06/10/18 特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的な運用に関する検討会 第1回議事録   第1回特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的な運用に関する検討会        日時:2006年10月18日(水) 18:30〜20:30        場所:厚生労働省5階専用第12会議室 ○齋藤母子保健課長補佐  定刻となりましたので、ただ今から第1回特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的 な運用に関する検討会を開催します。本日は、お忙しい中、お集まりいただきありがと うございます。厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の課長補佐をしている齋藤 と申します。議事進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。 また、本日は遅い時間にお集まりいただきましたので、テーブルの上に軽食をご用意さ せていただきました。どうぞお召し上がりください。  それでは、議事に入りたいと思います。まず初めに、検討会の委員の皆さまのご紹介 をさせていただきます。資料の大きいつづりが二つあり、そのうちの一つで左側をクリ ップで留めているものをご覧いただけますでしょうか。こちらの資料1が委員名簿とな っていますので、この順番に従い50音順にご紹介します。各委員から一言ずつごあい さつをいただければと思います。それでは、資料1に基づいてご紹介申し上げます。  まず、石原委員です。 ○石原委員  埼玉医科大学産婦人科の石原と申します。不妊治療について20数年間いろいろと勉 強して参りましたが、患者さんのために役に立つような結論が出る委員会になればよい と思います。どうぞよろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、泉委員です。 ○泉委員  茨城県保健福祉部の泉と申します。行政の立場で参加させていただきます。どうぞよ ろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、今村委員です。 ○今村委員  日本医師会の母子保健担当の常任理事をしている今村定臣と申します。長崎で産婦人 科を開業しています。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、楠田委員です。 ○楠田委員  東京女子医科大学の楠田と申します。私は新生児医療が専門ですので、日本小児科学 会から子どもたちの予後に関することでお役に立てればということで参加させていただ きました。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、齊藤委員です。 ○齊藤委員  齊藤です。国立成育医療センター不妊診療科で不妊診療をさせていただいています。 よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  ありがとうございました。次に、鈴木委員です。 ○鈴木委員  鈴木良子と申します。フィンレージの会という不妊に悩む人たちのためのグループの スタッフをしております。会自体は1991年に発足しましたのでもう15年以上になりま すが、私もその会に10何年参加させていただいています。不妊の当事者の立場という ことで、いろいろな声を反映できればと思っています。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、田邊委員です。 ○田邊委員  日本産婦人科医会の田邊です。一応、日本産婦人科医会からの推薦ですが、元々私の 専門は生殖内分泌・不妊で、ずっとやっています。日本産婦人科医会の方でも不妊に関 して今までやっていました。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  次に、村本委員です。 ○村本委員  村本です。今年の9月まで日本不妊看護学会で、9月から日本生殖看護学会に名称変 更しましたが、そこから推薦されて参加させていただきました。現在、三重県立看護大 学で母性看護学を担当しています。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  そして、森委員です。 ○森委員  森明子と申します。聖路加看護大学の母性看護・助産学研究室におります。約14年、 看護の立場で不妊に関しても研究活動を続けてきました。2001年から日本不妊看護学会 を立ち上げ、現在は今村本委員がお話したように日本生殖看護学会と名称が変わってい ます。日本看護協会の認定看護師の立ち上げにも携わりました。どうぞよろしくお願い します。 ○齋藤母子保健課長補佐  そして吉村委員です。 ○吉村委員  慶應大学の吉村と申します。生殖医学が専門で、こういったさまざまな厚生労働省の 会に駆り出されています。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  大変ありがとうございました。続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。千 村雇用均等・児童家庭局母子保健課長です。 ○千村母子保健課長  千村です。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  関谷同総括課長補佐です。 ○関谷母子保健課長補佐  関谷です。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  それから、梅澤同課長補佐です。 ○梅澤母子保健課長補佐  梅澤です。どうぞよろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  それから、中込同母子保健係長です。 ○中込母子保健課係長  特定不妊治療費助成事業の担当係長の中込です。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  それから、阿部同課主査です。 ○阿部母子保健課主査  阿部です。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  それから私、課長補佐をしております齋藤です。事務局の紹介は以上です。それでは、 千村母子保健課長から一言ごあいさつと、本検討会の開催趣旨、検討課題、それから今 後のスケジュールを説明させていただきます。 ○千村母子保健課長  自己紹介は済んだということにさせていただいて、開催側の趣旨等の説明をさせてい ただきたいと思います。主に資料2と資料4をご覧いただくとよいと思います。まず資 料4で事業の概要を改めて確認させていただきたいと思います。  まず不妊治療事業の「要旨」ですが、不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、高額 な医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成するという事業です。 「対象治療法」は、体外受精及び顕微授精です。「助成の対象者」は、特定不妊治療以外 の治療によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上 の婚姻をしている夫婦です。「給付内容」ですが、1年度当たり上限額を10万円。それ から通算5年間支給となっています。所得制限は650万円で、これは夫婦合算の所得ベ ースです。指定された医療機関において実施していただいているということ。事業の「実 施主体」は、都道府県、指定都市、中核市です。以下、補助率・沿革等については、こ の資料の通りです。  この事業ですが、現時点では支給をしている人数ですとか支給している金額のみを把 握していますが、今後この事業の効果的・効率的な運用がさらに求められるということ でもあり、こういった観点から全国的な実績や成果の把握が必要であると考えているこ とが1点です。  それから2点目としては、この事業の実施医療機関について、設備や人員あるいは実 績等々について、いろいろ勘案した上で、医療機関の指定基準の見直しが必要ではない かと考えています。  また3点目として、不妊治療の成果・予後についての今後のフォローをどうしていく かということが大きな論点としてあると思っています。こういった点について、現在、 平成19年度からの事業の充実を考えていますが、今後どういう運営をしていくかとい うことがこの会でご検討いただく課題になってくると考えている次第です。  このような考え方をまとめさせていただいたのが資料2です。改めて設置目的等、こ こで縷々述べさせていただいています。検討課題については今申し上げたような点であ り、大きく分けて2の(1)にある「本事業の全国的な実績・成果の把握」、それから2点 目として「本事業の実施医療機関における設備・人員等の指定要件」、3点目として次の ページにある「不妊治療の成果・予後等の検証方法について」、この3点についてご検 討をお願いしたいと考えています。  そこで、スケジュールについてご説明申し上げたいと思います。資料3をご覧くださ い。スケジュールですが、年度内に4回程度開催させていただきたいと思っています。 各回のスケジュールおよびご検討いただきたい大きなテーマについては、ここに記載さ せていただいている通りです。  今回は、関係の方々からもいろいろな点についてのヒアリングをさせていただきたい と考えています。こういったスケジュールを考えております。先ほども少し申し上げま したが、この検討会でご検討いただいた内容については、平成19年度以降の事業に反 映できる部分については反映していきたいと考えていますので、ぜひ皆さま方にいろい ろな議論をお願いしたいと思っています。