06/08/24 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成18年8月24日議事録        薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年8月24日(木) 14:00〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(14名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 岩 崎   学、 川 西   徹、 堺   英 人、    澤 田 純 一、○首 藤 紘 一、 土 屋 文 人、 谷川原 祐 介、   ◎永 井 良 三、 長谷川 紘 司、 村 勢 敏 郎 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(2名)    井 上 和 秀、 早 川   浩 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)   川 原   章(審査管理課長)、 中 垣 俊 郎(安全対策課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    浦 山 隆 雄(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   牧 野 ゆり子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)  田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を 開催します。本日はお忙しいなかお集まりをいただきまして、ありがとうございます。 当部会委員数14名のうち12名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達 しておりますことを報告いたします。御欠席は井上委員と早川委員です。前回、7月の 部会より長尾委員に代わり、国立医薬品食品衛生研究所機能生化学部長の澤田純一先生 に委員に御就任いただいております。澤田委員は前回は御欠席でしたので、本日改めて 御紹介申し上げます。永井先生、以後の進行をよろしくお願いします。 ○永井部会長 資料がございますので、配付資料の確認をお願いします。それから資料 作成に関与された委員の報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第、座席表、委員名簿を配 付しています。議事次第の資料1〜9まで予めお送りさせていただいています。本日の 資料として資料3-2のオノアクトの添付文書の差替版、資料10として「審議品目の薬事 分科会における取扱い等の案」、資料11として「専門委員リスト」を配布しています。  関与委員の件ですが、平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に 関係された委員の確認です。本日の審議事項の議題7のオキノーム散について、谷川原 委員が関与されていますので、谷川原先生におかれましては議題7の審議の間は別室で 御待機をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  本日、議題1のリプラガル点滴静注用、議題8のアルドラザイム点滴静注液における 参考人として、熊本大学医学部小児科教授の遠藤文夫先生にお越しいただいていますの で、御紹介を申し上げます。この関係で本日は議題の順番を入れ替えさせていただき、 最初に議題1をお願いした後、続いて議題8の御審議を先にお願いできればと思います ので、よろしくお願いします。 ○永井部会長 議題1について、機構の方から審査の概要の御説明をお願いします。 ○機構 資料1、医薬品リプラガル点滴静注用3.5mgの輸入承認の可否等について、医 薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。本剤は、有効成分アガルシダーゼアル ファ(遺伝子組換え)として、1回体重1kg当たり.0.2mgを隔週、点滴静注する製剤です。 本薬は遺伝子組換え技術の一種である遺伝子活性化技術により、ヒト線維肉腫細胞から 産生されたα-ガラクトシダーゼA(α-GAL)であり、細胞内リソソーム中の加水分解 酵素であるα-ガラクトシダーゼAの活性が先天的に欠損あるいは低下するX染色体劣 性の先天性代謝異常であるファブリー病の酵素補充療法として開発されたものです。  本品目については、審査中に『ウシ等由来物を原材料として製造される医薬品』に係 る通知を受けて、本薬の製造工程が変更されることとなり、2年ほど審査が中断してい ましたが、この変更に伴う品質及び安定性に関する資料が追加提出されたことから審査 を再開し、医薬品第一部会で御審議いただくものです。  なお、本薬は、平成11年5月に希少疾病用医薬品に指定されています。海外では2001 年8月にEUで承認されたのを初めとして、2006年8月現在、36カ国で承認されていま す。本品目の専門協議では、本日の配布資料11に示すような方々が専門委員として指名 されています。本剤の規格及び試験方法、安定性、薬理、薬物動態及び毒性について、 提出された資料に特段問題となる事項はありませんでしたので、臨床試験成績について 述べさせていただきます。  有効性に関してですが、18歳以上の日本人男性ファブリー病患者12例を対象とした 非盲検非対照試験において、主要評価項目である「血漿中セラミドトリヘキソシド(CT H)濃度及び尿沈渣中CTH量」は、投与前値と比べて有意に低下し、腎臓組織形態学的 な改善に至らない症例も認められたものの、全体として本薬の有効性は示唆されている ものと判断しました。  安全性に関しては、本邦において重篤な有害事象12例中2例のうち、1例が因果関係 ありとされました。この1例では、投与中のアレルギー反応が認められましたが、投与 中止後、ステロイド剤の処置により消失しました。  国内第II相試験において、抗体産生については本薬投与8週後に2例が陽性となりま したが、その後抗体価は低下し陰性化しています。抗体陽性例2例中1例、抗体陰性例 10例中2例で投与時反応がみられましたが、抗体産生と投与時反応発現との因果関係に ついては明らかではないと判断しています。なお、投与時反応に関しては添付文書にお いて情報提供するとともに、必要に応じて投与を中断し、抗ヒスタミン剤やステロイド 剤を投与することなどについて注意喚起することとしています。その他問題となる副作 用は認められませんでした。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、本薬のファブリー病に対す る有用性は認められ、承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議さ れることが妥当と判断しました。なお、販売名については医療事故防止の観点から、類 似名称を有する医薬品として取違いが生じないように販売名を改める方向で検討し、 「リプレガル点滴静注用3.5mg」に改めることとされています。本剤は希少疾病用医薬 品であることから、再審査期間は10年とすることが適当であると判断しています。原体 及び製剤ともに劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しています。薬事分科会 では報告を予定しています。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 ありがとうございました。参考人としてご出席いただいている遠藤先生、 何か御発言がございますか。 ○遠藤参考人 これは臨床的には、同じ病気で3年ほど前にファブラザイムという薬が 承認されています。基本的には同様の生物製剤です。先ほど御説明がありましたように、 これはヒトの線維芽細胞のヒト遺伝子をそのまま使って活性化している、というところ が酵素製剤の産生法として違っているところで、基本的には同一の成分を主成分とする 薬剤だと考えられます。  臨床的には、学童期ぐらいから四肢の疼痛等が出現するとともに、主に皮膚の障害、 腎臓機能障害が進行していきます。それは血管内皮細胞等の障害によって起こっていく わけですが、それを防止する、あるいは進行を逆戻りさせるということで、この酵素製 剤が有効であろうというふうに考えられるわけです。  作用の機序としては、この酵素製剤は、もともと正常な人では細胞内小器官であるリ ソソーム酵素が細胞の中に取り込まれるという仕組みがあって、その原理を応用して、 この製剤が効果を発揮するというふうになっています。この疾患そのものが先ほど申し 上げたように血管内皮細胞に主な病変の一つがあるということで、静脈内に投与された 酵素製剤が血管内皮細胞に取り込まれることは十分期待できます。臨床試験の結果、最 終的なエンドポイントである腎不全の防止等までは確認されていませんが、十分に効果 が期待できるデータが出ているのではないかと判断しました。 ○永井部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御意見、御質問をお 願いいたします。堺委員、どうぞ。 ○堺委員 質問が一つと要望が一つあります。質問の方は、この審査報告書の44ページ に表があります。日本及び米国での臨床試験の主要な検査成績が書いてありますが、こ の表のいちばん右側に正常糸球体の割合、パーセントという部分があります。もし分か るようでしたら教えていただきたいのですが、この検査は腎生検で当然行うわけですが、 何個ぐらいの糸球体を平均観察したのか教えてください。この質問をする意味は日米、 特に米国では針生検しますので、10個ぐらいしか糸球体が取れないことが時々あり、か なり糸球体の比率がばらつくことがあります。それだからこれ全体がどうということは ありませんし、糸球体の数が分からないからといって信頼性がどうというほどのことで はないのですが、もし分かるようでしたら教えてください。要望は後で申し上げます。 ○機構 機構より御説明申し上げます。まず本邦第II相臨床試験についてですが、こち らの方の投与前の数は18個ということです。また投与終了後は15個ということです。 また米国の第II相臨床試験においては、投与前は19個、投与後は23個ということです。 ○堺委員 ありがとうございました。続きまして要望を申し上げます。この製剤は長期 にわたる腎機能の保全というところに、いちばん主要な効果があろうかと思います。こ の審査報告書の60ページの第2段落の真ん中以下の部分にも、心機能、腎機能等々につ いて長期使用に関する特定使用成績調査を実施するとありますので、これでよろしいか とは思いますが、具体的にどのような調査をなさるのか私は見つけられなかったもので すから、今後に関する要望ですけれども、こういう長期追跡にどういうことを行うかも 将来的には書いていただければと思います。これは要望です。 ○機構 機構より御説明申し上げます。製造販売後基本計画書骨子案の下から5番目の カラムに「腎機能」とあり、ここにあるような項目について長期使用に関する調査で確 認していくということです。特に血清クレアチニン等については、血液を通常2カ月か ら3カ月ごとに採取していくということですので、経時的に3カ月程度の間隔でそれを 確認していくということです。 ○堺委員 長期にわたって多数の医療機関で観察しますので、血清クレアチニンが実際 的なものかなというふうには思います。最近はイヌリンクリアランスも保険収載されて いますし、希望としてはそこまで入れていただければ、さらに信頼性が高まると思いま すが、これは要望です。