2006年日本政府年次報告
「家族的責任を有する男女労働者の機会
及び待遇の均等に関する条約」(第156号条約)
(2003年6月1日〜2006年5月31日)


.質問Iについて
 前回までの報告に以下を追加する。
 ・「人事院規則15−15」
 ・「次世代育成支援対策推進法(2003年法律第120号)」
 ・「次世代育成支援対策推進法施行規則 (2003年厚生労働省令第122号)」
 ・「行動計画策定指針(2003年国家公安委員会、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省告示第1号)」
 ・「障害者自立支援法(2005年法律第123号)」

.質問IIについて
(1)前回までの報告に変更のある内容は以下の通り。

[第1条]
 1について、前回までの報告を以下のとおり差し替える。
  1 「被扶養者である子」の定義及び出所
 育児休業の対象は「1歳に満たない子(子が保育所に入所できない等の場合は1歳6か月に達するまでの子)」を養育する労働者(期間を定めて雇用される者を含む。)としている(育児・介護休業法第2条第1号及び第5条)。子の看護休暇、育児のための時間外労働の制限の措置及び深夜業の制限の措置は、対象を「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する労働者としている(育児・介護休業法第17条及び第19条)。また、勤務時間短縮等の措置の対象は、「3歳に達するまでの子」を養育する労働者としている(育児・介護休業法第23条)。これらが本条約で規定する「被扶養者である子」に該当する。
 育児休業等の措置の対象について、国家公務員及び地方公務員については、3歳に満たない子を養育する労働者が対象となる(国家公務員育児休業法第3条、第11条、地方公務員育児休業法第2条、第9条、国会職員育児休業法第3条、第11条)。
 国家公務員についての子の看護のための休暇はその対象を「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する職員(人事院規則15−14第22条第1項第11号)としており、また、地方公務員については、国に準じて措置を講ずるよう通知しており、これが本条約で規定する「被扶養者である子」に該当する。

[第4条(b)]
 1について
 ・第1パラグラフ
 「1歳に満たない子を養育する労働者」を「1歳に満たない子(子が保育所に入所できない等の場合は1歳6か月に達するまでの子)を養育する労働者(期間を定めて雇用される者を含む。)」に改める。

 ・第4パラグラフ
 「また、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関しては、事業主は、子の看護のための休暇を与えるための措置を講ずるように努めなければならないこととしている(同法第25条)」を、「また、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合においては、1年に5日まで病気・けがをした子の看護のために休暇を与えなければならないこととしている(同法第16条の2、第16条の3)。」に改める。

 ・第6パラグラフ
 「この規定に基づき、国においては、」の後に「一定の要件を満たす中小企業において、育児休業取得者、短時間勤務制度の適用者が初めて出た事業主に対する助成措置(雇用保険法施行規則附則第17条の3)、」を追加する。
 「、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、子の看護のために利用できる内容の休暇制度を設け、利用者が生じた事業主に対する助成措置、職業家庭両立推進員を選任し、その旨の届出を行い、育児休業の取得促進措置を講じ、かつ、届出から3年以内に男女少なくとも1名の取得者が生じた事業主に対する助成措置」を削除する。
 「育児・介護休業法施行規則第39条」を「育児・介護休業法施行規則第38条」に、「雇用保険法施行規則第139条の3」を「雇用保険法施行規則第139条」に改める。

 ・第9パラグラフとして以下の記述を追加する。
 「次世代育成支援対策推進法により、従業員が301人以上の事業主は、従業員の仕事と育児との両立を図りやすい雇用環境の整備等に関する行動計画を策定し、その旨を届け出ることを義務づけられている(300人以下は努力義務)(同法第12条)。」

 2について
 ・第2パラグラフ
 「2分の1」を「2分の1(子が1歳に達するまでの期間についてはその3分の2)」に改める。

 ・第5パラグラフ
 「国家公務員の育児休業等に関する法律及び地方公務員の育児休業等に関する法律の一部改正により、育児休業及び部分休業の対象となる子の年齢1歳未満から3歳未満に拡充することとした(2002年4月1日から施行)。」を「国家公務員の育児休業等に関する法律、地方公務員の育児休業等に関する法律及び国会職員の育児休業等に関する法律の一部改正により、育児休業及び部分休業の対象となる子の年齢1歳未満から3歳未満に拡充することとした(2002年4月1日から施行)。」に改める。

