06/08/23 第7回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会議事録 第7回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会 日時 平成18年8月23日(水) 15:00〜 場所 経済産業省別館1020号会議室 ○安全衛生課長 定刻になりましたので、「第7回労働安全衛生法における胸部エックス線 検査等のあり方検討会」を開催します。本日は坂谷委員、村田委員、西村委員からご欠席 という連絡を受けています。工藤座長、以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○工藤座長 この検討会も1年半、第7回となりました。今日はいよいよ全体のとりまと めを進行できるかと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。まず、事務局から 資料の確認をお願いします。 ○労働衛生専門官 資料の確認をいたします。今回の資料は「議事次第」「座席表」「報告 書(案)」の3つでございます。ご確認、よろしくお願いいたします。 ○工藤座長 ありがとうございました。前回、第6回の検討会でおおむね、労働安全衛生 法における胸部エックス線検査等のあり方をどのようにするか、とりまとめの骨子につい てご議論いただき、それがまとまったということであります。その上に立って、報告書の 案を事務局で作成しています。これをご説明いただきたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○労働衛生専門官 報告書(案)について、ご説明、読み上げをさせていただきたいと思 っています。資料1に沿ってご説明いたします。1頁目が題名、報告書(案)となってい ます。次の頁は先生方の参集者名簿になっています。その次の頁は目次になっています。 本文は4頁目からでございます。  1.はじめに。  労働者の安全と健康の確保及び快適な職場環境の達成を目的として、昭和47年に労働安 全衛生法が制定され、以来、今日まで我が国の安全衛生水準は次第に向上してきた。現在 では、労働安全衛生法に基づき約5,000万人の労働者に対して健康管理をはじめとする労 働衛生管理が行われるに至っている。  そもそも、事業場における健康診断は、明治44年に制定、大正5年に施行された工場法 において、一般工場における毎年1回の定期健康診断の実施等として法的に規定された。 その後、昭和22年に制定・施行された労働基準法及び旧労働安全衛生規則では、労働者が 常に健康な状態で労働に従事するには、結核等の感染症を代表とする健康異常をできる限 り早期に発見することが必要であり、定期的な健康診断の実施が不可欠であるとの認識に 基づき、労働者に対する健康診断を行う義務を使用者に課した。さらに、昭和47年に制定 された労働安全衛生法には、基準法以来の結核を中心とした胸部エックス線検査及び喀痰 検査の項目とあわせて血圧測定等の項目が追加され、以降、感染症対策以外の健康管理を 目的とした健康診断項目が随時追加され、現在の定期健康診断となっている。  近年、国民の健康水準の向上等に伴い、結核をはじめとした感染症対策よりも生活習慣 病予防対策が労働者の健康管理における重点的対策となってきている。こうしたなかで、 平成14年3月20日に厚生労働科学審議会感染症分科会結核部会では「結核対策の包括的 な見直しに関する提言」が報告され、この報告をもとに結核予防法が改正(平成16年6月 23日公布、平成17年4月1日施行)された。そこでは、「事業者が行う定期健康診断につ いては、患者発見率が極めて低く、結核予防政策としての有効性が低いほか、すべての事 業者に対し負担を課す合理的根拠に乏しいことから、結核菌に暴露される機会が多い職種 及び必ずしも結核に感染する危険性は高くないものの、発症すれば二次感染を引き起こす 危険性が高い職種として、近年の集団感染事例も参酌して、初発患者が従事者であること も少なくない学校(専修学校及び各種学校を含み、幼稚園を除く)、病院、診療所、助産所、 介護老人保健施設及び社会福祉施設の従事者に対して、年1回の定期健診を行うこと」と し、旧結核予防法で実施していた、結核の早期発見対策としての一律的・集団的な定期の 健康診断(19歳以上の事業所の従事者については定期の健康診断として年1回、定期の健 康診断において結核発病のおそれがあると診断された者に対しては半年後に再度健康診 断)を効率化・充点化を図る観点から見直しを行っている。  この見直しを受け、労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査の実施について、検査 実施の意義や対象等について検討を行うこととした。  2.検討会の目的。  以上のような経緯により、労働安全衛生法においては、雇入時の健康診断、海外派遣時 の健康診断等に加え、定期健康診断では、常時使用する労働者に対して、年1回(結核の おそれがある場合には6ヶ月後に再検査:労働安全衛生規則に基づく結核健康診断)の胸 部エックス線検査等の実施を義務づけているが、本検討会においては、結核予防法の改正 に伴い、平成17年4月以降、計7回にわたり、労働安全衛生法に基づく健康診断等におい て行われている胸部エックス線検査等の実施の意義・対象・頻度等について、医療技術の 進歩、定期健康診断の有所見率等を踏まえて、関連団体からの意見聴取を行いつつ所要の 検討を行うこととした。 ○工藤座長 1の「はじめに」と2の「検討会の目的」の部分で、文言等について何かご 意見はありますか。少しずつ進めていきたいと思います。 ○柚木委員 4頁の真ん中辺のところ、「近年、国民の健康水準の向上にともない」の最後、 「結核を始めとした感染症対策よりも」の「よりも」、結核と生活習慣病の予防対策を比べ た場合、いかにも結核が軽く見られています。結核はやはり感染症で非常に怖いものです。 生活習慣病の予防も大切でしょうが、ここのところ、「感染症対策に加えて」という文言に 変更をよろしくお願いいたします。 ○工藤座長 これはいかがでしょうか。だいぶニュアンスが違ってきます。重点が少し変 わったという意味が、「に加えて」と書くと、ちょっと意味が異なりますが、ほかの先生方 はいかがでしょうか。加藤委員、結核を担当している立場から何かありますか。 ○加藤委員 軽く見られるのは我々の立場としては好ましくないのですが、事実としてそ ういうことがあるのかどうかというのは。それが事実であれば、科学的にやむを得ないの だろうと思います。どういう根拠でこうなったか、はっきりしているのだったらそれは事 実として認めなければいけないと思います。私の認識ではそういうことはないのではない かと思っているのですが、いかがでしょうか。 ○労働衛生課長 先ほどのところに書いてありますが、この5、6行前、「胸部エックス線 検査及び喀痰検査の項目とあわせて血圧測定等の項目が追加され、以降、感染症対策以外 の健康管理を目的とした健康診断項目が随時追加され」というところと符合させてきてい る。要するに、一般定期健康診断の拡充部分というのは、感染症以外のいわゆる昔は成人 病、いまは生活習慣病対策に関与する部分の検査項目をどんどん追加してきた、それで重 点化してきた。そこでこういう書きぶりになりました。