06/07/31 ホームレスの実態に関する全国調査検討会第1回議事録 第1回ホームレスの実態に関する全国調査検討会             厚生労働省社会・援護局 第1回ホームレスの実態に関する全国調査検討会 議事録 日時:2006年7月31日(月) 14:00〜16:00 場所:厚生労働省社会・援護局第2会議室(4階) 出席者:  委員   岩田座長、森田委員、安江委員、山口委員、山田委員、古屋委員、大橋委員、   阿部委員、  行政担当者   中村社会・援護局長、篠原課長(地域福祉課)、島村課長補佐(地域福祉課)   北條室長(職業安定局雇用開発課就労支援室)、   深澤政策企画官(国土交通省総合政策局政策課)、   長田課長補佐(国土交通省住宅局住宅政策課) 議事:  1. 開会  2. 社会・援護局長あいさつ  3. 議事    (1) ホームレスの実態に関する全国調査の内容等について    (2) その他  4. 閉会 配布資料:  資料1 ホームレス自立支援法及び基本方針の見直しスケジュール  資料2 前回調査(平成15年3月)概要等  資料3 現行ホームレス施策の概要等  資料4 次回調査の内容等について 参考資料:  ・ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法全文及び同概要  ・ホームレスの自立の支援等に関する基本方針全文及び同ポイント  ・ホームレスの実態に関する全国調査報告書(平成15年3月)  ・ホームレスの実態に関する全国調査検討会設置要綱 ○島村課長補佐  本日はお忙しいところ各委員にはお集まりいただきましてありがとうございます。時 間は予定の14時より若干早いですが、委員お揃いでございますので、ただ今から「ホ ームレスの実態に関する全国調査検討会」を開催したいと思います。会議の開催に当た り中村社会・援護局長よりごあいさつ申し上げます。 ○中村局長  皆さまこんにちは。社会・援護局長の中村です。第1回のホームレスの実態に関する 全国調査検討会の開催に当たり、最初でございますので一言ごあいさつ申し上げます。  当検討会を立ち上げることにしましたところ、委員の皆さまには大変ご多用中にもか かわらずお引き受けいただきましてありがとうございます。今日はご出席もいただき厚 く御礼申し上げます。岩田委員には、座長をお願いしたいと思っております。就任をお 引き受けいただき重ねて感謝申し上げます。委員の皆さま、また委員長、どうぞよろし くお願いします。  ホームレスの実態に関する全国調査は、平成14年に「ホームレスの自立の支援等に 関する特別措置法」が制定されたことを受け、平成15年1月に第1回が行われました。 この調査結果を踏まえて「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」が平成15年7 月に策定され、これまで関係省庁がホームレスの自立を支援するための各種施策を実施 しているところです。  この特別措置法については、その施行の状況等を勘案し、施行5年後をめどに見直し の検討を行うとされています。また、基本方針についても同じく策定後5年をめどに見 直しを行うとされていて、見直しにあたっては再度実態調査を行い、基本方針に定めた 施策についての政策評価等を行うことが求められています。実態調査の調査項目等をご 検討いただき、さらに調査結果の分析を行っていただくためにこの調査委員会を立ち上 げさせていただきましたので、どうぞよろしくお願いします。  先ほど申し上げました通り、第1回の調査が平成15年1月に行われていますので、 次回の全国調査は平成19年1月の実施を考えています。従いまして、この検討会にお いて調査項目についてもご検討いただきたいわけですが、その点については今年の秋を めどに調査結果の項目の取りまとめをしていただきたいと考えています。  調査を行いましたら結果が出てきますので、結果分析についてはその結果が出たとこ ろでお願いしたいと考えております。  ご覧いただきます通り、この検討会の議事は原則公開とさせていただきたいと思いま す。また会議終了後に資料や議事を厚生労働省のホームページに掲載したいと考えてお りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  簡単ではございますが第1回目の会合の開催に当たり、お願いのごあいさつとさせて いただきます。どうぞよろしくお願いします。 ○島村課長補佐  次に、各委員のご紹介をさせていただきます。国立社会保障・人口問題研究所国際関 係部の阿部彩第2室長です。 ○阿部委員  よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  日本女子大学の岩田正美人間社会学部長です。 ○岩田委員  よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  一橋大学大学院経済学研究科の大橋勇雄教授です。 ○大橋委員  大橋です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  大阪樟蔭女子大学の森田洋司学長です。 ○森田委員  森田です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  NPO新宿ホームレス支援機構の安江鈴子理事です。 ○安江委員  安江です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  東京都福祉保健局生活福祉部の山口信久副参事です。 ○山口委員  山口です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  NPO釜ケ崎支援機構の山田實理事長です。 ○山田委員  山田です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  大阪市健康福祉局生活福祉部の古屋和夫ホームレス自立支援課長です。 ○古屋委員  古屋です。どうぞよろしくお願いします。 ○島村課長補佐  以上が本日ご出席いただいている委員の皆さまです。なお、東洋大学の駒村先生は業 務の都合でご欠席との連絡をいただいております。  次に、行政側の担当者のご紹介をさせていただきます。国土交通省総合政策局政策課 の深澤政策企画官です。 ○深澤政策企画官  深澤です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  同じく国土交通省住宅局住宅政策課の長田課長補佐です。 ○長田課長補佐  長田です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  厚生労働省社会・援護局地域福祉課の篠原地域福祉課長です。 ○篠原課長  篠原です。よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  厚生労働省職業安定局雇用開発課就労支援室の北條就労支援室長です。 ○北條室長  よろしくお願いします。 ○島村課長補佐  以上です。次に、配布資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしています のは、まず「議事次第」、それから「ホームレス自立支援法及び基本方針の見直しスケジ ュール」、「前回調査(平成15年3月)概要等」、「現行ホームレス施策の概要等」、「次回調 査の内容等について」、これらがナンバーを振った資料です。  それから参考資料として「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法全文及び同 概要」、「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針全文及び同ポイント」、「ホームレ スの実態に関する全国調査報告書(平成15年3月)」、それから「ホームレスの実態に関 する全国調査検討会開催要綱」、以上です。不足がありましたらお知らせいただきたいと 思います。  本検討会の座長は岩田先生にお願いしております。ここからは岩田先生にお願いしま す。 ○岩田座長  それでは、僭越ですが座長を務めさせていただきます。よろしくお願いします。  本日の議題は大きく分けて二つありまして、一つはこれまでの第1回目の調査および 今までのホームレスの施策の概要についてのおさらいをする。その上で今回の調査をど うやっていくかということをご相談するというのが第2の主題になります。  最初に、これまでのおさらいを、それぞれ担当部局の方から説明していただきたいと 思います。まず事務局からスケジュールと前回調査の内容について説明をお願いします。 ○篠原課長  それでは資料に沿ってご説明します。まず資料1をご覧いただきたいと思います。「ホ ームレス自立支援法及び基本方針の見直しスケジュール」というタイトルの付いたもの です。1ページ目の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の中に実態に関 する全国調査の位置付けと、この法律の見直しに関する規定の部分を抜粋させていただ いています。前回の平成15年1月の調査、それからこれから実施しようとしている平 成19年1月の調査、いずれもこの特別措置法第14条に基づく調査ということになりま す。  