06/07/21 平成18年度第3回目安に関する小委員会議事録について 平成18年度第3回目安に関する小委員会議事録 1 日 時  平成18年7月21日(金)13:30〜 2 場 所  厚生労働省第二共済組合宿泊所茜荘 3 出席者 【委員】 公益委員   今野委員長、石岡委員、勝委員、樋口委員 労働者側委員 加藤委員、久保委員、須賀委員、中野委員         使用者側委員 池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員    【事務局】厚生労働省 青木勤労者生活部長、前田勤労者生活課長、             名須川主任中央賃金指導官、             吉田副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事内容 (第1回全体会議) ○今野小委員長  それではただ今から第3回目安に関する小委員会を開催いたします。まずは、事務局 から前回の池田委員からの宿題について説明していただきます。 ○前田勤労者生活課長  1枚資料をお配りしております。賃金改定状況調査における産業別パート比率の推移 ということで、資料の制約上過去2年分ですが、ある年に前年のものとその年のものと を調査しているので、平成17年調査ですと平成16年と平成17年、平成18年調査ですと平 成17年と平成18年ということになります。平成17年の賃金改定調査の産業計は平成16年 が21.2%、平成17年が22.5%と1.3ポイント上がったということです。産業別には、そこ にあるように製造業が平成16年が17.8%、平成17年が18.5%、卸売・小売が16年は20.2 %で17年は22.4%、飲食店、宿泊業では57.3%から58.7%、医療、福祉では29.3%から 30.7%、サービス業では14.6%から15.9%となっており、いずれも前年度より高くなっ ております。  右側は平成18年賃金改定状況調査におけるパート比率ですが、産業計では平成17年 23.2%が18年には24.5%と、この年も1.3ポイント上がっております。産業別にみると 製造業では20.4%が21.3%、卸売・小売では23.1%が24.8%、飲食店、宿泊業では57.5 %が60.5%、医療、福祉では29.7%が29.8%、サービス業では14.2%が15.1%という状 況です。これについては以上です。 ○今野小委員長  前回の宿題について御説明していただきましたが、何か御質問はございますでしょう か。そういった状況ということで池田委員よろしいでしょうか。  では、次に進ませていただきます。前回の小委員会において労使各側から今年度の目 安についての基本的な考え方が表明されたところですが、強調して主張されたいこと、 あるいは追加して主張したいこと、その他ご意見がございましたらよろしくお願いしま す。  まず労働者側から何かございましたらお願いいたします。 ○須賀委員  特段ございません。 ○今野小委員長  使用者側からはいかがでしょうか。 ○原川委員  私どもの方から2枚紙の資料をお配りさせていただいております。これは私どもの方 で行っております中小企業景況調査の最新版でございます。昨日公表したものでござい ますけれども、6月末日時点での景況調査の結果が出ましたのでお出ししました。  この中小企業景況調査というのは全国3,000名の業界の事情に精通した方を景気のモ ニターということで委嘱をしておりまして、この方々から毎月景気に関する報告が届け られるというシステムの調査でございます。1枚目は景況の状況、2枚目は収益の状況 を出しておりますが、1枚目を見ていただきますと、全国と各ブロックの地域別のグラ フ、そして平成18年3月から4、5、6月と4ヶ月の推移をみられるようにグラフを作 っております。  一番左側が全国のここ4ヶ月の景況の推移でございます。これをみますと徐々にマイ ナス幅が拡大しておりまして、この6月はマイナス25.9ということでマイナス幅がこの 4ヶ月で一番悪化しているというような結果となっております。  各地域別にみますと、北海道・東北地方は左から2番目の4月の値でマイナス幅が非 常に大きかったということでございますが、それでもここ2ヶ月は横這いです。それ以 外の関東・甲信越地方から九州・沖縄地方まではほぼマイナス幅がこの4ヶ月拡大して いることがお分かりいただけるのではないかと思います。  それから2枚目の収益状況についてですが、これは左の全国のところを見ていただき ますと、この6月はマイナス30.1ということで毎月一進一退を繰り返しているというよ うな状況であります。ここでも北海道・東北地方と四国地方が4月はかなり悪いという ことがありまして、その後も一進一退ということであります。東海・北陸、近畿、九州・ 沖縄といったところでは、マイナス幅が拡大する傾向がみられるということでございま す。なお、収支状況についてはDIでございますので、好転、悪化の割合を見てみます と、例えば全国では好転が8.6%、悪化が38.7%ということになっておりまして、それで DI値がマイナス30.1となっております。  それから北海道・東北地方ではこの6月の好転が6.9%しかございませんで悪化は42.9 %、これは前年の同月に比べて悪化が42.9%ということでございます。あと、東海・北 陸あるいは近畿でも同様に好転というのは10%あるいは9%、四国では5.2%というこ とで低い訳ですが、悪化は東海・北陸が40.5%、近畿が40.6%、四国は40.2%というこ とでむしろ悪化が高くなっているという結果でございます。この原因につきましては、 原油高、原材料高の影響が広がりつつあるということでございます。また、金利の先高 感も影響しておりまして、これは先行き不安感を招いているということで、我々の分析 ではこの先中小企業の景況はまだ楽観できないという見方をしております。このように 中小企業におきましてはなかなか景気の回復というような傾向はみられませんので、依 然として厳しい状況が続いているということでございます。