ありがとうございました。 ○永井部会長 ほかに、いかがですか。遠藤先生、既にアガルシダーゼベータが市販さ れているわけですが、これで病変が改善したという例というのは報告されているのでし ょうか。 ○遠藤参考人 腎臓の病変、その他ですか。 ○永井部会長 はい。 ○遠藤参考人 疼痛に関しては、かなり改善している例が多いと報告されています。腎 病変につきましては、腎不全移行期の患者さんでの投与例がまだそう多くないので、本 当に防止できるかどうかというところまでは、まだ確立されていないだろうと考えます。 ○永井部会長 心臓については、あまりデータはありませんか。 ○遠藤参考人 いわゆる心ファブリーというのは、高齢者の特に女性患者さんで心臓だ けということで起こってくることがあるわけですが、投与された例があまり多くないと いうこともあって、まだはっきりした証拠までは出ていないだろうと思います。 ○永井部会長 いかがですか。基本的には、ベータとアルファの違いというのが細胞の 違いというか、導入遺伝子を発現させたか、サルコーマのセルラインから取ったかとい うことで、物としては同じと考えてよろしいのでしょうか。 ○遠藤参考人 構造的には主成分は同じであるというふうに考えます。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。土屋先生。 ○土屋委員 名称が変更になるということは、それはそれでいいのですが、実はこれの 英名を見ると、どう一生懸命読んでもやはり「リプラガル」なのかなと思います。いわ ゆる変更前の名称なのかなという気がしてしまって、「レ」が付くものでLAというの があるのか調べてみたのですが、それはないのです。REとかLEというのはあるので すが、そこら辺はいかがなものなのかなと思います。今日は実はそういうのが3件ぐら いありますが、なるべく善意に解釈し、商標も向こうと同じにしたいということを考慮 しても、そこら辺の限度というのも自ずとあるのかなという気がします。基本的に日本 語となるべくマッチさせるという努力も、一方で必要ではないかという気がします。 ○永井部会長 機構の方で、いかがですか。 ○機構 機構より御説明申し上げます。まず販売名につきまして、リプラガルの類似名 称ということで、リプラスというものとリフラップというものがあり、申請者の方から 販売名を「リプレガル」に変更したいという申し出がありました。 ○土屋委員 実は前の方ではフェロンとかフエロンとかややこしく、英語を見たらその 名前にはならないというのがあるのです。スペルの問題ではあるかもしれないですが、 そこら辺も本当は配慮してあげないと、こういうのは販売名とかいろいろ来るものです から、一生懸命考えたのですが、これはどう見ても元のままなのかなという気がします ので、そこら辺の配慮もしていただけないかというのがあります。 ○永井部会長 ほかに、いかがですか。よろしいですか。よろしければ、承認「可」と いうことで、薬事分科会報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○永井部会長 続きまして、先ほど御説明がありました事情で議題8に移らせていただ きます。アルドラザイム点滴静注液の製造販売承認の可否について、機構から御説明を お願いします。 ○機構 議題8、資料8の医薬品アルドラザイム点滴静注液2.9mgの生物由来製品及び 特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬ま たは劇薬の指定の要否について、機構より御説明申し上げます。  申請効能であるムコ多糖症I型は、ライソゾーム内の加水分解酵素であるα-L-イズロ ニダーゼの先天的欠損により、グリコサミノグリカン(以下、GAGと言う)の一種であ るデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸がライソゾーム内に蓄積し、慢性進行性の障害が生 じるライソゾーム蓄積症です。  通常、ムコ多糖症I型患者は症状の種類や重篤度に基づいて、ハーラー型、ハーラー ・シャイエ型、シャイエ型の三つの臨床型に分類されます。ハーラー型は最も重症な臨 床型であり、ハーラー・シャイエ型は中等症、シャイエ型は比較的軽症な臨床型と分類 されています。比較的重症な患者では生後6カ月から2歳の間に発症し、肝臓・脾臓腫、 特異的顔貌、骨格変形、低身長、関節拘縮、心内膜線維弾性症を伴う急性心筋症、発達 遅延、その後の進行性変性等の症状が認められ、閉塞性気道疾患、呼吸器感染及び心臓 合併症等により、10歳までに死亡するとされています。  中等度の患者にあっては、3歳から8歳で発症し、肝脾腫、閉塞性気道疾患、睡眠時 無呼吸、再発性呼吸感染症、拘束性肺疾患、多発性骨形成不全等々があります。知的障 害はほとんど、または全く見られないとされていますが、通常、20歳代または30歳代 で死亡するとされています。  さらに重症度が軽い患者に至っては、通常5歳以降に発症し、関節拘縮、大動脈弁疾 患、軽度の肝脾腫、角膜混濁などが見られますが、神経障害はほとんど、あるいは全く 見られず、身長は人並程度であり、平均的な寿命を示すと言われています。  現在、ムコ多糖症I型に対する治療法として、発達の低下が認められていない2歳未 満の患者に対しては、造血幹細胞移植が適用されることもありますが、それ以外には個 々の症状に対する対症療法が中心となっています。  本邦におけるムコ多糖症I型の患者数は、2002年の厚生労働省特定疾患対策研究事業 の調査の結果、17例と報告されていますが、現時点で正確な患者数は不明です。  ラロニダーゼ遺伝子組換えは、米国においてジェンザイム・コーポレーションとバイ オマーティン社の共同開発により、遺伝子組換技術によってチャイニーズハムスター卵 巣細胞を用いて産生されたヒトα-L-イズロニダーゼであり、ムコ多糖症I型患者に欠損 しているα-L-イズロニダーゼを補充することにより、病態の改善に寄与することが期待 され、開発が進められてきました。  2003年4月に米国で承認を受けたのをはじめ、2006年5月現在、39カ国で承認され ています。本邦においては1999年8月に、ジェンザイム・ジャパン株式会社が希少疾病 用医薬品の指定を受け、今般、製造販売承認申請がなされたものです。  本品目の専門協議では、本日、御出席いただいている遠藤先生をはじめ、本日の配布 資料11に示す先生方が指名されています。  審査の概要ですが、本剤においては希少疾病の中でも特に患者数が少ない希少疾病と いうこともあり、非臨床試験としても非常に限られた試験しか実施されていないまま臨 床試験に移行されています。数例ではありますが6年近くの臨床使用成績があります海 外の臨床成績を中心に説明させていただきたいと思います。  臨床試験成績しては、海外第I相・第II相試験及びその継続試験、海外第III相試験及 びその継続試験、5歳未満のムコ多糖症I型患者を対象とした海外第IV相試験、および レトロスペクティブな26週の国内症例の1症例の使用成績が国内臨床試験データとし て提出されています。  まず有効性に関してですが、本剤については5歳以上のムコ多糖症I型患者45例を対 象とした海外第III相プラセボ対象二重盲検比較試験において、主要評価項目である投与 後26週時の努力肺呼吸の予測正常値に対する割合について、投与前からの変化量の中央 値においてプラセボとの差が3%と、プラセボ群に対して有意差が認められています。 もう一つの主要評価項目である6分間歩行距離については、ベースラインからの変加量 の中央値においてプラセボ群との差は38.5mと、統計的な有意差は認められていません が、本剤群で増加が認められています。その他、尿中GAGをはじめ、肝臓容積、脾臓 容積、関節可動域といった指標について、スコアの改善が見られます。  安全性については、有害事象はほぼ全例に認められています。死亡例は第I/II相試験 で2例、その継続試験で1例、第III相の継続試験で1例、第IV相試験で2例認められて いますが、いずれも本剤との因果関係は否定されています。  主な有害事象として、発疹、頭痛、蕁麻疹、アレルギー反応、疼痛、無力症及び呼吸 困難等が認められており、またIgG抗体の産生が高率に認められ、本剤投与時には頭 痛、紅潮等の投与関連反応も認められています。海外第III相試験では投与関連反応を抑 制する目的で抗ヒスタミン薬と、解熱・鎮痛剤の事前投与が全例に行われていることか ら、投与反応関連の軽減のために用法・用量に関連する症状の注意事項として、これら の事前投薬が望ましい旨、添付文書において注意喚起しています。  なお、現時点において、IgG抗体の産生と有効性の減弱との相関は認められていま せんが、市販後に定期的なIgG抗体を測定することとしています。またIgG抗体と 尿中GAGの相関を検討する海外臨床試験を実施中であることから、これらの結果も踏 まえて必要に応じて注意喚起が必要であると考えています。  また品質上の問題点として、本薬の製造には米国及びカナダ産のウシ胎児血清が使用 されており、TSE感染に係る理論的なリスク評価値が一般的に妥当であるとされてい る安全性確保の目安に達しておらず、TSE感染の懸念が完全には否定されていないこ とから、投薬前には患者さんに対し、リスクに対する十分な説明が必要であると考えら れ、添付文書にインフォームドコンセントについて記載しています。なお、これらのウ シ胎児由来血清については、□□□□□□□□□の製造からニュージーランド産のウシ 胎児由来血清に切り換えられ、出荷時期については□□□□□□□□□を予定している と報告を受けています。  製品については、現在、海外の患者さんに使用されている製品と同等以上の品質の製 品の輸入をすることとして、誓約書が提出されていますので、使用される薬剤に関して、 日本の患者さんが海外の患者さんに比べて不利益を被ることはないと考えています。  以上のとおり機構での審査の結果、ムコ多糖症I型患者について努力肺呼吸の予測正 常値に対する割合等の改善が見られ、安全性についても受認可能であると考えられたこ とから、確認された情報は極めて少ないものの、対象患者が極めて少ない希少疾病であ り、承認前に臨床試験で確認することは困難であることも考慮して、本剤の有効性及び リスクに関する情報を医療現場に提供した上で、個々の患者について本剤における治療 の要否を判断する必要はあるものの、効能・効果はムコ多糖症I型として承認して差し 支えないと判断し、第一部会で審議されることが妥当と判断しました。  国内で検討された症例数が極めて少数例であることから、市販後の全例調査を承認条 件に設定することを予定しています。なお原薬及び製剤は共に劇薬に該当し、生物由来 製品に該当すると判断しました。また再審査期間は希少疾病用医薬品であるため10年と 判断しています。薬事分科会においては報告を予定しています。  最後になりますが、販売名について先ほどと同様に医療事故防止の観点から、アルド ラザイムをアウドラザイムと、ルをウに変えて「アウドラザイム」に変える予定ですの で、御検討いただければと思います。機構からは以上です。よろしくお願いします。 ○永井部会長 ありがとうございました。続きまして参考人の遠藤先生から、御意見を お願いします。 ○遠藤参考人 この疾患はI群の疾患で、以前はガルゴイリズムというガルゴイル様の 顔貌を特徴とするということで教科書に書いてあった疾患です。それが現在、酵素活性 で分類されて11の酵素欠損ということが知られているわけですが、そのうちの第1番目 として分類された病気が、このMPSIということです。ムコポリサッカライドが蓄積 するということがこのI群の疾患の特徴であり、この疾患ではデルマタン硫酸、ヘパラ ン硫酸が細胞内及び結合組織に蓄積していくということです。