06/10/19 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第22回議事録 第22回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成18年10月19日(木)17:00〜 2 厚生労働省共用第8会議室(6階) 3 出席者  〔委員〕   公益代表  西村委員(部会長)、石岡委員、岩村委員、金城委員、那須委員   労働者代表 佐藤委員、高松委員、吉田氏(寺田委員代理)、長谷川委員、真島委員   使用者代表 下永吉委員、平山委員、松井委員、横山委員、 4 議題 (1)労働福祉事業の見直し (2)石綿による健康被害の救済に係る給付の請求、支給決定状況 (3)石綿による健康被害の救済に係る事業主負担 (4)労災報告の適正化に関する懇談会報告書 (5)船員保険の見直し検討状況 (6)その他 5 議事 ○部会長  ただいまから第22回労災保険部会を開催いたします。初めに、委員の変更がありま したのでご紹介いたします。労働者側委員として、須賀恭孝委員に代わりまして日本労 働組合総連合会総合労働局長の長谷川裕子さんです。 ○長谷川委員  長谷川です。よろしくお願いします。 ○部会長  使用者側委員として、紀陸孝委員に代わりまして社団法人日本経済団体連合会労政第 二本部長の松井博志さんです。 ○松井委員  松井です。よろしくお願いいたします。 ○部会長  使用者側委員として、杏宏一委員に代わりまして三井造船株式会社顧問の筧公一郎さ んが就任されておりますが、今日はご欠席です。また、寺田委員から代理者の出席の申 出がありました。寺田委員の代理としてJEC総研労働政策局長の吉田和道さんです。 ○吉田氏(寺田委員代理)  吉田です。 ○部会長  事務局のほうで人事異動がありました。一言ずつ自己紹介をお願いいたします。 ○労災補償部長  7月24日付で労災補償部長を拝命いたしました石井です。どうぞよろしくお願いい たします。 ○労災管理課長  9月1日付で労災管理課長を拝命いたしました勝田です。よろしくお願いいたします。 ○主任中央労災補償監察官  労災監察官になりました野中と申します。どうぞよろしくお願いします。 ○部会長  それでは、議事に入りたいと思います。本日は5つの議題が予定されております。1 つ目の議題の労働福祉事業の見直しについて事務局から説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  労働福祉事業の見直しについてですが、資料1の「労働福祉事業の見直しについて」 という見直し検討会の報告書に沿ってご説明申し上げます。この検討会を行ったときの 基本的な考え方が1頁目にあります。今回の見直しは昨年の閣議決定、さらに今年の通 常国会で成立した行革推進法におきまして、労働福祉事業について廃止も含めて徹底的 な見直しを行う、とされたことを受けまして、事業主団体の皆さんの参画を得て事業の 廃止を含めて徹底した精査を行い、個別の事業の見直し・整理及び労働福祉事業の再編 案の策定を行っていただいたものです。  2頁目に平成18年度の労働福祉事業の規模が出てきますが、総額で1,111億円、そ れぞれの分類はご覧いただいているとおりです。3頁目ですが、今年の3月末日以降、 労働福祉事業見直し検討会及びワーキングチームを開催し、そこで個別の事業の精査を していただきました。8月7日に見直し案のご議論をいただき、その後、調整を経まし て今日お示しているような検討結果がまとまったものです。  4頁から精査の結果が出ていますが、その精査にあたっての方針、考え方を11頁に まとめておりますので、先に11頁をご覧ください。11頁は第1回の見直し検討会ワー キングチームで議論の方針として出たものです。1の(1)ですが、見直しの作業とし て、必要性が薄くなったものは廃止・整理をしてしまおうということです。2つ目、3 つ目で、既存の事業を分類しまして、(2)の労災保険給付を補完し労災保険給付事業と 一体的に運営される事業については、事業の効率化を図るための見直しを行うとされま した。また、(3)の労働災害の防止、労働環境の改善等の保険給付の抑制に資する事業 については、3,500万円未満の小規模事業については原則として廃止または整理を行い、 それ以上のものについては、アウトカム目標を設定して見直しを行う。また、5年前と 比較して見直しが行われていないものについては見直すという整理になっています。さ らに、(4)ですが、時限事業についても前倒しをして廃止を検討するという方針で検討 いただいたところです。  4頁に戻りますが、このような観点から見直し・精査をした結果として、新たな事業 を1の(1)から(3)までで位置づけております。(1)は社会復帰の促進のために必 要な事業、(2)は遺族の援護を図るために必要な事業ということで、現在の労災保険法 の29条1号、2号の事業にあたりますが、これについては見直しの方針との関連でい えば労災保険給付を補完し一体的に運営される事業にあたります。(3)ですが、これは 保険給付事業の健全な運営のために必要な事業であり、具体的には括弧書にありますよ うに、労災保険給付の抑制に資する災害防止あるいは職場環境の改善等の事業です。こ うして新たな事業としてこの3つを行うこととし、労働福祉事業という名称も全体とし て変更することを検討することにしております。  そして、2以下、それぞれ個別の事業について検討していただいた結果、全事業は現 在76ありますが、このうちの4割にあたる31事業について早期に廃止または整理とい うことにしております。個々の事業については後ほど説明いたします。  最初に、具体的な廃止・整理の状況ですが、5頁にあるように、1つは廃止・整理が 6事業、削減・効率化の見直しが9事業、小規模であるために廃止・整理を行うものが 12事業です。時限事業については、必要性を十分に勘案して行うということで、これの 対象になっているものは4事業あり、また、これらの対象になっていない31事業以外 の45事業についても低コスト、効率的な運営に努めるということで、事業内容が類似 している等で統合可能なものについては統合を行う等の検討をすることとしております。 