06/09/29 第64回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第64回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年9月29日(金) 14:00〜16:10 場所:厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎5号館2階) 出席者:  労側委員:稲垣委員、岡本委員、鴨委員、龍井委員  使側委員:吉川委員、前田委員、松井委員、山崎委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奧山委員、佐藤委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  ただ今から、第64回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は、篠 原委員が欠席です。早速、議事に入ります。  本日の議題は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令案要 綱」、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、 事業主が適切に対処するための指針案」および「事業主が職場における性的な言動に起 因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針案」について、と「パートタ イム労働法・指針の実施状況について」です。  まず、第1の議題である「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に 関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する 省令案要綱」、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事 項に関し、事業主が適切に対処するための指針案」および「事業主が職場における性的 な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針案」について事務 局から説明をお願いします。 ○安藤雇用均等政策課長  議題1の関係資料として資料No.1から資料No.3までを用意しています。資料No.3は、 先日諮問した省令指針案ですので、適宜、参照をお願いします。  資料No.1は、9月27日まで行われていたパブリックコメントに寄せられた意見です。 応募総数508者となっていますけれども、27日の深夜に至る多数の意見が寄せられた という経緯もあり、誠に申しわけありませんが、未だ取りまとめ中・精査中の部分がわ ずかではありますが残っているという状態です。項目ごとに主な意見として3者以上か ら同様な意見が寄せられたものを特記してまとめた形にしました。  前回、紹介した以外の意見を中心に紹介すると、まず省令案要綱については、間接差 別について「研究会で取り上げられたものすべてを規定すべき」という意見などがあり、 性差別指針については「直接差別のタイトルを改めるべき」、業務の配分について、「日 常的な業務指示は含まれないという所を削除すべき」、「婚姻を昇進の基準とすることは いけないと明示すべき」という意見。また、間接差別については、「厚生労働省令に定め る以外に存在すると明記すべき」、「間接差別の定義を見直すべき」、「合理性の判断に当 たっては、事業主が説明責任を負うものであると明確にすべき」などの意見がありまし た。妊娠・出産等を理由とする解雇、不利益取扱い関係では、「切迫流産・出産後の回復 不全は削除すべき」、「いわゆる軽易業務への転換に係る自宅待機の部分を削除すべき」、 「不就労期間について産休期間を除くべき」といった意見がありました。セクシュアル ハラスメント指針については、「セクシュアルハラスメント自体が人権侵害と明記すべ き」、「事実確認中に、行為者が退職を申し出た場合、事実関係が確認できるまで保留す べき」、「違法性の高いセクシュアルハラスメントについては懲戒処分にすべき」、「第三 者機関の設置を義務付けるべき」、「セクシュアルハラスメントの予防の項目を設けるべ き」などの意見がありました。これらの意見については、さらに精査・検討した上で、 これらに対する厚生労働省としての考え方と併せて、ホームページに載せることにして います。  続きまして資料No.2ですが、これは前回の分科会において、労働側委員から出され た意見について、これまでの審議経緯等を事務局として整理したものです。まず、直接 差別についての雇用管理区分についてですが、削除すべきということも含めて意見をい ただきました。基本的に事務局としては、ここに載せております昨年12月27日の労働 政策審議会建議を踏まえたものです。  次に、配置について「時間外・深夜等の多い職務への配置にあたって、その対象を男 性労働者のみとするというのは、例としてふさわしくない」というような意見がありま したが、これについては参議院での民主党の神本議員から、まさにこうした事例につい ては男性差別ではないかという質問があったところです。なお、カッコ書きしています が、共働き・片働きについては、男女双方にこうした条件を課した場合には均等法第6 条の性差別ということにはならないということです。  それから間接差別について「省令に挙げたもの以外にも間接差別があることを明記す べき」という意見がありました。前々回もお答えしていますが、これについては、こち らに三つ並べているように、国会審議の中で間接差別の定義は指針に盛り込むとともに、 それらも含めて、司法判断として間接差別は他にあり得るということなどについてパン フレット等で周知を図ると、いう答弁を申し上げています。  それから妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いについて「育児休業と産後休業は取 り扱いを区別すべき」という意見が分科会の審議過程で出されましたけれども、最終的 には建議には盛り込まれなかったものです。「産後休業は一般の疾病と区別して取り扱う べき」という意見もありましたが、建議の中に示された不利益取扱いの考え方としては、 「休業期間を超えて働かなかったものと取り扱うこと」、「通常の人事異動のルールから 十分に説明できない取り扱いを行うこと」、「他の疾病の場合の休業等と比較して不利に 取り扱うこと」等は不利益取扱いと判断されるものと示されたところであり、指針の中 ではそれらを踏まえて記述しています。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。ところで、前回の分科会において、労働者側委員に対して 発言いただいた意見をまとめて提出していただくようお願いしたのですが、いかがでし ょうか。 ○龍井委員  そもそもの趣旨が、既に発言させていただいた内容についての再確認ということでし たので、本来ならば議事録の整理として取り扱っていただくべき問題だと思いましたの で、発言メモという形で事務局に提出させていただきました。扱いも含めて、そういう 経過にさせていただいたことについて理解をいただきたいと思います。 ○横溝分科会長  そういう状況ですのでご了解いただき、他の意見をいただきたいと思います。いかが でしょうか。 ○岡本委員  パブリックコメントに、だいぶたくさんのコメントが寄せられたと思います。私たち のところにも意見書が幾つか届きました。中身を見ると、これまで労働側がいろいろ指 摘してきたことも含まれているという感想を持ちました。こうした意見を踏まえれば、 まだまだこの審議会で指針の内容についてきちんと詰めていく必要があると思います。 昨年の建議に至った議論の中でも、かなり指針の議論に委ねていくということが多かっ たのではないかと認識しています。実際はこれからこの審議が、パートタイム労働の議 論に入るということがあったとしても、非常に時間的にタイトな形で進んでいると思わ ざるを得ません。私たちも、法の施行前にきちんと半年位かけてPRしていく、周知を していくことは非常に大事なことだと思っているわけですけれども、なかなかスケジュ ールというかこれまでの議論も踏まえて非常に厳しいということを実感しています。ぜ ひ、最初にスケジュールありきでの議論とならないように、それをまずお願いしたいと 思います。  その上で、全体の部分ですが、幾つかまとめて意見を申し上げたいと思います。まず、 雇用管理区分についてです。法改正議論の際にも、労働側としては、再三、問題点を指 摘してきました。しかし、指針の中の記述ということがありましたので、私たちとして は今回の指針の議論の中で、あらためてこの問題点について議論をしたいという思いで いましたし、そうした整理もしてきたつもりなのですが、こうした経緯の上に、再度労 働側として意見を申し上げれば、この雇用管理区分そのものが差別の温存につながって いるということを、これまでも指摘してきました。単なる形式ではなく、企業の雇用管 理の実態に則してという部分が加筆されたとしても、やはりまず雇用管理区分が異なれ ば差は認められるという原則は変わらないと思います。指針もすべて同一の雇用管理区 分の中においてという書きぶりで書かれています。この「雇用管理区分で差別認定を判 断する」という項はぜひ削除していただきたい。先ほど建議の流れの話もありましたが、 あらためて私たちとしてはそのことを申し上げたいと思います。  それから、間接差別についてですが、第62回審議会の議論の中でも、龍井委員から 国会審議や附帯決議を受けて、省令の3点に限定されないことや、5年後の修正を待た ずに追加見直しをしていくということについてどのように対応していくのかという質問 がありました。また、今の説明の中でも国会答弁の話がありました。パンフレットや通 達で記載をしていくということでしたが、少なくとも間接差別はこの省令で列挙する以 外にも存在するということについては、間接差別一般の定義の箇所に盛り込んでほしい ということを申し上げたいと思います。また、間接差別の定義そのものについてなので すが、法の表現を引用しているという話がありましたけれども、非常にわかりにくい表 現になっています。定義については研究会報告であった表現そのものに直していただき たいということを申し上げたいと思います。  これは確認の部分なのですが、この中では明記されていませんが、間接差別の合理性 の説明責任については、当然事業主が説明責任を負うという理解でよいのかどうかとい うことを確認させていただきたいと思います。  それから、転勤要件についてなのですが、転勤でしか育成できない職務であるのかど うか。昇進後の職務内容が転勤経験と密接に連動するものかどうかということが問題だ と思いますので、そこのところをきちんと明記していただきたいと思います。その上で、 「組織運営上」という言い方が入っているのですが、組織運営上の必要となると、かな り幅広い解釈ができるので非常に不安に思います。この部分については、どういう意味 合いを考えているのかをお伺いしたいということとともに、この人事ローテーションと いうことが単に形式ではないということをきちんと明記していただければと思います。  それから、妊娠・出産の不利益取扱いの禁止の所です。ここも先ほどの資料No.2にも あったと思いますが、ずっとこの間、特に産後休業の所については、一貫して強制休業 期間中であるのですから疾病、または育児介護休業法の不利益取扱いとは同じように扱 うべきものではないのではないかということを、再三、議論の中で指摘してきました。 ここについて言えば、強制休業という性格から考えても不就労はなかったものだと扱う べきだと思います。例えば、年次有給休暇の資格要件についても、産前産後休暇につい ては出勤したものとみなしています。これは多分通常の疾病とは違うという判断がある からなのではないかと思います。ぜひ、昇進・昇格における判断、それから一時金や退 職金の支給額の算定における判断については出勤したものとみなすということを考え方 として出していただければと思います。  それからもう一つ、不利益な自宅待機の部分ですが、これも前々回の議論の中で質問 もさせていただきましたし、意見も申し上げましたけれども、このなお書きの部分をあ えて書かれるということについては非常に懸念があります。