06/09/29 第8回社会保障審議会人口部会議事録 第8回社会保障審議会人口部会 ○ 日 時  平成18年9月29日(金)16:00〜18:30 ○ 場 所  日比谷「松本楼」 ○ 出席者  〈委員:五十音順、敬称略〉         阿藤 誠、岩渕勝好、鬼頭 宏、国友直人、小島明日奈、榊原智子、         鈴木隆雄、津谷典子、樋口美雄、廣松 毅、宮城悦子、山崎泰彦、        山田昌弘        〈事務局〉        薄井康紀 政策統括官(社会保障担当)        北村 彰 参事官(社会保障担当)        佐藤裕亮 社会保障担当参事官室長補佐        高橋重郷 国立社会保障・人口問題研究所副所長        金子隆一 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長        安藏伸治 明治大学政治経済学部教授 議事内容 1.開会 (北村参事官)  定刻になりましたので、ただ今から、第8回の社会保障審議会人口部会を開催させて いただきます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ、お集まりいただきま して、厚く御礼を申し上げます。議事に入ります前に、まず事務局におきまして、9月 1日付で人事異動がございましたので、ご紹介をさせていただきます。まず、政策統括 官の薄井でございますが、本日、所用のために遅れております。もうしばらくしました らまいりますので、その際に改めてご紹介をさせていただきます。私は社会保障担当参 事官の北村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  また、本日は少子化の見通しに関する有識者調査の説明のために、明治大学政治経済 学部の安藏伸治教授にお越しいただいております。なお、本日は、白波瀬委員につきま しては、ご都合によりご欠席と伺っております。また、鬼頭委員につきましては、所用 により遅れるというご連絡をいただいております。  本日は、ご出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議 は成立しておりますことをご報告申し上げます。それでは、議事の進行につきましては、 廣松部会長にお渡ししたいと思います。よろしくお願い申し上げます。 (廣松部会長)  委員の皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうござ います。それでは早速、議事に入りたいと存じます。本日の議事は、お手元の議事次第 にございますとおり、大きく3つございます。1番目が報告聴取、2番目が次期将来人 口推計の基本的考え方について、3番目がその他でございます。  まず、議事の1、報告聴取でございますが、具体的にはそこにございますとおり、第 13回出生動向基本調査(独身者調査)について。それから2番目が、少子化の見通しに 関する有識者調査(デルファイ調査)。この2つでございます。まず、出生動向基本調査 に関しては、国立社会保障・人口問題研究所の金子人口動向研究部長からご説明いただ きます。続きまして、有識者調査に関しては、先ほどご紹介がございましたとおり、明 治大学政治経済学部の安藏教授からご説明をいただきたいと存じます。スケジュールと いたしましては、2つまとめてご報告をいただき、その後、併せて質疑を行いたいと思 います。それではまず、金子部長から説明をよろしくお願いいたします。 2.報告聴取  第13回出生動向基本調査(独身者調査) (金子部長)  第13回出生動向基本調査(独身者調査)の結果を公表いたしましたので、ご報告をい たします。資料の方でございますけれども、まず要約の概要欄をご覧いただきたいと思 います。出生動向基本調査は戦前に始まりまして、戦後は5年ごとに実施しております。 我が国における結婚と出産に関する実情、背景並びに意識を定期的に調査しております。 全体は夫婦調査と独身者調査の2つの調査から構成されておりまして、夫婦調査につき ましては結果を先般ご報告した次第でございます。今回は第13回調査、独身者調査の結 果概要についてご報告いたします。ちなみに独身者調査は1982年、第8回調査から追加 された調査でございます。  調査期日は2005年、昨年の6月1日でございます。先ほど5年おきと申し上げました けれども、今回の調査に関しましては2年前倒しをして実施しております。したがいま して、前回調査からは3年の間隔での実施ということになります。調査対象は全国の年 齢18歳以上50歳未満の独身者で、有効回収率は70.0%でございました。なお、集計分 析の対象は、18歳以上35歳未満の未婚者としております。  冊子の方の説明に移らせていただきます。表紙に記載してある、調査項目・調査事項 についてご覧いただきたいと思います。4つに分けておりまして、まず、「1.結婚とい う選択」、ことらでは未婚者たちの結婚意欲とその背景を探っております。次に、「2. パートナーシップ」、こちらでは未婚者たちの異性関係について調べております。続いて、 「3.希望の結婚像」、こちらは今後のライフコース像について聞いた結果でございます。 続いて、「4.未婚者の生活と意識」、こちらでは未婚者の置かれた現状について特に親 との同居、それから女性の健康といったことを取り上げて調べております。また、最後 に、「結婚・家族に関する意識」について調べております。  結果についてご報告をいたします。2ページをご覧ください。「結婚という選択」。こ こでは結婚意欲とその背景について調べております。表1―1、未婚者の生涯の結婚意 思。自分の一生を通じて考えた場合に、いずれ結婚するつもりか、あるいは一生結婚す るつもりはないか、二者択一で尋ねております。そうしますと、男女ともいずれは結婚 しようと考える未婚者の割合は、90年代、僅かずつ減る傾向にありましたけれども、男 性では前回調査で下げ止まりが見られ、今回は横ばいです。女性では、今回、若干です が反転が見られまして、男女ともほぼ9割のラインを維持しているという結果になって おります。  また、その逆に、一生結婚するつもりはないというものも若干増えておりますけれど も、これは、この設問では不詳が増える傾向があり、生涯の結婚の意思について、態度 不詳が増えていた訳ですが、今回の調査に関しまして、やや不詳が減って、態度をはっ きりと表明するという傾向が表れた結果でございます。  図1―1、こちらでは、ある程度の年齢までには結婚するつもりか、あるいは理想的 な相手が見つかるまでは結婚しなくても構わないというのを、こちらも二者択一で聞い ております。この問いは、適齢期意識あるいは結婚に対する理想志向の強さなどを調べ るものでございます。こちらも80年代から90年代にかけまして、結婚年齢にこだわる 未婚者が減る傾向にございました。しかしながら前回調査でこの割合が下げ止まりまし て、今回では、結婚年齢にこだわる未婚者が若干盛り返して、ちょうど半々に戻してい るという状況でございます。  以上は生涯の結婚についての話でございますけれども、次の3ページでは、今現在の 結婚に対する意欲について調べております。表1―2、図1―2、どちらも同じ問いに 対する結果でございますけれども、図の方をご覧いただきますと、一番色の薄い部分、 「まだ結婚するつもりはない」を見ますと、どの年齢層におきましても増える傾向が、 今回の調査でも続いているということでございます。先ほど、生涯の結婚意欲について は若干、傾向の変化が見られましたが、結婚を先延ばしする意識、現在の結婚意識につ いては、これが継続しているということです。  次に、ここからは結婚意欲の要因や背景について見ていきます。要因の一つとしまし て、就業の状況について、図1―3に結果を示しております。図の縦軸は結婚意欲を表 すもので、1年以内に結婚してもよいと考える未婚者の割合でございますけれども、男 性について見ると、自営業等、正規雇用といった安定した仕事についている人で結婚意 欲が高く、パート・アルバイト、無職・家事というところで低いというように、はっき りとした差が見られております。女性の方では、学生を除きますと、それほど大きな差 は見られておりません。  次に結婚意欲の背景でございますけれども、表1―3では、結婚の利点、あるいは独 身生活の利点に関する未婚者の評価というものを調べております。そうしましたところ、 結婚の利点を感じる未婚者の割合が、今回調査でやや増えているという結果になってお ります。一方、独身生活に利点を感じる未婚者も、やや増えておりますが、これは結婚 に対する評価が若干上がったのと同時に、現在の独身生活に対する評価も下がってはい ないという形でございます。  5ページの方は割愛いたしまして、下の図1―6をご覧いただきますと、こちらはや はり就業の状況と結婚の利点の感じ方の関係を見ております。そうしましたところ、男 性の方では正規雇用、自営業といった、やはり安定した仕事についている人で、利点が あると考える人の割合が高く、パート・アルバイト、無職・家事で低いというような、 結婚意欲と同様のパターンを示しております。女性の方でも、やや差が見られますけれ ども、男性ほど大きな差は見られません。この辺も意欲と同じようなパターンを示して おります。  次に6ページで、具体的にどのような点に結婚の利点を感じているのか、あるいは独 身の利点を感じているのか、こういったことを調べております。図1―7で、今回、特 徴的なところを見ますと、選択肢の中で、子供や家族を持てるという結婚の利点を指摘 する未婚者の割合が大幅に増加しております。未婚者における、子供や家族に対する感 じ方の変化というものが、ここで捉えられていると思います。その他の項目では、おお むね横ばいというように見られます。  一方、図1―8、独身生活の利点の方ですが、こちらは驚くほど変化のない項目でご ざいます。唯一、女性で、広い友人関係を保ちやすいということを独身の利点であると いうように挙げる割合が減っておりまして、これは逆に、結婚した場合に、交友関係に 束縛感があったものが緩んでいるということだと解釈できます。全体として、行動や生 き方の自由が保てるという回答が、男女とも非常に多く、また、変化も少ないという形 になっております。  次に、なぜ結婚をしないのか。これは単刀直入に、独身者に対して、現在独身にとど まっている理由を尋ねたものでございます。図1―9の上段の2つのグラフは、24歳ま での若い未婚男女についての結果でございます。下の段は25歳以上の未婚男女について の結果でございます。グラフの項目にはいろいろございますけれども、右と左に半分に 分け、おおむね、結婚をしない理由とできない理由というように分類して示しておりま す。  全体的なパターンといたしましては、若い層ではグラフの左半分に配置した、結婚し ない理由が多く選ばれており、下段の高い年齢層では、右側の項目の中で、特に、適当 な相手に巡り会わないという理由が多く選択されております。今回の特徴といたしまし ては、特に若い年齢層の女性のところで顕著でございますけれども、仕事(学業)に打 ち込みたいので独身に留まっているというように回答している未婚者の割合が増えてお ります。男性や高い年齢層でも、僅かずつ増えております。  次に8ページ、「パートナーシップ」では異性関係について調べております。表2―1、 こちらは異性の交際相手がいるかどうかということを調べております。18歳から34歳 までの未婚者について、男性では、これまでほぼ一貫して、半数の男性が、交際してい る異性はいないという形になっております。今回につきましても、引き続き半数程度で ございます。女性の方ですが、これまで約4割程度、交際している異性はいないという ように回答されていましたけれども、今回、若干増えまして、44.7%で、依然、異性交 際というのは低調なまま推移しているというように見ております。  図2―1ですけれども、こちらでは、結婚を希望する交際相手を持っている未婚者の 割合というものを示しております。女性では20歳代で、やや増えているということがご ざいます。これは生涯の結婚意欲が、やや持ち直しているというようなことを背景にし ているのではないかと思われます。  次に、同棲について調べておりますが、表の中では括弧の中にお示ししておりますが、 総数で見ますと、現在同棲しているのは2%前後と、いまだに少数派でございます。