06/09/27 第2回中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会議事録 第2回「中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会」議事録 1 日時    平成18年9月27日(水)10:00〜12:00 2 場所    虎ノ門パストラル本館8階しらかば 3 出席者  ○参集者    今野委員、小川委員、金子委員、倉知委員、小林委員、佐藤委員、    末永委員、原川委員、藤原委員、森戸委員、輪島委員                        (五十音順、敬称略)  ○事務局    岡崎高齢・障害者雇用対策部長、宮野企画課長、大隈企画課長補佐、    土屋障害者雇用対策課長、浜島障害者雇用対策課調査官、    白兼障害者雇用対策課主任障害者雇用専門官、手倉森障害者雇用対策課長補佐、    澤口障害者雇用対策課障害者雇用専門官 4 議題 (1) 関係者からのヒアリング   ○ 株式会社 東豊      報告者:株式会社 東豊代表取締役        吉見 司氏   ○ 株式会社 きものブレイン      報告者:株式会社 きものブレイン取締役副社長  岡元眞弓氏 (2) その他 5 資料  資料1 中小企業における障害者雇用 障害者雇用状況報告に基づく分析  資料2 雇用率達成指導基準見直しによる影響  資料3 障害種別・程度別雇用者数の推移  資料4 障害者雇用納付金関係収支状況の推移  資料5 第3回及び第4回研究会について  資料6 株式会社東豊(ヒアリング資料)  資料7 株式会社きものブレイン(ヒアリング資料) ○今野座長  時間になりましたので、第2回の「中小企業における障害者の雇用の促進に関する研 究会」を開催いたします。本日の出席状況ですが、全員ご出席です。金子委員がまだい らっしゃいませんが、おいでになる予定です。前回欠席された堀江委員がおいでになっ ておりますので、簡単にご挨拶をお願いいたします。 ○堀江委員  皆様おはようございます。中野区障害者福祉事業団とNPO法人「ウェルズ新木場」 で活動しております堀江でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○今野座長  それでは、本日の議題ですが、関係者の方々からヒアリングをすることになっており ます。今日は障害者雇用を積極的に推進されている企業のお立場からお話をいただくと いうことを考えております。今日はお2人に来ていただいております。1人は株式会社 東豊の吉見代表取締役社長です。もう1人は株式会社きものブレインの岡元取締役副社 長です。  議事に入る前に、9月1日付で、この研究会の主宰者である高齢・障害者雇用対策部 長が交代されましたので、一言ご挨拶いただきたいと思います。 ○高齢・障害者雇用対策部長  9月1日付で高齢・障害者雇用対策部長になりました岡崎と申します。よろしくお願 いいたします。障害者、特に中小企業における雇用促進を先生方にご検討いただくこと になっております。昔はどちらかというと、大企業が障害者の雇用に不熱心な面もあっ たのですが、最近、特に大企業のほうが熱心になってきたのかと。どちらかというと、 今度は中小企業のほうで、やや停滞気味かなという感じもしないでもありません。  そういう中で障害者の関係の皆様方、中小企業の関係の皆様方にもお集まりいただき まして、どういう形で進めていくのがいいのかについて、是非ご熱心なご議論をいただ きまして、私どももきちんとした対応・対策を講じていきたいと思っておりますので、 是非よろしくお願いいたします。 ○今野座長  事務局にも人事異動がございましたので、続いてご紹介いただければと思います。 ○障害者雇用対策課課長補佐  異動のありました事務局のメンバーを紹介いたします。高齢・障害者雇用対策部企画 課長の宮野、障害者雇用対策課調査官の浜島、同じく障害者雇用対策課障害者雇用専門 官の澤口です。私は障害者雇用対策課課長補佐の手倉森と申します。以上です。 ○今野座長  それでは、本日の議題に入ります。先ほど申しましたように、「関係者からのヒアリ ング」ということですが、もう1つは「その他」の議題を用意しており、前回の研究会 でいくつかの宿題を出していただきましたので、それについて事務局から説明をしてい ただき、議論をしたいと思います。  今日のヒアリングの進め方について事務局からお話いただきたいと思います。 ○障害者雇用対策課課長補佐  まず東豊の吉見社長から20分程度ご説明をいただき、そのあと質疑を20分程度、次に きものブレインの岡元副社長から20分程度ご説明していただき、20分程度質疑という形 で進めさせていただきたいと思っております。   ○今野座長  それでは、早速ヒアリングに入りたいと思います。まず吉見社長からお願いいたしま す。 ○吉見氏  はじめまして。私は千葉県八千代市で株式会社東豊というアルミの建材業をやってお ります。そのほかに滋賀県湖南市夏見、群馬県邑楽郡吉田、この3カ所でアルミの加工 をやっております。主な製品は、アルミサッシといいましても、我々は隙間産業ですの で、面格子、手摺り、網戸などがメインで、障害者とともに作っております。  お断りしておきたいのですが、私はこういう所であまり話をしたことがないので、話 の順序が前後すると思いますが、適当にこういうことを言いたかったのだなと理解して いただくと有難いです。  企業全体の労働者数は大体60名、そのうち障害者は39名です。これは別に私たちが求 めてやったのではないのですが、ひとえにハローワークと学校関係者の努力でこういう 会社になりました。  もともとの雇用のきっかけは、自分たちで障害のある人に興味を持ったのではなく、 たまたまハローワークにお願いしたら、障害を持っている人を使ってくれないかという ことで、誰でもいいから仕事さえしてくれればいいということで雇ったのがきっかけで す。  最初に来てくれた人は、今、名前は思い出せませんが、すごく仕事をしてくれるので す。これだったら障害を持った子でも何でもいいのではないかというのが始まりです。 うちは別に障害を持った人と直接関係があったわけではないし、何もなくて、ただ単に 来た人を雇用したのです。ですから、受入れ準備などをしたわけでもないし、一般の社 員としてという考え方で雇いました。  そのうち、うちがうまくいっているものですから、2番目、3番目、4番目と。ハロ ーワークもうちへ来れば雇ってくれるという安易な形で連れてこられたものですから、 最終的にはこういう数字になったのです。障害を持った人についての特別な話は私とし てはあまりないのです。そういうことを考えて雇ったつもりもないし。だから、結果こ ういう形になったというだけなのです。その途中でいろいろなことがありましたけれど も。  初めはハローワークも仕事のよくできる子たちを紹介してくれたのですが、5番目ぐ らいに来た子で印象的なのはA君というのがいました。この子を雇用したときは、さす がにどうしようかと迷ったのです。でも雇ってしまって、「お父さんどうするの」と言 われたのです。うちの会社は網戸がメインだったので、4月から8月までは忙しいので す。3月に学校を卒業して4月1日から入社で、4カ月間、初め1週間ほど見て、これ は駄目だなと思ったのですが、助成金も出ているし、大したことないだろうということ で、8月まで置いておいたらあとは教えるよと言ったら、「何をさせるの」と言うので、 掃除でもさせておけということで、掃除をさせました。掃除をしろと言うと1カ所だけ 掃除をするのです。「掃除というのは全部やるんだよ」と言うと、返事はよくて「はい、 わかりました」と言って、また同じ所をやっているのです。キリがないから1カ所掃除 をさせたのです。そうしたらずうっとそこを掃除しているのです。こちらもそのほうが 手が省けるわけです。相手をしたくないというのが本音でしたもので。4カ月も同じ所 を掃いていたらコンクリートが破れるのです。すごいことです。会社の中に石ころがい っぱいあるのです。「なんでこんなに会社の中に石ころがあるんや。誰が持ってきたの」 ということになって、見たら、A君が掃除をしている所はコンクリートに穴が開いて、 下の土まで見えているのです。4カ月も同じ所を掃除するということはすごいことです。  網戸のシーズン、8月初めぐらいになったら暇になります。「お父さん、何か教える の」と言うから、「網張りでも教えてみるわ」と網張りを教えました。網を張らせたら しっちゃかめっちゃか。形になるのかなと思いました。しようがないから30cm四方ぐら いの網を100枚持たせました。「これを1日かかって張るんだよ」と言ったら、初めは 1日かかって10枚とか15枚で、形というものではなく、とにかくアルミのフレームに網 がくっ付いているという形でできていました。  それでも毎日やると、2カ月ぐらい経ったら、それなりに形ができているわけです。 あまり一遍に言っても無理だろうと思うから、1カ所だけ、初めに目を合わせる。目を 合わせるというのは、折り目に合わせて張らせるという感じでやってみろと、それだけ 教えました。また2カ月ぐらい経ったら、今度は製品になるのではないかなと思いだし て、それから真剣に「ここはこうするんだよ」と1つだけ教えるのです。  半年ぐらい経ったら、何とか張れると思って、今度「網切ってみろ」と言って、今ま で張ったものは目の前で剥がすのはかわいそうだから、夜になったら剥がすのです。製 品にするには切らさなければいけません。「社長、切れました」と持ってきたのを見る と、全部中が切ってあるのです。まいったと思って、「これは外を切るんだよ」と言っ たのです。切るほうはカッターナイフを使って切るので、そばに付いていて刃物の先に 手をやるなということを徹底的に教えました。それも2週間ぐらいで覚えて、今度は製 品です。「張ってみろ」と張らせたら、1日かかって張れるかなと思っていたのですが、 半日で上げてきたのです。それ以来、25年ぐらいになりますが、うちでずっと網を張っ ています。  うちの会社は6、7人ぐらいまでは私が教えたのです。あるとき4人ほどまとめて何 とか面倒を見てくれというので、入ったときに、夏の忙しいときに当然入ってきますの で、我々の目が届かないので、「適当にその辺を掃除していろ」と言ったら、次に見た ら手伝っているのです。そのうちに「あっ、お前、これできるのか。やってみたいか」 と言ったら、「うん」と言うので、「じゃあ、やってみろ」と言ったら、うまくやりま した。これは我々が教えるより勝手に覚えさせたほうが早いなということを、そこで学 ばせてもらいました。それからはあまり教ていません。  うちの社員にも、できることは何でもやらせていいと言ったものですから、最近は在 庫管理をさせています。「お前、それはちょっと乱暴と違うか」と言ったら、「いや、 社長が言ったから、何でもさせているんですよ」と言われて、しょうがないなと思って、 もう一度できたものをこちらで合わせるのですが、大体合っています。ですから、やら せれば何でもできるのだなと思っています。  うちの会社はパソコンで寸法表が出ます。切断だけは健常者がやっています。刃物が あるので危ないだろうという考えの下でやっているのですが、それ以外のことは採用表 1つあれば、製品まで全部できます。  彼らのいいところは間違いません。