資料4−1 |
ANSI S2.70
ANSI S2.70-2006
AMERICAN NATIONAL STANDARD
Guideline for the Measurement and Evaluation of Human
Exposure to Vibration Transmitted to the Hand
米国標準規格
手に伝わる振動への人体暴露の測定及び評価に対する指針
要約
この規格は手腕振動への人体暴露の測定,データ解析,振動及び健康リスクアセスメント,及び報告についての推奨する方法を規定する。5.6ヘルツから1,400ヘルツまでの周波数帯域における直行3軸の周期的又はランダム手腕振動の測定,データ解析,振動及び健康リスクアセスメント,及び報告のための標準書式が制定された。3つの規定附属書が手腕振動に関係する振動及び健康アセスメント,健康リスクの軽減,訓練及び医学的監視に対する指針を規定する。
和訳:by T.Uneyama, Makita Corporation
誤訳・誤字等があるかも知れません。又,意訳している部分もあります。急いで和訳したため不十分な訳文になっています,拙訳ご容赦願います。 |
目次
1 | 適用範囲 | ||||||||
2 | 引用規格 | ||||||||
3 | 用語及び定義 | ||||||||
4 | 記号 | ||||||||
5 | 概論 | ||||||||
6 | 手腕振動暴露の特徴付け
| ||||||||
7 | 手腕振動の測定 | ||||||||
8 | 報告すべき情報 |
附属書A | 振動暴露と健康リスクアセスメント |
A.1 | 日暴露対策値及び限度値 |
A.2 | 振動暴露評価 |
A.3 | 健康リスクアセスメント |
附属書B | 手腕振動暴露に伴う健康リスクの緩和 |
B.1 | 可能性のある健康リスクを回避又は低減するための指針 |
B.2 | 低振動工具及び個人用保護具 |
附属書C | 訓練及び医学的監視 |
C.1 | 訓練 |
C.2 | 健康監視 |
序文 -------------- 略
はじめに
極めて強い振動は,手持ち式打撃又は振動機器,工具及びワークピースから使用者の手及び腕に伝わりうる。このような状況は人が空圧,油圧及び電気動力の打撃工具(例えば,チッピングハンマ,多針たがね,インパクトレンチなど),空圧,油圧及び電気動力のグラインダ及びサンダ,ガソリン動力の動力工具(例えば,チェーンソー,まるのこ,ヘッジトリマなど)及び床上型グラインダを用いるときに生じる。
これらの振動は通常手を通じて腕及び肩に伝わる。個々の作業内容及び作業状態により,この振動は片手のみ又は同時に両手に伝わりうる。手持ち式振動機器及びワークピースのある形の継続した習慣的な使用は,ある環境下で手及び腕に影響を及ぼす疾病の形態と結びついていることが見いだされている。観察された種々の症候の形態は振動病,振動症候群,振動白指(VWF)又は職業性レイノー現象と呼ばれる。これらの障害は手腕振動症候群(HAVS)として総称される一つの症候群に分類されてきた。手腕振動は又,他の蓄積外傷疾患と同じく,手根管症候群のような四肢絞扼性神経障害(DTDs)を引き起こすかもしれない。この規格の目的のために,手腕振動を,人の手腕系に伝わったとき,特に血管,骨又は関節,神経及び筋肉に労働者の健康及び安全にリスクを引き起こすかもしれない機械振動と定義する。
国際標準化機構(ISO)は二つの国際規格:(1) ISO 5349-第1部及び(2) ISO 5349-第2部を作成した。ISO 5349-第1部の中の附属書は,手腕振動に関係する健康影響についての具体的な手引き,振動暴露と健康への影響の関係,作業状態における手腕振動への人体暴露の影響を左右する可能性のある要因,及びHAVSに関係する症状を発現する可能性を低減するために導入すべき予防対策を示している。ISO 5349-第2部は,手持ち式振動及び打撃工具でどのように振動測定を行うかの具体的な指針を示している。この規格を使用する者は,したがって,これらの分野の具体的な指針のためにこれらのISO規格が必要となる。
欧州連合議会は欧州連合人体振動指令-2002/44/ECを公布した。この指令は,それを達成した時に手持ち式振動及び打撃機器,工具及びワークピースの使用者にHAVSに関係する症状の発現の可能性を低減することになるであろう2.5m/s2の日振動暴露対策値(DEAV)及び5.0m/s2の日振動暴露限度値(DELV)を規定している。EU人体振動指令に規定されるDEAV及びDELVは,合衆国及び他の国の医療関係者,科学者及び政府機関,研究機関並びに業界で一般的に認められている。
