方という部分では、医療関係者等とのコミュニ ケーションの体制整備ということで、患者と医療関係者の双方向のコミュニケーション を支援するよう努力する必要があると。特にそれは治験実施中及び治験薬の投与後につ いても、同様ということです。 6頁目ですが、相談の窓口ということが書いてありますが、2)に、治験参加後の参加 した治験に関する情報提供という部分で、やはりご自身が参加された治験について、そ の治験の成果がどうなったのかとか、その薬は最終的に上市されたのかとか、そういっ た情報が医療関係者ないしは、関係企業を通じて、インターネット等で提供されるよう な、そういう仕組みも必要なのではないかと。あとは、治験の実施中の化学的情報につ いて、何らかの論文で公表されるとか、そういったことの透明性を高めることによって、 治験の安全性に関する不安の要因を取り除くことができるのではないかというようなご 意見も書いてあります。  3)として、治験自体が終了してしまいますと、継続して治験薬の提供を受けられな いというようなケースがあるわけですが、有効性がその患者さんにおいて確認されたよ うなものについては、未承認薬であるという条件はあるわけですが、違法ではない範囲 の中で、何らかの提供を受けられるように製薬企業、医療機関の関係者が努力していた だきたい。また、待ち時間解消のインセンティブとか、保険外併用療養費に関する部分 の問題も、引き続き検討してほしいと。そういう意見が出されています。治験の啓発活 動に関する調査班の現状報告の概要については以上でございます。 ○楠岡座長 ありがとうございました。何かご質問はございますでしょうか。よろしい でしょうか。それでは次に移りまして、治験の効率化に向けた治験書式、手続き、IT 化に関する現状調査班の調査結果を伊藤構成員からご説明をお願いします。 ○伊藤構成員 資料3−4に基づきましてご報告させていただきます。治験の効率化に 向けた治験書式、手続き、IT化に関する現状調査班ですが、前回の検討会の中でも、 概略をご報告させていただいたとおりでございます。我が国では、一部の機関を除いて、 書式などの標準化がされていないことと個別化がされているということで、効率が悪い のではないか。特に治験の依頼者の負担が高いために、コストが高くなっている。と同 時にスピードを含めた効率が悪くなっているのではないか、という問題点が多々指摘さ れているところですが、定量的な調査は、あまりないという認識でございます。今回の 調査におきまして、治験実施者と治験依頼者の役割の明確化、治験書式の標準化、治験 データ交換様式の標準化と治験データの電子化収集の促進という3点について、調査を した結果をまとめたものです。アンケート一次調査は、2000施設を対象に、二次調査は 346施設に対して行われ、ほかの調査班と変わりはございません。役割の明確化につい ては製薬協とか、PhRMA、EFPIAからもデータをいただきまして、それを補完 した形で検討いたしております。調査項目は、1)から3)に書いてあるとおりで、治 験実施者と治験依頼者の役割の明確化と治験の契約形態に関する調査はQ15から23。書 式の標準化に関することは、Q24、25。IT化とかEDC(Electric Data Capture)へ の対応については、Q30から34までを、使わせていただいた結果でございます。二次 調査に基づきまして、346施設から得られた、回収率が72.7%の結果でございます。概 略は、下に書いたとおりでございまして、IRBは、65%以上で、月1回開催をされて おります。すでに94.2%の施設では、治験依頼者の窓口を一本化しております。主だっ た窓口は、治験管理室が61%です。ただ治験契約までに窓口だけではなくて、治験責任 医師のほか、治験管理室とかCRCを訪問する必要があり、39.6%の施設では薬剤科ま で訪問しなければいけない。こうした複数の場所への訪問が1日で済めばよろしいので しょうけれども、済まないと、非常に負担になっているという調査結果かと思います。  また、ほかに書類だけの受付けにつきましては、16%の施設が持参しなければいけな い。郵送では受け付けていただけないというような問題点が出てきております。依頼者 側は、この施設で大丈夫だろうかという判断材料があるほうがいいということでござい ますが、それについてのデータを公開している施設が7割ぐらいで、3割の施設は公開 されていないということです。  いわゆる治験を実施する際に必要とされる通称グッズと呼ばれているものですが、そ ういった物をすべて施設のほうで作っているかというと、決してそんなことはなく、主 だったものについて、臨床検査基準値とか、指示決定通知書などは施設で作っているの ですが、「ポケット版プロトコル」とか、「症例ファイル」などはほとんど依頼者のほう が作っているというデータが明らかになっております。  約3分の1の施設で、申請時に、IRBへ、治験依頼者が出席をされているという状 況もわかっております。契約形態では、複数年度契約が3分の2を超える施設ではでき るような形になってきておりますが、未だに前納返金なしという形態を取っているとこ ろも一部あるということです。様式ですが、国立病院機構様式が一番多く使われていま したが、4割の施設で独自様式だったということです。これがアンケート調査の結果で ございまして、こういったことが、治験施設の現状だということがわかったということ です。  治験データ交換様式の標準化につきましては、昨年度と今年の春に調査に行かれた班 員の方の結果をいただいた上で、提示させていただいておりますが、現状では一部の施 設でEDCが行われておりますが、端末が固定で、例えばEDCと、メーカー指定の端 末を使わなければできないという、非常に効率が悪い状況下で行われていることがあり ます。もう1つは、EDCというのは迅速な情報収集などの点では、製薬企業には利点 がございますが、医療機関では二度手間、三度手間になっているのではないかという問 題点があります。図X、図Yに書きましたのは、今後のデータ収集のあり方の図、並び にロードマップを書いておりますが、海外では電子カルテについてはHL7という規格 が標準的なフォーマットになりつつあります。同時に、データ交換標準フォームとして、 XMLというデータ交換フォームが使われております。その上で、CDISC標準仕様 というのが策定されつつあり、それを用いてデータの標準化がされつつあるというのが 現状でございます。海外では、特にFDAが新薬申請の際へのデータの仕様として、C DISC標準仕様を採用しているということもありまして、国際的な普及が急速に進む のではないかという予測が強まっております。こういった対応をすることが、今後の効 率的な治験の運用に大切なことではないかというのが現状の分析でございます。まとめ といたしまして、我が国の治験は1施設当りの症例数が少ないために、プロトコル当り の施設が多いという問題があります。そのため、モニター1人当りの対応症例数が少な い、モニターの数が多い、治験依頼者費用の増大を呼んでいる、ということであります。 さらに、この施設ごとのカスタマイズが人件費の増大を来たしていることが問題になっ ているということが今回の調査でも明らかになっております。  