06/10/19 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 第1回議事録 平成18年度第1回医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録    日時 平成18年10月19日(木)      13:30〜14:50     場所 霞ヶ関東京會舘「シルバースタールーム」 ○事務局 定刻になりましたので、平成18年度第1回医薬品等安全対策部会 安全対策調査会を開催します。  本調査会はご覧のとおり公開で行うこととしていますが、カメラ撮りは議 事に入る前までとさせていただいていますので、ご理解とご協力のほど、よ ろしくお願いします。また、会議を傍聴される方々におきましては、傍聴申 込用紙に記載してありました留意事項を厳守いただきますようお願い申し上 げます。  本日ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまし てありがとうございます。本日の議題に関する参考人を50音順にご紹介しま す。成蹊大学理工学部教授の岩崎先生、納得して医療を選ぶ会の倉田先生、 名古屋大学大学院医学系研究科教授の下方先生、国立がんセンター中央病院 院長の土屋先生、東北大学加齢医学研究所教授の貫和先生、太田綜合病院附 属太田西ノ内病院院長の堀江先生、国立がんセンター東病院院長の吉田先生 です。また後方になりますが、研究報告書の説明・質疑のために、アストラ ゼネカ社の方々にもお越しいただいています。続いて、事務局を紹介します。 医薬食品局から中澤総務課長、伏見安全対策課長、山田安全使用推進室長、 医薬品医療機器総合機構から川原安全管理監、別井安全部長です。事務局の 紹介は以上です。  これより議事に入ります。これ以降の議事については、松本座長よろしく お願いします。 ○松本座長 本日はお忙しい中、先生方には安全対策調査会にご出席いただ きましてありがとうございます。まず事務局から、本日の配布資料の確認を してください。 ○事務局 お手元の資料を確認します。本日の議事次第、座席表、配布資料 一覧、資料No.1のゲフィチニブの承認から現在までの経緯、資料No.2の非 小細胞肺癌患者におけるゲフィチニブ投与及び非投与での急性肺障害・間質 性肺炎の相対リスク及び危険因子を検討するためのコホート内ケースコント ロールスタディ結果報告書、資料No.3−1はパワーポイントの資料ですが、 非小細胞肺癌患者におけるゲフィチニブ投与・非投与でのコホート内ケース コントロールスタディということで、研究の目的、デザイン等に関するA4 の2枚紙、資料No.3−2は、カラー刷りになっているかと思いますが、資 料No.2をご報告いただくためのアストラゼネカ社からの説明資料というこ とで、タイトルのところに黒文字で「解析結果」と書かれているものです。  参考資料No.1は日本肺癌学会からのゲフィチニブ使用に関するガイドラ イン、参考資料No.2はイレッサ等の添付文書、参考資料No.3は非小細胞肺 がんの効能を有する主な抗がん剤の間質性肺炎等の発生頻度一覧という1枚 紙、参考資料No.4は平成18年9月30日現在のグラフで、間質性肺炎等に 係る副作用報告の報告月別の報告件数と死亡件数を示したもの、参考資料No. 5はゲフィチニブ検討会における検討結果に基づく対応について、というア ストラゼネカ社から出していただいている書類、それから、先ほど当日配布 ということで岩崎先生からいただいているコメント資料「ゲフィチニブコホ ート内ケースコントロールスタディへのコメント」という岩崎先生のお名前 が入っているものを配らせていただいています。資料の確認は以上です。 ○松本座長 資料はお手元に揃っていますか。よろしいようでしたら、議題 1の「ゲフィチニブに関する研究報告結果等について」に入ります。まず、 今回の会議の位置づけですが、本日ご報告いただくケースコントロールスタ ディは、ご存じのように平成17年1月から3月にかけて開催された「ゲフィ チニブ検討会」の宿題事項の1つですが、平成17年末に安全対策調査会が設 置されたことから、この調査会で検討することにしました。そういうことか ら、本日の参考人にはゲフィチニブ検討会との連続性を考慮しましてご出席 いただいています。よろしくお願いします。  これまでの経緯について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局 お手元の資料No.1をご覧ください。ゲフィチニブは一般名称で、 販売されている医薬品の名前はイレッサ錠です。資料No.1のいちばん上に ありますように、平成14年7月5日付で承認されています。この医薬品の効 能・効果は参考資料No.2に添付文書集がありますので、随時、また見てい ただければと思いますが、効能・効果としては手術不能または再発非小細胞 肺癌ということで、肺癌の中でも初期の患者ではなくて、手術がもうできな くなってしまった比較的重い患者に投与するような目的で開発されたものと なっています。括弧書きにありますが、この承認時においては間質性肺炎に ついて添付文書で注意喚起を行っているものです。  10月の時点で間質性肺炎等の発症例26例のうち、死亡例が13例あったと いうことで、この時点で緊急安全性情報の発出をするという指示を厚労省か ら出したということです。年末になりますと、このことに関連して第1回の ゲフィチニブ安全性問題検討会を開催しています。ここでの結果を翌日付で、 その結論に対応する通知を発出したということで、(1)、(2)にありますように、 1つ目に癌化学療法に精通した医師により使用することと、2つ目に投与開 始後4週間の入院等を基本とするという通知を出したということです。  翌年の5月に、第2回の検討会を開いています。その3日後に米国FDA がイレッサ錠を認可したという状況があります。平成16年9月にイレッサ錠 を用いましたプロスペクティブ調査の結果が出まして、この結果に基づき使 用上の注意の改訂等が行われています。12月は、英国のアストラゼネカ社か ら、その時点で行っていた延命効果についてのISEL試験に関する結果が 公表されました。その内容は、全体の解析では延命効果がないということ、 東洋人及び非喫煙者では延命効果を示唆するデータが出ている、というよう なものでした。この結果を受けましていろいろ動きが出るわけですが、平成 17年1月に欧州に承認申請をされていたものがありましたが、英国のアスト ラゼネカ社はこの申請を取り下げた、ということがあります。それから、日 本の厚労省においてはその年の1月から3月にかけて、合計4回のゲフィチ ニブ検討会を開催しています。これについては、後ろの別添で少し簡単にご 説明をします。  この紙は、そのときの検討会の検討結果としてまとめたものです。大きく 分けて3つあります。1つ目は、ISEL試験の結果についてです。簡単に 申し上げますと、(1)に書いていますが、全症例を対象として見た場合に、 ゲフィチニブを投与した群とプラセボ投与群とを比較してみて、腫瘍の縮小 効果は有意な効果が認められた。ただ、それに対しまして、主要な評価項目 である生存期間について、統計学的に有意な差が認められなかったというこ とです。(2)として、東洋人を対象としたサブグループの解析において、そ の生存期間の延長に、このゲフィチニブの投与が寄与することが示唆された ということです。  2つ目は、EGFR遺伝子変異の臨床応用についてです。その遺伝子の変 異というものは、ゲフィチニブの有効性を予測し得る因子ではないかという ことです。ただし、次にありますが、まだ標準的な測定方法、評価方法等が 確立していないということもありますし、遺伝子変異が確認されていない例 においても奏効する症例が少数あることから、トータルに考えると、この時 点においては、EGFR遺伝子変異が確認されていない場合においても、そ の結果がゲフィチニブの投与を行わないこととするだけの決定的な根拠とは なり得ないということを確認しています。  3つ目は、ゲフィチニブの使用に関する当面の対応ということで、これも 簡単に申し上げますと、1つ目は使用のガイドラインを医療関係者、患者に 対していろいろな手段を使って周知を図ってくださいということ。