06/07/04 平成18年度雇用創出企画会議 第3回議事録 平成18年度第3回雇用創出企画会議 1 日 時:平成18年7月4日(火)15:00〜17:00 2 場 所:経済産業省別館10階1036号会議室 3 出席委員:小野旭委員(座長)、大矢和子委員、二宮隆一委員、樋口美雄委員、        久本憲夫委員、矢作弘委員、八幡成美委員、山川隆一委員 4 行政側出席者:太田政策統括官  (労働政策担当参事官室)山田労働政策担当参事官、矢田政策企画官、小堀室長補佐 川端企画第二係長  (労働基準局)   安川監督課監察官  (職業安定局)   蒔苗雇用政策課課長補佐  (職業能力開発局) 桃井能力評価課課長補佐  (雇用均等・児童家庭局)渡辺総務課長補佐  (健康局)     清原生活衛生課課長補佐    5 議題  「報告書(案)」について   6 議事経過 ○小野座長  平成18年度第3回「雇用創出企画会議」を開催したいと思います。前回までの会議で は、2回に渡って新しいサービス分野における雇用創出等に関する論点を中心に、報告 書骨子案について、議論いただいたところです。本日はこれまでの検討結果を踏まえて、 「報告書(案)」についてを議題として検討いたします。本日は事務局に会議の「報告 書(案)」を作成していただいておりますので、説明をお願いしたいと思います。 ○労働政策担当参事官室室長補佐 最初に、前回の会議で宿題になっておりました各業 種のキャリアパターン等の参考になる能力評価基準について、能開局の方から説明申し 上げます。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  職業能力開発局能力評価課で職業能力評価基準を担当しております桃井と申します。 本日は、職業能力評価基準の概要について、手元の資料に基づいて説明させていただき ます。A4横の「職業能力評価基準」の概要についての1頁の「職業能力評価基準を整 備する背景」ですが、労働者の就業意識・就業形態が多様化しており、労働移動の増大 等雇用システムも変化している中、労働者の自発的な職業能力開発が重要になっており ます。このような中で、労働者が自らのキャリア目標を設定していくには、職業能力に ついての基準が必要となっております。一方、企業においても能力に基づいて適正な人 事制度を運営していくためには、同じく職業能力についての基準を必要としております。 つまり、個人は自らの持っている職業能力、企業は労働者に求める職業能力を、お互い に分かりやすい形で示せるような、正に「社会基盤としての職業能力評価」の仕組みと いうものが、今求められているところです。  2頁の「職業能力評価基準策定の取組み」ですが、こうした状況の中、産業界との連 携の下、平成14年度より職業能力評価基準の策定に着手しております。そして、平成16 年2月には業種横断的な事務系の職種の評価基準が完成しました。その後も業種別の評 価基準の策定を進めており、現在、「電気」「ホテル」「自動車」の他、この会議でも 取り上げられている「ロジスティクス分野」「フィットネス産業」等、23業種が完成し ております。評価基準の策定業種の一覧については3頁に掲載してありますので、後ほ どご覧いただければと思います。  次に、職業能力評価基準とは、具体的にどういうものなのか、簡単に説明させていた だきます。4頁ですが、職業能力評価基準とは、企業等において労働者が発揮すること を期待される仕事上の成果につながる行動と、そのために必要な技能・技術及び知識を 職業別に記述・整理したものとなっております。特長としては、業界のイメージを踏ま えた内容、成果につながる行動に着目、ユニットによる柔軟な構成、ニーズに応じたさ まざまな活用等が挙げられます。  5頁ですが、職業能力評価基準については、必要とされる能力を職務別に整理してい るだけではなく、担当者に相当するレベル1という基準から部長に相当するレベル4ま で、4段階に能力水準を整理しております。また、労働者のキャリア形成の指針となる ように、当該業界で一般的と思われるキャリア・パスも例示をしております。ここで取 り上げているのは、事務系職種の例になっております。  具体的なイメージとしては6頁の「職業能力評価基準の構成」ですが、左上の1番目 の図が全体の構成を示しております。こちらは事務系の経営企画の例ですが、事務系の 職種は経営企画や人事・労務・能力開発といった職種があり、このうち経営企画の職種 にどのような能力が必要かという一覧が左下の2番目の図になっております。この2番 目が職種別の能力ユニット一覧で、能力ユニットとは職業能力をおおむね「課業」単位 で括ったもので、評価基準においては「共通能力ユニット」と「選択能力ユニット」の 2種類を設定しております。共通能力ユニットは、企業倫理とコンプライアンス、関係 者との連携による業務の遂行といった汎用的な能力が該当しております。  一方で、選択能力ユニットはここで挙げているような経営企画の専門、経営戦略の立 案といったものがあり、ここで取り上げているのはレベル3の経営企画専門の能力ユニ ットの例になっております。能力ユニットには、例えば、内部及び外部の経営環境、競 争環境等、多角的に分析して、これに基づき中長期経営計画、組織体制、事業再構築の 方策を作成している等、その仕事において必要な行動と、それに伴う必要な知識を、職 務遂行のための基準と必要な知識として整理しております。こうした能力ユニットと呼 ばれるものが各業種ごとに何十にも渡って設定されているものです。  能力ユニットの例として、7頁、8頁にそれぞれ「フィットネス産業」と「ロジステ ィックス分野」のものを掲載しております。フィットネス産業の例では、店舗運営のレ ベル1の各種会員手続きのユニットと、インストラクションのレベル2のジムにおける 実技指導のユニットを挙げております。  8頁はロジスティクス分野で、運送業務のレベル3の運行計画の策定ユニットと、倉 庫内作業の定温保管作業のユニットを挙げております。こういった評価基準については、 広く各企業等で活用が図られるように、全て中央職業能力開発協会のホームページにお いて公表しており、自由に閲覧、ダウンロードできるようになっております。  9頁ですが、「職業能力評価基準の活用によるメリット」です。まず、労働者のサイ ドからすると、自分の職業能力の自己チェックに活用したり、キャリア目標の設定に活 用することができます。一方で、企業の側からすると、効果的な人材育成や能力に基づ いた人事評価等に活用することができます。労使だけではなく、国や需給調整機関にお いても、能力評価のベースとして各種の評価ツールの整備等に活用することができます。  10頁にこういった評価基準を実際に活用している企業等の取組み例がありますが、企 業においては人事評価・賃金・処遇の見直し、また能力開発や研修体系の見直しに活用 しているケースが多く見られます。また、こういった企業だけではなく、業界団体とい う単位で活用されている例もあります。  10頁に載せているのはスーパーマーケット業とフィットネス産業の例です。スーパー マーケット業においては、こういった職業能力評価基準を参考として、スーパーマーケ ット検定という業界内の資格の見直しを行っております。また、フィットネス産業にお いては、従業員の人材育成やキャリア開発、適切な人材配置やローテーションに活用で きる「育成計画マップ」、「能力レベル別要員計画表」、人事評価や処遇制度への活用 の参考例となる「能力診断シート」等、こういった様式を作成しております。具体的な 様式の例については11頁に掲載しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。  最後になりますが、このように職種・職務別に能力水準に応じて必要とされる、物差 しである能力評価基準の整備や活用によって、企業における教育訓練や研修体系の整備 や見直し、また個人主導のキャリア形成のための目標設定を容易にするような環境整備 に資することとなると考えております。これからもさまざまな業種における雇用創出の 課題の解決の一助となるように、今後ともこうした職業能力評価基準の普及を図ってま いりたいと思います。以上、ざっぱくではございますが、職業能力評価基準についての 説明を終わらせていただきます。 ○小野座長  もし何か質問があったら受けますか。それとも、それは後でまとめてということにし ますか。 ○労働政策担当参事官室企画第二係長  まとめてお願いします。続きまして、企画第二係長の川端でございます。手元の資料 の「新しいサービス分野における雇用創出に向けて〜雇用創出企画会議第三次報告書〜 (案)」ということで、事務局で作成させていただきましたので、これについて説明い たします。1頁は目次になっておりますが、この報告書全体の構成として、第1章から 第6章の6章立てとなっております。第1章は、総論として「新しいサービス分野にお ける雇用創出の期待」、趣旨及び今回この雇用創出企画会議で検討することとされた対 象分野の選定という構成になっております。第2章から第5章については、前回、前々 回と骨子案でお示ししましたが、「情報サービス分野」「健康サービス分野」「ロジス ティクス分野」、最後に「社会人教育サービス分野」と、この4つの新しい分野につい ての雇用創出の期待から課題までが書かれております。この各論については、前回まで の骨子案に各種調査研究のデータを肉付けした形になっております。