 ・第9パラグラフ
 「人事院規則15−14第22条第10号」を「人事院規則15−14第22条第1項第11号」に改める。

 ・第9パラグラフの次に以下のパラグラフを追加する。
 「人事院規則10―11の改正により、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員又は介護を行う職員の早出遅出勤務を新設し、職員が通常の勤務時間帯から始業及び終業の時刻をずらして働くことを認めることとした(2005年4月1日から施行)。」
 「さらに、放課後児童クラブに託児している小学生の子を出迎える職員についても早出遅出勤務を認めることとした(2006年4月1日から施行)。」
 「人事院規則15−14の改正により、特別休暇の一つとして男性職員の育児参加休暇を新設し、出産に係る子又は小学校就学の始期に達するまでの上の子を妻の産前産後期間中に養育する男性職員が勤務しないことが相当であると認められる場合に休暇を取得することができることとした(人事院規則15―14第22条第1項第10号)(2005年1月1日から施行)。」
 「人事院規則15−15の改正により、一週間の勤務日が3日以上とされている職員又は週以外の期間によって勤務日が定められている職員で一年間の勤務日が121日以上であるものであって、6ヶ月以上継続勤務している非常勤職員に対しても子の看護休暇を措置した(人事院規則15−15第4条第2項第4号)(2005年4月1日から施行)。」

 3(1)について
 「被保険者及び事業主が負担する保険料」の後に「の全部または一部」を追加する。

[第5条]
 前回までの報告を以下の通り差し替える。
 1 我が国においては、仕事と家庭を両立しやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な育成と自立を支援するため、以下の施策を行っている。
(1)職業生活と家庭生活との両立を支援する地域サービス

(ア)育児、介護等を行う労働者のための相談援助事業
 家庭的責任を有する労働者が育児、介護、家事等に関する各種サービスを必要に応じ享受できるよう、これらに関する相談を受け付けるとともに、地域の具体的情報を電話等により提供する相談援助事業(育児・介護休業法第31条)。
〔47ヵ所(2006年3月31日現在)〕

(イ)ファミリー・サポート・センター事業
 急な残業の際など、既存の体制では応じきれない変動的、変則的な保育ニーズ等に対応するため、地域における育児や介護に関する相互援助活動を組織化する事業(児童福祉法第21条の27)。
〔437ヵ所(2006年3月31日現在)〕

(ウ)勤労者家庭支援施設
 職業生活と家庭生活との両立に必要な相談、指導、講習、実習等を行うことで、家族的責任を有する労働者の福祉の増進を図る施設(育児・介護休業法第34条)。
〔4ヵ所(2006年3月31日現在)〕

(2)保育等の児童福祉施策
 児童福祉施策は、各種の法律や政省令、通知などに基づき、母子保健対策、障害児対策、児童健全育成対策、保育対策、養護・非行・情緒障害など保護を要する児童の福祉対策、母子寡婦福祉対策、父子家庭対策などが総合的に実施されており、これらの対策が、各種の相談活動を通して利用者のニーズに合うように有機的に結びつけられている。
 児童福祉法は、児童はその生活を保障され、愛護されなければならず、国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する義務を負う旨規定しており、この原則はすべての児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されている(児童福祉法第1条、第2条、第3条)。