そして、各事業につきましてPDCAサイクルということで、平成17年の実績評価、 平成18年の政策目標の設定ということを今後引き続き毎年予算ごとに精査するという ことで考えております。  6頁の4は、独立行政法人について、それぞれの中期計画に基づき合理化・効率化を 図るとともに、災害防止団体については閣議決定に基づきまして各団体ごとに決められ た措置を講じ、より事業の削減・効率化を図ることにしております。また、システムの 関係の経費につきましては最適化計画等を通じて経費の削減を図ることとしております。 いまほど、PDCAサイクルの話を申し上げましたが、5番にあるとおり、このような 見直しは今回限りということではなく継続的に実施して、今回の労働福祉事業の見直し 検討会を制度化して徹底的な精査を継続的に実施していくことを考えております。  7頁以降に個別の事業の見直し検討結果を整理しております。7頁の最初に出ている 6事業について廃止・整理の方向です。この中で代表的なものの1つとして(4)の勤 労者財産形成促進事業につきましては、勤労者に対して財形貯蓄を支援するための給付 金を支払う事業主に対して助成金を支払う事業ですが、経過措置を除きまして廃止する こととしております。次の頁の事業の削減・効率化のための見直しですが、9事業につ いて見直しを行うことにしております。このうち、(1)の補装具及び社会復帰の保養事 業ですが、車椅子や義肢・義足、こういった補装具の支給については今後とも引き続き 実施していくことにしておりますし、予算的にも拡大することとなります。一方で、社 会復帰保養事業というのは、療養生活から社会復帰をするまでの際に温泉等で保養して いただくこととしていた温泉保養の事業でして、この部分についてはこの機会に廃止す ることとしております。また、(2)の労災年金等相談体制等の整備事業につきましては、 各種の相談事業がいろいろありますので効率性の観点から見直しを行うこととしており ます。(3)(4)の中小企業の対策につきましては、統合等を含めて削減・効率化のた めの見直しを行っていくことを考えております。  続きまして、9頁は、小規模事業の廃止・整理です。実は、この部分は調査研究等が 多くて、いちばん下の行にもあるように、一つひとつの規模は小さいのですが、重要な テーマを抱えているものもありますので、それぞれの必要性や重要性をよく見た上で統 合して効率化を図るという観点からの検討を併せて行うということで整理していただく こととしております。  10頁は、時限事業の関係です。これについては、事業の必要性を十分に勘案して実施 期間を判断することとなっております。中には、対象者がいなくなれば廃止するという ものもありますし、いずれにいたしましても、事業の必要性を十分勘案して実施期間に ついて判断した上で、早期に廃止できるものについて廃止するということです。5番の 目標設定の見直しにつきましては、すべての事業を通じてユーザー指標あるいは満足度 ということだけでは十分ではないと考えていまして、できる限り適切な目標設定を行う よう成果目標を掲げて事業の効率化を進めていきたいと考えております。  それから、見直し検討会において引き続き検討とされているものが2点ほどあります。 10頁の6ですが、1つは未払賃金の立替払事業であり、もう1つは中小企業の福祉事業 です。これについては引き続き議論を行い、関係者の意見を踏まえて検討ということで、 本日この場でご検討、ご意見をいただきたいと思っております。未払賃金の立替事業に つきましては創設が昭和51年でした。これは昭和48年のオイルショックを契機として 倒産、あるいは賃金不払いの企業が数多く発生した状況に鑑みて、不払賃金の救済制度 の創設を図られたい、という当時の日本商工会議所からの要請もあって制度化されたも のであり、この見直しの検討会の中でも、事業の必要性は認められるものの、新たな労 働福祉事業の中の位置づけとしてはどうかという議論があったということです。  もう1つの中小企業福祉事業ですが、これについては中小企業の労働条件の改善等を 目的として都道府県に対して補助を行っている事業です。この検討会の段階におきまし ては交付先である都道府県への説明等が必要であったことから、このような形で引き続 き検討という位置づけをしております。今日の労災部会におきまして、労働者側の委員 の皆さんもいらっしゃる中でご議論いただければと思っております。若干駆け足でした が、説明は以上です。 ○部会長  ただいまの説明につきまして、ご意見あるいはご質問等があれば、どうぞ出していた だきたいと思います。 ○佐藤委員  これは本文全文なのでしょうか。 ○労災管理課長  全文です。 ○佐藤委員  それでは、11頁の(2)のいちばん下ですが、各界の意見を聴くというのは、今日の ような審議会において聴くという意味合いであるのか、あるいは、労働界の意見を特別 に聴くための機会を持つのか、その辺りはどういうことでしょうか。 ○労災管理課長  今回のケースにつきましては、労災保険について費用負担者である使用者の皆さんに 集まってもらって意見をお聴きした上で、労災保険部会で三者構成の場において皆さん の意見をお伺いしたいということであります。 ○佐藤委員  では、要望を申し上げます。私としては、いちばん関心が深いのは10頁、その他の 6の(1)の未払賃金立替払事業。景気の回復が言われておりますけれども、業種によ っては必ずしもそうでないという、そのことによって未払賃金、要するに建設業法とも かかわるのですが、賃金不払いという問題が結構発生していますね。そういうことから 言いますと、関係者の意見を踏まえつつ検討するということですから、これは存続の方 向で検討してもらいたいという意見を申し上げておきたいと思います。 ○長谷川委員  10頁のその他で、本日関係者の意見を聴きたいということでこの2点が出されていま すが、未払賃金立替払制度について私どもの考え方を申し述べたいと思います。ちょう ど7年ぐらい前ですか、1999年ころは本当に倒産が増加して、倒産の話がない日はない というぐらい各構成組織は倒産の話ばかりで、どうやって労働債権を確保するかという ことが毎日のように議論された時期がありました。