2つ目は、 患者の情報をきちんと把握してください、一層努力してくださいということ。 それとともに、ゲフィチニブの有効性に関していろいろと研究等を行ってい ただきたいということと、得られた成果をきちんと皆さんに、情報提供をし てほしいということです。3つ目は、その当時行われていました第III相の試 験を一刻も早く終わるよう、努力してほしいこと。4つ目は、急性肺障害等 の原因の解明や回避方法等についても努力をしていただきまして、積極的に 情報提供をしてくださいということで、平成17年の春ごろにまとめられたと いうことです。  元の頁に戻ります。平成17年3月に、これに関する指示の通知を発出しま した。その約3カ月後の6月に、米国FDAがイレッサに関する措置を公表 したということで、1つ目はイレッサの適用を、イレッサ治療により、現在 ベネフィットを受けている患者、または過去にベネフィットを受けていたと 主治医が認めた患者にその使用を限定すること。2つ目は、イレッサの市場 からの回収については、いまのところ考えていないこと。このような内容に ついて公表されました。平成18年、近々まで飛びますが、本日ご議論いただ くケースコントロールスタディについて、9月27日にアストラゼネカ社が公 表したということです。  それから、ここには書いていませんが、今月10日から添付文書の改訂のお 知らせを医療機関にお知らせし始めていただいています。経緯については以 上です。 ○松本座長 ただいま、ゲフィチニブの承認から現在までの経緯について説 明していただきましたが、何かご質問、ご意見等はありませんか。特段ご意 見等がないようでしたら、次に進みます。  本日はアストラゼネカ社から出席をいただいています。研究報告について、 アストラゼネカ社からの報告をお願いするわけですが、最初に、鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科の嶽崎先生から試験方法についての説明をいただき まして、その後、試験結果についてはアストラゼネカ社の羽田さんからご説 明をいただければと思います。全体で40分ぐらいでお願いします。よろしく お願いします。 ○嶽崎氏 ただいまご紹介いただきました、鹿児島大学の嶽崎です。私たち は今回のこのゲフィチニブの急性肺障害・間質性肺炎の相対リスク及び危険 要因を検討するために、アストラゼネカ社のほうで疫学的な手法でリスクを 評価したいということで、疫学諮問委員会というものをアストラゼネカ社が 作られまして、学術的に独立した立場で今回の研究のデザイン及びその進行 状況及び、その解析結果に関していろいろとアドバイスを行ってまいりまし た。疫学諮問委員会は、アメリカのロスマン先生という疫学の教科書を書か れるほどに非常に疫学で権威のある先生が座長となりまして、アメリカ側か ら2名、日本側から主に肺癌の疫学研究に関わっている疫学の研究者3名の 5名で、ここまでいろいろとアドバイスを行ってまいりました。今日はここ に書いてありますように、今回の「非小細胞肺癌患者におけるゲフィチニブ 投与及び非投与での急性肺障害・間質性肺炎の相対リスク及び危険因子を検 討するためのコホート内ケースコントロールスタディ」という名前の研究に 関して、概要、デザインを簡単に説明します。 (パワーポイント開始)  この研究の目的は言うまでもなく、進行/再発非小細胞肺癌患者における ゲフィチニブ投与による肺障害、ILDと略させていただきますが、ILD 発症の、他の化学療法に対する相対リスクの推定と、ILD発症の危険因子、 どういった因子がILD発症に関係しているか。あとは、ILDの発症率と いうものを推定しようという3つの目的があります。  一般の方もいらっしゃると思いますので、1つ目を簡単に追加説明します。 ゲフィチニブによるILD発症のリスクが高まるということは当然予想され るわけですが、ほかの化学療法によってもILDが起こるのではないだろう かということで、ゲフィチニブを投与することによって、ほかの化学療法に よるILDに対して何倍その危険性が高まるかといったものを推定するため に、相対リスクの推定を行っています。方法は複雑になりますが、コホート 内ケースコントロールスタディというデザインにしました。  まず、コホート研究に関して簡単に説明します。コホートというのは1つ の集団です。この場合は進行/再発非小細胞肺癌の患者というのが集団にな ります。その患者たちで、1回化学療法を受けた患者がその集団になりまし て、その患者をアストラゼネカ社の全国50数カ所の医療機関と協力しまして 登録します。その中には、ここに書いてありますように、ゲフィチニブを投 与された患者とほかの化学療法を受けた患者の2群がありますが、その患者 を12週間にわたって追跡します。何を追跡するかというと、ILDが発症し ないかを追跡するわけです。  ILDが発症するかどうかに関しては、それぞれ最初に登録した時点で患 者にインフォーメーションカードと言ってカードを渡して、こんな症状があ ったら必ず医師に受診するようにとお願いすると同時に、当然主治医もその ことを認知して漏れがないような形で行っています。この12週間の間に不幸 にしてILDを発症した患者が出ますと、主治医がアルゴリズム、1つの決 まったルールに基づいて、発症したということが報告されます。そこで、暫 定ケースという形で登録がされます。その登録がされた時点で、化学療法を 追跡している患者の集団の中でILDを発症していない方を無作為に4例選 びます。それがコントロール、ILD非発症者ということになります。この 時点で患者が1名と、ILDを発症していない方4名が、1つのセットとし て集まるわけです。  そのあと、ケースのほうはあくまで暫定ですので、主治医の先生から集め られた情報を元に独立判定委員会という、ILDが本当に真のILDである かどうかを判定する委員会が東と西に設置されていまして、そこでILDが 確定されます。確定された時点で、そのケースを正式なケースとして認定し て、コントロールもそれに既に選ばれているわけですが、コントロール4例 を一緒にしてILD症例とコントロールを正式にデータセットとして組み込 んでいくわけです。こういった形でコホートという1つの大きな集団の中で、 あとは患者とコントロールという組合せを作っていく意味で、コホート内ケ ースコントロールスタディと呼んでいます。  この研究のデザインのポイントをまとめてみました。名前はコホート内ケ ースコントロールスタディ、英語ではNested case-control studyという方法 になります。この方法の1つのメリットとしては、ゲフィチニブ投与の無作 為化、2回目の化学療法を受ける方の集団を大体漏れなく初めに登録します ので、どの方がゲフィチニブを受けるか受けないかは、研究の方法によらな いわけです。とにかく、すべてを登録するということで、無作為の人に作為 的に投与するかということの影響を排除することができます。そういった意 味で「選択の偏り(Selection bias)」をある程度コントロールできるという ことです。  そのあと、今度はケースコントロールスタディと言って、細かい情報を主 治医から収集します。そのことによって、見せかけのリスクというものを調 整することが、統計学上可能になります。それと同時に、細かい情報を集め ることによって交絡作用、後ほどまた細かいことを説明しますが、そういっ た効果を修飾するような要因を調整することができます。こういった大きな 集団を12週にわたって追跡することによって、コホート集団のILDの発症 率を計算することが可能になります。このコホート内ケースコントロールス タディという方法は、通常は薬の効果を見る場合はRCT、無作為割付試験 を行いますが、今回はILDの発症という副反応を見るということで、デザ インを組む場合、RCTを行うことが倫理上問題ないだろうかということが 私たちの間でも議論になりまして、今回はコホート内ケースコントロールス タディを使うのが適当ではないかという結論になって、このような研究を行 ったわけです。  もう1回先ほどの話をおさらいしますが、コホートで追跡しますとこのよ うに、どれぐらいの数が集まれば統計的に有意な解析ができるかというのは 事前に計算してあります。