 具体的には以下の施策を行っている。
(ア)保育サービスの充実
 保育所は、児童福祉法第39条第1項に基づき、日々保育に欠ける乳幼児を保育することを目的とする施設とされており、保護者の労働又は疾病等の事由により、児童を保育できない場合には、市町村は児童福祉法第24条第1項に基づき、保育所において保育しなければならないこととされている。
 保育サービスの充実については、「待機児童ゼロ作戦」として、保育所、幼稚園における預かり保育等を活用し、2002年4月から3年間で15.6万人の受入児童数の増加を図ってきたところである。また、2004年12月に策定された「子ども・子育て応援プラン」に基づき、「待機児童ゼロ作戦」のさらなる展開として、待機児童50人以上の市町村を中心に、2007年3月までの3年間で集中的に受入れ児童数の拡大を図るとともに、一時保育等、多様な保育ニーズへの対応を一層推進していくこととしている。
 また、2006年10月からは、小学校就学前の子どもやその保護者の教育・保育ニーズが年々多様化していることを踏まえ、教育・保育と地域の子育て支援を総合的に提供する機能を有する施設に対し、都道府県知事が「認定こども園」の認定を行う制度を創設する「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」を施行することとしている。
〔保育所数  22,699カ所 (2006年4月1日現在)〕
〔入所児童数  2,003,610人 (2006年4月1日現在)〕

(イ)放課後児童健全育成事業の推進
 昼間保護者のいない家庭の小学校低学年児童(おおむね10歳未満)に、適切な遊び及び生活の場を与えて、健全に育成することを目的とした放課後児童健全育成事業を新たに児童福祉法に規定しており、その普及促進を図っているところ。
〔放課後児童健全育成事業 15,184クラブ(2005年5月1日現在)〕

(ウ)児童の自立支援施策の充実
 児童自立支援施設、児童養護施設などの児童福祉施設については児童をめぐる問題が複雑・多様化している状況等を踏まえ、処遇体制の充実を図るとともに、地域における児童や家庭の相談支援体制の強化を図るため児童家庭支援センターの整備の促進を図ることとした。
〔児童家庭支援センター 59か所(2006年3月31日現在)〕

(エ)母子家庭施策の見直し
a.母子生活支援施設の機能強化など母子家庭の自立支援策を強化することとした。
〔母子生活支援施設 287か所(2005年3月31日現在)〕
b.また、社会福祉の一層の増進を図るために社会福祉事業法等の改正を含む社会福祉基礎構造改革が行われ、その一環として、母子生活支援施設の入所について、措置制度から利用者が行政と契約を行う方式に変更されたほか、苦情解決の仕組みの導入、都道府県による情報提供義務が課せられることになった。

 2 我が国においては、2000年4月から介護保険制度が導入され、利用者と事業者の契約に基づき、様々な介護サービスが提供されている。主なサービスは、以下のとおり。

(1)訪問介護
 居宅要介護者に対し、その者の居宅において介護福祉士等により行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行う事業(介護保険法第8条第2項)。
〔訪問介護職員354,634人(2004年10月1日現在)〕

(2)通所介護
 居宅要介護者に対し、施設等に通わせ、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行う事業(介護保険法第8条第3項)。
〔14,725事業所(2004年10月1日現在)〕

(3)短期入所生活介護
 居宅要介護者に対し、施設等に短期間入所させ、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行う事業(介護保険法第8条第9項)。
〔69,415人分(2004年10月1日現在)〕

(4)介護老人福祉施設
 入所する要介護者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設(介護保険法第8条第24項)。
〔363,747人分(2004年10月1日現在)〕

 また、新たな課題に適切に対応しつつ、引き続き国民生活の安心を支えることができるよう、2005年度に制度改正を行い、主要な改正部分は2006年4月より施行された。

 3 我が国においては、障害者の介護支援として以下の施策が行われている。
(1)居宅介護
 障害があって日常生活を営むのに支障がある者に対してホームヘルパーを派遣し、身体介護や家事等の日常生活の世話を行う事業(障害者自立支援法第5条第2項)。
〔300,194人(2004年度)〕

(2)デイサービス
 デイサービスセンター等において、障害があって日常生活を営むのに支障がある者に対し、入浴、食事の提供、機能訓練、介護方法の指導等のサービスを提供する事業(障害者自立支援法第5条第7項、附則第8条第1項第6号)。
〔障害者分:2,162人分(2004年度)〕

(3)短期入所
 家族介護者の疾病等により居宅において介護を受けることが一時的に困難となった者を、身体障害者更生援護施設、知的障害者援護施設、児童福祉施設等に短期間入所させ、介護等を行う事業(障害者自立支援法第5条第8項)。
〔障害者分:7,849人分(2004年度)〕

