06/06/29 第26回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 第26回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 1 日時  平成18年6月29日(木)10:00〜12:00 2 場所  経済産業省別館10階 1020号会議室 3 出席者    委員  公益代表  :諏訪委員、中馬委員、中窪委員、林委員        雇用主代表 :塩野委員、中島委員、原川委員、輪島委員        労働者代表 :栗田委員、豊島委員、長谷川委員、古川委員、三木委員    事務局 高橋職業安定局次長、生田総務課長、宮川雇用保険課長、田中雇用保険 課課長補佐、金田雇用保険課課長補佐、戸ヶ崎雇用保険課課長補佐 4 議題  雇用保険制度の見直しについて 5 議事 ○諏訪部会長 皆様おはようございます。大変お暑い中をご参集いただきましてありが とうございます。ただいまから、第26回の雇用保険部会を開会いたします。議事に移 ります前に本日の出席状況です。大沢委員、相川委員はご欠席で、豊島委員は少し遅れ るというご連絡があったようでございます。  それでは議事に移ります。本日の議題は、「雇用保険制度の見直しについて」です。先 月25日に開催されました第25回雇用保険部会において、就職促進給付以降の給付と、 これらの財政運営の在り方についてご議論いただきました。雇用保険の適用並びに給付 及びこれに関する財政運営の在り方について、一通り議論が終了したというわけです。 そこで本日は、これまでの主な議論などを一旦整理いたしますとともに、前回の部会で 皆様からご指摘のありました事項などについて、事務局からご説明をしていただきたい と思います。では、資料の説明をお願いいたします。 ○田中雇用保険課課長補佐 おはようございます。それでは資料に沿って説明申し上げ ます。配付しております資料1は、「これまでの主な議論等」です。資料2は、前回ある いは前々回にいただきました宿題の回答を含めて、「参考資料」として掲げております。 資料3は、「歳出・歳入一体改革に向けた基本的考え方について」です。これは財政制度 等審議会の建議の抜粋です。  それでは資料1から説明いたします。資料No.1、これまでの主な議論等です。これま で一通り「失業等給付」「適用」「財政運営」の在り方について議論をいただいたところ ですが、その中で出てきました主な議論などについて掲載をしています。それぞれの分 野ごとに主なものを書いております。  まず適用の問題については4点ほど掲げております。(1)いわゆるマルチジョブホルダ ー等就業形態の多様化に対応した雇用保険の適用範囲についてです。これについてはさ らに議論すべきではないか、という意見について掲載しております。(2)65歳以上を適用 除外としております雇用保険制度ですが、このことについて労働政策の対象年齢との関 連も念頭におきつつ、65歳以降の対処も検討する必要はないかということです。(3)短時 間労働者の取扱いについてです。その中でも短時間労働被保険者について、被保険者資 格、あるいは受給要件を通常の労働者の方と一本化することについてどう考えるか、と いう論点を掲げております。(4)私学教員への適用促進は進んでいるのかというご意見も 掲げております。以上が適用です。  次は失業等給付についての主な議論です。これも給付ごとに掲げております。(1)基 本手当についてです。議論がありましたように、基本手当については平成12年及び15 年改正により相当程度切り下げている。この中で給付日数の上限や所定給付日数等の給 付水準を変更する必要はあるのかというのを第1点に掲げております。(2)賃金日額の算 定ですが、賞与や一時金の取扱いについて見直す必要はないかという論点です。(3)特定 受給資格者や給付制限。給付制限の中には、いわゆる正当の理由のない自己都合離職と いうものの判断があるわけですが、給付制限の運用は適切であるかという論点を掲げて おります。  (2)65歳以上の方への給付です。高年齢求職者給付について、これは(1)の(2)と 同様ですが、65歳以降への対処も検討すべきではないかということで論点を書いており ます。  (3)特例一時金です。季節労働者の方への給付ですが、循環的な給付である特例一 時金については、廃止等の今後の在り方を検討すべきではないかという論点を書いてお ります。特例一時金については積雪寒冷地等の地域における給付が多いわけですが、積 雪寒冷地等の地域雇用対策を見直す必要はないか、という論点を2番目に掲げておりま す。  (4)教育訓練給付です。効果を高める観点から、引き続き講座の見直しを図るべき ではないかということです。(5)高年齢雇用継続給付です。改正高年齢法を踏まえ、今 後の方向性について考えていくべきではないかというのを第1点に掲げております。見 直しに当たりましては、激変を避ける観点から検討する必要はないかというのを2点目 に掲げております。(6)育児休業給付です。これも前回ご議論がありましたが、雇用保 険制度の枠内で行う観点からは、社会保険料が免除されていることを考慮すると、育児 休業給付の給付水準については、雇用保険制度では、現状が限界ではないかというのを 第1点に掲げております。2点目として育児休業取得を促進する方策について、検討す る必要はないか。これも併せて考えております。  続いて財政運営です。この財政運営は失業等給付に係る財政運営ということです。総 論として、平成15年度改正の経緯を振り返ると、制度の健全な運営を確保することが 何よりも重要ではないかと。前回ご議論のあったところです。  (2)国庫負担についてです。(1)雇用については国にも責任があるということから国 庫負担を入れているのは明確であるという議論があったかと思いますが、国庫負担の全 廃は国の雇用対策に係る責任放棄につながり、不適切ではないかという議論です。(2)雇 用保険制度について他の国との比較を行うのであれば、保険のほかに、他の国には国庫 による失業扶助制度がありますが、この点も考慮すべきではないかというのを第2点で 掲げております。(3)労使と国がそれぞれ応分の負担を行う観点からは、国庫負担を3分 の1ということが本来あるべきではないかということを第3点目に掲げております。(4) 自発的離職者に対する基本手当等各種給付の国庫負担の在り方について、検討すべきで はないかということです。(5)国庫負担の性格です。不確定性、経済がなかなか予想し難 いという状況ですが、その中でセーフテイネットとして国庫負担の必要性が高まるので はないか、という点を第5点として掲げております。(6)緊急時に国庫負担の割合を高め るという考え方もあるわけですが、緊急時にむやみに国庫負担の割合を高めることをす ると、モラルハザードが起きないかという点です。(7)積立金と国庫負担との関係ですが、 本来関連性はないのではないかという点を掲げております。  最後は保険料率です。1点目、保険料負担者の負担軽減を図る観点から、弾力条項の 発動基準の在り方について検討すべきではないかということです。2点目、保険料率も 引き下げられる状態でないと、国庫負担を引き下げるべきではないのではないかと。前 回ご議論のあったところです。これまでの主な疑論等ですが以上のようにまとめられる かと思っております。  続いて資料2です。