例えば、我々が網戸を張ったりしたら、昔は網戸 の色はたくさんあって、グリーン、グレー、ブルー、柄の入ったもの、ステン、目の大 きさで16メッシュ、18メッシュがあって、そういうのをインデックスに、例えばブルー の網を張るときはブルーの線を横に1本引っ張って、その上の部分にお客様の届け先、 下に色、出荷日、網目の大きさなどを書いています。それをやっているのですが、A君 は25年間でまだ一度も間違ったことがありません。当然忙しいときは、我々も残業を手 伝います。我々がやるときはブルーはブルー、グレーはグレーで分けて網を張るのです が、それでも間違えるのです。それをランダムに置いているのを未だかつて間違えたこ とがないというのは、すごい集中力だと思っています。  我々が長い間かかって何をやったかというと、A君1人に網戸を張るのを教えただけ で、それ以外は本当に何も教えたことがありません。学校から来た子を、とりあえずそ の辺で掃除をしていろと言えば、好きなところ、自分の興味のある所へ行きます。興味 のある所でじっと見ていて、プレスなどをやっていたら、やりたいから、その隣で同じ 格好をしているのです。「お前、これやってみたいか」と言うと、「やってみたい」と 必ず言います。やらせてみると大体できます。  うちは金型でも200面ぐらいあります。1つの面に4つぐらいの工程が付いています が、教えたわけでもないのに、それを間違わずにやってくれます。障害を持った子でも、 時間さえかければ、雇用するのにそんなに難しいことではないと私は思っています。  私の所はたくさん雇っているので、よく相談されるのですが、よく「どうやって教え れば良いのか」と聞かれますが、答えようがありません。5人目のA君には時間をかけ て教えました。それ以外、網を張るのを教えたことはないし、だからといって、クレー ムがくるような商品も出したことはありません。  我々の商品というのは120%ぐらいの出来を求められるわけです。なぜかというと、 うちの会社というのは障害を持った子が作っているというのを、お客さんがご存じです。 初めは商品の出来が悪いという目で見られるわけです。ちょっとしたミスでもすべてク レームにつながります。だから、うちの商品は結構いいと思っています。  たまには残念な思いもします。親御さんの誤解というか、雇うときに「この子はてん かんがあるから気を付けてくれ」ということだったのです。うちに2年ほどいましたが、 その間はそういうことも起きずに良かったのですが、その子が仕事ができるのです。私 が仕事のできる子はあてにします。「今日も残業だけどお願いね、頑張ってね」と言う と、その子は期待に応えてくれる子なので一生懸命やります。初めから痩せていた子が もっと痩せたのですが、腰の痛い仕草などをするのを、こちらは見逃がしていたのです。 2年間立ち続けで仕事をしたものですから、腰が悪くなった。そのときに親御さんに怒 鳴り込まれて、「お前の所は、障害を持った者をこき使うのか」「いや、そうではない」 と言っても、誤解は解けませんでした。我々も別に悪意でやったわけではなくて、仕事 ができるからお願いしたという形でやったのです。自閉症を一緒に持っていた子なので、 自分を表現してくれないから、お願いして、やってくれれば能率がいいものですから、 どうしてもそういう形になります。それで残念な思いをしたことがあります。  私は皆さんの前で話をするより、そちらから言ってもらって、それにお答えしたほう が、わかりやすいと思います。そうしていただくと助かります。 ○今野座長  それでは、皆さんからご質問していただいてお話しいただきましょうか。 ○小川委員  私は身体障害者の当事者団体長ということで、いまの社長のお話は大変感動を覚えま す。大変重要な人間の住まいで、なくてはならない産業の1つを正確に、しかも障害者 の雇用が大変たくさん達成されていることについては、まず深く頭を垂れる次第です。  いま社長が、障害者は集中力があるという評価を頂戴いたしました。私の団体でも職 業自立啓発セミナーを各県で実施していますが、社長の現実のお話を承って、自信を持 った障害者の採用を是非ともお願いしたい、ということを目の当たりに聞かされました。  そこで質問ですが、社長の所では、障害者の技術で、危険な所は避けさせているとい う気配りもされている様子です。ただ、障害者、ハンディを持っている方々を毎日の就 労の中で、どのような状態で障害者の通勤などに対する指導をされていますか。 ○吉見氏  うちの会社の規則で、勝田台という駅なのですが、電車でそこまで来られる子か、例 えば自転車でも歩いてでも結構ですから、会社まで来ていただける子は雇用しますとい うのが条件なのです。学校を卒業して来た子というのは不安もあるでしょう。大体同じ 線で来るわけです。ですから、この子がこの駅で乗るから、前の子たちに「面倒を見て あげるのだよ」という対応はしております。  来るときはいいのですが、帰りが問題です。というのは、軽度の子がボーリング場な どに連れていくのです。勝田台まで連れて帰ってきてくれれば帰れるのですが、8時、 9時になって親御さんから電話があって、帰ってこない、どうしたんだということはあ ります。でも帰るときはそこまでは。それは年に2回ぐらいあります。 ○小川委員  ハンディを持っている区分という状態について教えていただきたいと思います。 ○吉見氏  私は壁を作らないようにしようとは思っています。障害を持った者も健常者も、とい うより、もともとそういう形でやってうまくいっているものですから、障害を持ってい るという考えで対応していません。この子たちは時間がかかるぐらいしか思っていませ ん。そのように工場の中の者にも「初めてきた子は覚えるのに時間がかかるから、それ だけは我慢してやってくれ」と言っています。それ以外のことは健常者とほとんど一緒 です。ですから、表で一緒に野球をしたり、いろいろなことをしています。 ○小川委員  社長、素晴らしいですね。私はこの間アメリカの国連本部に当事者団体長ということ で、雇用の差別禁止の代表で行きまして、アメリカよりも社長の考え方はしっかりして いますね。 ○吉見氏  ありがとうございます。 ○小川委員  そういう状態を私どもも各地で啓発したいと思いますので、ますますこれからの精進 については、ご自身をもって範を垂れていただけるように、よろしくお願いしたいと思 います。私は栃木県なのです。足利地方に行きますと、最近、群馬のほうに吸収される という話も聞かされているものですか、上州の人は素晴らしいと思います。ありがとう ございます。 ○藤原委員  私は知的障害者団体の育成会の理事長です。あまり種別は関係ないと思いますが、い まのお話を聞いていたら、知的障害の人ではないかと思いました。  もう1つは、知的障害者の雇用が失敗するのは、現場ではなく、コミュニケーション がとりにくいというお話がありますが、その辺のお話。いまも遊びに行って帰りが遅く て家から電話があるということですが、企業は9時から17時までとか、勤務時間内は責 任を持ってもらわなければいけないわけですが、それ以外の暮らしのサポートは、地域 の生活支援と提携していただいて、17時以降は知りませんというぐらいでもいいのでは ないかと思います。  全員知的なのか、あるいは身体の方も我が社では働けるという比率ぐらいで結構です が、その辺りと、コミュニケーションの失敗がよくありますが、その辺はなかったのか。 職場はいいのですが、暮らしのほうで本当は困っているのだという話がありましたらお 願いいたします。 ○吉見氏  うちは工場で、狭いスペースの中でやっていますので、全盲の方、難聴の方はちょっ と危険だと思います。雇用するのは別に異存はなく、事務系統のほうなら大丈夫です。 ○藤原委員  ほとんど知的障害ですね。 ○吉見氏  そうです、いまは全員知的障害です。身体の方が駄目だというのではないのですが、 たまたまうちがそういう形ですので、勧める方がそのような形で勧められるので。 ○藤原委員  我々の子供が退職するときはコミュニケーションの失敗が多いのです。いまの話は一 緒に野球もしているということでしたが、昼休みに孤独になるとかですが、貴社の場合 は知的障害者が多いものですから、そういう孤独感はないと思いますが、その辺はいか がですか。 ○吉見氏  うちの場合は14名おりまして、グループを作って、昼休みは彼らたちでコミュニケ ーションをとっています。我々も顔を見たら、「お前、風邪をひいて休んでいたの。」 とか、そんなくだらない話は結構します。仕事の話でコミュニケーションなどはしたこ とはありません。意味が通じない子のほうが多いので。 ○藤原委員  それと、連休が続いたら遊びほうけてしまって月曜日は来にくいとか、そんな話をよ く聞くのですが、アフターファイブの話はどうですか。 ○吉見氏  ずる休みを1度したら駄目です。特に軽度の子は辞めます。初めは月に1遍、それが 週に1回になって、ああ、もう辞めるなと思ったら辞めていきます。それは止めようが ありません。グループホームか何かでこちらが管理できる状態だったら大丈夫だと思う のですが、うちのほうにその力がないので、なかなかそこまでできません。 ○藤原委員  地域の育成会、あるいは施設がグループホームをされて、貴社とジョイントしたら割 合いいのですね。 ○吉見氏  そうですね。今までうちに来た子で重度の子は全部残っています。辞めた子は数える ほどですが、軽度の子はほとんど辞めました。 ○藤原委員  定着率は、採用を100人して7掛けとか6掛けですか。 ○吉見氏  いまのところは50%ぐらい残っています。 ○小林委員  私は視覚のほうで出ているわけですが、いまの社長のお話をお聞きしておりますと、 網戸等の実際の仕事は目が見えないと難しいようですが、ほかの部門でやれることがあ れば、そういう障害者も積極的に採用していくというお考えがあるかどうかをお聞きし たいと思います。 ○吉見氏  それは当然ありますが、こちらが怖がっているというか、目が見えなかったら見えな いなりに皆さん生活されていますが、自分が実際に目をつぶって道を歩けるかと言った ら不可能に近いわけです。私は目の見える立場でものを考えますので、どうしても雇用 というときに、どのようにしたらいいか見当がつかないのです。工場の中で、例えば安 全な通路を確保したりすることができないので、とりあえず工場は無理だという考えを しております。事務でしたら、うちは別に問題はありません。紹介なり何りをどんどん していただいたら雇用させていただきます。 ○今野座長  現在、実際にはいらっしゃるのですか。 ○吉見氏  おりません。 ○小林委員  是非、もう少し枠を広げることをお考えいただけると、他の障害者も助かるのではな いかと思っております。実際には手先の器用な視覚障害者もおります。そういう人たち は刃物を使うことも、ちょっとした工夫で、慣れれば何ら問題なくできると思います。 その辺の研究も今後していただければ有難いと思っております。 ○吉見氏  はい。 ○倉知委員  社長にお会いするのは2回目か3回目だと思います。私は20年以上前に千葉の障害者 職業センターにおりまして、社長の所にお願いに行ったことがあります。知的障害の方 で3週間ほど実習したのですが、結構休みが多くて、これは駄目だな、社長も怖そうだ しなと思って行ったのですが、「いいよ、来て」と言われて、センターに帰って、あの 社長は誰でも採用してくれるのではないかな、どうして採用してくれたのかなと話題に なっていたのです。そんなことを思い出したのですが、社長の所で採用、不採用の基準 はあるのか、是非お聞きしたいと思います。  