労災保険

『アフターケア』制度のご案内

 はじめに

 労災保険制度では、業務災害又は通勤災害により被災された方に対して、その方の症状が固定した(治ゆ)後においても、後遺症状に動揺をきたしたり、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることから、必要に応じ予防その他の保健上の措置として「アフターケア」を実施しています。
 アフターケアは、労災病院、医療リハビリテーションセンター、総合せき損センター、労働者災害補償保険法施行規則第11条の規定により指定された病院又は診療所若しくは薬局で行うことができますが、その対象となるのは各対象傷病ごとに定められた範囲内の措置に限られています。
 このパンフレットでは、アフターケアの対象傷病の範囲をはじめとして、手続等について紹介しておりますので、ご一読の上、参考にしていただければ幸いです。

〜お知らせ〜

 平成18年4月より、次の(1)から(5)が新しくアフターケアの対象となりました。
(1)尿路変向術後(尿路系障害) (2)ペースメーカ又は除細動器の植え込み後(虚血性心疾患等) (3)循環器障害 (4)呼吸機能障害 (5)消化器障害

 尿道狭さく(尿路系障害)及び慢性肝炎については、平成18年4月より措置内容に変更があります。
 特に、慢性肝炎については、措置内容から薬剤の支給等が除外されていますので、ご留意ください。


平成18年4月

厚生労働省
都道府県労働局
労働基準監督署



 アフターケアは、傷病が症状固定した後における保健上の措置として、次の一覧表に掲げる21傷病について、1か月に1回程度の診察及び保健指導その他一覧表に掲げる検査等一定の範囲内で必要な措置を行うものです。
 なお、詳細については各々の頁を参照してください。

アフターケア制度一覧

対象傷病 措置の範囲
炭鉱災害による一酸化炭素中毒症
薬剤の支給   精神安定剤、鎮痛剤、他
健康診断   全身状態の検査、自覚症状の検査、他
せき髄損傷
処置   褥瘡処置、尿路処置
検査   腎機能検査、膀胱機能検査、他
薬剤の支給   褥瘡処置用・尿路処置用外用剤、抗菌剤、他
頭頸部外傷症候群等
検査   頭部コンピューター断層撮影、脳波検査、他
薬剤の支給   抗てんかん剤、循環改善剤、他
尿路系障害
処置   尿道ブジー、尿路処置
検査   腹部超音波検査、CT検査、他
薬剤の支給   抗菌剤、尿路処置用外用剤、他
慢性肝炎
検査   B型肝炎ウイルス感染マーカー、HCV抗体、腹部超音波検査、他
白内障等の眼疾患
検査   前房隅角検査、量的視野検査、他
薬剤の支給   白内障用点眼剤、眼圧降下剤、他
振動障害
理学療法    
注射    
検査   末梢循環機能検査、末梢神経機能検査、末梢運動機能検査、他
薬剤の支給   ニコチン酸剤、Ca拮抗剤、他
大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折
検査   コンピューター断層撮影、他
薬剤の支給   鎮痛・消炎剤
人工関節・人工骨頭置換
検査   シンチグラム検査、他
薬剤の支給   鎮痛・消炎剤
慢性化膿性骨髄炎
検査   シンチグラム検査、他
薬剤の支給   抗菌剤、鎮痛・消炎剤
虚血性心疾患等
検査   心電図検査、心臓超音波検査、他
薬剤の支給   心機能改善剤、循環改善剤、他
ペースメーカ等の定期チェック
尿路系腫瘍
検査   尿細胞診、超音波検査、他
薬剤の支給   抗がん剤(再発予防)、抗菌剤
脳血管疾患
検査   脳波検査、X線検査、他
薬剤の支給   向精神薬、脳循環改善剤、他
有機溶剤中毒等
検査   脳波検査、X線検査、他
薬剤の支給   向精神薬、抗てんかん剤、他
外傷による末梢神経損傷
注射   神経ブロック
検査   尿検査、X線検査、他
薬剤の支給   鎮痛・消炎剤
熱傷
検査   血液一般・生化学検査、他
薬剤の支給   外皮用剤
サリン中毒
検査   脳波検査、心理検査、他
薬剤の支給   自律神経剤、鎮痛・消炎剤、他
カウンセリング等
精神障害
検査   心理検査、脳波検査、他
薬剤の支給   向精神薬、睡眠薬、他
精神療法、カウンセリング等
循環器障害
検査   心電図検査、心臓超音波検査、他
薬剤の支給   抗不整脈剤、血液凝固阻止剤、他
呼吸機能障害
検査   喀痰細菌検査、血液ガス分析、他
薬剤の支給   去痰剤、呼吸器用吸入剤、他
消化器障害
処置   ストマ処置、外瘻の処置
検査   尿検査、腹部超音波検査、他
薬剤の支給   整腸剤、下剤、抗菌剤、他