ただ、「感染症対策に加えて」とす ると、文脈上、「重点的対策となってきている」というところを変えないと文脈がおかしい かなという感じがします。 ○柚木委員 結核というのは終わっていない病気ですし、感染症としては非常に怖いとい うことを認識するためにも、「感染症対策よりも」にしなければいけない理由はあまりない と思います。感染症に加えていまはやりの生活習慣病予防対策という認識のほうが、広く 皆さんに理解してもらえるのではないかと考えます。 ○労働衛生課長 感染症対策に加えて、生活習慣病予防対策を労働者の健康管理における 重点的課題としてきたという書きぶりに。 ○工藤座長 相対的には、重点は変わってしまったということは事実ですから。予防法の 改定そのものの趣旨がそうだからそういうことなのですが、別に「加えて」でも変わらな いと思います。結局、両方ともやるのだからということだと思います。 ○労働衛生課長 あとで相談して直すということでよろしいでしょうか。加えてだと「重 点的対策となってきている」のところをやらないと文脈がおかしくなる。 ○工藤座長 冒頭でつまづくと大変ですから。ほかにありますか。 ○掘江委員 5頁の2の「検討会の目的」の2行目、「定期健康診断」という言葉が出てき ます。これは一般定期健康診断ということで、どこかに一般健康診断の中のことを論じて いるのだということが入っていたほうがいいと思います。案としては、その前に「一般」 と付けるということです。 ○労働衛生課長 正しくはそのとおりです。 ○工藤座長 それでは、そのように修正します。よろしいですか。次に3以降をお願いし ます。 ○労働衛生専門官 3.検討会における胸部エックス線についての意見。  1)雇入時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)  雇入時の健康診断における胸部エックス線検査は、結核も含めて呼吸器疾患の診断、労 働者の適正配置及び入職後の健康管理に有用であるため、雇入時の健康診断における胸部 エックス線検査は、現行通り実施すべきである。  2)海外派遣労働者の健康診断(労働安全衛生規則第45条の2)  海外派遣労働者の健康診断は、海外に6ヶ月以上派遣される労働者に対して、派遣時と 帰国時に行われるものである。  海外に派遣される労働者にとって、海外の勤務地での生活は様々な負担を強いることも あるため、海外に派遣する労働者の健康状態の適切な判断及び派遣中の労働者の健康管理 に資する観点から、また、海外勤務を終了した労働者を国内勤務に就かせる場合の就業上 の配慮を行うとともにその後の健康管理に資する観点から、海外派遣労働者の健康診断に おける胸部エックス線検査は、現行通り実施すべきである。  3)結核健康診断(労働安全衛生規則第46条)  労働安全衛生法では、旧結核予防法に倣い、定期健康診断等において、結核発病のおそ れがあると診断された者に対する6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施を事業者に義務 づけているが、改正結核予防法において、結核発病のおそれがあると診断された者に対す る6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施に係る規定が、医療機関への受診を前提として 廃止されたため、労働安全衛生法においても、同趣旨の規定を廃止すべきである。  なお、定期健康診断等の結果、結核の発病のおそれがある者については、確実に医療機 関を受診するよう事業者は配慮すべきである。  4)「じん肺法に基づくじん肺健康診断(じん肺法第8条等)  じん肺法に基づくじん肺健康診断については、じん肺の所見のみならず、合併症(肺結 核、肺がん等)への対応も念頭に置いていることや、結核予防法が改正されたとしても、 じん肺有所見者における結核の罹患率は、結核全体の罹患率が減少した現在においても高 い状況にあることなどを勘案し、じん肺法に基づくじん肺健康診断における胸部エックス 線検査については、現行通り実施すべきである。  なお、常時粉じん作業に従事しており、じん肺管理区分1の労働者や、常時粉じん作業 に従事したことがあり、現在は非粉じん作業に従事しているじん肺管理区分2の労働者に ついては、じん肺法に基づく健康診断は3年に1回の実施となっている。また、あいだの 2年については、労働安全衛生法に基づく定期健康診断における胸部エックス線検査を受 けることとなっているため、定期健康診断における胸部エックス線検査の見直し内容によ って、労働者の受ける健康診断の機会に影響がでないように、行政は配慮をすることが適 当である。  管理区分1、管理区分2については、説明はカッコの中に入れています。 ○工藤座長 「検討会における胸部エックス線検査についての意見」ということで、1番 目に雇用時の健康診断、2番目に海外派遣労働者の健康診断、3番目に結核健康診断、そ していまのじん肺法に基づくじん肺健康診断、この4つについてこのように記載をしてい ます。これについては、もう既に検討をしていただいたものであります。何か、文言等に ついてご意見はありますか。 ○柚木委員 5頁の下から2行目ですが、結核発病のおそれがあると診断された者に対す る6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施に係る規定が廃止された。これは結核の健康診 断では廃止されたわけでしょうが、続くところに「労働安全衛生法においても、同趣旨の 規定を廃止すべきである」とあります。ということは、労働安全衛生法と結核健診とは全 く別ではないのでしょうか。労働安全衛生法でも廃止してしまわなければいけない、とい うことは明記しないといけないのではないでしょうか。 ○労働衛生課長 「労働安全衛生法においても同趣旨の規定を廃止すべきである」と書い てありますから、特に矛盾はないと思います。 ○工藤座長 結核予防法での議論は、要するに疑いがあるという人について6ヶ月後に健 康診断として行うのではなくて、医療機関に受診をする。そのような趣旨でなったわけで す。  今回の労働安全衛生法についても、基本的には同じ扱いにしたほうがいいのではないか。 要するに、医療機関に受診しなさい。これは健診として見ていくという。 ○柚木委員 結核健康診断とごっちゃになってしまわないですか、労働安全衛生法の健康 診断と。 ○工藤座長 この点については、これまでの議論で一応、先生を含めて一致していた部分 だと思います。いま、改めて先生から意見が出ましたがどうですか。柚木委員がおっしゃ っていることは、やはり健診でやったほうがいいという。 ○柚木委員 変わらないと思います。 ○工藤座長 文言ですか。 ○柚木委員 はい。 ○工藤座長 どのようにしましょうか、結核予防法云々は要らないということでしょうか。 ○柚木委員 要らないと思います。 ○工藤座長 むしろ、労働安全衛生法の健診としては、医療機関への受診を前提として廃 止すべきである。それだけでよろしいという意味ですか。 ○柚木委員 はい。そうなった理由がちょっと書いてあるだけで。 ○工藤座長 説明として受け取っていただければよろしいと思います。 ○柚木委員 わかりました。 ○工藤座長 この4項目についてほかに何かございますか、よろしいですか。  それでは、5)の「特定業務従事者の健康診断」の部分です。