06/09/14 厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会 第7回議事録  第6回科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」  第7回厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」                  議 事 録   日時:平成18年9月14日(木)16:00〜18:00   場所:学術総合センター特別会議室101、102 1.開会 ○笹月主査(座長)  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回の生殖補助医療研究専門委員 会と第7回ヒト胚研究に関する専門委員会を開催いたします。  審議に先立ちまして、事務局に異動がありましたので、ご紹介をお願いいたします。 ○長野安全対策官  文部科学省のほうでは、まず局長が前の清水局長から異動になりまして、コ永局長に なっております。本日遅れて参る予定になっております。  それから、私、安全対策官を務めております長野でございます。どうぞよろしくお願 いいたします。 ○笹月主査  よろしくお願いいたします。 ○齋藤補佐  厚生労働省側に関しましては、9月1日付で雇用均等・児童家庭局長が、大谷泰夫局 長になりました。また、審議官が、雇用均等・児童家庭担当、村木厚子審議官になりま した。所用で遅れて参りますが、後ほど局長も審議官もご一緒させていただきます。  それから、母子保健課長が異動になりました。 ○千村母子保健課長  9月1日付で母子保健課長を拝命いたしました千村でございます。よろしくお願いい たします。 ○笹月主査  どうぞよろしくお願いします。 ○齋藤補佐  それから、もう1名、事務局のほうにこれからご参加いただくということで、国立生 育医療センター研究所生殖医療研究部部長の梅澤先生に事務局に加わっていただきまし た。 ○梅澤補佐  国立生育医療センターの梅澤明弘でございます。委員の先生方にはいろいろな形で接 点がございますけれども、事務局としてお手伝いできればと考えております。よろしく どうぞお願いいたします。 ○笹月主査  どうぞよろしくお願いします。  それでは、事務局から資料の確認などをよろしくお願いいたします。 ○根本補佐  先生方のお手元に生殖補助医療研究専門委員会(第6回)とヒト胚研究に関する専門 委員会(第7回)の議事次第の1枚物がございます。その4ポツの下部のほうでござい ますが、今回の配付資料の一覧がございます。  まず資料1でございますが、第4回、第5回の委員会の委員のご意見の整理というも のでございます。資料2でございますが、ガイドラインの範囲についての整理というと が1枚物でございます。資料3につきましては、1から4までございますが、3−1が、 検討のためのたたき台(総論的事項)でございます。3−2が、検討のためのたたき台 (ヒト受精胚の作成・利用における研究の目的について)というものでございます。3 −3が、同じ検討のためのたたき台でございますが、ヒト受精胚の作成・利用における 禁止事項についてというものでございます。3−4でございますが、同じく、ヒト受精 胚の作成・利用のための配偶子・ヒト受精胚の入手方法についてというものでございま す。参考でございますが、参考1、2は、それぞれ前回、前々回の議事録でございます。 参考3で、検討事項のたたき台ということで、最初のころの会議でお配りさせていただ きました資料をおつけしてございます。  以上でございます。 ○笹月主査  どうもありがとうございました。 (1)ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討に ついて  (1) 規制対象として検討する範囲 ○笹月主査  それでは早速審議に入りたいと思いますが、前回までにこの委員会が検討すべき内容、 範囲ということをかなり時間をかけて議論いたしました。今回、これまでの議論を集約 してまとめまして、今後どのように議論を進めていくかということにつきまして、改め て考え方を整理いたしましたので、事務局よりご説明お願いいたします。 ○千村母子保健課長  それでは、今ほどご指摘の点につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。 お手元の資料1、第4回、第5回の議事録の抜粋でございます。それから、資料2、A 4横の丸が2つ書いてあるポンチ絵の資料でございます。この2つの資料を用いまして ご説明を申し上げたいと思います。  まず資料1の関係でございますが、第4回、第5回ヒト胚委員会におきます委員の先 生方からのさまざまなご意見の概要についてでございます。  簡単に私のほうから整理をさせていただきますと、まず第4回の委員会におきまして は、この委員会のミッションに関しましていろいろご意見をいただいているところでご ざいます。総合科学技術会議の報告書の中で求められていること、これはヒト受精胚の 生殖補助医療研究におきます作用・作成・利用についてのガイドラインを整備すること ということでございます。ということでありますが、この総合科学技術会議で求められ ておりますミッションに限定して検討を行うべきというご意見、また、それだけでは不 十分であり、研究全体の将来に資する部分が少ないというお考え、ご意見がございまし た。また、ガイドラインの対象とする生殖補助医療研究とはどこまでか、胚を胎内に戻 すことも研究として考えられるのか否かということに関しまして、幾つかのご意見をい ただいていたという状況でございます。  第5回目の委員会でございますが、胚の胎内への移植を伴うものについてのご意見と いうことで、大部分の委員からは、このガイドラインにおいては胚の胎内への移植の議 論は含めなくてもよいのではないかというような考え方をお示しいただいているところ でありますが、委員の中で含めるべきとお考えの方もいらしたようでございます。この 胚の胎内への移植を伴うもの、この扱いに関しましては、こういった委員の先生方の解 釈の違いということで、議論はこの後ということになったという状況でございます。  そこで、これを受けまして、議論を少し整理をさせていただいたものが資料2でござ います。「ガイドラインの範囲についての整理」というタイトルの横長の資料でござい ます。改めまして整理しますと、総合科学技術会議から課題として与えられたものにつ きましては、ヒト受精胚の生殖補助医療研究における作成・利用についてのガイドライ ンを整備するということでありまして、まずはその解決、これがこの委員会の最大の検 討事項、優先的に検討すべき事項というふうに考えられると思っております。この総合 科学技術会議からの課題及びガイドラインの範囲につきましては、先ほど申し上げまし たように、前回、前々回に委員の皆様から幾つかのお考え、解釈についてお示しいただ いておりますことから、この場におきましてガイドラインの対象とする範囲について改 めまして整理をさせていただきたいと思っております。  この資料にもございますように、ガイドラインの対象とする範囲、これにつきまして は、生殖補助医療研究に限定するということにいたしまして、生殖補助医療については 含めないということをまず再確認させていただきたいと思っております。胚の胎内への 移植を行わないものを研究といたしまして、今回のガイドラインの範囲とするという考 え方、これは考え方でございまして、一方で胚の胎内への移植を行うもの、これは医療 ということで、今回のガイドラインの範囲には含めないという整理をまずさせていただ きたいと思っております。  なお、私、この医療というふうに申し上げました部分につきましては、今後、厚生労 働省におきまして、その規制のあり方、その他さまざまな点について、必要に応じまし て検討を行っていくこととさせていただきたいと思っているところでございます。こう いったような整理をさせていただきたいと思っております。 ○笹月主査  どうもありがとうございました。  これまでいろんなことを議論してまいりましたが、最終的には総合科学技術会議の言 葉にありますように、ヒト胚というのは生命の萌芽であって、人間としての尊厳をもっ て扱われるべきである。で、ヒト胚を用いた研究はもちろん認めない。ただし、例外と して、生殖補助医療に資する研究というものについてはそれを認める。ところが、研究 に用いた胚は決して胎内に戻してはいけないということになるわけです。ですから、対 象が研究であるというからには、もはや胎内には戻さないということですので、ここで は、言葉がだぶりますけれども、胎内には戻さない研究についてのガイドラインをつく りましょう、あるいは、ヒト胚を用いた研究についてのガイドラインをつくりましょう と。で、研究と言ったからには、胎内には戻さないということです。そうすると、今度 は、胎内に戻すものは、もはや研究ではありません。これまでも既に行われている医療 行為でありますので、このガイドラインの範囲外のことでありますということになりま す。  そうすると、胎内へ戻す、いわゆる生殖補助医療として行われる胚の作成、それから、 そのための精子、卵子の入手、取扱いということは、もちろんこのガイドラインの範囲 外ということになります。しかしながら、ヒトの生殖補助医療という、目的は医療行為 として取られた精子なり卵子、あるいは、それを用いて作成されたヒト胚というものが、 ほんとうに生殖補助医療だけで終わればいいんですけれども、余剰胚をどうするのか。 また、そこにはそこでいろんな問題が出てくると思います。ですけれども、それは今回、 この胎内に戻さないというガイドラインを作成し、それが終了したところで、そのよう な問題をどのようにするのか、どういうガイドラインに委ねるのか、あるいは、既に存 在する臨床研究に関するガイドラインというものがありますが、そのレベルで処理でき るものなのか、それはそのときにまた議論するということで、この研究を対象としたガ イドラインをつくります。それ以外のことに関しては、それができたときにもう一度議 論いたしましょうということで整理させていただいて、これまで総論的なことをいろい ろ、基礎研究、臨床研究、あるいは診療との、臨床との境はどこかとか、いろいろ議論 してまいりましたけれども、今回は明確に胚を用いた研究、すなわち、それは決して胎 内に戻さない、それに対するガイドラインをつくりましょうということで、現実的な各 論に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  そういうくくりに関しまして、まず委員の先生方のご意見、コメントをお伺いできれ ばと思います。どなたかございませんか。町野先生、何かご意見ございますか。 ○町野委員  結構です。 ○笹月主査  それでは、そういうくくりで、この絵にあります研究というところを対象としたガイ ドラインでいきましょうということで、よろしくお願いいたします。  (2) ヒト受精胚の作成・利用における研究の目的について ○笹月主査  それでは、次の議題といたしまして、事務局が検討のためにたたき台を用意していた だいておりますので、具体的な検討に関しまして、事務局からご説明をお願いいたしま す。 ○長野安全対策官  それでは、資料3−1に基づきましてご説明申し上げます。  まず資料3−1、検討のためのたたき台(総論的事項)でございますが、これにつき ましては、以前の委員会のほうで事務局から出しております検討事項たたき台というこ とで、今回は参考3でお配りしておりますけれども、その全体の中での1番目、総論的 事項というところに入っております。それでは、資料3−1でご説明申し上げます。  まず1番目としまして、これは大もとのところなんですけれども、何を規定すること となるかということで、その整理としては、まず1つ目としては、研究実施に当たって 研究機関及び研究者が遵守すべき事項ということになるかと思います。