06/08/31 労働政策審議会労働条件分科会 第60回議事録 第60回労働政策審議会労働条件分科会 日時 平成18年8月31日(木) 14:00〜 場所 厚生労働省6階共用第8会議室 ○西村分科会長 ただいまから第60回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたしま す。本日は石塚委員、島田委員、谷川委員が欠席されております。岩出委員からは遅れ て参加するとの連絡をいただいております。また、渡邊佳英委員の代理として根本さん が出席されております。議事に入ります前に、事務局の審議官が交代しておりますので ご紹介いたします。 ○審議官 森山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○西村分科会長 それでは、本日の議題に入ります。前回の分科会では、労使双方より 分科会における検討の内容や今後の進め方について意見の表明があり、公益委員が労使 双方と調整することとされたところであります。そのため、本日までの間、労使双方と の調整のために少し時間をいただきまして、公益委員が労使各側と意見交換を行い、労 使のご意見を伺いながら本分科会の運び方等について整理させていただきました。まず、 本日は、これまでの分科会の議論や労使各側との意見交換を踏まえまして、労使の主な 意見を事務局に整理してもらい資料として用意してもらいましたので、事務局からこの 資料の紹介をお願いしたいと思います。 ○監督課長 お手元の資料No.1「労働契約法制及び労働時間法制に関する労使の主な意 見」の内容をご紹介いたします。労働契約法制について、法整備の基本的な方向性につ きましては、使用者側の方から「法律ありきで考えるのではなく、労使自治を基本とし て、本当に必要な事項についてのみ対応を検討すべきである」というご意見です。労働 者側からは「判例法理の法制化に加えて、労働者保護の視点が必要である」「人事管理 の個別化、多様化、複雑化、雇用・就業形態の多様化、企業組織再編や人員整理などの リストラクチャリングなど、職場で起こっている問題に対応できる法律とすべき」「要 件と効果を定めた民事法とすべき」というご意見です。  労働契約法制の基本的事項につきましては、使用者側の委員のご意見は「契約内容に ついての了知は当事者の義務であり、過度な情報提供義務を使用者に課すべきではない」 「いかなる雇用形態に対していかなる人事制度や処遇を行うかは経営の自由であり、均 衡考慮を法令で規定することは妥当ではない」というものでした。労働者側委員からは 「労働契約は労働者と使用者の合意が基礎となるべき」「労働契約の締結・変更プロセ スにおいて、合意が適正に形成できるような情報を使用者が提供する義務を課すなど、 労使の非対等性を補正する手法を検討すべき」「均衡考慮ではなく、均等待遇又は差別 禁止と明確に規定すべき」というご意見でした。  労働契約の締結及び変更につきましては、(1)で労働契約の締結・変更のルールに ついて使用者側委員から「我が国では就業規則による労働条件の変更が行われるのが実 態であり、就業規則の変更によって、労働条件を集団的に変更する場合のルールについ て、過半数組合等との間で合意している場合には、労働基準法の意見聴取や届出を失念 した場合も含め、合理性の推定効を認めるべきである」というご意見でした。労働者側 委員からは「労働契約は労働者と使用者の合意が基礎であり、就業規則に合理性があれ ばそれを契約内容とする合意があったと推定するルールを中心に法律化するのは反対」 「使用者が一方的に作成する就業規則を労働契約の変更手段とすることを盛り込むこと には反対」「契約は当事者双方の合意がなければ変更できないのが原則であり、合理性 があるからといって合意を推定すべきではない。また、労使委員会などの労働組合以外 の労働者集団を就業規則の変更の合理性判断に活用することには反対」というご意見で した。(2)労働者の意見を代表する制度につきましては、使用者側委員から「企業の 実情を考慮し、過半数組合がなくても、過半数組合がある場合と同様に対応できるよう にすべき」というご意見がありました。労働者側委員からは「労働基準法の過半数代表 者には問題があるので、労働者代表制度とすべき。しかし集団的労使関係にも多大な影 響があるので、労働契約法から切り離して議論をすることや、労働組合との役割分担を 明確にするためにも現行の過半数代表者等が担っている役割に限定することが必要」と いうご意見がありました。  1頁の下のほうですが、重要な労働条件、重要事項の説明に関しましては、使用者側 委員の方からは「書面説明を効力要件にすべきではないし、違反に対して罰則を課すべ きではない」というご意見でした。労働者側委員からは「労働者が承諾したつもりがな くても、使用者に書面で明示・説明されることによって、承諾したものととらえられる 懸念がある」という意見がありました。(2)ですが、採用内定、その他のことにつき ましては、使用者側委員から「紛争解決のためのルールを明確化する際には、実務に与 える影響なども考慮し慎重に検討すべきである」。労働者側委員からは「ルール化に当 たっては、判例法理に加えて、労働者保護の視点を取り入れるべき」というご意見があ りました。(3)ですが、いわゆる変更解約告知の関係につきましては、使用者側委員 からは「個別の労働契約により決定されていた労働条件について、使用者が変更の申入 れを行いうる権利があることを明記すべきである」というご意見がありました。労働者 側委員からは「労使が合意しなければ労働条件は変更できないようにすべきであり、い わゆる変更解約告知制度には反対」というご意見がありました。  大きな5番です。労働契約の終了につきまして(1)の整理解雇ですが、使用者側委 員からは「四要素は最高裁で確立していないため、法制化すべきではない」。労働者側 委員からは「四要件として法制化すべき」という意見がありました。普通解雇につきま しては、使用者側委員から「普通解雇の態様は様々であり、そのための手続もケースバ イケースでなされるものである。これに対して是正機会の付与等、画一的な手続規制を 設けることは、実態を無視して企業に不相当な負荷をかけるものである」というご意見 がありました。労働者側委員からは「普通解雇には契約関係を継続しがたい正当な理由 を必要とすべき」というご意見がありました。(3)解雇の金銭的解決につきましては、 使用者委員からは「紛争解決の選択肢を広げ、解雇紛争の早期の妥当な解決を可能とす るために早急に実現すべき。その際、金銭の額は、中小企業の実情を考慮したものとす べき」というご意見がありました。労働者側委員からは「裁判で解雇が無効とされた場 合にも、使用者が金銭で労働契約を解消できる制度には反対」というご意見がありまし た。(4)退職の強要に関しましては、使用者側委員からは「民法の一般法理、強迫、 錯誤等で十分である」。労働者側委員からは「退職の意思表示の撤回についてもルール 化すべき」というご意見がありました。  有期労働契約に関しましては、使用者側委員から「ルールの明確化の名のもとに有期 労働契約を規制することによって、かえって企業は厳格な手続のもとで短期の雇止めを 余儀なくされ、労使の望まない結果となる」というご意見がありました。労働者側委員 からは「入口規制(有期労働契約を利用できる理由の制限)出口規制(更新回数や期間 の制限)均等待遇の3点がそろわない限り、本質的な解決にはならない」というご意見 がありました。  3頁の国の役割ですが、使用者側委員からは「仮に制定するとしても労働契約法は労 使の権利義務を規律する法律であり、指導は不要である」というご意見でした。労働者 側委員からは「周知、啓発は必要」というご意見がありました。  続きまして、労働時間法制の関係です。時間外労働ですが、健康確保休日について、 使用者側委員からは「中小企業は人員も少なく、仕事の受注先との関係もあるため、休 日付与を義務付けられても対応できない」。労働者側委員からは「疲労回復の観点から 健康確保休日を設けることは評価できる。ただし、中小企業の特例措置は反対」という ことでした。割増賃金につきまして、使用者側委員からは「割増賃金がどの程度長時間 労働の抑制に資するのか疑問」「企業のコスト競争力が落ちることにつながるし、中小 企業の負担増に直結するため、反対」。労働者側委員からは「メンタルヘルス不調者や 過労死の増加、少子化など長時間労働がもたらす弊害が顕在化しており、ワーク・ライ フ・バランスの視点から労働時間の在り方を検討すべき」「諸外国の割増率や均衡割増 賃金率との関係を踏まえ、時間外割増率はすべて50%に引き上げるべき」というご意見 がありました。  年次有給休暇につきましては、使用者による時季聴取に関しまして、使用者側委員か らは「年休の取得率向上のためには、使用者が一定日数について時季指定できる制度も 有用であるかもしれないが、中小企業では対応が厳しい」。労働者側委員からは「年休 取得促進の観点から前向きに検討すべきだが、労働者の時季指定権は阻害しないことと すべき」というご意見がありました。時間単位年休につきましては、使用者側委員から は「企業運営に障害が生じる懸念があり、中小企業では対応が難しい」とのご意見があ りました。労働者側委員からは「制度化に賛成だが、暦日単位での取得を阻害しない措 置や上限日数の設定等が必要」というご意見がありました。退職時清算につきましては、 使用者側委員からは「結果として年休取得を抑制し、コスト増になるため反対」。労働 者側委員からは「年休の取得抑制につながらないことを前提に検討すべき」というご意 見がありました。  3頁の3番の自律的労働にふさわしい制度につきましては、使用者側委員からは「裁 量性の高いホワイトカラー労働者については、労働時間の長短でなく、成果を評価する ことで処遇を行う必要がある」「労働者の公平性、労働意欲の創出、生産性の向上、企 業の国際競争力確保等の点からホワイトカラー・エグゼンプションを早期に導入すべき である。