事務の効率化としては、郵送での受付ができるということが必要になるでしょうし、 複数箇所に訪問をするという非効率的な面をいかにしたら効率的にできるのかというの は、医療機関サイドも含めて全体で取り組んでいかなければいけない問題だろうと思わ れます。統一の書式に関しましては、我が国で統一的な書式、例えば厚生労働省や国立 大学病院長会議などで了解された統一版の作成が望ましいのではないかというのが私ど もの結論でございます。  医療機関と依頼者の役割ですが、治験依頼者、医療機関のどちらか一方がグッヅ等を つくればいいのかということでは決してなく、いかに効率的な運用をすればいいのかと いうことを両者で話し合った上でするのがいちばん妥当であろうというのが最終的な班 内部での結論です。ただ、医療機関ごとにカスタマイズすることが治験依頼者にとって 多大な負担になっているので、どうすればその負担を解消できるのかというのが今後決 めていかなければいけないことではないかと思います。現時点では、医療機関の中で必 ず作成すべき書類とか、段階的に医療機関側で作成できるようにする書類を統一的なフ ォーマットや電子的なデータ様式を固定することによって、印刷形態に関して各個別に 医療機関でカスタマイズができるような方法論も考えていく必要があるのではないかと 思っております。  データの電子的な交換というのは、先ほどお話をしたとおりで、FDAの採用状況か ら見て国際的にCDISC標準仕様が治験データの電子的交換の標準となる見込みが高 いと思われますが、そういう標準規格を決めるにあたりましては行政、医療機関、製薬 企業、依頼者を含めて、今後こちらのほうでいくのだというコンセンサスがないところ では自分の所だけ行くというのはなかなか難しいのではないかということもありますの で、このコンセンサスづくりが必要でしょうし、今後それに見合ってロードマップを書 いていく必要があるのではないかと思います。  ただ、現在、医療機関サイドでは自らの病院情報システムや電子カルテにそういう仕 様を盛り込むのは難しいのではないかということが問題点として言われておりますので、 そういうことも含めて、各病院ではなく、例えば「電子カルテ」とか、ナショナルレベ ルでの統一的な形を考え、そのモデルをつくり、広げていく作業が必要なのではないか。 それにつきましても、データ交換様式だけではなく、項目とか、その統一的なフォーマ ットをつくることが先の段階ではないかと思われております。以上でございます。 ○楠岡座長 ただいまのご説明に関しましてご質問ございますか。よろしいですか。そ れでは、調査班の報告は以上でございます。この調査に関しましては第1回の検討会の スケジュールのときに話しましたように、本年7月中旬から開始して、約1カ月の間に 非常に大規模な調査を行っていただきました。しかも、その後、非常に短期間で各班で まとめていただきまして、このご努力に心から感謝いたします。また、その事務的な作 業を負っていただいた日本医師会治験促進センターの方々にも御礼申し上げます。今回 の調査の結果に関しては、今後、報告書という形で出されてきますが、この調査の内容 が極めて特異なものであることはご了解いただけるかと思います。  今回、医療機関からは346施設からの回答ですが、今回の調査の中でいろいろとデー タを見ると、たぶん、今現在、日本で治験を実施しているのは病院・クリニックを含め て医療機関数を多く見積もったとしても800から900程度ではないか。もちろん、数多 くやっている施設も1つしかやっていない施設も含めて、大体その程度ではないかと思 われます。その実際に治験をやっている所から約350の回答があったということは、こ こに集まっているデータは各医療機関の治験をやっている実態をかなり反映しているも のと思われます。また、この回答はかなりボリュウムのあるアンケートですので、医療 機関並びにCRCはじめ治験に関わる医療職の方々にもかなりご協力いただきました。 この点に関しましてもこの場を借りて御礼を申し上げたいと思います。  CRCに関しましても、今回の調査の中でいろいろな推計法を使って考えたところ、 たぶん、今、日本全体でCRC業務は、実際に働いておられる方の数は多く見積もって 4,000から4,500名ではないかというのが今回の調査の一つの推計値として出ておりま す。その中の2,500名から回答が得られているということですから、これも相当な内容 のものが得られているのではないかと思います。したがって、今回の調査は、我が国で も初めてに近いような調査ではありますけれども、その結果は現在の日本での治験の現 状を非常によく反映した結果が出ているのではないかと思います。非常に短期間に多大 な努力をしていただいた関係の方々、皆様方に御礼申し上げたいと思います。  それでは、本日のこの報告に関してですが、構成員の方々には暫定版という形で報告 書が配られておりますが、今後の取扱いに関しまして事務局からお願いいたします。 ○研究開発振興課課長補佐 いま、座長からも、この調査報告に関しては関係する皆様 方の多大なご協力を得て出来上がったというお言葉があったとおり、先生方の座席に配 付しております報告書も大変大部なものになっております。本日の時点で中身の数字な どについて全部の確認が完了していないという状況で大変申し訳なく思っておりますが、 この辺りの情報をとりまとめていただいた日本医師会、各研究班の先生方ともう一度確 認させていただいて、その上でできるだけ早めに中身を確定させていただいて厚生労働 省等々のホームページにアップロードして公表させていただきたいと思っております。 それによって、各アンケートにご協力いただいた方々も、この詳細なデータについて結 果を目にすることができるだろうということで、ご協力いただいた方々の労にも報いら れるだろうと思っておりますので、事務局では今そのようなことを検討しております。 ○楠岡座長 なるべく早くこの結果が公表できるようにお願いしたいと思います。それ から、この調査班の報告内容ですが、先ほど事務局からもご指摘がありましたように、 各調査班の思い入れがかなり入った報告になっておりますので、相当な理想像を書いて いる部分もあります。したがって、それが5年間で達成可能な領域なのか、あるいは本 当にすぐできるものなのか、いろいろな部分が入っておりますので、読まれる方もそこ を念頭に置いて読んでいただかないと、これをこの5年でやってしまうのか、というふ うにとられると少し誤解があるかもしれませんので、是非その点はご注意をお願いした いと思います。  それでは、この調査結果と本検討会でのこれまでの議論を踏まえまして、次期治験活 性化計画の中間とりまとめ骨子案について事務局で作成したものがあります。資料4に ついて事務局よりご説明お願いいたします。 ○研究開発振興課課長補佐 資料4でございます。次期全国治験活性化5カ年計画の骨 子(中間とりまとめ案たたき台)というものです。本日事務局で用意させていただいた 資料ということで、あくまでも、これから本検討会でご議論いただくたたき台という性 格のものとして配付しているものです。1頁めくっていただいて、最初に、全国治験活 性化3カ年計画、これまでの計画における中身の概要と成果を簡単にまとめたものを付 けております。これは、これまで本検討会でもご議論いただいたとおりですので説明を 割愛いたします。3頁目以降からですが、本日の議論の中でご紹介いただいた各調査班 の調査結果の概要をそれぞれ1枚にして4頁以降に付けております。