06/06/09 第32回厚生科学審議会科学技術部会議事録  第32回厚生科学審議会科学技術部会   議事次第  ○ 日  時  平成18年6月9日(金)10:00〜12:00  ○ 場  所  経済産業省 別館 第1028号会議室(10階)  ○ 出 席 者    【委 員】 矢崎部会長          今井委員 井村委員 垣添委員 加藤委員 金澤委員 北村委員          木下委員 黒川委員 笹月委員 竹中委員 長尾委員 南委員          宮村委員  【議 題】   1.平成17年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について   2.疫学研究指針の見直しに関する専門委員会の設置について   3.平成19年度戦略研究課題について  4.遺伝子治療臨床研究について   5.その他  【配布資料】   1−1.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要   1−1別紙.平成17年度採択課題一覧   1−2.厚生労働科学研究費補助金の成果の評価(平成17年度報告書)(案)   1−2別紙.厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成17年度)   2.疫学研究指針の見直しに関する専門委員会の設置について   3.平成19年度戦略研究課題について  4.東京大学医科学研究所附属病院からの遺伝子治療臨床研究実施計画変更報告書     について   参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 ○林研究企画官  冒頭いつも申し上げていることですが、傍聴の皆様には、傍聴に当たりまして、すで にお配りしている注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。なお、本日は クールビズということで、事務局は一部軽装で失礼をしておりますが、上着をお召しに なっている先生方も脱いでいただくなど、涼しい格好になっていただければと思います。  定刻になりましたので、ただいまから第32回厚生科学審議会科学技術部会を開催いた します。委員の先生方にはご多忙の折、また足元の悪い中をお集まりいただきまして、 どうもありがとうございます。  本日は岩谷委員、岸委員、永井委員、中尾委員、松本委員からご欠席のご連絡をいた だいておりますが、委員20名のうち、出席委員は過半数を超えておりますので、会議が 成立しますことをご報告いたします。  続きまして、本日の会議資料の確認をさせていただきます。机の上にお配りしている 資料のうち、「第32回厚生科学審議会科学技術部会 議事次第」というA4の1枚紙が あり、その下のほうに配布資料のリストがございます。本日の資料としては、資料1− 1、資料1−1別紙、資料1−2、資料1−2別紙ということで、議題1の関係で4種 類あります。資料2が「疫学研究指針の見直しに関する専門委員会の設置について」。 資料3が「平成19年度戦略研究課題について」。資料4が遺伝子治療臨床研究について、 東大医科研附属病院からの変更報告書に関する資料です。  今日お配りしている資料で、資料1−1、1−2の関係で正誤がありましたので、正 誤表を別途お配りしておりますことと、資料1に関して、ご意見をいただくための用紙 を配布させていただいております。資料としては以上ですが、資料の欠落等がございま したら、事務局までお知らせいただきたいと思います。  その他、先生方の机上に、議題の3の関係で茶色の表紙の冊子、「戦略研究ガイドブ ック」も併せてお配りしているかと思いますので、そちらもございますでしょうか。特 に不足等ないようでしたら、以降の議事の進行を矢崎部会長にお願いしたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  おはようございます。お忙しい中をお集まりいただきまして、大変ありがとうござい ました。今日は、いくつかの議題がありますので、早速、審議に入らせていただきたい と思います。まず第1は、例年のごとく、今年は平成17年度の厚生科学研究費補助金の 成果を、この部会として評価をまとめて報告することになっておりますので、ご審議を お願いしたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官  それでは「平成17年度厚生労働科研費補助金の成果の評価について」事務局から説明 いたします。