その当時、並行して法務省でも倒産 法制の法律の改正について検討がされていまして、労働債権の確保などもその当時検討 されたのがついこの間のことだったわけです。若干、最近は景気がよくて、倒産が落ち 着いているわけですが、そういう経験があったということを踏まえると、未払賃金立替 払制度は大変重要な制度だと私は考えております。これは労側が全員一致している話で あります。賃金とか退職金が支払われるかどうかというのは、労働者にとっては死活問 題なわけです。雇用労働者というのは、そもそも賃金で暮らしているわけですから、そ れ以外に何もないわけで、これが確保されていないということになれば非常に重大な問 題になるわけです。倒産のときというのは、よく見るとわかるのですが、ある日急に倒 産がくるわけではないのです。倒産する何カ月前からか、例えば1カ月は丸々賃金を支 払われたけれども次の月は半分だったりとか、遅れたりとか、そういう状態もいろいろ なケースがあるわけです。  労働者にとって賃金の問題というのは、自分が仕事をする上でも、毎月賃金が支払わ れるのだろうか、本当にきちんと支払われるのだろうか、ということは非常に重要なこ とだと思うのです。いまも言ったように、あるときに賃金が支払われないことも支払わ れたこともあってドーンと倒産がくるケースも私たちはよく見てきたわけですけれども、 倒産にあったときというのは、賃金しかないわけですから、明日からの生活をするその ものがないわけですよね。そのために、倒産した場合は、自分がいままでにやったこと もない仕事をやったり、何とかして働かなければいけないし、生活の糧を稼がなければ いけないということもあって無理な労働をしたりとか、労働時間が長くなったりとか、 加重な労働もやむを得なくやらざるを得ないと思うのです。結果として、何かいろいろ なことも起きてくるわけですが、労働者を安心して働かせるという観点から、この未払 賃金の立替払制度は労働災害の防止ということにつながっているのではないかと考えて おります。この制度は、いままでに非常に活用されてきた制度でありますし、労働者の 労働災害の防止という観点からも引き続き継続させることが重要ではないかと思ってお ります。 ○松井委員  いま長谷川委員がおっしゃられたところについて、事業そのものの必要性について経 営側として必ずしも否定をするものではございません。さはさりながら、労災保険給付 の抑制に資するかどうか等を基準として、今回この労働福祉事業を新たに位置づけるこ とになりましたので、この仕組みの中にずっと位置づけるのかどうかというのは疑念を 持たざるを得ないと思っております。そういう意味合いで、ずっと継続だということで はなくて、是非、本来の給付としてこれが正しいものかどうかの議論を深めていっても らいたいと思っています。 ○長谷川委員  本来、使用者が支払わなければいけない賃金が未払いの状態に置かれているわけです から、どうしていくのか、どういう制度がいいのか、というのは検討すればよろしいの ではないかと思います。でも、いまこの制度を取りやめるということになればそれに代 わるものは何もないわけですから、私は、現時点ではこれは存続させなければならない のではないかと思っています。 ○松井委員  もう1つ、使用者側の責任でやるべきものなのかどうかという「そもそも論」も本来 議論しなければいけないと思っておりますし、もしかすると労働組合福祉というやり方 もあり得ると思うのです。今はとりあえず使用者側の責任ということになっております けれども、いわゆる企業年金を対象とする支払補償制度そのものがいいのかどうかとい うことを常に私どもの団体としても言っておりますので、必ずしもその点については合 意はできないと思っています。ただ、事業そのものの必要性をすべて否定しているわけ ではない点だけは理解してもらいたいと思います。この制度をここに位置づけるかどう かということについては、引き続き検討を深めていってもらいたいと思っています。 ○長谷川委員  未払賃金立替制度というものが、先ほど事務局から説明もありましたように、制度の 設置の必要性とかが言われて、こういう形で存続してきたのだと思うのです。その制度 を見直すとなれば、どういう制度がふさわしいのか、それは検討すればいいと思ってお ります。ただ、現時点で廃止することには無理があると思っております。そもそも、賃 金を払わなければいけない、払っていない、というのは誰の責任かというのはあります よね。 ○金城委員  ちょっと伺いたいのですが、長谷川委員がおっしゃるように、この事業は大変重要だ ということはわかります。ただ、労災保険に位置づけるのが妥当かどうかというご意見 もよくわかるわけです。この制度は絶対に必要で、置くときに議論をしてここに置かれ たということからすると、ここでやっておかなければいけない事業なのかなとも思うの ですが、論議的に見て、どこかほかにきちっとうまく入るような形での位置づけという のは駄目なのでしょうか。その点をご質問したいと思います。 ○労災管理課長  事務局からお答えします。確かに、理論的にいえば、別立て制度にすることはあり得 るかもしれません。ただ、実は、この制度は景気の循環によって非常に波が激しくて、 いちばん出たときは400億円を超えるお金が出てございます。最近は随分少なくなった とはいえ、それでも100億円代の後半が現在出ておりますが、まず、そのボリュームの 問題がございます。もっと景気がよくなればもっと減る話ですし、万一、アジア通貨危 機と同じようなことがもう一度あればもっと激しいことが起こるかもしれません。実は、 今年度も昨年度と比べて少し増えているのではないかという心配をしている状況ではあ ります。そういう制度ですので、別立てにするとすれば、それなりのお金の取り方と、 お金をどうやって持つかということも含めて、すぐに新しい制度というのは少し難しい かなというのが事務局としての感想というか、正直なところではございます。 ○佐藤委員  長谷川委員が代表して言っていますから同じことなのですが、そもそも、この厚生労 働省の予算そのものは特会によって成り立っているという認識に立っているのですね。 基本的には厚生労働省の存在意義という、労働者の福祉という言葉はやめるそうですが、 労働条件の向上、改善にもあるわけで、今の段階で他の制度を用意されて論議をするの であれば議論の対象になると思いますけれども、使用者側の皆さんがおっしゃっている こともわからないことはないが、これがこの延長線上の議論で廃止だ、縮小だというこ とに結論が行くことについては困る。