 アフターケアの手続、費用の算定方法及び費用の請求については、24頁以降に記載されていますので参考にしてください。



 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケア

 趣旨
 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかった方については、その症状が固定した後においても、なお、季節、天候、社会環境等の変化に伴って精神又は身体の後遺症に動揺をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症について労災保険法による療養補償給付を受けていた方で、その症状が固定した方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  薬剤の支給
(1)脳機能賦活剤 (2)精神安定剤 (3)筋弛緩剤 (4)鎮痛剤 (5)血管拡張剤 (6)抗パーキンソン剤 (7)抗痙攣剤 (8)内服昇圧剤
(4)  健康診断
(1) 全身状態の検査
(2) 自覚症状の検査
(3) 精神、神経症状の検査
 年1回程度
(4) 尿中の蛋白、糖及びウロビリノーゲンの検査
(5) 赤血球沈降速度及び白血球数の検査
(6) 視野検査
(7) 脳波検査
(8) 心電図検査
(9) 胸部エックス線写真による検査
(10) CT,MRI
 (1)〜(3)の検査の結果、必要に応じて、(4)〜(10)の検査を追加


 せき髄損傷に係るアフターケア

 趣旨
 せき髄損傷者は、その症状が固定した後においても、尿路障害、褥瘡等の予防その他の医療措置を必要とすることがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害によるせき髄損傷者で、原則として労災保険法による障害等級第3級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められた方
 障害等級第4級以下の障害(補償)給付を受けている方であっても、医学的に特に必要と認められる方

 期間
 アフターケアを受けられる期間に制限はありませんが、3年ごとに健康管理手帳の更新手続きが必要になります。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  処置 ・・・ (1)褥瘡処置 (2)尿路処置
   医療機関での処置のほか、医師が必要と認めた場合には、褥瘡処置として自宅等で交換のために使用する滅菌ガーゼ及び絆創膏を、また尿路処置として、自宅等で使用するカテーテル、カテーテル用消毒液等(洗浄剤及び潤滑剤を含みます。)及び滅菌ガーゼを支給します。
(4)  検査
(1) 尿検査
 1か月に1回程度
(2) 腎機能検査
(3) 血液一般・生化学検査
(4) 膀胱機能検査
(5) 腎臓、膀胱及び尿道のエックス線検査
 年1回程度
(6) 損傷せき椎及び麻痺域関節のエックス線検査、CT及びMRI
 医学的に特に必要と認められる場合に限り、年1回程度
(5)  薬剤の支給
(1)抗菌剤 (2)褥瘡処置用・尿路処置用外用剤 (3)筋弛緩剤 (4)自律神経剤 (5)精神安定剤 (6)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)(7)整腸剤、下剤及び浣腸剤


 頭頸部外傷症候群等に係るアフターケア

 趣旨
 頭頸部外傷症候群等の傷病者は、その症状が固定した後においても、精神又は神経に障害を残す場合は、季節、天候、社会環境等の変化に伴い、その後遺症状に動揺をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により次の(1)〜(6)に掲げる傷病にり患した方で、原則として労災保険法による障害等級第9級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 (1)  頭頸部外傷症候群
 (2)  頸肩腕症候群
 (3)  一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを除きます。)
 (4)  外傷による脳の器質的損傷
 (5)  腰痛
 (6)  減圧症
 上記(1)〜(6)の傷病にり患した方で障害等級第10級以下の障害(補償)給付を受けている方であっても、医学的に特に必要と認められる方

 期間
 原則として治ゆ後2年間ですが、外傷性てんかん、脳型の減圧症等の脳の器質的損傷又はせき髄型の減圧症に基づく症状を残す方で、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 視機能検査(眼底検査等を含みます。)
(4) 前庭平衡機能検査
(5) 頭頸部、四肢(上肢又は下肢)、腰部又は胸部のエックス線検査
(6) 頭部コンピューター断層撮影(MRIを含みます。)
(7) 脳波検査
(8) 心理検査
 年1回程度
(4)  薬剤の支給
(1)神経系機能賦活剤 (2)精神安定剤 (3)筋弛緩剤 (4)自律神経剤 (5)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。) (6)抗パーキンソン剤 (7)抗てんかん剤 (8)循環改善剤(内服)
(5)  そのほか、せき髄型の減圧症の方及び外傷による脳の器質的損傷により四肢麻痺等が出現した方で医師が必要と認めた方に対しては、「せき髄損傷に係るアフターケア」の措置のうち、処置、検査及び薬剤の支給が行われます。