(4)身体障害者更生援護施設
 身体障害者のための福祉施設としては、常時介護が必要な身体障害者を入所させて治療及び養護を行う身体障害者療護施設(身体障害者福祉法第30条第1項)、身体障害者を入所させて、その更生に必要な治療又は指導を行い、及びその更生に必要な訓練を行う身体障害者更生施設(身体障害者福祉法第29条第1項)等がある。
〔身体障害者療護施設472ヶ所(2004年10月1日現在)〕
〔身体障害者更生施設114ヶ所(2004年10月1日現在)〕

(5)知的障害者援護施設
 知的障害者のための福祉施設としては、知的障害者を入所させて、保護するとともに、更生に必要な指導及び訓練を行う知的障害者更生施設(知的障害者福祉法第21条の6第1項)等がある。
〔知的障害者更生施設(入所・通所) 1,915ヶ所(2004年10月1日現在)〕

(6)障害児のための福祉施設
 障害児のための福祉施設としては、知的障害児を入所させて保護するとともに独立自活に必要な知識技能を与えることを目的とする知的障害児施設(児童福祉法第42条第1項)、肢体不自由児を治療するとともに独立自活に必要な知識技能を与えることを目的とする肢体不自由児施設(児童福祉法第43条の3第1項)、重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて保護するとともに、治療及び日常生活上の指導をすることを目的とする重症心身障害児施設(児童福祉法第43条の4第1項)等がある。
〔知的障害児施設  258ヶ所(2004年10月1日現在)〕
〔肢体不自由児施設 63ヶ所(2004年10月1日現在)〕
〔重症心身障害児施設108ヶ所(2004年10月1日現在)〕

[第6条]
 「、また、毎年10月を「仕事と家庭を考える月間」」を削除する。

[第7条]
 1について
 ・第2パラグラフ
 「この規定に基づき、国においては」の後に「一定の要件を満たす中小企業において、育児休業取得者、短時間勤務制度の適用者が初めて出た事業主に対する助成措置(雇用保険法施行規則附則第17条の3)、」を追加する。
 「、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、子の看護のために利用できる内容の休暇制度を設け、利用者が生じた事業主に対する助成措置、職業家庭両立推進員を選任し、その旨の届出を行い、育児休業の取得促進措置を講じ、かつ、届出から3年以内に男女少なくとも1名の取得者が生じた事業主に対する助成措置」を削除する。
 「育児・介護休業法第39条」を「育児・介護休業法第38条」に、「雇用保険法施行規則第139条の3」を「雇用保険法施行規則第139条」に改める。

 ・第3パラグラフ
 「、育児の援助を行う者と育児の援助を受けたい者からなる会員組織による地域における育児の相互援助活動への支援措置」を削除する。

[第8条]
 1について
   「当該労働者を解雇」の後に「その他不利益な取扱いを」を追加する。

 (2) 条約勧告適用専門家委員会の意見及び直接要請について

2004年専門家委員会意見について
(1)育児休業、介護休業の適用について(第1、第2パラグラフ)
適用対象の拡大について
 育児・介護休業法の改正により、2005年4月から休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者においては、育児休業、介護休業の適用対象とされている。

全医労の意見について
 国立病院・療養所は、2004年4月に独立行政法人国立病院機構に移行したものであり、賃金職員制度は踏襲せず、常勤職員と短時間非常勤職員により運営できる体制としたところである。
 2004年4月以降も国立医療機関として存続している国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所で雇用している賃金職員に係る育児休業及び介護休暇がないことについては、2001年及び2003年年次報告並びに1999年10月にILO条約勧告適用専門家委員会へ提出した「国立病院及び国立療養所に勤務する賃金職員の給与、休暇等に関する行政措置要求についての人事院判定(1996年11月25日)」において述べられているとおり、育児休業及び介護休暇制度が長期任用を前提とした職員の任用の継続を図るために設けられていることからすれば、1会計年度内で任用予定期間が定められている日々雇用の非常勤職員(賃金職員)にこれらの休暇等を認める必要はない旨の人事院の見解が示されているところである。
 また、育児休業と介護休暇については、賃金職員には適用されない。
 なお、賃金職員としての採用を希望する者に対し、業務の内容、休暇制度その他賃金職員としての処遇を明確に説明し、本人が了解した上で採用している。