もう1つが、研 究実施のための手続きということになるかと思います。  この研究実施のための手続きというところにかかるわけですけれども、2番目としま して、国の関与のあり方について、どのように考えるかということでございますが、そ の国の関与のあり方として、1つ目の選択としては、研究実施のための手続きに、国が 何らかの形で関わることとするのかということ、そして、その関わる場合は、どのよう な関与のあり方が適当かということで、その場合の考え方としまして、国が機関内審査 を終えた上で審査を実施する場合、または、第三者の審査機関を別に設置する場合、も う1つのやり方としては、例えば、厚生労働大臣等が意見を述べるといった形でやる場 合と、そういった場合が考えられます。また、そうではなく、研究実施のための手続き に、国が関わらないこととするといった選択肢もございます。  この資料の2枚目にございますけれども、別添でございまして、以前の委員会のほう で事務局から一度現状の各指針での国の関与のあり方ということで、現状をご説明した ときに使用した紙でございますが、このように各指針によって国の関与のあり方という のはそれぞれ違いまして、例えば、国の審査を要するものという整理の中では、ヒトE S細胞の樹立及び使用に関する指針、それから、遺伝子治療臨床指針がございます。そ れから、ここにはございませんが、新しいものとして、ヒト幹細胞を用いる臨床研究指 針、これは厚生労働省さんのほうの所管でございますが、そういったものがございます。  それから、国の関与が直接には手続きの中に入らないものとして、機関内における審 査のみを要するものとして、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する指針、それから、疫 学研究、臨床研究に関する倫理指針、こういったものがございます。これは参考でつけ させていただいております。  それから、全くの参考でございますが、その他の例として、指針以外の形で行われて いるものとして、ヒトクローンの技術規制に関する法律、それから、今回の生殖補助医 療研究に関わりますけれども、産婦人科学会での会告として、登録の手続きがされてい る例といったものがございます。これは全くの参考でございます。  以上でございます。 ○笹月主査  どうもありがとうございました。  まず総論的に国がどのように関与するかということがひとつ大きなテーマになります けれども、これは総論を十分議論して、例えば卵の入手方法、あるいは胚の作成、保存、 そういうことがきっちり議論された後に、最後にこの国の寄与、どのように関わるかと いうことは議論したいと思いますので、そのことを念頭に置いて各論に進みたいと思い ます。  それでは、続きまして、ヒト受精胚の作成・利用における研究の目的ということにつ いて議論を進めたいと思います。配偶子のみを取り扱うというのはまたちょっと後にし まして、胚の作成・利用ということに着目して議論を進めたいと思いますので、これに つきましても、事務局から資料についてご説明をお願いいたします。 ○長野安全対策官  それでは、資料3−2に基づきまして、ご説明申し上げます。  ここの分につきましては、先ほどの少し参照いたしました参考3、以前にお出ししま したたたき台の中での、3ページにあります各論的に検討が必要な事項といったところ にまとめられてございます。その部分の、実際にヒト受精胚を作成・利用する部分につ いてのものでございます。  まず論点としまして、1つ目が、認められる研究の範囲でございますが、範囲を考え るに当たって、本指針の対象とする生殖補助医療研究の定義についてでございますが、 その定義を考える場合、どのような定義が考えられるかということで、例えばとしまし て、「作成・利用した胚を胎内に戻さないことを前提として行われる生殖補助医療技術 の向上に資する研究」といった例示で今お示ししておりますが、こういったこととする のはどうか、または、それ以外の表現の仕方があるか。この場合、「生殖補助医療技術 の向上に資する」とは具体的にどのようなものかといったことについてご議論いただき たいと思います。  それから、実際のその研究の範囲についてでございますが、研究の範囲について具体 的に示す必要があるかどうかということでございますけれども、実際の指針を今後ご検 討いただいて、そのでき上がった指針を運用していくことを考えますと、私どもとしま しては、やはりグレーゾーンというものを可能な限りなくせればというふうに思います ので、可能な限り具体的に何かの形で示していただく必要があるのではないかとは思っ てございます。  具体的に示すとする場合、例えばとしまして、厚生労働科学特別研究事業「ヒト胚の 研究体制に関する研究」でひとつ研究がされておりますものとして、受精メカニズムに 関する研究、胚発生・胚発育に関する研究、着床のメカニズムに関する研究、遺伝子異 常発生機序解明に関する研究、胚の保存に関する研究といった形で挙げられております が、例えばこういった形ではどうか。その場合、過不足はないかということでございま す。ここでの整理でございますが、ほかに考えられるのが、例えば、受精効率を上げる 研究というのもあるかと思いますが、こういったものはここでは受精メカニズムに関す る研究の中で読めるのかということで頭の整理をしておりますが、もしそれに入らない のであれば、別途考える必要があると思っておりますし、また、着床のメカニズムに関 する研究につきましては、ここで検討する内容としては胎内に戻さない研究ということ でございますので、大方のものは含まれないということになりますけれども、もしも胎 外ででき得る研究があるのであれば、ここの部分に入ってくるということと、それから、 さらには着床効率を上げる研究というものがもしできるのであれば、そういったものも 含まれ得るのではないかといったことで具体的な案でございます。  その際に、例えば、具体的な研究テーマでございますけれども、別紙、3枚目にござ いますが、例えばの例示でございまして、今挙げました5項目につきましてそれぞれ、 例えばこういった研究が考えられるのではないかといったことで例示を出させていただ いております。これは厚生労働省さんのほうで中心になってまとめていただいておりま すが、これにつきましても、専門の各委員の方からもご検討、ご意見いただければと思 っております。  それから、ここまでが具体的にまず示す場合といったときの挙げたものなんですけれ ども、それを考える際に、それではそのボーダーライン的なところ、研究の範囲に入る のか入らないのかといったボーダーライン的なところをどう考えるかということになっ てございますが、次のポツになりまして、ヒトの発生に関する基礎的な研究というのは、 すべて生殖補助医療技術の向上に資すると考えていいのかどうかということでございま して、ここのあたりは何らかの線引きをする必要があるのかどうかということでござい ますが、例えば、生物学的な発生の比較、例えば、マウスとヒトでの発生の比較を行う ような研究というのはどうなるのかといったことをここで例示を出してみてございま す。  それから、もう1つ、これもボーダーライン的なところでございますが、生殖補助医 療において、検査目的で胚を作成する場合がもしあるとするならば、それについても、 このガイドラインの対象とするのかどうかということで、例えば、受精能力の検査目的 で第三者間で胚を作成するといったことが、こういうものは実態としては考えられない といった話もお聞きしたりもしますが、もしそういうことが考えられるのであれば、そ して、かつ、新奇性のある技術向上のための研究というものがあるのであれば、そうい ったことはこの中で検討の対象とするのか、または、しないのかといったことをご議論 いただければと思います。  とりあえず以上でございます。 ○笹月主査  どうもありがとうございます。  研究の範囲、これはまた非常に難しい問題でありますが、まず最初に、この認められ る研究の範囲を、総論的には、ここに例示されておりますように、「生殖補助医療技術 の向上に資する研究」というふうなくくりで述べる。それだけでは一体どういうことか よくわからないので、次に、その生殖補助医療技術の向上に資する研究とは一体どのよ うなものかということで、次のところにここでは5のような形が出てくるであろうと。 そして、そのまた範囲について詳細なところが別紙というところに書かれているわけで す。ですから、こういう詳細なところを述べる必要があるのか、最初の大まかなくくり だけでいいのか、そこがまず問題になろうかと思いますが、いずれにしましても、まず 大枠をくくることは必要ですので、資料3−2の論点の(1)認められる研究の範囲と いうことで、(1)に示されるような「生殖補助医療技術の向上に資する研究」という、も ちろんその前には「作成・利用した胚を胎内に戻さないことを前提として行われる」と いう前振りが必要かもしれませんが、こういうくくりでくくり方としてはよろしいかど うかということをまずご意見を伺えればと思います。 ○中辻委員  幾つか整理するとすると、「生殖補助医療技術の向上に資する」というのは、当然、 特別に認める研究としてのことが生殖補助医療技術の向上で、そうなんですが、それが どこまで含むかというところはいろんな範囲があり得るわけです。例えば、胚発生の基 礎的な研究というのもおそらく含まれることになるんだろうと思いますけれども、それ もやはり将来的には――直接は補助医療ではないんだけど――資する基盤的な知識を持 っている。  そのことを指摘したいのと、5つの丸に書いてあることに関して、1つは、その後で 別枠で、「ヒトの発生に関する基礎的な研究」と書いてあるんですが、ただ、上の丸に 「胚発生・胚発育に関する研究」と書いてあって、これが、例えば、14日目の原始線 条があらわれるまでの胚発生のことを指しているとすれば、ヒトの発生に関する基礎的 な研究というのは、これと同じことを意味するのではないかという気がするということ です。  それと、「遺伝子異常発生機序」というのは、少し意味がよくわからないところがあ って、遺伝子に異常が起きることなのか、遺伝子発現の異常が起きるのかというふうな ことで、遺伝子の異常だとすると、何かミューテーションが起きるとか、そういうこと になると思うので、そこはいずれ意図するべきこととして表現は明確にすべきだと思い ます。 ○笹月主査  ちょっと各論に入りますけれども、まず私がお伺いしたかったのは、そのくくり方が、 当然と言えば当然なんですが、この生殖補助医療技術の向上に資すると認められる研究 の範囲ということを大枠で言ったときに、この(1)のような文言でよろしいかということ をまずお伺いしたかった。それはもう認める研究が、そういうことで、例外的に認めま すよという総括したような文言があるので、当然と言えば当然ですが、そこでもう一度、 こういう文章でくくっておくのかどうかということです。 ○中辻委員  それが何を意味するかということによって、実際の範囲が変わってくるということを 申し上げたわけですね。 ○笹月主査  その各論について議論ではなくて。だから、今の最初の前文のくくりはこれでよろし いかということをまず決めていただきたいんです。 ○中辻委員  ただ、この言葉によって意味することが、ほんとうに生殖補助医療というのを進歩さ せるところに限定することにも読めるし、それ以外を含む意味にも読めるわけですね。 ○笹月主査  だから、先生が言われるものもわかりますから、まずここのくくり方がこれでいいか、 あるいは、ほかの文言でいきますかということをまず確認を取りたいと思っております が。 ○加藤委員  いいんじゃないですか、これで。 ○笹月主査  よろしいですか、これで。そうすると、これでくくっておいて…… ○加藤委員  むしろ、その後で何をルールアウトしなければならないかということを明確にして、 その時点でこの文言をもう一遍チェックしてみる必要はあるでしょうけれども、当面、 スタート時点はこれでいいんだと思います。 ○笹月主査  わかりました。