この法律は平成14年の法律で、全体は10年間の時限立法ですけれども、この法律の 施行後5年をめどとしてその施行の状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づ いて必要な措置が講ぜられるものとするという規定があります。つまり10年の真ん中 をめどに見直しを行うという主旨が書いてあります。  それから、この法律に基づき、平成15年に厚生労働省・国土交通省の共同告示とい う形で「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」というものを定めています。各 施策については後ほどご説明しますけれども、全体としてこの基本方針は第3の5-(1) に、ただし書きがありますが原則として「本基本方針の運営期間は5年間とする」とい う記載があります。法律の見直しあるいは基本方針の見直しがそれぞれ5年後というこ とですから、平成19年あるいは平成20年ということになります。  1枚めくっていただいて、その辺の関係を流れで示してみた図です。平成19年8月が、 法律の施行から5年の時点になります。それから平成20年の夏が基本方針の運営期間5 年が満了する時期に当たりますが、平成20年の基本方針も平成20年の予算にかかわっ てくる可能性もありますので、いずれにせよ平成19年の夏ぐらいには満了に向けての 議論が必要である。基本方針にしても特別措置法にしても見直しの検討が必要だろうと 思っています。  となれば、それに先立って全国の実態調査を再度実施することが必要になってきまし て、前回が1月だったことを考えますと、平成19年1月に全国実態調査を実施したい と考えているところです。  それに向けて、本日は第1回ということで、先ほどの局長のあいさつにもありました けれども、本検討会において、まず調査項目を決めていただいて平成19年1月に実態 調査を行い、その調査結果が出たときにその分析を行っていただくというスケジュール になります。その後各担当において政策評価を実施して基本方針の見直しにつなげてい く、という流れになります。まず資料1の大体のスケジュールをご説明しました。  続きまして、資料2「前回調査(平成15年3月)概要等」というタイトルの資料に移り ます。前回調査は平成15年1月に実施しました。これは、まず概数調査ということで、 ホームレスがどこに何人いるかということを数として押さえるということ。それから、 その内の2,000名程度にインタビューを実施して、そういった方々がどういう属性(年 齢・性別・出身地など)をお持ちであるかを明らかにするという二段構成の実態調査をし たものです。  まず数ですけれども、1ページ目の「全国のホームレス数」というところです。これ をご覧いただくとおわかりになると思いますけれども、その時点で全国のホームレス数 が2万5,296名と確認されています。北海道から沖縄県まですべての都道府県で存在が 確認されているということです。また、その横に政令指定都市および東京23区の数を 再掲していますけれども、全体の72%に当たる1万8,165名が、東京都23区および政 令指定都市に集中している。いうなれば、ホームレス問題は一種の大都市問題であると いうことがわかってきたところです。  2ページをあけていただきたいと思います。「ホームレス実態調査(平成15年)の結果 の概要」というタイトルで、ホームレスの分布に関して、今申し上げたことを円グラフ にしたものです。年齢別の構成比ですけれども、平均年齢が55.9歳で、50歳以上の割 合が80.8%です。ホームレスは中高年の方が多いという結果が出ています。  3ページ目は「ホームレス直前職の従業上の地位」です。常勤職員、従業員(正社員) が39.8%で、日雇が36.1%です。日雇労働者出身の方ばかりがホームレスではないとい うことがわかります。  その横は「路上生活になった理由」です。これは複数回答ですので全部足すと100を 越えますが、仕事減あるいは倒産・失業が多くなっている。よく言われる借金、飲酒・ ギャンブルは数字的にはそれほど目立っていないということで、この結果からは、ホー ムレスになった理由は経済的理由によるものが多いということが言えると思います。  4ページ目は「路上生活の期間」です。約3割、つまりホームレスの3分の1は、期 間が1年未満である。他方、4割を超える方が3年以上といった結果が出ています。  ホームレスの「収入月額」ですけれども、収入が3万円未満というところに線を引き ますと60.2%です。ホームレスの月収だけでは食費の捻出も困難な程度ではないかとい う結果が出ています。  それから、5ページ目の「今後の生活の希望」というところで、きちんと就職して働 きたいという答えをされた方が約半数。一方で、今のままの路上生活でいいとする方も 13.1%いるという結果が出ています。  以上、前回平成15年1月の実態調査概要の主なところを取り上げてご説明させてい ただきました。ここから先は、国の調査ではないのですけれども、自治体において調査 されているところが幾つかありますので、その後の数の動向などを並べたものです。  6ページ目は、各自治体で調査された最新の数字と、平成15年1月の全国調査とを比 較したものです。東京都と名古屋市、福岡市については、注意書きにもあるように国や 県の管理の所が入っていたりいなかったりしますので、カッコ内の数字は国の全国調査 の数字そのままで、カッコの外に比較可能な数字を引き算の対象として並べてあります。 そういったことを含めてご覧いただくと、東京都で1,624人、名古屋市で1,006人減少 しています。これは必ずしも同じ時期ではありませんけれども、大きく減少している所 があります。また他方、川崎市・福岡市・横浜市など、増加が見られる所もあります。 調査結果を単純に合計してみますと1万1,080人が8,612人となり、差し引き2,468人 が減少しているということになります。もちろん時期あるいは範囲が異なっていますの で、単純に比較できるわけではありませんが、こういった傾向が出ているということで す。  7ページ目は東京都からいただいたデータで、東京都23区内だけのものです。23区 内のホームレスの数がどう変わってきたかということですが、平成11年度辺りをピー クに少しずつ減ってきて、平成16年度、平成17年度で結構な減少が見られるというデ ータです。  それから8ページ目は大阪市です。平成15年1月の全国実態調査で一番数が多かっ たのが大阪市です。大阪市は全数調査は行っていないようですけれども、公園の小屋掛 けと申しますか、テントを数えるという調査があるようです。それによりますと、近年 ホームレスの小屋掛けあるいはテントの数は減少の傾向にあるという結果が出ています。  以上が資料2に基づいた、前回調査の概要等の説明でした。 ○岩田座長  続きまして、社会・援護局からホームレス施策の今の状況をお願いします。 ○篠原課長  では引き続きまして資料3に移らせていただきます。資料3「現行ホームレス施策の 概要等」ですが、まず厚生労働省社会・援護局が所管しているところから説明させてい ただきます。1ページ目に「現行ホームレス施策の概要」という流れ図的な絵がありま す。これは一応の概念図であり、すべてが必ずこう流れるというものではありません。 行ったり来たりもあるでしょうし、各段階でいきなり就労したり生活保護に行ったりと、 バリエーションはあるかと思いますが、概念的に整理するとこういうことになります。  公園なり河川敷におられる方について、「総合相談推進事業」という名前ですが、巡回 相談という形でいろいろ相談して例えば福祉事務所につなぐなり、そういったことをす る事業があります。もちろんホームレスの側から、ご本人あるいは支援者の方とともに 福祉事務所へ直接アクセスするという場合もあります。  公園等に巡回し、とりあえず屋根の下に移っていただくというのが「緊急一時宿泊事 業(シェルター)」ということで、これはまさに公園等の屋外から屋根の下へ移っていた だくという事業です。  その横に「保健・医療の確保」という事業がありますが、これは保健所で、あるいは 保健所から巡回する形で保健サービスを提供する事業です。「ホームレス衛生改善事業」 というのは、例えばシャワーを浴びていただくとか、そういった事業です。  さらに、屋根の下に移っていただいた方に、就労で自立を目指していただく「ホーム レス自立支援事業」において 、「ホームレス自立支援センター」へ行っていただく。こ の事業は、まず宿所(泊まる所・住む所)、そして食事を提供します。その上で職業相談 等に基づいて、あるいはハローワークに通っていただいて仕事を見つけて就業していた だく。就業がうまくいったら、次にアパートも見つけていただいて、そこで就労・自立 を目指していただく、という事業です。  その就業機会の確保のためには、職業安定所等において職業相談、それからトライア ルと言っていますけれども「ホームレス等試行雇用事業」、「日雇労働者等技能講習事業」、 「ホームレス就業支援事業」といったものがあります。  また居住の場所の確保ということについては、「公営住宅の単身入居等」、「低廉な家賃 の住宅の情報提供」、「民間の保証会社等に関する情報提供」といったものが行われてい ます。 これがホームレス対策の太い矢印の流れです。一方で必要な人には生活保護等 の福祉の対応も行われています。  2ページ目に、「ホームレス対策事業を実施している自治体とそのホームレス数」を一 覧表にしてみました。総合相談を実施しているところはたくさんあります。その中で、 実際に自立支援センターを設置している自治体についてですが、この表の中の数字はそ の自立支援センターの定員を書いたもので、複数の施設があるところはその合計という ことです。