したがって症状の出現の 仕方が、先ほどガルゴイル様顔貌と言いましたけれども、特異な顔貌、関節の拘縮など のほか、中枢神経系では細胞障害が生じて中枢神経系の発達が障害されます。重症の患 者さんでは非常に早期から中枢神経系の発達が障害されるとともに、呼吸機能、心機能 が障害されて、10歳ごろまでには亡くなられるということです。それよりも軽いものを ハーラー・シャイエというふうに呼び習わしていて、最も軽い臨床所見がほとんどない ものをシャイエ型と言っています。  先ほども機構側から御報告がありましたように非常に稀な疾患で、実は私も今まで2 例しか経験したことがありません。いずれも10歳ごろに心不全、呼吸不全を合併して亡 くなっているということで、典型的にはそういった経過を辿っていく疾患です。  骨髄移植が、これまで唯一の治療法として一応の確立がされてきました。しかし、肝 臓障害、脾臓障害、心機能障害が進行した例で、造血幹細胞移植、骨髄移植に体力的に 耐えることが非常に難しい状態が多いことから、骨髄移植を進行した患者に実施すると いうこともあまり普及していません。したがって、早期診断された例にだけ骨髄移植が 実施されているのが現状です。  そういった観点から見ると、ある程度進行した患者さんに酵素補充療法を行って、根 治的な治療とも言える骨髄移植をするとか、あるいは酵素補充療法で十分効果があれば そのまま正常に近い発達を遂げるとか、そういったさまざまな方面での薬剤の期待とい うものが持たれるわけです。先ほどの生物学的製剤と同じで静脈内に投与することで細 胞内に取り込まれて、まず細胞が正常化される。それに連れて周囲の結合織も正常化さ れていくものと期待されています。 ○永井部会長 ありがとうございました。では委員の先生方から御質問、御意見をお願 いします。 ○川西委員 国立医薬品食品衛生研究所の川西です。このアルドラザイムに関して、私 も関わっている未承認薬の検討委員会から、早く使えるようにということの強い希望も 出されている品目でもあり、私はこの結論は強く支持したいと思います。ただ、先ほど の説明の中で、私もこの品質の審査に関わっていますけれども、最初、おそらくそうい う事が起こるだろうと思っていた、製造に用いる血清の問題があります。結論としては、 メーカーが□□□□の製造から切り換える、それと共にという条件ですが、その中で品 質が同等以上ということを確認してから、ということなっております。そこの部分はメ ーカーにお任せするということの意味でしょうか。それをお聞きしたいと思います。 ○機構 趣旨は、監査か何かをするという意味の御質問でしょうか。 ○川西委員 要するに血清を切り換えた時に、一応、同等だということをチェックした ということに関しては、機構側は見るということですか。それとも、いわゆる軽微変更 的にそれをただ受けるということなのでしょうか。 ○機構 実際に承認書等については既にニュージーランドなど、より良くなるものにつ いては含めた形で取り込めますので、基本的には変更は速やかに手続なしで、より良い ものを入荷できるように法律上はなっていると考えています。あと実際に良いものを入 れられるようにというのは、海外ではアメリカ産はそんなに問題視されていませんが、 日本としてはニュージーランドとかのものがより良いとしているので、同等としてしま うと前に進まないという意味で同等以上という表現を使わせていただきました。  次に社内体制についても、特別にチームを作るようにということで、そういったもの が常にモニターして、最新の、胎児血清の産地が切り変わったものを、いつラインに入 れるのか、それが製品としていつできるのかをしっかりモニターして、入荷ロットを管 理して、それをコントロールするようにということも含めて申請者には指示しています ので、体制としてはそのまま動くと考えています。 ○川西委員 この辺は私が結構難しい部分もあるかなと思うのは、血清ですから、基本 的に何を同等ということの上でチェックするかということにも、多少は関わってくると 思います。同等以上ですから、ある部分糖鎖などは変わる可能性もありますし、そうい う意味でこういう時の判断というのは非常に難しいと思っています。ですから、どうい うふうにメーカーがチェックしたかということに関しては、多少とも審査側も関わった ほうがいいと思わないわけでもありません。 ○審査第一部長 同等以上という話は、これは常に、よく起きてくる話として製法がよ り改善されていく場合を想定しております。ただし、その改善された製品と改善される 前の製品が一時的に市場に存在していて、それをどこの国に配分するかということで、 かつてそのあたりについては問題があったケースも、過去に血液凝因子製剤などであっ たのではないかと思います。そうしたことを考えると日本の患者さんに提供されるもの は、どこかの在庫余りの古い製品を回されるようなことがあってはならない。そういう 点では、アメリカやヨーロッパで使われている製品と基本的に変わらないことを保証し てくれということです。これは企業に対して確実に誓ってくれというふうに言ったとい うことです。  具体的に製法が変わっていくような段階において、よかれと思って原料を変えて、か えって製品の品質が悪くなってしまったとか、変な副作用が出てきたといったことが起 きることは全くないとも言えませんので、それについては厳重に、どういう担保をして いくのかを、今日の御指摘も踏まえて企業とも相談してまいりたいと思います。 ○川西委員 ありがとうございます。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。土屋先生。 ○土屋委員 取扱い上の注意のところですが、添付文書を見ると、「希釈後速やかに使 用すること」というのはいいとして、「やむを得ず保存する場合は2〜8℃で保存し、 24時間以内に使用すること。希釈後の室温での保存は避けることが望ましい」と書いて あります。最後の「希釈後の室温での保存を避けることが望ましい」というのは余分か なと思います。  アメリカの添付文書はここを「36時間以内に使用すること」と書いてあって、日本は 何で24時間なのか分かりません。アメリカの方は保存することは勧められないと言い切 っているのですが、それを24時間にしたから避けることが望ましいと、またぼやかして いるのかなと思ったりします。ここら辺はかえって余分に書かずに、きちんと決めるの だったら決めたほうが、現場としては助かるということがあると思います。そもそもは、 やらないということであることは十分承知した上で、万が一のときのことです。  「外箱に記載された使用期限を過ぎた製剤を使用しないこと」というのが最初に出て くると、ただでさえ読まない添付文書ですから、またこんなことを書いているのかとい う話になっていくので、必要なことをなるべく早く前に出して書いていただくように御 検討いただけたらと思います。  もう1点は先ほどの名称のことですが、これが2件目で、これはどう見ても「アウ」 にはいかない、「L」に行ってしまうかなというのがあるものですから、そこら辺も御 配慮いただきたいというところで、その2点です。 ○永井部会長 いかがですか。 ○機構 先生の思いはよく分かりましたので伝えたいと思いますが、一応、薬事法的に は邦文が一般販売名あるいはレギュレーション対象ですので、英語の表記までなかなか 強く言うところはしんどいので、気持を伝えたいと思います。 ○土屋委員 保存については、いかがですか。 ○機構 保存については、また確認させていただきたいと思います。 ○永井部会長 そのほか、いかがですか。よろしいですか。特にございませんでしたら 承認「可」ということで分科会報告とさせていただきます。 ○永井部会長 遠藤先生、ありがとうございました。                 (遠藤参考人退室) ○永井部会長 議題2に戻ります。機構から御説明をお願いします。 ○機構 議題2、資料2のハイロタン錠について総合機構から説明させていただきます。 議題ではハイロタン錠となっていますが、既に類似名称のバイロテンシンがあることか ら、バスキュラン錠に販売名は変更することになっています。バスキュラン錠はアンジ オテンシンII受容体ブロッカーロサルタンカリウム50mgとチアジド系利尿薬ヒドロク ロロチアジド12.5mgを配合した降圧薬であり、平成7年以降、フランス、米国等、82 の国及び地域で承認されています。本邦では、萬有製薬株式会社より平成15年6月に「高 血圧症」の効能・効果で申請されています。本品目の審査に関して専門委員として、資 料 11に記載されている委員が指名されました。  本品目の審査の概略について説明させていただきます。第III相二重盲検比較試験の主 要評価項目は、投与開始後8週時における平均トラフ坐位拡張期血圧のベースラインか らの変化量で、本剤群は、プラセボ及び両配合成分の単剤群に比して、有意に高い降圧 効果を示しました。一方、ヒドロクロロチアジドを本剤の半量としたロサルタンカリウ ム50mg/ヒドロクロロチアジド6.25mg群と、ロサルタンカリウム50mg群の降圧効果の 間に有意差は認められませんでした。したがって本剤の配合組成には科学的合理性があ ると判断しました。  安全性に関しては、臨床試験における本剤の副作用は、ロサルタンカリウム及びヒド ロクロロチアジドの単剤それぞれで知られている副作用が発現したものであり、また過 度の血圧低下や腎機能及び血糖値への悪影響の懸念もありますが、これらに関する注意 喚起は添付文書に記載されており、適正に使用されれば承認の可否に影響するような安 全性に関する重大な懸念はないものと考えています。  本剤の対象患者に関しては、過度の血圧低下の恐れ等があることから、本剤は高血圧 症治療の第一選択薬として使用するべきではなく、またロサルタンカリウム50mg単剤で 効果不十分な場合に本剤を用いることに問題はないという点で、専門協議での意見は一 致しました。  これらのことも踏まえ、本剤の効能・効果は「高血圧症」とし、用法・用量において、 本剤は高血圧症治療の第一選択薬として用いない旨規定しました。さらに効能・効果に 関する使用上の注意に過度な血圧低下の恐れ等があり、本剤は高血圧治療の第一選択薬 としない旨記載しています。  また本剤と、ロサルタンカリウム50mgあるいはヒドロクロロチアジド12.5mg以外の 既存薬との比較検討は行われておらず、用法・用量に関する使用上の注意に、原則とし てロサルタンカリウム50mgで効果不十分な場合に本剤の使用を検討する旨記載してい ます。  市販後には、現時点で得られている情報が必ずしも十分とは言い切れない65歳以上の 高齢患者や、糖尿病を合併している高血圧症患者での有害事象発現等についても、情報 を収集する調査等が必要と考えますが、既に海外では広く使用されている実態もあり、 本剤は高血圧症治療の選択肢の一つとなり得ると機構は判断しています。  なお申請者は、日常診療下における本剤長期使用時の安全性情報を把握する特定使用 成績調査として、高齢者及び糖尿病合併患者に本剤が長期使用されたときの安全性情報 も探索的に検討する、最低3,000例のプロスペクティブな調査を行う市販後の調査の計 画の骨子を提出しています。  本剤は、新医療用配合剤であることから、再審査期間は6年とすることが適当と考え ています。また本剤は毒薬、劇薬、生物由来製剤及び特定生物由来製剤のいずれにも該 当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほどよろ しくお願いします。 ○永井部会長 ありがとうございました。御意見、御討論をお願いします。 ○岩崎委員 私、専門協議に出ていたのですが、本剤は配合剤としてのメリットがあっ て切れ味もいいので、第一選択としないということに関してはいいと思いますが、その 時に問題になったのは、結局、ロサルタンからこれに切り換えるというのはいいとして も、ほかのACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬からの切換えが問題になった と思います。結局、そこのところはどのように決着されたのかについて伺いたいと思い ます。 ○機構 いまの説明の中でも申し上げましたように、本剤を高血圧治療の第一選択薬と しないということは、用法・用量や効能・効果に関連する使用上の注意で明確にしてい ます。それから本剤の位置付けについて、臨床試験の成績を正しく情報提供することが 第一という考え方で、用法・用量に関連する使用上の注意のところで原則としてロサル タンカリウム50mgで効果不十分な場合に、本剤の使用を検討することと記載することと しました。専門協議で出ましたいろいろな御意見等を総合してそういう形での整理とし ています。 ○永井部会長 よろしいですか。 ○岩崎委員 結局、要するにロサルタンからの切換えはいいのですが、ほかの降圧薬か らの切換えは、別に禁止するわけではなくて、適切な情報提供にとどめるということ。 ○機構 適切に情報提供できるのがロサルタン50mgからの切換えのみということです。 効能・効果としては高血圧症ということですので、他の降圧薬から絶対に切換えてはい けないという規定にしているわけではありません。ただし、用法・用量に関連する使用 上の注意のところで、現時点で得られている情報を正確に記載しているという整理です。 ○谷川原委員 今の点も、この添付文書(案)を見ていて解釈を伺いたかったのです。結 局、ほかのARBから切換えてもいいということなのですか。というのは、海外の添付 文書を見ると、アメリカは同じように高血圧症の初期治療には使用しないと書かれてい ますが、ヨーロッパの場合は英国もドイツも含めて、ロサルタン単剤では十分にコント ロールできない高血圧症患者と明確に書かれているのです。原則としては分かるのです が、ほかの場合も排除しないということの解釈でよろしいのですか。 ○審査第二部長 どちらが主かという御質問であれば、これは原則ですので、ロサルタ ン50mgの後ということになっています。審査報告(2)で、その辺について専門協議で の御議論としてどういうものがあったか書いていますけれども、今申し上げましたよう に、その原則以外というところを完全に否定しているわけではありませんが、問われれ ば原則はロサルタン50mgの後ですという答えになります。と言いますのも、得られてる データがロサルタン50mgよりも、本剤の降圧効果が高かったものというものですので、 原則、ロサルタン50mgの後に使っていただくべきという形で情報提供するという整理に してあります。 ○谷川原委員 おそらく迷うのは、ロサルタン単独の場合は100mgまで用量を上げられ ます。ですからロサルタン50mgで効果不十分の場合に、この薬剤に切り換えるべきなの か。ロサルタンで最高用量まで上げてからこちらにくるのか、どちらを想定されている のですか。 ○審査第二部長 ロサルタン50mgで効果不十分な場合に、今までは100mgに増量か、あ るいは他剤への切換えという選択肢があったと思いますが、そこに本剤という新しい選 択肢が加わったということだと理解しています。そのうちのどれを勧めるかという情報 はありませんので、そこは臨床現場で患者さん個々を診察された上での医師の御判断に なると考えます。 ○谷川原委員 いろいろ疑問があって、高血圧治療の第一選択としないという部分の意 味ですけれども、最初の方です。効能・効果に関する使用上の注意の表現は、ARB以 外の降圧薬から一気にここに来るということは、想定はしていないということですか。 ○審査第二部長 少なくとも他の治療が行われ、かつ、その治療の中にロサルタン50mg があって、それから本剤が使われるということを想定しています。 ○谷川原委員 なるほど。だからACEインヒビターから、一気にこの薬剤ということ はなくて、必ずARBが入ってからこちらに来るという解釈ですか。 ○審査第二部長 「必ず」という言葉を使ってませんが、その辺は専門協議でもいろい ろ御議論があったことを踏まえているところがあります。基本は何かということであれ ば、ロサルタン50mgの後に使う薬剤という位置付けになっているということです。 ○谷川原委員 例えば、第一選択としてベータブロッカーとかカルシウム拮抗薬とか使 われていて、効果不十分なときに、この薬剤を上乗せして併用するということも、この 適応ではありなのですか。 ○審査第二部長 それをお勧めする情報は基本的にないわけです。ただし、その時の患 者さんの状況で、そういう使われ方をされてしまうことはあり得るかもしれません。 ○谷川原委員 ここの書きぶりは、お勧めはしないけれども排除もしていないというこ とですね。 ○審査第二部長 はい。 ○村勢委員 この品目に直接関連したことではないのですが、こういう配合剤というも のがどういう趨勢にあるかということをお聞きしたいのです。配合の薬剤のコンビネー ションとか、あるいは配合比というのがいろいろ問題になることは確かですけれども、 ある意味で配合剤というのはポピュラーな病気に関しては非常に合理的でもあり、実際 的にもいいのではないかと思います。そういう意味から今後、こういうような配合剤と いうのは増えてくる趨勢にあるのかどうか、薬剤の申請など今後の見通しについて教え ていただければと思います。いろいろと薬剤の申請に関しても、こういうような配合薬 剤というのは増えているのかどうか、今後の見通しというか、そういう趨勢にあるのか どうか教えていただければと思います。一般的なことで申し訳ありませんけれども。 ○事務局 ただ今のは配合剤一般についての御質問ですが、実は平成17年3月に、私ど もは配合剤として認められる医療用薬品の考え方について少し変更しました。医療用配 合剤については次のいずれかの事由に該当するものでなければ認められない、という従 来のルールについて1項目事由を追加し、患者さんの利便性の向上に明らかに資するも のについては、配合剤としての事由に該当するという解釈を示しています。それを受け て、この種の配合剤の開発が、現在、各企業で進んでいるという状況です。その意味で、 こういった類いの配合剤を今回承認するとすれば、これが最初のケースになりますから、 今後、こういった今回の事情も踏まえて開発・審査をしていくことになります。 ○谷川原委員 その用法・用量の規定ですが、1日1回1錠ということは書いてあり、 欧米の方は増量の規定があるのですが、今回の承認される予定はこのように言い切って いますから、これは増量ということはないという解釈でよろしいのですか。 ○審査第二部長 申請時のデータからは、増量の規定は設けられないと判断しておりま す。将来的なところまでは今は何とも言えませんが、現時点ではこの1用量ということ です。 ○谷川原委員 あと配合剤も前例がなくて、我々もこれが出てきたときにどう扱ったら いいか疑問があっていろいろお伺いしたいのですが、例えばロサルタン50mgで本薬に切 り換わり、本薬でなおまだ効果が不十分の場合は、ロサルタンとしては1日100までい けるわけですよね。ですから、この薬剤とロサルタンに50を追加するというオプション はありなのですか。そういうのは考えていませんか。 ○審査第二部長 基本的に、そうゆうデータはありません。ただし、実際、単味の製剤 で承認された後、いろいろ現場で使われることはあり得る訳で、現実に単剤同士でも2 剤、3剤併用されている例もありますので、その辺はあるかもしれませんが、今、それ を推奨するデータは基本的にありません。 ○谷川原委員 推奨はされないですけれど、そういう処方が出てきて実際に処方監査と かをするときに、調剤時にそういったものがいいのか邪道なのか、ある程度スタンスを はっきりお伺いしておかないと、よく分からない。 ○審査第二部長 基本的なスタンスとしては、本剤ではロサルタンとヒドロクロロチア ジド双方の良いところと悪いところが出てきますので、併用注意等は見ていただく必要 があります。添付文書では、両方の薬剤の特徴を踏まえて整理していますから、その辺 は留意していただく必要があります。あと効かなかった場合、他の薬剤との併用という ところに関しては、データはないというのが現状です。 ○谷川原委員 この添付文書(案)を拝見して、いろいろ具体的な疑問が出るのですが、 今、坂本部長がお答えになったことについて、どうやって医療現場の個々の末端のレベ ルまでそれを伝えることができるか懸念しています。というのは、第一選択としないと かいろいろ縛りを入れて添付文書に書いてあっても、実際にそれが処方箋で調剤すると きの処方監査で分かるかというと、分からないですし、レセプトとか見ても分からない。 どうやってそれを担保したらいいのか、現場ではいろいろ疑問が出てくるのではないか と思います。 ○審査第二部長 申請者の方に、本日の部会でこういった御意見も出たことを踏まえて、 現場への情報提供の徹底を図るよう促すことは、可能です。 ○機構 先ほど先生からお話があった配合剤と他の併用については、高血圧治療のガイ ドライン等を見ると、治らない患者さんの併用については推奨されています。それなの で、純粋に3剤併用とかに関しては、それを止めるものはないのですが、その順番とし て、2剤同時の話ですから、これが後か先かという話とは違ってくると思います。 ○谷川原委員 併用は分かっています。私がお伺いしたのは、この薬剤とカルシウム拮 抗薬の併用はあり得るかと思うのですが、この薬剤とロサルタンそのものの併用が推奨 されるのかされないのか。 ○機構 推奨するかどうかは別として、最高用量までいったところで、薬剤の併用はガ イドライン上もあり得る話なので、それを全く禁止することはできないと考えています。 ○谷川原委員 配合剤というのは、昔で言えば約束処方みたいなもので、定型的なパタ ーンでコントロールできればいいのですが、それがあまりにロサルタンの単独などと組 み合わせる例が多くなってくると、あまり意味がないということになってしまいます。 ○機構 これが1用量しかないものですから、よけいにそのような議論が出てくるのか とは思いますが、海外を含めて多くのラインナップを揃えている配合剤はありますので、 そうゆうものであれば御懸念のようなことはないようになると考えています。配合剤を 推奨するわけではないのですが。 ○村勢委員 今の谷川原委員の話を少し広げると、インスリン製剤というのがあって、 速効性と遅効性があります。プロポーションは速効性が10から50まで全部揃っていま す。それと同じように、あるものの配合比を変えたものが新製品として出てくることは あまり面白くないことです。それならば初めから単剤で、それをコンビネーションに使 う、配合剤にしないほうがいいわけです。  先ほど、これが配合剤の最初であるという話もありましたが、そうすると、今後いろ いろなことが出てくる可能性があるので、それをどうやって整理するかも大きな問題に なってくるかと思います。これは質問ではなくて、谷川原委員の発言を聞いていて、そ のようなことに発展したら困ると思ったわけです。 ○審査管理課長 御指摘、どうもありがとうございます。今、村勢委員から御指摘があ りましたように、基本的にはこれらのものについては医師の処方ということですので、 単剤で必要な薬剤を見て、足りなければ併用していく、それぞれの用量も増減するとい うことです。現在の治療は基本的にはそれで回っているのだと思います。  適切な組合せで、いちばん使いやすいような用量の組合せがあれば、そういったもの も認めてはいいのではないかということです。配合剤が出たら、個別同士を処方できな くなるわけではありませんので、そこは従来どおりもできるし、固定用量での組合せで、 きちんとコントロールできる方には、それを使っていただければいいわけです。