この規格及び附属書で規定する手引きは,手持ち式振動及び打撃機器,工具及びワークピースとともに働く人たちの中のHAVS及び他の関係する手腕振動障害の発生に対する可能性を低減する手助けをすることを意図している。HAVSに関係する症状を発現する個人に対する可能性には多くの要因が影響する。なぜなら,HAVSに結びつく主観的な症状及び客観的な臨床所見は他の原因から起こる症状と同じで,適切な差異診断が,手腕症候群及び疾病の差異診断に適正及び経験を持つ医師によるHAVSに関係する症状を見せる労働者に対して,行われることが肝要だからである。
米国標準規格
手に伝わる振動への人体暴露の測定及び評価に対する指針
1 適用範囲
1.1 この規格は手腕振動暴露の測定,データ解析,振動及び健康リスクアセスメント及び報告についての推奨方法を規定する。この規格で規定する方法は人体の手に作用する振動の特性を明らかにし評価するために用いる,そして手持ち式打撃又は振動機器,工具及びワークピースの使用者の中で手腕振動暴露に関係する症状に帰着するこの振動に対する可能性を評価するための指針を与える。工具のハンドルにかける把持力及び押し力,特定のワークピースに関係する手及び工具の方向,及び手腕振動への人の暴露に影響しうる振動暴露の中断などの要因は,この規格では取り扱わない。
1.2 長期にわたる過度な手腕振動への暴露は,手腕振動症候群(HAVS)及び他の手根管症候群のごとき上肢の病気のような,不利な健康影響に帰着するかもしれない。この規格の目的のために,手腕振動症候群を工業労働者の手腕振動暴露に関連する手及び腕の末梢血管,神経及び筋骨格系の複合障害と定義する。
1.3 この規格は,手に伝わる振動への暴露の測定,データ解析及び評価,振動及び健康リスクアセスメント,及び報告のための,手持ち式打撃又は振動機器,工具及びワークピースの使用者の中で手腕振動暴露に関係する症状の発生に対する可能性を低減する視点からの手引きであることを意図している。
1.4 測定,データ解析,評価,アセスメント及び報告の方法は,5.6Hzから1,400Hzまでの周波数帯域の直行3軸の,周期的な又はランダム手腕振動に適用する。この規格の中で提示する情報は,手持ち式機器,工具及びワークピースの使用を伴う産業労働工程の中で用いられる手持ち式機器,工具及びワークピースからの振動暴露にのみ適用する。
2 引用規格
次の引用文書はこの規格の適用に対して不可欠のものである。日付付きの引用規格はその版のみを適用する。日付のない引用規格は引用文献の最新の版(いかなる修正も含め)を適用する。
ANSI S1.11 American National Standard Octave, Half-Octave, and Third-Octave Band Filter Sets.
ANSI S2.1/ISO 2041 American National Standard Vibration and Shock-Vocabulary.
ISO 5349-1 Mechanical Vibration - Measurement and Evaluation of Human Exposure to Hand-Transmitted Vibration - Part 1: General Requirements.
ISO 5349-2 Mechanical Vibration - Measurement and Evaluation of Human Exposure to Hand-Transmitted Vibration - Part 2: Practical Guidance for Measurement at the Workplace.
ISO 5805 Mechanical Vibration and Shock Affecting Man-Vocabulary.
ISO 8041 Human Response to Vibration - Measuring Instrumentation.
ANSI S3.40/ISO 10819 Mechanical Vibration and Shock - Hand-arm Vibration - Method for the Measurement and Evaluation of the Vibration Transmissibility of Gloves at the Palm of the Hand.
