06/08/30 第1回男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会議事録 第1回 男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会 日時 平成18年8月30日(水) 9:00〜 場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○職業家庭両立課長 ただいまから、第1回「男性が育児参加できるワーク・ライフ・ バランス推進協議会」を開催いたします。本日は、お忙しい中をお集まりいただきまし て誠にありがとうございます。第1回会合ですので、座長選出までの間は事務局で司会 をさせていただきます。私は、雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長の麻田です。ど うぞよろしくお願いいたします。開催に当たり、川崎厚生労働大臣からご挨拶を申し上 げます。 ○厚生労働大臣 皆さん、おはようございます。日ごろは、厚生労働行政を進めていく 中におきまして、さまざまな形でアドバイスをいただいたり、お力添えをいただいてき ております。本日は「男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会」と いうことで、お忙しい中を曲げてお集まりいただきました。このネーミングがいいかど うかということについてもいろいろあろうかと思いますけれども、皆さん方からさまざ まなご提言を賜りたいと思っております。  昨年の12月22日に、厚生労働省として人口減社会に入りましたと発表させていただ きました。通常ですと、元旦にやった作業を1週間ほど早めて、国民全体に少子化問題 を考えてもらわなければならないということで打ち出させていただきました。  一方で、いま作業として進めておりますのは、人口統計の推計です。これから、さま ざまな議論が出てくると思いますけれども、1.25という出生率のトレンドで、そこまで 下がってきたトレンドで、これからの20年後、30年後の我が国の社会を考えますと、 たぶん想像を絶する厳しいものが待ち受けているのだろうと思います。  少子高齢化社会というと、年金問題だけが常にテーマになりますけれども、そうでは なく社会全体がひょっとしたら崩れることになるかもしれない。当然、教育をする人材 を育てるためには投資が必要です。しかし、その投資をするお金すら、経済が疲弊して きたら出てこないという社会に、1.25という社会は入っていくかもしれないと私自身は 思っております。必ずしも厚生労働省だけではなくて、政府全体として、もしこのトレ ンドが続けばどういうことになるのか、ということを認識した上で、次の作業に入らな ければならない段階を迎えているのだろうと思います。  そういう意味では、昨年の人口減社会というものを現実のものとして捉えながら、家 庭で人口統計がこういう方向で進む。それではそれをどう変えなければならないのか、 ということをみんなで話し合っていかなければならないのだろうと私自身思っておりま す。  私は、昭和22年生まれですので団塊の世代の者です。私が会社へ入りまして2、3 年目でしたでしょうか、電気業界等がトップランナーになりながら、週休2日制に入っ たのをいまでも思い出します。そして、官公庁に導入されたのがつい最近ということで かなりの道のりはありましたけれども、週休2日というものが世の中に定着してきまし た。そういう意味では、我々が働き出したころから比べると、随分休みが多い社会に変 わったと思います。現実に厚生労働省の職員の話を聞きましても、土日まで出て、朝か ら晩まで仕事をしている人はいない社会に変わってきました。ただし、月曜から金曜ま ではかなりハードな仕事をしているというのは現実であろうと思っております。  一方、産婦人科の問題がいろいろ議論を呼んでおりますけれども、お産に立ち会う男 性は半分以上、ある意味で我々の社会とは違ってきました。子育てという前に、まさに 分娩室に夫婦2人で入って子どもの誕生を待つという時代になってきて、随分変わった ということを私どもの年から言うと思いますけれども、次の世代、まさに団塊のジュニ アの世代の意見を聞きますと、ワーク・ライフ・バランスというのでしょうか、子育て がいまの社会の成り立ちの中で、男女共にという社会になっているのだろうかというこ とになると、これはまだまだ難しいということです。  そういう意味では、週休2日制というものに、我々の時代にカーブを切りながらやっ てきたけれども、もう一歩、もう二歩入ってこなければならない時代に入ってきている のではないか。少子化という問題と併せながら、社会全体を変えていく中に、ワーク・ ライフ・バランスというのは大きな意味をなしているものだろうと思っております。そ んな中で、皆さんにはそれぞれの立場でいままでご議論をいただいてまいりましたし、 また会社の若い世代にも意見を聞きながら今日までやってまいりましたけれども、いろ いろな意味で意見の集約をしていって、世の中に発信をしなければならないところに来 ているのかと思うのです。議論はいろいろあってもいいのですけれども、最後はどこか でまとめて発信をしていかなければならないと思っておりますので、本日お集まりいた だきました皆さん方のご意見をいただきながら、厚生労働省としても世の中に明確に発 信をしていかなければならない時期に来ています。そういう意味でお集まりいただいた と思っております。  特に、今年は男女雇用均等法も、男女の性差別の禁止という形で踏み込ませていただ いた年ですので、なお一層皆さん方から前向きなご意見をいただいて、取りまとめをし て発信をしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げまして挨拶とさせてい ただきます。ありがとうございました。 ○職業家庭両立課長 大臣は、所用により途中で退席させていただきます。続きまして、 本協議会にご参集いただきました皆様方を、資料No.2の順にご紹介させていただきます。 NECラーニング株式会社代表取締役執行役員社長の内海房子様です。株式会社資生堂 執行役員企業文化部長の大矢和子様です。株式会社東芝取締役会長の岡村正様です。日 産自動車株式会社常務執行役員の川口均様です。日本アイ・ビー・エム株式会社代表取 締役会長の北城恪太郎様です。株式会社損害保険ジャパン取締役常務執行役員の中野久 様です。株式会社セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員の水越さくえ様です。 東京電力株式会社常務取締役の山崎雅男様です。社団法人日本経済団体連合会専務理事 の紀陸孝様です。全国中小企業団体中央会常務理事の山崎克也様です。東京大学社会科 学研究所教授の佐藤博樹様です。  行政側として、雇用均等・児童家庭局長の北井です。本日は、この名簿にはあるので すが、藤重様、茂木様、阿部様が欠席です。  続きまして、本協議会の開催要綱についてご説明いたします。資料No.1が本推進協議 会の開催要綱です。開催に至りました趣旨は、大臣のご挨拶にもありましたように、男 女共に仕事と家庭の両立ということが非常に大事な課題になっております。特に子育て 世代は、少し上の世代と違い、男性も仕事と生活のバランスの取れたライフスタイルを 重視する方が増えてきております。  しかしながら、個人としてそういうことを希望しても、職場の環境により、それがな かなか難しいということがあります。女性の側から見ますと、女性の両立は一生懸命進 んでいるのですが、男性が育児をするというのはなかなか当たり前には見てもらえない という環境もまだまだあります。  特に、男性子育て世代の方というのは、企業の中で非常に中核的な仕事をしておられ ますので、長期の休暇を取るのはなかなかハードルの高いことです。育児というのは1 歳までで終わるわけではありません。長期の休暇でなくても、日常的な育児参加も非常 に重要ですので、そのようなことができるような柔軟な働き方や、短くて効率的な働き 方によるワーク・ライフ・バランスの実現が必要とされているところです。  こういうことは、従来から行政側から申し上げてきたところですが、それが経済界に 対して説得力を持つかというとなかなか難しい問題で、単に行政側から呼びかけるとい うことでなく、この度は行政と経営者団体が連携し、企業経営者、経営者団体、有識者、 行政との連携により、企業経営の視点から、男性が育児参加できるようなワーク・ライ フ・バランスの取れた働き方がなぜ必要なのか、そのメリットは何なのか、そのような 働き方を可能とする取組はどういうものなのか、ということについて検討・提言をし、 経済界に対して呼びかけをし、男性が育児参加できるようなワーク・ライフ・バランス の普及を図っていきたい、というのが推進協議会の設置の趣旨です。  検討・提言をお願いする内容は2点あります。いま申し上げましたように、男性が育 児参加できるような働き方について、企業経営上の必要性とメリット、そもそも論につ いてご議論いただきます。2点目は、そのような働き方を可能とするにはどのような取 組があるかということについてご議論いただきます。簡単ですが、以上が要綱です。  続きまして、この要綱に即し今後の会議を進めさせていただきます。開催要綱に基づ き、座長の選出をお願いいたします。事務局からのご提案ですけれども、日本アイ・ビ ー・エム株式会社の北城会長にお願いしたいと存じますがいかがでしょうか。 (異議なし) ○職業家庭両立課長 ありがとうございました。それでは北城委員に座長をお願いいた しますので、座長席にお移りください。 ○北城座長 ただいま座長に選任いただきました北城です。先ほど、川崎厚生労働大臣 から、男性が育児に参加できるようなワーク・ライフ・バランスの重要性についてお話 がありました。特に少子化の問題についてお話があったわけですけれども、確かに急激 な少子化というのは日本の将来にとっても非常に大きな問題だと思います。しかし、少 子化に限らず女性が活躍できるというのも日本にとって非常に重要な課題ではないか。 育児をすべて女性に委ねるということでは、優秀な女性が社会の中で活躍することは非 常に難しいということだと思います。  欧米諸国では、女性が活躍している例はたくさんあるわけです。私もアジアで仕事を してきましたが、アジアの国々でもほとんどの国は女性が活躍できる社会であります。 日本と韓国だけが例外のような感じがしています。そういう意味で、活力のある社会を つくるためにも、女性が活躍できる社会は重要だと思います。  それだけではなくてワーク・ライフ・バランスも重要です。仕事だけでは優れた仕事 はできない。