それで まずければ、先ほど谷川原委員から御質問があったように、これにロサルタンを組み合 わせる。それぐらいやるのであれば、ばらしてそれぞれの処方にしたほうがいいのかも しれませんし、そこはそれぞれの臨床の現場での判断になると思います。したがって、 あらゆる組合せがいろいろ出てくるとは、私どもは想定しておりませんし、審査に当た ってもその程度を基本で当たっていきたいと考えています。 ○谷川原委員 気になる部分もあります。どういう使われ方をするのか使用成績調査で、 どういう使用実態になるのかは調査していただければと希望いたします。 ○審査第二部長 市販後には定期的な報告もありますので、その辺も把握できるように 検討いたします。 ○谷川原委員 その場合は、高血圧症に対する第一選択薬でしないというところが、分 かるような形の調査でしていただければとお願いします。  別件ですが、今回の承認の根拠になった、臨床試験でいちばん大事なのは、6群比較 の第III相試験だったと思うのですが、301試験です。このエントリークライテリアが、 前治療について特に規定がなく、未治療のケースも既治療のケースも、言わば両方入っ たポピュレーションでスタディーをしているのです。そういう試験を根拠にして、与え る承認が第一選択にしない、セカンドラインに限定ということでしたら、この試験と中 身が捻れているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○審査第二部長 御指摘はごもっともなところがございます。現実の問題として、こう いう試験があったのですが、薬剤の性格及び出てきたデータから審査の過程で御説明し たような整理をしたというところはございます。 ○谷川原委員 現実に、ここでエントリーされた患者数の中で、どちらが多かったので しょうか、既治療例の方が多かったのですか。 ○機構 概要の2-7の246ページを御覧いただくと、患者背景、いちばん上の方に前治 療の有り無しがあります。各群に偏りはないとなっています。 ○谷川原委員 こういう配合剤を考えるときは、単剤からの切換えということになると、 通常は単剤と配合剤の主薬の生物学的同等性を押さえなければいけませんよね、50から 50+12.5へいくのでしたら。そうしたときに、今回の生物学的同等性は、審査報告書に 書いてあったのですが、メルク製のロサルタン錠との同等性の試験であったと書いてあ るのです。少し気になったのですが、日本の萬有製薬のロサルタン錠と、この薬剤との 同等性は検討されているのですか。 ○審査第二部長 御質問の答えとは違うかもしれませんが、本剤はロサルタン50mgより もさらに有意な効果を期待していますので、同等性というよりは、むしろ重視すべきは 臨床試験成績として、配合したことによる結果が出ていることであるかと思われます。 ○谷川原委員 配合剤の考え方として、配合する成分と、元の単剤との同等性は重視し ないということですか。 ○審査第二部長 もしそこを限定してしまうと、配合によってADMEが変わってくる ような場合、それを認めないということになってしまいます。そういう原理原則ではな いと理解しております。 ○谷川原委員 確かにそういうこともあり得ます。 ○審査第二部長 配合で吸収をよくしてという話は認めないという話になると、少し話 がおかしくなる可能性もあると思われます。 ○谷川原委員 分かりました。配合剤の考え方として、同等性の問題と配合剤の相互作 用の問題で、おっしゃったように相互作用を利用して効果を上げるケースが確かにあり ますから、そういう場合はおそらく同等にはならないですし、今回の場合は全く相互作 用はない組合せですから、どちらでもいいのかなという感じですかね。 ○審査管理課長 これはおそらく、海外のロサルタンと今日本で売られているものの同 等性は、当然確保されていますよね。当初の承認の際にきちんとやってあるはずですが。 ○審査第二部長 データですので確認して。 ○谷川原委員 最後に名称のことなのですが、ハイロタンからバスキュランへ変更する というのはなぜかなと思ったのですが、先ほどバイロテンシンと似ているということな のですが、実際に使っている立場で、バスキュランという血管を連想するような名前よ りは、ニューロタンを配合していることを連想させるハイロタンの方が、個人的にはし っくりいくのですが、そんなにバイロテンシンとハイロタンが近いとは思えないのです が、何かそういうクライテリアで評価されたのですか。 ○審査第二部長 例の販売名のチェックシステムでチェックしますと、そうなったとい うことです。今の名前もまずいということであれば、さらに検討させます。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。実際に使う立場からすると、いきなり配合剤では なくて、本当は単剤を併用してみて、反応のいい方に、そしてある程度投与量がフィッ クスした方に配合剤というのが、リーズナブルな使用法なのだと思うのです。ですが、 実際に市販後にどういう使われ方をするか、それは現場に任せてみて、調査をして、必 要があれば修正をするということでいいかと思います。ただ、これからいろいろな配合 剤が出てくる可能性があるので、ときどき議論は整理しておいたほうがいいかと思いま す。よろしいでしょうか、もしよろしければ承認「可」ということで、分科会報告とさ せていただきます。 ○永井部会長 御議論ありがとうございました。議題3です。機構から御説明をお願い いたします。 ○機構 議題3、資料3の注射用オノアクト50について御説明します。注射用オノアク トの有効成分塩酸ランジオロールは短時間作用型β1遮断剤であり、本剤は、交感神経 系のβ1受容体に選択的に結合し、カテコールアミンの作用に拮抗し、抗不整脈作用を 示します。既に小野薬品工業株式会社が、平成14年7月に「手術時の下記の頻脈不整脈 に対する緊急処置(心房細動、心房粗動、洞性頻脈)」の効能・効果で、本剤の承認を得 ております。今般、臨床試験成績に基づいて、手術後の適応を追加する承認事項一部変 更承認申請がなされたものです。本品目の審査に関して、専門委員として、資料11に記 載されています委員が指名されました。  審査の概略です。手術後7日以内に、心拍数120回/分以上の上室性頻脈性不整脈が生 じた患者を対象とした第III相二重盲検比較試験における主要評価項目は、投与直前の心 拍数に対する20%以上の徐拍化、かつ投与終了時の心拍数100回/分未満を認めた症例 の割合で、本剤群は、プラセボ群に比して有意に高い効果を示しました。  臨床試験における本剤の用法としては、手術時の適応と同様、1分間の急速静脈内投 与と、それに引き続いた10分間の静脈内持続投与が選択されました。用量については、 0.03mg/kg/minで1分間静注後0.01mg/kg/minで10分間の投与をする低用量と、その倍 の 0.06mg/kg/minを1分間注射して0.02mg/kg/minを10分間注射する中用量、さらにその ほぼ倍で、手術時の用量と同じ0.125mg/kg/minで1分間の後0.04mg/kg/minで10分間 投与する高用量の3用量が設定され、低用量または中用量から投与を開始し、効果不十 分な場合はそれぞれ中用量または高用量に増量して、有効性及び安全性が比較、検討さ れました。  その結果、低用量からの投与開始では、49例中44例が効果不十分とされ、中用量に 増量されました。さらに、低用量と中用量で安全性に大きな差はなかったこと、中用量 から投与を開始したほうが、結果的に本剤の総投与量が少なかったこと等から、機構は 中用量を開始用量として、効果不十分な場合は高用量に増量する投与法とするのが妥当 と判断いたしました。  安全性に関しては、本剤の半減期が数分程度と短いことを考慮しても、血圧低下や過 度の心拍数減少の懸念はあります。このため、手術後の本剤の使用は、ICU、CCU 及びそれに準じた全身管理が可能な施設に限定し、心電図モニターを用い、心拍数の監 視、血圧の測定を行いながら投与する旨の注意喚起が、効能・効果に関する使用上の注 意として記載されております。  また、循環動態の評価、不整脈診断及び呼吸・循環等の全身管理に十分な経験を持つ 医師が使用するよう、同じく効能・効果に関連する使用上の注意に記載されており、適 正に使用されれば承認の可否に影響するような安全性に関する重大な懸念は認められな いと判断しています。  以上より、効能・効果は、「手術後の循環動態監視下における下記の頻脈性不整脈に 対する緊急処置(心房細動、心房粗動及び洞性頻脈)」として、本剤を手術後の頻脈性不 整脈の治療の選択肢の一つとすることは可能と判断いたしました。  なお、申請者は市販後において、臨床試験では症例の少なかった発作性心房粗動への 投与も含め、本薬の使用実態下における患者500例を対象として、手術後の本薬使用期 間中及び本薬使用終了後から1週間程度までの副作用の発生状況を把握するとともに、 年齢、肝・腎機能等、安全性及び有効性に影響を与えると考えられる要因について、重 点的に検討する調査を行う計画の骨子を提出しています。  本剤は新効能医薬品であることから、再審査期間は4年とすることが適当と判断して います。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほどをよろしくお願いします。 ○永井部会長 御質問、御討論をお願いします。 ○機構 追加させていただきます。本日、資料3-2として追加で添付文書の変更をお出 しします。5ページで、重要な基本的な注意の8、9の記載、手術時と手術後の記載で すが、この記載の内容が多少異なっていて、手術時と手術後の注意事項が変わったよう な印象を与えましたので、これを統一しました。もう1点は、10ページの臨床成績の手 術後の6番の数値が間違っていたので、修正しました。以上です。 ○永井部会長 これまで手術時については認められてきたということです。適応につい ても、今回のように心房細動、心房粗動、洞性頻脈の三つでよろしいのでしょうか。 ○機構 同様でございます。 ○永井部会長 いかがでしょうか。かなり循環動態のことをよく分かっている人が使わ ないと、頻脈だからといって使うと、血圧低下を招くことがあります。その辺の注意と しては、ICU、CCUでの使用に限るということです。よろしいでしょうか、もしよ ろしければ承認「可」ということで報告させていただきます。 ○永井部会長 どうもありがとうございました。議題4にいきます。概要の説明をお願 いします。 ○機構 議題4、資料4です。エストロジェル0.06%について、医薬品医療機器総合機 構より御説明いたします。なお、販売名の「エストロジェル」については現在検討中で すが、承認時には適当な他の販売名に変更される予定です。  本剤は、ホルモン補充療法(HRT)に用いられる外用ゲル剤で、定量吐出式のポンプ 容器の製剤として開発されました。用法・用量が、1日1回2プッシュ1.8g、エストラ ジオールとして1.08mg を両腕の手首から肩までの広い範囲に塗擦するとなっています。 有効成分であるエストラジオールは経皮的に血中に吸収されます。  本品目の開発において、国内では第I相薬物動態試験、第II相用量設定試験及び投与 部位洗浄の影響を検討した臨床薬理試験、第III相の臨床的有用性試験及び長期投与試験 が実施され、ブリッジング試験と位置付けた国内での第II相用量設定試験と米国第III相 試験との比較に基づいて、海外で実施された他剤との比較臨床試験等を外挿する臨床デ ータパッケージにより承認申請がなされました。  海外では、平成17年10月時点で、定量吐出式のポンプ容器の製剤は、欧州、米国を 含め計44カ国で承認されています。