(2)遠隔地への転勤について(第3〜6パラグラフ)
 他の地方への移動を伴う転勤の問題については、基本的に労使当事者間で話し合い、適切なルール作りを行うべきものと考える。
 特に、家族的責任を有する労働者の転勤については、労働者の家族も含めた生活に大きな影響を及ぼすおそれがあることから、可能な限りその範囲及び労働条件等についてあらかじめ明確にするとともに、労働者の事情に配慮した適切な人選、余裕をもった異動内示等労働者の負担を軽減する措置を講ずることが望まれる。
 2004年4月に国立病院・療養所から移行した独立行政法人国立病院機構の職員の人事異動については、職員の適正配置、業務の能率の増進、職員の能力開発、勤労意欲の向上、業務運営の円滑化など業務の合理的運営に寄与する観点から、任命権者が業務の必要性に基づいて成績主義の原則に則って当該職員の資格、能力、経験等職務に対する適格性を考慮した上で、その裁量により、公正に実施している。
 また、独立行政法人国立病院機構の病院間等の人事異動に当たっては、任命権者は業務の運営を踏まえつつ、職員の身上調書等により当該職員の健康状態、家族状況等(家族が老齢又は病気でその介護を要するなどの特別な事情等)を考慮し、総合的に判断して行っている。
 2004年4月以降も国立医療機関として存続している国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所における職員の人事異動については、2001年及び2003年の年次報告でも述べているとおり、職員の適正配置、公務の能率の増進、職員の能力開発、勤労意欲の向上、公務運営の円滑化など公務の合理的運営に寄与する観点から、任命権者が業務の必要性に基づいて成績主義の原則に則って当該職員の資格、能力、経験等職務に対する適格性を考慮した上で、任命権者の裁量により、公正に実施しているものである。
 なお、人事異動に当たっては、任命権者は公務の運営を踏まえつつ、職員の身上調書等により当該職員の健康状態、家族状況等(家族が老齢又は病気でその介護を要するなどの特別な事情等)を考慮し、総合的に判断して行っているところである。
 したがって、客観的に見て特別な事情のある家族的責任を有する職員については、その意思を無視した人事異動は行われていない。また、人事異動を命じる3週間前には、該当する職員に対して異動先の告知を行っているところである。2003年5月13日付け通信労組の意見書についても、他の地方への移動を伴う転勤の問題については、基本的には労使当事者間で話し合い、適切なルールづくりを行うべきと考える。
 なお、家族的責任を有する労働者の転勤については、労働者の家族を含めた生活に大きな影響を及ぼすおそれがあることから可能な限りその範囲及び労働条件等についてあらかじめ明確にするとともに、労働者の事情に配慮した適切な人選、余裕をもった異動内示等労働者の負担を軽減する措置を講ずることが望まれる。

(3)看護休暇を労働者の権利として確立すること及び子以外の家族の看護休暇を設けることについて(第7パラグラフ)
 育児・介護休業法が改正され、2005年4月から小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得できることとされている。
 また、子以外の家族の病気やけがについては、親が一義的にその世話をする責任を負う子と異なり、誰が家族の世話をするのかと一律に決められないこと、子と比べればその看護のために休まざるを得ない頻度も低く、また、自分自身で対処することが可能な場合も多いと考えられることから、労働者の雇用の継続を図るためにすべての事業主に義務を課すことは困難であると考える。

(4)国立病院内保育所について(第8パラグラフ)
 国立病院・療養所の院内保育所の運営、賃金職員の処遇等については、2001年の年次報告で述べていたところである。
 国立病院・療養所は、2004年4月に独立行政法人国立病院機構に移行したが、厚生労働省第二共済組合は院内保育所の委託先を保育所運営委員会から民間保育事業者に変更した。この変更は全医労を代表する者が構成員となっている厚生労働省第二共済組合運営審議会において決定された結果、行われた。この結果、保育所職員は民間保育事業者の協力を得て希望者全員が当該民間保育事業者の職員となった。保育所は現在も民間保育事業者により円滑に運営されている。
 なお、国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所における院内保育所の運営、賃金職員の処遇等については、2001年の年次報告で述べたとおりであり、現在も円滑に運営されている。