よろしくお願いします。 ○齋藤母子保健課長補佐  それでは次に、配布資料の説明をさせていただきます。念のためお願い申し上げます が、カメラの方は退席していただけますでしょうか。申し訳ありませんがお願いします。  それでは、資料の確認をさせていただきます。ただ今、千村課長が説明に使わせてい ただいた資料が資料2、資料3、資料4でしたが、今回この他に幾つか資料を用意させ ていただいています。「配布資料の一覧」が「議事次第」の2枚目と3枚目にあります。 その中で、今回ヒアリングということでお話いただくことになっている東京都から「東 京都特定不妊治療費助成事業について」という横書きの資料5をいただいています。そ れから資料6は、齊藤委員からいただいた日本産科婦人科学会の資料のセットです。ま た、資料7ということで、柳田氏から何種類かの資料をいただいています。本日はこれ らの資料を使ってお話を伺います。こちらの資料は揃っていますでしょうか。また、追 加で東京都から「特定不妊治療費助成制度」のパンフレットをいただいておりますので、 お手元に配布させていただいています。  今回の検討会で使用するものではありませんが、ご参考までにもう一つ資料のつづり を用意させていただいています。不妊治療に関しての一般的な情報ということで、不妊 治療の種類その他関連の情報を「参考資料」として付けています。また、先ほど説明さ せていただいた特定不妊治療費助成事業の実施要綱で参考とすることを求められている 「日本産科婦人科学会会告」などを一式、つづりの中に入れさせていただきました。お 手元にないものがありましたらご指摘いただければと思います。それからもう一つ、参 考資料の束の中に参考3〜参考7ということで、厚生労働科学研究の研究報告書の抜粋 の関連部分。それから、厚生科学審議会生殖補助医療部会の抜粋の関連部分。また、日 本産科婦人科学会の「平成17年度生殖医学臨床実施調査票」また「個別調査票の登録 ページ」を資料5、資料6として付けています。また資料の最後のところに、参考7と して「自治体からのアンケート調査の結果」(抜粋)ということで用意しています。こち らは今後2回目以降の検討会でご参照いただくためのものですが、適宜ご参照いただけ ればと思います。資料は揃っていますでしょうか。  なお、本検討会は原則として公開で行われますが、次回以降の課題の検討に当たって は、特定の個人や病院・診療所などのプライバシーに触れる可能性がある場合には、プ ライバシー保護の観点から必要に応じて非公開とさせていただきますので、ご了承お願 いします。  本日は第1回目の会議ですので、ここで母子保健課長より座長を指名させていただき たいと思います。 ○千村母子保健課長  この検討会の座長を日本産婦人科医会常務理事の田邊委員にお願いしたいと考えてい ますが、いかがでしょうか。それから、併せて副座長を石原委員にお願いしたいと思っ ています。この2点についてご了解いただけますでしょうか。  それでは、田邊座長にこれ以降の進行をお願いします。食事を用意していますので、 議論しながらではなかなか難しいかとも思いますが、召し上がっていただければと思い ます。 ○田邊座長  ただ今ご指名いただきました田邊です。先ほど自己紹介させていただきましたけれど も、多分この中で私が一番年上だと思いますので、司会・進行をさせていただくことに なったと思います。委員の皆さま方のご協力を得て、このスケジュールを見ますと、だ いぶタイトなスケジュールの内容だと思いますので、私どもに与えられた課題をこの中 でこなすのはなかなか難しいかもしれませんが、1回1回を充実してやっていきたいと 思っています。よろしくお願いします。  本日は第1回ということで、先ほど課長からお話がありましたように、特定不妊治療 費助成事業の実態をまずお話いただくということになっていますので、東京都で担当さ れている山川さまからご説明をお願いします。 ○山川氏  東京都の山川です。用意させていただいた資料は、先ほどの説明にありましたように 資料5になります。その前に、資料5の「東京都の事業概要」で、別添資料と書いてあ りますが、その別添に当たるのが、今日配ったパンフレットになります。これは今新し いものを作っている最中で、助成期間がまだこの中では2年になっています。実は私ど もは規則改正で対応していますので、国の通知を待って規則改正を提出する予定という ことで、若干内容は古いのですが、1枚開いていただきますと、事業内容そのものは、 先ほど母子保健課長から話がありましたように東京都も国に準じた内容で実施していま す。特に「都内の指定医療機関一覧」ということで、医療機関が出ていますけれども、 平成18年10月1日時点では、トータルでは54になります。数は後ほどの資料でまた 出てきます。このパンフレットには47しか載っていません。必要書類等については、 パンフレットの「概要」の一番下にブルーで色付けしてある内容を提出していただいて、 自治体としてはその内容について確認した上で、対象となる方については助成させてい ただいているということです。その裏を見ていただきますと、赤字で「特定不妊治療と は」という記載があり、その下に「所得の計算方法」があります。これは利用者から所 得に関しての計算の方法がわからないという声があるものですから、こういう形で載せ ています。あとは若干のQ&Aを載せています。今日配りましたこのパンフレット以外 に、資料として出していませんけれども東京都のホームページにもこれよりも若干詳し い内容で掲載しているという状況です。  それでは資料5に入りたいと思います。1枚めくっていただいて、「制度の利用状況に ついて」という内容です。この事業そのものが平成16年度、17年度、18年度の途中と いうことで、実績はそれほどありませんけれども、平成16年度については申請件数が 1,660件、助成件数が1,640件という内訳で、平成17年度に移りますと2,551件の申請 に関して助成が2,502件という結果です。この助成件数2,502のうち2回目、平成16 年度に引き続いて制度を利用された方が615件ということで、全体の24.6%ということ になります。下の表は、月別の申請件数の推移を示しています。平成16年度7月以降 からグラフが始まっているのは、東京都が事業を開始したのが7月ということで、助成 の対象は4月までさかのぼって対象とさせていただいていますけれども、実績上は7月 から計上ということです。毎月ほぼ100件から200件前後という申請があり、特に2月 の後半から3月にかけて申請件数が非常に増える。これは一応、年度内助成ということ で、多分治療機関との関係もあると思うのですが、年度末にかけての申請が4〜5倍あ るというのが東京都の現状です。  次のページは助成申請者の年齢別分布ということで、これは平成17年度の方です。 見ておわかりのように、大体34歳〜38歳の辺りに大きなピークがあるということで、 これは見ての通りの年齢分布です。これはあくまでも申請者ということですので、不妊 治療を受けた患者すべてではない。東京都のデータは、すべてそういう前提になります ので、誤解のないようによろしくお願いします。  次をめくっていただいて、不妊期間の分布でございます。申請いただく書類の中に不 妊期間がどのくらいだったかという内容をお聞きしている項目があります。そこにお答 えいただいた方を拾ってグラフ化したものです。おおむね2年から4年にかけてをピー クに右肩にずっと下がっていくと。これは16年度、17年度ともに傾向としては変わり はないという状況でございます。  次をめくっていただきます。これはグラフそのものの動きはあまりないですけれども、 先ほど申し上げましたように、都内に現在指定医療機関が54ございまして、17年度申 請を上げていただいた方が、どこの指定医療機関を利用したかという分布を作らせてい ただきました。見ておわかりのように一件の医療機関がダントツで700以上を占めてい る。後はぐっと下がりまして、ほぼ上位3、4の医療機関で全体の47%ということで、 年間1件とか2件、10件未満のところも結構数としてはあるというのが今の状況です。  次をおめくりください。医療機関の指定についてですけれども、先ほど申し上げまし たように指定医療機関数は10月現在で54カ所でございます。指定要件として必要な書 類として、日本産科婦人科学会登録承認書あるいは受理通知書の写しと、標榜診療科と か指定対象治療法等をお書きいただく申請書、それと治療の概要です。治療の種類、種 類ごとの実績、施設の設備、スタッフ、倫理委員会があるかないか、産科小児科との連 携状況がどうなっているか、こういったことを記載して提出していただくという形で現 在行なっております。  また(2)の部分ですけれども、今年度から新規申請の指定医療機関に対しては、現地確 認ということで東京都の職員が実際の現場に行ってお話を伺うというようなことを、ま だ実は2件なのですけれども、行なっているところです。その目的は診療の流れあるい は台帳管理、凍結保存の台帳管理がどのようにされているかとか、あとは待合室の状況、 そこに自治体の助成制度等の案内がされているかどうか。そういった、前回の説明をお 聞きしてお出しいただいた申請書の内容を現場で確認すると同時に、制度の説明等につ いてできるだけわかりやすくご説明いただきたいという協力依頼をしている。これが現 在行なっている現地確認です。  課題としましては、ここにありますように実際に利用者の立場で現地を確認し、調査 員が(2)のところで主に担当の事務職、今は1名で対応している。課の中に医者と保健師 がいますので、状況によって医者または保健師が同行するということでございます。課 題に戻りますけれども、実際に利用者の立場で現地を確認し、説明を受け、利用者に配 慮した制度活用の協力を求める意味はあるだろう。