4頁目は、実施体 制に関する調査班の現状調査のまとめ、5頁目が人材班の現状調査、6頁目が治験の啓 発活動に関する現状調査、7頁目が効率化に向けた治験書式、手続き、IT化に関する 現状調査ということで、ただいま各班の方からご紹介いただいた内容をコンパクトに1 枚にしたものですので、追々ご覧いただければと思います。  8頁目ですが、そういう全体の現状調査の中から見えてきている部分の現状と課題で す。これまでの治験活性化計画の推進によって、一般的な疾患においての企業の治験と いう部分においてはだいぶ進行するようになってきたのではないかと。治験を実施して いる医療機関では企業からの受託研究等によりまして治験スタッフ等も充実してきたの ではないだろうか。しかしながら、治験の集積性が低い問題、企業にとって費用が高い、 収益性の高い医療機関、医薬品、医療機器以外については企業のインセンティブが低い という問題とか、治験の技能の問題として、高度な臨床的な研究を実施できる技能定着 の部分で、新規性がなかなか高いものとか難しい治験については治験が進行しにくいよ うな問題があったり、また、その治験の全体のスピードという部分で症例数が少ない疾 患の治験など、集積性が悪いためになかなか進まない。こういう部分を解消していかな いと、新規性が高く、医学・臨床的にも価値のある治験・臨床試験が日本で行われない。 患者の新薬、新機器へのアクセスの低下、日本の医療水準の低下を招くおそれがあるの ではないか。そういう問題意識を感じている部分です。  そこで、今後の目標の方向性ということで9頁以降にその骨子を整理しております。 今日は骨子を出させていただいているということで、この骨子に基づいて、少し大きめ な目標としてこれからの治験活性化という部分がどういう方向に進んでいくべきかとい うことについて先生方から忌憚のないご意見をいただければと思っております。10頁目 ですが、次期治験活性化5カ年計画の目標として次のような考え方があるのではないか。 ここは少し大きめの話として、これまで本検討会でもご指摘いただいている部分のいち ばん上の目標としてどの辺りを整理するかというものを書いております。患者の新規の 治療薬、機器へのアクセス、日本の医療水準の向上という大きな1つの柱があって、そ こには新規性が高く、医学や臨床的にも価値のある治験が円滑に実施できる治験・臨床 試験の全国的な体制の構築。また、その治験に関する技能を集積し、それらを中核とな る拠点のネットワークを形成していく。その治験のネットワークについては、先ほどの 調査班ではあまり実効性が上がっていないというご指摘もありましたが、それを実効性 のあるものにしていくような中核とした拠点のネットワークづくりをやっていかなけれ ばならないのではないか。そして、そういうものが出来上がってくることによって、大 きな目標としては国際的な協働研究への参画率を向上するなど、治験・臨床試験による 日本発のイノベーションを世界に発信していくような少し大きな目標を考えたらどうか ということです。  11頁目以降がもう少し具体的なその目標ということの案です。11頁が、その治験の実 施体制の目標の案ということで、高度な治験・臨床試験を実施できる中核病院を育成し てはどうか。また、その中核病院と共同して治験・臨床試験を実施する拠点病院を指定 していってそれを全国的に配置していってはどうかという2つの大きな目標を立ててい ってはどうか。その中で実際に例として挙げられる項目は、先ほどの各調査班の報告に もありましたが、専門的なスタッフの配置、生物統計、データマネジメント、中央IR B等の機能、その養成プログラムの提供。また、その拠点の中身としては、これも例で すが、教育プログラム、共通の手続き、IT化という問題、ネットワークの核としての 症例集積性の部分、DM、CRCの実働数を確保していったり、中核・拠点における中 央IRBの稼働、実施に係る制度的な問題の整理ということを例示で挙げておりますが、 全体としてはその大きな柱でどうかと。  12頁目ですが、今度は治験関連の人材・養成の目標ということで、治験活性化のため に中核病院、拠点病院では集中的に治験に関する職員の養成機能を持たせて、教育を受 けた治験関連職員を重点的に配置する。これは中核・拠点病院の機能ということです。 そういうようなことにしてはどうかという目標が書いてあります。ここで特に書いてい るのは、その中核病院、拠点病院においてそれぞれ職員向けの養成プログラムを提供し たり、生物統計家が廃止されたような所ではコンサルティングの機能を行ったり、拠点 病院においては治験責任医師、協力医師に対する教育養成。その他、CRC、DM等々、 機能ごとに研修を充実させていく必要があるのだろう。  13頁目ですが、普及啓発、医療関係者参加の目標という部分で、1つ目は医療関係者 の治験参加のインセンティブとしてどのような方策が具体的に可能か。これはいくつか 調査班の報告にも提言されていますが、医学的な成果となるような最新の治験・臨床試 験に参加できるような体制のある中核拠点をつくっていかなければならない。また、そ ういう部分において中核拠点を活用しつつ、学位などが取れるプログラムを整備してい るような教育機関もサポートしていかなければならないかもしれない。あとは、公的研 究費の採択等々の手続きにおいて、治験・臨床試験の実績を評価していったり、研究費 の配分を治験実施者の能力に見合うようなものとしていくような工夫をしていかなけれ ばならないというところを例として挙げております。また、患者の参加インセンティブ として具体的な方策を示すべきではないかというところで、調査班の報告にもあったよ うなデータベースの利用の向上という部分もありますし、そういう情報の入手をしやす い環境を整備していく。また、医療機関と患者さんが納得して参加できるようなコミュ ニケーションを助けるようなものを中核拠点には整備していく。治験に参加した後のい ろいろなフォローアップの情報の体制という部分等についても例として検討すべきでは ないか。  14頁目ですが、治験の実施の効率化と企業の負担軽減の目標ということで、治験契約 の窓口機能の一層の強化と効率化を図る、治験医療機関と企業の業務の明確化を図って いくというところをより進めていく。症例の集積性を高めるなど、モニタリングの効率 を高める努力もどうかということで、最後の3点目の所には、先ほど出てきたCDIS Cのようなインターフェースの統一化、推進等々が書かれております。  15頁は、これまで裸で中核病院とか拠点病院という言葉を使ってきていますが、国と して考える部分としては、国の施策として考えていく上ではニーズが高い医薬品・医療 機器等、特に国内で未承認のものを社会的な要請に応えて早く導入できるようにしなけ ればならない。その上では症例の集積性みたいなものが非常に重要な議論になってくる のですが、円滑にその治験が実施される、拠点をつなぐ人的な物的なネットワークの部 分を形成していくということで、拠点と中核がこういう形で並列に結び付けられるよう なイメージの中での治験のスピードアップと人材・資材の集中した対応はどうか。こう いったところが中核と拠点のイメージということで15頁に整理しております。16頁は、 これまで縷々説明していただいた部分を啓発体制、人材効率化というポイントに置いて 項目列挙したまとめということです。ご参考にしていただければと感じております。