ヒト胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係るガイドラインの作成にあたり検討する課題について(たたき台)


I.指針(ガイドライン)に定める内容について

 何を規定することとするか。

(1)研究実施に当たって研究機関及び研究者が遵守すべき事項
(2)研究実施のための手続き

 国の関与のあり方について、どのように考えるか。

(1)研究実施のための手続きに、国が何らかの形で関わることとするか。関わる場合、どのような関与のあり方が適当か
(2)または、研究実施のための手続きに、国が関わらないこととするか。

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)
 国は、生殖補助医療研究のためにヒト受精胚の作成・利用を計画している研究がガイドラインの定める基準に適合するかを審査するための適切な枠組みを整備する(p.18)

  考えられる枠組みの例
   ・国が審査を実施
   ・審査機関を別に設置
   ・厚生労働大臣等が「意見を述べる」(最終判断は機関に委ねる)



II.ヒト胚の作成・利用を伴う研究について

 研究の目的について

(1)
認められる研究の範囲

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

  (1) 以下の3つの条件を全て満たす必要があると考えられる。(p.6)
ア) ヒト受精胚の取扱いによらなければ得られない生命科学や医学の恩恵及びこれへの期待が十分な科学的合理性に基づいたものであること
イ) 人に直接関わる場合には、人への安全性に十分な配慮がなされること
ウ) そのような恩恵及びこれへの期待が社会的に妥当なものであること
  (2) 生殖補助医療研究は、これまで体外受精の成功率の向上等、生殖補助医療技術の向上に貢献しており、今後とも、生殖補助医療技術の維持や生殖補助医療の安全性確保に必要と考えられる。こうした研究成果に今後も期待することには、十分科学的に合理性があるとともに、社会的にも妥当性がある。このため、生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成・利用は容認し得る。(p.7)

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(参考)日本産科婦人科学会会告「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」

1. 研究の許容範囲
 精子・卵子・受精卵は生殖医学発展のための基礎的研究ならびに不妊症の診断治療の進歩に貢献する目的のための研究に限って取り扱うことができる。
 なお、受精卵はヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立のためにも提供できる。








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(参考)厚生労働科学研究補助金厚生労働特別研究事業「ヒト胚の研究体制に関する研究」(平成17年3月)(抄)

(1) 受精メカニズムに関する研究
(2) 胚発生に関する研究
(3) 着床のメカニズムに関する研究
(4) 遺伝子異常の発生機序解明に関する研究
(5) 配偶子・胚の保存に関する研究










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(参考)日本産科婦人科学会会告に基づき登録されている研究の例

(1) 受精効率を上げるための研究
(2) 受精過程の研究
(3) 胚の成熟過程に関する研究
(4) 胚の培養条件に関する研究等








(2)
研究実施の要件等

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

  ヒト受精胚の取扱いのための具体的な遵守事項として、
   (1) 研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと
   (2) 未受精卵の入手制限及び無償提供
   (3) ヒト受精胚や未受精卵の提供の際の適切なインフォームドコンセントの実施
   (4) 胚の取扱い期間の制限
   (5) ヒト受精胚を取扱う研究についての記録の整備
   (6) 研究実施機関の研究能力・設備の要件
   (7) 研究機関における倫理的問題に関する検討体制の整備及び責任の明確化
   (8) ヒト受精胚や未受精卵等の提供者の個人情報の保護
   (9) 研究に関する適切な情報の公開
  等を定める必要がある。(p.17)

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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

 第26条 ヒトES細胞の使用は、次に掲げる要件に適合する場合に限り、行うことができるものとする。
 次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。
 ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
 ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び必要性を有すること。
 2 使用に供されるヒトES細胞は、この指針に基づき樹立されたものに限るものとする。
 3 前項の規定にかかわらず、文部科学大臣がこの指針を基準として樹立されたものであると認める場合には、使用機関は、海外から分配を受けるヒトES細胞を使用することができるものとする。
















 研究の禁止事項について

(1)
胚の取扱い(胎内への移植、培養期間など)

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

  (1) ヒト胚は胎内に戻さず、取扱いは原始線条形成前に限る。(p.16)
  (2) 研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと(p.17)

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(参考)厚生労働科学研究補助金厚生労働特別研究事業「ヒト胚の研究体制に関する研究」(平成17年3月)

(1) 作成した胚の培養期間は原始線条が出現する前の時期までとし、受精後14日以内と考えるのが妥当と考えられる。(p.5)
(2) 受精後2週間以内を研究許容時期と考えたい。(p.19)








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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

6条 ヒトES細胞の樹立の用に供されるヒト胚は、次に掲げる要件に適合するものとする。
 生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供者による当該ヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであること。
 ヒトES細胞の樹立の用に供されることについて、適切なインフォームド・コンセントを受けたものであること。
 凍結保存されているものであること。
 受精後十四日以内のものであること。ただし、凍結保存されている期間は、当該期間に算入しない。