資料は、1−1、1−2、それぞれの別紙、正誤表、厚労科研費補助金の 評価に関するご意見の記入用紙が1枚です。なお大変申し訳ございませんが、資料1− 1と1−2は、事前に先生方にお送りしたものから、多少修正しておりますので、本日、 机上に配布したものをご覧いただければ幸いでございます。  まず成果の評価の説明に入る前に、厚労科研費補助金の概要についてご説明いたしま す。資料1−1です。3頁の5)に厚労科研費補助金の予算額が書いてありますが、厚 労科研費補助金は全部で4分野、18研究事業ありまして、その中で1,400課題を実施し ており、その予算額は、平成17年度が422億円です。  資料1−1の8頁から申請課題評価方法の説明があり、11頁に倫理指針、若手研究者 への配慮等、この研究費制度の中でいろいろやっております取組事項についての説明が あります。  12頁には「申請と採択の状況」というのがあって、新規課題の応募総数が2,247課題 あって、これに対して採択したのが582件、採択率25.9%でした。この計算の基になっ た資料が7頁に載っています。7頁の表を見ますと、いま申し上げた合計がいちばん下 の欄の左端に2,247課題、真ん中に採択の新規分として582という数字が出ています。  この表のいちばん右端の欄を見ますと、右の列が採択課題1課題あたりの研究費の平 均額を示したものになっており、この表のいちばん右下にあるとおり、平均の研究費は 2,382万円でした。これを研究費ごとに見ていきますと、最も高いのは治験推進研究の 約9億8,600万円で、最も低いのが統計情報高度利用総合研究の380万円でした。  資料1−1の13頁の「6.公表に関する取組」ですが、平成17年度から研究成果デー タベースシステムを改めて、研究者自身が研究の概要の登録をWEB上で行い、それを所 管課が確認した時点で自動的に公開するシステムとしましたが、その結果、ここには記 載しておりませんが、本日現在で89%の登録率になっております。  また研究成果データベースが公開されている国立保健医療科学院のサイトへのアクセ ス件数が、13頁の図の上に書いてありますが、平成17年5月のカウント開始以来、15 万件以上に上っており、閲覧されている人がかなりの数いることがわかります。  14頁以降が「各研究事業の概要」です。21頁に「社会保障国際協力推進研究事業」が あり、所管課の下に、(1)研究事業の目的、(2)課題採択・資金配分の全般的状況、(3)研究 成果及びその他の効果、(4)行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度、(5)課題と 今後の方向性、(6)研究事業の総合評価という構成になっています。この構成は、各研究 事業共通で、この資料をベースに後ほどご説明する資料1−2の成果の評価(案)がで きています。  資料1−1別紙ですが、これは平成17年度に採択した課題の一覧ですので、併せてご 参照いただきたいと思います。  資料1−2です。この資料は各研究事業における成果の評価をまとめたもので、本日 の審議は資料1−2が中心になります。1頁の「はじめに」に、このような成果の評価 を行う背景について記載しています。1)で、厚労科研費補助金の目的と、この補助金 が「我が国の代表的な競争的研究資金制度の一つである」ということが書かれています。  2)では、平成17年にとりまとめた今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関 する中間報告書でも、厚生労働科学研究は、目的志向型研究の役割をより一層明確化し、 国民の健康を守る政策に関連する研究支援に重点化していくべし、という考え方が示さ れております。  3)は、一方、政府全体のレベルで見ると、第2期科学技術基本計画の下で、国の研 究開発評価に関する「旧大綱的指針」が策定され、4)では、その後のフォローアツプ に基づいて、我が国の研究開発評価システムのさらなる発展を図るということで、新た な大綱的指針が策定されています。  5)に、今年3月に閣議決定された第3期科学技術基本計画でも、大綱的指針及び各 府省等の指針等に則って、研究開発評価を実施することが求められております。