06/09/08 第3回生協制度見直し検討会議事録 第3回生協制度見直し検討会議事録 日  時:平成18年9月8日(金)17:00〜19:00 場  所:厚生労働省17階 専用第18・19・20会議室 出席委員:清成座長、大塚委員、小川委員、品川委員、土屋委員、山下委員、吉野委員 議  題:(1)共済事業の現状と見直しについて      (2)その他  ○清成座長  定刻になりましたので、ただいまから第3回生協制度見直し検討会を開催させていた だきます。委員の皆様におかれましては、御多忙中のところ御出席いただきまして大変 ありがとうございます。  初めに委員の出席状況について事務局から説明をお願いいたします。 ○千田課長補佐  委員の出欠状況でございますけれども、本日は委員全員の方から御出席との連絡を受 けております。吉野委員が若干遅れられているようでございます。  続きまして、前回の検討会を他の公務の都合により欠席させていただいておりました けれども、担当の審議官を御紹介させていただきます。審議官の御園慎一郎でございま す。 ○清成座長  本日は共済事業の見直しに関する議論を行うことになるわけでございますけれども、 参考人として全国労働者共済生活協同組合連合会の経営企画部長の崎田様に御出席いた だいております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは議事に入ります。初めに事務局から、前回までの検討会の経過について確認 のために説明をお願いします。 ○花咲課長補佐  それでは御説明させていただきます。お手元の資料1と2でございます。資料1は第 1回検討会で委員の皆様方からいただいた意見を事務局で整理した資料でございます。 適宜御参照いただければと思います。続いて資料2をごらんください。こちらは前回の ヒアリングで各団体から表明された御意見や、その後の質疑応答で出された御意見を、 購買や利用事業を主として行う地域生協、職域生協、共済生協に分けて、論点ごとに事 務局として整理したものでございます。以下簡単に御説明申し上げまして、後ほど整理 の仕方等について何か御意見があれば賜れればと思っております。  まず1〜3ページは購買事業や利用事業を主として行う地域生協に関して出された御 意見をまとめたものでございます。論点は、Iの員外利用からVの地域貢献の位置づけ までの5つに分けられるのではないかと考えております。  まず員外利用に関連しまして、生協の本質については組合員利用を前提としている点 が閉鎖的だと感じられているという御意見の一方で、生協が組合員の相互扶助組織であ るという基本的考え方は今後も変わらないとする御意見がありました。次に員外利用規 制についての基本的考え方でございます。定款で定めて2割を限度に員外利用を可能に してほしいという御意見の一方で、利用限度を定めれば中身を問わないとするのは適当 ではないという御意見や、員外利用を認める場合には法体系の中で個別具体的に限定列 挙すべきという御意見がありました。さらに、具体的な必要性に関して、幾つかの事例 について員外利用を可能にしてほしいとの御意見がありました。  II、県域規制に関する御意見をまとめております。基本的考え方でございますが、広 域で生活圏や生協の活動範囲をとらえても問題ないとの御意見がありました。具体的な 必要性に関して、県境付近の店舗利用のニーズ、県内人口の減少等により成長性確保が 難しいため、県境を越えた連帯が必要との御意見がございました。  3ページをごらんください。III、組織・運営規程につきましては、基本的考え方とし て、ガバナンスの法制化は必要との御意見がありまして、具体的な例としては、役員の 責任規程の創設等が必要との御意見がございました。  IV、共済事業の兼業規制でございますけれども、兼業規制は組合員の暮らしを総合的 に守る生協と相入れないという御意見がある一方、組合員の意識として、確実な支払い が保証されていることも必要であるとの考え方はないのかとの御意見がございました。  V、地域貢献の位置づけでございます。生協の地域貢献の位置づけを法的に明確にす べきとの御意見がございました。  4ページですが、こちらは職域生協に関する御意見でございます。I、員外利用規制 について、職域生協は閉鎖的環境下で組合員サービスを提供していることから、母体企 業や労働組合による利用、期間従業員による利用を可能とすべきとの御意見がございま した。  II、区域規制に関する御意見。職域・地域混合型を選択できるようになってもいいの ではないかとの御意見がございました。  III、退職者についても組合員資格を認めるべきであるとの御意見がございました。  5〜7ページは共済生協に関する御意見でございます。I、見直し全般についての考 え方でございますが、資料中に「*」印が書いてありますが、こちらは御意見が多かっ たために見やすさ等を考慮したものでありまして、特段意味はございません。御意見の 内容としては、協同組合の特性を今後とも維持できるような法改正や、他の協同組合法 を参考にした契約者保護制度の充実の必要性に関する御意見がありました。また、検討 の際は生協共済と保険、生協共済と農協共済の差を考慮すべきとの御意見や、保険業法 並みの募集規制等が必要であるとの御意見がございました。  6ページをごらんください。具体的な見直しが必要と考えられる事項でございますけ れども、今日の生協の社会的責任にかんがみ、組合員保護のためのルールやガバナンス 体制の構築が必要との御意見がございました。また、組合員の利便性に対応するため、 共済代理店や共済金最高限度額の撤廃など、各種規制の整備が必要との御意見もござい ました。一方、員外利用の緩和、県域制限の撤廃等については、保険と生協共済の違い をあいまいなものにするとの御意見がございました。また、保険契約者保護機構のよう な機関もない中では、共済金の最高限度額はおのずから制限されるべきであるとの御意 見がございました。  以上が資料2についての御説明でございますけれども、資料のまとめ方等について何 か御意見があればお聞かせ願えればと思います。 ○清成座長  どうもありがとうございました。ただいまの説明について、整理の仕方等も含めまし て御意見等ございましたら、御自由に御発言いただきたいと思います。 ○中村社会・援護局長  資料を提出させていただいておりますが、月曜日に開催したヒアリングを我々の方で まとめたものでございまして、今初めて見ていただくわけでございますし、まとめ方等 について問題があれば後日言っていただければと思います。きょうは共済事業について 御議論いただきますので、そういった中でいろいろな論点が出てくると思いますので、 御意見があれば後ほどでもいただければ、手直し等は次回させていただきたいと思いま す。 ○清成座長  そうですね。それではそのように処理いたしたいと思います。御意見がございました ら、後ほどの御発言の中でも結構ですし、後刻事務局の方にお伝えいただいても結構で ございます。  それでは引き続き、共済事業の現状及び見直しについて、事務局から資料の説明をお 願いいたします。 ○花咲課長補佐  引き続き御説明させていただきます。資料3〜5になっております。大部な資料とな っておりますけれども、お許しいただければと思います。  まず資料3、共済事業の現状をごらんください。この資料は第1回の資料より、より 詳細な形で生協が実施する共済事業の現状についてデータをまとめたものでございま す。まず1ページでございます。ここでは共済制度や保険制度全体において、生協共済 が制度上どのように位置づけられるかをお示ししております。生協が実施する共済事業 は農協共済と同様の制度共済でございます。その他、根拠法のない共済事業や保険業法 に基づく保険業などがございます。生協においてみずからが責任を負う形で元受共済事 業を実施している生協は139組合となっております。この中には連合会も含みます。  続きまして2ページでございます。4つの指標ごとに見た生協共済のシェアをお示し しております。共済、保険における生協共済の占めるシェアは、総資産が2.5%、受入 共済掛金額が3.1%、支払共済掛金額が2.1%となっている一方、契約件数は全体の11.7 %を占めていることを示しております。1件当たりの共済掛金額が生協共済の場合相対 的に低いと言えると思います。  続きまして3、4ページをごらんください。元受共済事業を実施している139の組合 のうち、連合会である10組合について特徴等をまとめたものでございます。後ほどご らんいただければと思います。  5ページをごらんください。元受共済事業を実施している139の生協について、事業 の実施状況等を分類したものでございます。まず共済期間が1年を超える長期共済を行 っている生協は7組合、また、契約者割り戻しを行う生協は5組合となっております。 共済金額が100万円以上の組合が46組合で、兼業実施生協は66組合となっております。 今後続く資料は、この139ある元受共済事業を実施する組合に関する資料でございます。  6ページをごらんください。第1回検討会で、生協が実施する共済事業のうち小規模 なものについてのお尋ねがありましたので作成した資料でございます。生協法上、共済 金額が100万円を超える共済事業を行う場合は厚生労働大臣による最高限度額の許可が 必要になっておりますけれども、元受共済組合のうち許可が不要な100万円以下の事業 を行っている93組合について、それぞれ共済金額別の分布をお示ししたのがこの資料 でございます。全体の約9割が100万円ちょうどを最高限度額としております。  