欧州の用法・用量は、通常1日1回2.5g、1日量 1.25gから5gまで適宜増減が可能です。一方、米国では、1日1回1.25gの単一用量で のみ承認されております。  国内における同種の医薬品として、エストラジオールを含有する貼付剤、結合型エス トロゲンを含有する錠剤、エストリオールを含有する錠剤及び注射剤等が承認されてお ります。本品目の審査に関して、専門委員として資料11に記載されている委員が指名さ れました。  機構における審査の概略を説明します。品質及び非臨床については、審査の過程にお いて申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと判断いたしました。臨床試験成 績について、国内第II相用量設定試験では有効性主要評価項目であるHot flush回数の 最終改善度において、本剤1日量1.8gでプラセボ群に対する有意差が認められました。 本試験と、米国第III相試験との比較に基づいた申請者の考えるブリッジングについて、 機構は、米国ではプラセボ、1.25g及び2.5gによる検討がなされ、国内で検討された1.8g は米国の試験では検討されていないこと、米国第III相試験では検討用量間でリニアな有 効性の関係が認められ、一方、国内の用量設定試験での1.8gと2.5gの有効性は同程度 であったこと、また、米国ではプラセボと有効性が認められ承認用量となっている1.25g は、国内ではプラセボに対する有効性を認めなかったことなどから、これら両試験の比 較に基づいた国内外の用量反応関係の類似性の検討は困難であり、申請者の考える外挿 は不可であると判断いたしました。  しかしながら、更年期障害等に対するエストロゲン補充の意義及びこの目的に用いら れるエストラジオールの薬理作用は明確であり、機構は、用量設定試験を含めた国内臨 床試験の成績より、更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状(Hot flush及 び発汗)に対する本剤1日1.8gの有効性は示されていると判断いたしました。  安全性について、国内臨床試験における有害事象等は、既承認エストラジオール製剤 及び海外における本剤の成績と同様でありました。しかしながら、本剤1.8g/日反復投 与時の定常状態での血清中エストラジオール濃度は、既承認貼付剤で報告されている値 より高い傾向を示しており、血清中エストラジオール濃度が高濃度で持続する場合の安 全性には懸念があることから、副作用等に十分留意するとともに、定期的な血清中エス トラジオール濃度等の測定を行い、高濃度で推移する場合には、投与を中止するなどの 対応が必要であると判断いたしました。添付文書の重要な基本的注意3、4において、 その旨の注意喚起が行われました。  本剤は、国内臨床試験での血清中エストラジオール濃度推移及び米国臨床試験での 1.25g/日の有効性等から、1.8g/日より低用量でも有効である可能性があります。また、 Women's Health Initiative(WHI)試験等の複数の臨床試験成績を基に、ホルモン補充 療法においては、必要最少量を必要最短期間で投与することが推奨されている現状を踏 まえて、機構は、本剤1.8g/日よりも低用量の有効性を検討する追加臨床試験を市販後 に実施し、減量が必要な場合等に対応可能な用量設定を検討する必要があると判断いた しました。  申請者から、本剤1日量□□が1.8g による血管運動神経症状の改善を維持し得る用 量であるかを確認する市販後の追加臨床試験の計画が提出され、その成績によっては、 承認事項の一部変更承認申請も検討される予定です。  また、市販後に得られた情報に基づき、1.8g/日よりも低用量の設定のためのさらなる 臨床試験の実施も含めて、その後の対応について検討し、遅くとも再審査期間中を目処 に報告される予定となっております。以上のような検討を行いました結果、本剤を承認 して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当 であると判断いたしました。本剤は、原体及び製剤ともに毒薬及び劇薬のいずれにも該 当せず、再審査期間は4年、薬事分科会へは報告を予定しております。御審議のほど、 よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 御質問等はございますか。 ○村勢委員 使用上の注意のことです。読みますと、こういう患者には慎重に投与すべ きであるという言葉、特に、使用前に関しては、こういう患者には投与しないようにと 除外規定のようなことが記述されているのです。使用中は血液中のエストラジオールを 定期的に測定するという表現があるのですが、使用中は「乳がんや子宮がんのチェック が定期的に必要」という項目も含まれていないといけないのではないかと思います。添 付文書にもその辺のことは書いていません。ただ、これに注意しなければいけないとい う表現です。そのほか、ホルモン剤であって、効果がなかなか形として認められるもの ではなくて、臨床症状に則ってということもあるのだと思いますが、漠然とした表現が 非常に多いと感じました。  必要最少量を短期間に使用するという表現が何回も繰り返されているのですが、これ も非常に漠然とした表現で、どのようにも解釈ができるので、どうにかならないのかと 感じました。具体的に卵巣を摘除した患者の場合には、漫然と使ってしまうこともあり 得ると思うのですが、更年期障害の場合でも、閉経からどのぐらいでHot flushが消え るのかとか、どのくらい症状は持続するのかも含めて、漠然とではなくて、条件をはっ きり書くことができないかと感じました。  質問は、一つは使用中に具体的に乳がん、子宮がんのチェックをする項目も入れてお かなければいけないのではないかということ、そのほかあちこちに出てくる漫然とした 表現を、もう少し具体的に示さないと、書いたのはいいですが、ずっと無反省に使用し てしまうことにはならないかという2点があります。  それから、エストロゲンを長く使うとよくないというのは、一つはアメリカであった Women's Health Initiativeという大きな試験と、もう一つ大切なのは、同じころに出 た、イギリスを中心としたMillion Women Studyというのがありまして、それもエスト ロゲンを長期に使うと副作用が出るという根拠にもなっています。きちんとその辺の引 用も必要なのかと思います。 ○審査第二部長 最初の御指摘の乳がん、子宮がんにつきましては、重要な基本的注意 の2番で、2行目から「使用開始後は定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと」 という記載はしていますが、それで不十分という御指摘でしょうか。 ○村勢委員 分かりました。 ○審査第二部長 次の御指摘ですが、血中濃度のチェックは本剤に特異的な記載ですが、 他のところは、基本的にすでにあるエストラジオール製剤と添付文書の記載との整合性 も必要ということで、整理した上で記載しています。具体的に書ける条件の設定がなか なか難しいところがあって、現状はこのような記載になっているところはございます。 ○審査管理課長 確認しましたら、村勢委員から御指摘のありましたエストロゲンに関 するこれまでのいろいろな疫学的な発表とか、そういった学術論文を踏まえて、添付文 書等の改定は、既存のエストロゲン製剤でやっているということで、それとの横並びで 今回も整備をしているということで、これまでのいろいろな研究報告等については、そ れぞれの文献まで現在はチェックできませんが、その辺は整合性は取れているはずです。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。先ほどの「漫然と投与しないための注意」という のはどこかに明文化されていますか。 ○審査第二部長 重要な基本的注意の1番で、外国の試験の報告を書いた上で、「本剤 の使用にあたっては、患者に対し本剤のリスクとベネフィットについて十分な説明を行 うとともに必要最小限の使用にとどめ、漫然と長期投与を行わないこと」となっていま す。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。 ○谷川原委員 薬物動態の臨床の方のデータを拝見すると、審査報告書にも議論があっ たのですが、ばらつきが大きいです。同じ用量なのに試験間で随分血清中のE2濃度の 違いがあるということは、このデバイスの1回の吐出量が正確に出るのかということと、 もう一つの疑問は、腕からの経皮吸収性にかなり個人差が大きいのかと思うのですが、 その辺りはどうお考えでしょうか。 ○機構 吐出量に関しては、規格及び試験方法で、吐出量試験を設定していまして、そ れによって一定の量が出るよう設定されております。臨床試験で用いた製剤についても、 吐出量の検討を行っており、一定の量が吐出されていることは確認しています。 ○谷川原委員 今までの経皮吸収製剤というのは、あまり腕からというのはないと思う のです。その部位による吸収性の個人差はかなりあるのですか。 ○機構 臨床試験で得られている血清中濃度のばらつき、個人差については、特に閉経 後の女性等は内因性E2の影響が残っていたりということもありまして、非常に個人差も 大きく、試験間のばらつきが大きく出ていることはあります。  また、腕からの吸収について、このゲル剤は投与面積に吸収が依存するというデータ が出ていて、広い面積に十分に塗り広げることが非常に重要になっています。この点に ついて専門協議で十分に塗り広げるようにという指摘がありまして、用法としても、両 腕の手首から肩までの広い範囲に塗擦することになっています。  両腕の面積が大体3,000c平方メートルで、この1.8g をできるだけ広く延ばすのに十分な面積で あるので、この用法を徹底することによって、十分な吸収がされる用法になっていると 考えています。 ○谷川原委員 その辺りの説明については、患者向け説明文書などは作られるのですか。 ○機構 患者向けの説明文書は海外でもありまして、それと同レベルのものを国内でも 作るように指示しております。添付文書に書いてある内容に加えて、もう少し具体的な 用法についての説明も含めた説明文書を検討しているところです。 ○谷川原委員 最初の吐出量のことなのですが、今、添付文書には、最初に2、3回空 打ちをすることは書かれていませんよね、書かれていますか。そういうことも含めて、 患者向けの情報提供をしていただくということで、よろしくお願いします。  別件です。添付文書の臨床成績のところで質問なのですが、用量設定試験の結果と長 期投与試験の結果が書いてあるのです。ここで「Hot flush回数」と書いているのです が、審査報告書は、主要評価項目は最終改善度なのですが、数値が少し違うのです。同 じ意味なのですか。添付文書に書かれている数値が、審査報告書に書かれている数値と 違うのです。 ○機構 御指摘を踏まえて、添付文書の記載は今後検討いたします。国内用量試験での 評価はHot flushの回数を基に、スコア化をして、最終改善度という評価を行っており ます。一方で、回数で示したほうが理解しやすいこともありますし、そういう意図で申 請者もこのようにしたのではないかと推察しますが、臨床試験成績の提示の仕方につい ては、今日の御意見も踏まえて検討させていただきます。 ○谷川原委員 添付文書に書かれているデータの根拠になるのは、審査報告書に数値が 出ていたほうが分かりやすいと思いましたので質問しました。 ○土屋委員 この容器が30と80となっています。海外で2.5を使っているところでは 80を使っているようですが、我が国の場合は1.8で、なおかつこれから低用量を探して いこうというときに、30と80のうち、果たして80がいいのかどうかということです。  