はっきり言えば、反対だと言わざるを得ないと思 います。 ○部会長  そのほか、ご意見ございませんか。下のほうの中小企業福祉事業についてはいかがで しょうか。 ○松井委員  事務局から伺っている範囲では金額も1億円程度と聞いております。全体の見直しに ついても、今回の方針を立てたとしても、項目数は減っていますが金額という形ではあ まり抑制にはなっていないと思いますので、是非、可能な範囲で廃止の方向で検討して もらえればと思います。 ○石岡委員  労働側の意見もあるでしょうが、この事業を、国からの補助金の交付先である都道府 県は熱心にやってこられたと思うのですが、現状ではどういう判断、あるいはどういう 意見を都道府県として持っておられるのか。もし都道府県のほうも総合判断をしてこの 補助金の廃止はやむなしということであれば廃止をしてもいいのではないかと思います。 都道府県のご意見はどうでしょうか。 ○労災管理課長  実は、検討会の段階では都道府県のご意見を伺えておりませんでしたが、その後、都 道府県の関係者の皆さんに廃止もあり得るというお話をしましたところ、基本的にはご 了解をいただいているというように理解しております。 ○部会長  いまの点について、労働側からは特にないですか。 ○長谷川委員  特にないです。 ○部会長  それでは、中小企業福祉事業のほうは廃止という方向で、前者の未払賃金の立替払事 業の在り方につきましては本日の議論を踏まえまして、次回の労災保険部会までに事務 局のほうで調整をしていただくということでいかがでしょうか。 (異議なし) ○部会長  それでは、そういうことで次の議題に移りたいと思います。次は石綿に係る補償・救 済の状況について事務局から説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長  資料2、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の請求決定状況です。すでにご 案内のとおり、労災保険請求では時効という問題がありまして、請求をせずに時効を完 成させてしまったという方々がたくさんおられるということでこの新法になったわけで す。3月27日に施行されまして、7月までに請求件数が1,314件ありました。このう ち、支給決定したものが357件です。その内訳は、特別遺族年金が310件、一時金が 47件です。この年金と一時金というのは、当時、生計維持関係があった両親がおられて、 その方々が息子さんの死亡によって年金化して受け取るような場合です。そういった生 計維持関係がない場合は一時金という形で受領する仕組みになっていまして、それが47 件ということです。それから、疾病別の内訳としましては、肺がん、中皮腫、石綿肺が ここにありますようになっております。  一方、労災保険法に基づく石綿による肺がん・中皮腫の補償状況です。平成16年度、 平成17年度、平成18年度の数字をここに挙げております。平成18年度は4月から7 月までですが、請求が839件で、1年の3分の1を経過した時点で平成17年度の半数 近くまで請求が出ております。昨年7月のクボタの公表以来、請求件数が急増している わけですが、その勢いのままという形になっております。認定されたのが466件。肺が ん、中皮腫の内訳は、それぞれこのようになっております。もちろん、これは認定され たもの以外のものが全部不支給になったわけではありません。不支給のものもあります が、いま調査中のものが多くを占めています。  次の資料は、環境省が、職域以外において石綿を原因とした疾病であると認定した件 数で、3月20日から8月31日までの分が公表されております。申請者数が累計で3,113 件、この申請者数の内訳は、療養費と特別弔慰金ということで、それぞれ内訳はこのよ うになっております。療養費は現在治療にあたっている方、特別弔慰金はすでに亡くな られた方に対するものの請求です。認定状況ですが、療養費につきましては197件、特 別弔慰金については399件、合計598件の認定となっております。  環境省で、すでにこの8月末までの分が公表されていますが、私どもとしましても、 新法が施行されて9月末で半年を経過するものですから、今、その状況について急ぎ取 りまとめ中でありまして、なるべく早い機会に新しい数字を公表したいと思っておりま す。以上です。 ○部会長  ただいまの説明につきまして、ご意見ご質問等はございませんか。ないようでしたら、 次の議題に移りたいと思います。石綿による健康被害の救済に係る事業主負担について であります。事務局から説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  今ほど資料2でご説明しました環境省関係の石綿の被害の救済に関しまして、事業主 負担に関する考え方が環境省から発表されております。これについて資料3で説明いた します。給付金の支給自体は今年度から開始になっていますが、事業主の負担について は平成19年度、来年度から徴収することになっています。その点については、環境省 が中心になって検討していますが、一般事業主からの拠出金につきましては労災保険と 併せて徴収するとされております。もう1つは、特別な負担を求められる特別事業主の 要件の1つとして労災の認定件数が使われているということが出ております。そういっ たことで、労災保険制度とも関係がありますのでご報告している次第です。  資料3の2の(1)ですが、事業主負担は平成19年度から平成22年度までの間、毎 年度73.8億円が必要とされています。全体で90.5億円が必要とされている中で、事務 費のうちの国が負担する7.5億円、地方公共団体によって拠出が検討されている9.2億 円を控除したものです。(2)の特別事業主の要件ですが、これは(1)と(2)がありますが、 (2)の3つ目の○では労災認定件数が10件以上となっています。これは「注」にあると おり、労災認定件数は周辺住民に生じた被害を直接表す指標ではないが、ほかの資料が ないので代替的に用いることとするということで使われたものです。