参考資料ということで掲げておりますが、前回、前々回で議論の あった事項について説明資料を載せております。まずマルチジョブホルダー関係の資料 です。詳細な資料について提示すると前回申し上げたわけです。なかなかご希望に沿え る資料がなかったのですが、実態調査として正社員あるいは非正社員の方に、「あなた副 業していますか」というアンケート調査をしたものがありましたので、それについて掲 げております。内容はいろいろ掲載されておりますが、特徴的なところだけを抜粋して 説明いたします。  1頁、正社員の方に副業していますかと。この副業というのは、雇用されているもの 以外も含んでおります。前回の資料では、就業構造基本調査の結果から副業者1.5%と 申し上げましたが、これは副業も雇用されているという方ですので1.5%だったわけで す。今回は、特にそういう縛りをかけておりません。したがいまして、少し数字が多く なっているということです。副業者については、1−1の表ですが、男女計で4.5%と いうことです。下の欄の所に男性と女性の割合がありますが、男性は4%、女性は6.1% で女性がやや多いということです。  2頁、これは男性と女性を分けてアンケートを取っておりますので、男性と女性では どういう違いがあるかも分かるわけです。1−4の表をご覧いただきますと、年収はど のぐらいですかという調査ですが、男性で副業している方については、500〜700万円 未満の方が27.5%、700万円以上の方が33.6%です。つまり700万円以上の方が3分の 1ということで、副業で平均賃金よりも高い収入を得ているのかなと思います。それに 対して女性の副業者の方は、300万円未満の方が半分近くで44.8%。300〜500万円未 満は36.4%です。これは正社員の方にアンケートを取ったわけですが、正社員の仕事と 副業を足して大体500万円未満のところに位置していると言えるのではないかと思いま す。  1−5の表は1週間の労働時間はどのぐらいかということです。ここでのアンケート の取り方としては35時間を起点としており、35時間以上という方は、男性の場合、副 業者の方で89.2%、女性で70.5%。比較的労働時間の長い方が多いということが言える のではないかと思います。なお、複数副業をやっているかというアンケートの取り方で はありませんので、この副業の中には、2つ、3つ副業されている方がいるかもしれま せんが、そこはこのアンケートでは分からないということです。それに対して非正社員 の副業の状況です。これも特徴的なところだけを申し上げますと、3頁の上の2−1の 表ですが、非正社員の方に、「あなた副業していますか」と聞いたところ、男性、女性合 わせて11.5%の方が副業していると。先ほどの正社員の方よりは副業率が高いというこ とです。  4頁、年収あるいは就業時間のアンケートも取っております。いちばん上が労働時間、 就業形態などの調査で、男性で副業している方は、週35時間以上の方が71.1%と、2 つ足すと長い時間働いているということです。女性は35時間未満が74.5%と多数を占 めているということです。  収入はどのくらいですかという調査は2−5の表です。男性の方、これは非正社員と 副業を持っている方ということですが、副業者の方については400万円以上の方が 30.2%、300〜399万円が16.0%で、先ほどよりは低い水準です。女性の場合は100万 円未満が44.8%、100〜199万円が35.5%ですので、おそらく家計の補助的な働き方を されている方が多いのかなということが分かると思います。  5頁、これは違うアンケートです。今までのアンケートは労働政策研究・研修機構に よる調査ですが、5頁は三和総合研究所の調査です。副業でどのぐらい長い時間働いて いるかを示すもので、副業やアルバイトの1ヶ月当たりの労働時間は下の円グラフに掲 げております。これは月に何時間かということですが、20時間未満であるとか、あるい は20〜40時間未満という比較的短い方が多いわけですが、中には1ヶ月当たり100時 間以上、週に20〜25時間以上働いている方は10%程度いるというのが結果としてわか っております。副業とはいっても本業と同程度の働き方をされている方がいるというこ とが言えるのではないかと思います。以上がマルチジョブホルダーの参考資料です。  続いて6頁です。ご質問が前々回にありましたが、再就職賃金の日額の推移です。こ れについては平均値を平成13年度から取ってみました。13年度から17年度まで少し ずつですが再就職賃金の日額は上がっております。年齢別に見ても徐々にですが上がっ ています。  それに関連して7頁に、基本手当日額と再就職賃金日額の状況を掲げております。前 回の平成15年改正で逆転現象の解消を図るということで制度改正を行ったわけですが、 その結果はどうなっているかということです。このグラフですが、下の横の目盛が離職 の際の賃金の日額です。賃金の日額の出し方は、6ヶ月分の給料を180で割ったもので す。縦の線が、離職の際の賃金日額に対する基本手当の日額。それから再就職時にどの ぐらいの賃金で再就職されたかという平均を示しております。  これで見ますと、いちばん下にあります線、基本手当日額(現行制度)が今の基本手 当日額の制度です。上のほうに××という線がありますが、この曲線が基本手当日額(15 年改正前)です。その間にある線ですが、17年、16年は年度で見ております。17年、 16年、15年、14年、13年。13年と14年は重なっておりますが、再就職時賃金の日額。 これは離職の際の賃金日額に比べてどのぐらいの水準で再就職されているかということ を示しております。これを見ますと、逆転現象は解消されていることが分かるかと思い ます。  8頁は教育訓練給付の受給者の実績です。前回お出しした資料は、給付額や給付人員 でしたが、その人員の中で新しく設けた累計。つまり、被保険者期間が3〜5年未満の 方についてどうなっているかを示しております。15年度からできた制度で、16年度、 17年度と全体の教育訓練給付の受給者に占める割合は高まっているということです。17 年度は21.4%の方が3〜5年未満の方です。なお、3〜5年未満の方については、給付 率は5年以上の方より低く、半分になっています。増加傾向といいますか、割合として は増える傾向にあるということです。  教育訓練給付に係る、役に立っているかということを調べたアンケート調査ですが、 ここでは概略として、在職中であった方、あるいは離職中であった方で教育訓練給付を 受けた方についてお聞きしております。在職中であった方は85.7%、離職状態にあった 方は79%の方が、役に立った、または大変役に立ったというアンケートの回答であった ということです。その逆で、全く役に立たなかった方も若干いたということです。  10頁、11頁です。これは雇用保険データに基づき客観的な資料からどういう効果が あったかを調べております。10頁の資料は在職中に教育訓練給付を受けた方が訓練終了 後1年間に離職した率、つまり定着しているかどうかを調べた資料です。それに対して、 受けていない方についてどうだったかということも併せて調べて、その効果を見ており ます。給付を受けた方で離職した率は15.4%、受けなかった方は20.0%です。定着率は、 教育訓練給付を受けたほうが高いということが、このデータでは言えるということです。  11頁は離職者について、どのぐらい早く再就職したかについて調べております。