7ページをごらんください。元受共済事業実施組合の総資産額規模別組合数分布でご ざいます。総資産額5000万円未満から2兆円以上まで幅広く分布しており、1組合当 たりの平均総資産額は約400億円となっております。  8ページをごらんください。7ページとの関連で元受共済事業実施組合ごとに総資産 額をお示ししたものでございます。平均総資産額が400億円であることにかんがみます と、一部の生協の総資産額が非常に大きいということがおわかりになるかと思います。  9ページをごらんください。こちらは連合会を除く元受共済生協の組合員数規模別組 合数分布をお示ししたものでございます。1000人以上から100万人以上まで幅広く分 布しているものの、平均組合員数をとりますと約30万人と、生協についてはかなり組 合員数規模が大きいことがおわかりになるかと思います。  10、11ページでございます。両ページは元受共済生協の出資金額規模別組合数分布を お示ししております。まず10ページですが、こちらは連合会を除く組合に関する分布 をお示ししております。出資金額1億円以上が全体の約9割を占めていることがおわか りになるかと思います。11ページをごらんください。こちらは連合会について見たもの でございまして、出資金額10億円以上が全体の約9割を占めていることがおわかりに なるかと思います。  続きまして12ページでございます。元受共済生協の負債総額規模別組合数分布をお 示ししております。会社法上の大会社のメルクマールとなっております負債総額200億 円以上という基準で見ますと、139組合中14組合がそれに当たることがおわかりにな るかと思います。  13ページをごらんください。元受共済事業を行う生協の兼業状況をお示ししたもので ございます。兼業割合は全体で約5割となっておりまして、地域・職域組合別に兼業状 況を見ますと、地域生協の方が兼業割合が高くなっております。  以上が資料3に関する説明でございます。続きまして資料4、共済事業に係る規制の 現状等をごらんいただけますでしょうか。1ページでございます。共済事業の法律上の 位置づけをお示ししたものでございます。共済事業には、組合員から共済掛金の支払い を受け、共済事項の発生に関して共済金を交付する事業である共済事業と、共済事業の 一部を受託して行う受託共済事業がございます。共済事業のうち、共済契約者1人につ き共済金額総額が5万円以下のものについては、共済事業規約の設定等に関する行政庁 の認可が不要とされております。  続きまして2〜4ページ、こちらは共済事業を行う組合に対する現行の法令上の規制 をお示ししたものでございます。組合全般に関する規制と、共済事業実施組合にのみ適 用される規制の両方がございます。まず入口規制ですが、組合を設立しようとするとき は定款等を提出し、行政庁の認可を受けることとされております。ただし、定款等が法 令違反の場合や、事業実施の経営的基礎を欠く場合を除いては基本的には認可されるこ とになっております。また、共済事業を行う場合には、共済事業の種類ごとにその実施 方法や契約掛金の算出に関する事項等を共済事業規約に定め、それについても行政庁の 認可が必要とされております。ただし、契約者1人当たりの共済金額が5万円を超えな いことを定める規約については、この認可は不要とされております。  続きまして、内部の体力を充実させるための規制を健全性に関する規制としてまとめ ております。厚生労働大臣が共済掛金や共済金の最高限度を定めることができ、最高限 度を定めた場合には大臣の許可を受けたときに限り、その最高限度によらないことがで きるとされております。また、共済を図る事業を行う組合は、その経理と他の事業の経 理を区分しなければならないこととされており、特に自賠責に関してはそれに限っての 区分経理が義務づけられております。また、共済を図る事業を行う組合は、原則として これらに係る経理から、それ以外の事業に係る経理へ資金を運用してはならないことと されております。  続きまして3ページでございます。共済事業を行う組合については、責任準備金等、 一定の準備金の積み立てが義務づけられており、資産運用の方法やその割合に関しても 一定の規制が置かれております。そのほか、剰余金の積み立て義務等、組合全般に関す る規制も適用を受けております。次にお示ししておりますのが透明性に関する規制でご ざいます。組合全般に関する規制として、定款や総会議事録、事業報告書、財務諸表な どを主たる事務所に備え置くこととされており、組合員及び債権者の閲覧が可能となっ ております。  続きまして4ページをごらんください。破綻時の契約者保護としまして、自賠責共済 については契約の包括移転が可能とされております。また、行政庁による監督としてま とめさせていただきましたが、一般的な報告徴収や、立ち入り検査の規定がございます。 また、報告徴収ですが、共済事業実施組合が法令等を守っているかを知るために特に必 要があるときには、当該組合の子会社に対しても報告を求めることができるとされてお ります。また、検査の結果、法令等に違反していた場合には、一般的な措置命令や事業 停止命令などが可能となっております。  引き続き資料5、共済事業の見直しについてでございます。本日は特に共済事業に関 して、その共済事業としての特性に着目して、問題となる論点について御議論していた だくべく本資料を御用意させていただきました。1ページに目次がございます。本資料 は総論部分と各論部分に分かれておりますが、各論部分で御議論いただく個別の論点は 全部で19項目となっております。なお、すべての項目について改正の方向性として何 らかの方向性をお示ししてはおりますが、あくまでも委員の皆様に御議論いただくため のたたき台でございますので、後ほどいろいろな御意見をいただければと思っておりま す。  まず総論部分について御説明申し上げます。3、4ページに共済制度の見直しの基本 的考え方を御説明しております。共済事業を取り巻く状況として、契約件数の増加など、 共済事業の規模は拡大しております。また、他の協同組合法においても契約者保護のた めの改正を行っており、生協共済についても法改正の必要性が指摘されているところで ございます。このような中、生協共済においても契約者保護の観点から、その健全性を 担保することは時代の要請であり、共済関係の規制整備は早急な対応が必要な状況とな っております。  5ページをごらんください。この表は、共済制度や保険制度に関して規制の有無を比 較したものでございます。最低出資金、これは共済事業を実施する生協が最低限保有し なければならない出資金額に関する規制でございますが、これを初めとする契約者保護 のための規制が他の協同組合法においては設けられているにもかかわらず、生協法には 設けられていないことがおわかりかと思います。逆のパターンになっているのが共済金 の最高限度に関するものでございまして、他の協同組合法には定めがないにもかかわら ず、生協法にのみ定めが置かれている状況でございます。  続きまして6ページをごらんください。生協の行う共済事業に対して措置を講じる場 合の基本的枠組みについての考え方をお示しししたものでございます。農協が行う共済 事業は連合会が共同元受で、かつ支払い責任を全額負っており、規制についても一律に 規制措置が講じられている状況でございます。また、事業協同組合については共済金額 が一定以下のものについては対象外とした上で、それ以外にものについては一律の規制 を行った上で、さらに特定の項目については組合員数が一定規模以上のもの等に上乗せ で規制している状況でございます。一方、生協の共済事業の現状でございますけれども、 農協と異なりまして連合会が実施する共済事業もあれば、それぞれの組合が独自に元受 共済事業を行っている場合も多く、その規模についても多岐にわたっております。これ らのことを踏まえ、生協においては共済金額が低額な給付のみを行う場合は規制対象か ら外した上で、その他については引き続き一律に規制措置を講じた上で、さらに特定の 項目については生協の特質を損なわない範囲で上乗せ規制を講じることとしてはどうか と考えております。この点については後ほど各論でも触れますので、そちらでもう一度 御説明させていただきます。  7ページでございます。この図は、各論で御議論いただく項目について、どのような 場面で問題になるかをお示しするために作成した資料でございます。まず入口規制の問 題がございます。これは共済事業を開始するにふさわしいかどうかをチェックする意味 を持っております。また、実際に事業を実施する段になりますと健全性を確保すること が必要になってまいります。さらには、外部からの監視機能を充実させ、事業の透明性 を確保することが必要になってまいります。さらに、契約者と生協の関係での論点がご ざいます。一つは、契約締結時に契約者保護を図ることが必要となってまいります。ま た、生協が組合員の相互扶助組織であることからも、契約者のニーズを反映した円滑な 事業実施を図ることが必要になるかと思います。さらに、経営が万が一悪化した際には 契約者をいかに保護するかという問題がございます。以上のような視点から、今から御 説明させていただきます各論の各項目について御議論いただきたいと思っております。  それでは各論について御説明させていただきます。9ページをごらんください。これ から御説明する個別の論点の内容を簡単に説明したものでございます。  続きまして11ページ、規制対象の範囲に関する論点がございます。