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(参考)日本産科婦人科学会会告「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」
2. 精子・卵子・受精卵の取り扱いに関する条件
 精子・卵子及び受精卵は、提供者の承諾を得たうえ、また、提供者のプライバシーを守って研究に使用することができる。
 1)非配偶者間における受精現象に関する研究は、その目的を説明し、十分な理解を得たうえで、これを行う。
 2)受精卵は2週間以内に限って、これを研究に用いることができる。
 3)上記期間内の発生段階にある受精卵は凍結保存することができる。










(2)
加えてはならない操作

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(参考)厚生労働科学研究補助金厚生労働特別研究事業「ヒト胚の研究体制に関する研究」(平成17年3月)

 結果として遺伝子改変が起こりうる研究を行ってはいけない。(p.19)






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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

27条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる行為を行ってはならないものとする。
  ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。
  ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。
  ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。
  ヒトES細胞から生殖細胞を作成すること。










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(参考)遺伝子治療臨床研究に関する指針

 人の生殖細胞又は胚(一の細胞又は細胞群であって、そのまま人又は動物の胎内において発生の過程を経ることにより一の個体に成長する可能性のあるもののうち、胎盤の形成を開始する前のものをいう。以下同じ。)の遺伝的改変を目的とした遺伝子治療臨床研究及び人の生殖細胞又は胚の遺伝的改変をもたらすおそれのある遺伝子治療臨床研究は、行ってはならない。










 研究実施機関の要件について

(1)
実績・設備・能力などの基準

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

   研究実施機関の研究能力・設備の要件(p.17)

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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

9条 樹立機関は、次に掲げる要件に適合するものとする。
 ヒトES細胞を樹立及び分配に足りる十分な施設、人員、財政的基礎及び技術的能力を有すること。
 ヒトES細胞の樹立及び分配に際して遵守すべき技術的及び倫理的な事項に関する規則が定められていること。
 倫理審査委員会が設置されていること。










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(参考)日本産科婦人科学会会告「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」(平成18年4月)(抄)

登録申請を行う際には,下記の具備すべき施設基準を満たすように努力すべきである.
  (1) 基準施設
 ・採卵室
 採卵室の設計は,基本的に手術室仕様とする.
 ・培養室
 培養室内では,基本的に手術着,帽子,マスク着用で手洗いを行う.
 培養室内は,エアフィルターを通した清浄空気を循環させる.
 ・凍結保存設備
  (2) その他の望ましい施設
 ・移植室
 ・採精室
 ・カウンセリングルーム
 ・検査室


















(2)
倫理審査委員会の設置(倫理的問題に関する検討体制の整備)

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

   研究機関における倫理的問題に関する検討体制の整備及び責任の明確化(p.17)

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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

十三条 樹立機関の倫理審査委員会は、次に掲げる業務を行うものとする。
 樹立計画についてこの指針に即し、その科学的妥当性及び倫理的妥当性について総合的に審査を行い、その適否、留意事項、改善事項等に関して樹立機関の長に対し意見を提出するとともに、当該審査の過程の記録を作成し、これを保管すること。
 樹立の進行状況及び結果について、報告を受け、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して樹立機関の長に対し意見を提出すること。
 樹立機関の倫理審査委員会は、次に掲げる要件に適合するものとする。
 樹立計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性を総合的に審査できるよう、生物学、医学及び法律に関する専門家、生命倫理に関する意見を述べるにふさわしい識見を有する者並びに一般の立場に立って意見を述べられる者から構成されていること。
 樹立機関の関係者以外の者が二名以上含まれていること。
 男性及び女性がそれぞれ二名以上含まれていること。
 樹立計画を実施する者が審査に参画しないこと。
 倫理審査委員会の活動の自由及び独立が保障されるよう適切な運営手続が定められていること。
 倫理審査委員会の構成、組織及び運営並びに議事の内容の公開その他樹立計画の審査に必要な手続に関する規則が定められ、かつ、当該規則が公開されていること。






















(3)
研究の体制(機関の長、研究責任者の役割など)
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(参考)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年文部科学省告示第155号)

十一条 樹立機関の長は、次に掲げる業務を行うものとする。
 樹立計画の妥当性を確認し、その実施を了承すること。
 ヒトES細胞の樹立の振興状況及び結果を把握し、必要に応じ樹立責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。
 ヒトES細胞の樹立及び分配を監督すること。
 樹立期間においてこの指針を周知徹底し、これを遵守させること。