その際、各企業の労使の自治による健康確保措置を図りつつ、法律の要件は、 中小企業等多くの企業が導入できるようなものとすべきである」というご意見がありま した。労働者側の委員からは「変形労働時間制、フレックスタイム制、専門業務型裁量 労働制、企画業務型裁量労働制があり、労働時間規制が適用除外される新制度を創設す る必要性はない。このような制度は長時間労働を助長するので反対」というご意見があ りました。  4頁です。管理監督者につきましては、使用者側委員からは「仮に法制化するなら、 実態に合わせ管理監督者の範囲を広げるべきである」という意見がありました。労働者 側委員からは「具体的な定義を法律で明確にし、不適切に拡大されて運用されている実 態を是正すべき」「深夜業の割増賃金支払いからの適用除外は反対」「実労働時間の把 握、休息時間の保障、長期連続休暇の保障等を義務づけるべき」とのご意見がありまし た。  現行裁量労働制に関しましては、使用者側委員からは「専門業務型裁量労働制は、対 象業務の範囲が明確であり、本人同意を要件にする必要はない」「裁量労働制は、特に 中小企業については、対象業務の範囲を広げるなど、活用できるようにすべき。また、 手続を簡素化し、導入要件を弾力化すべき」というご意見がありました。労働者側委員 からは「専門業務型裁量労働制は、本人同意を要件にすべき」「企画業務型裁量労働制 は、労使委員会の設置は要件として維持すべき。また、対象業務の安易な拡大は行うべ きではない」「中小企業の特例措置は反対」というご意見がありました。  検討の進め方につきまして、使用者側委員からは「重要な事項に絞った上で労使のニ ーズの高い順から議論を進めていくべき」「ホワイトカラー・エグゼンプションと時間 外労働規制をセットで議論すべきではない」「スケジュールありきではなく、特に労働 契約法制は時間をかけて慎重に検討すべき」「労働契約法制と労働時間法制は切り離し て議論すべきで、まず労働時間法制から先に審議すべき」というご意見がありました。 労働者側委員からは「労働契約法の議論にあたり検討すべき項目は多岐にわたるが、労 使の一致する項目について検討し法制化すればよい」というご意見がありました。以上、 労使の主な意見につきましてご紹介させていただきました。 ○西村分科会長 ただいま事務局から労使の主な意見について紹介してもらいました が、その補足も含めまして、本日は労働契約法制及び労働時間法制全般についてご意見 をお願いしたいと思います。まず、労働契約法制、それから労働時間法制という順番で ご意見をいただきたいと思います。 ○小山委員 1つだけ確認させていただきたいのです。主な意見をまとめていただいて、 双方の意見を表明するということはそれで結構なのですが、前回の第59回、6月27日 の労働条件分科会で厚生労働省事務局が中間取りまとめに向けた素案ということで出さ れている「労働契約法及び労働時間法制の在り方について(案)」という文書について ですが、私はあの文書は撤回されて今日の審議に入っていると理解しておりますが、そ ういう理解でよろしいのでしょうか。 ○監督課長 6月27日の文書につきましては、6月27日の段階で分科会長のほうから 中断ということで、その後の処理は現在のところなされていないという具合に理解して おります。 ○田島委員 ということは、中断されて今日も配られていないということは、13日、27 日案が出されましたが、審議は入っていないし、したがってあのペーパーそのものはな かったものと理解してよろしいわけですね。今日も配られていないわけですから、中断 で今はお蔵に一時入っているだけでまた引っ張り出されるのか、そうではなくて、新た に労使の意見を聞いて、そして今後のこの審議会で出されたものがまとまって出されて くるのか。そのことがはっきりしていないとおかしいと思うので。 ○監督課長 もちろん、委員がおっしゃいましたように、この審議会でこういう主な意 見が出されたわけですので、そういう意見の交換の下にまとまるものがまとまっていく ということでご理解いただければ結構であると思います。 ○田島委員 27日の案は一旦なくなったと理解してよろしいわけですね。 ○監督課長 今日、主な意見ということで今いただいておりますし、先ほど、分科会長 が引き続きご意見をということで頂戴しておりますので、そういう意見を踏まえて今後 の議事を進行していただければ大変ありがたいという具合に思います。 ○新田委員 念を入れるようで申し訳ないのですが、いま紹介された労使の隔たりなり 何なりは、報告されたとおり議論の上でまとめられたというのはそのとおりですが、要 するに仕切り直すのだと。仕切り直しをして、いま分科会長がおっしゃったように意見 を求めて、それで改めて契約法なり時間法制なりについての議論の柱立ても含めてやっ ていこうと。こういうことなのですね。要するに、これまでの視点とかあり方とかいう のはなかったというか、改めて仕切り直すのだと。議論をしてきたことは事実ですよ、 そういう意味では仕切り直してやっていくのだということなのですね。 ○西村分科会長 今日の議論で出されたところでまとめていきたいということで、先ほ ど田島委員は2つご意見をおっしゃったと思いますが、どちらかというと後者です。こ こで意見を出して、その範囲で議論をしていこうということです。それでは、労働契約 法制について、労使それぞれの方からご意見がございましたらお願いいたします。 ○長谷川委員 私のほうから話をしたいと思います。連合の労働契約法に関する考え方 ですが、これまで労働契約法に関する議論をしてきましたが、厚生労働省の考える労働 契約法と私ども労働側委員が考える労働契約法には大きな違いがあると思っておりま す。大体6点ぐらい違いがあるのではないか。就業規則は労側は使わないと考えていま すし、解雇の金銭解決制度は作らない、差別禁止について明確に記入する、契約の変更 は労使双方から請求できるものである、労働者との協議を重視する、労働条件変更には 直接関与しない労働者代表委員会の設置が必要、と考えております。  就業規則ですが、就業規則は労働基準法上の制度でありますし、そもそも、就業規則 は使用者が一方的に作成し変更するものであると認識しております。その就業規則を労 働契約の決定とか変更の方法の中心に据えることについては、21世紀という新しい時代 に作る労働契約法にはそぐわないのではないかと私は考えております。  次に、解雇ですが、解雇無効の判決を勝ち取って職場に戻りたい労働者が職場に戻れ なくなる制度を導入するということは、組合も、労側委員にとっても、労働者にとって も、これは受け入れることができないと思います。  次に、現在、雇用就業形態の多様化と同時に二極化も進行しているわけですが、労働 者の性別とか年齢、国籍も多様化しているというこのような環境で差別の禁止、均等待 遇をきっちりと法律に書き込むことが大変重要だと考えております。それから、契約当 事者は双方対等なのでありますから、契約を変更したいということについては双方が請 求できるのが当然なのではないかと私は考えております。だとすると、労働契約も同じ です。しかし、労働契約は使用者からの変更申出のほうがずっと多いということもある ので、労働者は金銭に余裕がないことなどの非常な特徴を考えると、契約変更を申し出 るほうが訴訟の費用やリスクを負担する設計にしてはどうかと考えております。契約の 変更ができるという裁判所などの判断が確定するまでには、それまでの契約で働き続け るようにすべきだと考えております。何が言いたいかというと、いわゆる変更解約告知 は導入すべきではないということです。  次に、労働契約は非常に長期に継続することも特徴の1つだと思います。契約の変更 や配転、出向、転籍、長い間にはいろいろなことが生じます。そのときに、労働者と使 用者が十分に話し合うことが必要でありますし、労働者代表など、集団を絡めて協議す ることも必要なのではないかというふうに考えております。  労働条件の決定及び変更は労働組合の役割であると私は考えております。労働契約法 の中で場当たり的に労使委員会や労働者代表のことを考えるべきではないし、取り入れ るべきではないと私は考えます。労働契約法とは別立ての法律にして、日本のあるべき 労働者代表の姿をじっくりと時間をかけて議論するときではないのかと考えます。私ど もは、多様性、公正性、透明性のある労働者代表が必要だと考えております。労働条件 の決定とか変更を協議するための労働者代表を作ろうとしているのではありません。こ このところは是非しっかりと受けとめていただきたいと思います。  今日、席上に、私の発言の参考資料として、連合が考えた「労働契約法案要綱骨子(案)」、 「労働者代表法案要綱骨子(案)」、「パート・有期労働契約法案要綱骨子(案)」な るものを配付しております。連合は、2001年の10月に21世紀の新しいワークルールと してこの3法を提起いたしました。今回の労働契約法を考える上でこれらの私どもの考 えた3法が非常に重要でありますので、ポイントだけを述べたいと思います。  まず、労働契約法のポイントです。労働の合意の重視をしております。契約なのです から、労働者の合意が必要なのは当然であり、使用者が一方的に何でもできるというよ うなルールは契約法としてはおかしいのではないか。そして、合意ができない場合には 裁判所などの第三者の機関に契約変更の妥当性を客観的に判断してもらうということで 連合案は書いております。  それから、多様化時代への対応ということですが、パート有期労働契約法を作るほか に、多様な働き方に対応できるように労働契約法の対象者を労働基準法よりも広くして あります。このことについても是非理解していただきたいと思います。  それから、労働契約法は、労働契約の締結、履行、終了の全ステージで多くの労働者 がぶつかる問題について、網羅的に誰もが理解できるようにわかりやすくシンプルなル ールとして連合は作りました。是非、今回の労働契約法を作るにあたっても、わかりや すいということとシンプルさが必要なのではないかと考えております。  