そうすると大体、5,000名から8,000名で大丈夫で はないだろうかということで始めています。先ほど言いましたように、その 集団がゲフィチニブを投与されている例と、ほかの化学療法を受けている例 があります。そのILDの患者はそれぞれ両方から発症してきます。統計的 に事前に計算したところによると、100名から150名のケースがこれぐらい の登録で出てくることが予想されたわけです。それと同時に先ほど言いまし たように、1対4でこの集団の中から無作為にコントロール、対照群という ものを選んでいます。  コントロール、対照群を選ぶことによって、このように4つの組合せがで きます。ILDを発症した方とコントロール、それぞれゲフィチニブを投与 された群と非投与群。こういった4つの組合せを使うことによって、オッズ 比といって1つのリスクを計算する方法ができます。さらに最初のコホート の集団、5,000名、8,000名の集団を登録していくわけですが、5,000名、8,000 名から詳細な背景因子の情報を正確に集めるのは非常に困難です。ですから、 この中でこういったコントロールとILDの患者に対して、発症した時点で 非常に細かい情報を集める。そのことによって、先ほど申しました交絡要因 といったものを調整するための情報を得ることができるわけです。  オッズ比を簡単に説明します。先ほど、ゲフィチニブが投与された、投与 されない、ILDを発症した、発症しないの4つの組合せができると言いま した。簡単に言いますと数字の掛け算と割り算の組合せで、こういったリス クの計算ができるわけです。通常は、発症率の比を比べることによってリス ク比というのを計算するわけですが、非常に疾患の発生頻度が小さい場合は、 こういったものがオッズ比にかなり近似してくることがいろいろな研究でも 報告されています。それで私たちは今回、このオッズ比を使ったことになり ます。  次に、選択の偏りと交絡です。ゲフィチニブを投与している群と化学療法 を投与している2つの群がコホートの中に出てきますが、この中にILDを 発症させるリスクを増加させる因子をそれぞれ持っている方がいらっしゃる わけです。こういったリスクが重なることによってILDの発症のリスクが 高まるわけですが、このILDを発症させる因子そのもの、例えばわかりや すく言えば、喫煙とか肺障害の肺線維症の既往などがありますと、治療する かどうかという判断に影響を与えます。そういったことで、ゲフィチニブを 投与しているこの集団は喫煙者の割合が少ないとか、そういった偏りが出て きます。その偏りをそのまま単純にリスクで計算してしまうと、リスクを低 く見積もってしまうわけですが、その辺を細かく調整する必要があるという ことで、細かい情報を集めることによって調整ができるということになりま す。  交絡、いわゆる見せかけ。実際はリスクそのものに直接影響しないけれど も、それと一緒に関連した見せかけのリスクがあります。そういったものを 調整することも、今回のこういったデザインではできるようにしています。 ですから見せかけの要因ではなくて、真のこういった要因というものを計算 できるように、統計的に行う方法を使っています。  交互作用ですが、ここはILDの発症率と見てみますと、ILDを発症さ せる特別な因子がない場合にゲフィチニブを投与することによって、発症率 がこれだけ高くなる。さらに、今度はILDそのものを発症させる何か要因 があって、これにゲフィチニブが加わることによってリスクが上がる。これ が同じように上がるというのが理論上は想定されるわけです。それが同じよ うに上がると、ゲフィチニブ投与による発症リスクの増加の程度は同じ。い わゆる、こういった場合を交互作用が無しと申します。  ところが、同じように上がるはずと想定されるものが、場合によっては体 の中の生物学的ないろいろな影響を受けて、実際に想定される発症率より高 くなる場合があります。そういった場合を正の交互作用。実際に予想される ものより高くなってしまう。今度はその逆も起こり得るわけで、ゲフィチニ ブを投与することによって、その分を上乗せされるであろうと予想されたも のより発症率が低くなってしまう場合もあります。このような相互作用も想 定されるわけですが、こういったものも今回の研究では、相互作用がどのよ うな要因に関してあるかないかを計算できるデザインになっています。  今回、このようなデザインの下に研究を進めていって、疫学諮問委員会で も委員の意見として、疫学研究として大規模な研究でしっかりしたデータを 集めて、このように短期間で作り上げるのは非常に困難だと思います。そう いった意味で今回のデザインは、研究そのものは非常にしっかり行われたと 私たちの委員会は最終的に判断しています。簡単ですが以上です。 (パワーポイント終了) ○アストラゼネカ(株) アストラゼネカの羽田と申します。よろしくお願いい たします。引き続きまして本コホート内ケースコントロールスタディの解析 結果について説明させていただきます。本日の説明内容としましては、本試 験計画作成の経緯を簡単にまとめております。その次にコホート内ケースコ ントロールスタディの試験結果を説明させていただいて、最後にまとめとい うことで締めさせていただきたいと思います。 (パワーポイント開始)  まず試験計画作成の経緯です。先ほどイレッサ承認からの経緯がありまし たが、まず2002年10月15日に緊急安全性情報が発出されております。そ の後、アストラゼネカとしては、ゲフィチニブと因果関係が否定できないI LD発症例のレトロスペクティブな詳細調査を開発モニターを使って実施し ております。それが2002年11月から2003年2月にかけてです。それらの 情報は弊社が組織させていただいた専門家会議という形で、第1回から第4 回までの検討をしていただき、この結果に関しては2003年3月に報告させて いただいておりますが、その中でILD発症例のレトロスペクティブな調査 の結果、いくつかの危険因子が示唆されてきておりました。  この専門家会議の検討は、ILD発症例での検討でしたので、ILD非発 症例に関するプロスペクティブな検討が必要だということで、その後さらに 別の調査をさせていただいております。それがここに示したイレッサ錠250 プロスペクティブ調査(特別調査)という形で、この調査でILDの発現率 は5.8%という結果が得られております。しかしこの調査自体はゲフィチニブ を投与された患者からだけの情報でしたので、さらに、ゲフィチニブを投与 されていない患者でのリスク等も詳細に検討する必要があるということで、 今回のコホート内ケースコントロールスタディを実施するに至っております。  先ほど嶽崎先生から説明していただきましたように、本研究の目的は、非 小細胞肺癌患者でのILD発症率の推定です。それに関しましては、コホート 調査の中から結果を導いております。さらにゲフィチニブ投与群と非投与群、 つまり化学療法投与例でのILDの相対リスクと、ILD発症にかかわる危 険因子を検討するということで、本コホート内ケースコントロールスタディ を実施させていただきました。  実際のコホート内ケースコントロールスタディの実施期間は、2003年11 月から2005年11月まで25カ月の登録期間で、2006年2月に追跡調査を終 了しております。  本研究の試験組織は通常の臨床試験の組織に加えて、先ほど嶽崎先生から 話がありましたように独立判定委員会というのを組織しております。これは 試験の組織から独立した委員で腫瘍の専門家、呼吸器の専門家、さらに、I LDに関しては画像の評価が非常に重要だということで放射線画像診断の専 門家で組織させていただきました。また独立判定委員会では、どのような治 療が行われたか、どのような施設でILDが発症したかということに関して は、ブラインド化をさせていただいて可能な限りバイアスを除いております。 さらに疫学諮問委員会というのを組織させていただいて、試験を科学的にス ーパーバイズしていただいたという経緯があります。  次にコホート内ケースコントロールスタディの試験結果です。こちらに示 したものが解析対象集団です。合計で3,159例の症例が登録されております が、本試験ではコホートでの登録は、何度でも登録できますので、合計で4,423 件の登録がありました。