連合第9回中央執行委員会確認/2006.6.15


労働者代表法案要綱骨子(案)


 目的
 事業場において労働者の過半数で組織する労働組合がない場合において、労働諸法規等に労働者代表等との協定締結・意見聴取等を定められたものにつき、労働者を代表する機関を設置し、その自主的、民主的な運営を確保する枠組みを法的に整備する。また、労働者の過半数で組織する労働組合がある事業場においては、労働諸法規等に労働者代表等との協定締結・意見聴取等を定められたものにつき、過半数労働組合が非組合員を含めた当該事業場の全労働者の意見を適正に集約できるよう法的に整備する。

 定義
(1)  労働者
 本要綱において労働者とは、名称の如何によらず、当該事業場に使用されるすべての者をいう。

(2)  代表委員会等
 本要綱において労働者代表委員会等とは、労働者代表委員会(仮称)および中央労働者代表委員会(仮称)をいう。

 労働者代表委員会等の設置
(1)  10人以上の労働者を使用する事業場
 使用者は、常時10人以上の労働者を使用する事業場について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者代表委員会を設置しなければならない。

(2)  10人未満の労働者を使用する事業場
 使用者は、(1)に定める事業場を除く事業場について、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者代表員を置かなければならない。

(3)  過半数労働組合がある事業場
 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては、当該過半数労働組合を当該事業場の労働者代表委員会とみなす。

 中央労働者代表委員会の設置
 当該企業に複数の事業場を有する場合、及び、会社が親子会社の関係にある場合、各事業場につき共通の事項に関しては、各事業場の労働者代表委員会から選出された労働者代表中央委員で、中央労働者代表委員会を設置することができる。

 過半数労働組合の成立と労働者代表委員会の解散
(1)  労働者代表委員会の解散
 労働者代表委員会は、当該事業場で労働者の過半数で組織する労働組合が成立した場合は、第10項(1)に定める権限を喪失し、総会をもって解散する。

(2)  過半数労働組合への協定の承継
 (1)により解散した労働者代表委員会が使用者と締結していた協定については、新たに労働者代表委員会とみなされる当該過半数労働組合がこれを承継する。

 労働組合の優先
 労働者代表委員会等は、労働組合の結成、労働組合の団体交渉、労使協議、労働協約の締結、その他の組合活動を妨げてはならない。

 労働者代表委員の選出
(1)  委員の選挙権資格等
 当該事業場の労働者のうち、労働組合法2条但書1号に規定された労働者を除く労働者は、労働者代表委員の選挙権、被選挙権を有する。

(2)  委員の人数
 労働者代表委員会の労働者代表委員は、事業場規模に応じ、別表に掲げる数を最低人数とする。

(3)  委員の任期
 労働者代表委員の任期は2年を超えることができない。再任は妨げない。

 ※  本項(2)における委員の人数については引き続き検討する。

 労働者代表委員会の運営
(1)  総則
 労働者代表委員会は、労働者代表委員により構成され、総会を開き、代表を選出し、規約を定めることができる。

(2)  総会
(1)  総会は、労働者代表委員会の代表者が招集する。
(2)  代表者は、少なくとも毎年1回総会を招集しなければならない。

(3)  規約の記載事項
 規約には次の事項に掲げる規定を含まなければならない。
(1)  名称
(2)  主たる事務所の所在地
(3)  当該事業場の労働者は、労働者代表委員会の全ての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
(4)  何人も、いかなる場合においても、人種、国籍、思想、信条、宗教、性別、門地又は身分によって労働者代表委員たる資格を奪われないこと。

(4)  代表者の選出
 労働者代表委員の互選により、労働者代表委員会の代表者を選任する。

(5)  運営費
 使用者は、労働者代表委員会等の運営のための費用を負担しなければならない。

 労働者代表委員会等の選挙
(1)  選挙の実施時期
 労働者代表委員会の定例選挙は、2年ごとに4月1日から5月31日までの間に行なう。

(2)  選出手続
(1)  労働者代表委員会にあっては、その委員は、当該事業場の労働者による、直接無記名投票により選出し、中央労働者代表委員会にあっては、その委員は、労働者代表委員会の委員による直接無記名投票により選出する。
(2)  投票は候補者名簿に記載されている候補者の個人名を記載する。

(3)  労働者代表委員の候補者名簿
(1)  選挙権を有する労働者および当該事業場にある労働組合は、労働者代表委員の候補者名簿を提出することができる。
(2)  労働者による(1)の候補者名簿の提出には、当該事業場において選挙権を有する労働者の10分の1以上または10人以上のいずれか小さい数字の人数分の推薦署名を必要とする。
(3)  労働組合による(1)の候補者名簿の提出には、推薦署名を必要としない。

(4)  選挙管理委員会
(1)  当該事業場の労働者の中から、当該事業場における労働者代表委員会の選挙を適正に行うことを目的とする選挙管理委員会の委員を選出する。
(2)  選挙管理委員会の委員構成は、当該事業場における労働者の性別比を反映するよう努めなければならない。また、当該事業場にある労働組合の代表者が希望した場合には、その代表者またはその者が推薦する者を選挙管理委員としなければならない。

(5)  労働者代表委員会の構成
(1)  労働者代表委員会の委員構成は、当該事業場における労働者の性別比および雇用形態毎の比率を反映するものとする。
(2)  選挙管理委員会は、選挙の公示と同時に、当該事業場における労働者の性別比および雇用形態ごとの比率を反映した委員構成を示さなければならない。