次に、紛争予防・解決ルールとしての労働契約法という考え方ですが、トラブルを事 前に回避できるように、普通の労働者や使用者が読んでわかるようなルールにしたと。 法曹関係者とか専門的に扱っている人しかわからないような法律は私はよくないと思い ます。そして、トラブル発生後に紛争処理機関で迅速に解決できるように、要件と効果 を明確にしております。是非、参考にしていただきたいと思います。  それから、先ほども申し述べましたが、連合の労働契約法に就業規則は使っておりま せん。労働契約内容の変更は、当事者の合意によってのみ行うことができることの一般 原則を定めて、労使双方から変更の申出が可能としたものであります。また、合意が整 わない場合には最終的に裁判所などに変更の必要性や合理性を判断してもらうルールと してあります。  次に、労使協議の重視です。使用者からの契約内容の変更、転籍、出向、人事評価、 解雇などについては労使で協議することも求めております。  次に、連合の労働者代表法案のポイントです。今回、労働者代表とか労使委員会の話 もこの審議会の中でされてきたわけですが、連合案は、過半数代表の改革として、過半 数組合がない事業所に労働者代表委員会を設置して36協定など、法定の労使協定や意見 聴取に限定することということで、労働組合との権限・役割の分担をきちんと書いてお ります。私は、この労働契約法の議論の中で、労働者代表とか労使委員会で労働条件の 変更や決定ができるようにすることには大きな問題があると思っております。この際、 労働基準法の中に登場してくる労働者代表について整備する法制化が必要なのではない かと思います。  それから、多様性、透明性、公正性の担保ですが、多様な労働者が労働者代表委員会 に積極的に参加し、意見が言えるようにすることも重要です。審議会の中で今の過半数 代表が本当に多様性、透明性、公正性を担保しているかという公益委員からのご指摘も ありますように、労働者代表について、多様な労働者が労働者代表委員会に積極的に参 加して、意見が言えるような仕組みをこの連合の代表制の中で書いておりますので、是 非このことを今回の議論の中でも活用していただきたいと思います。  それから、パート有期労働契約法案骨子のポイントですが、連合のパート有期労働契 約法案では、まず、労働時間が短いこととか有期であるということを理由にして類似の 労働者と差別することを禁止しております。まさに、雇用就業形態の多様化に対応する 法律の中では均等処遇、差別禁止が必要という考えに基づいて提起しております。それ と、パートの時間外労働ですが、パート労働者の同意が必要でありますし、契約以上の 時間外をやるときには割増賃金を払うことが必要だということを提起しております。  有期契約労働者の処遇格差や雇用の不安定さの問題は私ども労側は何度も言ってきま した。問題の解決には、まず、有期契約にできる場合の理由の明示が必要だと思います。 それから、出口は、2回更新した3回更新したという更新回数とかある一定の期間を過 ぎたら期間の定めのない雇用とする。有期であっても通常の労働者と均等処遇をする。 この「3点セット」できっちりと法制化することが必要だということで記載しておりま すので、ご参考にしていただきたいと思います。  次に、労働時間について述べたいと思います。今回、労働時間法制の議論にあたって 重要なのは、今なぜ労働時間の在り方を見直さなければならないかということについて 労使が本当に議論することではないかと考えております。労働時間は、グローバル化と か産業構造の変化、企業間競争の激化、企業を取り巻く環境変化とか成果主義の観点で の人事制度の見直しなどを背景に、労働時間の長短の二極化が生じて長時間労働が問題 となっていることについては労使双方、公益も含めて認識を共有できるのではないかと 思います。  そして、メンタルヘルス不調者の増加とか過労死、過労自殺、仕事と家庭生活の両立 の困難さや少子化などは長時間労働がその大きな原因であると私どもは認識しておりま す。特に、時間外労働をどのようにして削減すればいいのかということについて優先し て取り組むべきであると考えます。  今なぜ労働時間の在り方について議論するのかといえば、このように労働者が働きす ぎて心身を壊してしまったり生命を落としてしまったりする状況を何とかしなければな らないからだと考えます。少子化や仕事と生活の両立の面でも長時間労働は大きな影響 をもたらしているということについて、私どもはきちっと受けとめることが必要なので はないかと思います。労使、公益、政府も共通の認識を持ってワーク・ライフ・バラン スの観点から労働時間の在り方を議論すべきではないかと考えております。  少し各論について申し上げたいと思います。今日事務局が用意したペーパーの中で、 この間、私どもが述べてきたことは整理されているわけですが、あえてもう一度言いま すと、重要なのは労働時間の見直しの中で、時間外割増と自律的労働にふさわしい制度、 この2点について強調して述べておきたいと思います。時間外割増率の引上げですが、 時間外労働を削減して長時間労働を是正するためには、現在の割増率を50%に引き上げ るしかないのではないかと私は考えております。  現在の時間外割増率では、人員増ではなく、残業をさせるほうがコストがかからない ので、これでは時間外労働の抑制とはならないのではないかと考えます。時間外割増率 を引き上げることで、企業もどのようにすれば残業を減らせるのかを真剣に考えること になるのではないでしょうか。使用者側委員の方はコストを強調されますけれども、長 時間労働でメンタルヘルス不調となったり、過労死や過労自殺となったりする労働者が 増えている状況をどうやったら変えられるのか、是非考えていただきたいと考えます。  次に、日本版エグゼンプション、自律的労働にふさわしい制度ですが、これの導入に ついては私どもは反対です。なぜこのような制度が必要なのか、私はとても理解できま せん。変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働など、現在あるさまざまな制度 でなぜ対応できないのでしょうか。これまでの使側からの意見、説明を聞いても私は本 当に理解できません。結局は残業代を支払わなくても済む労働者を増やしたいだけでは ないのか、というふうに私は受けとめてしまいます。このような制度が導入されれば、 現在の長時間労働はますます助長されてしまうのではないでしょうか。このような制度 を認めることは私としては断固としてできないということを述べておきたいと思いま す。  あと、その他の項目については事務局が整理したものを参考にしていただきたいと思 います。しかし、事務局の整理の中に入っていなくて私どもが審議会の意見の中で言っ た内容には、現行法の中の週44時間の特例があります。これを早急に40時間に見直す べきではないか。それから、24時間につき連続11時間の休息時間の話を私はEU指令 の関係で述べておりますが、日本においても最長労働時間というものについて設定すべ きではないかと思います。それから、最近の働き方の中で、情報システムの進化・普及 によって、退社後とか休日の呼出しとか、そういうことも行われているという実態が出 ていることを報告いたしました。そのような実態を調査して、このような働かせ方に対 する規制があるのか、そのことも検討すべきではないかということも申し述べましたが、 是非これらの問題についても議論していただきたいと思います。以上、事務局が整理し た項目に、あえて労側委員が意見を強調しておきたいことと、私どもが言った意見の中 で反映されていない意見について補強させていただきました。 ○西村分科会長 労働時間法制についても話をしていただいたのですが、使用者側はい かがでしょうか。 ○根本氏(渡邊佳英委員代理) 先ほどの使用者側意見を踏まえまして、中小企業の立 場から補足を含めまして意見をいくつか述べたいと思います。まず、今後の進め方なの ですが、それについて意見を申し上げます。来年の通常国会への法案提出を前提とした スケジュールありきということで議論はすべきではないと考えております。また、労働 契約法制と労働時間法制は別の議論でありますので切り離して議論すべきと考えており ます。順番については、先の労働基準法改正の際に積み残しである労働時間法制を初め に議論すべきであると考えております。  次に、労働契約法制について意見を申し上げます。労働契約のあり方については、中 小企業では良好な労使関係の維持に努めている所が多くありますので、統一的、画一的 な法制化は不要であると考えております。労使の契約のあり方を議論することには反対 はいたしませんが、労使自治を基本として、労使が必要と考える事項についてのみ検討 すべきであると考えております。また、就業規則の変更によって労働条件を集団的に変 更する場合のルールについては、過半数組合との合意だけではなく、過半数組合がない 場合もしっかりと議論すべきであると考えております。実際、中小企業の多くにおきま しては過半数組合がなく、また、雇用者の8割が労働組合に加入していない現状を考慮 しますと、過半数組合がある場合の議論だけでは不十分であるかと考えております。  次に、労働時間法制についてですが、ホワイトカラー・エグゼンプションと所定外労 働の賃金の割増率の引上げや休日付与をセットで議論すべきではないと考えておりま す。初めに、ホワイトカラー・エグゼンプションから議論を進めるべきであると考えて おります。なお、中小企業でも使いやすいものにしなければならないということは言う までもないことであると考えております。  次に、裁量労働制についての見直しの議論をお願いしたいと思います。中小企業とし ては、特に対象業務の拡大や導入要件の弾力化などに関心を高く持っております。ほか にも申し上げたい意見は多々ありますが、今後の審議の場で詳しく申し上げていきたい と考えております。 ○西村分科会長 そのほか何かございませんか。 ○紀陸委員 差し当たり、労働契約法制の問題に絞って申し上げたいと思いますが、労 側からたくさん資料が出て、私どもの考え方は基本的にこのお手元のNo.1の所に、分量 的にはあまり多くないのですが、お読みとりいただくと背景となる考え方もすべてこの 中に盛り込まれているというふうにご理解いただきたいと思います。