いまお話を聞いた中で、仕事を教えなくても覚えているという話がありましたが、あ れはもしかしたら障害を持った先輩が教えているのかな、それが非常にうまくいってい るのかなと感じたのですが、その辺りはどうなのでしょうか。 ○吉見氏  教えているというより、「俺はこんなことができるんだぞ」という形で自慢するので す。片方は、学校でやっていない機械を使ったり珍しいことをやっていますので、冒険 心というか、やってみたいわけです。そういうのが始まりだと思います。最近、我々は 全然手を抜いているというか、そうしたほうが早いから楽なほうに回っているのですが、 問題なく覚えてくれます。ある程度まで行ったときに一言、二言、困ることだけをアド バイスすればいいのです。  できなかった仕事というのがあります。例えば、ミスをしたものを元へ戻すというの があります。我々がそれをやっているうちに見て、やりたいからやるのです。それなり に技術もあるしできるのです。最近は我々がすることは少なくなっています。いろいろ な形の大きさのものを1つにまとめて傷がつかないようにお客さんに届けなければいけ ませんので、梱包は自分たちでやっています。  採用基準は自力で駅まで来られる方です。B君という子がいますが、この子は自転車 には乗れません。お母さんが半年かけてうちの会社へ来る道を教えました。「1人でこ こに着くことができるのか」と言ったら、「私はこんな子に産んだから体力だけは付け ている。万が一、この子が来る途中で信号などで事故が起きて死んでも、私は諦めるか ら使ってくれ」というので、うちも安心して使っています。お母さんが厳しい方だから、 仕事はすごくできます。 ○倉知委員  ありがとうございます。 ○小林委員  もう1点、賃金の面をお話いただきたいと思います。  ○吉見氏  初めは最低賃金除外申請を受けており、仕事ができるようになってきたらだんだん上 げていきます。ですから、うちは最低賃金をクリアしている子が多いと思います。 ○今野座長  大体一人前になるのは。いろいろだと思いますが。 ○吉見氏  ならない子もいます。掃除しかできない子もいます。掃除しかできない子もいるので、 うちは掃除はしません。例えば、梱包されたものを開けるとゴミが出ます。それはその 子の仕事だから置いておけと言います。その子が休んだら大変で、工場の中はゴミだら けです。ですから、誰が休んだかわかります。 ○今野座長  ほかにありますか。 ○堀江委員  生活面などのサポートでレジュメを拝見すると、ハローワークと養護学校は社会資源 として使っていらっしゃるようです。私は就労支援機関職員ですが、いまいろいろな自 治体がそういうものを作っていますが、そういうものを活用したり、自治体、八千代市 がこういう制度を作ってくれたら助かるのだがというものがあればお聞かせください。 ○吉見氏  八千代では使っていませんが、群馬と滋賀県では支援センターからの人に何人か来て もらっています。失礼ですが、そういう施設から来られた方は、なかなか仕事をしてく れません。結構甘い基準でやっています。例えば支援センターでは1日2時間しか雇用 していなかったから、それを1カ月続けて、次は3時間にしてください、4時間にして くださいなどという子が多いのです。ですから、我々にとってはちょっと迷惑なところ もあるのが本筋です。例えば、支援センターなどが、一般企業より仕事も大変で時間も 長かったら、うちへ来て、ああ、楽だと思って、逆のことになりますが。学校を出て何 も知らない真っ白な人のほうが使いやすいです。 ○堀江委員  自治体、例えば八千代市、私でしたら中野区などが、こういう助成制度を作ってくれ ると良いというのがありますか。いまはほとんどが国の助成制度なので、地方自治体、 住んでいる地域にはあまり雇用の制度はありません。そういった中で、このような制度 や人の配置をしてくれると助かるというのがありますか。イメージ的なもので結構です。 ○吉見氏  いまのところ、私たちがやっているのは、そういうのを初めから当てにしていなかっ たので不自由はありません。ただ、帰るときによく行方不明が出るのですが、これは困 ります。電話がかかって、誰と一緒に行ったかを聞いたら、大体行き先はわかります。 でも、これは見つかる、見つからないにかかわらず、探しにいかなければしょうがない ので、うちが困るというのはそのぐらいです。 ○今野座長  ほかにございますか。障害者を雇われたのはいつからですか。先ほどA君は25年勤め ていると言われましたが。 ○近見氏  それがいちばん古いです。 ○今野座長  ということは、もう25年ぐらい前からですか。 ○吉見氏  そうです。うちの決算は今期が22期目、その前に個人事業で3年ほどやっていまし たので。 ○今野座長  ということは、この会社を始められて最初からということですか。 ○吉見氏  そうです。A君、B君は最初からです。 ○今野座長  先ほど倉知委員が質問したことですが、仕事を見ていて面白いからやりたいというの はわかりますが、やりたいからできるわけではないので、誰かが教えたりするのですか。 ○吉見氏  やりたいことというのは、結構真剣に見ていてやります。 ○今野座長  見ていて覚えるのですか。 ○吉見氏  いま言ったB君というのは、仕事を一生懸命教えたら、教える者が気に入らないので す。物を投げたり、奇声を発したりするのです。ペンチを持ってこいと言えばドライバ ーを持ってくるし、「ドライバーというのはこうしてネジを回すものだよ。取ってきな さい」と言ったら、今度はほかのカッターナイフを持ってきたりするのです。まいった なと思ったのですが、ずっとプレス作業を見ているのです。そして「僕、これやりたい」 と言い出したのです。その時は社員が「駄目だよ」と言っているのを見ていたので、 「おい、ちょっとやらせてやれ。お前本当にできるのか」と言ったら、「できます」と 言うのです。スクラップをプレスさせたら、何もできなかった子がやるのです。それは すごくやりたかったからだと思います。私も意地悪だから、これはできたが、これはで きないだろうとか、うちにある商品を全部やらせたら、全部できるのです。うちはロー タリープレスと言って回転式のを使っています。なぜかといったら、いちいちプレスの 金型を取り換えなくてもいいからです。それに乗り切らないからよそに置いてあるわけ です。それをわざわざ外して、その金型を乗せてやったから、「うわあ、すごい」と思 ったのです。その子には私たちは一度も教えていません。25年間自転車で来ています。 ○今野座長  プレスなどをやる所は、安全などの問題もそんなに問題ではないのですか。 ○吉見氏  ないです。プレス作業といったら、普通はこういう小さいものをプレスの中に入れて、 手を抜いて落ちる形のものを考えますが、そうではなくて、うちは網戸などの長い部材 ですので、機械の所まで手は行きません。先だけプレスしていますので、問題はないと 思います。どちらかというと切断機です。短いものを切ったら、目の前で押さえている ので刃が来ますから。 ○今野座長  そうすると、コツはいろいろな仕事をしてみて、何に興味を示すかを見極めることが 非常に重要だということでしょうか。 ○吉見氏  そうですね。彼らは正直ですから、大体好きな所を見ています。1つのことができた ら次もできます。 ○今野座長  ほかにご質問ございますか。 ○金子委員  社長さんはそういう考えでやっておられて、健常者の社員もおられて、指導も一緒に やっておられるのですが、その方たちもかなり気長にしなければなりませんね。 ○吉見氏  はい、そうです。 ○金子委員  その辺のことが最初のうちは大変だったのでしょうか。 ○吉見氏  最初のうちは、障害を持った人に対する考え方が嫌だという人もいました。でも、事 務などの子は未だにそうで、私がよそへ行って「これは障害者が焼いたパンだよ」と出 したら、食べないということはあります。でも、うちは社員の数が逆転したので、理解 しない人は来なくていいという形になっています。 ○金子委員  会社の中がそのように変わったのですね。 ○吉見氏  そうです。うちはしょうがないも何も、これでやらないとしょうがなくなるという形 です。 ○金子委員  いまそちらでやっていらっしゃるのは知的障害の方ということですが、私は精神の障 害者を支援しているのですが、精神障害者はなかなかそれだけの集中力が出ないかもし れませんが、障害の枠を将来的には広げていくお考えですか。 ○吉見氏  精神の人は前に一度、半年くらい雇ったことがあります。その人はアルコール中毒で した。ずっと飲酒をやめていたのですが、お姉さんがスナックをやっていて、一晩手伝 いに行って終わりました。もうあくる日は目がよその国の人になっていて、ああ、これ はまずいなと思っていたら来なくなりました。 ○今野座長  ほかにもございますか。それでは、吉見社長、ありがとうございました。  次に、岡元副社長にお話をいただきたいと思います。 ○岡元氏  よろしくお願いします。いま隣で本当に大らかな障害者雇用を聞きまして、ああ、そ ういう雇用の仕方をやっておられるということで、大いに参考にさせていただきます。 ありがとうございました。私のほうは、もっと細かい部分の配慮をしているとか、そう いうことをお話させていただきたいと思います。  まず会社紹介をいたしますと、新潟県十日町市で津南町の隣ですから、雪が今年度も 4m20cm積りました。春になると消えます。何とか雪を利用できないものかと思います。 あとは中越地震の震災の震源地から10kmですから、非常に甚大な被害を受けました。 また、防災というか、災害と障害者の研究会があったら、是非語りたいことが山ほどあ りますが、今日は語りません。  そんな地域で、十日町というのは着物の産地ですから、着物に特化した仕事をしてい ます。簡単に言いますと、着物の専門のメンテナンスで、アフターケアから仕立てまで をしております。そのほかに、今では着物のリサイクルということで、タンスの中に眠 っているものを活用しようと。それに加えて、もっと手軽に、安価で着られる着物とい うことで、プレタの着物の企画・製造・販売をしております。直営店も7店舗あり、最 近では表参道ヒルズのすぐ近くに、ちょっと見栄を張って直営ショップを出しました。 これはアンテナショップということで、実売ショップにしたいのですが、いろいろ発信 していかないと着物も非常に縮小産業なので、その辺をやっております。  まず雇用の動機ですが、34歳になる私の姪がダウン症の知的障害ということで、姉夫 婦の下で仕事をずっとやっていました。その仕事ぶりを見ていて、障害を持つ人でも十 分に人材として活用できることを肌で感じて、それからチャンスを作ろうと思ったので す。  初めての雇用は、18年前に小規模作業所で働いていた障害者の夫婦がいて、脳性麻痺 の1級の夫と知的障害者の妻が結婚したのですが、福祉作業所では1万円しか収入があ りません。障害者の基礎年金を足せば何とかカツカツの生活はできますが、結婚したら 欲が出てきて、やはり私たちも当たり前の市民生活をしたい、おいしいものを食べたい、 きれいなものを着たい、旅行にも行きたいという気持を持ったときに、働きたいという 意欲があるということが新聞に出ていました。その新聞記事を見て、彼ら2人を採用し たのが最初です。彼らの働きぶりがすこぶる良かったのです。そのときは私も障害者の 雇用の仕方は全くわかりませんでした。うちの姪の働きぶりなどでの勘で指導していま したが、そんなことが続きました。  