これはいままで議論をし ていなかったところですのでお聞きいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○労働衛生専門官 5)特定業務従事者の健康診断(労働安全衛生規則第45条)のところ です。下線が引いてあります。  現在、特定業務に従事する労働者の健康診断については、「六月以内に一回、定期に、第 四十四条第一項(定期健康診断)各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わな ければならない。この場合において、同項第四号の項目(胸部エックス線検査及び喀痰検 査)については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。」こととされて います。  特定業務の中には、土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業 務、坑内における業務等もあり、定期健康診断の対象を見直す場合にあっても、特定業務 従事者の健康診断については、従来通り年齢を問わず実施すべきである。 ○工藤座長 ただいまの労働安全衛生規則第45条、「特定業務従事者の健康診断」につい ては一切変更を加えない。従来どおり、年1回ごとに定期的に行うことにしてはどうかと いうことです。よろしいですか。 ○柚木委員 特定業務のところですが、結核健康診断を受けなければならない業種という のは列挙して書いておかなくていいのでしょうか。 ○労働衛生課長 特定業務は規則に列挙して書かれています。報告書の中で書く必要があ れば、それをただ写して書けばいいだけの話で簡単ですが、こういうようにやればすぐお わかりになると思いますので、あえて記載しないということであります。高熱、ラジウム 放射線、エックス線というあたりから。 ○工藤座長 かなり細かく職業を全部挙げてありますので、そちらに委ねてよろしいので はないかと思います。特定業務従事者の健康診断については、特に異存がなければ従来ど おりということで。 ○掘江委員 内容に異存はありません。確認です。イロハニホヘトと業務が並んでいて、 その中の1つが確かに粉じん作業のような業務になっています。そのほかについては必ず しも粉じんの業務ではないのですが、ここの考え方は粉じんだけに特定してということで はなく、すべての衛生上有害な業務については実施すると。結核とのスクリーニングとい う趣旨ではなく、衛生上有害な業務についてのサーベイランスとして胸部レントゲンを残 すという考え方と理解してよろしいでしょうか。 ○工藤座長 そのようにお考えいただいてよろしいかと思います。 ○労働衛生課長 「坑内における業務等衛生上有害な業務もあり」とか。 ○工藤座長 何で胸の写真が必要なのかというのは、細かくやると出てきますよね。そこ はいま先生がおっしゃったような、全体の安全衛生としてのサーベイランスという捉え方 で従来どおりやるということです。 ○掘江委員 現場を担当した経験のある者としても、一つひとつの業務がバラバラにある というよりは、複合的に有害な業務のある職種もあります。漏れのないようにするという 意味では、細かく規定するよりも全体に網をかけたほうがいいと思います。  文言については、冒頭の「特定業務従事者の健康診断」というタイトルの次に、いきな り「現在、特定業務に従事する」とあります。これは労働安全衛生規則をご存じの方なら わかるのですが、そうでない方がお読みになった場合に、何が特定業務なのか、ちょっと 曖昧な点もあるかと思います。「衛生上有害な業務」と言い換えることができるのではない かと思いますので。 ○工藤座長 もしあれならば、前のじん肺法のところで管理区分1、管理区分2で説明が あるように、「注」という形で後ろに「特定業務とは」と付けてもいいですね。 ○労働衛生課長 並んでいるものをそのままずっと並べればいいだけです。 ○工藤座長 そういうことでよろしいですか。 (了承) ○工藤座長 ありがとうございました。次、「定期健康診断」のところに入りたいと思いま す。よろしくお願いします。 ○労働衛生専門官 いちばん量の多いところです、「定期健康診断」についてご説明いたし ます。  6)定期健康診断(労働安全衛生規則第44条)  (1)胸部エックス線検査の対象者について。  我が国の結核の罹患状況は先進国の中でも高い状況にあり、特に職域においては、外国 人労働者の増加等の社会的背景や肺結核の潜伏期間も考慮すると、雇入時の健康診断だけ では対応できず、定期健康診断の胸部エックス線検査を存続させることが重要で、結核予 防法の改正にあわせて、労働安全衛生法の健康診断における胸部エックス線検査を廃止す る必要はないのではないかという意見があった。  また、年齢や対象を限定した形の実施については、現在の省略できる健診項目(貧血検 査、肝機能検査等については、40歳未満の者について省略できます。35歳は節目で健診を 行うことになっています。)と同様に、一般的に疾患の罹患頻度が高くなる40歳以上にし てはどうかという意見や、喫煙者等呼吸器疾患の発生頻度が高いと思われる対象に限定し てはどうかといった意見があった。さらに、省略する場合の医師の判断基準については、 現場の産業医が運用しやすいような目安を示すべきで、安易な省略がされることのないよ うな配慮をすべきとの意見もあった。  一方、結核対策に対する考え方は、すでに結核予防法改正時の議論で整理されており、 こうした議論を踏襲する形で、ハイリスク・デンジャー層(学校、病院、診療所、助産所、 介護老人保健施設及び社会福祉施設の従事者など)に対象を絞り、効率的に検査を行うべ きではないかという意見もあった。  こうした議論のなかでは、胸部エックス線検査の対象者を見直すとしても、胸部エック ス線検査の労働者に対する健康管理という観点で、有効性について調査・研究を行ってか ら見直しを行う必要があるのではないかといった意見や、健診機関の対応の問題や、胸部 エックス線検査が労働者の間で、広く健診の項目として普及・定着しており、一部を縮小 する場合であっても健康不安が増大するという労働者への影響等を考慮すると、一定の猶 予期間が必要ではないかという意見があった。  (2)胸部エックス線検査の考え方・対象疾患等について。  従来労働安全衛生法においては結核対策を中心として、胸部エックス線検査を行ってき たが、近年定期健康診断の胸部エックス線検査において発見される疾患は、結核以外の疾 患も多く、労働者の呼吸器疾患のスクリーニング的な健康管理を期待されているという一 面もあると考え、労働安全衛生法の健康診断が規定された時期と考え方も変わってきてい ることから、肺がん等も含めた他疾患も対象と考えるべきではないかという意見があった。 また、労働安全衛生法の胸部エックス線検査を実施する考え方として、喫煙が与える影響、 職場環境(受動喫煙等)等との関連性を考慮すると、肺がんは労働者の胸部エックス線検 査の対象疾患と見なすことができるのではないかという意見があった。  一方、労働安全衛生法の主旨からすると、胸部エックス線検査の対象疾患を結核以外と することはできないのではないかという意見もあった。  こうした検討のなかで、結核以外に胸部エックス線検査で発見される主な疾患として肺 がんが取り上げられ、肺がん検診としての胸部エックス線検査の科学的評価等の議論が行 われた。  (肺がん検診の有効性の評価について)  肺がん検診における胸部エックス線検査の有効性の評価については、国際的にも再評価 されており、日本の研究においても、その有効性を示す研究報告等があるという意見があ った。  