資料2

第4回 看護基礎教育の充実に関する検討会 主な意見


【看護師教育について】

1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの、及び 2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

 一般社会でも大学卒を一人前にするには、それなりの教育を企業がしている。医療側で何が足りないとしているのか、私たちは何だかわからない。基礎教育では足りない部分を実践で学ぶこともあるし、その後、就職した後に補助的な教育が確立しないといけない。

 法律的には一人前であっても、必ずしも卒業した時にすべて一人前ではない。カリキュラムを考えるときには、教育機関でやるべきことと研修でやらなければいけないことがあるので、医師と同じように看護師についても研修制度を設けるべきだと思う。

3.看護基礎教育の内容に関するもの

 実践能力は臨地実習でしか習得できないため、看護基礎教育の中で臨地実習の時間を増やすということが必要。医療に携わっている者、教育に携わっている者が協力して、看護を目指す人が看護を続けられる体制を考えるべき。

 基礎教育について3つの側面を重視する必要がある。1つは人格陶冶の教育。チーム医療の中でコミュニケーションがきちんとできることが大事。2つ目は、知識や思考力を培う教育の重要性。患者の個別性をきちんと踏まえて、アセスメントする能力が必要である。特にフィジカルアセスメントの能力の強化や予防的視点や地域ネットワークの視点が重要。3つ目は、医療事故の状況から、与薬、注射、点滴、医療機器の取扱いに関することを教育することが必要。

 地域も含めて医療の現場が広がってくると、患者の状態をお互いに説明できることが大事。フィジカルアセスメントはそのための基本である。すでに教育している学校も現実にあるので、科目名を明記して実施することが必要。セルフラーニングできるシミュレーターやラボの充実も必要。学生が納得するには、それぞれの学習スピードがある。セルフラーニングを含めたカリキュラムの工夫が必要。

 1人でできる項目が少ないことが、新人の自信のなさにつながっている。自信をつけるには経験させるしかないが、いまの臨地実習の時間では、経験を積む時間がない。臨地実習でたくさんの患者を見ながら経験を積み、優先順位を考えるカリキュラムの組み方が重要。

 現場を見ずに、学校で看護過程の展開をさせるのは効率が悪い。カリキュラムには実践をたくさん入れることが重要で、病院側にもそれを求めるべき。技術は総合的に提供するものだとわかっていないと、学生はいつまでたっても、自信がないまま。

 判断過程を含めた技術を教えることが技術教育である。いくつかの技術を 1人の患者を通して、どのように統合して提供するかということが教育方法に求められる。

 技術を持たないと見えないことがある。技術があってはじめて判断でき、それは基礎教育の実習でやらないといけない。

 技術という言葉は、表に見えるパフォーマンスレベルと、頭の中で観察する方法と、その背景を知るという知識を統合させて判断していることも含む。

 知ることから次のスキルが出てくるのだが、わからなくて、頭ばかりで教えていくことは問題である。

 技術教育には、多数に適応できるような基本的な技術をまず学ぶ段階があって、そして病棟で特定の患者の状況等を判断しながら、知識と統合しながら使っていく段階がある。いまの学生は、基本的な生活能力的なものも落ちており、学内での技術教育にも時間がかかる。また、体験を重ねても、そこでかなりサポートしないと修得につながらない。教員数の問題も大きい。

 自信もなく、何か失敗をすると上司に叱られるのではないかと、患者よりも上司や医師ばかり見ている若い看護師像が見えてきた。おどおどしないで明るい希望を持って仕事ができるような職場にしてほしい。そのためにもコミュニケーションがとれるということは重要。

 地域連携クリティカルパスの必要性が言われている中、病院の看護師も退院調整など退院後のことを考えたケアをする必要がある。訪問看護師としてもケアコーディネーション機能が必要となる。在宅がん末期患者のケアも含めて、看護師の教育の中で在宅看護論を強化する必要がある。

4.その他

 看護師の中でも教員と、現場の認識がこれほど違うのかとびっくりした。

 コミュニケーションについては看護教育以前の問題。小学校、中学校といったところから、人とのコミュニケーションをきちんと取れる教育を基本的に考え直さないといけない。

 アメリカの看護師のほうが、日本の看護師よりもずっと臨床の力を持っている。外国の例も参考にすべき。


【保健師教育について】

1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの、及び 2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

  (特になし)

3.看護基礎教育の内容に関するもの

 出身地で実習しているが、学生の人数が限られているから可能である。看護大学の学生全員が保健師の実習を行う場合には、看護師の実習とローテーションしながらやるので、限られた場所、地域でお願いしている。

