06/07/28 第12回がん検診に関する検討会議事録 第12回がん検診に関する検討会 日時:平成18年7月28日(金)  14:00〜16:00 場所:厚生労働省9階省議室 <議事次第> 1.開会 2.議題  (1)胃がん検診の実施状況等について  (2)胃がん検診の有効性の評価について  (3)その他 3.閉会 <議事内容> ○神ノ田課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第12回「がん検診 に関する検討会」を開催させていただきます。 まず、初めに三浦老人保健課長からごあいさつを申し上げます。 ○三浦老人保健課長 老人保健課長でございます。本日は、委員の皆様方におかれまし ては、大変お忙しい中、この検討会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。 また、今日は3人の委員の先生方が新たに加わっておられますが、新たに加わられた 先生方におかれましては、是非よろしくお願い申し上げます。 がん検診に関する検討会につきましては、平成15年12月に設置されて以来、延べ11 回にわたり御検討いただいたところでございまして、これまで乳がん、子宮がん、大腸 がんのそれぞれの検診につきまして、3つの報告書をとりまとめていただいた経過がご ざいます。今回の検討会で新たに3名の委員の方に加わっていただいたわけでございま すが、今回からは、胃がん検診について御検討いただきたいと考えております。 また、がんにつきましては、御案内のとおり、1981年から20年以上にわたりまして 我が国の死亡原因の第1位であり、国民の3人に1人ががんによって命を失うという状 況でございます。 そういうこともございまして、先の通常国会におきまして、がん対策基本法が成立い たしまして、厚生労働省のみならず、政府を挙げてがん対策の充実強化が強く求められ ております。厚生労働省でもがんというものについて、最重要課題の1つだということ を認識して、最重要課題にしていくこととしております。 我が国のがん検診につきましては、かねてから受診率が低い、あるいは十分な事業評 価が実施されていない、などさまざまな指摘がございました。 最近では健康フロンティア戦略の一環としまして、マンモグラフィーの緊急整備事業 等を実施いたしまして、がん検診事業の量的な拡充を図るとともに、本検討会での提言 を踏まえまして、より効果的、効率的な実施にも努めてきたところであり、事業評価の 概念も現在のがん検診に関する指針の中には盛り込まれたところでございます。 今回、胃がん検診について御検討いただくこととしていると申し上げましたけれども、 胃がん検診につきましても、検査方法、対象年齢、受診間隔、事業評価など、さまざま な論点があると考えております。どうか先生方におかれましては、最新の知見に基づい て御提言をとりまとめていただきますようお願い申し上げまして、冒頭のごあいさつと させていただきたいと思います。 どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ○神ノ田課長補佐 続きまして、本日の検討会より新たに御参加いただく委員を御紹介 申し上げます。 お手元の資料の2枚目に委員の名簿を付けさせていただいております。 まず、日本医師会常任理事の内田委員でございます。 財団法人早期胃がん検診協会理事長の丸山委員でございます。 藤田保健衛生大学教授の芳野委員でございます。 どうぞ、よろしくお願いいたします。 次に、本日の委員の御出席状況でございますが、本日は、全委員に御出席いただいて おります。 それでは、以降の進行を垣添先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○垣添座長 皆さん、こんにちは。国立がんセンターの垣添です。本日から胃がん検診 の検討に入りますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。 先ほど三浦課長のごあいさつの中にもありましたように、我が国でがん死を減らす上 で、がん検診の重要性というのは論をまたないと思います。解決すべき数々の課題があ るかと思いますが、この検討会で有益な結論を出していただくよう、心からお願い申し 上げまして、ごあいさつに代えさせていただきます。 では、まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○神ノ田課長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。 お手元の資料の議事次第の次に名簿を付けさせていただいておりまして、3枚目が資 料一覧となっております。こちらもごらんいただきながら御確認いただければと思いま す。 資料1でございますが「胃がん検診の現状等」ということで、事務局からの説明 資料でございます。 資料2でございますが「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」ということで、 祖父江研究班の報告書の抜粋でございます。 こちらにつきましては、委員の先生方にはピンクの冊子もお配りさせていただいてお ります。 参考資料といたしまして「新たながん検診手法の有効性の評価」。久道班報告の「− 胃がん検診部分の抜粋−」ですとか、あるいは老人保健課長通知で出しております、が ん検診指針等、参考になるような資料をまとめたものを用意しております。 追加資料といたしまして「がん対策基本法の概要」ということで、ポイントを整理し たものを用意させていただきました。 資料につきましては、以上でございます。不足等がありましたら、事務局までおっし ゃっていただければと思います。 ○垣添座長 よろしいですね。ありがとうございました。 それでは、議事に移らせていただきます。 まず、議題の「(1)胃がん検診の実施状況等について」ということで、事務局から 説明をお願いいたします。 ○神ノ田課長補佐 それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。 こちらの資料ですが、現状の胃がんに関します疫学データですとか、あるいは検診の 実績等をまとめた資料でございます。 まず、3ページでございます。 こちらは、市町村事業として行っているがん検診について、これまでの経緯あるいは どういった項目について実施しているかというところをまとめております。 胃がん検診につきましては、昭和57年度から老人保健事業創設当初より実施されてま いりました。 2番の胃がん検診の項目ですが、問診と胃部X線検査、対象者は40歳以上、受診間隔 は年1回ということで実施しております。 胃がんの罹患率の推移を4ページにまとめております。男性、女性とも低下傾向にご ざいます。 5ページのところが、胃がんの死亡率の推移でございますが、こちらも同様に低下し てきております。罹患に比べますと、低下のスピードは早くなっている状況になってお ります。 6ページでございます。こちらに「部位別・年齢階級別がん罹患率」を男女別でまと めております。男女とも40代ぐらいから罹患率が立ち上がってきている状況にございま す。 7ページでございますが、死亡率につきまして同様の整理をしております。罹患 率同様に40代あるいは50代前半ぐらいから死亡率が高くなってきているデータになっ ております。 8ページでございます。こちらは年齢階級別罹患率の年次推移をグラフ として表わしております。 年々罹患率については、低下傾向にございまして、全年齢にわたって少しずつ低下し ている状況にあるかと思います。 9ページが同様に死亡率についてグラフ化したものでございます。こちらも罹患率同 様に全年齢にわたって少しずつ死亡率が低下してきていることがわかるかと思います。 10ページでございます。こちらは都道府県別の標準化死亡比をグラフ化したものでご ざいます。全国平均を100 とした場合の死亡ということで、一番高いところが秋田県の 128.0 であり、以下、富山県が123.0 、山形県が121.0と なっております。 一方で、低いところを見ますと、沖縄県が55.4、熊本県が65.2、大分県が78.0とい う状況でございます。 11ページは女性のデータということで、同様の傾向がございます。 12ページでございますが、胃がん検診の実施状況でございます。胃がん検診の受診率 につきましては、ここ10年ぐらい横ばいからやや低下傾向の状況にございます。 12ページの下の方に、その他の要精検率、がん発見率につきましても、年次推移のデ ータを載せておりますが、要精検率につきましては、16年度11.11 。また、がん発見率 は0.15%という状況で、この数値につきましては、ここ数年大きな変動はないという状 況になっております。 13ページでございます。こちらは胃がん検診のさまざまな指標について、年齢階級別 にまとめたものでございます。 14ページは、都道府県別に各種指標を整理しております。こちらは15ページ以降の 資料において見やすく整理しておりますが、15ページについては都道府県別受診率とい うことで、高い県から順番に並べております。 山形県が最も高くて42.3ということで、かなり突出して高くなっております。以下、 岡山県が27.1、鳥取県が26.9%という状況でございます。 16ページでございますが、こちらは要精検率について同様の整理をしております。一 番高いところが、鳥取県で40.4%ということですが、こちらは若干事情がありまして、 鳥取市が一次スクリーニングで胃の内視鏡検査も併せて実施しているということで、全 受診者がすべて要精検者という形で報告が上がってきているということです。それに引 っ張られるような形で鳥取県全体の要精検率が高くなっているということでございます。 以下、京都府が17.0、東京都が15.1という状況でございます。 17ページでございますが、こちらは精検受診率についてでございます。一番高いのが 鳥取県95.8%、以下、新潟県が89.8、高知県が88.0という状況でございます。 最後に18ページですが、がん発見率でございます。最も高いところが鳥取県で0.285 %、新潟県が0.278 、山口県が0.235 という状況でございます。 あと、追加資料として配付させていただきました、がん対策基本法について、若干が ん検診についても触れられておりますので、その部分に絞って御説明させていただきま す。こちらは、先ほど座長の話にもありましたが、先の通常国会におきまして、6月16 日に参議院本会議において可決成立しておりまして、19年4月1日に施行予定となって おります。 がん検診に関しましては、下線を引いておりますが、1ページの「第3 基本的施策」 の「1 がんの予防及び早期発見の推進」というところに「がんの予防の推進、がん検 診の質の向上、がん検診の推進のために必要な施策を講ずる」ということで盛り込まれ ております。 3ページ以降に条文を載せております。関係する部分につきましては、4ページの第 5条のところです。