十二条 樹立責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。
 ヒトES細胞の樹立に関して、内外の入手し得る資料及び情報に基づき、樹立計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討すること。
 前号の検討の結果に基づき、樹立計画を記載した書類(以下「樹立計画書」という。)を作成すること。
 ヒトES細胞の樹立を総括し、及び研究者に対し必要な指示をすること。
 ヒトES細胞の樹立が樹立計画書に従い適切に実施されていることを随時確認すること。
 ヒトES細胞の樹立の進行状況及び結果に関し、樹立機関の長および樹立機関の倫理審査委員会に対し必要な報告をすること。
 前各号に定めるもののほか、樹立計画を総括するに当たって必要となる措置を講じること。
 樹立責任者は、一の樹立計画ごとに一名とし、動物胚を用いたES細胞の樹立の経験その他ヒトES細胞の樹立に関する十分な専門的知識及び技術能力を有し、かつ、前項各号に掲げる業務を的確に実施できる者とする。

























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(参考)日本産科婦人科学会会告「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」

4. 精子・卵子・受精卵の取扱者
 ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う責任者は、原則として医師とし、研究協力者は、その研究の重要性を充分認識したものがこれにあたる









 配偶子・受精胚の入手のあり方について

(1)
配偶子・受精胚の入手方法

  総合科学技術会議意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
  (平成16年7月23日)

    (1) 生殖補助医療のための体外受精はヒト受精胚を損なう取扱いであるものの、母体の負担に配慮してこのような方法で生殖補助医療を行うことには、十分な科学的合理性と社会的妥当性も認められるため、余剰胚の発生は容認し得る。(p.8)
    (2) いわゆるボランティアからの未受精卵の採取については、自発的な提供を望気持ちは尊いものとして尊重するとしても、一方で、関係者等である女性に未受精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、本当の意味での自由意志からの提供とならない場合も考えられるため、原則、認めるべきではない。(p.9)
    (3) 未受精卵の入手には、生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取、媒精したものの授精に至らなかった非受精卵の利用とともに、技術の進歩状況にもよるが卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合があり得ると考えられる。(p.9)
    (4) 個々の研究において必要最小限の範囲に制限し、みだりに未受精卵を採取することを防止しなければならない。(p.9)
    (5) 未受精卵の入手制限及び無償提供(p.17)
    (6) ヒト受精胚や未受精卵の提供の際の適切なインフォームドコンセントの実施(p.17)
    (7) ヒト受精胚や未受精卵等の提供者の個人情報の保護(p.17)

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(参考)厚生労働科学研究補助金厚生労働特別研究事業「ヒト胚の研究体制に関する研究」(平成17年3月)

 (1) 新たに胚を作成できる精子を得られる可能性があるsourceとして、下記のものが考えられる。いずれの場合もインフォームドコンセントが十分に行われなければならない。(p.18)
 ア) 無償ボランティアの男性からの射出精子や凍結保存精子
 イ) 配偶子間人工授精や体外受精(含む顕微授精)を受けた男性からの余剰精子、あるいは凍結精子。また、精巣精子回収法を実施した男性からの余剰精巣精子、あるいは精巣組織
 ウ) 妊孕性保存目的で治療の前に凍結して不要になった場合や、精巣腫瘍などで精巣摘出手術を受けた場合での無償ボランティアからの提供精巣組織
 エ) 精巣性女性化症候群での摘出精巣(性腺は高度に萎縮しておりsourceとして不適切と思われる)

 (2) 新たに胚を作成できる卵子を得られる可能性があるsourceとして、下記のものが考えられる。いずれの場合もインフォームドコンセントが十分に行われなければならない。(p.19)
 ア) 体外受精(含む顕微授精)を受けた女性の採卵によって得られた卵子(未熟卵子、成熟卵子で余剰となった卵子、授精が不成立と判断された非受精卵、凍結された未受精卵、成熟卵、非受精卵)
 イ) 卵巣疾患などにより手術で摘出した卵巣の一部から得られた卵子(未熟卵子、成熟卵子)
 ウ) 中絶胎児の卵子(すべて未熟卵子)























 インフォームドコンセントのあり方について

(1)説明者に求められる要件、説明内容
(2)カウンセリング体制の整備
(3)提供者の自由意志を担保する環境整備


 胚の管理のあり方について

(1)研究に用いた胚の処理方法(廃棄、保存など)


 個人情報の保護について

(1)配偶子・受精胚の提供者の個人情報の保護
(2)配偶者間の配偶子を用いて胚を作成する場合の取扱い
(3)非配偶者間の配偶子を用いて胚を作成する場合の取扱い
(4)配偶子の提供とそれらを用いた研究が同一機関内で行われるべきか


 その他

(1)情報の公開について
(2)記録の保存について
(3)総合科学学術会議との関係
(4)用語の整理

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