訓練 終了後6ヶ月以内の再就職率を見ると、受講者は27.2%です。これは集計期間の初日に 離職から1年以内であって、資格決定を受けている方をデータにしておりますが、この 方々を6ヶ月以内で再就職されている方について見ますと、20.8%ということですので、 教育訓練給付を受けた方のほうが早く再就職ができるという結果になっております。  12〜15頁は、今までの教育訓練給付に係るもののバックデータです。  16頁は前回ご質問のありました雇用保険に係る事務費の内訳です。18年度予算は、 事務費計918億円で、17年度に比べて16億円減となっております。内訳は業務取扱費 が867億円、施設整備費が52億円です。業務取扱費の中には、ハローワークの職員等 の人件費、雇用保険業務に係る職員の人件費が442億円。以下、旅費、庁費、通信専用 料、電子計算機等借料、土地建物借料等が並んでおります。減額できるように努めてい るという状況です。以上が資料2です。  最後に資料3です。財政制度等審議会、6月14日の建議です。歳出・歳入一体改革 に向けた基本的考え方についてです。この中では、特に歳出の抑制の観点から雇用保険 について記述がなされています。9頁をご覧ください。いろいろな歳出削減の分野があ るわけですが、社会保障について大きな項目があります。「これまでの取組み」とあり、 これまでの雇用保険を含めて、年金、医療、介護保険とさまざまな改革をしてきたわけ ですが、「これまでの取組み」という中で、6行目、「この5年間においては、2度にわ たる医療制度改革、診療報酬・薬価の引下げ、雇用保険制度改革」と。これは15年改 正のことですが、雇用保険制度改革ということで制度改正をし、改革を行ってきたとい うことが評価されているということです。「社会保障関係費の自然増については概ね1.1 兆円程度抑制されている」ということで、これまでの取組みが書かれております。  「今後の取組み」ということで提言されているのが11頁です。11頁「雇用」という 所ですが、この雇用の大半が雇用保険制度の話です。「雇用については特別会計改革の観 点から、雇用保険三事業の見直しを進めてきた」と。これは以前からそうだったという ことですが、「更に『行政改革推進法』において、雇用保険の国庫負担の在り方について は、廃止を含めて検討する」ということで、これは成立をいたしております。「この特別 会計改革の趣旨を踏まえ、雇用保険制度の根幹である失業等給付が、被用者のみを対象 とする労使の共同連帯による保険制度であることを考えれば、平成19年度予算編成に おいて国庫負担の廃止を含めた在り方の見直しを行うべきである」という提言がなされ ております。19年度予算編成においてというのは、おそらく新しい行政であろうと思い ます。「雇用保険三事業についても、失業等給付の抑制に資する観点から、事業の在り方 そのものについても抜本的な見直しを行う必要がある」と。これまでの提言がなされて いるということです。  以下、雇用対策についても提言がありますが、これは昨年来のものとあまり変わって いないと思います。資料については以上です。 ○諏訪部会長 ただいまの説明をめぐりまして、ご質問、ご意見がありましたらお願い いたします。 ○輪島委員 資料2の教育訓練給付の所で、定着率が良くなっている、再就職率がいい ということを示しているわけですが、何の講座を取っているから、それが具体的にそう なっているのかというのがないと、本当にそうなのかどうかが。英会話で定着率がいい のか、運転免許を取ったので再就職率が高くなっているのか、そういう違いが出てくる のではないかと思うのです。それは分かるのかどうか教えていただきたいのですが。 ○宮川雇用保険課長 これは雇用保険データに基づきまして、こういう形でやっており ます。先ほど田中が説明した中で申し上げましたとおり、いま輪島委員が言われた真の 意味の因果関係、これははっきり申し上げまして、この数字からは出てまいりません。 したがいまして、いろいろな解釈の仕方は十分あり得ると思います。  ただし、この中で訓練修了者に対する離職率の問題、あるいは離職された方の再就職 の問題のいわゆる必要条件、十分条件的な考え方からすれば、必要条件的な要件は、一 応制度としては満たしているのではなかろうかと。ただし、これで証明したということ で、そこまでいくかどうかというのは、いろいろな意味での解釈はできるのではないか と思っています。  もう1つ、アンケート調査ですが、アンケート調査という性格上、やはり役に立った という方が多くなるのかもしれません。役に立たなかった、あまり役に立たなかったと いう人たちも、この制度が問題だったのか、それとも制度の中の講座が問題だったのか という分析まではできておりませんので、その辺のところも、併せて評価の中身という ことだと思います。 ○中窪委員 いちばん最後の事務費の内訳の所で、これは雇用保険関係のものだけとい う説明をいただいた気がするのです。職安で普通の求職・求人の関係は除外していると 理解してよろしいのでしょうか。 ○宮川雇用保険課長 ハローワークの職業紹介関係は一般会計でありまして、これは雇 用勘定で雇用保険のほうの、いわゆる業務取扱費、施設整備費ということです。 ○中窪委員 新聞等で、職安の職員を減らすという話を目にするのですが、あれはどち らのほうを対象に考えておられるのでしょうか。 ○生田総務課長 定員削減については一般会計職員と雇用保険の雇用勘定職員がありま して、この人件費、雇用保険の業務取扱費の部分については、雇用勘定職員の減少は影 響が出ます。ですから、こちらのほうも減らすこともありますし、一般会計職員のほう も減らすこともある、両方あり得るということです。 ○長谷川委員 国家公務員の定削において、何で一般会計だけではなくて特別会計の要 因も入ってくるのですか。国の国庫負担は給付に対して4分の1ですね。そうすると、 この事務費は全部特別会計の保険料で運営しているのに、なぜ財政当局は人件費削減の ところまで、国家公務員の定員削減の俎上に載せてくるのですか。 ○生田総務課長 公務員については一般会計の公務員と特別会計の公務員がおります。 ハローワークでも雇用保険関係の業務に従事している人は、給料自体がそもそも特別会 計から出ております。定員削減の過程で、一般会計職員についている業務が減るケース はもちろんありますが、特別会計職員についている業務が減るケース、雇用保険の関係 業務が減少するケースもありますので、それに応じて定員削減するときは、雇用勘定か ら給料を支払われている人件費が減るという形になります。 ○長谷川委員 本来特別会計というのは、労働者と使用者の保険料によって運営されて いるわけです。その定員削減をするかどうかというのは雇用保険部会、この審議会で決 めるのだったら理屈的に成り立つのですが、一切国がお金も出していないのに、何で国 家公務員の定員削減の中に特別会計の職員が入ってくるのか、何か説明がつかないので はないでしょうか。 ○生田総務課長 雇用保険制度の運営については、その制度を運営する担当者は当然い て、それは雇用保険の事務費で賄うということで、戦後すぐからずっと運営しているの ですが、担当職員の人件費については、雇用保険の保険料から出すというルールできて いるので、それを変えるという議論を根本からすることは十分あり得ると思いますが、 今までのルールはそういうルールで運営してきたということです。 ○宮川雇用保険課長 雇用保険の立場からしても、やはり人件費、できるだけ業務をス リム化するなり、簡素化するなりして、落とすべき所は落とすと。我々の雇用保険の業 務が落ちている部分については、いわば定員削減としてのカウントをしていただくとい う意味だと私は認識しております。 ○長谷川委員 この審議会、財政問題も議論の俎上に載っているのですが、私はとても 不思議な世界を見たような気分でいるのです。国が国庫負担をしているときに、給付に 対する4分の1の国庫負担をしていないにもかかわらず、例えば、スリム化というのは いろいろできてくるのですが、この間の国会で行政推進改革法を見ていると、雇用保険 の廃止も国庫負担の廃止も含めて検討されているのですが、全然理屈の立たない世界で はないのか。給付に対してしか国は言う権利はないと思うのですが、それは間違いなの ですか。 ○生田総務課長 一般会計の削減については、国の財政全般の問題として議論されてい る中で、各行政分野で一般会計が減らせる所については、できるだけ減らすという考え 方で全体的な議論がされています。雇用保険の世界では、一般会計が投入されているの が、いま委員が言われたように給付費の4分の1の国庫負担と、あと事務費の国庫負担、 8.5億円というのがあり、この2つしかないのです。  その中で給付費の4分の1の国庫負担について、主に、金額が大きいものですからそ ちらのほうについて議論されてきたということです。これにどう対応するかというのは、 まさにこの審議会で議論をし、仕切っていただく問題だと思います。結論が先にありき という問題ではなく、一般会計の投入額が大きい雇用保険について、どこまでできるか という議論はこれからしていただくことなのだと思います。 ○諏訪部会長 ここはよろしいですか。 ○長谷川委員 あとは中の財政のところでお聞きします。 ○諏訪部会長 そこは後ほど議論していただくことにしまして、ほかに資料1〜3をめ ぐりまして、ご質問、ご意見がありますか。よろしいでしょうか。  ご質問等を出していただいたのですが、これ以外の、とりわけ資料1の、これまでの 主な議論等の整理等をめぐりまして、皆様からご意見なり、ご質問がありますでしょう か。 ○輪島委員 資料1の3頁目の(6)の(2)育児休業の取得促進の方策について検討する 必要はないかというのは、イメージがわかないのです。どういう点だったのかを、もう 一度お聞かせいただきたいと思います。それから4頁の(7)、先ほど長谷川委員がご指摘 で、前回この部会でも、最終的にそういう指摘だったと思うのですが、それがこれなの かどうか。国庫負担として見たとき、本来関係性がないのではないかというのは、非常 に簡単に書いてある。重い話だと思うのですが、簡単に書きすぎではないか。もう一度 確認の意味で、ここの所の記述について確認をしたいと思います。 ○宮川雇用保険課長 これまで出ていた議論の中で育児休業については、まず1つは(1) にあるような雇用保険制度の枠内で行う場合は社会保険料は免除されている。概ね11% ぐらいに相当すると思います。それと育児休業給付が40%出ている。失業等給付につい ては50〜80%ということは50%が原則であるという関係から、雇用保険制度では現状 が限界ではないかというご意見が出るとともに、育児休業については、7割の方が育児 休業を取得せずにお辞めになっているという、逆の意味で単に給付水準の問題ではなく て、育児休業の取得を進めるような方策も考えるべきではないかというご意見が出たの を踏まえて、このような記述としております。  4頁の(7)ですが、国庫負担と積立金についてのご意見が出たものを踏まえたものです。 さらりと書いてあるということですが、かなり重い問題ではないかと思われます。国庫 負担は、あくまでも給付に対して結果的に4分の1を国が負担をすると。積立金につい ては給付ではなく保険料の剰余が出た場合に、積立金として積み立てる。それで不時の 状況に備えるという積極的な意味があるものという観点で、関連性の問題というご指摘 です。もちろん、ここのところにはいろいろな意見があるかと思います。全く無関係か と言われると、数字的には行って来いというか、国庫負担を、例えば増やせば積立金が、 現状の仕組みからすれば増えるわけです。全く無関係ではないにしても、本質的な意味 での関連性についてのご意見だったという形で、本来関連性がないのではないかという ことで、ご意見をまとめたところです。 ○輪島委員 資料としてこれもオープンになっていくものですが、そういう意味合いが 取れるとは、この(7)の所からは思えないので、そこの取扱いについては十分検討してい ただきたいと思います。いまの整理だと思いますが、基本的には、お金には色が付いて いないわけで、それが国庫負担なのか積立金に回っているのかどうかは分かりにくいわ けですが、本来関係性がないということは、基本的には雇用保険部会では、そういう議 論があったと思いますので、明確にしていただきたいと思います。  続いて、2頁の教育訓練給付の件です。先ほども申しましたが、引き続き講座の見直 しというのは当然のことだと思います。常々思っているのは、例えば年収が1,000万円 の人だと雇用保険料は1000分の8ですから、年間の保険料は8万円。本人負担が8万 円、企業負担が8万円で16万円。プラス三事業分があるわけです。個人としてみれば、 1,000万円の収入のある人が年間8万円の保険料を払っている。そうすると2年半保険 料を払うと20万円で、それで教育訓練給付20万円の給付を受けることができるという ことなので、個人として2年半払うと、そのまま給付が受けられて、かつその人が、先 ほどの参考資料ではありませんが、効果はあるにせよ離職すれば基本手当を受けるとい うことになると、ある意味で、雇用保険本体の財政からすれば二重取りということに制 度としてなっているのだと思いますので、財政の点が今回の大きな議論であるとすれば、 例えば併給調整のようなことをするのも必要なのではないかと思っています。主な議論 の中で意見として入れていただくと大変有り難いと思っています。 ○宮川雇用保険課長 確かに給付面で見ると20万円の保険料で20万円の給付というこ とになります。その20万円の給付を受け取るためには60%の自己負担が必要です。す なわち、この方は30万円の負担をしていただくという効果があり、現実的には50万円 の教育訓練を受けたと。あるいは50万円の教育訓練を受けさせるようなことをさせる 仕組みであるということも含めて。また、  何年積み立てたかにもよりますが、10万円を限度とする場合であれば40万円、20万 円の場合であったら  30万円と。そういう形で自己負担部分もあるということも併せてご議論いただければ と思います。 ○輪島委員 自己負担は当然です。そのことは当然にしても雇用保険財政の観点から言 えば、そういう点はあるのではないかと思っています。 ○長谷川委員 1つは、2頁の(3)の特例一時金です。(1)の特例一時金については廃 止等の今後の在り方を検討すべきではないかという表現ですが、これまでの議論で廃止 は出ていたかなと。私の記憶違いなのかどうなのか。廃止というのは誰も言ったような 気がしないのですが、その辺を聞かせてください。  もう1点は、今回の雇用保険制度の改革の場合に、財政運営と非常に密接な関係があ ると思うのです。雇用保険や国庫負担の4分の1の廃止も含めて検討、というのが政府 からのメッセージで、ずっと出されていますので、そのことを抜きにして議論はできな いと思うのです。