それから、これはここの部会でやる話ではないかもしれませんが、これは1本単位で 薬価が下りるのか、グラムで下りるのかは知りませんが、そうしたときに二つの容器が 本当に必要なのかという気もするのです。 ○機構 容器の規格については、委員の御指摘のとおり80gの方は処方の問題もあって、 これについては申請者の方にも話をしています。添付文書では80gも記載していますが、 できれば30gの容器1種類のみと考えております。 ○岩崎委員 WHI試験では非常にインパクトの強かった結果だと思うのですが、それ プラス村勢委員が御指摘の別のスタディが出て、非常に大きなインパクトを与えたわけ です。その後にいろいろと後追いの結果が出て、統計学の学術雑誌でも、デザインの問 題があるとか、いろいろな論文が出ていました。統計で出るぐらいですから、臨床でも 出ていると思うのですが、基本的にWHI試験の結果は、コンセンサスとして大きなも のであると御判断されているということでよろしいのでしょうか。あれは少し変だった ではなくて非常に重要な結果であったと。この審査報告にも反映されていると思うので すが、非常に重要な結果であったと御理解されているのでしょうか。 ○審査第二部長 添付文書等もそういうものを踏まえおりますように、重視しておりま す。 ○永井部会長 他にございませんか、よろしいでしょうか。そうしましたら承認「可」 ということで、分科会報告とさせていただきます。 ○永井部会長 ありがとうございました。議題5について機構から御説明をお願いしま す。 ○機構 議題5、資料5の医薬品アレグラ錠の30mg輸入承認及び同60mgの輸入承認事 項一部変更承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明します。  本剤の有効成分である塩酸フェキソフェナジンは、テルフェナジンの主活性代謝物の 塩酸塩であり、テルフェナジンで問題とされたQTc延長の副作用を改善するために開 発された選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とする抗アレルギー薬です。  本邦では、既にアレグラ錠60mgが成人に対して2000年9月に「アレルギー性鼻炎、 蕁麻疹」、2002年4月に「皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎) に伴うそう痒」の効能で承認を取得しています。  今般申請者は、アレグラ錠30mg については、7歳以上12歳未満の小児における新用 量における剤型追加に係る承認申請、既承認製剤であるアレグラ錠60mgについては、12 歳以上の小児への適応拡大に係る一部変更承認申請を行いました。  海外におきましては、本薬のカプセル剤または錠剤は、12歳以上の小児から成人に対 して、米国、欧州各国を含む100以上の国と地域で承認されています。また、6歳以上 12歳未満の小児に対しても、72カ国と地域で承認されています。  本品目の専門協議では、本日の配付資料11に示すような方々が専門委員として指名さ れています。審査内容について簡単に御説明します。本品目の規格及び試験方法、安定 性、薬理、薬物動態、毒性に関して提出された資料の内容には、特段の問題はないと判 断しております。  臨床成績です。日本人小児通年性アレルギー性鼻炎患者127例を対象に実施された第 III相試験では、本薬30mgを7〜11歳の患児に、本薬60mgを12〜15歳の患児に、1日 2回、4週間投与することにより、主要評価項目である鼻アレルギー症状合計スコアの 投与前からの変化量において、フマル酸ケトチフェン群に対して非劣性が示されました。  また、日本人小児アトピー性皮膚炎患者162例を対象に実施された第III相試験でも、 同用法・用量で、4週間投与することにより主要評価項目である、かゆみスコアの投与 前からの変化量において、フマル酸ケトチフェン群に対し非劣性が示されました。  安全性に関しては、国内臨床試験での安全性解析対象症例158例中の副作用の発現率 は8.2%です。主な副作用は眠気であり、重篤な副作用は認められておりません。しか しながら、日本人小児での使用経験が限られていること、長期に投与される可能性を否 定できないことから、製造販売後調査を実施して、投与期間と有害事象との関係につい て確認できるように、申請者に求めております。  また、本剤は錠剤であり、体重に応じた用量調節を行わないことから、小児では年齢 と体重の関連には特に留意する必要があると考えられ、母集団薬物動態解析を目的とし た製造販売後臨床試験を実施することとしています。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、小児におけるアレルギー性 鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう 痒症に対する本品目の有用性は認められ、承認して差し支えないとの結論に達し、本第 一部会で御審議いただくことが妥当と判断いたしました。  本品目は新用量薬品、剤型追加に係る医薬品であることから、再審査期間は4年間、 原体及び製剤はともに毒薬、劇薬、生物製剤及び特定生物製剤のいずれにも該当しない と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。よろしく御審議 のほどお願い申し上げます。 ○永井部会長 御討論をお願いします。外国と同じ量ということですね。 ○機構 外国と同じ用法・用量が選択されています。 ○永井部会長 もし御意見がなければ、このまま承認「可」ということで報告させてい ただきます。 ○永井部会長 どうもありがとうございました。議題6ですが、御説明をお願いします。 ○機構 議題6、資料6です。医薬品タケプロン静注用30mgの生物由来製品または特定 生物由来製品の指定の要否、製造承認の可否、再審査期間の指定並びに毒・劇薬の指定 の要否について、機構より御説明いたします。  申請効能である出血性の消化性潰瘍に対する現在の治療法として、緊急内視鏡検査に より、出血の有無及び出血源の確認を行い、噴出性出血、湧出性出血、または露出血管 の存在が確認された患者は内視鏡により直接出血部位を止血する、いわゆる内視鏡的止 血術の適応となります。  内視鏡的止血術により、通常は一端、止血状態は得られますが、胃酸分泌により胃液 pHが4以下に低下すると、血小板凝集の低下や凝集塊の再解離が見られ、止血部位か らの再出血を起こす可能性があるため、止血のための血小板機能を正常に維持し、持続 的な止血効果を得るためにはpHを高値に保つ必要があるとされています。このため、 内視鏡的止血術後、さらに胃酸分泌抑制薬の静脈内投与が行われています。  本剤の有効成分ランソプラゾールはプロトンポンプの阻害剤であり、胃酸分泌の最終 過程であるプロトンポンプとして働く壁細胞の酵素H/K ATPaseを阻害することにより、 胃酸分泌を抑制し、胃内のpHを上昇させる薬理作用を有しています。  ランソプラゾールはすでに胃潰瘍等の効果・効能として承認されておりますが、本申 請では経口剤よりも速効性が要求される、または経口剤の投与が困難な出血を伴う胃潰 瘍、十二指腸潰瘍等の患者に対する投与を目的として開発され、新投与経路医薬品とし て製造承認申請が行われたものです。  本品目の専門協議では、本日の配付資料11に示すような先生方が指名されています。 本剤において、比較及び試験方法、毒性、薬理、吸収、ADMEに関して提出された資 料の内容が妥当であると判断いたしましたので、臨床試験成績を中心に述べさせていた だきます。評価資料として臨床薬理試験4試験、第II相試験が2試験、第III相試験の3 試験の成績が提出されております。有効性についてですが、本剤については対象薬を設 定して、第III相試験としてCCT010試験、CCT302試験の二つの試験が実施されてお ります。後期第II相試験ではヒスタミン受容体阻害剤の一種ファモチジンを対象薬とし て、投与後36時間及び72時間以内の止血率を主要評価項目とする本剤15mg及び30mg 1日2回の用量設定試験が実施され、いずれの用量もほぼ同じ有効率を示したことから、 第III相試験の用量としては15mg1日2回が選択されています。  しかし、ファモチジンを対照として、本剤15mg1日2回の用法で投与後36時間以内 の止血率を主要評価項目とする第III相試験ではファモチジンに対する非劣性は検証され ず、本剤の有効性は立証されませんでした。  申請者はこの後、本剤の用量を30mg1日2回とし、同じくヒスタミン受容体阻害剤で あるロキサチジンを対照薬とする第III相試験を実施し、主要評価項目である72時間以内 の止血率において、対照薬に対する非劣性が検証されております。  本剤の臨床推奨用量の決定においてこのような経緯があったことから、審査において は本剤の用量設定の妥当性について議論を行いました。申請者は30mgに用量を上げたこ とによって有効性が得られた理由として、臨床薬理試験の成績を基に、15mg投与では投 与後早期の胃内pHの上昇作用が不十分であった可能性があると説明しておりますが、 あくまでも推論で検証されたものではないものでした。機構としては、後期第II相試験 及び二つの第III相試験における有効率が試験ごと大きく異なることも含め、試験結果の 再現性に問題があるのではないかと考えました。  しかし、本剤投与の対象となる患者の多くでは、本剤投与前に既に止血部位に対して 内視鏡的止血術が施行されており、本剤及び対象薬により得られる持続的な止血効果は 内視鏡的止血術の正否に依存すると考えられること。内視鏡的止血術は近年急速に進歩 しており、実施時期が7年近くも異なる二つのIII相試験の成績を直接比較してその移動 を議論することは難しいと考えられることから、このような試験結果の差の原因につい て明確に説明できるものは見当たらないものの、現在の医療環境に近い条件から実施さ れたと考えられる2回目の第III相試験の試験結果が必ずしもすべて否定されるものでは ないと考えて、指摘用量は必ずしも明らかではないですが、安全性上、特に問題となる 副作用が認められなかったことも考慮に入れて有効性は認められたと判断いたしまし た。安全性については、対象薬であるロキサチジン注射剤に比べて特記すべき副作用は 見当たらず、また、一連の臨床試験においても特段問題となる有害事象は認められませ んでした。  以上のとおり機構での審査の結果、経口投与が困難な出血を伴う胃潰瘍、十二指腸潰 瘍、急性ストレス性潰瘍及び急性胃粘膜病変の患者に関して有効性が認められ、安全性 についても受認可能であると考えられたことから承認して差し支えないと判断し、医薬 品第一部会で審議されることが妥当だと判断いたしました。なお、製剤は毒薬にも劇薬 にも該当せず、生物由来製品または特定生物由来製品にも該当しないと判断いたしてお ります。また、再審査期間は新投与経路医薬品であるため6年と判断しております。薬 事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御質問、御討論をお願いいたします。 ○土屋委員 確認ですが、高齢者への投与のところで、報告書の中で一般的な、要する に、提出された添付文書(案)では読み取れないからもっときちんと書けというようなこ とを言っているのは、この今の文章では駄目ですよ、ここが変わるということを意味し ていると考えてよろしいのでしょうか。 ○機構 審査の過程において、実際に高齢者や低体重とかの患者に、結果的に有害事象 が多く見えたということもあって、特段注意すべき可能性があるかどうかについて着目 をして、実際に消化器専門の先生方とも協議をしたのですけれども、特にそういった患 者群は一般的にそういうのが出やすい群であって、特段この薬の薬理作用に基づいて注 意を喚起しなければいけないものではないので、結果的に現行の注意程度で差し支えな いということで、変わることはないと思います。  