このた め、厚労省では、6)にありますように、厚労省の科学研究開発評価に関する指針を定 め、さらに旧大綱的指針が見直されたのを受けて、我が省の指針を平成17年に改定する など、研究開発評価の一層の改善に取り組んでまいりました。  7)に、特に科学技術部会の関係では、平成15年に総合科学技術会議の競争的研究資 金制度の評価の考え方に従って、厚労科研費補助金の制度、その成果のレビューを行っ ていただき、その報告書が、同年の総合科学技術会議の競争的研究資金の有効性に関す る評価の基礎資料ともなり、厚労科研費に対しては「資金配分の適切性や研究成果等に ついて概ね適切に評価されている。なお政策支援的要素の強い研究課題では、行政への 貢献を明確にすることが重要」という指摘をいただいております。  そこで、以上のような背景も踏まえて、科学技術部会に平成17年度の厚労科研費補助 金の成果の評価をお願いしたいというのが、議題1の趣旨です。  3頁に「評価目的」を記載しております。3頁の3段目のパラグラフですが、総合科 学技術会議からは、政策支援的要素の強い研究課題では行政への貢献を明確にする、と されていることから、今回の評価でも昨年度に引き続いて「行政への貢献」に重点を置 いて評価することといたしました。  4から6頁までは今の説明で引用している参考文献で、7頁から「評価方法」の説明 があります。評価の対象は、厚労科研の各研究事業及び平成17年度終了課題の成果とい うことです。評価の基礎となる資料は、4月から6月7日までに厚労科研の成果データ ベース報告システムの「行政効果報告(助成研究成果追跡資料)」に登録されたものを 使用しました。  「行政効果報告」というのは、昨年のこの部会で笹月委員からだったと思いますが、 例えば発表論文数などは、研究終了1年後ぐらいに、やっと論文がアクセプトされるこ ともあるのだから、研究終了直後だけでなく、少し時間を置いて成果の発表状況を把握 するためのシステムを作るべきではないか、というご指摘をいただいていたこともあっ て、今年度から開始したものです。7頁の注1にありますように、平成17年度成果報告 が行われたものから、継続的な評価を行えるように、研究終了後3年間は研究者が随時 WEB上でデータ更新できるようにしました。この資料の9頁に「行政効果報告WEB登録 のイメージ図」を掲げてあります。  7頁に戻り、2)の各研究事業の記述的評価ですが、今回の評価は大きく分けて、各 研究事業の記述的評価と、あとのほうで出てきますが、発表論文数等による定量的評価 と2つありますので、私からは、まず各研究事業の記述的評価について、事業ごとに順 番に説明し、あと定量的なところについてもご紹介したいと思っております。  記述的評価は資料1−1の(1)〜(6)にありましたが、これに従って作成された「各研究 成果の概要」をベースに行っております。一方、定量的評価については、資料1−2の 8頁の3)の表に示した各項目について、研究者に行政効果報告のWEB入力を依頼し、 それを集計したものです。資料1−2別紙にその内容が詳しく記載されていますが、そ れをベースに集計しています。資料1−2別紙には、こういう数字だけではなく、個々 の研究事業ごとに行政効果報告として入力された具体的な成果の内容の詳細についても まとめてありますので、これも適宜ご参照いただきたいと思います。  それでは、資料1−2に戻っていただき、10頁の評価結果の表にある、4研究分野18 研究事業の各事業ごとの成果の説明に移りたいと思います。  まず資料1−2の12頁の<I.行政政策研究分野>です。この分野には「行政政策研 究事業」と「厚生労働科学特別研究事業」があります。行政政策研究事業のうち(1− 1)の政策科学推進研究事業は、12頁の下から2行目にあるように、「人口・少子化問 題、社会保障全般に関して実証的研究を実施し、それらを踏まえた施策の企画立案及び 効率的な推進に資するものであり、また社会保障制度についての評価・分析に関する研 究を求めるもの」です。  13頁の2行目ですが、研究成果が直接行政施策に反映されるとともに、行政施策と関 連性の高い課題を優先的に実施し、その成果が国民に還元されていると評価されていま す。13頁の図2に政策科研で行われた「出生率回復の条件に関する人口学的研究」の例 を示しています。  