こちらは「医療保険者の責務」といたしまして「がん検診に関する 普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない」という努力義務が規定されて います。  第6条におきましては「国民の責務」ということで、がん検診を受けるよう努めなけ ればならないとされております。  5ページにまいりまして、第13条でございますが「がん検診の質の向上等」という ことで、国及び地方公共団体は、がん検診の方法等の検討、事業評価の実施、医療従事 者に対する研修の機会の確保等、がん検診の質の向上等を図るために必要な施策を講ず る。また、がん検診の受診率の向上に資するよう、がん検診に関する普及啓発その他の 必要な施策を講ずるものとするとされております。 8ページ以降でございますが、こちらは参議院厚生労働委員会による附帯決議です。 その中でがん検診についても触れられておりまして、関係部分は10ページの17のとこ ろをごらんいただきたいと思いますが「がんの早期発見のための知識や予防法の普及を 図ること。また、最新の知見に基づき有効性が高いと認められるがん検診を地域におけ る検診の項目に位置づけること」とされております。 また、18としまして「がん検診については、最新の診断機器の効率的利用や撮影技師 の技能向上等により、早期発見率を向上させるとともに、がん検診の事後評価を推進す ること」とされております。 事務局の方からは以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。事務局から胃がん検診の実施状況と、がん対策 基本法の概要について御説明いただきましたが、今の事務局の説明に関して何か御質問 等ありましたらお受けしたいと思います。 どうぞ、森山委員。 ○森山委員 受診率のことなんですけれども、職場検診でも胃がん検診をやっていると ころはあると思いますけれども、職場検診は入っているんでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 こちらは老人保健事業のみのデータでございます。 ○垣添座長 どうぞ、内田委員。 ○内田委員 今の受診率の件ですけれども、受診対象者数の把握について市町村によっ て随分違うと思うんです。その辺のところはどうなっているんでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 これは、老人保健事業が創設された当初から大きな問題になってま いりまして、老人保健事業につきましては老人保健法上、他の制度で対象にならないよ うなものを広くカバーすることになっていまして、大きな問題としては、他の職域の検 診等でどの範囲をやられているかというところを市町村で十分把握できていないという ことで、若干市町村によって対象者の設定が異なっているということは、古くから問題 点として指摘されております。 ○内田委員 では、市町村から県を通して上がってきたものをそのままデータとして出 しているということですね。 ○神ノ田課長補佐 そういうことです。 ○垣添座長 丸山委員どうぞ。 ○丸山委員 同じような質問ですが、これで行きますと受診者数が437 万人ですね。こ れは、実際にデータを100 %回収できている状態でしょうか。 ○神ノ田課長補佐 全市町村からは報告はいただいておりますが、ただ、市町村として 把握できているものが上がってくるということですので、まず、受診者数については正 確に把握できると思うんですが、たとえば、その後がんが発見された数については十分 把握できていない可能性もありまして、多少過少なものが上がってきている可能性はあ ります。 ○丸山委員 ちなみに、ここに日本消化器集団検診学会のアニュアル・レポートがあり ます。先程のデータとは1年違いの平成15年のデータで集団検診を実施している機関に 対して協力を求めて作成されたものです。回答率は100 %ではありません。このデータ ですと、平成15年度の受診者数は597 万人です。したがって、先程提出されたデータ とは160 万人ぐらい差があります。 すでに述べたように、学会の報告データでも、回収率が100 %ということは勿論ない わけでして、この数年、特に去年辺りから、個人情報保護法の解釈が違う市町村があり、 データの提出を拒否するところもあります。しかし、それでいても597 万人が登録され ていますから、その差というのは非常に大きいと思います。何でこんなことが起きるの かということについて、私は非常に疑問に思っています。 同じようなことが精検受診率についてもありまして、職域検診だけ取りますと、アニ ュアル・レポートでは精検受診率は職域では50%を切っています。一方、先程のデータ では、住民検診を含めて精検受診率が非常に高いですね。内視鏡で精密検査が行われて いるところを除外しても、60%です。東京都だけは異常に低いですね。あとはみんな80 %とか70%ですから、精検受診率にもかなり差があるのはどうしてか、非常に疑問がい っぱいで、どちらを信じていいかわかりません。 ○神ノ田課長補佐 先ほど、森山委員の方から御質問がありましたが、職域については カバーされておりませんので、受診者数が先生のおっしゃった数字よりも少ないという ことについては、地域で市町村が行っているもののみの実績になっているということで、 百何万人か少ないもので上がってきているんだと思います。 ですから、先生のお持ちのデータは恐らく職域の実績も含めた数ということで、こち らの数字よりも大きくなっているんではないかと思います。 ○丸山委員 ただし職域でも、例えば今、私が理事長をしている財団の診療所では、い わゆる集団検診という枠組みに入らない、人間ドック型の検診で職域検診を一括して引 き受けています。 しかも、従業員数が50人以下の事業所は報告の義務云々がありません。私は、かつて、 日本消化器集団検診学会の精度管理委員会で旧労働省が把握している職域検診の検診の 数と、旧厚生省が把握している検診の数のつき合わせを試みたことがあります。しかし、 この時、どこから攻めてもその作業は不可能でした。旧労働省に報告されている総合検 診の数の中で、例えば大腸がん検診をどれだけやったのか、あるいは胃がん検診をどれ だけやったのかということについて、調べるための手がかりは全くありませんでした。 東京都の中だけでも都庁に何回か行って、そのことに関するデータがないかと聞いて みましたが失敗に終わりました。 ですから、全くの想像ですけれども、日本全体で見たら職域でもって報告義務のない 職場の総合検診の胃の検診も相当数行われていますので、かなりの数の国民が検診を受 けていると思われます。 ○垣添座長 事務局どうぞ。 ○神ノ田課長補佐 今、資料としては用意していないんですが、国民生活基礎調査とい う統計情報部がやっている全国調査があります。 その中で、悉皆の調査ではなくて抽出の調査ではあるんですが、過去1年間に胃がん 検診を受けたかどうかということで調査をして、おおよその受診率について報告されて いますので、それが参考になるかと思います。 ○丸山委員 それでどのぐらいの数ですか。 ○神ノ田課長補佐 今、取り寄せていますので、また後ほど御紹介させていただきます。 ○垣添座長 ほかの方で、今の丸山委員の御発言にお答えをお持ちの方はおられますか。 なかなか難しいですか。 では、坪野委員。 ○坪野委員 ちょっと確認なんですが、この検討会で議論するがん検診の範囲というの は、一応、主に市町村で行われているものに限るということなのか、あるいは今いろい ろ議論になっています職場等、人間ドックのようなものも含めてトータルに議論するの か、どちらなんでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 市町村が実施するがん検診に絞って御議論いただきたいと思ってい ます。 ただ、有効性評価に関することについては、これはほかの検診事業でも当然参考にで きるだろうと思っていまして、そういう意味では、ほかの検診事業にも影響を与え得る と考えています。 ○垣添座長 私からもちょっと質問があるんですが、15ページの胃がん検診の都道府県 別受診率で、山形県が突出して高い理由を1つお聞きしたいと思います。 もう一つ、これで42%と非常に高い受診率で、しかも17ページの精検受診率も山形 県は真ん中辺にありまして79.5%、それでいて10ページに死亡率がありますけれども、 男性でも女性でも、かなり上の方に山形県が位置している。これは一体どういうわけな のか、何か説明がつきますでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 以前、山形県の県の担当者ではありますが、電話で状況を聞いたこ とがございます。当初分母の方の対象者を絞り込んでいるから、これだけ高くなってい るのではないかということも思ったんですが、県の担当者に確認したところ、そういう ことはやっていませんというような説明で、なぜ受診率が高いかということについては、 なかなかはっきりしたことは申し上げることはできないけれども、山形県においてはボ ランティアによる声かけ運動とか、そういう地道なことをかなりやられている。あるい はかかり付け医もがん検診を受ける必要がありますよということで、受診率向上に協力 してもらえているという説明を聞いております。 受診率については、そのような話なんですが、その他の指標については事務局として も把握できておりませんので、また調べてみる必要はあるかと思います。 ○垣添座長 これだけ高い受診率だとしたら、当然死亡率の方も低下してくれないと困 るなという気がするんですけれども、必ずしも実態はそうではないのかもしれない。 どうぞ、森山委員。 ○森山委員 これを見ると、農業圏が多いですね。さっきの職域との関係があって、東 京都なんかですと、かなり職域で受けていて、農業圏の方では職域検診というよりは都 道府県の方に頼っているので数字上高くなっている可能性がある。勿論、今回の検討は 老人保健法でやっている方なんだけれども、やはりこれからは職域でやっているという ものも同時に、今日は別として、来年辺りからデータだけでも一緒に集めるようにして いかないといけない。前は厚生省と労働省が分かれていたんですけれども、今は一緒な ので集められると思うので、是非そういうデータを出していただければと思います。バ イアスがいろいろかかっている可能性があるように思いました。 ○垣添座長 そのとおりですね。どうぞ、内田委員、それから斎藤委員。 ○内田委員 検診については、保険者の義務化になりましたけれども、がん検診につい ては当面現行の老人保健法に乗っかったままで、市町村の単独事業という形で今後も継 続するわけですね。 そうすると、がん検診データに関しての保険者の方での集積というのはできないわけ ですね。従来どおりの集計になるわけですね。これが保険者の義務化になって、保険者 の方から集めれば、すべてのデータが正確に集まることになるんだと思うんですけれど も、その辺の取組みを少し考えていただかないと、現状では対象者も正確に把握できな いような状況では信頼がおける統計的なものはなかなか集まってこないという感じがし ます。 