3 用語及び定義
この規格に対し,用語及び定義はANSI S2.1/ISO 2041及びISO 5805に定めるものを適用する。
4 記号
ahw(t) | メートル毎秒毎秒(m/s2)で表す,時間tにおけるISO周波数補正手腕振動の単軸加速度の瞬時値; | ||||
ahw(rms) | メートル毎秒毎秒(m/s2)で表すISO周波数補正手腕振動の単軸加速度実効値(r.m.s.); | ||||
ahi(t) | 6.3ヘルツと1,250ヘルツの間のi番目の1/3オクターブ周波数帯域における時間tの関数としてのメートル毎秒毎秒(m/s2)であらわす瞬時単軸1/3オクターブバンド手伝達加速度値; | ||||
ahi(rms) | 6.3ヘルツと1,250ヘルツの間のi番目の1/3オクターブ周波数帯域における時間tの関数としてのメートル毎秒毎秒(m/s2)で表す瞬時単軸1/3オクターブバンド手伝達加速度実効値(r.m.s.); | ||||
| |||||
ahv(rms) | x,y及びz方向におけるISO周波数補正実効加速度値の振動合成値;これはメートル毎秒毎秒(m/s2)で表すx,y及びz軸(図1参照)のISO周波数補正実効値の根二乗和である; | ||||
ahv(DEAV) | 2.5m/s2のDEAV(日暴露対策値)となる8時間以上の時間Tvに対する振動合成値; | ||||
ahv(DELV) | 5.0m/s2のDELV(日暴露限度値)となる8時間以上の時間Tvに対する振動合成値; | ||||
A(8) | メートル毎秒毎秒(m/s2)で表す日振動暴露量(8時間エネルギー等価振動合成値); | ||||
DEAV | 日暴露対策値-A(8)は2.5m/s2である; | ||||
DELV | 日暴露限度値-A(8)は5.0m/s2である; | ||||
Dy | 年数で表す群平均(生涯)暴露時間; | ||||
T | ahw(rms)及びahi(rms)のための積分時間,通常は秒(s)で表す; | ||||
Tv | 時間(h)であらわす,振動ahw(rms)への暴露の合計日継続時間; | ||||
T0 | 基準暴露時間(28,800秒); | ||||
Whi | i番目の1/3オクターブ周波数帯域に対するISO周波数補正特性(表1参照); | ||||
x,y,z | 振動の方向を示すために加速度値と共に用いる下付け文字(表1参照)。 |
5 概論
5.1 振動暴露を量的に評価するためにこの規格で規定する方法は,作業状況中に手腕振動の結果に影響を与えることが知られている要因を考慮している。これらの要因に関する量的情報は詳細に報告しなければならない。それらは次である:
・ | 振動の強さ; |
・ | 振動の周波数スペクトル; |
・ | 振動の方向; |
・ | 日振動暴露量; |
・ | 日の累積振動暴露。 |
5.2 作業中の手腕振動に関係する病理影響への重大な可能性はいくつかの追加要因により影響を受ける。これらの要因のいくつかの手腕振動暴露に関係する病理的発現における重要性は現在知られてはいないが,可能であれば,これらの要因に関係する情報を報告しなければならない。それらは次である:
・ | 性別; |
・ | 女性においては,当てはまるならば,妊娠期間; |
・ | 関係する工具及び作業工程の形式及び状態; |
・ | 使用者により,使用者の手を通じて工具又はワークピースにかけられる持続的力の強さ及び方向(例えば,把持力,軸方向推力,回転モーメントなど); |
・ | 暴露中の手,腕及び体の位置の方向及び姿勢(特に,手首,肘及び肩の関節); |
・ | 振動に暴露されている(又はそのように見える)手の部分の領域及び位置; |
・ | 使われた労働訓練及びその作業者がこの仕事を行った年数。 |
・ | その作業者の合計労働歴; |
・ | 環境条件,特に周囲温度,湿度及び工具又はワークピースの手持ち部表面の温度; |
・ | 事前症状 |
・ | 喫煙,処方箋を必要とする薬,又は作業環境にある化学的,生物学的及び物理的因子; |
・ | 作業領域の騒音。 |
6 手腕振動暴露の特徴付け
6.1 振動の強さ
振動を表すために用いる量はメートル毎秒毎秒(m/s2)で表す実効(rms)加速度でなければならない。実効単軸ISO周波数補正加速度値ahw(rms)は方程式 (1) (又はその計数等価)に従って計算しなければならない。
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(1) |