一方、肺がん検診を行う根拠が不十分との米国の論文もあるといった意見もあった。  (健康診断における放射線被ばくのリスク・ベネフィットについて)  胸部エックス線検査の被ばく線量は、年間の自然放射線を下回っており、有害性は低く、 被ばく量が多いとされる間接撮影も近年技術の向上から、被ばく線量も少なくなってきて いるという意見や、胸部エックス線検査のエックス線被ばくによるリスクとベネフィット については、未だ結論は出ていないといった意見があった。  一方、国際的にもCTを多用する日本の医療被ばくについては問題とされており、検査 時の放射線被ばく等の問題も考え、リスク・ベネフィットの観点から、健診の実施につい ては慎重に検討するべきではないかといった意見もあった。  (胸部エックス線検査の撮影方法の比較について)  撮影方法については、現在の健康診断としての胸部エックス線検査で主流である間接撮 影について、近年間接撮影の被ばく線量は低くなってきており、疾患の発見率においても 間接撮影が直接撮影より劣るというエビデンスはないといった意見があった。他方、疾患 の発見にはやはり直接撮影のほうがすぐれており、胸部エックス線検査の対象疾患につい て肺がんまで含めて検討するのであれば、間接撮影ではなく直接撮影とすることを前提に すべきであるという見解については研究報告が少なすぎて評価しがたいという意見もあっ た。  現在、撮影機器については、胸部エックス線間接撮影用ミラーカメラの製造・販売の中 止に伴い、デジタル撮影機器に移行しつつあり、今後は健康診断における胸部エックス線 検査においても、デジタル撮影等への対応も必要なのではないかという意見もあった。  また、以下のような参考意見を関係団体から聴取した。  日本労働組合総連合会。例えば40歳以上の一定年齢を超える労働者への実施。喫煙経験 者を対象とした実施。医師が必要でないと認めた場合の健康診断の省略に包含する。胸部 エックス線検査を廃止または縮小される場合には、胸部エックス線検査から労働者に負担 の少ない何らかの呼吸器系検査を代替検査として導入することが望ましい。  全国労働衛生団体連合会。定期健康診断の胸部エックス線検査は呼吸器疾患のスクリー ニング検査としては、その意義と有用性について国民的合意が得られている。胸部エック ス線検査の対象疾患は、肺結核だけでなく多種の呼吸器疾患を対象としている。見直しに ついては、5年程度の猶予期間が必要。結核予防法の改正にあわせる形で胸部エックス線 検査を廃止するべきでなく、また、若年層の結核罹患率が高いことからも年齢階層により 検査の省略をするべきでもない。今回は結核健康診断(労働安全衛生規則第46条)を見直 しするにとどめるべき。  日本経済団体連合会。現行の一律的な義務づけではなく、医師の判断により胸部エック ス線検査を実施できるとする方向で見直しを行うことが適当。  東京商工会議所。結核対策としての一律的な義務づけは廃止すべき。結核以外の疾患の 発見等の副次的な利益もあるため、一定年齢以上についての実施については検討の余地が ある。ただし、定期健康診断の罰則規定ははずすことが必要。  なお、日本呼吸器学会、日本肺癌学会からも、労働安全衛生法に基づく胸部エックス線 検査については、「今日でも、肺がんをはじめとする様々な呼吸器疾患の早期発見と、国民 の中核をなす5,000万労働者の呼吸器疾患に対する予防意識の喚起に重要な役割を果たし ている」ことから、「今回の見直しにおいて、5,000万労働者の呼吸器疾患の早期発見と予 防のために、一定年齢以上及び喫煙者に限定した胸部エックス線検査やスパイロメトリー の導入、また、出来うればヘリカルCT検査など、時代に即した積極的な施策への転換」 をはかるよう、厚生労働大臣に対し要望が提出されている。 ○工藤座長 (3)は全体をまとめたものでありますが、かなり文言の細かい部分を注意深く 見ていただかなければなりません。その前の段階、いまお話いただいたことで何かご質問、 ご意見はありますか。「定期健康診断」の最初、(1)胸部エックス線検査の対象者について、 (2)胸部エックス線検査の考え方・対象疾患等についてというところです。 ○江口委員 8頁の真ん中より少し下、リスク・ベネフィットのところなのですが、「一方」 というパラグラフがあって、「国際的にもCTを多用する日本の医療被ばくについては問題 とされており」となっています。これが討議されたときにも話題になったと思いますが、 元論文には健診のことは何も触れていないのです。通常、診断用のCTのことについての み言われている。それに対して、日本の放射線学会から学会長名でコメントも出ていると いう状況なので、ここで載せるのは誤解を招くような気がします。たしか、これの委員会 のときのディスカッションでもあったと思います。 ○工藤座長 健診医療CTの話では全くないわけですね。 ○江口委員 いや、全くないです。 ○工藤座長 一般の健診ですね。そうすると、ここではあまり関係がないということです ね。 ○江口委員 ですから、「一方、検査時の放射線被ばくの問題も考えて」というようにして いただいたほうがよろしいのではないかと思います。 ○工藤座長 わかりました。CTの部分は消してしまったほうがいいですか。 ○矢野委員 胸部の健診で、間接、直接、一次検診で異常があった場合、いま病院に行く とCTを撮ると思います。柚木委員が提出された全国労働衛生団体の資料で見ても、非常 に有所見率が高い。実際の有病率はそうではないわけですが、数パーセントから、場合に よっては1割、2割の有所見率になっているわけです。健診と病院での検査というのは密 接に結びついているし、逆に健診で有所見と言ってそのまま放っておいたのでは、何のた めに健診をやったのかということになるかと思います。そういうことを踏まえると、CT のことというのはもっと丁寧に書いたほうがいいのかもしれませんが、別なことではない と思います。 ○工藤座長 もし、矢野委員のおっしゃるように直すとすれば「検査時の」ではなくて、 「二次検査の際の放射線被ばく等の問題を考え」という書き方にするか。 ○江口委員 それを付け加えていただいたほうがわかりやすいと思います。 ○工藤座長 そういう書き方ならCTを残してよろしいですか。 ○江口委員 はい。 ○工藤座長 それでは、そのような形にさせていただきます。 ○労働衛生課長 二次検査ですか。 ○工藤座長 精密検査ですかね。 ○労働衛生課長 「精密検査時のCTによる放射線被ばく等の問題も考え」という形です ね。 ○工藤座長 そうです。 ○今村委員 内容ではないのですが、書き方のお願いです。私も5回まで出席していない のですが、これを読ませていただいたとき、中に「各委員からのいろいろな意見があった」 という文言がありました。読んだとき、どこからが委員の意見かわかりにくいところもあ ったので、例えばカギカッコで、ここからここまでが意見ということがわかるように書い ていただいたほうが、初めて読んだときにもわかりやすいのかなと思いました。  特に、(1)の胸部エックス線検査の対象者について、「結核の罹患状況は先進国の中でも高 い状況にあり」と書いてあります。いわゆる「はじめに」では、結核予防法のところでは そうではないということを書かれている。