特に、これからの社会では、イノベーションや創造性が必要とされ、新た な発想ができるようにするためにも、仕事だけではなくて、自分の時間を持てる、自分 でいろいろな発想をする機会があるということも非常に重要だと思います。また、若い 人たちもそういうことを求めているのではないかと思います。  日本における就業者数は現在6,400万人ほどだと思いますが、そのうちの5,000万人 ぐらいは企業で働いています。そういう意味では、こういう価値観を変える上で企業、 特に企業経営者の果たす役割は非常に大きいと思いますので、是非皆様方といかに企業 経営者にワーク・ライフ・バランスの必要性を理解していただくか。企業にとっても社 会にとっても好ましいことであることを理解していただくような活動を皆様のご協力を 得てできればと思っております。皆様の積極的なご参加をお願いいたします。 ○職業家庭両立課長 以後の進行は北城座長にお願いいたします。 ○北城座長 早速議事に入りたいと思いますが、その前に座長代理として、東芝の岡村 会長にお願いしたいと思いますがよろしいでしょうか。 (異議なし) ○北城座長 それでは、岡村さんよろしくお願いいたします。次に、事務局からこの協 議会の開催に当たって、特に協議の内容の公開の取扱いについて説明をお願いいたしま す。 ○職業家庭両立課長 資料No.3です。事務局としては、本会議についての会議、議事録 及び資料を公開とするということでご提案させていただきます。しかしながら特段の事 情、例えば個人情報にかかわることとか、下に(1)(2)(3)(4)と並んでおりますが、このよう な事情がある場合には、協議会の決定をもって会議を非公開とすることができることに させていただければと思います。なお、このような会議では、こういう扱いをすること が最近の通例となっております。 ○北城座長 いまの事務局からの説明について、このような形で進めてよろしいでしょ うか。 (異議なし) ○北城座長 異議がないようですので、基本的には事務局から説明があったように公開 ということで進めていきます。議事に入ります。本日の議題は「男性が育児に参加でき るワーク・ライフ・バランスの推進について」ということで、事務局から資料の説明を お願いいたします。 ○職業家庭両立課長 資料No.4−1と資料No.4−2は、先ほど趣旨の説明にありました ように、この推進協議会では本日の8月と9月にもう一度会合を開き、そこで経済界に 対する、男性が育児参加できるようなワーク・ライフ・バランスの重要性についての提 言、呼びかけを取りまとめていただきたいと考えております。資料No.4−1が、提言の たたき台です。資料No.4−2はそのダイジェスト版です。  たたき台について、作成の経緯を申し上げます。この協議会が本日立ち上がるに先立 ち、男性の育児について比較的熱心に取り組んでいる企業の若手の人事マネージャーク ラスと、経営者団体、有識者の間で検討会を作り、このテーマについての勉強を、今年 1月から6月までしてまいりました。その検討の中身は、企業ヒアリングが中心で、子 育て中の男性労働者、例えば育児休業を取った方、短時間勤務をされている方、共働き で育児をしている男性労働者の声、その方の直属の上司の声、そういう会社の人事担当 者の声、こういう生の声を拾いまして、必要性、メリット、取組のポイントについて検 討してまいりました。その成果を整理したものがこのたたき台です。  なるべく現場から離れないということで、生の声を活かすことに留意して作成いたし ました。ただ、これは若手の実務家が作成したたたき台ですので、経営トップの視点は 入っていないわけです。事務局としては、本推進協議会の議論により、経営者の視点を 大いに加えていただき、また経済界に理解を得るために、こういう説得の仕方があるな ど追加したらいいこと、それから修正したらいいことについても忌憚のないご意見をい ただき、より良い提言にしたいということです。  資料No.4−1でたたき台のご説明をいたします。最初の頁にはエピソードということ で、この先を読んでみる気になってもらうための事例を載せております。いずれも、企 業ヒアリングをした際に実際にあったエピソードです。ノー残業デーに取り組んでいる ので、男性の育児参加が無理なくできるという会社の例。男性社員の意識が変わらない ので、女性の活躍が進まないという会社の例。  1枚めくりまして目次です。全体の構成としては3つに分かれています。最初に前書 きというか導入部分があります。2として、男性が育児参加できる働き方の必要性とメ リットをそれぞれ整理しております。3として、男性が育児参加できる働き方を可能と する取組について、取組のポイントになるような事項を整理しております。  以下、順次かい摘まんでご説明いたします。1頁が前書きに当たるものです。推進協 議会は10分前に立ち上がったばかりなのに、「提言を取りまとめました」と大変先走っ たたたき台になっていて恐縮ですけれども、ここについても忌憚のないご意見をいただ きたいと思っております。最初に、何がいちばん大事かということ、こういう問題を進 めるに当たっての必要な視点を挙げてみました。  この協議会が最も重要と考えているのは以下の3点です、ということで重要なポイン トを3つ挙げております。1点目は男性の声です。仕事も家庭も大切にしたい、という 男性の声に応えることが不可欠になってきたということです。  2点目は、子育て中の両立からみんなのワーク・ライフ・バランスという点を挙げて おります。育児中の人だけがいろいろな配慮を受けるということは、一見よろしいよう ですけれども、育児中の人だけ先に帰るというのはなかなか帰りづらいという生の声も あります。育児だけではなく、介護、健康面、勉強、地域活動など生活全般と両立でき るような働き方ができて、子育て層だけでなく、従業員全体がワーク・ライフ・バラン スを享受できることが、ひいては育児との両立もしやすい環境をつくるという点を挙げ ております。  3点目は、ワーク・ライフ・バランスは従業員と企業の双方にメリットをもたらすと いう点です。働く人にとって、このワーク・ライフ・バランスは好ましいものであると いうことはわりと見やすい話であるわけです。企業にとっても、働く人の生活が充実し、 優秀な人が確保できて、やりがいを持って働いてもらえるということが、企業にとって のメリットにつながるということ。多様な人材の能力の活用が可能になるということに 触れさせていただきました。  これがいちばん重要なところなのですが、次に☆を3つ付けて、提言に当たっての視 点ということで、断わり書きのようなことを3点挙げております。1点目は、労働者の ライフスタイル選択と企業の関わりということです。夫婦でどういうふうに育児や介護 を分担するかということは、基本的には労働者個人の選択で、企業が介入するようなこ とではないのですが、逆に一定のライフスタイルしか、実態上働き方の結果として取ら ざるを得ない。例えば、共働きが働き方の結果として非常に取りづらいライフスタイル になっていることがあるとすれば問題である、ということを述べております。  2点目は、職場間、企業間の育児支援のバランスです。男性が育児参加できなくて、 両立支援の利用者はほとんど女性という会社が多いわけです。そういう現状のままです と、女性の多い部署に休業者が集中する、女性の多い会社に育児支援が集中するという ことでアンバランスが起こります。そのこと自体をどうこうということではないのです が、男性が職場で育児参加できないことの結果として、こういう問題が起こっていると いうことには留意する必要があることを挙げさせていただきました。  3点目は、男性の育児参加の多様性です。男性の育児休業のことは、いま大変よく取 り上げていただいているわけですが、長期の休業はなかなかハードルの高い話です。男 性の育児参加の裾野をもう少し広く考えてみたらどうだろうかということです。共働き 家庭にも限られないし、休業にも限られないということで、風呂に入れる、子どもの病 気のときに休むとかいろいろなことがあると思います。  以上のことを少し断わり書きとした上で、それでは必要性とはどういうことであろう かを以下に整理いたしました。男性が育児参加できる働き方の必要性を3頁以下に4点 挙げています。1点目は「従業員のニーズへの対応」、2点目は「多様な人材の活用」、 3点目は「生活時間と仕事時間のバランスの実現」、4点目は「CSR(企業の社会的責 任)の遂行」です。  簡単にご紹介いたします。3頁の「従業員のニーズへの対応」ですが、下のグラフは 小学校に上がる前の子どものいる父親に対し、仕事と家庭とどちらを優先したいかを聞 いたものです。上段が希望、下段が現実です。上段は黄色い部分の「仕事も家庭も同等 に重視する」ことを希望する方が多数派です。現実のほうは、「仕事が何らかの形で優先」 という方が多数になっていて、ここのところにギャップが生じています。  4頁では、妻のほうの意識を見ています。これは、女性労働者で子どものある人に、 夫の働き方にどういうものを期待するかを聞いたものです。「仕事も子育ても両方とも重 点を置いてほしい」という希望が圧倒的多数です。  その下のライフスタイルですが、サラリーマンの世帯で、妻が働いているかどうかと いうことです。昭和55年は共働きはものすごく少なかったのですが、平成に入りまし てからは共働き世帯が多数派になっています。以上のようなことで、ライフスタイルや 意識の点で、子育て世代の男性というのは、上の世代とは相当変わってきているので、 そういう方々に働きがいを感じて働いてもらうためには、その変化に対応していく必要 があるというのが1点目です。  2点目は、「多様な人材の活用−特に女性の活躍に向けて」としております。これはダ イバーシティということで、最近大変重要視されているわけですが、性、年齢、価値観、 個性の異なるいろいろな従業員がいるということで、多様な能力が発揮されることが好 ましいわけです。特に日本の場合には男性、女性ということが多様な人材活用の課題に なっております。ここで、女性だけに育児が集中するような環境というのは、女性の能 力発揮の阻害要因の1つとなっておりますので、女性の活躍に取り組もうとすれば、や はり男性が育児参加できるということも進めていかなければいけないということをまと めております。  3点目は、「生活時間と仕事時間のバランスの実現」です。この点は、男性の育児とい うことに特化して物を述べているわけではないのですが、そもそも仕事と生活のアンバ ランスそのものに、企業経営上の弊害が大きいのではないかという問題意識で書いてお ります。働きすぎで疲れる、体を壊す、意欲が低下するということが、企業にとって損 失になる、あるいは妻が育児ノイローゼになるとか、家庭にいろいろトラブルが生じる ことが、仕事にマイナスになるということをまとめております。  