当社の障害者雇用の基本理念などと書いてありますが、うちの考え方は、全員参加型 の経営です。全員で喜びも苦しみも一緒に体験させようということですから、障害者も 同じことです。障害があるからこの行事には参加しなくてもいいとか、経営方針発表会 というのがありますが、それは難しそうだから知的障害者は参加しなくてもいいなどと いうことはなく、とにかく楽しいことにもどんなことにも全員参加させて、どうしても できない人は強制しませんが、経営のための意思統一も共通認識を抱いて、みんなでチ ャレンジしようということです。障害者雇用の考え方としては、障害があってもできな いところは職場で配慮して、できるところは能力を伸ばすという考え方でやっておりま す。  もう1つ重要なのは、障害を持っている人は、田舎ですと甘えがあって、特別扱いさ れやすいのですが、それはありません。だって働きに来ているのでしょう、あなたたち は、ということで甘えは許さない、特別扱いはしない。見学者が来ると「すごいですね」 と言うのですが、「すごいですねはやめてください。働きに来ているのです、彼らは。 そこにいるだけですごいですねという言葉は出さないように」と。それだけのチャレン ジをしようということで、意欲を持った人が来ております。  私どもは13年前に、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金をいただいてスター トしました。そのとき10人の重度障害者を雇用しました。この地域で重度障害者10人と いうのは本当にいないのです。ハローワークに求職者登録がまずされておらず、全くゼ ロでした。というのは、どこに行ったかというと、近隣の大都市の長岡市や新潟市に、 働く意欲と能力のある人は行っています。その他の人たちは授産施設や小規模作業施設 で職業訓練という名の下に、なかなか卒業できないで職業訓練をやっています。  私は社会福祉事務所へ行って、情報をもらいました。今は個人情報が厳しくて、くれ るかどうかわかりませんが。全部1人ずつ会いに行って、車椅子の社員は交通事故で重 度障害者です。指先が動かず、ゴムの手袋をしています。彼の入院している病院へ行っ て、「あなたは職場ができたら働きたいですか。車椅子でも働けるのだけれども」と言 ったら、働きたいと言うのです。働く意欲というのは強いものだなとそのとき思いまし た。そういうことで1人ずつ、10人を何とか揃えて、バリアフリーの車椅子でも働ける 工場を造りました。  表を見ていただきますと、概要の中に障害者の数が出ていますが、今は23名で、うち は重度障害者が16名です。視覚障害者以外は、すべての障害の人がいます。これは福祉 事務所で情報をもらったものですから、縁のあった人から順番に入れていったので、障 害の種別は特にこだわりません。その代わり、できれば知的障害者の人だけとか聴覚障 害の人だけを固めて仕事をしたほうが絶対やりやすいに決まっているのですが、あえて 私どもは、それが1つの社会の縮図なのだから、それをまた職場の中に落とし込もうと いうことでプラスに考えて、障害特性に合った、個別特性に合った職場を適材適所で提 供しようということです。  先ほど視覚障害者は職場はどうなのかという話をされましたが、うちも視覚障害者が 門戸を叩いてくだされば、今は支援機器がたくさんありますからオーケーです。ただ、 固定観念が強いのか、まだそういう人は来ておりません。  いろいろな種別の人が雇用されたということで、私はこれを幸いと呼んでいますが、 さまざまな障害のことを勉強させていただきました。そういうチャンスになりました。 基本的には適材適所ですが、なかなかそれも配慮できない、特に知的障害者に対して。 当社は専門的な高度な技術を使う職種と、事務的な管理の仕事、機械加工の操作ですが、 それは本当に数人でいいのですが、それしかなかったので職場をつくろうと思ったので す。  職場を作ろうと思ったのは、畳紙という着物を包む和紙ですが、四国が産地だったの です。これは随分前の話ですが、瀬戸大橋が架かったときに、発注すると1カ月ででき ていたのが6カ月かかると言われたのです。その理由を問い詰めたところ、カットから 糊付けから全部機械がやるのですが、たった1つ手作業があります。それは切込みに紐 を通してシールを貼るのですが、そこだけが女性のパート労働とか、内職に依存してい たのが、観光産業に取られてしまって6カ月かかると言われたのです。それでひらめい て、これは仕事になるかなと。「半製品で入れてもらうことはできますか」と言ったら、 「それだったら1カ月でできます」と。1カ月もかかりませんでした。紐とシールを用 意しました。紐も長いのと短いのと2種類あります。しかもきれいに手を洗わないとい けない。髪の毛1本でも落としたら、高価な着物が入りますから駄目だということで、 衛生観念から始めて、数の数え方は1から10まで数えられてもその先は数えられないの です。しかし、10、20、30、40と自分の生産高をシールをもらって10枚ごとに貼ってい くのです。そのような形で知的障害者の仕事を作らせてもらいました。  実際には当社の仕事は、たぶん1人ぐらいしか要らないと思います。タオル洗いとか、 昼食準備ぐらいで終わりです。その職種を作ることが、考えますと、できるのだなとい うことを実感しましたので、そういう話をいろいろな所でしています。  雇用の次は環境整備です。環境整備ということは継続的にやらなければいけません。 環境というのは建物の環境ではなく、どちらかというとソフト的な環境のことを言って います。全社員の意識教育がまず大事になってきます。新入社員はもちろん、社員教育 のカリキュラムに4時間ぐらいの単元を設けて、私が講師になってやります。  入社済みの社員には、朝礼のときなど事あるごとにいろいろな意識啓発をしておりま す。それによって障害の特性ごと、例えば、てんかんの人はどのようにして処置したら いいのかとか、知的障害の人もさまざま、自閉症の人も、車椅子の人もいます。自分で 排泄機能がない人たちの具体的な、個別な接し方をそこで教えてあげるのです。それは 全体朝礼で言っているのではありません。それは、後でふれますけれども、障害者支援 委員会という活動を通してやっております。  表の下に、「障害者支援委員会の活動」とありますが、これの目的は、普通ですと、 職場で10人超えたら、生活相談員とか、福祉大学を卒業した人や、養護学校を卒業した プロの人を配置するのがいちばんいいに決まっているのです。ただし、私はそうではな い。全員参加型の経営ですから、全社員で、障害者がいるのが当たり前、融和して仕事 も一緒にやるという仕組みを作ろうと思いました。そのために25人の委員会活動を実施 したのです。一番きついのは「知的・精神支援チーム」です。これは業務外のチームと 業務内のチームと2つあります。業務外でやるということは、時々何か問題があったら 話し合うとか、相談会をやったりします。知的支援チームは生活指導、技術の指導、精 神的なケア、保護者との連携ということで連絡ノートを交わしたりしています。  聴覚障害者の場合は、コミュニケーションがとりにくいために誤解が生じたり、人間 関係ではトラブルが起きやすいのです。過去にもありました。そういうことを防ぐため にいろいろな相談の受け皿を設けました。朝礼のときに社員が手話通訳をします。その ほか、難しい仕事の説明をするときに、筆談でもいいのですがなかなか通じない。その 場合には通常別の仕事をしている、手話通訳のできるうちの社員を呼びます。でも、周 りで仕事をしています。社内全員で、大勢の目、手、心で彼らをサポートしようという のが当社の狙いです。このようなやり方をやっているところはあまりないようで、何年 か前に、厚生労働省の「職場改善コンテスト」で奨励賞をいただいたことがあります。  特定の深い専門知識を持っている人が数人いるよりは、浅くても大勢の人がサポート するほうがいい。そうすると関心を持ってくるのです。最初は浅い知識がだんだん深く なってくる。そういう取組みをやっています。いちいち言わなくても、自然に協働の精 神と共生の精神みたいなものが自然に宿ってきます。特別な配慮は要らない、特別扱い しないように言っています。逆にコミュニケーションをとって、同僚として接してくだ さいとだけしか言いません。同僚として接することは人格を重んじて、1人の人間とし て見るわけです。知的障害の人は能力が低いといっても、知的な能力が低いだけで、ほ かの能力は勝っている、力があるかもしれません。だからうちは「○○ちゃん」という 呼び方はさせていません。すべて名字で、「○○さん」と呼ばせています。  それをしないと、不思議なのですが鏡なのです。私が「おはよう」と言うと、あっち が「はい、おはよう」と言うのです。こっちが「おはようございます」と言うと、「お はようございます」と言うのです。「元気?」と尋ねると「はい、元気」と答える。 「元気ですか」と聞くと「元気です」と答える。不思議なのです。言うほうは自分の鏡 だと思って、返ってくる言葉を期待した場合、良い言葉を使うと必ず良い言葉で返って くる。そういうことも仕事の意識の向上に役立っています。  専門家の皆さんが集まっていらっしゃる中なので、やはり支援制度を活用していく中 でのさまざまな経験を説明させていただきたいと思います。雇用が困難と思われている 知的障害者を雇用するに当たっては委託訓練などあります。でも、この委託訓練がくせ ものでして、全部企業に依存が高いのです。本当はジョブ・コーチが入ってほしいので すが、ジョブ・コーチなし。3カ月終わってからトライアル雇用、ジョブ・コーチ。順 序が逆なのです。3カ月終わったら企業でサポートシステムを作ってしまいます。そう したら、はっきり言って要らないのです。要らないけれども、一応はそういうシステム があるからジョブ・コーチを派遣してもらいますが。  そのジョブ・コーチも、実は我々田舎ですと、県のジョブ・コーチはとても優秀なの です。しかし、地域のジョブ・コーチという方が最近、生活支援センターで1人、2人 出てきています。はっきり言って、彼らは私が教えてあげています。そういう意味では 全然ジョブ・コーチにならない。そのようなしち面倒くさいことをするのだったら、企 業内でジョブ・コーチ資格を取ろうということで、いろいろな要件があって、まだ取れ ていませんが、現在勉強中です。トライアル雇用、委託訓練もいいのですが、使い勝手 がまだ悪いなというのが感想です。  企業にとっていちばんの支援は助成金です。お金ほどありがたいものはないわけです。 でも、実際導入しようと精査してみると、私どもは重度障害者多数雇用事業所施設設置 等助成金をいただいたのですが、そのときは役に立たせていただいて、企業も成長でき たし、たくさん継続的に雇用もできました。  ところが、10年たつと設備更新になります。機械などは10年間持たないのです。部品 を替えたり、修理したり、買い換えたりしています。建物は手狭になったので、2kmぐ らい離れた所にとても良い中古のビルが見つかって、そこの改修工事が3億円かかった のです。何とか助成金が得られないかということで、前の課長さんにも直接ご相談した ことがあるのですがなかなか無理でした。ということで、自前財源、100%借入金でや りました。  つい最近の話なのですが、第一種作業施設設置等助成金のときは、使い勝手が非常に 良くなったということなので期待していました。