 尿路系障害に係るアフターケア

 趣旨
 尿道断裂や骨盤骨折等により、尿道狭さくの障害を残す方及び尿路変向術を受けた方は、その症状が固定した後においても、尿流が妨げられることにより腎機能障害や尿路感染症を発症するおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により、尿道狭さくの障害を残す方又は尿路変向術を受けた方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1〜3か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  処置
(1) 尿道ブジー(誘導ブジーを含みます。)
(2) 尿路処置(導尿、膀胱洗浄及び留置カテーテル設置・交換を含みます。)
 医師が必要と認めた場合には、自宅等で使用するためのカテーテル、カテーテル用消毒液(洗浄剤及び潤滑剤を含みます。)及び滅菌ガーゼが支給されます。
(4)  検査
(1) 尿検査(尿培養検査を含みます。)
 1〜3か月に1回程度
(2) 血液一般・生化学的検査
 年2回程度
(3) エックス線検査
(4) 腹部超音波検査
 年1回程度
(5) CT検査
 代用膀胱を造設した方に対し、年1回程度
(5)  薬剤の支給(尿道ブジー及び尿路処置の実施の都度、1週間分程度)
(1)止血剤 (2)抗菌剤 (3)自律神経剤 (4)鎮痛・消炎剤 (5)尿路処置用外用剤


 慢性肝炎に係るアフターケア

 趣旨
 慢性肝炎にり患した方で、その症状が固定した後においても、ウイルスの持続感染が認められる方は、肝炎の再燃又は肝病変の進行をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害によりウイルス肝炎にり患した方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察
(1)  HBe抗原陽性の方及びC型肝炎ウイルスに感染している方は、原則として1か月に1回程度
(2)  HBe抗原陰性の方は、原則として6か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般検査
(2) 腹部超音波検査
 6か月に1回程度
(3) 血液生化学検査
(1)  HBe抗原陽性の方及びC型肝炎ウイルスに感染している方は、1か月に1回程度
(2)  HBe抗原陰性の方は、6か月に1回程度
(4) B型肝炎ウイルス感染マーカー
(5) HCV抗体
(6) HCV-RNA同定(定性)検査
(7) AFP(α−フェトプロテイン)
(8) PIVKA−II
(9) プロトロンビン時間検査
(10) CT検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。

 ※  平成18年4月からは、薬剤の支給、HPT、ICG15分停滞率、MRI検査及びシンチグラム検査は、アフターケアの実施項目から除外されています。


 白内障等の眼疾患に係るアフターケア

 趣旨
 白内障等の眼疾患にり患した方は、その症状が固定した後においても、視機能に動揺をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害による白内障、緑内障、網膜剥離、角膜疾患等の眼疾患の傷病者で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 障害(補償)給付を受けていない方(症状が固定した方に限ります。)であっても、医学的に特に必要と認められる方

 期間
 原則として治ゆ後2年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 矯正視力検査
(2) 屈折検査
(3) 細隙燈顕微鏡検査
(4) 前房隅角検査
(5) 精密眼圧測定
(6) 精密眼底検査
(7) 量的視野検査
 1か月に1回程度
(5)  薬剤の支給
(1)白内障用点眼剤 (2)眼圧降下剤 (3)その他医師が必要と認める点眼剤


 振動障害に係るアフターケア

 趣旨
 振動障害にり患した方は、その症状が固定した後においても、季節の変化等に伴い、後遺症状に動揺をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 振動障害にり患した方で、労災保険法による障害補償給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後2年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に2〜4回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  理学療法 ・・・ 必要と認められる場合
(4)  注射 ・・・ 特に必要な場合、一時的な消炎・鎮痛のため行います。
(5)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 末梢循環機能検査
 常温下皮膚温・爪圧迫検査
 冷水負荷皮膚温・爪圧迫検査
(4) 末梢神経機能検査
 常温下痛覚・振動覚検査
 冷水負荷痛覚・振動覚検査
 神経伝導速度検査(ただし、遅発性尺骨神経麻痺の場合にのみ行われます。)
(5) 末梢運動機能検査(握力の検査を行います。)
(6) 手関節及び肘関節のエックス線検査
 (放射線による身体的影響を考慮して必要な場合に限り2年に1回程度)
 年1回程度
(6)  薬剤の支給
(1)ニコチン酸剤 (2)循環ホルモン剤 (3)ビタミンB、B、B、B12、E剤 (4)Ca拮抗剤 (5)交感神経α−受容体抑制剤 (6)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折に係るアフターケア

 趣旨
 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折をした方は、その症状が固定した後においても、大腿骨骨頭壊死の発症をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折をした方で、原則として、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 障害(補償)給付を受けていない方(症状が固定した方に限ります。)であっても、医学的に特に必要と認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として3〜6か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) エックス線検査
 3〜6か月に1回程度
(3) シンチグラム検査、コンピューター断層撮影等
 医学的に特に必要と認められる場合に限り、3〜6か月に1回程度
(4)  薬剤の支給
 鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


 人工関節・人工骨頭置換に係るアフターケア

 趣旨
 人工関節及び人工骨頭を置換した方は、その症状が固定した後における使用に伴い、挿入人工関節及び人工骨頭の耐久性の問題による異常やルースニングにより症状が発現するおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により人工関節及び人工骨頭に置換した方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 アフターケアを受けられる期間に制限はありませんが、3年ごとに健康管理手帳の更新手続が必要になります。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として3〜6か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) エックス線検査
 3〜6か月に1回程度
(3) シンチグラム検査
 医学的に特に必要と認められる場合に限り、3〜6か月に1回程度
(4)  薬剤の支給
 鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