14頁の(1−2)の統計情報高度利用総合研究事業は、施策の企画立案や評価等を行 う上で、重要な基礎資料となる厚生労働統計情報の在り方や活用方法を研究するもので、 研究成果が広く厚労省の施策に還元されていることから、有用性の高い研究事業として 重要な役割を果たしているという評価です。  同じ頁の(1−3)の社会保障国際協力推進研究事業は、過去の経験や、新たな課題 への効果的な取組手法の開発を通じて、社会保障分野における我が国の今後の国際協力 の推進に大きく貢献することが期待されるという評価です。  15頁の(1−4)の国際医学協力研究事業は、「日米医学協力計画」の下で、アジア における感染症等の幅広い諸課題の改善・克服に取り組んでいるものであり、成果は日 本のみならず、アジア地域との国際協力・貢献の観点からも意義があるという評価です。  (1−5)の国際危機管理ネットワーク強化研究事業ですが、国内外の情報基盤の整 備に関する知見の整理と、人材養成とその有効活用に関する研究等を効果的に推進する ための基礎資料の収集・分析が実施されており、次年度以降の進展に期待するという評 価です。  16頁の(2)の厚生労働科学特別研究事業、いわゆる特研と呼んでいるものですが、 こちらは「国民の健康生活を脅かす突発的な問題や社会的要請の強い諸課題について、 緊急に行政による効果的な施策が必要な場合」に行う研究という位置づけで、今後も緊 急性が高く、行政的に重要な研究課題を適宜実施できる体制としていくことが求められ るという評価です。図3の枠の中ですが、アスベスト研究、C型肝炎の研究、さらに今 後必要性が高まるであろう臨床研究登録制度の研究と、特研の枠で行った事例を挙げて あります。  17頁です。<II.厚生科学基盤研究分野>ですが、この分野は「先端的基盤開発研究 事業」と「臨床応用基盤研究事業」と2つあります。  まず(3)の先端的基盤開発研究事業の(3−1)のヒトゲノム・再生医療等研究事 業ですが、ここではヒトゲノム創薬や個別化医療を実現するために必要な研究を行って いるものであって、新しい医療技術の創生に資する極めて重要な研究成果を輩出してい るという評価です。  18頁の下の(b)の再生医療研究分野ですが、これは新たな再生医療技術の開発につ いて、国際的にも評価できる成果を上げており、また医療現場で実際に活用される成果 を生み出していることから、今後の成果の還元が期待されること。19頁の臨床応用に近 い段階の研究に対する支援の重点化、安全・品質に配慮した技術開発の推進を図るとし ているという評価です。  19頁の(3−2)の疾患関連たんぱく質解析研究事業ですが、産学官共同によるプロ テオームファクトリー事業の実施体制が整備され、データベースの構築も進んでいると いうことで、これによって我が国の医薬品研究開発に大きく寄与することが期待され、 厚生労働行政にとっても有益なものであるという評価です。  20頁の(3−3)の(a)のナノメディシン分野は、指定型、公募型の両方ともナノ テクノロジーを応用した優れた研究成果を着実に上げており、引き続き一層推進すべき、 とされています。21頁の(b)のトキシコゲノミクス分野は、指定型はデータの蓄積が 着実に進み、遺伝子発現と毒性を統合したデータベース構築と安全性早期予測システム のソフトウェア開発が平成18年度中には達成の見込みである一方、公募型も着実に成果 が得られているという評価です。22頁の(c)のファーマコゲノミクス分野では、遺伝 子多型を調べることによって、個々の患者に合った治療法の開発・実用化を目指した重 要な研究であるという評価です。  23頁の(3−4)の身体機能解析・補助・代替機器開発研究事業ですが、23頁のいち ばん下の行にあるように、いわゆるフィジオームを使った新しい発想による機器開発の 推進を目指した研究で、平成17年度から指定型に加えて公募枠を新設し、産学官連携の 下、速やかな実用化を目指してきたが一層推進すべき分野であるという評価です。  24頁の(4)臨床応用基盤研究事業のうち、(4−1)の基礎研究成果の臨床応用推 進研究事業については、その名のとおり、基礎研究の成果の実用化を促進して、有用な 医薬品等を国民により早く届けることを目的とした研究という意味で、厚労省にふさわ しい事業である。実際、数々の臨床応用の成果を上げているという評価です。  