6.2 振動の周波数スペクトル
6.2.1 測定の周波数帯域は少なくとも5.6Hzから1,400Hzでなければならない,すなわち,6.3Hzから1,250Hzの中心周波数を持つ1/3オクターブバンドをカバーするに十分なものでなければならない。
6.2.2 実効単軸加速度値は6.3Hzから1,250Hzの1/3オクターブバンド周波数帯域にわたる1/3オクターブバンド値と指定してもよい。1/3オクターブバンド実効単軸加速度値ahw(rms)は式 (2) で得る。
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(2) |
6.2.3 ISO 5349-第1部に規定するように,実効単軸ISO周波数補正加速度値ahw(rms)は二つの方法で得ることができる。
6.2.3.1 実効単軸ISO周波数補正加速度値ahw(rms)は,ISO 8041に規定するアナログ又はデジタルISO周波数補正回路を持つ周波数解析機を用いて直接測定することができる[式(1)参照]。
6.2.3.2 実効単軸ISO周波数補正加速度値ahw(rms)は,式 (3) を用いて6.3Hzから1,250Hzの間の1/3オクターブ周波数帯域において,1/3オクターブバンド実効単軸加速度値ahi(rms)にエネルギーを加えることにより得ることができる。
表1-1/3オクターブバンド強さをISO周波数補正強さに変換するための
手腕振動用ISO周波数補正係数Whi
手腕振動用ISO周波数補正係数Whi
周波数帯域No. i |
帯域周波数 Hz |
補正係数 Whi |
6 | 4 | 0.375 |
7 | 5 | 0.545 |
8 | 6.3 | 0.727 |
9 | 8 | 0.838 |
10 | 10 | 0.951 |
11 | 12.5 | 0.958 |
12 | 16 | 0.896 |
13 | 20 | 0.782 |
14 | 25 | 0.647 |
15 | 31.5 | 0.519 |
16 | 40 | 0.411 |
17 | 50 | 0.324 |
18 | 63 | 0.256 |
19 | 80 | 0.202 |
20 | 100 | 0.160 |
21 | 125 | 0.127 |
22 | 160 | 0.101 |
23 | 200 | 0.0634 |
24 | 250 | 0.0634 |
25 | 315 | 0.0503 |
26 | 400 | 0.0398 |
27 | 500 | 0.0314 |
28 | 630 | 0.0248 |
29 | 800 | 0.0186 |
30 | 1,000 | 0.0135 |
31 | 1,250 | 0.00894 |
32 | 1,600 | 0.00536 |
33 | 2,000 | 0.00295 |
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(3) |

図1-手の座標系
座標系の原点は第3中指骨の頂部でありz(手)軸はその骨の縦軸により定義される。x軸は手が標準的な解剖学的位置(掌が前方を向いている)とき原点から前方に投影される。Y軸は原点を通りx軸と直交する。手が円筒形のハンドルを把持するとき,座標系はyh軸が手の角度と平行になるよう回転しなければならない。 (a)“ハンドグリップ”位置。この位置では,手は半径2cmの円筒状の棒状に規格化されたグリップを把持している。 (b)“平らな手掌位置”。この位置では,手は半径5cmの球面を押し付けている。
6.3 振動の方向
6.3.1 振動測定のための座標系の幾何学的配置は,例えば,手でつかむ工具のハンドル又はワークピースの中の,適切な支持面座標系(図1参照)に準拠した始点により決定しなければならない,
6.3.2 測定に用いる座標系は,図1の生体力学座標系からの距離及び角度に準拠して報告しなければならない。
6.4 日振動暴露量
6.4.1 日振動曝露値A(8)は,6.4.2及び6.4.3に定めるように,振動合成値から得なければならない。
6.4.2 手腕振動に関与する単一の作業に対する振動合成値ahv(rms)は,図1に示すように,x,y及びz方向において測定した実効ISO周波数補正加速度値の二乗和平方根から得なければならない。振動合成値ahv(rms)は式 (4) により得る:
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(4) |