こういう点を御配慮いただ きたいと思う次第でございます。 ○今野小委員長  他にございますか。 ○川本委員  御報告並びに追加をさせていただきたいと思います。まず日本経団連の方で賃上げに 関する調査をしておりまして、資料にも入れていただいておりますが、昨日中小企業に つきましての賃上げの最終集計結果がまとまりましたので御紹介したいと思います。中 小企業の全産業平均の妥結額、加重平均が3,901円、アップ率で1.54%ということにな りました。これは、昨年の最終集計結果3,743円、1.47%に比べてわずかには増えてはい るものの金額的には5年連続して3,000円台ということになっております。この傾向は、 先に配布されております6月7日発表の大手企業の最終集計結果5,813円、アップ率1.76 %ということで、こちらも5年連続5,000円台という動きでございまして、この集計は 平均賃上げ額で加重平均を出しておりますのでほぼ横這いで推移してきているという見 方を私どもとしてはしているところでございます。  それから、前回の目安小委員会で使用者側の見解として申し上げましたが、賃金改定 状況調査結果の第1表で、「賃金改定を実施しない事業所」の割合は52.4%でございま した。これは5年連続して50%を超えているという状況でございます。5年連続です。 さらにその内訳ですが、参考2の「事由別賃金改定未実施事業所割合」で「昨年は実施 していないし、今年も実施しない予定」の割合が73.5%ということになっております。 実はこの数字は平成15年、2003年以降ずっと7割以上で推移している訳でございます。 こういうことを考えますと厳しい経営環境あるいはデフレ傾向が続いている中で大企業、 中小企業ともにベースアップあるいは賃金改定を行わなかった事業所数が大多数を占め ているだけではなく、最低賃金の影響を特に受けやすい中小零細企業では賃上げすらま まならなくて、しかも厳しい状況にさらされている企業はその状況が複数年にわたって いる可能性が高いということがいえるのではないかと思っております。従いまして、賃 金改定状況調査結果の第4表のDランクのところの上昇率は4年連続してマイナス、あ るいはゼロという状況にございます。こうした経年的な数字の持つ意味を十分に踏まえ るべきだと考えておりまして、今年度は有額の目安を示すことは適当ではないというこ とを改めて申し上げておきたいと思います。私からは以上でございます。 ○今野小委員長  他にいかがでしょうか。 ○池田委員  私からは日本商工会議所が実施いたしました「平成18年度賃金改定状況に関するアン ケート調査結果」の概要を追いかけながら、今年度の目安の議論に関する日本商工会議 所の基本的考え方について意見を申し上げたいと思います。まず、日本商工会議所が実 施いたしました、お手元にお配りしております「平成18年度賃金改定状況に関するアン ケート調査結果」についてです。まず、1頁目は調査の概要でありまして、調査対象企 業数は748、回答数は686、回答率は91.7%となっております。質問事項は、平成18年度 の賃金改定状況並びに地元都道府県における現在の地域別最低賃金の水準についての意 見についてです。ABCDの各ランク、それから従業員、資本金等について書かれて います。  2頁目からは各地域の商工会議所ごとの調査結果でありまして、設問ごとに調査結果 を簡単にご説明しますと、平成18年度の賃金改定状況のうち「一般社員についての賃金 改定の実施状況」をみると、どの商工会議所も「(5)本年度は改定しない(凍結)」の回 答が一番多いということで、割合をみますと6つの商工会議所で60%を超えております。  パート・アルバイトについてはそのどちらかを雇用している事業所がほとんどであり ますが、一般社員と同様に「本年度は改定しない(凍結)」という(5)が一番数が多いと いうことであります。  次に、地元都道府県におけます現在の地域別最低賃金の水準についてですが、3段目 のところのQ2の(2)の「据え置くべき」が、盛岡では回答数が27、福島も25、古河で28 と、昨年と同じで「据え置くべき」という回答数が一番多いことがお分かりいただける と思います。  最終頁は、昨年度の調査結果との比較です。本年度は昨年度と同じ5カ所の商工会議 所に盛岡と宇都宮の2カ所を追加いたしまして合計7カ所で調査を実施いたしておりま す。ご覧になっているデータは昨年度と今年度の最終結果を比較したものであります。 内容につきまして簡単に申し上げますと、昨年度も本年度も一般社員、パート・アルバ イトともに凍結と回答した事業所が最も多くなっております。  また、地域別最低賃金の水準につきましては、「据え置くべき」と回答した割合が本 年度の方が増えているという認識をしていただきたいと思います。  なお、昨年度と本年度の両方で調査対象となっている5カ所同士で結果を比較した場 合でも、今申し上げた内容と同じ傾向が見られたことを参考までに申し上げます。  アンケート調査結果の概要を付け加えさせていただきましたが、このデータを基に今 回の目安審議に当たりまして日本商工会議所の基本的考えを申し上げたいと思います。  前回の小委員会では、日本商工会議所が実施をしている景況調査を基に、中小企業を とりまく景気は依然として厳しく、最近は再び悪化傾向にあるということを申し上げま した。原因は素材価格の高騰による仕入れコストの上昇に対する影響ということを申し 上げましたが、日本企業の大多数を占めております中小企業の現状につきまして地域別 最低賃金を引き上げる状況にはないということです。今日の新聞でも、デフレは本当に 脱却したのかということが書いてありました。原油価格が影響しているのではないか、 原油価格がさらに上がれば景気が下がるのではないか。まだデフレ状況から実際には脱 却していないという記事が出ておりました。  また、本日御説明した各商工会議所の会員中小企業を対象としたアンケート調査結果、 また、厚生労働省が調査されました賃金改定状況調査の結果からも、中小企業をとりま く状況が厳しいことを改めて御認識いただけたのではないでしょうか。