もう一点、ちょっと質問ですけれども、15ページの県別の受診率のところで、平成1 4年から15年にかけて急激に受診率が減っているところが何県かあるんです。上から2 番目の岡山県辺りも10%以上減っていますし、下から2番目の京都辺りも半分になって いる。これは何か制度上の変化とかがあったんでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 岡山県の状況はわからないんですが、京都府については、以前、確 認したことがあります。実は14年と15年と載せているんですが、集計の仕方が政令市 等を含むか含まないかの違いがあります。 つまり、15年度から大都市も含めた形で都道府県別の受診率を出しているということ で、大都市については受診率が低いところが多い。それに引っ張られるような形で半分 ぐらいになったんではないか。以前調べたことがありまして、そういうことだったかと 思います。 ○垣添座長 斎藤委員どうぞ。 ○斎藤委員 先ほど来、受診率の問題が話題になっていますが、丸山委員の御指摘に対 しての事務局の答弁ですが、ここで問題にするのは、老人保健事業報告だとしても、や はり第3次対がんの課題である罹患・死亡の激減ということを考えながら議論すべきで す。 そういう意味で言うと、全体の受診率を把握する仕掛けがないということは問題であ りまして、ここでそれが重要な課題であることは整理しておいた方がいいと思います。 それから、老人保健事業報告に限っても、都道府県によって分母の対象者の定義が違 います。ですからがん検診で同じ当該年齢を設定していても、例えば胃がん検診と大腸 がん検診の分母が同じ都道府県で異なった数値が報告されることがあります。 この辺の方法が統一されないと、この受診率が本当に正しいかどうかわからないわけ です。ですから、老健事業に限定していっても、やはり受診率をきちんと把握する仕掛 けをつくることは非常に大事だと思います。 その意味で、内田委員からの御発言のような方法もあると思うんですが、そういう可 能性を否定してしまうのではなくて、それも含めて検討することが必要ではないかと思 います。 ○垣添座長 重要な御指摘だと思います。 祖父江委員どうぞ。 ○祖父江委員 垣添先生の先ほどの件で、なぜ山形で死亡率が高いかということなんで すが、検診の評価をする際には死亡率だけを見ているのでは不十分で、やはり罹患率を 見ないといけない。罹患率に関して全国推計値の年次推移は一応出ていますけれども、 都道府県別に罹患率を出すということが、今、ほとんど不可能です。一部の府県に関し ては、ある程度の精度のがん登録をやられていますけれども、ほとんど30か所ぐらいの 地域がん登録は、精度に問題あるために、罹患と死亡を比較するということ自体がほと んどできない状態にあります。 そこのところのデータがあるのとないのとで、こういう検診に関しての評価をする際 にかなり違いが出てきますので、やはりがん登録のデータがこういうときに必要である ということを確認しておきたいと思います。 ○垣添座長 がん登録の重要性を発言されたんですね。それはもっともだと思いますし、 これから議論していく上で、基の統計資料がどうもあやふやであるのは大変困ったこと であるということになります。市町村の検診と職域検診、人間ドックその他を全部含め た実態を何とか把握するような工夫というのはできないものでしょうか。 どうぞ。 ○丸山委員 今、斎藤委員が言われたことの繰り返しになりますが、老人保健事業とい うのは、いまだもって存在していると認識しています。けれども、実際上は、いわゆる 老健法が一般財源化されたのは1998年でしたか、1987年でしたか。 ○神ノ田課長補佐 1998年です。 ○丸山委員 1998年ですね。私はそのときはまだ今の立場ではありませんでしたが、関 東甲信越の1都9県の消化器集団検診学会の関東の支部長をしておりました。職域検診 でも、住民検診でも、老健法が一般財源化された直後から、住民検診でも結局値引き競 争が市町村レベルで行われるようになり現在に至っています。 それに乗じて職域で老健事業の範疇に入らない胃検診でも、他ではこんなに安くやっ ているんだから、もっと安くしろということになってしまいました。中には、これから 議論が出てくると思いますけれども、現価割れで応札して途中で放り投げた検診機関も あります。 ですから、あえて住民検診と職域検診を分けるための合理的な理由というのは、もう 存在しなくなったと思います。かつては職域検診で言わば診断のソフト的な付加価値を 売りにすることができましたが、今はそういうことができなくなりました。このことが 精度管理上の問題を引き起こしているかどうかは、早急に検討しなければならないと思 います。この様な状況に関して厚労省ではどのような考えを持っておられますか。 ○神ノ田課長補佐 この検討会の方で、これまで3つ報告書をまとめていただいており まして、2本目にまとめていただいたのが、乳がん、子宮がんに関するがん検診の事業 評価に関する報告書です。かなり踏み込んだ提言をしていただいていまして、ちゃんと した検診実施機関に委託しなさい。それができないようながん検診機関については、市 町村が行うがん検診事業から排除するということも含めてやりなさい。また、委託する 際には、しっかりと仕様書を示して、単に入札した額だけで業者を決めるということで はなくて、事業の質を担保した上で、質の高い検診をやってくれる検診事業者に委託し なさいということも書かれています。取組みとしてはまだまだ緒に就いたばかりという ことで、今後、それをしっかりと現場に定着させていく必要はあるかと思います。 今回、胃がん検診について御検討いただきますが、その中でも胃がん検診については、 こういうことはしっかり検診事業者にやってもらう必要があるということを是非提言と しておまとめいただいて、それをしっかりと現場に定着させるということが重要かと考 えております。 ○垣添座長 ありがとうございました。冒頭からかなり困難な条件が幾つも指摘されて いますが、やむを得ないので作業を続けていきたいと思います。 どうぞ。 ○神ノ田課長補佐 先ほど国民生活基礎調査のデータということで、今、手元にまいり まして、これは推計のデータではありますが、全国で1,780 万人ぐらいでございます。 ○丸山委員 これは40歳以上ということですか。 ○神ノ田課長補佐 20歳以上のものということで、胃がん検診の受診者数ということで す。 先ほどの事務局の資料では、440 万人ぐらいということですので、ちょうど4分 の1ぐらいが市町村として行われている状況でございます。 また、受診率についてですが、胃がん検診について男性が20.2%、女性が18.1%とい う推計値になっております。 ○垣添座長 ありがとうございました。では、一応、次の話題に移ります。 議題の2は「胃がん検診の有効性の評価について」ということで、祖父江委員の方か ら胃がん検診の各検診手法についての有効性の評価について、研究班でとりまとめた有 効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインの概要について御説明いただきまして、その 後、皆さんから御意見をいただきたいと思います。 それでは、お願いします。 ○祖父江委員 祖父江です。資料2の「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」 をごらんください。 ピンク色のガイドラインのフルバージョンから抜粋する形でこの資料をまとめました。 5ページに目次があります。四角で囲ったところを冊子の方に抽出したという形です。 ページをめくっていただいて、図表の方の図1、図2等で内容の方は説明していきま す。 7ページが、まずは研究班の構成であります。がん研究助成金の総合研究としての研 究班ですけれども、主任研究者は私が担当しておりまして、分担研究者や研究協力者と して、このような先生方に参加していただいています。 胃がんに関して、胃がんの専門家という立場で主に研究協力者として多くの先生方に 参加していただいています。 8ページ目が、胃がん検診ガイドラインの作成するに当たっての作成委員会、レビュ ー委員会のメンバー表であります。深尾先生を中心としてガイドライン作成委員会7名、 胃がん検診レビュー委員会11名で構成しております。 レビュー委員会の方で実際の文献の検索、個々の論文の評価、証拠のまとめを行い、 主に執筆に関しては作成委員会の方で行いました。 ただ、判定のコンセンサスづくりといいますか、合意形成に関しては、作成委員会と いうよりは、むしろ主任研究者、分担研究者を含めたボードメンバーで行いました。 なぜそういうことをしたかといいますと、下にあります胃がん検診ガイドライン作成 委員の中で、証拠として採用した文献の著者である人が何人か含まれております。深尾 先生、渋谷先生、山崎先生、井上先生です。 本来ならば、自分が著者であるような論文を証拠として採用するというのは、やや客 観性に欠けるというところはあるんですけれども、日本の状況からしますと、有効性評 価に関する知識を持っている胃がん検診の専門家の方々を確保しようとすると、どうし てもこういう状況になってしまいます。判断をできるだけニュートラルにするというこ とで行ったのが、胃がん検診ではない、ほかのがん検診の専門家の方々を判断するボー ドメンバーに加えるということで、できるだけニュートラル性を確保するということに 努めました。 将来的には、こうしたことがない方が望ましいと考えています。客観的 に判断するには、やはり自分たちの書いたペーパーを評価するということがないように、 第三者による評価をする仕組みが望ましいと思います。 関連する研究費の支援というのもここにディスクローズしています。「謝辞」として 書いております9人の先生方に外部評価をお願いしました。委員の芳野先生にもこの中 に加わっていただいています。 10ページ目です。ここが要旨ですので、これに沿って説明します。 胃がんは、罹患が1位、死亡が2位という非常に頻度の高いがんであります。検診と しては胃のX線あるいは胃の内視鏡といったものが検診として実施されています。 本ガイドラインは、検診に関わるすべての人へ胃がん検診の有効性評価に関する情報 を提供することを目的としております。胃がん検診による死亡率減少効果を明らかにす るために、関連文献の系統的総括を行い、各検診方法の死亡率減少効果と不利益に関す る科学的根拠を示し、我が国における対策型・任意型検診としての実施の可否を推奨と して総括する。これが目的であります。 この中で、対策型・任意型検診というものを考え方として推奨の中に取り込みました。 この考えを説明するのが、20ページ目の表1であります。 「対策型検診」右側に「任意型検診」とあります。