そうしますと、次に、これでくくっておいて、例示を…… ○高木委員  すみません。技術という言葉をここに入れていないといけないんでしょう。「生殖補 助医療の向上に資する研究」ではどうでしょう。技術というと、すごく限定されるよう な気がするので。 ○笹月主査  私もちょっとそういう気はしたんですが、その点も含めていかがですか。技術……「生 殖補助医療の向上に資する研究」と。よろしいですか。 ○加藤委員  いや、「医療技術の向上」というほうが、言葉のバランスとしていいんじゃないです か、「医療の向上」というより。 ○高木委員  技術というと、すごく限定…… ○加藤委員  医療を向上させるとか、医療が向上するとかってあんまり言わないから。 ○中辻委員  医療の向上ですと、医療制度の整備で財政的なものをするというのも医療の向上にあ たるのではないかと思います。 ○石原委員  ただ、アシステッド・リプロダクティブ・テクノロジーの翻訳としてどの言葉が使わ れてきたかという歴史的なことによるのではないかと思います。それで生殖補助医療と いう、技術が抜けているわけですね、ARTの翻訳は。多分それからきているのではな いかと思うんですが、違いますか、吉村先生。 ○吉村委員  これはもう5年ぐらい前の話なんですけど、厚生省で会議をしたときに、ARTをど う訳そうかといったときに、生殖補助医療と訳そうということになったんです。日本語 の訳はまだ決定してはいないんですけど、厚生省主導で生殖補助医療がART、アシス テッド・リプロダクティブ・テクノロジーということになった。私もどちらでもいいと 思いますけど。 ○笹月主査  生殖補助医療の。例えば、中辻先生がおっしゃった、いわゆるインフラの整備とか、 そういうことでも医療は向上しますよというんだけれども、しかし、ここではもう卵子、 精子、それから受精胚ということが対象ですので、一応生殖補助医療の向上ということ にしておいて、これもまた最後に文章化するときにもう一回、何か不都合があれば議論 するということにいたしましょう。  では、そういうことにさせていただきまして、だから、最初の「作成・利用した胚を 胎内に戻さないことを前提として行われる生殖補助医療の向上に資する研究」というこ とにして、そして、その中身について、これでは範囲がわからないので、少し範囲を示 す必要があろうと。それはそれでよろしいですか。  で、その中身については、ここでは5つのことが書かれており、その5つについて、 また別紙のところで少し詳しく出てくるということでありますが、まず5つの項目―― 何も5つに限ることはありませんが、どういうふうにここを規定するかというところで、 もしこのほかにこういうことを加えるということがあれば、まずお聞かせいただけます か。 ○加藤委員  この別紙に書いてあるのは詳しすぎるんじゃないですか。 ○笹月主査  ですから、まずこの5つのところを、この項目をこれ以上まだ何かあるかというとこ ろをまずここで。 ○加藤委員  これ以上は詳しくしないで、この5つの項目の、そのカテゴリーの枠の中で変更する 必要があれば変更するという…… ○笹月主査  そこを今伺っているわけで、この丸の5つのほかにもっと加えるものがあるかどうか、 あるいは、これは削除すべきかという、この5つの項目についてご意見を伺っているん ですが。 ○鈴木委員  私は、最初、この5つの項目を読んだときに、今話題になっている、病気のときに、 例えば、卵巣なり卵巣切片を保存しておくという話はどこに入るのだろうかなと思って 読んでいましたら、5番目の胚の保存に関する研究に入るんですね。というふうに分け られているのですね。 ○吉村委員  私がヒト胚の研究のときにやった項目が選ばれているんですが、今ご指摘のように、 これには「配偶子・胚」になっているので、そういったときは入れていただくとわかり やすいかなと思いますが。 ○笹月主査  はい。 ○鈴木委員  そうですね。ですので、だから、多分、一番最初の定義の話も、「作成・利用した胚 を胎内に戻さないことを前提として」といったときに、その前にさかのぼっていくと、 じゃあ、切片の凍結の研究というのはどのカテゴリーに入るのかなって、逆にわからな くなってきたというのがありますので、ちょっとこのあたりを明確にしながら、少しお 話ししていただければなというふうに思いました。 ○笹月主査  今、吉村先生からご指摘がありましたように、この具体的な例というのは、吉村先生 が班長をなさった厚労科研費特別研究事業の中で示されたものでありまして、その中で は「配偶子・胚の保存に関する研究」ということで、今おっしゃったことはそれで解決 できると思いますので、そのようにお願いしたいということ。  それから、その前に遺伝子異常云々というのについて、中辻先生から先ほどちょっと 疑問が出されました。 ○中辻委員  この遺伝子を削除すればいいんじゃないかという気がします。その遺伝子というのを 削除して、異常発生機序解明ということにすると、つまり、正常の発生の仕組みを調べ る以外に異常発生の機序ということで、より広くなりますので。 ○笹月主査  その発生というのは。 ○中辻委員  異常が起きる機序。 ○笹月主査  何に異常が起きるという…… ○中辻委員  それは胚。 ○笹月主査  胚の発生について。 ○中辻委員  胚に異常ですので、遺伝子も異常かもしれないし、違うことの異常かもしれないけど、 それを含めて、異常が起きることの機序。異常発生でいいと思うんですが、発生が胚発 生と混乱するのであれば、何か別の言葉を。 ○笹月主査  そうすると、遺伝子のかわりに胚という言葉でいいですか。胚の異常発生ではちょっ とおかしいな。 ○中辻委員  これ全体がヒト胚ということを前提としていれば、異常発生でもいいのかなという気 がしますが。 ○吉村委員  遺伝的異常の発生機序というふうにしたらいかがですか。 ○笹月主査  遺伝的異常。 ○吉村委員  だから、染色体異常、遺伝子発現、その他というような意味で遺伝的異常というふう に私たちはしたんですけれども。中辻先生のおっしゃることのほうが、私は当たってい るような感じがします。例えば、形態学的な異常も多分おっしゃっているところですか ら。 ○笹月主査  胚に異常が発生する、何と言ったらいいですかね。 ○石原委員  胚の発生異常ですか。 ○笹月主査  胚の発生異常。 ○安達委員  そうしますと、2番目にある「胚発生・胚発育に関する研究」と大分オーバーラップ すると思うんですが。 ○石原委員  かぶりますね。 ○笹月主査  だから、この異常はもうなくてもいいんですか、そうすると。「胚の発生・胚の発育 に関する研究」というのは、そこはもう正常も異常も含めた意味での…… ○中辻委員  そうですね。ただ、後のほうに内分泌攪乱物質とか、環境ストレスとかという例文が 書いてあるので、何か想定されるいろんな影響で異常が起きる部分を研究するというの は、胚発生の研究には普通は含まれないですね。 ○笹月主査  胚の発育……胚の発生・胚の、もう2番でいいんじゃないんですか。この中には正常 も異常も含まれるということで。よそから加えた影響も、それはあるかもしれません。 放射線の影響もある程度、低線量の放射線の影響というのもあるかもしれませんが、そ ういうことも含めた意味で、胚の発生・胚の発育に関する研究と、これが…… ○中辻委員  遺伝子異常も含めてということになりますか。 ○笹月主査  そう、胚の発生ですから、それはすべてが入るでしょう。ですから、この遺伝子異常 云々という、この項目を除いて、今のところ4つとなりましたが、そのほか何か加える べきことがあれば。 ○後藤委員  5番目に胚・配偶子の保存と書いてありますが、配偶子の発育・発生というのがちょ っとないのではないかなというふうに思いますが。胚発生・胚発育はありますが、配偶 子の発生・発育…… ○石原委員  配偶子形成異常ですか。 ○後藤委員  そうですね。 ○笹月主査  配偶子の発生に関する研究と。 ○長野安全対策官  ここでの研究の範囲を考えるにあたって、事務局の整理としましては、もともと配偶 子のみを使った研究というのは対象にしないというふうに考えていまして、ただ、その ときに、おっしゃるような、未成熟なものを成熟化させる、配偶子を成熟化させるとい った研究の一連の流れの中で受精のところまでいくというような、胚作成のところまで いくという研究がもしあるのであれば、もちろんそれは項目を入れる形になると思いま す。整理としましては、胚の作成・利用が含まれる研究の課題として今挙げようとして おります。 ○笹月主査  正常な胚をつくるためには、正常な配偶子の発生ということが必要ですので、これは やっぱり今のところに、おっしゃるように、配偶子の発生に関する研究というのを……。 どうぞ。 ○町野委員  今、事務局の方が言われましたとおり、一番最初のスタートは、個体産出を目的とし ないで、受精胚をつくって、それを死滅する研究の問題です。これに全然何の規制もか けなくていいのかというところから話が始まっております。したがいまして、配偶子だ けを保護するというような考え方は、やっぱりとるべきではないように思いますけれど も。 ○笹月主査  しかし、配偶子を対象としたことも規制するわけですよね。 ○町野委員  いいえ。 ○笹月主査  いやいや、だって配偶子の…… ○町野委員  そこまでは、少なくとも内閣府の場合の報告書の中にはないわけですよね。 ○笹月主査  そうしますと、配偶子の入手方法なんていうようなのは範囲外だとおっしゃっている わけですか。 ○町野委員  はい。受精胚をつくらない以上、範囲外です。  一番最初のところで定義で確認された、「作成・利用した胚を胎内に戻さないことを 前提として行われる」ということの意味は、結局、胎内に戻して個体を発生させること を目的としない、つまり、生殖医療、生殖補助医療の目的でなく、受精胚を研究して、 結局、それを死滅させる、生命を死滅させる研究が問題なのです。つまり、研究目的で 生命を誕生させて、それを死滅させる行為を規制しなければいけない。それは一番最初 のところなんですね。それがいつ許されるかというのは、先ほど加藤委員が言われまし たが、ルールアウトの問題で、これは全然別の問題なんですよ。それを一緒に議論して いるからこういうことになっちゃうということだろうと思います。 ○中辻委員  関連ですけど、私も賛成で、つまり、生命の萌芽をわざわざつくって滅失させる研究 というものはおいそれとはしてはいけないから規制をする。おそらくそれは簡単な規制 ではないということが予想されるわけですね。そうすると、それのもとだから、配偶子 の発生も同じように規制するということになってしまうと思うんです。ですから、配偶 子は配偶子として、その生体由来材料を使った研究の一部程度でいいという考えもあり 得るわけですね。ですから、町野先生がおっしゃったように、やはり新しい受精胚をつ くってまでやる研究に関しては、ここでちゃんと分けましょうということだから、それ に関連するものを全部放り込んでしまうと、どれぐらい規制するかということが、いろ んな場合を想定しなければいけなくなってしまいます。 ○笹月主査  どうぞ。 ○町野委員  簡単に言いますと、生殖医療、あるいは生殖補助医療全般をまず考えに入れて、そこ から胎内に戻さないものだけを除くという発想でやっているとこういうことになっちゃ うわけですね。やっぱり最初のスタートが問題だったんだろうと思います。今のような お考えですと、今のように、つまり、生殖補助医療研究が一般的に問題なんだ。そして、 ただ胎内に戻すほうについては、これは生殖医療そのものなんだから、これは除こうと いうことでスタート、そういうお考えの方はかなりおいでだろうと思いますけれども、 それはそうではないということなんです。 ○笹月主査  では、どういうことなんですか。 ○町野委員  先ほど申しましたとおり、とにかくヒト受精胚をつくって研究する。そして、研究し た結果、その受精胚は滅失される。そういう前提で、つまり、死滅することを目的とし て受精胚をつくるわけですね、研究目的で。それを規制しなければいけないというとこ ろからスタートしているわけですから。 ○笹月主査  そうすると、生殖補助医療というところが吹っ飛んでしまっていますよね、それです と、先生のお話ですと。 ○町野委員  はい。このようなヒト受精胚研究は認めないのが原則であるが、生殖補助医療研究の ためにそれを使うことが許される場合があるだろうという議論の段階で、それがでてき ます。それが、第2の問題はルールアウトの問題なんです、先ほど加藤先生が言われま したけど。一番最初から生殖補助医療ありきで始まった問題ではないです。これは何と 連動しているかと言いますと、クローン研究の問題と連動しているわけです。クローン のときも、ヒトの胚をつくって――「受精胚」ではないですが――、それを再生医療の 目的で研究するということです。ですから、それが許されるということだとするならば、 受精胚をわざわざ研究目的でつくることもやっぱり許されるという前提でなければいけ ないだろうということになります。生命倫理専門調査会の報告書は、その論理で書かれ ています。ですから、この委員会のスタートが問題だったのです。生殖補助医療研究一 般について、ここで問題にするんだということではないということなんです。 ○加藤委員  町野先生、発言の趣旨がよくわからないんだけど。 ○町野委員  すみません、先生には理解していただけると思ったんですが。 ○加藤委員  つまり、今、この5項目の内容が適切かどうかというのは、最初の文面の「生殖補助 医療の向上に資する」というときの、その生殖補助医療の範囲をどのようなものとして 決めるかという、そういう議論ですよね。それで、向上という言葉があるときに、いわ ばこの領域の向上なんですから、そのプロセスもあれば、その目的部分もあるわけで、 そこにはいろんな段階が含まれるわけですから、今、町野先生がおっしゃったような議 論はともかく棚上げしておいて、ともかく生殖補助医療で大体こういう範囲のものだと いうことを、この5項目で決めればいいんじゃないですか。 ○町野委員  今、配偶子そのものの扱いまで議論するということになりました。それはどの範囲で それを議論する必要があるのかということになるだろうと思います。そのときに、事務 局が言われましたとおり、これは受精胚をつくる目的で配偶子について何かをやるとい うことだから問題なので、配偶子一般の保存とか、そういう研究がここでは対象ではな いということをはっきりさせるために、今申し上げたわけです。 ○笹月主査  だけども、そうしますと、例えば、卵子をどのように入手するのかとか、それから、 ボランティアを認めるのかとか、そういうことは、そうすると、この範囲外だというこ とになりますね、先生のお話だと。 ○町野委員  受精胚をつくる、つくって研究する目的で、卵子の提供、あるいは精子の提供、そう いうことを受けるときについては、それは研究の範囲内です。ですから、この書き方と、 一番最初のことで、やっぱりまぜ返すのは、元へ戻るという――また後へ戻るのはいい ことだろうと思いますけれども、研究目的で受精胚をつくって、その受精胚を用いて研 究する一連のプロセスについての、研究です。  要するに、受精胚を研究するためには受精胚をつくらなければいけない。そこから話 が始まっているわけです。そのための手続きには、もちろん当然入ってきます。しかし、 受精胚をつくらない目的で入手するのは入らない。それはまた考えなければいけない問 題ですけれども、少なくともこの委員会のミッションではないということだろうと思い ます。 ○笹月主査  いや、だけど…… ○吉村委員  先生の今おっしゃったことを、一般的に総合科学技術会議がどういう判断をされたか は、僕らは文面でしか読めないからわからないんです。そうなると、ヒト受精胚の利用 に関する研究でいいんじゃないということになってしまうんじゃないですか。例えば、 これは「作成・利用」ということは、作成に関する研究もよろしいですよということで すよね。そうなりますと、作成する過程でどういったことが研究としてテーマとして与 えられるかということも含まれてもよいのではないかと思います。先生の言うことだと、 受精胚をつくって、それを利用する研究ということになりますよね。総合科学技術会議 ではそこまで詳しくあまり検討はしていなかったのではないかなと、私は思うんですけ れども。 ○笹月主査  だから、その作成というときに、しかも、それが生殖補助医療に資する作成ですから、 それはやっぱりいい卵でないといけないだろうし、成熟した卵でないといけないだろう し、精子も正常な精子でなければいけないだろうと。そうすると、やっぱり正常な卵子、 正常な精子がどうやってつくられて、その結果、生殖補助医療に資するようないい胚が できるのかということがやっぱり対象になると思うんですね。先生は、生殖補助医療最 初にありき。だから、生殖補助医療一般のガイドラインをつくろうというのではない。 それは確かにそうだと思いますけれども、このヒト胚の作成ということがやっぱり明言 されている限りは、その前の配偶子というものは当然対象になってしかるべきだと私は 思いますけどね。 ○町野委員  報告書を書いたときの理解はそういうものでなかったということは、私は確信を持っ て言えます。ですから、ここで皆様が議論されるときには、報告書で要求された以上の ことを議論するのだという認識のさでなければいけないだろうと思います。私はそのこ と自体を全部反対するつもりはありません。例えば、卵子の保存のやり方とか、やるつ もりはありませんけれども、少なくとも要請されたミッションではないということだろ うと思います。  先ほどの、「・」の意味ですが、作成と使用とはつながっている趣旨ですね。作成し て研究するというつもりです。もちろん報告書は聖書ではございません。言葉はいろい ろあんまり考えないで議論したところもあります。そう言うとまた怒られるかもしれま せんが。文言にそれほどこだわることではないということは、確かだろうと思います。 先ほど申しましたように、クローン研究のほうから全部おりてきている議論です。つま り、胚をつくって死滅させる研究が目的です。そのときに配偶子だけ、卵子だけという ことで規制するという趣旨はなかったということです。 ○笹月主査  だけども、先生のお話は、配偶子の取扱いに関する倫理的なもの、それはそういう意 味でよくわかりますけれども、しかしながら、ヒトの生殖補助医療に資するということ をやっぱり掲げたわけですからね。そうすると、やっぱりその作成ということを言うと きには、当然正常な卵子、正常な精子の発生ということは非常に大きな問題なんですよ ね。だから、この提案は、ですから、それを含めた形で、もしこの時点で許されるなら、 つくって、総合科学技術会議とのやっぱりキャッチボールが必要なのではないですか。 それは我々の求めたところではないとか、範囲外であるとかいうことを言うのかどうか。 ○木下委員  今の町野先生のお話、極めてロジカルでわかりやすかったと思います。胚の研究に関 するガイドラインということですから、例えば、吉村先生のいわれた配偶子、あるいは 卵の発育の研究に関して、ガイドラインを作成して規制する必要はないのではないでし ょうか。胚に関しては先ほど町野先生のいわれたとおりだと思いますので、配偶子とい う言葉は要らないと思います。 ○笹月主査  どうぞ。 ○長野安全対策官  ちょっと整理をさせていただきたいんですけれども、確かに町野委員おっしゃるとお り、まず総合科学技術会議からの意見から始まった検討ということで考えれば、確かに ヒト胚の作成・利用ということで、そもそもヒト胚の取扱いに関する基本的考え方とい うことで出ていますので、ヒト胚の作成・利用ということで、その例外的なものとして 生殖補助医療研究があるというところから出発しております。ですから、一番のこの委 員会でのミッションは、ヒト胚の作成・利用にかかる部分の研究だからというのは間違 いないです。  それ以外に、配偶子そのもの、配偶子単独で行う研究というのをどう考えるかという のは、前々回ぐらいにご議論いただいているかと思うんですけれども、その際にお示し しました、または、ご検討いただいた中で、要するに、総合科学技術会議で求められて いるヒト胚作成・利用の研究以外でも、例えば、卵子を入手するということを考えた場 合に、ヒト胚作成にも卵子を入手する必要がありますが、卵子単独での研究でも同様に 卵子を入手する必要があると。そのときに、そう考えたときに、卵子単独の研究という ことは、どういうふうに何らかの形で考慮すべきこと、または、ルールとして考えなけ ればならないことというのが倫理的にもあるんじゃないかといった論点をお示しして、 果たしてそういったところまできちっとここでご議論いただいて、どこまでそのルール というのを考えるべきかどうかといった論点で出しております。  ですから、そのときのご議論では、配偶子についてもそれなりにご検討いただいたほ うがいいというような流れだったようには記憶してございますが、完全には結論は出て いない状態だと思いますので、今回の会議では、まずは総合科学技術会議で求められて いるヒト胚の作成・利用ということで、そのものについてのご検討をまずはいただけれ ばと。こういったところが片づいたところで、もう一度、その配偶子単独の研究という のをどういうふうに考えていくかというのをまたご検討いただくことになるのではない かと思います。 ○笹月主査  この最初のところで、配偶子ということは今回は触れずに、胚のことでいきましょう ということで、そういう意味だろうとは思うんですけど、そうすると、先ほど申しまし たような、例えば、卵子の入手の仕方とか、あるいはボランティアを認めるのかとか、 そういうことも入らないということになるんですね。 ○長野安全対策官  いえ、卵子の入手については、もちろんヒト胚を作成するための卵子をどう入手する か、また精子を入手するかということでございますので、それは必須になりますので、 ヒト胚を作成・利用するためには必須になるということで、それについては必ず検討が 必要になります。それは総合科学技術会議の中でも、ヒトの卵子の入手方法については こういったものが考えられるということで触れられておりますし、そういった流れにな っております。 ○笹月主査  そうすると、そのセンスでいくと、生殖補助医療ということの重みがないので、私に はなかなか受け入れがたいのは、入手の方法が大事であるとするとすれば、やっぱり正 常な、健康な卵をどのように入手するのか、あるいは、卵というものの正常な発生、精 子の正常な発生というのはどういうものか、あるいは、卵子を使った研究、精子を使っ た研究がどのように胚の作成に影響を及ぼすのかというようなことは、やっぱり対象に なるんだと思うんですけれどもね。  例えば、低線量の放射線を受けた精子が、受精ということにどういう影響を及ぼすの か、その後の、2週間とはいえ、その胚の発生異常の発生にどのような影響を及ぼすの かというのは、やはり私は生殖補助医療とうたったからには対象になるような気がする んですけどね。 ○町野委員  何回も繰り返して申し訳ございませんが、これは生殖補助医療研究のための委員会で はないんです。基本的にヒト受精胚をつくって研究することについてのガイドラインを つくる。そして、それに生殖補助医療という縛りがかかっているのは、そのような研究 目的でヒト胚を作ることはある場合は認めてもいいだろうという考え方を、報告書がと ったからです。生殖補助医療研究の目的であるから全部検討しろというのは、理論が逆 だと思います。 ○長野安全対策官  いずれにしましても、配偶子を単独で扱う研究というのは、そもそも検討の対象にす るかどうかというご議論もありますし、その際、もし検討が必要で検討したほうがいい というのであれば、実際にどういうルールが必要かということも検討になるかと思いま すが、まずは、今ご議論いただきたいのは、ヒト胚を作成・利用に関する研究というこ とでいただければと思います。 ○町野委員  配偶子についての議論がどこかで必要だということは、私もそれはそう思います。