生協の現状とし て、生協が共済事業を行う場合には共済事業規約を定めることとされており、1人当た りの共済金額が5万円を超えないことを定める規約の設定や変更の場合を除いては行政 庁の認可が必要とされております。ただし、5万円を超えない場合でも事業規約の認可 が不要とされるだけで、共済事業に関する他の規制の適用は受けることとなっておりま す。これに関しては先ほど総論部分でも触れましたが、改正の方向性として、共済金額 が極めて低額な見舞金的な給付のみを実施している場合には、組合員による自治運営に ゆだねることが可能であることから、法令上、共済事業に関する規制の対象からすべて 外すこととしてはどうかと考えております。その際、この5万円という基準が昭和34 年から見直されていないことを踏まえ、その金額を引き上げてはどうかと考えておりま す。御参考までに、各種指標に基づき、昭和34年当時の5万円の現在価値をお示しし ております。  続きまして2、入口規制でございます。こちらも論点は1つでございまして、13ペー ジ、最低出資金をごらんいただきたいと思います。最低出資金とは、共済事業を行う組 合が最低限保有すべき出資金額をいいます。生協法にはこれに関する規定はございませ んが、他制度には規定が設けられており、例えば農協では原則として連合会が10億円、 その他の組合で1億円と定められております。改正の方向性でございますが、共済事業 を行う生協についても最低出資金を設定することとしてはどうかと考えております。  続きまして3、健全性に関する検討項目について御説明させていただきます。これに 関しては4つございます。まず15ページをごらんください。諸準備金の充実でござい ます。準備金は、財務の健全性を確保し、十分な支払い余力を確保するために積み立て を義務づけるものでございます。生協法の場合、積み立てを義務づけている準備金の種 類が農協法と比べて少ない状況となっております。16ページの生協の現状にございます ように、定款で定める額、出資総額の2分の1以上に達するまでは毎事業年度の剰余金 の10分の1以上を準備金として積み立てなければならないとされておりますが、農協 法や中協法では出資総額に達するまで毎事業年度の5分の1以上を積み立てることとさ れております。そこで改正の方向性でございますが、準備金の種類を拡充し、利益準備 金の積み立て割合等を引き上げることとしてはどうかと考えております。  続きまして18ページでございます。健全性に関する2つ目の論点、共済計理人の活 用でございます。共済事業の長期にわたる健全性を確保するため、高等数学の知識を有 する専門家の関与を義務づけるものでございます。農協法では、専門家である共済計理 人は共済掛金や責任準備金の算出方法に関与することとされており、毎事業年度末には 責任準備金の積み立てや剰余金の割り戻しの適正さなどについて確認の上、理事会に意 見を提出することとされております。19ページでございます。生協の現状でございます が、生協については通知で一定の組合について共済計理人の関与を求めてはおりますが、 法令上の規定はございません。そこで改正の方向性としまして、長期共済を行う生協や 契約者割戻しを行う生協には共済計理人の関与を法令上義務づけることとしてはどうか と考えております。また、割戻しの公正さを共済計理人が確認することとした場合には、 現在割戻しに際して必要とされている厚生労働大臣の承認を不要としてはどうかと考え ております。  続きまして21ページをごらんください。健全性に関する3つ目の論点としまして、 共済事業とのリスク遮断でございます。共済事業に他の事業の影響が及ぶことをいかに して防止するかという問題でございます。22ページをごらんください。生協の現状でご ざいますが、生協法上、兼業規制に関する規定はございません。一方、農協では共済事 業を行う農業協同組合連合会について、また事業協同組合では、行政庁の承認を受けた 場合を除き、組合員数が一定規模以上の組合や、再共済事業を行う組合について、兼業 が禁止されております。そこで改正の方向性でございますが、生協が実施する共済事業 の多様性や組合員のニーズに対応して共済事業が発展してきたことを十分踏まえる必要 はあるものの、一定規模の組合や再共済等を行う連合会については兼業規制を導入ずる ことについてのお考えをお聞かせいただきたいと思っております。  続きまして23ページでございます。健全性に関する最後の論点は健全性基準、いわ ゆるソルベンシーマージン比率でございます。健全性基準とは、通常の予測を超えて発 生するリスクに対応できる支払い余力をその生協が有しているかを判断するための行政 監督上の指標でございます。24ページをごらんいただきますと、生協法上このような規 定はございませんが、改正の方向性としまして、他の協同組合法にならい、この制度を 導入してはどうかと考えております。仮に導入するとした場合には、その範囲について も御議論いただければと思います。  続きまして、外部からの監視機能を充実させるという意味での透明性に関する論点で ございます。論点は2つございまして、まず26ページ、経営情報の開示の義務づけで ございます。生協の現状にございますように、法令上、業務や財産の状況に関する説明 書類の公衆縦覧を義務づける規定はございません。そこで、共済事業の透明性を担保す べく改正の方向性としまして、公衆縦覧を義務づけてはどうかと考えております。  続きまして27ページでございます。透明性に関する2つ目の論点は外部監査につい てでございます。外部監査とは、財務状況の健全性を担保するため、公認会計士や監査 法人による監査を義務づける制度でございますが、生協法上これに関する規定はござい ません。改正の方向性としましては、他の協同組合においても負債総額が一定以上の組 合については外部監査が義務づけられていることから、生協についても負債額を基準と して、規模が一定以上の場合には外部監査を義務づけてはどうかと考えております。  続きまして、契約締結時に契約者をいかに保護するかという点に関する論点が3つご ざいます。まず29ページをごらんください。1つ目の論点は共済推進時の禁止行為等 でございます。契約者に対して虚偽のことを告げてはならないなど、共済推進時に守る べき事項を定め、組合の役職員の共済契約締結に関する能力の向上を図ることなど、共 済事業の健全な運営を図るための措置を義務づける制度でございます。30ページをごら んください。生協の現状でございますが、一部通知に規定があるものの、法令上は推進 時の禁止行為に関する規定がございません。そこで改正の方向性としまして、他法にな らい、組合の役職員等が遵守すべき推進時の禁止行為等を定め、共済事業の健全な運営 を図るための措置を義務づけることとしてはどうかと考えております。  続きまして32ページをごらんください。共済代理店に関する論点でございます。前 回のヒアリングで全労済さんからも御要望がございました。共済代理店とは、組合の委 託を受けて、その組合のために共済契約の代理または媒介を行う者で、その組合の役員 または使用人ではない者をいいます。下の図はその仕組みをお示ししたものでございま す。33ページ、生協の現状でございますが、生協法上、共済代理店に関する明確な規定 は存在しません。一方、農協や事業協同組合においては代理店に関する規定が設けられ ており、自動車共済等に関する業務を実施できるとされております。また、代理店を設 置した場合には行政庁に届出を行い、共済契約締結時の禁止行為の各規定が代理店にも 適用されることとされております。改正の方向性でございますが、組合からのニーズが あること及び委託を受けて共済事業の一部または全部を行うものについても、共済推進 時の禁止行為に関する規定が適用される必要があることから、代理店に関する規定を設 けた上で、代理店にも共済契約締結時の禁止行為の規定を適用することとし、また、そ の設置に際しては行政庁への届出を義務づけるなどの措置を講じてはどうかと考えてお ります。その際、組合員のニーズ等を踏まえれば、共済代理店が実施する業務の範囲を 自動車共済事業等に限定する必要はないのではないかと考えております。  続きまして34ページでございます。契約者保護のために、他法にならい、生協法に もクーリングオフ制度に関する規定を設けてはどうかと考えております。  引き続き6、破綻時の契約者保護に関する論点でございます。万が一のときにいかに 契約者を保護するかという観点から、次の3つの論点がございます。まず36ページを ごらんください。契約条件の変更でございます。この制度は逆ざや問題を解消し、契約 者保護を図るため、組合−共済契約者間の自治的な手続により予定利率を引き下げる仕 組みでございます。具体的にはそこに図示したような手順で行われています。37ページ でございますが、生協法上このような仕組みに関する規定はございません。改正の方向 性としまして、農協法にも設けられているこのような仕組みを生協法上も設けることと してはどうかと考えております。  次に38ページでございます。2つ目の論点は契約の包括移転でございます。通常、 共済契約は個別に契約者の同意を得て移転しなければならないものでございますが、共 済契約を他の共済事業実施組合に包括的に移転することを可能にする制度でございま す。39ページの生協の現状にありますとおり、現行の生協法では自賠責に関する包括移 転の規定はあるものの、その他の共済については規定が設けられておりません。そこで 改正の方向性としましては、生協においても組合の破綻等による契約者の不利益を未然 に回避するため、自賠責共済以外についても共済契約の包括移転を可能としてはどうか と考えております。  