6.4.3 作業者の手腕振動暴露に伴う振動合成値ahv(rms)がそれぞれ異なる振動強さのいくつかの作業によりなる場合は,振動合成値は式 (5) から得る:
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(5) |
6.4.4 8時間の基準時間に標準化した日振動暴露値A(8)は,式 (6) から得なければならない。
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(6) |
7 手腕振動の測定
7.1 手持ち式機器,工具及びワークピース上での振動測定は,ISO 5349-第1部及びISO 5349-第2部に規定する該当する手順に従って行わなければならない。実際のまたは模擬作業の間の機器,工具又はワークピースの具体的なタイプの振動の測定に対する適切な国内又は国際規格を使用できるときには,この規格と併用して用いなければならない。
7.2 手腕振動測定を行うときに用いる振動機器はISO 8041及びANSI S 1.11の要求事項に適合しなければならない。
7.3 特に打撃工具からのものであるが,非常に高いピーク加速度を持つ振動信号に対しては測定システムのどのような部分にもオーバロードを避けるために予防措置をとらなければならない。これには振動トランスデューサ,振動トランスデューサプリアンプ及び増幅器,記録器機及び解析機器を含む。
7.4 振動測定を実施するとき:
7.4.1 データ収集は問題としている手腕振動への作業者の個人暴露の典型でなければならない。トランスデューサ及び用いるトランスデューサアダプタは,測定する振動に特有な特性に適合していなければならない。振動測定の間,機器,工具又はワークピースは使用者の毎日の機器,工具又はワークピースの使用を代表する方法で,その使用者により操作されなければならない。
7.4.2 両手で保持する機器においては,振動測定は両手に対して行わなければならない。両手に関係する日振動暴露は報告しなければならない。日振動暴露量は両手の報告する日振動曝露値の高い方でなければならない。
7.5 可能である限り,機器の1/3オクターブバンド振動スペクトルをx,y及びz方向で測定し報告しなければならない(図1参照)。
8 報告すべき情報
評価報告は次の情報を備えなければならない。
8.1 一般情報
・ | 会社/顧客; |
・ | 測定の目的(例えば,個々の作業者又は作業グループの振動暴露評価又は抑制対策の評価,疫学的調査など); |
・ | 評価日 |
・ | 個々の暴露評価の対象又は対照群; |
・ | 測定及び評価を行った人。 |
8.2 作業場における環境条件
・ | 測定場所(例えば,屋内,屋外,工場区域など); |
・ | 温度 |
・ | 湿度 |
・ | 騒音 |
8.3 振動測定を行った作業を選択するために用いた情報。
8.4 評価した各作業に対する日々の作業形態
・ | 測定した操作の詳細; |
・ | 用いた機械及び先端工具; |
・ | 用いた材料又はワークピース; |
・ | 暴露の形態(例えば,作業時間,休憩時間など); |
・ | 日暴露時間を決定するために用いた情報(例えば,作業量又は一日当たりの作業サイクル数又は要素,サイクル又は手持ちワークピース当たりの暴露期間など)。 |
8.5 振動源の詳細
・ | 動力工具又は機械の専門的説明; |
・ | 形式又はモデル番号; |
・ | 動力工具又は機械の機齢及び保守条件; |
・ | 手持ち式工具又は手持ち式ワークピースの質量; |
・ | もしあれば,機械又は動力工具の振動抑制対策; |
・ | 用いたハンドグリップの形式; |
・ | 機械の自動制御システム(例えば,ナットランナのトルクコントロール); |
・ | 機械の能力; |
・ | 回転数又は打撃速度; |
・ | 先端工具のモデル及び形式; |
・ | すべての追加情報(例えば,先端工具のアンバランス)。 |
8.6 機器
・ | 機器の詳細; |
・ | 構成トレーサビリティ; |
・ | 最新の検定日; |
・ | 機能点検の結果; |
・ | すべての干渉試験の結果。 |
8.7 加速度測定条件
・ | 加速度計の位置及び方向(略図及び寸法を含む); |
・ | トランスデューサ取付方法; |
・ | トランスデューサ及びマウントの質量; |
・ | 操作条件; |
・ | 腕の姿勢及び手の位置(作業者が右利きか左利きかを含む); |
・ | すべての他の情報(例えば,押し付け及び把持力のデータ) |