こ の問題が出てきたときというのは、何の規制もなくて受精胚研究が行われてきたのじゃ ないかということから、議論が始まったという経緯がありますから、同じように、配偶 子についても議論はやっぱりあってしかるべきだろうと、その単独の研究についても。 しかし、まず、今整理がされましたとおり、そっちの議論というのは、こっちが終わっ てからといいますか、それとは別のものとしてやっぱり議論をしなければいけないだろ うというふうに思います。 ○笹月主査  結局、我々といいますか、吉村先生はどういうふうに感じられるかは知りませんが、 認識の仕方が間違っていたということだと思うんですね。 ○吉村委員  いや…… ○笹月主査  それは、先生がおっしゃるのが間違いというんじゃないんです。私の認識の仕方が先 生とは違っていたと。 ○吉村委員  私もこの中ポチの意味がよくわからない、はじめからわからなかったんですよ。一番 はじめのときにも言ったんですけれども、胚をつくる研究をしていいと。この場合に、 配偶子というのはだれからもらってきてもいいよということを言っているわけですよ。 そういった研究というのがほんとしていいのかと思ったわけですよ。今、町野先生なん かがおっしゃっていたことを言うと、別に胚を作成しなくたって、今、余剰胚はあるわ けですから、それで研究してもあまり進展を望めないと思います。どうして受精ができ ないのかという研究をしないと、生殖補助医療の向上には全くつながっていかないわけ ですよ。  今の文科省の人のお話も、作成して利用の研究ですよということを言っているんです ね。ですから、作成の研究ではないということが今言われているような感じがするんで すね。  でも、この中にも書いてあるのは、生殖補助医療の研究においての定義は、ヒト受精 胚の作成を伴う研究やヒト受精胚の研究利用というようにして書いてあるわけですね。 そうなりますと、今先生がおっしゃっている言い方になってくるわけであって、作成し て利用する研究ということになります。作成は手段であって、利用が研究なんですよと いう言い方を町野先生たちはされているということなんですね。 ○笹月主査  それと、もう1つは、やっぱり私は医学の立場から見ると、「生殖補助医療に資する」 ということを非常に重く受けとめて、資するためには、精子、卵子、配偶子の研究も当 然きちんとやらなければ資することにはならない。それから、以前議論したように、胎 内に戻さない限りは、その研究は胎内に戻してはいけないのなら、決して生殖補助医療 に資することにはならないじゃないかという、この入り口のところと出口のところの2 つに対して、私はもう非常に疑問に思ったわけです。ですから、これまで混迷を極めて きたんですが、今の町野先生のお話のように、もう非常にドライにね。形式的ですよ、 ですから。生殖補助医療に資する研究には認めますよというのは全く形式的であって、 実際は資することにはならないわけですよね、それは、極端なことを言えば。  だからどうとうことはなくて、もう胚についてやりましょうということはそれで結構 ですが、実際になぜこれまで混迷を極めたかというと、生殖補助医療に資する研究とい う、その資する研究の受けとめ方が違ったんじゃないかと思いますね。 ○木下委員  お話のように、生殖補助医療技術の向上という意味では、当然、配偶子の研究は入る わけですが、ここで問題にすれば、配偶子の研究のガイドラインまでもつくらなくては いけないということになります。このガイドラインをつくる趣旨は違うと思いますので、 町野先生のいわれたようにヒト胚の研究に限ることが、むしろ臨床にとってはいいので はないかなと思います。 ○笹月主査  いかがでしょうか。 ○石原委員  そうすると、先ほどの配偶子の保存というのも関係がないという話になるわけですね。 当然、保存は胚から後という話になると思いますし。そうしますと、実際に配偶子を集 めないとこの研究はできないわけで、凍結するところまではこれに入らないという話に なるので、プラクティカルにはどこから始まるのかよくわからなくなるという気がいた しますが、いかがでしょうか。 ○吉村委員  この胚研究も、一番の入手、未受精卵の入手というところには、これは凍結が入らな いといけない。作成に関する研究がなかったら、これ、別に作成ということをうたわな くてもいいんじゃないか。今まである胚を使って、余剰胚を使ってこういった研究を続 けていけばいいということに、私はなるような気がするんですね。だから、あえて言う んだったら、今までどおりやっていって、この委員会で議論しなくてもいいのではない かなというような感じがしちゃいますですね。  やっぱり受精のメカニズムをわからないとなると、作成に関しては、もし作成したも のを使って、要するに胚を研究するんだったら、あえて未受精卵の提供を受けなくても、 患者さんに対してご迷惑をおかけしなくても、私はいいのではないかなというような感 じはいたしますですね。 ○中辻委員  大分混乱していると思うんですが。ですから、作成を含む研究というのは、特別にガ イドラインをつくって慎重にしなければいけない。だから、作成の研究ということの中 には、作成をやる研究計画の中で卵子をどう入手して、精子をどう入手してということ は、作成研究の中には含まれると思うんですよ。ただ、例えば、原始卵胞の中の卵胞細 胞をどうやって成熟させるかとかいうことで完結する研究というのは、この中には入ら ない。ですから、配偶子の研究として完結する研究は入らないけれども、受精胚をつく るためにどう入手するかということは入ってきてしまう。  だから、問題は、笹月先生がおっしゃられることはわかるんです。普通に研究を考え れば、全体の大きな流れがあるんですが、ここはどうガイドラインで縛るかというとこ ろの議論ですね。ですから、実際上、この範囲を決めて、その後どういうことになるか って、私一番心配というか懸念があるのは、その範囲に外れた部分がどういうふうにな っているかということによって、この範囲を外れたものは研究ができなくなるのか、あ るいは、もっと楽に研究できるのかということによって、事態は全く変わってしまうん ですね。  ただ、これは受精胚をわざわざ新しくつくって研究に使うということを、特別な場合 には許そうと。で、クローン胚とこれですけれども。だから、この中では、きっとかな り厳しい倫理審査になっていくということが予想されるわけですね。ですから、笹月先 生がおっしゃるように、配偶子のほうの研究も含めるとすると、もしもそうなってしま った場合には、配偶子の精子の形成の研究とか、卵子の発生の研究だけの部分はこの緩 い審査にしましょうとかという話になっていかないといけなくなってしまうんですね。  ですから、研究全体の流れとして、一連つながっているということは確かにそうなん ですけれども、ここは特別に今まで放置されていた部分をどう規制するかということだ から、そこをどう限定するかという話で、実際上は、その外はどうなるかということは、 私は非常に心配なことがあるから。 ○笹月主査  それはまた別の話になりまして。  ですから、結局、先生方が言われるのはおそらく総合科学技術会議が求めることだろ うというふうな、私もそういう頭にして考えるとすれば、生殖補助医療というのは別に こうありますね。あるいは、生殖補助医療に資する研究というのがこうあって。ところ が、一方、ヒト胚というものが全く別のところから来て、ほんのちょっとだけ接点があ る。その接点のところだけをやりましょう、その接点のところだけのガイドラインをつ くりましょうと言われれば、まあ理解できますよね。そのかわり、それはもう生殖補助 医療に資する研究ということからはちょっとほど遠いことになるけれども、もう非常に ドライに考えれば、そういう、町野先生がおっしゃるのは、まあ理解はできますけれど もね。  ただ、我々は最初から、ほんとうに生殖補助医療に資する……せっかくヒトの胚を使 った研究をしてよろしいというんだから、ほんとうに生殖補助医療に資する研究をする ためにはどういうことをやらなければいけないのかというようなことを考えると、当然、 精子とか卵子というようなこともやらなければいけないです。例えば、今一番問題にな っているのは、放射線の中でも低線量――高い線量の放射線が有害であるということは わかっていますけれど、普通に自然に我々が浴びる低線量の放射線がどういう影響を及 ぼすのか、不妊ということにどういう影響を及ぼすのか。そうすると、低線量の放射線 を当てた精子とか卵子を使った受精の研究とかいうのは、当然、生殖補助医療の研究の ときに大事になってくるわけですよね。そういうようなことも含めて、どうなのかなと 思ったんですが、そういうことはもうやりません、ほんのかするところだけの部分をほ んとうに厳密に規定して、そこの部分のガイドラインをつくりましょうというのであれ ば、またそれはそれで理解は…… ○加藤委員  この前、それで合意したんじゃないんですか。要は、極めてピンポイントのガイドラ インを我々はつくるので、生殖補助医療全般についてのガイドラインとは全く無関係で、 ともかく人工的に、例えば夫婦関係に全くない人の精子と卵子を使って、胚を使っても、 それを着床させないという前提でできる研究の許される範囲とか入手方法だとかだけを 決めようというので、今先生のおっしゃったことは全部排除していいんじゃないかと思 いますけど。 ○齋藤補佐  申しわけございません。局長と審議官が退席いたしますので。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  白熱しているところを、どうも失礼します。このたび雇用均等・児童家庭局長を拝命 した大谷でございます。どうぞよろしくお願いします。ちょっと中座いたします。 ○笹月主査  どうぞよろしくお願いします。 ○村木大臣官房審議官  審議官で参りました村木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○笹月主査  どうぞよろしくお願いします。 ○高木委員  そうすると、例えば卵子を成熟させるという研究では、そこで終わってしまうという ことはまずないので、その次のステップがあるわけです。卵子を成熟させる研究はこの ガイドラインには関係なく、成熟した卵を使って人工的に受精させるとなったとき、こ のガイドラインが効いてくる。そういう理解でいいんですか。 ○コ永研究振興局長  先ほどの「資する」という言葉自体の解釈にもなってくるんですが、一応総合科学技 術会議の定義では、「受精胚の作成を伴う研究」と言っておりますから、今、その研究 のプロセスの中で、全体として、ある段階で受精胚の作成を伴うということが予定され ている限りは、それは、そこの段階に至るまでもすべてこれは受精胚の作成を伴う研究 としてなると。ただ、そこのところの定義、考え方として、逆に、受精胚の作成を伴う 研究といった場合に、その「伴う」ということの解釈も、これ、かなり日本語のような 解釈で、いわば学術的な解釈をしているわけではありませんので、そこで、逆に、「受 精胚の作成を伴う」というのがいかなる意味であるのかどうか。それは、例えば、おっ しゃるように、受精胚の作成を目的としないけれど、受精胚の作成を伴う研究とか、受 精胚の作成を伴わないんだけれど受精胚の作成を目的とする研究とか、それはさまざま なことがあるわけで、そこは、要するに、ある意味で、逆に言うと、リジッドにここで やるのではなくて、むしろそれは議論していく中で、むしろそこは、逆に、ある意味で は、そういう事柄があるけれど、後で規制レベルを考えたときに、やっぱりここまで規 制をかけるのは酷だから、この部分は除くことにするという整理の仕方もあると思いま す。もちろん、スタートの段階できちっとしていくということも大切なことでございま すが。正直言って、受精胚の作成を伴う研究と、受精胚の研究利用という、その2つが 書いてあるわけでございまして、そこのところも問題。  