ただ、医療の質の部分とか安全性等 の技術評価については、当然、担当が事務職ですし、課に医師、保健師がいるにしても、 専門の不妊の知識を有しているわけではございません。一般的な診療所、クリニック等 の感染予防の必要性等については対応できますけれども、特定不妊治療の内容について はそこまで踏み入ることは難しいというのが今の自治体の現状です。  もう一枚めくっていただきまして、東京都がこれまで申請の事務を取り扱ってきた中 で、気が付いた点を幾つか。課題というにはまだ実績がございませんので。  一つとしては申請者としている機関、受診等証明書に関する問題点といいましょうか、 そういったものがあるのではないか。現状としては、先ほど申し上げましたように治療 が一部の医療機関に非常に集中している。これそのものは悪いことではないのですけれ ども、それに伴って当事業に関する事務処理、受診等証明書が非常に集中するというこ とで医療機関の方でも非常に苦労されているということが一点。先ほど申しましたよう に都内の3、4機関で全体の47%を占めている。  もう一点は治療内容の説明と同意、助成制度への理解ということで、治療内容につい て説明をした上で治療を行っているのは当然なのですけれども、実際にご本人にお聞き したり利用者からの電話では、なかなかじっくりとお話が聞けないといったことがある。 治療の内容について実際に本人に問い合わせても、あまりきちんとした答えが返ってこ ない。あるいは、明らかに助成対象外の期間。これは年度内に治療していることが前提 になりますので。今でも3年ぐらい前の、制度が始まる前の治療について申請が出され てくる。こういったことは当然、本人ももちろんですが、医療機関でもチェックをいた だくと、東京都はすべて郵送で対応させていただいていますので、無駄な書類等を備え る苦労も省けるのではないか。そういう制度の周知の部分があります。  また、受診証明書の内容に記載の不備あるいは未記入が散見します。これは利用者が 平均1件以上の医療機関を利用されているということで、過去の治療歴が必ずしもかか わった医療機関で把握されていなかったりします。後は、よくありがちな、ドクターの 字が読めないとか、その辺が苦労していることでございます。  もう1枚めくっていただいて、今度は申請者と東京都の間でのものです。現状は先ほ どのパンフレットにもありますように、書類は1から6までの内容をお願いしている状 況です。6について、5、6の部分が指定医療機関にかかわる部分です。  こういったことに対して、現在、右の四角の部分ですが、夫婦の居住地が異なる場合 の取り扱い。その辺が1点、気が付いたこととしてあると。これは共働きで、東京都と 千葉に分かれている。当然、所得も違う。東京都としては、今はご夫婦で所得の多い方 が都内に居住している場合に都の制度をご利用いただくという形でご案内しています。 ただこれは、自治体によってはどちらでもいいというのもあるようです。必ずしも統一 はとられていない。そういった自治体間の状況照会、二重払いの事とか受給履歴のチェ ック等が、今後自治体間の課題になるのではないか。  後は所得計算の誤りが多いということです。家で安静にしていらっしゃる奥様が自治 体の申請に携わることが多いので、実際に源泉徴収も初めて見るような方がいます。所 得がなかなか難しい。多い時には一月に申請していただいた方の64%は所得の誤りがあ るということです。所得そのものは低いはずなのに、多めに計算しているのがあって、 それにより、場合によっては助成を諦める方がいるのではないかというようなことも懸 念されます。 後は、年度内ということですので、先ほども申し上げましたように年度末に申請が集中 するということです。平均、150件のところ、3月は300件。  後は、保険外診療と自費診療、お薬、入院等の査定と書いてありますけれど、混在し て書いているので利用者の方にわかりにくいという部分もあります。  後はプライバシーへの配慮ということで、ご家族、主に両親だと思いますけれど、治 療していることを言っていないので郵送のやりとりでは東京都の封筒は使わないでほし いということなどです。源泉徴収に当たって会社に治療していることがわかってしまう のではないかという心配をされている方もいらっしゃいます。その辺についてはこちら としてもご本人のプライバシーに配慮して対応させていただいています。  また、治療周期の考え方が医療機関によって異なる。胚移植が終わった時点を一つの 区切りとして東京都は考えていますが、実際の妊娠が確認されるのを周期というお考え を持っている方とか、その辺内容によって違いがあるのではないかというのが担当から の感想として出ています。一つの周期で助成の対象の区切りをつけますので、周期が年 度内か年度をずれてしまうかによって扱いが異なってくるので、あながちバカにできな い問題ではないかと思っています。  後は利用者の要望としては、医療機関を選択する際の情報、治療分数とか妊娠率、出 生率等、そういった情報が欲しいというような声とか、先ほど申し上げた所得に関する 必要書類や計算方法がなかなかわからない。そういうことが非常に多いというのが東京 都の現状です。以上です。 ○田邊座長  ありがとうございました。ただ今のご説明にご質問ございますか。 ○鈴木委員  すみません。申請件数と助成件数のズレというか、現実に助成が受けられなかった方 がいらっしゃるわけですけれども、それは主に今お話いただいたような書類上の、例え ば計算の間違いであるとか、そういった理由が主なのでしょうか。 ○山川氏  計算間違いは基本的にはうちの方で再チェックをかけていますので、できるだけそれ はないようにしています。先ほど申し上げましたように、どうしても所得がオーバーし てしまう方と、後は申請期限切れですね。 ○鈴木委員  一番多いのがですか。 ○山川氏  数そのものは確認していませんけれども、その2点です。 ○田邊座長  その他、ご質問を。 ○阿部母子保健課主査  医療機関の指定要件について質問です。指定要件の中で、必要書類として治療概要を 出していただいているということですが、治療概要によって指定がはずれるということ も、今まで起こったことはありますでしょうか。 ○山川氏  実際は学会の指定がされているということで、ほぼ99.99%クリアです。ただ、こち らとしても実際の現場を確認させていただく必要性とか、東京都として確認しておくべ き内容ということですので、この審査で指定が取り消されたということはありません。 ○田邊座長  その他、どなたか。 ○鈴木委員  これは単純に確認です。パンフレットの方では給付の内容は通算2年度になっていま すが、これはまだ古いということだけですか。 ○山川氏  はい、これから作り替えます。 ○田邊座長  その他ございませんか。 ○村本委員  利用者の要望等のところになりますが、これらの要望等は聞かれたら出されているの ですか。 ○山川氏  治療件数とか妊娠率とか出生率とかいうことですよね。出していません。これはうち もデータは持っていませんので。 ○田邊座長  その他。 ○吉村委員  2年間されまして、どういうことが条件としてあったらいいのか、あるいは予想と違 ったとか、もう少し助成を受ける方が多かったのではないかと思われるかどうかという 点と、それから、この基準をもう少し厳しくした方がいいとか、そういうような提言が ありましたら教えてもらいたいと思います。 ○山川氏  一番、制度を複雑にしているのが所得の部分ではないかと感じています。国の方も所 得の緩和を検討されているようですけれど、所得制限のハードルが低くなると、共働き の方々で助成の対象になる方が増えてきます。そうすると所得の計算がさらに複雑にな ってきます。申請を出される方も大変だし、受けてチェックする自治体の方も年度末に 集中してきますので、非常に大変です。八百何十万という所得の部分が上がった場合に、 かなりの率がカバーできるので、いっそのこと革命的ですけれども、所得制限は撤廃し た方が制度そのものを利用しやすくなるのではないかと思います。  後は、申請の書類と実際の治療に当たってのインフォームド・コンセントと申しまし ょうか、実際に医療の現場では当然夫婦関係であることを確認していると。この前行っ てきた現地調査のドクターの話だと、そのようにおっしゃっているのですね。きちんと ステップを積んだ治療を行った上で高度生殖医療、場合によっては年齢が35、40近く になった場合に一挙に体外授精を行うこともあると思います。それに当たって、夫婦要 件の部分がどれだけ必要かということです。自治体が助成をさせていただくに当たって、 改めてどこまで必要とする書類を整えるべきか。  できるだけ利用しやすい制度にできればと考えています。非常に苦労されていて心配 しながら治療を受けて、いざ、うまくいったかなと思った時点で制度の申請を奥様がな さるということで、役所に行ったりという手間の部分もあります。その辺を、こちらと しても何とかしたい。  助成件数の伸びが思ったより多いか少ないかについては、特に評価しておりません。 ○石原委員  申請件数が16年度は1,660件で、17年度は2,551件と書かれているのですが、予算 措置があると思いますが、想定されていた件数というのは、各年度どの程度だったので しょうか。 ○山川氏  大体、16年度は2,000くらいは多分予想していたのではないかと。予算上は特にオー バーして困るということはないです。大体、予算の範囲でという状況です。 ○田邊座長  はい、どうぞ。 ○泉委員  茨城県では年間500くらいの件数の半分が県外で治療を受けていらっしゃるので、指 定医療機関について県外の医療機関の取り扱いが大きな課題です。東京都では基本的に は都内の医療機関で、都外はほとんどないと考えてよろしいでしょうか。  それからもう一つ。それに関連して、恐らく東京都の医療機関には各県からの患者さ んが集まっていると思うのですが、各県から求められる書類を47枚書かないといけな いという可能性があると思うのですが、そういったクレームはないでしょうか。 ○山川氏  1点目については、東京都外の医療機関であっても、都外の自治体が指定している医 療機関であれば都民がそこに行っている場合は対応しています。後段の医療機関の苦情 については、自治体によって非常に種類が多くて困るというのは、私は4月から来てお り開始当時はいませんでしたので、まだ聞いていません。 ○田邊座長  自治体によって、この申請の書類は全く同じですか。 ○泉委員  少しずつ違うと思います。 ○田邊座長  要件とかそういうのも違うのでしょうね。 ○泉委員  個人からいただく書類も違いますし、医療機関から求めている報告も違います。 ○田邊座長  そうですね。その他、何か。 ○今村委員  指定の医療機関で実施件数ゼロというのはありますか。  もう1点は、都の方に患者さんから苦情が来ているなどの実情はございますか。 ○山川氏  不妊治療そのものについて、例えば非常に長い時間待って、数分で終わってしまった とか、そういった苦情はございます。実施件数ゼロについてはあります。54あると先ほ ど申し上げましたけれど、実際に17年度実績にあがっている医療機関、先ほどのグラ フですけれど、54にはなりませんので、1割か、2割弱くらいあると。 ○田邊座長  指定された医療機関でも、やはり患者さんから「これは」と思われているところがあ るということですね。こういう言い方をしていいのかわかりませんけれども。  ありがとうございます。そろそろ時間が来ていますが、よろしゅうございますか。ど うもありがとうございました。  それでは次に、産科婦人科学会の登録・調査小委員会委員長の齋藤委員から学会への 医療機関の登録、個別調査票の登録システムについてお願い致します。申し訳ないです けれども、皆さんが食事しながらでよろしいですか。 ○齋藤委員  食事しながら聞いてください。今日ご用意させていただいたのは資料6でございます。 それに合わせて説明させていただきます。場合によっては参考の資料も一緒に見ていた だきたいと思います。資料6が、事務局からこういうことについてお話してくれという ことで、それに沿ってお答えしていこうと思って書いたものです。1番、2番、3番に分 かれています。1番が実施医療機関の登録について、2番がこれまでの臨床実施成績の 登録について、そして3番目が今後の個別調査票の登録システムについて、というよう な項目に分かれていて、それぞれA、B、Cとさらに細かく分かれています。  順番はこのまま書いたのですが、よく考えてみると、2番目のこれまでの臨床実施成 績の登録についてお話しして、それから1番の医療機関の登録について、そして、最後 の3番目に今後の個別調査票の登録システムについてお話しした方が、時間経過を追っ てできると思います。  そこで、2番目のこれまでの臨床実施成績登録についてお話したいと思います。これ を見ていただきますと、歴史と書いてありまして、日本ではここに書いてありますよう に、昭和58年10月に日本産科婦人科学会では体外授精胚移植に関する見解を出し、そ れを元に体外受精が始まりました。まず、最初は昭和63年3月に、実施したものに関 して登録制を敷こうということで、どのような治療を行っているのかということを学会 として把握しようということになりました。そして初めての委員会、「生殖医学の登録に 関する委員会」が理事会内にでき、平成元年に第1回の理事会が行われました。  第1報としてこの報告を出したのが平成2年4月。生殖医学の登録に関する委員会報 告として第1報を63年度分まで出しました。私たちの登録の仕方は1月1日から12月 31日までの治療成績を1年というように、年度ではなくて年で報告しております。  次のページを見ていただきたいのですけれども、こういう風に行って参りましたけれ ども、平成5年度以降の生殖登録に関しては二つに分けました。二つに分けたと理由と いうのは、全部の施設に大まかなことを聞こうという倫理委員会、左側の枠になるので すけれども、倫理委員会の方で行う。治療・研究に関する倫理委員会というところで、 すべての施設を対象として包括的な調査をしようと。施設ごとの調査です。そして、個 別の調査、一件一件の患者さんの調査は生殖・内分泌委員会が統計会社を使って行おう と。こちらの場合は全施設ではなくて、協力を依頼してそれに賛成してくれる施設とい うことで行って参りました。それぞれの委員会がそれぞれのやり方でずっとやってきた わけなのですけれども、特に生殖・内分泌委員会の方では個別調査を国際統計で、世界 的にもまとめているところがありまして、それの報告形式に合わせて個票を発表して参 りました。ただ問題点としては、個票でやりますとボランティアですので、大体4割か 5割くらいの数値が集まってくる。逆に倫理委員会の方ではほぼ全数、9割9分集まる のですけれども、施設ごとの個々のものがわからないという問題点があります。そのよ うに調査してきたという歴史的な背景があります。  そして、事務局からいただいた1番目の、これまで調査してきた項目についてですけ れども、参考資料5を見ていただきますと、各施設当たり数枚に渡って実施したか実施 しなかったかというようなこと。それから体外受精、新鮮胚を用いた治療に関して施設 ごと1年間をまとめたもの。それから顕微授精についてまとめたもの。それから、凍結 融解胚についてまとめたもの。それから、最近は胚ではなくて未受精、まだ受精してい ないものの技術もできています。これの治療成績についても書いていただく。そして、 最後にはAIDの調査、この項目に関して、施設ごと1年間のものを倫理委員会としては 行って参りました。  それから、生殖・内分泌委員会では、資料を用意しなかったのですけれども、参考の 6のほぼ似たような項目に関して、一人一人の個々の症例に関してデータを取って参り ました。この場合には今後はインターネットでしますが、今までは各施設にフロッピー をお渡しして入力していただいた段階で回収するということを基本としてやっておりま した。Bのところですけれども、どのような施設で行ってきたのかというと、倫理委員 会は先ほどの参考5の各施設にお送りして、回収していただく方法で取って参りました。 それから内分泌委員会の方は、フロッピーディスク、または調査は紙に書いてもいいの で紙でも送ってもらいました。最終的にまとめるのは、倫理委員会は日本産科婦人科学 会で行っておりました。内分泌委員会は外の委託業者にまとめていただいた最終的な報 告を、日本産科婦人科学会で保存しております。  問題点はないのかという質問ですが、やはり問題としては精度が挙がります。我々が 査察をして、本当に1人残らずきちんとこの調査に記入しているのかと言われると、個々 の施設で出していただいたのを、きちんと出してくれていると信頼していますので、そ こら辺がまだはっきりしない点ではありますけれども、一応そういう方法で調べさせて いただいております。  次は1番目に戻ります。今の実施機関の登録についてということでお話ししたいと思 います。最初に登録基準と登録審査体制の具体的な内容または基準の内容や審査体制に 関しての問題点について話すということですので、登録基準は資料6の(1)をまず見てい ただきたい。その次ですけれども、これは今年の4月にホームページに載って、8月号 にも載っていますけれども、このように昭和58年からこういう治療を始めて、その都 度いろいろな治療法が出てきて、会告をたくさん出してきましたが、下から2行目辺り だと思いますけれども、我々は原則として5年の経過都度に検証を行い必要に応じて改 定を行いたいと考えている。実態に合わせてこのような会告、登録基準などを変えてい こうという方針で現在は行っております。  今の特定事業に関係する体外受精・顕微授精に関しましては、参考資料2の(2)、(4)で す。これは(2)を見ていただきますと、平成18年4月と書いてあります。最初にできた のはもっと前ですけれども、先ほど6の(1)で示しましたように時代に合わせて会告を変 えて参ります。4月に体外受精の会告をこのように変えて参りました。大きな点は、以 前は20年も昔ですのでこの治療がまだ生まれた時代で、本当に成績としていい成績が 出るのか、またどのような危ないことがあるのかということがすごく懸念されたので、 一つ一つの文言を解説してあるわけです。けれども、20年たちますとある程度技術的に も認知されたものになって、会告もこのように変わって参りました。それから参考2の (4)の顕微授精ですけれども、顕微授精も方向性がシンプルに変わってきております。顕 微授精の会告を出したころとの大きな違いは、昔は顕微授精は体外受精で妊娠・分娩が あった施設に顕微授精をやっていいというような会告であったのが一番大きな違いです けれども、最近は顕微授精もすごく技術的にアップしてきて、どの施設でも十分技術的 にできるようになっておりますので、そのような会告を外しているのが一番大きな違い です。このようにして顕微授精も時代に合わせて会告を変えております。  その次の参考資料2の(7)です。このように年を追っていろいろな治療法が出てきて、 それを登録する際に、日本産科婦人科学会としては、生殖補助医療実施機関の登録と報 告に関する見解、参考資料2の(7)ですが、これは柳田委員からも後でお話しいただける と思いますので、簡単に話をしておきます。ここの最初のページにあるように、(1)登録 施設の申請および登録をすること、医療施設登録を義務制としているということです。 やる前に必ず義務として登録をしてほしいこと。そしてその審査は日本産科婦人科学会 の中の倫理委員会が行うとしております。  それから2番目の(2)の報告の義務ですけれども、このような治療をしたときには治療 成績を必ず報告してほしい。そして正当な理由なく3年以上の報告義務違反があった場 合には登録を抹消することもあるという見解です。そう述べております。登録制度の仕 方は申請をしていただいて審査して、不受理の場合もありますけれども、承認をして実 施。実施した場合には報告を必ず出して、学会としてはその報告を元に毎年成績をまと めております。  