資料1
これまでの議論の中間的なとりまとめ案(骨子)
<これまでの議論の概要>
看護基礎教育の充実のあり方について、これまでの4回にわたる検討会において、幅広く、多様な意見が出された。議論の主な概要は下記のように整理される。 |
1.看護基礎教育の現状と課題
(看護師教育について)
○ | 学生が卒業時に1人でできるという看護技術は非常に少ない。就業後も自分に自信が持てないまま、不安の中で業務を行っている。また、医療現場についていけないために離職する者が多い。 |
○ | 看護基礎教育で修得する看護技術と臨床現場で求められるものとには、大きなギャップがある。安全が重要視される中で、診療の補助に関する技術を経験する機会が非常に少なくなってきている。療養上の世話すらも経験回数が非常に少ない。学生が看護技術に自信を持つためには経験が必要であるが、現行の臨地実習時間では経験を積むという時間の余裕はない。 |
○ | 臨地実習では一人の患者を受け持つが、就業すると複数の患者を同時に受け持ち、複数の作業を同時進行で行うことが求められる。また、急性期病院では人工呼吸器の管理や心電図のモニタリング技術など、高度な看護技術を求めており、たとえ、基本技術ができたとしても現場とは大変乖離している。 |
○ | 医療現場が高度化・専門化する中、薬品の取扱い、医療機器の取扱いにかかわる事故・ヒヤリハット事例において、新人看護職員が関わる割合が非常に高い。また、情報公開が進み、患者のニーズも多様化していることから、適切な説明による適切な医療の選択を支援できることが求められている。 |
○ | 看護師に期待される役割や学ぶべき知識・技術が増えており、3年間の中でカリキュラム内容を変えるなどの工夫には限界があるのではないか。 |
○ | 現代の学生の基本的な生活能力や常識、学力等が変化してきている。また、コミュニケーション能力が不足している。職業に必要な倫理観や責任感、豊かな人間性や人権を尊重する意識を育成していく必要がある。従来のスタートラインと同じレベルから積み上げていく教育だけでは解決できない問題がある。 |
○ | どのような看護基礎教育のあり方が望ましいかというのは、患者側がどういう看護師であってほしいか、あるいは患者と家族たちが求める看護師像があるので、これらを同時に議論することが必要である。 |
(保健師教育について)
○ | 学生が卒業時に習得するべき実践能力に関する調査では、卒業時点に1人でできる実践能力はそれほど高くない。家庭訪問など、新卒保健師が現場ですぐに求められる能力を充実させなければいけない。現在の2週間、3週間の実習では足りない。 |
○ | 行政における実習だけではなく、広い分野での実習を行うことが大事である。 |
○ | 保健師教育を履修する者が年々増加しており、実習施設の確保が非常に難しい状況にある。また、保健師として就業する者の数は年々減少してきている。適正な養成数の検討を行う必要があるのではないか。 |
(助産師教育について)
○ | 助産師は妊娠の診断から産褥のケアまでできなければならないが、現行の実習時間数では、妊娠期から産褥期まで全ての実習を行うことは困難である。さらに思春期、閉経、更年期の指導も含めた女性の一生に関わる教育をするには時間が不足している。 |
○ | 出生数の減少により、正常分娩10例の介助を行うために、実習施設を拡大しなければならない状況である。24時間体制で実習ができる環境整備や実習指導者の補強など、実習施設との調整を含め課題である。 |
○ | 学部の中で助産コースを選択する学生は、助産師教育が過密になるばかりでなく、看護師教育も圧迫される。また、履修希望者が多いにもかかわらず、履修できる者が制限されることなどが問題である。 |
○ | さらに、産科医師不足により今後、助産師の役割がますます拡大することから、助産師には医師と同程度の能力が必要になってくる。 |
(全般について)
○ | カリキュラムの内容と同時に、国家資格を与える職業として時間数がこれでよいかという議論が必要であり、教育期間を延長するためにはどうするべきか、具体的なところに焦点を当てて検討するべきではないか。 |
○ | 教育期間を延長しても教育の内容に問題があれば無駄になる。現在の教育期間で本当に教育できないのかを先に議論するべきである。 |
○ | 保健師の業務や助産師の業務の中には、看護業務が内在していることから、基本的には看護師の基礎教育をベースにして、その上に保健師や助産師の教育を積み重ねていくべきである。 |
○ | 保健師、助産師、看護師ともそれぞれ基礎教育(ジェネラルな教育)とするか。あるいは保健師、助産師をアドバンスコースと位置づけるべきか、検討するべきではないか。 |
○ | 身体侵襲を伴うような看護技術に関しては、無資格の学生が実施できる範囲等が限られている。看護基礎教育で教育すべきことと、資格取得後のオン・ザ・ジョブ・トレーニングでやるべきことは区別して考えるべきである。 |
○ | 新人の離職率は基礎教育だけの問題ではなく、新人看護職員研修の体制も関係することから、臨床研修も視野に入れて検討するべきである。 |
2.看護基礎教育における課題への対応
(看護師教育について)
○ | 臨地実習の時間数を増やし、患者を通して日常生活の援助技術を十分に経験できるようにすること、また、臨床薬理や安全管理などの知識・技術を修得すること、さらに与薬や注射、医療機器の取扱い、モニタリングなども実習で実施すること、夜間実習や複数の患者を受け持つ実習を行う。 |
○ | 急性期病院、地域・在宅など多様なケア提供の場で、患者の個別性を踏まえたケアが提供できるように、フィジカルアセスメントの能力や患者マネジメント能力を強化する。 |
○ | コミュニケーション技術等の教育により、患者や医療提供者たちとの信頼関係を築くことができるようにする。また、看護倫理に関する教育を行う。 |
○ | 卒業時点での看護技術の到達目標を、基礎教育が考えているものと、卒業後の臨床側が考えるものとについて合意を得た上で設定し、スムーズに移行していけるような教育を行う。 |
(保健師教育について)
○ | これからは生活習慣病に対する保健指導や在宅看護が重要となり、保健師は訪問看護ステーション、地域、医療機関にも必要となる。個人に対する保健指導に関する科目、地域・集団全体への支援や健康開発・変革・改善のための科目を充実する。また、保健所や市町村保健センターのみならず、多様な場で臨地実習を行う。 |
(助産師教育について)
○ | 実習時間数を増やし、妊娠期から分娩・産褥期までのケア、新生児のケアなど、助産技術を確実に実施できるようにする。 |
○ | また、診療所を含め、複数の実習施設を新たに確保して、実習環境の整備・実習指導体制の充実を図る。 |
<今後の検討について>
これまでの検討会での議論の概要を踏まえ、充実するべき教育内容について具体 的な作業を行うワーキンググループへの委任事項と、今後検討が必要な課題につい てとりまとめをする。
1 | .指定規則等の改正に向けたワーキンググループへの委任事項
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2 | .指定規則等の改正にあわせて検討するべき事項
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