06/08/28 第62回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第62回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録             厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第62回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年8月28日(月)14:00〜16:10 場所:厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階) 出席者:  労側委員:稲垣委員、岡本委員、鴨委員、篠原委員、龍井委員  使側委員:吉川委員、前田委員、松井委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奧山委員、佐藤委員、林委員    ○横溝分科会長  ただ今から第62回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。本日は樋口委員と 山崎委員が欠席されています。まず、事務局において異動がありましたので、ご挨拶い ただきたいと思います。 ○安藤雇用均等政策課長  7月24日付で石井の後任で参りました雇用均等政策課長の安藤です。どうぞよろしく お願いします。 ○横溝分科会長  それでは早速議事に入ります。本日の議題は、「雇用の分野における男女の均等な機会 及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係 省令の整備に関する省令案要綱」、次に「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等 に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針案」及び「事業 主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置について の指針案」についてです。  これらについては、本日、厚生労働大臣から労働政策審議会長あてに諮問が行われま した。これを受けて、当分科会において審議を行うことにしたいと思います。まず、事 務局から説明をお願いします。 ○安藤雇用均等政策課長  ご説明申し上げます。お手元に用意しておりますのが「諮問文」、続いて(別紙1)「省 令案要綱」、(別紙2)差別の指針、それから(別紙3)セクシュアルハラスメントの指針の3 点。そして参考資料として「改正後の均等法」「改正後の労働基準法」の抜粋部分。それ から昨年12月27日に労働政策審議会からいただいた「建議」を付けておりますので、 適宜ご参照いただければ幸いです。  まず(別紙1)の「省令案要綱」です。第一は、均等法改正に係る省令改正部分です。こ の一は、改正法第7条において労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、男女 の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置 を厚生労働省令で定めるとされていることを受けたものです。参考資料の3として配付 している「建議」の記の3で示された3点、すなわち、「募集・採用における身長・体 重・体力要件」、「コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国転勤 要件」、「昇進における転勤経験要件」この3点を定めるものです。  二は改正法第9条第3項において、それを理由として女性労働者に対して解雇その他 不利益な取扱いをしてはならないとされた妊娠または出産に関する事由を厚生労働省令 で定めるとされていることを受けたものです。これも「建議」の記の4で列挙された事 由について定めるものです。  具体的には(一)が妊娠(二)が出産、そのあと(三)〜(七)までが労働基準法の母性保護措 置に当たるもので、(三)は産前産後休業、(四)は坑内労働及び危険有害業務にかかる妊産 婦の就労制限、(五)が妊婦の軽易業務転換、(六)が妊産婦の変形労働時間制における法定 時間外労働の制限と時間外休日労働の制限、(七)が育児時間、(八)均等法上のいわゆる母 性健康管理措置。そして(九)が妊娠または出産に起因する症状による労務の提供不能ま たは労働能率の低下という9項目を列挙しているものです。  三は調停の手続にかかるもので、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせること ができるとするものです。現在は3名の委員の合議制となっている調停について、例え ば事情聴取等の手続を1名でもできるようにするということにより調停の迅速化を図っ ていこうというものです。同様の手続は、既に個別労働関係紛争処理制度でも採用され ています。  第二は改正労働基準法にかかる厚生労働省令改正です。4ページですが、改正労働基 準法第64条の2第2号で、具体的には作業員の業務ということになりますが、坑内に おいて女性を就かせてはならない有害な業務を厚生労働省令で定めることとされていま す。これを受けて、人力・動力・発破による掘削又は掘採の業務、そして(四)、技術上 の管理の業務や技術上の指導監督の業務を除く、こうした業務に付随して行われる業務 という形で書いています。  いずれも施行期日は平成19年4月1日としています。以上が省令案要綱です。  (別紙2)が、改正均等法第10条第1項に基づいて「労働者に対する性別を理由とする 差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針案」 です。大きく四つの部分に分かれていて、第1は「はじめに」として趣旨を書いており ます。第2は法第5条・法第6条にかかる「直接差別」で20ページ以降の第3は法第 7条にかかる「間接差別」、25ページ以降は第4として、法第9条にかかる「婚姻・妊 娠・出産等を理由とする不利益な取扱いの禁止」について記したものとなっています。  第2の「直接差別」ですが、まず1として「雇用管理区分」についての記述がありま す。これは建議の記の2で「雇用管理区分が同一か否かの判断は、単に形式のみならず、 企業の雇用管理の実態に即して行う必要があるものであり、差別的取扱いであるか否か を判断するに当たり、誤解を生じず適切な比較が行われるよう規定振りを見直すことが 適当」という形で受けたのを反映して、現行の指針よりも詳細な記述にしています。  具体的には、1の第1パラグラフの後半以降の部分については、基本的に現行の通達 に書かれていたことを指針に盛り込んだ形になっています。そして1の第2パラグラフ の「例えば」で始まる部分については、例示として職種が異なる場合でも、入社後の取 扱いに区別がなければ一つの雇用管理区分とすべき例を示しています。  2として「募集及び採用」となっていますが、ここから先は、それぞれの雇用管理の ステージ別の記述に入っています。この部分については、全体を通じて、この指針を見 れば全体像がつかめるというような形にするために、これまでは通達に書いていたよう な用語の定義や説明を最初に記述して、そのあとに禁止される措置の例示を掲げるとい う形にしています。  まず、2の「募集・採用」についてですが、まず(1)で用語の定義を入れています。従 来の通達・法令解釈に基づくものです。(2)は禁止される措置の例ですが、イ〜ホまで柱 を立てて、さらにそれらの具体例を列挙する形にしています。なお、これらの例につい ても後ほど出てくる14の(1)のポジティブ・アクションとして行われる場合には禁止さ れるものではないので、その旨を各項目に明記しています。具体的には、2ページの(2) の3行目の「ただし」で始まる以下のような形でそれぞれの項目について入れています。  例示の柱の立て方ですが、大きく分けて男女いずれかを排除している例、設定条件を 異ならせる例、能力・資質の判断に当たり方法・基準が異なる例、いずれかを優先させ る例、異なる取扱いをする例といったような形にしていて、これは募集・採用以外の部 分についても、基本的にこのようなくくり方での例示をしています。それぞれのカテゴ リーの中の具体例については、現行の指針の中で挙げられている具体例を中心にしてい ますが、中には同じパターンのものをまとめて一つに記述したり、近年では見られなく なった事例を落としたり、逆に近年見られるものを新たに起こしたりしたものもありま す。例えば、イの排除していると認められる例の(4)の派遣労働者にかかる事例というの は、今回新たに加えています。基本的には現行の指針の事例を整理し直したものと考え ていただいて結構です。  3の「配置」は、今回の法改正を受けて「業務の配分及び権限の付与を含む」として おり、(1)の定義部分の後段に、業務の配分・権限の付与についての定義を新たに加えて います。3ページの下から2行目の「業務の配分」の定義ですが、次の4ページの1行 目に、業務の配分について「日常的な業務指示は含まれない」としているのは建議を受 けた中身です。(2)の具体例のイは排除する例、ロは条件を異なるものとする例、ハは方 法・基準を異なるものとする例、ニは優先する例、ホは業務配分での異なる取扱いで、 これは従来なかったものです。女性は内勤のみとする例、通常業務に加え雑務を行わせ ることとする例を挙げています。ヘについても権限付与について新たに起こしたもので す。買い付け額の設定を異ならせる例、新規顧客等について権限を与えない例を挙げて いますが、これらは建議に掲げられた例を盛り込んだものです。トは配置での異なる取 扱いの例です。  6ページの4「昇進」についても同じ構造で記述しています。  次に、8ページの5「降格」ですが、これも今回の改正で新たに盛り込まれる部分で す。まず、定義付けで「上位の職階から下位の職階への移動であり、昇進の反対の措置 である場合と昇格の反対の措置である場合の双方が含まれる」としています。例示につ いては、男女いずれかのみを降格させる例、条件を異ならせる例、方法・基準を異なら せる例、いずれかを優先して降格させる例を挙げています。  9ページの6「教育訓練」についても、現行通達の規定の定義を書いた上で例示を並 べていますが、基本的に現行指針の中身と変わらないものです。  10ページです。7「福利厚生」は、現行指針では指針の対象に含まれていないので新 たに起こしたものですが、(1)で、わかりやすくするために対象となる福利厚生の措置を 均等則に沿って列挙して書き込んでいます。(2)の禁止の例示は、排除している例、条件 を異なるものとする例をそれぞれ挙げています。  8の「職種の変更」についても、今回の改正で新たに盛り込まれる部分です。まず用 語の説明、それから禁止される措置の例示ということで、イは排除している例で、職種 変更の対象を制度上あるいは事実上男女いずれかのみとすること、一定の職種のみへの 変更の対象としかしないことなどが例示されています。ロは職種転換に当たっての条件 を異ならせる例で、男女いずれかのみに対して、子の有無や勤続年数・資格取得・研修 実施あるいは上司の推薦などについて異なる条件設定をすることなど。また、ハは能力・ 資質の有無の判断に当たって、方法・基準を異ならせる例です。試験の合格基準や評価 の水準を男女で異ならせること、どちらかの性に試験の受験を奨励すること、試験を免 除することなどが挙げられています。ニは優先する例、ホは男女異なる取扱いで、リス トラに当たって、女性のみ条件が劣る職種変更の対象としたり、異なる職種に転換させ たりといった例などを挙げています。  9の「雇用形態の変更」も今回の改正で新たに入る部分ですが、これもおおむね同様 のパターンでの記述となっています。  