次のページになりますけれども、登録申請の際には登録施設の設備ということで、い ろいろな設置基準として、採卵室、培養室など、または凍結保存施設の保存の設備も必 要だと。望ましいのはこれもあった方がいいだろうというので、さらにいろいろなもの を挙げております。  それから登録施設の要員として必ず必要なのは実施責任者です。それから実施医師、 あと看護師です。望ましいのは今エンブリオロジストという名前でも呼ばれていますけ れども、ラボの中で卵等を取り扱ってくれる方やカウンセラーのような方々を備えれば いいだろうとしております。これらの要員に関しては、どのような方に実施責任者にな っていただきたいかという要件も決めておりまして、日本産科婦人科学会では実施責任 者の要件として三つ。日本産科婦人科学会認定の産婦人科専門医であること。その後、 不妊症診療を2年以上従事している方。この登録施設において1年以上勤務、または1 年以上の研修を受け、体外受精の胚移植の技術を習得した者というような方になってい ただいております。  それから、登録補助医療に関する申請に当たり留意すべき注意事項。実施場所、また は実施責任者、実施医師、あと実施協力者などの項目に関してもいろいろと決めており ます。  倫理委員会は特に人の配偶子または受精卵を使った研究やAIDのときには必須です が、体外受精や顕微授精に関しては特に要求はしておりません。このようなものを作っ ております。  それで申請する際には、資料6の2の(2)〜(7)となっていますが、これはそれぞれを申 請していただくときの体外受精を申請する用紙です。それから顕微授精となっておりま す。体外受精・顕微授精・胚の凍結を申請していただいております。また実施責任者や 実施医師、それから実施協力者に関しても今までの生殖補助医療の研修歴やいろいろな 各項目があります。これらを出していただいて、それを一人一人審査させていただいて おります。そしてこれがこれに伴う申請書類になります。申請書類のところには1枚目 の体外受精の下のところにもありますように、このような書類を出すということと、後 は現場の見取り図を出していただくこと。そして3番目のところにはインフォームド・ コンセントに用いる説明書、関連文書を出すということが書いてあります。これも審査 します。説明書、同意書を審査させていただいております。そして審査したときにいろ いろな問題点が結構浮かんで参りまして、資料6の(8)を見ていただくと、会員へのお知 らせということで、インフォームド・コンセントの説明書、それから同意書、実施見取 り図に関して、よく申請される方が間違えて我々が何度かお尋ねするようなことをまと め、網羅して、先にこのようにホームページにあげさせていただいております。特にこ の6の(8)の中で4番目のところ、リスクです。治療のリスクをよく書かれることが大切 である、またカウンセリングの機会、成績の発表、学会への報告などを説明書に明記す るということをうるさく言って、登録申請する際には必ずここを説明書に書いてあると いうことを見ております。それから見取り図の方ですけれども、一番大切なのはやはり 卵、精子などを、施錠のできる場所で培養したり、凍結保存したりしていることがわか りやすいように、施錠の位置をはっきりと示していただくのを審査の一番の目的にして おります。  それから審査体制ですけれども、6に戻りまして審査体制は毎月その月にあった申請 がきた書類を書類審査しております。実地に行って見てということは少し人数的にも費 用的にもできませんので、書類で審査させていただいて審査委員は9名でやっておりま す。問題点が何かと言われると、やはり申請してきた書類のみの審査であることは問題 点はあると思っております。  それから2番目に質問を受けたのが、登録医療機関の全国的な分布はどうか。佐賀県 以外すべての都道府県にあるというのが答えにはなるのですけれども、資料6の(9)は、 9月に日本産科婦人科学会誌に報告をした平成16年分の体外受精等の成績です。これの 最後のところ、15ページ以降に各施設の一覧表が出ております。これが日本産科婦人科 学会に登録をされている施設です。○がABCとありますけれども、Aが体外受精、B が凍結、Cが顕微授精で○が書いてあります。これで見ていただきますと、25ページが 大体九州になりますけれども、福岡県から始まって見てみると佐賀県がない。佐賀県だ けありませんけれども、ほかの県は大体登録施設がありますという分布になっておりま す。それから最後の25ページの下に少し書かせていただいてあります、一番下の3行 ですけれども、このように登録をして報告していただいているのですが、報告を3年間 しないと登録を抹消する可能性があるわけですけれども、今年からですけれどもその年 に報告がなかった施設に関しては、1年でもしないと、このような施設が報告をしてく れていないということを明記するようになりました。  それからCでは未登録施設で不妊治療を行っている機関を学会として把握しているの かと言われると、これは登録申請してくれた所を審査しているので、未登録の所を把握 するシステムは今のところ持っておりません。ただ、その次のDのところにも書いてあ りますけれども、未登録機関に対するペナルティー等の登録を促すインセンティブがあ るのかという質問ですが、これに関しては未登録機関を調査するシステムの構築が重要 という考えで、今のところないのですが、登録を促すインセンティブの必要性があると 考えている。しかしこの特定不妊治療費助成事業の開始後、以前から生殖補助医療を行 っていた多数の施設から登録の申請があったので、これをうまく活用すると未登録の施 設がなくなってくる可能性があるのではないかと感じております。これが実施に関して の説明です。  それから2ページめくっていただいて、今後の個別調査の登録についての項目の質問 が、調査する予定の項目についてはどういうものかというと、これは参考資料の6を見 ていただきたいのですが、このように2005年度、2006年度というのは、試しに各施設 に入れていただいているのですけれども、2007年の1月1日からの治療に関してはこ の方法で取っていこうと考えております。項目は大きく二つに分かれておりまして、治 療から妊娠までという項目と、もう一つは妊娠から出産までという項目に分かれてデー タを取っております。このようにいろいろな項目、患者識別番号から適用、卵巣刺激法、 採卵法というような各項目に関して一人一人の個票で取っております。事務局から要望 のあった特定事業の項目に関しては、入れる方向で今検討をしております。UMINとい う大学病院医療情報ネットワークが結構いろいろなことを言いますのでなかなか入れに くいのですが、入れる方向で頑張っております。そのような感じで、ここの項目の中に は、まだ特定事業を用いたというような項目がないのですが、一応治療から妊娠までの 最後の辺りにこの特定事業を用いたか、用いなかったかというような項目を入れたいと 考えております。  それから登録システムについて、登録サーバーの維持・管理をどのような方法で誰が 行うのかに関してですが、これはインターネットを用いた個票登録を行っていこうと考 えております。サーバーはUMIN(大学病院医療情報ネットワーク)のサーバーを用い ます。ただここが一括登録と言って、1日に50件ぐらい採卵されている施設や結構たく さんやっている施設があって、そういうところの便宜を図るために一括登録をしたいと いうのですが、UMINにはそういうシステムがないので、そういう人たちがしやすいよ うに、徳島の医療情報部の協力を得て、一括はそこを通して最終的にUMINサーバーに データを蓄積しようという方向を考えております。維持と管理はUMINと徳島大学の医 療情報部でしばらくの間は行おうと。金額はUMINの方は一応無料なのですが、無料な だけに動きが遅いので、これもまた問題があるのですが、徳島の方に関しては日本産科 婦人科学会としてかかった分に関して支払いをしていく。どのような方向性かというと、 この図にありますように、各施設個票登録用の治療から妊娠までと妊娠から出産後まで のデータを右側のインターネットで個別にUMINサーバーにダイレクトに入れる方法 と、一括する場合はデータを全部まとめて入れたい場合は徳島のサーバーを通して、い ろいろと抽出や差し戻しなどをしますけれども、それを徳島のサーバーで蓄えたところ を学会を通してUMINのサーバーに入れようと考えております。そして1年ごとに解析 をしていこうと考えております。どのような問題意識を持っているかというと、このよ うな登録は時代に合わせていろいろな項目を変えていきたいことが多々あるわけですけ れども、今、無料でやっていただいているUMINでは、無料のために逆に言えば時間が かかると。早くやってもらうためのインセンティブがないといけないだろうと考えてお ります。  それから登録してくれる施設で、どのような患者を登録してくれているのかというこ とを査察する必要性がないのかというところを考えております。やはり入力していただ いたデータが価値あるものになっていくためには、その精度が高まらなければいけない わけで、それを高めていくための方策を考えていかなければいけないのではないかと考 えております。以上です。 ○田邊座長  齊藤委員、どうもありがとうございました。  今詳しく日本産科婦人科学会の登録のシステム、医療機関ならびに臨床設備、それか ら今後の個別調査票の取り扱いについて説明をしていただきましたけれども、ただ今の 説明に対して何か質問はありますか。 ○森委員  大変わかりやすい説明をありがとうございました。  参考2の(7)の2番目の登録施設の要員のところで、必要不可欠な基準要員として、看 護師1名以上と書かれているわけですけれども、資料の6の(2)の登録申請の用紙を見ま すと、実施医師、実施責任者の名前は書く欄がありますが、その下に実施協力者名とな っていまして、実施協力者名というのがどういう人が入るのかよくわからない。