自立支援センターは、定員上は東京都に多く設置されています。  それから、シェルターについては大阪市にたくさんあります。シェルターを実施して いるのは四つの自治体です。  能力活用あるいは衛生改善は、現実には自立支援センター・シェルター内でそれぞれ 実施されているということで、実施自治体はそれぞれ二つです。  1枚めくっていただきまして、個別の事業について少しご説明させていただきます。3 ページ目に、「ホームレス総合相談推進事業」というものがあります。先ほど申し上げま したように、ホームレス、あるいはホームレスになる恐れのある者が生活する場所を巡 回し、面接を行って日常生活等に関する相談を行うというものです。相談の結果によっ ていろいろな施策にかかるものを活用できるよう助言を行う、また関係機関とも連携す る、そういう事業です。相談内容は、資料にありますように就労、あるいは住居・福祉・ 健康、その他たくさんありますけれども、自立支援センターがある場合には、自立支援 センターに入所していただいて、ハローワーク等に通って就労・自立を目指していただ くというのが基本になるかと思います。まずは巡回して、何とか自立の方向に歩みだし ていただくという事業です。一番下に書いてありますが、平成17年度末現在の実施自 治体は24カ所です。これは国庫補助が付いている事業で、これ以外に自治体の単独実 施のものがあります。  4ページ目、今度は自立支援センターの「ホームレス自立支援事業」についてご説明 させていただきます。これは先ほど申し上げましたように、まず泊まる所と食事を提供 して、体を整えた上で最終的には就労・自立を目指していただくための施設です。セン ターの中にはハローワークから派遣された相談員がおりまして、就労支援などを行う。 また健康診断を実施したり、特に路上生活の長い人が地域社会で暮らしていくためのい ろいろな相談を行うということで、親族との連絡をとったり、借金でも特に過重債務の 場合はその整理をどうしたらよいか、などさまざまな相談が行われています。実施自治 体の数は、全国で8自治体、22施設、定員は合計2,060人です。  それから次、5ページをあけていただいて、「ホームレス緊急一次宿泊事業(シェルタ ー事業)」ですが、シェルターは緊急一時的な宿泊場所ということで、まずは屋根の下に 入っていただくという事業です。全国で実施しているのは4自治体、10施設で、定員 2,220名です。  その他に、「1.ホームレス能力活用推進事業」と「2.ホームレス衛生改善事業」 の二つの事業があります。1は都市雑業的な仕事の情報を収集、説明会等ですが、全国 で実施しているのは2自治体、事実上は自立支援センターの中で行われています。2の 衛生改善事業の方も全国で3自治体3カ所ありますが、これも自立支援センターまたは シェルターの中で実施されていて、シャワーを浴びていただく等が基本的な事業です。 そういう状況です。   続いて6ページ目からは、これらの施策の実績についてご説明させていただきます。 まずは総合相談推進事業につきまして、これは平成15年度から平成17年度にかけての ものですが、1万4,498件を、関係機関につなげたということです。それから7ページ 目はそのバックデータで、関係機関とはどういうところか、という表です。自立支援セ ンター、シェルター、各医療機関、福祉事務所、職業安定所等です。  次に(2)、8ページになりますけれども、自立支援センターに入った方がどうなってい るかというと、平成15年度から平成17年度にかけて1万6,415人が退所されているの ですが、就労・自立ということでの退所が約4分の1、福祉等の措置による退所が約4 割、約3分の1の方は期限到来・無断退所等で退所しています。  次のページでは自治体別に、就労・自立、あるいは福祉等による退所、期限到来・無 断退所を分けています。自立支援センターにシェルター的な役割も含めている自治体で は、就労・自立の方の割合が低めになる。あるいはシェルターは別途あって、自立支援 センターに入ってくる方についてある程度スクリーニングが行われている場合には、就 労・自立の率が高くなるといった傾向が見られます。10ページはそのバックデータです。  11ページ目は、シェルターの場合どうなるのかということです。シェルターののべ利 用人数は93万5,346人で、これも平成15年度から平成17年度の数字ですが、これは 1泊すると一人と数えてしまうためです。そういう利用形態が大半ですが、そうでない 利用者を見てみると、福祉等の措置で退所した方が4割。自立支援センターに移ってい かれる方が23.4%と、大体4分の1ということになっております。12ページはそのバ ックデータです。  厚生労働省社会・援護局の関係の資料は以上です。 ○北條室長  職業安定局です。13ページ目をお願いします。「ホームレスの就業支援対策」ですが、 就業支援対策は、主に自立支援センターやシェルターの入所者を対象として行われてお りまして、ホームレスの自立を図るための最終段階に位置付けられています。その内容 は大きく分けて四つの施策からなります。その第1番目が「ハローワークによる求人開 拓・職業相談」ですが、これはホームレスの多い地域のハローワークに非常勤職員の就 業開拓推進員を配置して、ホームレスの方のための求人を開拓する。あるいはハローワ ークから自立支援センターやシェルターに職業相談員を派遣して、対象者のそれぞれの 実情に応じた職業相談・職業紹介を行うことで就業促進を図る、という施策です。昨年 度の実績としましては、枠の下のところに書いておりますが、2,646件の常用雇用への 就職を実現しておりまして、これはセンターの入所者で本事業の対象となった方のほぼ 3分の2程度に当たります。  それから二つ目は「ホームレス等試行雇用事業」ですが、通称「トライアル雇用事業」 と呼んでおります。これはハローワークから各事業所にお願いいたしまして、ホームレ スを臨時的に、試行的に雇っていただく。これによって、本人に規則的な就労習慣を身 に付けさせるとともに、できれば施行期間終了後に正社員として雇い入れていただくよ うお願いするという取り組みです。昨年度の実績といたしましては、2月までの中間集 計になりますけれども、対象者は111人になります。  三つ目は、「日雇労働者等技能講習事業」です。名称は日雇労働者という言葉を使って おりますが、この事業がそもそも日雇労働者を対象として始まったためで、ホームレス も対象となっております。ホームレスにつきまして昨年度の実績を見てみますと、修了 者は2,054名です。就職実現するためには、やはり技能・資格を持つことが相当有利に なりますので、フォークリフトですとかクレーンなど建設系の科目を中心とした各種講 習を、NPOなどの各種支援団体に委託して実施するという形をとっております。  次のページをお願いいたします。四つ目に「ホームレス就業支援事業」を掲げていま す。これはホームレスが多数存在する4地域(東京・大阪・愛知・神奈川)におきまして、特 に、相談・講習・セミナー等の各種施策から構成される総合的な事業を展開しようとい うことで、地域限定型で行っています。地方公共団体と民間団体等から構成される協議 会に対して、国が委託して実施しています。  その中身として、まず事業実施地域の企業等に対しまして、「ホームレス雇用に関する アンケート調査」を行います。そして「(2)就業機会確保」として臨時的・軽易な仕事先 の開拓を行う。さらに「就業支援」として、対象者に対してきめ細かな個別相談等を行 う。これは先ほど冒頭に申し上げましたハローワークによる求人開拓職業相談とあいま って、相乗的な効果を期待するという形になっております。これが大きな流れです。そ の次の(4)に、「職場体験講習」を掲げています。ホームレスはしばらく労働習慣から遠 ざかっている方が多いため、どうしても働くことに対する不安があります。それを解消 するために、1カ月以内の短期間にわたりまして仕事を体験して慣れていただこう、職 場を体験していただこうという講習です。先ほどの試行雇用、トライアル雇用もありま すけれども、それほどにはすぐに就職することを意識せずに、気軽に職場を体験してい ただこうということで実施しています。昨年度は185名の実績がありました。さらに専 門の講師によって就職活動の心構え・面接のマナーおよび履歴書の作成方法等について 指導・助言を行う「就職支援セミナー」も実施しております。この四つの柱で就業支援 対策を推進しているところです。   ○長田課長補佐  続きまして国土交通省でございます。国土交通省におけるホームレス対策は住宅関連 について、ご報告させていただきます。住宅関連につきましては、ホームレス自立支援 法の中でも自立の意志のあるホームレスに対しての住宅への入居支援等による安定した 居住の確保ということがうたわれており、これを受けた基本方針の中でも安定した居住 の確保についてという取り組み方針が示されています。これらに従い国土交通省で進め ている取り組みをご報告いたします。  先ほど冒頭ご説明がありました「現行ホームレス施策の概要」の概念図の一番下に記 載されておりましたように、一つ目に「公営住宅への入居」があります。自立支援セン ター等で支援を受けられて、就労あるいは生活保護の受給によって自立して生活するこ とが可能になった方について、地域の住宅事情等の状況を踏まえつつ、都道府県や市町 村といった公営住宅の事業主体の判断により公営住宅における単身入居、優先入居とい う制度の活用を図るよう要請しました。