し かしながら微妙に増える傾向がございまして、その辺は、過去に同棲を経験した割合と いうものを見ますと、僅かずつ増えているというのが確認できまして、20歳代後半以降 は男女とも、ほぼ1割に達しているということです。  次に性経験と避妊について調べております。未婚者の性経験率というものは、どの年 齢層でも、これまで増加傾向にありましたが、90年代の終わりごろから、男性について は、ほぼ頭打ちの傾向でございます。図の方は、色の濃い部分が経験ありの割合を示し ております。女性につきましては90年代に顕著に経験率が増加を示しておりました。し かしながら今回調査では、男女ともに頭打ち傾向になっております。また、経験者の避 妊実行の割合は、男女とも8割強ということで、その方法についてはほとんどがコンド ームでした。  次に、「希望の結婚像」、これからのライフコース像についての意識を調べております。 最初に図3―1では、希望する結婚年齢を尋ねておりますが、これまで、この平均希望 結婚年齢は、男女とも、ほとんどの年齢層において上昇が続いておりまして、未婚者の 意識の上でも晩婚化というものが進んでいた訳ですが、今回の調査では男女ともおおむ ね下げ止まっており、男性では僅かに下がる傾向も見られております。  図3―2の方でございますけれども、こちらは結婚相手との年齢差の希望を調べてお ります。年齢差につきましては、近年、男女とも、より自らと年齢の近い結婚相手を望 む傾向が続いておりました。とりわけ同い年の相手を希望する未婚者が増えておりまし た。しかし今回調査では、女性でこの変化の傾向に一定の休止が見られております。  次に、結婚、出産と、それから就業に関連した女性のライフコースに関する意識を調 べております。図3―3で、まず左側のグラフは、女性が理想とするライフコースを尋 ねた結果でございます。右側は、女性が実際になりそうだと考えるライフコースを示し ております。そうしましたところ、どちらも専業主婦というコースが減って、そのかわ りに両立コース、これは出産・育児と仕事を両立するというライフコース像ですが、こ れが増えてきております。その下にあるグラフは、こちらは男性が女性に期待するライ フコースでございますが、こちらでも、なお一層明瞭に、専業主婦を期待するというも のが減って、両立を期待するというものが増えてきているという結果になっております。  割愛しまして次のページにまいります。子ども数についての希望でございますけれど も、希望する子ども数の平均値、平均希望子ども数は、調査開始以来、減少する傾向が ございました。しかし今回初めて下げ止まりの傾向が見られました。これは男女ともに 下げ止まり、あるいは若干の戻しというものが見られております。また、希望子ども数 は従来男性の方が多い傾向にありまして、次第に男女差が縮小する傾向が見られており ましたけれども、今回につきましては女性の数値が初めて男性を上回っております。そ の下のグラフは、希望する子どもの数の分布を示しているものでございますけれども、 今回調査では横ばい傾向を示しているということがご覧いただけるかと思います。  希望子ども数につきましては、例えば就業状態について、希望子ども数に違いがある かというのを調べたところ、男性の自営業で特に希望子ども数が多いということがわか っております。それから図3―7でございますけれども、本人の兄弟数別に見ますと、 本人が1人っ子であるか2人兄弟であるかに比べて、3人以上の兄弟の場合に、希望子 ども数が多いという傾向が比較的はっきり、男女ともに見られておりまして、最近にな るほどその差が開いているということがわかりました。  次に、未婚者の生活と意識でございますけれども、表4―1、親と同居する未婚者の 割合につきましては、男性では90年代の後半から最近にかけまして、前回調査、2002 年にかけまして、若干、上昇がありましたけれども、今回調査では、親と同居する割合 は、おおむね横ばいとなっております。女性では年齢によって傾向が異なっておりまし て、従来同居が少なかった30代前半の同居率が上昇している傾向が見られます。表4― 2、図4―1は、どちらも就業状況別に見た親との同居を見ておりますけれども、こち らも男性ではっきりした違いがありまして、無職・家事あるいは自営業が、同居の割合 が高く、次にパート・アルバイト、そして正規雇用の場合には比較的低いという差が現 れてきております。女性でも似た傾向がありますけれども、男性に比べると差は小さい です。  次の項目は、女性の健康についてという新規の項目でございますけれども、女性の妊 娠や出産に関わる健康について調べましたところ、18歳から34歳の未婚女性の5人に 1人、19.3%が何らかの問題や障害を感じているということがわかりました。最も多い のは月経に関する問題でございまして、30代になりますと、婦人科系の障害や不妊を心 配する女性が若干多くなってくるという結果でございます。  最後に、結婚と家族に関する意識と評価でございます。表4―4では、結婚と家族に 関する意識について、表に示した1番から10番までの項目について賛成か反対かを聞い たものでございます。この時系列を図4―2に示してございますけれども、今回、変化 が明瞭に表れているものを挙げますと、1番の「生涯を独身で過ごすというのは、望ま しい生き方ではない」、すなわち生涯独身はよろしくないというもの、それから「男女が 一緒に暮らすなら結婚すべきである」という考え方、それから6番の「結婚したら、家 庭のためには自分の個性や生き方を半分犠牲にするのは当然だ」というもの、それから 8番の「結婚したら、子どもは持つべきだ」というもの、10番の「一たん結婚したら、 性格の不一致くらいで別れるべきではない」、こういった、結婚・家族を支持する方向へ の意識の変化というものが、捉えられております。ただ、7番の「結婚後は、夫は外で 働き、妻は家庭を守るべきだ」という項目につきましては、これに賛成する割合という のは継続して減少しているということでございます。  11ページは、新規の項目としまして、結婚や家族に関する周囲の状況に対する未婚者 の評価を調べたものでございます。表4―5の1〜5を調べております。その結果、「子 どものころ、父はよく家事をしていた」というのが男女とも2割程度が当てはまると回 答しております。それから2番で両親の夫婦関係、あるいは3番では、まわりの友人の 結婚、こういったものに対する肯定的な考え方を示す割合が、男女とも約半数おります。 それから、友人や兄弟に子供を持っている人が多い、4番でございますけれども、これ がおよそ3分の1。5番目、周囲の人やマスコミから、結婚や出産・子育ては大変だと 聞くことが多い、これが6〜7割ということになっております。結婚意欲について関係 を調べましたところ、友人の結婚が幸せそうである、あるいは友人に子供が多いという ことを回答した未婚者で、若干、結婚意欲が高いといった結果になっております。以上 でございます。 (廣松部会長) ありがとうございました。薄井政策統括官がお見えです。一言ごあいさついただければ と思います。 (薄井政策統括官) 遅れてまいりまして大変失礼いたしました。9月1日付で社会保障担当の政策統括官を 拝命いたしました薄井でございます。よろしくご指導のほどお願い申し上げます。 (廣松部会長) どうもありがとうございました。それでは続きまして、安藏教授からご説明をよろしく お願いいたします。 3.報告聴取 少子化の見通しに関する有識者調査(デルファイ調査) (安藏教授) 「少子化の見通しに関する有識者調査(デルファイ調査)」の概要をご説明いたします。 お手元の資料にすべて入っております。一応、プロジェクターでお見せはしますけれど、 資料の方が見やすいと思いますので、そちらをご覧ください。  この調査は厚生労働科学研究費を基に行ったものです。2001年に「少子化の見通しに 関する専門家調査」というのが一度実施されておりますが、それと類似した形ではあり ますが、今回はかなり質問項目あるいは聞き方を変更してあります。ですから、以前の ものとは直接比較はできないかと思います。今回の調査の目的は、人口、経済、家族、 医療、公衆衛生などの専門家に、少子化のこれからの動向と、さらにどのような政策課 題が少子化対策として望ましいかということを中心に聞きました。  調査方法はデルファイ法と申しまして、多数の人に同じ質問を複数回お送りしました。 2回目の調査には、1回目の調査結果を出しておりますから、ある方向に意見が収斂し ていくことを期待しております。ですから、専門家がどのような考え方を持っているか というのが大体わかるかと思います。郵送法で行いまして、第1回は平成17年11月か ら12月にかけて。有効回収率は約36%。それから第2回目は本年4月から6月にかけ て行いました。2度目は1回目と同じ方に送りましたが,若干減りまして26%の回収率 になりました。  回答者の属性です。年齢は、やはり研究者ですから比較的高く、男性は2度目が54 歳から55歳、第1回目は52歳です。女性の方は、2度目は40代後半です。  専門分野別の分布です。人口学からいろんな分野に渡る先生方にお願いして回答をい ただきましたが、回答数が多かったのは社会学・文化人類学、それから医学・公衆衛生 学、そして人口学です。  次は,回答者の研究の関心領域です。これは、一番多いのが家族です。家族というの は、社会学者が答えているだけではなくて人口学の中でも家族に関心を持っている方が いますので、ある意味では2つの変数を組み合わせないと、はっきりとした研究分野と 感心領域の両方の方向というのは出てきません。  少子化の今後についてはどうかという問題に関しては、1回目も2回目も、今後はこ の少子化の流れは継続するであろう、とほとんどの方が回答しています。少子化対策は 必要かといいますと、やはり80%から90%の方が、必要であるというように回答が収斂 していきます。  次は,少子化の主因とされる2つの要因です。今、金子さんが報告された少子化の主 要因である、独身者の問題です。つまり,結婚行動の変化です。未婚化、晩婚化、非婚 化、これについて専門家がどのような考え方を持っているかといいますと、一番多いの が、ライフスタイルの選択肢の増大、それから2番目に多いのが、結婚すべきという規 範の変化、これの緩和が大きいだろう、と。そのほか、30%を若干超えているのが、女 性の社会進出に伴う高学歴化と就業の上昇というところかと思います。巷間よく言われ る、雇用の不安定化については30%ぐらいであるということです。  少子化の二番目の要因である夫婦出生率の低下に影響を及ぼす、夫婦の出生行動につ いて、どのようなことが考えられるかといいますと、4本ぐらい大きな柱が出ておりま す。一つは13番目の、子供を持つべきという規範が変わってきた。それから8番目の、 教育費支出の増加、次に生き方・ライフスタイルの変化、それから保育施設の不足とい うことです。少子化対策というと、保育施設等、サービスの問題が出てきますけれども、 それ以外の問題も大きく出ています。特に、今回は専門家調査ですけれど、以前に行っ た各自治体住民に対する少子化調査によりますと、追加的な子どもを持たない一番大き な理由は,やはり経済的な問題と教育費の支出でして,これらが夫婦出生力に影響を及 ぼす最大要因と言えます。専門家も同じような見方をしているということです。  将来の人口の動きです。専門家がどのような見方をしているかというところをご覧く ださい。合計出生率の変化です。平均値で見ますと、第1回目は1.22ですが、2回目の 2010年は1.23、それから2025年には1.225、2050年には同様に1.225です。ところが 分布を見ますと、このような形です。2010年の合計出生率の分布予測を見ますと、1.2 と1.25のところで大きな山が出ております。途中、その年に1.23という方々が若干い て、1.3という方が20人ぐらいいるということで、全体の平均としては上に出ている1.23 というところに落ち着くという結果です。2050年になりますと、この山が1つにまとま っていきまして、1.2ぐらいになるということです。当然、上の多少高めのところに幾 つか山が出ていますので、そこに引っ張られて1.225という形になる。その先の2050 年に関しては、もう、ほとんど予測が不可能ということで、皆さん、勝手な数字を出し ていると言えましょう。  平均寿命の推計に関しては、これはもうほとんど収斂しております。当然、質問票の 方に第1回目、第2回目とも、現状の出生時平均余命である、いわゆる平均寿命,2004 年の男性が78.6、女性が85.6を併記しておりますので、その辺のところに集約されて くるということです。  