10  慢性化膿性骨髄炎に係るアフターケア

 趣旨
 骨折等により化膿性骨髄炎を併発し、引き続き慢性化膿性骨髄炎に移行した方は、その症状が固定した後においても、骨髄炎再燃のおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害による骨折等により化膿性骨髄炎を併発し、引き続き慢性化膿性骨髄炎に移行した方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1〜3か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
 1〜3か月に1回程度
(2) エックス線検査
 3〜6か月に1回程度
(3) シンチグラム検査、CT、MRI等
(4) 細菌検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。
(4)  薬剤の支給
(1) 抗菌剤(外皮用剤を含みます。)
(2) 鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


11  虚血性心疾患等に係るアフターケア

 趣旨
 虚血性心疾患にり患した方及びペースメーカ又は除細動器(以下「ペースメーカ等」といいます。)を植え込んだ方は、その症状が固定した後においても、狭心症、不整脈あるいは心機能障害が残存することが多く、また、植え込んだペースメーカ等は、身体条件の変化や機器の不具合等により不適正な機器の作動が生じるおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
(1)  虚血性心疾患にり患した方
 業務災害により虚血性心疾患にり患した方で、労災保険法による障害等級第9級以上の障害補償給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 障害等級第10級以下の障害補償給付を受けている方であっても、医学的に特に必要と認められる方
(2)  ペースメーカ等を植え込んだ方
 業務災害又は通勤災害によりペースメーカ等を植え込んだ方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
(1)  虚血性心疾患にり患した方
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。
(2)  ペースメーカ等を植え込んだ方
 アフターケアを受けられる期間に制限はありませんが、3年ごとに健康管理手帳の更新手続きが必要になります。

 範囲
(1)  診察
(1)  虚血性心疾患にり患した方は、原則として1か月に1回程度
(2)  ペースメーカ等を植え込んだ方は、原則として1〜3か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  ペースメーカ等の定期チェック
 ペースメーカ等を植え込んだ方については、ペースメーカ等のパルス幅、スパイク間隔、マグネットレート、刺激閾値、感度等の機能指標の計測とともに、アフターケア上必要な指導が6か月〜1年に1回程度行われます。
 (費用の算定方法については、24頁をご覧下さい。)
(4)  検査
(1)  虚血性心疾患にり患した方
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 心電図検査
(安静時及び負荷検査が行われます。)
(4) 胸部エックス線検査
 1か月に1回程度
(5) ホルター心電図検査
(6) 心臓超音波検査
(7) 心臓核医学検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。
(2)  ペースメーカ等を植え込んだ方
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 心電図検査
(安静時及び負荷検査が行われます。)
 1〜6か月に1回程度
(4) 胸部エックス線検査
 6か月に1回程度
(5) ホルター心電図検査
 年1回程度
(6) 心臓超音波検査
(7) 心臓核医学検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。
(5)  薬剤の支給
(1)抗狭心症剤 (2)抗不整脈剤 (3)心機能改善剤 (4)循環改善剤(利尿剤を含みます。) (5)向精神薬


12  尿路系腫瘍に係るアフターケア

 趣旨
 尿路系腫瘍は、その症状が固定した後においても、再発の可能性が非常に高い疾病であり定期的な検査が必要となることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務に起因する尿路系腫瘍にり患し、労災保険法による療養補償給付を受けている方で、この尿路系腫瘍の症状が固定したと認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 尿検査
(2) 尿細胞診
 1か月に1回程度
(3) 内視鏡検査
(4) 超音波検査
(5) 腎盂造影検査
(6) CT
 3〜6か月に1回程度
(4)  薬剤の支給
(1) 再発予防のための抗がん剤
(医学的に特に必要な場合のみ行われ、投与期間は治ゆ後1年以内です。)
(2) 抗菌剤


13  脳血管疾患に係るアフターケア

 趣旨
 脳血管疾患は脳動脈硬化症、高血圧症等を基礎疾患として発病し、脳の血管性病変に由来する器質的損傷が出現した場合、その症状が固定した後においても、この器質的損傷による片麻痺等の後遺症状が残ることからアフターケアを行うものです。
 ただし、私病である高血圧症等基礎疾患については、アフターケアの対象とはなりません。

 対象者
 業務に起因する脳血管疾患にり患し、脳の血管性病変に由来する器質的損傷により後遺症状が残った方で、原則として労災保険法による障害等級第9級以上の障害補償給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 障害等級第10級以下の障害補償給付を受けている方であっても医学的に特に必要と認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 視機能検査(眼底検査を含みます。)
(4) 前庭平衡機能検査
(5) 頭部エックス線写真検査
(6) CT、MRI
(7) 脳波検査
(8) 心理検査
 年1回程度
(4)  薬剤の支給
(1)神経系機能賦活剤 (2)向精神薬(内服) (3)筋弛緩剤 (4)自律神経剤 (5)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。) (6)抗パーキンソン剤 (7)抗てんかん剤 (8)脳循環改善剤(内服)
(5)  そのほか、脳の器質的損傷による四肢麻痺等のために医師が必要と認めた方に対しては、「せき髄損傷に係るアフターケア」の措置のうち、処置、検査及び薬剤の支給が行われます。