まず、基本ですが、 契約法制をどのようなものとして位置づけるかということですが、労使の自治、大企業、 中小企業、いろいろな企業があります。組合も有無がある。しかも仕事の内容もさまざ まですので、そこで扱われる問題も多岐にわたるということであれば、それだけ余計に 労使で回していくことがどうしても必要になってくるだろう。いろいろな問題について、 すべて法律で要件まで書いて、それがすべての場合に通用するようなものになり得るか というとそうではないだろう。契約法制だけではないのですが、少なくとも、労使関係 の基本は労使自治だということだとすると、基本的な問題は労使自治に任せるような雰 囲気を作っていくことが大前提ではないかと思うのです。  長谷川委員が言われた労働者代表法案要綱という、これは私もどういうご趣旨かよく わからないでおりますが、また後でお教えいただきたいと思いますが、少なくとも、労 働組合がある所はこのようにすべきだ、そうでない所はこうすべきだ、というぐらいの 仕切りをしていく大きな方向で労使自治の仕組みをきちんと活かせられないか。これが 第1であります。  それから、いま現在の会社の中の自治労務管理の基本は就業規則で行われているわけ でありまして、この変更についてだけを就業規則ではなくて個別契約でと言っても、何 というか、全体的な整合性はどうするのか、そこもよくわからない。会社が一方的に決 めた就業規則と言われますが、そんないい加減な就業規則を作っている会社はそんなに ないはずでして、問題はその運用をどうするか。そこに労使自治というものをきちんと 噛ませるという方向でいくのが筋ではないかと思います。  それから、特に私が気になったのは解雇の金銭解決ですが、非常に誤解があると思い ます。経営側が、組合役員の方で意にそぐわない方を解雇して、裁判になって無効にな ったからお金で出す。そんなことを狙っているのではなくて、不幸にして起きた長期化 する裁判をできるだけ早く正常化して、働く人の職場復帰、現実に長くなっているのが 実態ですから、それを直そうというだけの話であります。しかも、不当あるいは不法に 解雇の原因を会社が作ったものというのは、これは論外だということで、使側の申立て もなくていいよと私どもは申し上げているわけですから、ここは狙っている意図を全然 誤解されているのではないかと思っております。そういうことではなくて、スムーズな 被解雇者の職場復帰が駄目であれば金銭で解決して、両方でトラブルの長期化を防ごう という、ただそれだけの話でありますからそんなに大げさに考えるべきではない。問題 は、この金銭の額をどのように双方で納得するような決め方をするかという点だけが問 題であって、目くじら立てて論議するような問題ではない。選択肢を広げるためという ことでもって申し上げている点はご理解いただきたいと思います。  その他たくさんありますが、要するに基本は労使の自治ですから、これを柱にしたよ うな法体系をどういう形で作れば、しかもこれは最終的に厚労省がどういう法案を狙っ ているかわかりませんが、仮に来年の通常国会でということであれば、現実具体的にこ の秋の期間で論議できる範囲というのはそんなにないであろう。そうすると、優先順位 として何を置いておいたらいいのか。そこで、これは長谷川委員とも同じですが、合意 できるものだけしか駄目だと思うのです。だから、その合意できる範囲の優先順位をど のようにつけるか、論点をどのように絞るかという、その辺に焦点を置くのがいいので はないかと思っております。言い足らない点もありますが私からは以上です。ほかの使 側の委員方からございましたらお願いいたします。 ○原川委員 いまの紀陸委員からの発言に全く同感ですが、中小企業の立場から私から も発言をさせていただきたいと思います。まず、6月27日に示された内容しかないわけ なのですが、示されたものとしてはないと考えるわけですが、これまでの労働契約の議 論の中で出てきたものは実態が非常に多様なものであるにもかかわらず、一律的、画一 的に法律に規定して処理しようというものが多いということで、中小企業にとっても規 制色が非常に強いという印象があります。それから、あれもこれもすべて盛り込む完全 版を作ろうという考え方がとられているのではないかと思っておりますが、必要最小限、 不必要なものまで盛り込む必要はないのでありますから、当面問題となっている必要最 小限のものに絞って考えるべきではないかと思います。  それから、これはいちばん大事なことなのですが、中小企業の実態というものをよく 考えていただきたい。中小企業も、当然、法律ができれば対応しなければなりませんの で、そういった中小企業が対応可能な、あるいは新しい制度でも、大と小が違うからと いって一方は活用できて一方は活用できないという制度はいかがなものかと思いますの で、中小企業も現実的な対応ができるような制度、長谷川委員がおっしゃったようにわ かりやすい制度を是非考えてもらいたいと思います。労働契約法制は、中小企業だけで はなくて企業全体にとって経営に対する影響が大きいということがありますので、初め にスケジュールありきではなくて、慎重に検討すべきだと思います。  それから、労働時間法制ですが、私どものほうはホワイトカラー・エグゼンプション の導入は賛成でございます。あと、裁量労働制につきましても、中小企業が現実的に使 えるように、中小企業においても実質的に機能するような制度にしていただきたいとい うことでお願いをしているところでございます。ただし、時間外の規制につきましては、 先ほどコスト論ということも出ましたが、現実として景気は良くなったといっても厳し い状況にあることには変わりがない。そういう中で激しい競争に耐えながら経営をやっ ているわけでありまして、そういった点からして企業に対する影響が非常に大きいわけ ですので、是非、この時間外の規制については慎重に考えていただきたい。私どもはこ れについては反対でございます。  それから、契約法のほうの金銭解決ですが、これは紛争の早期解決あるいは解決手段 の選択肢を増やすという意味で、導入をしていただきたいと考えております。ただ、最 初にも言いましたように、ホワイトカラー・エグゼンプションにしても裁量労働制にし てもこの金銭解決にしても、現実、中小企業だから駄目だということではなくて、中小 企業には中小企業特有の良いところもあるわけですから、その中小企業も活用できる現 実的な制度にしていただきたいというふうにお願いをする次第でございます。 ○田島委員 使用者側の意見を聞いて何点か疑問を持ちました。1つは、渡邊委員の代 理の根本さんは一般的には良好な労使関係だと言われていますが、良好な労使関係の中 で例えば不当な解雇とか、あるいは労働審判制度が活況を呈しているとか、労使紛争が 絶えないということがあるのでしょうか。そういうところに対してきちっとルール化を しなければいけないと思います。2点目は、労使自治を基本と言いますが、労使自治で 本当にいいのかという問題があるだろうと思います。例えば、不払い残業があれだけ摘 発される、あるいは朝日新聞が大キャンペーンを張っていますが、偽装請負とか違法派 遣の問題がある。そういう形で、結果的には労使自治だけではなくて、監督署なりマス コミがキャンペーンを張らなければ正せないような問題、そういうものを正す場合には 労働基準法という労働立法の強行法規があるからはじめて正せるのであろうと思いま す。そういう中で、本当に労働契約という問題を労使自治だけに委ねていいのか。連合 が言うように、労使自治に対応した形で、要件とか効果、あるいは手続に反した場合に は罰則を設けるような強行的な側面も持った契約法が必要ではないか。使用者側は労使 自治だけを言っていますが、そういう中でなぜ不払い残業がこんなに摘発されるのか、 あるいはなぜ偽装請負があれだけあるのかという問題について是非お答えいただきたい と思います。で、また意見を言いたいと思います。なぜ法違反がこんなに多いのですか ね。立派な企業ですよ、日経連の会長さんがやっている企業でさえあれだけ叩かれるわ けですよ。それで本当に労使自治でいいのですかという問題です。 ○平山委員 いまお話があったとおりで、労働基準法は強行法規ですよね。この法に則 していないということであれば労働基準法に則してきちんと指導監督する。そういう趣 旨の法律だけに、これは基本的に守らないといけない。守られていなければ指導監督す るというのはそのとおりだと思います。労使自治で、それぞれの企業体なり、企業内の 労使で自治的にこういう労働契約、労働条件を決めていこうということと、強行法規で 指導監督をしていこうというのはステージが明らかに違います。基準法を超えたところ でそれぞれで決めていきましょうということに対して、どういう関与の仕方をお互いの 当事者あるいは第三者がするのかという問題です。  基本は、それぞれの企業当事者でその当事者同士の条件を自主的に決めていくという のが大原則である。その中で起こる紛議が個別紛議になったり、あるいは納得的にそう いう条件が決められていないではないかという疑義が起こったりするところで紛議が起 こる。こういうものをどうやって予防していくか、あるいは紛議が起こらないような仕 組みをどうやって促していくかということがこの労働契約法制を議論するいちばん大事 な起点だと私は思っています。  両当事者で、いまどういうことがどのように回っているかということを抜きにして、 規制をして、同じこのエリアの中のお互いの決め事のところを、では基準法を相当超え ていても規制するのですか、ということではないのではないか。むしろ、労使自治とい うのは本当に回っていますかと。そういう条件、就業規則がありますよと言っても、本 当にきちんと変更の手続みたいなことが皆が納得する形できちんとやられて紛議を予防 する形で回っていますかとか、そういう仕組みがないのではないですかと。ないのであ ればそういう仕組みをどういう形で作っていけばいいのですかということを促してい く。