これはあくまで意見ということであれば、きち んとカギカッコの中で書いていただいたほうがわかりやすいかと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。そういうところがいくつかありますので、あとで 事務局で修正させていただきます。 ○矢野委員 団体の意見なので、この会で修正云々ということではもちろんありません。 9頁の真ん中、全国労働衛生団体連合会の意見の中に、「若年層の結核罹患率が高いことか ら」とあります。これは事実で言えることだと思うのですが、厚生労働省のデータを見る と、若年層よりは高齢層のほうがはるかに多い。これは事実に基づいているのかどうか。 意見だからそれまでということかもしれませんが。 ○工藤座長 加藤委員からデータが出ましたよね。あれは若年層というより、20代がひょ っと上がっていたというご発言があったかと思いますが。 ○柚木委員 「就業年齢の中の若い人たち」という意味で取っていただいたと思います。 前の胸部エックス線検査に対する根拠があったところで、東京都の年齢階層別結核罹患率 とありまして、ここではほとんど60歳、59歳、また20代、30代は就労者の年齢層の中で は変わらない。このことから意見として出したわけです。 ○工藤座長 60歳以下の人たちに限った場合にどうか、そういう話でいまおっしゃってい るわけですか。 ○矢野委員 そうです。 ○工藤座長 就労者の場合はぐっと高い、ということは。 ○矢野委員 2001年のデータで見ると、40歳以上が結核罹患率の8割を占めています。20 歳から40歳がたしか16%、それ以下が4%なので、その数値だけ見ると若年層が高いと いうのは「あれっ」と思ったものですから。 ○工藤座長 ご専門の加藤委員からお願いします。 ○加藤委員 数値だけ言うと、20歳代が15.3%ぐらい、30歳代が14.8%、40歳が14.9% ぐらい、50歳が21%、いずれも10万対です。これが数値です。ですから、ほかの年代に 比べて高いという言い方はあまり正確ではない。20歳代がちょっと山になっていますね。 それは、30歳代になると、女性が結婚して家庭に入るせいで下がったのです。事実はそう いう事実です。 ○工藤座長 これはそれぞれが団体なりの立場から、ご意見として書かれていることだか ら、正確に言うとこの事実について反論ありというのはそういうことなのでしょう。でも、 ご意見はご意見として出ているので、それを踏み込んで修正するのもしんどい。柚木委員、 どうしますか。 ○柚木委員 もう1点、エックス線の被ばく量のリスク・ベネフィットのところ、「検討会 でICRPの考え方は意見の一致を見た」というのは、文言として入れなくてもいいので しょうか。「低線量被ばくに関しての受診者に対する健康影響」で、ICRPの基本的な考 え方が妥当であることの意見の一致を見たというのは。 ○工藤座長 8頁ですか。 ○柚木委員 はい。 ○工藤座長 被ばくのところでしょうか。 ○柚木委員 入れなくていいものかどうか。 ○工藤座長 江口委員が出された部分でしょうか、いま柚木委員がおっしゃっていること は。 ○江口委員 私ではなかったと思います。 ○労働衛生専門官 8頁のリスクとベネフィットのところなのですが、CTの医療被ばく の問題というのは先生も前からおっしゃっていました。いわゆる低線量の部分、胸部エッ クス線などの撮影、胸の写真を撮るくらいの放射線の影響がどれぐらいあるのかをこの検 討会で、ICRPの文献をもとにして大体意見は一致しているのではないかというのが柚 木委員のお立場です。それについて、「先生、どうですか」ということなのです。 ○矢野委員 ICRPも膨大なドキュメントで、いろいろな文言がその中に入っています。 どこの部分に一致するか、正確に言うと、ICRPの文章の中に多分柚木委員のお嫌いな 「どこまで低いところまでも影響があるかもしれない」という文言も入っているので、そ れも含めて一致してしまっていいのか。私はいまの経過から見てそう考えます。先生がど の部分をおっしゃっているのか。もちろん、そういう意味においてICRPが言うように、 非常に低いレベルだから安全ということは危険である。それと一致したとするなら、もち ろん私たちは大賛成ですが、もう一度議論のし直しになっているのではないかと思います。 ○工藤座長 その文言は、一致して取り組むということですか。 ○柚木委員 ここでは議論ではなく、ICRPの考え方としてということで、この検討会 で「そうだな」と落ち着いたのではなかったかと思います。 ○労働衛生課長 前にICRPの考え方でとりまとめていて、この報告書を作る段階でこ の意見がありました。読み上げると、要するに、胸部エックス線検査による低線量被ばく に関して、受診者に対する健康影響が出ないように配慮しつつ、医療現場において活用す ることとするというICRPの考え方なのです。厳しく言えば、影響が出ないように配慮 とはどのように配慮するのかとかいろいろあろうかと思います。 ○柚木委員 という意見もあったではなく、その意見の一致をみたという。 ○労働衛生専門官 柚木委員がおっしゃっているのは、それを検討会として意見が一致し たということでいいかということなのですが。 ○労働衛生課長 もう一度申しますと、「胸部エックス線検査による低線量被ばくに関して、 受診者に対する健康影響が出ないように配慮しつつ、医療現場において活用することとす るというICRPの考え方については、意見の一致を見た」という書き方を入れていいか どうかということです。 ○矢野委員 先ほど言いましたように、膨大な文書ですので、無理にICRPを付けると いろいろなものをくっ付けてきてしまうのではないかという気はします。ですから、私は このままでも。 ○工藤座長 そのドキュメントの中に含まれている、様々なものまで全部読まないととい う話ですね。 ○矢野委員 はい。 ○工藤座長 ある部分については全く。いまの文言で、先ほど読み上げられた文言どおり の中身だったら誰も異論はないですね。ですから、それだったら何も言ってはいけない。 ○矢野委員 ただ、「何々の」と言うときには、その後ろのことを含めてということになる と結構大変かと思います。 ○工藤座長 もし、ICRPが提起している「以下、このようなことについては意見の一 致を見た」ならいいですか。 ○労働衛生課長 いまの書きぶりは非常に無難と言えば無難なやり方かと思います。IC RPで言っているのは、無駄なレントゲンを撮るなという話である。簡単に言えばどうい うことですか、と言ったらそういうことなのです。 ○工藤座長 よろしいですか。 ○矢野委員 ICRPという言葉を付けるということなのですか。 ○工藤座長 言葉を付けることに対して、先生は抵抗があるわけですか。 ○矢野委員 抵抗というよりも、いろいろなことが書いてあるので。 ○工藤座長 いっぱい入ってしまうから、これはどこの部分かということになってしまう から。 ○矢野委員 ただ、「無駄なレントゲンを撮らない」というのは言葉としてはわかりやすい し、それはそれでいいとは思います。おそらく、反対される方もいないと思います。 ○土肥委員 ICRPの考え方は、低線量においても影響が出るという考え方にふれてき た考え方を示していると思いますので、「ICRP」という言葉を外したほうが適当だと思 います。 ○矢野委員 私はむしろ、ICRPと付けていただいてうれしい気がしました。だから、 柚木委員のお考えがどこにあるのか戸惑っています。今日で議論をまとめるということで 考えておられるのだったら文言だけでいったほうがいいと思います。 ○土肥委員 それともう1つ、母性保護という観点を考えると、無用な放射線被ばくをし ないという考え方がこの中に出てくることは妥当なことではないかと思います。いまのご 意見は文書として残るのが適当ではないかと思います。 ○労働衛生課長 残したほうがいいということですか。 ○土肥委員 無用な放射線被ばくがないようにという。 ○労働衛生課長 わかりました。ということは、要するに、いま申し上げたように、「胸部 エックス線検査による低線量被ばくに関して、受診者に対する健康影響が出ないような配 慮をしつつ、医療現場において活用するという考え方に基づき」を入れるということです か。 ○土肥委員 入れるのであればそれが必要ではないかと思います。 ○工藤座長 入れる場所は最後ですね。「リスク・ベネフィットの観点から、検診の実施に ついては慎重に検討するべきではないかといった意見もあった。また」ですね。 ○労働衛生課長 低線量被ばくに関しては、要するに、「低線量被ばくであっても、受診者 に健康影響が出ないように配慮して行う必要があるということでは意見の一致を見た」と 書いていいのですか。 ○土肥委員 というように、いまのご議論を聞きながら思うのです。 ○労働衛生課長 それでは、ICRPを入れないで、そういうことで意見の一致を見たと。 ○工藤座長 それから、先ほどのご意見、「若年者の結核罹患率が高い」という表現につい ては、意見というより、事実そのものがそうではないのではないかというご意見がありま した。もし、柚木委員のほうで修正していただけるのであれば、「若年者と高齢者で結核罹 患率はさほど違わないから、年齢階層による検査の省略をすべきでない」という文言にし ていただいてよろしいでしょうか。確かに事実が違うと誤解を招いてしまう。よろしいで すか。年齢によってそう違わないから、年齢階層による省略をすべきでないという書き方 にしていただきたいと思います。  ほかにも、それぞれの団体のご意見は、事務局で仮分け的にとりまとめたわけですが、 これ自身は結構これから独り歩きして残っていくかもしれません。もし、訂正が必要であ れば言っておいていただいたほうがよろしいかと思います。これは予め各団体でご覧いた だきます。 ○労働衛生課長 いや、委員に出す前に団体に配るというのもあれですから。 ○工藤座長 そうですか。 ○労働衛生課長 とりまとめの前には。 ○工藤座長 最終的なとりまとめの前に各団体で「これでいいか」ということだけはさせ ていただきたいと思います。いいですか。 ○労働衛生課長 はい。 ○工藤座長 事務局の作業としてさせていただきます。そうしないと、今後、こういう意 見が出されていたというのがずっと残っていきますので。よろしいですか。 ○相澤委員 9頁の日本労働法組合総合連合会の・の4つ目「胸部エックス線検査を」で なくて、「検査が」でしょうね。「廃止または縮小される」となっていますから。 ○工藤座長 ありがとうございました。 ○掘江委員 これはお願いなのですが、7頁の(1)、本文の2行目、「外国人労働者」のとこ ろですが、「外国人労働者や多様な就業形態」と入れていただけないでしょうか。 ○労働衛生課長 「増加」の前ですね。 ○掘江委員 そういう議論をしたような記憶があります。 ○工藤座長 ありがとうございました。先に進んでよろしいでしょうか。「まとめ」以降を お願いしたいと思います。 ○労働衛生専門官 「まとめ」以降、いちばん大事なところです。  (3)まとめ。  以上のように、定期健康診断における胸部エックス線検査のあり方については、胸部エ ックス線検査を健康診断の項目から廃止する、あるいは現状のまま存続するという科学的 根拠については、検討会において意見の一致はみられなかったが、中高年層における呼吸 器疾患や循環器疾患等の有病率の増加等、一定の医学的データに基づき、若年層の労働者 に対する検査は一定の条件の下で省略してよいのではないかという方向が示された。検討 会としては、労働安全衛生法における胸部エックス線検査では、職場環境(受動喫煙等) 等が関与する肺がんの問題、結核や他の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患:COPD等)、循 環器疾患についても、中高年の発生頻度が高いまたは高くなってきていることから、40歳 以上に呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング検査として胸部エックス線検査を実施する こととし、以下の見直しを行うことが適当であるとした。  ○40歳以上とする。  ○40歳未満は医師の判断により省略可(有所見者等については省略不可)。  省略不可の対象者については、有所見者の範囲、結核予防法において結核菌に暴露され る機会が多い職種及び必ずしも結核に感染する危険は高くないものの、発症すれば二次感 染を引き起こす危険性が高い職種として規定する事業所の従事者等、職場環境(受動喫煙 等)の問題等も念頭におき、有効性等の調査・研究とあわせて評価を行うこととする。  前回のとりまとめ骨子までは、結核予防法の項目は入っていなかったのですが、事業所 においてハイリスクのところについては書き込むべきであろう。また、いろいろな結核に ついての問題もあるので、書いてほしいという意見からこのように記載しています。  ○ただし、雇入時健診のあと、40歳になるまでは5歳ごとの節目健診を行う。  これについては前回、掘江委員から、年齢を5年置きではなくて、年齢ごとの節目健診 とするべきという意見がありました。事務局ももともと、例えば22歳に大学を卒業して入 社した場合については、22歳に雇入時健診をやったあと、25歳、35歳というような流れ と考えています。  ○見直しの実施については定期健康診断として胸部エックス線検査が定着しており、今 回の見直しは現在の健康診断制度の大きな変更であるため、労働者に対し、健康確保に対 する不安が生じないように配慮する必要があること、胸部エックス線検査による健康診断 については、国内外で種々の評価があるため、胸部エックス線検査の労働者の健康管理に 対する有効性を評価する必要があること等から、本検討会のとりまとめ結果を明確に裏づ けするエビデンスを今後さらに得る必要があり、科学的なデータを収集したうえでとりま とめの内容を実施すべきという意見があった。そのため、実施に当たっては調査・研究を 行い、必要な関係規則の見直しに活用することが適当である。  以下、12頁に検討会の開催状況、13頁に本文で引用または委員が発言する際に引用、も しくは論拠とした文献リストが載っています。以上です。 ○工藤座長 ありがとうございました。まず、「まとめ」の○でない部分、上の文言が特に 大切だと思いますが、何かお気づきの点がありましたらご発言いただきたいと思います。 よろしいですか。  それでは、このあとの○のところも含めてどうぞ。何か、ご意見はございますか。 ○柚木委員 ちょっと表現が変わるだけなのですが、11頁、下から3行目、「科学的なデ ータを収集したうえでとりまとめの内容を実施すべきという意見があった」。科学的なデー タを収集したうえでその調査・研究に基づいて評価するということを入れていただいたほ うがわかりやすいかと思います。 ○工藤座長 これ、11頁の3行目、科学的なデータを収集、いままでも収集してきたので すが、さらに収集をしというような意味ですね。