続きまして40ページをごらんください。セーフティネットに関する論点でございま す。他の協同組合には設けられていないものの、保険会社には設けられている保険契約 者保護機構に類似の仕組みを生協法上も設けるかどうかという問題ですが、改正の方向 性にございますように、生協は実施する事業が多様であり、共済事業を実施する場合で も、それが事業全体に占める割合はさまざまであり、組合が破綻する理由もさまざまで あることが予想されることから、保険契約者保護機構のような仕組みを生協法上設ける ことにはなじまず、契約の包括移転や再共済のさらなる活用等によりリスクを分散する こととしてはどうかと考えております。  7、契約者ニーズを反映した円滑な事業実施でございます。論点としては5つござい ます。まず42ページをごらんください。1つ目の論点は、共済金の最高限度額の見直 しでございます。生協の現状でございますが、生協共済の共済金最高限度額については 法律及び告示において、共済事故1件につき100万円を限度とすると規定されておりま す。ただし、厚生労働大臣の許可を得た場合にはこれによらないことができるとされて おりまして、通知において共済種別に最高限度額を規定しております。その具体的な額 はそこにお示ししたとおりでございます。43ページでございます。他制度の状況は先ほ ど○×表でお示ししたとおりでございまして、他の協同組合法にはこのような規定はご ざいません。改正の方向性としまして、定款の記載事項として共済金額の最高限度が定 められており、共済事業規約については行政庁の認可が必要とされていること等から、 今後は最高限度額規制を撤廃することとしてはどうかと考えております。  続きまして44ページでございます。2つ目の論点として保険代理、すなわち、生協 が保険会社等の業務の代理を行うことを可能にしてはどうかという論点がございます。 45ページ、生協法上、生協が保険代理を行えるという規定はございませんが、農協や事 業協同組合においては保険代理業が可能となっております。そこで改正の方向性ですが、 組合員の利便性向上のためにも、共済事業を行う組合が保険代理業を行えるとしてはど うかと考えております。  続きまして46ページでございます。契約者ニーズを反映した事業実施のための3つ 目の論点は、資産運用に関するものでございます。生協の現状は、法令上、厚生労働大 臣の承認を受けた場合を除き、一定の方法及び割合での運用が義務づけられております。 他制度の状況もそこにあるとおりでございます。保険業法などを見ますと、事業の規模 により、少額短期保険業においては運用規制が異なっております。47ページ、改正の方 向性でございますが、共済事業における資産運用については一定の安定性が必要である 一方で、運用制限により資産の有効利用が妨げられ、組合員の利益を損なう恐れもある ことから、他の諸制度などを参考に、組合の規模なども踏まえつつ、運用規制について 見直しを行ってはどうかと考えております。  続きまして48ページでございます。共済事業を行う際に作成が義務づけられており ます共済事業規約を変更する際の手続の簡素化に関する論点でございます。生協の現状 にありますとおり、共済事業規約を変更する場合には例外なく総会の議決が必要で、か つ行政庁の認可が必要となっております。一方、農協においては共済規程の設定や変更 のうち軽微な事項に関しては総会の議決が不要とされており、変更に際しての行政庁の 認可は必要ではなく、届出で足りるとされております。そこで改正の方向性でございま すが、生協においても共済事業規約の変更手続について、軽微な事項については総会の 議決を不要とするなど、一部について簡素化してはどうかと考えております。  長らくお聞きいただきました論点もようやく最後でございます。組合員ニーズを反映 した事業実施のための最後の論点は、職域組合における退職者の組合員資格でございま す。生協の現状でございますが、生協法上、職域組合の組合員資格は、一定の職域内に 勤務する者のほか、定款により職域の付近に住所を有する者で、その組合施設を利用す ることを適当とする者を組合員とすることができるとされております。そこで、職域組 合の組合員が退職した場合にも、付近に住所を有する場合には引き続きその生協の組合 員となることができるとされております。しかしながら、ヒアリングでの団体からの御 意見にもありましたように、共済事業等を退職と同時に利用できなくなると支障が生じ る可能性があることから、居住区域に関係なく退職後も引き続き生協の事業を利用でき るよう、退職者が職域生協の組合員となれるよう、法律上明確にしてはどうかと考えて おります。  長くなりましたが、以上でございます。 ○清成座長  どうもありがとうございました。それでは、これから約1時間、御意見をちょうだい したいわけでございます。特に資料5について、大変論点が多様でございますけれども、 どこからでも結構でございますので、ぜひ御意見をちょうだいしたいと思います。 ○大塚委員  大部にわたる資料の整理、大変御苦労さまでございました。私がこれから申し上げる 話は共済の本質にかかわるベースから、具体的には資料5の22ページ、他業規制の問 題につなげる一貫した問題でございます。ここで講釈するような能力は持っておりませ んし、余り前提論を長くするつもりはないんですけれども、今までの保険業法改正から 農協法、中協法ときた改正の流れの位置づけを明確にしておきたいと思うんですが、こ れは私のひとりよがりである危険性もございますので、後でいろいろ御意見、御批判を 仰ぎたいところでございます。  相互会社という組織がございまして、昔は保険業法の中の相互会社でも保険金削減が できるという条項がありまして、これは先年の保険業法改正で削られて、相互会社でも 保険金削減を社員の合意でしてはいけないということになりました。これに象徴される ように、保険業法で保険金を払われる契約者の安全を図れという方向をどんどん強めて いったという経緯は、相互会社というのはその理念からすると、みんなで保険をやりた いから集まったから、何でも自分たちで決めていいから、保険金だって足りなくなった ら削減を決めていいんだというスタンスから、いやそんなことはない、近代的な相互会 社では株式会社の契約者と同じじゃないかと。保険金をしっかり払ってくれることを最 重視しているに決まっているというところから制度が変わってきたわけですね。  次に農協法になったときにも、農協共済は組合ですから、相互会社以上に組合色が強 い。つまり、これから私が言うことのベースは、組合であれば組合員が決めたことに従 えという原則が一方であるはずなんですね。ところが、全共連に見られるように、農協 共済は大きな組織になって、保険金をちゃんと払ってもらうことが安定するに決まって るじゃないかという考え方になったので、言ってみると組合員が自由意思で決めるとい うことを押して、共済契約者に共済金を払うことを確保せよという方向で押してきたと 思うんですね。つまり、組合色というのは組合員が何でも自分たちで決めればいいじゃ ないかということに対して、業法改正の流れから今回の生協法改正にも影響を及ぼして いる共済契約者の保護というのは、余り融和しない話だと思うんです。押してくる話だ と思うんですね。今回それが一番出ている点として、完全な他業禁止というのがあるわ けで、他業に共済で使っているお金が流れちゃったら、結局支払われる共済金が減るじ ゃないかということから他業禁止が制度化されると思うんですけれども、生協と農協の 違いを先回のときに明確にした方がいいんじゃないかという意見がありました。僕もそ れに賛成なんですけれども、同じ協同組合であっても生協と農協は違う。農協の場合に リアルに違うところは、共済連合会が共済しかやっていないので、全共連は共済をやっ ている組織として独立した事業体ととらえればいいわけです。だから他業を考えなくて いいわけなんですけども、生協の場合は連合会でさえ兼業連合会が結構あって、各単位 にいったら完全に兼業状態になっているというところからすると、それはやっぱり組合 員のやりたいようにやらせろという方向は強いんじゃないかと思うんですね。確かに共 済をやっているから共済契約の支払金を確保しろという要請はあることはわかるんです けれども、生協の場合には農協のときにやったような、全共連は他業をやってはだめだ というやり方ができないのではないかと僕は非常に危惧するんです。現実問題としても、 全労済はまさに共済事業をやっている大きな組織だというので、よく農協の全共連と比 較されるわけなんですけれども、その全労済でも、他業の範囲をどこまで広げるかとい う問題になっちゃうんだと思うんですけれども、例えば介護事業に手をつけているとい う現状がございます。そのときに、ばしっとそれをやめろという話になったときに、現 実としてそれがシビアに徹底できるのかというのは非常に危惧する話と、それからもう 一つは、理論的にいったら、生協の場合には組合員に聞いて、組合員がいいと言うこと はやっていいんじゃないかという、それは守るべきなのではないだろうかという気がす るんですけど。いかがでしょうか。  つけ加えますと、組合員の意向を無視してまで、経営に当たっている理事等が勝手に 他業をやるというのはもちろんだめだと思います。だけども、生協がやる方向として、 特に生協の場合には利用事業がありますので、購買・利用について共済とコラボレーシ ョンをして組合自体の発展につながるという方向だったらば、組合員の意思としてはも しかすると兼業をやりたいかもしれない。ですからその組合員の意思を重視した上で、 兼業規制をそこまで及ぼすのはどうかなという話でございます。 ○清成座長  どうもありがとうございました。せっかくの問題提起でございますので、今の点につ いてほかの方々いかがでしょうか。 ○土屋委員  農協の共済については先生がおっしゃったように、全共連で一括してやっております ので、そこについては他業とは重なっていないということなんですけども、他業と一緒 にやるとうまくいかないかどうかということになりますと、例えば韓国の農協の場合は 韓国農協中央会ということで信用事業も共済事業も、その他販売・購買事業も一つの組 織・団体でやっておりまして、日本の農協と比べても遜色のないそれなりの社会的評価 がある団体であります。農協の場合は、共済事業はおっしゃったとおりなんですが、信 用事業についてはそれぞれのJAで兼業という形でやっておりまして、そのこともそれ でいいのかという議論にはなるわけでありますが、そこは信用事業における規制であり ますとか、ディスクロージャーとか、区分経理の規制ですとか、そういったことで対応 していくと。例えば自己資本比率規制ですと、ほかの事業をやっていれば、その事業の リスク資産に見合った自己資本も要求をしましょうと、オペレーショナルリスクについ ても、経済事業のオペレーショナルリスクに見合う自己資本も要求しましょうと、こん なふうな形になっております。 ○清成座長  ほかの委員の方、いかがでしょうか。 ○小川委員  大塚委員がおっしゃってくださったように、私も共済事業を生協で始めるときに組合 員として非常に楽しみに受けとめたことを覚えています。それは保険業としての、ある いは金融や保険に対しての不信が一般化している中で、共済というので、自分たちで相 互扶助的に助け合う仕組みをつくれるというのに非常に夢を持った覚えがあります。組 合員として責任を持って自主管理・自主運営していくという基本のもとで、もしそれが できるならば使い方も含めて総代会で決定していく、運営に責任を持つというふうに思 っていました。  きょう事務局の説明を受けて一つ私思い出したんですけれども、ことし4月の介護保 険改正の議論の中で、今回の改正の論点として保険の安定した継続、将来ビジョンを見 据えた介護保険事業にしていこうという中で、この間4、5年経ている中の事業者のモ ラルと、使う側のモラルが非常に問われた5年だったなと。今回の見直しの論点もその あたりが非常に厳しくなって、ある意味で規制をぐっとかけたという感じがあります。 それによって現場ではさまざま改悪だなんだと非難を受けていますけれども、それ以前 に、制度ができると必ずモラルを崩す人が出てくる。それは事業者にも出てくるけれど も、使う側のモラルも出てくるというふうに思っていますけれども、本来共済の論点も、 なぜ生活協同組合がわざわざ共済するかということが非常に問われたのではないかと思 っていまして、前回の参考人、きょうの説明を聞いていても、一般の商品と変わらない ものをつくっていくんだったら、言われているように安全を担保するためにそれが必要 だけれども、しかし生活協同組合がわざわざ共済しているからには、何が特徴で、何を 自分たちの自己責任としてやっていかなきゃいけないかというところが、まだ論点とし ては出ていないなと思っています。  指摘のように、保護という形、あるいは保険としての安全性・継続性の形からとると 守るということがありますけれども、一体何を守るのかといったときに、私は生活協同 組合で共済をやるときに、画一ではなくて多様なニーズに対してどうこたえていくかと いうことをどこまでやれるかということを非常に夢を持ってきたんですけれども、そこ が一つもしかしたら弱いのかなというふうにも思っています。  照らして考えてみると、生活協同組合って何ということと、そこがやる共済事業とい うのは何というのが、どこで強く特徴が出せているのかが私自身も見えていないので、 そこを見せていく中で今回の方向性でいいんだろうかというのはすごく懸念していると ころです。 ○清成座長  どうもありがとうございました。少し論点が広がりましたけど、どの論点でも結構で ございます。 ○山下委員  根本的な問題は、保険と共済というのは違うのか、同じなのかというところで、これ は議論し出すと非常に深遠な哲学的な問題まで立ち入るものかと思いますけれども、基 本的には使っている技術は同じ仕組みで、リスクを分散して相互に保障し合うと、その 点は同じだろうと思うんですね。そういうものを現代社会で事業として営むのに、これ は素人でできるわけではなくて、それなりの技術、専門的な能力が要るんだろうと。そ ういうものがないところで、言葉は悪いですけど、どんぶり勘定でやっていくというの は、自由にできるという面で保険なり共済というシステムに加入する人々にとっては一 見メリットがありそうに見えるけれども、しかしそれがうまくいかなかった場合のリス クというのは非常に大きいということで何らかの規制は事業として要るんだろうなとい う整理をしているわけです。  ただ、そのときに保険会社が行っている事業に対するのと同じ規制をすべて入れなく てはいけないかというと、保険業法でも少額短期の保険事業者については緩和した特例 を設けているわけで、高度な規制をするというのはそれなりにコストもかかるわけです から、そういうことをしてまで規制することが加入者のメリットになるかという角度も もちろん考えているわけで、そうすると非常に高度な規制と、そうでもない規制という のが現実にあるわけで、それをどういうふうに振り分けていくかというときに、どうい う座標軸で見ていくかを考えていく必要があります。従来の保険業法や制度共済に関す る議論の中では、万一うまくいかなくて破綻しても、どのくらい加入者に自己責任で損 失を負担させてもいいのか、これは一つ少額という観点になると思います。  もう一つが、特に制度共済の議論の中では、協同組合における自治という観点がもち ろんあると思うんですけれども、これも組合で自治はやっているわけですけれども、自 治の実質をどのように評価するか。まさに大塚先生がおっしゃったような相互会社とい うのも、これも相互扶助組織で保険をやりましょうという、哲学的には似たようなもの で、相互会社の人は自分たちは相互扶助をやっていますと必ず言うわけでありまして、 その面で同じなんだけども、そういうところでの社員の自治というのをもとに何か規制 を緩和していいんだろうかと。それは今の相互会社の実態から見ればおかしいだろうと いうことで、株式会社並みになっているわけで、そういう面では組合の場合も、ある程 度地域的に限られた数で、組合の数も少ないというところで、実質的な自治が機能する 局面と、組合の範囲が相当拡大して、自治が実質的に必ずしも機能していないものとで は程度が違って、そういう座標軸も考えながら具体的な規制の程度を変えていくという のを従来もやっているわけで、ここでも恐らくそういう方向になるのかなと思います。 きょうの資料5のいろいろな指摘も基本的にはそういう観点でつくられているのかと思 います。これを具体的にどういうふうに決めていくかというのは、またそれぞれの段階 で問題になると思いますけど、大きな流れとしてはそういうことがあるのではないかと いう感想でございます。 ○品川委員  保険というものと共済というものと、それを商品としますと、商品としてはかなり似 たものだろうということからの御指摘がございました。私は前回のヒアリングのときの 発言などもそういうことだと思ってるんですけれども、商品そのものということよりも、 生活協同組合という組織の性格と一般事業者の組織の性格の違いが大きいのだと思って おります。生活協同組合の場合は生活を共同しながら相互扶助をしていくというのを基 本的な性格にしておりまして、生活というのは幅広い中身で、その一部分が購買事業で あったり、一部分が共済事業であったり、あるいは福祉であったり、旅行に行ったり、 生活の切り口というのはたくさんある。生活協同組合というのはいろいろな切り口を持 ったトータルな生活を、当面それぞれの条件の応じてどの分野を事業化しながら生協の 仕事をしていこうかということで成り立っている。そういう点では、一般の事業体とい うのが損害保険という事業をやろうとか、生命保険という事業をやろう、流通事業をや ろうと、一定の事業を出発点にするということとまず大きな違いがあるんだと思ってお ります。  もうちょっと現実の話をしますと、生活協同組合の現場では消費者活動、組合員活動 というのはいろいろな形で行われますが、購買生協にまつわる消費者活動の伝統的な柱 というのは家計簿活動というのがあるわけです。家計簿をつけながら暮らしを合理的に 進めようということをお互いに勉強し合うようなことです。近年は購買事業のところで やってきた家計簿活動というのが、日常の出納を管理するということだけでなしに、生 活の将来構造も考え合うような活動とリンクしようと。その意味では家計簿の活動と社 会保障でどういう保障が将来あり得るのか、それとの関係で保険をどう利用するか、共 済をどう利用するかというような、ライフプランという言い方をしたりするわけですけ れども、そういう枠組みで消費者活動をやっているというのが急速に広がりつつありま す。  消費者の場面でそういうことがあるのと同時に、生協側の対応の仕方も、購買事業に 対応して配達の仕事をしている職員が、組合員と日常的な触れ合いの場を持つわけです が、そういう場で共済についても紹介するとか、そういう活動が行われる。単位生協の 場面での活動というのはまさに生活相互扶助という場面でありますから、特定の生活部 分だけでの事業なり相互扶助活動というふうにならないのが生協の特徴だということ が、単位生協の現場には存在しているんだと思っております。  