たぶん、そこがこの議論をすべき点ではないか、そこが行き着く先ではないかと私 は思っています。ですから、先ほどの件とこの件はステージは違うと。 ○紀陸委員 重ねて申し上げますが、紛議という言葉を使われましたが、紛議が起こる 要因はいろいろあると思うのです。不払い残業と言われますが、法律を知らない、法令 を知らない、あるいは法令の解釈において行政と企業側とに差異があります。典型的に 管理監督者の範囲をどのように理解するか、実態と違うのではないかと言って法令解釈 で論議がある。それがひっくり返ると、まさに、オーバータイムの対象になるかならな いか分かれていきますよね。そういう点があります。  それから、労働力需給調整の仕組みについても、例えば請負とか派遣でやるのかどう か。それも現場の実態に下ろしてみて、企業側はこれは法令的に是だと思っている。と ころが、行政の目から見れば、その法の解釈は違うのではないかと。実態と法令の解釈 の間に差異が起こっているということはあります。それは、当初作った法令の運用の仕 方と実態がどんどん乖離していく。あるいは、その背景となる需給の調整の頻度が全然 違ってくる。派遣会社とか請負会社とか、運用の当事者が誰かということにもかかわり ますが、そういう問題があるわけです。  そういうものを埋めていくために、いろいろな事象において細かく法律を作りましょ う、法令も作りましょうと、どんどん状況において作っていく。そういうことを重ねて いくと、極端に言うと、労使の問題自治解決能力はなくてもいいわけです。いろいろな 場合を想定して、すべて法の網をかけて、寸分漏らさずに違法とか不当という事態が起 こらないようなこと、そういうことを労働組合の法令に求めるのか。いろいろな会社が あり、世の中の動きが早いですから、そういうものの法令は追い着いていけないわけで すよね。基本的には、労使が自分の会社の中で起きる問題をなくしていく、予防してい く、それがいちばん正しい形だと思うのです。  しかも、会社の中のことは外から見てもわからないですから、よく入口で監督官の方 と現場当事者がやり合いますよね。それは外から見たってわからない、わかるまで時間 がかかるわけです。そんなことがたくさんあるわけです。極端に言うと、何百万社とい う会社の中でいろいろなことがあるわけですから、そういう中で起きるような問題は、 もちろん基準法というのは最低限のことだけでやっていくのです。では、その後はとい うと、いろいろな問題を想定して、法の網を細かく、あるいは法令の網の目を細かく作 るなどということが可能なのかどうか。しかも、そういうことを期待していいのかどう かです。  それだったらば、自分たちの中でそういうことを防げることを作っていくというのは 労使がやるべきことではないのか。できませんから法律を作ってくださいと言ったら、 自分の活動の利益を自ら狭めることになってしまうだろう。私どももそんな格好のいい ことを申し上げられるような立場ではありませんが、少なくとも、法令を知らなかった ら最低限、これだけはきちんとやってくださいというキャンペーンをしていますよね。 そういうことが徹底することでかなりの問題が防ぎ得る。それを周知徹底するために労 使が協力をするということだって、それも労使自治につながるわけです。  法令の精神を我が社でどのように根づかせるのか、それを工夫するのもその会社の労 使の役割だと思うのです。実は、そこまでいっていないようなことがたくさんあるわけ でありまして、それをやる前に全部法令にお願いしますと言うのは自らの役割の放棄に なりかねない。それは労側だけではなくて使側においても同じようなことになるかと思 うのです。そういう意味で、労使の自治でやれるものはやろうではないかというのがす べての労働問題の基本になければいけないと思っております。だから、我々も全然要ら ないとか、すべての法規はノーですということではありませんが、本当に最低限のもの だけを作っていくのが基準法だとすると、新しくできる契約法制においてそれでいいの ではないかという考え方なのです。 ○田島委員 先ほど長谷川委員が言ったように、連合側もすべてに網の目をかけてとい う契約法は想定していなくて、極めてシンプルに原則的なこと、あるいは判例法理で確 立していること、あるいは労働者保護をきっちり最低規制的に入れるべきだという主張 をしているのであって、すべてに網の目をかけてという主張は全くないということだけ 発言しておきます。 ○長谷川委員 紀陸委員の言っていることと私が言っていることは、労働契約法の法律 で言う性格についてはそんなに違いはないと思うのです。だから、労働基準法は最低基 準ですから、これは守らなければいけない。その労働基準法とは違ってなぜ労働契約法 を作るかというと、要するに、労働者と使用者の権利義務ということをきちんと書きま しょうと。それの中に何を入れるかというのは、労働契約法といえばいろいろ書き込む べきものがありますねと。その中で今回は何を盛り込みましょうかという議論をしてい こうと。シンプルにというところでは、労使で一致するものについて労働契約法の中に 盛り込みましょうというのは労使一致していると思うのです。労働契約法を作れば壮大 な労働契約法にもなるし、そういうものを作るのかシンプルなものにするのかというの は、ある意味ではシンプルにというところで一致しているのだと思うのです。  それで、そのときに、労働契約法というのはそういう意味では最低基準とは違うわけ でありまして、どうやって要件と効果を法律で規律していくのか、民事効果を与えるの かということで、そういう意味では、国の指導のところも、国の指導はそんなにやる必 要性はない、というところで一致していると思うのです。だから、手続のところにはど ういう規制をかけるかという議論はあるとしても、基本的には要件と効果と民事効果を きっちり書くべきだと。民法の特別法にと、労働組合が言っているのはそういう意味で 言っているわけで、労働契約に関する手続法規ではありませんよと言っているのはそう いう意味だと思うのです。  それと、なぜ労働契約法が必要かというのは、最初に田島委員が言ったように、とに かく個別労働紛争が非常に増加しているのに対応できるルールが必要ということは一致 していると思うのです。100万件ぐらいあって、その100万件を労働基準法に抵触して いるもの、労働安全法に抵触しているものを除いて、民事的な課題についてと言うとも っと件数が減ってくるわけですが、実際には増加しているということは変わらない。各 労働局が扱っている個別労働紛争の件数は年々増加しています。4月1日から始まった 労働審判も増えている。そういう中で、ある意味では、要件と効果を書いた法律を整備 しておくことが必要ですねということに対して、私は労使の意見の隔たりはさほどない のではないかと思うのです。判例もかなり出ているものがある。ただ、判例をそのまま 労働契約法に持ってくるかどうかというのは少し議論があると思うのです。だから、そ このところはもう少し丁寧に議論をしながら、労働契約法の必要性は何かということと、 どういうものを盛り込むのかということはこれ以降の中で論点整理しながら、こういう 問題について盛り込んでいきましょう、ということで労使が一致するものを作っていく ことが必要なのではないかと思います。労使が一致しないものを作れば、かえって無用 な紛争が起きるわけですから、どこが一致するのかは丁寧に議論していったらいいのか なと。  もう1つ、先ほど、労働契約法より労働時間法制を先にということがあるのですが、 労側から言うと、労働時間法制の重要性はわかるのですが、労働時間法制と労働契約法 の議論は一緒に行っていったほうがいいと思っています。もう1つ、労働時間は、使側 は早くからホワイトカラー・エグゼンプションと言うけれども、私はなぜホワイトカラ ー・エグゼンプションが必要なのか本当に理解できないのです。私の理解力がないから なのかどうかわからない。  先ほども滔々と長いこと言いましたが、労働時間が長くて日本の労働者が健康を害し て病んでいるこの実態をどうとらえて、その中でどういう労働時間の規律が今の労働基 準法の規律で何なのかどうなのか、何が必要なのか、という議論を是非していただきた いと思うのです。最初からホワイトエグゼンプションありきというと、私も自分のこう いう性格柄、なんだ割賃を払いたくないのかと、すぐ思ってしまうわけです。そうでな いということであれば、なぜいまの労働時間見直しが必要なのかということを議論しな いと、私たちは皆にきちんと答えられないと思うのです。  この審議会は2カ月ほどお休みがあったわけですが、その間、私たちは、随分、地方 連合会の学習会で説明したりする機会を持ちました。皆の関心の的は労働時間ですよ。 「ホワイトカラー・エグゼンプションというのは何ですか」「あっ、あれは割賃を払わ ないの」とか、私は簡単に説明します。そうすると、皆は「うん、納得」と理解してく れるのですが、なぜ時間外をやって割賃を払わないのだと皆が思うわけです。そういう 国民労働者に対する説明が本当に重要だと思っています。それで、「この労働時間の実 態を見てくれ」と言われると、ものすごいですよ。年間700時間とか1,000時間という 時間外労働、これはどうするのですかと。これを放置したままでホワイトカラー・エグ ゼンプションなんて話は誰も納得できないと思うのです。  ですから、是非、労働時間はホワイトカラー・エグゼンプションありきではなくて、 この長い労働時間をどうしていくのかということを労使で真剣に議論してほしいと思い ますし、労働契約法は個別労働紛争が増加する中で、ある意味では紛争をきちんと解決 する制度はできたけれども実体法がないと言われたわけですから、その整備をきちんと やることが必要なのです。  私は、審議会に来ている皆さんの所の会社は非常に立派な会社だと思っています。し かし、日本には北海道から沖縄まで大小含めていろいろな企業があって、そこでいろい ろな労働者が働いているわけですから、そのことを視野に入れた労働契約法の議論が重 要なのではないかと思います。