14ページの10「退職の勧奨」も改正に伴い新たに入る部分ですが、男女いずれかの みを退職勧奨の対象とする例、退職勧奨の条件を男女で異ならせる例、方法・基準につ いて異なる取扱いをする例、男女どちらかを優先して退職勧奨する例を挙げています。  15ページの下の方になりますけれども、11「定年」については、男女で異なる取扱い の例として、定年年齢の引き上げを行う際に、厚生年金の支給開始年齢に合わせて男女 異なる定年を定めることというのを挙げていますが、これは現行通達によって既に禁止 されるものとしています。  16ページの12「解雇」についても、定義をした上で他の部分と同様のパターンで例 示しています。  13は「労働契約の更新」ですが、これも新たな事項です。(1)の定義で、期間の満了 に際して、従前の契約と基本的な内容が同一である労働契約を締結することとしていま す。例示としては、排除している例として経営合理化に当たって女性のみを雇止めする こと。条件を異ならせる例として、女性のみ既婚であることや子を有していることを理 由として雇止めをすることの他、男女いずれかについてのみ労働契約の更新回数の上限 を設けることを挙げています。方法・基準を異ならせる例、優先させる例についても他 と同様の例示をしています。  17ページの下の所の14ですが、これは「法違反とならない場合」についての記述で す。(1)は、いわゆるポジティブ・アクションについては法第5条及び第6条の違反とは ならないという中身です。冒頭で「2から4まで、6、8及び9に関し」とあるのは、そ のあとの部分に列挙しているイ〜ヘに対応するもので、募集・採用、配置、昇進、教育 訓練、職種変更、雇用形態の変更に当たるものです。降格、福利厚生、退職勧奨、定年、 解雇、労働契約の更新については、ポジティブ・アクションの手法としては想定し難い ということから除いたものとなっています。女性労働者が男性労働者と比較して相当程 度少ないという記述がありますが、この基準としては現在通達で4割という数字を示し ています。(2)は、これまでの指針では適用除外としていたもので、このうち、イは表現 の真実性等の要請によるものです。防犯上の要請、宗教上・風紀上の必要性といったよ うな形で、その職務の性質上、男女どちらかでなくてはならない必要性が特に認められ るというようなものをひとくくりにしています。ロは、労働基準法上の女性に対する就 業制限、あるいは今回は男性に対する差別も禁止されたということに伴い、従前はなか った助産師の例を入れるために保健師助産師看護師法というものが入っています。そう した制限によって、そのような業務については男女どちらかでなくてはならないと認め られるものがロです。それから、ハは、例えばイスラム諸国などで風俗・風習の違いで、 どうしても一方の性でなくては能力を発揮し難いような場合ということで、いずれも現 行の取扱いと変わらないものとなっています。  次の20ページの第3は「間接差別」についてです。間接差別については、国会での 審議結果を踏まえて、(1)の定義の部分についてかなり書き込んでいます。(1)は「雇用の 分野における性別に関する間接差別とは」として、以下法律に書かれた内容を書き下し ています。三つの要素があり、(1)として「性別以外の事由を要件とする措置」で、(2)「当 該要件を満たす男性及び女性の比率を勘案すると実質的に性別を理由とする差別となる おそれがあると考えられるもの」を(3)「合理的な理由がある場合でないときに講ずるこ と」という形です。(2)では、これをさらに噛み砕いていて「性別以外の事由を要件とす る装置」とは、性別に基づく措置ではなく、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等に 基づく措置であること。「当該要件を満たす男性及び女性の比率を勘案すると実質的に性 別を理由とする差別となるおそれがあると考えられるもの」とは、当該基準等を満たす ことができる比率が男女で相当程度異なり、他の性の構成員と比較して、一方の性の構 成員に相当程度の不利益を与えるものであるとしています。この辺りの書き振りは、建 議の記の3にある表現を受けたものとなっています。「合理的な理由がある場合」とい うのは、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行 上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に 必要である場合等をいうとしています。その上で、(3)において法第7条の構成を書いて います。すなわち均等法上の各雇用管理のステージに関する措置であって、性別以外の 事由を要件とし、当該要件を満たす男女比率を勘案すると、実質的に性別を理由とする 差別となるおそれがあるものを、まず厚生労働省令で定め、それらについては合理的な 理由がある場合でなければこれを禁止するというものであるということを書き、改正後 均等則に定める三つの措置を列挙しています。  21ページの2ですが、これは募集・採用におけるいわゆる身長・体重・体力要件です。 (1)では、まずどのようなものが募集・採用に当たって身長・体重・体力要件を選考基準 としていると認められるものとなるのかを例示しています。身長・体重・体力要件を満 たしている者のみを対象とする、複数の基準の中にそうした要件が含まれている、ある いはそうした要件を満たしている者については平均的な評価で採用するけれども、それ 以下であれば特に優秀な場合に採用するといった例を掲げています。(2)では、さらにそ うしたものに合理的な理由がないと認められる例を示しています。ここは、いわば禁止 されるものを例示した形になっていて、この形式は直接差別の部分の例示の形式を踏襲 したものとなっています。例えば、業務を行うために必要である以上の筋力を要件とす る。また、設備・機械等が導入されており、通常の作業では筋力が必要でないにもかか わらず要件を課している。また防犯が本来の目的ではない警備員職務であるにもかかわ らず体力要件を課すといったことを並べています。ここは、(2)の冒頭にも書いてありま すが、もとよりこれらについては事案ごとに総合的な判断が必要となるものです。  22ページの3は、コース別雇用管理における総合職の募集・採用に当たってのいわゆ る全国転勤要件です。(1)では、総合職の判断に当たっては形式ではなく業務の内容等の 実態に即した判断が必要である旨を記述しています。(2)では2と同様に、まずこうした 要件を課していると認められる例を挙げて、(3)でさらにこうした要件を課すことに合理 的な理由がないと認められる例を挙げています。まず広域にわたり展開する支店・支社 等がなく、これを展開する計画等もない場合、これは建議の記の3で合理的な理由がな い例として挙げられたものです。さらに、広域展開している支店・支社等はあるが、長 期にわたり特別な事情がある場合を除いて、転居・転勤の実態がない場合、広域展開す る支店・支社等はあるが、異なる地域の支店・支社等で管理者としての経験を積んだり、 生産現場の業務を経験したり、地域の特性を経験したりすること等が幹部としての能力 の育成・確保に特に必要であるとは認められず、組織運営上、転居を伴う人事ローテー ションが特に必要であるとは認められない場合というものを例示しています。  次の4は、昇進に当たり転勤要件を課すというものです。これもまず(1)で、そのよう な要件を課していると認められる例として、昇進に当たり、転勤経験者のみを対象とす ること。複数ある昇進の基準に転勤経験を含むこと。転勤経験がない者は、特に優秀で ないと昇進の対象とならないこと。転勤経験者は昇進試験の免除をすることというのを 挙げていて、(2)で合理的な理由がないと認められる例として、本社の課長の昇進に当た って、業務を遂行する上で異なる地域の支店・支社における勤務経験が特に必要とは認 められず、転居を伴う人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められな い場合。ある支店の管理職となる上で、異なる支店での経験が特に必要であるとは認め られない場合というのを例示しています。いずれについても、個別・具体的な事案ごと に判断すべきものであります。  25ページの第4は、改正法第9条の「婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い の禁止」にかかる部分です。1は、改正法第9条第1項の「婚姻・妊娠・出産を退職理 由として予定する定め」にかかる部分で、これは現行の通達とほぼ同様の内容です。2 は、法第9条第2項の「婚姻したことを理由とする解雇」についてです。3は、法第9 条第3項の「妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益な取扱い」で、(1)で妊娠・ 出産に関する事由で、改正後の均等則第2条の2で定めるものを理由として、不利益取 扱いをすることが禁止されるという旨を記述して、「理由として」とは、妊娠・出産等と、 不利益取扱いとの間に因果関係があることをいうとした上で、改正省令に掲げる九つの 項目を列挙しています。なお、(1)の4行目から6行目のカッコ内に書いてあります、派 遣法の規定は、均等法第9条第3項の適用に当たっては、派遣先も雇用する事業主とみ なすとする規定です。リにつきまして「妊娠または出産に起因する症状」というのが新 しく出てきた言葉ですので、26ページの中程に定義を書いています。「つわり、妊娠悪 阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠または出産をしたことに起因して妊産婦に生 じる症状をいう」としています。 (2)は解雇その他の不利益な取扱いの例示です。イが解雇。ロ いわゆる雇止め。ハ  あらかじめ明示された契約更新回数の上限の引下げ。二 労働契約内容の変更の強要。 ホ 降格。へ 就業環境を害すること。ト 不利益な自宅待機。チ 減給または賞与等 における不利益な算定。リ 昇進・昇格の人事考課における不利益な評価。ヌ 不利益 な配置変更。ル 派遣先による役務の提供の拒否。11項目を例示していますが、このう ちリとル以外の項目は、既に育児介護休業法で休業の申出や取得を理由としてこれを行 う場合には不利益取扱いとされているというものです。  27ページの(3)は(2)に挙げました不利益取扱いの例につきまして、妊娠・出産等 を理由とした不利益取扱いに該当するか否かについての判断基準を示しています。ここ に関しましては、育児介護休業法において休業の請求や取得に当たりましての不利益取 扱いというものが既に禁止されていることとのバランスを考慮した内容としていまして、 また、建議の「記」の4におきまして不利益取扱いの判断に当たっての考え方の例とし まして、休業期間を超えて働かなかったものと取り扱うこと、通常の人事異動のルール から十分に説明できない取扱いを行うこと、他の疾病の場合の休業等と比較して不利に 取り扱うこと等が不利益と判断されるものであると示していただいたことを踏まえて記 述をしています。  まずイからへまで、すなわち解雇から就業環境を害することまでにつきましては、妊 娠・出産等を理由としてこうした取扱いを行うことは直ちに不利益な取扱いに該当する と判断されるとした上で、このイからへまでに該当するか否か。またトからルについて、 不利益な取扱いかどうかということを判断するに当たっての留意事項としまして、以下 のイからトまで7点を記しています。  イは(2)の2の労働契約内容の変更の許容に関して「労働者の表面上の同意を得てい たとしても、これが真意に基づくものでないと認められる場合にはこれに当たる」とし ていますが、これは現行の育児介護休業法の指針と同じ内容です。  