その次は生涯未婚率です。これも2000年の国勢調査の結果で男性が12.6%、女性が 5.8%という情報を与えております。その結果として、男性の場合は16.67、女性の場合 は11%ぐらいまで上がるだろう、と予測しています。さらに2050年には男性が19%、 女性が13%ぐらいに上がっていくであろうということで、50歳までの未婚率の上昇があ るであろうと予測しています。90年以降、急激に増加していますけれど、それは専門家 もそういうふうに考えているということです。  次に(4)のところが、女性の平均初婚年齢です。グラフの方のタイトルが「女性の 生涯未婚率」となっていますが、平均初婚年齢に変えていただきたいと思います。ここ では28、29というふうに、30歳にかなり近づいてくる予想されております。2004年で は27.8ですから、若干の上昇が見込まれると、専門家が予測しているとご理解ください。  同棲割合。先ほど金子部長から、日本は非常に低いということをお話しいただきまし た。第13回の出生動向の中にもありましたけれども、18〜34歳で男性が7.9%、女性が 7.3%です。25〜29歳のところでは男性が11.8、女性が10.1でしたが、専門家は、これ から上昇するというふうに考えておりまして、その値は18.1%と16%と考えております。  婚外子も同様に、我が国では現在,全出生のうち2%を切っております。先進諸国の 中では非常に低いところではありますが、婚外子率も今後は上昇し、6%あるいは5% 台に上昇するであろうというふうに回答しております。  離婚率は、既に先進諸国に並ぶ高さまで上がっておりますが、今後はさらに上昇する であろうということです。大体7パーミルぐらいまで上昇するのではないかというふう に考えております。次第に、アメリカ型の離婚社会になるのではないかと、専門家は考 えている。当然、その反対に、再婚率は上昇するというふうに考えておりまして、離婚 がふえれば再婚がふえるというふうに考えています。  経済・社会の見通しに関しては、非常に微妙な反応をしております。日本の経済は、 長期的に活力を取り戻すか、再び活力を取り戻すかということに関しては、「どちらか というとそう思う」が出ておりますが、かなり左右に散らばっております。「そう思わ ない」というのも34%います。それから、労働力人口の減少のため失業率が低下するか というと、これには専門家の意見がきれいに分かれておりまして、判断しかねるという ことかと思います。人口減少により1人当たりの所得は豊かになるということについて は、「どちらかというとそう思わない」が若干高くなっています。それから、所得格差 が拡大するということについては、人口も少なくなっていきますので、当然格差が存在 するであろうという方が6割近くいるということです。  労働力率は今後高まっていくというのが、6割以上。それから、女性の就業と育児の 両立の環境は改善されるかという問題ですが、「どちらかというとそう思う」という、 少々控えめな考え方です。男女の賃金格差も同様に出ております。フリーターやニート に関しては、意見が分かれています。将来的に見て、男女共同参画の動きがあるかとい う問題に関しては、「どちらかというとそう思う」というのが出ております。犯罪の増 加、社会不安に関しても、同じような判断をしております。労働力減少に対応するため の移民政策に関しては、「どちらかというとそう思う」が高くなっておりますが、左右 に同じように散っております。抜本的な年金改革が実際に行われるというのは、これも、 「どちらかというとそう思う」が50%ということです。  先ほどの第13回の出生動向基本調査にも出ておりましたけれど、「夫は外で働き、妻 は家庭を守るべき」という価値観が弱まるということに関しては、半数以上の方がそう 思っておりますし、「どちらかというとそう思う」が4割ですので、9割以上の方がそ ういう社会になるであろう、と。そのほかの、「子供が小さいうちは、母親は育児に専 念すべき」「男女が暮らすなら結婚すべき」「子供は法的に結婚した夫婦の間で生まれ るべき」というのは、そういう考えが弱まるかということに関しては、「どちらかとい うとそう思う」というのが出ております。しかし、最初の、「男は外、女は内」という 考え方の変化と比べると、それほど大きな変化は出ていないということです。  これから必要とされる少子化対策です。これは各専門家に3つまでリストアップして もらった複数回答方式です。ここで見ますと、3つですから、いろんなことが重複して 出てきます。保育所の増設、学童保育の充実が一番多く出ています。働き方に関しては、 育休制度の充実と女性の再就職支援が必要であるということ。それから、教育に関して は、教育費というのが有配偶出生率に一番懸念材料として言われてきているものですが、 これに関しては希望者全員が受けられる奨学金制度の充実、それから男女共同参画教育 の推進というのが、若干高く出ておりますけれども、ほとんどの施策が総合的に必要で あろうと回答していると判断して良いと思います。税・社会保障に関しては、所得税控 除に関して103万の壁の解消、社会保険料の方で130万円の壁の解消、それから乳幼児 医療費の無料化ということで、女性が働きやすい環境をつくるべきだという考え方があ らわれています。  少子化対策として最も力を入れるべき分野はどこかということですが、一番多いのが 労働雇用分野です。さらに社会保障給付費に占める少子化対策関連経費は、今は3%ぐ らいですけれど、それをどの程度までふやすか。特に育児・家庭関係の給付費です。専 門家のこれに関する回答の分布が、9.6%、9.1%ということですが、分布を見ると、ほ ぼみんな10%に集中しております。つまり、欧米先進諸国と同じぐらいのレベルを、今 後の日本の少子化あるいは家族政策に出すべきであるという意見に集約されていきます。  ここまでは、すべての先生方に伺ったものを集めた結果をご報告いたしましたが、次 に専門分野別に考察をしてみました。専門分野によって、いろんな意見の違いがあるの ではないかということです。非常におもしろいのが、このグラフです。専門分野別の合 計出生率の予測値というグラフがあります。これを見ますと、一番上が、例えば2025 年のところですが、ひし形の線のところが高くなっています。ひし形というのは人口学 者です。「×」が経済学者で、その次に高くなっている。社会学者と医学・公衆衛生の 関係者が非常に低い数値になっています。2050年になると人口学者は出生率を高く予測 します。経済学者も高く見ますけれど、そのほかの分野の方々は低く、社会学者が一番 低く予想しています。人口学、社会学は、合計出生率の動向を2010年までに1.2ぐらい まで低下すると予測しながらも、その後は1.3ぐらいまで上昇すると予測している。社 会学・文化人類学者は2025年、それから2050年も低く考える。それから、医学・公衆 衛生、その他の分野は1.2の水準をやや上昇ぎみに推移すると予測している。このよう に、専門分野別に違う意見が出ています。経済学者はオプティミスティックに、常に、 明日は明るい社会が来ると考える傾向がありますので、そういう数値になる。社会学者 は今を必ず批判する姿勢を持っていますから、こういう形になるのかと思います。医学・ 公衆衛生の方は、ふだん接している状況から判断するのではないかというふうに思いま す。  平均寿命、出生時平均余命に関しては、いずれも上昇するということですが、人口学、 経済学は、ともに上昇する率を高く見る傾向があります。専門分野別に見る生涯未婚率 の推移に関しても、同じように人口学、経済学が高い方向に見ているということです。 それから平均の初婚年齢。これもおもしろいことに経済学者は高く見るのです。経済学 者は常に将来は高く伸びると考える。人口学者はこうした数値に関しては,割と冷静に 見ていると私は思います。人口学者は、期間率,つまりピリオドという考え方と、コー ホートという考え方を分けて考えます。今の一瞬の期間出生率の変動だけを注視するの ではなく,コーホート的な動きを考慮しますので、比較的高い数値を出す傾向があると 言えます。  次に、専門分野別における少子化対策の分野です。これは大雑把に聞いたものです。 児童福祉、労働・雇用、それから教育、社会保障、税制の中で、何に最も力を入れなく てはいけないかという質問です。社会学・文化人類学者は労働・雇用に一点集中です。 75%の方々がそこを支持します。それから、人口学者は第2に児童福祉を挙げておりま す。医学・公衆衛生研究者は教育と社会保障を、そのほかに支持しております。経済学 者は児童福祉と社会保障を2番目に重要な対策と考える。専門分野別によって、対策に 関しての関心が異なっているということをご理解いただきたいと思います。  今度は、それぞれの大きなくくりを、具体的な施策について聞いたものが最後の表で す。これを見ますと、一番濃いところが50%以上支持をして、その次の濃さのところが 40〜49%、薄い網掛けが30〜39%となります。推奨する具体策としては、まず、児童福 祉に関しては保育所増設、児童保育拡大。働き方に関しては育児制度の充実と女性の再 雇用支援。それから教育に関しては奨学金制度の充実と男女共同参画教育。税・社会保 障については103万円の壁、130万円の壁、そして乳幼児医療費の無料化を強く支持し ております。  社会学・文化人類学の方々が、どういう政策を支持しているかを見ていきますと、女 性が働きやすくて男女共同参画を促進するような対策を非常に高く支持している。もっ と細かく、社会学で家族社会学とジェンダーの方々を分析すると、特にこの傾向が強く 出ます。  医学・公衆衛生の研究者は、子育て理解教育とか性・妊娠出産教育ということ、それ から一時預かり保育を支持します。子供や家族の教育について考えております。  経済学者を見ていただきますと、ほとんど経済的な変数を支持する特質があります。 以上のことから,今後、政策を考えるときには、その委員会がどのような学者で構成さ れているかによって、その委員会の政策決定の方向性が決まってくるという、非常に重 要な内容が出てきたと思います。以上です。 (廣松部会長)  どうもありがとうございました。それでは、今の2つのご説明に関して、ご質問、ご 意見をいただければと存じます。 (樋口委員)  これは、名簿は何を用いたのでしょうか。 (安藏教授)  デルファイの方ですか。 (樋口委員)  はい。 (安藏教授) 各分野の学会です。学会名簿を活用し、個人情報の問題がありますので、ご本人ではな く、所属校あるいは所属機関、研究所に送付させていただきました。 (廣松部会長)  私も今の件に関して、安藏先生に対する質問です。2ページのところで、専門分野別 分布というのがあります。経済学分野に関して、そこの数でいきますと、経済学は48 ですよね。これは1回目というか、対象者として選んだ時点の数ですか。 (安藏教授)  これは2回目です。1回目の回答は、もう少し高かったのですけれど、2回目に経済 学者の方は、その分、返事をしなくなりました。また,人口学者で経済学者という方は, 人口学者に分類し,純粋に経済学と答えられた方々が経済学に分類されています。 (廣松部会長)  それに対して、23ページ、24ページのところで、少子化対策について、例えば24ペ ージのところですと、経済学はNが16になっていますね。 (安藏教授)  はい。これは、この質問に対して回答をしている人が減ってくるということです。そ のほかの推計はするけれど、質問によっては回答をしないで飛ばしているということが あります。 (廣松部会長)  わかりました。ほかに、いかがでしょうか。 (山田委員)  今のデルファイ調査ですが、私も多分、確か答えた1人だと思います。分野別の傾向 が、どれぐらい意味があるかということです。男女別に、研究者の性別というもので出 してはいないでしょうか。つまり比較的、社会学・文化人類学は女性研究者が多いので、 もしかしたら、そちらの影響があるかと思うのですが、その点については、いかがでし ょうか。 (安藏教授)  出していないのではなくて、出さないようにしました。専門家の意見を聞いている訳 ですので,女性だからこういう意見というのも、どうかと思いました。必要でしたら、 いつでも出すことはできます。 (鬼頭委員)  今の質問と関連しているのですけれど、研究者中心ですから、そんなに年齢の幅はな いだろうと思いますが、世代によって多少違いはあるのかなあという気がするのですが、 それは何かデータの分析では考慮されているのでしょうか。 (安藏教授)  経済学の回答が少ないものですから、世代別に分けますとサンプル数が減少しますの で、不可能かと思います。 (鬼頭委員)  すみません、私も1回目で脱落しておりますので。 (津谷委員)  これは日本経済学会の名簿で送られたわけですね。伺ったところ、今、2,500人ぐら い会員がいるそうで、この48というのは2回目で、前回よりも減ったということですが、 たとえ100としても、要は回答率が異様に低いと思うのですが。 (安藏教授)  経済政策学会です。経済学会ではありません。 (廣松部会長)  他にいかがでしょうか。出生動向調査の方で、一つ教えていただければと思うのです が、6ページのところで、結婚の利点として、自分の子供や家族を持てることという項 目の数が、確かに調査を追うごとに急激に増えていますが、これに関して何か解釈とい うか、その理由の説明はありますか。 (金子部長)  全体的な傾向としまして、社会的信用、親や周囲の期待、生活上の便といった、実利 的な結婚の利点というものが、回を追うごとに減っておりまして、それに対して、精神 的安らぎ、家族を持てる、愛情を感じている人と暮らせるといった、情緒的といいます か、個人的な部分が拡大してきました。この問いでは、結婚の機能といったものを未婚 者の意識から読み取るというものなのですけれども、その中で、特に家族を持つという ことに対するこだわりといいますか、支持をする傾向が、今回、特に高まっているとい うことです。そういう流れの中で家族の評価が高まっているということであり、正確な 回答になっておりませんけれども、そういうことでございます。 (山田委員)  金子さんに質問させていただきたいのですけれど、11ページのところで、希望するラ イフコースのところですが、女性以上に男性が期待する女性のライフコースで専業主婦 が大幅に低下して、女性が専業主婦になりたくても男性が嫌だと言う時代になったとい うことが明らかなのですが、ここの減った部分について、年齢層などの何か特徴はある でしょうか。 (金子部長)  まだ分析を始めたところでございまして、そういった細かい属性による部分について は、今後、報告書の方で明らかにしていきたいと思います。 (鈴木委員)  私も金子部長にお尋ねします。これらの調査というのは、クロスセクショナルにずっ と5年とか、あるいは今回は前倒しで3年ということで実施したものです。ですから、 トレンドは見えますけれど、しかし、例えば調査年齢別に見た1年以内の結婚の意思な どという項目がありますが、これは調査年度ごとにクロスで見ていますから、トレンド は見えますけれど、例えばその時点で「1年以内に結婚したい」という人が、本当に1 年後にどうなったのかというような、縦断的な調査結果があれば良いと思うのです。こ れは8,000人の大規模調査ですから、とても無理だと思いますが、たとえ20分の1のラ ンダム調査にしても、かなりの実測的な、推計に用いられる予測値といいますか、実測 値が出るだろうと思います。ですから、結婚の希望を持っていて、それがその後どうな っていくのかという、その追跡の調査というようなものは、今まであったのか、もし、 おわかりになれば教えていただきたいと思います。 (金子部長)  確かにこの出生動向基本調査というのは、クロスセクショナルで、横断調査を繰り返 し行ってトレンドを見るということが主たる目的でございます。これに対して、実際に ある意思を持った人が、その行動をしたかどうか、そういう因果関係を明らかにするよ うなタイプの調査としてパネル調査、縦断調査というのがございます。厚生労働省では、 2001年から、出生児の縦断調査、及び成年者の縦断調査、そして昨年から、中高年者の 縦断調査というのを始めていまして、1年ごとにそれぞれ同一対象者に対して調査を行 っていくということをやっています。その中で、成年者の調査ですけれども、結婚の意 欲を聞いている部分がございます。これはまだ、結果が3回でしたか、まだ結果が累積 しておりませんけれども、これが次第に累積してきますと、実際にその意欲を持ってい る人が結婚したかどうか、あるいは子どもについてもそうですけれども、出生意欲を持 っている人が実際に子どもを持ったかどうか、そういったことが明らかになってくると 期待しております。 (津谷委員)  2つとも、コメントというかお答えになるのですが、これは、確かに厚生労働省のこ の縦断21世紀パネル調査は大変大きなものですので、これは非常にいいと思います。安 定した結果が、もう少し時間がたてば、毎年やっておりますから、一応、今のところ10 年やるということで、恐らく金子部長の方から、また近いうちに、いろんなご報告を聞 けるのではないかと思いますが、ただ、データの規模は小さいのですけれど、家計経済 研究所が、もう10年以上、このパネルをやっておりまして、特に若い女性が中心ですけ れど、確かに結婚の意欲と、それから数年後の結婚行動というのは結びついているよう です。  それと、これはアメリカの調査ですけれども、こちらもパネル調査であり、5年に1 回、同一人を追跡します。結婚している人に、結婚の満足度、幸福度を聞きまして、非 常に不満であると言った人が、その5年後、やはり有意に高い確率で離婚をしておりま す。ですから、結婚と離婚に関しては、そういう意思とか、それから満足度というもの が、その後の行動を規定していると言えるかと思います。子供については、また別のフ ァクターがありますので、そこまで明確ではないのではないかと思います。  ただ、私のコメントというか、部長に伺いたいのは、先ほどの山田先生のご意見に異 を唱えるつもりはないのですが、この専業主婦が減っているということについて、女性 がたとえ専業主婦でいたくても、男性の方が、もう、そうしてもらいたくないのではな いかということでしたけれど、女性の場合は理想と予定を聞いている訳です。そして男 性は、自分が女性に対して期待するという期待値を聞いているということで、これはプ リファレンスのメジャーとして、その辺の線引きが大変難しいと思うのですが、ただ、 この女性が「こうしたい」という予定、インテンションと、その下の、男性が期待する 女性のライフコースとは、理想というのはある意味コストがないと考えたら、やりたい ことをやれるならこうだということだと思いますので、この女性の予定と男性の期待す る女性のライフコース、これを突き合わせてみますと、2005年の最近の調査では、専業 主婦は大体12%と13%となり、バッチリ合っていると思います。再就職も大体37%で すので、これも、ほぼ見事な合致となっています。両立は少し違いますが、男女差の一 番大きいのは、非婚就業というもので、女性が大変高くて、きれいに上がっています。 先ほど生涯未婚のお話がありまして、結婚は、ただ単に遅れているだけではなくて、ノ ンマリッジが増えてくる。出生率への影響も大変大きいですし、社会保障への影響も、 これは非常に大きい。女性でこれだけ増えてきておりまして、男性の方は、そうは思っ ていないというか期待はしていないようですが、結婚に対する両性間のいろいろなライ フコースを含めての期待値、希望値というものの格差が大きくなってきているというこ とは、これはどう見ても結婚のマイナス要因です。女性が、これほど高い割合で、自分 は働いて、一生自分のキャリアで、結婚しないで生きていくと考えているということな のでしょうか。これについて、部長はどうお考えかと伺いたいと思いました。 (山田委員)  すみません、その前に申し上げたいことがあります。津谷先生に異を唱えるつもりは ないのですが、全般的に女性の年齢層が上がっているので、男性は別に自分のことでは ないので、多分、上がらないと思うのですが、女性の非婚就業というのが、各年齢層の 構成変化を除いても増大しているのか、それともほとんど年齢層では変わらないけれど も年齢構成が変化したのかどちらでしょうか。それを知りたいのですが。 (樋口委員)  家経研のパネル調査のことが出たので、やっている者として、関連して発言をさせて いただきます。1993年から、24〜34歳を対象に、もう既に14〜15年ほど追跡調査をし ています。その中で、意識というものは変わり得るものだと実感として感じておりまし て、例えば結婚して、子供を欲しいですかと尋ねます。欲しいと答えた人も、なかなか できずにいると、今度はもう欲しくないという方に変わってくるのです。どういう人が 変わっているだろうかというのを見ると、やはり所得が厳しいような人たちが、ある意 味であきらめています。あきらめると同時に、自分をジャスティファイするということ から、もう子供は欲しくなかったと思うようになっていくという傾向が出てくる訳です。  ご質問は、例えばいろんなプリファレンスが変化してきている、というような実態だ ろうと思いますが、それにはトレンド的な要素と、やはりそれぞれ、例えば経済環境が 変わったとか、何らかの、背景に変化をさせる要因があるのではないかと思います。で すから、こう変わりましたというだけで終わらないで、その変わっていった背景は何だ ろうかというようなところについて、これから研究なさるのかもしれませんが、是非や っていただきたいと思います。 (廣松部会長)  かなり時間が押しております。今、何人かの委員の方からご質問あるいはご要望がご ざいましたが、それに関しましては、先ほど金子部長の方から、これから詳細な分析を なさるという発言がございましたので、その分析の過程で、今のご質問に関して答えが 出るよう努力していただき、適当な時機に報告していただければと思います。まだ他に ご質問、ご意見がおありかと思いますが、申し訳ございませんが、報告聴取に関しまし ては、ここまでにさせていただきたいと思います。  それでは続きまして、これはどちらかというと「議事の3、その他」に当たりますが、 前回のこの部会において、宮城委員からご紹介がありました、晩婚化に伴う不妊治療の 問題点について、本日、宮城委員より資料を提出いただきました。その資料に基づいて ご説明をいただくということですので、宮城委員にお願いをしたいと思います。よろし くお願いします。 4.晩婚化に伴う不妊治療の問題点について (宮城委員) 横浜市立大学産婦人科の医師で宮城と申します。前回の議論の中で、晩 婚化によって、お子さんを欲しいと思ったときに、できないご夫婦が増えていくのでは ないかというような議論が出まして、そのあたりを、数字で少し説明させていただきた いと思います。先ほど金子部長からの報告の中で、結婚を先延ばしにする意識が継続し ているという30〜34歳の女性が19.4%、2割ぐらいもいるというのを聞いて、産婦人 科医としては非常に危ないというか、晩婚化の問題点を理解していただきたいという気 持ちで一杯です。また、芸能人の方などが高齢出産をされていることが大きく報道され ますと、皆さんも自分は大丈夫と思われてしまうのではないかと大変心配に思っており ます。  実際、不妊治療と申しましても、大きく2つに別れまして、一般不妊治療で、外来で 割と気軽にできるものから、難治性の不妊治療に対する生殖補助医療、ARTと呼ばれ るものがあり、今、非常に進化をしています。一般の不妊治療に関しては排卵誘発やタ イミング法、それから、ご主人の、あるいはご主人以外の方の精子を子宮の中に注入す る人工授精というような方法があります。それからまた、卵管が詰まっている方の形成 術という手術もあります。難治性不妊に対するものとしましては、いわゆる体外受精、 試験管の中で受精させまして、それを子宮の中に戻すもの、あるいは卵の中に直接精子 を注入する顕微受精(ICSI法)、あるいは受精した配偶子を環境の良い卵管内に戻し てあげるGIFT法など、いろいろな試みがなされています。  女性と男性では、生殖機能の衰える時期というのが非常に違いまして、女性は実はも う35〜37歳の時期で、生殖年齢の老化の時期に入ってまいります。次のグラフは、女性 の卵巣の卵胞の数が減少してくる時期ですけれど、これは非常に個人差がございまして、 大体37.5歳ぐらいのところから急激に卵胞の数が減ってまいります。これは個人差があ りまして、とても早い年齢で減り始める方もいます。大体、減り始める加速期から13.5 年ぐらいで閉経に至るとされています。  