資料No.2

横浜国立大学大学院機能発現工学専攻
教授 安藤 柱

A)近年の社会問題から見て、第三者機関の監査の必要性が見直される機運があると考えられる。
1)第三者機関の監査強化(有効化)が痛感された例
 1.1)建築構造確認申請の監査
 1.2)建築施工管理
 1.3)会社の会計監査

2)第三者機関の監査の有効性が痛感された例
 2.1)銀行の監査と営業停止
 2.2)保険会社の監査と営業停止
 2.3)証券会社の監査と営業停止

3)第三者機関の監査の必要性が痛感された例
 3.1)自動車のリコール制度(2社)
 3.2)瞬間湯沸かし器の安全性
 3.3)原子炉機器の不具合事例報告

B)不具合事例・異常現象統計からの考察
1)表1は日本ボイラー協会のホーム頁から引用した不具合事例統計である。内容を精査してみると、大部分がヒューマンファクターに起因している。この点を考慮して、2年連続運転の認定に際しては、安全管理、運転管理、保全管理及び教育と訓練に特段の配慮を行っている。そのために、表1の不具合事例は、2年連続運転認定の事業所では殆ど発生していない。この点は、第2回委員会の石連資料「法規別異常現象」ともよく対応している。

2)第2回委員会の石連資料「原因別異常現象」を見ると、ヒューマンエラー(15件)の他に、管理不適切(22件)、腐食・劣化(34件)、工事管理(18件)、点検不十分(13件)の合計102件が指摘されている。これはヒューマンファクターに起因した異常現象であるといえる。この他に、設計・施工(24件)、地震・天災(2件)が指摘されている。このことから、全体の約80%(102件)は、安全管理の徹底、すなわち適切な教育訓練や適切な保全管理、すなわち2年連続運転認定条件の水平展開により防止可能な場合が多いと考えられる。

C)連続運転期間の更なる延長によるコストの削減
1)連続運転によるコスト削減(2年連続:480億円、4年連続:720億円)に対して、第三者機関の監査によるコスト増(4億円×SD工事延長日(2〜3日))は約12億円で、720億円に比べて多くはない額です。このコスト増は、連続運転の社会的受容性を高めるために最低限必要なコストとも考えられる。
2)連続運転期間を4年以上に延長して、更なるコスト削減を取得することは、大きなメリットであるといえる。ためには、次の条件が必要であると考えられる。
 2.1)工学的合理性を徹底追求することにより、安全性を担保する。
 2.2)プライドあるオーナーシップには、緊張感、公開性、社会的認定の裏付が必要であると考えられるが、それには、ISOのごとき第三者機関の監査が必要であるといえる。また、上記のごときヒューマンファクターによる異常現象を防止するためには、プライドあるオーナーシップが重要であると考えられる。
 2.3)連続運転期間を4年以上に延長して、更なるコスト削減を取得するためには、上記ヒューマンファクターによる異常現象を現時点より相当防止し、社会的受容性を向上させることが必要であると考えられる。

D)結論
以上のごとき考察により、第三者機関による検査を積極的に利用することにより、公開性、透明性、緊張感を確保し、ヒューマンファクターによる異常現象を低減させて社会的受容性を向上させることにより、より長期連続運転の認定を取得することが、最大のメリットであると考えられるが、如何でしょうか?



表 1 ボイラー等の不具合事例(ボイラー協会のホーム頁より)

図

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