4点目は、「CSRの遂行」という点です。ワーク・ライフ・バランスや女性の活用を CSRに位置づけて取り組む企業が増加しています。企業は、本来の企業活動だけでは なく、社会的公正や環境問題の取扱いなどの側面を含めて評価されるようになってきて いて、いろいろな利害関係者からの信頼を得るためにもこうした取組が必要ということ を述べております。  以上がワーク・ライフ・バランスに取り組む必要性ですが、次に、そういうことが企 業経営上どのようなメリットをもたらすかということを8頁以下に整理いたしました。 大きく分けて3点あります。  1点目は、「優秀な人材の確保・定着」です。賃金とかキャリアアップと並び、労働者 が希望するライフスタイルを実現できる環境というのが、優秀な人材を惹き付ける「報 酬」となっているということを述べております。  2点目は、「従業員の意欲の向上、生産性の向上」です。育児参加している男性にイン タビューいたしましたが、子育てにかかわれるということで、非常に満足感ややりがい をもって働いていることが窺えました。また、上司からは育児参加しながらも質の高い 仕事をしているという例が紹介されております。人事担当者からは、仕事から離れるこ とで発想が豊かになって、仕事に役立つということの指摘がありました。  3点目は、「仕事の内容や進め方の見直し、効率化」です。10頁のグラフは、育児休 業等の両立支援を、部下が利用した管理職に対して、そういうものを利用して職場にど んな影響がありましたかということを聞いたものです。最も職場への影響としてあった と答えた方が多かったのは「仕事の進め方について職場内で見直すきっかけになった」 ということです。この点はあまり広く認識されていないかもわからないのですが、誰か が育児のためにいろいろな制度を利用することで、仕事のやり方の見直し・効率化につ ながるきっかけになるというメリットがあるということをまとめました。  最後に10頁で、これは企業経営上ではないのですが、男性労働者や家族についての メリットを挙げております。これは言うまでもないことですが、育児に参加できること で、仕事にも意欲的になった、リフレッシュした、マネジメント力が付いた、夫婦のき ずなが強まった、親子のきずなが深まったということが挙げられております。  12頁は、男性が育児参加できる働き方を可能とする取組のポイントはどうかというこ とを、インタビューを基に7点にまとめてみました。企業トップレベルの話から、現場 レベルの話まで合わせて7点ということで広範に及んでおりますが、かい摘まんでご紹 介いたします。  スケールの大きなほうからいきますと、1点目は企業理念・企業風土です。男性が育 児にかかわれるような企業をヒアリングいたしましたけれども、こういう企業に共通し ておりますのは、従業員一人ひとりの仕事と生活のバランスを大事にするということを 企業理念としているということです。また、その企業理念というのも、必ずしも固定的 なものではなくて、そういう企業風土づくりに常に努力をしている、ということが窺わ れました。  囲みのところに生の声を挙げております。企業風土というのはずっと変わらないもの ではなくて、意識的につくっていったという例がありました。例えば、合併して新会社 になったときに、新しい創業の精神の中に、性別を超えて多様な価値観を受け入れて働 き続けられる、ということを盛り込んだ。社員の意識調査をしたら、女性の満足度が低 かったので、活性化のプロジェクトをつくった。市場競争が厳しくなったので、従来の 風土では新規事業が展開できないと考えて、女性の登用に取り組み始めた。このような ことがあり、何かきっかけがあって、そしてその企業風土が変わっていくというような 事例が大変多くありました。  2点目は、トップの姿勢や取組ということです。トップのリーダーシップで、ワーク・ ライフ・バランスを企業戦略の中に位置づけているということが非常に効果的であると いうことが検討会で確認されております。また、トップ自身がワーク・ライフ・バラン スを実践すると、さらに説得的であるということがありました。  以上が企業レベルの話ですが、3番以下は若干現場に近いところの課題やポイントで す。3点目は、管理職や従業員の意識改革です。ヒアリングをしたところ、男性が育児 をできるかどうかは、一にも二にも上司次第ということがわかりました。反面教師とし てこの枠囲みをしておりますが、「どうして君が育児をするの」とか、「出世に響くよ」 という上司も残念ながらたくさんいるということです。  14頁で、管理職の意識を変えるために、いろいろな研修をしたりという取組が行われ ております。男性労働者自身も、周りに流されるということではなく、自分なりにワー ク・ライフ・バランスについてしっかりした考え方を持つことも大事だということが窺 われました。企業によっては、男性を対象とした意識啓発をしている事例もありました。  15頁で、取組のポイントの4点目として、人事制度面の工夫です。ここでいちばん大 きかったのは評価の問題です。男性が育児参加するのをためらう理由の1つに、例えば 育児休業を取ったことで、同期の人よりも昇進が遅れる、自分なりに効率よく仕事を切 り上げて残業をしなかったのに、それがきちんと評価されるのだろうかということがあ ります。このような評価のルールもきちんと作り、それが管理職にも、従業員にも間違 いなく理解されることが大事ではなかろうかということをここで述べております。時間 ではなくて、成果によって評価することも大事であることを述べております。  16頁の(5)、5番目のポイントは労働時間管理面の工夫です。これは、各社非常に 多様な取組をしております。いちばん育児参加がしやすいのは、そもそも残業がないと いうケースで、この場合には改めて男性の育児参加と言わなくても、自然と参加ができ るわけです。企業ヒアリングをした会社の中にも1社そういう所がありました。6時半 には強制的に消灯するということでした。これは、社長がこういうことを非常に重視し ていて、仕事というのは残業は基本的にしないものだということを、長い間認められて も認められなくてもずっと言い続けて、ついに毎日ノー残業デーにしたという例です。  その場合に、昼間の働き方の密度を上げなければいけないということで、電話応待や 打合せは一切しない、2時間のがんばるタイムを設けている。そういうところで仕事に 集中しているという事例がありました。  その関係ですけれども、生産現場で不良品が出た場合に、その原因を分析するように、 なぜ残業が増えるかについて原因を追求することが、仕事の効率化を図り、生産性を上 げることにつながるという指摘がありました。そのほか、現場の管理職のマネジメント で、残業の管理をこまめにする。管理職のマネジメント力の評価に労働時間管理が盛り 込まれているということがありました。ここは事例が細かいので端折りたいと思います。  17頁の下に〜の囲みがあります。ここで「働き方と生産性」ということでトピックを 取り上げております。長時間労働が企業の競争力を支えているという見方も一方で根強 いわけですが本当でしょうかという投げかけをしています。ここで3点文献を引いてお ります。1点目は、時間当たりの生産性が最大になる労働時間というのを研究した文献 があります。大体、月間で161時間ぐらいと推計されております。これを全産業平均で 見ますと、実労働時間はこれを超えておりますので、平均の効率が最大になる点を上回 って働いている結果、4分の1程度生産性が下がっているという推計があります。  仕事と家庭の両立支援に取り組むと、そのことがコストになって、企業業績にマイナ スなのではないかという指摘をなされることがあるわけですが、ニッセイ基礎研究所で 「両立支援と企業業績に関する研究会報告書」を出しております。これを見ますと必ず しもそうではない。短期的にはマイナスになる可能性もあるけれども、ワーク・ライフ・ バランスを支援するという枠組みの中で導入・運営することで、長期的には企業業績に プラスであるという定量的な分析結果があります。  両立支援や、女性の能力発揮を重視している企業の株式は、長期的に産業平均よりも、 投資収益率が高いということが観察されております。  国の国際競争力との関係で、労働時間が議論されることが多いのですが、各国の国際 競争力はいろいろな機関で推計しております。引用されることの多い、世界経済フォー ラムで作っているランキングと労働時間を比較したのが下の表です。これで見ますと、 国際競争力が高いとされている国が、必ずしも労働時間が長いとか短いという一定の傾 向はありません。長時間労働を見直すことが生産性や競争力を下げることにはならない のではないかという投げかけをまとめてみました。  取組のポイントの6点目は、要員管理や仕事の管理ということです。これは代替要員 の確保、仕事や情報の共有化ということです。  20頁で、取組のポイントの7点目は、従業員の情報提供です。いろいろな両立支援の 制度が使える、ということが知られていないということがままありますので、そういう ことをきちんと知らしめていく。ワーク・ライフ・バランスについての相談窓口を企業 内に設けたところ、20代、30代の男性からとてもたくさん相談があったという事例が ありました。こういう相談も重要ではないかということです。  以上が取組のポイントです。右側に提言とあり、白いボックスが21頁に設けてあり ます。これも手回しがよすぎて大変恐縮なのですが、せっかく日本経済界を代表する経 営者にお集まりいただきましたので、是非一人一筆ずつ書いていただき、ここにメッセ ージを盛り込み、顔の見える形で経済界に呼びかけをしてはいかがかということで事務 局からご提案させていただきます。たたき台の説明は以上です。資料No.4−2はダイジ ェスト版ですので同じ内容です。  それでメッセージの話ですが、参考1として「ポジティブ・アクションのための提言」 という資料があります。平成14年にワーク・ライフ・バランスとはトピックが違うの ですが、同じような形で提言をまとめたことがあります。これの27頁から29頁までに、 当時集まった経営者の方々、有識者の方々の一筆ずつのメッセージがありますので、こ んなイメージで書いていただければありがたいと思います。 ○北城座長 ただいま、事務局から説明があった資料を基に、皆様からいろいろご意見 を伺いたいと思います。特に今回の協議会は、男性が育児に参加できるようなワーク・ ライフ・バランスの推進について、企業経営者の視点から検討し、提言していこうとい うことですので、そういう観点で経営者の考え方と併せてお伺いしたいと思います。  最初に、座長代理になっていただいた岡村さんにご挨拶方々お考えを聞かせていただ ければと思います。 ○岡村座長代理 私は、東芝に勤めております傍ら、経団連で経営労働政策を担当して おります。働き方の多様性の問題については大変興味を持って、いま問題に取り組ませ ていただいております。社内でも、あるいは経営者の間での議論にも、大変興味深く参 加させていただいております。この提言が世の中を変えることができる1つの端緒にな ればということで大変期待をしているうちの1人です。  若干考えていることを申し上げます。片方で少子高齢化の問題があると同時に、マー ケットが大きく多様化しているという現実を考えたときに、女性の活用、女性の活躍の 場がもっと広くならないと、長期的に企業としては大変厳しい局面に直面するのではな いかということは実感しております。そういう意味で、本日ご説明いただいた内容につ いては全く同感です。  しかし、この提案をいかに強く世の中にアピールするかという面で2つお話をさせて いただきます。1つは、ワーク・ライフ・バランスという言葉は、関係者の中では言葉 として膾炙してまいりまして、認識されてきております。果たして経営者一般、あるい は労働側一般に対して、この言葉の持つ本当の意味が正確に理解されているのだろうか ということに対して少し心配しております。そういう意味で1つの提案として、ワーク・ ライフ・バランスというのはどういうものなのか、ということをしっかり説くところか らスタートしていただけないかということが第1の希望です。  とかく話をしておりますと、ワーク・ライフ・バランスというのは、極端な言い方を しますと、要するに仕事と生活との時間を半分半分にするということだと、あるいは仕 事の量を減らして、余暇の時間を増やすということだけがワーク・ライフ・バランスだ と取られてしまう。そう理解してしまいますと、経営者側は、労働時間を減らせという ことかということになりますし、労働側からいいますと、こんなに残業しているのに、 そんなことができるわけないではないかという議論になって、極めて不毛な議論になっ ていってしまう可能性があります。  ワーク・ライフ・バランスを私流に考えますと、仕事の目標というのは一人ひとりし っかりと設定すべきだ。それを実行するために、いろいろ多様な働き方を認めるのだ。 しかも、それを労働側と使用者側、経営者側と従業員側がしっかりと合意を取った上で 進めていく姿がベースにないと、ワーク・ライフ・バランスの実現はない。結果として 労働時間が減ることにもなるでしょう。しかし、それは効率の上がった状態で労働時間 が減るということであって、決して単純に初めから時間を減らして、その分を余暇に回 せというところからスタートしていただきたくない、というのが私のポイントです。  ホワイトカラーの生産性を高くすることが、結果として個人の生活を充実させるとい うことになるわけです。仕事の目標の設定と、働き方の多様性の2つを両者でコミュニ ケーションを取って確定していく、ということを労使側でしっかり認識することがベー スになるのだろうと思いますので、是非そこを押さえていただきたいというのが第1の ポイントです。  同じことなのですけれども、制度や仕組みというのは比較的簡単にできると言うと語 弊がありますが、私どもの会社もかなり制度的には育児制度を含めて充実をさせてきた つもりです。ある意味で、男性の育児参加という面でも少し進んでいる会社かもしれま せん。過去5、6年で、男性の育児休暇が20数名と聞いています。この数字自体満足 できる数字ではありませんけれども、比較した上で申し上げるとやや進んでいるかもし れません。  私も、現実に現場へ行っていろいろ話をしているときに感じるのは、制度は充実して、 その制度そのものは社会的にかなり評価されるけれども、実際はここにありましたよう に、中間管理職だけの責任にしてはいけないかもしれませんが、トップを含めてまだそ の意識が欠如しているということだと思います。これも、意識・風土の改革が大事だと 言うのも簡単なのです。教育の仕組みを作れと言って教育をする、それもそんなに難し いことではない、やればいいわけです。  私がいちばん感じますのは、仕事の目標の設定とライフスタイルの多様性の問題につ いて、業績評価という立場からコミュニケーションを取っているかどうかというところ がいちばんのポイントです。私どもも社内の意識調査をするのですけれども、非常に活 性化された職場の中では、上司と従業員の働き方、あるいは成果の目標の設定の仕方に ついてのコミュニケーションが非常にうまくいっている所はモラルが非常に高いという 結果が出ております。  したがって経営者側からすると、個人個人の目標の設定に対して、それもわかりやす く定量的にしっかりとした目標を設定する仕組みが定着していることが必要です。その 上で従業員がこの目標を達成するために、私はこういう働き方を希望しますと。それが 週単位であっても、月単位であっても、半期単位であっても、年単位であっても構わな い。2年間は、とりあえず一生懸命働きますと。働いたら、その次の年は自己啓発に使 わせてくれというような契約があってもいいと思うのです。  そういうコミュニケーションがベースになければいけないということで、とかくあり がちな制度・仕組みを作ってそのままというようなことになってしまうと、この提言も 無意味になってしまうということになります。お願いしたいことは、ワーク・ライフ・ バランスの本質をもっと理解するように、啓蒙するようにしていただきたいということ と、基本は従業員と上司との間のコミュニケーションも具体的に、直接処遇に結び付く 成果、評価のレベルでのコミュニケーションが必要だということを付け加えていただき たいと思います。 ○北城座長 東芝さんは大変トップの理解があって、こういう活動、特に社員が働きや すい環境を作ることに対して大変進んで優れた取組をされていると思うのです。逆に言 うと、トップに理解していただくことこそ非常に難しいことではないかという感じもし ています。そういう意味で、トップに理解していただくためにも、なぜワーク・ライフ・ バランスの取れた働き方が必要なのか、あるいはなぜそれが企業にとって好ましいこと かということが理解されなければ、なかなか現実には進展しないと思います。  そういう意味で、企業経営にとって、このようなワーク・ライフ・バランスが取れて、 あるいは成果を達成するための多様な働き方ができることによるメリットは何か、とい うことについて最初にお伺いをして、その後、そういう目的をどうやってトップに理解 してもらったらいいか。トップに関する働きかけのようなことについて次に話をしてい きたいと思います。  ワーク・ライフ・バランスが取れた働き方は、なぜ企業にとって必要なのか、なぜ好 ましいのか。この資料の中にも、そういう取組をしている会社は優秀な人材が集まるの ではないか、あるいは定着するのではないかということがありましたけれども、皆さん からご意見を聞かせていただきたいと思います。 ○内海委員 ご説明いただいた資料の17頁の「働き方と生産性」のところに、長時間 労働が企業の競争力を支えてきた、それは本当でしょうかという疑問が投げかけられて います。長時間労働の弊害というのはいろいろ言われておりますが、そうは言っても長 時間労働をせざるを得ないというような状況があるのも現実のことであります。  翻って考えてみますと、本当にこのような働き方が企業の生産性を上げているのかと いうことを、みんながまだ真剣に考えていないのではないかと思います。以前、私がソ フトウェアの開発を行っていたときのことですが、育児をしながら開発に携わっていた 女性がたくさんおりました。その人たちは、なにしろ時間がないので段取りよく、昼休 みも半分ぐらいしか休まず、工夫しながら、定時に帰るために、効率的に仕事をこなし ておりました。そして、その結果はどうかと申しますと、何ら遜色ないのです。一方、 ワーク・ライフ・バランスをしなくてもいいような男性の中には、この仕事は一晩徹夜 すればできるというような調子で仕事をしている人もおりました。貴重なマシンタイム を少し無駄に使っていたときもあるのではないかと思います。  このように、時間がない女性たちが効率的に生産性の高い仕事をしてきたというのを 実際に見てきておりますので、本当に長時間仕事をすることが、必ずしもよいことなの かどうかということに対して疑問を持っております。しかし、このような日本の企業の 働き方を何度も見直して、先ほどの大臣のお話にもありましたけれども、土日は休める ようになってきたという大きな変革があるのですが、しかし、普通の日は毎晩遅くまで 仕事をしているという風土、そういう職場はまだまだたくさんあるわけです。ワーク・ ライフ・バランスの前に、人間らしい生活をするための第一歩を考えてみることが重要 なのではないかと思います。女性たちからも、定時で帰ることができれば、子どもの1 人や2人は育てられる、残業があるから育てられない、という声が多く聞かれます。  企業にとってワーク・ライフ・バランスがなぜ必要なのか、好ましいことなのかを示 すためには、私は、生産性に焦点を当てて、そのことについてもっと研究して、先ほど ニッセイ基礎研究所のデータがあると伺いましたが、こうした数字をきちんと出すこと ができれば、説得力のある話になるのではないかと思います。 ○北城座長 そうですね、特にニッセイの研究所で、こういったことに関心のある企業 のほうが業績がいいという資料もありましたが、あまり世の中に知られていないという こともあるかもしれないです。 ○水越委員 今の日本の長時間労働という働き方が本当に生産性を上げる働き方なのか ということを真正面から考える必要があるのではないかと思います。私は出版社の社長 も兼務しており、昨年、フランスの大手出版社を訪ねる機会がありました。その出版社 で発刊している人気の女性週刊誌の編集部の方々と懇談しました。週刊誌の編集部の仕 事は大変ハードですし、どんな働き方をしているのか伺いましたが「どんなに遅くても 7時半、編集長でも8時には帰ります」「だって私達には夫も子供もいるんですもの」と いう答えでした。欧米では女性の労働力率が高いのですが出生率も向上している背景に はワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透していることを実感しました。   私どもは月刊誌ですが校了時は1時、2時まで仕事するのは当たり前状況でしたので、 帰ってくるなり、フランスの彼女たちの仕事の仕方を伝えました。でも「残業しなけれ ば期日までに雑誌は出せません」という言葉が返ってきました。そこで仕事を全部たな 卸しさせました。たしかに少しの改善では無理でしたが外部のスタッフや印刷会社も含 め仕事の仕組みを変えて残業を3割から5割削減することが出来ました。  