8.8 測定結果
・ | x,y及びz軸ISO周波数補正手腕振動値(ahwx(rms),ahwy(rms)及びahwz(rms)),可能なら各作業者毎に; |
・ | ISO周波数補正振動合成値ahv(rms); |
・ | 測定時間 |
・ | 周波数分析が可能ならば,非補正1/3オクターブバンド周波数スペクトル; |
・ | 単軸又は2軸測定を用いた場合,振動合成値を与えるための乗率(単軸又は2軸測定を用いたことの正当性及び用いた乗率の正当性を含む)。 |
8.9 日振動暴露評価結果
・ | 各作業者毎の振動合成値ahv(rms); |
・ | 各作業者毎の振動暴露期間Ti; |
・ | 得られたならば,各作業者毎の部分振動暴露Ai(8); |
・ | 日振動暴露量A(8); |
・ | 日振動暴露結果の不確かさの評価。 |
附属書A
(規定)
振動暴露及び健康リスクアセスメント
(規定)
振動暴露及び健康リスクアセスメント
この附属書は,どのように手腕振動に関連する振動及び健康アセスメントを行うかの手引きを提供する。
A.1 日暴露対策値及び限度値
A.1.1 日暴露対策値(DEAV)は2.5m/s2[日振動暴露量,A(8)]である。DEAVは手腕振動への健康リスク閾値に相当する。この規格の目的のために,健康リスク閾値を,暴露された個人の内の幾人かに,血管,骨又は関節,神経若しくは筋肉系に異常な兆候,症状及び検査所見を生じるに十分な手腕振動暴露の量,と定義する。
A.1.2 日振動暴露限度値(DELV)は5.0m/s2[日振動暴露量,A(8)]である。このレベルの又はこれ以上の手腕振動へ暴露される労働者は,高い健康リスクを持つことが予期される。この規格の目的のために,高い健康リスクを,暴露された個々人に,高い確率で血管,骨又は間接,神経若しくは筋肉系に異常な兆候,症状及び検査所見を生じるに十分な手腕振動暴露の量,と定義する。
A.1.3 DAEVを超えた場合には,健康リスクを低減するために労働者の手腕振動への暴露を低減するためのプログラムを開始することが望ましい。このプログラムは附属書B及び附属書Cに規定する行動を含むことが望ましい。労働者をDEAVより大きい振動に暴露させないことを推奨する。
A.1.4 振動合成値ahv(rms)は,暴露時間Tvが8時間と異なる場合に対し,日振動暴露量の用語で書くことができる:
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(A.1) |
DEAV | ![]() |
又は | ![]() |
(A.2) |
DELV | ![]() |
又は | ![]() |
(A.3) |

図A.1-8時間以外の振動暴露時間に対するahv(DEAV)及びahv(DELV)のプロット
A.2 振動暴露評価
手腕振動への労働者の暴露は,労働者が暴露される実際の振動値を測定すること又は機器製造業者から提供される適切な振動データ,の何れかで決定し,次に対応する振動合成値ahv(rms)及び関係する日暴露値A(8)を計算しなければならない。機器製造業者から提供される振動データはそれらの機器が実際の作業条件で用いられるそれに厳密に相当する条件から得たものでなければならない。機器供給業者はどのような条件下でそのデータを得たかを文書化しなければならない。
A.3 健康リスクアセスメント
A.3.1 | 手腕振動への暴露に関係する健康リスクアセスメントを実施するときには,次に注意を払わなければならない: |
A.3.1.1 すべての断続的な又は繰り返し衝撃を含む,手腕振動のレベル,種類及び継続時間;
A.3.1.2 DEAV及びDELV;
A.3.1.3 製造業者の取扱説明書にしたがって機器が用いられたかどうか;
A.3.1.4 特に他の交絡する症状に起因するリスクにある労働者の安全衛生に関するすべての影響;
A.3.1.5 機械振動と作業場又は作業機器の間の交互作用に起因する労働者の安全への間接影響;
A.3.1.6 作業機器の製造業者により提供される,関係する国内又は国際規格に従った情報;
A.3.1.7 手腕振動暴露のレベルを低減するために設計された代替機器の存在;
A.3.1.8 低温のような特別の作業条件;
A.3.1.9 手腕振動に暴露される労働者の健康監視から得た適切な情報。
A.3.2 日振動曝露値A(8)を決定した後で,A(8)で定量化する手腕振動へ暴露される労働者の10%に手腕振動症候群(HAVS)に伴う血管症状が発生することが予想される前の,年で表す時間Dyを決定することができる(ISO 5349-第1部参照):