次の頁に特別事業 主の特別拠出金の額の算定方法が出ております。事業主負担額総額の中でどのように定 めるかということにつきましては、報告書本体の5頁に事業主拠出金総額の話が細かく 出ていますが、特別事業主4社で総額3億3,800万円という見込みになっております。  (4)の一般拠出金率、一般の事業主の皆さんの負担の割合ですが、73.8億円から特 別拠出金の総額を控除した額を直近の労災保険適用事業主等の賃金総額で割ることによ って算定するということで、0.05/1,000という見込みが示されております。これを来 年度の労災保険と併せて徴収する形になってまいります。  なお、今後の予定につきましては、パブリックコメント等の手続を行った上で環境省 の関係審議会での審議を経て、必要な法令上の措置を講ずる予定だということで環境省 から発表になっているところです。説明は以上です。 ○部会長  ご意見、ご質問はございませんか。 ○佐藤委員  これは環境省の審議会のことですから、ここで申し上げることについてはそういう意 見があったとお伝えいただけるそうですから、少し申し上げたいと思います。1つは、 よくわからないと言えば、出典が示されていますけれども、なかなか読めないこともあ りますが、170トンに1人中皮腫が発生すると。これは一定の疫学的な調査もあるのだ ろうと思いますが、この報告書の中にはもう少し詳しい内容があるのかと思いましたら 断定的に書かれている。その辺りについてはちょっと理解に苦しむということが1点目 です。  それから、特別負担金の問題で、最終的に言うと4社ということになっております。 実際、石綿を大量に製品化して事業活動を行った所はもっと多いのではないか。石綿を 主力商品として売った会社はもっと多いのではないかという気持を持っております。そ ういう意味から言うと、特別負担金の金額3億何某というのは私の常識的な考え方から すると少ないのではないか。この報告書の6頁に、「特別事業主の権利、競争上の地位、 その他正当な利益を害するおそれがあることから公開しない」と書いてあります。これ も1つの理由ではあろうと思われますが、最近、社会の安全ということから考えると、 いろいろな製造物に関して公然とマスコミも報道しているわけでありまして、そういう 意味合いから言うと、例えば、いま説明のあった昨年の6月、7月のあのショックのと きには企業名が出ているわけでもあるので、今回あえてこのように書かなければいけな いという理由がちょっと理解できない。それが2点目です。  それから、一般拠出金については二百数十万と言われる労災の適用事業所に0.05/ 1,000を掛けるということですが、私は建設業畑におりましたが、比較的零細な事業所 も労災の適用事業所になっている。それで、1,000万トン近く輸入されたうちの90%ぐ らいは建設あるいは建築で使われたと。これからたくさんの認定患者といいますか、発 生があるだろうと私たちは予測をしておりまして、自主的にも診断活動などをやってい るところです。この話を私どもの組合員にすると、「なんだい、わしらはその被害者なん だ」と。これでいくと金額は僅かかもわかりませんが、加害者に位置づけられて拠出金 の支払いが命じられる。それがたとえ1,000円であれ3,000円であっても、そこの理屈 がなかなか納得のいくものにはならないのではないか。そういうことを言うならば、例 えば大量に輸入した商社はどうなのだということも議論してもらわないといけない。私 はそのように思いまして、以上3点について、これはここでお答えいただくものでなけ れば適切に伝えてほしいと思いますし、お答えがあるならばやっていただきたいと思い ます。 ○労災管理課長  基本的には、環境省の考え方につきましてはこの報告書に記載されている例えば報告 書の1頁目以降あるいは2頁の2の辺り、3の考え方になろうかと思いますが、私から 責任を持ってお答えできる立場ではないと思っておりますので、ご意見につきましては 環境省にお伝えしたいと思います。 ○部会長  それでよろしいですか。 ○佐藤委員  はい、伝えてください。 ○部会長  ほかに何かございませんか。それでは、次の議題に移ります。労災保険の適正化に関 する懇談会報告書について事務局からお願いいたします。 ○労災管理課長  資料4、労災保険の適正化に関する懇談会の報告書です。労災報告の適正化、いわゆ る労災かくし対策についてご議論いただいた懇談会です。この労災保険部会の委員でも あります下永吉委員、佐藤委員、それから全建総連からは宮本労働対策部長にもご参加 いただいてまとめたものです。この懇談会の経緯等については5頁にありますが、昨年、 この労災保険部会でご議論いただいた有期事業のメリットの増減幅を35%から40%に 拡大することにいたしました。その労働保険徴収法の改正等を含む労働安全衛生法等の 一部を改正する法律案要綱について答申をいただく際に有期事業のメリット制の改正に 伴って建設業における労災かくしの増加を懸念する意見があったことを踏まえ、厚生労 働省において関係者の皆さんの協議の場を設け、労災かくし対策の一層の推進が図られ るよう適切な措置に対処すること等のご報告をいただいたところです。また、国会審議 の場でも衆参両議院の厚生労働委員会におきまして、建設業等の有期事業におけるメリ ット制の改正にあたっては、いわゆる労災かくしの増加につながることのないよう建設 業関係者から意見を聴く場を設けるなど、災害発生率の確実な把握と安全の措置を図る とともに、建設業の元請けの安全確立体制の強化・徹底等の措置を図り、労災かくしを 行った事業場に対しては司法処分も含め厳正に対処することとの附帯決議が行われたこ とを受けまして、今年の4月から6月までの間開催し、8月に取りまとめに至ったもの です。  実は、同様の懇談会は平成13年にも開催いたしまして、労災かくし対策はそれ以前 からも取り組んできたところですが、その前後の状況は1頁から5頁にかけて整理され ております。中心は、今後取り組むべきという施策が6頁以降に出ております。1つは (ア)のポスターによる周知啓発です。ポスターによる周知啓発自体は従来からも取り 組んできております。行政と元請事業主の連名とすること、連絡先、相談先等の記載が あることが重要とされております。