先ほど エンブリオロジストが必要だという話がありましたので、実施協力者というあいまいな ものではなく、そこに看護師やエンブリオロジストなどの名前を書く欄をぜひ設けてい ただきたいと思います。  それからやはり非常に技術中心で、それは当然こういった治療ですから、技術の信頼 の確保が大切だと思いますが、施設の要件として患者の快適さやストレスの軽減といっ たような点で、カウンセリングルームが挙がっているのですけれども、いまだに産科と 不妊科を一緒にしないでほしいという患者の声を非常によく聞きます。そういったこと をチェックするところがないので、そういった項目もぜひ挙げていただけたらと思いま す。以上です。 ○田邊座長  そのほかに質問あるいは意見はいかがでしょうか。 ○齊藤委員  その前に答えてもよろしいでしょうか。 ○田邊座長  はいどうぞ。 ○齊藤委員  資料6の(7)の実施協力者のところに看護師や胚培養士というような項目が明記されて いた方がいいと言われていましたが、日本産科婦人科学会としては、今のところはその 資料6の(7)の項目の上から6番目に、職名と資格のところで、実質で書いていただくと いうことで、看護師や胚培養士と明記していただく方向で考えて作っております。 ○田邊座長  今のところは看護師は必須ですか。 ○齊藤委員  日本産科婦人科学会としては一応、必須です。 ○田邊座長  前はなかったですよね。 ○齊藤委員  前はなかったです。看護という意味でもしていただきたいので入れております。  それから確かに、私たちの所でも同じように、産科の患者と不妊の患者が一緒に待つ というのは一番クレームが来るところです。個人医院の不妊の施設というのは不妊しか やっていないのでそういうことがないのですが、大きな施設または既存の施設では、ど うしても産婦人科といって、全部まとまった施設になって、なかなかこれを分けるのは 難しい所が多い。患者の要望としては十分我々も把握していますけれども、既存の施設 で今まで何十年もされている所がすぐに対応できるかというと、なかなか難しいところ もありますので、もちろん望ましいという方向ではどこかに明記するのが大切なことか と思います。 ○田邊座長  ありがとうございました。では鈴木委員、手短にお願いします。 ○鈴木委員  学会の報告について調査のことも兼ねて質問させていただいていいですか。今年の新 しいデータを今手元にいただいたわけですが、前は妊娠の経過不明数は載っていなかっ たのではないかと思います。それに絡めて素朴な疑問として、そもそも妊娠後の転帰と いうのは、結局その施設で分娩されない方が当然多いわけですから、患者の自己申告に 頼るというやり方でしかやはり集められていないのでしょうか。いろいろなやり方をさ れている施設があるとは思いますが、多くの場合はどのような形で正確な数を把握しよ うと努めているのでしょうか。 ○齊藤委員  確かに前は不明数というのはなかなか載っていなくて、全部足すと合わないというこ とがよくありました。不明数まできちんと入れてしようということになって、何年前か は申し上げられないですけれども、数年前から不明数の項目を入れさせていただきまし た。それから、確かにここの調査をする場合には、不妊を治療した施設に報告を求めて いますので、分娩まで扱っている所ではかなり正確な値が出ますけれども、出ないとこ ろもかなりあります。施設によっては産科施設にお送りするときに、日本産科婦人科学 会はこういう項目を登録しているので産まれた場合には報告してほしいというのを患者 自身に渡し、かつ施設の方にも渡しているとしている施設もあります。ただ、していな い施設ももちろんありますが、私たちはこの登録を5年ごとにもう一度見ていくことに なっていまして、そのときに今年度も行っていますが、必ず患者にこのような説明書を 渡して、治療を説明するときに学会としてはいろいろな報告を取っている。これは義務 として行われているので、こういうようなものに協力してほしいという文面を説明書の 中に入れてもらうことをチェックしております。ですから段々とですけれども、より正 確な値が出てくるのではないかと考えております。 ○田邊座長  ありがとうございました。   ○鈴木委員  そうすると患者サイドからすれば任意になるわけですね。もう一つ同じようなことで、 今後のUMINでのやり方ですけれども、これの場合ですと例えば最初の病院でこれをや って、次の病院でこれをやって、3つ目の病院でこれをやってというような、全部の流 れが一応できるようなシステムにはなるわけでしょうか。つまり患者行動が。でもそう するとすごい話になるという感じにもなるのですが、それこそ本当はプライバシーのこ とにもかかわる問題だと思うのです。それはいかがでしょうか。 ○齊藤委員  私の説明が間違っていたら言っていただきたいのですが、ここに挙げてある、例えば 14行の患者総数、IVFと書いてあります。これは各施設からこの患者さんがあがってき た数を足したものです。ところがA病院B病院でやった場合にその人が2回数えられて しまっている。ですから本当の患者数かと言われるとわからない。そこまでは調べられ ていない。UMINで行った場合でも各施設から同じ患者が登録されてきても、別の患者 として登録されてしまいますので正確な数字はわからない。 ○鈴木委員  つまりこれは患者ごとではなくて、ケースコードということなのですね。 ○齊藤委員  はい、そうです。 ○田邊座長  よろしいですか。時間が来ていますので本日の最後は、厚生労働科学研究「生殖補助 医療の安全管理及び心理的支援を含む統合的運用システムに関する研究」における「設 備、人的資源のガイドラインに関する研究」について分担研究されました柳田先生です。 よろしくお願いいたします。 ○柳田氏  ご紹介いただきました柳田です。どうぞよろしくお願いいたします。今ご紹介があり ましたように厚生労働科学研究の生殖補助医療体系における設備あるいは人的資源、ス タッフに関する現状はどうなのかということと、それを踏まえてこういう設備があった 方が、あるいはこういうスタッフがいた方が望ましいのではないか、そういう指針・ガ イドラインというものを作成しました。これは委員でいらっしゃいます吉村教授のご指 導のもとでやっています。  資料の方は、資料7の(1)(2)(3)(4)です。(1)というのは先ほど齊藤委員がご説明されまし た参考の(2)の7と同じです。資料7-(2)、7-(3)をまずご説明させていただきたいと思いま す。日本の設備、人的資源の現状ということで、平成16年の研究ということで、まず やりました。これは平成15年1月から12月までの間に産科婦人科学会に登録してある 施設、すべての施設で584だと思いますが、アンケート調査を送りまして集計をしまし た。本当であれば16年度締めのはずだったのですが、16年3月初めの時点でアンケー トを締め切ったのですがどんどんと送られてきまして、それから1カ月で100件くらい アンケートが来ました。結局少し数字が違ったりしているのですが、平成17年度に入 って最終報告という形で2度目の報告をしています。  今回持ってきていますのは資料7-(3)で、これを見ますと例えば先ほど患者が外来にお いでになったときに、一般の産科と一緒は嫌だということがありましたが、診察室がど うなっているかに関して調べた結果が載っています。下にページ数が書いてあるので、 それを見ていただいた方がいいです。57ページです。上からAの10と11というとこ ろに、外来診察室は一般産婦人科と同一というのが約76%。待合室に関しては同一とい うのが80%です。ですから違った外来、違った待合を設定しているのは100を引いた 反対ということになりまして非常に少ない数字です。20〜25%くらいの施設だというこ とです。  一応このアンケート調査の全体をご紹介したいと思います。飛んで申し訳ありません。 資料の7-(4)の1ページ、資料7の1番後ろから3枚目の1番上の表をご覧いただきたい と思います。これはアンケートを出した施設数が584施設です。これは産婦人科学会に 登録されている施設です。アンケートの回収が287です。ですから49%回収できまし た。あとは平成15年に産科婦人科学会の倫理委員会の集計です。申し訳ありません、 このIVFは体外受精という意味です。ICSIというのは顕微授精という意味です。です から1番最後の行、IVF体外受精と顕微授精の件数、これは採卵の件数と捉えていただ いたらいいと思います。この数が産科婦人科学会の集計ですと大体7万3,000集計あり ました。このアンケートでも平成15年に採卵をどれくらいやりましたかと質問してい ます。それを集計しますと5万5,000件になります。従いましてこのアンケートは恐ら く平成15年に日本で行われた採卵件数の76%をカバーしているという結果になります。 こういう結果で日本の現状はどうなのかを調査したわけですが、簡単に結論から言いま すと、日本産科婦人科学会では会員へのお知らせという形で、はっきりとガイドライン という形では出していないのですが施設基準というのを出しています。それは先ほど齊 藤委員が触れましたが資料7の(1)です。この2ページをご覧いただきたいと思いますが、 真ん中よりも少し上に(3)登録施設の設備、これには登録申請を行う際には下記の具備す べき施設基準を満たすよう努力すべきであるとあります。a)基準施設、b)その他の望ま しい施設があります。基準施設には採卵室と培養室、それから凍結保存設備の3点が記 載されています。これはいずれも大変重要な施設・設備です。採卵室の詳細については 例えば準無菌室仕様、保温ができることがあげられています。保温ができるというのは エアコンディショナーがある、空調があると言い直していいと思うのですが、エアカー テンというのは入り口の上につけまして空気の流れを作って塵埃などが入らないように するドアの役割をします。更衣室というのはつまり「着替える」ということに言い換え ることもできます。