本来、公営住宅は、夫婦・家族など同居親族が いらっしゃる方への施策ですが、この場合においては単身入居や優先入居という、制度 の円滑で柔軟な活用を図っているということです。実績につきましては下に東京都の 例・名古屋市の例を記載しています。自立支援センターの入居者のうち、一定の条件を 満たす方を対象に、年間10〜20戸、あるいは6戸の枠を設けて、優先入居を実施して いる実績があります。  それから公営住宅の関連でもう一つ、自立の意志を持っておられるホームレスの自立 支援という観点から、「ホームレス自立支援事業」によって就業した方の生活支援を行う 社会福祉法人等の団体が、公営住宅を借り上げて使用していただくことも、制度上可能 にしております。これは最近の取り組みで、平成18年3月末に公布4月から施行され ています。  次のページは、「低廉な民間賃貸住宅の空家情報の提供」です。低廉な家賃の民間賃貸 住宅の空家情報や入居するときに必要となる保証人がいらっしゃらない方でも円滑に入 居できるようにするための民間の保証会社の情報の提供について、自立支援センターや その他福祉部局との連携を図っていくよう、民間賃貸住宅にかかわる民間の事業者団体 に要請を行っております。実際に広報のパンフレットを作っていただいている例もあり ます。  3番目に「民間賃貸住宅の貸主等に対する周知活動」です。これも民間の賃貸住宅に かかわる事業者団体に対しまして、会員の事業者を対象に、ホームレスの方の住宅への 入居支援等に関する法の考え方などについての研修を行っていただきたい旨要請してお ります。  いずれにしましても、住宅については福祉部局との連携が不可欠ですので、今後とも 連携を深めながら進めていきたいと思います。以上です。 ○岩田座長  ありがとうございます。これまでのところで質問等ございましたらどうぞ。 ○大橋委員  年齢が大変高いということですが、平均年齢は55.9歳ということで、ホームレスの方 は健康状態が悪い方が結構多い。早くお亡くなりになるという気もするのです。その辺 の60歳以降の年齢分布について何かわかることはありますでしょうか。  今資料を出していただくのが大変であればいつでもいいのですが、普通の日本人のよ うに平均寿命が80歳くらいまでいくかということが気になるのです。 ○篠原課長  今日の参考資料に、前回の調査報告書そのものをお配りしているのですが、年齢分布 につきましては12ページをあけていただくと、80歳以上の方もおられるにはおられる のですが、50歳台、60歳台が多いという結果が出ています。 ○大橋委員  60歳までという感じですね。 ○岩田座長  そうですね。法律上定められているわけではないけれども、65歳というのが公式にと いうか、政策的には区分けされるということもある。例えば生活保護等の受給がしやす いとか、それから病気になった場合は、入院や治療などとかかわって生活保護の対象に なりやすいとかいうようなことはあると思います。追跡調査のような形でやった例は多 分ないと思うので、例えば寿命の問題や疾病率などはわかりにくいですが、これまでの 現状では結核の罹患率とか疾病率は高いです。 ○山田委員  全体的な数は減っているということで、全体的な景気の問題もあるかもしれませんけ れども、大阪や東京は他の地方都市と比べて相対的に減っているとは思います。ただ、 その減り方が実際は、実態としてはどうなのか。自立支援事業を各地方都市も含めて一 生懸命頑張っているのですが、就職した人もいる、けれどもなかなか常用という形で結 びつかないというのが実情ではないでしょうか。大半の方は生活保護制度を活用して、 施設に入るとか入院したりして、それから居宅保護へと移行するような状態になってい るのではないかと思うのです。だからそこら辺の実際に減った内容がどうなのか、と思 います。大阪で1998年にかなり綿密な調査をしたときは8,860人でしたよね。次の国 の調査で6,603人でしたか。去年の国勢調査で3,640人くらいの数字が一応出ている。 ただ国勢調査ですから巡回相談員はきちんと紙を持っていって書いてねとやっているか ら限界はあります。あと、ターミナルとかいろいろな所でいわば徘徊している人も入れ て、それでも5,000人までではないかと大体見ている。その間の施策は公園とかテント・ 小屋掛けを中心になされてきたということで、目に見えては減っている、実態としても 確かに減っているけれども、どうなのだろうか、ということです。  一方、あいりん地区を中心とするシェルターの利用者ですが、西成署も毎日統計を出 していますがこれは依然としてほとんど減っていないという状況があります。もう一方 で、1998年から2005年までの減り方の要因についてですが、行旅関係で、つまり路上 で野垂れ死にという形で亡くなった方はかなりいらっしゃいますし、大阪市立更生相談 所とその関連組織である緊急入院保護業務センターの資料を見てみますと、やはり平均 して結構な人数が死んでしまっています。1998年から2005年3月ごろまでかと思いま すが、行旅死亡人という形で980人亡くなっている。簡易宿泊所で死んだ人も若干入っ ていると思います。また、行旅から救急車で運ばれて病院へ、あるいは病院を経て施設 に移行するのですが、病院で3日後に亡くなる方や1カ月で亡くなる方、また病院から 施設に行って1〜2年のスパンで亡くなる方、その数を全部拾い出してみますと、1998 年から2005年4月現在までの7年間で4,013人亡くなっておられる。  もう一方で、自立支援センター事業ですが、確か大阪では2002年から2005年までで 3,000人くらいを自立支援センターで包摂し、就労・自立に達したのが1,100人くらい です。それで、当時の8,680人からいろいろ逆算して引いていきますと、かなりの数が そういった形で消えていっている実情がある。また、大阪市立更生相談所、緊急入院保 護業務センターの資料と、西成区の生活保護者の内訳から、元ホームレスを拾い出して 類推していきますと、他の民間のNPO団体とか、いかがわしい団体も含めて公園から ストレートに居宅保護にあげた数も含めて、最低でも9,000人は居宅保護にあげていっ ている。これはもちろん大阪市立更生相談所経由の数も含めてです。そうしますとこの 7年間で1万5,000人は減っている。もし新しく入ってくる人がいなかったとしたら、 もうとっくにいなくなっているのです。逆算すると、どんなに低く見積もっても、毎年 最低1,600人から2,000人は新たに流入している現状がある。大阪におけるホームレス の状況を見ると、この間いろいろ施策を打ち出して頑張っているのですが、自立支援事 業の効果のうち、就労支援の枠内には1,100人くらいしかいない。大半は結局生活保護 という結果が現時点では出ているのです。その原因についてもいろいろ問題はあるので すが、全体として、東京都にしろ他の地域にしろ、実際はどうやって減っているのか。 単に就労支援とか福祉で自立しているのかと思ったら、行旅死亡人、あるいは救急車で 運ばれたけれども病院施設で亡くなっている方が依然としてかなりのウエートを占めて いるのです。結局今の仕組みの中では、病気あるいは一定の高齢にならないと生活が包 摂されない。また包摂されても体を壊しているので自立に向かわない。生活保護施設に 入っても退寮せざるをえない等の現状が見られます。ですから、そういった実情も含め てきちんと調査しないと、有効な施策が次に打ち出せないのではないかと思っています。 そこら辺で、どのように調査するか考えていく必要があると思います。 ○岩田座長  平均年齢55歳というのはこの10年間変わっていない。今おっしゃったように一方で は割合早く亡くなってしまう方がいる。絶えず新規参入があることを前提としないと、 その辺が理解できない。1990年代の半ばに増えたホームレスがどうなったかということ と、新しくどういう人が来ているのか、生活保護の問題や疾病や死亡の問題、また景気 回復による施策を経ない減少も含めて、大きな枠の中で施策効果を見ないといけない。 ○山田委員  新たな流入層も自立支援センターの職員に聞きますと、従来の古典的な寄せ場型、日 雇型は、自然淘汰でだんだん年齢とともに減ってきて、新しい階層が若い人も含めて来 ている。自立支援センター入所者の平均年齢も下がっているのではないかという話です。 ○岩田座長  そういえば政策の面では、今日のご報告にはなかったのですが、衛生局の方でDOTS とかやっておられる件、あれは入っていなかったですか。 ○安江委員  DOTSの施行数は調査しておられると思います。 ○篠原課長  結核対策、感染症対策の一環としてホームレスについてもやっています。 ○安江委員  先ほどのご説明で、資料3の13ページに、「1.ハローワークによる求人開拓・職業 相談」では平成17年度実績として確保された求人数が1,466件とありますが、確保さ れたのは就業開拓推進員の方がホームレスのために開拓してきた求人数ということでし ょうか。 ○北條室長  その通りです。 ○安江委員  平成17年度とありますが、これは毎年結構増加傾向にあるのでしょうか。開拓推進 員が配置されて以降、同じような求人開拓数なのでしょうか。 ○北條室長  少しずつ景気が伸びてきていますので、微増傾向にあります。ちなみに求人開拓数が 1,466件で、常用就職が2,646件ですから、ハローワークがホームレス対策以外で確保 した求人に、ホームレスの方が行った数も含まれているという意味です。 ○安江委員  関連ですが、下の方の常用就職件数というのは、ハローワークを通じて、ホームレス、 路上生活者、自立支援センター入所者とわかっている人が常用就職した件数ということ でしょうか。 ○北條室長  そういうことになります。 ○岩田座長  その他、いかがでしょうか。 ○山口委員  資料3ですが、15ページの住宅関連で公営住宅入居に関しまして、東京都の取り組み 状況というのが記載されています。東京都では都市整備局が住宅部門を所管しておりま して、そこから毎年、自立支援センター退所者向けの特別割り当てを、年間で20戸い ただいていますが、それが最近は年間20戸の確保自体が非常に難しいという状況があ ります。年2回に分けられて、これまでは半期で10戸だったのですが、今年度はそれ が3戸減の7戸でした。多分今後も減少する状況にあります。東京都といたしましては、 上限が決められているということもあって、現状では新規にストックを増やしていくこ とが難しいのですが、そもそも障害者やシルバーが優先されて、どうしてもホームレス の方への一般理解がなかなか進まないという状況もあり、局間同士で交渉して特別割り 当てを増やして欲しいという要望を続けているのですが、現状としては、絶対数にかん がみて非常に少ない割り当てであるという状況です。  先般も、地域生活移行支援事業の説明会を行ったところ、利用者の方から具体的に、 公営住宅を一定程度出していただけないか、と再三にわたって質問をいただきました。 担当部局の方には、私どもといたしましては要請を節目で行っているのですが、なかな か厳しいというか、現状打開する切り札がないという状況で、地方自治体レベルでは公 営住宅の確保が進まないという状況だということを、情報として提供します。 ○岩田座長  公営住宅自体への入居が難しい時代になっているということでしょうが、住宅の確保 が難しいのですね。どちらが先かというと難しいですが、就労と住宅、健康それが連動 していかないと自立は難しい状況です。東京都では地域生活移行支援事業はどうですか。 ○山口委員  住宅施策に関しては、低家賃住宅ということで民間の業界団体・事業主団体と連携し まして23区内に民間のアパート物件、生活保護費の住宅扶助費相当額で1,190戸を、 平成16、17年度の2年間にわたって確保できたという実績があります。今後も平成18 年度以降に課題とする住居の規模は、400戸を新規に確保する方針で臨んでいますので、 23区内に限ってもそういう物件は一定量確保できる見込みであるという状況です。です から、本来は公営住宅が望ましいのですが、民間の物件を使ってホームレスの方に対し て有効な住居を一定程度確保するという状況です。 ○安江委員  今の岩田先生の、就労が先か家が先かという話や、東京都で行われた地域生活移行支 援事業、また先ほど山田さんのお話にあった路上生活者の数がどうだとかをこの検討会 で議論していくと思います。この前回の全国調査ではきちんと働いて路上生活を脱却し たいという人が半数以上を占めるのですが、路上生活者本人が仕事をしたいという気持 ちと、稼働能力を活用する場があるかどうかは、全く別の問題であるということを、こ の間いろいろ見てきております。聞き取り調査でどうしたいかと問われれば「仕事をし たい」と言うのですが、こちらにも発表されている自立支援センターの累積実績の通り、 結局民間労働市場で就職できない。さらに常用就職が推奨されるわけですが、常用就職 は、年齢とかこれまでの職歴とかで、本当にできないのです。なので仕事が先か住居が 先か、この検討会で路上生活を脱却するには何が必要か、また本人の思いだけではなく てどういうふうに聞けばアセスメントに近いような聞き方ができるか、そういうことを 考えたいと思います。 ○岩田座長  その他にありますか。 ○阿部委員   前回の調査について、担当局の方、もしくは先生方に聞きたいのですが、前回の調査 では全国で2万5,000人と出ているのですが、内訳を見てみますと東京や大阪、愛知が とても多く、あとは50人以下、100人以下の県がずらりと並んでいます。つまり、ゼ ロと答える自治体がすごく多かったのではないのかなという印象を持ったので確認した いのです。というのは、ホームレスを数えるということは非常に難しいことですので、 ノウハウがない自治体に単に「数えなさい」と指示を出しても、あまり実のある数字が 返ってこないのではないかという懸念があり、今回の調査のときにも同じようなことを 繰り返してはいけないと思っていますので、その点についてお聞きしたいと思います。 また、2000人のアンケート調査についてですが、ここでは100人以上のホームレスが いる自治体のみを対象にしているということですが、100人以下の、中核都市にいるホ ームレスの人たちの、生活の仕方や属性は、もしかしたら大都市に集まってくる方々と は違いがあるのではないか等、そこら辺について先生方がもしご存知であればお聞きし たいです。 ○岩田座長  これからの調査をどうやっていくかということを、最初の大まかな仕組みについて事 務局からご説明いただいて、阿部委員からの質問もそこで議論してみたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○篠原課長  それでは資料4に、「次回調査の内容等について」という資料を用意させていただい ています。これはまだ骨子で非常に簡単なものです。  1ページ目は「ホームレスの実態に関する全国調査について」ということで、先ほど 申し上げましたように時期は来年平成19年1月を考えています。目的は先ほどおっし ゃっておりますように、法律あるいは基本方針の見直しを検討するに当たって、施策強 化等の実施に必要なデータ収集を目的とします。方法は前回と同様で、まずは概数調査 ということで数を数えていく。今阿部委員からお話がありました、ゼロと答えた自治体 ですが、逆に存在している自治体は581あります。実は先ほどの資料の一番下に注意書 きで小さく書いてありますが、都道府県としてはすべての都道府県で存在が確認されて おりまして、それ以外の、存在が確認されている自治体が581で、当時は合併前で3,200 ほどありましたので、差し引き2,600くらいの自治体がゼロという見当です。これが本 当にゼロなのかは、まさにお話があったかと思います。やり方といたしまして前回の場 合はまず都道府県にお願いして、都道府県が各市町村にお願いをする形で数を数えてい ただく。数え方はこと細かに指示しています。ある一日、一斉に大量投入していただい て数を数えるというものです。  もう一つが生活実態調査で、これは調査票に基づく個別の面接調査です。ホームレス の実態に関する調査としてはこの二段構えです。その内容ですが、(2)の生活実態調査に は大きく分けて二つあります。前回平成15年1月の調査では、ホームレスというのは どんな方が、どこにどのくらいいるのかというのが基本的な調査目的でした。特別措置 法ができてすぐの、初めての本格的な全国実態調査でしたので基本的な属性が中心にな りましたけれども、今回は基本的属性に加えましてホームレス施策がどの程度活用され ているのか、どの程度効果があるのか、といったことの検証につながるような調査項目 も必要なのではないかと考えています。  基本的属性については基本方針の中に、ホームレスの数、野宿生活の期間、仕事や収 入の状況、健康状態、福祉制度の利用状況、これらについては再度実態調査を行って基 本方針の見直しにつなげるという趣旨がありますので、基本的属性のうちこの部分につ いては実施したいと思っています。それ以外にどんな項目が必要かということですが、 先ほど年齢が若くなっているのではないかという話がありましたが、年齢も比較が必要 ですし、路上生活に至った理由については、経済的理由というのが前回出ていますが、 比較的借金という理由が少なかったのは聞き方に問題があったのか等、その辺も含めて 検討が必要だろうと思います。それから居住地域と到来理由というのは、地域間の流入 というのがあるのかないのか、またそれはホームレスとして流入してくるのか、それと もそれ以前に仕事を求めてということなのか、といった流入の議論もありますので、そ ういったことをある程度基本的属性の中から見ていく必要があるのではないかというこ とです。それから3(2)は「施策の活用、効果の把握」ということで、「法および基本方 針に基づいて実施してきたホームレス施策の利用状況等」を把握する。具体的にどんな 施策があるかは、先ほど説明した通りです。以上が総論です。  生活実態調査のインタビュー調査項目の骨子の案を、2ページから3ページに掲げさ せていただいています。基本的属性は、前回調査との比較が必要な項目と、新たに調査 する必要がある項目に分けられます。性別・年齢・出身地・家族の状況といったことや、 今の路上生活の形態・期間、これは必要な項目だと思います。特に、期間について、先 ほどどの程度の人がホームレスから脱却して、どの程度の人が流入してくるのかという 話がありましたが、前回から4年間、間があいていますので4年間以上ホームレスを継 続している人はこの間ずっとホームレスだと考えられます。逆にそれよりも短い人はこ の間に入ってきた人だという一つのヒントにはなりますので、4年で線を切って期間を 見る必要がある、というのが備考に書いてある趣旨です。それから仕事と収入の状況、 前の職業と就業時の職位、この辺に変化があるのか。また、路上生活に至った理由は、 先ほど申し上げた通り、聞き方を工夫しなければいけないのかもしれません。