14  有機溶剤中毒等に係るアフターケア

 趣旨
 有機溶剤中毒等(一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを含みます。)を除きます。)及び酸素欠乏症により脳に障害を起こし、脳に器質的損傷が出現した場合には、その症状が固定した後においても、後遺症状が残ることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害による有機溶剤中毒等(一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを含みます。)を除きます。)及び酸素欠乏症により脳に器質的損傷が出現し、原則として労災保険法による障害等級第9級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 障害等級第10級以下の障害(補償)給付を受けている方であっても、医学的に特に必要と認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 視機能検査(眼底検査を含みます。)
(4) 前庭平衡機能検査
(5) 頭部エックス線写真検査
(6) CT、MRI
(7) 脳波検査
(8) 心理検査
 年1回程度
(4)  薬剤の支給
(1)神経系機能賦活剤 (2)向精神薬(内服) (3)筋弛緩剤 (4)自律神経剤 (5)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。) (6)抗パーキンソン剤 (7)抗てんかん剤 (8)脳循環改善剤(内服)
(5)  そのほか、脳の器質的損傷による四肢麻痺等のために医師が必要と認めた方に対しては、「せき髄損傷に係るアフターケア」の措置のうち、処置、検査及び薬剤の支給が行われます。


15  外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア

 趣旨
 外傷により末梢神経を損傷した方は、その症状が固定した後においても、末梢神経の損傷に起因するRSD(カウザルギーを含みます。)による激しい疼痛等が残り、この痛み等を緩和する必要があることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害による外傷により末梢神経を損傷し、症状が固定した後も激しい疼痛が残った方で、労災保険法による障害等級第12級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1〜2回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  注射 ・・・ 1か月に2回を限度として神経ブロックを行うことができます。
(医学的に特に必要な場合にのみに行われます。)
(4)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
 1か月に1回程度
(3) エックス線検査
(4) 骨シンチグラム検査
 医学的に特に必要と認められる場合に限り、年2回を限度
(5)  薬剤の支給
 鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


16  熱傷に係るアフターケア

 趣旨
 熱傷の傷病者には、その症状が固定した後においても、傷痕による皮膚のそう痒等の後遺症状を残すことがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害による熱傷の傷病者で、労災保険法による障害等級第12級以上の障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
 年1回程度
(4)  薬剤の支給
 外皮用剤等(抗菌剤を含みます。)


17  サリン中毒に係るアフターケア

 趣旨
 特に異常な状況下において、強力な殺傷作用を有するサリンに中毒した方は、その症状が固定した後においても、縮瞳、視覚障害、末梢神経障害、筋障害、中枢神経障害、心的外傷後ストレス障害等の後遺症状について、増悪の予防その他の医学的措置を必要とすることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害(いわゆる「地下鉄サリン事件」)によりサリンに中毒した方で、労災保険法による療養(補償)給付を受けて、サリン中毒が治ゆした方のうち、次の(1)〜(4)に掲げる後遺症状によって、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 (1) 縮瞳、視覚障害等の眼に関連する障害
 (2) 筋萎縮、筋力低下、感覚障害等の末梢神経障害及び筋障害
 (3) 記憶力の低下、脳波の異常等の中枢神経障害
 (4) 心的外傷後ストレス障害

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
(3) 視機能検査(眼底検査を含みます。)
(4) 末梢神経機能検査(神経伝達速度検査)
(5) 心電図検査
(6) 筋電図検査
(7) 脳波検査
(8) 心理検査
 年2回程度
(4)  カウンセリング等の実施
 心的外傷後ストレス障害がある方については、必要に応じてカウンセリング等が行われます。
(5)  薬剤の支給
(1)点眼剤 (2)神経系機能賦活剤 (3)向精神薬 (4)自律神経剤 (5)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


18  精神障害に係るアフターケア

 趣旨
 業務による心理的負荷を原因として精神障害を発病した方については、その症状が固定した後においても、その後遺症状について、増悪の予防その他の医学的措置を必要とすることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務による心理的負荷を原因として精神障害を発病した方で、労災保険法による療養補償給付を受けて、この精神障害の症状が固定したと認められる方のうち、次の(1)〜(4)までに掲げる後遺症状によって医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
 (1) 気分の障害(抑うつ、不安等)
 (2) 意欲の障害(低下等)
 (3) 慢性化した幻覚性の障害又は慢性化した妄想性の障害
 (4) 記憶の障害又は知的能力の障害