また、これまでの 会議で先生方から指摘をいただいたことについても加筆しておりますので、ここについ ては課題と、指摘いただいたところについて加筆した部分を中心に、説明したいと思い ます。第6章として、この4分野の横串の課題といったものを抽出して、その課題に対 する雇用・労働施策という形で最後に提言しているという構成になっております。  まず、2頁の第1章です。1の「趣旨」ですが、経済のグローバル化の進展、あるい は国際競争の激化といった状況の中で、サービス分野がその潜在的可能性を発揮して雇 用を創出していくためには、質の高いサービスを安価に提供していく必要があります。 そのためには、各分野の専門性を持った人材が、質の高いサービスを供給することが求 められているところです。そういった点から本報告書においては、今後、サービス分野 の中でも新たなサービス分野において必要とされる人材のあり方、こういったことを中 心に考察して、雇用創出に向けた課題を提唱するというふうになっております。  2の「対象分野の選定」ですが、この対象分野としては消費ニーズの多様化、複雑化 等に対応して、従前、提供されてこなかった財・サービスを新たに開発、提供すること が可能である分野として、以下の4分野について検討を行ったところです。1つ目の分 野としては、(1)の情報サービス分野です。情報サービス分野については、インター ネット利用者の増大、あるいはネットショッピングの普及といった点から、ネットワー ク社会が進展しており、今後はさらに情報の自由なやり取りを行うことができる「ユビ キタスネット社会」の進展、こういった社会が見込まれるということです。3頁ですが、 こういったユビキタスネット社会の進展により、情報サービスに関連した市場の拡大、 あるいは新しいソフトウェア開発、システム開発等、さらなる成長が期待される分野で す。  (2)の健康サービス分野です。この分野は国民の健康への関心の高まりや医療の飛 躍的進歩による長寿化、あるいは団塊の世代の労働市場からの退出による定年退職者等 の増加、さらには生活習慣病の予防の観点からも、この業界は非常に活性化が望まれる 分野です。  (3)のロジスティクス分野です。消費ニーズの成熟化に伴い、多品種・多頻度化の 傾向が強まっている中で、物流業においても多品目化、小口化するといった構造変化が 起きているところです。無駄のない物流サービスへの需要が今後ますます高まってくる とともに、最近では我が国の荷主企業は、物流業務をアウトソーシングする傾向も強ま る可能性が指摘されており、荷主から物流を一貫して請け負う、いわゆる「サードパー ティー・ロジスティクス」の拡大が期待される分野です。  最後に、(4)の社会人教育サービス分野です。経済のグローバル化や国際競争の激 化の中で、今までのOJTや人事ローテーションの中での職業能力の開発に加えて、今 後は外部の専門教育機関を活用して、より高度な専門知識、あるいは進歩する技術を身 に付ける必要性が高まっていくことが考えられるところです。こういったサービスを専 門的に提供する社会人教育サービスを業とする機関が大きな役割を果たすことが期待さ れる分野です。  続きまして、第2章です。先ほど冒頭申し上げましたが、課題を中心に説明させてい ただきたいと思います。頁としては8頁から9頁にかけてです。8頁の3「情報サービ ス分野における課題」ですが、調査によると、この業界はプロジェクトマネージャーと いった職種の者が不足しているといったことを挙げる企業が大変多くなっております。 この点については、「プロジェクトマネージャーの育成を行う時間がない」、あるいは 「金銭的余裕がない」といったことが課題として挙げられており、その育成にかかる時 間的・金銭的余裕がないということが問題視されているところです。これについては、 こうした時間的制約の中で、効率的かつ効果的に能力開発を進めるためには、企業内で のキャリアパターンを明確化して、各職種に求められる能力をきちんと示して、また従 業員が自身の業務状況に応じて、必要な知識を学べる機会を設ける、あるいは知識を能 力として定着させるための職務経験を与えるといった、従業員が自ら能力開発を行い、 業務と関連させながら人材育成を行っていくことが求められるということです。  次のなお書きの部分ですが、骨子案の議論をした際に、この分野は外国人の活用につ いて指摘することが必要ではないかという指摘があったと思います。それを踏まえて、 具体的には技術開発の速度が速い情報サービス分野においては、こうした技術の進展に 対応する観点から、高度で専門的な技術を持つ外国人の技術者を活用したいといった企 業が見られる、しかしながら、我が国においては、外国人は企業における出世を重視す る傾向が強いのに対して、企業側は職場における意思疎通、文化習慣といったものを重 視しており、両者の間には意識のギャップが見られるといった指摘があり、これについ ては、今後、外国人技術者を活用する企業にあっては、外国人を高度人材として、適正 な処遇・報酬で有効に活用し得る仕組みを整えていくといった企業の努力が重要である、 ということを加筆しております。  続きまして、健康サービス分野です。健康サービス分野はフィットネス分野とエステ ティック分野の2部構成になっております。まず、12頁から13頁にかけてのフィットネ ス分野です。「フィットネス分野における課題」ですが、この分野は非正規社員が非常 に多くなっており、賃金、あるいは福利厚生といった労働条件の実態が非常に悪いとい う指摘があります。13頁ですが、従業員の平均年齢を見ても若年傾向にあり、これは入 職した後のキャリアパターンが非常に不明確で、大半のインストラクターが非正規社員 として従事して、また労働条件も悪い中で、将来への不安から早期に見切りをつけて退 職してしまう、といったことが要因の1つであると推察されるところです。  一方で、この分野は若年層向けの今までの画一的なメニューにとどまらないで、中高 年者を対象とした健康状態、あるいは生活習慣病の予防といった観点からも、今後、活 性化が望まれる分野ですが、その際にこれまでの能力にとどまらない、基礎的な医学知 識、運動生理学といった高度な専門的な能力が必要となってくることが予想されるとこ ろです。こうした中で、このフィットネス分野を活性化していくためには、従業員の定 着率が悪い業界ですので、従業員が継続的に雇用される環境を整えていくことが求めら れるのではないかと考えているところです。そのためには、業界として人事労務管理を 向上させることが重要であり、例えば、業界団体等による人事労務管理の研修会の実施 等も有効であるという風になっております。  16頁の下の方ですが、もう1つの柱がエステティック分野です。「エステティック分 野における課題」ですが、この分野もフィットネス分野と同様で、従業員の定着率が必 ずしも高くなっていないという状況です。また、従業員の不満として、基本的な労働条 件に関わるものが多く見られる他、特にエステティシャンについては、技術面を中心に 能力開発への意識は高い一方で、指導者の不足、時間的制約から十分に能力開発が行わ れているとは言えないといったことが起こっているようです。  その一方で、エステティック分野においては、中心となって働いている者はエステテ ィシャンですが、スペシャリストを志向する傾向が強くなっており、サービス業として の基礎的な能力があまり高くないのではないかという指摘もあるところです。さらに、 技術的に非常に高いサービスをしている者と、そうでない者といった差がかなりあるの ではないかといった指摘もあるところです。また、店長等の管理責任を求められる立場 になるまでの期間が極めて短いために、管理者としてあまり十分な経験やマネジメント 能力を身に付ける機会のないままに、そういった職務に就くことになっており、こうし たことが人事労務管理の基本的な部分の問題につながっているのではないか、と推察さ れるところです。  この点について、まず技術面については、業界において教育カリキュラムの作成等に より、技術面の底上げを図るとともに、先ほどのマネジメントについては、人事労務管 理やマネジメント能力を高めるための研修会を実施することも、有効ではなかろうかと いうことです。さらに、この業界に特有の課題ですが、相談機関に対する苦情・相談の 数が非常に多くなっておりますので、こういった技術面の向上と併せて、業界の健全化 に努め、ひいては消費者の信頼に応えていくことが、業界活性化のために不可欠になっ てくるだろうということです。  23頁は3番目の「ロジスティクス分野における課題」です。この分野で課題となって いるのは、「マネジメント能力を持つ人材の不足」が挙げられるところです。このロジ スティクス分野は新しい分野で、今までの倉庫や運送業とは違った業際を超えた概念で すので、調達から生産・販売等市場に至る流れをトータルに管理するものです。したが って、マネジメント能力、あるいは物流の効率化に関する幅広い知識が非常に必要とな ってくる分野です。ただ、現実には十分にそういったことができる人材が育っていない ということです。これについては、例えば物流管理の業務を経験させつつ、あるいはキ ャリアの節目・節目で、Off−JTを行うことにより、ロジスティクスとしての専門 職能力を形成していくことにより、これらの新しい事業の展開に対応する人材の育成を 図っていくことが求められるのではないかという風になっております。  