一方、共済事業というのが大きくなっていったときに、その安定性確保ということか らリスク遮断の要請が起こってくることそのものは、一方では私も理解できるところで ありまして、例えば単位生協の現場という場面と違って全国規模で共済事業を行ってい て、かつ、共済事業にせよ、他の兼業対象事業にせよ、大規模で行っているような全国 的な連合会という場合は、リスク遮断の措置をとる。だけど生活の場面である単位生協 の場面では今申しましたような事情があるから、これは別の問題として考える必要があ るのではなかろうか、基本的にはそんなふうに思っておりまして、保険会社という場合 と、協同組合、生協という場合の違いがその点にあって、その辺は十分押さえながら今 度の検討を進めていただく必要があるのではなかろうかと思っております。 ○吉野委員  そうすると、相互扶助の目的のためには区分経理や資金流用の規制もしないでいい、 あるいは緩くてもいいということになるのですか。 ○小川委員  私は基本的に、合わせていくのではなくて、違いを明確にしていきたい。明確にでき ればそういう可能性もあるだろうと思っていますが、今のように一般にある共済の中で 生協がわざわざやる共済としての個性が見いだせないで商品化していくと、吉野さんや 山下さんがおっしゃるように、特別扱いはないだろうというふうには思っていますけれ ども、その個性をどれだけ出すかという問題なんですね。今でこそ年金の問題というの はクローズアップされてきますけれども、共済が始まったときには主婦年金とか女性の 社会的な位置づけというのは非常に難しい問題があって、家計簿という以前に、既にそ のときに生活協同組合の中でも消費者金融問題はそろそろ出てきていたころだと思いま すし、女性の年金をどうしていくかという問題も議論としてあったときだと思うんです ね。そういう意味で、自分たちの相互扶助の仕組みの一つとしてこのことに取り組んで いくというふうに考えていたんですけれども、今や多重債務の問題も、年金問題も、社 会保障問題も、一人の人間として一人一人にかかってくる問題ととらえたときに、生活 協同組合の共済をどのように機能させるかという議論は今後やっていかなきゃいけない だろうと。それが明確に出せたときには、安全性あるいは透明性という意味ではリスク マネージメントを考えていくときにもう一度考え直す範囲は変わってくるだろうなとは 思っております。 ○吉野委員  私は生協の活動に素人なものですからわからないんですけれども、ここでリスクの問 題を言うのは、共済でも保険でも、これで自分たちの生活の安全を保障しようと思った ら、それが裏目に出て全く逆になっちゃった、という話が多発したわけですね。そうい うことは生協の場合に限って起こらないということは考えられない、だから起こったと しても助け合いだからみんなで我慢しようよという話で許せる話かどうかが問題で、そ のことを前提にして、兼業も構わないという話をなさっているのかどうかということな んです。 ○小川委員  そうではないです。 ○吉野委員  ちゃんとした区分経理をやり、金融事業としてそれなりの独立した運営をやるんだと いうことが前提だとすれば、準備金の引き上げあるいはその他のコンプライアンスに伴 う規制をなぜ他の共済や保険と分けなくちゃいけないのか、その理由が、助け合いの話 からだけだとよくわからないんです。 ○大塚委員  私はそう申し上げたわけじゃなくて、事務局のこの資料にほとんど僕は賛成なんです よ。だけど、それは協同組合というものの理念からすると、金がなくなったらみんなで 泣けばいいんだよという話になっちゃうから、それは協同組合の理念をそっちに持って いっちゃまずいから規制しようよという方向に来たのは、それを全部やめろと言ってる わけじゃないんです。だけども、究極のところで譲れないことはあるだろうと言ってる んです。他業の厳格禁止についてはだめだろうと。僕の代替案を言うなら、区分経理な いしはもっと明確な分離勘定を導入して、信用事業についてはそれをやっているわけで すよね、事実上。それでできるものであれば他業の厳格禁止という非現実的な方法をと るよりも、現在の生協活動をある程度存続させて、利用事業や購買事業と共済事業をぱ たっと切れるわけじゃないというのが共済の特徴だとするなら、分離勘定の徹底でやっ た方がいいというわけで、準備金の明確な規制とか、積み立てを10分の1なんていう のは甘え過ぎだと僕は思ってますので、それは積み上げてもらいたい。そういうことは すべて賛成なんです。だけど最後の最後の一歩なんですね。ですから、その意味では吉 野委員が思ってるほど僕は自由化をしろとか言ってないわけです。 ○吉野委員  ちょっと考え方を整理するために意地悪い質問をするんですけども、この問題を保険 の側から見れば、先ほどは保険の種類について、生協らしい商品の開発をということを おっしゃった。それは現状の保険会社がやっているものでは不十分だと、あれではとて も自分たちのニーズに合ってない、だから自分たちでやりましょうという話であるとす れば、私も今の保険会社が商品開発の十分な企業努力をやってきたと思わないんだけど、 彼らがそういうことをこれからやる可能性はないのかというと、それは彼らなりにやっ ていく可能性はあるだろうし、一般論としていえばそういう可能性を伸ばすような市場 の仕組みをつくっていかなければならないというのは、これは今の日本の国のコンセン サスとしてあるんだろうと思うんですね。そうだとすると、それと対等でないところで しか十分なニーズにこたえる商品を開発できないという理屈はどういうことなのかな と。その説明をお聞きしたいんですよ。なぜそれだけすごい商品開発能力があるんだろ うという意地悪な話なんだけど。 ○小川委員  意地悪とは思わないですけども、生協も問われていると思うのは、生活者のニーズと いうのは非常に複雑多様になってきていて、しかも国が出される社会保障は不安定にな ってきていて、お金がないと生活できないという不安はすごく今持っていると思います。 生活協同組合というのは自分たちの意見を出し、その討議をし、そして決定していくと いう、非常に身近なところで自分の生活保障をつくる可能性が非常にあるところですね。 そういう意味での商品開発、共済の対応力を多様につくっていく議論ができ、それを自 分たちが使えるような制度にしていくということの身近なところはあると思うんです ね。じゃあそれを一般のところではできないのかとなったときは、例えば生活協同組合 の共済を見てそれでつくっていこうというのはあるでしょうけれども、だから一本化で いいのかといったらそうではないと思うので、開発の可能性は多様にはあると思います が、私は身近なところで自分たちで決定するということは非常に重要な仕組みだったと 思います。 ○吉野委員  私の言い方が不十分だったかもしれないけど、だったら、それは対等な条件下でやれ ばいいじゃないかという疑問にどうお答えになるのか、なぜ優遇しなくちゃいけないん だという話なんですよ。 ○小川委員  優遇されていることを守ろうとは私は思っていません。このことが全面的に反対とか いう意味ではなくて、全部を魂を売るようなことはどうなんだろうと思っていて、そう であれば日本に生活協同組合があることの存在意義が問われる話にも今後ずっといきま すよね。そういう意味で言ったわけで、全部これが反対とか言ってるわけではないです。 ○大塚委員  現行の生協法でも、10条は事業を多様に規定してるんですよ。例えば10条1項6号 を見ると、「前各号の事業に附帯する事業」という書き方をしているところから見ます と、これは解釈の対立がありますけれども、この事業は相互のコラボはいけないわけで はないだろうと。附帯する事業があるんだから、附帯事業がほかの事業に流れていった んだったら、別に一つ一つ切っているわけじゃなくて、融合事業ができるんじゃないか というのが一方の考え方であるわけですね。それに見られるように、生活協同組合とい うのは共済だけじゃない。吉野委員の今の質問に答えるのであれば、生協がやるのは共 済だけじゃないからと。共済事業をやって、それについての一つの事業としての安定性 を図るんだったらば保険業法が一番それにすぐれた対応をしているわけです。そうする と保険業法のすぐれた規制の仕方を導入してもいいけれども、それは一つの事業にすぎ ないんだと。事業体としての生協全体を見たときには、例えばほかの事業とコラボする 可能性があったら、そこは保険業法の及ばない範囲だろうということを言っているわけ です。  ただし、そういうことを言いますと、一番具体的な話として言えば、それができると かできないとかについては全然考えはないですけど、現物給付をする共済というのは生 協の現行10条に基づいてつくったらやれないことはないんじゃないだろうかという解 釈さえできるわけですね。そうすると、生協のやっている共済の発展可能性ということ を考えたら共済というのは一事業にすぎないという見方からそういう話をしたんです。 ただし、僕はそれをやれと言っているわけでもないし、将来そういう現物給付の共済が 出たら厚生労働省が音を上げると思うんですね。だからそれは現実的ではないと思いま す。ただ、理論としての可能性として、共済は事業の一つにすぎないというところを僕 は申し上げたかった。 ○吉野委員  しつこいようですけど、仮に生協に関しては一般論としてそういうことが言えたとし ても、金融に関連する分野の話はなぜ規制が厳しいかといえば、あれは要するに人様の お金を預かってやる事業について、いいかげんなことをさせないぞという意味なわけで すよね。