労働基準法上の書きぶりと も微妙に違っているのではないかと思います。「女性労働者が転換すべき業務を具体的に 指定しなければ」、この指定するということは、非常に実態として難しいことだと思って いますし、その上で、指定しなければ経営者は転換すべき業務を与えなくてもよいのだ というように安易に考えて自宅待機をさせてしまうのではないかということを非常に心 配しています。そのことも意見として申し上げたいと思います。  最後に、セクシュアルハラスメントについては、より実効性を高めるためにも、きめ 細かな具体的な対応指針がどうしても必要だと思います。多分パブリックコメントの中 でも、かなり具体的にこの問題については実態そのものが出されて、いろいろな懸念や 意見が多かったのではないかと思います。そうした意見も踏まえて、これまでも意見を 申し上げてきましたけれども、きちんと対応していただきたいと思いますし、セクシュ アルハラスメントは人権侵害なのだということをきちんと明記もしていただいた上で被 害者への救済を幅広くしていくための指針・通達の明記をしていただきたいと思います。 これまでの議論の中で、事務局からも口頭で説明がありましたけれども、そうしたこと も含めて、すべてが指針ということにならないかもしれませんけれども、さまざまなケ ースについてよりきめ細かくセクシュアルハラスメントの部分について整理をして書き 込んでいただきたいということを申し上げたいと思います。以上、基本的な労働側の考 え方として申し上げました。 ○横溝分科会長  他に、いかがでしょうか。 ○安藤雇用均等政策課長  今の意見について、質問もありましたので、その点についてお答えします。幾つかは 資料No.1でまとめた一定の経緯説明が参考になるかと思いますけれども、一つは、間接 差別の合理性の有無についての事業主の説明責任の部分ですが、これについては何度か お答えしておりますが、事業主が厚生労働省令で定める措置を行うという場合に、合理 的な理由を説明できない限り均等法違反になるという解釈です。従って、通常、行政と して対応する場合に、事業主に指導する際には、合理性があるかどうか、まず事業主に 対して説明を求める。そして、事業主の説明で合理的な理由があると認められない場合 は、法違反としてそれなりに指導するということになります。均等法上の規定自体は訴 訟の際の立証責任を定めるというものではない。ただ、そうしたものも解釈自体は参考 にしていただけるのではないかと思っています。  それから2番目に、総合職の転勤要件についての所ですけれども、組織運営上、転居・ 転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要という部分についてですが、想定 していたのは、例えば支店長のような一定のポストに総合職が就くということが予定さ れていると。そのために、その組織体制を維持・管理していく場合には総合職を転勤さ せることが必要だというような場合があると思います。また、金融業のように不正を防 止するために定期的に移動しても、転勤しなければいけないという状態もあります。そ うしたものも組織運営上の必要性と思っています。いずれにしても、個々のケースで合 理性を判断していくことになると思います。  それから、軽易業務転換のことで懸念を表明されましたけれども、そういう懸念があ るということについては、十分聞かせていただきましたので、それは乱用される恐れが ないというような形で、誤解が生じるようなことがないように施行にあたっては十分配 慮をしていきたいと考えていますし、セクシュアルハラスメントについても、いろいろ と細かな情報は寄せていただいていますので、それについては個別ケースへの対応のノ ウハウとして参考になる部分があると思っています。周知、施策の推進にあたっては参 考にさせていただきたいと思っています。以上です。 ○横溝分科会長  鴨委員どうぞ。 ○鴨委員  岡本委員から、セクシュアルハラスメントの部分も含めてより細かくという注文を出 したわけですけれども、セクシュアルハラスメントの部分については、時間の関係上、 細かなところというのが、この場で反映されていない部分があると思いますので、少し セクシュアルハラスメントの部分において、こういったところはぜひ入れてほしいとい うところについて発言させていただきたいと思います。セクシュアルハラスメントの所 については、どうしても被害者が退職に追い込まれていくというケースが多いというこ とを考えると、この指針を被害者側にとって使い勝手のよいものにしていただきたいと いうことを強く要望します。そういったことから考えたときに、職場の概念の所なので すが、業務遂行の場所となっていますけれども、ここの所は、狭い意味で職場というと ころを限定せず、もっと広い意味で限定していただきたいということで、職場の上下関 係の延長でセクシュアルハラスメントが発生していることが多いということを考えたと きに、実質的な地位の乱用がないかどうかというところが重要であると思いますので、 そのことをぜひ示していただきたいということです。  それから、労働者側の対応の中で、なぜか抗議をした、拒否をした、抵抗したという ようなところが前提とされるような記載があるのですが、セクシュアルハラスメントは 実際に受けた者にしかわからない、いろいろな思いがあるわけですけれども、職場の中 においては、特に上下関係の延長などそういった中において断れないというところがあ るわけですから、抗議・拒否・抵抗というようなものを前提とするような記載というの は、修正すべきだと思います。  それから、事実確認のそれまでの措置ですけれども、相談をした被害者を相談があっ た以降においても、被害者と加害者が隣り合わせの机でそのまま仕事をさせられている という状況が多々職場にあるわけです。そういった意味におきましては、その事実が確 認されるまでの間においても、当事者の引き離しなど可能な限り必要な措置を講ずると いうことを明記していただきたいと思います。当然のごとく事実確認後におきましては、 被害者と行為者の引き離しは必要となると思います。原則として、その際行為者の方が 異動の対象となるべきであるということを明示していただきたいと思います。  それからセクシュアルハラスメントの事実確認で、時間がかなりそこに取られる傾向 があるわけですけれども、できるだけ時間を取らないということをぜひ明示していただ きたい。ぜひ状況判断でセクシュアルハラスメントであるというところを短時間で判断 していただきたいです。それからセクシュアルハラスメントそのものがやはり人権を侵 害するものであるということについては明示をしていただきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、ありがとうございました。どうぞ松井委員。 ○松井委員  先ほど課長から間接差別の説明があった点で少し確認をしたいのですけれども、これ は前回のときにも労働側から意見が出たところで、確か室長が答えたと思いますが、私 の記憶が正しくないかもしれませんけれども、課長が説明したことと室長の説明したこ とが自分の頭でうまく整合性が取れなかったので、まず、前回室長がどのような形で答 えられたのかを繰り返してもらって、それが課長の今日の説明と整合性が取れるかどう か、きちんと説明をお願いします。 ○鈴木均等業務指導室長  前回私が答えましたのは、間接差別の定義の(1)、(2)の部分について、生じる説明責任 がどちらにあるのかという話につきましては、裁判所の話ですと。裁判所の話ですから 指針に明示すること自体は適当ではないと思いますと。ただし、もしあえて言えば、一 般的な法理としましては、(2)の部分、要は相当程度の不利益かという部分につきまして は、通常は労働者が説明責任を負い、(3)の部分の合理性の部分については使用者が責任 を負うということが欧米の法制では一般的ですというようなことを申し上げました。  本日課長が申し上げましたのは均等法の間接差別、第7条に基づく間接差別について、 これは行政指導する際にどういう形でやるかということにつきまして話をしまして、こ れについては国会でも答えていますけれども、間接差別の合理性の主張については、先 ほど申し上げたように一般的には使用者側に負っていただくことが諸外国の例でありま すので、行政指導の際にも、まずは事業主から説明をいただいて、合理性が認められな い場合には違反となりますといった行政の取り扱いにつきまして、これはわかりません けれども、裁判所で実際に民事問題として判断する場合には、尊重していただく場合も あろうかと申し上げたわけでして、特に違うことを言っているわけではありません。少 し場面が違うものです。 ○松井委員  そうしますと、その行政指導に至る過程において、労働者側が、私は相当程度不利益 を被っているからということで、労働局の方に話が行って、そこから何か事実確認が始 まってというようになるのでしょうか。 ○鈴木均等業務指導室長  多分2パターンあると思いまして、要は個別の労使紛争になっている場合には、そう いう形で相談していただいて私どもが伺って、3番目の合理性について聞くこともあろ うかと思いますし、逆に私どもが今現在25条といいますが、今度新しく29条になりま すけれども、定期的にいろいろな事業所に参りまして、いろいろな制度を見る場合に、 この制度は間接差別ではないかという指摘をする場合には、これは労働者側が登場しま せんので、そこの部分の(2)の要件について省令の三つに該当するかどうかは私どもで判 断した上でそれについて合意性についての説明をお願いするというパターンになろうか と思います。 ○横溝分科会長  よろしいですか。はいどうぞ、稲垣委員。 ○稲垣委員  私の方から母性保護について少し意見を申し上げたいと思います。今回の妊娠・出産 を理由とする不利益取扱いについてのところで、妊娠のところでは、一般の疾病と同程 度であれば不利益ではないということが指針として書かれていますが、母性保護という ことでいうと、例えば先ほど岡本委員も触れられましたけれども、労働基準法上におい ては、しっかり保護ということで書かれているわけです。それが今回の均等法の指針の 中で、そういうところが弱まっていくことが絶対にあってはいけないと思っています。 例えば外国のILO条約などにおいては、一般疾病と妊娠・出産等の休暇は明らかに変え てあります。母性保護ということでそちらの方の保護を強くしていることがあると思い ます。日本では現在のところは一緒の扱いですけれども、ぜひそういう観点を入れてい ただいて、今回の均等法で、性別による差別ともう一つは母性保護をしっかりとやって いかなくてはいけないということがあると思いますので、ぜひその点はよろしくお願い したいと思います。 ○横溝分科会長  ほかにいかがでしょうか。では龍井委員お願いします。 ○龍井委員  今、岡本委員から冒頭にありましたように、本当は国会審議の中でも、雇用管理区分 については、審議会の場、分科会の場でという認識でいましたので、もう一度本当は基 本論議をしたいところなのですが、今、示していただいた資料2の建議でこういう整理 をしていましたと。そうだとすると少し伺いたいのは、そもそもこの議論があるいろい ろな背景の一つとして、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)からの強い指摘があり、 そして国会答弁の中でもそれを踏まえて見直しをしますという側面からの見解も示され ました。改めて伺いたいのは、その女性差別撤廃委員会のためだけにやるわけではもち ろんありませんけれども、その指摘が本質的にどういう問題を指摘していたのかを改め て認識しているか。今回のこの規定ぶりが見直したことによって、それがどういうふう にクリアしたのかと考えているのか、その点を改めてお伺いしたいと思います。 ○安藤雇用均等政策課長  雇用管理区分の問題につきましては、建議までの議論におきましても雇用管理の実態 に即して判断しなければいけないということでいただいたものと思っております。今回 の指針に当たりましては、そのことについて記述を明らかにして現在も通達に書いてあ ることですが、それをグレードアップして挙げてきたという形で対応しておりますけれ ども、実際に均等法の中で差別と言った場合には、現状の中では雇用管理区分に基づい て雇用管理が行われているその企業の実態を踏まえて、差別というものを認定していく ことがどうしても法律上必要になってくる。