29頁の3の「社会人教育サービス分野における課題」です。社会経済情勢と労働者の 意識の変化の中で、これまでに見られなかった多様な学習ニーズが顕在化しているとこ ろで、特に自己啓発を目指している者の割合が高くなっております。こうした変化に対 応した質の高いサービスの企画・提供を行っていく必要がある訳ですが、そのためには 今までこういったサービスを提供するに当たって、いわゆる教材・講座を企画開発する 担当者がサービス内容を作っていたところですが、今後は色々なニーズを吸収するべく、 講師や営業といった他の職種の者がそれぞれの場でニーズを把握し、総合して、全体と して教育サービスとして提供していくことが必要ではないかということです。  そのためには、日頃より各職種間で緊密な情報の共有を図るとともに、他の職種の者 も積極的に講座の企画のアイデアの提供を行える場を設けるといった取組みや職種間異 動を通じて、前職で培ったノウハウを現職で発揮、あるいは情報共有を行っていくこと が必要になってくるのではないかということになっております。  31頁ですが、今第2章から第5章まで、それぞれのサービス分野の課題について説明 させていただきましたが、第6章はその4つの分野ごとに固有の事情、あるいは課題が ありますが、その中でも共通の、いわゆる横串の課題が抽出できるのではないかという ことで、そこは抽出させていただいております。31頁の1はその共通の課題とは何かと いうことですが、1つはこれらの分野で働く労働者が能力を十分に発揮していくための 就労環境の整備が重要です。もう1つは能力開発、人材育成面での課題ではないかとい うことです。より具体的には、高度で専門的な日々変化する、多種多様なサービスの提 供が求められておりますが、こうしたニーズに的確に対応するために、従業員がそうし た職業能力を身に付けることを可能にする環境を整備することが必要となってくるとこ ろです。  「また」以降ですが、能力開発の重要性は企業、従業員ともに認識はしておりますが、 ことにOff−JTについては、時間的余裕の不足といった点から、十分に機会が提供 されていないという指摘もあります。従業員の長時間労働による能力開発の機会の喪失 が、その要因の1つとして考えられるのではないかということです。したがって、長時 間労働を含めた、これらの就労環境の整備と、能力開発、人材育成面での課題、この2 つの課題を解決することが、業界自身の活性化を通じた質の高い雇用の創出につながる ものと考えられるということです。  32頁です。この2つの課題に対して、2では課題に向けた方策を提唱しております。 (1)の人材育成面での課題に対する方策としては、能力開発環境の整備が挙げられる ところで、調査結果を見ると、企業、従業員ともに能力開発の重要性は認識していても、 職業能力開発を行うための経済的な余裕がない、あるいは特にOJTの場合を中心に、 職場の中に指導者がいないといった問題が見られるところです。この経済的余裕がない といった点については、企業が従業員に対して訓練を実施する場合に、その費用の一部 を助成するキャリア形成助成金、あるいは従業員の教育訓練講座受講費用の一部を助成 する教育訓練給付、そういった助成金制度の活用が有効ではないかということです。  「また」以降ですが、後者については、在職者の能力開発を図るための社会的基盤が 必要となってきますが、それについては公共職業能力開発施設における在職者訓練、あ るいは職業訓練指導員といった者を派遣しておりますので、こういったものの活用も有 効ではないかということです。なお、この「また」の部分ですが、前々回の会議で、官 民の役割分担ということも指摘した方が良いのではないかという意見をいただきました ので、ここについては民間教育訓練機関で対応しているものについてはそれを活用しつ つ、それで対応できないものについては、公共職業能力開発施設を活用するといったこ とを加筆しております。このキャリア形成助成金や教育訓練給付ですが、財源は雇用保 険を使っております。サービス分野の中には、なかなか労働保険に加入できていない部 分もありますので、こういった制度を使う前提として、労働保険制度に加入していただ くよう制度の周知、労働保険加入対策を推進していくことも前提として重要ではないか ということです。  「また」の段落は新規施策ですが、今般の職業能力開発促進法の改正において、実践 的な職業能力を備えた職業人を育成するために、「教育訓練機関における理論面の座学」 と「企業における実習」を効果的に組み合わせて実施する「実習併用職業訓練制度」と いったものが創設されており、この制度は新規高卒者を主たる対象としたシステムでは ありますが、これに基づく施策の推進を通じて、新しいサービスニーズに対応し得る実 践的人材の育成が、企業において積極的に進められる土壌作りが行われることが求めら れるのではないかということです。  最後に33頁です。2つ目の課題である就労環境の整備ですが、これについては従業員 の不満として、賃金の低さを挙げる者が非常に多くなっておりますので、ここは労働関 係法令の遵守をしていただくとともに、従業員に公平感、あるいは納得感が得られるよ うな人事労務管理が当然求められてくるところです。「また」の段ですが、労働時間と いう観点からの就労環境の整備も非常に重要な課題となっており、長時間労働が、十分 な能力開発機会が得られない原因の1つではないかということですが、これについては 今般、職業能力開発促進法を改正しており、労働者の自発的な職業能力開発を支援する ために事業主が講ずる措置として、勤務時間短縮についての配慮規定が追加されたとこ ろですので、これに基づく施策の推進が求められるところです。  また、この長時間労働の是正については、仕事と生活の調和を図る働き方を実現する ためにも、非常に必要性が高いという指摘があります。これについては、労働時間等設 定改善法等の施行により、労働者の健康と生活に配慮する取組みが必要ではないかとい うことです。さらに、現在、労働政策審議会において、長時間労働の効果的な抑制等、 労働時間法制のあり方についての検討が行われておりますので、この会議としても労働 時間法制のあり方について、関係者による真摯な検討を期待したいと付言することとし て、この報告書のしめくくりとさせていただいているところです。駆け足になりました が、以上です。 ○小野座長  最初の職業能力評価基準の概要も含めて、質問がありましたら指摘いただきたいと思 います。 ○樋口委員  職業能力評価基準についてお尋ねしたいのですが、先ほどちょっと出ました国と民間、 あるいは業界団体との関係ということで、これ自身はどこが決定をしてきたものなので しょうか。主体ですね。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  主体については、国が中央職業能力開発協会と協力をして作っておりますが、評価基 準の策定については、内容的には国だけでは作れないものですから、委員会を設けて各 業種の業界団体や企業の実務家の者に参画をいただいて作成しております。主体として は国という答えになります。 ○樋口委員  色々議論があるところだろうと思うのですが、こういったところまで国がやるべきな のか、それとも業界団体が主体となってやって、それをサポートしていくのかというと ころについて、これはやはり国がやるという判断で、この後も今後完成する予定の業種 として、いくつかの職種がありますね。これについて進めていくという予定なのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  国がどこまで関与していくかという役割の問題はあるかと思いますが、各業種に共通 する職業能力の基準はある意味で労働市場のインフラ整備のようなもので、各業界団体 に任せておいて、それぞれ自発的に整備が進むかと言いますと、そこはなかなか難しい ものがありますので、国として主体的に取り組んでいかなければいけないものだと考え ております。 ○樋口委員  国が決めるのが良いのかどうかというのは、特に業種をいくつかということで、全て をやっている訳ではない訳ですよね。選んでやっていく訳でしょう。どういう基準で業 種を選んでいるのだろうかというのは、どうなっているのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  評価基準を作っただけで使われないと意味がありませんので、各業界団体のニーズも ありますし、全体の労働市場を見ながら、そこに従事する労働者の数というものも視野 に入れて、全体的なバランスを考えて、業種の選定は進めております。 ○樋口委員  例えば3頁にある業種ですか。既にやったのと今後のもの、ここのニーズが強く、労 働者の数も多いからこれを選んだということなのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  はい。 ○樋口委員  これは具体的に、どのように普及させようとしているのでしょうか。例えば、助成金 を使う等ということも関連してきているのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  特に助成金のような金銭的な支援とは関連をしておりませんので、正にホームページ の公開、業界団体を通じた周知等といった地道な周知を進めているところです。 ○樋口委員  キャリア形成助成金の指定に、こういったものが参考にされる等ということはないの ですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  キャリア形成助成金は、第三者評価も必要であり、それに活用ということも考えられ るかと思いますが、その辺りの助成金との関連については、今後の検討課題とさせてい ただきたいと思っております。 ○久本委員  同じ点なのですが、職業能力のこういうものを作ること自体、私は非常に素晴らしい と思っているのです。ただ、これの実効性をどう高めるかというのは非常に問題で、そ の場合に1つはいわゆる省庁間の縄張りというものがあって、例えば、文科省との関係 であるとか、他の省庁、経産省との関係であるとか、つまり人をベースにして本当に職 業能力というのをやる場合に、そういうところの話、縦割り行政の弊害みたいなものが やはりあるのではないかと思うのです。国としてそこを乗り越えるようなものをやらな いと。厚生労働省の範囲の中でやってしまうということになると、どうしても大きな限 界があるのではないかと思います。ただ、それは非常に大きな話で、なかなかこの中で はできないのですが、やはり縦割りでやってしまうと厚生労働省の範囲の中だけという ことで、大きな問題はずっと続いているのではないかと思うのです。だから、そういう 検討をしていただきたい。横断的に作るという姿勢を、国として出していただきたいと いう強い希望があるというのが1つです。  もう1つ、それと関係するのですが、例えば、商工会議所であるとか、日本経団連で あるとか、連合等もそうだと思うのですが、そういうところを組み入れるということを やらないと、どちらかというと周辺的な業種での、ちょっと語弊があるかもしれないの ですが、何だかやってはいるのだけれども、国民が必ずしも認知していないと言います か、そういうところがあるのではないか。やはりそれを突破するような何か試みがいる のではないかという気がしています。ちょっと感想ですけれども。 ○八幡委員  だけど、もともと職業能力評価制度を整備しようという話が出てきたのは労働市場の 機能を高めようということで始めたプロジェクトでした。今まで評価基準がバラバラだ ったので。イギリスだったらNVQがありますね。 ○久本委員  そうです。 ○八幡委員  その辺りをもうちょっと能力開発も含めて、はっきりさせようと随分前から能開局で 取り組んできたことです。 ○樋口委員  ただ、イギリス辺りを見ても、むしろ業界団体がやるのを国がサポートすることであ って、国が主体にというのではないですよね。 ○八幡委員  今、ものによっては、そういう形になっているのではないですか。業界の表現で色々 書いてもらって、まとめはそうですよね。 ○久本委員  ドイツ等でも、基本的には業界団体、商工会議所みたいなのが1つあるし、1つは省 庁合同でやりますよ。1つの省庁の中でやり切れないので、合同したような形でやらな いと、やはりこれは動かないのだと思うのです。そういうシステムづくりが要るのでは ないかという気がするのです。 ○八幡委員  かなり動き出したと私は評価しているのですが、これは今まで全然なかったですから。 ○久本委員  だから、評価しているのです。すごい良いことだと思っている。 ○八幡委員  応援してあげないと。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  どうもありがとうございます。 ○樋口委員  良いことだし、広げていく必要はあると思うのですが、これは財源があれでしょう。 三事業。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  はい。 ○樋口委員  そうすると、対象者はそれに加入している、あるいはどのように。後で聞こうと思っ たのですが、あれですか。雇用保険に加入している者を訓練すると、例えば、キャリア 形成助成金は出ますよというようになっているのですか。それとも、それは関係なく出 るようになっているのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  キャリア形成助成金等についても、雇用保険の適用が前提になっておりますので、こ の評価基準で申しますと、事業主全体、あるいは労働者、幅広く使えるものですし、使 っております各事業所の評価の高いものですので、雇用保険三事業で実施する事業とし ても、理解を得られているものだと考えております。 ○樋口委員  ただ、報告書で出てくるように、雇用保険に入っていない者が多い業界。そのときに、 そういった者を対象に、これは使えない訳ですかね。まず、事実関係が今どうなってい るのかという説明はどうなのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  評価基準については。 ○樋口委員  評価基準というよりも、キャリア形成助成金のことですね。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  キャリア形成助成金については、雇用保険の適用が前提になっておりますので。 ○樋口委員  その者が対象。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  キャリア形成助成金ですと、個別企業が受給の対象になります。その企業が例えば、 計画的に教育訓練をやると。そのときの費用の一部を助成するなりという形になってお ります。そうすると、受益者が完全に特定されますので、当然、雇用保険のお金でやる ということになりますと、被保険者が対象でないとできないということになるというこ とです。恐らく、今の能力評価の話になりますと、必ずしも被保険者、要は受益者が個 人という訳ではなくて、出来上がったこの評価基準をみんな使えるということになるか と思いますので、その辺りは完全にコンクリートになるという訳ではない。そういうこ とですよね。 ○樋口委員  だから、そこが雇用保険財源でやる限界で、それ以外の者が増えている場合に、特に そういう業界ではどのように、一般財源から持ってくるしかないのかとは思うのですが、 何かないのですか。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  雇用保険については、どの業界でも基本的に加入していただくというのが大前提です ので、そちらの加入促進を進めていくのが1つの方策かとは思います。もともとそこの 業界の加入率が低いから排除するというよりも、やはり高めていく方向で進めていかな ければいけないのではないかと思いますが。 ○樋口委員  ごめんなさい。今、加入要件の話をなさっているのですか。労働時間20時間以上とい う話ですか。ちょっと理解できなかったのですが、雇用保険の加入促進をとおっしゃっ たのは。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  先ほど報告書の中でも、加入、適用が進んでいないようなものも一部あるという記述 を拝見しましたので、そこを受けて発言させていただきました。 ○樋口委員  それは不法の者ですよね。違法と言おうか、本来入るべき者で入っていない者がいる という問題を解決する、という話ですね。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  そうです。評価基準については、正に担当者のレベルから管理職まで、全て網羅的に 職業能力について記載しておりますので、そこは雇用保険の対象になる者がほとんどだ ったと考えております。 ○八幡委員  これは将来はオキュペイショナルアウトルックとかO*NETみたいな形で、職業紹 介情報にもつながる可能性はある。色々なものをIT化して、将来的にはそういう構想 にはなっていた。その中に、こういう職業能力評価情報も入れようということかと思い ます。 ○職業能力開発局能力評価課課長補佐  職業能力評価基準については、基盤的なベーシックな情報ですので、それだけで活用 していくというよりも、能力開発だけにとどまらず、そういった職業情報も含めて、幅 広い分野に活用していくことが想定されるものです。 ○大矢委員  同じことで恐縮ですが、企業サイドとしてもこういうベーシックなものは非常にあり がたいと思うのです。今後、それを広めていき、又、レベル合せのようなことも是非計 画していただきたいです。このままだと参考程度にしかならないのですが、全体に周知 されてレベルが共有化されていくと、労働市場が流動化して活性化していくと思います ので、是非今後の計画を立てていただければというのが期待とお願いです。 ○二宮委員  「報告書(案)」の第6章なのですが、これはまとめとして非常に大事なパートかと 思います。このまとめの部分で話をするのは今回初めてだと思うのですが、先ほど事務 局の者の説明で、業界ごとの課題を通しで伺っていて、最後に第6章の話を伺っていた 時に、全体の流れがやや飛躍しているかなという感じを受けました。中でも長時間労働 の是正に、かなり頁を割かれているのですが、これまで長い間色々と議論させていただ いた感じとは、やや違和感を覚えるかと思います。例えば、これより前の分析の部分で も、長時間労働そのものに焦点を当てたというところが見当たりません。