もともとこれは英語でいうオポチ ュニスティック・スクリーニングを任意型、オーガナイズ・スクリーニングを対策型と 意訳しておりましたけれども、オーガナイズ・スクリーニングというのが、対策型検診 の理想的な形であるということなので、英語名はポピュレーション・ベースド・スクリ ーニングと書いています。 この2つを分けた理由といいますか、この2つの目的ですが、まず対策型検診という のは、対象集団全体の死亡率を下げるということを目的として行い、任意型検診という のは、個人の死亡リスクを下げるという目的で行う。こういう見方で2つに分けました。 対策型検診としては、検診提供者は、多くのがん対策担当機関で、概要としては予防 対策として行われる公共的な医療サービスであり、対象者は一定の集団として定義され るものです。 検診の費用としては公的な資金を使用することが期待されますし、利益と不利益とい うのは集団全体のバランスをもって利益を最大化するということで考えられます。 一方で、任意型というのは、検診提供者というのは特定されず、医療機関、検診機関 等が任意に提供する医療サービスであり、検診対象者というのは特には定義されず、全 額自己負担というのが原則であり、個人のレベルで利益と不利益のバランスを判断する といった定義であります。 特徴としては、ここに書いてあるようなことがありまして、対策型検診としては、本 検討会で検討する老人保健事業による市町村が提供する住民検診といったものが具体例 ですし、任意型というのは医療機関、検診機関が人間ドックというものが典型例に当た ります。 ページを戻っていただきまして、本ガイドラインで対象とした検診としては、 胃がん検診なんですけれども、X線検査、胃内視鏡検査、ペプシノゲン、ヘリコバクタ ーピロリの4つであります。 文献の検討をする際に17ページの図1を見ていただきたいんですけれども、多くのガ イドライン作成の段階で、諸外国のガイドライン作成の中でも使われるAnalytic Frame workというものを作成しています。胃がん検診として行われる4つ、ここでは併用法と いうのを含めて5つの方法別に文献を検索するわけですけれども、1番と書いてありま すが、検診を受けてずっと右側に行って、結局胃がん死亡減少するかどうか。このアウ トカムでの評価ができているものが直接証拠として採用されますけれども、直接証拠が 十分でない場合でも、こうしたコーザルチェーン(因果の連鎖)のスキームを考えるこ とで、間接証拠として採用するために、その考え方をまとめるために使う概念図という のが、Analytic Frameworkであります。それぞれのところで不利益に相当するものを検 出するためのリサーチ・クエスチョンを想定して、それぞれについて文献検索をして文 献を選択することをしています。 実際の文献の選択の過程が19ページの図2に出ています。 左側が英文の文献、右側が和文の文献ですが、1,700 程度の文献を検索条件で抽出し まして、最終的に英文で採用されたのが20文献、和文が36文献、この過程はかなりワ ークロードを必要とするわけですけれども、こういうことを行いました。 ページを変えていただいて、こういうものを整理する際に、各検診方法別の直接・間 接証拠に基づいて証拠のレベルというものを判定します。証拠のレベルについて説明し たものが、21ページの表2であります。 通常証拠のレベルというのは、研究の方法、RCTであれば一番上であり、観察的研 究あるいは専門家の意見といったものが下になるというものですけれども、それに加え て本研究班の中の証拠のレベルとしては、RCTの中でも質の高いRCT、質の低いR CTということでレベルを分けておりますし、それから先ほどのAnalytic Framework の中で、組み合わせとして採用したものを、この位置づけで採用しますということを1 +、あるいは2+の中でAF組み合わせということで位置づけています。証拠のレベル というのは、全体で8段階になっています。 これに基づいて推奨のレベルを決めるんですけれども、それが22ページの表3であり ます。 これは推奨のレベルですけれども、一番右側に証拠のレベルとありまして、1++あ るいは2++といったものが先ほどの証拠のレベルに相当しています。 A、Bというのが死亡率減少効果を示す十分な、あるいは相応の証拠があるというこ とで推奨するということですが、この推奨を決める際にも対策型検診であるか、任意型 検診であるかという区別で推奨することを設定しております。 Cは有効性の証拠はあるんですけれども、無視できない不利益がある。不利益のこと を考えて、対策型検診として実施することは勧められない。任意型としては十分に安全 性を確保し、不利益に関する説明をした上であれば、個人が判断することで実施するこ とができる。 Dは死亡率減少効果はないとする証拠があるということで実施すべきではない。 Iは証拠不十分であるために勧められないということで、対策型検診としてはA、B を推奨する、C、D、Iを推奨しないということではっきりとメッセージをつくってい ます。 任意型検診としては、Cに関しては不利益があるということで条件付きで実施 できる。 Iについては、証拠が不十分であるということで、個人の判断に基づく受診 を妨げないという記述になっております。 これは、主として対策型検診に関してのメッセージをできるだけはっきりと提示した いということで、このような2つの検診の形を想定したということであります。 ページを戻っていただいて、そういう方法で行ったわけですけれども、証拠のレベル としては、胃のX線検査に関しては、死亡率減少効果を示す直接的証拠を認めた。 胃内視鏡検査及びペプシノゲン法については、検査精度に関する間接的証拠を認めま したけれども、死亡率減少効果を示す直接的証拠として評価判定が可能な研究はなかっ た。 ヘリコバクターピロリに関しては、検診としては有効性評価を行うための根拠と なる研究はなく、また間接的証拠も検査精度や除菌の効果なども限定的であった。 こういう判断をした根拠となった論文の数の状況を示したのが23ページの表5であ ります。 検診方法が縦側に4つ記述されておりまして、直接的証拠、間接的証拠の論文の数が それぞれ記述されています。若干重複があるので、完全に足し算が合わないところがあ りますけれども、直接的証拠の研究数としては胃X線検査の総数が8、そのうち有意差 ありが7あります。 胃内視鏡とペプシノゲンに関しては、直接証拠が1ずつ、有効有意差ありはありませ ん。ヘリコバクターピロリは直接証拠がないということで、判定としては胃X線検査が 2++、胃内視鏡、ペプシノゲンが2−ということです。 間接的証拠としては、右側に書いていますけれども、これを採用したとしても、証拠 のレベルとして最終的に左から2つ目の列に書いていますけれども、それぞれに2++、 2−、2−、2−ということで判定としては変わっておりません。これが証拠のレベル の判断であります。 10ページに戻っていただきますと、これに基づいて推奨のレベルというのを判断しま した。読み上げますと「胃X線検査については、死亡率減少効果を示す相応な証拠があ るので、対策型及び任意型検診として、胃がん検診を実施することを勧める」。これが 総括表の右側の推奨Bというものに相当します。 「胃内視鏡検査、ペプシノゲン法及びヘリコバクターピロリ抗体については、胃がん 検診として死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診とし ては勧められない。任意型として実施する場合、がん検診の提供者は、死亡率減少効果 は証明されていないこと、及び、当該検診による不利益について十分説明する責任を有 する。その説明に基づく、個人の判断による受診は妨げない。ただし、死亡率減少効果 が不明である方法については、有効性評価を目的とした研究の範囲内で行うことが望ま しく、一定の評価を得るまで対策型検診として取り上げるべきではない」ということで あります。 ここに書かれたものを表にまとめたものが、右側の総括表でありまして、胃X線に関 しては証拠のレベルとして2++、推奨としてはB、胃内視鏡、ペプシノゲン、ヘリコ バクターピロリに関しては、証拠のレベルが2−、推奨はIという判断をいたしました。 それをわかりやすく対策型、任意型という形で表にしたものが、27ページの表14で あります。 対策型検診としては、胃X線検査のみが「○(推奨)B」としまして、任意型検診と しては、胃X線、胃内視鏡、ペプシノゲン、ヘリコバクターピロリ「△(推奨)I」と いうのは、十分に理解した上での個人の判断よる受診を妨げないという判断であります。 胃X線に関しては有効であると、死亡率減少効果に関する直接証拠があるという判断 をしましたけれども、これについて年齢の範囲あるいは受診間隔等についてはどうかと いうと、ピンク色の方の16ページに記述があるんですけれども、その他の要因、対象年 齢、受診感覚などというところですが、読み上げますと、胃がん死亡率減少効果を認め ているのは、40歳以上の逐年検診ということです。胃がん検診の効果は2〜3年は継続 するという報告が多いですけれども、3年以内に80%が一度でも胃がん検診を受けてい るということで、標準化死亡比が0.6 になり減少しているという報告もあります。とい うのが、年齢あるいは間隔に関する証拠のまとめの記述であります。 引き続いて、今後の研究課題ということで、資料2の冊子の14ページの下線を引いた ところを見ていただきたいと思います。 今回の死亡率減少効果の評価には用いていませんけれども、胃の内視鏡あるいはペプ シノゲン法については、発見率に関する論文はたくさんあります。ただし、有効性の指 標としては、当該がんの死亡率というものが適切でありまして、発見率というのは余り 適切ではない。 一方、間接的証拠の中でも感度を含む検査精度に関する研究は重要であります。ただ し、胃がん検診の場合は、大腸がん検診とは異なって、RCTによる死亡率減少効果を 示したという検査法がありません。 したがって、他の検査との比較ということだけでは有効性を証明することは適切では ないと判断しております。 ですから、胃の内視鏡等で、今後、死亡率減少効果を直接示す証拠、直接証拠という のが必要であり、RCTというのが不可能であるとしても、症例対照研究あるいはコホ ート研究による評価というのが、質の高い研究として行うことが必要であると記述して おります。 一方で、ペプシノゲン、ヘリコバクターピロリ抗体による検診の対象を集約するとい う形での研究が幾つかあります。こういうものをするということも非常に重要なわけで ありまして、一番最後に書いていますが、評価の確実した胃X線検査との併用を含めて、 今後は、評価方法を明確にし、目的、要するに対象集約のためにやっているのか、ある いは減少効果を評価するためにやっているのかということを明確にした上で評価研究を 行うということが望ましいということを今後の研究課題として取り上げています。 16ページの「VII .おわりに」のところですけれども、胃がん検診に関しては胃のX 線以外の方法は、有効性評価に関する研究が不十分であるということなので、今回の評 価に基づいてというよりも、新たな評価研究が行われることを期待する。