当社はちょうど、システム改修のパソ コン入替えで3,000万円ぐらいかかる。そのとき、車椅子の人も採用したのです。ほか にもう1人、聴覚障害者の話とかも出ていました。そのときにも、健常者が共有する部 分が多いと該当しないということで、これもあきらめました。これも全部自前で、リー スで組みました。  この辺、前よりは良くなりましたが、もうちょっと何とか。前は改造した部分しか出 ない。それは良くなったのですが、たぶん財源不足が原因だろうと。雇用達成率が高い と本当は財源不足が出るのですが、達成率が良くないのになぜ財源不足が起きるのか考 えてみました。やはり、納付金の徴収を300人以下の企業にも何らかの形で課したらど うかと思います。本研究会の第1回の資料を精査したら、100〜299人の数字がいちばん 悪かったのです。報奨金は本当にありがたいのですが、一方では、守ろうとしない未達 成企業については、もうちょっと軽くてもいいと思いますが、軽やかな納付金を納めて もらってもいいのではないかと思っています。  4番目の福祉的就労等の問題点に入ります。冒頭に申し上げましたように、職業訓練 の名の下に生産性無視、品質無視の訓練をしているわけですが、何とかこれを社会に出 してもらうのが一番の目的だと思います。福祉的就労ですと本当に工賃は僅かという話 を聞いています。それでも喜びます。でも、雇用とのギャップがあまりにも強いのです。 雇用の場合には社会保険、もちろん給料もあります。昇与、退職金積立て、有給休暇、 そのほかに福利厚生など、雇用とのギャップが非常に大きいので雇用が進まない理由に もなっているのではないか。  もう1つ、最低賃金の適用除外申請の最低賃金のお話なのですが、労働基準局との温 度差がちょっと違いますよね。労働基準局に行くと、労働基準監督官は、私たちが雇用 している人たちを雇用しないでほしいと言っているかのような許可基準なので、もうち ょっと教育してほしいなと思います。また、新人が来るのです。1年に1回替わるので す。わけのわからない人たちが来て、私たちが教えてあげるのです。そういう状況があ ります。  折角、行政のトップの方が「雇用促進」とおっしゃっているのに、実際認定しようと 思うと、我々は安い賃金で使いたいから雇用するなどという人はそれほどいないわけで す。不正を働く事業主とかもいますが、それは本当に少ないと思います。安い賃金とい うよりは、逆に能力に見合った賃金を払って、そして継続的に雇用しないと企業も成り 立たないのです。  この間、とある会議で質問されました。「企業は利益があるのだから、利益を障害者 に還元すべきだ。最低賃金除外申請などというのは出す必要があるのか」と言われまし た。しかし、企業も永続的に利益を出し続けるというのは大変なのです。  実は、うちも安定的に利益を出していた会社なのですが、この8月末に大口の取引先 が倒産しました。30%のシェアを持っていた会社でした。そうした外的要因、外部要因 によって変わります。いま悩んでいるのが、人員を活用するにも仕事がないわけですか ら、リストラしたくないけれどもどうしたらいいか非常に悩んでいます。それなのに、 利益を賃金で還元しなさいという考え方はちょっとおかしいのではないか。そのときは まだ、そのニュースが入る前でした。8月31日にそういうことがありました。やはり、 中小企業というのは風が吹けば吹き飛ぶような弱いところがありますので、最低賃金除 外申請と能力に見合って、能力が上がってくれば当然上げます。最低賃金をクリアした 人もいますし、障害を持っている人で部門長になっている人もいます。その辺が問題点 かなと思います。  就労について、全部話しましたが、福祉就労から雇用へ何とか結びつけてほしい。こ の前、輪島委員とご一緒したときもおっしゃっていたのですが、何か中間的な働き方を 吸収する機能を持った機関があれば非常にありがたいと思います。そうしたら、本当に 手軽にできるのではないか。労働基準監督署が来ると、みんな面倒くさくて嫌なのです。 何も悪いことをしていなくても、腹を探られるような気がする。だから、面倒くさくて 最低賃金の適用除外申請をしないところもあります。私の考え方としては、果たして継 続的に長期で雇用するためには、それでいいのかなと感じます。  そういうことで、中小企業の経済環境はいま非常に厳しいです。経済状況は上がって いるとは言っても、本当にまだまだ厳しいです。そういう中で使いやすい助成金の配慮、 中小企業に対しても飴と鞭を効果的に使っていただきたい。それから、雇用の仕方のソ フトの部分の拡充があります。  最後に、あらゆる場所、機会を使って国民教育をやってほしい。学校の義務教育の現 場から始まって、企業活動、国民すべてに対して、障害者に対する意識を変えていただ きたい。障害者自身も保護から社会参画、社会参画から社会貢献。中には保護しか受け られない人もいます。しかし、意欲のある人、能力アップできる人は是非。保護だけだ と税金の無駄遣いだと思います。そういう形でいけば大事な資産、国にとっても資源に なるのではないかと思っています。よろしくお願いいたします。以上です。ありがとう ございました。 ○今野座長  ありがとうございました。ご質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○倉知委員  ありがとうございました。先ほど話をされていたと思うのですが、もう少し詳しくお 聞きしたいと思います。社員教育が非常に重要というお話を伺いました。その辺りをも う少し、どのようにやられているのかをお話いただければと思います。 ○岡元氏  まず新入社員の場合、採用のときに障害者に対する考え方を必ず聞きます。「あなた はかつて障害者と会ったことはありますか」、「障害者と接したことはありますか」、 「そのとき、どのようなことでどのように接しましたか」と、例えばそういう形で設問 していきます。その辺から、この会社は障害者雇用のことを勉強しないと入れないなと いうこともありました。  入っていくと、新入社員に関してはまずビデオを見せます。うちの会社のビデオを見 て、実際、Aさん、Bさん、Cさんという固有名詞があるわけです。その人たちの中で 障害者別の教育をします。知的障害の人はこういう特性があって、こういう配慮が必要 ですと。では、どういう付き合い方をしたらいいか。それも先ほど申し上げたように、 Aさん、Bさんという特定の人がいますから、その人の場合という形で話しても差し支 えないのです。  あと、一般社員には、うちは平成元年に始めましたから、18年ぐらい前ですが、その 当時に入社していた人は職人的な人が多いものですから、それほど理解がなかったので す。そういうこともありましたが、それを継続的に、「障害者支援委員会」で勉強会を 開いて、私を講師に呼んだり、外部の方を講師に呼んだり、あと車椅子の社員を連れて きて語らせるのです。そうすると、身につまされますよね。明日は我が身かもしれない。 そういうような形をあらゆる機会を使って教育しています。新入社員については、4時 間を使うということは1回に2時間、2回ぐらいやっています。それを繰返しやってい くことによって意識が芽生えてくる。  あと、旅行などに一緒に行かせるとすごく面白いです。旅行に行きたいと言ったらど のような社員でも連れて行くのですが、1回車椅子の人を連れて行ったことがあります。 そのときに付き添いというか、1日目、夜寝るとき、2日目という形で介助者を決める のです。そのとき、ディズニーランドだったかと思うのですが、担当になった人があと でいろいろ報告会をやったときにすごく喜んでいました。ゲートがフリー・ゲートだか ら待たなくて済む。ほかの人は人気のアトラクションでは40分、1時間待ちます。 それに対してバンバン乗れてしまいますから、次にあったときには自分が介助したいと 言っていました。  そのような面白い部分で、何らかの形で接する。あまりかしこまって講義というのも、 やはり人間というのは聞いてもこういう感じになりますから、いろいろな具体例を出し て、自分で体感させるということでしょうか。 ○今野座長  ほかにございますでしょうか。先ほどちらっと、「中間的な働く場所があるといい」 とおっしゃっていました。それしかおっしゃらなかったのですが、どういう意味ですか。 ○岡元氏  それは私もわからないのですが、いわゆる福祉的就労は一応品質、生産性とかはなく、 仕事を見つけてくるのですが、経営面から言ったら利益を生むというものでもないと思 います。生むことを求められているのではなく、仕事を通して社会参加しようという目 的だと思います。そうすると、聞くところによると、頑張っても収入が、現在5,000円 とか1万円ぐらいの世界らしいです。保障がないわけです。  片や、雇用の場は先ほど申し上げたように、事業所にいくら最低除外申請しても、す べての福利厚生とかを入れたりすると結構上乗せになります。会社の職場の中でも、う ちみたいな意識が自分たちである会社はまだいいのですが、そうでない会社は負担だと 思います。そうすると、つい障害者雇用に二の足を踏んでしまう。  雇用と福祉就労の間の中に、例えば社会保険の免除とか、雇用のやり方にもっと柔軟 性があってもいいのではないか。雇用保険は就職先を探すためには必要だと思いますが、 社会保険は要らないのではないかと思ったりします。ただ、障害者年金の支給は必要だ と思います。私も想像がつかないのですが、輪島委員がこの前、ある場所でおっしゃっ ていたので、もし構想があったら委員からお聞かせいただきたいと思います。 ○今野座長  輪島委員からは、あとからゆっくりお聞きします。 ○岡元氏  そのようなわけで、私も見当がつかないのですが、なるほどそういうのがあったら、 もっと雇用は増えると思います。雇用はハードルが高いのです。福祉から雇用に行かな い理由は、やはりその辺なのではないかという気がしました。 ○今野座長  ありがとうございます。 ○輪島委員  聞きにくい話ですが、助成金はいままで10何年、トータルでいくらぐらいだったでし ょうか。あと、他の重多事業所も平均的にどれぐらいなのか、ご存じだったら教えてく ださい。 ○岡元氏  大体、3分の2でしたよね。最高2億までだったのです。そのとき、うちはカットさ れて1億7,000万円ぐらいいただきました。ですが、障害者を雇用しやすい環境づくり のために、建設費など、逆に使わなくてもいいお金を使うわけです。廊下の幅はどれぐ らい、2階建てでエレベーター、階段は緩やかに、あと車椅子用のトイレは1階、2階 にあります。警報システムとかもすべてバリアフリーにする。  どちらがいいかというと、もらわないで使わないほうがいいという人も確かにありま す。もらわないで、雇用しないで、そのほうがお金もかからないし、面倒くさいことを しなくてもいいと。だったら、バンバン助成金を申請して、企業は障害者雇用をしても いいと思いませんか。そこがちょっと難しい。あと、要件が厳しくなっていますけどね。 ○輪島委員  1億7,000万円、1回だけですか。 ○森元氏  そのほかに、第一種作業施設設置等助成金のときに450万円かかっています。そのと きは緩やかだったのです。10回ぐらいいただきました。4,500万円。それぐらいでした。 あとは報奨金です。 ○輪島委員  ありがとうございました。 ○小林委員  先ほどもちょっとお話に出ていましたが、いわゆる雇用率の未達成な企業については それなりのお金をもらうのではなくて、逆に納めるということになっているわけです。 