その中で雇用管理区分そのものについて、 問うことは運用上も法律上も適切ではないのではないかと思っております。 ○龍井委員  すみません。私の質問に答えていただいていないです。どういう指摘の内容があり、 どう答えているのかを端的に伺っているのですけれども。 ○鈴木均等業務指導室長  CEDAWの指摘自体、手元に置いていないので正確なところはわかりませんが、 CEDAW自体の指摘からしますと要は雇用管理区分のどこが悪くて、それについて勧告 が出されているというのではなく、細かい記述はなかったかと思っております。私ども が思いますのは、雇用管理区分は基本的に均等法の差別でいうときに、何と何を比較し て差別だというようなところが明確でありませんと、これは差別とは認定できませんの で、それを行うときの技術的な事項ですので、雇用管理区分という比較対象を選ぶ概念 自体は間違っていない。ただしそれが実際上、何か運用上、誤解などいろいろなものが あって、問題があるような部分を今回建議もいただきまして直すということであります ので、これにつきましてはこれを行うことによって、CEDAWが言っていたような形で の問題点はクリアできるということが私どもの結論です。 ○龍井委員  ですから、どういう問題がクリアされたかと聞いているのですが。 ○鈴木均等業務指導室長  それは建議で書いてあるとおり、雇用管理区分についての記述が指針上は定義のみが 書いてあり、解釈は通達に落ちていた。これについて誤解が一部事業主等にあって、そ れの真意に沿ったような形の運用がなされていなかったということを踏まえまして、こ の誤解を解き、真の意味で正しい比較が行われ、差別が認定できるような形に今回の指 針を変えることによって明確になったという解決になるのではと評価をしております。 ○龍井委員  もともといろいろな賃金差別の問題から発して、この問題が国際的な問題としても浮 上してきて、その指摘について国会答弁の中でもそれは今回その規定ぶりを見直すこと によって、それが解明されると。だから今の指摘はある意味では、格付けは変わります けれどもすでに確認されていたことの再確認だけで、果たして本当に今言われた最後の 点がクリアされるかというと私はかなり疑念に思っておりますので、私は前々からこの 場でも質問しているように、CEDAWにどういうふうに今回の中身を報告されるかをど こかできちんと示していただきたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。  ○鈴木均等業務指導室長  すみません。報告の内容については現在政府内で調整中です。最終的にまだ結論は出 ていませんので、これについてはここでの報告は控えさせていただきたいと思います。 ○龍井委員  まとまり次第報告していただくということでよろしいでしょうか。 ○鈴木均等業務指導室長  もしまとまりましたら、それは対外的に出せる話なので、そのときは直ちに出すこと にします。 ○横溝分科会長  そういうことでよろしいですか。では、佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  一つは形式的なことで、もう一つは今の雇用管理区分ですが、本当に形式です。私は もっと早く言っていたのかと思っていて忘れてしまってすみません。別紙2の2ページ の真ん中に「正社員」と出てきます。言葉だけです。これは連続ページではないので、 別紙2は差別禁止等に関する指針のところです。例えば2ページの(2)の(1)に「正社員」 と出てきます。もう一つは別紙3の指針のところの1ページのセクシュアルハラスメン トのところです。これは下から9行目に「正規従業員」と出てくるのです。つまりセク シュアルハラスメントの方には「正規従業員」と書いてあります。前の方は「正社員」 と書いてあります。これは違うのかどうか、同じならばそろえた方がいいのではないか という形式的なことだけです。違うのであれば私はいいと思いますが、「正社員」と「正 規従業員」が違うのであれば、それがわかるように書いていただかなければ、それが一 つです。  あと雇用管理区分ですが、岡本委員と龍井委員からありましたけれども、雇用管理区 分自体は私の聞き間違いであれば申し訳ないですけれども、岡本委員はなくすことが望 ましいという話があったかと思いますが、私は人事管理が専門ですが、雇用管理区分と いうのは、別紙2の1にもあるように一般職も管理職も雇用管理区分です。事務、技術 職、技能職は雇用管理区分です。これをなくせと言われるのかどうかというと私はおか しいと思います。私は雇用管理を分けながら、実態が違うようなものがあるのは私もわ かります。そのことと雇用管理区分を設けること自体が問題だということは別だと思い ますので、一応それは分けて議論すべきではないかというのが一つです。  もう一つはあまり議論が進んでいませんが休業についてです。休業について産前産後 休業については出勤と同じように扱うという議論があったわけですけれども、議論しな くてはいけないのは、個々の企業にそれを負担させるのか、国としてどうするかで議論 が分かれるところだと思います。ここをきちんとすべきだと思います。つまり社員が結 婚して子どもを持つのは個人の自由です。「結婚しろ、子どもを持て」というわけではあ りません。ですから結果としてどこかの企業に子だくさんの社員がいる。そこだけに負 担があることなると、女性を雇わないということになりかねません。ですから休業につ いて負担させろということであれば、国が見るというのはあり得ると思います。そうで はなく企業に負担させるという議論をするのかどうかで議論が分かれてくるだろうと思 います。今回の議論ではありませんけれども、そこは少し分けて議論した方がいいと思 います。私の個人的な意見ですけれども、つまり育児休業についても出勤と同じように 扱うのであれば、個々の企業に負担させるといろいろな問題が出てくると思います。も しそのコストが必要だとすれば、個々の企業ではなくて国が負担をするという議論をし た方がいい。今回の議論ではありません。一応そこは分けて議論した方がいいと思いま す。 ○横溝分科会長  先ほどの問題について先に答えていただけますか。 ○鈴木均等業務指導室長  お答えします。性差別指針における「正社員」とセクシュアルハラスメント指針にお けます「正規労働者」という部分かと思いますけれども、定義のところですね。正式に 法令で使うとすると「正規労働者」が正しいので、それはセクシュアルハラスメントの 指針でそう書いてありますけれども、この「正社員」と書いてある性差別指針の方は、 これは事例の部分ですので、ここはあえて正規労働者という固い言葉を使わずにわかり やすい言葉にしてあります。もしそれでわかりにくいということであれば、直すこと自 体は不可能ではないですが、そういう趣旨です。 ○岡本委員  雇用管理区分については、私たちも雇用管理区分そのものを企業の労務管理としてな くせということを申し上げているつもりではなくて、この差別の判断をする上において、 この雇用管理区分で判断をするということが、さまざまな問題を生んでいるし、違う評 価基準というのか、判断基準がないのだろうかと。例えばその職務そのものを評価して いくことが、できないだろうかということだと思います。私も詳しく覚えておりません けれども、賃金実態調査の研究会の議論の中でも、確か何点かの評価基準を設けて、そ れでその賃金差をどう見るかということの研究があったと思いますので、例えばそうい ったことで考えられないのかという意味で、削除という言い方を申し上げました。  それから産後休業については、前回の審議会の議論の中でも、そういう議論があった かと思いますけれども、いわゆるノーワーク・ノーペイという考え方をすべて労働者側 としては否定したいところがありますけれども、それをすべて否定した上で議論してい くということはなかなか議論が進まないだろうと中の議論でもあったと思います。その 上で確か吉宮委員が申し上げてきたのは、賃金そのものの支給ではなくて、いわゆる算 定基準として、それから考課で言えば産前産後というある意味短い期間でありながら、 例えば1年間の考課というものを見ていくときに、それが判断になってしまうのはどう なのかという議論もあったかと思いますので、そこの話だと思います。  それから負担をどうするかというのは、これは休業給付の中でもそうですし、私たち も雇用保険ですべて見るべきなのかどうかは、連合としては問題意識を持っていてむし ろ違う形、それが今具体的に何かということはまだ連合でまとまっていなかったかどう かと思いますけれども、違う形ですべて企業に持たせるのではなくても、何らかの形の 基金というのか、そういったものは議論する価値があるのではと思っております。 ○龍井委員  関連してよろしいですか。今の最後の点は重要な論点の指摘だと思っています。事務 局にできたら確認させていただきたいのは、この議論はもちろんいろいろな分野にまた がりますけれども、議論としてはこの分科会でも引き続き取り扱っていく分野であると いう認識でよろしいでしょうか。 ○安藤雇用均等政策課長  委員からの要望と合意があればそのようにさせていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○松井委員  労働側からのさまざまな意見の一部分はわかるという点もありますけれども、やはり もう一つ考えていただきたいのは、企業側として産前産後休業は確かに有給休暇の算定 のところについて、出勤みなしになっているのはぎりぎりやむを得ないと思うところは ありますけれども、それをすべて企業側がさまざまな上で処遇をしていく中で、まった く出勤したものとみなすというと、さらにもっと難しいのは、出勤をしているというの はどういう状況で出勤しているのか、細かいことを言うと、出勤したとしても一番パフ ォーマンスが悪いなど、何か屁理屈を言うとはっきり言ってやりようがないのです。そ うするとやはり通常に、その間、企業に対して貢献していない人と同等の取扱いをして いくぐらいが企業側としてやることが精一杯であって、それがほかにさまざまな事由で 休んでいる方との公平性を担保しうる、ぎりぎりの線なのではないかと私どもとしては 考えているわけです。ですから、そういう点もすべて全部出勤したもの、全部保護する などと、そこまで企業が独自に行うべき処遇の面を求められるというのは、やはり企業 の人事労務管理上、耐え難いとそうは思っておりますので、こういう点もぜひ理解して いただきたいと思います。 ○稲垣委員  今のところですけれども、いつもこちらの方で意見として申し上げているのは、今ま でのそういう企業の中の考え方を少し転換する必要があるのではないかということ。要 するに少子化がこれほど進んでいるということは、やはり女性が子どもを産み育てよう という気持ちになることが非常に大事だと思いますので、企業としての立場はわかりま すが、ぜひこれからはそういうことをやろうとする企業の方に働く意欲のある女性は多 分集まっていくと思いますので、ぜひその辺りは前向きに捉えていただきたいと思いま す。 ○松井委員  企業が独自にそういう取扱いをすることを私は否定をしているわけでありません。今、 労働側がルールを主張しているのは、そういう取扱いをするか否かにかかわらず、すべ ての企業に企業の意思にかかわらずそういう取扱いを求めていたので私は反対をした。 ですから、そのような取扱いをして、従業員の確保・定着を図りたいという企業がいる ならば、それは企業の独自の施策としてやっていただくことは、私どもは推奨すべきだ と思っております。 ○稲垣委員  よろしいでしょうか。もう一つ付け加えさせていただきますと、それもわかりますが、 やはり社会的に日本の国全体でやっていこうというときには、法律の中でしっかり決め ていくことも大事だと思いますので、そこのところはぜひ母性保護というところでいけ ば、私はほかの疾病と同じ扱いだけでは、母性保護とは十分に言えないと思いますので、 ぜひ前向きな検討が必要だと思います。 ○松井委員  母性保護というときの範囲は、どこなのかがまずきちんと整理なされていなくてはい けないと思います。それは産前産後休業期間なのか、妊産婦全部なのかなど、まずその 辺がきちんと整理されていなくてはいけないと思います。