仕事の優先順位をつけて本当に必要な仕事に絞り込むことで、むしろ無駄のない生産 性の上がる体制が生まれました。ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方が生産性を 上げ高品質の仕事が出来るのだという実証を1つ1つ積み上げていくことも大切と思い ます。 ○中野委員 いま座長から多様な働き方の必要性、メリットのお話がありました。これ は今回の提言にもありますが、おそらくこの部分についての議論はもう要らないのかな と私は思います。むしろもう1点の、いかに具体化していくかという部分で、トップの 役割という課題意識が出されていましたが、これは間違いなくそうだと思います。私ど もの実態を踏まえて考えますと、1つにトップといっても現場トップへの働きかけの必 要という視点があるかと思います。もう1つは、あまりいままで出てきていないお話と して、あるいは岡村さんがおっしゃった従業員のコミュニケーションの問題かもしれま せんが、私の言葉で申し上げますと、受け手である従業員が主体的に考える切り口が非 常に必要に感じています。非常に取組が遅れている弊社ならではなのかもしれませんが、 何かこの両面があるなと感じております。ご参考までに申し上げますと、それなりに本 社のトップは社長をはじめ、このようなことは声を大にしてこれまでもやってきている のですが、私どもの組織は本社があり、地区本部があり、支店があり、支社がありとい う重層関係にあります。営業会社ですから現場に近くなればなるほど、営業推進に偏る という問題があり、現場のトップは頭ではわかっていても、なかなかそちらに力を注ぎ 切れないという実態が1つあります。  もう1つは、よしんばそういうマインドを持って地区の経営者が動いてくれたにして も、いちばんの問題は、受け手である従業員がこの問題について主体的に考えても、な かなか行き切れないというところがあり、どちらが欠けても実効生のある対策にはつな がらないような気がしてなりません。そうなってくると、視点として、いかに主体的、 能動的に考える場に従業員が参画できるかという仕組みを考えることが必要かと思って います。  本来、物事には仕組みと運用があって、どちらが欠けてもいけないわけなのですが、 特に運用の部分は仕組みで担保されるようにしていかないと、結局実効性がないという ことになるので、わかりにくいかもしれませんが、そんな視点で私どもの実情で申し上 げますと、やっていかないといけないのかと。  実は昨年度から企画裁量型労働制を取り入れまして、物事を自分で考えようというこ とをしてきたのですが、なかなかそうはいきません。いま申し上げたような観点から参 画して、コミュニケーションを取りながらともに考える、ある意味では自分が参画して 決めたこと、それは見えるからというのかわかりませんが、自分たちで作ったものなの だから考えよう、そういう展開、仕組みづくりが必要なのかと思います。 ○北城座長 ありがとうございました。ワーク・ライフ・バランスの必要性はトップは 理解しているけれども、なかなかそれが現実に現場に展開されないということもあると 思うのですが、本当にトップがこういうワーク・ライフ・バランスの必要性を理解して、 こういったことを実行したほうが、会社の業績が上がると思えば、最終的には実行する のではないでしょうか。長時間労働のほうが成果が上がる、いや上がらないといった議 論もありますが、これも仕事の内容によって、生産現場のように時間で拘束されること で仕事量が増えるところと、企画のように、長い時間働いても必ずしも成果が出るとは 限らないというような違いはあると思うのです。  でも本当に経営者が業績向上につながることを理解していたら実行すると思うのです。 私などは採用にあたって、学生が我々の会社をどのように見てくれているのかがとても 気になります。大体ワーク・ライフ・バランスに配慮のない会社には優秀な学生はこな いのではないかという感じもしていますが、それ以上に学生の会社に対する人気、どう いう会社に入りたいかということに関しては常に気にしています。このようなことも具 体的なメリットです。いまの学生は幾日休暇があるかとか、そういうことばかり聞く学 生がきて、そういう学生がきて大丈夫かという気持も多少ありますが、やはり意欲のあ る優秀な学生が会社に入ってくれることは非常に重要なことだと思います。そういうこ とも含めて、本当に経営者にとって何がメリットなのかという辺りで、川口さんの所も ゴーンさんがかなり女性の登用に力を入れていらっしゃいますが、どのように思ってい らっしゃいますか。 ○川口委員 当社の場合、トップの率先垂範というか、啓蒙は非常にあるところだと思 うのです。先ほどの損保ジャパンさんのお話にもあったとおり、現場の浸透はまだまだ で、自動車商売の上では、お客さんの購入時点で誰が決めているかというところでも、 昨今女性の意思決定による度合いが5割を超しており、直接的に女性が買う場合もあれ ば、名義は旦那さんになっているのだけれども、女性の意見が圧倒的に強いという場合 も含めると、大体6割方は女性で決まっていると言われています。プロダクトプランナ ーにしても、マーケッターにしても、女性の比率はまだまだ1割にも満たないような状 況です。自動車会社というと、どうも女性が敬遠するのか、まだまだです。だから、我々 もワーク・ライフ・バランスを充実させるというのは、徹底的に制度を入れるのは先ほ ど簡単とおっしゃいましたが、制度だけは負けないぐらいにここ2、3年間で大幅にや ってきています。いまはもう在宅勤務あり、9歳ぐらいまで育児休暇は男女ともにとれ るとか、いろいろなところまでやっているのですが、なかなか浸透しない。  ここが先ほどおっしゃっていたとおり、現場のヘッド辺りに浸透させないと、女性を 活用しなければいけない、女性を戦力にしなければいけない、男女の違いが職場で力を 産んでいくとか、こういう一切の話はすべてしているのだけれども、頭でわかっても現 場では行動につながっていないというのが実態です。そこをどうやっていくかというと ころを、今日いろいろお話を聞いていて、うん、どうするのだろうなと、次のステップ に入らないと、制度だけではうまくいかないなという感じがします。  当社は例えばルノーとの提携の関係で、こちらからも人がいっぱい行くし、向こうか らも人がいっぱい来るのですが、そういう中で見ているものは、フランスはやはり進ん でいるのか。ルノー辺りでも女性の役員クラスが非常に多くて、その役員の方が人生を 投げ捨ててやってきているような、髪振り乱しているようなタイプの女性というのはい なくて、むしろいいお母さんみたいな方が多いのです。  子どもがあそこは税金上の援助なども非常に高い関係で、子どもが多くて、副社長ク ラスの役員が結構多いのですが、なぜかお子さんが4人ぐらいいる所が多い。4人いて、 子育てやって、そして役員に上がるというぐらいですから、よほど環境とかを含めて支 援されているなと。ですから、そこのやり方を学ばなければいけないのですが、やり方 というのは、もう社会全体の発想の取り方もあれば、夏休みをバーンと取ってしまうよ うな気質があります。そうかといって、仕事をやるときはもうバンバンやるわけで、そ のようなところは大いに学んでいかなければいけないという感じがしています。  だから、トップの啓蒙や必要性の認識、啓蒙活動などいろいろなことをやっているの ですが、管理職にも全員の研修を義務付けて、ダイバーシティーの重要さなどをやって いるのだけれども、なかなか浸透しない中で、どうやって実際の現場で受け入れられる ようになるかというところが、いまの課題です。そういうところでいろいろ海外にも目 を向けながら、学んでいきたいというのが、提言というよりも、むしろいまの悩みみた いなことになります。 ○佐藤委員 ワーク・ライフ・バランスの必要性を考えるときに、岡村委員が言われた ようにワーク・ライフ・バランスとか何かというのを、最初に確認しておいたほうがい いと、いま伺っていて思いました。ワーク・ライフ・バランスと時間配分は、一応別の ものです。ワーク・ライフ・バランスとは何かと私なりの解釈をすると、会社から仕事 をこういうことをやってくださいと言われたことを一生懸命やると、その人が仕事以外 でやりたいとか、やらなければならないことがやれなくなってしまうことがないという ことだと思います。逆に仕事以外でやりたいことも、会社から期待された仕事をきちん とやったときにもやれるという状況が、ワーク・ライフ・バランスが取れていることだ と思います。仕事にどれだけ時間を割くかということではないのだと思います。だから 仕事上やりたいことも、仕事以外でやりたいことも、いろいろ調整がとれて両方がやれ るという状態がワーク・ライフ・バランスが取れていることだと思います。  なぜこういうことが必要になったかというと、働く人が、仕事だけが大事だ、人生で 仕事だけだというときは、仕事以外に何もないわけですから、ワーク・ライフ・バラン スというのはなかったのです。ですからそれは先ほどの1970年前ぐらいまでの男性を 考えれば、例えば育児と家事は妻がやる。自分にとっての大事なことは仕事だけだ。こ の状態でワーク・ライフ・バランスとは言わなかった。ワーク・ワークだったわけです。 これが変わったわけです。仕事以外にもやらなければいけないこととか、やりたいこと があるという社員が増えてきた。典型的には女性ですが、女性は結婚しても子育ても辞 めないで仕事をする。仕事を続けたい、でも同時に子育てもしたい。会社から期待され る仕事の目標を達成すると子育てができなくなってしまうとか、やれない。これはワー ク・ライフ・バランスではなくてコンフリクトです。働く人たちが変わってきたのです。 このように変わってきたときに、会社が期待する仕事も一生懸命にやるのだけれども、 それ以外にやりたいということがあるわけですから、それ以外にやりたいこともやれる ような仕組みを用意してあげることが、結果として仕事にも意欲的に取り組める。だか らワーク・ライフ・バランスは会社にとっての必要性だろうと思うのです。  そうすると多くの場合、時間と関係ないというお話をしましたが、24時間365日し かありませんから、仕事以外の時間もそれなりに確保しようと思えば、当然働き方も従 来と違って、仕事だけ24時間365日使えるそういう時代はあまり考えないでよかった わけですが、これをもう少し効率的に仕事をして、会社から期待される仕事をきちんと やって、仕事以外でもやれる時間を割こう。あるいは割くというよりかそれもきちんと やれるということが大事になった。このレポートを見ると、あまりワーク・ライフ・バ ランスが何かということが書いていないので、最初のほうに書いたほうがいいかと、い ま伺っていて思いました。 ○北城座長 それは岡村さんもおっしゃっていましたが、非常に良い点かもしれません。 