ロは(2)のへの就業環境を害することの例示です。ハは産前産後休業の終了予定日 を超え、あるいは医師の指導に基づく休業期間を超えて休業することを強要することは 不利益な自宅待機に当たることとしておりますが、これも育児介護休業法の指針との並 びをみたものです。一方、いわゆる軽易業務への転換請求に当たりまして労働者が転換 すべき業務を指定せず、転換すべき軽易な業務がなく、やむを得ず休業するという場合 もありえますが、そのような場合におきましては、従来から労働基準法の解釈としまし て、事業主は軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではないとされているの で、ここでいう「不利益な自宅待機」に当たらないと書いております。  二は(2)のチの言及をし、または賞与等において不利益な算定を行うことの例です。 (1)は実際には労務不提供や労働能率低下もないのに、妊娠出産等のみを理由として減額 するというのはいうまでもないことですが、不利益取扱いになるということ。それから (2)は育児介護休業法の指針と同様の中味です。(3)は賞与または退職金の支給額の算定に 当たり、不就労期間や労働能率の低下を考慮する場合には、疾病等による場合と比較し て不利に取り扱うということが不利益取扱いに当たるということです。それから(4)は不 就労期間や労働能率の低下の程度を超えた取扱いをすることは不利益取扱いになるとい うことです。  ホは(2)のリの昇進・昇格の人事考課における不利益評価に関しまして、妊娠出産 等のみをもって不利な人事考課を行うことは不利益取扱いであること、また不就労期間 や労働能率が低下を考慮する場合には、疾病等による場合と比較して不利益に取り扱う ことは不利益取扱いであるということを書いております。  へは(2)ヌの不利益な配置の変更につきまして、種々の事情を総合的に比較考量の上 判断すべきものとしつつ、例えば通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職 務、または就業の場所の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度経済的または精 神的な不利益を生じさせることはこれに該当するとした上で事例をあげております。業 務遂行能力があるにも関わらず労働条件・通勤事情等が劣ることとなる配置変更を行う こと。業務遂行が困難でありほかに適当な職務があるにもかかわらず、特別な理由もな く、労働条件・通勤事情等が劣ることとなる配置変更を行うこと、また産前産後休業か らの復帰に当たって、原職または原職相当職に就けないこと、この三つを例示として挙 げています。  最後に、トでは(2)ルの派遣先が妊娠した派遣労働者の役務の提供を拒むことにつ いて、派遣契約に定められた役務の提供ができると認められるにもかかわらず、派遣先 が派遣元に労働者の交代を求めること、あるいは当該労働者の派遣を拒むこと、この二 つを例示しております。以上が改正法第10条第1項に基づきまして、差別の禁止等に について定める指針の案です。  別紙の3をご覧いただきたいと思いますが、これは改正法第11条第2項の規定に基 づき定めることとなります、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置についての指針案」です。  これは法改正によりまして、セクシュアルハラスメントにかかる事業主の雇用管理上 の配慮義務が措置義務になったこと、またセクシュアルハラスメントについても、男女 双方を対象とする規定となったことを受けて、現行の指針を見直すものです。全体とし ては、書きぶりにつきまして女性労働者のみを対象とした書き方になっていたものを、 男女双方について読めるように整理しており、措置義務となったことに伴って、どのよ うな措置を事業主がとらねばならないのかについて、従来よりも明確にわかるように整 理・整頓するとともに、例示も増やしてわかりやすくまとめたつもりです。  また基本的な内容については、これまでの指針やそれに基づく啓発指導に沿ったもの となっていまして、従来と大きく変わるものではありませんが、当分科会での審議の内 容も踏まえて充実させたところもあります。  最初の「1 はじめに」は、この指針を定める趣旨を書いた部分です。  2はセクシュアルハラスメントの内容として、(1)で環境型と対価型を示し、(2)で 「職場」の定義をしていますが、これは従来どおりのものです。(3)は新たに加えたも ので「労働者」には正規労働者以外も含まれるということを明記して、派遣労働者につ いても配慮した記述を加えています。(4)、(5)、(6)も従来どおりの内容です。  3ページの3は、講ずべき措置の内容となりますが、まず(1)で現行指針と同様、方 針の明確化及びその周知・啓発というものを挙げています。講ずべき措置の内容として は大きく二つに分け、まずイで、セクシュアルハラスメントの内容、及びこれがあって はならない旨の方針を明確化して周知・啓発すること。ロで、行為者については厳正に 対処する旨の方針、及び対処の内容を規定し周知・啓発することとして従前よりも具体 性を持たせています。措置の例示についてもこれまでのものより若干具体的に書いてい ます。  「(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」においては、同様にイ として、相談窓口をあらかじめ定めること、ロとして、相談窓口の担当者が、幅広に対 応することも含め適切に対応できるようにすることとしていまして、人事部門との連携 や担当者がマニュアルに基づき対応すること、また最近よく行われている外部機関への 委託等も例示に含めています。  (3)の事後の迅速かつ適切な対応につきましては、建議の記の6において事実関係の 確認をし、事実関係が確認できたときにはあらかじめ定めたルールにのっとり対応すべ きこと。セクシュアルハラスメントにかかる紛争を調停に付すことも事後措置の一つと なること等を示すことが適当であるとされたことを盛り込んだ内容になっております。  まずイとして、事実関係を迅速かつ正確に確認することとしていまして、当事者双方 や第三者からの事実確認、そして建議にあったように、調停を含む第三者機関への処理 を委ねる、そういうことを例示しております。  次にロとして、事実関係が確認できた場合における行為者及び被害者への措置を適正 に行うこととして、(1)のロにおいて定められている規定等に基づいて、行為者に対し ては必要な措置を、また被害者についても、引き離しのための配置転換、また謝罪等適 切なケアをするということなどを例示しています。さらにハとして、事実確認ができな かった場合も含めて、改めて方針の周知・啓発などを行い、再発防止策をとるとしてお ります。  このように現行指針に示された措置をより明確化し、例示もこれまでの事例も踏まえ て具体的に書いたところです。さらに6ページ(4)では(1)〜(3)までと合わせて講ず べき措置として、相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な措置を講じる とともに、その旨を周知すること、また相談をしたことや事実関係の確認に協力したこ と等を理由として不利益な取扱いをしてはならないことを定めて、これを周知すること などを定めています。  これらも現行指針に項目としては挙がっていましたが、今回は例示も加えて、より具 体的な措置内容がわかるようにしました。以上で説明は終わらせていただきます。 ○横溝分科会長  はい、ありがとうございました。ずいぶん中身がたくさんありまして。  それではただ今から事務局からいただきました報告についてご質問等があればお願 いしたいと思います。 ○龍井委員  何点か、またがる所ですが一括の発言でよろしいですか。 ○横溝分科会長  そうですね。一括とはどの程度ですか。 ○龍井委員  今の全項目です。分けますか。 ○横溝分科会長  何点ぐらいありますか。 ○龍井委員  大きく省令とそれから指針の三つありましたので、一応それぞれについて若干のコメ ントをしたいと思っているのですが。 ○横溝分科会長  その方針どおりで伺ってみましょう。 ○龍井委員  とりあえず一通り、まず一つはですね。 ○横溝分科会長  皆さまのわかりやすいように、例えばどこの何と言っていただければ。 ○龍井委員  省令につきましては、そもそも私どもは不本意だという見解を示させていただきまし たが、この分科会で、あるいは法律の中でも当面この3点ということになりましたので、 最初にお聞きしたいのは附帯決議の中で幾つか示されました間接差別をめぐって、例え ば順番で言いますと必ずしもこの省令の3点に限定されないこと、司法判断の場でも違 法となる可能性があること、5年後修正を待たずともその追加見直しをしていくことが 議論されたわけで、最初の質問はそうしたことが省令・指針・通達あわせてどういうふ うにそれが消化されるのか、担保されるのかということをお聞きしたいと思います。  少し各論に入ります。指針の方ですけれども、最初の雇用管理区分。これも分科会の 中で私どもは一貫して雇用管理区分の設定自体が問題ありと指摘しましたけれども、今 回、国会議論を受けて、あるいは建議を受けて単なる形式ではなくということで、新た な考えが示されました。示されましたと申し上げたいのですが、実はその単なる形式で はなくという表現にとどまっていまして、この表現では、この間国連の差別撤回委員会 等々から、厳しく指摘を受けていた点からしますと、とても十分とは言えないのではな いか。「例えば」というところで果たしてどれだけ今後補足できるか私どもも判断したい と思っています。例えばこの国会の中でも問題になりましたような、いわゆる正規、非 正規、あるいはそのファジーな部分にあります、いわゆるフルタイムパート、擬似パー トと言われているものが、果たして単独の雇用管理区分とみなされるのか。私どもは決 してそうではないと思っているのですが、そうしたその雇用管理区分の例えばというと ころでどれだけ広げていけるかを私どもも判断したい。結論的に言うとこの表現ではき わめて不十分ではないかと思っています。時間がなくて全部網羅できないと思いますの で、かいつまんで後を申し上げます。  次に間接差別に移ります。20ページに定義が示されています。今法律の案文に沿って という説明があったのですが、それは(3)の第7条のところで、改めて今回の法律で はという説明になるだろうと想定をしますと、この(1)のところは第7条というより も広い概念、これも国会で何回も発言されていたことの確認ということでいうと、特に 3行目4行目、恐れがあると考えられるものというのは、実は省令の規定ぶりとしての 説明の表現ですので、これは大臣あるいは局長が国会で再々ご答弁されていましたよう な、答弁をそのまま引用させていただくと、「外見上は性中立的な基準等が、他の性の構 成員と比較して一方の性の構成員に相当程度の不利益を与え、しかもその基準等が職務 と関連性がない等、合理性・正当性が認められないもの」という、きわめてある意味で はシンプルなことを説明されていましたので、それにぜひ差し替えていただけたらと思 います。  もう一つは合理性のところ、これも20ページでは第7条にいく手前の一般的な合理 性。後ほど各項目についての合理性が具体的に示されるという構成になっています。こ の(2)の前段のところでは、この必要があるもの、後ほど具体的に出てきますけれども、 これが決して単に経営上、あるいはコスト上そういう問題ではないのだという考え方は ぜひ明記をしていただきたいと思います。  続いて各項目の考え方のところです。具体的な事例の中で特に21、22ページ、3と4 のところ、ここでは確かに職務との関連性が特に必要なものと再々強調されています。 この点は私どもも評価したいと思っております。