(6)  使用者の選挙介入の禁止
(1)  使用者は、労働者代表委員および中央労働者代表委員の選挙に介入してはならない。
(2)  労働者は、選挙の公正性等が疑われる場合には、都道府県労働委員会に選挙の取消を求めることができる。

(7)  選挙結果の届出義務等
 労働者代表委員会は、労働者代表委員の選挙結果を労働基準監督署および都道府県労働委員会に届出なければならず、また当該選挙の投票結果を3年間保存しなければならない。

(8)  選挙費用
 使用者は、労働者代表委員会等の選挙のための費用を負担する。また使用者は、労働者が選挙に関わる活動を労働時間中に行なう必要がある場合には、有給としなければならない。

10  労働者代表委員会等の権限等
(1)  労働者代表委員会等の権限
 労働者代表委員会等は、労働諸法規等に労働者代表との協定締結・意見聴取等を定められたものについてのみ、任務、権限を有し、それ以外の事項について使用者と協議もしくは交渉してはならない。労働者代表委員会等が使用者と法定以外の協定等を締結した場合には、その協定等は無効とする。

(2)  労働者代表委員会等の資料・情報請求権
(1)  労働者代表委員会等は、(1)の協定締結・意見聴取等のために必要と思われる資料もしくは情報について、使用者に提出を求めることができる。
(2)  使用者が資料もしくは情報の提出を拒んだ場合においては、労働者代表委員会等は、都道府県労働委員会に申立を行うことができる。

(3)  労働者代表委員会等による意見聴取
 労働者代表委員会等は、(1)の協定締結・意見聴取等に先立って、総会を開催し当該事業場の労働者の意向を確認しなければならない。

(4)  労働者代表委員会等の決議要件
 (1)の協定締結・意見聴取等に関わり労働者代表委員会等が決議を行う場合には、労働者代表委員または労働者代表中央委員の総数の3/4以上の多数決によらなければならない。

11  労働者代表委員会等の会議の傍聴
 当該事業場にある労働組合の代表者またはその者が推薦した者は、労働者代表委員会等の会議を傍聴することができる。その場合には、労働者代表委員会等は、当該労働組合に対し事前に会議の開催を適時通知しなければならない。

12  労働協約の優先
 労働者代表委員会等と使用者が締結した協定等が、労働組合と使用者又はその団体との間の労働協約と抵触するときは、その労働協約が優先する。

13  不利益取扱の禁止
 使用者は、労働者が労働者代表委員であること若しくは労働者代表委員になろうとしたこと又は労働者代表委員として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない。

14  支配介入の禁止
 使用者は、労働者代表委員や労働者代表委員会等の運営を支配し、若しくはこれに介入することをしてはならない。

15  便宜供与等
(1)  就労義務の免除
 使用者は、労働者代表委員会等の請求により、労働者代表委員に対し、労働者代表委員会等の活動に必要な範囲で就労義務を免除し、この期間中の賃金を支払わなければならない。

(2)  研修休暇等
(1)  使用者は労働者代表委員に対して、毎年5日以上の有給の研修休暇を与えなければならない。
(2)  (1)の研修休暇は、日本労使関係研究協会(JIRRA)が開催する研修の他、労働者代表委員会と使用者が協議し決定した研修の受講に限り、取得することができる。
(3)  研修に必要な費用は使用者が負担する。

(3)  事務所等の貸与
 使用者は、労働者代表委員会等の請求により、必要に応じて労働者代表委員会等の事務所、会議のための施設、および活動のための用具等の貸与をしなければならない。

16  調整機関の設置
 労働者代表委員会等の選挙に係る紛争、および使用者と労働者代表委員会等の紛争は、都道府県労働委員会が取り扱う。

17  労働者代表員
 7項(1)(選挙資格)、7項(3)(任期)、8項(1)(総則)、8項(2)(総会)、8項(3)(規約の記載事項)、8項(5)(運営費)、9項(1)(選挙の実施時期)、9項(2)(選出手続)、9項(3)(候補者名簿)、9項(4)(選挙管理委員会)、9項(6)(使用者の選挙介入の禁止)、9項(7)(選挙結果の届出等)、9項(8)(選挙費用等)、10項(権限等)、12項(労働協約の優先)、13項(不利益取扱の禁止)、14項(支配介入の禁止)、15項(便宜供与等)、16項(調整機関の設置)の規定は、労働者代表員にこれを準用する。

18  労働者代表委員会としての過半数労働組合
 8項(1)(総則)、8項(2)(総会)、8項(5)(運営費)、10項(2)(資料・情報請求権)、10項(3)(労働者代表委員会等による意見聴取)、14項(支配介入の禁止)、15項(便宜供与等)の規定は、労働者代表委員会の職務を執り行う過半数労働組合にこれを準用する。

19  罰則
 使用者が9項(6)(使用者の選挙介入の禁止)、13項(不利益取扱の禁止)、14項(支配介入の禁止)に違反した場合には、刑罰を科す。


 ※  連合の「労働契約法案」では、過半数労組もしくは労働者代表は、(1)労働契約内容の変更(第10項)、(2)転居を伴う配置転換(第11項)、(3)出向(第12項)、(4)昇給降給・昇格降格・評価(第14項)、(5)制裁・懲戒(第15項、第16項)、(6)解雇(第18項、第19項)、において使用者からの説明協議の相手方となっている。

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