これ以上の賃金 引上げは中小企業の経営を圧迫し、結果として雇用に悪い影響を与えかねません。さら に全体的に回復傾向にあります日本経済の中で回復に非常に遅れがみられる地域経済の 足を引っ張る危険性があります。このような状況では日本商工会議所といたしましても、 本年度の目安は賃金改定状況調査結果で最も低かったDランクの賃金上昇率であるゼロ を考慮すべきで有額の目安を示すことは適当ではないと考えております。以上です。 ○今野小委員長  よろしいでしょうか。他に使用者側からございますでしょうか。  それでは御意見をいただきましたので、意見交換をしていただきます。何かございま せんでしょうか。主張で言い忘れたことでも結構です。 ○加藤委員  言い忘れたことではないですが、前回申し上げなかったことで最低賃金の決定に非常 に関連があるといいますか、色々な賃金データなどについてももう一回改めてみておく 必要があるのではないかと思いまして、例えば、第1回目安小委員会で配られた資料No. 2の主要統計資料の初任給の上昇、7頁に記載されておりますが、ここで平成18年度の 各学歴別の初任給が近年に比べてかなり上昇していることに着目しておく必要があるの ではないかと思います。例えば、高校卒の「一律」あるいは「現業」の数字であります が、高校卒の事務・技術の「一律」をみますと353円ということで、平成11年度以降最 も高い数字でして数年ぶりに3桁のアップ額になっています。「現業」についても同様 のことが言えるのではないか、426円でこれも平成11年度以降最も高い上昇額になって いるのではないかということです。初任給がそういった状況でありますし、また、目安 小委員会で示されたデータではありませんが、例えば、アルバイトの賃金についても学 生援護会調べで今年の5月時点でありますが、関東エリア、関西エリア両方報告がござ いますがアルバイトの求人情報に載っている98職種の平均時給ですが、関東エリアでは 1,044円、前年同月比でみますと、プラス49円で5%アップです。関西エリアでも965 円、プラス16円で率に直すと1.7%の上昇であります。  このように初任給やアルバイトの賃金、またパート賃金についても賃金構造基本統計 調査のデータで前年に比べて、これは平成17年のデータで1年前のデータにはなります が、前年に比べて相当高い上昇額を示しています。毎月勤労統計調査でみたパート時給 の上昇額についてもかなりの県でアップしています。例えばDランク県をみても平均を すると、6円ぐらいアップしている。Aランクでは、男女平均でありますが、72円とい う大幅なアップが示されております。目安というのは最低賃金額を決める目安を示すわ けですから、関連する賃金データをかなり注視した議論が必要ではないかと思います。 私どもが申し上げました2桁の目安提示が必要だということの裏付けとして申し上げさ せていただきました。   ○中野委員  上半期の倒産件数は東京商工リサーチからこの間発表されておりまして、地区別にみ ますと東北も11年ぶりに400件を下回っており、低水準になっておりますし、中国は2 年ぶりに300件台に上昇しておりますが、四国では4年連続前年同期比マイナス、九州 では16年ぶりに600件を下回っています。いわゆるDランクが集中している地域におい てもかなり倒産件数が減っているという事実があることを1点申し上げておきたいと思 います。  もう1点は、OECDが昨日ですか、「対日経済審査報告書」を発表しておりますが、 その中で所得から税金などを差し引いた可処分所得が低い相対的貧困層の割合が、2000 年の調査ですが、加盟30カ国のうちアメリカに次いで2番目に高いというデータが出て おります。特にパート・アルバイトなど非正規雇用者の増加が将来の労働力の質の低下 を招く。そして日本の経済成長を引き下げるおそれがあるところまでOECDが指摘し ていることをこの際申し上げて、目安の検討の素材にしていただきたいと思っておりま す。以上です。 ○今野小委員長  ありがとうございました。よろしゅうございますか。 ○川本委員  今の件に関係してまいりますので、1つ申し上げておきます。先ほど7頁の初任給の 数字が出てまいりましたけれども、欄外を見ていただければわかるのですが、一部上場 又はそれに匹敵する大手企業の調査であることを申し上げておきたいと思います。 それからただ今OECDの貧困率の話がございましたけれども、OECDの場合は中位 所得の半額以下の所得世帯が占める比率という定義で、相対的な出し方をされておりま す。一方、世界銀行の定義では1日に2ドル以下の所得で生活している貧困層の割合を もって貧困率とし、絶対的な考え方で出しているという違いがあろうかと思っています。 今言ったOECDは相対的ではありますけれども、その格差の話と、実は国民一人あた りの所得を持つ世帯と比べれば、非常に高い所得の国であって、その中で相対的な比率 を示したものであるということを申し上げておきたいと思います。一概にOECDの貧 困率の高さをもって問題であると指摘できるかどうかは別問題であろうと思っておりま す。 ○中野委員  今の件に関して、世界銀行というのは本当に未開発といいますか、経済発展の遅れて いる国々をすべて対象にしておりますので、こういう定義をしているのだろうと思いま す。OECDは一応の経済発展が、ある一定の水準を超えたところを集めて議論をして いる訳です。したがって、貧困率という定義を用いているのは承知しておりますけれど も、その貧困率を定義した中身についても一定の精査をされた上で、そういう定義がさ れたと聞いておりますので、先進国である日本としてはやはり先進国グループの中での 相対的位置、又は貧困という概念は経済社会における相対的概念だと思いますので、日 本では貧困だけれどもその収入は他の国でいえば高いということはよくある話でありま すので、そういう意味でOECDを参考にしたということであります。 ○原川委員  今、倒産の話が出ましたけれども、倒産の件数がここ上半期では少ないというお話で したが、企業の開業率、廃業率という点もみる必要があると思います。ここ20年ぐらい は廃業率が開業率を上回っている。開業率は3%台だと思うのですが、それに対して廃 業率は5%ぐらいのところで推移していまして、これは中小企業ですが廃業がかなり多 いという状況でございます。企業数からみましても事業所統計調査で2001年には300人 以下の中小企業が法人・企業含めまして469万件あった訳ですけれども、2005年の直近 の調査では約433万件と減っていまして、約35万企業がなくなっているという状況でご ざいます。これは長い間の不況、後継者難等色々あるわけですけれども、こういうこと をみても中小企業の経営というのは依然として状況が非常に厳しいということで、なお かつ余裕・余力がないというような状況であるということを申し上げておきます。 ○今野小委員長  それでは、前回ランクごとに改定率に差をつけるという考え方についてお考えいただ けないかとお願いをしておりましたので、それについて御発言いただければと思います。 今回は使用者側の方からうかがいましょうか、いかがでしょうか。 ○川本委員  前回の小委員会でランクごとの引上げ率に差をつける考え方について検討したらどう かという話がありました。検討させていただきましたけれども、一般論としては、地域 に格差があるときに地域差を考慮した目安をつくっていくという考え方は理解いたしま すが、今年は有額の目安を示さないことが適当であるという見解を私どもは出しており ます。有額の目安を示さないことが重要と思っております。Dランクの状況について、 先ほど申し上げましたけれども、非常に長い間マイナスやゼロといった状況が続いてい るという中にありまして、やはり、Dランクあるいはそういうところの中小零細企業の ことを踏まえるべきだと考えております。 ○今野小委員長  他に使用者側の方でいらっしゃいますか。よろしいですか。それでは労働者側はいか がでしょうか。 ○須賀委員  そういった御指摘を受けまして、前回の小委員会でも今回の小委員会で一定の見解を 聞かせてくれないかという話でありましたので、私どもも検討させていただきました。 そもそも論から申し上げておきたいと思いますが、目安のあり方につきましては基本的 には目安制度のあり方に関する全員協議会の中でやると、おおむね5年ごとに見直しを するということが適当だということに整理されてきたと考えておりまして、その考え方 を基に前回の見直しというのが2003年から2004年にかけて議論をし、そして2004年12月 に取りまとめが行われているところです。お手元の最低賃金決定要覧の中にもその報告 があったと思うのですが、その中には「ランク制度の維持を前提とするならば、これま での慣行(目安は額で示すが、その算定においては各ランク同率の引上げ率となるよう にしてきたこと)が定着していることを踏まえ、当面は現行の各ランクごとの引上げ額 による表示を引き続き用いることが適当」ということが、直近の2004年12月にまとめら れている訳であります。その意味からしますと、確かに昨年も公労会議の席上で同様の 質問あるいは公益委員からの問題意識として提起されたことに対しては認識をいたして いるのでありますが、今回提起されてます課題につきましては先ほど申し上げましたよ うな、長年にわたって慣行としてルール化されている目安の決め方に関して、それを根 本から見直すものであるのではないかなという認識を持っておりますし、これまでの全 員協議会等の経緯からしましても、そうした認識に立てば全員協議会の中で検討すべき 課題であろうと労働者側としては考えます。  また、再三にわたって私どもが申し上げておりますが、現行の最低賃金水準そのもの、 言い換えますと絶対水準に問題意識を持っておりますし、色々なデータの見方、あるい はその参考の仕方等々を含めまして原点に立ち返った議論が必要だとこれまで再三にわ たって主張をしてきたわけでありますが、そうした立場で考えるべきだというふうに考 えてはおります。ただ、昨年、今年と引き続き公益委員の皆様方から指摘がありますの で5年ごとの見直しという全員協議会の基本的なルールにあまりとらわれずに、テーブ ルに着くことについては労働者側としてはやぶさかではないというふうに考えておりま す。いずれにしても、この課題については本小委員会の場はもとより、今年またこの小 委員会の議論を受けて中央最低賃金審議会の場でも議論がされる可能性はありますが、 そうしたところで議論をするべきではないのではないかと考えております。以上であり ます。   ○今野小委員長  ありがとうございました。今回のランクごとで改定率に差を付けることについて、議 論をする価値はあるが議論する仕方がここではない、あるいは中央最低賃金審議会では ない、目安制度のあり方に関する全員協議会でやりましょうという御主張でよろしいで しょうか。 ○中野委員  価値があるということを認めたということではありません。そういう提起があるので その議論はしなければいけないというだけであります。誤解のないように。 ○今野小委員長  思いこみが強かったものですから。 ○杉山委員  前回も申し上げた訳なのですが、全員協議会で何を検討したのかといいますと、これ は表示方法がそれでよいのかどうかということを検討したのであろうと考えております。 ○今野小委員長  今おっしゃられたのは2004年の全員協議会のことですか。要覧176頁の。 ○杉山委員  はい。それはタイトルのところに表示方法と書いてあります。それで、かっこ内で書 いてあることをどう解釈するかということなんですが、これは労使双方ともに毎年、そ ういう第4表のアップ率に基づくということについては反対の立場で意見を言ってきて おります。したがって、そういう意見を言うということは、毎回目安小委員会で何によ ってそれを論議し、何によって決めるかということを基本的に検討課題としているので あって、その慣行として第4表のアップ率で決まるということは少なくとも問題がある。 