実際、既婚夫婦の不妊率というのがどのぐらいかということですけれども、やはり30 代前半、後半から40代と、ぐんぐん上がってまいりまして、35〜39歳、先ほどの調査 で、このころ結婚したいという女性が割と多いというご報告でしたが、そうしますと、 20%ぐらいのご夫婦が不妊になってしまうというデータがございます。40代になります と、3割近くが不妊という状況になります。  次は、日本産科婦人科学会の調べで、実際に今、体外受精児の比率が、全国出生数の 中でどれぐらいを占めているかということですけれども、年々上昇しておりまして、平 成16年の調査では、1.64というところまで上がっております。これは先進国で、欧米 では2%を超えている国もかなりありますし、北欧などでは3%を超えている国もござ います。  ただ、実は生殖補助医療というものには、影の部分もありまして、流産率は正常の女 性に比べるとやはり2倍ぐらい高くなっています。また、多胎率に関しては自然に多胎 となる頻度の10倍ぐらいの頻度で起こってきます。  このような生殖補助医療が進むということに伴い、高度な周産期医療を要する妊婦さ んも増えてくるということで、今、産婦人科は医師不足で非常に苦境に立っております が、高度な周産期医療施設の整備は、少子化対策の根幹に関わると思っておりまして、 先ほどの分野の違う方たちの中では、余りそういう意見は出なかったのですが、我々産 婦人科医は大変危機感を持っております。  生殖補助医療、ARTを実際に行った場合の患者様の年齢別の妊娠率ですけれども、 やはりこのように、35歳を超えてきますと落ちてきまして、実際、ARTを行っても妊 娠できないご夫婦が8割に上るということになります。  医学的な問題をまとめますと、おおよそですが、不妊の夫婦というのは10組に1組ぐ らいだろうと推定されています。また、多胎妊娠が15%に及びますので、産科的なリス クが増大してまいります。それから8割の方はARTを行ってもお子様が得られない。 また、当然ですが晩婚化に伴って、ARTを行っても不成功となる方が増えてくること が予測されます。また、高齢妊娠になりますと、卵の老化の問題もあって、染色体異常 の率などが増加します。生まれるお子様、あるいはご夫婦への精神的なケアなども必要 とされます。  次は、今年の6月に公表されました少子化社会対策会議の決定で、ホームページから 取ってきたものですけれど、子育て支援策の中に、出産一時金支払い手続きの改善とい う項目があります。これは今まで分娩というのは全部自費になりますので、窓口でかな り高額なお金を病院で患者様が払われていたのが、今度は病院にお金が振り込まれまし て、患者さんが窓口で支払うお金がなくなってきます。そうしますと次のお子様にとっ て、もう1人生もうかという時に、かなり良い印象を与えるのではないかと思っており ます。それから妊娠中の検診費用の負担の軽減というのは、これは各地方自治体で母子 手帳などに、いろいろな無料券があるのですが、こういうものがまた拡大されますと、 地方自治体が随分助けてくれているのだという実感が、妊婦さんに湧いてくるのではな いかと思います。  そして不妊治療の公的助成のことですけれども、8月25日に厚生労働省から予算の概 算要求がありまして、少子化対策が31%増となっています。その中で不妊治療の補助が 今は10万円を2年ということだったのが、今年中に5年になり、さらにそれを、将来的 には年間20万円で通算5年まで拡充しようとする要求が出されております。そうします と1回の体外受精にかかる費用というのが、自費で大体100万円と考えられております ので、これまでの年間10万円、2年間の合計20万円では、本当に焼け石に水というよ うな対策だと申し上げざるを得なかったのですけれども、もし、ここまで拡充されます と、かなりの患者さんが、病院に行ってみようとか、治療を受けようという気分になる のではないかと思います。  妊娠初期の休暇などの徹底・充実は当然ですが、私たちからは、産科医等の確保等、 産科医療システムの充実をお願いしたいと思います。本当にこのままでは産科、産婦人 科医はもう、減り続けて絶滅してしまいそうです。絶滅危惧種と言われておりますので、 何とかこちらの方もお願いする次第です。  まとめますと、新たな少子化対策の推進による不妊治療の公的助成の一層の拡大は、 社会的要因としての特殊合計出生率の増加に多少なりとも影響を及ぼす可能性があると 考えられます。ただし晩婚化が進むということで、お金をかけて不妊治療を行っても、 子どもを得られないご夫婦も増加するということについても知っていただきたいと思い ます。ARTで出生する子どもの比率は今後更に必ず増加していきます。その場合のこ どもの成育環境の整備、例えば周産期医療、カウンセリング、法律的な問題などの整備、 が急務であります。以上です。 (廣松部会長)  どうもありがとうございました。今のご説明に関して何かご質問はございますか。 (阿藤委員)  確認ですけれど、6ページの、先ほどのARTの成績の負の部分というので、流産率 とか多胎率というのがありますけれど、これの分母は全体の流産とか全体の多胎の中に 占めるARTの割合ということでしょうか。 (宮城委員)  ARTで妊娠が成立したのに流産してしまう方の率、あるいは妊娠をした方の中で多 胎すなわち双子や三つ子等の占める率という意味です。妊娠が成立した方の中の割合で す。 (廣松部会長)  私からも一つだけ質問があります。3ページのグラフですが、これはどう読めばいい のでしょうか。それぞれの曲線は1人1人に対応するパターンを表すと考えていいです か。 (宮城委員)  そうです。この先生のデータで表しているのは、37.5歳ぐらいが、減っていく数の中 で一番多いところだということです。 (廣松部会長)  わかりました。他にいかがでしょうか。 (鬼頭委員)  ARTという医療を受ける方の年齢ですけれど、これは不妊率の上昇、4ページです か、これと関連して増えていっているのでしょうか。つまり若い人は余り受けずに、30 代半ば以後の人が多く受けるのか、あるいはその動向が変化しているかどうか、その辺 を教えていただけますか。 (宮城委員)  すみません、年次別の動向は把握しておりません。ただ、やはり20代は不妊という意 識が余りなくて、30ぐらいになってから、そろそろと思って避妊をやめ、積極的にお子 さんをつくろうとしてもできなくて病院に来られるということで、やはり30代の方が多 いという印象はございますが、こちらは、数字ではお示しできません。 (廣松部会長)  よろしいでしょうか。宮城委員、どうもありがとうございました。まだご質問がおあ りかと思いますが、時間が押しておりますので、次の議事に進ませていただきます。議 事次第の順番と前後してしまいましたが、ある意味で、本日のメインの議題でございま す、次期将来人口推計の基本的考え方について、ご説明をいただきたいと思います。そ の後、いろいろご意見、ご議論をいただければと思います。それでは金子部長、よろし くお願いいたします。 5.次期将来人口推計の基本的考え方について (金子部長)  日本の将来推計人口、次期の推計の基本的な考え方について、ご報告をいたします。 主にスライドを中心にご説明してまいります。内容でございますけれども、1番から4 番まで、基本的枠組みと基準人口、出生、死亡、それから国際人口移動、それぞれにつ いて順次、ご説明をしてまいります。  まず、基本的枠組みでございますけれども、コーホート要因法で、推計期間は前回推 計では2001〜2050年でございましたが、5年延ばしまして2006〜2055年となっており ます。それから男女年齢別の区分でございますけれども、前回は100歳以上を一括とし ておりましたけれども、今回は105歳以上を一括として考えております。これは今後見 込まれます100歳以上人口の急速な増加に対応したものでございます。それから、総人 口についての推計ということで、日本国内に在住する外国人を含む人口を含んでおり、 これは国勢調査と同一の定義でございます。なお、推計に用いるデータにつきましては、 2005年までの実績データを用いて行うということでございます。基準人口でございます けれども、平成17年国勢調査による男女年齢(各歳)別の総人口につきまして、年齢不 詳を按分するという形で、出発点となる人口を作成してまいりたいと考えており、暫定 的でございますけれども、抽出速報による人口の暫定値はご覧のようになっております。  基準人口を用意する際の課題が幾つかございます。簡単に申し上げますと、出発点と なる人口ですので、これに誤差が含まれていると将来推計されたすべての人口にこれが 反映されるということですので、気をつけなくてはいけません。それとともに、動態率 の分母ということになりますので、将来の仮定値に対する影響も含まれるということで す。したがいまして、ここに挙げたような年齢構成、国籍、その他、配偶関係等に関し まして、10月末日の確定値公表と聞いておりますけれども、それ以降にこれらを検討す る作業がございます。  次に出生についてですが、まず、出生仮定値を設定するコーホートにつきましては、 参照コーホート、一つの目安を与えるコーホートですが、これは前回の推計では85年生 まれでございましたけれども、今回は90年生まれを設定します。最終コーホートは、前 回は2000年生まれでしたが、今回は2005年生まれということです。最終コーホートと いうのは変化を仮定する最後のコーホートで、このコーホートまでは変化を進行させる ということでございます。  それから出生率につきましては、前回も、外国人を含む総人口と日本人人口の出生率 を別に考えまして、ただし総人口の出生率を日本人人口の出生率に連動する形で、その 関係を固定して用いました。今回につきましては、さらに総人口に含まれる外国人の出 生年齢パターンを、より細かく把握しまして、日本人人口の出生率との関係を投影する という一歩進んだ形で行いたいと考えております。したがいまして総人口における日本 人の構成比は、前回、固定式でございましたが、これが変動する形になるよう、変動式 を用いたいということでございます。  モデルと仮定値の設定につきまして、引き続きご説明をしてまいります。その前に、 まず、出生仮定値の設定コーホートの種類でございます。これは前回の部会でも、前回 推計のご説明の時に出てきたものでございますけれども、推計の対象となるコーホート を幾つかのグループに分けて推計を行うということでございます。グループはAからE までで、Aが実績確定なもの、Bが統計的な推定が可能なもの、Cが統計的な推定が難 しいもの、そしてDは実績データが存在しないものとなっています。このCとDの間に 参照コーホートを設定しております。そしてEというのは、まだ生まれていないコーホ ートということになります。  このコーホートのデータの所在というものをご説明したいと思います。それには、こ のレキシスダイアグラムという図でご説明させていただきます。横軸が年次でございま す。1960年から2060年、100年間でございます。縦軸に女性の年齢をとっております。 0歳から、ここでは60歳までということで表示しております。そうしますと、各年次、 15歳から50歳未満のところが再生産年齢ということで、ここに出産が生じると考えら れます。次期の推計で2005年までの実績データが得られるということでございますから、 出生率に関して実績の得られる領域はこの領域ということになります。これに対しまし て、2055年までの推計に必要な仮定データ、投影をする領域がこのピンクの領域という ことになります。  これを先ほどのコーホートについて分けてみますと、2005年までの実績ですと1955 年生まれのコーホートまでがAコーホート、実績が確定しているコーホートでございま す。次に1970年生まれまでのコーホート、Bコーホートでございますけれども、統計的 な推定が可能であると考えられるコーホートでございます。次に、実績はあるけれども 統計的な推定だけでは不安定であるというCコーホート、これが1990年生まれまでとい うことになります。この1990年生まれを一つのターゲットとして詳しく分析をいたしま して、仮定の設定の目安とする、参照コーホートとすると考えております。次に、その 後の15年のコーホート、2005年生まれまでのコーホートにつきましては、そこまでの 趨勢を延長する、投影する、というような形で推計を行います。その先の必要な部分、 濃い紫のこの部分に関しましては、これがEコーホートでございますけれども、これか ら生まれてくる世代の出産行動ということになります。  次にモデルの説明にまいります。