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 心理検査
(2) 脳波検査、CT、MRI
 年2回程度
(3) 血液一般・生化学的検査
 向精神薬を使用している場合に限り、年2回程度
(4)  精神療法、カウンセリング等の実施
 後遺症状として気分の障害又は慢性化した幻覚性の障害若しくは慢性化した妄想性の障害がある方については、必要に応じて精神療法、カウンセリング等が行われます。
(5)  薬剤の支給
(1)向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬) (2)睡眠薬 (3)神経系機能賦活剤


19  循環器障害に係るアフターケア

 趣旨
 心臓弁を損傷した方、心膜の病変を残す方及び人工弁又は人工血管に置換した方は、その症状が固定した後においても、心機能の低下を残したり、血栓の形成により循環不全や脳梗塞等をきたすおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
(1)  心臓弁を損傷した方、心膜の病変の障害を残す方又は人工弁に置換した方
 業務災害又は通勤災害により、心臓弁を損傷した方、心膜の病変の障害を残す方又は人工弁に置換した方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
(2)  人工血管に置換した方
 業務災害又は通勤災害により、人工血管に置換した方で、症状が固定した方のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
(1)  心臓弁を損傷した方及び心膜の病変を残す方
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。
(2)  人工弁又は人工血管に置換した方
 アフターケアを受けられる期間に制限はありませんが、3年ごとに健康管理手帳の更新手続きが必要になります。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1〜3か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
 1〜6か月に1回程度
(3) 心電図検査
(安静時及び負荷検査が行われます。)
(4) エックス線検査
 3〜6か月に1回程度
(5) 心音図検査
 人工弁に置換した方に対し、3〜6か月に1回程度実施
(6) 心臓超音波検査
 人工弁又は人工血管に置換した方に対し、年1回程度実施
(7) 脈波図検査
 人工血管に置換した方に対し、年1回程度実施
(8) CT又はMRI検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。
(4)  薬剤の支給
(1)抗不整脈剤 (2)心機能改善剤 (3)循環改善剤(利尿剤を含みます。) (4)向精神薬 (5)血液凝固阻止剤


20  呼吸機能障害に係るアフターケア

 趣旨
 呼吸機能障害を残す方は、その症状が固定した後においても、咳や痰等の後遺症状を残すため、その症状の軽減及び悪化の防止を図る必要があることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により呼吸機能障害を残す方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  検査
(1) 血液一般・炎症反応(CRPを含みます。)・生化学検査
(2) 喀痰細菌検査
(3) スパイログラフィー検査
(4) 胸部エックス線検査
 年2回程度
(5) 血液ガス分析
 年2〜4回程度
(6) 胸部CT検査
 年1回程度
(4)  薬剤の支給
(1)去痰剤 (2)鎮咳剤 (3)喘息治療剤 (4)抗菌剤 (5)呼吸器用吸入剤 (6)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)


21  消化器障害に係るアフターケア

 趣旨
 消化器を損傷した方で、その症状が固定した後においても、消化吸収障害、逆流性食道炎、ダンピング症候群、腸管癒着、排便機能障害又は膵機能障害(以下「消化吸収障害等」といいます。)の障害を残す方は、腹痛や排便機能障害等を発症するおそれがあること、また、消化器ストマ(大腸皮膚瘻、小腸皮膚瘻及び人工肛門)を造設するに至った方は、反応性びらん等を発症するおそれがあることからアフターケアを行うものです。

 対象者
 業務災害又は通勤災害により、消化吸収障害等を残す方又は消化器ストマを造設した方で、労災保険法による障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状が固定した方に限ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方

 期間
 原則として治ゆ後3年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

 範囲
(1)  診察 ・・・ 原則として1か月に1回程度
(2)  保健指導 ・・・ 診察の都度
(3)  処置
(1)ストマ処置 (2)外瘻の処置
 医師が必要と認めた場合には、自宅等で使用するための滅菌ガーゼが支給されます。
(4)  検査
(1) 血液一般・生化学検査
(2) 尿検査
 3か月に1回程度
(3) 腹部超音波検査
(4) 消化器内視鏡検査(ERCPを含みます。)
(5) 腹部エックス線検査
(6) 腹部CT検査
 医学的に特に必要と認められる場合にのみ行われます。
(5)  薬剤の支給
(1)整腸剤、止瀉剤 (2)下剤、浣腸剤 (3)抗貧血用剤 (4)消化性潰瘍用剤 (5)蛋白分解酵素阻害剤 (6)消化酵素剤 (7)抗菌剤(外皮用剤を含みます。) (8)鎮痛・消炎剤(外皮用剤を含みます。)



アフターケアの手続


 アフターケア対象者が受診する際には、その都度、健康管理手帳(27頁参照)を医療機関に提出することになっていますので、医療機関において所定の欄にその結果を記入してください。
 また、アフターケアに要した費用は、アフターケア委託費請求書(28頁参照)により、医療機関の所在地を管轄する都道府県労働局長あて請求することにより支払われます。