繰り返しますが、この必要性の中身が 例えば人員のリストラの延長でするようなことがあってはならないといった配慮をぜひ 付加していただきたい。そして省令のところでは総合職という言い方はかなり別の言い 方に読み替えられております。ここで言っている「総合職」「一般職」というものが、必 ずしもその名称にとらわれるものではないという理解でいいかどうかは確認させていた だきたいと思います。  次に25ページ以下の妊娠・出産です。これは全体を通じて申し上げますと、分科会 で再々強調させていただきましたように、確かに育児介護休業なみの不利益取扱いとい うことでの基本は、そのとおりだと思いますけれども、少なくともぜひ、強制休業であ る産後休業の扱いというのが別だという配慮はしていただきたい。いろいろなところに 出てきますがそれを基本線として押さえていただきたい。  もう一つは、配置の話がいくつか出てきます。26ページでいうと上の方からホのとこ ろにあるような、軽減な業務の配置転換の請求、これはあくまで本人の希望ということ ですし、また後程出てくるような不利益な自宅待機も含めて、いわゆる一方的にされる 配置転換と多分両方あるのだと思います。ですからその辺はぜひうまく仕分けをしてい ただいて、わかりやすくできるようにしていただきたいと思います。  もう一つの論点が、26ページ1番下の部分、減給ないし賞与の問題。これは先ほど話 をした、特に産後休業の扱いといった場合に、当然これは不就労区分を就労期間分を超 えてというものはまずいということなので、逆に言うとその期間はノーワークノーペイ だと27ページの下の(2)です。果たしてそれが一律にいえるかどうか。私どもとしては 繰り返しますけれども、産後休業の扱いについては別途配慮すべきだと申し上げたいと 思います。  それから一時金の問題。これもつい先般の桐朋学園事件の判決でいわゆる一時金算定 基礎というかその出勤率90%という要件に、産後休業などが欠勤扱いされて不支給にな ることは違法だと。どこまで見るかということについては高裁を巡ってさらに争われて います。まだ結論はでていないと把握していますが、少なくとも不支給については違法 ということが明確に示されていますので、ぜひこの一時金賞与の扱いについては配慮さ れた書きぶりにしていただきたいと思っております。  次の大きな論点のセクシュアルハラスメントです。これも総論的に申し上げますと先 ほど説明がありましたように、現行のもの、現行の配慮義務をベースに措置義務に変え たと。それはもちろん最低必要だということは確認していることです。逆に申し上げま すと既に先だって措置をしているところ、ここについては新たな義務は生じないとなる わけですけれども、果たしてそうなのだろうか。つまり建議の中でも指摘をされていま すような、いろいろな形でセクシュアルハラスメントが出ている、しかも減っていない、 あるいは問題が深刻化しているという実態を見ると、現行の配慮義務が措置義務になる ということだけではなくて、今の措置そのものが講じられれば問題が解決するかという とむしろそうではないという認識で、今何が問題かを改めて洗い出して、できる限り先 ほど充実という指摘がありましたように、今回の指針見直しで充実をしていただきたい のがまず総論的なことです。  具体的に申し上げますと、連合も実は地方連合を通じて相談をやっているのですが、 ここで後ほど申し上げます定義の職場が出てまいりますけれども、実際上は場所の問題 というよりは、いわゆる上下関係、あるいは主要雇用関係その境界線が非常にあいまい になってくる。いわゆるプライベートと職務の境目がわからないようなところでむしろ 問題が多発をし、また問題の解決が長引くということがありますので、ここは場所の問 題もさることながら、関係といいますか権利の濫用が行われていないのかどうかが一つ の着眼点ではないか。もう一つは、措置の方には後ほど関連してきますけども、窓口の 設置あるいは相談体制。これは果たして措置が講じられたらすむのかというと決してそ うではなくて、例えば措置がされたとしても、相談の受付の実績もない。あるいは相談 されても解決の実績がないというようなことでは困るわけで、そういう意味あるいは、 もう一歩突っ込んで言うと相談窓口のところで、さらなる事実確認という形をとった、 さらなる二次被害といったようなこともむしろあるわけで、そうしたことについてどう いう手立てを講じられるかという視点が大事だと思っています。  という点で具体的に申し上げますと、まず定義。ここはいま申し上げた業務というも のをもう少し業務に関連するというような幅を広げていただけないかということと、こ こでは対価型、環境型、従来の指針でもこうなっています。どうせ例示をされるのであ れば、事業主だけではなくて上司も含んだもっと幅の広い、現実に起きている実態に対 応すべきだと思いますし、環境型のところで言えば果たして労働者の抗議がなければだ めという要件は果たして現実にそう記しているかどうかといった細かい点があります。 少し基本的な問題は両方ともそのイロハの中身を見ますと、最終的に業務への影響ない し能率といったところがむしろ結論部分になっていて、それがあろうとなかろうと、そ の言動ないし対価型のことを行えばそれ自体が権利侵害であり名誉を傷付けるというと いうことをきちんと取り出すべきではないかということで、少しそもそも論の議論にな りますけども、ぜひそういう点を配慮すべきではないか。  ただ具体的な手立てのところで申し上げますと、先ほどこの問題意識として、第三者 機関の問題が出されています。とても私どもは重要なことと思っていますけれども、実 際は委託だけではきわめて不十分だと思います。もちろん規模が小さくなれば委員会と いっても、ほとんど当事者、つまり上司があるいは事業主が当事者であれば、ほとんど その方が委員会ということもあるわけで、そういう意味でも丸ごと委託してしまうわけ ではなくて、どれだけ専門家の方あるいはアドバイザーの方が事実認定からいろいろな アドバイスの段階でいかに関与するかという、関与する仕組みをぜひつくっていただき たい。もっと細かく言えば、相談体制の中でいえば男女の相談員がちゃんとそろってい たり、相談の秘密が守られるような場所が用意されたりと、きわめて実務的なことにつ いても配慮すべきではないかと思っています。  もう一つは先ほど申し上げたことで事実認定の段階で、どれだけ優越的地位の乱用が されたかどうかにぜひ着目をしていただきたい。これはよく斡旋の中に入って非常に大 きな誤解があると思うのは、非常に深刻な問題であったときに場合によっては均等室の 方ですら、どうして断れなかったのかと。そんなことだったら早くノーというべきだっ たでしょうと。言えれば何も問題ない。実は1番そこで問題が起きていて先ほど申し上 げた職務との境目が、ファジーだといったのは場所の問題だけではなくて関係としてそ の上下、もともと対等ではないということで起きる問題についてどれだけ配慮できるか。 あるいはその断ったことによって逆に仕事の面あるいは公私いろいろな面に当たって差 別を受ける、ハラスメントを受ける、といった問題をどれだけ対象に挙げていけるかと いうのは実は実態に即した問題でありますので、ぜひその点を補強していただきたい。 あと2点です。  事実認定があった場合とそうでない場合について仕分けをしていただいて、それはと ても問題としては非常に重要な指摘だと思います。細かい点ではありますけれども、事 実確認ができた場合の配転の話を出されていますけれども、これもいろいろな事例を私 どもも受けたりヒヤリングをさせていただいたりする中で、結果的に被害者の側が配転 ないしゆくゆくは辞めざるを得ないといったことは実態としてあります。従って、もし もこの前段で少なくとも被害者、加害者という特定がされた段階であるならば、異動に ついては加害者の側ということはできないだろうか。  それからもう一つは、二つ目に申し上げました被害者、加害者が特定できない段階。 実はこれでトラブルが起き、長引いて、しかも実を言うと休まざるを得ないという例が 続発しているわけです。ここではそういう場合でも配慮すべきだということが示されて いますけれども、少なくともまだ加害者か被害者か特定できない段階でも当事者同士、 そこでのいわゆる引き離しといいますか、接しなくてもいいようにできる環境作りをす るといったことが、一律ではなくて必要に応じてでも構わないですけれども、そういう ことができないだろうかと考えますと、もし可能であれば、多分新たに措置義務をされ たことによっては、とてもそこまで義務化できないといった、いろいろな問題が出てく ると思います。私は、改めて新たな配慮義務を起こすことも視野に入れて漏れがないよ うに、あるいは今起きている現実に対応できるようにしていただきたい。少し時間を長 く掛けましたけれども以上の点でございます。 ○横溝分科会長  それでは全部お答えになりますか。鈴木室長、お答えになりますか、はい。 ○鈴木均等業務指導室長  質問と意見がありましたので、まず質問として答えられる部分からお答えします。  最初に省令のところです。国会でいろいろと議論、附帯決議等もありまして、この辺 りをどう反映するのかですけれども、まず国会で、附帯決議が付いておりますが、これ 以外にも大臣が答弁申し上げた中で、まずは間接差別につきましての定義・法理につい ては指針に盛り込みますとのことで、まずこれについては今回1の(1)のところで盛り込 んでいる部分です。それからこれについての周知につきましては、間接差別はこの省令 で規定するもの以外にも存在しうること、それから司法判断として違法とされる可能性 があること、厚生労働省令については機能的に見直しを図ることにつきましては、まず は通達で記載を致しまして、間接差別の概念とともにパンフレット等において周知を図 ってまいりますという答弁を申し上げております。  それからさらにいきまして、研究会報告で出ました7項目など、3つの省令の事例以 外につきましてはどうかという質問がありましたので、これについては解説書等におき まして参考例として紹介していきたいという答弁を申し上げております。こういったこ とに沿いまして、この間接差別の省令で定めました3つ以外につきましての周知・啓発 を図ってまいりたいと思っております。  間接差別についての定義のところで、局長等との答弁とは異なるではないかというこ とで意見がありましたけれども、これにつきましてはこの指針の審査の過程におきまし て、男女の女性の比率を勘案するということ勘案した結果、これについて比率のバラン スの悪いとなったものについては、これは実質的な差別となるおそれがあるものという ことで、法の7条の構造ができております。したがいましてこれは比率が違う、すなわ ち実質的な差別となるおそれがあるものイコールであろうということで、これについて は法律の表現を引用しようというものであります。  それから合理性の(2)の3パラグラフ目のところで、経営上、コスト上のものについて は合理性には含まれないということの意見いただきましたけれども、この部分につきま してはご存じのとおり、(1)、(2)は私どもの法律の解釈ではありません。一般的な定義を 書いているものですので、こういった一般的なものについての判断は裁判所が行うこと になりますので、私どもがそこまで立ち入って規定していないというものです。  それから「総合職」、「一般職」は名称によるものではないというところを確認したい とのことですが、これはもちろん名称によるものではなく、22ページの3の(1)にも書 いてありますとおり、総合職に該当するかについては、内容の実態に即して行うもので あるので、当然一般職につきましても同じです。  それから妊娠・出産の関係で産後休業は強制休業ですから、これについては別だとい う指摘をいただきましたが、これにつきましては建議の段階でも幾つか議論がありまし たが、これを別にするという結論はいただいておりませんでしたので、私どもは別にせ ずにこの指針を作りました。