最初にちょっと書いておいていただいたほうがいいかもしれませんね。 ○大矢委員 私もこのワーク・ライフ・バランスというワードを使うと、どうしても生 活にゆとりが生まれるというニュアンスが強くなり、一方で企業側からみると生産性が 落ちるという受け止め方をされやすいので、最初に必ずワーク・ライフ・バランスの意 味をきちんと押さえないといけないと思います。それを間違えると、企業経営者のメリ ットが見えてこないと思います。  ワーク・ライフ・バランスを一般的に普及させるにはすべての人々の意識改革が行わ なければならないわけですから、大企業も、そうでない企業の経営者も、メリットがあ ると認識することが重要になってきます。あなたの会社は女性が多いから、ワーク・ラ イフ・バランスを推進することはメリットがあり、男性が多い企業でも、グローバルに 進出する場合において、多様性を認めることは競争力にとっても役立ちますよというと 重要性が伝わりやすい。また、規模の小さい企業に対しては、優秀な人材を確保できる ということがメリットであると伝えると、経営者に重要性が認識されやすいと思います。  ワーク・ライフ・バランスを推進する上でのメリットはこのように少子高齢社会にな ってくると、優秀な人材の確保であり、優秀な人材を確保することによって、企業の経 営、競争力がアップしてくるというところに絞って発信したほうがいいと考えます。 ○北城座長 それはいい点ですね。佐藤さんがおっしゃったような、こういうワーク・ ライフ・バランス、両方を追求したいと思うような人たちがいま増えてきている。そう いう増えている優秀な人材を確保しよう、会社に入ってもらおうと思えば、こういうこ とに配慮している会社に優秀な人材は集まるのだという、これは経営者にとっては非常 に大きなメリットで、中には書いてあるのです。中小企業の話も出ましたので、この資 料そのものももっと前のほうにワッと出したほうがいいかもしれませんね。 ○山崎(克)委員 そうですね、中小企業でも零細から中堅までかなり幅が広くて、非 常にまちまちです。零細企業ですと本当に家族的な雰囲気の中で育児休暇制度など設け なくても、その場になればそれなりにお互いに助け合って、やっていくという状況があ ろうかと思います。もう少し大きくなる一般的な中小企業だと、なかなかそういう認識 が足りないということよりも、社長が従業員よりもかえって一生懸命に飛び回っていま すから、なかなかそういうところのワーク・ライフ・バランスまでに意識が足りないと いうか、考えが及んでいかないのではないかと思っています。  そのような事情はありますが、共稼ぎなどが増えてきますと、やはりそれに対応して いくというのが企業者としての考えだと思いますので、そういう意識改革を呼びかけて いくことが必要だと思います。次世代育成支援対策推進法では、中小企業においては、 行動計画を作ることが努力目標になっていて、いま2,000ぐらいの企業が取り組んでい ます。行動計画の中においては、男性の育児教育というか、育児についての項目が示さ れていると思うのです。ですから、取り組んでいる企業についてはかなり進んでいると 思うのですが、まだまだやっていない企業が多いものですから、今後も行動計画を作る ように呼びかけていく努力が必要です。そんなに急ぐことはないのでしょうけれども、 労使が協調して地道に取り組んでいくことが必要だろうと思います。  私どもは企業ではなくて団体なものですから、何かそういう点においても、組合等の 組織を通じて積極的に呼びかけて、事業者の意識を高めていくような努力もしたいと思 っています。  また、提言にはメリットがいろいろ書いてあって、読めばなるほどなということばか りなのですが、こういうメリットがあるのだということを断言して言っていく必要があ ると思います。たぶんここにある意見は、実際の意見ということで各会社から出たもの だと思いますので、それらを踏まえ会社別の事例を紹介して頂きたい。先進的な事例は、 遅れている企業にとっては参考になりますし、それに追い着こうという意欲も出てきま すので、できればモデル事例集、好取組事例集的なものを、作っていただければありが たいと思います。 ○北城座長 ほかにはいかがでしょうか。大手企業の立場から山崎さんお願いします。 ○山崎(雅)委員 いろいろと盛られている企業にとってのメリットについては、それ ぞれそうだなという感じを持って見ています。まさにいろいろなことをしたいという方 たちが増えて、ワーク・ライフ・バランスみたいなものをきちんと取る。制度的に持っ てこないと、企業として優秀な人材が確保できないということがよくわかります。内海 さんがいちばん初めにお話したように、企業にとっての最大のメリットは、やはりこの ことを徹底していくことによって、生産性を上げることが可能になってくると思うので す。だからワーク・ライフ・バランスで育児というのもその中の1つの項目であって、 自分の時間ができれば自己啓発にそれを当てられるし、地域との交流もできるようにな る。友人たちとの付き合いが広がるということで、逆にいうと1人の人の価値が広がる。 そういう局面が想定されるわけです。ですから、そのような1人の企業人としてだけで なく、人間としての生きる幅を持つ社員がいるということは、企業にとって有用なこと だと私は思います。  だけどもいちばん大きな項目は何かそれぞれに言えといったら、やはりそういうこと を徹底して、働き方を集中的に働くことを本当に制度的に作って、労働生産性を上げる ことが、大きなメリットになるのではないかということを思いました。それがいちばん 大きなメリットだと思うと同時に、育児に男性が参加することは、そのことをとっても、 先ほどはワーク・ライフ・バランス1つの項目だと言いましたが、これは社会を考える 上でもとても大事なことだと思うのです。やはり家庭は両性で作っていくものである。 しかもそれが基本的な社会の構成単位である。これはむしろ言ってみると、教育にかか わってくる問題にも波及してくるかもしれませんが、そういったことの考えに広く立っ た上で、進めていく考えなのだろうと思います。  具体的な施策についての件ですが、これはいろいろな制度的な仕組みを作っていく。 例えば岡村会長がお話になったような目標をしっかり立てていかれるような企業の仕組 みを持っていく。これは大変大事なことだと思います。そして非常に難しいのです。企 業の中で皆さんは仕事をしているからわかると思いますが、目標をきちんと作るという ことぐらい難しいことはないのです。何をするか。というのはどうしてかというと、日 本の企業はあまり職務というところを明確にする働き方を長い間してこなかったのです。 だから、本当のことを言うと、そういう職務というものに着目したような働く枠組みが できてくればいちばんいいのですが、作ろうと思うとえらく大変です。  職務給的なものの考え方を入れて、きちんとやっていくのは非常に大変なのですが、 そのようにやっていくと、目標、企業が求めることも見えやすくなってくるのではない かと思います。そういうことを含め、さまざまな仕組みを作っていくというのはあるよ うな気がします。と同時に、意識にかかわる部分でそれを支えて運用していくための考 え方は、1回だけでは終わらない。繰り返さなければ駄目だと思います。管理職研修に 私たちもワーク・ライフ・バランスの項目を入れています。入れ始めて課長クラス400 弱くらいにそういう話を聞かせています。これはずっと続けていかなければいけません し、管理職を集めて、上級管理者に話を聞かせたりしているのですが、それだけでは駄 目なのです。岡村会長のところからも来ていただいて、お話を伺って、管理職に話を聞 かせたりしているのですが、結局それは継続的にずっとやり続けなければいけないと思 っています。  そういった意識の問題、それから仕組みをきちんと作っていく。これは今後両立させ ていかなければいけない。それが私の感じているところです。 ○北城座長 優秀な従業員、学生を確保できることは、企業にとっては重要なことだと 思います。もう1点おっしゃった生産性の向上についてですが、確かに集中して仕事を することは重要なことですが、生産性が向上して、その結果としてその会社の業績が上 がったということにつながれば、経営者は取り組むのではないでしょうか。先ほどの週 刊誌の編集現場の例などもありますが、それで結果として良い商品や週刊誌ができて、 はじめて企業経営としてはうまくいくわけです。男性も育児に参加できるようなことが 好ましい、女性だけに育児を任せるべきではない、という一般的な社会の必要性が理解 されるだけではなく、ひいてはその取り組みが企業経営にとって好ましく、業績の向上 につながるものであると経営者に理解してもらうことが重要です。経営者に、本当に理 解して取り組んでいただくためには、どのように訴えれば良いか、経団連の紀陸さんは どう思っていらっしゃいますか。 ○紀陸委員 私どもは先ほど岡村会長からお話がありましたように、組織を挙げてワー ク・ライフ・バランスの重要性を経営労働政策委員会で昨年から取り上げて、この委員 会の委員長になられた岡村会長を中心にご審議いただいていますが、もう少し深掘りを して、いろいろな参加企業にPRしていかなければいけないと思っています。1つ難し いのは、ここでもお話がありましたが、ワーク・ライフ・バランスとは何なのだという ことが、ましてや片仮名用語ですから、欧米では基本的に80年代、90年代からやって きているにもかかわらず、日本ではどういうことなのかという理解が、こういう所でお 話をしている方々のレベルではある程度このように違うのだということが把握できるの でしょうけれども、多くの企業経営者の方々の中に、どういう形で浸透させていったら いいかということは、非常に難しいことだと思うのです。経営者にとってこの言葉の持 つ意味はどういうことなのか。いまいくつかの論点が出ましたが、それが本当に理解が できるようなPRなりアピールの仕方をどのようにして進めていくかというのは、非常 に時間もかかることだし、1つ誤解があるとその誤解を解くのに大変な時間がかかった りすることもあり得ますので、非常に難しいなというのを感じています。  また、私どもでは、ワーク・ライフ・バランスを例えば男女共同参画の視点から取り 上げたり、あるいは少子化対策として取り上げたりした経緯もあり、ここの理解をどう やって整理するのかというのが、簡単なようで実は難しい話だと思っています。一本筋 を通したアピールの仕方、PRの仕方をどのように考えていくかというのは大事なこと だと思っています。  2点目はこれも重なる話なのですが、基本的に多様な働き方が私どもはキーワードに なると思っています。多様な働き方とはどういうことなのかということの話です。