敢えて言うとすれば、結果的にそれによって決まってきておるという傾向があったと。 それを踏まえて表示方法については、というふうに書くべきであったのだろうと。そう いうものに基づいて、そういうことを決めるというのは慣行では決してない。そうでな ければここで去年も今年も議論していることが誠におかしいことになるので、その辺は みんな理解しているところだろうと思うのですね。ですから、やはり前回申し上げたよ うに、前提としてそこで慣行と書いてあるからどうだという議論はもう労使それぞれ矛 盾したことになるので、結論的には今年もそれを論議するということが目安のテーマな のだろうと、第4表によるのか、第4表によらなくて2桁でいくのか、それとも我々は ゼロとは言っておりませんけれども、Dランクのゼロを考慮して有額の目安は決めない というのが正しいか。まさしく、それが今回の目安小委員会のテーマそのものだろうと いうように思います。ですから、我々もDランクの数字それで決めるべきだと主張した 年もありますし、今年は有額の目安を定めないというのが我々の結論でございますので、 その辺は多少違うんですね。しかし、内容的には同じなんですね。各ランク別若しくは 平均ででている賃上げ率に基づいて決めるべきではないということを言っている訳です、 基本的には。労働者側は2桁と言っているので勿論そうですよね。 ○須賀委員  今、杉山委員が言われたように、色々な指標をみながら、そしてそれぞれが既にここ まで主張してきたことをベースにおいて、それぞれどうあるべきかということをこれか ら決めていく訳なので、確かに公益委員がおっしゃっているような部分を考慮すべき要 素であることは間違いない。それは否定はしません。だけれども、その結果それぞれの ランクごとにどうあるかということが決まるのであって、最初からランクごとに改定率 に差をつけることに関してどう思うかと言われると、それは問題ありですというふうに 言わざるをえませんし、仮に百歩譲ったとして、そういうふうなランクごとに改定率に 差をつけるということであるとすれば、それは決め方そのものをどうするかという根幹 に関わる。したがって、小委員会なり中央最低賃金審議会の場で議論するのではなくて、 もっと根本的なことを議論する全員協議会の方が妥当ではないかというのが私どもの考 え方であります。 ○杉山委員  ちょっと聞きますが、しかし、今のようなことで全員協議会で第4表のパーセンテー ジに基づいて決めるということを決めたら目安小委員会なんていらない。 ○中野委員  そうではなくて、そのことを決めてもですね、賃金改定状況調査結果第4表の全国結 果に左右されるとは全員協議会報告の中には書いてないのです。ですから、その他の状 況を勘案しながらやるということですから、そこにこの目安小委員会の役割があると認 識しているのです。  もう一つは、表示方法という項目における全員協議会の過去の議論をたどってみます と、平成元年から7年ぐらいにかけては労働者側は絶対水準を言ってゾーン方式での決 定を主張したり、様々な表示のあり方について議論してきていると考えております。そ こで一定のルールが定められて慣行とまで書かれている訳ですから、過去の経緯をさか のぼってこの表示方法の議論がされた中身を点検すれば、まさにこのルール化のための 議論が過去行われてきたと考えておりますので、その意味ではかなり重い中身ではない かと思います。しかも、この全員協議会報告というのは、審議会でも了承されている中 身でもありますし、いわば国の公的な文書であります。その中で慣行という、しかも「 慣行が定着」したとまで書かれているということは、他に上位概念のルールがない限り、 法律にもなりかねない、法律と同等の問題ともと言いかねない。慣習法という言葉があ るくらいですから。私が一番恐ろしいのは、目安小委員会でそれを変えたときにある人 が裁判に訴えられて、勝てるのかと。裁判に訴えられることだってあると思うのです。 そういう性質のものではないかと思っておりまして、その重みというものをどう考える のか、私の言ってることは言い過ぎかもしれませんが、しかし、どういう重みなのかと いうのはやはり慎重にお考えいただくべきではないかと思っています。誤解されるとい けませんので付け加えておきますけれども、地域間格差の問題とここでそのことを議論 することを私は分けて考えておりまして、ここで議論することが本当にそういう問題が なくて済むのであればいいのですが、そういう疑念がある以上その疑念について私はき ちんと表明しておかなければならない、そう思っているだけです。 ○今野小委員長  少なくとも地域間格差の問題の議論については門前払いではないということですね。 ○中野委員  それは労働者側の代表が言っておりますように、全員協議会なりしかるべきところで 議論されることであれば、議論には参加しなければならないと思っております。 ○今野小委員長  川本さん何かありますか。 ○川本委員  今、杉山委員が言われたことの繰り返しになりますけれども、私が申し上げたいこと は、それぞれ毎年この場に来て労使それぞれ主張しながら、実は目安がまとまったこと は長い間ないんですよね。それで労使の一致に至らなかった、したがって目安に関する 公益委員見解を出すことについて労使どうですかということで、中身は賛成ではないけ れど公益委員見解を公表することについては了承いたしましょう、やむなしという立場 でやってきたのがもう長年続いてきているわけです。したがいまして、今回のご提案も ですね、私どもは今回あくまでも有額の目安を示すべきではないという主張でございま す。ただ、公益委員として最終的にどうされるかという御判断のときに、従来公益委員 の皆様方が出されてきた考え方を少し地域の格差を考慮したものにしてはどうか、とい うご提案なんだろうという位置付けで考えているところであります。したがって、私も やはりこれはあくまでも、最後に「各ランクごとの引上げ額による表示を引き続き用い ることが適当」というのはあくまでも表示方法の話なのであって、とにかくずっと労使 反対してきていることを重視しないといけないのではないかと思います。 ○今野小委員長  前回の小委員会と今日色々御意見いただきまして、目安については使用者側は有額回 答を示さないということは前回も主張されております。労働者側は2桁の有額回答と主 張されております。もう一つ、こちらが提示いたしましたランクごとの改定率の問題に ついても使用者側と労働者側の御意見はだいぶ違うということでございますので、労使 の意見がかなり開いておりますので、全体会議でこれから先詰めるというのも難しそう ですので、これから公労、公使個別に御意見を伺いながら詰めていっていったらいいの ではないかと思いますがいかがでしょうか。  まだこの場で共通して主張しておきたいことがあれば。 ○須賀委員  進め方は今、小委員長がおっしゃったようなそれぞれの示し方に関して、片や有額回 答を示すべきではない、片や2桁という有額を示すべきだという全然違う思想ですから、 これから先は小委員長がおっしゃったようなことで進めてもらってよろしいと思うので すが、ランクごとの改定率に差を付けるということに関しては、労使の意見は私が聞く 限りそんなに離れているような感じがしなかったのですが。 ○今野小委員長  私が聞く限りでは、大変離れている。ただ、使用者側がおっしゃるのはここで議論し てもいいけれど今年は我々の要求からしたら意味がない、とこうおっしゃっているので すね。ですから根本は大分違う。それからいずれにしてもそこを含めて公労、公使でお 話を伺った方がいいかなと思うのですが。 ○樋口委員  一つだけ事実確認でですね、先ほど労働者側から公労会議でランクごとの引上げ率に ついての差を公益委員側から言われたというような御指摘があったのですが、私が記憶 する限り公労会議だけではなくて、全体会議で最後のところで議事録に委員長見解とい ったものが残っているというように記憶しているので、まず、事実関係として、どのよ うな取扱いが去年なされたのかということについて、事務局から御説明いただけますか。 ○前田勤労者生活課長  中央最低賃金審議会の議事録で7月26日に答申が出されたときに今野会長からは、 「これまでの目安額の決定において、各ランク同率の改定率となる慣行が定着してまい りましたが、今回の審議の過程において、地域ごとの経済実態の違い等から、各ランク ごとの改定率に差をつけるべきではないかという議論がなされました。こういった議論 については、地域ごとの最低賃金の機能の適切な発揮という観点に立って、今後検討す る必要があるのではないかと考えています。」という発言がございました。 ○樋口委員  この会議だけではなくて、その他の場でもこの議論はしてきたというようなことが事 実関係ですね。 ○須賀委員  そこは私の発言から訂正させていただきます。 ○今野小委員長  先ほど私が御提案した進め方でよろしいですか。 ○中野委員  1点だけお願いします。進め方について異論があるわけではございません。ただ昭和 53年から54年にかけて変わっているのです。54年までは各ランクの引上げ率も異なって いる。その後の経過がどうして同率になったのですか、というふうにお聞きをしても、 なかなかその資料もないし分からないと。その時の議論は分かりませんので、そうする とこれを考える上で過去にどういう議論があったかというのは参考にできなかったとい うことがございます。したがって、金額について申し上げるつもりはないのですけれど も、もしこの議論があるのであれば、例えば、なぜランクごとに率まで変えなければな らないのかという議論が公労会議あるいは公使会議で行われるとするならば、そこに関 わる資料といいますか議事録のようなものが将来なければ、なぜ変わったのか、したが って公労会議、公使会議のものを議事録に出せとは申しませんけれども、そのエッセン スのようなものをきちんと整理をして、そしてその最後の目安小委員会の全体会議の中 で将来資料となるように残していただきたいというふうにお願いいたします。 ○川本委員  よろしいですか。今お話がありましたけれども、先ほど私が言ったとおり、労使とも にそれぞれに主張があって、公益委員見解の内容で合意しますといって目安が出ている 訳ではないですよね。あくまでも目安に関する公益委員見解が出ている訳ですから、そ れについて労働者側も使用者側も公表することについてはやむなしという判断をしてき ているわけですから、正式にやり方を変える、変えないの議論というのはされてないと 思いますけれども、事務局の方で確認していただければいいと思うのですが。 ○今野小委員長  54年の話ですか。今、中野委員がおっしゃられた点で一番重要なポイントは、もし差 を付けるようなことがあったならば、なぜ付けるようなことになったかについての理由 を公益委員見解でもいいですが、その中にきちんと入れることが必要だという一般論を おっしゃられた。 ○中野委員  そうです。 ○今野小委員長  一般論ですか。 ○中野委員  一般論です。今回そうなると主張が全然違いますね。 ○杉山委員  公益委員内部での物事の御判断の時に、これが慣行になっているかどうかは分かりま せんけれども、少なくとも使用者側から言えば賛成している訳ではないので、慣行では ありませんよと。慣行であれば毎年言っているような意見自体は言えないことになりま す。それは労働者側だって一緒ではないでしょうかということを申し上げた訳です。 ○今野小委員長  それでは先ほど御提案申し上げました進め方でいきたいと思います。最初に、これは 慣行ですかね、例年どおり公労会議からやらせていただきたいと思いますがよろしゅう ございますか。それでは使用者側委員は控え室でお待ちいただければと思います。 (第2回全体会議) ○今野小委員長  それでは第2回全体会議を開催いたします。まず公益委員見解を提示いたします。事 務局から公益委員見解を配布してください。  よろしいですか。それでは事務局から読み上げていただけますか。   ○吉田副主任中央賃金指導官  平成18年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。  1、平成18年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とす る。平成18年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク4円、Bランク4円、 Cランク3円、Dランク2円。  2(1)、目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成16年12月15日に中央 最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全 員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保 できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。  目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に 際し、上記資料を活用されることを希望する。  (2)、目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低 賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。以上です。 ○今野小委員長  ありがとうございました。公益委員といたしましては、これを中央最低賃金審議会総 会に示したいと思います。よろしゅうございますでしょうか。 (異議なし) ○今野小委員長  それでは引き続いて、本小委員会の報告を取りまとめたいと思いますので、事務局か ら案の朗読をしていただけますか。その前に案の配布をお願いします。  よろしいですか。ではお願いいたします。 ○吉田副主任中央賃金指導官  中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。                             平成18年7月21日。  1、はじめに。平成18年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり 会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開さ れるなど、十分審議を尽くしたところである。  2、労働者側見解。労働者側委員は、景気は確実に回復を続け、企業業績は全体とし て改善が進んでいる一方、労働者生活は置き去りにされ、所得の二極化が加速するとと もに、消費者物価も上昇に転じ、低所得層の生活苦がさらに深刻化しており、低所得層 の改善に結びつく政策対応が急務であると主張した。  労働市場の改善も進んでいるが、雇用形態の多様化が低所得・不安定雇用の増加を伴 って進んでおり、雇用者に占める非典型労働者の比率は、すでに3人に1人の割合に達し ていると指摘し、持続可能な安心して暮らせる社会であるために、「生活できる賃金」 をナショナルミニマムとして保障することが極めて重要になってきていると主張した。  加えて、現在の最低賃金時間額の全国加重平均は668円であり、連合がマーケットバ スケット方式によって試算した若年単身労働者の必要最低生活費(さいたま市で月額 146,000円(時間額840円)、宮崎県延岡市で134,000円(時間額760円))を大きく下回 っており、賃金構造基本統計調査の一般労働者の所定内時間当たり賃金の36.5%の水準 でしかなく、さらに、諸外国と比べ、我が国の最低賃金水準が見劣りすることも大きな 問題であると主張した。また、この数年間の最低賃金の影響率は極めて低く、その存在 感は希薄になってきており、少なくとも、単身でも最低限の生活ができる水準を実現す べく、明確な水準改善を図ってこそ、最低賃金の存在感を社会にアピールしていくこと ができると主張した。  以上の点を踏まえれば、今年の目安決定に当たっては、存在感のある最低賃金とする ために、生計費・各種賃金指標の現行水準や環境変化の動向を踏まえ、二桁台の目安を 提示すべきであり、少なくとも昨年を大幅に上回る必要があると最後まで強く主張した。  なお、今回公益側委員から提起された課題(地域ごとの経済実態の違い等により各ラ ンクごとの改定率に差をつけること)については、長年にわたって慣行としてルール化 されている目安の決定方法を根本から見直すものであり、現行の最低賃金水準そのもの やデータのあり方等も含め、原点に立ち返った議論が必要であり、そのためには、おお むね5年ごとの見直しにとらわれず、テーブルに着くことはやぶさかでないと考えてい ると主張した。  3、使用者側見解。使用者側委員は、日本経済全体が回復基調にあるにしても、地域 間や産業間、企業規模間、さらには同じ地域あるいは同じ産業の企業の間においても、 景況感・業況感にばらつきがみられると主張した。日銀の「地域経済報告」等では、全 体としては着実な回復基調にあるものの、「依然として地域間でばらつきがみられてい る」とされており、すべての地域が同様の状況にあるのではないということに留意する 必要があると指摘した。  中小企業の景況は改善してはいるものの、大企業に比べて遅れがみられるとともに、 地域や業種によってばらつきがみられ、また、企業倒産件数が増加傾向にあるとともに、 資金繰り判断や金融機関の貸出態度判断において大企業と中小企業の間でかなりの温度 差があると指摘した。さらに、原油をはじめとする原材料費が高騰し、企業経営を圧迫 し続けていることなどを背景に、業況判断は再び悪化に転じ、先行き不透明感・不安感 は高まっており、設備投資計画においても、中小企業は前年度比がマイナスであり、単 に現在のみならず、将来的な観点からしても、引き続き厳しい状況に置かれる可能性が あると指摘した。