仮に育児休業が取得できる従 業員の場合はきちんと届け出ることをすれば、産前産後休業期間は健康保険から6割給 付はされていますし、育児休業期間は雇用保険から復帰後6カ月きちんと働けば合計2 割5分、そういう仕組みになっていますので、それでも国としてはそれなりに保護はな されていると思います。先ほどの佐藤委員から話がありましたけれども、ではその保護 する人の仕方そのものはどうなのかは、また違う議論があり得るべしだと思っています ので、そこが全く保護されていないかというと決してそうではありませんし、今回の中 では例えば、産前産後休業期間だけではなくて、もちろんそれを超えて妊産婦に対する 解雇だけではなくて、不利益取扱いなどいろいろな形での違った意味での母性保護が入 っているということも、もう少し理解をしてもらって、全く進んでいないわけではない という認識は労働側にはぜひ持ってもらいたいと思います。いろいろと聞いてみると、 全く進んでいないようにもしかして聞こえるように、私から少しそこまで聞こえるよう な気がします。反対側に企業側としてはその間、さまざまな不利益取扱いを起こさない ような仕組みをこれから雇用管理上考えていかなくてはいけないという点もぜひ理解し ていただきたいと思います。 ○樋口委員  少し確認したのですが、龍井委員は先ほどこの問題については今後も議論することで よろしいですねという趣旨がありましたけれども、この問題とは何かというところなの です。例えば財源の問題までを含めて議論すると言っても、ここの場所の範囲を超えて しまって、時には雇用保険部会の話になりますし、あるいは時には一般財源ということ であれば財政審議の方になりますし、どういう気持ちで言われたのかということ。 ○龍井委員  先ほどもお断り申し上げたように各分野にまたがっていますけれども、またがってい るからほかでやりますではなくて、ここでもその問題について、きちんと負担のあり方 についての議論を続けてはどうかという確認です。ここだけで決められると私も思って いません。 ○横溝分科会長  よろしいですか。ただ先ほど、どなたかが日程も非常にタイトでと言われましたけれ ども、雇用均等分科会として、この改正均等法と労働基準法の改正に沿って省令と指針、 そういうものに対する答申を出さなければならないという、日程に縛られてはいけない と確かにそのとおりですが、ある程度、そのスケジュールに振り回されないながらも、 それに沿ってここでの合意というのか、答申案を出さなければなりませんので、皆さん の言われていることいちいちもっともですし、それぞれの立場もありますし、重要なこ とだと思いますけれども、できれば今回までの議論を踏まえて、私と事務局の方で答申 案、調整の上で皆さんの意見、各会から寄せられた意見も踏まえた上で答申案を作成し て、次回の分科会で示すという方向でいきたいと思っていますが、いかがでしょうか。 ただ、この際この場で言っていただきたいということはお聞きします。 ○龍井委員  もちろんその内容いかんということになりますけれども、今申し上げたような課題に ついてある程度整理がされて、また引き続き議論していく課題などの整理の状況を見て、 もしそういう方向が見いだせるのであれば、私どももそういう判断をしたいと思います。 ○横溝分科会長  ほかの方はいかがでしょうか。 ○松井委員  前回私どもの方から特段質問や要望は出していませんが、諮問された時点で、もう少 しわかりやすいもの、簡明なものという主張もしております。と言いますと労働側が言 っていることとまた逆な面もありますので、ぜひ分科会長におかれては、事務局と十分 相談の上、対応方お願いしたいと思います。そういうものが私どもなりの意見が十分に 反映されたものかというのは、やはり踏まえて対応していきたいと思います。他の委員 の方からもし意見があれば、渡邊委員、いかがでしょうか。 ○渡邊委員  ここまできたら、ある程度限定して、今まで審議もやっているのだから、いいのでは ないかと思います。 ○横溝分科会長  公益委員の先生方、いかがですか。 ○鴨委員  今、横溝分科会長の方からお話があった方向性を否定するつもりはありませんが、こ の問題はやっぱり働く側にとっては、大変大きな重要な問題であるわけです。それで次 回、答申案が出されるということですけれども、その案を受けて、私どもとしてはやは りきちんと議論をしたいと思います。答申案を出すということイコールそこでその場で 審議がこれで終了というようなことにはならないよう、ぜひお願いしたいところです。 ○横溝分科会長  事務局、何か発言ありますか。 ○安藤雇用均等政策課長  答申後に議論を進めたいという意見が労働側からありましたけれども、それにつきま しては樋口委員の方からも指摘がありましたし、どのような形で何をどういうふうに議 論していくのかということについては分科会としての合意も必要かと思っております。 ですから、省令案要綱・指針案についてのその答申とそこから先の議論というのは、ど のような感じのことを想定しておられるのかについて、この際、伺わせていただけたら ありがたいと思います。 ○横溝分科会長  鴨委員、どうぞ。 ○鴨委員  私自身、こういう場は初めてなので、審議会のいわゆる常識的な運営と、そこの運営 の考え方がそぐわないのかもしれませんが、審議会で議論するということは、そもそも、 労働者側にとっても、よい法律を作りたいというところで議論がされていると思います。 だから、この間審議を進めてきましたけれども、それでも今日の段階においてもさまざ まな議論があるわけです。その結果として答申案というものが出されるであろうと思い ますが、その答申案の中身についても、きちんと議論をしてもよいのではないかという 意味で申し上げました。 ○横溝分科会長  それは次回の分科会に答申案を示して、それについてまた意見をいただくわけですか ら、ただそれがいろいろなスケジュール、皆さんの立場などいろいろなことを考えると、 すべての委員にすべて満足というわけにはいかないかもしれませんけれども、合意形成 をして答申案をまとめあげると、それについては示した案に意見をいただくというふう に考えております。 ○佐藤委員  一応、組合側が不満あるのはよくわかります。経営側も不満があるのです。鴨委員は、 組合が納得するまで議論するという考えなのかどうかです。そこだけです。伺いたいの は、それで法律は施行しなくてもいいということなのかです。私はそれぞれ不満があり ます。ですからそれを議論したいというのは、組合が納得するまで議論したいというの であれば経営側が納得するまで議論するのでは、決まりません。私はそういうことを言 われているのであれば、我々としてもいろいろ意見がありますけれども、どういうこと なのか、伺います。 ○鴨委員  私自身はそれぞれの意見があるというのはわかっております。だからそれぞれの意見 が100%合意するまでこの場を続けてくださいと言うつもりはありません。ただし、今 回の法改正というのは大きな意味を持っているものであるので、できるかぎり、審議会 の中できちんと合意形成を図るというところについて、配慮いただきたいと申している だけです。 ○樋口委員  議論を整理しておいた方がいいかと思うのは、均等法の指針でどのようなものを作る のかということと、それとそれ以外のところの話というのが少し出ているかと思います。 例えば、先ほどの財源の問題を考えると、これはとても均等法の中ではどうにもならな いところがあって、それこそワークライフバランスの推進局を作るべきだというような ところまでいく話だろうと思うのです。  この部会として何を議論するのか、議論をし、何を決定するのかということが重要な のです。決定は今のようなことについてここではとてもできないというようなことです から、意見を述べてもらうのは重要だと思いますが、それで、皆さんここで決めました ねというわけにはいかないことだろうというのも、龍井さんは十分ご承知の上で発言し ているのだろうと思いますが。 ○稲垣委員  あと1つよろしいですか。冒頭、パブリックコメントということで報告がありました。 500件以上のたくさんの声が寄せられているということですので、ぜひ、この声を重く 受けとめていただきたいというふうに思います。 ○横溝分科会長  今、次回に向けてこういう形でまとめて提案して申しあげましたが、そういう形でよ ろしいですか。では、第1議題につきましては、そのようにさせていただきます。  それでは、時間の関係もありますので、次の議題に移りたいと思います。  次の議題は「パートタイム労働法・指針の実施状況について」です。前回、委員の方々 からデータの追加・提出についての意見をいただきましたが、それにつきまして事務局 が準備をしておりますので、事務局からまず説明をお願いいたします。前回申し上げま した通り、今回の議論を円滑に進めるために、私の方で議論いただきたい項目を「資料 6」という形でまとめましてお示しさせていただきましたので、これも併せて事務局の 方から紹介いただきたいと思います。 ○高崎短時間・在宅労働課長  それでは説明いたします。全体のスケジュールがタイトですが、今日もタイトです。 説明は事前にさせていただいておりますので恐縮ですが、極力絞った形にさせていただ きたいと思います。なお、お手元のファイルは、以前の審議会の資料を参考にしたいと いうこともありますでしょうし、その際、常に私どもの方で配布するとなると、紙の無 駄ですので、それまでの間のものをファイルしていくという形をとりたいと思います。 ですので、本日のファイルを書き込み等されて持ち帰られたい方は、その分を持ち帰っ ていただいて結構です。その際、私どもは新しいものをファイルの方には追加していく という形でいきたいと思います。お手元のそのファイルについてはお持ち帰りいただか ないでその場に残してお帰りいただきたいという趣旨です。持って帰っていただいても 結構ですけれども、次は持って来ていただければと思います。  では資料4からです。この資料4につきましては、先ほど分科会長よりお話いただき ました通り、前回の資料のリバイスという形でして、前回の議論でも指針前後で、何が 変わって変わってないのかということも、検討すべきでないかということがありました ので、すべての項目とはまいりませんが、過去の実施状況と比較できる項目につきまし ては、そのデータを付けております。資料では新たに追加した部分につきまして、赤字 でコメントさせていただきますので、説明は省略させていただきますが、適宜参考にし ていただけると思います。 ただ一点、14ページに「各種手当の支給状況」というのは、これは全く新たに追加さ せていただいておりますが、前回佐藤委員の方から、そういう賃金についてもいろいろ 賞与・手当等もあるのではないかという発言がありましたので、その資料が欠落してい たので、追加しています。資料4の説明につきましては、そのような形にさせていただ けばと思いまして、中心は資料5の方です。  資料5につきましては、前回、樋口委員および今田委員、他の委員の皆さま方からも、 パートの問題というのは個々の企業の人事・労務の問題ということだけではなく、 もう 少し広いあるいはマクロ的な観点からも、議論すべき項目ではないかという示唆があり、 それに基づいて資料を用意してくれという話で用意したものです。  中身を説明いたします。まず、3ページです。最初は全体の背景的な状況です。まず、 労働力人口の状況についての分析でして、ここで資料自体は「労働白書」からの転載で すが、労働力人口が平成17年に減少に移転しているということでして、今後一定の過 程の元に見通しますと、 2030年にかけて各種対策を講じない場合には1050万人減数 と、ただ、各種対策を講じて、新たな労働者の労働支援に参加が進む場合には、それが 530万人減程度に抑えることが可能ということで、今回の議論でいけばそういう中にあ って、パートタイム労働者の労働市場への参入を進めるための各種対策とは何かという ような観点になろうかと思います。  次に4ページですが、これは、格差、あるいは逆の意味で再チャレンジということの 観点で、背景事情ですが 出典は平成17年の「国民生活白書」です。見ていただいた 通りでして、パート・アルバイトなどから正社員へ転職した人の割合は減り、逆に正社 員からパートに転職した人は倍増しているということで、いわば、より非正規の方にい くのは容易になっているけれども、逆に正社員の方へ再チャレンジするということにつ いては以前より困難になっているというようなことで、それは雇用形態のタイプが進ん でいることを示しているということです。  