意見がありましたら議論いただきたいと思っております。  それから配置転換について本人の希望かそれとも一方的なものかというのもありまし たけれども、これは当然本人の希望でしたら、これは通常不利益とは判断されないもの でありますから、これにつきましてはこのままの表現であっても、本人の希望によって 配置転換する場合には不利益にはならないと解釈上なると思っております。またそれに ついては例えば育児・介護休業法でもそういうケースがありましたら同じような判断を するのではないかと思っております。これは差別とは違いまして有利に働くものは不利 益とは言いませんので、そこは不利益という言葉の中で読み取れるのではないかと思い ます。それからノーワークノーペイの話で産後休業は別だという話も先ほどのものと同 じです。  セクシュアルハラスメントの関係でありますが、いろいろと意見はいただきましたけ れども、内容につきましては議論いただきたいと思いますが、まず職場の場所の概念、 職場という言葉の概念かと思いますけれども、これにつきましては現行の通達でもこの 職場というものの定義につきましては、例えば勤務時間外の宴会等であっても事実上職 務の延長と考えられるものは職場に該当しますという解釈を示しておりますので、指摘 の方につきましては現行の職場という概念に入っております。指針上どう表現するかと いうことにつきましてはまた議論いただきたいと思います。  それから窓口の関係で相談実績、解決実績、それから二次被害等々ありましたが、実 績というのは相談があって初めて生じるものでありますので、それから解決実績でいい ましてもセクシュアルハラスメントはなかなか解決が難しいかと思いますので、そこま で義務をかけるのはいかがかなというところもありますけれども、二次被害につきまし てはセクシュアルハラスメントの指針の中でも適切に対応するためのマニュアルを定め たり、こういった中で当然二次被害は駄目だということを気をつけたりというものも記 載されると思われますし、そもそも二次被害を起こしたらそれ自体が単体のセクシュア ルハラスメントですから、その二次被害を起こしたセクシュアルハラスメント自体に対 してもこの指針がかかってくるという形になろうかと思っております。  それから対価型のところで事業主ではなくてもっと広くというようなこともありまし たけれども、例えば2ページ目の(5)のイのところでは確かに事業主と書いてありますけ れども、ロのところなどは上司と書いておりまして、別に特に事業主に限っているわけ ではありません。これが事業主と書いてあるのはよく事業主が起こす例が多いので、そ の代表例として挙げているものなので、ここはあくまでも例示ということでとらえてい ただけたらと思います。  環境型のところで労働者が抗議をしているにもかかわらずとありますけれども、これ は最初に指針を定めたときの議論の中でも、そもそもセクシュアルハラスメントは感じ 方が人によって違うので、親愛の情を込めた場合にもセクシュアルハラスメントと言わ れるのはどうかということもありましてこう表現をしていますが、少なくとも抗議をし ている場合にはそれをさらにやるということはセクシュアルハラスメントであろうとい う例として挙げているものだと理解いただきたいと思っております。  さらに窓口の委託等々新しく項目を入れておりますけれども、この辺どこまで細かく 書くかということもありますが、事業所におきましても、大きい事業所、小さい事業所 がありますので、どこからどこまで窓口として作れるものか、または外部に委託できる ものか等々違いますので、どこの事業所でも対応できるような代表例ということでこの 三つを挙げていると理解いただきたいと思っております。  それからあと、事後措置としまして引き離しなどにつきましても、また新たな配慮義 務とありましたが、新たな配慮義務を新設しようとしますと、法律化していない部分で 指針だけでは難しいかと思いますのでその辺りに少し留意いただきたいと思います。と りあえずこちらからお答えできるのは以上です。 ○横溝分科会長  では事務局からの回答はそれでよろしいですか。 ○龍井委員  良くはないですけれども別にいいです。 ○横溝分科会長  とりあえずはそれでよろしいですか。  ではほかに意見は。はい、頂戴します、渡邊委員。 ○渡邊委員  今回の改正で多くの項目が盛り込まれたために、非常に分量が増えました。中小企業 の自社でこれを熟読できればわからないこともないと思いますけれども、非常に分量が 多いことにまず大変負担が重すぎるという感じがいたします。これは総論です。  それから具体的なことで言いますと細かいことになるかもしれません。5ページの表 現ですが、「こととする」と「ものとする」の使い分けをされていますが、どうもその語 尾を少しどちらでも「こととする」なら「こととする」でいいのではないかと、わかり ませんのでその辺を少し教えていただきたい。むしろ統一した方がいいのではないかと いうことが一つ。  それから26ページの妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いの(2)のホ 降格につい て質問したいと思いますが、従業員が妊娠・出産により労働能率が低下した場合、中小 企業ではそもそもコストが少ないので、大体本人を降格しないことは困難。その場合で もこの解釈で不利益の取扱いとなるのかその辺を少し質問したいと思います。  続いて27ページの下の方の(3)について質問したいと思います。例えば従業員が妊娠・ 出産で休業した場合、それから病気やけがで休業した場合と比較して不利益に取り扱っ ているかどうかを判断されるとなっていますけれども、現実には、例えば創業して数年 しかたっていない中小企業などは休業した従業員がいないケースも考えられる。その際 に不利益かどうかの比較する基準がないのではないか。この場合どういうような判断を すればいいのかということについて質問したい。  続いて19ページの(2)の募集・採用・配置・昇進について、業務の性格・性質などに よって男女双方に均等な機会を提供できない場合もあるとされているが、中小企業の間 ではどんな場合でも均等な機会提供が求められるものではないかと懸念する動きが少な くないため、指針の普及・啓発の際には合理的な理由があれば認められる点があること を合わせて周知をしていただきたいということです。  それから配置転換の全国展開です。転勤要件ですけれども、22ページのハです。書面 の計画だけではなく、よく社長の訓示や方針で実態があれば計画として認められると当 時の議論で言っていましたけれども、それで良いことを確認していただきたいと思いま す。  そのような点について少し質問方々伺いたい。 ○横溝分科会長  ではお願いいたします。 ○鈴木均等業務指導室長  最初の分量が多いというところにつきましては、これは大変申し訳ありませんけれど も、今回の指針の内容として、これまでは募集・採用・配置・昇進・教育のみでありま したものが、それ以外の直接差別全般プラス間接差別、それから妊娠・出産での不利益 取扱いと非常に範囲が広範になってしまいました関係上、分量が増えていまして、ただ、 項目ごとに見ますと、例えば募集・採用などの項目数は逆に減らしておりまして、全体 としてスリムにしようという努力はしておりますが、項目が増えてしまいましたのでこ うなっていることを理解いただきたいと思っております。  それから5ページのところで「こととすること」、「ものとすること」と単に「するこ と」とはありますが、これにつきましては従来の募集・採用の指針からの語尾の考え方 を踏襲しているものでして、もともと均等法というのは、事業所の方針があってその方 針を適用して男女を異なって取り扱うこと、これが均等法上の違反だとなっていますが、 この指針上その事例を書く場合にどこからどこまで書くかというところで、方針を定め てそれを適用するときに、方針を定める部分から事例として書いている場合には「もの とすること」、「こととすること」という書き方をしていまして、そうではなくもともと 方針があってそれを実際に適用する場面のみを事例として挙げているものは「すること」 という書き分けをしております。今回の指針についてはそれを踏襲して語尾を変えてい まして、これがわかりにくいということでしたら、それについても議論いただければと 思っております。  それから26ページの降格の部分ですけれども、中小企業では多分降格しないことは 困難だという意見かと思いますが、これにつきましては、もともと先ほどの課長からの 説明の中でも申し上げましたけれども、今回の不利益取扱いの指針の内容につきまして は、もともと育児介護休業の指針をベースに考えていまして、育児介護休業を取得した 場合でも降格させることにつきましては特に例外を設けずに、これについては不利益だ ということにしております。丸々休業して仕事をしていない場合には降格することは不 利益であって、出てきて働いている場合にはこれをさらに不利益に扱っても降格しても 構わないということは、非常にバランスを崩すと考えまして、降格をさせることについ ては不利益だという考え方を踏襲してこういう記述をしています。ただ降格をしない形 での配置転換、例えば同じ役職、相当職のところに横滑りで配置転換したり、私どもが よくやりますのが、例えば何とか付きみたいな格好で相当職のポストを設けまして実際 は軽易な業務をやっていただいたりするのは降格したことにはなりませんので、こうい った形の職を考えていただくことになるのかなと考えております。  それから休業をした場合の従業員がいないようなケースはどういう比べ方をするのか という質問になりますけれども、これにつきましてはもし仮に疾病等で休業した従業員 が出た場合に、どう取扱うかということを想定していただきまして、それも悪く取り扱 わないということでこの不利益の取扱いを判断するのかなと考えております。  5番目のところは確か要望だったと思いますので少し飛ばしまして、そのあと最後に 全国転勤のところで、これにつきましては間接差別の3の(3)のイの部分で展開する計画 等のところ「等」の中にどういうものが読み込まれるかということですけれども、これ については書面で計画を作っている場合以外にもこういう方針を例えば重役会議などで 立てて展開する計画がある場合、それから社長が「我が社は今後こういう計画で全国展 開をしていくのだ」という明確な方針を持っていた場合、書面に限るわけではありませ んということはこれまで説明してきたとおりです。以上です。 ○横溝分科会長  はいどうぞ、松井委員。 ○松井委員  まず冒頭で渡邊委員が申し上げたことと、全く同感であるということだけ申し上げた いと思います。課長からの説明も40分近くかかっており、企業の現場とりわけ小規模 の企業において、この中身をすべて理解してさらにそれを職場で法律違反することなく やっていくことは非常に難しいというか、まず理解するのが難しいのではないかという 感触を持ちます。確かに間接差別等が入ったこともあり長くなったという説明がありま したけれども、もし民間であるならば長くなる場合があったら、短くできるところは短 くするという工夫をします。これは基本的に事業主が講ずべき指針、事業主がこれを見 てどういう雇用管理をしなくてはいけないのかということを考えるためのものだと私ど もとしてはまず理解しておりますので、事業主が読みたくなるような、読んでもいいと 思えるような仕組みにしてもらうのがまず大変重要なのではないかと思います。そうい う意味からすると、項目としてもう少しまとめられるものはまとめることができないの かという気がいたします。特に異なる取扱いをしている例や排除している例など、いろ いろ事細かに書いて懇切丁寧であると言えばそういう感じがしないわけではないのです けれども、本当に指針で全てここまで書く必要があるのかどうか、場合によっては指針 ではもう少しわかりやすい簡明なポイントだけにしていく。