さらに、国際経済情勢、為替や株価の動向、国際競争の激化、ICT 化による技術革新への対応など、企業経営を取り巻く先行きの不透明感・不安定感の原 因には枚挙に暇がないと主張した。  加えて、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇率は、Aランク、Bランクの0.6%に 対して、Cランクは0.4%、Dランクは昨年に引き続き0.0%と、厳しい現状を反映した 結果が出ていると指摘した。さらに、今年の賃金交渉結果をみても、大手企業、中小企 業ともほぼ横ばいで、ベースアップを実施しなかった企業が大多数を占めたということ を意味しており、このことは、賃金改定状況調査の第1表において賃金改定を実施しな い事業所の割合が5年連続して50%を超えていること等からも明らかであると主張した。  以上の点を踏まえれば、今年度の目安は、賃金改定状況調査の第4表で最も数値の低 かったDランクの賃金上昇率である「ゼロ」を考慮すべきであり、有額の目安を示すこ とは適当ではないと最後まで強く主張した。  4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめる べく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに 至らなかった。  5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、地方最低賃金審 議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として 目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の 経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも 表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまと め、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総 会に報告することとした。  今年度の目安額の算定については、基本的には各ランク同率の引上げ率とする考え方 を踏まえつつ、ランクごとの経済実態に大きな相違があるといった特殊事情も踏まえて 総合的に勘案したものである。  また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併 せて総会に報告することとした。  なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容と なっているとし、不満の意を表明した。  「記」以下は公益委員見解と同一ですので省略させていただきます。 ○今野小委員長  ありがとうございました。それではこの案を報告してよろしいでしょうか。 ○須賀委員  日付は今日22日にした方がよろしいのではないでしょうか。 ○今野小委員長  慣例的に21日なんですよね、毎年。 ○前田勤労者生活課長  継続してやっている場合には、0時を越えた場合にも前日の日付でこれまで慣例的に 出しております。 ○須賀委員  了解しました。 ○今野小委員長  よろしゅうございますか。 ○杉山委員  小委員会報告を今読み上げられたような内容でされることについては了承したいと思 います。ただ、この際、一言申し上げておきたいと思いますのは、このように長時間を 要したという点について、私どもの責任もあるかとも思いますけれども、会議の進め方 にもいささか原因があるように思います。したがってその点を指摘させていただいて次 回からの進め方について、参考にしていただければと思う次第でございます。それは、 進め方といたしまして公益委員見解案がまず示されて、それをめぐって労使双方が何回 か意見を申し上げたと思いますけれども、その結論として、公益委員見解案は内部で選 択肢の中から十分検討して選んだ案であって、これしかないんだと、変えられないんだ というのが事務局から使側への最後の御説明だったと思いますけれども、そうであれば 何時間もかけて色々意見を申し上げたのは一体何だったのかということになるだろうと 思います。したがって、公益委員見解案を出す前に、時間の節約を言うならば、三者が 集まって、それぞれ議論をした結果として公益委員見解案が出るのであれば、より納得 性もありますし、我々が言ったことが全部空振りになって虚しい思いをするということ も少なくなるのではなかろうかと思います。以上でございます。 ○今野小委員長  他にございますか。よろしゅうございますか。それでは今、小委員会報告についてご 了承いただきましたので、26日の総会に私から報告することとしたいと思います。  また、目安審議に用いた資料については、事務局より地方最低賃金審議会において活 用できるよう送付していただいていると思いますので確認させていただきたいのですが。 ○吉田副主任中央賃金指導官  はい、この小委員会で使用いたしました資料につきましては全部地方局に送付いたし ております。 ○今野小委員長  ありがとうございます。それともう一つ、今回の小委員会の審議を踏まえ、目安額の 算定における各ランクごとの改定率に関する考え方については、来年度の目安審議まで に結論を出すことに向けて何らかの場で議論を行うこととしたいと考えておりますので よろしくお願いいたします。  他に何かございますでしょうか。よろしいですか。それでは以上をもちまして本日の 小委員会を終了いたします。議事録の署名ですが中野委員と川本委員にお願いいたしま す。大変お疲れさまでした。ありがとうございました。                     【本件お問い合わせ先】                     厚生労働省労働基準局勤労者生活部                    勤労者生活課最低賃金係                    電話:03−5253−1111                          (内線 5532)