この制度についてどう思いますか。先ほどの話だと、もう少し軽くしてもいいような話 でしたが。 ○岡元氏  いや、そういう意味ではなくて、未達成企業301人以上に対して納付金義務があるの です。ところが、300人以下は納付金義務がないということで申し上げました。  実際、本音を言うと、納付金制度による助成金ではなくて、一般財源からもっとドカ ッと引っ張ってくる。それが実を申しますと本音です。そういうことが出来ないのかど うか。ただ、納付金が少ないと、助成金に対する要件も当然ハードルが高くなってくる ということでした。 ○小林委員  乱暴な話のようですが、罰金を払ってもそのほうが安あがりだ、使うよりもそのほう がいいという話もあるのですが、これはいかがでしょうか。 ○岡元氏  そうなのです。そういう企業があるから本当は困るのです。本当のことを言うと、罰 金を払わないで雇用してもらえばいい。ただ、今度雇用率が達成されると納付金が減り ますから、結果的に財源がなくなってくる。ただ、雇用率達成によって雇用促進が成功 したという形であれば、それは全く問題ないのです。その辺のジレンマが、たぶん厚生 労働省にもあると思います。本当のことを言うとおっしゃるとおりなのです。別の財源 を使って雇用促進をやっていただけるのが、最も望むところでございます。 ○藤原委員  私も労働系の会議に出たら、本当は居心地が良いのです。私もそう思ってますから。 ところが、福祉系の席に来ると生きがい論ばかり出て、お金がどんどん出て生産性が全 然ないわけです。福祉就労も「就労」ではないと思います。「ごっこ」、「遊び」だと 思います。私自身も小さな経営者ですからそのように思います。そうすると、例えば、 最賃までの本人との能力の差を助成してもらったら、極端に言ったら福祉就労、施設は 要らなくなるはずなのです。そのことが1つです。  そのためにも、いま言われた国民教育、国民に障害者のことを知ってもらうと同時に、 私自身もですが、障害者が地域に慣れると同時に地域も障害者に慣れる。両方なのです。 私たちはどこへでも出ていこうと思っているのですが、その辺のことで、国民教育の具 体的な話はないですか。小学校ぐらいからやらなければいけないと思っています。 ○岡元氏  義務教育からそれを植え付けるために、必須科目に作るという形でいけば違うと思い ます。子供たちもちょっと違う、おかしいなと思うと、興味を示すけれども、子供たち はきちんと説明してあげればわかるのです。昔のように、それによっていじめというの は中学生・高校生ぐらいになるとあるかもしれませんが、小さいときはあまりないと思 います。ちょっとおかしいと思うぐらいの感じだと思います。 ○藤原委員  岡元副社長も吉見社長も、どちらも福祉施設を見学されて、おかしいと思われません でしたか。 ○岡元氏  思いました。 ○吉見氏  疑問だらけだった。 ○藤原委員  その辺を箇条書きで、3つか4つ言ってもらったらどうですか。 ○岡元氏  まず、最初に申し上げたように、職員の方が指導とは言うけれども職員が仕事をして いるのです。実際、普通の会社ですと売上げ目標、生産目標、あと1日にどれぐらいの 量をどういうように仕上げなくてはいけないかというのがあるのですが、それが全く見 られません。  それと子供扱い。ある意味では1つの人格として扱っていないのではないかと感じま す。確かに挨拶はいいのですが、「こんにちは」、「さようなら」という感じでしょう。 もし、うちの会社に縁があったら来てください。みんな、「いらっしゃいませ。ありが とうございます」と言います。これは当たり前ですよね。そのような当たり前のことを 教えてほしいのです。  あと、もう1つ感じるのは、生涯職場実習で終わってしまうのです。バスに乗せて、 箱詰めをやるとか、職場に配置します。職場の事業主と話したことがあるのですが、確 かに低賃金で使えていいと。その程度なのです。本人も社会参画していいというけれど も、それが雇用に結びついていないです。その辺が問題かと思います。吉見さん、いか がですか。 ○吉見氏  大体、行ってみて思うのは、なぜこのような予算を使ってやっているのかがわからな い。例えばうちに来たら、結構力の要る仕事があります。ドライバー1本にしても、電 動で回すときは機械に負けたらいけないから、そのときは荷物を運ばせたりします。半 年ぐらいたって、力が出来たらそれが出来るようになります。  職場訓練をそういったところからやるのだったらいいのだけれども、ただ単に、腫れ 物に触る状態のほうが多いようですね、例えばお母さんから苦情が来ないようにとか。 苦情が来ないで指導するというのは難しいと思うのですが、ああいう施設の人はやはり そうなのかなとしか思っていません。 ○岡元氏  確かに、保護者に気を使いすぎだと思います。 ○今野座長  ほかにご質問があるかもしれませんが、時間もまいりました。吉見さんと岡元さん、 どうもありがとうございました。 (両氏退室) ○今野座長  引続き、次の議題に入りたいと思います。先ほど言いましたように、前回宿題があり ました。それについて、事務局からデータを整理していただきましたので、ご報告をし ていただいて議論をしたいと思います。よろしくお願いします。 ○障害者対策課課長補佐  前回の研究会でさまざまなご指摘、宿題をいただいているところです。それについて、 資料に沿ってご説明したいと思います。  まず、資料1をご覧ください。資料1「中小企業における障害者雇用−障害者雇用状 況報告に基づく分析−」をお出ししています。本資料ですが、前回の研究会では障害者 の雇用の現状として、規模別の実雇用率、あるいは達成企業割合やその推移等を提出し たところですが、更に詳細な分析をすべきというご指摘を受けているところです。本資 料ではそれも踏まえ、詳しくは資料の中でご覧いただきますが、いくつかの新しい分析 を試みています。  具体的には、1つは企業規模の区分について刻みを細かくするとともに、雇用率制度 の特徴を踏まえ、法定雇用数に着目した企業規模の区分を設定した点です。次に、企業 規模の大小の影響を除去して分析を行うために、障害者の実雇用数と法定雇用数の比較 をしたこと。またその比率と達成企業割合との相関についても分析しています。さらに、 障害者雇用数や新規雇用障害者数の推移を企業規模別に分析している。こういった点が 新しい点でございます。  1頁をご覧ください。「はじめに」ですが、障害者の法定雇用率は1.8%でございま す。法定雇用数で見ると、企業規模に比例的に増加します。また、算定上1人未満は切 捨てという扱いをしていますので、下の図にありますように不連続の階段のような形に なります。このため、本資料では300人以下の中小企業に焦点を当てつつ、法定雇用者 数が同一となる企業規模、法定雇用数1人であれば56人以上111人以下、2人ですと112 人から166人といった区分をして分析を行っています。  2頁は、先ほど1頁目で区分した企業規模別に実雇用率をみています。まず、平成11 年度から平成17年度までの推移をみると、「334人以上」の区分の実雇用率が上昇傾向 にあります。その一方、「223人以上277人以下」の区分以下のすべての区分では低下傾 向にあります。その中でみると、「56人以上111人以下」の区分の低下が著しい状況に あります。  3頁です。「一方、企業規模の小さい企業ほど低い実雇用率で法定雇用を達成できる ケースがあるため、単なる実雇用率の比較で障害者雇用の実情を把握することには一定 の留保が必要」と書いてあります。具体的には2つ目の○をご覧ください。例えば、法 定雇用数が1人の企業の企業規模は56人から111人ということですが、仮に法定雇用数 「1人」を雇った場合の区分における実雇用率の値は、下の表の「1人」をご覧いただ くと最大で約1.8%、これは56人の場合です。最小で0.9%となります。これは企業規模 が大きくなるに従い、各区分の最小となる実雇用率が上昇するということであります。 表のいちばん右端、「最小」をご覧いただくと徐々に大きくなっていますが、企業規模 の小さな区分の企業ほど実雇用率が低い値でも法定雇用を達成できるのはこのためであ る、といった特徴があります。  そこで、企業規模の大小による影響を除去しつつ、企業規模ごとの障害者の雇用状況 を把握するために、2つの指標を用いて分析したいと考えています。1つは実雇用/法 定雇用比率というものです。法定雇用総数(各企業の法定雇用数の総和)に占める実雇 用総数(各企業の実雇用数の総和)の比率を考えています。これはそれぞれの企業規模 別の法定雇用数を1に換算した場合の実雇用数の比率に相当するものです。障害者雇用 が同一規模の法定雇用数を基準とすると、どの程度まで達成されているか。言わば、障 害者雇用の縦の深まりを示す指標として、今回新たな指標として用いています。  その下、達成企業割合ですが、企業数に占める法定雇用を達成した企業の比率という ことで、障害者雇用が多くの企業に幅広く取り組まれているかどうか。言わば、障害者 雇用の横の広がりを示す指標ということで考えています。  4頁は、まず企業規模別実雇用/法定雇用比率についてです。平成11年度から平成17 年度までの推移をみると、「278人以上333人以下」の区分以下のすべての区分で低下傾 向にあります。もっとも、その中で「56人以上111人以下」の区分については低下幅は大 きいですが、依然として1を超えている状況にあります。  また、「112人以上166人以下」の区分では、平成11年度については1.01ということで 1を超えていましたが、その後は1を割り込んでいる状況にあります。一方、「334人以 上」の区分については上昇傾向にあります。  また、直近の平成17年度の水準をみると「56人以上111人以下」、先ほども見ていただ きましたが、そこについては1を超えている状況にあります。しかし、その他の区分に ついては1を下回っている状況にあります。  さらに、これを詳しくみると、中小企業の中でもやや規模の大きい企業が低迷してい ることがみてとれるかと思います。一方、「334人以上」の企業については、いま0.90と、 1に迫っている状況にあります。  5頁をご覧ください。今度は企業規模別の達成企業割合になります。平成11年度から 17年度までの推移をみると、「278人以上333人以下」の区分以下のすべての区分におい て低下傾向にあります。特に、「167人以上222人以下」の区分の低下が大きい状況にあ ります。一方、「334人以上」の区分については上昇傾向にあります。  直近の平成17年度の水準をみると、企業規模が小さいほど達成企業の割合が大きいと いった状況になっています。  続いて、6頁をご覧ください。これまでもみてきた2つの指標について相関図という ことで整理しています。2つの指標の平成11年度と平成17年度の値を散布グラフにおい て相関分析をしています。グラフの見方ですが、矢印が右上を向いていると、障害者雇 用が総合的に改善されている、左下を向いていれば悪化しているといった見方ができま す。また、矢印の長さというのは方向性の強さということになります。  この分析によると、「278人以上333人以下」の区分以下のすべての区分において、総 合的に悪化しているといった状況にあります。特に、「112人以上166人以下」、「167人 以上222人以下」の区分では悪化の方向性が強いことになります。一方、「56人以上111 人以下」の区分についても悪化の方向性が強いものの、水準としては依然として2つの 指標とも高いといった状況になっています。