次、5ページですが、少子化という関係でして、5ページの資料は案内の通りです。 そのような状況で、例えばパートという観点でみますと、まず6、7ページが機会費用 という観点の資料、同じく国民生活白書からの転載ですけれども、6ページの資料は、 正社員として就業継続していた方と、その方が退職し、いったん子育てに入り再就職の 際にパート・アルバイトで再就職した場合との生涯所得の差、いわゆる機会費用がこの 場合には約2億3000万余円になります。他方7ページですが、その方が正社員として 再就職した場合については、その機会費用が約1億円になりますということの表です。  あともう1点、「少子化」の観点では、いわゆる「結婚できる・できない」という話 がありまして、8ページの方では、労働者の区分ごとに、年齢別、結婚されてかつ有配 偶率を見たものでして、男性は見ての通り正社員の場合には、高くなっていますけれど も、そうでない場合については、なかなかそこが高くなっていかないという状況にある と、女性については若干違う状況にあるということです。  9ページは、事業主がパートを雇用するニーズという区分です。  10ページは、逆にパートがパートとしての働き方を選んでいるニーズという部分でし て、この辺りの労使双方のニーズが合致する中でパートタイム労働者というのが増えて きているという状況もあるということの説明です。  次に、その数の増加要因等ですが、12ページの資料は以前に出した資料と変わってい ませんが、ただ1点、右側の下にある男性雇用者中のパート労働者の占める割合という のが高まってきているということは、一つ注目すべき点であろうと思います。  13ページは、以前の資料と基本的に同じです。  14ページ、そういういわゆる非正規雇用が増えてくる背景事情としまして、産業構造 全体の変化という側面もないわけではないですけれど、むしろ多いのはそれぞれの産業 内における非正規雇用比率を高めていくという行動、各産業においての雇用の柔軟化が 進められているということが要因として圧倒的に大きいということを示しているもので す。  15ページ以降、属性ですけれども、これにつきましては一言で言いますと、従来、主 婦・パート問題であったものが、男性問題であり若者の問題であり高齢者の問題であり、 あるいは世帯主の問題にもなってきているという面が大きくなってきているという、い わばパート問題が非常に複合化している部分の資料です。  16ページは、男性の年齢別でして、全体が伸びきていますが、若者と高齢者で伸び率 が高いという評価です。  17ページは、女性も全体が伸びていますが,若者と高齢層で伸び率が大きいという比 表です。  18ページにつきましては、そういう意味では若者という観点から見ますと、新規学卒 入職者がパート労働者として入職する場合の割合というのが、そこにありますような状 況になっています。  19ページは、それをフリーターの数字として見たものでして、いわゆる25〜34歳層 の年長フリーターと呼ばれる方々が高止まりしているという状況の説明です。  20ページは、世帯の関係ですが、全体は伸びていますけれども、男性については世帯 主の伸び率が高い、 女性の場合にも世帯主の伸び率も高くなっているというような状況 です。  次に、仕事の内容ということで見た部分です。22ページの資料は以前に示した資料の 再掲という形ですので省略します。  23ページ、どれが増えているかどうかということです。実は、この表というのはパー トの就業実態調査ではありません。非正規社員全体についての調査ですので、その点は 留意いただきたいと思います。3年前に比べて増加しているかどうかという右側の表で すが、「変わらない」と答える事業主が48.4%と一番多いわけですけれども、一方で「増 加している」というのが43.4%、「減少している」が7.4%という状況です。  次に「意識」です。まず、パート労働者の側から見た「意識」です。職務が同じ正社 員に比べてどう感じているかということでして、職務が同じ正社員がいると回答したパ ート労働者についての調査ですけれども、一番多いのが「低いと意識したことはあるが 納得できる」が41.1%、次いで「低いと意識したことがあり納得できない」が26.8%、 「低いと感じたことがあり,納得できない」と答えた方の内容については、一番多いのが 一番上「正社員と同じ仕事をしているにもかかわらず格差があるから」と答えた方が 81.4%です。ただこれはパートの中の意識です。  逆に正社員の側の「意識」、25ページです。若干、複雑ですけれども、要するに職場 でパート労働者と共に働く正社員の方に、その中で時給が一番高いパート労働者の方を 想定いただいて答えてもらったというものでして、仮にこの場合Aさんと書いています が、その賃金水準について妥当性を聞いたところ、一番左側の表を見ていただけると思 いますが、「妥当」と答えた方が50.3%と一番多いのですが、「やや低いのではないか」、 「非常に低いのでないか」という方もそれなりにいます。  一つ表を跳ばして、では自分がその仕事をする場合にどういう賃金水準は求めるかと いうことについては、やはり「現在の時給推定額を上回る賃金を欲しい」と答えた方が 49.3%と約半数に達しました。  次に26ページの方ですが、先ほどパートで働くニーズとして「自分の都合のいい時 間に働きたい」という方が多いと言いましたが、逆の意味でそういう方々ばかりではな くて、「正社員として働けないから」あるいは「正社員として働ける会社がないから」と いわゆる「非自発的パート」とでも申しましょうか、そういう方々も、それなりにいる というデータです。  27ページが賃金、28ページは、皆さんよくご覧になります通り、一般の男性の場合 には賃金カーブが非常に盛り上がっていますけれども、パートの場合には、男女ともフ ラットで根拠がないという状況です。  29ページの方は、全一般労働者・パート労働者の賃金格差の指数の推移でして、そこ は見ての通りで、「景気回復過程に入り近年賃金格差は縮小傾向にある」と本年度の「労 働白書」では分析をされています。  以上、駆け足になりましたが、誠に恐縮ですが、資料5の説明に入ります。  引き続きまして資料6の方です。分科会長の方でまとめていただきました「今後ご議 論いただきたい項目」ですけれども、「1労働条件の明示等」として「(1)労働条件の明 示」、「(2)就業規則の整備」。「2均衡待遇の確保」として「(1)短時間労働者の態様に 応じた均衡処遇」、「(2)処遇の範囲」として「ア賃金」、賃金につきましては「基本給、 賞与、諸手当、退職金」、「イ昇進、昇格」「ウ教育訓練」「エ福利厚生」というものが考 えられるのではないかと思います。「3通常の労働者への転換」としては、「(1)応募機 会の付与」と「(2)転換制度の導入」。「4労使の話合いの促進・紛争解決」につきまし ては、「(1)処遇に関する説明」、「(2)苦情処理・紛争解決」という項目。あと「5短時 間雇用管理者」の問題。最後に「6その他」といたしまして「所定労働時間が正社員と ほとんど同じパート労働者」であり、かつ就業の実態も同じという部分の検討項目と議 論項目ということで整理をしていだだいています。  なお、その中で特に「短時間労働者の態様に応じた均衡処遇」につきましては、現行 のパート法なりパート指針なりがどういう構造になっているかということについて、や はり共通に認識していただくということが、大事であろうと思いまして、資料「参考」 として横の資料を用意しております。  中身の説明を全部はしませんが、要するに現行のパート労働指針上は短時間労働者を 「すべての短時間労働者」に該当する部分と「職務が同じ短時間労働者」、「職務、及び 人材活用の仕組み、運用等が実質的に異ならない短時間労働者」といわゆる三つのカテ ゴリーに分けて、それぞれの態様に応じてお願いしている項目の程度を書き分けている そういう構造になっています。  なお、実はこれは先ほどの論点の一番下の所定労働時間がほとんど同じで、同様な就 業の実態にあるパート労働というものが、これ以外にもう1つカテゴリーとしてあるわ けですけれども、図が少々複雑になり過ぎると思い、今回はその部分は記載していませ んが、いわゆる真中の一番色の濃い部分のさらに一部というような形で構成されるので ないかと私どもとしては考えています。  以上、駆け足になりましたけれども資料の説明とさせていただきます。 ○横溝分科会長  はい、ありがとうございました。前回に引き続いて議論いただくわけですけれども、 議論をしていただきやすいというか、そういう形で大きい項目、中項目、それからアイ ウエオという小さな柱ということで一応、議論いただきたい項目について分類して示し たわけですが、こういう形で議論させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 まず、この項目にこだわって順番ということではなくて、全般にわたってでも結構です ので発言いただきたいと思います。資料そのものについての質問はよろしいですか。  では、どうぞ、龍井委員。 ○龍井委員  「今後ご議論いただきたい」というのは、このままずっと最後までいくのか、どこか でもう一度再整理されるのかということもあるかと思いますので、これに含まれていな い項目も含めて幾つかコメントさせていただきます。  既に労働側には3年前のこの検討分科会で意見書を提出させていただいていますので、 繰り返しませんけれども、法律でなくて指針になったという基本的なこと、それから指 針の内容自体の問題、後ほど若干触れます。それから、これもこの基本的な問題であり ますパート法第3条の見直しの問題まで触れて指摘をさせていただきました。恐らくこ れからも繰り返し同じような論点を指摘させていただくことになると思いますけれども、 少し論点が多いので若干、時間を拝借してコメントさせていただきます。  前回からの結果からみると、今回改めてこの問題が取り上げられて審議されるという ことについては、やはり法改正に向けた労働者、とりわけパート労働者自身たちのその 期待というものは非常に大きいものがあると認識をしています。そういう意味でははじ めにその指針ありきということだけではなくて、的確にこの下の状況変化を見きわめた 上で、対策を講じるという段取りが欠かさないと思っております。この間に何が変わっ たかということについては、さらに引き続き幅広いデータを示していただき、併せてそ の検証していく。さらに前回申し上げましたけれども、やはり、相談窓口を含めて、現 場の実態把握、現場の声、そしてパート労働者の生の声といったものをこの審議に反映 させていただけるようにまず要望しておきたいと思います。  先ほどからの資料の中でこの間何が起きたのかということについて、幾つか貴重なデ ータが示されています。これは前回の改正論議、あるいは「ものさし研」から「パート 研」に至る段階での既に指摘されていたことが、我々からするとさらに顕著になってい るという実感です。95年、当時の日本経営者団体連盟(日経連)の「新時代の『日本的経 営』」三つのポートフォリオのあの時点での認識を恐らく越えてしまうような事態が起き ているのではないかというような感想を持っています。一言で言うとやはり一つのキー ワードは、正社員代替が進んだ、正社員の絶対数が減りながら非正規パートが急増して いるということでは、このデータの中にも明らかになっていますように、そして前回も 指摘がされているいわゆる期間化、あるいは非正規労働者の典型化といったようなこと、 それからもう一つは、これもデータにありました。新卒パート労働者、若年パート労働 者が従来に比べて急増している。それから、この間の雇用調整の関係もあるのでしょう が、いわゆる離職をして再就職をするパート労働者というのが、男性でも広がっている ということが顕著になっていますし、これに加えて従前からいわば古典的問題だと思い ますけれども、いわゆる女性差別が形を変えた雇用形態差別、あるいは身分差別として のパート問題は、依然として根強く残っているという状況だと認識をしております。  