あと、臨床成績の項に解析した結果の情報提供をさせていただいております。どうい った傾向で、低体重、女性、高齢者の方に有害事象は多かったという事実は添付文書の 臨床成績の項に書かせていただいていますので、御参照いただけるかと思います。 ○谷川原委員 臨床薬品の試験のところで、代謝型EM、PM別の薬効、pH4のホー ルディングタイムのデータを見ますと、かなりPMの方が薬効が強い、効果は高いと思 うのですが、添付文書には積極的に情報提供はされていませんね。血中濃度が変わると は書かれておりますけれども、EM、PM関係で。こういうのはこれからの医療現場へ の大事な情報提供になると思うのですけれど、何がしかの方法で提供していただけるの ですか。薬物動態は書いてあるのですけれど、臨床薬理のCTDの2-7-2の辺りにあ るpH4のホールディングタイムは、ずいぶんPMが初回投与から非常に効果が高いで すよね。そういったことも併せて情報提供していただければと思うのですが。 ○審査第一部長 今回の注射剤の適応の部分に関しては止血効果が94%とか、おそら く、内視鏡的止血術による止血でほとんど止まってしまうので、この薬を使っているこ とによって出ている部分というのは、その上に僅かに乗っているのが実際の臨床成績と 思われます。PM、EMでそれほどドラスティックに差が出てくるというようなことは、 こういった試験の中ではちょっと見分けられないものですから、区別をして使い分けを ということにはなかなかならないと思います。ただし、委員が御指摘のホールディング タイムの違いという情報は、むしろ、経口剤で先だって審査しましたNERDの適応とかで 議論が結構されていますので、むしろ、経口剤を中心に情報提供は今やっているところ です。今日の御議論を踏まえて、ランソプラゾール全体の情報提供の中で、pHホール ディングタイムの情報などがどのように提供されているか企業に確認をいたしまして、 全体として情報がきちんと伝わるようにしたいと考えております。 ○永井部会長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ承認 「可」で分科会報告とさせていただきます。 ○永井部会長 ありがとうございました。続きまして、議題の7の概略の説明をお願い いたします。 ○機構 それでは議題の7、資料7、医薬品オキノーム散0.5%の製造承認の可否等に ついて、医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。本剤の有効成分はオ キシコドンです。既に本邦では、オキシコドンの徐放性製剤オキシコンチンジョウがが ん性疼痛に対して承認されております。今般の申請は、がん疼痛治療の用量調節及び突 発性疼痛に対しても使用できることを目的としたオキシコドンの速放性製剤を追加する というものです。なお、販売名については医療過誤防止の観点からオキノーム散に変更 されております。本申請の専門委員としては資料11に記載されている5名の委員を指名 いたしました。  審査内容ですが、品質、非臨床試験については特に大きな問題はないと判断しており ますので、臨床成績について簡単に御説明させていただきます。臨床成績は国内で臨床 試験が実施されておりまして、本剤により用量を調節した場合及び徐放性製剤投与時に、 本剤を突出痛に対してレスキュー投与した場合の有効性及び安全性が検討されました。 その結果、本剤投与開始10日以内の疼痛コントロール達成率は92.4%であり、本剤投 与開始後早期に、がん性疼痛のコントロールが可能ということが確認されております。 また、徐放性製剤投与時に本剤をレスキュー投与した場合でも、30分以内に多くの症例 で鎮痛効果が認められており、本剤の速放性製剤としての有用性が確認されたものと判 断いたしました。  安全性についてですが、本剤はオピオイド製剤であり、慎重に投与すべき製剤である と考えておりますけれども、認められている有害事象は、便秘、嘔気、眠気、嘔吐等で あり、既存のオピオイド製剤と同様と考えております。なお、製造販売後調査について も計画されており、その中でさらにタイトレーション、レスキュー投与といった本剤の 安全性及び有効性について検討を進める予定となっております。  以上の審査を踏まえまして、本剤の製造を承認して差し支えないとの結論に達し、本 第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新剤型薬品に該当す るため再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、特定生物由来製品及び生物由来製品の いずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しており ます。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございます。では、御質問、御討論をお願いいたします。い かがでしょうか。特に御意見ございませんでしょうか。もしございませんでしたら、こ のまま承認「可」ということで報告させていただきます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは次にまいります。先ほど議題8は終 了しておりますので、議題9の概要の説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは議題9、医薬品パキシル錠の再審査期間の延長の可否について御説 明を申し上げます。この再審査期間の延長については、小児における用法・用量の明確 化を目的とし、臨床試験、市販後調査をやるという申し出が企業からあった場合には再 審査期間を延長して、いわば企業が敬遠しがちな小児の用法などの設定とかの検討を再 審査期間を延長する形でやっていったらと、インセンティブをあたえるという趣旨です。  資料ですが、次のページに品目の概要とあります。成分名がパロキセチン、販売名は パキシル錠です。この製剤、現在のところ効能・効果のところにあるようにうつ病、う つ状態、パニック障害、強迫性障害となっていますが、今回御審議をお願いする再審査 期間の延長の対象は、このうち下線を引いているうつ病、うつ状態、パニック障害とい うところです。現在の用法・用量等は記載のとおりです。  今般、企業の方から小児の用法・用量の設定、それから、小児集団における有効性、 安全性を把握する目的で、うつ病、うつ状態については製造販売後臨床試験として、プ ラセボを対照とした二重盲検群間比較試験を計画しています。この試験の計画の骨子は 上から四つ目に「治験実施計画書要約」というところがありますので、御参照いただけ ればと思います。  それから、パニック障害については小児患者数の観点から、臨床試験を実施するのが なかなか困難であり、特定使用成績調査として情報収集を行います。これらの試験・調 査に要する期間を勘案して再審査期間を当初のものから4年間延長するのが適当ではな いかと考えており、この件について部会で御審議いただければと思っております。よろ しくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。 ○樋口委員 ただ今の説明にもありましたけれども、今、日本では子どものうつ病に関 して使える、適応を持っているSSRIは1剤もないわけです。海外は1剤だけ有効性 が検証された薬剤がありますが、日本に入ってきておりません。したがって、現在のと ころ適応を持った小児のうつに対する治療薬はない。古い薬は別にして、ないのが現状 だということです。このパキシルに関して、実は海外では有効性が検証されなかった経 緯があります。しかし、日本の臨床現場ではSSRIを実際に使ってみると、子どもさ んのうつにも確かに効果があると。きちんとした比較試験は行われていないのですが、 そういう声があって、学会から使えるようにしてほしいという要望が出てきた経緯があ ります。ですから、おそらくメーカーとしてはあまりやりたくない試験なのかもしれま せんが、是非これは白黒の決着を付けていただいて、本当に有効な薬であれば、積極的 に我が国で使えるようにという意味で、かなり難しい試験だと思うのです。子どものう つで、しかもプラセボを使って、子どものうつですから中には死にたいと思うような自 殺の恐れもあるということですので、これはプロトコルの検討ではここはないわけです けれども、是非お願いをしておきたいのは安全性に関しての評価をしっかりと、治験の 機関以外の独立した所で評価をしながら、継続すべきかどうかということの安全性を確 認しながら是非やっていただきたいと思います。以上でございます。 ○事務局 ありがとうございました。今の御指摘を踏まえて、特に試験期間中、それ以 後の安全性の確保対策について企業でもいろいろ検討していますけれども、本日いただ いた御意見も踏まえて検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。御意見がありませんでしたら、延長「可」 ということで、薬事分科会報告とさせていただきます。 ○土屋委員 先ほど2番の名称変更の件で谷川原委員から御指摘がありましたが、バス キュランという名前自体は、新しい名前の方は一般的な医学用語を類推すると。アメリ カでは明らかな医学用語と似た名称は避けるということをやっておりますので、このバ スキュランという名前は不適切かなと思いますので、ちょっと申し上げたいと思います。 ○永井部会長 もう少し御検討いただくということでよろしいでしょうか。よろしくお 願いいたします。 ○事務局 申請者の方に検討するように伝えます。 ○谷川原委員 ハイロタンとバイロテイシンですけれど、最初が濁音ですから多分大丈 夫だと思います。それはそんなに間違いないと思うのですけれども、オーダリングシス テムのとき、最初の2文字とか3文字が似ているときにコンピュータのオーダリングシ ステムで取り間違えることがありますから、ということで発言させていただきました。 また御検討ください。 ○永井部会長 申請者とよろしくお願いします。本日用意している議題は以上でござい ますが、最後に事務局から報告事項をお願いいたします。 ○事務局 ありがとうございます。時間が超過したので手短に申し上げますが、まず1 点が、本部会で過去に御審議をいただいて承認まで至った品目の御紹介ですが、7月26 日付で新薬を承認しております。パタノール点眼液、塩酸オロパタジン、アレルギー薬 の点眼液です。それから、ジェノトロピン、これは成人成長ホルモン分泌不全症の効能 追加です。ガバペン錠はてんかんの薬、フィズリン錠は低ナトリウム血症の薬、ポリド カスクレロールは下肢静脈瘤の薬、アボネックス筋注用は多発性硬化症の薬、フォサマ ック錠/ボナロン錠は、骨粗鬆症の週1回の投与の製剤です。それから、パルミコート吸 入液は気管支喘息・乳幼児の薬です。バラクルード錠はB型慢性肝疾患の薬です。以上 について7月26日に承認しましたので、御報告申し上げます。  次回の予定ですが、9月は分科会の開催がありますのでお休みし、10月18日水曜日 午前10時から開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上でござい ます。 ○永井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうご ざいました。 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 山本(内線2734)