(5)家族的責任に起因する解雇の保護措置について(第9パラグラフ)
 条約第8条の国内法や慣行への適用についての措置としては、育児・介護休業法の改正により、2005年4月から休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者においては、育児休業、介護休業の適用対象とされている。
 また、家族的責任を有する労働者についても、労働基準法第20条により、使用者は労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか予告に代えて平均賃金の30日分の予告手当を支払わなければならないこととされている。
 なお、別添3のとおり、言及されている法律規定を解釈する司法判決について情報提供する。

2004年専門家委員会直接要請について
(1)第1パラグラフについて
 育児・介護休業法に規定する時間外労働の制限、深夜業の制限については、期間雇用者にも適用される。なお、フルタイムで働いているかパートタイムで働いているかによって異なるところはない。
 また、育児・介護休業法が改正され、2005年4月から休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者においては、育児休業、介護休業の適用対象とされている。
 国家公務員の育児休業等に関する法律及び一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律に規定する国家公務員の育児休業及び介護休暇については、2003年年次報告において報告したとおり、非常勤職員について適用対象とされていないものの、人事院規則に基づく超過勤務及び深夜勤務の制限の措置については、非常勤職員も含めて適用対象とされている。
 なお、別添1のとおり育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律について情報提供する。

(2)第2パラグラフについて
 労働基準法施行規則第12条の6により、使用者は、1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制又は1週間単位の変形労働時間制により、労働者に労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者、その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるよう配慮しなければならないこととされている。この規定は従来、使用者に対する努力義務であったものを1999年4月から義務化したものであり、労働基準監督機関において必要な指導が行われている。
 日雇い労働者及び有期契約労働者についても、労働基準法施行規則第12条の6の規定は、適用される。別添2のとおり、子の養育又は家族の介護を行い、又は行う予定の労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針について情報提供する。
 また、別添3のとおり、有期労働者に対する休暇の許可に関する裁判所の決定について情報提供する。

(3)第3パラグラフについて
 時短促進法が改正され、労働時間等の設定を、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへと改善を図る労働時間等の設定の改善に関する特別措置法が2006年4月1日から施行されたところであり、労働時間の短縮の促進を含め、その円滑な実施に努めている。

(4)第4パラグラフについて
 2003年3月に国会に提出された児童福祉法の一部を改正する法律案については、可決・成立し、2003年7月16日に公布された。
 これにより、待機児童が50人以上存在する都道府県及び市町村は、保育の供給体制の確保に関する保育計画を策定することとされた。
 具体的な施策の状況報告については、質問II〔第5条〕で回答済みである。

(5)第5パラグラフについて
 男性の育児休業取得率を高めるための取り組みについては、質問II〔第6条〕で回答済みである。

(6)第6パラグラフについて
 「女性の活躍推進協議会」が2002年4月にとりまとめた「ポジティブ・アクションのための提言〜意欲と能力のある女性が活躍できる職場づくり〜」の内容及び協議会の活動について情報提供する。
 本提言は、ポジティブ・アクションの意義、必要性、効果やポジティブ・アクション推進のためのポイントを、経営者、人事担当者、女性等それぞれの立場ごとに整理している。この中には、例えば、育児休業の取得しやすい職場環境の整備といった、男女ともに仕事と家庭や個人生活のバランスをとることも含まれているところである。
 「女性の活躍推進協議会」では、実際にポジティブ・アクションに取り組んでいる企業の具体的な取組内容を冊子にして取りまとめ、どのように取り組めばよいかのヒントを提示するとともに、フォーラムやセミナー、シンポジウムの開催等により、この提言や具体的な取組内容の普及に努めている。さらに、都道府県労働局ごとに「女性の活躍推進協議会」を設置し、地方版提言のとりまとめ、事例集の作成、セミナー等の開催等を通じ、活動を全国的に展開してきたところである。
 なお、「女性の活躍推進協議会」は、家族的責任を有する男女労働者の問題についても含めているが、例えば女性の登用推進等、男女間格差縮小のためのポジティブ・アクション推進を目的の主眼においている。
 このほか、政府においても、この提言を受けて、2003年より、具体的にポジティブ・アクションに取り組もうとする企業が実情に応じた目標を立てる際に活用できるよう、自社における女性の活躍状況を同業他社と比較したり、取組内容についての診断やアドバイスを受けたりできる「女性の活躍推進状況診断(ベンチマーク)事業」を実施している。