他方で、企業の人事戦略として均等あるいは均衡処遇を積極的に進めている企業が増 えているとの認識をもちろんしていますけれども、全体状況としてみれば、今この間の 格差社会の指摘がありますように、この格差が固定化あるいは階層化していく「ワーキ ングプア」ということも当たり前には言われてはいますが、これがいわゆる少子化の急 激な進行あるいは社会保険制度の基盤の問題、あるいはこれも日本経済団体連合会(経 団連)も指摘している人材力、現場力といった問題を含めて社会的問題の根底にあると いうのが事実だと思っています。  この指針でもあるいはもともとの議論でも、同じ職務ということが一つのキーワード になっているわけですけれども、今のような状況を考えると同じ職務に就くチャンスす らないあるいはそれがまた期待もされていない。それで有期で使い捨てられていくとい うことを考えていくと、先ほど言った四つの項目で言うと、特に新卒パート労働者、そ して再就職パート労働者、そして今までの女性パート労働者といわれるところが、いわ れのない差別に苦しめられているというところに光を当てて、まさに人権の問題、ディ ーセント・ワークの問題として取り上げて、きちんとしたルールづくりをすることが、 今、問われているという認識を持っています。  やはり93年以来のパート法の「均衡考慮の努力義務」ということが、残念ながら今 の事態に全く無力であったと、その階層化あるいは格差の固定化に無力だったと言わざ るを得ないというのが今の状況ではないか、そういう意味では、前回の論議でも労働側 として指摘させていただいた「均等待遇の法制化」というのは不可欠だというのがまず 基本的認識です。  こういうふうに申し上げますと、では分科会でどこまで議論するのかと、前回も公益 の皆さんから指摘がありました。この対象範囲の問題は当然今の枠組みでは、その検討 分科会というのは短時間あるいはパートといっても短時間パートという認識だというこ とは経過として承知しています。  ただ、例えば隣の韓国で統計を取りますと、いわゆる短時間と言われている人たちと いうのは非正規の1割ぐらいなのですが、これは雇用期間の定めのない人たち、多くは 有期雇用あるいはその中の臨時雇用ということでフルタイムの人が続けられていると考 えると、日本の場合は、それに比較をすると今短時間という切り口で議論をしておりま すけれども、その多くは有期契約でもある。これは確か前回の議論のときでも、これは 今の呼称パートなのか、分母を忘れましたけれども、いわゆるパートタイマーの中で有 期の契約になっている人が何割かいるという確かデータがあったと思いますので、もし 補足のデータがあれば後ほど示していただければと思います。やはり短時間に起因する 格差や差別、当然有期契約ということによる不利益だったり差別だったり、これは両面 ないまぜになってわけでして、そういう意味ではこの分科会でも先ほど申し上げた限定 があるにしても、そうした問題を視野に入れていかざるを得ないということは強く申し 上げておきたいと思います。これもこの分科会の整理としていずれ、労働者政策審議会 の本審でもぜひしていただきたいと思いますのが、もしもこれが短時間パート問題に収 れんしていくとするのであれば、その有期契約問題に関する現状把握とルール作りとい うことをどこでやっていくのかということは、いずれ厚生労働省としても示していただ ければと思っています。  少し各論的に今回示されたデータのことなのですけれども、一つは「労働条件の明示」 の問題が最初に出されています。これは就業規則の整備も含めて、ある意味では労働基 準法的なごく基本的なことだと思っていますので、ここで示されている内容は自明なこ とだろうと思っています。  それから、二つ目に「短時間労働者の態様に応じた均衡処遇」これは前回の議論でも 一つの大きな重要な論点でした。その「態様に応じて」ということについては今回も改 めて議論をさせていただきたいと思っておりまして、と申しますのは先ほどキーワード として申し上げました、「同じ職務」ということは当然ものさしの議論で、これを今の日 本の雇用慣行や雇用制度の基でどう議論するか、大変難しい問題だというのは、認識し ています。当然これは個々の職務内容に即して実績で判断することが必要と、これは言 うまでもないことだと思います。既にこれは例えば全く同じでなくとも同様あるいは同 種の職種の職務の中で、例えば職務分析という手法を通じてそうした差別を明らかにし ていくというケースもあるわけでして、こうした手法がすべてのものに適応できるとい う問題ではないことを承知していますが、少なくともそうした比較の道筋そのものを閉 ざしてはならないだろうと。そういうふうに考えますと今、示されているその「態様に 応じた」という考え方が、ある面ではその実態に応じてある差異が、こうした措置を取 ることによって明確になっていくという部分と同時に、本来なら比較可能なケースが、 むしろ今申し上げたようなことで、そのせっかくのチャンスが閉ざされてしまうという 部分もあるのではないか。断定的には申し上げません。つまり、ある種の雇用管理区分 として設けることで、自主的なその比較があるいは判断が、排除されないようにするに はどうしたらいいのかという観点からいうと、やはり冒頭に申し上げましたが、そもそ も同じ職務に就けないあるいは想定されていない人たちのそれがやはり雇用管理の連続 性があらかじめ遮断されることにならないような検討の仕方や検証の仕方が必要だろう と思っています。  次に、「処遇の範囲」の問題が出されています。これは前回の論議の時に申し上げたか もしれませんが、やはり短時間ということであることによって、差異が認められるもの と、差異が認められないもの。ここで掲げられている例では、例えば通勤手当や慶弔休 暇や福利厚生をまさか時間によってということはない、無条件の問題だろうと。それに 対して、退職金や昇進や教育訓練、これもいろいろなケースがありますので、少なくと も何が基準かということも議論も必要ですが、いずれにしても合理的な理由のいかんに よっては、差別となりうると思っています。ただ、ここで示されているデータで教育訓 練につきましては、ほとんど入り口の研修が中心にどうもなっているようで、もう少し ここは実態を教えてほしい、実態がわかるデータを示してほしいです。退職金、一時金 も調査のサンプル数の問題もあって我々がいろいろな場面で労働相談を受けていますと、 ありなしという格差がまだまだ依然として大きいというのが実態ではないかと思ってい ますので、これも我々の方でもう少しデータがあれば示したいと思っています。  それから、賃金のことが一番大きな問題になると思いますが、これは先ほど触れた有 期という問題がどうしてもつきまとってきます。このデータで初任賃金につきましては、 ほぼ、同じ地域や同業種のいわば外部市場的なもので決められている、準拠している。 実はこれは当然正社員も基本的に同じということで初任給は外部市場に依存する。ただ、 若干数字上でいうとパートの初任給は、経験ゼロであるはずの高卒初任給よりは低めと いうことがこのデータにも出ていると思います。  問題はそこからで、いわゆる正社員の場合は基本的にはそのOJT(職場内教育)を通 じ、あるいは配置も通じていわゆるスキルアップをし、職務アップもし、さらに新たな 職務に就いていくということが想定され、また選択がされるというのが多いパターンだ ろうと思っています。旧日本経営者団体連盟の長期蓄積能力活用型というのもそういう モデルだろうと思っています。それに対してパート有期というのは、専門職ジョブ的パ ートを除くと初任賃金だけではなくて契約更改、契約更新のたびに、外部市場にリンク するという傾向が強いことと、そのOJTスキルアップというそこの仕組みや機会から排 除されるという傾向があるわけでして、そこをどういうふうに担保されていくのか、こ れは同じ職務のものさしをそこにじかに当てようとしてもなかなか難しいです。と同時 に、他方で人材活用の仕組みのあるなしでそれを判断してしまうと、またそれも固定化 することにつながる面もあります。ある意味では難しい問題かもしれませんが、そこは もう少しつぶさに検討して参りたいです。  もう一つの問題は、同じ正社員の問題です。これが、最近よく我々の相談の中で、散 見されるというか多くなっていると思われますのは、パート労働者が典型的であると。 場合によると正社員が1人2人の管理職、あるいはいないという場合、これも前回議論 されていると思いますけれどもそういうことを考えていきますと、同一事業所の中の比 較だけで本当に比較が可能なのか。あるいは、それこそ同様や同種といった幅を広げた 比較をしていくのか、そうしたものも視野に入れないと、実効性の確保がされないとい う面があります。  もう一つは、前回も大議論になりました、いわゆる拘束制が、どういうふうにものさ しになるかということについて、例えば残業の場合も基本としてそれがスタンダード、 基準ではなくて残業ということに見合った処方をしていくというのは、ペナルティーに 対する対価も含めて別途扱うもので、基準というふうに考えることは、ILO156号条約 との問題も含めてものさしでありえないのではないかという議論は、前回もやりました けれど今回もぜひ議論したいです。  そして、もう一つは、責任と権限と付加といったものもまだ、前回までも結構その中 身が何かという議論をしていますけれども、実態が何でどういう問題が起きているのか ということが、残念ながらまだ明らかになっていません。  それから、四つ目が、「通常の労働者への転換」の問題が出されています。これも非常 に重要なテーマだと思っていまして、ただデータを見ると実際にこれが運用も含めてど こまでかというのは、まだ定かではありません。ただ、先ほどから申し上げていますよ うに正社員のあり方との関係で言いますと、やはり勤続がきちんと評価されないという 大きな理由というのが、有期契約にあるということを考えていきますと、例えばそこで 短時間正社員という枠組みの箱を用意することで、そうした格差が埋まっていく、ある いは雇用が継続していく。と申し上げますのは、恐らく、このパート、短時間を選択す る理由として、時間の理由が多いと。これはある意味、正社員のスタンダードに対する 拒否という面もあるのではないか。つまり、「9時17時なら正社員でいいけれども、残 業を前提では困る」ということも多分含めてあると考えますと、やはり短時間正社員と いう選択肢を大いに対象として検討していく余地はあるのではないか。既に厚生労働省 もそういう施策を示されていますので、そうしたデータも提供いただきながら論点とし て挙げていく必要もあるのではないか。  「労使の話合いの促進・紛争解決」は、短時間だからという問題ではなくてまさに無 条件にすべての労働者に適用されるということですので。ただ、残念ながらパート有期 というのが、身分差別ということで考えていくと、その枠外に置かれる傾向が強いとい うことはあり得るかもしれません。そういう意味では適用において特段の配慮が必要だ ということを念頭に置く必要があるのではないかと思っています。  それから、「短時間雇用管理者」は当然のことながらということなので、さらにこれは 徹底していただきたいと思っています。最後に「その他」、有期フルタイムの問題は先ほ ど申し上げましたので、最終的な対象にするかどうかは、議論の視野に入れていくとい うこと。それから、社会保険適用の問題も既に議論されているこの問題と含めて議論さ れるテーマです。単純に言って社会保険適用除外ということから短時間雇用という面も ありますし、最近よく指摘をされていますように、多重就労によって社会保険の適用が どうなのかというかなり深刻な問題も肩をたたいている。これもぜひ、検討の中に入れ ていきたいと思っています。いずれにしろ先ほどの雇用機会均等と同じでやはり求めて いくのは、すべての人たちが、安心して働き続けられる社会ということなので、ここは 恐らく経営の皆さんも一つの社会的役割として認識していただけると思っています。そ ういう仕組みを作ることでやる気、それが生産性、そしてそれが長期的な競争力につな がるというメリットに私どもはなると確信をもっていますので、そういう視点からの議 論をお願いしたいということを最後に申し添えさせていただきたいと思います。とりあ えず、以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。それでは、他に。全般にわたって意見をいただきましたけ れど。 ○樋口委員  質問で、よろしいですか。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○樋口委員  資料を作っていただきまして、どうもありがとうございます。  