政府が国庫負担の4分の1の廃止を含めてだとすれば、本来この雇用 保険制度はどうあるべきなのかという、そもそも論の議論も必要なのではないかと思う のです。かつて失業保険から雇用保険に変えたときに、単なる失業時だけの所得の補填 だけではなくて、雇用政策の一環という質的変化をしてきて、その結果、高齢者雇用継 続給付や教育訓練給付や育児休業給付という雇用政策絡みの、いろいろな給付制度が出 てきたのだと思うのです。  国がある意味で、そういうものも含めて撤退するというか廃止するというならば、も っと本来の、雇用保険というのは労使がどこまで責任を負ってやるべきものなのかとい う議論をして、国庫負担のないものについてどう扱うべきなのかという議論も含めて行 わないといけないのではないかと思っています。この検討の視点だと、いま労側だけを 言っているのですが、そういう思いがにじみ出てこない、淡々としているので。もし4 分の1の負担ありきが前提条件だとすれば、もっとそもそもの根本的な議論をしないと、 これは持たないのではないかと思います。 ○輪島委員 特例一時金の廃止は、さらっとですが私から申し上げたと思っております。 ○宮川雇用保険課長 そこは輪島委員からお話があったということ、それから、雇用保 険部会報告書は前回の資料に出しておりますが、平成11年と平成14年のそれぞれの報 告書の中には次のように書かれております。平成11年では「失業がもともと予定され た者に対する循環的な給付であり、本来的には一般対策で措置することが適当なもので あることから、将来的にはその在り方を検討する必要がある」。平成14年では、「今回 の見直しの対象としていないが、本給付は失業がもともと予定された者に対する循環的 な給付であり、他の雇用対策等で措置することが適当なものであることから、今後その 在り方について検討していく必要がある」。またさらに前回までの議論を踏まえて、こう いう表現にしているということです。 ○諏訪部会長 もう1つ長谷川委員が言われた、国庫負担の件。 ○宮川雇用保険課長 国庫負担については、今までの議論をさらに今後、国庫負担、保 険料、財政運営の在り方について、給付全体、保険料の在り方全体を含めて、ご議論い ただくべきという趣旨も含めて、ご指適の点は、単に国庫負担だけの問題ではないとい う意味も含めて、表現は考えたいと思っております。 ○中島委員 長谷川委員からお話がありましたが、国庫負担を減らしたいという基本的 な部分において、政府側の認識はそういうことなのかもしれません。基本的に私たち使 用者側の認識は、時代が変わり働き方なども変わっていく中で雇用保険制度全体を、こ の機会に是非見直しをしてもらおうと。基本的に見直しというのは、人も少なくなって いく中で、規模的には保険料の財政規模全体が少なくなっていくでしょうから、いろい ろな意味でスリム化をして、本当に雇用保険として役に立つ制度に限定してやっていっ てもらうのがいいのではないか。その中では当然、でき得れば労使の保険負担も、減ら せれば減らせるに越したことはないし、政府のほうは政府のほうで国の負担を減らした いという気持もあるのかもしれません。加えて使用者側は三事業という私たちだけしか 出していないものもあるわけで、こういったものも基本的にゼロになればそれに越した ことはないと思っています。全体を効率的なという意味で、方向としては縮小しようと いうことで整理をしていけばいいことだと認識しています。  したがって、例えば具体的な例ですが、教育訓練給付は先ほどお話が出ましたが、ご 説明で給付を受けた人と受けない人で再就職が7%早いとか、離職が5%少ないとかと。 直接的なデータではないかもしれませんがそういうご説明をいただきました。5%とか 7%という意味が、全体の教育給付を支払っている中で、5%は余分に失業していると いうわけですが、この失業の人に本来、失業給付を払うのだとしたらどのくらいのプラ ス・マイナスなのか、時期的にも短くなったというのも、どのぐらいのプラス・マイナ スなのか、といったこともきちんと検証して、効果がないものはもう止めてもいいので はないでしょうか。実際に金を払う効果が保険料の負担と比べて、なければ、この機会 に思い切ってお止めになったらいいのではないかと。できればやっていただきたいと思 います。 ○原川委員 国庫負担の問題は国の責務として廃止すべきではないと思います。それに 関連して財政運営の3頁の(1)に総論として、「平成15年度改正の経緯を振り返ると、 制度の健全な運営を確保することが何よりも重要ではないか」とあり、これは非常に重 要な観点だと思います。平成15年度改正のときに保険財政が破綻する寸前だというこ とで、保険料を約1年の間に1000の4、弾力条項を含めて上げたということがありま す。そういうところで労使も協力してやっているわけですから、状況が良くなったから といって、国庫負担を廃止してよいということにはならない。状況が良くなれば、まず、 その負担に協力した労使に還元すべきではないかと考えます。もちろん(1)の原則は 非常に大事なことですが、余裕ができるということであれば、まず保険料を引き下げる べきだと考えます。  もう1つ、これは確認ですが、適用の(3)短時間労働者の取扱いです。これは具体的に どういうことを言っているのかを、もう一度説明していただきたいのです。 ○宮川雇用保険課長 それでは最後の所から説明いたします。1の(3)の短時間労働者の 取扱いについてですが、特に具体的に書かれております被保険者資格、受給要件の所の 受給要件です。短時間労働被保険者というのは30時間を境にして、具体的には20〜30 時間の方が対象になります。受給要件、つまり失業した場合に受給要件があるかどうか について現在違いがあるわけです。給付内容について、日額については前回の平成15 年改正で完全に一般の方と合わさっており特に差はありません。受給要件はどう違うか というと、括弧に簡単に書いてありますが通常労働者の場合は、過去1年間のうち6ヶ 月間、月14日以上働いていて雇用保険の対象になっているということに対し、短時間 労働者の場合は、過去2年間について1年間。ただしその場合、月の数え方は11日で いいという違いがあります。この違いを今の段階で残しておくべきなのかどうか。と申 しますのはいろいろな意味があります。1つは、こういう違いがあることにより、かな り手続的に難しい場面がありまして、短時間労働者から一般労働者になったり、一般労 働者から短時間労働者になるということが、手続的にはいろいろ切り換えなければなら ないとか、条文上も非常に複雑になっている、計算も面倒くさくなっているという実務 上の問題もあります。そもそも思想的にこういうような形のもの、通常労働者が6ヶ月 で短時間労働者が1年、でも月11日と14日という差を残しておく必要性があるのかど うかを議論していただけたらという意味です。 ○原川委員 被保険者資格の一本化というのは、どういうことですか。 ○宮川雇用保険課長 短時間労働被保険者という資格と通常の被保険者という、「資格」 という名前になっているという意味です。ここはそれほど意味はありません。いちばん 問題になりますのは、受給要件の所です。 ○諏訪部会長 原川委員が前のほうで言われていたことについては。 ○宮川雇用保険課長 健全運営が、まず大事だろうという3の(1)の意見が過去の議 論の中で出てきた趣旨は、平成15年改正は原川委員が言われたように、破綻寸前とい う状況認識のもとに万やむを得ず、ぎりぎりのところで労使双方のご努力をいただいた という観点の中で、多少状況が良くなっていることは現実問題としてあるわけですが、 だからといって、すぐ、例えば元に戻すとか、そういうような形のものは、また同じこ とを繰り返すことになるおそれがあるのではないかということも含めて、やはり、ある 程度長い目で見ながら制度の安定的運営をやっていく必要性があるという趣旨で、こう いう文章にまとめたところです。またご議論いただければと思っております。  保険料の扱いについても、保険料率の、特に弾力条項等の発動基準。弾力条項の発動 基準については、前年度の決算数値が固まれば弾力条項が発動できるかどうかという条 件が満たされたかどうかが分かることになります。いまのところ9月下旬ぐらいには数 字が公表できる形で固まるということで、秋の議論の際には弾力条項の現実の条件を満 たしたかどうかということを含めて、弾力条項の在り方についてご議論いただければと 思っております。また、保険料率の問題と国庫負担の問題については(3)の(2)で書い ているところです。 ○古川委員 資料1の2頁の高年齢求職者給付ですが、高年齢求職者給付は65歳以降、 普通の基本手当の適用がされていないための対処のものだと思うのです。この65歳以 降への対処も検討する必要というのは、どういうことが想定されているのでしょうか。 ○宮川雇用保険課長 現在の雇用保険制度は65歳までをカバーする制度となっており、 65歳以降新たに加入することはありません。ただ65歳以前から加入されている方は、 引き続きその企業で勤めている限りは雇用保険の被保険者とはなりますが、保険給付は、 いわゆる基本手当ではなく高年齢求職者給付という、一時金の形で給付がなされる仕組 みになっております。1の(2)にありますように、雇用保険制度の適用範囲が65歳とい う問題をどうするのかという議論に併せて、高年齢求職者給付の在り方、すなわち65 歳以降への対処というのが、関連性があるという意味でこういう表現を取っております。 すなわち、雇用保険の適用除外、65歳以上を適用除外するという問題について、65歳 が適切かどうかという議論をすれば、高年齢求職者給付65歳以降、こういう一時金給 付にしますという在り方が変わるということです。関連して検討しなければならないと いう趣旨です。 ○豊島委員 雇用保険課長が原川委員の意見に対して説明されたわけですが、制度の健 全な運営を確保することはとても大事なことだと思うのです。ちょっと良くなったから といって国庫負担をなくしていいような乱暴な意見、これは極めて問題があるという立 場でいます。  保険料の問題をどうするかというのは秋の議論で、という話もいま課長からご説明が ありましたし、(3)の(1)の部分も含めて説明がありましたが、私どもが申し上げている 論点は国庫負担の問題です。それを廃止とか、4分の1でも基本的には問題ですし、3 分の1をきちんと堅持すべきだという意見を持っている、ということを申し上げておき たいと思います。  また最後の資料の中の、「労使の共同連帯による保険制度であることを考えれば」とい う、財政制度等審議会の中にもありますが、ここまで言うのなら先ほど長谷川委員が申 し上げたように当方に任せてくれと。特別会計の問題について、人件費、事務費、その 他の問題について余計な口を挟むなと。課長が言われたような主体的な立場での合理化 を図ることはもちろん大事なことですが、外部から言われるようなものではないと考え ております。 ○宮川雇用保険課長 私ども財政審に直接関与しているわけではありませんので、財政 審の内容についてコメントするというか、注釈する立場ではありません。漏れ聞いてい るところの趣旨についてあえて説明しますと、被用者のみを対象とする労使の共同連帯 による保険制度であることという趣旨は、去年ですと諸外国の状況を鑑みればというこ とがあったのですが、まず諸外国では、正直申し上げましてドイツ以外で国庫負担が入 っている保険制度はありません。雇用保険はすべて労使の保険料のみで行っています。 ただし、議論の中の(2)で書かせていただいたように、ヨーロッパでは失業扶助制度のあ る国が普通である。そのようなことも1点、事実としてございます。  もう1点の論点は、「被用者のみを対象とする」ということです。この点については、 いわゆる被用者という雇用されている方のみの事業に、いわゆる一般財源である税金を 対象とするものを投入してよいのか、という観点で行われているのではなかろうかと聞 いております。  極論すれば、いまの国民年金に国庫負担は入っています。これは、一般国民を対象と するものだからだということです。一方、厚生年金部分には、いまはもう入っていませ ん。この思想は何かというと、厚生年金は全国民を対象としたものでなく、一定の方々 を対象としたものである。おそらくこのような論理構成ではなかろうかと推察しており ます。あえて解釈させていただきました。  あと、廃止論を唱えている先生方の中にも、全廃してそのままでいいということでは なく、国庫負担は景気の良いときにはなくてもいいけれども、景気が悪いときには投入 すればいいではないかと。実はドイツがそれに近いやり方だと聞いておりますが、その ような発想もあると聞いております。単純な全廃論ではない方がおられると聞いており ます。 ○栗田委員 総論の中の平成15年改正、さらに遡れば平成12年改正があったわけです が、そのときに財政の危機的な破綻と併せて高失業率ということで、当時の失業率は 5.7%でしたが、当時の議論からすれば、6%の失業率にも耐え得る安定的な制度をつく り上げようではないかという議論の中で、本当に困っている人への制度ということでは いわゆる二階建て方式にし、自発的な離職者ということの中では2分の1といったこと もやられたわけです。  そういう意味では、国庫負担の(4)の自発的離職者に対する基本的な国庫負担の在り方 についてですが、本来、失業して就職活動をしている、そこへの生活の安定的な補填、 確保するという雇用保険制度の本来の目的からすれば、自発的離職者にしろ特別受給者 にしろ、その自発的な部分についてはあらかじめ予測できるのではないか。そういった ところへの国庫負担の在り方を再度検討するということですが、そこは一定程度整理し ているのではないかと思っているのですが、あえてその人たちへの国庫負担の在り方を さらに検討するということはどうなのかなと思っているのです。その辺はどうなのでし ょうか。 ○宮川雇用保険課長 ここの部分については、これからまたさらにご議論いただければ と思います。さまざまな議論があるのではなかろうかと思います。  給付についての国庫負担は、前にご説明しましたように昭和34年までは3分の1、 昭和34年以降、失業保険時代でしたが、原則4分の1になったということです。ただ し、例えば日雇労働者については3分の1に残しております。給付の中では、いわゆる 継続給付については8分の1にしております。教育訓練給付や高年齢者求職者給付金に ついては、国庫負担はございません。このような形で各種給付の国庫負担の在り方につ いては、今後、さまざまな議論があり得るのではなかろうかと。その中で自発的離職者、 その中での自己都合退職者ということですが、これに対する政府の責任という問題につ いてどう考えるのかと、責任論で申せばですが。  