採卵室の設計は基本的には手術室仕様と同じであると述べられてい ます。手術室仕様というのは、基本的に準無菌ではなくて無菌室仕様なのでここは混乱 するところです(冒頭に準無菌室仕様とありましたので)。卵子は光や温度に敏感である ので光に対する対策、照明、それから独立した環境、そういったことが記載されていま す。培養室も同様に記載されています。  先ほどのアンケート調査ではここに書いてある言葉と全く同じ表現で質問しておりま せんので、少し言い換えをしました。例えば更衣室を「着替えをしている」に、エアカ ーテンに対しては「前室がある」というふうに言い換えをした上で、採卵室、培養室、 および凍結保存の設備があることのすべての基準を満たす施設の割合を平成16年度・ 平成17年度のアンケート結果から調べると大体15%の施設がこの基準に合っているこ とがわかりました。  そういう現状におきまして新たに平成17年度に、科学的な根拠を元にどういう設備 あるいは人的な配置が要るのであろうかと考察したのが資料7の(2)です。資料ページで いうと20ページからになります。生殖補助医療、ここでいう生殖補助医療体系という のは生殖補助医療つまり体外受精・顕微授精を指しています。施設内容としては、外来 部門・診療部門それから培養部門に分かれるわけですが、特に生殖補助医療に関しまし ては培養であるとか卵を採るとか胚移植をするとか、そういったことが特化した重要事 項です。行われる業務内容は21ページの左側、人工授精・体外受精・顕微授精のとこ ろに書いてありますような操作が入ってきます。精液を扱う、精子を処理する、人工授 精をする、体外受精ですとさらに採卵をする。卵子を体外で取り扱う。それから精子と 卵子を一緒にする。つまり媒精をする。受精卵を評価する。あるいは受精卵を培養する。 移植する胚を選択する。胚移植をする。顕微授精をする。あとは、その他付随する幾つ かの処理があります。例えば凍結保存をする。これは精子・卵子・胚の凍結保存があり ます。それからアシステッド・ハッチングといいまして卵の表面にあります透明帯とい う殻に傷を付けて着床しやすくする操作もあります。最近では着床前診断として受精卵 の一つの割球を用いて染色体の分析をする。そういうものも入って参ります。こういっ たものを扱う。非常に小さなものです。人間個体ではありませんので非常に小さな細胞 なのですが、そういったものを適切に扱うにはどういったものがいいのかというのを考 えなければいけないと思います。  22ページです。診療部門の施設・設備条件について。診療部門は診察室、待合室、処 置室、カウンセリング室、それから採精室などに分かれます。培養部門に入れてもよい と思いますが、採卵をする部屋。それから胚移植をする部屋があります。  先ほどから出ていますけれども、患者は産婦人科とは違った独立した場所での診療を 希望されますので、独立して設置できれば望ましいということです。ただ既存の病院に 不妊の外来を作ったということになりますと、そこで改造・改築をするということにな ると大変なことになると思いますので、これはあくまで別に設置することが望ましいと いう表現を取りました。カウンセリングルームも、やはり設置が望ましいと思います。 採精室は独立した採精室、つまりメンズルームとよく言いますけれども、ご主人に精液 を採っていただく部屋になります。50%ぐらいの施設がトイレとかそういうところで採 ることを指示していることが、前のアンケートの結果で明らかになりました。独立した 採精室を持っているのが53%です。男性は簡単に採れるとはいっても、人格をしっかり と保護することを考えた対処をしていただきたいと思いますので、私個人としては採精 室というのは独立したものを必ず揃えていただきたいと思っています。  採卵・胚移植室について。よく産婦人科の診療の中ですと分娩室と兼ねて採卵室・胚 移植室を設けているのが多いのですが、これは先ほどの日本産科婦人科学会のガイドラ インには、兼ねないようにという指示をしています。例えば胚移植あるいは採卵の予定 の時間に分娩の方が入ってきたということになると、どちらを優先するかというと当然 分娩を優先することになりますので、生殖補助医療が少し後回しに、影響を受ける可能 性がありますので、別に独立したものを設置すべきであろうと思います。あとは設備基 準としての清浄度についてですが、本来であれば体内に外科的に針を刺したりしますの で、手術室に準じた場所がよいと思います。少なくとも準無菌室レベルが必要です。準 無菌室は具体的には分娩室、あるいはNICUなどです。その他には採卵後の回復のため の休養室も必要になってきます。当然採卵室には、麻酔をしたりしますし針を刺します ので、救急蘇生のセットが絶対必要です。  検査部門・培養部門については、23ページからになります。この順序でお話しします と、いろいろな処置をした、指示をしたことの記録・管理が大事ですので、記録する記 録室が必要です。これは検査室でこの記録室を代用してやっていただいてもかまわない と思います。検査室では卵子の処理はありませんが、精液検査をします。また、治療に 用いる精子として処理をするのであればそれなりに清浄度があってある程度クリーンな 場所で設置をされるというのが望ましいところであろうと思われます。  培養室。これは「含む培養前室」と書いてあります。この培養室に関しましては、ア ンケート調査の結果では専用の培養室を保有している施設は86%です。ですからほとん どの施設が専用の培養室を持っているということになります。ただしこの「含む前室」 で前室も含めて持っているということになりますと39%に落ちます。この培養室は本来 であれば手術室レベルがいいのでしょうが、少なくとも準無菌室、つまり分娩室以上の 清浄度が必要であると考えられます。あとは独立した空調が必要です。準無菌室という ことになると、エアコンも普通のエアコンではなくて手術室と同じような小さな塵埃を 取り除くヘパフィルターが入っている仕様が必要になってきます。  手術室に入る前に前室というのがあります。前室でエアシャワーを浴びて、体につい たほこりを落として培養室の中に入ります。そのような形が一番いいと思うのですが、 こういうものがない施設であれば例えば、培養室と採卵室は隣り合わせにあるべきもの ですので、例えば採卵室を前室の代わりに使うとかそういう工夫も致し方のないことと 思います。ですから培養前室に関しては望ましいという表現をさせていただきました。  凍結保存室について。凍結保存室に関しては液体窒素タンク、精子あるいは卵子ある いは胚を凍結保存するためのタンクを保管する場所ですが、専用の部屋があれば一番い いのですが、なければ培養室あるいは検査室などに保管することになると思います。凍 結保存室を独立して設置することはさほど重要ではないと思っています。重要なのは凍 結保存できるという技術を持っているかどうかということです。先ほどの日本産科婦人 科学会のガイドラインにおきましても、凍結保存が必要である、その技術が必要である と明記されています。今は多胎防止のために戻す胚が1個2個と少なくなっていますの で、たくさん良好胚があった場合にはどうしても胚が残ります。そうしますと残った胚 を無駄にしないために凍結保存をすることが重要になってきます。ですから体外受精を する施設というのは凍結保存をする技術・設備をもっていなければならないと思ってい ます。「and」ということで考えたいと思います。以上が設備に関してです。  28、29ページをご覧いただきたいのですが、ここには施設構成の基準ということでサ マリーをしています。望ましい施設内容、診療部門は以下の部屋があることが望ましい。 検査培養部門は以下の部屋があることが望ましい。そして必要最少の施設内容としては 診療部門としては産婦人科診療部門との兼用もありうるということで以下の施設が必要 である。検査培養部門としては独立した培養室が必要である。ですから、施設で重要視 したいと思いますのは、独立した培養室。あとはクオリティーを上げるために、卵子・ 精子を取り扱うということで培養室の清浄度。それから採卵室の清浄度。つまり準無菌 室以上という清浄度です。それから凍結保存設備がある。この4点を重要視したいと思 います。  あとは人的なことなのですが、資料25ページからです。人的資源の基準ということ で、まず医師に関しまして、不妊治療に関わる産婦人科医師が取ることのできる資格は 二つあります。一つは日本産科婦人科学会が指定している専門医、これは研修が終わっ たというドクターに関して産婦人科というスペシャリティー、専門医ということで非常 に領域が広くて生殖補助医療というものに特化しておりませんので、これは不適当だと 思います。必要最低限の条件としてはいいと思います。あとは日本不妊学会、名前が変 わりまして日本生殖医学会になっておりますが、生殖医療指導医という認定をしていま す。ただこれも生殖補助医療に全くかかわらない方もお取りになることができますので、 ある意味で不適当と私は思っております。従いまして適切な医師として評価する資格は 現在ないというのが現状です。この辺のところを委員の先生方にお考えいただければと 思います。  あとは先ほどから出ております胚培養士、不妊カウンセラー、看護師、場合によって はコーディネーターということなのですが、看護師については専任の看護師が絶対必要 であると思います。ただこのときにいわゆる不妊看護師でなければいけないかというこ とに関しましては、恐らく外来を一生懸命やっていただける方であれば、専任の方であ ればきちんとマスターしてやっていただけると思いますので、私はこだわらなくてもい いと思います。胚培養士に関しましては、これは国レベルでの資格認定がありません。 今認定されておりますのは任意団体、例えば学会レベルで日本哺乳動物卵子学会、ある いは日本臨床エンブリオロジスト学会、この二つの団体がそれぞれ認定証を発行してお ります。