長時間労働に よって十分な能力開発の機会が与えられていないと書かれていますが、長時間労働と能 力開発の機会がないということを直接結び付けるのも、ちょっと飛躍があるかなという 感じがしています。アンケート等のデータを客観的に捉えたものという感じがあまりし ませんし、一部のデータやコメントを取り上げて、最後にこれだけ論述展開するのは、 ちょっといきすぎかなという感じを受けました。  さらに申しますと、能力開発ができていないという理由が、先ほども課題をサーッと おさらいした中で、指導者が不足しているということと、能力開発に余裕がないという ことだと思います。そういう意味では、能力開発のための時間をいかに確保するか、そ ういう人材をいかに集めるかというのは、どちらかというと個別企業の経営者の問題、 経営者の手腕の問題でもあると思うのです。加えて、デュアルシステム、座学と実習と いうことも書いてありますが、これは大事な考え方だと思います。アンケートでも、マ ネジメントの教育というのが良く出てきます。これは座学だけでは身に付かない。また、 エステやフィットネスのサービスでも、実地訓練というか、いわゆるOJTというもの が重要だと思うのです。  そういう意味では、実際に実地でノウハウを覚えるということの要素が大きいと思い ますし、これらはどちらかというと労働時間の中で行うものなので、むしろ全体の時間 の中でいかにその機会を作っていくかということが、凄く重要なのではないかと思いま す。 やや飛躍があるかなというのと、最後の方で労働政策審議会の話まで出てきてい るので、ちょっとこれはいきすぎかなという感じを私は受けました。 ○小野座長  アンケートの中で、こういうものに触れたのはあるのでしょうか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  今話そうと思っていたのですが、例えば、情報サービスのところで、従業員に対して 能力開発キャリア形成上の問題として、どのようなものがあるかと言ったときに、個別 回答みたいな部分にもなるのですが、「業務が多忙」というのはやはりそれなりに回答 がきているところです。その上で、例えば、システムエンジニアの関係でいくと、「長 時間労働をすることが多いため、たまに早く仕事が終わったとしても、その空いた時間 を仕事の能力開発のために費やそうとは思えない。能力開発のためにも時間がまず欲し い」ということです。  今先生から指摘がありましたように、OJTの中でやるものということになると、当 然OJTは仕事の中ですので、そういう意味で言うと、長時間労働のところと能力開発 がリンクしてこない。それは指摘のとおりかと思います。ただ、その一方で、特に今回 指摘したような中からしますと、OJTだけでなくてOff−JTも含めて、例えば、 全体のマネジメント等というのは、OJTの中だけで育つかというと、恐らくなかなか そこまでというのは難しくて、ある程度そういった理論面のヒントも得ながら、私の経 験の話なのですが、「そういうことであれば、自分の仕事だったらどうなるのだろう」 というように当てはめていったときに、その際に実地の中で磨く等といったことも当然 必要ですが、そういった中で身に付いてくるというところがあるだろうということです。  純粋にOJTの話だけとはなかなかなりにくい部分もあって、これは先ほど先生から ありましたとおり、どういう能力を身に付けさせるかという、求められる能力の性格に よるところが多いかと思うのですが、恐らく座学系の話、あるいは特にここで取り上げ た分野というのは、比較的、中堅層から上のようなところをターゲットに置いていると ころが多い訳です。そういった中で、例えば、社会人教育サービスの講師等というのは、 ある意味で典型かと思いますが、少し自己啓発的な、そういった部分ということになる と、やはりある程度長時間労働という問題が出てくるのではないか、というのが事務局 でこのように書かせていただいた考え方です。  先ほどの関係でもう1点、労働政策審議会の話のところで、ここの部分はやや書きす ぎではないかということで指摘をいただいたかと思います。事務局的に考えたところの 趣旨を申し上げれば、やはり長時間労働、ある程度そういったところで、結局、仕事か ら離れたときに、それは家庭のために使うというのもありますし、あるいは能力開発の ために使うというのもあるだろうと。そういったときに、労働時間法制の問題というの は、ある意味、少なくとも隣接領域としては出てくるのではないかと。  そうしたところで、今ちょうど労働政策審議会で労働時間法制の在り方について検討 している訳ですが、その1つの着眼点と言いますか、課題として長時間労働の効果的な 抑制、あるいは自律的労働にふさわしい制度の創設、これは恐らく想定しているところ は自分で時間のやりくりができるような者で、能力開発やOffの部分を含めて、自分 なりにうまく段取りをつけて、結果的に効率良く働いて、他の部分を効率的にやってと いうことをイメージされているかと思いますので、そういった部分もある程度隣接領域 としては関係してくるところなのではないか。そういった趣旨から、こういった形で書 かせていただいたところです。事務局的な説明としてはそういったことです。 ○二宮委員  今の話の中で、情報サービスで「業務が多忙」というのは、何割の者がそうおっしゃ ったのですか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  失礼しました。今のはざっと見てお答えしたので、個別回答でもらったところです。 「能力開発の時間がない」。これは企業経営者の者に従業員に対する能力開発・キャリ ア形成上の課題ということでお尋ねしたところですが、50.8%が回答をしています。 ○二宮委員  ちなみに、長時間労働と言うと、何時間以上というイメージがあるのでしょうか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  これはなかなか難しくて。恐らく、その意味でいくと。 ○二宮委員  60時間ぐらいですか。 ○政策統括官  30代が4人に1人とかというのが、一応60時間というのが、週にですね。 ○小野座長  二宮委員のご心配は、アンケートに出てきていないものがこの一番最後のところで何 かえらくスペースを割いて書かれているけれどもと言うことです。最新の案の情報サー ビスとエステを見ると、エステは17頁ですが、一番上の行に「時間的制約から十分に能 力開発が」と書いてあります。他の業種についても、そのような調査が何かあったよう に思うのです。それは他のところに入れ込んでくれば、二宮委員がご心配になるような ことはなくて、つながっていくのではないのでしょうか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  他の部分の各論のところも、その辺りの記述を追加するような形にさせていただけれ ばと思います。 ○矢作委員  感想です。31頁の6章の1のタイトルが「新しいサービス分野における雇用創出の課 題」で、これがこの報告書のメインのタイトルになっている訳です。31頁の一番下に「こ れらの課題を解決することが、雇用の創出につながる」と書いてあります。また33頁の 下から3行目に「ひいては雇用の創出にもつながる」と書いてあります。  その前で何を本格的に議論しているかと言うと。これらの解決、あるいは、「ひいて は」の前で議論していることは、大方、現に働いている者の雇用の質なのです。あるい は、これから期待される雇用の質が大方議論されている訳です。新しい雇用を生み出す ことはほとんど議論されていない訳です。ですから、前回も申し上げましたが、状況が 変わってきたということがあるのです。そうすると、タイトルを「サービス産業におけ る質の高い雇用をどうつくり出すか」等と変えていかなければいけない。議論している のはほとんど、現に働いている者たちの職場環境なり労働の質のアップなのです。それ が改善されれば雇用の機会創出につながるのではないか。あるいは、「ひいては雇用の 創出にもつながる」と、量的な雇用の創出にもつながると言っている訳です。しかし、 量的な雇用の質についてはほとんど議論されていません。現状の雇用の質の在り方につ いて議論している訳ですから、そこのタイトルの付け方にも工夫が欲しいな、というの が印象です。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  ここのところの考え方としては、前々回、先生から指摘があったとおり、雇用の質と いう部分を踏まえて書くべきであるということで、そこのところが半分ございます。も う半分の心としては、これは前のところの「個別の課題」とも関わってくるのですが、 例えば、情報サービス分野でいきますと、プロジェクトマネージャーがいないことによ ってある意味で業務の発展がとどまってしまっていて、それによって雇用のパイ自体が 制約を受けているのではないか。ダイレクトに雇用量のところにいっているのではなく、 やや裏から言っているようなところがある訳です。そういった観点もこれありというこ とだったもので、そういった観点での雇用量に対する制約の部分と質の部分の両方を一 応踏まえるような形で書かせていただいたつもりです。  先ほどの最後のところ、「ひいては」と書いてあるところですが、先ほど労働時間法 制の話が二宮委員からあったとおり、確かにこれはなかなかダイレクトにつながるとこ ろではないので、さらにワンクッション置いたというのが、そこの趣旨です。