その中でゲフィチニブ投与例は1,872件で約42%、 化学療法例では2,551件でした。確定ケースとして、こちらはILD発症例 ですが、ゲフィチニブ例で79例、化学療法で43例です。さらに選ばれたコ ントロール例はゲフィチニブ例で252例、化学療法で322例という結果でし た。このゲフィチニブ投与群のコントロール例ですが、コホートでのゲフィ チニブ投与例が42%で、コントロール例でのゲフィチニブ投与例が43%とい うことで、こちらのほうは、コホートからのランダムなサンプリングで、比 較的計画どおりにコントロールが選ばれているということを示唆するものだ と考えております。  こちらはコホートにおける患者背景の分布を示した表です。コホートにお いては情報をたくさん集めることが非常に困難でしたので、ここに示した性 別、年齢、組織型、パフォーマンスステータス(PS)の4つの項目に関し て収集しております。この中で特徴的なのは、ゲフィチニブでは女性に多く 投与されていること、腺癌の患者でよく投与されていること、さらにPS2 以上の患者で、化学療法に比べて若干多めに投与されているという傾向です。 このようにコホートにおける治療法間で、かなり大きな不均衡が存在してい るという結果でした。  こちらはコントロール例についての患者背景で、こちらに関してはいろい ろな情報が集められております。その中で大きな違いが認められた因子は喫 煙歴の有無です。ゲフィチニブに関しては喫煙歴のない患者に比較的多く投 与されているという結果です。  こちらの表もコントロールでの患者背景です。しかしここに示した項目に 関しては、独立判定委員会の画像の専門家により、治療前の既存肺の状態を 判定したものです。この中で特徴的だったのは、既存の間質性肺炎を有して いる患者では非常にゲフィチニブ投与例が少ないという結果でした。  この表は担当医から報告された暫定ケースを、独立判定委員会で評価した 際の最終的な結果です。ゲフィチニブ例、化学療法例ともに約80%の患者が、 暫定ケースから確定ケースということで評価をされて、最終的に合計122例 の確定ケースが本試験の解析の中に供されております。  続いてコホートの結果です。ILDの発症率についての結果です。ゲフィ チニブ例では1,482例中59例でILDの粗累積発症率は4%、これに対して 化学療法例では2.1%でした。全体のセカンドライン以後の患者までのILD の発症率は、今回は3%という結果が得られました。しかしこれらは治療法 間の偏りを調整していない状態での結果です。ここに示した結果は先ほどの 累積発症率と違って、コホートにおける追跡期間を考慮に入れた週当たりの ILD発症率です。ゲフィチニブの添付文書には4週間の入院、またはそれ に準じる管理ということがありますので、4週ごとに週当たりの粗発症率を 評価しました。それによると投与開始から28日、つまり4週目までの週当た りの粗発症率は、化学療法群に比べてゲフィチニブ群で非常に高いという結 果が得られました。その後、4週以後12週までは化学療法群とゲフィチニブ 群で、ほぼ同程度の発症率を示したというところです。  続いてケースコントロールスタディの結果です。ILDの相対リスクです。 これは未調整の結果ですが、粗オッズ比はここに示した数字で計算できます。 未調整の粗オッズ比は今回は2.35という結果が得られました。  これはILDの危険因子の調整オッズ比です。モデル選択の結果、選択さ れた因子を示しております。これらの因子がモデル解析の因子として選択さ れて、モデル解析に含まれております。その結果、治療法、つまりゲフィチ ニブか化学療法かということで調整したオッズ比は、3.23という結果が得ら れました。さらにその他の危険因子としては年齢やPS、喫煙歴などのリス ク因子が今回選択されてきたという状況です。  その中で、治療法とこれらの因子の間には交互作用が存在しませんでした。 つまりゲフィチニブ投与はこれらの因子の有無にかかわらず、化学療法に比 べてILD発症のリスクが約3.23倍あるという結果が今回得られてきており ます。ただ一部、既存の間質性肺炎あるいは正常肺占有率、喫煙歴の間では 交互作用が認められております。  ロジスティックモデル解析結果の要約です。化学療法に対するゲフィチニ ブのオッズ比は調整した場合で3.23、調整前で2.35という結果でした。この 差は交絡因子による影響と考えております。さらにゲフィチニブ、化学療法 にかかわらず、ILD発症リスク増加に関与する危険因子としては今回、喫 煙歴やパフォーマンス・ステータス、既存肺の状態、正常肺占有率などが示 されてきております。  その他として治療特異的な危険因子、つまり効果修飾因子(Effect modifier)は今回は認められませんでした。よって、患者背景に関係なく、 化学療法薬を投与する場合に比べて、ゲフィチニブを投与する場合はILD の発症リスクは約3.2倍あるという結果です。  先ほど時期を区切って発症率を示しましたが、ロジスティックモデル解析 に関しても同様に、投与開始後28日以内のデータを用いて行いました。4週 間のデータのみを用いてモデルを再構築し再検討しました。その結果、4週 までのオッズ比は3.80と、全期間の3.23に比べて高いものでした。4週以 後12週まで同じモデルを使って4週以後12週までの結果は2.51ということ でした。つまり化学療法に対するゲフィチニブのILDのリスクの増加は、 主に治療開始後4週間に起きているということが、このモデル解析の結果で も確認できました。  次はILD発症例におけるILDによる死亡率の結果です。ILDケース 122例において、ゲフィチニブ投与例では79例にILDが発症していますが、 そのうち25例が亡くなっており、そのILDによる死亡率は31.6%でした。 化学療法のほうは43例中12例で死亡率が27.9%でした。ほぼ30%のILD による死亡率でした。こちらもロジスティックモデル解析を行って調整オッ ズ比を求めたところ、1.05ということで2つの治療法間に大きな差は存在し ないという結果が得られました。  今回のコホート内ケースコントロールスタディの中でゲフィチニブ投与例 に関しては詳細な情報を得ております。ただ、化学療法例に関しては重篤な 有害事象を収集していませんので、今回はゲフィチニブ投与例に関する重篤 な有害事象の結果です。延べ1,886例のゲフィチニブ投与例です。重篤な有 害事象は10.5%、重篤な有害事象による投与中止は6.5%、死亡に至る重篤 な有害事象は2.0%でした。治療関連死ということで、ゲフィチニブによると 評価された死亡は1.6%の発現率でした。  まとめとして、今回、ILD粗累積発症率はこのセカンドラインの非小細 胞肺癌患者の中で、3.0%という結果が得られました。ゲフィチニブ投与例で は4.0%、化学療法例では2.1%でした。治療法間の調整オッズ比は3.23でし た。投与開始後の最初の4週間の調整オッズ比は、12週間の調整オッズ比よ りも高くて3.80%という結果でした。治療特異的な、治療を修飾するような 危険因子は今回は見い出せませんでした。ILDによる死亡率はほぼ類似し ており、ゲフィチニブでも化学療法でも約30%です。ゲフィチニブ投与によ る治療関連死は1.6%という結果が得られました。 (パワーポイント終了) ○松本座長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に対して質 問等ございませんか。 ○吉田参考人 スタディのデザインがよく理解できなかったのですが、この イベントというのは、初回治療の化学療法かイレッサかどちらかを選択して、 その初回の化学療法の間に起こったことだけということですか。 ○アセトラゼネカ(株) 今回、まずベースは化学療法、ファーストラインの治 療を受けた患者で、それ以後セカンドライン、サードライン、フォースライ ン、いずれの場合でも登録できるという状況です。治療が変わるごとに再登 録していただいているという形でやっています。 ○吉田参考人 そうするとイレッサの患者も化学療法の患者も、結局、クロ スオーバーしていることになるのですか。 ○アストラゼネカ(株) そういう場合もあります。 ○吉田参考人 例えば私がイレッサを受けたとして、化学療法をやればもう 1回登録するわけでしょう。 ○アストラゼネカ(株) はい、そうです。 ○吉田参考人 そうすると、イベントがどちらによるかはどうやって判断す るのですか。 ○アストラゼネカ(株) 治療が変わるごとに再登録ですので、その期間中にイ ベントが起こればそのときの治療法を。 ○吉田参考人 例えば化学療法を受けていて、遅発性の線維症が起こったと いうときに、私がイレッサを飲んでいればイレッサのイベントとして登録さ れるのですか。 ○アストラゼネカ(株) そうです。 ○吉田参考人 なんかよくわからないな。 ○池田委員 それで発症は、期限内に起こっているということは非常に特徴 的だというか、ちょっとわかりづらいのではないかと思いますね。 ○アストラゼネカ(株) 先ほど申しましたロジスティック回帰モデルの段階で、 前治療が何であるかという要因も考慮しております。 ○吉田参考人 調整しているわけですか。 ○アストラゼネカ(株) はい、調整しております。 ○松本座長 よろしいですか。ほかにありますか。 ○貫和参考人 5、6頁でゲフィチニブ、化学療法。これは一応、重喫煙、 線維症の背景があるということで避けられてはいます。そういうことが前面 に出ているのだと思いますが、この喫煙歴なしだけで分けた理由はどういう ことなのでしょうか。いわゆる喫煙指数で、大体400とか500以下でしたら あまり影響はないと思うのですが、この辺がゲフィチニブ側と化学療法側と の大きな差になって、起こりにくい集団を選んでいる可能性があるのではな いかと思います。 ○アストラゼネカ(株) 喫煙歴有無は、喫煙指数というのは考慮しておらず、 過去に4週以上喫煙したかどうかということだけで分けております。ですか ら当然、非喫煙者にゲフィチニブの投与が多い。未調整の場合はそのまま解 析すると、ゲフィチニブに起こりにくいような方向に偏った結果をもたらし ます。 ○アストラゼネカ(株) その結果が未調整のオッズ比2.3に出ていて、それを 調整することで調整オッズ比のほうが3.23倍ということになってきているの かなと考えております。 ○松本座長 よろしいですか。ほかにありませんか。 ○堀江参考人 いま報告いただいたのはILDのリスクということですが、 関連して、これらの症例に対しての効果についての情報は別にお持ちになっ ているのですか。 ○アストラゼネカ(株) 今回の調査は純粋に安全性のほうをフォーカスしてい ましたので、効果に関してはこちらの症例からは得られておりません。 ○下方参考人 資料の5頁に解析対象集団というのがあります。ケ−スに対 してコントロールは1対4と伺っていたのですが、ここのコントロールの数 字を見ると1対4にはなっていません。これはどういうことなのでしょうか。 ○アセトラゼネカ(株) コントロールに選ばれたときに、再度コントロールと して登録していいかどうかについて、患者から同意をもらっております。そ ういう形で同意を得られなかった場合は、コントロールを選べないというこ とで、withdrawしたりしていますので、正確に1対4の数字にはなっていま せん。今回、暫定ケースに対してコントロールを選んでおります。実際は暫 定ケースより確定ケースのほうが少ないのですが、暫定ケースとして選ばれ ても確定ケースにならなかったケースに対するコントロールも、今回コント ロールとして評価しています。それは解析の中で、マッチングしたコントロ ールと、マッチングしないコントロールで、同じような結果が出るというこ とを検討した上で、評価に入れています。 ○松本座長 他にございませんか。よろしいようでしたら、アストラゼネカ 社の皆さんご苦労さまでした。元の席にお戻りください。  これから本報告結果について、ご議論をいただきます。まず、研究の試験 方法についてですが、岩崎先生から何かコメントはございませんか。 ○岩崎参考人 はい、成蹊大学の岩崎と申します、よろしくお願いします。 私は統計学の立場から、今回のスタディのデザインと、結果をリビューさせ ていただいて、意見を述べたいと思います。  資料の2つ目の7枚あるものをご覧ください。 ☆スライド 今回見まして、このスタディデザインに関して確認したいこと がいくつかありますので、それを先にお話をしたいと思います。まずコホー トの構成ですが、今回のコホートは患者全体の一部であろうということで、 コホートが実際の患者集団、治療対象集団になっていますが、この忠実な縮 図となっているのであろうかということが第1点です。したがって、ここで 得られた結果がどの程度一般化できるかという重要な問題があるので、ここ をまず確認させていただきたいと思います。  第2点目はコントロールの選択です。ケースに対して、コントロール4例 ということで選択されたわけですが、その手順に関してランダマイズという 話をしたと思うのですが、マッチングがされていたのかを確認したいと思い ます。例えば、ケースが喫煙者であれば、コントロールも喫煙者を選んだの かどうかという点です。  3点目は、「コントロールはコントロールか」と書いてあるのですが、コン トロールとして選択された症例というのは非発症例ですが、実はその症例が、 時間を追って発症するかもしれないのではないかということを考えて、そう いったことはなかった、すなわちコントロールがケースではないのかを確認 したいと思います。この3点を確認させていただきたいと思いました。 ☆スライド 「おおむね」と書いたのは、それが確認されれば「概ね」は消 してもいいかと思うのですが、それが確認された段階で、妥当なデザインで はなかったかと書いています。解析結果に関しても、ここにはありませんが、 厚労省を通じて他の情報も得ていまして、他の観点からの検討もなされてい るということで、妥当なものではないかと考えています。  いくつか数字が出てきているのですが、結果の解釈で重要な点は、調整し たオッズ比と、調整していない粗オッズ比と2つ出たと思います。調整オッ ズ比は背景因子の偏りを調整したもので、したがって、ある患者がいて、そ の患者にゲフィチニブを投与するか、あるいはそうでないかということをや った場合のリスクであるという感じです。  したがって、現時点でゲフィチニブはある種の危険な因子、例えば先ほど 言った喫煙、そういったものを回避する形で投与されていることもあります ので、仮に今後そういった危険因子が回避されることが続けば、もしかした ら粗オッズ比が現実を表しているのかとも思います。ですから、この結果を どう解釈するかは2種類あって、調整しないと、ゲフィチニブについては有 利な感じがあるのですが、常にそういった危険因子を回避した結果であると 考えればそうかなと思います。そうではなくて、きちんと出すと調整しなく てはいけないということです。 ☆スライド いろいろと数字が出てきているのですが、これからの議論に補 足したいと思ってこういったものを出しました。オッズ比に関してですが、 ちょっと聞き慣れない言葉だと思います。四分表を作ってみたのですが、今 回の場合は122例のケースがあって、その中でゲフィチニブ、ゲ群が79、そ うでないものは43とありました。それに対するコントロール、非発症例をと ったら、こういった関係になっているということです。これは縦に見なくて はいけません。化学療法群とゲ群と比を取ると、この場合はa/bになりま すが、1.84になります。したがって、こちらのほうが発症が多いということ です。  逆にこちらの発症しなかった例で見ると、化群に比べてゲ群のほうが少な いということで、こういった割り算の世界で、これの比を取ったものがオッ ズ比というわけです。数学というより算数の世界で、式は簡単なのですが、 これをどう解釈するかは非常に難しいのです。  本当は何がしたいかというと、群をきちんと分けて、こちらの群が果たし て発症したか、しなかったかということを見るのが、いちばんわかりやすい わけです。ところが、先ほどありましたように、これは倫理的に難しいとい うことで、これを横に見てはいけなくて、縦に見ないといけないものです。  ところが、仮にこれを横に見た場合に、こちらの発症しなかった群分の発 症した群となりますと、a/cですから、0.31となります。こちらのでb/ dを見ると、0.13です。