(イ)は労働者への浸透の徹底とあります。従来の取 組みがどちらかと申しますと事業主や事業主団体を通じたものが中心でして、必ずしも 個々の現場の労働者まで届いていなかったのではないかという問題意識の下に、ポスタ ーの掲示場所等について、現場の職長、労働者に、労災かくしは許されないものである ことを浸透させるために、工事現場や元方事業主の事務所だけでなく専門工事業者の事 務所や従業員宿舎に掲示する等、労働者等に直接伝える工夫を検討するべきであるとさ れております。また、(ウ)(エ)につきましては、従来からの取組みを引き続き行って いく必要があるということです。  次頁のイは、同様の問題意識の下に被災労働者の皆さんへの相談体制の充実が必要と されているものです。ウは関係行政機関との連携強化ですが、この中の第2段絡で、健 康保険給付の請求をしている外傷性患者のうち労災の疑いのある者、実は、これが社会 保険庁によると年間6万人位いるということでありまして、これらの方々に対して社会 保険庁と連携いたしまして、業務上の理由による負傷に対しては労災保険から給付が行 われることや、労災保険の給付には原則として事業主による証明が必要であるが、証明 がなくても請求は受け付けられること等の内容を記載しました労災保険に関するパンフ レットを送付することによって労災保険制度を周知し、適正な請求を勧奨する必要があ るとされておりまして、来年度以降これに取り組んでまいりたいと思っております。ま た、エは関係者による地方協議会の開催です。本省レベルで今回のような懇談会を開催 しましたが、地方レベルでも同様の協議会を開催しまして、地域に応じた対策を検討し ていこうというものです。  (2)ですが、労働安全衛生確保対策の強化についてもご提言をいただいております。 労災かくし対策とともに、そもそも、労働災害自体を起こさないことが重要であるとの 観点から、安全衛生対策についてもご検討いただきました。アで、元請事業主、下請事 業主、労働者の責任、役割分担。イが発注者による取組みの推進。ウが労働安全衛生マ ネジメントシステムの導入等、それぞれについてご指摘いただいたところです。また、 9頁のカの部分ですが、労災防止指導員の的確な運用です。各都道府県労働局長が任命 しているもので、労働災害の発生状況と地域の実情にて運営されているものであり、引 き続き労災防止指導員制度の的確な運用を図る必要があるとされております。  これらご提言いただいたものにつきまして、できるものから順に取り組んでいくとい うことで、できれば地方協議会を今年度から開催したいとも考えております。また、社 会保険庁との連携については、先ほど申しましたように、来年度の予算要求に反映させ ていただいているところです。説明は以上です。 ○部会長  何かご質問、ご意見がございますか。 ○佐藤委員  この懇談会の報告は賛成です。そこで、少し要望を申し上げておきます。6頁の(ア) のポスターのことで細かいことを申し上げますが、前回つくられたポスターはよくここ まで書いてくれたという気持ちでした。「労災かくしは犯罪です」と、そこまで言い切っ ていただいたので、これは労働基準局の非常に思い切ったことだったと思います。今回 も、表現はどうなるかわかりませんが、先の表現を下回らないような内容にしてほしい。  もう1つは意見で、賛成はしていますが現状を少し申し上げておきますと、どういう 産業もそうなのですが、とりわけ、建設業においては外注化が非常に激しいのです。重 層下請はもともとあるのですが、重層下請のその下のほうも一人ひとりに外注化すると いう形態がおびただしく蔓延している。そうすると、労災の責任はどこへいくのか。そ もそも一人ひとりは本来は労働者ですけれども、事業として請負契約になってしまうと 元請責任は遠い先の話になってしまって、特別加入ということが求められる。そこは裁 判でも争われている例もあるわけで、そういった認識についてはお持ちだろうと思いま すが、若干、意見を申し上げておきたいと思います。 ○岩村委員  7頁のウに「関係行政機関との連携強化」ということで報告書に書かれていまして、 このこと自体は非常に結構なことで是非やっていただきたいと思うのです。ただ、技術 的に考えると法的にはいろいろと難しい問題があることは重々承知しておりますが、例 えば健康保険でレセプト等を精査して労災の疑いがあるようなケースについては当該被 災者の方に対して請求を勧奨する取組みをするということで書かれていますが、法的に はいろいろ考えなければいけないのですが、明らかな例などについては、例えば請求主 義ではなくて職権で業務上外認定して給付を支給するというような可能性も少し検討し てみていいのかというようにも思います。機会があればご検討いただければと考えます。 ○労災管理課長  佐藤委員のご意見については、いただいたご意見を踏まえた上でポスターの文言等を 十分に検討して対処してまいりたいと思います。それから、岩村委員のご意見で、こち らからというお話がございました。いろいろと難しい問題もありますが、先ほど申し上 げた約6万件というのは、労災の疑いがあるということで、健康保険では業務上は支給 しないことになっておりますので不支給になった件数です。ただ、中には、最初はその まま健保で出してしまったけれども思い直して労災で出されている方もありますし、全 部が全部労災かくしではないのであろうと思っております。1つは、社会保険庁を通じ てどうですかという勧奨も行っていかないといけないと思いますし、また、さらに積極 的な相談等のあり方についても私どもとして考えてまいりたいと思っております。 ○松井委員  岩村委員のご指摘は職権ということでありましたが、おそらく、これは被災された労 働者の方が労災であるということを医療機関できちっと言わないと、そういう制度にな かなか乗っていかないのではないかという気もいたします。単に仕事ではなくて路上で 転んだケースと、本当に働いている最中で勤務時間中に転んだケースと、外傷といって も全く同じように見えるケースと、明らかに違うケースとあると思います。労働組合や 従業員の方々にそのものをわかってもらうことが先であって、それを医療機関等ではっ きり言っていかないとこういうものはなかなか見つかっていかないのではないかと思っ ています。