26頁の(4−2)の治験推進研究事業ですが、次期「全国治験活性化推進3カ年計画」 の策定に向けて、我が国における治験実施を促進するための重要な研究であり、行政施 策の推進に資するものだという評価です。  27頁の<III.疾病・障害対策研究分野>。これは表5に示してありますように、9つ の研究事業から構成されております。(5)の長寿科学総合研究事業ですが、老化・老 年病、介護予防等の種々の研究が、「健康フロンティア戦略」の推進や介護保険制度改 革の実施と評価に大いに寄与すると評価されています。  28頁の(6−1)の子ども家庭総合研究事業ですが、こちらは子どもの心身の健康確 保と多様な社会的ニーズに対応する実証的な基盤研究を行い、母子保健医療行政の推進 に大きく貢献をしており、「健やか親子21」や「子ども・子育て応援プラン」などに 基づく行政施策に大きく貢献するものである、と評価されています。  29頁の(6−2)の小児疾患臨床研究事業ですが、現在、臨床研究の拠点となる施設 において、麻酔薬等の有効性・安全性等の評価を行って、所要の成果を上げてきたと評 価されています。  30頁の(7−1)から第3次対がん総合戦略研究事業ですが、これは31頁の2行目 の革新的ながんの予防・診断・治療法の開発に向けて大きな成果を上げつつあり、今後、 多段階発がん過程のシナリオの全貌を明らかにすることを目的とする発がんの分子基盤 に関する研究、がんに関する疫学的研究、がん登録に必要なシステム構築に関する研究、 緩和ケア技術の開発等に取り組んでいく必要があるとされています。  32頁の(7−2)がん臨床研究事業ですが、「政策分野に関する研究」においては、 がん医療水準の均てん化推進のための研究を、「診断・治療分野に関する研究」では、 難治性がん等の効果的な治療法の開発を推進するための多施設共同研究を行うこととさ れています。  33頁の(8)循環器疾患等総合研究事業は、脳卒中、心疾患、糖尿病等に対する予防 ・診断・治療法の研究を進めるもので、種々のエビデンスを明らかにし、診療ガイドラ イン等の策定に貢献してきた。また平成17年には「糖尿病予防のための戦略研究」も開 始され、厚生労働行政に大いに貢献しているという評価です。  34頁の(9−1)障害保健福祉総合研究事業は、障害者の総合的な保健福祉施策に関 する研究を実施して、大きな成果を上げていると評価されております。  35頁の(9−2)感覚器障害研究事業ですが、視覚・聴覚・平衡覚等の障害の原因と なる疾患の病態・解明や発症予防、早期診断及び治療から重症化防止、リハビリテーシ ョン等に至る研究を進めて、着実に成果を上げているという評価です。  37頁の(10−1)新興・再興感染症研究ですが、こちらは国の安心・安全対策として 重要な研究であり、積極的に実施していく必要があるという評価です。  37頁から38頁にかけて(10−2)のエイズ対策研究事業ですが、38頁の5行目に、 効果的な予防対策と疾患概念を変える治療法、エイズ医療の体制確立について着実な成 果を上げ、行政施策の推進に大きく貢献しているという評価です。  38頁の(10−3)肝炎克服研究事業ですが、「C型肝炎対策等に関する専門家会議」 の報告書に沿った研究が実施され、国民の健康の安心・安全の実現に貢献しているとい う評価です。  39頁の(11)免疫アレルギー疾患予防.・治療研究事業は、アレルギー等にかかりや すい体質と生活環境等の関係を明らかにするということで、これらの疾患の予防・診断 ・治療法に関する新規技術を開発するものですが、今後も臨床の役に立つ科学的根拠を 積極的に収集・分析すべきとされています。  40頁の(12)こころの健康科学研究事業ですが、平成17年度からは「自殺対策のた めの戦略研究」を開始し、思春期保健関連など、行政施策に反映された研究も多く、神 経・筋疾患分野においては、論文、特許等でも多くの成果を上げていると評価されてい ます。  41頁の(13)難治性疾患克服研究事業は、42頁の3行目を見ますと、現在までに特定 疾患の診断・治療等臨床に係る科学的根拠を集積・分析し、医療に役立てる目的で積極 的に研究を推進し、実用化につなげる点でも画期的な成果を上げているという評価です。  43頁からは<IV.健康安全確保総合研究分野>です。この分野は5つの研究事業から 構成されております。