年齢別出生率のモデルに関しましては、前回用いた モデルを踏襲いたします。このモデルは数理モデルがベースですけれども、我が国の状 況に合致するような形で、経験的な補正を行っております。今回推計におきましても、 この経験補正の部分について、新たに得られたデータによりまして改訂を行って、さら に精度を高めたいと考えております。これに関しまして、過去の、前回推計だけでなく、 それ以前の推計についてのパフォーマンスを少し見ておきたいと思います。  これは1960年生まれの女性のコーホートに対しまして、過去の3回の推計の結果を表 しております。黒いマークが平成4年推計時に実績として得られたデータでございます。 年齢別出生率でございます。その後、緑、青、ピンクという形で5年ごとに実績が増え ております。それに対して、その背景にある曲線が推計のラインでございますが、60年 コーホートについては、完全に重なって見えております。1965年生まれにつきましては、 実績がそれだけ若い部分しか得られないということでございますけれども、そうします と平成4年の推計とその後の推計に若干差が出ており、平成4年では高めに出ておりま す。実績は低くなっているということです。さらに1970年になりますと、当時得られた データは20歳までですけれども、そのぐらいのデータですと、やはりその先の推移とい うものは、見通しがはっきりと出ておりませんので、3回の推計におきまして、差が出 てまいります。1975年になりますと、平成4年の推計ではもう一定の領域に入りますけ れども、そうしますと実績との差、その後の推計との差が出てきております。このよう な状況でございます。  ですから、ある程度データが得られる部分に関しては、統計的に信頼性の高い推定、 投影が可能ですが、データの少ない若いところになりますと、その先の仮定値、参照コ ーホートに対する仮定値というものが重要になってくるということです。もう一つ、こ れが1980年生まれでございますけれども、このような違いが出ております。1980年生 まれに関しましては、実績の方が推計よりも、20歳あたりのところは逆に高まっている というような状況もございます。  先へ進みたいと思います。その参照コーホートの仮定についてですが、これにつきま してはコーホート合計特殊出生率というものを一つの指標にしております。その指標の 要素を分けますと、ご覧のように生涯未婚率、夫婦完結出生児数、離死別効果というこ とになります。まず生涯未婚率についてですけれども、これは前回推計では、国勢調査 における全国の年齢5歳階級別のコーホート別未婚率、これを、変化率を延長すること によって推定を行ったということでございます。今回もこの方法を踏襲いたしますが、 それに対して人口動態統計、婚姻統計による実績推移との整合性の検証をより進めて精 密化を行いたいと考えております。これはどういうことかと申しますと、1から生涯未 婚率を引いたもの、これが生涯に1度は結婚する女性の割合ということですが、これは 実はコーホート合計初婚率というものに相当します。あるいは別の見方をすると、50歳 時の累積初婚率ということになります。  これが、その累積初婚率の実績でございます。1935年生まれのコーホートから最近の 1990年生まれまでを1つのグラフに描いております。ここに見えます、まだ若いコーホ ートですが、これが前回推計における参照コーホート、1985年生まれの累積未婚率の推 移でございます。前回推計ではこのラインが、上に示しました3つの中位、低位、高位 のラインにそれぞれ達するというのが仮定でございました。これがどのように推移する かというのが、この生涯未婚率の仮定ということになります。  これについての分析ですけれども、1960年生まれのコーホートについて、仮定値と実 績値、新しく得られた実績を比較したもの、これは1960年生まれ、1965年生まれ、そ れぞれありますが、今お示ししている部分が生涯未婚率ということになります。次に 1970年、1975年、1980年、1985年生まれということになります。先ほど、生涯未婚率 につきましては、国勢調査のデータをメインに使って、生涯未婚率、将来の仮定値をつ くるということを申し上げましたけれども、人口動態統計を用いた、ただし補正が必要 になり、届出遅れ等の補正が必要になりますが、そうしたデータとの整合性の検証をよ り進めたいということでございます。  これがモデルによる投影です。生涯未婚率の投影と見ていただいて結構ですが、この ような形になっております。この点線の部分は、実績ですけれども、まだ生涯が終わっ ていないので、若いコーホートほど途中経過ということで低くなっております。そうい う形で、人口動態統計を大いに活用して、整合性を図るというのが今回の趣旨でござい ます。  それから、これに関連して、結婚のパラメータとして、平均初婚年齢がございますが、 これは前回推計では生涯未婚率との関係性というものを用いて出しておりますけれども、 これにつきましても、やはり生涯未婚率と同様に、動態統計の投影というものと合わせ ることで、整合性を高めていきたいと考えております。  今申し上げましたのが、結婚のパラメータについてですけれども、次に、結婚と出生 の関係を考えていく必要があります。これは単純に出生数と婚姻件数の年次推移でござ いますけれども、結婚件数を、少々場所をずらしまして、出生と比較しますと、こうい った形の推移になっております。右側が婚姻件数の軸で、左側が出生数の軸でございま す。1990年代ぐらいから、婚姻の動向と出生の動向が若干乖離してきているということ がわかります。これはつまり結婚以外の要因の出生低下、すなわち夫婦の出生に関して 変化が起きているということを示しております。  参照コーホートの要素でございますけれども、夫婦完結出生児数について見てまいり ますと、これは2つに分けられます。ご覧のように期待夫婦完結出生児数と結婚出生力 変動係数というのがあります。まず、前者を見ますと、こちらは何を表すかといいます と、これは初婚年齢との関係から、夫婦の完結子ども数というものを求めたものでござ います。これにつきましては出生動向基本調査をもとにしたモデルを作っておりまして、 新たに12回、13回の調査結果が追加されますので、これによる精密化を行いたいとい うことです。その出生動向調査の結果でございますけれども、完結出生児数というもの が13回調査、先般ご報告いたしました調査で初めてといいますか、この1972年から2002 年の調査では、ほとんど変わらなかった、ほぼ一定であったと見てよいかと思いますが、 それが2.09という形で減少を示したということです。これを年齢別に比較しますと、も ちろん若いところではもっと先の調査から変化が始まっておりまして、完結出生児数が 減少する兆しというのが、既に捉えられてきたということでございます。 これが妻の年齢にしたがってコーホート別に比較したものでございます。多少見にく いグラフで恐縮ですけれども、夫婦出生低下の様子を表したものでございます。横軸が 妻のコーホート、生まれ年です。縦軸が妻の年齢でございまして、したがいましてコー ホートごとに妻のライフコースごとの出生児数というのを比較している。具体的には一 番左側の1928年生まれの人たちからの、年齢ごとの平均出生子ども数を比較しまして、 どの辺で変化が起きているかというのを見たものです。そうしますと、1960年生まれの あたりから、かなり大きな低下が起きています。色の濃いところが低下の起きていると ころでございますけれども、そういったことがわかるかと思います。  次は出生動向基本調査の結果でございます。右上の方が三角に白くなっておりますの は、若いコーホート世代では、まだ出生途上であるので、途中までしかデータがないと いうことを表しております。  これに対して、先ほど宮城先生のご報告にもありましたが、晩婚化が進むと、なかな か妊娠というものがしにくい、あるいは出生意欲、意図の方も下がるという、そういっ た結果を反映して、出生動向調査の結果でも、結婚時の年齢が上がりますと、完結出生 児数が下がるという結果が調査ごとに得られております。これが、非常に安定した結果 が得られております。ですから、結婚年齢と完結子ども数の関係というのは、ある程度、 規則性があるということで、モデル化をして、これを使っているということでございま す。  これを、どのように使うかということでございますが、こちらは先ほどと同じ形で示 したもので、夫婦出生低下の観察でございますけれども、これは先ほどの低下が起きた 中で、どれだけがその晩婚化による部分であるかというものを示した図でございます。 このように、要するに晩婚化すると完結出生児数がこれだけ下がるということが、先ほ どのモデルから出ますので、それによって晩婚化による夫婦出生低下部分というのを分 離することが可能になります。そして、その残りが晩婚化によらない部分となります。 主に夫婦の行動であるとか生理的な限界であるとか、そのようなことによると思います が、やはり1960年代以降の生まれで、そうした低下が見られております。  これは、そうしたことを出生順位別に、同じような考え方でモデル化できるというこ とでございまして、これも出生順位別に同じものを見たものです。これは高学歴化によ るということでございますが、晩婚化と高学歴化というのは、実は非常に深い関係がご ざいまして、高学歴化することによって晩婚化をして、それによって夫婦の出生力が低 下するというような経路がございますが、そのうちの高学歴化による部分というものを 分離したものでございます。こういったデータを参照しながら、完結出生児数の設定を 行っていくということでございます。  次に、夫婦の出生力のうちの結婚出生力変動係数の方でございますけれども、これは 時系列分析を用いまして、現状のデータにフィットする変動係数を用いるというやり方 をしておりますが、これを踏襲します。しかしながら、この後で説明しますが、前回推 計で離死別効果係数との分離が必ずしも十分でなかったという可能性が見られておりま す。それは離死別効果係数の方を精密化することによって出てくることなのですけれど、 それを行うことによりまして、この結婚出生力変動係数というものも精密化を行いたい ということです。  今申し上げました離死別効果係数の方でございますけれども、平成14年推計では出生 動向基本調査から得られた人口動態統計と実績値の比を用いまして、これを固定して中 位・高位・低位について、共通かつ将来的にも安定的な関係であるということを仮定し て行いました。今回につきましては、離婚・再婚の動向として、離婚が増加する傾向と いうものも見えますので、こうした動向を反映することを目的といたしまして、効果を 盛り込んでいくということを予定しております。  実績の方でございますけれども、これは女性の有配偶者における離婚率というものを 年齢ごとに比較したもので、若い世代になるほど離婚確率が上昇しているということが 把握されております。また、それでは離婚を経験した場合の子ども数がどうなるのかと いうことについて調べましたところ、やはり離婚経験者では40歳代に至りますと、それ 以外の夫婦というか女性と大分差が出てまいります。初婚同士が最も子供の数は多く、 それから妻初婚・夫再婚の場合でやや下がり、そして離婚経験をした女性について平均 をとりますと、かなり低くなるということでございますので、離婚者が増えてまいりま すと、全体の出生率も減ってくるということになります。  離死別効果係数について、その変化を仮定するとなりますと、配偶関係についての整 理をしておく必要があります。この表はそれを行ったものでありまして、一番下に離死 別効果係数の構造を示しておりますが、その中に女性の離別者の割合が入っておりまし て、もしこれが増えるとすると、離死別効果も変動するということになってまいります。 そのような形で離婚・再婚の動向を反映するということでございます。  以上の方法論に対して、仮定を設定していく上での基本的な考え方を示しております。 これは前々回と前回の比較をしたものですけれども、飛ばしまして、前回と今回の変化 について見てまいりたいと思います。結婚につきましては、結婚年齢が上昇傾向という ことで、結婚年齢については同様の見方です。それから生涯未婚率につきましては、詳 しい説明は割愛しますが、構造的な生涯未婚率の増加に加えて選択的な生涯未婚傾向、 意図的な生涯未婚も増えるであろうということで、より進む方向ではないかと見ており ます。  