ほかの事業と違う趣旨でそもそも規制が存在しているわけですから、それをも 超えて兼業、あるいは相互扶助、コラボが成立するというためには、もう一つ何か説明 が必要なんじゃないかなと思えてならないんですけど。そうでないと、裏返して言えば 保険の場合だって、銀行の場合だって、ついこの間起きたように、最悪の場合には国民 の税金を使って処理しなければならないような事態になるわけですね。競争条件を対等 にというのは、保険会社、金融会社の肩を持って言う話ではなくて、そこをきちんと規 制をするということ自体が国民の生活の安定のための基礎的な条件だということでやっ てるんだと私は理解してるんですけども、そういう意味でいうとこの話はどういうふう に整理されるんだろうと。 ○大塚委員  わかりました。そういう意味からいうんだったらば、農協法の改正のときも契約条件 の変更については農協法もOKじゃないですか。現実的な意味から保険業法でさえ契約 条件の変更は入りましたけど、これは大変保険会社はずるいやり方をやったと僕は思っ てるんです。それに比べて農協法で契約条件の変更をできるというのは、最後の最後は やっぱり組合だよというところだと思うんですね。それと同じように、契約条件の変更 を考えるんだったらば、安全に安全を重ねる監視、入ってから契約継続中と破綻時と、 まずやるべきことではあるんです。それでもだめだったときにといったら協同組合理論 が出るんだと思うんですよ。僕はもろ手を挙げて契約条件の変更条項は入れてほしいと 思ってるし、それと同じ意味で厳格な他業の禁止というのが必要ではないと思ってます。 そこが最後の最後なんです。吉野委員が言うように、保険会社に対するような厳格な規 制を敷いて、そこまでは同じなんです。というのは、共済事業は一つの事業ではあるけ ども、人の金を預かってる事業ですからとても大変な事業なんです。だからその点につ いては、現行の最高と思われるような保険業法の規制を敷けと。だけど最後の最後なん です。その場合には最後は協同組合なんだろうということなんですね。 ○品川委員  破綻時対応ということは、兼業禁止ということだけではなしに、セーフティネット問 題なりトータルにあるんだと思います。それはトータルに整備される必要があるという のは、かなりの部分先ほど事務局から御説明があったことに私も賛同する部分が大きい んです。兼業禁止という問題については、資料の22ページに農協法のケースなども書 かれておりますけれども、農協の全国連合会の共済事業については兼業禁止規定という のは明文化されていて、単位生協についてはその規定は存在しないということがあるわ けです。そういう点では農協の単協というのと生協の単協というのはある種似た面があ って、生活の場面場面を切り取って、その場面で単協ということではなくて、単位生協 というのはまず生活協同と。農協の場合は生産者としての協同という面も一緒になる。 生協の場合には生活者という側面での協同です。  いずれにせよ、トータルな面での相互扶助組織ということでの相互扶助ということは あって、そういう点でいうと、生協の場合に購買という面と共済という面と福祉という 面が生活の場面では一つ一つ切り離されるものではなくて、トータルに営まれている。 それを生活の場面で協同する活動なり事業なりというのは、一定総合化されたものとし てされる条件が維持されておく必要があるだろう。その場合に、経営破綻対応というの はきちんととる必要があるし、リスク遮断という意味合いについても、そういう組織の 構造の中でどう取り入れていくかということは必要なんだろうと思います。その場合に 単位生協まで含めてということと違って、農協と同じように全国連合会についてはリス ク遮断、兼業禁止というのを何らか、全国連合会の兼業禁止というのも、生協の場合に は歴史的経過がいろいろございますので、共済事業を大規模に行いながらほかの事業に ついてはごく一部という全国連合会もあったりするわけです。そういう点からしますと、 全国連合会の場合で兼業するにしても、兼業する両方の事業が相当規模になっているよ うな場合について、何らか兼業禁止のような措置をとるということはあり得ることだと 思っております。  そんな点でいうと、御提案のあった資料の22ページに改正の方向性ということで御 指摘があるのは、連合会と同時に一定規模の組合を対象に含めておいでですけど、単位 生協の場合には一定規模があっても、前回のヒアリングのときにさいたまコープが説明 していたように、1000億を超えるような生協であっても、一つ一つの生活点では生活は 一つのものですから、子育ても購買も共済も一緒くたになって行われているというのが 実態です。連合会の場合と単協とは区別して対処する必要があるのではないか。22ペー ジの御指摘については、考え方はわかりますが、連合会についてというふうに絞った上 で整理していただくことが必要ではないかと思っております。 ○清成座長  崎田さん、何か御意見ございますでしょうか。 ○崎田参考人  いろんな御意見をいただきましたので、私が感じたところを含めて幾つか。それから、 前回専務の方がいろいろとお話しさせていただきましたけれども、御質問いただいたこ とで保険との違いはどういうことがあるんだということについて、その辺の補足も含め てお話しさせていただきたいと思います。私の場合はどちらかというと実務の方を担当 しておりますから、実態論の中の話ということで聞いていただければと思います。  まず、先ほどから規制の問題ですとか、健全性基準の問題ですとか、開示の問題です とか、透明性の問題ですとか、いろいろ御議論いただいていると思いますけれども、そ ういう必要性があるものは基本的にやっていかなければいけないと思っております。こ れはせんだっての小野岡の要望の中でもそういうふうにしているということを前提条件 にしながら、ただ、生協の特性の中でどうなのかというものについては、ここをどう考 えるかということが一つの論点なのかなと考えております。  例えば、私どもは今基礎利益を自主的に開示しております。さらにいいますと、もう 5、6年前からそれを3利源ごとに自主的に開示しております。生保の方では大手が今 年ぐらいから3利源別に開示されるようですけれども、私どもは、生保さんや他業界は 開示していなかったのに、数年前から自主的に開示させていただきました。理由は簡単 でございます。組合員が望んだからです。組合員の討議を年2回くらい、今年でいきま すと1万7000人くらい参加しておりますし、全国600会場くらいでやってるんですけ ど、その中で、もっと透明性を高めてください、私たちのお金についての透明性を高め てくださいという意見がたくさん出ましたから、組合員に有益であれば法律にあろうが なかろうがやるべきだということで、非常に苦しかったんですけれども、やらせていた だきました。同じように、経理の面でも区分経理をしっかりしていくということも、法 令上もありますし、事業別の損益を明らかにするとか、こういうこともきちっとやらせ ていただいております。  というように、基本は組合員さんにとって有益なこと、組合員さんが望まれていて判 断するのに困らないこと、こういうことをベースに、どこかがやるからこうだじゃなく て、必要があれば自分たちからやることが、基本的な視点ではないかなと思っておりま す。  前回、参考資料の中で共済協会の方でみずからつくりました実施基準、ソルベンシー マージン比率を自主的にやりましょうとか、開示をやりましょうとか、いろんなことに ついて公表させていただいた資料を出させていただきましたが、これも同じ仕組みで、 組合員さんからそういうものを自主的にやったらどうですかと。特に大規模になってき ている生協さんについてはそういうことが必要ではないかという御意見をたくさんいた だきましたから、じゃあやりましょうということで、自分たちでやってきました。必要 があるのであれば組合員さんに問うて、組合員さんがリスク遮断しなさいというのであ ればするべきだと思っておりますし、そういうものをやりなさいというのであればやる。 こういう運営を基本にしていきたいなと思っております。制度の開発にしましても、マ ーケティングをかけて、こういうものが必要じゃないかということで商品を開発はして おりません。組合員さんの中で、こういうものをつくっていただきたいというものがあ れば、その制度をつくる場合には技術が要りますので、当然保険の技術も使いながらや りますが、その発端というのはこちら側からつくるということではなくて、こういうと ころが足りないからこういうことをやってほしい。じゃあそれができるのかどうかを検 討してやるというふうに現実的にやらせていただいております。  こういうような実態がございますので、基本はそういうふうに置きながら、自分たち でまずきちっとやるということ。どこかがやったからということではなくて、そういう 視点で前回、小野岡の方が自治、自主という言い方をしましたが、そういう視点を大事 にしながらできることはきちっとやることだと思います。生保さんや損保さんが入れら れている技術で必要なものについては、透明性や健全性がとらまえられるような高度な 事項があれば、事項ごとに自分たちで判断してやるということが必要ではないかと思っ ております。 ○清成座長  崎田さん、全労済の事務局体制というのはどのくらいの規模になってるんですか。 ○崎田参考人  役職員で3700名くらいでございます。 ○清成座長  専門家の方も大変多くいらっしゃるんだと思いますけど、つまり事務局の論理で動い てしまうというようなことは全くないということなんでしょうか。 ○崎田参考人  絶対ないのかと言われますとあれですが、活動計画ですとか、こういう商品をつくり ますというのは、年2回の組合員討議を通過して、そして総会で決定していただかない とつくれないようになっておりますので、基本的にはそのルールを守るべきではないか と。それが生協ではないかなと思っておりますので。実態の運営上はそれを守っており ます。 ○吉野委員  繰り返しで恐縮ですが、私も生活協同組合の存在意義については、経済の市場化が進 んでいる現状で大事な存在であると、もちろんそう思っているんですけれども、それと さっきからの話はちょっと違う話ではないでしょうか。今の話をお聞きすると、そうい う生協活動の趣旨にのっとってとてもうまくいった話ですよということはわかるんです けど、じゃあいつもいつもうまくいくのかということが問題なのであって、うまくいか なかったとんでもない生協を私たちはたくさん見てきてるわけです。財政に火がついち ゃってどうにもならないとか、実態を隠しちゃった悪質な例だとか。協同組合の成功例 や一般論のプリミティブな話をうかがっても、これからも大丈夫だとは素直には思えな い。金融の話がなぜ規制が厳しいかといえば、ほかの分野だったら、私のところは一生 懸命やりますと言えば、どうぞ自由に勝手にやりなさいと言えばすむ。だめになったり 問題を起こしたりしても、それは事後に始末すればいい、それが消費者に累が及ぶよう なことがあったとしても、それは事後のセーフティネットを整えておけばいいという話 です。ところが金融の話は影響が大きすぎる、広がりすぎるからそうはいかない。だか ら、この分野に関しては事前規制が必要ではないかという話をしてるわけです。私のと ころは一生懸命やりますという話だけでそれを任せるわけにはいかないから事前の規制 をどうするかという議論なのであって、それについて生協がどういうふうにこたえるか という話をしていただかないと、まだ私としてはよく理解できないということなんです けど。 ○清成座長  単位生協でもそうでしょうけど、あるいは共済事業の規模が大きくなればなるほど生 協らしさというのは消えていくわけでしょ。 ○小川委員  私の顔を見て言われても、私はそうですとは言いませんけれども、企業でも倒産する ところは倒産するし、経営のだめなところはだめというのは、株式会社であれ生協であ れ一緒だと思ってるんです。生活協同組合の社会的に必要な役割というのは、ある意味 で社会的な相互牽制力を持つことだというふうに私はずっと、どの活動でもそのスタン スでやってきたんですけれども、福祉においても流通においてもですね。そういう意味 で、金融や保険の問題というのも、市場にあるからそれに乗っかっていくだろうと。し かし、そこに正直な決定なプロセスだとか、経営の透明性だとか、そういうことを考え ていく一つの牽制力としてどう役割を果たすかということと、先ほど商品はどこでも開 発するだろうと言われたように、身近な決定のプロセスの中で自分が自分たちの生活に 必要というものを、組合員の討議と総意をもってつくっていくというものがあってもい いと思ってこの間きていて、それが大きくなってきたから一定程度の基準にちゃんと乗 っかってやりなさいよというところは別に反対してるわけじゃないんです。ただ、私は 社会的な牽制力として、多くの人が見えない問題とか、希望していることを代弁するの が生活協同組合の役割としてすごい高いと思っているので、そういう共済があってもい いだろうという主張なんですね。ですから、経営は生協だけがだめなわけじゃないと思 います。逆に吉野さんが生協の共済を特別優遇するというものを与えるとしたら、どん なものだったら与えるというふうに考えるかというのも、一つ考えてもらいたいと思い ます。 ○清成座長  よくわかります。組織の運営の原理としては株式会社がシンプルなんですよね。生協 は原理原則が2つあるんですよね。この2つは矛盾してるんですね。矛盾してるものを 統合してるものだから、議論するとどこかで……。恐らく規模が大きくなればなるほど 限りなく株式会社に近づいてしまうんですね。そういう面があるんですよね。私はかつ て信用組合、信用金庫を調べたことがあるんです。規模が大きくなって金融機関として 成功すればするほど株式会社の銀行に近づくんですよね。これは員外利用から、テリト リーも広域になりますし、信用組合というのは預金も貸し出しも全部組合員内部で、そ れが信用金庫になったら貸し出しなんか広がりますよね。預金も員外に広がっていくと。 ヨーロッパの例を見てると、ほとんど信用金庫は銀行になっちゃうんですね。日本でも 信用金庫が銀行になった例があるわけです。これは購買事業だって、大きくなればなる ほど限りなく株式会社のスーパーに近づいていくんですよね。しかも専門能力を持って いくということも確かなんですね。  ややこしいのは、生協の場合に2つの原理があるんじゃないかという。事業が大きく なって成功すればするほど株式会社に近くなる。そうすると組合員の利害から離れるじ ゃないかと。原点に回帰しなければならないと。それで相互扶助ということをまた言う ということで、ぐるぐる回ってるんですよね。それは100年も前にテンニエスという社 会学者が見事に指摘してるんですよね。ゲマインシャフトという相互扶助の組織からゲ ゼルシャフトになっていく。これは社会という意味もあれば会社という意味もあります。 ゲゼルシャフトということは結局は株式会社ということになるわけですね。しかし社会 的にそういうものが覆ってしまうとぎくしゃくするというので、それでテンニエスはゲ マインシャフトとゲゼルシャフトのいい点だけをとろうといってゲノッセンシャフトと いう組織を考えたんですね。これが協同組合というふうに翻訳されたわけです。  だけど考えてみたら、相互扶助の原理と株式会社の原理というのは矛盾したものをそ もそも持っているのが協同組合なんですよね。内部に対しては常に相互扶助とか、ある いは自主性とか自己責任とか言う。しかし外部に対しては明白に、規模が大きくなれば なるほど生協であっても完全に保険会社のライバルになるわけですよね。だから経済主 体としては完全に同様になってしまう。だから規制をかけろという話にもなってくるわ けです。問題は、生協らしさというのが一体どこまで保持できているのかという、その 辺で適当に線を引くしかないんじゃないかという。 ○山下委員  うちの家で加盟してる生協なんかも、食べ物の安全性みたいなものを非常に強調され ていて、それは大いに賛同して使ってるわけです。金融とか保険についていえば、まさ に安全であるということが食べ物の安全性と全く同じような意味合いを持つと思うんで すね。それを保障できないサービスというのは幾ら生協のフィロソフィがあるからとい って、そう正当化されるものではないんだろうということでして、経営される側から考 えても、自分たちに技術的な能力があって、基盤がないと恐ろしくて提供もできない話 になってくるというのは直感的にわかるだろうと思うので、ただそうはいいながらも生 協の運動の中で組合員に、100%、120%の安全性はないけれども、こういう理念でやっ てますという考え方も一方であると思うんです。それがどこまで正当化できるかという のは、余り大きい余地はないと思うんですけれども、そういう余地もあるかもしれない ので、そこを考えるということでしょう。大規模になればなるほど理念だけで動いてい ける世界ではなくて、一定の技術が要るんだろうし、そういう技術を確認していけば法 律上の規制というのがまさにそういうものですねというところがおのずとわかってくる んじゃないかなという気がするんですが。 ○清成座長  きょうは本質論というところまでいって、大変有益な議論が展開されたんじゃないか と思います。ただ、結論的にいえば、きょうの資料5のいろんな項目における改正の方 向性という点では皆さん方そんなに意見は食い違わないような感じもするんですが。 ○小川委員  基本的にはそうだと思うんですが、改正の方向性という黄色い枠の中をどう考えてい くかの問題は、共済だけの問題じゃなくて、生活協同組合の問題ですから、きょうで終 わりということではないと思うんですね。ちょっと私が気になっているのは、根拠法の ない共済というところもありますけれども、それと保険と制度共済のはざまにある根拠 法のない共済というところに、もしかしたら小さなさまざまな公的な助け合いの問題が あるかもしれない。ですから、大きな流れの中に飲み込まれていく、それを基準として いくことと、もう一つは、多様性をどのように考えていくかというしなやかさを持つと いうのがこのあたりにもしあると、そこのはざまに今生協の共済事業のところが置かれ ているような気がしますので、ここはぜひもう少し議論をする時間を持ってからにして いただきたいと思います。 ○清成座長  きょうのところは議論を展開するということで御発言いただいたわけでございます。 予定の時間が来ておりますので、本日の検討会はこれまでにしたいと思います。引き続 き議論を続けるということになろうかと思います。  次回の日程について事務局から御説明をお願いいたします。 ○千田課長補佐  次回の日程につきましては9月27日水曜日、10時から12時までを予定しておりま す。開催場所等の詳細につきましては後日改めて御連絡さしあげます。よろしくお願い いたします。 ○清成座長  それでは、以上をもちまして本日の検討会を終了したいと思います。どうも大変あり がとうございました。 (了) (照会先)  生協制度見直し検討会事務局            厚生労働省社会・援護局地域福祉課(内線 2854、2875)