これの比を取ってみると、全く同じになるというこ とで、したがって本当は横に研究したいのですが、これはできないというこ とで、仮にこれができたときの計算をしたものと、ここでやっているように ケースとコントロールに分けて計算したものを比べてみると、実は一致する ということで、こういった便利な指標がオッズ比というわけです。 ☆スライド 粗オッズ比が2.35だったわけです。これが先ほどの結果です。 ところが、こちらの群はもともとが1,872例あったわけで、その中の79例で す。化学療法群は2,551例あった中の43例ということですから、これが言っ てみれば発症した比率だと思います。こちらは4.2%、こちらが1.7%ですか ら、こちらが多いわけです。これとこれの比を取ると2.5です。2.5というの はリスク比です。相対リスクと書いてあるのですが、これになります。です から、これがわかりやすい指標だと思います。とにかく、ゲフィチニブ群で 発症したものが4.2%、化学療法群では1.7%ですから、こちらのほうが2.5 倍多いです。これはわかりやすいと思います。この値と、先ほどのオッズ比 がほぼ同じになっているということが、先ほどの説明でもありました。です から、そういった形で判断すればいいと思います。 ☆スライド なぜ調整が必要かということですが、理想的には臨床試験をし て、治療群への被験者の割付けをランダムに行うのです。そうすると、既知 および未知の交絡因子、いろいろなものがあると思うのですが、これの影響 を排除できます。背景因子が群ごとにバランスします。これが望ましいので すが、今回そういった研究はできません。そこで観察研究に頼ります。その 場合には、治療群への被験者の割付けは医師がやるので、患者を見て割り付 けます。したがって「任意」と書いてあるのですが、そういう意味です。  ですから、例えば治療群ごとに患者背景が異なるのは当たり前です。いち ばんわかりやすいのは性別です。したがって、背景因子のインバランスとい うのは不可避的に生じます。これが結果、解釈を歪めることになると思いま す。  そういった背景因子が効果にも影響を及ぼすわけです。例えば男性のほう が有害事象の発生頻度が高いというのであれば、割付けによって有害事象の 発生頻度が変わってきます。これでは結果の解釈が難しいのではないかとい うことで、我々は割付けが背景因子で異なる影響を排除したいわけです。こ れを統計的に、1つのモデルを使ってそういったことをやろうと思うのです が、これがロジスティック回帰です。 ☆スライド 最後のスライドは、例えば群を表す変数Z、0が化学療法群で、 1がゲフィチニブ群だとします。それ以外にいろいろな因子があって、これ に影響を及ぼすと。これを適切に選択されているというのが、今回のスタデ ィだと思います。例えば性別であったり、喫煙歴であったり、PSであった り、いろいろなものがあると思います。  こういったものを考慮した上で我々が何を知りたいかというと、発症率で す。つまり間質性肺炎とか、そういった重篤な副作用が出る確率を推定した い。そうであるならば、このpに対してXでモデルを作ればいいではないか と思うのですが、pというのは0と1の間にあるというのは決まっています。 ですから、こういったものに対して、例えば足し算でずっと足すと、これが 0を下回ったり、1を超えたりして、非常に具合が悪いということで、通常 はオッズ比、オッズは1−p/p、そしてそれの対数を取って、ロジット変 換と言いますが、こういったものに対してこのモデルをしてやります。  そうすると、例えばZが0群のときの発症率をp0として、Zが1のとき の発症率をp1とすると、どこが違うかというと、Zが0か1かですから、 ここにaがあるかないかですので、このaというのが、化学療法群とゲフィ チニブ群の効果の違いを表すパラメーターになるわけです。一体これは何か というと、これが対数オッズ比であって、指数をとったものが調整オッズ比 というわけですので、ここを見ていると。これがからくりになっています。 ですから、このaというものを、つまりX1からXpという、いろいろ影響を 表すようなものを、影響を排除した上での値であるという意味で、調整オッ ズ比と言われています。これが統計的な背景です。以上です。 (スライド終了) ○松本座長 大変難しいのですが、結論的には、この研究報告のプロトコー ルには問題がないと解釈してよろしいでしょうか。 ○岩崎参考人 3点の確認事項を言いましたので、そこだけ確認させていた だいて、それが取れれば、「概ね」を取っていただいて、妥当であると思いま す。 ○松本座長 ということは、出てきた結果についてもある程度信頼性が置け るということですね。この問題について、他にご質問はありませんか。とい うことで、この試験方法についてはよろしいですか。 ○安全対策課長 確認事項がありますので、もし会社の方で回答できればお 願いします。 ○松本座長 いかがですか、アストラゼネカ社から、先ほどのご質問に対す るお答えをしていただけますか。 ○アストラゼネカ(株) 確認事項に関してお答えします。今回、コホートは日 本で肺がんの治療を行っている患者の多い施設を上から順に選ばせていただ いて、GCP下で試験を実施できる施設を選択しています。そういう意味で、 この患者群をきっちりと反映しているかと思います。  さらに、先ほども申しましたように、コホートの中でゲフィチニブ群は42%、 コントロールに関しても約43%と、ランダムにきっちりと選ばれてきている ということで、きっちりと対象を反映しているかと考えています。 ○アストラゼネカ(株) いま申しました50施設のうち、10施設のみをランダ ムにサンプルにして、その10施設については、患者がコホートに入ったか入 らないかをモニターしています。そして、基本は全例がコホートに登録なの ですが、実際にはコホート登録に漏れた患者があります。その記録が残って いて、10施設の平均で約10%がコホートに登録されておりませんでした。い ちばん漏れの多い施設は26%で、少ないところでは全例登録が達成しており ました。  全体で10%の漏れがありますが、これについては年齢と性別のみを調べて おりますが、性別については10%は、ほぼ男女半々ぐらいでした。年齢につ いてはバラつきがありまして、はっきりしたことは申し上げられません。以 上が一般化可能性についての回答です。  次にケースに対するコントロールの選択手順です。担当医のほうからIL Dではないかという患者が発見されると、登録センターに連絡がいきます。 それは暫定ケースとして登録センターに登録されます。そうすると、登録セ ンターからランダムにコントロールが4例選ばれます。コントロールの選択 対象は、ILDが発症した時点においてコホートに登録がなされている患者 で、その中からランダムに選択します。選ばれたコントロール候補について、 登録センターから施設に連絡がいきます。そうすると、担当医のほうでコン トロール候補に同意を得る手順に入ります。もし同意が得られなければ、次 のコントロールの候補に移ります。そのようにしてケース1例に対してコン トロール4例を選ぶという手順になっておりました。 ○吉田参考人 年齢とか、性別とか、喫煙歴は全く考慮されないのですか。 ○アストラゼネカ(株) 次の、ケースのマッチングがなされたかという問題で すが、時間のみでマッチングをしています。これは計画時にいろいろと議論 がありました。年齢、性別について、普通はマッチングを行うのですが、す べきではないかとか、いろいろ議論がありましたが、我々は結局マッチング ファクターは用いませんでした。  と言いますのは、マッチングに年齢、性別等の要因を用いると、その要因 について相対リスクが推定できないという問題が生じます。我々はイレッサ を投与される患者が、どういう背景因子を持っていると、どういうリスクが あるかを把握したかったために、年齢や喫煙というものが、もしリスクファ クターであった場合、その患者がどのようなリスクを持つか評価できないと いうことになります。そういったデメリットのほうが大きいのではないかと 思いまして、マッチングファクターを用いませんでした。  最後の確認事項ですが、コントロールとして選択された症例で、ILDを 発症した症例はなかったのかということです。これはありました。