それから、もう1つは、「生殖補助医療に資する」という言葉もありまして、結果的 に資すればいいのかということと、それを目的とする研究というのは少し違いまして、 研究者の頭の中に全然生殖補助医療のことが全く100%なくて、いや、結果的にそう いう研究があって、だれかがその研究結果を使えばいい生殖補助医療になるという、そ ういうほんとうに純粋に結果的なものだけでもいいのか、あるいは、目的意識を持たな ければいけないのかということもございますので、そこは、ある意味で、逆に、このご 議論を深めていく中で、それはきちっと総合科学技術会議から与えられた宿題とすれば、 少し、そういう意味では、例えば、総合科学技術会議の言い方としては、こういうヒト 受精胚の作成を伴う研究やヒト受精胚の研究利用が生殖補助医療に貢献してきたという 言い方をしていまして、貢献というのは、目的とした研究なのか、結果的に利益をもた らした研究なのかよくわからない。ただ、非常に基本的には、あまり学術的な言葉とい うより、どちらかというと、いわば普通の日常会話的な用語で書いてありますので、そ こは、ある意味で言うと、最初の段階できちっと定義をしていただいてスタートしなが ら、なおかつ、具体的な規制のあり方、ガイドラインを決めた段階で、やっぱりそこは おかしいからこの部分も入れようよとか、この部分はこういう規制だったら厳しいから 排除しようよと、そこは少し審議の仕方も、そこは結果的なところで少し行きつ戻りつ があっても、それは仕方がないのではないかと思っております。 ○高木委員  ということは、この会議でどこまでを範囲にするかということを決めればいいのでは ないですか。 ○笹月主査  だから、その範囲がなかなか決まらない。 ○高木委員  だから、もともとの科学技術会議の意見がどうだというよりは、その範囲をどういう ふうにここでとらえるかを決めればいい。 ○笹月主査  そうですね。 ○加藤委員  で、この5項目以上増やす必要があるという意見は、今まで1つも出ていないんでし たよね。表現上、その5項目を4項目にしても差し支えないという意見は今まで出まし たけどね。 ○笹月主査  今のような議論をすることによって、私、町野先生が前々回からいろんなことをおっ しゃったのが、いま一つ了解していなかったんだけど、きょうは割と……。我々はやっ ぱり生殖補助医療に資する研究ということが、非常にその生殖補助医療にほんとうに資 するというところを重く考えたものだから、戻さない研究が生殖補助医療に資するはず はないじゃないかという、そういうところから出発して議論をしたものだから、非常に 混迷を極めたということなんですが、また、逆に、今度はスタートのところも、生殖補 助医療にほんとうに資するのなら、精子、卵子のいろんな単独の研究も入ってこなけれ ば資することにはならないじゃないかみたいなことになってしまうわけで、その辺を切 り分けて、ほんとうにその接点として、もうドライに、生殖補助医療に資するとか云々 ということはなしに、生殖補助医療ということとどこかで接点がある、ほんのちょっと したところだけでガイドラインをつくりましょうという、非常にドライに割り切って、 受精胚の作成、取扱いというところに関してまずやりましょうというところをスタート としてやりながら、少しずつ範囲を、今局長がおっしゃったように、行きつ戻りつしな がら進めていけばと。 ○町野委員  ご理解いただけたようでありがとうございます。今まで理解されなかったので、かな りがっくりきて、ディスカレッジされておりまして。  1つ、「ドライ」と言われましたけれども、前回の議論でも申しましたとおり、私は 着床させる研究についても議論するということを、直ちに排除するつもりは全然ないわ けです。きょうの配偶子研究もそうです。ただ、やっぱり何をここでしなければいけな いか、そして、どの意味でしなければいけないかがわかっていないと、非常に議論が混 乱するだろうということを申し上げているつもりです。  それから、もう1つの問題は、配偶子の保存は、それだけで完結する研究だったら、 ここでのターゲットの問題とならないと思います。しかし、それで受精するだろうかと いう研究をやってみたとき、やっぱりそれはもう対象に入ると考えざるを得ないでしょ うと。もし受精したとき、それをどうするのか。戻すわけではなくて、そのまま死滅さ せるわけですから。総合科学技術会議のこの意見書の書き方は、確かに作成しなければ だめみたいに読めますけれども、作成を目的としたものも含めるというのがおそらく妥 当な考え方ではないかと思います。 ○笹月主査  だから、そうですね。範囲を今決めて、方向というと、またその……先生は、ここを はっきり理解しておかないと混迷を極めるであろうけれども、とにかくオーバーにでも 言っていても、最後にこれは削りましょう、これは削りましょうのほうが、私はいいん じゃないかと思うんですね。  だけど、ちょっと言わせてもらえれば、混迷を極めるから最初に明確にしましょうと おっしゃったんだけど、そうではなくて、精子、卵子の研究もここに1行入れておいて、 そして、最後にはこれは削りましょうというほうが簡単なのではないんですか。先生の 思考過程と、私が最初に申しましたように、生殖補助医療に資するという非常に大きな ミッションを掲げたものとが少しずれていたということで、最後にほんとうに総合科学 技術会議から付託された中身が何なのかということで、そこを削ってフィニッシングタ ッチというところを加えてやれば、それでよろしいんじゃないんですか。 ○安達委員  私は、今の議論を踏まえてですけれども、配偶子の形成に関する研究というのは抜く べきだと思います。むしろ受精のメカニズムに関する研究の中に、今先生のおっしゃっ た趣旨は入りますので、それで4つでよろしいのではないかと思います。 ○笹月主査  よろしいでしょうか。またこういうものも加えるべきだとか、あるいは、これはおか しいというのは、いつでもあれしていただいて、少し先へ進ませていただきます。  ここに4項目例示をするとして、その他ぐらいなことになろうかと思いますので、例 示をしておくということで、別紙のディテールはもうおそらく必要ではないだろうとい うことでよろしいのではないかと思います。 (3)ヒト受精胚の作成・利用における禁止事項について ○笹月主査  それでは、少し時間があれですが、残りが少なくなりましたが、ヒト受精胚の作成・ 利用における禁止事項というところを少し議論したいと思いますが、これも事務局から ご説明をお願いいたします。 ○長野安全対策官  資料3−3に基づきましてご説明申し上げます。  ヒト受精胚の作成・利用における禁止事項でございますが、最初にまず作成・利用し た胚の取扱いの中で、胎内への移植、これにつきましては、一番最初のご議論でありま したように、作成・利用した胚の胎内への移植については行わないということとしてよ いか。その際、その胎内というのは、ここで注意させていただきたいのですが、ヒト及 び動物ということでいいかということでございます。  それから、取扱い期間でございますが、胚の取扱い期間については、先ほど中辻委員 からもお話ございましたけれども、受精後14日以内とし、14日以内であっても原始 線条が形成された場合には利用しないとすることでよいかということで、14日間か、 または原始線条が形成された場合のどちらか短いほうで切るという考え方でよいかとい うことでございます。  その作成・利用した胚というのは、その途中段階も含めて凍結を認めるということと するのか、または、認めないということとするのか。その認める場合には、その凍結す る目的というのをあらかじめ限定する必要があるのかということで、この限定するとい うのは、例えば、そもそも凍結保存に関する研究ですとか、そういった研究目的との関 係で凍結することが必要な場合ということで限定する必要があるのか、それとも、貴重 な胚を使うということですので、その胚をその次の機会のために保存するということも 含めて凍結ということを認めるのかどうかということもございますけれども、そういっ た意味で限定する必要があるのか。ある場合には、どのような目的に限定すべきかとい うふうにしてございます。  それから、胚を凍結する場合には、その凍結期間については、胚の全体の取扱い期間 には算入しない。14日間なり原始線条が形成する場合ということで、その期間に算入 しないこととしていいかということで整理させていただいております。  それから、もう1つですけれども、次のページになりますが、加えてはならない操作 ということで、これにつきましては、既存の「遺伝子治療臨床研究に関する指針」の中 で言われていますのが、「人の生殖細胞又は胚の遺伝子改変をもたらすおそれのある遺 伝子治療臨床は、行ってはならない」というふうにされておりまして、こういったこと から、生殖補助医療において、その医療の行為において行われるということは想定され ないだろうと。そのため、今回の研究においても作成・利用する胚への遺伝子操作は行 ってはならないということとしてよいかというものでございます。  一方、遺伝子操作そのものではありませんが、遺伝子改変のおそれのあるということ で、通常医療では行われないと考えられますが、胚への紫外線やX線等の照射等遺伝子 改変のおそれのある物理的操作ですとか化学的操作については、行わないというふうに してよいのか。または、そもそも環境影響の評価ということで、X線等の照射、どれぐ らいの照射の場合にどういった影響があるかといった研究というのがもし考えられれ ば、そういったものについては認めるといったことという考えはあるのか。そういった 論点の整理とさせていただいております。  その後、そのほかにまた追加すべき事項はないかということで認めさせていただいて おります。  以上です。 ○加藤委員  これ、凍結したものは、14日という規制ではなくなるんですね。時効になるんです ね、いわば。 ○長野安全対策官  凍結の期間は14日には含めないということでいいかと思います。 ○中辻委員  コメントしてよろしいでしょうか。 ○笹月主査  どうぞ。 ○中辻委員  凍結する目的というのは、凍結保存の目的以外にも想定され得るものとしては、ある 段階の胚を凍結して、それを解析する。その場で連続的に解析するのが困難な場合に、 一応凍結して、それが別な場所で解析されたりというときの運搬なり、違う施設にとか というときのために、研究目的のために凍結して、一たんそれを止めれるためには必要 だという気はします、凍結に関しては。当然、それは14日に含まれないんですが。  それから、遺伝子操作に関しては、倫理的なこれを禁止する目的というのは、遺伝子 変化したような生殖細胞なり人が誕生することを禁止しようとするものですから、例え ば、1週間、研究期間の中である遺伝子の発現を抑えるようなRNA干渉ベクターを入 れて、遺伝子を抑えるときにどういうふうな変化が起きるかという研究は当然あり得る わけで、その滅失させることが決まっている研究の中で遺伝子に操作を行って何が起き るかということを調べる研究は当然あり得て、それは人間を誕生させるものではないと いうことでもありますし、X線のこともそうだと思います。 ○笹月主査  もしそう言っちゃうと、今度は、逆に、もう何でもありみたいになっちゃいますよね。 要するに、14日以内でもう死滅させるわけなので、遺伝子異常が起ころうが、何が起 ころうが、そういう奇妙な生物をつくることにはならないのでというと、それがもう1 4日という大前提があるので。 ○中辻委員  14日以内に完結して、合理的な目的があるような遺伝子改変なり、いろんなことが プロポーズされるわけですね。それが、生殖補助医療に資するときには、もちろん全般 的にある科学の発展に資することは当然資するべきでしょうから、そういうことのため に必要な研究だと認められた場合に、それでやってはいけないという理由があり得るか ということですよね。 ○笹月主査  そう、これはもう生殖補助医療に資するというところでくくりがあるわけですよね。 ○中辻委員  そう、別に何か遊びでこういうことをやってみるとかということが、その審査に通る はずはありませんので、それは合理的な目的のためにはそういうこともあり得るから、 それを一律に遺伝子操作を禁止しておけば、そういうことは全くできなくなってしまう わけですね。 ○笹月主査  だから、合理的な目的というのが、つまり、サイエンティフィックには合理的であっ ても、あるいは重要であるとみんなが認めても、それが生殖補助医療に資するという明 確な道筋がなければ、やっぱりだめですね。 ○中辻委員  当然そうですよね。ヒト胚をつくって研究するということは、この場合、特別に生殖 補助医療に資する面があるからということですから。 ○笹月主査  生殖以外の研究は認めませんという大前提があるわけですからね。だから、幾ら科学 的に合理性があっても、それはだめですよね。 ○中辻委員  だから、この中に遺伝子操作を入れておいてしまえば、実際、生殖補助医療に資する ような研究を遺伝子操作であり得て、起こるということが当然必要になってきたときに もできなくなってしまうので、それは禁止事項に入れるべきではないという意見です。 ○笹月主査  いかがでしょうか。 ○高木委員  遺伝子操作というところで、胚の遺伝子改変をもたらすおそれのある遺伝子治療研究 は行ってはならないというのは、例えば、ある改変を行ってみると着床能力が増すなど も胚の遺伝子改変にあたるので、やってはいけないということになるわけですかね。 ○笹月主査  要するに、遺伝子改変をしたものが、遺伝子治療という場合には、もちろんほんとう に医療ですから、実験ではなく。だから、あの遺伝子治療の指針では、胚に遺伝子操作 を加えてはいけないということになるわけですね。  だから、中辻先生の主張を、例えばサポートするとすれば、これは遺伝子治療ではな いので、しかも14日で死滅させるのでと言えば、向こうの今度は例外措置としてほん とうに合理的であれば通用するかもしれませんがね。 ○中辻委員  はい、そうですね。この2番目にある「加えてはならない操作」の文章というのは、 最後は遺伝子治療臨床研究となっています。臨床研究にそれをやるのは危険だけども、 これは臨床研究ではないわけです。  臨床研究というのは、要するに、実際生きている人間に至る可能性を持った研究のこ とです。 ○笹月主査  そうです。 ○加藤委員  やっぱり中辻先生の意見だと、凍結はオーケーであると。それから、遺伝子操作もオ ーケーであると。それから、X線照射等もオーケーであるから、一切それについて規制 する必要はないと、そういうことですね。 ○中辻委員  そうですね、包括的に禁止するべきではないということです。 ○加藤委員  わかりました。 ○笹月主査  いかがでしょうか。 ○石原委員  前半の作成・利用した胚の取扱いについての1)の部分、それから2)の部分という のは、はっきり言って、あんまり議論の余地はないと思うんですね。つまり、要するに …… ○笹月主査  どの部分ですか。 ○石原委員  (1)のうちの1)、2)です。つまり、1枚目の紙の部分については、「胎内への 移植については行わないこととしてよいか」というのは、行ってはいけないと言ってい るわけですから、これはいけないわけですね。その14日以内ということも、既に言わ れているわけですから、これを変えるというのはできないと思いますね。  それから、あと、凍結の話というのは、これは凍結をしなければ研究ができないと思 いますので、凍結は認めないというわけにはいかないと思います。当然、凍結期間は取 扱い期間には算入してはできませんからできないわけなので、ここの中で議論があり得 るとすると、目的を限定するかどうかという(3)のところだけだと思うんですが、目的を どのように限定するかというのを決められると思えないので、やはり問題の焦点は、こ の2枚目の「加えてはならない操作」というところを入れるか入れないかというところ、 そこを議論すればよろしいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。 ○笹月主査  いや、そうなんです。だから、そこを議論しているんですね。 ○石原委員  それでいきますと、今中辻先生がおっしゃいましたように、特定したものを、包括的 なものは何も決めない、何も述べないというのが一番簡単であることは事実だと思いま す。仮に、じゃあ、何をだめと入れるかというと、これを入れるのが非常に難しいので はないかと私は思うんですが。 ○笹月主査  そう言えるかどうか。例えば、胚は人の萌芽であって、その尊厳を尊重しなければい けないというわけだから、それに放射線を当てて殺しちゃっていいのかとか、いろんな 問題が出てくると思いますね。だから、どういうことをほんとうに禁止事項とするのか、 やっぱり厳密に考えて、何でもやってよろしい、14日で死滅させるんだから何でもや ってよろしいということにはならないんじゃないですか。 ○中辻委員  それでも、その放射線を当てる研究というのは、多分、どの程度の線量の放射線が当 たったときに、例えば、胚の染色体がどれぐらいの異常を起こすかというふうな研究が 想定されるわけですね。それは、やはり胚というものがどれぐらいのリスクを低線量で 負っているかという研究で、まさにこれは意味のある合理的な研究だと思うんです。  それと、先生がおっしゃった、人の萌芽に関して、私、多分、多くの人と意見が違う ような気がするんですけど、人の萌芽というのは、人になり得る可能性を持った萌芽な わけですね。これ以上言わないほうがいいかもしれませんが、つまり、これは人にはし ないことが確定しているものですよね。ということで…… ○笹月主査  可能性を持っているものとしての受精胚を尊重、尊厳をあれしましょうということで しょう。だから、そうしたらね…… ○中辻委員  それを扱うだけの、そういうことをやるだけの意味があるかどうかは、多分どこかで 審査することになるわけですよね。ですから、胚を、ある意味ではダメージを与えるよ うな実験が計画されていて、それがそれだけやる意味がある、それだけの合理的な理由 があるかどうか。この場合は、生殖補助医療に資するというふうなことがあるのかどう かということがどこかで審査が行われて、十分そういう理由があれば許されることもあ り得るんだと私は思うんです。それを包括的に禁止するということにしてしまうと、そ れは世界の研究の発展の中で、何かそういうことが必要になったときにでもそれはでき ないということになってしまうということです。 ○笹月主査  いかがでしょうか。 ○鈴木委員  すみません、先ほどの議論とも多分ちょっと関連はあると思うんですけれども、例え ば、今の中辻委員のお話のイメージだと、流れとして、これは、だから、今のは余剰胚 を使った研究の話をしているわけではないわけですよね。わざわざ、例えばX線なりと か、例えば放射線にですけれども、それを当てる研究をしますと言って申請をして、だ れかから精子と卵子を持ってきて胚をつくりますと、そういう研究になるということで すよね。町野委員、そういうことですよね。 ○中辻委員  それがあり得れば。 ○鈴木委員  まあ、あり得るかどうかは別としても、流れとしてはそういうお話になる。それはあ まりにとっぴな話ではというのがとりあえずの印象ですということだけ申し上げたいん ですけれども。流れとしてはそういう理解でよろしいんですよね、町野委員。 ○町野委員  すみません。あんまりよくフォローできていないんですが、そう思います。 ○鈴木委員  すみません、もう1つ。もしどなたかがご存じでしたら教えていただきたいんです。 たしかフランスなり、外国の法律の中には、2週間という期限があっても、間接実験の みというふうに限定している国もあったと思うんですね。一切の操作を加えないという ふうにしている国もあったかと思います。つまり、だから、2週間という期限の中で、 どういう研究ならまず作成していいのかということは、もちろんもっと話し合わなけれ ばいけないわけですけれども、じゃあ、その2週間の中で何をしていいかという、今、 話になっているわけですよね。 ○笹月主査  なかなかその何をしていいかというのは難しいですので、何をやっぱりしてはいけな いかということを…… ○鈴木委員  とりあえず、今、禁止という形でお話が進んでいるわけですけれども、私はやはりあ る程度の禁止事項ということはあると思いますし、仮に、例えば観察のみという選択も 別になくはないというふうに思っています。仮に、だから、放射線なり、そういったこ とも遺伝子改変までつながることをやっていいというのであれば、それがなぜいいのか、 もう少し報告書なり、まとまるときでもいいのかもしれないんですけれども、それなり の根拠が必要であろうというふうに思います。 ○石原委員  さっきも申し上げたんですけど、ですから、中辻先生がおっしゃったように、何もし ないとするか、あるいは、ほとんど何もやってはいけないというふうにするのは簡単な んですが、これはいいとか、これは悪いとかいうのを一つ一つ書き並べるのは、現実問 題として非常に難しい、あるいは、5年、10年先何が起こるかわからない。つまり、 個別審査という形にせざるを得ないようなお話を、今、この加えてはならない操作とし て現時点で決めようとしているんじゃないかという印象を僕は非常に強く持つんです が、現実にそうやって、例えば、この1番、2番、3番、この3つはだめというのをつ くった場合に、それでほんとうに妥当性があるのかという評価が可能なんでしょうか、 もし仮に何かつくった場合。放射線はいけない、あるいは、化学物質はいけない、そう いう決め方というのはあり得るんでしょうか、そもそも。 ○中辻委員  ちょっと話しすぎですけれども、今、鈴木委員がおっしゃった部分は、すごく根本的 なところに関係していると思うんです。今おっしゃったのは、多分、フランスなり、そ ういう国で、それはカソリックの考え方で、受精胚から人となると。バチカンの考え、 ローマ法王庁の考えでは、受精胚から冒すべからざるものだということ。で、それの影 響を受けたカソリックの影響が強い国で、宗教的な背景のもとに、つまり、余剰胚とか あるにも関わらず、とにかく胚の存在そのものが神聖な部分があるから、それを限定し ていこうということですね。  ただ、気をつけていただきたいのは、それは彼らは、その後もローマ法王庁は非常に 論理的に考えていて、だから、余剰胚をつくってはいけないと言っているわけですね。 ですから、受精後の着床を妨げる避妊は禁止。そして、体外受精したものはすべて母胎 に戻さなければいけないというので一貫性をとっているわけですね。もし受精胚という ものをそれだけ尊重するのであれば、そうせざるを得ないわけですね。それは、ただ、 現実にはそれは不妊治療を受けている女性に多大の負担をかけることになっていて、裕 福なイタリアの女性は、ヨーロッパのほかの国に行って不妊治療を受けているわけです ね。  だから、そういうのを日本で、もうそれの考えに立つのかどうか。そうではなくて、 やはり年間5,000個以上余剰胚が廃棄されている現実の中で、胚というもの自体にあ る尊厳を与えるのか、それとも、それではないようなプラグマティズムにするのかとい うことだと思うんです。 ○加藤委員  今ここであんまり哲学的な選択をする必要はないんで、ともかくガイドラインではこ の放射線だとか化学物質については一切触れる必要はない、そういうのでいいんじゃな いですか。 ○石原委員  私も賛成です。書けないと思うんですね、実際にガイドラインは。 ○笹月主査  いかがですか。 ○鈴木委員  では、そもそもこの報告書の研究、これは吉村班の研究ですけれども、遺伝子改変が 起こり得る研究を行ってはいけないというのが一体どこから出てきたのかというふうに 今思っていて、もともと、今読んでみますと、最も尊厳をもって保護しなければならな いものが遺伝的資質であるゆえに、遺伝子改変が起こり得る研究を行ってはいけないと いうふうに、この報告では、という文脈にはなっていたんですけれども。  私、これもちょっとうろ覚えなんですが、遺伝子改変が起こり得る研究を避けるとい うのは、ほかのところの報告書でも読んだような記憶はあるんですが、ないですかね。 ○中辻委員  人になり得る可能性を持った場合ではないんですか。 ○鈴木委員  つまり、子宮に戻すこともあり得るというときはということですか。 ○笹月主査  他の委員の方、どなたかご意見ありますか。 ○高木委員  中辻委員の意見もわかりますが、そこまで言ってしまうと、最初から指針を全部変え なくてはいけないことになるので、そうではなくて、この状態でどうするかを考えるべ き。それぞれの操作について言及するのではなく適宜そのときに提出されてきたものを 審査してゆくしかない。 ○笹月主査  どうぞ。 ○後藤委員  例えば、受精胚を分割するとか、そういうことについてはいかがなんでしょうか。実 際、ある程度の卵割して、あるところで分割するとか、それから、一部を取っておくと か、そういうような再生医療の問題もあるんですが、その辺については許される…… ○吉村委員  それは、特定胚指針で禁止されていますから、それを変えない限り無理ですから、で きないということです。 ○町野委員  それは、受精胚クローンの定義の中に入ります。それは、先生が言われたように、禁 止されています。 ○後藤委員  例えば、最近言われているのは、自分の将来の再生医療に取っておくというような、 そういう発想もありますけど、それも禁止されている。 ○吉村委員  そうですね。かなり生殖医療にはそれは貢献するとは思うんですけれども、特定胚指 針で国で禁止されていますので、それはできないということになります。 ○笹月主査  いかがでしょうか、その禁止事項ということで。今、分割してはいけないというよう なのが1つ出てきましたが、少し考えていただきますかね。この場でもう何もあれしま せん、もう何でもいいですというのではなくて。 ○コ永研究振興局長  やはり考え方として、このことについては、もともと人クローン技術の規制に関する 法律の中でもさまざま、将来の法規制ということまで言及して言われているわけでござ います。あくまで我々はガイドラインという形でご審議いただいておりますのは、そう いった細かいことについては、むしろ立法という形式よりも、各専門の先生方のご見識、 それから、その時代時代の状況の中で適宜変えていくというところに、まさにこういう ところでガイドラインをつくる意味があるわけで、このガイドラインをつくる委員会で、 中身は大変だから何も決めないということにすれば、それはもう逆に法律で決めていた だくということになってしまいますので、ここはぜひきちっと一個一個の操作について、 だめなものはだめだという形でご審議いただきたいと思いますし、そういったことはそ のときのさまざまな状況の中で臨機応変に変えられるということであるからこそガイド ラインで決めているわけで、そういったことについて一定の期間、社会の発展があるか ら云々ということであれば、それは、逆に言うと、きちっと法律で大枠を決めましょう ということにほとんど等しいんだと思っております。ぜひそこはこのガイドラインに委 ねられたということの意味については、重く受けとめていただきたいと思っています。 ○笹月主査  ですから、きょう、もう一気に、何でもいいです、これはやめておきましょうではな くて、いろいろやっぱり考えてみる必要があると思いますので、この禁止事項はもう何 もありませんというのではなくて、少し時間を置いて、次回また議論するということに いたしましょう。 ○高木委員  それならば、どういうものがあるのかを挙げてもらわないと、漠然と私たちにそれを 投げられても…… ○笹月主査  いやいや、それでそこに出たわけですよね。遺伝子操作、あるいはX線、紫外線。 ○高木委員  X線、紫外線、さらに化学物質。それはどういう化学物質なのか、どれがいい、悪い など…… ○笹月主査  いえいえ、そういうことではなくて、これは例示として出されたわけで、このように、 何が禁止事項でありましょうかというのがきょうの議論のあれだったわけです。先ほど のように、特定胚のところでこれは禁止されていますという話もありましたけれども、 そういうことだって、ここでやっぱり出てくるべき項目なわけですよね。ですから、禁 止事項はもうやめにしてあれにしましょうというのではなくて、もう一回次回にその禁 止事項については検討するということにいたしましょう。 ○町野委員  先ほどの局長さんのお話のようなものでもないように思います。  分割胚を認めるかどうかとは、これは「指針」と言っても法令のうちの一つですから、 こちらのガイドラインで変更するわけにはいきません。それは議論することは自由です けれども、法令を変えるということは話は別です。  もう1つの問題は、先ほどの操作についての遺伝子改変を伴うものについてですね。 これ、何も規制すべきでないと皆さんおっしゃっているわけではなくて、これをガイド ラインの中で最初から禁止してしまうのは妥当か、それぞれの倫理委員会でやっぱり検 討して決めるという余地を残すべきではないかと、そういうご議論なわけですから、完 全に何もかも自由にしろというわけではない。 ○笹月主査  そんなことは言ってないです。ここでは何も言わずに、機関の何とかに任せましょう というのがさっきの意見です。 ○町野委員  ですから、その機関のほうが禁止するかどうかの決定をすべきだということです。も ちろん、その前に議論はしておく必要はあるだろうと思いますし、先ほどのご議論にあ りますように、「人の生命の萌芽」という非常に不幸な表現がとられているために、か なり議論が複雑になっております。それでやっぱり少し考えなければいけない。ここで 議論はしておかないと、それぞれの倫理委員会で議論するときに、やはりそれは難しい 問題があるだろう。それはそうだろうと思いますけれども、ここで何も禁止の中に、ガ イドラインの中に入れなければならないということではないと思います。 ○笹月主査  まあ、そんなことは言ってないと思いますが。  それと、ここではやめにして、各IRBに任せましょうというと、これはまた錯綜し て…… ○加藤委員  最終的には大体実質的な規制は何も書かないで、放射線を当てるだとか、化学物質の 操作を与えるとかの操作については、人間の尊厳に配慮して十分慎重に行われ、なおか つ、何とか審査委員会で審査されることが望ましいとか、ねばならないとか、そういう いわば空ぜりふを入れておいて、さもガイドラインの手抜きをしたという印象にならな いようにするということは、これはできると思うんですよ。 ○笹月主査  いや、だけど、そうしますと、Aという機関ではオーケー、Bという機関ではノーと いうことでもよろしいのかということになりますね、そういうことは。 ○加藤委員  それは場合場合で、研究の目的……実質的な審査は研究の目的にとって適切であるか どうかということだけだと思うんですよね。それはケース・バイ・ケースで違いが出て くることはあると思いますよ。 ○笹月主査  そういうことも含めて、次回によく考えましょう。  ちょっと時間がなくなりましたけど、中辻先生、さっきの、いわゆる生殖補助医療に 資する研究と、先生の言う科学的に合理的なものというものとの分け方、このあたり、 いつも最後までまた議論しなければいけない大事なところだと思いますので、もうあと 5分しかありませんので、ちょっともう一回。そこがちょっと、さっき…… ○中辻委員  特に大したことは言っていなくて、つまり、科学的な合理性があるというのは、当然 どんな研究計画でも必要ですね。ただ、この場合はもっと強い要請があると思うんです ね。それは、さっき鈴木委員がおっしゃったように、ヒト胚を新たにつくってやる必然 性、余剰胚ではなくて、新たにつくった胚に対して行う研究だという、それでなければ できないというふうな必要性で、しかも、生殖補助医療に資するというところまで限定 されていきますから、実際、私、どんな研究が許可しうるのかわかりません。実際には ないのかもしれません。  ただ、それを包括的に禁止しておくということになってしまえば、ガイドラインはフ レキシブルだとおっしゃいますけど、ガイドラインを変えるには2年ぐらいかかるわけ ですよね。で、だれかすばらしいアイデアを見つけたり、これでウィルスベクターで、 これを入れてこういうことをすれば不妊治療とか何とかが解決するというような研究を 思いつくかもしれないわけですよね。そういったときに、それが2年間日本ではできな いということになってしまうというのは、あまりにも限定的すぎるのではないかと思う んですね。  ですから、加藤委員がおっしゃったように、ある意味では、胚に対してダメージなり、 ストレスなり、そういうことを与えるような研究に関しては、十分な合理性と、必然性 と、新たな胚をつくって行う必然性まで含めて、あることが説明されない限り許可でき ないとか、そのことを入れておけば、それはクリアできると思うんです。 ○笹月主査  なかなか難しい問題をたくさん含んでいますので、はい、これはオーケー、これはノ ーとか、なかなかいかないわけで、少し時間がかかると思いますが、もう少し議論と。 (2)その他 ○笹月主査  それと、次回のことが、例えば、10月30日とか何とか予定が言われていますけど、 あんまり時間を置くと、また最初からやらなければいけないみたいなことにもなるので、 もう少し期間を詰めてというのはどうですか。 ○高木委員  堂々めぐりのような感じがありますね。 ○笹月主査  あまり期間を置くと、前回の生々しい議論を忘れちゃって、また蒸し返しで。 ○高木委員  全く前に進んでいないような。 ○長野安全対策官  おっしゃるとおりで、できるだけ期間は短めにしようと。今回も努力したんですが、 なかなか先生方の日程調整が合わなくて……。 ○加藤委員  じゃあ、今度で全部終わりにするという目標にしたらどうですか。 ○笹月主査  そうはいきませんわな。  何かディテールではなくて、プリンシプルに関してきょう出た項目について、ちょっ とまとめて、メールで皆さんに送っていただけますか。プリンシプルに関してね。 ○長野安全対策官  それで、きょう先生方のご意見を、論点をまとめた形で、全体の原則的なところです ね。 ○笹月主査  ええ、あまりディテールは必要ありませんから、プリンシプルに関してどうかという ことをね。  そうしますと、一応事務局できょう議論いただいたことのプリンシプルのところをま とめていただいて、委員に送っていただいて、そして、少しやりとりをしてということ をいたしましょう。そして、次回、こういう項目について議論をするということをその 時点で決めて、それで時間の、もう日程はフィックスされていますか。 ○根本補佐  次回でございますが、10月30日の3時から5時ということで予定をさせていただ いておりますが、会場などはまだお知らせ申し上げたいと思います。なかなか先生方の ご都合が合わなくて、10月30日ということになってございます。 ○笹月主査  それはそれでやむを得ませんかね。どうなんですか。これはひとえに委員が一番集ま れる日がそこだという、そういうことですか。 ○根本補佐  ええ、会議の開催の条件といたしまして、定足数というのがございまして、定足数が そろうご都合を全部そろえますと、どうしてもその日になってしまうということがござ いまして、やむを得ないという状況はございます。 ○笹月主査  そうすると、メールでのやりとりで、プリンシプルに関するメールのやりとりという ことでリプレースしようという。 ○長野安全対策官  ぜひ生々しい議論をずっと先生方にご記憶いただくためにも、途中段階でフィードバ ックしながらご相談いただきたいと思います。 ○高木委員  フィードバックが少しずつ進んでいればいいけれど、毎回前回の議論に戻っているよ うな気がします。 ○笹月主査  私としてはそうですけど、議論の深まりは、やむを得ないと思います。 3.閉会 ○笹月主査  お忙しいところ、どうもありがとうございました。 −終了−  事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室       電話:03−6734−4108(直通)      厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課       電話:03−5253−1111(内線7938)