パー トの方がおり、在宅勤務がありということなのですが、そういう仕掛けの問題のほかに、 どうやって意識改革を進めるか。今のここの論点とは少しずれるかもしれませんが、私 どもはホワイトカラー・エグゼンプション、労働時間適用除外の主張をずっとしてきて います。よく考えてみると、いま現に管理監督者の方々は適用除外です。いわば自律的 な働き方ができる領域なのです。そのほかにさらに違った領域をもっと広げるべきだと いう主張をしているわけなのですが、それすらなかなか理解が得にくい状況です。  考えてみると管理監督者の方々が、なぜ現行の労働基準法の適用除外になっているの か。何となく監督者になったから適用除外なのだというところで、理解が止まっていま す。実は時間管理が自律的にできるから管理監督者なので、それがゆえに基準法の適用 除外に置かれているわけです。いろいろな会社の管理監督者の方々が、自分の法律上の 地位の意味合いを理解して、自律的に時間管理をすることが職場の中にあれば、それと 同等のレベルの仕事をする部下の方々に対する扱いも、自ずから本来は変わってきてし かるべきなのですが、全然そうはなっていないわけです。  その意識面の改革は非常に難しくて、現場のトップと会社のトップの方々に、その辺 から理解していただくというのは、これも相当に難問ですし、時間もかかることだと思 っております。まさにさまざまな観点からこのような問題を取り上げて、大企業だけで なく中堅企業にも理解の輪を広げていくというのは、相当に容易ではないなと思ってお ります。しかし、やり続けなければいけませんし、その整理がまさに少子化対策にもつ ながり、競争力強化にもつながるということに、結果的にはなってくるのだと思ってい ます。 ○佐藤委員 座長がワーク・ライフ・バランスと企業業績の関係がもう少しはっきりし ないと企業経営者は理解しないというお話だったのですが、ただ、なかなかこれは難し いものです。ワーク・ライフ・バランスへの取組をする。それは社員にとってワーク・ ライフ・コンフリクトがない。その状態というのは仕事にも意欲的に取り組めるし、先 ほどいろいろな方が言われたように、いい人材が採用でき、効率的に仕事をしようとい うことになると思うのです。そのことは企業業績が上がる必要条件ですが十分条件では ないです。ですから、これをやらないと駄目ですが、あとは企業経営者がどういう企業 経営をするかですから、ワーク・ライフ・バランスが取れれば即企業業績が上がるとい うふうにはなかなか難しいと思うのです。ただ、それがないと、いい人材も採用できま せんし、社員が意欲的に仕事に取り組めませんし、仕事にも生産性が上がりません。そ れは間違いないと思うのです。全然関係ないほうを向いて仕事をしろと言われて、効率 的に仕事をしても業績は上がりません。そこは直線的につながらないです。やらなけれ ばいけないことだけれども、それをやれば、すぐ企業業績が上がるわけではない。 ○岡村座長代理 そう思います。やはり直接的に早急に業績に結び付くものでは無いと 思います。例えば我々の1つの悩みは、女性の勤続年数が男性に比べて少ないという問 題があります。社員の働き方の多様性、女性特有の感覚をマーケットが求めているとき に、企業がそのための仕組みを整備していなければいけないのに、女性の勤続年数が伸 びてこない、伸びても十分ではないということに問題があるとすれば、そこが1つのタ ーゲットになるのかなという気がします。  先ほど評価のお話を申し上げたのですが、我々の社内の意識サーベイの中でも、評価 に対するコミュニケーションと申し上げたのは、評価をする側とされる側が、結果に対 して話し合うということなのです。ここのレベルが非常に高ければ、業績と相関してい るのです。ですから、最終的な損益ではなくても、中間にいろいろと求められる指標は 定量化できるものがいくつかある。それをどう探し出してきて、1つのワーク・ライフ・ バランスの成果として認識していくのか。座長が言われた採用数、女性の採用比率がど う動くかとか、そういうのが1つ大きな指標になると思います。何か進めていく上での 中間的な指標を、それぞれの会社が工夫をして、定量的に持っていることが大事なので はないかと、いま各先生のお話から感じました。 ○北城座長 まだいろいろなご意見があると思うのですが、次の論点もあるので、最初 の論点についてはこの辺で終わりにしたいと思います。確かに企業業績を向上させて目 標を達成するための1つの必要な条件かもしれないけれども、もちろん企業経営者がど ういう経営をするかということが企業業績にかかわるわけです。しかし、長期的にこう いうことは本当に必要条件であったのかどうかということを研究していただくことも重 要なので、是非先生方もニッセイ基礎研究所にかかわらず、もう少しいろいろな事例を 中長期に研究して、なるほど、それを見るとどの企業経営者もこういうことをやらなけ れば、自分の会社は将来成長しないぞという、わかりやすい情報を作っていただくこと が大事だと思うのです。PRという伝えることも大事ですが、伝える内容がきちんとあ るということも非常に重要なので、是非その辺は先生方に、もう一段の努力を期待した いと思います。  さて、残りの時間では、企業において実際に実現していくのはトップの役割ですから、 トップの役割の重要性の視点、先ほどのワーク・ライフ・バランスの定義だとか、それ に伴う企業にとってのメリットのようなものを、どのようにして経営者に理解してもら い社会に浸透させていくのかという視点、あるいは、今日の資料の中で、ここの作り方 を変えたらどうかとか、ここは少しおかしいのではないかというようなことがあれば、 残りの10分か15分で伺いたいと思います。どなたでも結構ですから、どう経営者に伝 えていくのか、あるいはここにある資料そのものについて、少し作り方を変えたらどう かというようなご意見があったらお願いします。  こういうワーク・ライフ・バランスに優れた取組をしている企業というのは、お役所 のほうで取り上げて、PRしたり、表彰したりなどしているのですか。 ○職業家庭両立課長 ワーク・ライフ・バランスそのもので優れている企業の表彰とい うのはないのですが、仕事と家庭の両立の分野で大変優れた制度を持っていて、それが 非常によく活用されていて、しかもそういう両立ができるという企業風土があるという 企業を、「ファミリー・フレンドリー企業表彰」ということで、毎年10月に表彰してい ます。大臣表彰と47都道府県労働局がありますので、労働局長表彰ということで、い ま300まではいっていませんが、250より多い企業が、すでに企業表彰を受けています。 ○北城座長 その表彰を受けたことが学生等によく浸透して、こういう会社に入りたい というような行動に結び付いているのですか。 ○職業家庭両立課長 それは定量的にはよくわかりませんが、企業としてはそういう表 彰を受けたことを非常に誇りに思っていただいて、いろいろなところでPRをいただい ていると聞いています。 ○川口委員 それを大事にしているということは間違いないです。最近、私もいろいろ な学生の面接をやっているのですが、まずそこは出ます。そういう多様性があること、 グローバルであること、ワーク・ライフ・バランスがいいこと、この3つはやはり人材 確保のキーワードになると思います。 ○北城座長 そういった、今おっしゃったようなことも経営者にとっては1つのメリッ トだと思うのです。ですからそのようなお話だとか、学生が関心を持っているのだった ら、優秀企業を表彰したということを、もっと学生が知るようなメディアやホームペー ジなど、いろいろな手段を通して学生にPRするべきではないでしょうか。そういう会 社でなければ、優秀な学生が志望してくれないというようなことがあれば、それは企業 経営者にとっても大変な関心事になると思います。 ○川口委員 『日経ビジネス』とかに出るのですが、学生が読んでいないのではないで しょうか。 ○北城座長 そういう問題がありますね。学生が読むところにもっと働きかけることも 必要ではないでしょうか。そういう手段もいろいろこれから検討して、それがまた企業 経営者にもそういうことがあるのだということを知っていただくことも重要だと思いま す。 ○紀陸委員 そもそも論で恐縮ですが、男性も育児参加できるという、この最初のタイ トル、ここから始まっていますので、確かに入口はここから入って、出口はこのワーク・ ライフ・バランスの広い論議となっていますが、パッとこれだけ見て、我が社は関係な いよというので、これで終わってしまう会社があるのではないかと思います。このワー ク・ライフ・バランスにかける言葉として、こういう入り方がいいのかどうかという点 は、全体の印象を結構決めてしまうようなことになり兼ねませんので、いまひとつ工夫 が必要なのではないか。ただ、協議会の設立の趣旨にもかかわることなので、ご検討い ただければと思います。 ○北城座長 どういうタイトルがよろしいですか。 ○紀陸委員 逆にもっと広く、ワーク・ライフ・バランスという片仮名を使わず、多様 な働き方とか、仕事と生活の調和という言葉でいいのではないかと思うのです。そうい う中に事例を入れていく。男性も育児参加できるということは、1つの象徴的なイメー ジを浮かばせますが、それだけで我が社はこのワーク・ライフ・バランスとか仕事と生 活の調和とは関係ないと感じる企業のほうが多いのではないかという気もしています。 仕事と生活の調和とか、多様な働き方を目指してとか、つきなみですけれども、かえっ てそういうものを繰り返しやっていくことのほうが、違和感を覚えない場合が増えるの かなと思うのです。 ○北城座長 おっしゃるようにこのテーマそのものは別に育児だけではなくて、本質的 にはワーク・ライフ・バランスということ、多様な働き方そのものが企業経営にとって 好ましいことだと思うのです。一方で、いま国民の関心は少子高齢化で、日本の社会が 少子化の中で、本当に活力ある社会を作れるのかということは非常に国民の関心事であ るがゆえに、そこを表に出すことのほうが本質の議論に関して、関心を持っていただけ る点もあるのではないかという気がしますが、水越さんなどはいかがですか。 ○水越委員 「男性も育児参加できるワーク・ライフ・バランス企業へ」といタイトル を見たとき、一歩踏み込んだタイトルという印象がありました。そして改めて自らの会 社の中を見てみますと、育児休業制度がスタートした91年から女性社員が取得した人 数は約1600人。全国の各店舗にはすでに取得した人たちが何人もいて女性社員が取 得するのは当たり前になっています。でも男性はというと介護休業も含めて22人ぐら いです。この実態を見たとき、特に働き盛りの30代、40代の男性社員がワーク・ラ イフ・バランスの取れた働き方が、今、求められているのではないかという認識をもち ました。  