それから夫婦の完結出生力については、先ほど見ましたように2つに分けて考えてお りますけれども、晩婚化に伴う晩産化、これに伴いまして、結婚年齢が遅れれば遅れる ほど、持つ子どもの数は減っており、しかも高い年齢になりますと、より勾配が急にな っております。したがいまして、その領域に入りますと、より早いペースで子どもの数 が減っていくということで、以前よりも早いペースで減少する。それから晩婚化以外の 影響についても1960年代以降で、先ほど複雑なグラフでご覧いただきましたけれども、 進行しているということは考えられます。離死別効果についても、今後、離婚の影響に よって出生力に影響が出てくるのではないかと考えております。  これは仮定値の意味するところをご紹介したものですけれども、要するに生涯無子の 割合ということで、これは報告書に掲載している値ですが、それぞれ仮定された出生率 ですと、子どもを持たない割合がこれだけであるということになります。低位に関しま しては、更に42%であり、これは既にご覧いただいている数字でございます。これに対 して、今回、新たに付け加えたものがありまして、生涯未婚率、それから子どもを持た ない割合というものは既にありますが、更に孫を持たない割合というのも付け加えてみ たものです。ここから、1985年生まれコーホートについて、4割が孫のないライフコー ス像ということになります。こうしたコーホートを用いた推計とは、ライフコース像を 描くというところに特徴がございます。そのような形で仮定を進めるということです。  時間が押しておりますので、死亡につきましては、過去の推移、かなり前からの推移 をご覧いただきまして、諸外国での例といいますか、実際の平均寿命の延びと、予想さ れたものとの比較から、やはり死亡に関してもかなり推計というものは不確定性を持っ ているため、複数の仮定設定を行うことが妥当であるとして、次期の推計について、複 数の仮定設定を行うことを考えております。どの辺で、そうした違いが起きたかでござ いますけれども、これは高齢層における死亡率の低下が、60年代後半以降、極めて急で あったことが原因でございます。それによって年齢パターン、これは死亡の年齢パター ンでございますけれども、このように下がってくるという見方よりも、死亡の時期が遅 れてくる、年齢軸上で遅い時期に死亡が起こるという考え方の方が妥当性を持ってくる ということでございます。  実際の死亡率の変化の仕方、左側が実績で、右側がそれをモデル化したものですけれ ども、下の方が膨らんでおりますが、その膨らみがかなり、上と比べて高い年齢にシフ トしているというのがわかると思います。前回の推計の方法ですと、右側のような形で しか捉えられないということです。このシフトに関して、何らかの形でそれを取り入れ るというモデルを考えてみたいと考えております。これはその一例です。  それから、これはその背景として、生活習慣病、三大死因の死亡原因が高齢部分にシ フトしているということを紹介したものでございます。それが意味するところは生活習 慣病による死亡の遅延ということで、前回のものだけではなく、このリー・カーターモ デルのシフトを考慮した手法を予定しております。  国際人口移動につきましては、これが大きなトレンドでございますが、前回同様、外 国人と日本人を分けてトレンドを見るということです。今回につきましては、さらに進 みまして、こちらでは大陸別に、相手国によってどういった時系列の変化をしているか を調査しております。これを見ますと、かなり一時期、特定の事例、例えば条例・法律 等の改正等に対応した変動というものが見られます。日本の場合、アジアが相手国とし て一番多く、その中でも特に中国が増えてきております。そういった相手国に対する、 いろいろな法令等の変更によりまして、変動が見られます。これはアジア全体ですが、 2005年、女性で下がっているのは、国別に見ますとフィリピンに対する受け入れが厳し くなったということでございます。これは年齢別にそれを見たものです。  以上が外国人についてですが、日本人については、年齢別のパターンの変化がこのよ うな形になっております。ただ、これはかなり変動が激しくなっています。なぜかとい うと2001年から2004年の間、テロ、SARSといった要因によって大きな変動をいたしま した。そうしたピリオド効果というものが極めて影響の大きい部分でございますけれど も、これを除いたものが平年的な変化と考えて、これをモデル化する方向で考えており ます。  以上のことをまとめたものでございます。主な変更点につきまして、こちらで簡単な メモをつくっておりますが、私からの報告は以上とさせていただきます。 (廣松部会長)  ありがとうございました。既に終了予定の時間になっているのですが、申し訳ござい ませんが、15〜20分程度延長をお許しいただいて、ただ今、ご説明いただいた基本的な 考え方に関する質疑を行いたいと思います。一言で申しますと、前回にも概略をご説明 いただいた訳ですが、これはいわゆるコーホート要因分析の基本的な考え方であって、 それ自体は人口学の分野で既に確立した手法でもありますし、ある意味で国際的な、標 準的な推計方法にもなっています。ただ、今日ご説明いただいたのは、平成14年のとき の推計結果の評価というか、実績値がその後出てきましたので、推計値と実績値との比 較も行った上で、スクリーンにスライドが映されていますが、平成14年のときの設定に 対して、そこにありますような形の変更を行う計画であるということです。どうぞご質 問、ご意見をお願いします。 (鬼頭委員)  簡単なものをまず1点と、それから外国人の出生率について伺います。一つは、非常 におもしろいと思ったのは、生涯孫なしですか、これが25ページにありますけれども、 これは完結出生数だと女性の49歳のところで切るというのがありますが、孫の死という ときはどうやって計算するかというのが一つです。年齢というか、つまり分母が何かと いうことです。  それからもう一つは、最初のところで3ページに書かれているのですけれど、外国人 の出生率を算出する方法を変えたということですが、この説明がよくわからなかったの ですけれど、前回は固定式だけれども、今度は日本人人口の出生率の関係に投影を行う ということでした。外国人の出生動向を何らかの形で日本人人口とはまた違ったパター ンがあり得るということを想定してお考えになっているのでしょうか。それによって、 もしかしたら今までの推計と大きく変わってくるのかどうか。特に外国人人口が増えて くると影響が出てくるような気がするのですけれど、その点について見通しを教えてい ただきたいと思います。 (金子部長)  まず、孫の分布のことでございますけれども、これは出生児数の分布がわかりますと、 そこから無子割合を使いまして、その次の世代について計算ができるということですが、 そういうお答えでよろしいですか。 (鬼頭委員)  わかりました、そうした考え方をするということであって、今、孫のいないお年寄り が何人いるかという話とは全然違う訳ですね。 (金子部長)  はい。それとは違いまして、この仮定値にしたがって、ライフコース像を描く形で仮 定を設定しているということで、今までは無子割合というのが中位で3割、低位で4割 と出ておりましたけれども、その先の世代も計算してみたということです。  それから外国人の出生ですが、これは前回につきましては、外国人を含む総人口と日 本人人口の出生率の関係を調べまして、その関係を固定的に扱って、行ったということ でございます。今回に関しましては、もう少しデータを精査いたしまして、外国人につ いての出生パターンというものを、日本人の場合と同じように、年齢パターンを特定し ます。ただ、将来に延ばしていくときに、独自のパラメータを与えるということではな くて、その点については前回と同じになるのですけれども、日本人の出生の変化に連動 した形で変化をさせていくという考えでございます。 (山崎委員)  結論として、今回の新しい人口推計だと、少子化は更に進み、寿命も延び、高齢化は 更に進むということにならざるを得ないということでよろしいのかどうかということが 一点です。それから、瞬間風速かもしれませんが、今年になって出生数が前年に比べて やや改善されているというデータが出つつあるのですが、このことは一切、今回の推計 には反映されないと考えて良いのでしょうか。つまり今年のデータですから、反映され ないと考えて良いのかどうかということです。 (金子部長)  出生率の仮定につきまして、先ほど表でもって、それぞれの要素ごとに、今回の考え 方の変更点や修正点をお示ししてございますが、どのパラメータについても、出生率は より下がるというような方向の変化と見ております。それから、寿命につきましても延 びる方向にありますので、人口の高齢化率というのも、その結果として、前回推計より も高まるであろうと思われます。  それから、今年の月別のデータのことについてでございますけれども、今年の変化に つきまして、その評価をまずしないといけないということがございます。その評価につ きましては、いろいろな見方はあろうかと思いますが、いずれにせよ、推計で行うよう な長期の仮定につきまして、要するに生涯の子ども数に影響があるかどうか、そういう 変化であるかどうかというのが一つのポイントになろうかと思います。現在のところの、 データの月別の変動では、そこまではまだ、多少見通すことは難しいと考えております ので、もちろんそういったことが何らかの実質的な意識の変化などに伴う大きな変化の 兆しであるということであれば、考慮をしていくのですが、なかなか、今回の推計に間 に合うかどうか、その分析あるいはデータの持っている情報が時期推計に間に合うかど うかというのは、多少難しいかと考えております。 (廣松部会長)  そうですね、人口動態の平成17年確定数の概況は公表されましたけれど、18年はま だまだ終わっていませんしね。実は前回のときも、多少それと似たような状況がござい まして、まさに前回は西暦2000年だったものですから、ミレニアム婚とかミレニアムベ イビーということが言われまして、足元のところで多少上がりました。その後の実績は 皆さんご存じのとおり、それが続いた訳ではなくて、ますます低下という形になってし まいました。今回も出生数が少し増えているとは言われていますけれども、今、金子部 長がおっしゃったとおり、その評価をどうするかというところは大変難しいところです。 十分ご検討をいただければと思います。 (樋口委員)  十分に理解していないので、理解も含めて教えていただきたいと思うのですが、前回 の推計と実績の間で多少乖離がありました。その乖離を、今回、どう生かすのでしょう か。それが多分、6ページで、出生モデルのところに書かれているかと思います。ここ で誤差項がまずadditiveな形で、足し算の形で入ってきていますが、そうしますと今回 の修正でも、前回の誤差項をそのまま切片移行していることになります。切片を修正す るということであって、傾き、勾配についての修正ではない形になっているように思い ます。そうすると単純に言えば、出生率を、実績の方が予測よりも下回ったから、その 分だけ今回も差し引きますよというようにやっているように見えるのですが、やり方と しては、こういうadditiveではなくて、むしろ積の形にするということも計量モデルで は考え得ると思います。そちらを使わないでadditiveに使うのはなぜだろうかという問 題があります。  もう一つは、その下の方に、次期推計というところで、この誤差項を精密化すると書 いてあります。この精密化というのは一体何を意味するのでしょうか。前回、あるいは それまで何度か、実績と推計の間に乖離がありました。だとすれば、その部分を、例え ば経済・社会要因を考慮して、こういう要因によって、どうも思ったよりも出生率が下 がっていったとして、今度はそれを考慮に入れて直しますというのが、精密化という意 味なのでしょうか。ここのところは、どういうことを考えているのか教えていただきた い。  最後の質問は、これは私が全く理解していないので教えていただきたいのですが、25 ページの、先ほど少しご指摘のあった生涯孫なしとか生涯子なしの、この比率について お伺いします。1985年生まれの、現在21歳の女性が生涯孫なしである割合、例えば中 位仮定ですと40.7%ですが、この数字はどこから出てきたのでしょうか。仮定値として 与えた数字なのか、それとも何かモデルから出てきてこういうことになっているという ようなものなのでしょうか。