こ ういうことで、大体、事務局で整理したたたき台というものを各現状調査班の報告に基 づきましてこのような形で今日は提案をさせていただいております。ご審議のほどよろ しくお願いいたします。 ○楠岡座長 それでは、今までの4つの調査班の調査報告を踏まえて、次期治験活性化 計画の中間とりまとめの方向性につきまして、ただいまご説明いただいた骨子を基に討 議を行いたいと思います。ご意見がある方はどうぞ。 ○荒川構成員 細かいことで恐縮ですが、いまご提示いただいた8頁の治験の現状と課 題(まとめ)の下から3行目で「症例数が少ない疾患の治験」と書いてありますが、症 例数が少ないというのは正しい表現ではないと思います。「対象患者数」と言っていただ いたほうがよいかと思いますので、そのように修正いただけたらと思います。あと、15 頁ですが、拠点化構想について(参考)ということでまとめていただいた図があります。 左の上の図は「政策的に必要なもの」と「未承認」と書いてありますが、これですと未 承認薬問題検討会で検討されているものの医薬品ということに限定されてしまうイメー ジがあるのですが、そういう意図で書かれたわけではないのですか。 ○研究開発振興課課長補佐 政策的に必要な医薬品はいろいろあるわけですが、未承認 薬の検討会で取り扱われているものもその中の例には入ってくるだろうと思いますが、 それだけに限定しているものでは必ずしもないと思います。 ○尾芝構成員 11頁の治験実施体制の目標の所ですが、全体的なこれからの対策として は、今までなかなか進まなかった高度あるいは難しいものを対象にして拠点・中核病院 でやっていこうという、これについては非常にリーズナブルな構想だと思うのです。そ の中で、比較的難易度が高くない治験、あるいは軽症例を対象にしたような治験が十分 に実施できるようになったのは過去の実績としていいことのように思うのですが、ここ で議論されたように、この部分でも効率がまだ十分に上がっていない。費用の配分の問 題とかコストパフォーマンスの部分は解決されていなくて、治験ができるとかそれなり の質があるという従来の観点からだけ見られているのではないかという疑問を感じまし た。ここをこのようにしてしまうと、その部分を積み残して、違うところに行ってしま って、前から問題になっている費用の問題で、それゆえに進まないというところが手薄 になってしまわないかという感じがしたのですが、その辺りはいかがなものでしょうか。 ○研究開発振興課長 比較的難易度が高くないものは必ずしも問題がないと考えている わけではございません。「十分に実施できるようになった」という言葉は少し言いすぎな のかと思っています。もちろん、難易度が高いようなもの以外の所でも、ご指摘のよう に、まだまだ効率化の必要性がありますし、後ろのほうで書いているさまざまな統一化 はそういうことを狙っての話ですから、その辺の書き振りをまた工夫させていただきま す。 ○楠岡座長 いま1点気がついたのですが、拠点病院となっている所は医療機関全般、 要するに診療所も含めたような考え方でとらえたほうがいいのでしょうか。それとも、 いまの段階で診療所はこの拠点とは少し別の考え方で整理していくのか。その辺りはど うなのでしょう。 ○研究開発振興課課長補佐 拠点の病院、医療機関という言い方の考え方については、 今の段階ではまだ十分整理されているものではございませんので、先生方にこういう場 でよく議論していただけると大変助かる部分ではあります。ただ、一方で、この目標の 案の中を読んでいくと、診療所だけではなかなか負い切れない部分もあるのかという感 じは持っております。 ○尾芝構成員 診療所によっては、非常に積極的に治験に取り組んでおられる所もある ので、拠点に関しては必ずしも病院だけに限るということはなく、そこは少し門戸を広 げて考えておいて、どういう役割を担っていただくかによって切り分けていく必要があ ると思います。 ○研究開発振興課長 中核病院につきましては病院であろうと思いますが、拠点につい ては診療所を排除したいというつもりは全くありませんので、ご指摘のように、今の時 点では、診療所でも担えるような部分があれば拠点医療機関というふうに幅広くお考え いただいて、そのイメージなりをここで議論していただいたほうがありがたいなと思っ ております。 ○山本(晴)構成員 中核・拠点病院というイメージと今までの3カ年計画で出た治験 ネットワークとの整合性というか、ある程度整理しないと、実際、体制班の調査では治 験ネットワーク自身もそれほどうまく動いているわけではないという問題も出ています し、今回のこの中核・拠点病院という案については、どちらかというと、病院間ネット ワークを強めて、生活習慣病というか、比較的簡単な治験ではない、少し複雑な治験に も対応できるようにしようという、治験の棲み分けのような印象が強いので、それはそ れで必要だと思います。中核・拠点病院を整備することは非常に必要だと思うのです。 ただ、今までの治験ネットワークをある程度支援していったところで急にその手を引い てしまうと、必ずそちらにまた穴があいてしまうような気がしますので、ある程度段階 的にというか、その棲み分けを容認しつつ、どちらも整備をさらに続けていかないとす べての治験にきちんと対応できる状況にはならないのではないかと思いました。 ○楠岡座長 中野先生の所の検討で、わりと大規模なネットワークと地域を中心にした ネットワークという形で図も出されていますが、この辺りといまの山本構成員の意見と を踏まえて。 ○中野参考人 いまの話を私はどのように受けとったかというと、実際につくられた方 の意図はわからないのですが、この拠点病院ないしは拠点医療機関というのは現在のネ ットワークのものも含めるのだと私は理解したのです。むしろ、そのほうがいいのでは ないかと思います。 ○研究開発振興課課長補佐 その作成した絵ですが、山本構成員からもご指摘がありま したように、もともと、大規模治験ネットワークを含めてこれまでの3カ年計画で推進 してきた部分がありまして、それを土台にして、その中でも特に難しい治験等について、 こういう拠点とか中核の部分を育成していきながら、より全体の質を高めていこうとい うものですので、これを作成した意図としては相矛盾するものをつくっているという意 図では必ずしもございません。 ○山本(精)構成員 体制班の結果からはネットワークではうまくいっていないという 結果であって、そこから拠点病院をつくればいいということは論理の必然としては出て こないので、このとおりやってうまくいくかという保証は全くないような気がするので、 少し飛びすぎではないかと思うのですが、いかがですか。 ○榎本構成員 この拠点病院の件は『薬事日報』等で来年度以降に実施という記事が公 表されていて、いろいろな方に意見を聞いたときに、拠点病院とか中核病院に入れなか ったら治験の依頼が来なくなるのではないかという心配の声が多くありました。折角育 ってきた中小の病院が不安を感じていたり、SMOの施設では、治験が大きい病院に戻 って、そういう所がどんどんやるので自分たちの仕事がなくなってしまうのではないか という懸念が起きていたり、いろいろな所で拠点病院に関する意見が交わされています。 中小病院やSMOを育てながら、リードをしてくださる拠点医療機関や中核病院などの 施設は非常に必要ですが、そういう部分に十分配慮しながら実施して行かないと、折角 育ってきた施設が気持的にすごく萎んでしまう可能性があるのではないでしょうか。