2005年専門家委員会意見について
(1)有期労働者に対する夜間労働、超過勤務を規制する法律について
 「2004年専門家委員会直接要請について」の(1)に同じ。

(2)パート、有期労動者、賃金職員の育児・介護休業、またそれに関する法について
 「2004年専門家委員会意見について」の(1)に同じ。また、別添1のとおり育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律について情報提供する。

(3)有期労働者の育児介護休業を決める権利を持つ者について
 事業主は、子の養育又は家族の介護を行い、又は行う予定の労働者の職業生活と家族生活の両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針に基づいて判断するものであるが、仮に労使間で疑義が生じた場合には、行政が判断することとなる。なお、事業主がこれら労働者の休業を認めなかったことが違法か否かの判断については、最終的には裁判所に委ねられるものである。

(4)男性労働者の育児休業取得促進のための措置について
 男性の育児休業取得率は未だ低い水準にあり、男性の育児休業取得を促進するため、次世代法に基づく認定基準に男性の育児休業取得実績を盛り込み、男性の育児参加促進のためのモデル的な取り組みを行う企業200社に対する支援及びこれらの事例の普及等に取り組んでいる。

(5)看護休暇を労働者の権利として確立すること及び子以外の家族の看護休暇を設けることについて
 「2004年専門家委員会意見について」の(3)に同じ。

(6)介護休業を取得する労働者の社会保険料免除措置について
 報告すべき特段の事項はない。

(7)家族的責任に起因する解雇の保護措置について
 「2004年専門家委員会意見について」の(5)に同じ。

(8)国立病院・療養所の賃金職員が育児・介護休業の対象となるような改正があるか否かについて
 「2004年専門家委員会意見について」の(1)に同じ。

(9)国立病院・療養所における家族的責任を有する労働者の転勤について
 「2004年専門家委員会意見について」の(2)に同じ。

(10)2004年4月には、国立病院・療養所は独立行政法人へ移行されるが、厚生労働省は、「賃金職員の雇用は法人が決める」として、移行後の院内保育所運営や職員の雇用をどうするかについて、明確にしていない。」ということについて
 「2004年専門家委員会意見について」の(4)に同じ。

(11)男女共同参画白書、男女共同参画基本計画について
 2003年男女共同参画白書は、別添4にて送付する。2005年12月に閣議決定した「男女共同参画基本計画(第2次)」においても、「男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援」を重点分野の一つとして盛り込んだところである。

(12)保育および保育施設にかかわる本条約第5(b)の適用を促進するためにとられた、あるいは予定されている措置について
 「2004年専門家委員会意見について」の(4)に同じ。

.質問IIIについて
 前回までの報告に変更がある点は以下の通り。
 5について
 ・第1パラグラフ及び第2パラグラフ
 「精神障害者福祉に関する法律」の後ろに「障害者自立支援法」を追加する。

 ・第2パラグラフ
 「精神薄弱者福祉法」を「知的障害者福祉法」に改める。

 7について
 ・「人事院規則15−14に定める男性職員の育児参加のための休暇及び人事院規則15−15に定める子の看護休暇の承認については、各省各庁が行っている。」を末尾に追加する。

.質問IVについて
 前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。

.質問Vについて
 前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。

.質問VIについて
 本報告の写を送付した代表的労使団体は、下記のとおりである。
  (使用者団体)日本経済団体連合会
  (労働者団体)日本労働組合総連合会



別添1 (PDF:1145KB)
別添2 (PDF:204KB)
別添3 (PDF:475KB)
別添4 (PDF:3777KB)

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