そのような観点を含め、さまざまなご議論をいただく1つの論点ではなかろうかと考 えております。ただ、そういう意味で結論を申し上げているわけではございません。 ○長谷川委員 いま栗田委員が言ったように、12年改正・15年改正のときにこの部会 では、皆さんのご努力で、雇用保険はどうあるべきかという議論をかなりしてきました。 そういう意味では、給付に関して言えば期間を短くするなど、かなり整理されたわけで す。したがって、ある意味では、今回のこの給付の見直しは前回のところで整理がつい ているのではないかと思うのです。現時点でこの部会で議論すべき問題は財政問題です。 ある意味では、ある一定程度失業率も、4%台で行ったり来たりしているわけですが、 積立金の状況なども良好になってきているときに、労使がともに負った負担を解消する ことは、労側から求めるのは当然なのです。大変なときはお互いに頑張った、努力した わけですから、ある程度健全になったら戻してほしいというのは、私は筋なのだと思う のです。ですから、保険料の引下げは、労側が言うのは当然なのではないかと思います。  もう1つは4頁の(3)弾力条項の発動の所です。今回の雇用保険の財政問題を見聞 きしていると、お金が一定程度ある所が必ず何か被害を被る、そういう構図になってい るわけです。適正な積立金がどのぐらいかということは、やはり議論しておいたほうが いいと思うのです。積立金があると、そこは必ず何か使いたくなる。本当は、平成15 年の審議会の当時には、栗田委員が言ったときに、失業率6%のときにも耐え得るよう にしようというのが合意だったわけです。いまそんなお金を持っていたら、それは何か 使いたくなって使われてしまう、本来の趣旨とは違うところに行ってしまうと思うので す。したがって、今回の保険料の弾力条項の基準については、労使が適切な積立金とは どの程度なのかについてしっかりと議論をする。ここは重要なのではないかと私は思い ます。  もう一方では、保険料率の引下げも検討する。これについてはおそらく反対だという 意見もあると思いますので、なぜ反対なのかということの意見交換はやはり必要だろう と思います。労側は上げた分は戻してほしい、ここは検討の素材にすべきだとは思いま す。 ○輪島委員 財政運営については労使でそれほど大きな隔たりはないのではないか、健 全な財政運営を前提にして料率や給付のことを考えることについては、あまり隔たりは ないだろうと思っています。その点から言うと長谷川委員が最後におっしゃった点につ いても、私どもも積立金があり、財政的な問題からすれば、平時というか、今度の見直 しのことがなければ、基本的には保険料率をまず下げるべきだろうと思っております。 したがって、そこもほとんど変わらないのではないかと思っています。  ただ、長谷川委員がいちばん最初におっしゃった給付の見直しがどうなのかといった ことについては、私どもは、それも含めて基本的には検討すべきだろうと思っています。 その点から言うと、先ほど中島委員がおっしゃったように、そして前回からもあります が、私どもの感覚的なことを言うと、国庫負担が入っているということは国に責任があ る給付だろうと。そのような観点からすれば、基本手当、日雇い、8分の1が入ってい る雇用継続給付、それはある一定程度国の責任があるという給付の中ではどのように見 るのかということと、それ以外の高年齢求職者給付や教育訓練給付というのでは、自ず と違いが出てくると思っているということです。 ○三木委員 前回の改正のとき、給付の内容をだいぶ削減したわけですが、そのときの 議論の中でも適正な6%という状況について、いま栗田委員も申しましたが、まさにそ のときの在り方として、積立金の適正な在り方についても一つ検討しようという話もあ ったように、記憶しています。つまり、そういう意味では、雇用保険制度そのもの全体 がどうあるべきかという議論も含めてやっていかなければ。その場その場の、積立金が これだけあったからこれで、じゃあ、どこから持ってこようかというような話に、財務 当局から言われるというのも、これまたおかしな話であると言わざるを得ないような状 況があると思うのです。その意味では、いまの雇用保険制度の在り方の問題を含め、基 本的にそこを整理していかなければその場その場の対応になってしまうのではないかと いう気もいたします。  高年齢雇用継続給付の関係です。私、1回欠席したもので。1つは、法の成立に始ま り、「今後の方向性について考えていくべきではないか」。(2)は、「激変を避ける観点から 検討を進めていく必要はないか」。このようなことになってしまうと、この点については 見直しを前提の上で、ということに繋がってしまうような気もするのです。そこまでの 議論、意見があったわけですか。その辺を確認したいのです。 ○宮川雇用保険課長 まず高年齢雇用継続給付についての議論としては、(1)に書いてあ るように、皆様方のご意見の中では、改正高年齢者雇用安定法が出来た以上、ある程度 の何らかの見直しは当然あり得べし、といった感じで私どもは受けとめておりました。 したがって、今後の方向性ということで書かせていただきました。今後の方向性のそう いう意味での一定の見直しはある中でも、ただ、いきなり見直しをして、では来年度か ら何かをしましょうということになると、いま高年齢雇用継続給付が使われている状況 を考えたときにはやはり激変を避ける観点は必要でしょうね、というご意見もあったよ うに記憶しております。ですから、この両者を書いているわけです。必ずしもその方向 性がこうだから(2)があるということではないとご理解いただきたいと思います。 ○諏訪部会長 ちょっと待ってください。長谷川委員に始まり、輪島委員、三木委員と 続いてきたところで、保険課長から補足的にご説明はありませんか。 ○宮川雇用保険課長 ほとんどのご意見はこれから中間取りまとめをし、さらに言えば、 秋以降の議論の中でご議論を詰めていただくべきものだろうと思いますので、私からい まの時点でコメントは特段ないわけです。  ただ、総論として申し上げますと、1つは国庫負担の問題です。これに関しては皆様 方に多くご議論をいただいているわけです。国庫負担については、既に行政改革推進法 という国会を通った法律の中で、明確に廃止を含め検討ということが明示されておりま す。また、これから、骨太などの中で平成19年度をにらんだ形での議論、廃止を含め た見直しを行わざるを得ない状況です。これは行政府ではなく、国会から言われている、 国政として必ずやらなければならない状況だということをご理解いただきたいと思いま す。  ただ、そうは申し上げましても、その在り方については保険料率・給付トータルで、 国庫負担を取り出すだけでなく、全体でご議論いただきたいと考えているところです。 ○輪島委員 三木委員の補填でコメントだけを付けておきたいと思います。ここのまと め方は、まず雇用継続給付としての考え方があって、その中で高年齢雇用継続給付、育 児休業給付という捉え方をすべきなのだと思うのです。そこの整理がないので、そこが まず悪いのだろうと思います。私どもとしては、雇用継続給付という観点からいくと、 雇用を継続していてそれが保険事故、つまり高齢や育児休業などを保険事故と見なし、 失業するよりは継続して雇用保険財政にとっても有利になるようにと。