アフターケアに要する費用の算定方法


 アフターケアに要した費用の額は、それぞれ次の項目ごとに定める方法により算定した額となります。
 なお、労災診療費算定基準に定める初診時ブラッシング料及び再診時療養指導管理料並びに健保点数表*1に定める外来管理加算、継続管理加算、在宅自己導尿指導管理料及びてんかん指導料は、アフターケアにおいては認められませんのでご留意ください。

 診察
 労災診療費算定基準に定める初診料又は再診料の額若しくは健保点数表*1に定める外来診療料の点数に労災単価*2を乗じて得た額です。
 なお、診療時に受診していた医療機関に引き続きアフターケアで受診をした場合には、アフターケアにおける最初の診察は再診料の額若しくは健保点数表*1に定める外来診療料の点数に労災単価*2を乗じて得た額となります。

 保健指導
 健保点数表*1に定める特定疾患療養指導料の点数に労災単価*2を乗じて得た額です。
 ただし、月2回の算定を限度とし、許可病床数が200床以上の病院においては、保健指導の費用は算定できません。
 なお、後記5のペースメーカ等の定期チェック及び後記6の精神療法・カウンセリング等と同時に行った場合は、保健指導に係る費用は算定できません。

 処置
(1)  健保点数表*1に定める点数に労災単価*2を乗じて得た額です。
(2)  自宅等で使用する滅菌ガーゼ、絆創膏、カテーテル等の材料を支給した場合には、医療機関の購入単価を10円で除して得た点数に労災単価*2を乗じて得た額です。

 検査
 健保点数表*1に定める点数に労災単価*2を乗じて得た額です。
 ただし、振動障害に係る検査の一部については、労災診療費算定基準に定める所定の点数に労災単価*2を乗じて得た額となります。

 ペースメーカ等の定期チェック
 健保点数表*1に定める心臓ペースメーカー指導管理料の点数に労災単価*2を乗じて得た額です。

 精神療法・カウンセリング等
 健保点数表*1に定める通院精神療法、通院集団精神療法、精神科作業療法及び精神科デイ・ケアの点数に労災単価*2を乗じて得た額です。

 薬剤の支給
(1)  健保点数表*1に定める点数に労災単価*2を乗じて得た額です。
(2)  医療機関が交付した処方箋に基づき院外薬局において薬剤の支給を行った場合には、調剤点数表*3により算定した額です。
(3)  次の薬剤を支給する場合は、健保点数表に定める特定薬剤治療管理料の点数に労災単価*2を乗じて得た額を算定できます。ただし、健保点数表に準じて算定します。
 I)抗てんかん剤 II)抗不整脈剤

  *1:健保点数表 ・・・ 健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(平成6年厚生省告示第54号)の別表第1医科診療報酬点数表
  *2:労災単価 ・・・ 労災診療費算定基準(昭和51年1月13日付け基発第72号)に定める単価
  *3:調剤点数表 ・・・ 健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(平成6年厚生省告示第54号)の別表第3調剤報酬点数表



アフターケア委託費の請求について


 アフターケアに要した費用の請求に当たっては、前記により算定した毎月分の費用の額をアフターケア委託費請求書に記載の上、アフターケア実施医療機関等の所在地を管轄する都道府県労働局長あて提出することになります。
 この請求の際には、アフターケア委託費請求内訳書を1回の診察等ごとに1枚作成し、アフターケア委託費請求書に添付するものとします。
 なお、(財)労災保険情報センター(RIC)と契約されている労災指定医療機関については、RIC各都道府県事務所へ提出してください。



アフターケア傷病コードについて


 アフターケア委託費請求内訳書には、対象となるアフターケア傷病コードを記入することとなっていますが、頭頸部外傷症候群等、尿路系障害、慢性肝炎、虚血性心疾患等及び循環器障害に係るアフターケア傷病コードには枝番号を付与していますので、枝番号を含めた傷病コードをアフターケア委託費請求内訳書に記入してください。

傷病コード 傷病名 傷病コード 傷病名
00 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症 08 人工関節・人工骨頭置換
01 せき髄損傷 09 慢性化膿性骨髄炎
  頭頸部外傷症候群等   虚血性心疾患等
02−1  頭頸部外傷症候群 10−1  虚血性心疾患
02−2  頸肩腕症候群 10−2  ペースメーカ及び除細動器
02−3  一酸化炭素中毒症(炭鉱災害を除く。) 11 尿路系腫瘍
02−4  外傷による脳の器質的損傷 12 脳血管疾患
02−5  腰痛 13 有機溶剤中毒等
02−6  減圧症 14 外傷による末梢神経損傷
  尿路系障害 15 熱傷
03−1  尿道狭さく及び尿路変向術後 16 サリン中毒
03−2  代用膀胱造設後 17 精神障害
  慢性肝炎   循環器障害
04−1  HBe抗原陽性及びC型肝炎ウイルス感染 18−1  弁損傷及び心膜病変
04−2  HBe抗原陰性 18−2  人工弁置換後
05 白内障等の眼疾患 18−3  人工血管置換後
06 振動障害 19 呼吸機能障害
07 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折 20 消化器障害