あと、労働者代表については、議論の中で今後ともきっ ちりと述べたいと思います。 ○紀陸委員 時間のほうに移ってよろしいですか。 ○西村分科会長 はい、どうぞ。 ○紀陸委員 基本的に、労働組合の方々の現状の労働時間問題に対するとらえ方が少し 偏りがあるのではないかと思っています。3頁に「自律的にふさわしい制度」と書いて ありますが、いちばんの基本は労働時間にかかわりない働き方。労働時間というものに 対して1日1時間いくらで働くのではない労働者、そういう働き方がどんどん増えてい る。この認識をどのように深めていただくかと、そこに尽きるのだと思うのです。今、 多くのホワイトカラーの労働者の人たちは、確かに、8時間をオーバーして働いている。 しかも、会社でやりきれない仕事を家に持って帰ってやる。あるいは、1日8時間とい いながらも、そのうちの4時間ぐらいは何をやっているかわからないホワイトカラーの 人だって実際はいるかもしれない。現場の方々はラインで動いていれば不可だけれども、 ホワイトカラーというのはその他大勢の方々がおられるわけですから、8時間という枠、 あるいはそれよりオーバータイムがあったとしても、その枠組みの中でどういう働きを しているかというのは個々に見ないとよくわからない。労働組合の方々も、賃金制度の 見方について、年功序列などではなくて成果評価をしてほしいとか、自分たちの貢献度 を評価してほしいとか、そういう賃金制度を是とする方々がどんどん増えています。あ れはなぜ増えていると思いますか。やはり、同じ職場に5人の方がいて、仮に同期入社 であったにしても3年、4年経つとアウトプットが違ってくる。仮に同じ時間をやって いてもですよ。それをどうやって賃金評価するのか。自ずから成果評価しているわけで す。同じ時間の中でも高い人と低い人がいる。それは、そっちのほうに目を向けていく と、時間に応じた処遇ではないのです。  そういう人がどんどん増えてきた場合に時間管理をどうしていくのか。時間管理と処 遇管理が別々であっていいわけはないのです。労働者というのは、1日24時間の枠の中 でその会社に拘束されるわけです。それは絶対的な事実ですよね。それに対してどうい う評価をしてほしいのか、そういう人たちは増えてきている。そうすると、そこでは既 に時間に応じた管理ではないのです。結局、それが進むと、裁量労働制でなぜいけない かと言っているけれども、裁量労働制というのは今の時間比例の賃金の中にあるわけ。 それを超えないと、次の発想が出てこない。  要するに、あなたはこれだけの労働時間の中でどういう成果をあげたか成果次第で評 価しますよ、というふうになると、8時間働こうが10時間働こうが4時間働こうが、極 端に言うとそんなことはどうでもよくなる。実際はそんな極端なことはないかもしれま せんが、そちらのほうに少しずつ移っていって、そういう働き方の比重が我が社におい て多いなというのであれば、そういう制度が欲しいねと。これはそういう選択肢を増や そうとしているだけの話なのです。すべての人たちが対象になり得るというのは誰も思 っていませんし、裁量労働でいいというところはそれをやればいい。それでは不十分だ からといって、もう一歩超えて自律的に時間管理ができるというのは非常に難しいので す。  今の管理監督職がなぜ適用除外になっているかというと、時間管理が自律的にできる。 本当は仕事も自律的に管理できるというのが前提ですよね。今の管理監督職にもその意 識が不十分だから、ユウデン資本だなんて言うと余計に訳がわからないというのが実態 だと思うのです。でも、管理監督職も、これから新しく創設されるような所の人たちも、 実は、自律的な働き方をするというのは非常に難しくて、何回も申し上げますが、大げ さに言うと、これから挑戦するものだと思うのです。それが家庭の事情とか、あるいは 自分のライフワークと合うような働き方ができるという、まさに、先ほど言われたワー ク・ライフ・バランスをここで実現できるかどうかです。そういうものをやってみたい なという人たちが会社の中に多くいて、そういう条件が整えばやっていいのではないで すか。ただそれだけの話ですよ。  長時間労働云々というのは、これはまた別の次元だけれども、全然別だとは言いませ んが、働き方の見直し、仕事のやり方の見直しが問われてくるわけですので、それと処 遇管理がきちんといかないと、成果評価がきちんといかないと、こういうものはうまく 回っていかないと思います。さらに、健康管理などもきちんとチェックしていくとか、 いくつかの条件が整わないと、エグゼンプションというのは1回導入しても長持ちでき ないものになってしまうかもしれない。だから、そういう要件をいくつか整えた上で選 択肢を1つ拡大するというのが私どもの考え方です。しかも、そういうことを潜在的に 望んでいる人は結構いるだろう。しかも、そういう働き方をしないと日本は大変な競争 をしていく状況がますます激しくなるし、ホワイトカラーのアウトプットの質いかんで 決まってくるわけです。言葉は悪いけれども、インド人に負けないようなアウトプット を出さないと競争に負けてしまうわけですから、その場合にどういう働き方をするかと いうのは非常に大事です。  それから、長時間労働とか、生産現場だけというわけではありませんが、どちらかと いうとそちらのほうに引っ張られて、片方の違う現実を見落としているのではないかと いう感じがしておりまして、私どもも、長時間労働云々とか不払いというのは全然認識 しなくていいとは言っていませんので、代わりにこういう働き方でそういう部分が結果 的に直っていくということもあり得ますし、導入するのであればそれも視野に入れてや ってみましょうという、そういう話も出るかもしれない。この新しく作ろうとする制度 はそういうものではないかと思うのです。だから、そこのところは入口のところで非常 に誤解があるので、時間にかかわりない働き方というのはいかに広がっていきつつある のか、そこのところはきちんと見ておくべきではないかと思うのです。  極端に言うと、一般職ですら、年収で賃金を決めるというのがあるでしょう。そうい う所は、8時間でいくらではないわけですよね。短いとか長いとか、そんなことはどう でもいいよ、やってくれたら年収いくらだよと。そういうことが現にありますし、ある 程度の会社ではそれも増えてくる。そういうことになると、じゃあ賃金と時間はどうな のだと。そこですでに乖離が起きているということはきちんとご認識いただきたいし、 そういう場合にどういう管理をしていったらいいのだということはすでに我々に突き付 けられている問題だなと思っております。 ○新田委員 もっと具体的に例示してもらいたいのですね。いま長いお話を聞きました けれども、長谷川委員が言ったように、なぜこのエグゼンプションが必要なのかわから ないのです。紀陸委員はいろいろおっしゃったけれども、例えばどんな仕事があるので すか、やっている人がいるのですか。それは、いまある裁量労働制でできないのですか。 あるいは、おっしゃるように、これは処遇とものすごく連動していますよね。任せます、 やってくれたらこれだけのものを渡します、ということがなければ全然意味がないです よね。例えば、どんな仕事をしている人をイメージされていますか。それを言ってくだ さい。 ○奥谷委員 コンサルティングですとか企画ですとか、そういったものです。ですから、 良い企画を出さないとコンペで勝たないとか、良い企画を出せばコンペで勝ち取れるわ けですよね。そうすると、成果報酬になるわけです。ですから、こちらのお話を聞いて いると、いつも時間単価という、時間単価で働く工場労働型の発想というのか、そこが ずっと尾を引いてしまって、なぜエグゼンプションが必要なのかというのは、まさに、 時間ではない質の部分が問われている、知的創造が問われている企画労働といいますか、 企画を出してそのアウトプットでお金が入る。コンサルティングをして、そのコンサル ティングの質の高さで評価されてお金が入る。そういう仕事が今はたくさん出てきてい るわけです。 ○新田委員 コンサルティングとかは企画型や専門型裁量労働をやっておられないので すか。もっと言えば、私は時間給ということだけで全部決めているわけではないですよ。 人事処遇制度というのは、積み上げてきた能力を評価もするし、提案したものの成果に ついてどうだったかということについてはそれも評価するし、そのことによって昇進も するし、昇進することによって待遇も変わりますね。何も、時間だけで決めていくらだ という、逆に言えば、今はそんな会社はないのではないですか。そうすると、我々は裁 量労働も何もかも全部なくしてしまえと言っていないのです。この中でできるではない ですかということを言っているのです。  もう1つ言えば、いちばん最初に田島委員と紀陸委員と議論があったけれども、それ こそ、世界中の企業と戦わなければいけないという意味合いで、コストの問題も含めて、 もっとしっかり力を出してくれということで、働きやすいという意味合いで規制緩和を されてきた。だけど、奥谷委員も紀陸委員もそうですが、わかっている人たちだけが経 営者であれば何の心配もしないのですが、いま現実に起こっていることがどういうこと なのだということもしっかりとらえて、その上でどうかということをやらないと、私た ちはこんな危ない制度はないと思っているのです。要するに、信用できないということ なのです。そういうことにどう答えてくれるかということなのです。人事処遇制度は能 力なり成果なりについてきちんと応えてやっていますよということも含めて、その上で おっしゃる具体的なところを聞かせてもらいたいのです。 ○奥谷委員 だから、いまの裁量労働云々の部分に企画などが入っているとおっしゃる けれども、ホワイトカラーの仕事、例えば人事や総務であっても企画的なものが入って くるのです。新しい人事制度を作っていくとか、新しい総務のあり方を作っていくとか、 すべてがソフトの切り替えの時期になってきているわけです。そうすると、今までどお りの時間でする仕事ではなくて、新しいものを生み出さないと企業は競争に勝っていけ ないわけです。