そ の辺を少し懸念しています。 ○山本(精)構成員 体制班の結果は、SMOがうまく入ってやっていて、SMOのや り方でやっていくとうまくいくということなので、ネットワークではうまくいかないと いう結果だと私は思っているのです。例えばネットワークで良い例もあったので、引き 続いてそういうことをうまくやっていくかどうかという検証と、SMOではうまくいか なかった難しい疾患に対しては拠点病院というやり方でやったらうまくいくのではない かという案であって、次の3年か何かのときにそれを検証するようなステップがないと、 本当にこれで突っ走っていっていいのかというのは非常に不安な気がします。 ○安田構成員 山本(精)構成員のご意見と同じなのですが、医療機器の立場から言う と、新規のものはそれで結構だと思うのですが、改良を重ねていく医療機器はこの体制 でやられると治験ができなくなるといいますか、頼むことができない。だから、開発が できなくなるほうへ追い込まれてしまうのではないかという懸念を感じます。 ○楠岡座長 その点をもう少し具体的にお話しいただけますか。 ○安田構成員 新規のものでしたら非常にインセンティブもありますので、中核病院や 拠点病院の大きい病院でやっていただくということで行くでしょうけれども、このよう に拠点化しますと、改良度が小さいけれども治験が要るという機器の治験を実施してい ただけるところがどんどん落ちていってしまうところに行き着くのではないかという懸 念です。 ○楠岡座長 ほかにご意見はございますか。 ○中島構成員 まとめの基本に、先ほどご指摘があった11頁の治験の実施体制の目標の いちばん上の所ですが、比較的難易度が高くない治験は十分に実施できるようになった というところの認識があって、拠点とか中核あるいは拠点とそれ以外の医療機関とのネ ットワーキングでうまくいくのではないかという結論になっていると思うのです。疾患 によってはそういう仕組みだけでは治験がうまくできないことは十分あるわけですから、 そういう面への配慮、つまり小規模の医療機関における治験、そこでもさらに現在ある 問題点、例えばスピード、コストやモニター高負担、そういったところの問題点を解決 できるようなことも視野に入れたまとめ方にすべきではないかと思います。 ○伊藤構成員 中島構成員が言われたとおりだと思うのです。現在の治験で一般薬であ るブロックバスター等の治験というのは、たぶん、コストの問題を別にすれば、SMO とか中小の地域の医療機関の方々がある程度のスピードが付いてきて、クオリティも高 くできるようになったということが前提にあるかと思います。今後やっていかなければ いけないのは難病やトランスレーショナルリサーチも含めての研究の治験の拠点化とい うことの議論ではないかと思っておりまして、開発支援体制整備は分けるべきではない かと。そこのところをもう少し明文化して書いておけば誤解が少ないのではないかと思 います。  もう1点は、ここの書き方でミックスアップが多少あるのは、治験ということと臨床 研究とがミックスアップしていて、それがいちばんはっきりするのは、例えば生物統計 家とかDMというのは基本的には治験を依頼する側に必要なのであって実施する側には すぐに必要ではない。だから、ここに必要なDMや生物統計家というのは、少なくとも、 医師主導型の治験をつくっていく中核病院、施設において重要であって、そういう人た ちが育っていかない限りは草の根的な臨床研究や医師主導型の治験は動いていかないと いうことの問題なのだろうと思うので、ここの前文の所を書かないと誤解を受けやすい のではないかと思います。 ○荒川構成員 先ほども山本精一郎構成員からありましたように、従来、治験ネットワ ークがなぜうまくいっていなかったかというところをもう一度踏まえて計画を立てる必 要が確かにあると思います。体制班の中では、そういうネットワークをリードする人材 がいるかどうかとか、あるいはそのネットワークを実施する担当者、医師を含めて、そ の人たちのインセンティブが共通であるか。そういったことがネットワークが機能する かどうかの重要なポイントであるという話もありましたので、こういう拠点あるいは中 核というものを考える上でも、そういうものを活かしていくような、例えば何のために ネットワークをつくるのか、自分たちのインセンティブはこれで維持できるのかどうか、 ということも考慮した上でつくっていかなければいけないのだろうと思うのです。です から、こういうものをつくるのはいいのですが、その辺を反映した体制をやっていかな ければいけない。あまりヘテロな集団はかえってよろしくないと私は思います。 ○武林構成員 実際にこの中を読みますと、もちろん拠点と中核をどうするかという話 もあると思うのですが、実際には人材育成のところをどうするかということが相当大き な部分になっていると思うのです。ここには相当マイルドに書いてありますが、実際に は、現場の中で、例えばCRCとか、関係する部分については相当改善があって、それ もあってSMOを中心としてうまくいく。しかし、いちばん中心になる医師のところの 人材育成といいますか、そこを今回の5年の中でどのようにきちんと位置づけるかとい うことが重要ではないかという気がしております。  そういう意味では、1つは、いま荒川先生の話にもありましたけれども、例えば、そ れは中核という名前は別ですけれども、育てた医師は実際にはそこにずっといるわけで はなくて一般の病院に行くこともありますし診療所に行くこともある。そうしますと、 その人材の流れといいますか、交流ということも当然あるだろう、そういうことも踏ま えて是非書いていただきたいと思います。  それから、この中には学位等のことも書いてありますが、その中で1つ議論になるの は、あまり治験と臨床研究を切り分けると、大体、ほとんどの現場では、治験が特別な ものになってしまうということが医師のインセンティブをむしろ下げますので、臨床研 究を持ち上げるというようなイメージのことを書いていただくことによって医師のイン センティブは確実に変わってくると思うのです。ですから、治験で学位が取れるという よりは、きちんと質の高い臨床研究で学位が取れるという、この中に書き込むかどうか は別にしまして、そういうイメージを持っていただいて、治験や臨床研究を支える全体 に人材をどのように広げていくかという意図で少し書いていただくと、何となく格差が あって、中核病院じゃないと人材がいなくて治験ができない、というイメージではなく なるのではないかと思います。 ○塚本構成員 私は普通の医者でして、治験とかの専門家ではなく、いろいろなことに ついてわかっていないので的外れなことを申し上げるかもしれませんが、「たたき台」の 8頁の問題点というのは非常によくわかるのです。例えば、収益性の高い医薬品以外は 企業のインセンティブは低いと。それでは、今検討されている治験の能率化的なことを いろいろやっていけば、技能を要する研究が高まってくるのかという根本的なところで、 私が素人だからかもしれないのですが、そういうところにこれがうまくつながっていか ないのです。企業が収益性を求めるのは当たり前でありまして、例えばそれ以外の医師 主導型の治験とか、表の右側の難治疾患などについては収益性が低いので医師主導型に なるとか、臨床試験とか医療機器については医師主導型でやる、そういうものについて 厚生労働省がどうサポートをしていくかという視点。