そこが理解できなかったので、教えていただけたらと思い ます。 (金子部長)  まず、6ページのモデルの部分ですが、ここで言っている経験補正というのは、出生 率の動向を決める部分の補正ということではございません。年齢パターンが数理モデル から若干ずれる部分があり、それぞれの国によって若干違ったりするのですが、これに ついて、我が国の状況にあう分布の形を与えるための補正ということです。例えば今回、 精密化と言っているのは、婚前妊娠の増加といったような新しい状況が出てきますと、 年齢パターンが、これまでのものと多少形が変わってくるといったことがあります。  あるいは高齢補正と書いてありますけれども、晩婚化・晩産化が著しくなってまいり ますと、これまでなかった高い年齢での出生に対する需要というものが高まってくる訳 ですけれども、それが数理モデルでは、どんなに晩婚化させても出生のパターンは変わ らないことになります。しかし、実際の実績を見ますと、その辺で影響が出てきている ということがあります。それは非常に細かな話になるのですけれど、そういった年齢パ ターンを整えるというための補正ということになります。  結局、これまでの推計において乖離した部分というのは、参照コーホートに対する仮 定値において、生涯未婚率であるとか、先ほどご紹介しましたようなパラメータの値の 設定、その時点で行った値が、実績よりも高かったことが原因となっています。年齢パ ターンが多少ずれていることによる違いというのは、それに比べると、わずかな要素で あります。  それから、孫の方ですけれども、これは要するに、将来推計の仮定値におきまして、 参照コーホートの、子どもの分布を仮定しています。それは参照コーホートの途中経過 も含めて、そのライフコースの帰結についての人生像、ライフコース像を描いているこ とになる訳です。それが社人研の行っている推計の一つの特徴となっております。子ど もを産まない女性の割合を含めて出生児数分布というのは既に公表した数字で、報告書 にも含まれておりますが、その出生児数分布をさらにもう1世代重ねると、次の世代の 分布になり、要するに孫の数の分布というのが出てまいります。その中の、孫がいない 女性の割合ということです。したがって、これは平成14年推計の仮定値の帰結としてご 覧いただきたいと思います。 (樋口委員)  少し確認ですけれど、参照コーホートの前回の実績値と推計値の乖離の修正は行う訳 ですね。それを参考にして、今回の推計に反映するということは全くしないのですか。 (金子部長)  もちろん参照コーホート自体が変わりますけれども、実績にあわせて、その実績に沿 った将来像というものになっていく訳です。 (樋口委員)  多分同じ質問になると思いますが、それは修正率でやるわけですね。そういう話をし ているのですね。補正というか、補正率という言葉を使っていたかもしれませんけれど も。 (金子部長)  それについては、すべて参照コーホートに対する仮定値の方で決まってくると考えて いただいた方がよろしいかと思います。 (国友委員)  関連して質問いたします。少し技術的なことになって恐縮ですが、実績値が前に仮定 した数理モデルを用いて計算した推計値から乖離し、かなり問題になっているというこ とと関係します。一つの数理モデルを前に利用可能であったデータに当てはめ(統計的 に推定し)、今度は、新しいデータが得られたので同一の数理モデルを再推定して、その 数理モデルの母数(パラメータ)として得られた推定値(数値)を仮定して今後に利用 しよう、というご説明だと理解しました。そうしますと、今回、利用可能となったデー タを利用して新しい数理モデルを推定した時に、前の数値による推計が実績と食い違う 理由が何なのかという問題があり、例えば推定した数理モデルの母数(パラメータ)の 数値を固定して、新たに将来の人口推計を行う方法の妥当性が気になります。つまり、 数値の乖離を生じさせている原因というのが、過去のデータから推定された母数(パラ メータ)がこの間、変化して前の数値とかなり違ってきているということなら、今度ま た、データを新たにして、それを全部固定して、また母数(パラメータ)が一定と仮定 して将来何十年も人口推計を行うというのは、かなり危険な気がしました。その辺の母 数(パラメータ)の統計的な安定性に問題はないか。これまで得られた数値を利用して 行われ、これまで何度も(過去に行われた)人口の将来推定値が実現値からずれて(少 なくとも一般にかなりはずれて いるというふうに受け止められて)いるので、そうした問題について検証を行っている のかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。 (廣松部会長)  前回、平成14年推計のときの、ここで言っている参照コーホートというのは1985年 生まれです。今回の推計の参照コーホートというのは1990年生まれです。したがって、 おっしゃるとおり1985年生まれのコーホートに関しては、それ以降5年経っている訳で すが、 1985年生まれは現時点でまだ20歳です。ですから、現在の日本の出生パターンから言 うと、実質的にはほとんどまだ実績値というか、前回仮定したときの数値と比較できる ようなデータがまだそろっていません。おっしゃるとおり、推計値と実績値の乖離に関 しては事後的な評価を十分行うべきですが、それを今の時点でどこまでできるかという 問題がある訳です。 (樋口委員)  ただ、逆に言えば、データが全くないなら、なぜ1990年のコーホートをレファレンス するのでしょうか。 (廣松部会長)  それに関して、もう一度、先ほどの図ですが、もう少しご説明をいただければと思い ます。本日の資料の5ページの図です。 (金子部長)  5ページの下の図でございますけれども、基本的に問題がないと考えられるのは、こ のBコーホートまででございます。次期推計において1970年生まれのところまでは、完 結はしておりませんけれども、統計的な推定が可能であろうと思われるからです。そこ よりも若い世代になりますと、35歳よりも若いということで、十分なデータが得られま せん。全くない訳ではないので、一定の方向性として、その統計的なモデルは、例えば 30歳ぐらいまで、あるいは20歳代後半ぐらいまで、順次、信頼性が下がってくるとい う形で出る訳です。ですから、信頼性のある1970年生まれのコーホートまでの、コーホ ート的な推移については信頼がおけると思われます。その先の推移については、ばらけ て、客観的には出てきませんが、趨勢というものは出てくると思われます。では、どう するかということですが、この参照コーホートと言っている部分までは、過去の趨勢の パターンから客観的に見ることができるであろうと判断しております。その先になりま すと、データがないとなる訳です。  例えば、今回の図ですと、12ページの下のグラフですが、これは出生のグラフではな くて結婚ですので多少話が違いますが、考え方は同じであります。ここにありますよう に、横軸はコーホートでございますけれども、実績がマークのような形で、前回からの 新しいデータというのが、そこにつけ加わっているという形です。推計はどうなるかと いうと、実線で示されたものでございまして、この1985年生まれのところが一つの、そ れまでの趨勢で、まさにこの新実績というあたりの実績を延ばして、かつ、その他の国 勢調査の未婚率の変化率を延ばしたもの、そういったものと整合する場所が、その1985 年の数値になっている訳です。  実績につきましては、まだその近辺のコーホート、それよりも先輩のコーホートであ っても点線で描かれているように完結しておりませんので、推移に関する、ある程度の 参考にはなりますけれども、定量的にこれを用いることはできないということです。 (廣松部会長)  30分近くオーバーしておりますけれど、最後に津谷委員から一言どうぞ。 (津谷委員)  決して金子さんの援護射撃に回るわけではありませんが、私の解釈を2つほど申し上 げたいと思います。恐らく樋口先生も国友先生も、この参照コーホート、レファレンス コーホートに、どうして15歳をとるのかということだと思います。先ほど部会長がおっ しゃったように、前回の参照コーホートは1985年生まれで、その後5年ですから、15 歳から20歳で、まだほとんど結婚もしていなければ、子供も産んでいない年齢ですので、 出生に関しては格差が現れようがないと思います。ということで、恐らくお二人の先生 がおっしゃっていることは、例えば全体の推計時に25歳ぐらい、これは一番産み盛りぐ らいのところですけれど、出生コーホートに直しますと1975年コーホートが、その後5 年間で、前回の推計値と実績値でどれぐらい乖離があったのかということと思います。 例えば前回の30歳、つまり1970年生まれコーホートが、その後5年間でどれぐらい産 んでいて、推計値がどれぐらいだったのかということを、なぜ出さないのかということ をおっしゃっていたのではないかと思います。金子部長もおっしゃったように、これは 結婚ですけれど、出生についても出してはどうかということではないかと私は解釈をい たしました。  それから複数の質問が出ておりました、この25ページのライフコース像ですが、これ は前回の推計の仮定値で、高位、中位、低位で生涯未婚率、これは50歳時に結婚してい ない人ですが、その前回のモデルで、結婚はしているけれど子供のいない人がいた訳で すから、それをただ単に掛け合わせた訳です。そして、生涯とは何なのかということで すけれども、これは当然人口推計ですので、平均寿命の推計値もある訳で、分母が何か ということではなくて、そのモデルの中で、死亡率は差がないので、前回のモデルの高 位、中位、低位の出生率だけ差をつけているわけですが、それでまた同じように次の世 代も子供がないという割合があるとすると、こんなものだろうというもので、分母が何 とかというのではなくて、これはモデルから計算をしたものだと私は解釈をしておりま す。  一つだけ聞かせてください。非常に離婚が増えてきています。これはもう本当に趨勢 であり、確か前々回の部会でも、前回の部会でも質問が出て、離死別係数が0.971だっ たと思いますが、高位、中位、低位で、全く同じウェイトをかけていました。これは問 題ではないかというご意見が随分出たと思いますけれど、今回のこの22ページの下の図 ですけれども、この出生動向基本調査は2005年の調査ですか、これはその夫婦票から出 したものでしょうか。 (金子部長)  夫婦票と独身票をあわせたものです。 (津谷委員)  そうですか。なぜかというと、この離婚経験女性の意味が、よくわからなかったもの で。これは、もし夫婦票なら、離婚は経験しているけれど、その後、つまり有配偶者し か入ってこない訳ですから、離婚経験のある、ただ、調査時には有配偶の女性の年齢別 の平均出生子供数と解釈してよろしいのでしょうか。 (金子部長)  これは離婚して再婚していない独身者、そういったものもすべて含めています。 (津谷委員)  それも含めてすべて入っているということですね。わかりました。そうすると当然、 低くなりますよね。 (金子部長)  はい。 (廣松部会長)  議事運営に不手際があり、誠に申し訳ございません。まだご発言をいただいていない 方もたくさんおいでになるのですが、30分超過してしまいましたので、部会としては、 とりあえずここで閉じさせていただければと思います。もし、この会場が許すのであれ ば、今、何人かの方から出ました、少しテクニカルなご質問も含めて、金子部長の方に ご質問いただき、お答えいただければと思います。  本日は大変長時間にわたりご議論いただき、誠にありがとうございました。次回の開 催につきましては、一応、11月の上旬を予定しておりますが、詳細は改めて事務局の方 で日程調整をした上で、皆様にご連絡をすることにいたしたいと思います。本日は大変 時間が延びてしまいまして、誠に申し訳ございませんでした。これで第8回の人口部会 を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 (終了) 照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 代)03−5253−1111(内線7714、7692) ダ)03−3595−2159 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部 代)03−3595−2984(内線4474、4475) ダ)03−3595−2992