 4月初めに、県で地域看護の実習を保健所と市町村に割り当てるので、地域看護の実習は大学のある所でやってもらわないと困る。 ○個をわかって指導できる保健師は全国津々浦々にいてもらわなければ困る。

 「保健師の新たな役割」に、保健師が取り組んでいくような教育の仕組みを作らないといけない。しかし、実習を引き受ける保健所は悲鳴を上げている状況から、規則上で行政保健の実習だけを実習場所としないような検討をしてほしい。

 保健師の役割は、個人の健康水準を高めることと、地域全体の健康水準を高めることの両方である。地域・集団全体への支援や地域・集団全体の健康開発・変革・改善のために、さまざまな科目を充実していく必要がある。

4.その他

 平成12年から平成17年までの間に保健師就職者は半減している。保健師に対して、一般住民の理解があまりない自治体から減らされる。現実的には、今より増えることはないと考えて方策を立てるべき。

 保健師の役割は大きいが、大学の学生がなぜ全員必修なのか理解できない。助産師教育と同じように、どうして選択にならないのか疑問である。

 看護師教育が3年で足りないと言っているのに、その上に必須のものが入ってくるのか疑問である。ニーズがあって資格になるので、それが十分に活用されないと困る。看護教育の上に、プラスの資格が取れるというのではなく、保健指導の本質的なものを確立する教育体系が求められる。

 大学の統合カリキュラムでは、保健師と看護師の資格が取れ、学生はそのつもりで入学する。実習施設も今のままでやるとパンクしてしまう。本当に必要な人たちを必要なだけ育てるという形でやることが、これからは求められるのではないか。大学卒業生が全部保健師を取らなければいけないという状況はない。


【助産師教育について】

1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの、及び 2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

   (特になし)

3.看護基礎教育の内容に関するもの

 助産師には正常分娩について責任を持つことが期待されている。基礎教育できちっと能力を身に付けるため、分娩件数10例を実習できるような環境整備が必要。

 指導要領に沿った実習では分娩を10例取ればよく、それは助産の介助。本来、助産師は妊娠の診断から産褥のケアまでできなければいけない。妊娠期間は10ヶ月あるのに、6ヶ月で妊娠から産褥まですべて見ようというのは無理である。思春期、閉経、更年期の指導も含めた女性の一生に関わる教育をするには、かなり不足している。

4.その他

 産婦人科の医師不足を考え、助産師の問題は喫緊に解決しておく課題。

 10ヶ月かかるお産の経過をみるために、実習開始が4年生の夏休み以降では期間が足りない。看護基礎教育がベースにあった上で、その後に、最低1年かけての助産学の教育があることが重要。

 医師や看護職など、国家資格者は一般の仕事と違う。カリキュラムの内容と同時に、国家資格を与える職業として時間数がこれでよいかという議論も必要。


【その他】

 看護基礎教育の中で母性看護や地域看護の充実はますます重要である。助産師も保健師もより高い専門性が求められている。看護基礎教育の充実を図るために臨地実習を増やして、その上に保健師、助産師の教育を考えてほしい。

 看護師基礎教育の中でも保健センター等の実習は、受け入れてくれる日数が毎年減ってきている。ベースになる基礎教育と助産師や保健師の教育のつながりがどうなるのかが問題である。

 大学の統合教育の問題を、厚労省の検討会で議論するのはいかがか。ワーキンググループ等で具体的に時間数等指定規則の提案が出されると、統合カリキュラムが成り立つかどうかということが出てくるのではないか。

 基本的には看護師の基礎教育をベースにして、その上に保健師や助産師の教育を積み重ねていくべき。昨年度の保助看法のあり方に関する検討会では、保健師の業務や助産師の業務の中に看護業務が内在しているという位置付けで、今回の保助看法改正がなされた。保健師や助産師を看護師のより専門性を高めた資格と考えてはどうか。

 大学教育の場合は、到達目標を保健師の国家試験受験資格と看護師の受験資格を得るためのカリキュラムとして統合されている。特に保健指導の教育など重なる部分があり、大学教育をする者にとって、どこから先が保健師教育かといわれると分けるのが困難。

 地域での実習は、母子や成人、老年をすべて終わった段階で、その基礎知識を基に保健指導をする。基礎知識がなくて看護師と一緒に行う保健指導の実習は、大変効率が悪い。

 大学で統合カリキュラムはどうするかというのは、まさに運用上の問題。保助看法では、ベースとなる看護師教育があって、それに保健師あるいは助産師がある。あとは大学がどう運用していくかというのは、別の問題だ。

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