そういった位置 づけでこのようになっている雇用継続給付の在り方についても一旦議論をして、その中 で高年齢雇用継続給付について言えば、改正高齢法が施行されておりますので、2013 年以降の在り方について言うと、このような方向性は一定の方向性としてはあり得るだ ろう、このような位置づけだということです。  もう1点。先ほどの長谷川委員の積立金は常に狙い撃ちをされるというご意見は、痛 切に感じております。そういう意味で言うと、弾力条項の在り方も含めて議論するとい うことは非常に重要な点であると、私どもも認識しております。 ○中窪委員 先ほどの保険料率に関係するのですが、その前から言うと、平成15年の ときの改正は、非常に苦しい中で苦しい対応をしたという面はあるのです。その中でも、 20世紀とは違う、21世紀の新しい雇用社会を見つめてその中でどう進むべきか、とい うことを一応念頭において議論はしたと思うのです。その中で例えば短時間労働被保険 者についても、昔はパートはパート、正社員は正社員ということだったのが、そこをお 互いに、あるときはパートだけれどもそれがフルタイムになったり、その辺の垣根が変 わっていることを受けて給付を統一したわけです。そのときに受給要件までを統一しな かったことが1つの課題として残っているということは確かなのですが、そこは新しい 状況を考えてやったわけです。  それと同様にやはり失業率について、先ほど6%ということも出ましたが、そういう ことも現実にあり得るということをひしひしと感じながらやったわけです。それがたま たま良いほうに向いて現在のようなことになり、積立金が順調にきているわけです。  しかし、これまた1つ間違えれば、逆の方向へでも行くわけです。昔と違って終身雇 用の時代ではありません。失業の可能性はいままでよりも、本当に多数の人、何でもあ る時代になってきたわけですから。その中で、いまはたまたまいいから保険料率そのも のを引き下げるというのは、私はちょっとどうかなという感じがしております。基本的 にはあのままの水準を維持しつつ、弾力条項で対応していくと。もちろん積立金があま りに過度になるというのは不適切ですから、それを適当な形で調節することは必要だと 思うのですが、基本的なものについては、そこを下げていいというところは私は確信を 持てない。そのようなことを一言申し上げておきたいと思います。 ○長谷川委員 いまの中窪委員のお話は非常によく理解できています。ただ、国庫負担 の話だとか、積立金が健全な故に、見直し論議が出てくると、それは労使もやはり一言 そこに対して、政府がそうだとしたら我々だって言いたいというのはあります、これは どうして悪いのかと。それは今後の議論の中で議論していけばいいのかなと思います。  もう1つ、高年齢雇用継続給付です。結局この法律は、定年制を延長するか、それと も定年制を廃止するか、再雇用ですね。そして、まだ経過措置の時期なのです。いま何 が現場で起きているかと言うと、いろいろな制度を使いながら、そういう意味では、特 に中小企業は非常に努力して高齢者雇用の継続をやっているわけです。ですから、(2)の 所の激変を避ける観点から検討を進めるべきだ、というのは、まさにそうだと思います。 65歳までみんな雇用するということであれば、ある意味では見直してもいいのかもしれ ませんが、やはり再雇用制度を使って、ある意味ではそれをうまく使いながらやってい るという現実があるかぎりにおいては、ここの所は慎重に扱うことが必要なのではない かと思います。おそらく中小の人たちが労使ともに辛くなるのではないかと思います。 ○宮川雇用保険課長 皆様もご承知のように、改正高齢法は、今年ですと62歳、来年 は63歳になり、3年ごとに上がっていき、2013年には65歳までと。ただしそれは、 定年を廃止するか、定年を延長するか、雇用継続措置を作るか。雇用継続措置を作る場 合には、労使の協定によって基準を作ることが可能である。さらに、いまの暫定措置で 労使の話合いがつかなかった場合には就業規則で行うことも可能である。こういう仕組 みになっているところです。  大部分の大企業を中心とした所では、定年延長や定年廃止ではなく、雇用継続措置を 取られる。基準を作っている所も多いです。高年齢雇用継続給付の在り方を考える場合 にそういう状況をどのように判断されるか、さまざまなご議論をいただきたいと思いま す。  ただ、いずれにしても、高年齢雇用継続給付のもともとの考え方としては、努力義務 を前提とした、高年齢雇用安定法がまだ努力義務時代だったときにそれを進めていくと いうことも含め、その一助として行われたのではなかろうかと認識しているところです。 ○諏訪部会長 ほかに何かご質問、ご意見はございますか。よろしいですか。  今日皆様には、論点の方向がどうだというわけではなく、こういう論点がこれまでに 上がってきたということをご確認いただき、また新たにいくつかご議論をいただいたわ けです。既に皆様は、ここで改めて言うまでもなく、我々は前回、法改正で非常に幅広 に多くの問題を深く考え、新しい時代にそのセーフティネットとして雇用保険制度がし っかりと確立されるための在り方をいろいろ議論いたしました。今回は、その積み残し の部分と、幸いその状況が好転した中で、今後ともこうした制度をどのように確保して いくか、特にあり得べき困難な時代を予測してどう対応していくかをご議論いただくと いうことです。先回、いろいろ議論した基本線は押さえつつ、状況の中で機敏に対応す る。これが弾力条項の問題です。給付のために積立金が溜り過ぎるということは、当時 はデフォルト寸前だったのでそんな考えはそれほどありませんでしたが、それでも、い くらでも溜め込めばいいなどとは当時も議論したわけではありません。ですから、当時 決めた1つの線に達したならば、そしてそれが財政状況の中で見えてくるならば、それ はそれで対応した弾力条項、上げるべきときはさっさと上げるけれども下げるときは下 げるという、ここは今後とも皆様にご検討いただくべきところだと思っております。  ということでこれからまだまだ議論を続けていかざるを得ない部分があるわけですが、 今日の段階でほかに何かご意見なりご質問はございますか。それでは以上をもちまして、 第26回の雇用保険部会を終了させていただきます。  次回は、雇用保険三事業の在り方についてご議論をお願いできればと考えております。 また、中間取りまとめに向けた議論もお願いできればと考えております。そこで議論の ために必要なたたき台ですが、この案につきましては、私と事務局で相談の上、委員の 皆様にお示ししたいと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○諏訪部会長 ありがとうございます。では、そのように取り計らわせていただきます。  次回の日程については、事務局において調整の上、ご連絡をお願いしたいと思います。 お忙しい中、いつもご無理を申し上げて大変恐縮ですが、その節は、どうぞよろしくお 願いいたします。  本日の署名委員です。雇用主代表は原川委員に、労働者代表は豊島委員にそれぞれお 願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。  委員の皆様には、本日はお忙しいところを大変ありがとうございました。今後とも、 どうぞよろしくお願いいたします。 照会先   厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係   TEL 03(5253)1111(内線5763)