いわゆるパンフレットやそ ういうもので周知を図っていくことが十分考えられるのではないかと思います。  その点で先ほど龍井委員がセクハラの指針のところで、この点は非常に不十分だとい ろいろと指摘がありました。指摘の点については、なるほどそういう点もあるのだろう と私は思うところも多々ありました。だからといってそれを本当に一応公文書となって いく指針に全部盛り込むのがいいのかどうかがもう一つ別の議論もあっていいのではな いかと思います。従いましてもう少し簡単にする仕組みがとれないものかと今日、説明 を伺っていてつくづく感じたところです。  もう一つは先ほどの「こととする」と「ものとする」という使い分けに対して、回答 が従来の考え方と変わっていない、あるいは従来の記述と変わっていないという回答で したけれども、特に今回、間接差別が新たに入って直接差別との違いが本来よく意識さ れた上で、事業主としては対応していかなくてはいけないと思います。従来からこの均 等法では、その差別意図を問うていることから、結果の平等を求めるものではなくて、 機会を男女平等に与えるのが原則になっていたかと思います。採用選考における男女の いずれかを優先して採用することについて、例示になっていますけれども、企業の立場 からは、一つしかポストがなくてどちらかを採らなければならない場合、今までは女性 を採っておけば大丈夫だったかもしれませんが、今度は女性を採ったとしても男性に「差 別だ」と言われる可能性は法律上あり得るわけです。そういたしますとこういう点につ いては、例えば「男女のいずれかを優先する方針基準をもって採用すること」というよ うな書き方にして、直接差別と間接差別の違いがもう少しわかりやすくする仕組みがあ ってもいいのではないかと思っています。それは法文上、明確にしようということでな くても、指針ならば一般的に事業主がわかるようなやり方をしてもらえれば大変ありが たいと思うわけです。  それからもう一つ、先ほど休業した従業員について育児・介護休業法では降格をさせ ないと説明があって、休業しないで少しでも働いている従業員を降格するのはいかがな ものかという説明がありました。それは、そこだけの理屈を聞けばおっしゃるとおりだ とわからなくはないわけですけれども、休業を取っている人については仮に降格しよう がしまいが、現実に働いていないわけですから、ノーワークノーペイの原則を貫いて、 紙の上だけでの降格がないという取扱いになるのだと思います。なぜそんなことを言う かといいますと、今日の『AERA』でこちらの霞ケ関における少子化対策あるいは職場 における実態がいろいろと書いてあるのを見ました。ポストに就いている人が一切仕事 も変えられず働き続けることは本当にその人のためになるのか、あるいは役所の場合に は公務員の定員法で非常に厳しくなっている中で、もう一つポストを作ることが本当に うまく行われているのかどうか、民間ではぎりぎりいっぱいの人員でやっていることか らすると、ここについてはもう少し何らかの配慮ができないのかなと思うわけです。長 くなるといけませんので、いったんここでやめまして、また後ほど意見を述べたいと思 います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、篠原委員どうぞ。 ○篠原委員  今、渡邊委員、松井委員からもお話がありましたけれども、きちんと経営の皆さまが しっかり右と左がどうなのかということをわかるためにもやはり指針にきちんと明記す べきではないかなと思います。ポイントをわかり易くという話もありましたけれども、 分量が多くても労働者側としてはきちんとグレーゾーンという部分をしっかりと明記を することによって、お互いの働きやすい環境を作ることは必要だと思いますので、その ポイントを絞ってわかりやすくというのはいかがなものかなと感想を申し上げます。そ の上で、もしかすると先ほど説明があったかもしれませんが1点確認をしたい点という ことでよろしいでしょうか。  先ほど指針の別紙2のところで、指針の中の案に示された例えになりますけれども、 2ページ目の(2)の2行目の後ろの部分、「ただし14の(1)のポジティブ・アクションの措 置を講ずる場合については、この限りではない」というところは、その建議の中にある キ以降の1番のところの当面女性に対する特例現行枠組みを保持することが適当である というような部分に相当すると考えてよろしいでしょうか。 ○鈴木均等業務指導室長  これは指針といいますよりも法律の中で特例については女性のみとなっておりまして、 法律上は建議に書いてありますように女性とこれは定めていますので、この部分はそれ を引用している部分ですので、結論としては同じです。 ○横溝分科会長  それでよろしいですか。では岡本委員どうぞ。 ○岡本委員  少し細かい部分の確認ですが、27ページのハのところで先ほどなお書きのところの説 明がありましたが、長いといえばこのなお書きはいらないのではと思いますが、この「女 性労働者が転換すべき業務を指定せず、かつ」というところは女性労働者が自ら転換す べき業務を指定しなかった場合さらに客観的に転換すべき業務がない場合は、不利益な 自宅待機にはならないということなのでしょうか。こういった事例がどのような形であ るのか具体的にあれば伺いたいということと、そういう解釈でいいのかどうか。逆に言 えば女性労働者が自分はこういう業務に転換したいということで業務の指定をした場合 には、経営者としては軽易な業務に就けさせるのだと労働基準法のところにもあるわけ ですけれども、そういったことですということなのかという点です。  それから妊娠・出産の不利益取扱いのところで、先ほど降格という話があったのです が、例えば妊娠をしたことによって、もともと与えられている権限が付与されなくなる といったような、実際やっている仕事の中での業務の変更というものはあると思います。 先ほどポストの話がありましたのでそこに引っかかるかもしれませんが、基本的にはそ こは不利益取扱いになると、権限付与ということについてはそのように読んでいいのか どうかということが2点目の質問です。 今日は各論の議論をするものではないのかもしれませんけれども、先ほどセクシャルハ ラスメントのところで、抗議をした場合ということについての答弁もありましたけれど も、実際には職場において抗議をしていくということは本当に並大抵のことではありま せん。深刻なケースというのはそういったところが一番多いと思いますので、それを親 密度の判断の上で、抗議をしなければセクシャルハラスメントには当たりづらいという ことでのこういう指針になるということは、今、実際に起こっている、この間も議論し てきた様々なことが本当に救えなくなってしまうのではないかということを、大変危惧 します。そこについては、この後の各論での議論の場で、改めて議論を申し上げること になると思いますけれども、今、答弁を伺っていて、それでは納得できないということ を非常に感じました。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○鈴木均等業務指導室長  それでは、3点のうち最初の2点が質問でしたので、その2点について回答します。 軽易業務転換につきましては、原則として女性が請求した業務に転換させる趣旨である というのが労働基準法上の解釈ですので、業務を指定した上で転換するのが原則です。 そういった指定がない場合でどこでもいいから替えてほしいといったときに、その替え る適当な場所がないとき、業務を指定した場合はそこへいって、指定しなかった場合に 客観的に見ても転換する業務がない場合に自宅待機になるという趣旨ですので、そのよ うに読んでいただければと思います。  それから、降格自体の定義につきましては、指針の最初の方にも書いてありますけれ ども、例えば課長が係長になるというように職務が変わる場合と、7級というポストが あるとしたら7級から6級に下げてしまうというように格付けが変わる場合の両方が入 りますけれども、仕事の中身が変わる場合に、同じ課長相当職であってもA課長からB 課長に変わったというのは同等の役職ですから降格ではないのですが、A課長が持って いた権限をB課長は持っていないということがありますけれども、それ自体は降格とい う概念には当てはまらないということになります。 ○岡本委員  その場合は不利益な取扱いではないという判断ですか。 ○鈴木均等業務指導室長  その場合は降格として不利益にはなりませんということです。 ○岡本委員  降格ではないけれども、業務の就業環境に入るかどうかわかりませんけれども、イ〜 ルの間には入らないということなのでしょうか。 ○鈴木均等業務指導室長  それだけでしたら基本的には降格ということにはなりませんけれども、A課長からB 課長に替わったときに配置転換ということになりますので、それが不利益かどうかとい うことを、通常の配置転換のルールと合致しているかどうかというところで見て、そこ から外れたら不利益だという判断になるわけです。 ○岡本委員  ポストが変わらない場合もあると思うのですが、そういったことも含めて個別に見て いくということですか。 ○鈴木均等業務指導室長  簡単に言うと、降格か不利益な配置転換かということを個別に見まして、それをこの 基準に照らして不利益になるかどうかということです。繰り返しになりますけれども、 課長から課長に異動したときに、その職責が変わったことによって権限の配分が変わっ たとしても、それだけでは不利益とは見ないということです。 ○横溝分科会長  よろしいですか。どうぞ。 ○鴨委員  26ページの今のところで、「かつ、客観的にみても他に転換すべき軽易な業務がない 場合、女性労働者がやむを得ず休業する場合」とありますが、「やむを得ず休業する場合」 女性労働者が休業することにおいて、例えばその休業に対して賃金保障はないというよ うな形を取るということですか。 ○鈴木均等業務指導室長  これはあくまでも現行の基準法上の軽易業務への転換を前提として、それを判断する とどうかということでありまして、現行の基準法上の軽易業務の転換につきましては、 まずは女性が指定した業務に転換するということで、指定した業務がない場合にはこう いったことで判断しまして、客観的に転換すべき軽易な業務がない場合には、事業主と しては新たな業務を作る義務まではないということになりますと、結果としては休業に なるということです。その場合に賃金がどうかということにつきましては、基本的には 基準法では何も言っておりませんので、逆に言えばノーワークノーペイの原則からしま すと、そういう場合には賃金はノーペイということになりますので、そういった場合ま で基準法上認められている休業でありますから、ここでいう不利益な取扱いにはいたし ませんということを重ねて申し上げているということです。ですから、そういう状況を 避けたい場合には、とにかく女性労働者の方から「ここの軽易業務に替わりたい」とい う指定をいただければ、基準法上は原則上その業務に転換するということになりますの で、こういった問題は事実上生じないことになります。 ○鴨委員  それでも女性労働者が軽易な業務に転換したいと言っても、特に小さな規模の会社で あれば企業の側で転換する軽易な業務がないという場合もあります。その場合はどうす るのですか。 ○鈴木均等業務指導室長  重ねて申し上げますが、まずは女性労働者からこの業務に替わりたいということを指 定していただくということです。これについては、小さい職場でも当然他の業務という のはありますので、それをしていただくことで足りるかと思います。