管理部門しかり営業部門しかり、すべてそうなのです。そこにソフトの 部分がかなり高まってくると、結局、ホワイトカラー全部にそういうものを入れ込まな いと成り立たなくなってきているという現状があるわけです。  だから、裁量労働云々という今の決められた形よりも、もっと幅が広がってきている。 そういうところに是非このホワイトカラー・エグゼンプションを入れてもらって、時間 でどうのこうのというものではなくて、自律した仕事の働き方。先ほどおっしゃった年 俸制ということも含めて、そういう方向にどんどん変わりつつあるわけですから、時間 単価いくらというような、その50%を割り増ししようというような話自体がもう時代で はないということです。先を見た法律を作るわけですから、先を見た形での法律の作り 方をやってほしいということなのです。  いま長谷川委員がいろいろな悲惨な部分をおっしゃったけれども、そういう部分も確 かにあるかもしれないけれども、これから21世紀ということをおっしゃった部分で、21 世紀の働き方に合わせた、労働者がいろいろな意味の選択肢がある幅のある、そういう 契約法制、時間の部分もそうですが、経営者側からするとそういうものを作ってほしい ということなのです。 ○紀陸委員 要するに、極端に言うと、裁量労働というのは4時間働こうが10時間働こ うが我が社で8時間働くとみなすということですよね。基本は1日いくらの時間の枠の 中でその応用動作をしていくという制度ですよね。みなしで何時間働きますということ を決めて、その枠の中にデコボコがあって、そこに収めようという話でしょう。これは 制度運用の擬制ですよね。そうではなくて、私どもが言っているのはそういう擬制では なくて、今日は4時間だろうが8時間だろうが10時間だろうが、もう少しわかりやすく 言うと、単純に管理監督者とその想定している人たちと実態は同じです。  いまの管理監督者の人たちは自律的な労働になっているのかというのは、本当を言う と皆がそうかというとそうではないかもしれない。でも、少なくとも、時間制約を考え て仕事をしているよりも、自分のレベルをどうやって上げていくかという自由度といい ますか、管理監督職は物の選択や決定、仕事の運び方は自律的にできますよね。そうい う働き方をしようというのが狙いで、そこには今のみなしみたいな規制があってはいけ ないだろう。それでもいいと言うならばいいですよ、決して否定するわけではありませ ん。でも、そういう仕事が増えつつあるという実態があるとすれば、そういう選択をや りましょうという話ですよ。あくまで、みなしの8時間なら8時間の中で動いている仕 事ではなくて、それを超えて、自分の仕事のやり方も自分の時間の管理の仕方も、個別 の事情においてその人に任せていいという、そういうことを労使で会社できちんと決め ていただく。 ○新田委員 みなしも裁量も、決めるときは話をして、盛り込むのはこうだと言ってい るではないですか。8時間と決めてないですよ。 ○紀陸委員 それは10時間でもいいですよ。オーバータイムを2時間見る。 ○新田委員 話をして、この制度で動くあなたはこうだと決めているではないですか。 ○紀陸委員 でも、何時間と決めれば、それはみなしなのです。基本的にはみなしの時 間は働かなければいけないわけでしょう。 ○小山委員 紀陸委員が言われることに反論する前に、一致点を大事にしなければいけ ないと思いますので、先ほどの使用者側の皆さんのお話の中ですごく一致したと思うの は、「来年の通常国会ありきで、そのスケジュールで進めるのは反対だ」というところ です。私もそう思いますし、そこは一致できたなと思います。  その上で、紀陸委員のおっしゃることは、少し嫌な言い方をすると、それは詭弁とい うふうに言わざるを得ない。なぜかというと、現実、現場はそんなに長く働いていませ ん、そんなに働けない。ホワイトカラー層が長い時間働いているのです。それで、いま の管理監督者が本当に自分が仕事の量をコントロールしてゆとりを持って働いていると いう実態は、少なくとも私どもが組織をしている労働組合のある企業ではどこにもあり ません。むしろ、一般の従業員以上に長時間働いているというのが多くの現実です。そ の結果が、この場で提出していただいた労働災害、特に過労死、過労自殺等の労働災害 の実態の中でも管理監督者の被災者が多いということ。あるいは、一般労働者であって も、労働時間管理が日常しにくい方が非常に多いという実態が明らかにされているわけ です。ですから、そういう現実はなくて、本当に自由に労働時間にとらわれずに働ける という現実があるのだったらば、紀陸委員の話と「じゃあ、どうしましょうか」と入っ ていけるのですが、現実がそうではないじゃないですか。 ○紀陸委員 いや、私は決してそんなことを言ってない。 ○小山委員 管理監督者は、さっき正直に紀陸委員が言われたのは、そんな自由にやっ ていない現実があるとおっしゃったではないですか。 ○紀陸委員 それは認識の問題ですよ。だって、オーバータイムをやって60時間超の人 が4人に1人で、これが多すぎると言っているわけでしょう。4人に3人の人はそうで はない労働時間が実態ですよね。そういうことなのですよね。だから、それを4人に1 人ではなくて、もっとこういうことをやったらば減るかもしれないというような見方で 言っているわけです。全部ひどいとか、そういうことではないでしょう。いろいろな職 場があるわけでしょう。 ○小山委員 いや、全部ひどかったら、日本中の人は皆自殺しなければならなくなって しまいますよ。 ○紀陸委員 そうでしょう。だから、やれるところはやってみたらいいではないですか という選択肢の数で言っているわけです。 ○小山委員 やれる所がやれるという制度ではないのです。労働基準法で物を定めると いうのは、日本の働き方の最低基準を決めるわけですから、やれる所がやるのではなく て、入れようと思ったら入れられるわけですよ。そこで問題なのは、最初に労使自治と おっしゃったけれども、本当に労使自治が機能するのは労使が対等である場合なのです。 その対等性を担保するために労働組合法があって、そこに労働三権を与えられているわ けではないですか。その対等性のないところで、いくらきれい事で労使自治と言ってみ ても、多くの場合は使用者側の言いなりにならざるを得ないという労働者が圧倒的に多 いわけです。  だから、我々が労働組合を作ろうとすると、組合なんか絶対に認めない、という使用 者もこれまた本当に多いのです。多いですよ。特に、中小企業の立場から委員の皆さん がおっしゃるのは、我々の労働組合も中小企業を多く組織していますからその苦しみは よくわかりますし、企業の大変さもよくわかります。だからこそ、きちっとしたルール は明確にしておかないと、中小企業は苦しいから中小企業だけ何か特別扱いしてくださ い、ということをしていたら中小企業は強くなれないわけだし、我々の雇用も守れなく なるわけです。そうではなくて、まさに、これも使用者側と一致するのは、別に、中小、 大企業に関係なく法律は日本中の労働者に適用されるわけですから、あまり中小がどう というようなご発想はされないほうがいいのではないかと思います。  それで、問題は、先ほど言った労働時間の在り方は現実どういう実態にあって、一旦、 適用除外にすると、労働時間の管理もしないわけですからどれだけ働いたかもわからな くなってしまう。そんなことをするとどうなるかというと、我々の心配するのは、16時 間働こうが20時間働こうが、納期に追われる。それは、奥谷委員がおっしゃるように、 企画の仕事とか、そういう人のほうが長い時間働いているのです。現場の人はそんなに 長く働いていません。朝まで仕事をして、またその日のうちから働きだすという労働が たくさんあるわけです。それが、かなり若い人たち、20歳代や30歳代の若い人たちま でもそういう働き方が非常に広がっていることが心配されているわけです。  だから、今、我々がこのホワイトカラー・エグゼンプション問題を職場に行って説明 すると、皆すごい関心を持っています。いちばん関心を持っているのは、実は、我々の 世代です。なぜかというと、自分の子どもたちが就職して働き始めているわけです。皆、 その働き方に唖然としているわけです。終電車で帰ってきて、朝一番でまた出て行く。 それは奥谷委員がおっしゃるようなホワイトカラーの仕事の人たちですよ。そういう人 が本当に多いという現実の中でこんな制度を入れたらどうなるのかということを我々は 懸念しているわけです。だったら、もっと裁量労働制の中でやれることをきちっとやっ たらいいではないですか。  むしろ、今の職場の実態で言うと、その裁量労働制すら、職場の規律が保てなくなる という話もよく聞くわけです。朝、打ち合わせをしようと思ったらいない、人が集まら ないのは困る。お客さんから電話がかかってきたときにいないのは困る。そういうこと で、裁量労働とかフレックスタイム制はやめたという企業が結構生まれてきていますよ ね。そういう現実の中で、このホワイトカラー・エグゼンプションという制度は、紀陸 委員のおっしゃるとおりに理想的な働き方がある社会の中でその議論をするのだったら 同じところで議論できると思うのですが、現実のこんな実態の中でこんな議論にはとて も入れないというのがこのホワイトカラー・エグゼンプションの問題、労働時間の問題 だと思います。 ○平山委員 長谷川委員が先ほどおっしゃった、ホワイトカラー・エグゼンプションの 話をしたら、割賃を払わない働き方ということなのかという反応が返ってきたというの は、たぶん、こんな議論のまま世の中に出ていくのはいけないのでしょうね。なぜこう いう議論をするのか、なぜ必要なのかと。これはいまここで全部決着をつけるわけでは なくて、きちんと議論をするということであれば、使用者側の意味合い、なぜ必要なの かというのはきちんと意見を言っていくということになるでしょうし、厚生労働省当局 としても、このように基本的に考えるという考え方が示されるのだと思います。これは きちんと議論していかないといけないことだと思います。  