一応、そ ういった観点で書かせていただいたというつもりです。タイトルの付け方があるいはか たよってしまっているというところは、確かにおっしゃるとおりかもしれません。 ○矢作委員  「高い質の雇用創出」が抜けているとはならないものですか。先生方はいかがですか。 ○樋口委員  矢作委員がおっしゃったことを正に私は感じていて、先ほどから雇用保険の話をして いるのは実はそういったところなのです。既に雇って雇用保険に入っている者の能力を どのように高めていくか、これによって雇用の質を高める、そういった議論をしている のだろうと思うのです。  一方、雇用の量を増やす上ではニューカマーをどうするか。今までこの分野で就業し ていなかった者に雇用機会をいかに提供するか。そうしたときに、雇用保険に入ってい ない者も含めて何か助成する方法があるのではないだろうか。例えば、そこで技能的な 問題が起こっているのであれば能力開発に関する支援もあり、雇用保険以外の最近の再 挑戦プランに多分入るだろうと思われるキャリア形成の奨学金制度であるとか、税額控 除の実額控除制度等、そのときではなく、就職してからその税額が控除されるような方 法とか、何か考えていかなければ。これでは雇われた者についての話になっている可能 性があるな、と私も感じました。 ○山川委員  同様のことを考えております。報告書の中でその趣旨が若干表れているのは一番最初 の2頁の趣旨のところではないかと推測していたのです。全体的に「需要」「供給」等 の言葉はあまり出てきませんし、「マーケット」「市場」等の言葉もあまり出てこない のですが、各論のところを見ると、「潜在的マーケットを拡大していく」あるいは「活 性化していく」等ということは書かれているので、現在雇われている者の雇用と新雇用 の創出、この2つを視野に入れられるような説明ができないかなという感じがしていま す。1の「趣旨」の3段落目がそのような趣旨ではないかと思っています。つまり、「サ ービスに対するマーケットの拡大によって新規雇用、あるいは現に雇用されている者の 質の拡大という双方の意味での雇用創出がマーケットの拡大を通じて雇用に対する需要 の拡大をもたらして」と、そのようなロジックになるのかなとは素人ながら想像してい たのです。全体、あるいは最後の辺りでも、一体どのような意味で雇用の創出が図られ るのかということが単純にわかるような形にしていただければと思います。 ○八幡委員  この4業種を選んだときに伸びているところを選んだのではないですか。そこからス タートしているのに何かそこの議論、これはカットしてしまっているからそういう話な のですが。それで、ただ放っておいたのではいけないから労働力の質を高めて、生産性 を高めて、競争力を高めてという、そういう話ではなかったですか。 ○山川委員  つまり、潜在的可能性はもともとある分野を選んでそれを実現するために。 ○八幡委員  ということだったのではないですか、これは。私はそのように記憶しています。 ○山川委員  突然と言いますか、「潜在的可能性」というのが最初に出てきたのでどうかと思った のですが、今理解できました。だとしたらその趣旨も問題はない。 ○八幡委員  そこの代表的な業種を選んだというだけで、その他にもあったのですが。 ○樋口委員  前からこの議論はありました。従来の厚生労働省の施策は、多分既存の企業に既に就 職した者の能力を高め、質を向上させ、という話でしたよね。他方、今日、労働市場の 流動性という話が新しく出てきました。流動性を作る上でこの職業能力評価基準は必要 なのです。  ただ、そこで言う労働市場の流動性とは、例えば、既にエステティックで働いている 者が別のエステティックの企業に移るための流動性なのです。新たに入ってくる者に対 してどのような支援をするかということについての議論は見えてこない、だからそれを 強化してほしい、というのがその話ではないかなと思うのです。 ○八幡委員  具体的には新卒で入ってくる者、あるいは今無業者でという、そういう者に対する支 援ですか。 ○樋口委員  ええ、そういう者もですね。あるいは今まで専業主婦だった者等。 ○八幡委員  非労働力化していた者が入ってくる。 ○樋口委員  ええ。 ○八幡委員  しかし、それは雇用保険財源でできるのですか。 ○樋口委員  それは、できる仕組みを。 ○小野座長  スタートは多分一般会計でやるだろう。すぐにまた雇用保険に押しつけるのだろうと。 ○樋口委員  ですから、再挑戦と言ったときに、既に雇用保険に入っている者に対しての議論も重 要だと思いますが、入っていない者にチャンスをどう与えるかという話ですよね。それ とは全く別だということであればね。 ○矢作委員  やはり一般会計で予算を取って。 ○樋口委員  いや、税調で今度出ている訳です、減税方式、実額控除方式についての試案が。 ○矢作委員  しかし、税額控除というのは税額を払っている者。 ○樋口委員  いや。ですから、今までのやり方はそれなのです。3年間持ち越しができるというよ うなことを考えようという。 ○矢作委員  株の損と同じような扱いで。 ○樋口委員  ええ。今までは正におっしゃっているような、税額を払っている者しかその対象にな らないではないか、無業者は払えないではないかという話ですよね。 ○八幡委員  将来経費として落とせると。 ○樋口委員  そうです。ですから、法科大学院でも何でも、やはり時間のずれを認めるような方式 を。 ○八幡委員  それは良いですね。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  いずれにしましても、今色々意見をいただきましたので、その辺りの趣旨をもう一度 考えてみまして。 ○政策統括官  雇用保険財源でできるかどうかは別として、問題意識としては、今そこにいる者だけ でなく、新たにその分野に入ってくる者、再挑戦する者、その者にとっても魅力的なも のになるように、あるいは支援ができるように、というような問題意識ですね。 ○樋口委員  そうです。 ○政策統括官  では、そのようなことを少し整理して書かせていただきます。 ○二宮委員  ちょっと長時間労働にこだわるようですが、先ほど申し上げたように、アンケートの データに基づいてという趣旨からしますと、実際にこのアンケートの中で平均的な残業 時間を調べたものがあります。先ほど60時間という話がありましたので、60時間未満の 者を数えてみました。全部を集計すると、60時間未満の者が89.9%という数字で、これ で長時間労働はけしからんと言えるのかどうか、という部分が1つはあるのかなと思い ます。  あと、先ほど事務局の者から、政策審議会の検討で1つの着眼点として、といった話 がありました。担当としては確かにそういう問題意識があると理解するのですが、それ を報告書に書き込むのもどうかなという感じはしています。  このまとめ方なのですが、これはアンケートをメインにまとめています。そして、経 営者と従業員の双方にアンケートをしているというのがこの特徴かなと思っています。  経営者としての課題という意味では、ここにもあるように、「適切な人事労務管理を 行うことで従業員のやる気を引き出す」「キャリア・パスを明確にしていく」「能力開 発の機会を増やす」「新しい産業分野であるが故に業界を挙げてこれらに取り組む」、 この4点ぐらいを挙げています。従業員としても、自ら積極的に能力開発を行う。行政 としては、これらを支援すべくその助成金制度、職業訓練の指導員の派遣等の施策推進 を行う。さらに、行政としてどこまで踏み込めるかは分からないのですが、新たにこう いう業界に入ってくる者に対する支援も色々考えていきましょうと。そのようなことを することによってこのサービス業、新しい分野がより活性化して、より雇用を生み出し ていくのですと。そのような終わり方にした方が何となく雇用創出という感じがするか なと思ったのですが。 ○労働政策担当参事官  それは、(2)の「就労環境の整備」のようなところはもうオミットして、今おっし ゃったように能力開発を中心に整理をするということですか。 ○二宮委員  ええ。就労環境の整備のところで申し上げた点は、「適切な人事労務管理を行うこと で従業員のやる気を引き出す」「キャリア・パスを明確にしていく」「能力開発の機会 を増やす」。これらを業界を挙げて取り組む。こういったことが就業環境の整備という ことです。  加えて、31頁に「企業としては、まず適切な人事労務管理を行うことにより」と書い てありますが、賃金の低さを上げるというのも、何をもって賃金の低さと言うかという こともあると思うのです。その辺りも受けて、説明の中にあったように、これまでの各 分野の課題の横串、共通という捉え方で改めて整理し直した方が良いのではないかと思 うのです。 ○久本委員  私はちょっと反対なのです。労働時間の問題はやはりあると思っているのです。長時 間労働自体が問題というより、例えば、エステティックの場合を見ても、有休が取れな いといった話はやはりあります。良好な雇用の場にするためにはもちろん能力開発も必 要ですが、やはり就労条件自体が良くないと、良い者は集まらないのです。政策的には、 そちらを目指すということ自体が悪いことではない訳です。私は、そういう観点は重要 だと思っているのです。  今みんなが長時間だと言われると、それは確かに違うかもしれません。