ただ、そういう指 定をしない場合にどこに転換するかというときには、おっしゃるように小さな職場では 転換すべき業務がないということが生じえますので、その場合には自宅待機でもやむを 得なしという解釈に現行上なっていまして、その場合にはそのときまで賃金を払わなけ ればならないということにはなっていないので、ノーペイになりますという現行法の解 釈になるわけです。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○奥山委員  今のところは、理屈は非常に難しいのだろうと思います。 今おっしゃっていることは65条の3項の現行規定の解釈としてはそのとおりだと思い ます。それによって自宅待機になったときの賃金がどうなるかは労働基準法上の解釈問 題とあわせて労働契約上の解釈問題にもなり得るのです。そういう点では民法の536条 の危険負担の問題も出てきますので、こういう事情による不就労をいわゆる労働者の責 めに帰すべき事由にするのか、使用者の責めに帰すべき事由にするのか、あるいは天災 事変のように不可抗力に基づくような形で処理するのか、それは別の問題なのです。 今、鴨委員がお聞きしたかったのは、そういう形で労働基準法の取扱いとしては、ここ にいう不利益なものに当たらないと思っても、その間賃金が払われないのであれば不利 益になるのではないかというニュアンスのことだと思います。 ○鴨委員  そうです。 ○奥山委員  その場合には、労働基準法の解釈としては不利益にはならない、ただ賃金がもらえる かどうかは例えばそれを裁判に持っていったときには、裁判所はそういう契約法上の解 釈理屈を使うこともあり得るのです。実際どうなるかは、私もわかりません。そういう 話だろうと思います。 ○稲垣委員  今のところに関連するのですが、実際、職場で女性労働者がこういう仕事をやりたい と指定できるかどうかという問題が一つあると思います。今、言われたことは65条の3 項に書いてあることとは少し違うと思うのですけれども、3項のところでは、「使用者は 妊娠中の女性が請求した場合においては他の軽易な業務に転換させなければならない」 と書いてあります。今、説明されたところでは「女性労働者が転換すべき業務を指定せ ず」となっていますので、意味合いが違うのではないかということが引っかかりました。 実際の職場では、女性が「他の軽易な業務に転換したい。妊娠中はこういう仕事は辛い ので換わりたい」と言った場合に、事業主の方が、どんな仕事ができるかいろいろ検討 して、「こういうことをしてください」ということになると思うのです。だからここにあ るように、「客観的に見ても他に転換すべき軽易な業務がない場合」と書かれると、非常 にここの部分が女性にとっては不利な形になるのではないかと思います。私はここの部 分はかなり問題なフレーズだと思いますので、今、基準法の解釈と言われましたけれど も、そういうものをここの指針に書いて、あえてこれは不利益ではないと書く必要があ るかどうかというのは大変疑問です。 ○松井委員  今のような点は、企業の雇用管理上明らかにしておいてほしい点であります。そうい う意見だけ、まず申し上げておきます。回答をお願いします。 ○鈴木均等業務指導室長  私どものスタンスとしましては、労働基準法上こういう場合につきましては、自宅待 機でもかまわないという解釈になっている以上、それにつきましては松井委員の発言も ありましたけれども、自宅待機という項目を作る場合にはこういうケースにつきまして は不利益ではない場合が生じえるということは、事業主に対する指針として明記すべき であるということで、ここに記述した次第です。基準法上の65条の3項の規定の解釈 についての話もありましたけれども、繰り返しになりますが、基本的には転換すべき業 務を指定していただいて、先ほど事業主はその指定がなくてもどういう業務ができるの か考えながら転換すべき業務を決めていくのが通例だというようなお話がありましたが、 そういった場合には当然客観的にみて他に転換すべき業務があったということから、そ こに転換しているということですので、この場合にはそういうケースは当てはまらない ということです。そういうことをやったにもかかわらず、やはり軽易な業務がなかった 場合、ぎりぎりの選択として労働基準法上は自宅待機ということも認めているわけであ りますので、これについてはやはりここに書き入れる必要があるのではないかと考えた 次第です。 ○稲垣委員  厚生労働省のいろいろな調査でも、出産を契機に辞める女性というのは非常に多いと 思うのです。育児休業の取得率が76%とありますけれども、実はその前に7割の方が辞 めてしまっているということがあると思います。それはどうしてかというと、やはり妊 娠したときの職場の状況、事業主の対応などが問題で、こういう職場であったら妊娠・ 出産・育児がやれるかどうか、やれない職場ではないかと辞めていくということも多い と思いますので、そういう面では少子化対策ということを踏まえて、ぜひ事業主がこう いうことをやっていこうという気持ちになるような形にしていただきたい。逃げ道のよ うな文言というのはできるだけ避けていただきたいという意見です。 ○松井委員  それでは、稲垣委員に質問したいのですけれども、この指針の28ページの配置の変 更の問題で、28ページの一番下のところになりますが、「例えば、以下に該当する場合 には不利益な配置の変更を行うことに該当すること」と書いてあって、産前・産後休業 からの復帰に当たって、現職または現職相当職に就けないことは、ここでは直ちに不利 益に読めるのですけれども、それこそ大変激務の職場であっても、ここの指針ではそこ にまず戻さなくてはいけないというように読めるわけです。まず、厚生労働省事務局に 確認したいのですけれども、基本的にすぐ戻すようにと書いてあるという理解でよろし いのでしょうか。 育児・介護休業法の指針では、正確には覚えていませんけれども、 原則として現職または現職相当職に戻すことが多く行われているものであることに配慮 するとなっており、もう少し柔らかく書いてあったと思うのですけれども、ここは直ち に絶対まずそこに戻しなさいと書いてあると読むのでしょうか。私の理解が間違ってい るのかどうか確認した上で意見を承りたいと思います。 ○鈴木均等業務指導室長  本日お配りした29ページの(3)ですけれども、これについては復帰に当たっては、一 旦は現職または現職相当職に戻してくださいということを書いております。そのとおり です。 ○松井委員  つまり、とにかくいったん戻してそこで仕事をしてもらうということなのでしょうか。 反対に職場の理解がなくてこんな大変なところで続けられそうにないから、多くの方が 辞めてしまっているというような指摘が一方であって、こういうこともそこまで決めて しまうのが本当にいいと考えているのかどうか意見を伺いたいと思います。 ○稲垣委員  今、おっしゃっていることと私が申し上げたことは全然意味が違うと思います。現職 または現職相当職というのは本人がやはり厳しいので換えてほしいと申し出た場合とは 全く別の話だと思いますので、この現職または現職相当職というのはきちんと押さえる べきだと思っております。 ○松井委員  今の解釈で正しいのでしょうか。先ほど室長からの回答では「いったん戻しなさい」 と言ったように聞こえるのですが、私の理解が間違っているのか、本当はどうすべきか 回答をお願いしたいと思います。 ○鈴木均等業務指導室長  質問の趣旨を踏まえて正確にお答えしますと、基本は現職または現職相当職にいった ん戻していただくということです。先ほどの質問の中にもありましたけれども、本人が 希望した場合はどうかということは、不利益という問題からしますと本人が希望したと きにそれに沿って扱うことは、基本的には不利益には該当いたしませんので、そういっ た場合は議論するまでもなく不利益にはならないと思います。従って、本人が現職また は現職相当職に戻りたくないと希望した場合は、それをやること自体はここに抵触する ものではないという解釈になると思います。 ○松井委員  すみません。確認です。そうすると、直ちに戻しなさいという場合であったとしても、 それが事前に十分話し合いができている場合であれば、そのようにしなくてもいいと読 んでよろしいのでしょうか。 ○鈴木均等業務指導室長  それで結構です。ただし、本人の意思による場合でありまして、本人の意思ではない にもかかわらず同意を取ったということでは駄目だということは均等法の通例ですが、 本人の意思でしたらかまいません。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。 ○松井委員  2点質問したいのですが、まず今の妊娠・出産等の不利益取扱いのところを議論して いましたので、そこでの質問をいたします。有期労働者について、仮に労働が不能にな って労務の提供ができない場合でも、雇止めをしてはいけないと書いてあるということ は、更新を続けるという形で読むようになるのだと思うのですけれども、そこでの質問 といたしまして、有期の方については育児休業法の対象にならない方もいると思うので す。そのときは社会保険料の免除は受けられないと思うのですが、そういった形でもい わゆる空の有期契約の更新などをしていかなくてはいけないのかどうかということを、 まずお尋ねしたいと思います。  それから2番目に、仮にそういうことをしなくてはいけないということであるならば、 職場によっては要員をきちんと配置しておかなくてはいけないと思うのです。そうする と、戻ってくるであろうと想定して、代替要員の方にある一定の期間だけお願いしたい ということで雇用契約を結ぶ、あるいは育児代替派遣という形で使うということも考え られますけれども、こういう働き方について労働側の委員の方からの感触を伺いたいで す。企業側としては「そこだけ働いてください」ということを通常の有期契約で結ぶと いうことは非常に難しいという実態があるのですけれど、皆さん方に「こういう形で働 いてほしい」と言っても喜んで働くことができるのか、そういう労働者が割と多くいる と思われているのか、その辺の意見を伺いたいということが1点です。  それからもう1つは、直接差別のところで1点確認したいのですけれども、教育訓練 の場合はポジティブ・アクションもあってもいいという仕組みになっていると思います けれども、職業家庭両立課長の下で、今週、男性が育児参加できるワークライフバラン ス推進協議会というのを開催することになっています。そのときに男性だけを集めて従 業員に対しての教育をしていいのか悪いのか、これは男性に対するポジティブ・アクシ ョンだからいいと考えるのか、その辺を教えていただきたいと思います。  それから、教育には関係ないのですけれども、直接差別に関して言いますと、今、医 師会が女性医師バンクというようなことをやろうとして、今年度予算をもらっているは ずなのですけれども、これは、今年度中は良くても、来年度になると男性に対する差別 になるから駄目という解釈になるのかどうか教えていただきたい。なぜならば、ここは 女性医師が多い産科や女性医師が多い小児科に向けて、特にそこを中心とする募集採用 をかけたいのでこういうことをやるというのは、医政局が言っていました。後の2つは 質問です。よろしくお願いいたします。 ○鈴木均等業務指導室長  質問が3点あったと思います。 雇止めに限らず不利益取扱い全般にわたる話なのですけれども、差別については同じ雇 用形態にいる両性間を比較してということになりますが、不利益取扱いにつきましては 何と比較するかというと、妊娠していなくて出産していなくて通常どおり働いていた本 人と比較して、それが下がっているかどうかを見るというのが原則かと思います。  この場合で見ますと、この有期契約につきましては妊娠せず、出産せず、通常どおり 働いていた場合については、有期契約を更新して働いていたであろうという場合と比較 して、これについては有期契約を更新しないということについては、雇止めとして不利 益だという解釈になると思います。