特に胃の内視 鏡については、証拠が不十分といっているわけですから、何も有効ではないといってい るわけではありません。証拠を積み上げて、比較的短期間のうちにガイドラインの見直 しを行って、保留になった方法のみならず、新たな検診方法の検討も含めて再評価した いということを最後に記述しております。 以上がガイドラインの説明です。 ○垣添座長 祖父江委員、どうもありがとうございました。大変多くの研究者の協力を 得て、立派なガイドラインとしてまとめていただきましたが、今の御報告に関して、何 か御発言がありましたらお受けしたいと思いますが、大内委員どうぞ。 ○大内委員 この研究報告書について、労力を割かれて大変なお仕事だと思いますが、 参考資料として平成12年度に示された新たながん検診手法の有効性の評価というのが ここにあります。これからこの御説明はあるのでしょうか。私が指摘したいのは、今回、 祖父江班で評価された項目と、久道班の評価との大きなずれは、今回は内視鏡検査につ いての評価をしたということですね。ただし、内視鏡検査はインサフィシェントという ことで、ペンディングの形になっていますが、それでよろしいですか。 ○祖父江委員 はい、そのとおりです。 ○垣添座長 具体的には、参考文献の114 ページ、資料のページでは38ページに結論 としてあります。 ○祖父江委員 私もちょっと説明を省いてしまいましたけれども、資料2の方の12ペー ジの一番下にも「久道班報告第3班における評価」というのが、一応まとめとして記述 しております。 下線が引いてあるところですけれども、胃がん検診については、胃のX線検査、それ が前の判定でいきますと、1−Bというものですけれども「死亡率減少効果があるとす る相応の根拠がある」。これに関しては判定は変わっていないということです。ペプシ ノゲンに関しては「死亡率減少効果を判定する適切な根拠がない」、これに関してもI ということで一緒なんですけれども、ヘリコバクターピロリに関ししては「死亡率減少 効果がないとする相応の根拠がある」ということで、1−Cでしたか、今回でいくとD に相当するんですけれども、そうではなくてIという判断にしております。 内視鏡に関しては、久道班の報告書では取り上げておりませんでしたけれども、本研 究班の報告書ではIという判断にしております。 ○大内委員 久道班の研究報告書も厚生労働省の報告ですので、これに合わせた形でま とめていただければ、なお理解しやすいと思います。 それから、今回の判定に関する証拠の質が久道班と祖父江班では記載の仕方が変わっ ていますので、その辺の整合性についてもできれば、お示しいただければと思います。 ○祖父江委員 前回、大腸がんのときには、そういうような説明を加えてさせていただ いていたんですけれども、今回は省略してしまいました。 A、B、C、D、Iというのは、US・プリベンティブ・タスクフォースの推奨のレ ベルとほとんど一致しています。新しいリコメンデーションレベルに合わせて今回はレ ベルを設定したということで御理解願いたいと思います。 ○丸山委員 もう一点よろしいでしょうか。今回、祖父江委員が触れられましたが、証 拠と推奨について、例えば胃X線検査が2++でBということで推奨できるわけですけ れども、先ほど言われましたように、対象年齢を何歳からスタートするかとか、あるい は受診間隔、これは先ほど1件のデータについて説明されましたけれども、これは極め て重要な件だと思いますが、この検討会では検診間隔あるいは対象年齢についても議論 されるのでしょうか。 ○垣添座長 この後、まさにそのことを含めてフリーディスカッションしていただきた いと思います。 ○祖父江委員 この資料に含められなくて、ピンクの色の方を参照していたところなん ですけれども、対象年齢受診間隔については、有効性については一応データはあるんで すけれども、余り確定的なものは得られておりませんで、40歳以上、逐年検診というの が有効であろうということです。ほかのところで、例えば年齢層別に有効性を評価した ものとか、あるいは頻度別に評価したものというものが余り確定的な証拠としては提示 できないという状況にあります。 ○垣添座長 そうすると、対象年齢と受診間隔には、大内委員御指摘のように、検診の 検討の上で非常に重要だけれども、どちらも議論をしても十分なあれが得られないとい うことですか。 ○祖父江委員 ですから、有効性の観点から年齢層を限定することはちょっと難しいと いうことです、40歳以上は押し並べて有効というような証拠が提示できる。現段階では そういうことです。 ○垣添座長 芳野委員どうぞ。 ○芳野委員 私がここに呼ばれたのは内視鏡の話をするようにということだろうと思い ますので、ここで発言させていただきます。 私ども消化器の臨床をやっている者は、今、胃癌のスクリーニングとして胃レントゲ ンと内視鏡を選択するときには、内視鏡を選択しています。 私どもの病院でもレントゲンの数は激減しています。これはどこの病院でそうだと思 いますし、ある資料によりますと、国立がんセンターでも同じようなことが起こってい ると聞いています。 ですから、今の祖父江先生の話は大変よくわかりますし、内視鏡には論文がない、死 亡率減少効果についてのエビデンスがない。それから胃がんの発見率では全然問題にな らないことがあるようですけれども、現実としては、消化器専門医は、内視鏡検査を選 択するようになっています。 胃がん検診全体にしますと、その数はそんなに多くはな いかもしれませんが、私が実際に関係している検診施設では、内視鏡検診の数はどんど ん増えています。福井県立病院のデータを診ますと、検診で見つかる胃がんは、98%胃 内視鏡で見つかっている。レントゲンでは約2%というデータもあります。 そういう ことから、がん検診学会も胃内視鏡検診標準化委員会というのをつくりまして、検診の やり方で一定の方式を定めようという方向で進んでいます。 このように内視鏡検診が進んでいる状況にあるわけで、先ほどの鳥取の話でも内視鏡 検診が非常に多くなっている。データが少しほかとの違いが出てくる。こういう一般的 な状況があるわけです。エビデンスがないということは、我々内視鏡をやってきたもの としては非常に問題があったことなんだろうと思います。しかし、実際に行われている ことと少し乖離してくるような感じがしますので、これについてはどういうふうにお考 えになっていくんでしょうか。 ○垣添座長 非常に重要な御指摘だと思いますが、この点はもう少しいろんな観点から 御議論いただきたいと思います。 丸山委員、当然御発言がありますね。 ○丸山委員 内視鏡をやっている方々は、皆さんそう言われる方が多いです。極端な方 は、私は自分の内視鏡人生の中で、一度もがんを見落としたことはありませんと豪語す る著名な先生がいらっしゃるぐらいです。 しかしながら、私は結論から言うと、X線診断と内視鏡診断の死亡率減少効果につい ては内視鏡の方はないし、内視鏡診断はそういうことを一切意識しないでこれまでやっ てきましたので、これから死亡率減少効果を出すというのは、相当な年月がかかると思 います。少なくとも偽陰性率ないしは偽陰性の数で見たら、内視鏡はレントゲンと大差 がない。推計学的に見たら大差がないという結果が出る可能性があります。 例えば、この報告書には載っていませんが、これは福井県立病院の外科の細川先生が、 これは一番新しいデータに基づいて書かれたマニュアルです。これによりますと、「胃 内視鏡検査の偽陰性率は3年単位で22%と算出され、予想以上に高率である。胃上部が んは一旦偽陰性となると、発見された場合には進行がんのことが多く丹念な観察が必要 である。内視鏡検査医の観察診断精度は高いとは言えず、拾い上げ内視鏡の標準化に踏 まえて、検査医のトレーニングを行い、日常的に画像の見直しやダブルチェックを行う 必要がある」という結論を書いています。 偽陰性率は、レントゲンでも似たようなものです。ただ、芳野委員が言われるように、 内視鏡検査の専門医療機関と、ルーティンワークの1つとしてトレーニングを受けてい ない医師が内視鏡検査を行っている医療機関とでは内視鏡診断の精度は異なります。 したがって、芳野委員のところのデータと十分なトレーニングを受けたことのない人 たちが見よう見まねで内視鏡検査を行っている施設におけるデータには差があります。 そして、どちらかといえば、後者のデータが診断の精度の平均値に近いと私は考えてい ます。内視鏡がいいはずだということは、人情としてはわかりますが、ほとんど説得力 を持たないと思います。 今、一番大事なことは、私はこれを言いたいために今日出てきたのですけれども、こ の会の委員に、国立がんセンターの先生方が垣添座長を含めて5人いらっしゃいますね。 ところががんセンターは市川名誉院長が退官して以来、レントゲン診断に対しては極め て否定的でしたね。ところが、実際には内視鏡検査には死亡率を低下させるというエビ デンスがない。レントゲン検査には死亡率減少効果があるとなったら、国立がんセンタ ーとしてやるべきことは、まずレントゲン読影医をちゃんと育てるための司令塔になる ことです。現在読影に従事している医師は高齢化しています。また、レントゲン検査と 読影のトレーニングを十分に受けていない放射線科医がパートの仕事として行っていま す。若い医師で、自分は検診に一生捧げてもいいなんていう人の数は極めて少ない。 そういう状況の中で、読影の能力は非常に落ちています。国立がんセンターを中心と して評価をする委員の人たちが、内視鏡は証拠がなくてレントゲンがいいということを 言われるからには、やはり国立がんセンターが中心になって、まず読影医の再生産をど のようにやるかという運用の実際面で具体的なプランをつくって動き出すことが、今、 一番大事なことです。このガイドラインは、これでごもっともでありますから、これに 対してのクレームなんてことはありません。一番の問題は、読影する医師がいなくなっ てしまっている、あるいは撮影できる医師がいなくなりつつあることです。私は先週、 自分の古巣である癌研病院の症例を見る機会がありましたが、正直いってがっかりしま した。 これは、癌研病院の方針としてレントゲン検査は胃の診断に不必要であるということ で、日頃レントゲン検査を行っていないことに原因があります。 国立がんセンターもそのような立場を取るのであれば、このようなことを提言するこ と自体の空しさを感じざるを得ません。これを言いたいために、私は今日出てきました。 ○垣添座長 ありがとうございます。 では、森山先生どうぞ。 ○森山委員 私も市川門下生の中でお答えしたいんですけれども、そのことについては、 現在、国立がんセンターで動き出しております。それで、今までの専門医制度というの は、知識的なものですね。だけれども、診断に関しては、実際は先生が言われたとおり、 読影できるか、できないかということが非常に大切だと思います。 それを今度はシステム的にどうやるかで、今、一番よく動いているのは、乳がんの方 なんです。乳がんの方で中央制度委員会というのをつくって、そこで試験を受けます。 