ただ、その業 種がもの凄く魅力的で人が殺到するような業種なのかと言われたら、そうでもない。辞 める者も多い。そこには賃金が低いということもあれば、労働時間が長いとか不定期で あるとか、色々な不満があるからだと思うのです。  仕事自体の満足度は比較的高いという話でした。そうすると、そこの就労条件のとこ ろに問題があると考えた方がロジカルです。政策的にどう考えるかと言うと、やはりそ ういう課題はあるのだと出すのは、私は間違っていないと思うのです。ただ、全員が長 時間で働いているといった印象を与えると、それはちょっと問題があるだろうとは思い ます。政策課題として改善するという方策で出すのが良いのではないかとちょっと思い ました。 ○二宮委員  労働時間の問題を全くカットするといったことを申し上げている訳でもないのです。 実際、例えば、第6章が3頁に渡っている中で、3分の1ぐらいが労働時間の問題で占 められています。これまでの議論でこの点について3分の1も議論したかな、という気 がするのです。終わり方としては雇用の創出に新しくつなげるといったトーンが良いと 思います。 ○久本委員  終わり方が問題だと思っています。長時間労働を最後に言うから、何かそこは問題が ある訳なのです。そうではなく、この業界はもっと伸びている訳で、その職場の魅力を どう高めていくかということを就労環境を整備することにより、もしくは能力開発を展 開することにより、このように伸びている産業の魅力をどう高めていくか、そういった ところで終われば良いのではないかと思います。最後が労働条件になっているのでそこ は凄く気になるのですが、もう1つここに、最後に文章を入れるなり最後の項を作るな りするともう少し良いのではないかという気は、今話を伺っていてしました。 ○小野座長  なるほど。二宮委員がおっしゃったように、適切な人事管理やキャリア・パスを明確 にするといったこともここに書き込むべきことですね。そのようなものも含めて書いて いただいて。 ○政策統括官  色々な要素があるという中で、労働時間も要素だけれども。 ○小野座長  そうそう、労働時間しかないですからね。 ○政策統括官  全体を総合的にまとめて、魅力ある職場にしていこうと。 ○小野座長  それが良いですね。 ○政策統括官  ここに文章をつなげて、そういうストーリーで。 ○小野座長  そうですね。 ○政策統括官  今の意見も少し整理して。 ○小野座長  そうですね。他に何かございますか。 ○八幡委員  労働時間に少し関連するかもしれませんが。コア要員の人材育成は、あちこちで結構 問題になっていますね。教育訓練休暇制度は、もう少しきちんと機能するように何らか の工夫が要るのではないかと思うのです。もうそういう時代になっているのではないか と思うのです。どうしろと具体的には言いませんが、そういうことを今後の課題として ちょっと指摘しておいていただけるとありがたいと思います。 ○政策統括官  おっしゃるとおり、我々も、長期訓練休暇のようなものが本当に必要な時代になって きていると思うのです。そういう形で色々な制度を整備する、あるいは助成金を整備し ても、使われないのです。何が問題なのか。ですから、社会全体なり企業なり、働き手 の意識全体が変わらないと、そういう方向にはなかなかいかないのです。どうも我々が 頭の中だけで考えているのかなという感じがしないでもないのです。 ○八幡委員  しかし、企業のエンジニア等に聞くと、在職者向けの訓練コースは沢山ある訳です。 色々な研修があります。忙しいところを無理して聞いてくると、戻ってくると仕事が山 積みでドーンとあると。ですから、年間2100時間ぐらい働いたら後は休みにさせてくれ と、そんなことをおっしゃっていました。そういうことがあればきちんと研修も受けら れるのではないかといったことをおっしゃっていました。そこは少し極端としても、も う少し意識的に何か仕掛ける必要があるのではないかと思います。 ○政策統括官  それは大変重要な課題だと思っています。ただ、正直言って、どういうやり方でやれ ば普及するのかというのが良く分からないところがあります。 ○小野座長  難しいですね。 ○樋口委員  この分野ではないのですが、全体的に良く、なぜ自己啓発をしないのかと言ったとき に3つの制約が言われています。1番目が金銭的制約、2番目が時間的制約、3番目が 研修を受けた後の評価がなされないという制約です。そこはきちんと評価してほしい。 何か無目的にやっているのではないかといった受けとめ方で、休暇という感じで受けと められる面が多い。そういう研修を受けたからといって、必ずしもプラスの評価になら ないというようなことがあります。  特にその3番目が大きいのではないかといったことを言われる訳ですが、ここでも似 たようなことがある訳です。例えば、能力開発環境の整備のところでも、先ほどから出 てきている職業能力評価基準といったものをきちんと適用することによってランクが上 に上がるのであれば、それなりの評価をしてほしいと。それはキャリアの将来が見える ということになってくるのではないかと思います。 ○八幡委員  アメリカの多くの企業では、サーティフィケートを取ってきたかどうかで昇給が変わ る。毎年の自己申告面談でそういうことが人事できちんとやれるようになると変わると 思います。 ○二宮委員  理系の者はわりと研究室と企業との結び付きはあると思うのですが、例えば私どもの ような事務系の分野はどうでしょう。私の実感としても、自分が漠然とキャリアアップ したいと思って、どこか大学院に行っても、あまり身に付かないような気がするのです。 やはり自分の業務上の課題や問題意識をしっかり持って、それを大学院に持ち込むこと が大切かと。恐らく大学側や学生も、その課題に対してより実践的に捉えることができ るでしょう。  そういう意味では、産学連携という形をうまく進めていけば、企業にとっても大学に とっても、プラスになる。そのように何かうまくいった事例のようなものを色々な場面 で取り上げることも大切かと思います。例えば、長期休暇にしても、ある企業でプロジ ェクトの切れ目等にやるようにしたらうまくいきましたとか、何かそのような事例を集 めて、もっとアピールしていくようなことも必要なのではないかと思います。 ○小野座長  確かに樋口委員がおっしゃるように、訓練を受けた後に何か評価基準があって、それ がはっきりしていると、受ける方も明確だし、評価する方もしやすいと思います。私の 今いる所には行政職員の研修所があります。その研修した成果をどのように評価したら 良いかということがいつも問題になるのですが、難しいですねということで終わってし まうのです。このようにきちんと基準がある所は非常にはっきりするのですが。 ○樋口委員  MBAを取ってきた者たちの転職率が高いというのは、明らかにその取ってきた内容 と配属先が一致しないのです。そこの能力を、逆に別の会社であれば、あなたが取って きたこういう能力を活用できるような部署に配属しますと、そういった約束をしてくれ ると、皆、そちらに移ってしまう訳です。そうすると、何のために研修しているのかが 逆に分からない、そのような気がします。 ○小野座長  それは、MBAを取るという1つの基準があるから非常にはっきりしますね。 ○樋口委員  はい。先ほど私は、途中で矢作委員の指摘を中断してしまったのですが、「新しいサ ービス分野における雇用創出の課題」というタイトルのところ、ここに何か質の話を入 れた方が良いのではないかという話でしたが、私もそうかなと思うのです。ただ単に雇 用創出ではなく、質の高い雇用機会、あるいは高質な雇用創出等というような、新しい 時代になってきているという話かなと思ったのですが、いかがでしょうか。 ○小野座長  そういう提案です。良いのではないですか。 ○政策統括官  良質なことを。 ○小野座長  そういうことですね。 ○政策統括官  入れるということですね。 ○小野座長  賛成です。 ○久本委員  長くなり過ぎるので、第6章で「新しいサービス分野における」と既にあるので1、 2で同じことを繰り返す必要はないので、それは切った方が良いのではないかと思いま す。 ○小野座長  そうですね。誠に細かいことですが、エステのところで非常に苦情が多いとあります ね。その前のフィットネスでは、基礎的な医学的知識を持てと言っています。エステの 方は要らないのですか。ここにはそのようなことが書いてないのです。例えば、17頁、 苦情が多いというのが。何か変なふうにいじくり回して火傷させてしまうとか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  すみません。書かせていただいた趣旨は、フィットネスの方は、例として適切かどう か分かりませんが、腰が痛いときにこういう訓練をやるとここが鍛えられて良くなる、 そういったことをイメージしてここは書かせていただいています。エステの方は確かに 技術的なところで、新聞や報道を見ていると、たまに変なことをやってしまって、痕が 残ってしまったといったような話もある訳です。それはむしろ医学的と言うよりは、技 術的にそうならないようにきちんとした形でやりましょうという部分かと思います。 ○小野座長  「技術的」という言葉の中に含まれていると理解している訳ですか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  はい、そのつもりです。 ○小野座長  一番最後の頁に「勤務時間の短縮についての配慮規定」とありますが、これは実際に どのような条文なのですか。「事業主は、能力開発のために労働時間を」。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  今溶け込んだ条文を持っておりませんで、改正法の要綱ベースのものですが、読み上 げさせていただきます。  「事業主がその雇用する労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び 向上を促進するために必要に応じて講ずる措置として次の措置を追加する。その中で職 業に関する教育訓練または能力」の話が入りますが、「受ける機会を確保するために勤 務時間を短縮すること」というのが入っているところです。  ですから、事業主が労働者に対して職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発、 向上を促進するために一定の措置を講ずるよう、そのための配慮をしてほしいというこ とで、その中の事項の1つとして勤務時間の短縮が挙げられているということです。 ○小野座長  配慮しなければならないということではないのですね。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  必要に応じて講ずる措置ですので、完全なぎっちりした義務という形ではありません。 ○小野座長  義務ではなく。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  はい。恐らく個々、企業さんの事情等色々ありますので、そういった中で必ずこうい った配慮をしろというのはなかなか今の実情に合っていなくて。そういったところで恐 らく必要に応じて配慮してくださいとなったのだろうと推測します。 ○樋口委員  ということは、訓練を受けている時間はアンペイド、勤務時間ではないということな のですか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  通常、先ほど出ましたOJTですとか、あるいは、我々が入ったときには初任研修の ような形でやる、そういった勤務時間内の研修はもともと勤務時間の中でやる話ですの で、別の所で面倒をみている。それに対してここでイメージしているのは、恐らくそう いったものでなく、むしろ勤務を離れてやるようなイメージかと思います。きっとそう いう趣旨ですよね。この勤務時間というのは実働という趣旨ですか。 ○樋口委員  自己啓発ではないですか。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  自己啓発が入るのは多分間違いないのですが、普通、指揮命令で受けるOJTの時間 や勤務の中の初任研修のようなものは労働時間の中に入りますので、それだと恐らく。 今喋っていて気がついたのですが、多分「労働時間」という言葉を使うのではないかと 思います。「勤務時間」という言葉を敢えて使っているということは、恐らく勤務の中 にありながらそういった通常業務を離れているものも入るのではないかという趣旨かな と、言いながら気がついたところです。早速確認させていただいて、報告します。 ○樋口委員  業務に関連する訓練であれば、それは労働時間の中に入ってくるのでしょうか。山川 委員のご専門ですが。 ○山川委員  その企業の指揮命令の下になされたものであれば入るので、多分それは勤務時間の短 縮そのものとは別で、恐らく自己啓発も含めたもので、その意味で賃金カットしてはな らないということはないのではないか、労使自治の範囲ということで。労働時間として 取り扱うものではない。育児・介護休業法の勤務時間短縮措置と同じようなものかなと、 ちょっと推測ですが。  先ほどの休暇の話で言えば、多分休暇は現実的に難しいので、勤務時間短縮であれば 現実的だろうと、そういう感覚の法改正ではないかと思います。 ○八幡委員  しかし、早退はあり得ないでしょうね。 ○樋口委員  勤務時間内では。 ○八幡委員  残業をやらなくて良いという程度の話で。 ○山川委員  そういう程度の話で。 ○八幡委員  短縮なら早めに帰った方が良いのではないですか。 ○山川委員  だから強制はできないということで。 ○小野座長  他に何か質問はございますか。 ○山川委員  質の高い市場というようなことになると、外部市場を通じて転職や新規就職をしやす くするといった発想があり、能力の明示というのはそういう点でも役に立つのかなと思 うのですが、それはこの中には直接は入らないということになるのでしょうか。つまり、 魅力のある職場であったとしても、それがマッチング機能がきちんとできるようなもの であるかといったことも1つ要素に入るのかなという感じもするのです。ちょっと時期 に遅れた主張になるのかもしれませんが。 ○八幡委員  需給調整機能を強化する。 ○山川委員  強化するということはあり得るのでしょうか。既に趣旨として入っているような気も するのです。「一度労働市場から退出した労働者の再就職支援」とは正にそのことと思 いますし、趣旨として入っているような感じもするのですが、質問だけです。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  確かに今指摘があったような点、ほとんど山川委員にお答えいただいてしまっている ようなところもあるのですが、そういった趣旨も含め、31頁の「より具体的に述べれば」 の段落のなお書きですが、1回労働市場から出てしまった者、先ほど主婦等も含めて話 がありましたが、そういった者のことも含めてここは書かせていただいております。 ○山川委員  例えば、「再就職支援等、外部労働市場の活用にも有効であろう」とか、ちょっと言 葉が分かりませんが。 ○小野座長  もし意見がありましたらまだ伺いますが、よろしいでしょうか。この報告書を少し書 き換えるなり何なりして先生方の主張の趣旨を生かすようにしていただければ、非常に 良いものになると思います。主張を反映させるように報告書を取りまとめるということ で、取りまとめは座長一任でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○小野座長  ありがとうございます。それでは、報告書はお任せいただくということといたします。 本日の意見を踏まえ、報告書を取りまとめて7月中に公表したいという事務局側の意向 です。公表予定日等は、決まり次第、事務局からご連絡いたします。本日で報告書も、 手直しがありますが、一応取りまとめの線が出てきた訳です。この会議は、平成14年か ら4年間、雇用創出に向けた検討を行ってまいりました。その間、精力的な議論をいた だきました。今回の報告書も含め、3つの報告書を提言することができました。これも 先生方の尽力の賜物と思います。大変ありがとうございました。  また、この間、雇用・失業情勢が劇的に改善し、雇用創出を目的として始められた当 会議の所期の目的を果たすことができたのではないかということです。この点について も、委員各位、事務局に厚く御礼申し上げます。  先ほど申しましたように、報告書につきましては、座長一任をいただきました。最後 の会議ということもありますので、この会議の主宰者の太田統括官から挨拶をお願いし たいと思います。 ○政策統括官  一言、御礼のご挨拶を申し上げます。今回の第三次の報告書につきましても、本日ま で7回に渡り精力的にご検討いただき、今日、また意見の集約を図っていただきました。 本当にありがとうございました。  今座長からも話がありましたように、この企画会議は平成14年の発足ということです。 当時は5%台半ばの失業率ということで、本当に厳しい中で、まずは雇用の量の確保を 図るべきということで議論いただいてきたところです。この間、第一次、第二次と報告 書の提言をいただいたところです。昨年1月からは今の第三次ということで、新しいサ ービス分野を題材として議論いただいてきた訳です。その間、雇用・失業情勢が本当に 改善してまいりました。今回の報告書では、従来の単なる雇用の量ということではなく、 今日も色々議論いただいたとおり、雇用の質、良質な雇用環境の整備ということでさま ざまな意見をいただき、また、ご提言もいただいたところです。私どもも、今回のご提 言を踏まえ、雇用の量だけでなく、雇用の質、良質な雇用環境が整備されるように今後 とも取り組んでいきたいと考えているところです。  そういう中でこの会議の所期の目的、雇用の創出でしたが、最近は雇用の質もあわせ て議論いただき、所期の目的を達成することができたということで、本日をもって当面 終了ということにさせていただくことになりました。皆様方におかれましては、何かと ご多忙の折、貴重な時間を割いて議論いただきましたことを心から感謝申し上げます。  まだまだ労働行政の課題は沢山ある訳です。今後とも、労働行政の推進につきまして ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げまして、御礼のご挨拶とさせていただき ます。どうもありがとうございました。 ○小野座長  以上をもちまして、雇用創出企画会議を終了いたします。長い間、どうもご苦労様で した。ありがとうございます。 照会先 :政策統括官付労働政策担当参事官室 企画第二係 電話番号:03(5253)1111 内線(7723) 30