平たく言いますと、例えばもともとその人について 特段の問題がなければずっと更新されていたという場合において、妊娠を理由に雇止め をすることは自体は不利益となりますので、その場合はその契約期間中働けなかったと しても、同じ契約を再度更新していただくという格好になると思います。  逆に言うと、例えばリストラなどがありまして、他の有期労働者も全部契約を更新し なかったという場合にまで、この人だけ妊娠しているからという理由で雇止めをしない ということは必要ありません。そういった場合は他の事情と同じでありますから、更新 をしなくてもかまわないという解釈になると思います。  教育訓練につきましてのお尋ねですが、そういった育児参加についての講習が、均等 法上の教育訓練に当たるかどうかということがありまして、業務の遂行上必要なものを 付与するというのが均等法上の教育訓練でありますから、これに該当する場合にはこち らの対象になります。ならない場合はたぶん福利厚生ということになりますので、福利 厚生につきましては省令で対象を列挙しておりますからそれでやっていただく分には対 象になっておりませんから、均等法上の問題にはなりません。ただ、それが教育訓練だ ということになりますと、基本的には男性のみということは、これまでも女性の差別の 反対概念として男性に優遇しては駄目ですというものもありましたので、それについて は違反だということになりまして、これにつきましては今回改正したからというわけで はなく、従来から違反であるということになります。  次にポジティブ・アクションについてはどうかということですが、ポジティブ・アク ションにつきましては法律上、女性のみということで、女性優遇以外のものについての み残しておりますから、これについて男性を優遇するというようなポジティブ・アクシ ョンについては認められませんので、男性だけやるというような教育訓練は認められな いということです。ただ、これにつきましては、例えばこれまで子育てにかかわってき ていない者という要件を課していただいて、結果として男性だけ来るということであり ましたら、均等法上の問題にはならないということです。  女性医師バンクにつきましては、基本的には女性の医師の数が少ないですので、今申 し上げたようなポジティブ・アクションという格好で、女性のみの募集も大体のケース が違法とはなりませんので、そういったものを利用してやっていると理解いただきたい と思います。 ○横溝分科会長  よろしいですか。 ○松井委員  最後の点で、それは女性のみ募集でもかまわないというのは、4割以下であればいい というような昔の解釈なのですか。 ○鈴木均等業務指導室長  結局、均等法自体は事業主の行為が違反になるわけですので、雇用管理区分をどう見 るかということは非常に難しいと思いますけれども、同じ雇用管理区分の中で女性が4 割以下でありましたら、それについて女性医師のみを募集すること自体はポジティブ・ アクションという違法にはなりませんということが1点です。それから、このバンクを やることについては事業主の行為ではありませんから、これについては基本的に均等法 上望ましいかどうかということはありますけれども、均等法上の問題自体は生じないと いうことになります。 ○松井委員  先ほど有期労働者のところでいろいろ説明していただいて、ありがとうございました。 読んでいて、不利益取扱いの禁止の範囲が今回は相当広くなっておりますので、妊娠・ 出産等を理由とする場合と妊娠または出産に起因する症状による不就労または能率の低 下となった場合との不利益取扱いの基準がわかりにくく、どこの部分がそうなるのかと いうことをもう少しわかりやすく、書き方で工夫をしてもらえないものかと思います。 これをもう一度見ればわかるということなのでしょうけれども、本人が妊娠・出産をし なかった場合と比較するというのが一つある。他の従業員が疾病等で能率が落ちたり不 就労になっていったりした場合と、妊娠・出産を起因とした症状によって能率が低下し た場合を比較することで、大きく分けて2種類あるという理解でよいのでしょうか。そ の2種類についてそれぞれの不利益取扱いの範囲が微妙に異なっているのではないかと 理解をしたのですが、自分の頭が整理できていないのですけれども、どういう整理にな っているのかもう一度教えていただければと思います。 ○鈴木均等業務指導室長  他の人といいますよりも、本人が妊娠・出産しないで健康で働いている場合と比較す るというのが基本になると思います。ただし、解雇等はそれで判断できると思うのです けれども、働きぶりがアウトプットに影響する、例えば賃金等につきましては、本人が 実際は労働能率が低下した、産休も含めて休業を取っているという場合、どう比較する かということで、これは健康で働いているときと比較しては単純な比較にはならないと いうことで、疾病等による休業等と比較してということですけれども、これについても 他の人と比較するというよりも、同じようにその人が疾病等で休んだ場合、どの程度の ボーナスになるのか、どの程度の賃金になるのか、賃金はノーワークノーペイですけれ ども、どの程度の査定になるのかというように、本人が他の疾病で休業等能率低下をし た場合と比較して、妊娠の場合をより悪く扱わないでくださいという原則と理解いただ けたらと思います。 ○奥山委員  時間もあまりありませんので、今のところだけ確認がてらお尋ねしたいと思います。 一つは12ページですけれども、雇用形態の変更に関し、一の雇用管理区分について措 置を講じるということで、イの排除していると認められる例として(1)の「有期契約労働 者から正社員への登用の対象を男性労働者のみとすること」になっているのですが、私 の理屈では正社員でも有期で働いている方は割合的に4%ほどいるし、無期労働契約で 働いているパートの方も4割ぐらいいるので、この有期から正社員への登用が不利益と いう形で比較するのは、私の理解ではなじみにくいのです。これが一つです。  次は19ページですが、III 間接差別の(2)の定義のところで、「性別以外の事由を 要件とする措置」について、比率が男女で相当程度異なりと書いてあって、ここはこれ でいいと思っているのですが、「相当程度異なり」というときの判断基準をどこにも挙げ ていないので、相当程度の違いについての例示を解釈通達などで示す用意があるのかと いうことと、その下の(3)のコース別のところですが、ロとハの違いです。コース別 雇用管理制度における総合職で、転居を伴う転勤ということと、その下のハの昇進につ いての転勤要件ですけれども、転勤の経験ということでここには転居が付いていないの ですが、コース別の総合職につける場合のものは全国転勤ということをイメージしてこ ういう言葉になっているのか、昇進の場合には必ずしも全国転勤に縛られない形の異動 という形で考えられているのか、表現上わかりにくいので説明いただければと思います。 簡単で結構です。 ○鈴木均等業務指導室長  まず、13ページの事例のところですけれども、一般的に一番ケースが多そうなものを 代表して書いているということで、有期でありましたら例えば非正規であって労働条件 が一般に悪いケースが多い、正社員はそうではなくて無期の契約で、終身雇用で条件は 比較的いいというような、事業主が一般にイメージしやすいものを持ってきたというこ とですので、厳密には言われるように非正規でも無期はありますし、正社員でも有期は あるということはありますけれども、例示でありますから事業主が一番わかりやすいと ころを取ってきたと理解いただきたいと思います。  間接差別の相当程度ですが、これにつきましては、「一般的な間接差別の定義を述べよ」 という国会の質問に対しまして答えている部分でありまして、実際これは私どもが施行 するというよりも裁判所で裁判官がこういうものを民法の一般原則などを利用して間接 差別として判断いただくのであろうという問題ですので、これについて相当程度という ことにつきましては基本的には裁判官が判断いただくことになると思いますので、私ど も行政からこれがどれぐらいかということを示す予定は通達等ではありません。  3点目の転勤につきましては、言われたとおりでして、省令の方を見ていただきます ときちんと書き分けてあるのですが、省令の方を見ていただきますと、コース別の方は 労働者が住居の移転を伴う配置転換に応じることということで全国転勤を表しておりま して、それに対しまして昇進の方は勤務する事業場と異なる事業場の配置転換をされた ことがあるということで、特に転居を伴うということを必要の要件としていないという ことで書き分けています。これを平たく指針で書くと、これまで使っていた言葉をその まま踏襲しているということです。 ○奥山委員  1と3の説明については納得するのですが、2の相当程度の問題については、ここま で踏み込んで書くと司法判断の領域に入るという説明でしたが、私の理解では、それ以 外の3つのレベルで直接的な差別に当たり得るものを指摘されるから、先ほどから労使 や委員の皆さんの方から少し細かすぎるという話もありました。私もそれは実感として 持っていて、ただ一方で事前の防止、紛争のトラブル防止となればある程度はやむを得 ないかと思っているのですが、他方でここまで書くと裁判所の領域に踏み込んでいるの ではないかという感覚もあるのです。これは法律上の司法判断の基準ではないかと思っ ているところもあるのです。それは見解の相違かもしれません。そう認識できる部分と 比較すると、ここの相当程度だけ「司法判断だから別です」といわれると違和感を覚え ます。整合性に欠けるのではないかと思います。そういう感想を持ったということだけ で結構です。 ○篠原委員  今、分科会長からも使用者側の方々からも、非常に多岐にわたって今回示されたとい う意見がありました。また、前回の均等分科会のときに質問をしたら、皆さんからまた パブリックコメントも求めるという話もありました。やはりパブリックコメントを踏ま えた段階で、審議をしたいということもありますし、これから最後にこれからのスケジ ュールという話があるのかもしれませんけれども、できればパブリックコメントを締め 切った後、もう一度お互いに意見を持ち寄って、最終的に10月に入ってから確認をす るということにはできないものなのでしょうか。 ○横溝分科会長  今、先を越しておっしゃられたのですけれども、パブリックコメントの件は後に事務 局から説明がある予定です。今日のところはこれにて議論は終了としていただいて、事 務局から今後の日程等も含めて補足説明をしていただきたいと思います。 ○安藤雇用均等政策課長  ただいま話のありましたパブリックコメントは、8月29日から9月27日まで30日 間の期間を取りまして、パブリックコメントをさせていただきます。また、女性則の改 正につきましては労働基準法に規定がありまして、来月に入ってからになると思います が公聴会をさせていただきたいと思っております。 ○横溝分科会長  そういうことでよろしいですか。 ○岡本委員  今、篠原委員が言ったことですけれども、希望としてパブリックコメントを受けた後 に、今日は、私たちも十分各論として意見を申し上げているものではありませんので、 次の会で答申ということにならないようにお願いしたいということだと思いますので、 補足をさせていただきます。 ○安藤雇用均等政策課長  いずれにいたしましても、日時・場所は調整させていただいた上で決めさせていただ きますので、また連絡差し上げます。 ○横溝分科会長  それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。本日の署名委員をお願いしたいと 思いますが、労側が岡本委員、使側が前田委員、この2人にお願いいたします。よろし くお願いいたします。これで終了いたします。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)