CRCなども、私共の病院では、 企業にサポートをされた方が派遣されてきている体制になっている。そういうことでは、 企業の採算にあわないようなものについてはこういうことをいくら能率化しても進まな いのではないかという気がします。今回は薬の治験だけの話ならばそれでいいのですが、 臨床試験とか医師主導型のものをどうサポートしていくかとか、そういうことについて は今回の検討に入っていないのならばよろしいのですが、そういうことが少し抜けてい るのではないかという気がいたします。 ○山本(精)構成員 同じような意見ですが、治験活性化というようにするとどうして も臨床試験の座りが悪くて、なぜ臨床試験が必要なのかというのが読んでもわからない ですよね。結局治験を活性化すればいいのかという話で、この班はその班だから、治験 を活性化するためにはどうすればいいのかということで、臨床試験をすれば皆のインセ ンティブが上がるという話にするのもいいのですが、そうではなくて、例えば10頁の新 規治療薬・機器へのアクセス、日本の医療水準の向上ということが目的なのであれば、 その中では治験も必要だし臨床試験も必要だというようになれば、皆さんの言っている こともそのままここに盛り込める。いやいや、そうではない、治験活性化のためなら治 験を持ってこなければできないのだということでなければ、医療水準の向上や新しいこ とを開発していくためには治験が非常に重要だと。ただ、治験がうまくいかないような 分野もあるから、臨床試験をもう少し力を入れることにする。そうすると人材も育って どちらも進む、という形の絵のほうがスッキリしているというか、目標としては皆が乗 りやすいのではないかと思います。治験活性化の話なら、そうではないほうがいいのか なと。 ○楠岡座長 これは前年度から、作業班のときからもそうですが、ここは治験活性化と なっていますが、前年度は「治験等」となっていて、治験と臨床試験を両方含めるとい うことですし、第1回のときからもその話があって、ここは治験だけではなくて臨床試 験も含めると。今回の各調査班の報告も、臨床試験も視野に入れた中でいろいろな提言 をいただいている形になっています。この拠点中核病院構想といいますか、前回も議論 になった点は治験をターゲットにするのか臨床研究をターゲットにするのかというとこ ろで、その二重構造の中でどのように整合性をとりつつ両方をうまく発展させていくか というところが1つ大事なところです。これは治験と臨床試験を二分化するというもの では決してなくて、当然、臨床試験の中に治験があるわけですが、性格がかなり異なる ところもあるので、これをどうやっていくか。とりあえず、いま出てきているところは 治験をターゲットに挙げているのですが、当然、その治験をやっていく中のいろいろな 問題は臨床試験全般にかかわっている問題なので、これをどのようにうまく取り込んで いくかというところで、それを事務局のほうも非常に苦心されてどうやるかと。ただ、 書いてしまうとどうしても治験が目立ってくるというのは事実であるので、これをどう 本意を示していくかというところは非常に難しいところだと思っています。 ○竹内構成員 いまの楠岡座長のフォローアップというか、今まで出てきた意見をフォ ローアップしたいのです。治験と臨床試験で分けられていますが、現在、すごくいい薬 に対してはどうしても国際同時試験または欧米の試験に入っていかないと、日本の患者 さんになかなか早く薬を提供できないということがあります。そういう試験に日本の医 師が入れない、そのためにはどういうことをしなければいけないかというと、たぶん、 言葉は別ですけれども、中核または拠点病院、そういうような仕組みをつくり、ある程 度、教育をしっかりした上でそれに対応できるような人材を育成しながら、海外と同じ ような治験、向こうではそのまま臨床試験になっていますが、それを一流の雑誌に投稿 するという形になっていますので、これから進んで人材を育成していくという上では、 このような体制をつくることに私は賛成です。 ○山本(晴)構成員 各組織について役割をもっと明確化させるべきだと思うのです。 体制として中核病院をつけることは非常に重要だと思います。なぜかというと、現時点 で、生物統計家とかDMとか、医療職以外の方を置くことができるのは、大学とか、そ ういう他の学部あるいは研究所を持っている病院、医療機関しかないので、はっきり言 って、臨床研究をする人材を抱える所自体が非常に限られていますから、何らかの形で そういう方を擁することができる所、ある程度そういう専門家を集積することができる ような施設を指定してでもつくっていかないと、そしてそこにポストがあることが見え ないと、生物統計家を目指す人もいないと思うのです。現時点で、CROとか、そうい う所にいなくて自主臨床研究にかかわっているだろうと思われる生物統計家をうちの生 物統計家の人たちと数えてみたときに、「たぶん、25人ぐらいしかいないのではないか」 という答えが返ってきました。それは全国で、です。  それに、実際、若手の生物統計家を目指す大学院生が各大学にどんどん入っているか というと、そういう様子も見えない。ですから、放っておいたら、今のままで20〜30 人の生物統計家を全国の臨床研究をしたい施設が取り合うという状況は一生続くわけで す。ですから、こういう所にポストがあるということを明確化していく必要は非常にあ ると思うのです。そういう意味で、臨床試験、臨床研究を積極的にやっていく病院であ って、そこは高度の専門家が集積しているのだということを見せることは非常に必要だ と思います。  あと、医師ですよね。臨床試験というか治験というか、薬剤、医薬品、医療機器開発 に対してある程度の相場感があって、ただ単に国際試験にそのまま鵜の呑みで乗るので はなくて、これはそのまま行けそうか、これは日本ではそういう形でできなさそうかと いう、最終的に日本のマーケットに入ったときにきちんとそれが使えるような状態にな るのかということまで考えられるような臨床医を育てる必要があると思いますので、そ ういう臨床研究の専門家をそろえる場所という意味での中核病院を整備していただきた い。それと治験を実施するサイトとしての病院は違うと思いますので、それについては 違った整備の仕方があるのではないかと思います。 ○中島構成員 今までの議論と少し違うのかもしれませんが、臨床研究を含むか臨床試 験を含むか云々というところの疑念が出るようであれば、1つには、まとめに当たって タイトルをよりわかりやすく変える。昨年度、楠岡先生にやっていただいた調査班のよ うなネーミングにする。あるいは、研究開発振興課が今年度から始められた事業の臨床 研究を含む云々という、そういうようなものをサブタイトルでもいいから付ける。今回 のこのネーミングだと過去の残像のようなものがありますので、思い切って変えてしま う。そういうようなことが1つあるのではないかと思います。それから、まとめという ことで事務局に確認させていただきたいのですが、これは計画の骨子というものと、そ れ以外に調査班の報告書があるわけですが、これとは別にアクションプランというよう な、これには盛り込めないようなものがかなりあると思うのですが、最終的な報告資料 というものはそのように考えてよろしいのでしょうか。 ○研究開発振興課課長補佐 ご指摘いただいた点ですが、今回出しているのは骨子です ので、これから肉を付けていく。肉を付けていく中でアクションプランをつくったほう がいいということであれば、そのような形で事務局のほうでは最終的に案を提示させて いただくようなことも可能かと思います。 ○中島構成員 それで、たぶん、ここに何もかも盛り込めないので二部構成ぐらいのほ うがいいのかなという気もするのです。とはいいながら、調査報告で挙げられている重 要な事項は反映したほうがよいのではないかと思いますし、この調査結果だけではなく て、今までの検討会で議論された中で構成員が別途指摘した事項で、あるいは発言した 事項で重要なもの、こういうものも盛り込むべきではないか。前者の例では、例えば治 験外来の設置のようなもの、後者の事例ではICH-GCPの導入について前回も重要な 点ということでコンセンサスが得られていると思いますので、そういうもので重要なも のはなるべくここに盛り込むようにしてはいかがかなと。それから、拠点とか中核病院 となっていますが、こういうものも含めて数値的な目標、具体的にいくつであるとか、 そういうものも盛り込んでいただいたほうがよろしいのではないか。さらに申し上げる と、ロードマップ・マイルストーンといいますか、5カ年でできるものとできないもの の選別はしなければいけないと思いますが、5年でできるものについても、できるもの によってはロードマップ・マイルストーン、いつまでにどれだけということは極力整理 していただくことが、時間は限られているのですが、実行という面では有用ではないか と思っております。  あと、こういった計画を支えるものとしまして、病院レベルでの医師の不足とか医師 の多忙への対策というのはこれとは全然違う次元で必要ですし、そういうことを報告書 の付記とか備考のような形で盛り込む手当ても必要ではないかとも思っております。 ○一木構成員 今日の報告内容は調査班の結果報告を受けてまとめをつくられているの でそれはそれで良いと思うのですが、今後の5カ年計画の中にということであれば、こ の中で全く触れられていない薬剤師の重要性に触れておく必要を感じます。治験薬を取 り扱う薬剤師、ミキシングをする薬剤師、患者さんと対面(face-to-face)で併用薬の 問題から支持薬の問題まで、すべて患者さんと接する部分は薬剤師の方です。私などは、 たまたま、がん関係が多かったものですから話を聞くことが多いのですが、最近、薬剤 師の方たちも非常に多くの勉強会で多くの新しい癌治療薬の使い方や支持療法を学ばれ ています。しかし、今日のこのまとめの中で薬剤師さんの話が1回も出てきていないの です。ですから、もし可能であれば、いずれ最後にまとめていく中で薬剤師さんの位置 づけも、例えば治験薬・試験薬の投与方法や併用薬をどのように使用、また併用が良い のか悪いのか(併用禁忌等の問題)というのは最後に患者さんに渡すのは薬剤師さんな ので、その辺も含んでおく必要があるのではないかと考えているのです。 ○楠岡座長 話を元に戻して治験と臨床試験との関係のところで、前回の3カ年計画は 創薬産業ビジョンでしたか、の5カ年計画の一部として出てきたような経緯があるので すが、今回は、当然、そことの関連はあると思うのですが、臨床試験が入ってくるとそ ことも付かず離れず的な形になるかと思うのです。産業ビジョンとの関係というのは、 今回はどのような整理になっていくのか、この辺りでもしあれば。 ○研究開発振興課長 今回のこれとは別に産業ビジョンの検討が行われておりますので、 当然、関係が出てくる話だとは思っておりますし、また、その調整は私の隣の経済課、 武田課長のところで産業ビジョンをまとめておりますので調整をしていく必要があると 思っています。それで、先ほどの治験か臨床試験かという話ですが、基本的には、これ は臨床研究を排除するものではありませんし、併せて検討するということで検討してき ていただいていますので入ってくるものと思っております。しかしながら、臨床研究は また治験と違う枠組みで行われている点も多々あります。薬事法に基づく治験とそうい う法的な枠組みがない部分ということで違いがありますので、これについてはまた議論 をもっと深めていく必要があると思っております。そういう意味で、今回の報告書は治 験を進めるというのを1つの大きな目標にしていただきまして、それと関連する部分、 不可欠な部分で臨床研究ということが入ってくるのかなと。純粋に臨床研究についてと いう部分については、これは大きなテーマで、別の機会を設けて議論しないといけない のかなという感じはしております。いずれにしましても、今日、大変多くの多面的な意 見をいただきましたので我々事務局でも検討していきたいと思いますが、1つ誤解のな いように申し上げるのは、大規模治験ネットワークとこれの話で、大規模治験ネットワ ークをもうやめるのかということに近いようなご意見をいただきましたが、決してそう いうつもりはありませんで、あれはあれで必要なものとして続けていく必要があろうか と思っています。ただ、今回のものはその中でも重点的に、比較的難易度が高いと申し ますか、やりにくいようなものをやる体制をつくらなければいけないなということで、 また、この治験の拠点病院はそういう実施するという側面もありますけれども、もう1 つ大きな役目として治験のやり方のモデル的な形を全国にお示しするというモデルとし ての役割、リーダーとしての役割が大きいのではないかと思っております。そういう意 味で、この仕組みがどんな考えで位置づけられるのかということを今日お示ししなかっ たのが少しわかりにくかったのかなと反省しているところなのです。ここだけで全部の 治験をやるということは毛頭考えておりませんが、1つの大きな役割は担っていただく 必要があるだろうなと思っています。そこだけ、誤解のないように説明させていただき ます。 ○楠岡座長 検討会の流れの中では、臨床試験の基盤があって、その上に治験を乗せて いく必要があると。今までは、どちらかというと、治験を中心にやってきたためにいろ いろな弊害が出ているし、人材も育っていない。したがって、この6月からずっとやっ てきた中では各検討班も、治験よりも臨床試験をどう強化するかと。それが、足腰が鍛 えられれば治験というのはそれほど難しくなくできるだろうと。今まで臨床研究をサポ ートするというところが不十分であったというのが1つの問題点である。それに関して、 臨床研究基盤というのは今年から事業が始まっていますが、あれだけでは全部を賄いき れない。ただ、実際の医療現場の人からすると、臨床研究というよりも、まだ治験のほ うが目の前にあるものとして取っ付きやすいところがあるので、その治験と臨床試験の 関係を明らかにしながら将来的には臨床試験にいくのだけれども、その前段階として治 験を何とかしないといけない。でも、それはあくまでも治験だけではなくて臨床試験を 見据えた上での治験の進め方だというのが今までの検討会の総意であったと思うのです。 いまの課長さんのお話だと、何か、その順序が逆転してしまっているみたいです。山本 精一郎構成員がいま手を挙げておられるのは、それは話が違うということをおっしゃり たいのだと思うのですが、そこをもう一度しっかりしておかないと、この検討会が今ま で検討してきたものと方向が変わってしまって、まとめてくるものも非常に曖昧なもの になってしまうというところを危惧するのですが、この点はいかがでしょうか。 ○研究開発振興課長 説明が悪かったのかもしれませんが、将来的といいますか、次の 最終的な目標として臨床研究全体を高めなければいけないというのは当然ありますし、 我々もやっていかなければいけない。まさに、私は楠岡先生と同じことを言ったつもり だったのですが、しかしながら、当面先ずやらなければいけない治験の話があるので、 将来的な臨床研究は全部やる。ただ、そのために必要な目の前の治験を何とかしなけれ ばいけない。治験を進める上で不可欠な臨床研究と申し上げたのは楠岡先生がおっしゃ ったことと同じつもりで申し上げたのですが、そこのところで誤解があったらお詫び申 し上げます。 ○山本(精)構成員 私はもっと前向きで、私は医師主導治験にも臨床試験にも治験に も携わっていますが、5年後にはもっと近づいているはずです。だから、その5年後に もっと近づいている、しかも治験の一翼を担うはずである医師主導治験とかのことを抜 きにしてここで5年後の計画を立てられるわけはなくて、5年後までにはそれも含めた 形の絵を描いて、5年以降にはほとんど同じようにできるというようにいま書いておか ないとまた遅れてしまうということもある。それから、医師主導治験とか臨床試験をも っとやると、治験のほうの問題のオーバークオリティとか当事者組織だというところが もっとクリアにされていくので、医師主導治験とか臨床試験のほうを活性化させると治 験の問題もなくなっていくと思われますので、それは是非一緒に書いていただくという 方向性がいいと思います。 ○楠岡座長 臨床試験というのは特定の医療機関が担ってやるというよりも、臨床試験 の内容はいろいろありますので非常に広い基盤が必要になってくると思うのです。とこ ろが、治験に関しては、効率などのことを考えると広く薄くだと問題があって、いかに そこは集約的なところをやっていくかという二律背反的なところはあるのですが、目的 とするところは最終的に同じような形になると思うのです。それをいかに整合性をとり つつ次の5カ年の間にどこまでいくかということを明確にしていくのがこの骨子のいち ばん大事なところではないかと思うのです。それが、たぶん、この検討会のそれぞれの 構成員の合意するところかと思うのです。 ○小林構成員 今日、事務局側と各先生方のコメントを聞いて治験と臨床試験の話が合 っているのかずれているのかという話ですが、事務局がつくった資料では、11頁の「目 標」などの所で大事なところは治験と臨床試験がすべて併記してありますので、向いて いる方向はみんな一緒だと思います。あと、中島構成員がおっしゃったように、外向き に目立つ所が、その言葉を代表して治験というところが前に出てきている部分があるの で、そこは方針を打ち出すときにも併記するなりサブタイトルを付けるなりというとこ ろでのアピールをすれば解決すると思います。 ○楠岡座長 たぶん、基本のところは同じとしてもメッセージの出し方によって非常に 間違ったメッセージになるといけないということで危惧があるのだと思います。 ○中野参考人 我々がしていることは医療の質を高めるためです。信頼できるエビデン スをつくるために臨床試験もするし、臨床研究もするわけです。だから、いまは治験の 活性化というところに焦点があたっているのですが、これは山で言うと山の登り口が治 験であるというだけのことだと思うのです。それは楠岡先生もそういうようなニュアン スの話をされていると思うのです。我が国の法律は治験のところだけに網をかけました から、日本の場合は治験と臨床試験あるいは臨床研究が分かれているという現状になっ ています。これは日本の悲劇だと思うのです。これは歴史的にそうなってしまったので やむを得ないのですが、我々が目指しているものは皆さん一緒だと思うのです。だから、 本当にいい医療を国民に提供するためには治験というプロセスは避けて通れないのだと 思います。今日は文部科学省の方もいらしているのですが、医学教育の中にもきちんと 治験を含む臨床試験に関する事項を入れていただくことが今後必要だと思います。 ○榎本構成員 文部科学省の方もいらっしゃるので、ご指導の下に、医学部や薬学部お よび医療系学校の教育を充実させて、裾野を広げることが重要と考えています。先ほど 一木構成員が薬剤師ということを言ってくださったのですが、私も薬剤師ですので、薬 学教育の中には治験や臨床試験、医薬品開発という講義がかなりあります。しかし、医 学教育の中では臨床試験に関する教育が非常に少ないそうですし、看護大学や臨床検査 技師の方の学校では全くないと聞いています。今回のアンケートの中にも項目がありま したが、「医学部で臨床試験の教育を受けてきていない」という箇所に偉い先生方が皆さ んマルをしているのが現状です。医療関係者にそのような認識があるので、学生のころ から治験だけではなくて臨床試験の教育を実施していただくと、今後育ってくる医療関 係者がどんどん臨床試験の領域にも参加してくださるのではないでしょうか。是非その 点も踏まえて、学校教育の改革もお願いしたいと思います。 ○荒川構成員 そのフォローになるのですが、遅い、高いという問題に関して言うと、 要は、高いとか効率が悪いというのは専任組織を置いている治験管理室とか臨床試験部 が努力をすればいいことなのです。いちばん進まない、遅いという問題は医師のインセ ンティブだと思っていますので、医師のインセンティブにもっとフォーカスを当ててや っていかないと現場としては進まないなというイメージが非常に強いです。 ○楠岡座長 まだいろいろとご意見はあると思いますが、そろそろ時間となりましたの で本日の討議は以上とさせていただきます。本日いただいた意見を基に事務局でとりま とめて中間報告に盛り込んで次回の検討会にご提示いただきたいと思います。次回は、 今回を含む各回の各論の議論を踏まえて中間とりまとめの骨子を完成させたいと思いま すので、よろしくお願いしたいと思います。最後に、事務局から連絡事項がありました らよろしくお願いいたします。 ○研究開発振興課課長補佐 本日はいろいろな貴重なご意見をいただき、熱気のある討 論をいただきましてありがとうございました。次回の予定ですが、先生方の日程調整を すでにさせていただいておりまして、11月21日火曜日の14時から16時の予定で開催 させていただきたいと思います。場所は厚生労働省7階15会議室です。またこれは先生 方には追って書面でご連絡を差し上げますが、そのような予定でございます。11月の会 議で、本日ご議論いただいた点を含んだ形で中間まとめをアップデートさせていただき まして、改めて残された議論等を整理させていただければと思っております。また、第 7回ですが、12月の予定で調整をさせていただければと思います。本日の議事録につき ましては作成次第先生方にご確認をお願いし、その後、公開をさせていただきますので 併せてよろしくお願いいたします。前回の議事録は各構成員に修正いただいたものを机 上に配付しておりますので、よろしければこれで公開の手続きに入らせていただきたい と思っております。以上でございます。 ○楠岡座長 よろしいでしょうか。それでは、以上をもちまして第5回次期治験活性化 計画策定に係る検討会を終了いたします。お忙しいところをお集まりいただきましてあ りがとうございました。 (照会先)   厚生労働省医政局研究開発振興課    (03)5253−1111(内線 2545)