都道府県労働局一覧

 北海道  060-8566   札幌市北区北8条西2−1−1 札幌第1合同庁舎  011(709)2311
 青森  030-8558 青森市新町2−4−25 青森合同庁舎  017(734)4115
 岩手  020-0023 盛岡市内丸7−25 盛岡合同庁舎1号館  019(604)3009
 宮城  983-8585 仙台市宮城野区鉄砲町1 仙台第4合同庁舎  022(299)8843
 秋田  010-0951 秋田市山王7−1−3 秋田合同庁舎  018(883)4275
 
 山形  990-8567   山形市緑町1−5−48 山形地方合同庁舎  023(624)8227
 福島  960-8021 福島市霞町1−46 福島合同庁舎  024(536)4605
 茨城  310-8511 水戸市北見町1−11  029(224)6217
 栃木  320-0845 宇都宮市明保野町1−4 宇都宮第2地方合同庁舎  028(634)9118
 群馬  371-8567 前橋市大渡町1−10−7 群馬県公社総合ビル8F  027(210)5006
 
 埼玉  330-6016   さいたま市中央区新都心11−2 ランド・アクシス・タワー15F  048(600)6207
 千葉  260-8612 千葉市中央区中央4−11−1 千葉第2地方合同庁舎  043(221)4313
 東京  112-8571 文京区後楽1−7−22  03(3814)5319
 神奈川  231-8434 横浜市中区北仲通5−57 横浜第2合同庁舎  045(211)7355
 新潟  951-8588 新潟市川岸町1−56  025(234)5925
 
 富山  930-8509   富山市牛島新町11−7 富山合同庁舎  076(432)2739
 石川  920-0024 金沢市西念3−4−1 金沢駅西合同庁舎  076(265)4426
 福井  910-0019 福井市春山1−1−54 福井春山合同庁舎  0776(22)2656
 山梨  400-8577 甲府市丸の内1−1−11  055(225)2856
 長野  380-8572 長野市中御所1−22−1  026(223)0556
 
 岐阜  500-8723   岐阜市金竜町5−13 岐阜合同庁舎  058(245)8105
 静岡  420-8639 静岡市葵区追手町9−50 静岡地方合同庁舎  054(254)6369
 愛知  460-8507 名古屋市中区三の丸2−5−1 名古屋合同庁舎第2号館  052(972)0259
 三重  514-8524 津市島崎町327−2 津第2地方合同庁舎  059(226)2109
 滋賀  520-0057 大津市御幸町6−6  077(522)6630
 
 京都  604-0846   京都市中京区両替町通御池上ル金吹町451  075(241)3217
 大阪  540-8527 大阪市中央区大手前4−1−67 大阪合同庁舎第2号館  06(6949)6507
 兵庫  650-0044 神戸市中央区東川崎町1−1−3 神戸クリスタルタワー16F  078(367)9155
 奈良  630-8570 奈良市法蓮町387 奈良第3地方合同庁舎  0742(32)0207
 和歌山  640-8581 和歌山市中之島2249  073(422)2176
 
 鳥取  680-8522   鳥取市富安2−89−9  0857(29)1706
 島根  690-0841 松江市向島町134−10 松江地方合同庁舎  0852(31)1159
 岡山  700-8611 岡山市下石井1−4−1 岡山第2合同庁舎  086(225)2019
 広島  730-8538 広島市中区上八丁堀6−30 広島合同庁舎2号館  082(221)9245
 山口  753-8510 山口市中河原町6−16 山口地方合同庁舎2号館  083(995)0374
 
 徳島  770-0851   徳島市徳島町城内6−6 徳島地方合同庁舎  088(652)9144
 香川  760-0018 高松市天神前5−12  087(831)7282
 愛媛  790-8538 松山市若草町4−3 松山若草合同庁舎  089(935)5206
 高知  780-8548 高知市南金田48−2  088(885)6025
 福岡  812-0013 福岡市博多区博多駅東2−11−1 福岡合同庁舎  092(411)4799
 
 佐賀  840-0801   佐賀市駅前中央3−3−20 佐賀第2合同庁舎  0952(32)7193
 長崎  852-8535 長崎市岩川町16−16 長崎合同庁舎  095(813)1955
 熊本  860-0008 熊本市二の丸1−2 熊本合同庁舎  096(355)3183
 大分  870-0037 大分市東春日町17−20 大分第2ソフィアプラザビル6F  097(536)3214
 宮崎  880-0805 宮崎市橘通東3−1−22 宮崎合同庁舎  0985(38)8837
 鹿児島  892-0816 鹿児島市山下町13−21 鹿児島合同庁舎  099(223)8280
 沖縄  900-0006 那覇市おもろまち2−1−1 那覇第2地方合同庁舎  098(868)3559

 この記載内容又は詳細につきましてご不明の点がありましたら、最寄りの都道府県労働局又は労働基準監督署にお問い合わせください。

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