当社では今、3名の男性社員が育児休業制度を取っているのですが、そのうちの一人 と話をしました。彼は3ヶ月間休業して、その後6ヶ月、短時間勤務のスケジュールを 立て、今は短時間勤務中でした。彼が育児休暇を取得していることは結構、周りの人た ちに伝わっていたようで、出産を前にした奥さまを持つ男性社員たちから「経済的には どうなのか?」「周りの評判はどうだったか?」「人事部はどういう対応だったか」という ような質問が多く寄せられたと言っていました。彼は人事部が彼自身が一番いい方法で 取得できるよう、一緒になって考えてくれたことを感謝していました。  そして、何が自分にとっていちばんよかったかというと、「育児をしていて苦労は処々 ありますが、でも、こんなに幸せを実感したのは初めてでした。家庭の充実、妻とのコ ミュニケーションがしっかり取れているということが、仕事にも安心して打ち込め、以 前より充実して仕事ができるようになりました」と言っていました。  さらに「一生懸命に頑張っている周りにも迷惑をかけたくないという思いもあります」 と彼が語るように、「短時間でも前の仕事の仕方以上に良い仕事をしていますよ」と上司 の評判も上々。お店の現場には、パートタイマーさんがたくさんいます。パートタイマ ーさんは出産の経験が多く、「いろいろなアドバイスもしてくれて、むしろコミュニケー ションもよくなった」「生活者の視点で仕事をするようにと常に指導されていても、つい つい売るほうの側の発想になりがちだったことも反省できた」と、むしろ視野が広がっ たことを実感しているようでした。  話が横道にそれましたが、ワーク・ライフ・バランスを推進するためにも、今回は「男 性も育児参加」という少々ショッキングなキーワードをタイトルに入れた方が、印象に残 るのではないかと思います。 ○北城座長 いま育児休暇を取っているような方が、社長になれば随分会社は変わるで しょうね。 ○水越委員 内海さんはそうですから、もう取り終わって長いですけど。 ○内海委員 まだ育児休職制度もないずいぶん昔のことですので、役に立つのかどう か・・。 「男性も育児参加」というタイトルの話ですが、私も水越さんの意見に賛成です。男性 が育児休職を取ったことで、女性たちだけが取っていた時代では見えなかった問題が見 えてくるのではないかと思っています。育児休職を取った男性たちの書いた本があるの ですが、それを読んでみますと、育児休職を取得するときの心得がいくつか書かれてい まして、たとえば、仕事のことと家庭のことをきちんと分析して、こういうことを会社 には言っておかなければいけないというようなことを、きちんと順序立てて整理して書 いてあるのです。  女性たちだけで育児休職を取っていたときには、感情論というか、どのように上司に 理解してもらうか、家庭の事情を分かってもらうかというコミュニケーションの問題が 多かったのですが、男性が育児休職を取るということになると、もう少し論理的と申し ますか、やはりちょっと様子が変わってきて、それがまた女性が育児休職を取るという ときに役に立つ。そして、男性も女性も育児休職を取ることが普通であるというような 社会環境になっていくのではないかと期待していますので、シンボリックに男性も、「も」 というのがいいですね。 ○北城座長 男性もできる。 ○山崎(克)委員 先ほど育児の男性の楽しさという話が出ました。少し視点がずれる かもしれませんが、いま文科省で中学生に職業観とか勤労観を育成するためのキャリ ア・スタート・ウイークというのが職場体験ということで推進されています。現実的な 社会を認識することによって、教育的効果を上げるということでやっているわけです。 これに倣って育児についても、中学生、高校生のうちに楽しさを理解させるというシス テムを作ったらと思います。男性の学生はなかなか育児なんて、子どもなんて、赤ちゃ んなんてということで、向き合ったことはなかなかないと思うのです。育児教育という ことに関心を持たせるような教育も必要ではないか。例えば学校、保育所、企業がうま くタイアップして、育児面における体験学習を行う。そのように小さいうちから育児観 を養う、常に男性も育児に参加するのだということを教育しておくと、実際にその時に なってからスムーズに入れるような気がします。 ○大矢委員 いまの「男性も育児参加できるワーク・ライフ・バランス企業へ」という 題名ですが、確かに非常にインパクトがあって、ワーク・ライフ・バランス企業という ものの形を具体化しているという点では賛成です。しかし一方で、企業経営者にとって のメリットが見えにくいと思われます。そこで副題を付けて、例えば「市場変化に対応 して、競争力のある企業を目指して」などがあったほうが経営者にとっても理解しやす いかと思います。 ○北城座長 いいポイントですね。企業経営者に読んでもらおうと思ったら、副題は企 業経営者宛てだというメッセージを入れたほうがいいですね。ほかに何か経営者に啓発 する観点などありますか。 ○中野委員 経営者にという観点だけではないのですが、いまおっしゃったことと同じ ようなことなのですが、やはり男性従業員にとっても、そういう話を経営者から聞いた ときの受け止め方というのは、どう感じるかという視点も、やはり要るかなと思いまし た。現実、私どもの例で申し上げますと、有給休暇すらほとんど取っていないという実 態がある中で、経営者からこういう表題で仮に打ち出されたとした場合、やはり受け止 め方は配慮する必要があると思うのです。政策的観点からは女性の両立支援、あるいは 活用促進という点では、この見出しも非常にアピールを感じますが、プラス現実のもの として男性従業員が労働時間について真剣に考えていくためには、何か打ち出し方も少 し注意がいるかと。例えばあまりいい対案ではないのですが、あくまでもワーク・ライ フ・バランスの概念は、私は広いものだと思います。その中に育児参加があると思いま すので、主題はワーク・ライフ・バランスの充実、男性の育児参加というのはバーの下 で副題で付くような打ち出し方は、実態に合わせて推進していくとすると、必要かなと いうことを感じました。 ○北城座長 わかりました。 ○岡村座長代理 根本的な問題ですが、育児参加を男性がするか女性がするかは全くそ の夫婦の選択であるわけです。男性がしなければいけないという論調は、論理的にもお かしいし、そういうことであってはいけない。したがって、男性もできるワーク・ライ フ・バランスということになると思うのですが、いちばん基本になるのは先ほどから申 し上げているのですがやはり評価の問題だと思うのです。例えば会社の女性の産休を取 った従業員たちと対話している中で、その間の評価がどうであったかというのがいちば ん問題なわけです。ですから、そこのところの評価の仕組みがしっかり出来上がってい ないと、女性の多様性も甘受できない会社になってしまうというメッセージを、経営者 側から発するメッセージなのかもしれません。要するにこの場から発するメッセージで ないのかもしれませんが、そこのところを1つ、きちんと押さえておかないと間違えて しまって、男性はもっと育児休暇を取らなければいけませんよというお説教をしてしま うと、少し筋が違ってしまうのではないかという心配をします。 ○北城座長 最終的には従業員は自分がどう評価されるかということには非常に関心が あるし、それも短期の評価と長期的にその評価が将来どう影響するかということもある ので、成果主義の導入もあるし、成果の結果が将来にどう影響するのか。過去の評価は 低くても、後で良ければずっと偉くなるということであれば、ある期間の評価が低くて も構わないという考えもあると思うので、その辺はこれからもう少し議論をしていく課 題かと思うのです。そろそろ時間がきましたので、いま言っていただいたようなことも 含めて、そのほかにも資料の作り方等で何かご意見があれば、事務局にお話をいただく ということにして、基本的には企業のトップに必要性を理解していただくということは 非常に重要ですので、今日議論いただいたようなことも含めて、少し提言を修正しなが ら取りまとめていきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。2回の会合でまとめた いということですから、次回には提言の内容を取りまとめたいと考えますので、いまい ただいたようなことも含めて、本協議会の提言として取りまとめていくということでよ ろしいですか。                  (異議なし) ○北城座長 ありがとうございます。それでは最初に事務局から話がありましたが、こ ういうことを世の中に訴え出るときに、参加した委員はどういう考えだったのかという ようなことを少し書いていただくと、前回のポジティブ・アクションのための提言でも 経営者の皆さんに書いていただいたように、インパクトが強くなると思いますので、次 回までにメッセージを是非書いていただきたいと思います。後で事務局から書き方等に ついて詳しい話があると思うので、是非それを反映して、次回の提言の取りまとめをし ていきたいと思います。  それではそろそろ時間がきましたので、何かほかにご意見、是非言っておきたいとい うことがありますでしょうか。なければ事務局から次回の予定と、先ほどのメッセージ 等について、お話をお願いします。 ○職業家庭両立課長 それでは最初に次回の予定ですが、次回協議会は9月25日(月) の10時から12時です。場所は厚生労働省5階の共用第7会議室を予定しています。い ま座長からございましたように、次回協議会では提言の取りまとめを行いたいと考えて います。つきましては参集者の皆様方には、提言に盛り込む個人のメッセージをお寄せ いただきたいと考えています。先ほど次回と座長からありましたが、作業の都合があり ますので、今日から1週間後の来週水曜日、9月6日までに、150字程度で事務局まで ご提出をいただきますよう、お願いいたします。  本日ご発言いただいた以外に、この資料についてご意見がありましたら、今週中、9 月1日までに事務局までお知らせいただければ幸甚です。メッセージは9月6日までで す。よろしくお願いいたします。 ○北城座長 1週間後だそうです。大体こういうものは先送りしても書くのはどうせ直 前になりますから、1週間後ということのようですので、9月6日までにお願いいたし ます。これで終わりますが、大変活発なご議論をいただきましてありがとうございまし た。国民の関心の高い課題でもありますので、それを経営者の方にどう理解していただ いて推進していくかということで、次回もまたご参加いただければと思います。どうも ありがとうございました。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課 法規係 (内線7856)