それから 路上生活前の居住形態、就労状況、これは移動にもかかわるのですが仕事を求めて流入 してきたのか、それともそうでないのか。健康状態については、先ほどの結核をはじめ とする健康状態の把握も必要です。それから新たに調査する必要がある項目では、先ほ ど借金についても申し上げましたが、それ以外にも年齢が高い人の場合は収入として年 金があるはずで、ただ権利があるのにもらっていないのかという問題はありますが、こ ういった項目も必要なのではないかと思います。それから移動の把握、これは特に周辺 から大都市へ流入してくるのだと言う自治体もありますので、その辺りも調査する必要 があるのではないかということです。  1枚めくっていただきまして、施策の活用、効果の把握が必要であるということです。 ここはホームレスの方に対するヒアリング・インタビューです。いろいろな施策を過去 使ったことがあるのか。使ったことがあったとして、インタビュー相手は現にホームレ スの状態の方ですから、例えば自立支援センターに入所したことがあったとしたら、今 なぜホームレスなのかを聞く必要がある。このように、先ほどご説明申し上げた各種事 業の利用状況の把握を掲げています。これは全施策について聞く必要があるのか、自立 支援センターと一体になっているところもありますが、いずれにしても施策の利用状況 の把握がまず必要ではないかということです。  先ほど安江委員から、希望だけ聞いても、希望と実態が違うということがありました が、一応希望も項目に掲げています。ホームレスへのインタビューとしてはこういうと ころです。あとは一番下の注意書きですが、現時点でホームレスの方の利用状況という ことは、利用がうまくいかなかったサイドの話しか出てこないのですが、逆に元ホーム レスの方はどうしてうまくいったのかというのを本当は把握したいのですが、現在うま くいっている人を捕まえて昔の話を聞いていただいて、数字にするのは難しい。しかし 成功例やその理由の把握はしなければいけないと思います。そういう趣旨で注意書きに 記載しています。 ○岩田座長  ありがとうございました。先ほど阿部委員からご質問があった調査方法についてです が、街頭調査自体の方法をどうするのか。前回の調査のときも非常に大慌てでいろいろ やった記憶があるので、具体的な手法や注意事項について少し確認する必要があると思 います。それからもう一つは、詳しい実態調査をどこでどのくらいやるか、どういうサ ンプルをとるか、その辺についてご意見ありますか。 ○阿部委員  課長がおっしゃった成功例を捕まえるのは非常に難しいけれども必要であるというの は私も同意です。ただ失敗例も同様に困難だと思います。前回と同じような方法で、全 国で2,000サンプルとるとなると、路上生活の期間の内訳が前回と全く同じだと仮定し ても、3年未満の人が半数以上います。つまり半数は前回のときからいたわけではない ので、施策の対象となったかどうか、評価するのは非常に難しい。つまりそこが抜けて しまう。それからとることができた中でも、実際に自立支援センターなどをその全員が 使っているわけではないので、例えば10%が使っていた、10%は脱落した、と数えてい くと、本当に少数になってしまって、失敗例ですら、2,000例とってもせいぜい10例と か20例しかあがってこないのではないかという気がします。例えば調査地を少し限定 してやってみるとか、何らかの形でフォローアップ調査を考えてみるとか、相当工夫を しないと失敗例も成功例も捕まえるのが難しいのではないかと思いました。 ○岩田座長  例えば調査手法にもう一つ、むしろ施策利用者のフォローアップのようなものを加え てみるとか。2のほうは少し混ざるかもしれないが、割合から言うと施策利用者はそん なに多くないでしょう。  ホームレスというのは非常に難しい概念で、例えば理論上は4年前からずっとホーム レスであれば、その人に2回目の調査も可能なのですが、その間例えばシェルターを利 用したり、東京都の移行支援事業を利用したりという可能性はありますよね。そもそも 大阪の調査で初めてはっきりしたのですが、この調査でも、行ったり来たりという層が 3割くらいいる。通常よその国ではそれも含めてホームレスと言うのですが、日本の場 合は路上に限定していますから、ホームレスの範囲が狭い。行ったり来たり層をどうと らえるかということもありますね。 ○森田委員  おっしゃる通りで、先ほどの出入りの問題で、今問題になってきているのは、施策に すっと乗っていかれたが駄目だったという、駐留される方がかなりいらっしゃるという ことです。それをどう捕まえていくということだが、4年ずつ切るとずっとその間ホー ムレスだという方は非常に限定されてくる。そういう方々がかなり多い。むしろ駐留さ れる方が非常に多い。ここもこれからの施策のポイントになってくると思います。もち ろん新規にホームレスに参入してこられる方も合わせてです。 ○安江委員  私どもは素人と言いますかボランティア団体として聞き取りをします。1990年代前半 には建設業の作業員宿舎と路上の往還構造が注目され、建設産業が路上生活者を生み出 しているという構造も明らかにしなければいけないと思いました。最近では地元の東京 で自立支援センターを就労・退所しても、半年後には再路上しているということもあり ますので、往還構造を層として捉えることができると思います。施策との関係で、4年 で区切るとかありますが、「初めて野宿したのはいつですか」とか、寄せ場労働者であれ ば「野宿しがちになって何年ですか」とか、「このたびの野宿はいつからですか」とかい ろいろ聞いています。 ○岩田座長  野宿期間という概念は、実は作ったのですが、本当を言うと難しい。「4歳のときから 野宿しているので今回の野宿とはいつのことですか」と聞かれたりすることもあるので、 その辺りが、もともと大変難しい対象なのです。 ○森田委員  ただおっしゃったフォローアップ調査は組み込んでもらわないといけない。ホームレ スの方のフォローアップ、同時に施設の側から見たフォローアップ、これは限界があり ますが、やはり両面からやってもらいたい。 ○大橋委員  フォローアップ調査は施策から考えると非常に大事ですけれども、基本的にはケース になりますので一般的には語れない。先ほど山田委員から大まかな数値が出ていまして、 死亡した人が7年間で5,000人。生活保護でホームレスが9,000人くらい。就労が1,100 人ということで、こういう大まかな数値はどうやったら推計できるのか。これはアンケ ート調査ではできないはずですよね。 ○山田委員  それは自治体のデータ、例えば大阪市であれば大阪市で拾い出してやるしかない。生 活保護は各区でのケースを全部拾い出したら具体的な数が出ると思いますが、そういう ことをお願いしたら大変なので、大阪市立更生相談所と緊急入院保護業務センターのパ ターンと、西成区でのパターンはリンクしているところもあるので、それから類推しま した。あいりん地区などには、政府の受け入れ施設も民間の施設も6,000人規模であり ます。あいりん地区のある西成区のデータだけ見ますと、人口13万人のうち、1万8,000 世帯が生活保護世帯で、人数にしたら2万人を越えている。そのうち60歳以上が1万 1,000世帯。そのうちの7,700人が元ホームレス、元あいりん経験者というパターンな のです。だから西成区の半分以上は元あいりん、元ホームレスなのです。しかも単身で、 ほとんどがうまく社会生活を営めない構造です。原因としては、やはり長い間路上や日 雇などの不安定な生活を経験してきているから、畳の上にあげたからといって即一般の 社会には復帰できないという構図になっているのです。その辺も含めて生活保護にあが った人も含めてサンプルをとる必要があるのではないかと思います。実際あがったけれ どもどうだったのかということです。 ○大橋委員  施策を構想するときにはもちろんアンケートやフォローアップ調査が必要だと思うの ですけれども、施策の効果というのは、例えば衛生改善でどれだけ病気で亡くなる方が 減ったかとか、就労であれば就労支援でどれだけ就労した人が増えたのかというところ で捉えるわけですから、このデータ採取が厳しいということになると施策評価が難しい と思うのです。しかし一応採れそうですね。 ○山田委員  大阪の救急搬送などは7・8年前で大体1万7,000件前後、それ以前の1998年以前で は、全国一の救急搬送地域でしたから2万件くらい、そのほとんどがあいりん地区なの です。大阪市の救急搬送は1万7,000〜1万8,000件から、今は1万件以下に減ってい ますから、これはシェルターや自立支援事業などの効果だろうと思っています。 ○阿部委員  緊急搬送と死亡人、生活保護のうちの元ホームレス、その人数などは、各自治体の方々 に聞けば出るのですか。 ○山田委員  大阪市の場合は出ますよね。 ○古屋委員  そうですね。大枠の傾向というのは出せると思います。 ○阿部委員  だとすると、自治体に直接聞いて、それでデータを集めるというのはいかがでしょう。 ○山田委員  大阪市の場合はデータをとりやすいのではないかと思います。 ○大橋委員  建設労働とホームレスを行ったり来たりするタイプがいらっしゃる。また少し疲れる と病院へ行ってしまい、病院と行ったり来たりタイプも当然多いですよね。行ったり来 たりするというのは大体どこなのでしょうか。 ○岩田座長  それは福祉施設も含めてということですか。広い意味での社会施設が一つです。 ○山口委員  東京では更生施設です。あとドヤというものがありまして、台東・荒川の両区にまた がっています。 ○大橋委員  そうすると、このアンケートの調査で毎回タイプ分けのようなことが可能ですね。 ○岩田座長  可能です。もう一つは建設だけではなくて、かなり広い職業層から供給されています から、例えば企業が借り上げた寮のような施設、これはサービス業が非常にたくさん持 っていますから、そういうところとか、あとは日本の場合はあまりはっきり出てこない のですが、もしもう少し若い層が増えると友達の家とかが出てくるのです。ですからパ ターンは既にかなりはっきりと出ています。 ○大橋委員  普通の労働経済学で言う失業分析ですと、失業者数というのは流入かけるホームレス の滞在期間です。建設現場とか福祉の期間はホームレスの期間に入らないわけですから、 これはホームレスの数を減らしていることになるわけです。 ○山田委員  ほとんどが期間雇用ですから、行ったり来たりということです。 ○岩田座長  先ほど山田さんがおっしゃったように減らすというときの理由が、行ったり来たりの 往還というある構造の中で減ったり増えたりしているのか、もう少しそこから飛び出た 形で減っているのかという検証がどうしても必要になると思います。 ○大橋委員  では、往還に入っている準ホームレスと、真正ホームレスということですね。 ○岩田座長  そうです。 ○阿部委員  施策の評価ということでは、やはりその中から景気の効果のところも抜いた、本当の 効果というものを見ていかなければならないということですか。 ○岩田座長  そうです。非常に厳密に施策評価をするということになると、評価尺度をどのように 立てるかなど難しいことになるかもしれませんけれど、大まかに見ると総合相談と生活 保護だけで対応している自治体と、シェルター、自立支援センター、生活保護および独 自事業などをやっている自治体は分けて考えられます。一つは総合相談と生活保護とい う資源しか持たない自治体の評価というのがあります。 ○山田委員  現状としては稼動年齢、要するに高齢か、病気か、障害を持っているかというのは、 どこの自治体に行っても基本的なベースは固まっています。ですから結局は野宿生活者 も何とかしようと思っても、実際にはその枠内にひっかからないのです。就職指導をい ろいろするのですが、水が合う合わない以前の問題ですからなかなかうまくいかないと いうのが現状ではないかと思います。そちらの方でもう少し入り口を緩めて、緊急的に は理屈抜きで何らかの仕組みで保護してしまうとか、アパートなど住む所と生活をまず 安定させて、そこから徐々に就労を指導するという形にしないと本当は無理なのでしょ うね。でないと、長期間路上にて滞留すればするほど反社会的な形に追いやってしまう。 結果として病気になったりするといずれにせよ包摂しなくてはいけないわけですから、 そのときには後で全然復帰ができず、そのために4倍ぐらいの医療福祉がかかってしま うということなのです。単純にコストの面から見ても、早期脱出を図って早期自立へと 持っていく方がコスト的にも安くあがるということなのですけれども、そうはなってい ないです。 ○岩田座長  その部分は自治体ごとにやるしかないわけで、こちらで大まかな指標を考えて、実際 に作業してもらうしかないです。それから独自事業をやっていますから、そこを加味し てやっていく。 ○山田委員  そうすると各自治体から自己評価は出させるということですね。 ○岩田座長  そうです。それが必要です。   ○古屋委員  大阪市の6,600人ぐらいのホームレスの数ですけれども、私どもが課として行ってい ろいろ調べた中でもやはり5,000人くらいかと推定しています。従前、民生・児童委員 等にお願いして把握していたが現時点ではなかなか把握できない部分の推定値を入れて も5,000人前後ぐらいかと思います。先ほど、公園等のテントや小屋掛けが減っている というご説明もありましたけれども、確かにその通りで、固定型のホームレスの数は相 当減っているということははっきりしています。ただ、移動型がどの程度減少している かということが十分把握できていませんので、その辺は今回の調査に非常に期待すると ころではあります。一方で、前回もそうだったかと思うのですが、昼間の対象者の把握 と夜間の把握などのそういった手法の違いによって数字も変わってくるのかなという思 いも持っていますし、恥ずかしい話なのですが、前回の概数調査のときに男女の判別が なかなかつかないといった部分がありまして、これは次回の調査のときにはより工夫を しなければいけないのではないかと思っています。  大阪市が今抱えている課題ですが、一つはテント・小屋掛けにつきましては、声かけ が一巡しました。しかし声かけをしてもここがいいということで施設に入ることに応じ てくれない方が非常に固定化してしまっています。処遇困難層と我々の内部では言って いるのですけれども、今回の調査でも、そのような私どもの助言を拒否する方々につい て、より細かく聞き取りをしなくてはいけないと思うのですけれども、そういう方々に は支援団体が相当付いていて、巡回相談も入っていけないような側面が色濃くあります ので、そこも一つ工夫がいるのかと思っています。  それから、先ほどからたびたび話にも出ておりますが、民間での就業開拓というのが 遅々として進まないということが大変な課題です。何とか仕事の場を確保したいのです が、住所が定まっていない、自立支援センターという名称を出すだけでもなかなか仕事 につながらないという現状がありまして、そこが課題であると本当に思っています。  大阪市の場合、自立支援センターが500人弱、シェルターが1,000人ぐらいのキャパ シティーを持っていまして、生活保護施設には、今2,000人ぐらいが旧更生施設に入っ ておられます。西成区を中心とした生活保護・居宅保護が非常に多いところでは、実際 には数字をとっていませんけれども、そこで生活をしながら出たり入ったりしている層 が多い。確かに最近は景気が上向きですので、あいりん地区の仕事も出ていて大阪市立 更生相談所の相談数も若干減っているという状況もあります。ただ、ホームレスが減っ ている、あいりん地区での相談者も減っているというものの、本当にトータルでホーム レスやそういう人が脱却し得ているのかというと、決してそうではないような気がして 仕方がありません。今のところは何とかもっているけれども、また景気の動向等によっ てまた落ち込むというような、グレーゾーンといいますか、そういう方があいりん地区 を中心にたくさんおられるのではないかと思います。そういう方々の状況なり数字も含 めた把握が必要だと思っておりますが、先ほどのお話のように、概数を精査する中でそ ういうグレーゾーンの数字を浮き彫りにできるのかどうか、とは思います。ただ、それ をやっていかないと、今後の施策をどうしたらいいかということについての基礎データ は得られないのではないかという思いも持っています。  ざっくばらんな話ではありますが、そういう状況ですのでよろしくお願いいたします。 ○山田委員  もう一つは、先ほどから出ているあいりん地区は特異と言いますか、日雇労働市場が 縮小されたとはいえ未だに機能している。そこが古典的なホームレスの受け皿として機 能していたのですが、かつてのようには吸収されない。行ったり来たりの滞留型で、そ のために夜間だけの夜間避難所を作っていただいているのですけれども、この数は景気 が上向いても全然減っていないのです。もう一度調査しなければならないのですが、新 たに来る層とその辺のあいりん地区に集約される層のパターンですね。ここは歴史的に も古く、ある意味ではセーフティーネットとして機能してきたわけですから、ここに対 する調査は独自の観点からやっておかないと、結局よそはきれいになったけれども、そ れが押し流されてここでぐちゃぐちゃになるということにもなりかねないし、あいりん 地区に集約して周りがきれいになるならいい、ということになるのかという危惧もされ ますので、あいりん地区は独自に調査していただきたいと思っております。 ○森田委員  ある程度姿は見えてきたと思うのですが、今議論の中に出てきておりますのがファジ ーな部分ですね。ある意味ではそれがホームレスに対する今の行政の限界をもたらして いるところです。先ほどおっしゃったようにホームレスの中にもホームレスの包囲カテ ゴリーがありますし、またその予備軍のようなものもあります。なおかつ、座長もおっ しゃったようにホームレスの定義がありまして、路上に限定してしまうというと、今の 施設との往還型、あるいは路上、いろいろな職場、あるいは寮などとの往還型というも のがつかめない。そういう意味ではホームレスの自立支援法も、ホームレスをいかに予 防していくかという観点に立ちながら、その辺りの実態がなかなか押さえきれていない という部分があります。そうしますと、やはり全体の中で最初にその全数を押さえるこ とが、基礎表になります。先ほど山田委員もおっしゃったように、合算してある程度の 推定はつきますけれども、基礎は基礎としてきちんとつかんでおかないと、その中から 足し算・引き算が起こるということもありますので、そこをどう押さえるかということ なのです。そうすると、まず、前回の調査のときにも議論になりましたけれども、前回 からの継続調査の第2回ですから、実施月は変えられない。では調査方法まで継続させ てそのまま数字の継続性を図ろうとされておられるのか、それともそこで精度を上げて いく工夫をどうしていくかという形で、ある程度調査方法を変えていく余地があるのか どうか。ここのところが一点問題だと思います。例えば、昼間にやるのと夜にやるのと では全く違ってきます。