ですから、私としては職権そのものについて否定するつもりはないのですが、 まず、従業員がこうした制度を知っている、周知をする、ということが重要なのではな いかと思います。 ○岩村委員  松井委員のご意見はおっしゃるとおりです。ただ、考えられるのは、被災労働者の側 からすると、例えば労災請求することによって使用者から報復を受けるのではないかと か、そういうことも考えられるとすると、状況も十分わかっていて労災請求もできるの だけれども出さないというケースがもしあるのであれば、それは場合によっては職権で もって給付決定をすることも考えられないかなということなのです。ただ、法律的には いろいろ検討しなければいけないので、すぐにどうせよということではありませんが、 そういう余地も検討してみる可能性はあるかもしれないという意見であります。 ○労災管理課長  松井委員の意見も岩村委員の意見も、私どもにとって非常に大事なご意見であると思 っています。基本的に、そもそも、労災保険制度について労働者の皆さんに十分ご理解 いただいて、仕事で怪我をしたのならば労災だということを基本的にご理解いただくと いうことがいちばん大事なことです。もう1つは、何らかの形で、知らないよという場 合と出しにくいよという場合を含めて、私どもとしてもただ単に待っているだけではな く、できるだけ積極的にこちらからご相談に乗れるような体制を整えながら、きちんと 労災保険を請求すべきものは請求していただくという方向で考えてまいりたいと思って おります。 ○部会長  それでは、次の議題に移りたいと思います。船員保険の見直し検討状況についてであ ります。事務局から説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  船員保険の見直しの関係ですが、資料5と資料6でご説明します。最初に、資料5で すが、船員保険は従来から社会保険庁において運営されておりますが、近年、被保険者 数が減少してきている、あるいは財政問題を背景にして特別会計改革あるいは社会保険 庁改革とも関連して、保険局保険課あるいは社会保険庁を中心にしてその見直しが検討 されております。その中で、職務上の疾病、年金部門の労災保険の統合が検討されてお りますので、この部会におきましてその議論の状況をご報告いたします。資料5です。 船員保険の在り方に関する検討会が平成16年10月に保険局長の懇談会として設けられ ました。  この検討会の報告書が昨年の12月にまとめられておりまして、その概要が次の頁に 出ております。左上のほうに制度の現状がありまして、先ほど申しましたように、被保 険者数が減少している、財政問題がある、特別会計改革、社会保険庁改革が現状として ある。そして、真ん中の所ですが、これらを踏まえて基本的な方向として職務上の疾病 年金失業部門について労災保険、雇用保険に相当する部分をそれぞれそちらに統合する という方向が出されております。ただ、その下の「統合に当たっての留意事項」にあり ますが、1つ目の○で職務上の年金部門につきましては積立不足額が平成17年度末の 時点で約1,700億円生じてまいります。  2つ目の○ですが、船員保険につきましては、行方不明手当とか、労災保険にない独 自の給付や休業補償に相当する傷病手当金におきまして、最初の4カ月間は標準報酬日 額の100%支給という上乗せ給付があります。これらは労災保険から支給することはで きませんが、必要不可欠と判断される給付は引き続き給付できる仕組みを構築するとさ れております。これについてさらなる検討が必要とされたところでありまして、いちば ん下の枠内に、今後1年程度の期間をかけて関係者で協議・検討する場を設置すること とされて設置されたのが、資料6の船員保険事業運営懇談会です。今年の4月以降3回 開催され、来月11月にも第4回が開催されると聞いております。  また、この懇談会の下に船舶労使と連合、日本経団連の方々からなる事務的な打合せ の会合もすでに6回ほど開かれております。資料6−3は、その中で事務的打合せの検 討経緯を社会保険庁が取りまとめたものでありまして、いわば船員保険の問題にあたっ てのさまざまな論点と、これまでに出されている考え方が示されております。1頁から 4頁は失業部門、雇用保険に相当するもので、労災は5頁以降になっております。5頁 の職務上疾病部門ですが、論点の1つは労災保険に統合する際に労災保険給付に相当す る部分以外の部分を独自に支給する仕組みが必要ではないかとされており、当方としま しても労災保険でこれを出すわけにいきませんので、そのように考えております。被保 険者側からは、すなわち船員・海員組合の方からは、基本的に現行の船員保険の給付と 同一のものを確保したいという観点から、個々の給付につきまして細かい確認が求めら れております。  10頁以降は職務上の年金です。11頁に、大きな問題として積立て不足の償却が整理 されております。実は、船舶の使用者側からは、船員保険の充足賦課方式への移行に伴 う過去発生債務の償却率は、労災保険の一般の制度と同様0.1‰とすべきとしているの に対しまして、一般使用者側からは厚生年金の統合の際には償却額は出身母体が償却し ているが、なぜ労災についても同様の考え方がとれないのか疑問である、平成元年の充 足賦課方式の転換と異なり、今回は別の保険集団の統合であるため、他の制度において 発生した債務を一般制度の事業主が負うのは適当ではないという意見が出されており、 今後さらに調整が必要な状況となっております。  13頁、14頁は職務外疾病部門に関することです。もう1点、実は、船員保険にも福 祉事業部門がありまして、15頁に出ております。15頁の2ですが、労働福祉事業につ いては行政改革推進法の規定を踏まえ、現在、廃止を含めた見直しを行っており、先ほ どご議論いただいたところですが、船員保険の福祉の部分が統合されるとすれば、今後、 同様の枠組みで精査・見直し等の対象になっていくものと考えております。いずれにし ましても、今、保険局、社会保険庁で関係の皆さんが集まられた懇談会の場等を通じま してご議論を進め、次期の通常国会の法律改正を目指して年内にも方向性を出したいと いうスケジュール観で調整が進められていると承知しております。