しかし、 いま手元に資料がありませんので、具体的に何例あったかはわかりませんが、 数例ありました。 ○岩崎参考人 わかりました、ありがとうございました。最初のコホートに 関しては、たいていの臨床試験はそうなっていますので、問題はないと思い ます。マッチングに関しては、する、しないはデザインの問題ですので、と りあえず確認したということです。3番目は、それがどういう影響があるの かは、いま急にはわからないので、少し検討させていただきますが、先ほど のように、発症した時点でコントロールをとったということだったので、そ の後の経過がどうだったのかを確認したかったわけです。誠に申し訳なかっ たのですが、一般名が途中で間違っていました。すみませんでした。 ○松本座長 3番目のということは、結果にはあまり影響しないと考えてよ ろしいですか。 ○岩崎参考人 どのぐらいやったかにもよると思うのですが、基本的には結 論を歪めるほどに影響があるとは思いません。発症したとしても、ここにあ るような比率でゲフィチニブ群と、化学療法群のほうになっていると期待さ れる、データを見ないとわからないのですが、たぶんそうなっていると思い ますので、したがって大きく結論を歪めることにはならないと思います。 ○松本座長 この点に関して、何かご質問、ご意見等はございませんか。 ○下方参考人 岩崎先生からご指摘のあった確認事項の最初のコホートの構 成は大事だと思います。症例を集積する場合に、施設当たりの症例数が多い 施設、すなわち化学療法に慣れた施設で登録していただくことが大事だと思 います。 結果報告書に、全国の40施設ぐらいがあげられていますけれども、 いずれも肺がんの化学療法を熱心にやっているところなので、施設当たりの 症例数は、それぞれかなりの数だと思います。そうしたバックグラウンドが データのバラつきを少なくすることにつながるので、ご指摘は非常に重要と 思います。 ○松本座長 他にございませんか。そうなりますと、最終的にこの試験方法 については、どのように考えたらよろしいでしょうか。多少は問題はありま すが、結果について大きく影響するほどではないと考えてよろしいでしょう か。そのように解釈してよろしいでしょうか。他の参考人の先生方はご意見 ありませんでしょうか。 (全員了承) ○松本座長 それではそういうことにさせていただきます。 ○安全対策課長 先ほど岩崎先生のスライドの中で、厚生労働省のほうから、 解析結果については他の観点からの検討もなされていると伺っているという お話がありましたが、このことについては、具体的には会社のほうで、今回 の解析結果について、最終的なロジスティックモデルの適合度について、そ の適合性を判定するソフトを使って、適合性を確認しているということがあ りました。そのことを岩崎先生からおっしゃっていただいたということです。 補足をさせていただきました。 ○松本座長 つづきまして、間質性肺炎の発症リスクに関して、ゲフィチニ ブ投与群のその他の化学療法群に対する調整オッズ比が、先ほど3.23であっ たという結果について、どのように考えればよいのか、ご意見をいただきた いと思います。特に、これまでの肺がん治療の現場でのご経験を踏まえて、 ご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。現在、実際に行わ れている治療そのものは、比較的適正に行われていると判断してよろしいわ けでしょうか。実際に治療を行われている先生方のご意見を伺えればと思い ます。土屋先生、何かご意見はございませんか。 ○土屋参考人 いま現在どうかということですが、確かに先ほどから述べら れているように、危険因子という概念がすでに浸透しておりますので、先ほ ど調整で解釈するか、粗で見るかという話がありましたが、現場では粗の値 が、それよりもさらに用心深くなっているという印象です。 ○松本座長 貫和先生もよろしいですか。 ○貫和参考人 いまの議論は参考資料No.3を見てということでしょうか。 それとも、先ほどのアストラゼネカ社の報告の中でということでしょうか。 座長のご質問の元になるデータは、どれをおっしゃっているのか。 ○松本座長 現在の段階で、調整オッズ比が3.23となっていますが、粗オッ ズ比でいくと2.36です。これと比較してみて、これが現時点になるかわかり ませんが、現時点で実際上行われているがん治療というのは、かなり症例を 絞って行っていることによって、リスクがかなり抑えられているように解釈 していいかどうかということを含めて、ご意見をいただければと思っていま す。 ○貫和参考人 その面に関しては、呼吸器というか、肺がんを専門とする医 師の間ではリスクが十分に理解されておりますので、この程度になっている と思われます。  ただ、先ほどの解析にもありましたように、4週までの比はなお高い。現 在4週までは観察ということになっておりますが、これは添付文書等で少し 強調していただきたいところだと思います。 ○松本座長 下方先生、いまのような感じでよろしいでしょうか、堀江先生 も。 ○堀江参考人 当初に比べると、私たちは呼吸器内科医として、特にその辺 の注意事項等については、かなり徹底されていると思っています。イレッサ を選択するまでに、いろいろと対応をして、その上で患者の状態を十分に見 ながら、かつ副作用等についても十分な理解をしながら、外科あるいは放射 線科等と症例を検討して、それを踏まえて使うという傾向がはっきりとして きています。ただ、お示しいただいたデータのように、確かに他剤に比べる と高い頻度で起こっているという現実はあるわけですので、この辺のところ は、再度皆さんの認識を深めていただくという注意は必要と思いますが、現 場の感触としては、過去における経験を踏まえた成果が現れ、活かされてい るのではないかと感じております。 ○松本座長 吉田先生、一言いただけますか。 ○吉田参考人 皆さんに追加することはないのですが、患者側の理解も相当 進んできましたので、使うことは危険であることを説明した場合でも理解が 得やすいということで、社会全体がきちんとした方向に向かっているような 気がいたします。 ○松本座長 倉田先生、何かご意見はございますか。 ○倉田参考人 いま患者の理解が随分得られるようになったというお話を伺 ったのですが、イレッサを使いたいと思う患者の中には、いろいろな病院を いくつも経て、最後にこの薬しか残っていないというような方もいると思い ます。患者といっても十人十色で、いろいろな考え方をお持ちですから、イ レッサを使いたい一心で、正確な情報ではなく、情報を隠したり、歪曲して、 医療者に報告するというようなこともあり得ると思うのですが、医療者の皆 さんはこの辺りはご苦労なさっていると思いますが、いかがでしょうか。 ○松本座長 いかがでしょうか、そういうご経験はございますか。 ○土屋参考人 データのない話で申し訳ないのですが、当初、これが売り出 されたときに、かなり期待が大きかったので、私どもの外来がパンクするの ではないかということで、パンフレットを用意したのです。1日に取り扱え る患者はこのぐらいだというような指針を出して準備をしていたのですが、 実はパンクをしなかったのです。ところが、おそらく売れた量は大変に売れ ました。先ほど貫和先生が言われた、名立たる病院での調査ということがあ りましたが、おそらく名立たる病院以外でも、当初は随分出たのではないか と思います。  ということは、私どもが想像したのは、私どもの外来があまり混乱しない で済んだのは、これがかなり多くの施設で処方された。名立たる施設だけに 集まっていると、いま言われたような用心をかなり当初からしたのだと思う のですが、ご用心なさらないところで、かなり投与されたのではないかと、 当時私どもは推測しました。従来の抗がん剤ではないですけれども、そうい うものに慣れていらっしゃらない施設で使われるのは、大変に危険ではない かという懸念は、現在ではかなり払拭されたのではないかと考えています。 ○松本座長 倉田先生、よろしいですか。 ○倉田参考人 近頃ではセカンドオピニオンをとるときに、必すデータを持 ってくるようになっていますが、この条件と同じような事が守られていれば、 患者情報は十分に得られるのではないかと思いますが、最近はそれもきちん となされているわけですね。 ○土屋参考人 はい。 ○倉田参考人 ありがとうございました。 ○松本座長 いまいろいろとご意見をいただきましたが、他の化学療法剤と ゲフィチニブを比べると、副作用全体から見た場合にどうなのでしょうか、 特にゲフィチニブが多いとか、そういうことは言えるわけでしょうか。この ことに関しては資料が付け加えられているようなのですが、この説明は事務 局からお願いできますか。 ○事務局 参考資料No.3をご覧ください。いちばん上にゲフィチニブにつ いてまとめ、その下に非小細胞肺がんの効能を持っている他の抗がん剤につ いてまとめています。それぞれ、いま現在添付文書の中に記載されている副 作用について、主なものをピックアップして記しているものですので、添付 文書からまとめてあるものだとご理解いただければと思います。  主な副作用としては、今回問題になっている間質性肺炎を最初の真ん中に 記載しています。その次には、肝機能異常、重篤な下痢、白血球減少、最後 に治療関連死というものを記しています。  左から2番目のコラムをご覧いただくと、ほとんどのものが添付文書の重 大な副作用欄に記載されているものを、ここに抜き出しているということで、 間質性肺炎の欄を縦にざっと見ていただくと、ゲフィチニブについては、重 大な副作用欄には1〜10%ということと、承認以降に行われたプロスペクテ ィブスタディでは5.8%で、今回のコントロールスタディにおいては約4%と いう数字が出ています。それに対して、これまでの抗がん剤については、い ちばん多いもので1.4%であって、ここからも、今回の結果が確認できます。  それから、肝機能異常ですが、この下に「頻度不明」と書いているのは、 重大な副作用欄に肝機能異常という記載があるが、頻度はよくわからないと いう状況になっているということです。  重篤な下痢ということで、最後の塩酸イリノテカン、これは特徴的なもの で、44.3%という数字が出ています。他のところはこの数字がありません。  一方、他の化学療法剤に特徴的である骨髄抑制における白血球減少という ことでまとめています。他剤のところを見ていただくと、2桁の数字が並ん でいるという状況です。ゲフィチニブについては表の下の注1をご覧いただ くと、これは重大な副作用欄ではなくて、その他の副作用欄として、1%未 満の頻度が報告されているものです。  治療関連死に関する情報は、あるものとないものがありますが、今回のケ ースコントロールスタディでは、1.6%という数字が示されています。一方で、 他の化学療法剤においていくつか数字は挙がっておりますが、程度としては ほぼ同等な数字が並んでいるということになっていまして、他剤との比較も 少ししやすいような形で、この一覧表をまとめました。 ○松本座長 ただいまのものを含めて、実際に肺がん治療に当たられている 先生方で、このことに関して何かご意見はございませんか。特にご意見がな いようでしたら、一通り意見は出揃ったと思いますので、まとめてみますと、 1つには、従来から他の化学療法に比べてゲフィチニブを投与した場合のほ うが、間質性肺炎を発症しやすいことは分かっていたわけなのですが、今回 改めて臨床研究の結果として、それが数値的なものとして認められたと考え られることです。  2つ目としては、したがって、今回の研究結果によって、新たにゲフィチ ニブに係る重大な安全性情報がもたらされたわけではありませんので、ゲフ ィチニブについて引き続き従来どおりの安全対策を継続することでよいとい うことです。  3つ目には、今回の研究結果については、医療関係者等に対して適切に情 報を提供すべきであるということになろうかと思いますが、このようなまと めでよろしいでしょうか。  事務局はどうですか。 ○安全対策課長 どうもありがとうございます。いま松本座長がおっしゃっ た3番目の、今回の結果を関係者に情報提供するということですが、冒頭の 事務局の資料説明でも少し触れましたが、参考資料No.2にイレッサの添付 文書がありますが、3頁の左側のコラムの(3)にアンダーラインが付され ていますが、そこに今回の試験結果について記載なされておりまして、これ については先日からこの形で医療関係者に情報提供が行われていると承知し ています。 ○松本座長 3番目についてはこのような対応をしたということですが、こ の程度でよろしいですか。もしご異論がなければ、このようなまとめとさせ ていただきます。 (全員了承) ○松本座長 議題1についてはこれで終わります。続いて、その他の議題と して、事務局から何かありますか。 ○事務局 特にございません。 ○松本座長 全体を通じてご発言はございませんか。 ○倉田参考人 アストラゼネカ社にお願いがあるのですが、私ども一般市民 がイレッサという薬のことを知ろうと思うと、ホームページを見せていただ くわけなのですが、今回のイレッサの薬剤疫学試験は、トップページのwhat's newのところに出ていて、すぐに見ることができたのですが、そこから逆に たどっていくと「報道関係の皆様」というサイトの中に入っていたと思いま す。今後、またウェブの改訂をなさるときに、患者とか、一般の皆様という サイトの中にも、これを入れていただきたいと思います。というのは、どう しても知っていなければならないのは患者ですから。  それから、以前ホームページを見ていたら、イレッサの薬の使い方とか、 これから使う方にというような、とてもわかりやすいものができていたと思 うのですが、いま同じものを探そうとすると、なかなか見つけられないので す。「エルねっと」の中に入っていって、大見出しになっているイレッサを開 ける。そうすれば以前と同じ情報は得られるのですが、もう少し見やすく工 夫していただけるとありがたいと思います。 ○松本座長 他にありませんか。 ○貫和参考人 今回、こうしてアストラゼネカ社が前向きのコホートスタデ ィで、しっかりした結果を出していただいたことは非常に評価できると思い ます。是非この結果を類似薬の承認のときに活かしていただきたいというの が希望です。ほぼ同じような効果を持った薬剤がもう承認前に入っています。 治療関連死からすると他剤と大きな差はないのですが、アストラゼネカのデ ータにあったように、一度、間質性肺炎が起こると、約3分の1が亡くなら れるという、非常に重篤な結果が出てくる点が、類似薬剤でも認識される必 要があるのではないかという点です。  もう1点は、呼吸器の範囲は、非常に辛い経験から、かなり問題点が認識 されてきましたが、他の臓器のがんに使用される場合に、呼吸器の副作用の 発見が遅れることがないようにするにはどうしたらいいのかというのが、次 の課題になるのではないかと思います。よろしくお願いします。 ○安全対策課長 他の薬の審査への反映ということですので、先生からそう いうご指摘があったということで、審査の部門のほうに伝えたいと思ってい ます。 ○松本座長 他にございませんか。 ○池田委員 今日、このアストラゼネカ社のケースコントロールスタディの 結果を知らせていただいたのですが、使用されている多くの医師は肺癌学会 あるいは呼吸器学会に属しているのではないかと思うのですが、これは当然 企業の責任として、市販後にこういう調査を依頼する。主に、そういう学会 と協力してやっていると思うのですが、例えばこのガイドラインが2005年に 出ているわけですが、呼吸器学会や肺癌学会は、こういう結果をすぐに会員 に知らせて、周知徹底させるという仕組みになっているのだと思うのですが、 先生方がお手本となって、是非他の領域の学会にも、そういうシステムにな っていることをお知らせいただけたらと思うのです。  実は私が所属している学会では、比較的そういう領域は、学会のアクティ ビティとして非常に大事であるという認識に立っているのです。学会は学術 会議ばかりやって、研究成果を発表して、意見を交換しているのですが、こ ういう社会的な側面も非常に大事だと思うので、是非、先生方のリーダーシ ップで、末端の呼吸器あるいは肺がんの先生方にまでお知らせいただけると ありがたいと思います。 ○松本座長 他にご発言はございませんか。ないようでしたら、本日の調査 会を閉会します。本日は長い間ありがとうございました。 (照会先) 医薬食品局安全対策課 丈達 (内線2748) TEL03-5253-1111(代表)