質問は、最後の29ページのところで、パートと一般労働者の賃金格差が急激に縮小 しているというかなりショッキングなものなのです。特にその中身を見てみますと、例 えば女性では一般労働者の時給が下がっているのに、パートの方は38円上がっていま す。あるいは、男性パートタイム労働者は57円時給が上がっています。連合の要求を はるかに超える上がり方というようなすばらしい結果が出ているのですが、この背景は 一体何でしょうかというところです。同じ産業でもこんなことが起こって、連合がやっ ていますほかの調査を見ましても、57円も上がるというような数字は出てこないのです が、どうしてこうなっているのかわかれば。実は最低賃金のときにも議論になって、ま ったくわからなかったということがあって、「これ、どういうことなの」というのがまさ に議論になったのですが、どう考えたらいいのだろうかと。これはかなりここでの議論 にも影響してくるところだと思います。  もう一つは、ここでは所定内1時間当たりに換算してというようなわけですが、最近 の一般労働者についての処遇の改善というのは、主にむしろボーナスを中心に、固定費 化させたくないということもあるのでしょうが、そこが行われてきています。ところが、 この統計では、所定内なのでボーナスは除外してなされています。パート労働者と一般 労働者のボーナスの実態というのは、一体どうなっているのだろうか。考えれば、例え ば賞与まで含めて、時間給に換算することはできるわけで、それでもやはり同じ結果が、 「格差が縮小しています」ということになるのか、「いいえ、そうではありません」とな るのかを少し教えていただきたいと。今無理であれば次回でもいいのではと。それは、 処遇の範囲と何をもって均衡と考えるかというところと関連してくるわけで、基本給の ところだけで議論するのか、恐らく賞与というのも当然あるでしょうし、諸手当という ところまで含めて総合的に判断していくということになっていくと思います。特に雇用 管理がだいぶ大きく変わって、給与体系が、大きく変わってきている中において、この パートと一般労働者の間での均等問題を考える上で重要ではないかと。  もう一つは、福利厚生というのがとてもくせものだなと思っておりまして、特に法定 福利厚生、厚生年金です。「国が差別しているのではないの」というような見方も短時間 のところでありうるわけです。ここに「福利厚生についても均衡を求めます」というふ うに考えたときに、所定内30時間、要するに一般労働者の4分の3以下については、 厚生年金に入る資格はありませんというようなことをやることによって、パート法は 元々、経営者と企業の中における話だと思いますが、そこに法定福利厚生ということが 入ってくるとすると、実は国の責任もそこのところで問われてくる問題があるわけです が、考えれば今までそこのところはあまりこの中で議論するということはなかったので す。それは、年金法の問題だと扱ってきたわけですが、実はここのところも非常に重要 な処遇になってくるわけですから、ここまで含めて議論するのかどうかというのは、あ らかじめ決めておいた方がいいですし、福利厚生と出るとなんとなく「これはしないと まずいのかな」という気もしてきますということで、どう考えたらいいのでしょうか。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○高ア短時間・在宅労働課長  お答えといいますか、お答えできない部分もありまして、まずデータをどう見るのか という部分につきましては、中央最低賃金審議会の方でも「よくわからなかった」と言 われると私もはっきり言ってここでコメントするべきものもありませんので、またそち らの部局とも調べまして、次回。 ○樋口委員  その後、いろいろと研究されているのではと思って。 ○高ア短時間・在宅労働課長  かもしれませんので、報告させていただきたいと思います。あと、所定内給与額だけ で見るべきではないということについては、データを次回できる範囲内でと当然なりま すが、示したいと思っています。あと、福利厚生について現行パート指針で福利厚生施 設について、「同様な取り扱いをするようにしてください」とお願いしてある関係で計上 していまして、そうは言っても施設以外にもあるのではないかという論点はあったので すが、正直法定福利厚生については、前回も労働側からも指摘がありましたし、先ほど 龍井委員からも話がありました。そのとき私もお答えさせていただきましたが、別に議 論しないというということではなく、それはまさに審議会としてどうするかという話な のです。ただ、押さえておかなければならないのは、最終的に「合意したからそうなり ます」という話にはならなくて、最終的にはその年金を担当している部局なり審議会で の検討に委ねるということになるということの前提であれば、どうするかということに ついては、するしないも含めてこの審議会の場で、合意なりその方向づけをしていただ ければということだろうと思います。 ○佐藤委員  よろしいですか。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○佐藤委員  資料6の後ろの「参考」のところなのですけれども龍井委員が話した一部にかかわる のですが、今の指針の枠組みというのは、まずパート労働法ですから短時間労働者を取 り出して、さらに仕事が同じかということを切り出して、さらに人材活用の仕組み、こ れは実態として切り出すという形になっていますけれども、私の理解では、現行の指針 では通常労働者と短時間労働者の仕事が同じ場合、人材活用の仕組みを見るときに、有 期契約だからということ自体をもって、人材活用の仕組みはしないとしているわけでは ありません。つまり、実態で見るというのが今の指針だと思います。有期契約だから通 常労働者と比較対象としないと、つまり、人材活用の仕組みは違うのだという仕組みに はなっていないというところから少し議論いただければということです。  残業についても、残業するかしないかで、分けるというふうになっていないというの が、私の理解です。つまり、正社員も残業する人としない人がいますし、パートも残業 する人としない人がいるわけですから、人材活用の仕組みの居所を議論するときに、形 式的に有期であるかどうかというか、実態としてどういう雇用関係があるかということ を見るということと、残業自体ではなくて職務内容を見るというふうになっているとい うのが、私の理解です。 ○樋口委員  そこで議論になるのは、今のパート労働者の残業は、残業割増率の問題というのがど うしてもあります。今、適用にならないとなっているわけです。一般労働者の40時間 を超えた上での議論、そこについては残業割増ですけれど、元々30時間だった人が残業 して40時間までであれば、その残業割増は払わなくてよいということになってくると いう問題はどうするのかというのは、それはここの問題なのですか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  現行のパート指針でも短時間労働者につきまして、できるだけ残業させないようにと いう項目がありますので、そういう意味からするとパート労働法やパートタイム労働指 針のまさに問題として議論するということは可能だと思います。ただ、考えなければな らないのは、正社員であっても法定労働時間内で働かれている方がほとんどですので、 要するに、そこで完結した結論や議論が終わるのかということについては、そこは法定 内、所定外残業の取り扱いということであれば、それは短時間労働者だけの問題ではあ りませんので、多分議論の本筋としては、まさにそれを規定しています労働基準法やそ ういうところでの議論になろうかとは思いますけれど、だからといってこちらでやるや らないについては、繰り返しになりますけれども、議論の範囲内のことであろうと思っ ています。 ○横溝分科会長  はい。 ○奧山委員  少しよくわからなかったのですが、そういうパート労働について法定労働時間内で働 いている場合に、8時間を超えないで1日就労を所定外でやったときに、当然これは労 働基準法の37条の問題ではないですから、時間外労働割増手当て支払い義務はないわ けです。それは、いわば法律上の規範で、そういう問題について、今「議論の対象にな ります」と高ア短時間・在宅労働課長が言った意味がよくわからないのですが、これは 均衡化の問題なのですか、今のような議論は。 ○高ア短時間・在宅労働課長  私が先ほど申し上げたのは、正社員でも週38時間の人がいると。40時間までいって いない人。 ○奧山委員  それは、パートや非正規と正規の問題ではないでしょう。 ○高ア短時間・在宅労働課長  そういうことです。 ○奧山委員  今、議論の対象になるのか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  私としては、可能性としては入ると思いますが、それをどうするかどうかを含めて議 論していただければと。なぜかというと、「所定内を超えてできるだけ残業しないでくれ」 というパート指針の項目としての関係で、ではその問題も含めて考えるかどうかという ことは、項目としてはありうるということです。 ○樋口委員  これは新聞で読んだものですが、別の所で議論しているのですか、パートについての 法定労働時間に対する割増率をどうするのかというのは。だいぶ前になりましたが、私 の記憶だと日本経済新聞の1面に出ていたと思うのですが、それは何かの。出ていまし たよね。 ○高ア短時間・在宅労働課長  私の記憶が正しければ、何年か前にそういう記事があったことは記憶していますし、 多分、仕事と生活の調和やいろいろなスキームの中で検討項目として挙がることはある のではないかと思いますが、現在、その労働条件分科会の契約法制や時間法制の議論で は、確か法定を上回って残業した場合の度合いや程度や曜日などに応じて加重するしな いの議論であって、所定内の議論はされていないのではないかと思いますが、そこは正 確ではありませんので、そういうことです。 ○横溝分科会長  奥山委員、ありますか。今、手を挙げられたのですが。 ○奧山委員  いいえ、手は挙げていませんが。ただ、もう1回確認ですが、先ほど龍井委員が法定 福利の問題で話されていて、当然そちらの方の問題は非常に大きな問題として存在する わけですが、それも高ア短時間・在宅労働課長は、ここでベースとしてこういう方向で まとめられるみたいな話をしましたが、本当にこの均等部会そういう法定福利の問題を 議論はできるのですか。私はそこまで少しここではきついのではと思うのです。一般と して委員の方が個別に意見を出すのは問題ありませんが、部会としてその議論を進めて 何か方向付けをできるのであればするというようなニュアンスの話のように私は聞こえ たので、それは、本当に可能かどうか確認をしたいだけです。 ○高ア短時間・在宅労働課長  すみません、言葉が足りなかったかもしれませんが、議論を最初からしないというよ うな整理をするということではなく、議論や意見をするということはいいと思いますが、 仮にそこで合意したとしても、それをうちで決めたからということにはならないで、他 の部局の話に最終的につながるという話なので、そういうことであれば、まず「議論か らは外しましょう」あるいは、「優先順位としては後です」ということはありうると思い ます。ここで合意したことによってそれを決めていこうということでできるということ を申し上げたわけではありませんので。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○吉川委員  資料6に沿って少し質問、意見を申し述べさせていただきたいと思います。まず、1 の「労働条件の明示等」の「労働条件の明示」につきましては、既に87.5%の事業所が 明示しているので、そこまでいっているわけですからもう少し現行の指針の浸透を図っ ていくということで、やっていただけないでしょうか。それで十分じゃないかというの が、1点目の意見です。  それから、2点目の「均衡処遇の確保」についてなのですが、これもその何が均衡か というところが、企業単位によっても違いますし、先ほど樋口委員からもありましたが、 何をもって均衡とするかという所のなかなか難しい部分があると思いますので、ここも その企業単位で合理的なものであるならば見直す必要はないのではないかと感じます。  