ましてや目視ということになりますと、昼間では移動層の把握 が非常に難しくなります。それを昼間に実行しますとそのファジーな部分が浮かび上が ってこない、基礎数として浮かび上がってこないという欠陥を持っています。その辺り の最初の調査方法ですね。それから、ホームレスの定義そのもの、例えばシェルターに 入っている人や自立支援センターに入っている人の中の幾分かは自立されているけれど も、幾分かはまだホームレスであるという層がいます。だから、施設に入っているので 厳密な狭義でのホームレスの規定にはかかってこないけれども、そこには既にホームレ ス予備軍が含まれてくる。これをどうカウントしながら、次の施策あるいはこれまでの 施策を評価するのか、ということは大事なことだと思います。それを固めていくという ことも必要ではないかと思います。 ○安江委員  前回のときも、先生方は路上にいる人の数え方についてもずいぶんおっしゃって、日 中の目視だけでは駄目だということもおっしゃっていましたけれども、結果としてそう なってしまったと思っています。全国調査はぜひ前回より精度を上げる形で手法を考え ていただきたいと思います。東京都23区でも1994年から日中の目視でやっておられま すが、担当の方も実態よりは下回るけれども2月と8月に毎年継続して同じ手法でやっ ているので傾向は正しくつかんでいるとおっしゃっています。しかし、やはり実態をつ かむには日中の目視ではなく、もっと考えなければならないと思います。 ○岩田座長  やはり事前調査が必要です。調査のための調査が必要で、大体どこにどれぐらいいる かという調査をしてから、何時ごろどこに行くかを決めないといけない。 ○大橋委員  地域の特性のようなものもあるのでしょうか。 ○岩田座長  そうです。もちろんあります。 ○森田委員  だから大阪市ではまさに夜間にやったのですが、それは1回ではなくて、事前に商店 街に入ったりいろいろなところで情報収集して、ここには大体どれくらいのどのような 構造の、生活時間の方がいらっしゃるのかということをつかんだ上で、昼間の調査と夜 の調査を並行してやりました。 ○阿部委員  そういうノウハウがないところでは、ただ単に「数えてください」と言ってもほとん ど意味のない数字しか出てこないですよね。 ○中村局長  行政の方でどうかというお話が森田委員からありましたので、まさにこの検討会で検 討していただきたいと思いますし、いろいろお願いしたいと思います。やはり一つは、 継続調査というお話がありましたが、1回目の調査と比較検討はしたいと思いますので、 準ホームレスですとかホームレス予備軍というお話もありましたけれども、定義があま り混乱しないようにお願いします。例えば定義の仕方によっては、絶対ホームレスにな らないという保証はないのですから、国民みんながホームレス予備軍となるわけです。 そういう意味ではあまり新たな概念を作っていただくよりは、傾向というお話がありま したけれども、まず、全国調査としてやったのは1回目が平成15年1月ですから、そ れとの比較でどうなっているかということについて押さえられるような調査をお願いし たい。それから2回目ということで、先ほどからお話に出ている1回目から2回目の間 の新規の流入はどうかとか、移動がどうかというお話もありますし、ホームレスの自立 支援法ができて、一応法律で位置付けられた施策があるので、この施策の実施状況と、 どのくらい寄与しているのかしていないのか、ということもあります。施策効果という お話もありまして、景気が良くなるのは施策効果に当たるのか当たらないのか、これは 定義のお話もあるかもしれませんが、政府としては、総理の答弁ではありませんけれど も、景気を良くすることも大きな仕事だと思っております。景気が良くなるのは究極の 施策効果かもしれませんが、もしそういうことがわかるのであれば、そういう分析もで きるような調査をお願いしたいと考えております。  それから確かに資料2の1ページ目にありますように、前回の調査では、大体半分の ホームレスの方が東京23区と大阪市におられるということで、東京・大阪問題だとい うことは我々も知覚はしておりますので、大阪市や東京を念頭において調査していただ くと、半分くらいの重点はあるのかもしれませんが、ここで見るだけで581の自治体が あります。市町村の合併も進んでおりますから市町村数としてはもっと少なくなると思 いますが、都市部を中心に、全国的にもかなり見られるわけですから、そうした都市が 対応できる調査ということもぜひ念頭に置いてご議論いただきたいと思っております。  それから、阿部委員がおっしゃるように、あまり経験のない所では、もしかしたら漏 れているかもしれないということですが、一人残らず数え上げることを目標とするので はなく、相当たくさんいるということが社会問題としても課題になっているわけです。 数名であれば地域の福祉施策でいろいろ対応できることがあるのではないかとも考えら れますので、もちろん全都道府県で調査していただくことになると思いますけれども、 そういった意味で数の多さも非常に重要な事項でもあるので、その辺についてのご配慮 もお願いしたいと思います。  しかし前回の調査通りと申し上げているわけではなく、いろいろこの検討会で、こう いうものがあった方がいいということをご指摘いただければ、2回目の調査ですし、我々 もより的確な調査を実施したいと思っておりますので、その辺はよろしくお願いいたし ます。 ○岩田座長  前回はとても時間がなかったのです。今回は少し余裕がありますので、実施していた だく自治体に対する説明を丁寧にやるということで精度は上がるかと思います。  それから今思い出したのですが、1月なので早く暗くなってしまうということと、調 査者の問題等もあって日中にしたわけです。夜やると捕まるかといえば、場所によるの です。寝る寸前に捕まえるというのが一番いいのですが、どこでいつ寝ているかという ことがわかるといいですね。今回は目視調査にあたっての事前調査をしていただければ、 1回経験がありますし、前よりは精度が上がると思うのです。調査手法が非常に難しい 調査なので、先ほどのグレーゾーンはそれ自体を数で調査するというよりは、むしろ生 活実態調査等から浮かび上がってくるという感じになると思いますので、分析のところ で意識するということでいいのではないかと思います。 ○山田委員  前回は東京や大阪のために特別な施策を作るわけにはいかないのだということで、均 一的な、ファジーな施策になったということもあるのではないかと思いますが、やはり 東京・大阪を中心とする5大都市に集中しているわけですから、都市部の問題として、 別仕立てできちんと絞り込んで何か施策を組み立てていくという方向性を持って、やっ てもらえたらと思います。 ○岩田座長  大都市と地方、というほど実は単純ではなくて、周辺都市に拡散しているという印象 を持っています。ところがそういう自治体が資源を持っていない、それでいろいろ地域 間移動をしたりさせられたりというようなことが起こっている可能性があるので、その 辺もいろいろわかっていると思うのですが、今回の調査の方がいろいろなことがわかる と思います。 ○大橋委員  全国のホームレス数というデータが出ていまして、これは県の人口が多ければ当然数 が増えるのですね。ただ、これを見たときに労働力で割ったらいいのか人口で割ったら いいのか非常に微妙で、また、生の割っていない数字がますます微妙なのです。今まで の議論を聞いていますと、皆さん労働力として見ておられるのではないかという気がし て仕方がないのですけれども、大体どういう見方なのでしょう。 ○岩田座長  日本の場合は、路上に限定した限りでは圧倒的に単身男性の中高年労働力と見ていま す。ただ、先ほど先生がおっしゃったように、リタイアすると、高齢者や福祉の対象と いう性格が強くなります。そうすると女性や若い人は準のところに隠されているという か、そういうことは幾つかの研究では指摘されています。ただ、全体のホームレス論で はそれぐらい拾えるのですけれども、この施策の中心は、やはり今のところ男性の労働 力、それもリタイア寸前の層なのです。だから自立支援というのが中核に入ったのはそ ういう意味ですし、ご本人たちの希望も、希望としては強いのです。先ほど安江さんが おっしゃったように、端的に言ってしまうと平均55歳から65歳までの10年をもたせ るという施策だったと考えてもいいかもしれません。ただ、人によっては40代・30代 の人もいますから、その場合は効果を持つでしょうが。大ざっぱに言うとそういうイメ ージです。  さて、それでは時間も参りましたので、今日の議論を下敷きにしまして次回事務局の 方から調査項目案を出していただいて、また議論をしたいと思います。よろしいでしょ うか。それでは、どうもありがとうございました。 ○島村課長補佐  事務局の方からご連絡いたします。次回の検討会の日程は9月19日(火)14〜16時、 その次の日程につきましても10月23日(月)14〜16時を予定しております。開催場所等 につきましては改めてご連絡をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。                照会先                [ホームレスの実態に関する全国調査検討会事務局]                 厚生労働省社会・援護局地域福祉課                  TEL 03-5253-1111(内線2858、2855)                  FAX 03-3592-1459 28