そのときの試験というのは、乳がんのどこの部位にがんが多いとか、そういう学問的 なものではなくて、写真をばっと見せて、何点以上当たらないとできないとか、そうい う形をやっています。乳がんのが一番よくて、その方法論を持ち込んで、消化管、それ から肺についてもやる方針で対策としては動いております。 次に、先生の言われる読影の医者の低下というのは、これは非常に目を覆いたくなる ような現状でございますので、やはりそれを早急に立ち上げて広げなければいけないと 思っております。 以上です。 ○垣添座長 笹子委員、臨床の現場から丸山委員が提起された問題に対して何かござい ますか。 ○笹子委員 丸山先生がおっしゃることはよくわかります。読影だけではなくてレント ゲンの透視というのは、やはり撮ることの技術というのがありますね。どうやって前壁 をうまく出すとか、上の方をうまく出すとか、そういうことに関する技術が、だんだん やれる人が減ってきているという御指摘はたしかだと思います。 事業として検診を考えるときに、エビデンスを持っているものとしてはレントゲンし かない。内視鏡に関しては検診として死亡率を減らすということに関するエビデンスと いう意味では研究段階という評価にしかならないんではないかと思います。そういうふ うにしてこなかったからです。そうだとすると、事業としてこれを提唱するのであれば、 良質の胃透視撮影ができる人を確保するというのは、おっしゃるとおり事業として必要 な部分だと思います。ただ、臨床の現場でやっている人たちが、事業として理解して取 り組むということはできるかもしれませんが、普通の臨床の中で興味を持っている人が ものすごく減っていることは、残念ながら事実です。 ○垣添座長 祖父江委員。 ○祖父江委員 先ほどの説明でちょっと飛ばしたところがありまして、資料2の26ペー ジ目なんですけれども、ここに「胃がん検診における受診者の負担と不利益」というこ とで、先ほどの検診方法別の偽陰性率、感度の1−という数字ですけれども、それを掲 げています。 胃のX線検査が20〜30%、胃の内視鏡検査16%、これが細川先生の示された1−感度、 すなわち偽陰性率の値です。胃のレントゲンに比べて同じ程度か、あるいはちょっと低 いという感じのデータであります。 ほかを説明させていただきますと、胃のX線では、スクリーニングにおける偶発症の 頻度等を掲げていますけれども、これは文献の中で記述が見つけられる範囲内での話で ありますけれども、バリウム誤嚥ですとか、排便遅延ですとか、あるいはバリウムによ る便秘・イレウスということがあります。胃の内視鏡では偶発症の頻度がこの程度であ りまして、出血・穿孔等もあります。 胃のX線に関しては、大きな有害事象ではないという判断をして、有効性に関しての レベルでもってBと判断したということであります。 ただ、高齢者においてバリウムの誤嚥とか、あるいはイレウスというような問題が起 こっていますので、その点の考慮が十分ではなかったのかもしれません。この辺りが追 加の点であります。 ○垣添座長 ありがとうございました。坪野委員、公平な立場で、今の内視鏡とレント ゲンのことに関して何か御発言はありませんか。 ○坪野委員 ちょっと考えさせてください。別件で1つコメントをよろしいですか。 ○垣添座長 どうぞ。 ○坪野委員 先ほどの受診間隔のことなんですけれども、市町村のがん検診の実施体制 が大きく変わらないことを前提にして、しかも極めて受診率が低くとどまっている現状 を踏まえると、やはり検診の効率化という点で、場合によっては受診間隔を延長して、 その分同じ財政費用で、より多くの人たちを積極的に受けていただくということが重要 になってくるかと思います。 先ほどの御報告ですと、年1回ということで、例えば2年に1回という可能性につい ては、余り議論しないということでしたけれども、私の記憶する限りでは、いろいろな 症例対照研究などで、必ずしも受診間隔が長くなると有効性が大きく違うという形には なっていないので、最終的にどうまとめるかはともかくとして、一応実際のデータに基 づいて議論する価値はあると思います。 ○垣添座長 検診間隔は、私も議論すべきだと思うんです。受診率は御指摘のように大 変低いのを高める上の一つの重要な手法ではないかと思います。ただ、それが学問的に 大変具合の悪いことであれば、そうはできないと思いますが、その辺りに関して、大内 委員は、いろいろ御経験はおありだと思いますのでお願いします。 ○大内委員 受診間隔については、大変重要な課題だと思います。がん検診費用に割く 財源、これが今のままでいけば、町村の財政支出に関わってきます。それは受診率の向 上にとっても非常に大きなファクターになっています。 それから早期がんの比率が落ちるのか落ちないのかとか、そういった費用効果分析の データがあればよいのですが、例えば乳がんについては、そのデータをお示しして、2 年に1回としたわけです。それはマンモグラフィーという検診が視触診検診に追加され たわけですので、その分の支出増加もあります。何よりもそれで救命効果が高くなると いうことを示さなければいけないので、恐らくは文献としても出ていると思いますので、 胃がん検診について、それぞれの検診法について、そういうデータがあれば、是非検討 していただきたい。 この検討会では、恐らく将来を見据えて、胃がん検診がどうあるべきかを議論される と思いますので、坪野先生が言われたように、是非私は検診間隔について現状維持では なくて、より踏み込んだ議論をしていただきたいと思います。 ○垣添座長 先ほどのX線と内視鏡の話から離れていきますけれども、検診間隔の問題 は極めて重要と思いますが、祖父江委員、今の御指摘から、もう少し発言していただけ ませんか。 ○祖父江委員 記述してあるとおりなんですけれども、2〜3年継続して効果が持続す るということも数値の上からは示されていると思います。ほかの検診なんかに比べて、 例えば肺がん検診なんかですと、確かに1年以内に受診した場合にのみ減少が見られて、 2年目間隔の検診というのは余り有効ではないということが示されていますので、それ に比べると検診間隔を広げた場合の効果というのは、相対的には維持されているという ような判断もできると思います。 ○垣添座長 乳がんですと、2年に一度とか、アメリカでは子宮頸がんだと3年に一度 という話がありますね。それでいて胃がんは毎年と、ほとんどアプリオリに言っている のはどうしてですか。 ○祖父江委員 毎年受けた場合に、死亡率減少効果があるという証拠はありますという ことを申し上げたかったわけです。間隔を延ばしたときに、その効果が維持されるとい う証拠もある程度あります。 ○垣添座長 わかりました。丸山委員どうぞ。 ○丸山委員 参考になればと思って、消化器集団検診学会の平成15年度のレポートを御 紹介しますけれども、平成15年度は、受診者が597 万人強です。3,744 人のがんが発 見されています。その中で大体占める割合はいつでもほぼ同じですけれども、早期がん の割合がこの年度は69.5%です。 その中で、初回発見例というのが20.1%です。751 例。前の年にも受診しているとい う人が2,178 例で58.2%です。2年前に受診したという人は418 人で11.2%です。3 年前受診が158 人で4.2 %。それから4年以上前に受診したというのは239 人で6.4 %です。この結果は、レントゲン診断の精度は高くはないと言えます。しかし、見方を 変えれば、これは検診は一度ならず、繰り返し受診すればかなりの数の早期癌が発見さ れることを示しています。 もう一つ言っておきたいことがあります。それは、国立がんセンターにはがん検診の 諸学会でリーダー的な存在の方がいないということです。例えば、斎藤委員は、今のが ん検診学会の理事ですけれども、先生が理事になられたのは、がんセンターに来られる 前ですね。弘前時代ですね。国立がんセンターの職員、医者の中でほかのがん検診学会 で役員をされている方はいますか。 ○森山委員 ほかのというと。 ○丸山委員 例えば、消化器がん検診学会とか、がん検診学会とか、人間ドック学会と か、胃がんの検診を目的の一つにした学会が5つ、6つありますね。それらの学会の役 員をやっている方は、斎籐委員を除くと、どなたもいらっしゃらないでしょう。 そういう状態でがんセンターが検診の必要性やレントゲン検査の有効性を全国発信で きる状態には私はないと思います。それから放射線技師の場合も同じですね。都内で言 えば、国立病院や都立病院の放射線技師たちで、私が支部長をやっている1都9県の日 本消化器がん検診学会関東甲信越地方会会員はほとんどいません。 それでは、関東甲信越地区で胃がん検診を行っている医療機関の中で、当時の日本消 化器集団検診学会関東甲信越地方会(現在は日本消化器がん検診学会関東甲信越地方会) に入会している放射線技師はどのくらいいるかというのを1都9県で調べさせました。 このデータは平成14年6月14日現在のものですが、そうすると、調査施設数1003の中 で、この学会に放射線技師が入会している施設数は328で、32.7%でした。さらに、こ れら328施設の中で、日本消化器集団検診学会の認定技師が在籍しているのは135施設 しかありませんでした。したがって、全調査施設数を分母にとると、認定技師が在籍し ている割合は13.5%です。この結果から見ますと、胃がん検診は日々行われていますが、 学会から新しい知識を取り入れようとか、あるいは高濃度のバリウムでやろうとか、あ るいは新しく提唱された8枚法でやろうというところから、一切無縁な形で検診を行っ ている施設が非常に多いのではないかと推測されます。 こういう状態ですので、国立がんセンターが率先して国民に対して啓発的な発言をし、 さらに可能であれば、検診施設の格付けを行う中心になって頂きたい。もう、ガイドラ インは結構ですから、胃がん検診では、そういった具体的なアクションを早急に起こす べきだと思います。国立がんセンターが言うのと、私が言うのとでは、全然インパクト が違います。 ○森山委員 がんセンターの方では実際に検診をやっていなかったわけです。それで、2 004年になって初めて検診というものをやろうとなりました。 ○丸山委員 検診部というのがあったでしょう。 ○森山委員 とっくになくなっています。 ○垣添座長 あれは検診をやっているわけじゃないでしょう。 ○森山委員 やっているわけではなくて、そういう面では、先生が言われたとおり、検 診に関しては、実際に力もなかったし、何もやっていなくて、やっと2004年から検診の ことをやろうということです。 ○丸山委員 でも影響力は甚大です。 ○森山委員 それはそうです。それで先生が言われたとおり、今後頑張りたいと思いま す。○丸山委員 追加でよろしいですか。 ○垣添座長 どうぞ。 ○丸山委員 例えば、王監督がありましたね。あのときにペット検診を年に2回受けて いたと言っていました。では早期がんはペットで見つかるのかということに関して、が んセンターはきちんとした情報を発信すべきだと思うんです。 ○森山委員 それについては発信しておりまして、今、反響がめちゃくちゃ来て取扱い に困っております。 ○垣添座長 どうぞ、斎藤委員。 ○斎藤委員 先ほどの芳野委員の現状との乖離をどうにかしてくれという話なんですが、 これは現状をそのままにするという考え方が間違っていると思います。 先ほど示された対策基本法の10ページにも、17条の最新の治験に基づき有効性が高 いと認められるがん検診は地域において検診の項目に位置づけるとあります。これは明 らかにエビデンスのことを言っています。エビデンス・ベースドでやるわけです。エビ デンス・ベースドでやることの意義はここで改めて言いませんが、あえて一言で言うと、 御存じのように、検診の有効性というのは、研究をやってみなければわからないわけで す。 恐らく胃の内視鏡はいいとは思うんですが、実際に細川先生の指摘では二十数%、C 領域に関して30%見落としがあるといっている。しかもそれは検診の話ではなくて、臨 床診断の内視鏡でそういうデータが出ているわけです。これは結構重い話でありまして、 それをちゃんと検証するというスタンスは必要だと思います。 このレビューの際に、網羅的に論文を探したんですが、精度評価すらX線との比較に 耐えるような論文はただの1つもないんです。ですから、全く証拠がないんです。これ は我々の予想と全く反することで、こうなりますと、内視鏡の精度をサポートしように もサポートしようがない。 もう一つは、過剰診断の問題があります。がん予防検診研究センターのデータを分析 しますと、内視鏡でたくさん胃がんが見つかっています。1%位見つかっています。男 女合わせると差はないんですが、男性に関しては見つかっている数が、疫学的に計算し て予想される期待値よりも統計学的に有意に高いんです。これはやはり過剰診断を強く 示唆するものでありまして、その影響がどのぐらいあるかわかりませんが、そういう意 味で、改めて言うまでもなくエビデンスが絶対に必要なんです。 ですから、まずは無 条件に拡大していくのは慎むべきことだと思います。やはりエビデンスを出すような、 あるいは少なくとも精度比較ができるような研究をすべきだと思います。 そういうわけで1つも研究がないので、今、がん予防検診研究センターでX線と内視 鏡の精度の比較試験を始めています。ただし、これは我々の研究で自己完結的に結果が 提示できるというものでは多分ないので、恐らく内視鏡学会の先生方が、やはり事実的 にそういう研究に参加していただけるという条件が必要になるかと思います。 ○垣添座長 まず、芳野委員、それから森山委員お願いします。 ○芳野委員 先生のおっしゃるとおりだと思います。エビデンスがないということは仕 方がないと思います。ですけれども、実際の状況、それからエビデンスをつくるのにこ れからどれだけ時間がかかるかという問題があるかと思います。 もう一つは、また同じことを繰り返して申し訳ないですけれども、発見率と早期がん の比率と、内視鏡粘膜切除率といった問題があるかと思います。日本消化器内視鏡学会 でも胃癌の内視鏡検診に関する附置研究会をつくり、来年の4月から始めることになっ ています。ですけれども、結果が出るのがいつになるのかわかりません。ですから、今 のレントゲンを撮る人の教育の問題、指導者の問題ということもあるかもしれませんけ れども、それもいつできるかわからないし、非常に問題点の多いところではないかと思 っています。 ○森山委員 あと、内視鏡のことで補足したいのは、レントゲンはまずそういうことは ないと思うんですけれども、内視鏡の場合、たまたま突っ込んだ真ん前にがん病変があ ったら初心者でも小さいがんを見つけることができます。非常に早期のもので、色が変 わっているからとりあえずつまんでみたらがんが出た。実際問題色が変わっている程度 のがんというのは、進行がんまで育つのかどうかわからないわけです。レントゲンでは それは発見できないですから、それを称して内視鏡の方がいいと言っているんです。 ○垣添座長 斎藤委員が先ほど過剰診断と言われたので、そのことを指しているわけで すね。 ○斎藤委員 かもしれないということです。 ○森山委員 だから、小さいものは見つかるんですけれども、それが長生きに役だって いるかどうかというのは、また別の問題で、やはり分けて考えないといけない。内視鏡 の方の人の方がレントゲンでわからないものをおれたちが見つけたからという言い方が 多いんです。逆も勿論あるわけです。 ○笹子委員 今のポイントは、よく内視鏡の先生が言うことです。胃を全部残したまま でがんが見つかるのは内視鏡の方が多いんじゃないかという感じですね。それも余りは っきりしたデータを見たことはありませんけれども、そういうものをもし評価されるん であれば、胃が全部残ったままでの生存期間といいますか、全部胃がある生存、要する にイベントとしては胃を切ってしまうことが起こったか死亡というものでそういうのが 改善できるかという評価をされれば、そういうことにおいては内視鏡のメリットがある というのは将来出てくると思います。 ○丸山委員 笹子委員に質問なんですけれども、私は癌研時代に経験して、これは論文 になっていると思いますけれども、私が著者ではないので、私自身は別冊を持っていま せんが、バイオプシーを何回かやりまして、これは明らかにがんだという症例で切除し ますと、当時癌研は全割はやっておりましたが、どこを探してもがんがないという例が、 10例に満たない数でしたが、ありました。 もう一つは、外来でのバイオプシーでがんだったというので、入院してもらい、再度、 バイオプシーをしたところ、がんは証明されませんでした。20年以上前のことです。そ の後、入院中に数回バイオプシーをしましたが、結果はがん陰性となり、手術を中止し て退院してもらいました。さらにその後、3年くらいは検査を継続しましたが、がんは 証明されませんでした。この方は毎年年賀状を送ってくれますが、「まだ生きています」 と書いてよこします。それからもう20年ぐらい経っているんです。そういう例は、がん センターにはどのぐらいありますか。 ○笹子委員 数はわかりませんけれども、実際に2けたぐらいはあります。 ○森山委員 2けたでも50ぐらいはあると思います。ちょうど私がやっているときも、 佐野量造先生がいたときに、そういう症例がかなりありました。バイオプシで取れてし まったのかもしれないのか、潰瘍の場合には潰瘍と一緒に崩れたのか、かなりの数はあ りました。 ○丸山委員 飲酒歴なんかと関係するかと思って、例えばウオッカとかラムとか、ああ いった強いのを飲んだら、それきりなくなってしまうのではないかという仮説は立てた んです。内視鏡が小さいものが見つかるから、どうだレントゲンはできないだろうと自 慢されても、そういう事実の積み重ねをやっていくと、がんは途中でなくなってしまう 場合もたくさんあるのだろうと考えられます。 ○垣添座長 芳野委員どうぞ。 ○芳野委員 内視鏡にて赤いというのは、どのぐらいの大きさがあるかということです ね。内視鏡で赤いと見えるものの大きさをいろいろ調べてみますと、3ミリ以上です。 中村恭一先生の論文を見ますと、臨床的に見つかるのは、3ミリ〜5ミリ以上のものと しています。その後はそれは癌のままほとんど変わらないと思います。だんだん大きく なると思います。それが今の44か月かかるか、10年かかるか、そういう問題だと思う わけです。一方、3ミリより小さいものは、お酒の影響だとか、胃炎の影響で脱落する かもしれません。臨床的に見つかるものでなくなる病変は、極めて少ないんではないか と思います。 がんセンターも五十何例あるということを言われましたが、先生たちが診断したがん というのは、ものすごいたくさんあるわけですから、それから比べると非常に少ないと 思っています。 ○坪野委員 先ほど事務局から鳥取の一部で一次スクリーニングで内視鏡を使っている ところがあるという話でしたが、ほかの市町村でも同じようなことをやっているところ はあるんでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 参考資料の分厚いものの163 ページをごらんいただきたいと思い ます。 163 ページの5番のところに、国の指針以外の方法による検診ということで、全国の 市町村からの報告ということですが、胃カメラ検査による検診をやっているというとこ ろが65市町村上がってまいりました。率にして2.9 %という状況です。 ○垣添座長 そろそろ時間が迫ってまいりましたが、今、フリーディスカッションの中 で胃の内視鏡検査のこと、それから胃X線検査の読影医師、撮影技師、あるいは医師や 技師の養成の話、それから対象は40歳以上でいいのか、それから毎年実施でいいのかと いったことをいろいろ御議論いただきました。これはまた引き続き議論いたしますが、 もう一つ議論していただかなければいけない問題として、精度管理のことがあると思い ますけれども、これに関して大内先生、何か御発言がありますか。 ○大内委員 先ほど来、議論がありますが、例えば胃X線検査においては、撮影する技 師の問題、それからできた写真を読む医師の読影の問題もあります。私自身は、乳がん 検診にマンモグラフィーを導入するに当たって97年からこのような講習会を立ち上げ て、99年に完成しました。それが功を奏して2000年からのがん検診指針の一部改正、5 0歳以上にマンモグラフィー検診を導入するということになりましたが、当時厚生省か らの要求は、すべての都道府県において撮影する技師、それから読影する医師が少なく とも1人以上、できれば10人ということで、そのラインをクリアーしたのが99年です。 その時点で読影医師が全国で500 名以上に達しました。 現在は、直近のデータですと、医師も技師も6,000 名を超えております。その事業に 関しては、先ほど森山先生から御紹介があったように、マンモグラフィー検診精度管理 中央委員会というNPOで恒常的な精度管理のサポート体制を行っております。 実は、日本消化器がん検診学会というのがございまして、昨年から私がその精度管理 委員会のオブザーバーとして参加しております。それは恐らく消化器がん検診において も似たような精度管理ができないかということだと思います。 先ほど、三浦課長からありましたように、乳がん、子宮頸がん検診のときの議論の中 で、がん検診の精度評価、それを事業評価として位置づけられましたが、そのときに提 示されたのが、プロセス評価です。それは撮影する技師や読影する医師、それから検診 実施期間、施設そのものの評価をしましょうということを重点に置いて、それをクリア ーしているところが検診に参加できるという枠組みで動いたと思います。 ですから、先ほど丸山先生が危惧されたような、安かろう、悪かろう検診というもの をできるだけなくすためにも、できれば胃がん検診において、同じようなシステムがで きないかどうかというのを私は望んでいます。 ○垣添座長 ありがとうございます。斎藤委員は検診学会の理事の立場としても、精度 管理に非常に関心をお持ちだと思いますが、御発言をお願いします。 ○斎藤委員 学会の立場から行くと、精度管理に関するNPOに関しては、まだ生煮えの 状態で、大内先生から貴重なアドバイスをいただいておりますが、まだ問題があるんで す。 これからそれを軌道修正することが必要かと思います。しかし、目指している方向は 悪くないので、できれば推進していきたいという考えです。 後者ですが、今年から精度管理のマネージメントの研究班が立ち上がりまして、まだ 全くデザインの緒に就いたばかりで、ここで申し上げるべき実績は全くございません。 ただ、幾つか現状の逼迫した安かろう、悪かろうを防ぐためのプランはありますので、 そういったことを比較的短期の間に生かしていけるようにやっていきたいと思います。 今までの各検討会で、部分的に精度管理の話が行われてきましたが、ここの胃がんの シリーズではどういう扱いになるかわかりませんが、できればこの中でもある程度の時 間を割いていただければ、その時点でできる提言、あるいはデータを提示したいと思い ます。あるいは、別個にそういう機会を設ければいいのではないかと思いますが、そう いった機会が来ましたら提示したいと思います。 ○垣添座長 今日はフリーディスカッションで胃がん検診にまつわるいろんな問題点を お話しいただきましたが、幾つも問題点があることは、もう明らかになってきました。 そのうちの1つとして精度管理というのは、私も非常に重要な問題だと思いますが、こ れは今後、場合によってはヒアリングあるいはきちんと議論をする場を設けたいと思い ます。 森山委員どうぞ。 ○森山委員 これからの精度管理でも、私は是非必要だと思うのは、先ほど言いました ように、医者の方が急激にレントゲンや何かをやるのが減っているわけです。そうする と、かなり技師がいい写真を撮るかどうかということが問題になってきます。 そうすると、今、技師はレポートを書けないんですけれども、レポートを必ず二次読 影する、それから二次読影には医者が関わる。それから責任は医者がとるということで、 技師に下読みのレポートを書かせるというシステムが必要だと思っております。自分が 読むようになると初めて絵の悪さということに対しての認識ができ、愕然とするんです。 そういう制度もどこかで取り入れていかないと、現状では、医者の方はどんどん減って いくと思いますので、是非考慮にしていただきたいと思っております。 ○垣添座長 どうぞ。 ○大内委員 マンモグラフィー検診の精度管理を目的に、まず放射線技師が受講すべき 撮影技術講習会のときに、技師にも試験を課しました。300 点満点のうち、100 点がマ ンモグラフィー読影試験として入っています。つまり、技師がいい写真を撮らないと医 師は読めないわけなので、それは比重も大きくしていますし、やはりいい写真ありきで 次に読影ということになります。これは精度管理の根幹だと思っております。 技師にどのような資格を与えるかということが議論になろうかと思います。これは法 律に関与すると思います。日本医師会の先生もおられますが、医師法上は医師が行うこ とになっています。ただし、医師の監督の下に、どこまでできるかということで、いろ んなことが可能になるかと思います。例えば細胞診検査技師のような、そういった形の 枠組みで変えることができれば、よろしいかと思います。 ○垣添座長 内田委員、何か御発言はありますか。 ○内田委員 医師偏在とか、医師不足とか、いろいろ言われて、やはりほかの職種の方 のある程度の協力というのは、これから必要になってくると思います。その辺のところ は、基本的に医者をどんどん増やせばいいという話ではないので、今、あるマンパワー を活用する必要が出てきますから、その中では十分な研修と、あるいは最終的には先ほ ど話があった医師が責任を持つとか、その辺の話は、これから詰めなければいけないと 思いますけれども、とにかくいろんな職種の方の協力を得ながら効率的に精度管理をし ていくことが必要だと思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。あと、今日は、先ほど祖父江委員から御報告い ただいたエビデンスがないということで、ペプシノゲン法あるいはヘリコバクターピロ リの抗体の話は全然議論されていませんけれども、これに関して何か御発言をいただく ことはありましょうか。よろしいですか。 それでは、今後、あと何回やるかはまだ決まっていないとは思いますけれども、今日 いろいろ御議論いただいたところから幾つかの問題点を拾い上げて、次回以降ヒアリン グあるいはじっくり議論するような課題を出したいと思います。これは座長と事務局の 方に御一任いただければ、それを選んで次回以降、もう少し議論を深めるということに させていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。 (「はい」と声あり) ○垣添座長 ありがとうございます。 それでは、ほかにその他ということが議題に挙がっておりませんけれども、何か御発 言いただくことはありましょうか。 どうぞ。 ○丸山委員 厚労省の方に伺いたいことがあります。今、最後の前に問題があった放射 線技師のコミットの仕方をどうするかということについてです。過去20年ぐらい、我々 関係者が心配してきた問題の1つですがマンモグラフィーの場合には、そのレポートを 書くことが技師は法的に可能なのですか。それが問題なのです。例えば、胃がんの検査 技師がバリウムを使って検査をするというのは、それこそ憲法9条の解釈と似たような ところがあります。医師法の17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」と いう厳然たる法律がありますね。それから、診療放射線技師法26条では、「診療放射線 技師は、医師又は歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に 対して照射してはならない」とあり、26条2で「診療放射線技師は、病院または診 療所以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、次に掲げる場合はこの 限りではない。二 多数の者の健康診断を一時に行う場合において、医師又 は歯科医師の立会いの下に百万電子ボルト未満のエネルギーを有するエッ クス線を照射するとき」と書いてあります。しかし、実際には施設検診はとも かく、住民検診、特に車検診では、医師が立ち会って検査を行っているところは、ほと んどありません。私の知る限りでは、甲府にある社会保険中央病院の車検診では必ず医 師が車に同乗して検診をやっている唯一の医療機関です。大部分の医療機関では、医師 は検査に立ち会ってはいないと認識しています。 しかし、これが違法であるかどうかの解釈については意見が分かれるところですが、 放射線技師が後ろめたい思いで仕事に従事しているということについては疑いの余地は ありません。将来、放射線技師の方が一次読影と申しますか、異常所見ののチェックな どを行うことの是非、それから医師の立ち会いがなくてもX線を照射して検査ができる という法的な立場、などのことを近い将来法的に可能にすることを厚労省は考えておら れるでしょうか。将来、放射線技師は今のままで実害がないからいいとするのか、それ とも医師法17条の改定とか、あるいは診療放射線技師法26条を放射線技師が法的な根 拠を持って、自信を持ち、後ろめたさを感じないで、X線検査ができるように法改正を すべきだというような発想は厚労省にはないのでしょうか。 ○神ノ田課長補佐 ただいまの御発言につきましては、資格法の解釈の問題ですので、 また所管課に確認した上で、次回以降整理した上で御説明したいと思います。 ○丸山委員 診療放射線技師法の26条2の解釈については、これまで旧厚生省の考え方 を問う試みがなされています。しかし、放射線技師が納得するような回答は残念ながら、 得られていません。現在においても、放射線技師たちは非常に曖昧で後ろめたい気持ち を抑えながら、胃がんの検診に従事しています。大学医学部をはじめとして、医師がレ ントゲン診断をほぼ放棄してしまった現在、思い切った胃がん検診のシステムの改革を しないと、現行の胃がん検診は崩壊する危険があると思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。 坪野委員どうぞ。 ○坪野委員 先ほど言いかけたんですけれども、今、市町村で一次スクリーニングに内 視鏡を使っているところが既に60以上もあるということなので、これはガイドラインに 則って考えれば、必ずしも適切ではないということになるかと思います。しかし、現実 にそれだけの市町村で実施されているということであれば、そういうところのデータを うまく活用して、死亡率減少効果を評価するということも重要だと思います。実際にそ れをどこでやるかとかいう問題あると思いますが、既にそういう現実がある程度あると いうことで、それを活用して必要な評価を行うということも考えるべきではないかと思 います。 それだけコメントいたします。 ○垣添座長 これは、次回以降の検討の中でどこかでデータを出してくれることはあり ますでしょうか。 ○坪野委員 過去の住民台帳を整備して、ベースポピュレーションを作ったりとか、い ろんなことをしないといけないので、すぐにはできないと思います。 ○垣添座長 ちゃんと調べなければいけないということですね。 どうぞ。 ○斎藤委員 今の件に関しては、内視鏡学会の先生方は何十年かかるかわからないとお っしゃいますけれども、研究のフィーザビリティーに関してまだはっきりしていないと 思います。ですから、真面目に取り組むんであれば、やはり研究をするという立場で調 べることから始まるんではないかと思います。 ○垣添座長 この検討会では勿論答えは出せませんけれども、少なくともそのきっかけ になるような方向性は出さないと、いつまで経ってもこの状態が続きますね。 芳野委員どうぞ。 ○芳野委員 内視鏡ばかりがいじめられていますけれども、私は内視鏡学会の理事でも 何でもありませんが、一応、来年附置研究会を始めるということで許可をもらっていま す。ですから、これはとにかく始めるという方向で進めています。 ○垣添座長 是非エビデンスが得られるような研究計画であるように、よろしくお願い いたしたいと思います。 その他、特にありませんでしたら、事務局の方にお返ししたいと思います。 ○三浦老人保健課長 ありがとうございました。大変熱のこもった御議論をいただきま して感謝申し上げます。 それで、次回の検討会でございますけれども、現時点ではまだ決まっておりません。 日時、場所については各委員の日程などを調整させていただいた上で、追って御連絡を 申し上げたいと思っております。次回はまたよろしくお願いいたしたいと思います。 ありがとうございました。 ○垣添座長 ありがとうございました。これで終わらせていただきます。 照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:課長補佐 大澤(内線3942) 主査   森川(内線3947)