その進捗状況に応じ て、今後、労災保険部会でもその議論を適宜ご報告の上ご議論いただきたいと思います ので、よろしくお願いしたいと思います。説明は以上です。 ○部会長  ご意見、ご質問はいかがでしょうか。 ○松井委員  岩村委員はこれの座長をやっておられるので意見が言いにくいと思いますので、私か ら言わせていただきたいと思います。最初に1点確認しておきたいのですが、懇談会が まとめた結果に基づいて、再度この部会で議論をしていくという理解でよろしいのかど うか。そして、その際はこの船員の懇談会で決められたことに縛られるのかどうか、そ こを確認したいと思います。なぜなら、私も、この船員の検討会の前段のときには参画 していまして、船員の労使の方々が一般事業主側の考え方について理解をなかなかして くださらなかったという気がしております。したがいまして、まず事実確認をしたいの で事務局からのご回答をお願いしたいと思います。 ○労災管理課長  1つは、船員保険自体はこの労災保険部会の所管ではありませんが、職務上疾病部門、 年金部門の船員保険を労災保険に統合することになりますと、当然、労災保険法の一部 改正が必要になってまいります。その限りにおきまして、その部分については労災保険 部会の本来のご審議事項だと考えております。その点、向こうの検討会で決められたか らそれが絶対だということではないと思っております。逆に申せば、労災保険部会の意 見となると考えられるものとすり合わせをした上で結論を出していただきたいと、今、 私どもとしても関係局の皆さんにご要望しているところです。 ○岩村委員  松井委員の配慮にもかかわらず少し述べさせていただきます。船員保険制度というの は、ご承知かもしれませんけれども、日本の社会保険制度の中では歴史が最も古いもの の一つでありまして、かつては非常に大きなウェイトを占めていたのですが、ご承知の ような状況で、現在は保険集団としては非常に小さくなってしまっております。それに 加えて、先ほど事務局からのご説明にありましたように、特会改革の中でどうするかと いうことになっております。考えなければいけないのは、船員の皆さんの特に業務上関 係で言えば、海上労働の特殊性というものも考慮しつつ船員の人たちの業務上の災害に あった場合の補償についてきちっとした枠組みを提供しなければいけないということが ある。他方で、一般制度である労災保険制度に統合することになると、できる限り足並 みをそろえてもらわなければ困るというところがあって、今、この懇談会の報告ではそ このところがいちばんの焦点になっております。  それで、先ほど労災管理課長からもご説明があったように、懇談会の取りまとめがあ ったら、それを受けてこちらでご検討いただくことになりますが、是非、その際にご理 解いただきたいのは、1つは、業務上災害にあわれた場合の船員の方々の補償について、 海上労働の特殊性も考慮した上できちっとした補償の仕組みを労災保険のほうでも考え なければいけない。もう1つは、過去債務部分の事業主負担の償却の問題というのがい ちばん大きな話なのですが、今まで、船員保険が労災保険と違うやり方をしてきたとい うこともあって、実際にかなり大きな積立て不足が生じている。  しかし、一般制度の特に事業主の方のほうでもご理解いただきたいのは、この中にも ありましたけれども、何年かにわたって事業主の方々にかなり積み増しをやってきてい ただいておりまして、そういう意味では今まで全く無策できたわけではないということ です。もう1つは、船主及び海員組合もそうですが、ある意味、特会改革その他で外か ら突然降ってきた話という面もありまして、そういうところも一般事業主の方々及び一 般の労働組合等の方々のご理解も頂戴できればと思います。ただ、他方で、先ほど松井 委員からも少しお話がありましたが、従来、船員保険という一つの制度でやってきたと いうこともあって、当事者双方も必ずしも一般制度化の考え方についてなかなかご理解 いただけないところもありますので、その辺は事務方も非常にご尽力いただいておりま すが、懇談会の場等で詰めて考えていきたいと考えておりますので、案が出てきたとき に、この場でひっくり返されますと大変なことになるというか、そういうことがないよ うに私も努力はしたいと思いますが、是非、ご理解をいただければというように思いま す。 ○部会長  本当にそのとおりで、懇談会の意見が出てきたときにここで合意がすんなりといくよ うに、岩村さんにも是非努力をお願いしたいと思います。難しい問題がたくさんあると 思いますのでよろしくお願いいたします。それでは、その他として事務局から1つ残さ れていますが、前回の労災保険部会で質問があった脳・心臓疾患と労働時間の関係につ いてということです。 ○職業病認定対策室長  それについてご説明いたします。前回7月の部会で脳・心臓疾患、いわゆる過労死の 労災認定につきまして、平成17年分についてご説明しましたところ、実際に認定され ている方々はどれぐらい時間外労働をしているのかというご質問がありました。私、そ のときに早口でお話しただけでしたので、今回改めてペーパーにして提出させていただ きました。内容は前回説明したとおりですが、ここにありますように、私どもの労災認 定基準は発症前1カ月の時間外労働が100時間。あるいは、発症前6カ月の1カ月辺り の平均が80時間以上という一つの目安を持っておりまして、それに基づいて認定して いるものですからこのようになっております。圧倒的に多いのは80時間から100時間 の間のところが多いのですが、100時間を超えている所も相当ある。もちろん、80時間 に満たない場合でも、その他の要件、例えば深夜労働が多いとか交替制勤務とか、評価 すべき要件があって、これは相当過重性がある、と認めているケースもあるという状態 です。報告を終わります。 ○部会長  ご質問等はございませんか。ないようでしたら、時間は予定より少し早いようであり ますが、本日の部会はこれをもって終了したいと思います。本日の署名委員は労働者代 表の佐藤委員、使用者代表の松井委員にお願いいたします。どうもありがとうございま した。 照会先 労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係     03−5253−1111(内線5436,5437)