前述の日本哺乳動物卵子学会は認定制度を始めてから今年で5年になりますが、 現在のところで調べますと455名の方が認定を受けています。認定試験の合格率が89% です。内訳は女性が79%です。さらに学歴ですが、60%以上の方が4年制大学以上の ところを出ています。大学院を卒業した人たちは15%です。30歳未満の方が70%で非 常に若い方がメインだということがよくわかります。  一方日本臨床エンブリオロジスト学会はホームページから調べますと4年制大学を出 ている方は20%くらいということでした。現在まで恐らく160か180名くらいの方が 認定を受けているということでした。このような状況をふまえると、胚培養士が必要だ と記載してもどの程度の胚培養士なのかという評価ができないのが現状で、ただ単にそ の胚培養士は必要条件だとしても問題が残るかなと思っています。ただし、胚培養士の 質が不妊治療の成績に大きな影響力を持っていることも事実です。  カウンセラーもいた方が望ましいと考えていますが、恐らく半分以上の施設がカウン セリングをしてもサービスという形でやっているというのが実情で、コストを取ってや っていません。従ってカウンセラーを雇用する経済的な面からでもうまくかみ合ってい ないのかなという気がします。コーディネーターというのは体外受精などの計画を患者 に説明したり、患者の都合に合わせて、都合のいいように医師と相談をして計画します。 そういうことをするのがコーディネーターなのですが、これはまだまだ普及が悪いよう で30%ぐらいだと思います。従いまして人的なことに対するガイドラインとしましては 日本産科婦人科学会が指定しておりますもの以上のものは現在のところお話しできない のではないかと思います。以上です。 ○田邊座長  どうもありがとうございました。詳細なご説明ですが、そろそろ時間も近づいてきて います。どなたかご質問はありますか。 ○柳田氏  一つ言い忘れました。1、2分で追加させていただきたいのですが、資料7-(4)を忘れ ました。後から2ページの一番下の表をご覧ください。施設基準についてです。これは 先ほど施設のところで左側の項目に書いてある専用培養室が必要、それから採卵室の清 浄度が準無菌室レベル以上が必要、そして培養室が準無菌室レベルが必要、さらに凍結 保存の設備が必要であるとすると、そこまですべて満たす施設が70%です。アンケート 調査を行った全施設の70%です。さらに体外受精をしたときに、先ほど申し上げません でしたがどうしても受精をしないということが10〜15%に発生します。そうするとその 対策を行わねばなりません。対策は顕微授精の実施になります。従いまして体外受精を するからには先ほどいった凍結保存は当たり前だと思いますし、顕微授精もやはり当た り前だと思います。それができなければ体外受精の受精障害に対して無力ということに なります。従いまして顕微授精システムもなおかつ備えるというところまで条件を厳し くしますと全体の施設数の62%になります。この62%は、178施設になります。287 施設中178施設です。この178施設での体外受精と顕微授精の実施件数は大体5万件に なります。このアンケートで集計した全施設での体外受精・顕微授精の実施件数が5万 5,000件ですので、ここまで基準を厳しくしても実際施設の基準からはずれた施設での 件数は5,000件で10%ということになります。つまり、ある程度の件数をこなしている 施設ではほとんど顕微授精ができるということになります。それが追加です。 ○田邊座長  どうもありがとうございました。何かただいまのご説明に対して。 ○鈴木委員  いろいろ実態が垣間見えるような調査で非常に勉強になりました。最後に付け加えて いただいたところに関してなのですが、病院の施設認定にもかかわる話なのですが体外 受精をするからには顕微、あともう一つ凍結の問題。ただ病院の中には、うちの病院は 方針として凍結しない、方針として顕微はやらないというところも今まではあったと思 うのです。技術としてしない、できないということではなくて。 ○柳田氏  どういう方針なのでしょうか。 ○鈴木委員  顕微に関しては前に伺って、今どの程度そういうドクターがいらっしゃるのかわから ないのですが、以前聞いたお話では顕微授精に関して、自分は安全性を疑問に思うとい うことで顕微授精はやらないとおっしゃったドクターがいた。それともう一つ、凍結に 関してもこのごろは、なるべく卵を少なく作ってということで、それ以上むしろ余分に 作らないというのでしょうか、そういった方針なのでうちは凍結設備はやっていないと いう病院があるのは一つ聞いています。 ○柳田氏  そのことについては、それはそれでよろしいのではないかと思うのですが、顕微授精 のリスクは、15年以上経っていますのでいろいろな報告がされていて、染色体異常が多 いとか、形態上は奇形が増えるとか、本当なのかどうなのかと出ていて、今はそんなに 問題になっていないと思うのです。卵を少なくするのは一番ベストだと思いますが、少 なくしてもときどき6個8個採れてしまって、いい胚が残ってしまうときもあるので、 ではそれを捨てるのかということになりますので、その先生のお考えはそれでいいと思 いますが、私は個人的にはそれは相容れないお考えではないかと思います。 ○田邊座長  体外受精とかそういうものに対するフィロソフィーが少し違うかもしれませんね。そ れぞれの主張はよくわかります。 ○楠田委員  我々新生児医療をやっていると日本の新生児医療も平均では非常にいいレベルなので すが、施設間格差がものすごく大きな問題なのです。日本の医療というのはいろいろな 分野で施設間格差があるというのが大きな問題で、下の方を上にすれば良くなるという のが当然のことなので、先生方がそういうガイドラインを作られてやっていこうとされ ていると思うのですが、いろいろな設備だとかそれから人的な資源だとかそういうもの と、これをぜひ知りたいのですが、こういう生殖補助技術の良いアウトカムは最終的に どういうものか。例えば単に妊娠率が上がるというわけでももちろんないのだろうし、 患者さんの満足度が上がるというのでもないだろう。先生方のこういう諸条件や、生殖 ガイドラインを作られてどういうものが最終的な目標なのか。我々新生児というのは比 較的簡単で死亡率が下がるとか予後が良くなるとかそういうことで当然それを目指すの ですが、先生方の最終的なアウトカムはどういうものですか。 ○柳田氏  これは考察しておりませんので私個人的な考えということでお答えすると、妊娠率が 上がるのはもちろんですが常に安定した、いつ患者さんがおいでになっても同じような レベルのものを提供できる。それも安全に、遺伝的なリスクも含めて安全なものを提供 できるというのを目標にしています。もちろん患者さんの幸福というものもあると思い ますが、一応そういったものを考えてはいます。 ○楠田委員  そうすると再現性ということですか。 ○柳田氏  そうです。 ○田邊座長  新生児科の先生には大変ご迷惑をおかけしていると常々聞いていますので、その辺で 先生が入ってこられたと思うのですが、その他ございませんか。 ○泉委員  先ほど東京都からも件数が少ない施設があると話があったのですが、一般的に考えれ ば技術の保持や、培養液とか機材とか、使うもののクオリティーを考えると、一定の例 数というのは必要だとなるのかと思うのですが、その辺のご議論はどうでしょうか。 ○柳田氏  そういうことも言われておりまして、実は資料の7-(2)の33ページにあります。黒く 塗ったグラフが出ています。この報告について自分で統計的処理などをせずに考察して しまったことに反省しているのですが、このグラフは横軸が年間採卵件数、例えばゼロ というのは年間採卵件数がゼロという施設です。例えば160というのは年間採卵件数が 160の施設です。Y軸を見ますと例えば30ということになっていると30%の妊娠率と いうことになっています。そうすると年間採卵件数が120とか140を越えるとそれ以下 の施設より妊娠率が安定してよいと思われるようでした(妊娠率が20%以上)。そうす ると年間120くらいの採卵件数はある程度の妊娠率を得るために必要なのかなというよ うな考察をしてしまったのですが、それは一切統計的な処理をしていないので、この場 で撤回させていただきたいと思います。じっくりグラフを見ていると、そんなに差はな いのかなと思うのです。例えば採卵件数の少ない施設もラボの機器の管理をきっちりと 行っていれば成績に差が出ないのではと考えています。胚培養士の仕事を見ていますと、 使うときだけではなくて毎日チェックをしています。例えばインキュベーターのガス濃 度を毎日チェックする。温度をチェックして実際インキュベーターを使っていないとき もずっと毎日やっている。そういったクオリティーをアップするような管理をしていく と採卵件数が少なくとも恐らく安定した成績が得られるのではないかという気がしてい ます。 ○田邊座長  どうもありがとうございました。まだまだお聞きしたいことがたくさんあるのですが、 時間が過ぎましたので本日の第1回目の検討会をこれで終わらせていただきます。また この次に、我々に与えられた課題をお話しいただかなくてはいけませんので、本日の説 明が大変参考になったと思います。それでは今後のことについて事務局からご連絡いた だけますか。 ○齋藤母子保健課長補佐  次回、第2回目の検討会ですが、こちらの方は11月30日木曜日、17時から19時と させていただきます。次回からこの検討課題に関してのご議論を進めていただく予定で す。また会場などにつきましては別途ご案内させていただきます。ありがとうございま した。 ○田邊座長  それではこれをもちまして第1回特定不妊治療費助成事業の効果的・効率的な運用に 関する検討会を閉会します。どうも遅くまでありがとうございました。 ―終了― 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 電 話:(代表)03−5253−1111 阿部(内線:7939)  1