これに対して、「334人以上」の企業につい ては、2つの指標とも、いまだ高い水準とは言えませんが、改善に向かっていて、その 方向性も強いといった状況がみてとれます。  7頁は企業規模別の障害者雇用数です。企業規模別の障害者雇用数の全体の推移をみ ると、平成11年度から15年度にかけては減少しておりますが、その後、雇用情勢が改善 する中で増加しているといった状況にあります。  その中の各企業別のシェアの推移をみると、平成11年度から15年度にかけて「334人 以上」の区分が若干上昇しています。64.4%から67%に上昇しています。一方、「223 人以上277人以下」の区分以下は減少しています。15年度以降、横ばいで推移していま す。「334人以上」の区分が3分の2、その他の区分が約3分の1といった状況になっ ています。  8頁は、さらに障害者雇用数が増加に転じた平成15年度以降の増加の要因を分析して います。下の表をご覧いただくと、3カ年において一貫して「334人以上」の区分が増 加に寄与しているといった状況がみてとれます。また、全体の伸びが7.2%と非常に高 かった平成17年度には、「334人以上」の企業の寄与率というのは87.95%と非常に大 きい状況になっています。  一方、全体としては障害者雇用数が伸びている中、平成15年度、全体の伸び率が最も 低かった年ですが、「278人以上333人以下」の区分以下はすべてマイナスの寄与度・寄 与率となっています。また、平成16年度においては「278人以上333人以下」の区分、平 成17年度においては「167人以上222人以下」の区分がマイナスの寄与度・寄与率となっ ています。  9頁、参考ということでお付けしています。左の図、平成17年度の企業規模別の企業 数をみると、「334人以上」の区分が15.9%となっています。それ以下の区分では、企 業規模が小さいほど多数になっているという状況になっています。  右の図は平成17年度の企業規模別常用雇用者数です。「334人以上」の区分が63.5%、 それ以下の区分では企業規模が小さいほど多数といった状況になっています。  10頁は企業規模別の新規雇用障害者数をお出ししています。平成11年度以降の推移を みると、全体としても、各企業規模においても概ね増加で推移しています。各企業規模 別の貢献度合をみると、「334人以上」の区分のシェアは徐々に高まっていますが、一 方で「278人以上333人以下」の区分のシェアは横ばいとなっています。これら以下の区 分については、シェアは押され気味といった状況になっています。なお、「334人以上」 の区分のシェアはほぼ7割、その他の区分はほぼ3割といった状況になっています。  先ほど7頁で見た、ここ数年の企業規模別障害者雇用数における「334人以上」の区 分の全体に占めるシェアが約3分の2であることを踏まえると、ここで見た企業規模別 の新規雇用障害者数「334人以上」の区分の貢献度合い約7割という数値は高いと評価 ができるのではないかと考えています。一方、それ以下の企業の貢献度合いは低いので はないかと考えられます。つまり、中小企業における低迷感がみてとれるのではないか と考えています。  11頁からは特例子会社の関係の資料になります。11頁は企業規模別の特例子会社の設 立数についてまとめています。推移としては、全体としては増加傾向にありますが、内 訳をご覧いただくと「1,000人以上企業」による設立が大部分を占めているといった状 況になっています。  12頁は、企業規模別の特例子会社雇用比率をまとめています。特例子会社雇用比率で すが、雇用障害者総数に占める、特例子会社において雇用されている障害者の比率とい うことであります。これを見ると、推移としては全体として上昇傾向にある。また、 「1,000人以上企業」の特例子会社雇用比率が高率で推移している状況になっています。 資料1については以上です。  資料2をご覧ください。「雇用率達成指導基準見直しによる影響」ということでお出 ししています。旧基準ですと、基準に該当する企業は1,867社となります。新基準に該 当する企業ということで、それぞれの基準ごとに何社か書いていますが、合計で5,158社 ということになります。注で書いていますが、これは平成17年6月1日現在の障害者雇 用状況が各基準に該当する企業の数であり、障害者雇入れ計画作成命令の発出企業の数 ということになるわけではありません。  資料3は、前回の研究会で障害者雇用数や重度障害者のダブルカウントをしない場合 の実人員について宿題がありましたので、ここ10年間の推移について資料をお出しして います。まず、右の「障害者計」をご覧ください。平成8年、約10年前ですが、ダブル カウントを含んだカウント、実人員とも、途中で増減はありますが、平成14年ないし平 成15年に底となっております。その後、平成16年、17年と増加し、現在は過去最高とな っています。  内訳を見ていきますと、まず身体障害者ですが、ダブルカウントを含んだカウントに よる人数、実人員とも、平成14年ないし平成15年に底となっており、その後、平成16年、 17年と増加しております。内訳を見ると、身体障害者については重度、短時間の比重が 年々高まっているという状況にあります。知的障害者ですが、ダブルカウントを含んだ カウント、実人員、また重度、重度以外、短時間重度、いずれについても増加は続いて いる状況になっています。  資料4は、「障害者雇用納付金関係収支状況の推移」ということでお出ししています。 過去10年間の推移ですが、収入額、支出額とも190億から250億の間で推移しています。 平成17年度、直近ですと、収入額は約230億円、支出額は220億円となっています。各年 度末における剰余金の累積額ですが、平成17年度は約464億円となっています。  資料5をご覧ください。前回の研究会で、ヒアリングの対象として障害者の方からも ヒアリングしてはどうかというお話もありました。第4回の中でそういった対応をさせ ていただくことと、第3回、第4回のヒアリングについてまとめた資料です。事務局か らの説明は以上です。 ○今野座長  前回、ここで質問が出されて、事務局に、これをやっておいてくださいということを お願いしたわけです。その辺についての資料の説明がありました。ご質問、ご意見があ りましたらお願いします。  資料1をざっと見ていると、この企業規模の区切り方からすると、真ん中辺がいつも パフォーマンスが悪いですね。すごく小さいほうはそうでもないし、大きいほうもいい けれども、真ん中辺でいつもパフォーマンスが悪い数字が出ています。何ででしょうか。 ○障害者雇用対策課長  分析がここまでできたという段階でお出ししていまして、いまご指摘があったパフォ ーマンスの鈍さについて、例えば企業の経営者がどういうお考えをお持ちでこういうお 答えになっているのか、その辺りは、別の調査資料も使えるものがあろうかと思ってい ます。のちほど、出来上がった段階で資料としてお出しできればと思っています。いま の段階ではその辺まで分析できておらず、大変恐縮です。 ○今野座長  ここの区切り方からすると、いちばん悪いのは112人以上から223人ぐらいのクラスで しょうか。1頁目に区切りが出ていますが、今日見たばかりなのではっきりわかりませ ん。勘です。 ○障害者雇用対策課長  今回分析した中では、特に先ほどの説明の中でも申し上げました、4頁の実雇用と法 定雇用の比率という新しい考え方で整理してみました。これが雇用の量としてどの程度、 その階層で確保されているかという指標になろうかと思います。これを見ていただくと、 左から法定雇用数が1のところ、2のところ、3のところとなってくるわけです。 3と4の辺りの、167人から277人という辺りでいちばん低い数字が出てしまっていると いう状況ではないかと思っています。  もう1つ、6頁、達成企業割合との相関でみても、左下のほうへ寄っていく傾向が強 く出ているのは、やはり同じようにその辺りではないかと考えています。 ○藤原委員  私も零細企業です。いちばん小さいほうは、家族労働の比率が大きいものですから、 何とかと思っています。100人以上となると、大企業と同じ組織でしながら大型になら ない、規模の比率の悪いということで、その辺が出ているのではないかと思います。  今回のこの資料は本当にすごい資料を出していただき、本当に喜んでいます。いまま ではアバウトな資料だったと思うのですが、こういう資料が出ると非常にいいと思いま す。できたら、毎年、こういうことを発表していただいたらありがたいと思います。 ○障害者雇用対策課長 お褒めにあずかりまして恐縮です。まだ、これでも十分ではな いかなと思っています。冒頭にご説明申し上げたように、6.1報告をベースに出した 資料です。その意味では、年末に今年の6月1日現在の数字も出てまいります。お時間 をいただいて、この研究会でもまたその後の傾向も含めて、年明けぐらいになるかと思 いますが、新しい数字を踏まえたデータを提出したいと思います。 ○藤原委員  要望ですが、折れ線グラフがカラーだったら一目瞭然なのですが、年をとるとくっつ いていたら、その差がわからないので。その頁だけで結構ですので、よろしくお願いし たいと思います。 ○障害者雇用対策課長  大変恐縮です。経費削減が先に頭にあり、カラーコピーを使わなかったものですから。 ちょっと工夫してみたいと思います。 ○今野座長  ほかにいかがでしょうか。 ○森戸委員  今日は興味深い、楽しいお話を聞けばいいかと思ったら、最後にすごい資料が出てき ました。頭がついていかないので、ご説明をもう1回していただけたらと思います。  先ほどもおっしゃいましたが、結局、今回の資料は非常に詳細で、新しいやり方にチ ャレンジしていただいて、あるいは数字に強い方が赴任されたのかどうかわかりません が。  3頁や4頁の、実雇用/法定雇用比率の辺り、結局、何がいままでわからなかったこ とがわかるのか。法定雇用数に合わせた企業規模別に見たというのはもちろんわかるの ですが、それ以外に、先ほど縦の深まりということをおっしゃったと思います。分析は これからなのでしょうが、いままで見えなかった何が出てくる可能性があるのかを、わ かりやすく教えていただけるとありがたいのですが。 ○今野座長  わかりやすくお願いします。 ○障害者雇用対策課長  私の能力の範囲でご説明したいと思います。いままで、実雇用率で規模別の評価を行 っていました。達成企業割合もお出ししていましたが、どちらかというと実雇用率でみ ていました。  2頁のグラフをご覧いただくと、例えば「56人以上111人以下」のところは、実雇用 率でみると1.68%が1.50%になり、さらに、いまの水準は1.42%まで落ちている。全 体の平均より低いし、1.8%を割り込んでいるという評価になりがちなわけです。  実は、そこを4頁の実雇用/法定雇用比率でみると、この層は総量としては1を超え ているわけです。総量としては、法定雇用という意味で果たすべき雇用の量は確保して いるということになる。そういった辺りで実雇用では見えなかった部分、どこの層で雇 用が足りていない状況になっているかが、4頁の比率を使うことによってより明確にな ったことがいちばん大きな点ではないかと思います。併せて、達成企業の割合との相関 関係でも、その辺が評価できるようになったということではないかと思っています。 ○森戸委員  法定雇用数をより基準に出した結果、そこにどのぐらい達しているか、達していない かが見えるようになったと考えればいいということですか。 ○障害者雇用対策課長  先ほどの説明にもありましたように、雇用率1.何パーセントという計算をしたときに は、結局、1.8%が雇用率だと言っているわけですが、具体的に当てはめるときには小 数点以下の数字を切り捨てて法定雇用数に当てはめていることになりますので、規模の 小さな企業ほど、言わば低い雇用率でも法定雇用率達成という場合がある。そのことが 実雇用率の平均値の評価の中では十分に出てこないというか、むしろそこの部分が評価 されずに数字で出てきてしまっていたということだろうと思います。4頁の比率では、 法定雇用数との比率で押さえているので、量として、求められている量に対してどのぐ らいまでいっているかがわかるようになったということです。 ○森戸委員  わかりました。最初の点、小さい企業ほど、実質0.9%とかでも雇用率を達成できる 場合がある、という点を逆にマイナスに取ってしまって、だから小さい企業は得をする 的な話で聞いたのですが、そうではなくて、それでも法定雇用率を基準にすれば違う修 正値が出るというのが4頁の表なのですね。 ○障害者雇用対策課長  そうです。 ○森戸委員  結果として、座長がおっしゃったように、真ん中辺の中小企業ぐらいがいちばん数字 がへこむ値が出ると、そういうことですね。もの分かりが悪くてすみません。 ○障害者雇用対策課長  ちょっと説明不足でした。もともとの法定雇用の義務の制度が1.8%を掛けたときに 出てくる、例えば100人ぐらいの層ですと1.8人になるわけですが、そのうち、0.8人を 切り捨てて1人が雇用義務という制度をとっています。その制度の前提の中で分析し ていくとこうだということです。 ○森戸委員  わかりました、ありがとうございました。 ○輪島委員  資料1の読み方は、そういうことだと思いますが、いずれにしても4頁のところで言 うと、56人以上のところはいま1を超えているけれども、それでも早晩1を割る可能性 もあるわけで、楽観できるような状況ではない。  6頁も同じで、1を超えている右上の象限にあるところ、「56〜111人」ではグッと 落ちているわけで、心配だということに変わりはない。「334人〜」のところは、左下 の象限にありますが、ここは早晩、今度は右上の象限に上がっていくことが望ましいと いうことだと思う。ということになると、基本的に障害者雇用促進のターゲットが大企 業中心から中小企業に、制度も施策もシフトしていかなければならないということが言 えるのだろうというのが資料1なのだろうと思っています。  資料2は、この間、請求をさせていただいて出していただきました。確かに、資料2 の注に書いてあるように、雇入れ計画作成命令発出の数とリンクはしていないと思いま す。そうは言いつつも、旧基準と新基準とのギャップについて、特に新基準の5,158社 の中から多くの打率で発出命令が出るのではないか。そのときに、作成命令の切符を切 るのは乱発してもかまいませんけれども、結局、それでどうなるのかというハレーショ ンのほうが大きいはずなのです。例えば東京労働局、大阪という大都市のところをどう 収束させていくのかをよく考えないと、2、3年後に、結局は労働局で発出だけはする けれども、その後どうしようもない、フォローができない状況になることを考えるべき だろうと思います。  資料3をどのように見るのか、もう少し分析する必要があるかと思います。結局、身 体障害のところがあまり数が伸びていなくて、知的のところで伸びているという、ザク ッとした理解をするのかどうかをもう少し教えていただきたい。  資料4のところですが、先ほど岡元さんに聞いて、結局は1億7,000万円と4,500万円 ですから2億。18年間で2億となっている。雇用数を見ると23人ですか。そうすると、 20数年ですけれども、1人1,000万円を納付金会計から出していることになる。そこの バランスをどのように考えるのかは課題だろうと思います。そういう意味で、支出の調 整金、報奨金、助成金として何が出ていて、1社当たりの助成金の額が1億7,000万円 だという額。1人足りないときに5万円×12カ月で60万円集めているところに、ファン ドの単価が60万円というところに1億7,000万円払っているという、そこの集め方と配り 方。今までは割と中小のところで、特に重多のところで、一生懸命やってもらうところ についてのインセンティブとしての重多事業所の助成金、というのは意味があったのか もしれませんが、そこのところの見直しということが、もう1つ必要があるのではない か。  業務費等のところで、平成17年度で55億をみています。これは、要は徴収コストだと 思うとすると、多分、研究調査費とかいろいろ項目があるので、もう少し詳細に見ない といけないと思いますが、いま納付金の集め方というのは、各都道府県にある協会に高 齢・障害者雇用支援機構が委託をして、お金を集めている制度になっているはずです。 そこの徴収コストが47都道府県で、1億円ずつで47億円なのかなと思ってしまいます。 それがどういう構造になっているのかを分析しないと、その次の、岡元さんがおっしゃ った納付金の集め方の整理、つまり301人以上から集めているもののハードルをどのよ うに変えるのかという議論にならないのだろう。消費税を上げる前にプライマリー・バ ランスを作るということを基本的にまず議論した上でないと、なかなか難しいのではな いかと思います。以上です。 ○今野座長  事務局から何かありますか。 ○障害者雇用対策課長  資料3の見方というお話がありました。私どもはまず数字をお出ししたという段階で す。我々の言い方としても、先ほどの説明にもあったかと思いますが、いまお話があっ たとおり、身体の実人員が全体としては横ばいの中で、重度障害者のほうに雇用がシフ トしている。知的障害の方についてはこの10年の間に、特に平成10年から雇用が義務化 されたというトピックがあるわけです。それを1つの契機とした部分があろうかと思い ますが、知的の方については重度、重度以外、あるいは短時間も含めて、どの部分でも 雇用が大きく伸びている、そういった見方をさせていただいているところです。  この場では、中小企業での雇用促進をご検討いただくことにしているわけですが、い ま申し上げたような障害種別、あるいは程度で見た傾向が、企業の規模の大小とどう関 係しているのかという点については、私どもも少しデータを整理してお出しできればと 思っています。  助成金の関係ですが、先ほど重多助成金、いわゆる重度多数雇用事業所の助成金のお 話が出ました。今日お見えいただいた、きものブレインさんについては、重多事業所に 該当するということで、かなり大型、多額の助成金を一度にお出しする制度を使ってい ただいて、工場の整備なども図っていただいた状況があります。これはどちらかといえ ば、重度の方を中心に多数の雇用を実現していただくよう、モデル的なケースを作ると いう含みもあって、この助成金の制度があるわけです。今回、中小企業での雇用の広が りを考えたときに、いま輪島委員からご指摘があったように、こういった制度に頼って 特定の事業所に大きく助成金が出る、重点を置くことが、果たしてこれからの支援の中 で適当かどうかは、確かに議論があるところかと思います。また、この場でも、そうい った点を含めてご議論をいただければと思います。  納付金収支の中で、特に業務費についてのご指摘がありました。これは輪島委員から ご指摘があったとおり、業務費等のところには、納付金制度を管理している費用のほか に、啓発の事業、調査の事業、あるいは講習の事業といった、納付金制度の中で行って いる事業に要する費用も含まれているところです。例えば、平成17年度の55億円の全体 が管理的な費用だということではないということです。その点については、議論の中で より細かな資料が必要だということであれば、また提出させていただきたいと思います。 ○佐藤委員  1点だけ発言します。資料1の10頁なのですが、○が2つあり、下のほうになります。 「企業規模別新規雇用障害者数」のいちばん下のところに、「中小企業における低迷感 がみてとれる」とあります。グラフを拝見して、全体に占める割合が横ばい、ないし下 がっているということで、それはもちろん事実だと思います。ただ、絶対数は伸び方は 少ないかもしれませんが増えているので、ここまで言うのはどうなのか。「低迷感がみ てとれる」とまで書かなくてもいいのではないかと思いますので、意見です。 ○倉知委員  資料4なのですが、調整金の支払い支出額と報奨金の支出額が同じぐらいであること にすごく驚きました。もし、300人以下の企業からも納付金を取るとしたら、報奨金が 調整金に切り替わりますよね。そうすると、かなり支出が増えるのかなと思いました。 4%又は6人のいずれか多い数を超えている事業主に報奨金を支払っていますよね。し かも、調整金を安い額で払っている。今度1.8%を超えているところに調整金として支 払っていたら、結構額が伸びるのかなと思って。どれぐらい納付金が悪化していくのか 知りたいと思いました。以上です。 ○今野座長  何かございますか。まだ制度もないから、シミュレーションもできないと思いますが。 ○障害者雇用対策課長  いま倉知委員からご指摘があった点は、仮に調整金の範囲を300人以下のところまで広 げていくとすると、いまの報奨金より確かに要件は緩和されますし、額も増えるという ことになりますので、相当程度の増額ということになるだろうと思います。  そこはいま座長からもお話がありましたように、どういう制度にしていくのかという こととかかわる点でもあります。私どもはある意味、そういったシミュレーションをま だしていないので、こちらでのご議論を踏まえながら、ここについても必要であればそ ういった推計をしてみたいと思っています。 ○今野座長  まだご質問があるかもしれませんが、予定の時間を過ぎました。この辺で終了したい と思います。次回も引き続き、関係者からのヒアリングを行いたいと思っています。最 後に日程等について、事務局からお話ください。 ○障害者雇用対策課課長補佐  次回は10月13日(金)、10時から12時ということで開催します。場所は厚生労働省5 階、共用第7会議室になります。以上です。 ○今野座長  最後に本日の議事ですが、議事録を公開しても差し支えないと考えています。同意を 得たいのですが、ただ、今日お話しになった中で個人名がだいぶ出ているので。 ○障害者雇用対策課長  お見えいただいている吉見社長に確認をした上で、個人名についてどう表現するか、 あるいは議事要旨でいくのか、その辺り、座長ともご相談させていただきたいと思いま す。 ○今野座長  内容上、個人名さえ伏せれば大丈夫だと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○今野座長  ご承認いただいたことにさせていただきます。それでは終わります。ありがとうござ いました。 【問い合わせ先】  厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部  障害者雇用対策課 雇用促進係  〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  TEL  03(5253)1111(内線5855) FAX  03(3502)5394