第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果


1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾
 平成17年2月10日9:30、発熱のため近医受診中、突然転倒し頭部打撲。意識消失。同日10:14、救急車にて当該施設に搬送される。CTにて第4脳室内に小出血を認め、MRIにてくも膜下出血と診断。
 2月11日、急激な意識レベル低下を来たし、瞳孔散大、人工呼吸器装着。
 同日14:30、家族より意思表示シールの提示あり。
 2月13日11:37、臨床的には脳死と見込まれる状態と判断されるものの、感染症が疑われたため、病院は中日本支部に連絡し、ドナー適応につき照会。同日13:30、都道府県コーディネーター1名が病院に到着、その後ネットワークのコーディネーターが病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行い、メディカルコンサルタントに問い合わせたところ、移植の可能性ありと判断。同日22:45、臨床的に脳死と診断。
 同日23:07、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が家族(患者の妻)に面談。脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
 2月14日1:45に患者の妻が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。
 【評価】
 ○ コーディネーターは、病院から感染症等に関するドナー適応についての照会を受けた後、一次評価や院内体制の確認を迅速かつ適切に行っている。
 ○ 家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われ、家族に対して十分に考慮の機会が与えられた上で承諾が得られたものと評価できる。

2.ドナーの医学的検査およびレシピエントの選択等
 2月14日3:02に、心臓、肺のレシピエント候補者の選定を開始。
 法的脳死判定が終了した後、同日15:59より心臓、肺の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。
 心臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に心臓の移植が実施されている。
 肺については、第1候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾するも、最終評価の結果、右上葉に浸潤を認め、医学的適応なしと判断し、右肺の移植が見送られることとなった。第2候補者の移植実施施設側が片肺の移植を受諾し、左肺の移植が実施されている。
 また、高熱があったため全身性の活動性感染症が疑われたが、血液検査の結果等から全身性の活動性感染症ではないと判断し、その他の感染症検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。
 【評価】
 ○ 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。
 ○ ドナーの医学的検査等は適正に行われている。

3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 2月14日14:23に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより家族に対して、右肺については医学的理由にて移植が見送られることとなった旨を報告している。
 【評価】
 ○ 法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。

4.臓器の搬送
 2月14日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。
 【評価】
 ○ 臓器の搬送は適正に行われた。

5.臓器摘出後の家族への支援
 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りしている。
 2月15日、ネットワークのコーディネーターより家族へ電話。移植手術終了の報告を行う。
 2月17日、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が告別式に参列。移植後の経過報告を行う。
 3月30日、ネットワークのコーディネーター1名がご自宅を訪問。厚生労働大臣からの感謝状を手渡し、移植後の経過報告を行う。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。
 【評価】
 ○ コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、家族への報告やサンクスレターの送付等適切な対応がとられている。

トップへ