それから、4番目の「労使の話合いの促進・紛争解決」についてですが、これはもう、 そもそも入社するときからこの1番で「労働条件の明示」など、いろいろと内容も説明 していることもありますし、労働者側も選ぶ権利が両方にあるわけですから、これにつ いても法律で決めることではなくて、これは労使に委ねるべきではないだろうかと考え ます。  それから、5番の「短時間雇用管理者」につきましても、1番でも申し上げましたけ れども、ここももう少し浸透を図る努力をしていただければいいのではないかと思いま す。  それから、6番の「所定労働時間が正社員とほとんど同じパート労働者」というのは、 むしろパートというよりも、労働基準法できちんと決めていった方が、いいのではない かと感じますので、一応以上、意見として申し述べさせていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  どうぞ、松井委員。 ○松井委員  まず、その資料6に至る前に、私としてはこれだけ本当に議論をしていくのかなとい うのはそもそも疑問という気がします。なぜかと言いますと資料5の方でいろいろ説明 がありましたけれど、最後に樋口委員が質問されたときの問題で、何もしなくても差が 縮まってきているということは、本当はどういう見方をすべきなのかというのは、本来 解明されて何か施策が必要かどうかということから議論が進められる必要がまだあると 思います。その間、やはり今までの指針の改訂が功を奏したということなのか、あるい は私はそれよりももう少し需給が行き詰ってきているということや企業の経営状態が一 般的に良くなってきて、マーケットに応じた形での賃金が敏感に反応するパートタイマ ーの賃金が上がってきているということが、主要因ではないかと思うのですが、どうい うことを行えば本当は差があって、差を縮めるために議論をするのか、そのために何を するのかという議論の出発点としては、一番重要なのでないかと思います。  そういたしますと、それを見たときに、資料6に書いてあることを、つらつら議論す ることが何か変わっていくのかと言うと、まず甚だ疑問であるというところを1点申し 上げたいと思います。  それから、資料5の22ページ以降です。職務が正社員とほとんど同じパートがいる、 いないというところの中なのですが、24ページをどのように解釈するのかというのが、 まず議論をする中で一番重要なのではないかと思います。ここについては、「職務は同じ 正社員に比べ賃金が低い」と感じているパートは、約4分の1を占めており、その8割 が「賃金格差に納得していない」と書いているのですけれど、これは本当に統計の読み 方として私は、非常に意図的であって、事務局に対してまず、異義を申し立てたいと思 います。なぜならば、ここは、「低いと感じたことはない」ということと、「低いと意識 したことがあるが納得できる」という方を合わせると、こちらの方が升としては過半数 以上あるわけです。そういたしますと、では今後議論を進めていく過程において、これ だけいるのにこれはある程度よくやっているという判断をしていくのか、いやいやまだ 26%も残っているから何かしなくてはいけないのかと。ここをまず議論の出発点として 持っていかないと、何でこれだけまた議論いただきたい項目は、分科会長にまとめてい ただいて、誠に申し上げないのですけれどそもそも出発点としていいのかどうか。ここ をまず読むところからスタートしてもらいたいと思います。そうしないと、その後をど のように考えていくのかということにつながっていかないのではないかと思います。  それから、さらに次のページを見ると、平たく言えば、一番多いのは、まあまあ許せ るというのが半分あるわけです。半分あるからこれでよい。半分しかない、とこれを読 むのか、読まないのか。「やや低い」、「非常に低い」というのが少ないわけです。ですか ら、ここの統計の読み方について、まずどういう考え方に立つのかによって今後の議論 の仕方はやはり変わってくるのではないかと思います。それをまず意見として申し上げ たいと思います。  それから、あと1点だけ質問をお願いしたいと思います。6、7ページの所は、国民生 活白書に出ていることは承知しているつもりなのですけれども、「正社員として就業を継 続した」というときの正社員がどういうプロファイリングになっているのかなど。今、 正社員の中でも結構差が出てきていると思いますので、次回以降、どんな形で正社員と して見てデータをとっているのか。そこは差があるということは差があるのですが、で は本当にそういった形できちんと続けて行けるのかどうか。これを見ると、こんな差が あってこれは何か埋めなくてはいけないという資料だけにはなる。もう少し中身につい ても精査できないものかということが確認をしたい1点です。  もう1点は、14ページで「各産業それぞれにおいて、雇用の柔軟化が進められている ことを主因とする」という書き方になっていますけれども、雇用の柔軟化をするという ことを、なぜそのようにしているのかという分析がもっとないのか。先ほど龍井委員か ら私どもの団体の報告書を何度も挙げていただいて大変ありがたく思うのですけれども、 恐らくこの1995年に出して以降、日本の企業内における職務の変化、あるいはITの進 展による仕事そのものの変化というのは相当大きいと思うのです。ですから、一方で単 純化されたものもあって仕事そのものは楽になっている。そうすると、そういう楽にな っているものに対して、やはり企業側としてはそんなペイは払わないで済ませたい。そ ういう点はあると思います。ですから、柔軟化といっても仕事内容がどれだけ変わって きているのかということを踏まえないで、一方で賃金が低くなっているとか片方は高い とかという議論ではなくて、職務内容の変化と、そこにおける賃金・処遇がどのような 形で合わさってきているのかそれを同時並行的に見ないときちんとした分析にはならな いのではないかと思いますので、ここの「主因」と書いてあるところのさらに突っ込ん だ内容が、わかる範囲で結構ですけれど、お示し願えればと思います。以上です。 ○高崎短時間・在宅労働課長  質問・要望をいただいた点については、次回までにご用意いたします。できる範囲内 で、ということになりますが。 ○横溝分科会長  松井委員に、私もまとめた責任者として一言申し上げます。この項目は、議論してい ただく項目ということですから、この項目が現在ノーだから否定的な状態だから挙げた ということより、議論いただく重要な項目ということで挙げさせていただきました。そ のように理解いただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほどの24ページですが、「納得できる」が41.1%、「低いと感 じたことはない」が16.6%ということを挙げて、これをどう捉えるのかとおっしゃいま したけれども、やはり法律はジャスティス、公平さ・公正さが命ですから、やはり「差 がある」と感じた人がこの程度いる。逆に言えば、松井委員は「差がない」と感じた方 を重く見ますけれども、「差がある」という人がこれだけいれば、やはりこれは問題とし て均衡処遇の問題を捉えなければいけないと思います。いろいろな意見がありますが。 ○松井委員  そこが意見の分かれるところだと思いますので、その点がスタートラインでないと難 しいのではないかと申し上げたつもりです。 ○横溝分科会長  議論しながら皆さんのご意見をいただくということで。今田委員どうぞ。 ○今田委員  松井委員への反論なのですが、この均衡議論というのが、ずっと毎年継続してあるの ですけれど、「格差」の問題というのと少し違うわけです。つまりパートタイムとフルタ イムの間の格差が拡大している、していないという話と均衡というのは必ずしも同じで はない。例えば簡単な例で、フルタイムとパートタイムがまったく職務や仕事の状況が 全然違った状態で賃金が異なる。この間のパートタイム労働者との賃金の格差がこれだ けあるという、それが拡大している、縮まっているという議論と違うわけです。つまり、 パートタイムが非常に多様化していって、いろいろなパートタイムが出てきている。非 常に単純なパートタイム労働者もいればフルタイムと同じような仕事をしている人もい る。そういう意味で、非常にパートタイムの多様化が進み、フルタイムも多様化が進ん でいる。そういう状況で、何が問題なのか。公平なのだというときに「均衡」という発 想でふさわしい処遇をした方がパートタイムの人もフルタイムの人も、働いている人に とってよいのではないかという議論なのです。例えば、これは全く私の仮説ですけれど も、パートタイムとフルタイムの格差が縮まっているということになったら、それは、 ひょっとしたら、さらにパートタイムの多様化が進んで、かなり高賃金のパートタイム 労働者が出てきたり、フルタイムの多様化も進んでフルタイムの中で低賃金の人も出て きたりと、その一つの結果として出るかもしれない。それは皆さん検証していただきた いと思うし、私もしたいと思うのです。  そういう意味で、パートタイムとフルタイムの格差が縮まっているとかいう問題と、 この均衡を議論しましょうということとは話が違う。では、ふさわしい処遇をするには どうすればよいかというのが中心的な議論なのです。そのときに、ここで言っている「納 得できない」というのは、かなり重要な要因として事務局は考えたわけです。少なくと も「同じ仕事をしているのにふさわしい処遇をしていないではないか」というのが納得 という言葉で言い換えているわけで。その人たちがほぼ半分ぐらいいるとしたら、それ はやっぱり問題なのではないかと。一方、こちらで感じてない人がいるではないかと。 その人たちは、何らかの形で違った仕事をしているのだから感じていないので、感じて いるという人がやはりそれだけいるというのは、同じような仕事をして不満だと言って いる人が少なくとも3割位いるというこの事実は、「多くの人が納得しているのだから よい」という議論にはつながらない。かなり重要な議論なので、ここをコアにしながら 適切なルールを考えていきましょうということなのです。それは、経営サイドからもか なり納得いくというか、経営サイドにとっても気持ちよく働いてもらう特に非正規の戦 力化というのは経営的な戦略要件になっているわけで、そのときにその問題をコアに考 えていきましょうというそういう議論なので、松井委員からどうも承服できないという 議論を出されるというのは、少し意外な捉え方をしたということを正直に申し上げます。 ○松井委員  恐らく同じ仕事といっているときの、今田委員も言われましたけれども、同じかどう かというのは、企業側が見る見方と本人が同じと思っているものともまた違うという気 がしています。ですから、これが本当にこれだけ絶対同じかどうかというと、もっと本 来は減る可能性があるのではないかと見ています。時間も過ぎていますので、これにて 終了します。 ○鴨委員  一つだけ、簡単なことを教えてください。正社員とほとんど同じパートタイム労働者 がいるという事業所が42.5%、次のページで、そのような非正社員が増加しているとあ りますけれども、22ページの「ほとんど同じパート」という方たちの、どの程度の労働 時間なのかということを把握されているのであれば教えていただきたい。もし、現段階 で把握されていなくて、次回その辺を出していただけるのであれば出していただきたい。 ○高崎短時間・在宅労働課長  いずれにしても、今すぐにお答えできるものはありませんので、取れるかどうかも含 めて検討いたします。 ○横溝分科会長  それは次回用意ができれば聞かせていただきます。時間も過ぎましたので、今日はこ の程度にさせていただいて、次回までに私ども公益委員の方で、今後の議論の枠組みと なる論点を整理して次回の分科会で示し、それに基づいて議論していただきたいと思い ますが、よろしいでしょうか。  それでは、そのようにさせていただきます。本日の署名委員は稲垣委員と渡邉委員に お願いします。次回の日時・場所については総務課長より説明があります。 ○香取総務課長  今日はどうもありがとうございました。次回の日程・場所は調整中ですので、できる だけ早く、それぞれ追って連絡をいたしますので、よろしくお願いします。 ○横溝分科会長  本日は、どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)