それから、厚生労働省として独自に、実 際に前向きに調べるということはまだやられていないわけです。 ○柚木委員 科学的な裏づけが十分証明されていないわけですから、それをきちんと証明 してからきっちりとまとめの中に入れてほしいと思います。まとめの最後のところに入れ てほしいのは見直しの時期です。期限については明記せず、全員の意見としては5年ぐら いということも出していますが、明記をしないで、ちゃんとしたデータが出てからという ことにしていただけたらと思います。 ○工藤座長 事務局はそういうことでよろしいですか。 ○労働衛生課長 事務局としては、各委員の意見をお聞きし、一応40歳未満は省略可とす る。省略可の条件をいろいろ検討もしなければならない。ガイドライン化をしていかない と、むやみな省略はいけないので、そのための準備が必要である。  それから、安衛法としてのデータ収集と評価はやはりきちんとやったほうがいいだろう というご指摘は、非常に重く受け止める必要があると思います。実施に当たっては調査・ 研究を行って、必要な関係規則見直しに活用するのが適当であるとのことですので、検討 会においてこのような趣旨で報告書が決まれば、それを尊重して、私どもは早急に調査・ 研究の体制、あるいは研究班等を考慮いたします。それによって、安衛法による胸部エッ クス線のデータ収集と評価をきちんと行った上で、ここにあるように、関係規則の見直し をし、ガイドラインの作成をした上で実施に入るという手順になろうかと思います。この ような報告書の形でご了承いただければ、私どもとしてはそのように行います。 ○土肥委員 「40歳未満は医師の判断による省略可(有所見等については省略不可)」と いう部分の、有所見等の範囲は今後決めていくという理解でいいわけですか。通常の、こ の部分の決め方によって実は運用が大幅に変わってしまうことになりますので、有所見が 何かについてかなり議論をしていかないと。有所見がどういうものか、ということをいま までの法律の考え方も含めて考えないと、幅が大幅に変わっていくということが起こると いう理解でよろしいのですか。 ○労働衛生課長 いいでしょう。確認という意味で申し上げます。いままでのこの検討会 の議論と、それからこれをまとめるに当たり、検討会外でも各委員の先生方のご意見をお 聞きしました。基本的にはここにあるように、「問題等も念頭におき、下記有効性等の調査・ 研究とあわせて評価を行うこととする」という意味は、そのようなものは別途にきちんと 検討しなければならないと事務局としては理解しています。ですので、調査・研究等をや り、データ収集や評価とともにバックデータを踏まえた上で、どのような状態で省略を不 可とし、どのようなグループには行うべきかをきちんと決めたあとでなければ、行政的に は規則改正や執行には至らないと思っていますので、そのように行っていくと、現在私は 理解しています。 ○土肥委員 わかりました。 ○今村委員 いまの土肥委員の部分と似ているかもしれないのですが、逆に、医師の判断 により省略可という。まず1つ確認です。医師というのは必ずしも産業医だけではなくて、 すべての医師ということでとらえてよろしいのですか。つまり、事業所に頼まれて診療所 から健診に来られる場合、必ずしも産業医を持っていない方たちもいらっしゃると思いま す。この辺の「省略可」をよく理解されないで、事業所からももともとレントゲンは撮ら なくていいと言われて、従業員の方が来られるケースもかなり出てくると思います。  ですから、何らかの形で、この「省略可」というのは具体的な文言で理由を医師が書く とか、何かしておかないと、最初からこれはやらなくてもいいということを前提にして来 られるケースがかなり多くなってくるのではないかということを危惧します。 ○労働衛生課長 それらも含めて、結局、ガイドライン化していかなければいけないので はないかと思います。それについては、先ほどの調査・研究等のデータを踏まえて、専門 の検討会を将来的に開催して、きちんと作っていくべきではなかろうかと思っています。 この報告書が先に上がったら、それも含めて事務局としてはこのように行ってまいります というお答えになるかと思います。 ○工藤座長 よろしいですか、義務的な項目としてはしないということですね。そういう 理解でよろしいのですね。義務というか、やらなければならないのではなくて、産業医の 判断、医師の判断で省略ができるということですね。 ○労働衛生課長 そうです。医師の判断の範囲とかいろいろ出てくるのだろうと思います。 ○掘江委員 ただいまの今村委員のお話、私も前回から危惧しているところで、ご意見も 差し上げました。こういうまとめ方でも結構なのですが、もし可能であれば、医師の前に 「労働者の健康管理について、専門的知識を有する」という形容詞があってもいいのかな と思っています。  ちょっと煩雑な政策になりますが、その理由としては、いままで医師の判断により省略 可であったコレステロールや中性脂肪、労働者の生活習慣病対策という意味で、本人のこ とが医学的にわかっていれば省略の判断がある程度妥当にできるというものではなくて、 今回は職場の暴露、あるいは「ハイリスク」、「デンジャー」という言葉で呼ばれている職 場の要素が念頭になければ判断できないわけです。やや、生活習慣病対策とは違う知識を 持った医師でなければいけないような気がしています。できれば、産業医の資格を持った 方を指し示したいというのが私の気持です。 ○工藤座長 これは産業医の判断という。 ○掘江委員 ただ、産業医と申しますと、50人以上の事業所に専任義務を課していません ので、言い方としては「労働者の健康管理について一定の知識」。 ○工藤座長 産業医に準じる、という意味でおっしゃっているわけですか。 ○掘江委員 事業者責任ですから、事業者として産業医の専任義務がないところに「産業 医の」とは書けないと思います。ですから、そういう人であっても、「労働者の健康管理に ついて一定の知識がある」と言ってしまえば、産業医としてお願いしている医師ではない けれども、例えば地産保におられる産業医の資格をきちんとお取りになっている先生にご 意見をいただく。あるいは、逆に労働衛生機関においても、産業医の資格を持った医師が 判断しているということであれば、これも1つの考え方ではないかと思います。逆に産業 医の資格を持った医師が労働衛生機関にいれば、こういった判断まで含めて受注できるこ とになりますので、より現場の対策として効果的な対策につながるのではないかと期待も しています。 ○労働衛生課長 これは行政側の意見ですが、「産業医でなければならない」とか「健康管 理に対する専門的知識を有する」という枕言葉を付けると、医師の中で判断できるものを 限定するという意味が出てくる。当然、それは限定を考えている。むやみやたらに、医者 であれば誰でもOKにしていいということにならないということはわかります。行政の立 場からすると、医師という中で限定するというのは、行政施策に反映するときに相当きつ くなるのかなという感じがします。 ○工藤座長 土肥委員のおっしゃっている意味は非常によくわかります。わかるけれども、 境界をどこで引くかとか、実際に実行する場合には大変難しい。 ○掘江委員 労働安全衛生法第14条第2項に資格について触れている部分があります。そ ちらを参照いただければ整理できるのではないかと思います。 ○工藤座長 それは産業医ということではなくてですね。 ○掘江委員 いや、産業医の専任資格を有する医師ということです。 ○今村委員 医師の資格を持っているかどうか、いま課長がおっしゃった点は大変よくわ かりました。実際、条項をそこまで踏み込んで書けるかどうかというのは、日本医師会と しても非常に危惧するところではあります。そこで先ほど私が申し上げたように、「ガイド ラインの中に」というお話をいただいたので、それでいいのではないかと思います。要す るに、きちんと省略可ということが判断できたということが何かわかるようにしていただ ければ、資格有無ではなくて、いま委員がおっしゃったような、きちんとした労働者の健 康を考えた判断をされたというものが何か、資格が有る無しにかかわらず、きちんとした 形で残るようなものにしていただければいいのではないかと思っています。ただ、先ほど も申し上げたように、お答えでガイドラインというものを作られるということであれば、 そこにあまり医師の資格について細かく書かなくてもよろしいのではないかと思っていま す。 ○工藤座長 よろしいですか。ガイドラインを作る中で、ご発言の趣旨は活かしていくこ とで。 ○労働衛生課長 ガイドライン等のことはこの中には入っていませんが、要するにいまの 議論等、私が先ほど申し上げたようなことを全部議事録として残して、いずれ公開という ことです。そこである程度の担保はさせていただこうかということでお願いできればと思 います。 ○掘江委員 技術的なことなのですが、現在も個人の健康、診断、結果表を事業者が保存 しています。そこには健康診断を担当した医師の名前のほか、事後措置の意見を求めた医 師の名前を書く欄がありますので、その医師というか、そういうところに名前を残してい くことは可能ではないかと思っています。 ○工藤座長 ほかに何かご意見はありますか。 ○土肥委員 もう1点、「5歳ごとの節目健診を行う」ということが最後に出てきています。 総論として特に異論はありませんが、いままでの流れを読んでみると、若年層の結核に対 する方策としての5年ごとの節目健診なのか、その他の呼吸器疾患のスクリーニングに対 する5年ごとの節目健診なのか、また、なぜ5年ごとなのかということがあまり全文の中 では触れられておりません。5年ごとが適当であるということであれば、この議論とは別 に、今後の健康診断のあり方を考える上では、5年について、こういう考え方で5年にな ったということがあったほうが、今後の議論としては役立つのではないかと思います。い かがでしょうか。 ○労働衛生課長 前回、5年について科学的根拠のベースが何かあるのですかということ で、事務局も先生方にご相談いたしました。矢野委員から“Law of Employee Health Service”、 米国のものですが、USPreventive Task Forceというところから“Lifetime Health Monitoring Program”が1989年に推奨されています。これに基づくと、大体5年ごとの節 目健診、30歳や40歳で大きな健診がある。例えばChest、Brest Examinationあたりだと 40歳以上は毎年というのがあります。おそらく、ベースになった仕事があるのではないか と思います。  いま、確認をしているところなのですが、かつての項目の30歳、35歳の省略の部分も 基本的にはTask Force推奨のHealth Monitoring Programに基づいてやったのではないか と考えています。もしそういうことであれば、先生方がよろしければ、このようなものを 参照、参考にして「5年ごとに行うのが適当である」というようなことを書き入れてもよ ろしいかと。一応、そのように提案されたものはございますということです。 ○工藤座長 そういうことでよろしいですか。矢野委員、この点で何かありますか。 ○矢野委員 そもそも、ILOの“Encyclopedia”という、4分冊の非常に大部な、この 分野に関する一種のバイブルになっている本の中で見つけました。5年とする根拠自身、 この差のもとというのはよくわからないのですが、健診の有効性評価の学問の領域として よく言われることは、間隔を空けることによって有害性は、例えば5年に1回にすれば5 分の1になる。利益は1回やるごとに新しく見つける部分が大きくなるので良くなるとい うことで、多少利益とリスクとのバランスでは間隔を空けるというのは有効な手段だと一 般に言われています。5がいいのか、10がいいのかというあたりはともかくとして、1つ の方法かなと思っています。特に、今回みたいに議論の分かれる中では、ちょうど良い対 応の仕方かなと考えています。 ○工藤座長 これで言うと確かに大体5年ごとですね。大体節目でやられていて、40歳に なると格段に項目が変わってしまっている。大体、先進国というのは共通してこの考え方 は入れられていて、それに対して今回は矛盾する提案ではないということだろうと思いま す。 ○労働衛生課長 それを一応入れておくということでよろしいですか。 ○工藤座長 文言として入れさせていただきます。ほかにございますか。 ○柚木委員 先ほど工藤座長のおっしゃられた、6頁の「特定業務従事者の健康診断」の ところですが、エックス線を省略できない業務を列挙したほうがいいのではないかと先ほ ど言いました。特定化学物質のところで、省略してはいけない業務を列挙しておいたほう がどうだという。 ○労働衛生課長 それは列挙します。 ○柚木委員 その中には過重労働、外国人の労働のことも入っているのでしょうか。 ○労働安全衛生課長 それは入っていません。 ○工藤座長 いや、省略できないというか、特定業務と指定されているものはすべて行う ということですね。今回のあれは。 ○労働衛生課長 特定業務についてはイからカまで全部です。 ○工藤座長 これらをすべて省略しないということですね。 ○労働衛生課長 はい。省略しないで列挙します。 ○柚木委員 わかりました。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。委員の皆様方には昨年の4月以来、7回に わたって検討をさせていただきました。本日、とりまとめましたこの報告書については、 いま出たご意見に基づいてさらに修正、加筆をする必要があろうかと思います。その辺、 表現の修正や加筆については座長にご一任いただければと思いますが、よろしゅうござい ましょうか。 (了承) ○工藤座長 どうもありがとうございました。この検討会は大変長く、大変活発なご意見 をいただきました。本日、ようやくまとめることが出来ました。どうも、長い間ありがと うございました。最後に、部長から一言ご挨拶をいただきます。 ○安全衛生部長 昨年4月以来、皆様方にはお忙しい中、本当に精力的にご議論いただき ありがとうございました。私も昨年10月から部長に就任して、途中から議論に参加をさせ ていただきました。私自身もいろいろな意味で勉強させていただいたと思っています。今 日まで含めていただいた意見、今後さらに調査・研究をした上で、しっかりと働く方々の 健康管理に行政としても活かしていくというスタンスで臨みたいと思います。本当にあり がとうございました。 ○労働衛生課長 どうもありがとうございました。修正終わりましたら、完成版をまた各 委員にお届けいたします。よろしくお願いいたします。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5495,5181)