ただ、1つだけ、小山委員もいまおっしゃられたのですが、ホワイトカラー・エグゼ ンプションのような働き方をどう考えますかという議論と長時間労働対策をどうとりま すかという議論は、具体的な手の打ち方の議論です。本来は違う性格の話です。ただし、 この議論があってから皆さんがおっしゃられているのは、こっちのボタンを押したらこ っちが必ず悪くなりますと、この議論が9割、10割なのです。だけど、本来は性格が違 う話なのです。こういう認識を共有しておかないとこの議論は進まないと思っています。 あるいは、長時間労働につながるような働き方をどう解決していきましょう、年次有給 休暇がなかなか取れていませんね、どうやって取っていきましょう、これは皆さん方も ご存じかもしれないけれども、いろいろな組合も努力しているかもしれませんし、今の 経営サイドはかなり努力をしているなと私は思っています。もちろん、足りないところ はあるかもしれないけれども、漫然としているということではないと思っています。  長時間労働対策をどうとりますかという課題は組合として提起されるのはすごく大事 なことだと思いますが、ホワイトカラー・エグゼンプションは0対100で、ホワイトカ ラー・エグゼンプションをやったら100%長時間労働に何とかだ、というように二律背 反的なステージだけで考えないでいただきたい。これは働き方というものが、将来にわ たって、どんな働き方が意味があるのだろう、ということを冷静に議論し合うのはすご く大事だと思うのです。決して、割増を払わなくていいからコスト的に助かるという、 そんな単純なことでこんな大事な議論をするはずもありません。これは経営側としても これから議論になって、使用者側も必要性はきちんと考えを述べていくということだろ うと思います。議論は是非していきたいという、こういうテーマではないかと思います。 ○八野委員 今までずっとお話を聞いていまして、今回のペーパーの中で使用者側から 出ている中で、先ほど小山委員からもありましたように、労使自治を基本としてという 指摘の部分であったり、人事制度や処遇を行うのは経営の自由であるという文章がこち らに出ております。そういうものが根底としてあるのであれば、これは、いま話のあっ た労働時間のところでも人事処遇制度と労働時間を無理やりリンクさせていくようなお 話とか、そういうものがどうしても出てくるのではないかと思います。1つは、先ほど あったように、労使自治ということだけを挙げるのは問題があり、そこには今までずっ と労使関係をやってきた対等の原則というものがあって、それでさまざまな交渉をやっ てきた。これは、企業の中では、そこに単組がある所では、労使自治という言葉が通用 するかもしれませんが、労使自治と対等というものを持っていかなければなかなか話が 進まないであろう。労働組合も反省しなければいけませんが、組織率の低下という問題 があり、そこのところまでなかなか踏み込めないという現状もある。そういうものも置 きながら見ているということが1点です。  それと、雇用形態に対していかなる人事制度や処遇を行うのかは経営の自由という言 葉が出ておりますが、本来、人事制度や処遇は労使で話合いを行って作り上げていく。 いま問題になっているのは、作り上げた人事制度が実際に運用されていないというとこ ろに問題があるのではないか。そこに労働時間を本当にからめていいのか。きちんとし た目標が提示されていない、そういう評価がきちんとされていないという問題点を成果 主義を取り入れた企業の中で多く聞く。実は、そういうところに成果が出てきていない という問題も出てくるのではないか。  それと、自律的労働時間にふさわしい制度の所に出てきている労働者の公平性、労働 の意欲の創出、生産性の向上、企業競争力、国際競争力の確保というもの、これは自律 型労働にふさわしい制度を作ったから克服できるという問題ではなくて、企業の経営の 方針がどうであるか、それを持っていく人材がどうであるか、その人材の力をどのよう に引き出していく力が必要なのかという、経営側のリーダーシップにかなりかかわる問 題であって、これでこのような効果が現れると思ったらそれは大間違いではないか。そ の辺のところは考えていくべきなのではないか。  それと、先ほどからも出ているように、これにふさわしい仕事の人たちはいま出てい た企画であるとか、そういうものしか出てこない。では、これが本当に労基法の中に載 せる法律の文章になるのか。その辺を真剣に考えていくべきなのではないか。労働時間 というのは、労働者にとって賃金、労働時間、労働協約と合わせて公正労働基準等を置 いている産別もあり、非常に重要な問題だと。先ほど平山委員が言われたような長時間 労働のことは全部リンクして考える必要があるだろう。やはり、ホワイトカラーの人た ちがかなり長時間になっているという業種もあれば、サービス業などではホワイトカラ ー以外の方たちでも労働時間がかなり長くなってきている方たちもいらっしゃる。  ホワイトカラーという言葉が使える所はまだいいですが、そういうホワイトとブルー と分かれないような業種の所もある。管理職だけを指すのであればそれでいいですが、 そういうように前提の所に記載されている人事処遇制度の考え方の問題とか、労使自治 の問題とかというものの根底にそういうものが流れているのであれば、この問題はなか なか解決しないのではないか。 ○山下委員 議論は尽くされたと思うのですが、最後にもう1つだけ、労使自治という 考え方以外に、多様な働き方が非常に増えていてそれを今後どのように支援していくか、 どうやってそのような働き方を加速させていくか、という視点も忘れてはならないと思 います。特に、例えばワーキングマザーとか、今の少子化等の問題もありますが、子ど もがいても働きたい女性もたくさん増えています。そういう人は、それこそ、8時間労 働というような時間にとらわれることなく、どうやったら企業はそういう人たちの雇用 が促進でき、また、そういう労働を求めている人たちにそういう場所を与えていくかと いう意味でも大切だと思います。ワーキングマザーは1つの例ではありますが、多様性 というところが視点から外れてはいけないのではないかと思います。 ○西村分科会長 たぶん、こういう議論を続けていきますと尽きないだろうと思うので すが、今回の分科会の非常に重要な課題といいますか、議題の1つは今後のこの分科会 の検討の進め方でありまして、その点につきまして労使とも項目を絞って重点的に議論 をしていくということでご意見をいただいております。その進め方についてはそれでよ ろしいでしょうか。その点についてご意見をお伺いしたいと思います。 ○長谷川委員 労使のこれまでの意見の主張が整理されたものが出されてきました。今 日改めて労側と使側から意見が出されたわけですので、これを踏まえてどのような内容 について議論していくかということについて、これまでの案にこだわることなく検討の 項目について整理することが必要ではないかと思います。その際ですが、使側からは労 働時間を先にと言いましたけれども、私は交互に契約法と労働時間という議論の仕方が いいのではないかと。あと、先ほど小山委員も言いましたが、何が何でもという事務局 の意図はよくわかるわけですが、十分にきっちり議論することが重要だと思いますので、 その点は考慮していただいて、議論の進め方についても労側、使側と意見調整をしなが ら進めていただきたいと思います。私は、是非、こういう状況でありますので労働時間 の、あるべき労働時間と労働契約法についての議論をきっちりと進めていただきたいと 思います。 ○西村分科会長 使用者側はいかがでしょうか。 ○紀陸委員 私どもは、先ほど根本さんがお話をしていただいたように、時間の問題は 前の基準法改正のときの仕掛かり品なのですよね。論議が解決できなくてエグゼンプシ ョンの問題が今日まで残っているという理解ですから、時間外割増賃金の引上げという 話も途中から飛び出てきまして、私はここのところの論議にはあまり関心がないのです が、いずれにせよ、エグゼンプションの論議から行くのが、3年前になりますか、基準 法の改正のときのつながりからいくと自然の流れだと思っておりまして、エグゼンプシ ョンからというのが従来から申し上げている主張であります。 ○西村分科会長 ただいまのご意見を踏まえまして、今後さらに検討を深めていくとい う観点から、事務局におきまして重要事項に項目を絞って労使の調整をした上で次回の 分科会にその新しい資料を用意してもらいたいと思います。また、これまでは、労働契 約法制、労働時間法制の順番にご議論いただいてきましたが、次回からは主な論点のま とまりごとに、ブロックごとに、労働契約と労働時間を交互にご議論いただきたいと思 いますが、いかがでしょうか。 ○小山委員 1つお願いですが、どの程度の回数をやるのかという問題があると思うの です。我々皆それぞれ仕事を持って、この時間帯をあけてきているわけでありまして、 月に何回もということは是非おやめいただきたい。少なくとも、夏前の段階では月2回 というのも大変きつかったわけですが、何とかやってきたところですので、本当は月1 回ぐらいだったらばいちばんいいなと思っているのです。先ほどの労使が一致したスケ ジュールにこだわらずというところを踏まえて、ゆとりある日程で設定していただくこ とをお願いしたいと思います。 ○西村分科会長 日程調整は各委員と後で事務局を通してやっていただきますので、そ れにお任せいたします。どこまで考慮できるのか約束の限りではありませんが、よろし くお願いいたします。それでは、次回の日程につきまして事務局から説明をお願いいた します。 ○監督課長 次回の労働条件分科会は9月11日月曜日17時から19時でございまして、 場所は現在調整中でございますので追ってご連絡させていただきたいと思います。 ○西村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了したいと思います。本日の議事 録の署名は新田委員と山下委員にお願いします。本日はお忙しい中をありがとうござい ました。                  (照会先)                     労働基準局監督課企画係(内線5423)