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(A.4) |
図2に,日振動暴露値A(8)の関数としてのDyのプロットを示す。

図A.2-日振動暴露値A(8)の関数としてのDyのプロット
附属書B
(規定)
手腕振動暴露に伴う健康リスクの緩和
(規定)
手腕振動暴露に伴う健康リスクの緩和
この附属書は,作業場における手腕振動に伴う健康リスクの緩和方法についての手引きを提供する。この附属書に記載する対策の個々の路線の実施に関連する具体的な手順は,扱う手腕振動健康リスクの性質に依存する。
B. 1 可能性のある健康リスクを回避又は低減するための指針
手腕振動暴露に付随する健康リスクを回避又は低減するためには,次に特別の注意を払うことが望ましい:
B.1.1 | 手腕振動への暴露がより少なくなる他の作業方法; |
B.1.2 | 行う労働に配慮した,考え得る最小限の振動を発生する,適正な作業機器又は良い人間工学的設計; |
B.1.3 | 手腕系へ伝わる振動を低減するハンドルのような,振動に起因する不詳のリスクを低減する補助機器; |
B.1.4 | 振動を発生する機器を良好な作業状態に維持するために策定された,適正な保守プログラム; |
B.1.5 | 可能であるならば,不適当な作業姿勢及び工具の重量に関係する不必要な静的負荷を低減するための作業場及び作業ステーションの設計及びレイアウト; |
B.1.6 | 安全性を向上し,可能性のある手腕振動への暴露を低減するために,機器の適切な使用について労働者を指導するための適切な情報及び訓練; |
B.1.7 | 手腕振動暴露の継続時間及び強さの制限; |
B.1.8 | 適切な休憩時間を伴う適切な作業計画; |
B.1.9 | 寒冷及び湿潤から労働者を保護する適切な衣類。 |
B.2 低振動工具及び個人用保護具
B.2.1 | 可能であるならば,手腕振動は振動を発生する機器で低減するのが望ましい; |
B.2.2 | 防振手袋のような個人用保護具を,手腕系に振動が伝わるのを低減するために,上記の規定と併せて用いてもよい。防振手袋は独立した認定試験機関で,ANSI S3.40/ISO 10819に概説する手順により振動伝達性試験を実施するために試験しなければならない,そして,防振手袋と分類されるにはANSI S3.40/ISO 10819の要求事項を満たさなければならない。 |
附属書C
(規定)
訓練及び医学的監視
(規定)
訓練及び医学的監視
この附属書は,作業場における手腕振動に関連する訓練及び医学的監視に関しての手引きを示す。具体的な訓練及び健康監視の実施手順は,扱う手腕振動健康リスクの性質に依存する。
C.1 訓練
C.1.1 労働者訓練は次に関する情報を提示することが望ましい: |
C.1.1.1 手腕振動への暴露を排除又は低減するためにとる対策; |
C.1.1.2 附属書Aに規定するDEAV及びDELV; |
C.1.1.3 なぜ,そしていかにして手腕振動に関係する負傷を発見し報告するか; |
C.1.1.4 なぜ,そしていかにして手腕振動に関係する負傷の一因になるかもしれない作業状態を発見し報告するか; |
C.1.1.5 手腕振動への暴露を最小限にする安全労働訓練。 |
C.2 健康監視
C.2.1 健康監視は次の時にふさわしい:
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C.2.1.1 手腕振動への暴露に,暴露と識別可能な有害な健康影響との間に明確な結びつきがあると認められるとき;
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C.2.1.2 手腕振動暴露に関係する有害な健康影響が,現存する作業条件に起因して起きる蓋然性があるとき;
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C.2.2 適切な健康監視手続きは,資格のある医学プロバイダと相談して行うことが望ましい。
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C.2.3 監視は,緩和プログラムの効果を観察し評価するために実施する。 |
参考文献
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