(14)創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業は、官民共同研 究による画期的・独創的な医薬品の研究開発等において、大きな成果を上げています。 またエイズ医薬品等の研究開発は、行政的にも非常に重要であるという評価です。  44頁の(15)医療技術評価総合研究事業ですが、医療安全体制の確保に係る研究と医 療に対する信頼確保に関する研究テーマが採択され、その成果が医療安全のためのマニ ュアルや基準の作成などを通じて着実に医療政策に反映されているという評価です。  45頁の(16)労働安全衛生総合研究事業ですが、下から2行目を見ますと、労働者の 安全と健康確保を図るために必要な基礎資料の収集・分析や安全・健康確保手法の開発 において、重要な成果を挙げており、その推進が必要とされております。  46頁の(17−1)食品の安心・安全確保推進研究事業は、国民の関心の高い食品の安 心・安全確保に関して、科学的根拠に基づくリスク管理を進める上で、重要かつ有益で あり、一層強化する必要があるという評価です。  47頁の(17−2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業ですが、 医薬品等の安全性・有効性の評価や乱用薬物の規制に、科学的合理性と社会的正当性を 与えるものであるということで、その成果も、47頁のいちばん下の行に書いてあるよう に、種々の施策に活かされているという評価です。  48頁の(17−3)化学物質リスク研究事業は、化学物質の安全性確保に向けた評価手 法の開発等、着実な成果を上げているということと、ナノマテリアルのような新規物質 の研究にも着手しており、化学物質安全行政の基盤として不可欠であるという評価です。  49頁の(18)健康科学総合研究事業ですが、公衆衛生の基盤確保や地域健康危機管理、 水質基準の策定等の科学的根拠として、いろいろなガイドラインや基準の策定等に活用 されているという評価です。以上が「記述的評価」の概容です。  次に、ある程度定量的に評価を行うということで、同じ資料の53頁です。先ほどご紹 介した資料1−2別紙のデータを基にして、原著論文等による発表状況の集計を行った 結果、53頁に記載してありますように、今回、数値が得られた325課題について、原著 論文が7,928件、原著論文以外のその他の論文が4,599件、学会発表は11,643件でした。 また原著論文の内訳を見ますと、英文で発表されているものも6,203件ありました。  53頁の2番目のパラグラフですが、厚労省をはじめとする行政の施策へ反映された件 数をカウントしますと197件、普及・啓発活動として登録されたのが1,261件ありまし た。  54頁の表7が、いま申し上げたことを表として示したものです。55頁の表8は課題ご との平均です。なお53頁の下のほうに書いてありますように、本集計は研究終了直後の データに基づくものですので、論文数などは今後増える可能性が高いことから、継続的 な評価が必要と思われます。  56頁の5.「おわりに」ですが、1)で、研究成果は学術誌に掲載されているととも に、行政課題の解決に役立っていること。2)の「必要性」では、厚生労働科学研究は、 厚労省の施策の基盤となるものであって、行政的意義が極めて大きいこと。「科学技術 的要素が強いもの」「政策支援的要素の強いもの」「行政事業的要素が強いもの」とい った性質の異なる要素の違いが見られますが、要請されている要素に応じて各領域に必 要な研究課題の募集がなされていること。3)の「効率性」では、1課題あたりの研究 費は、ほかの研究制度に比べて決して多くはないのですが、限られた予算の中で効率的 に実施されていること。評価方法も適切に整備され、適切に研究費が配分されていると 考えられること。4)の「有効性」では、政策の形成、推進の観点からも有効性の高い 研究が多数実施され、成果は国際的学術誌に報告され国民の福祉の向上に資する研究が、 国際的水準でなされていることなどが指摘されています。  58頁の上のパラグラフですが、研究成果をWEB上で公開するシステムが構築されてい ることも成果の還元という点から評価されております。  58頁の5)の「本評価の課題」では、今後も引き続きより適切な評価方法の開発に努 めるとともに、今回から導入した研究成果のWEB登録システムを活用して、継続的な評 価を行い、研究者に成果の社会的還元の意義の自覚を促すなどのこと等も必要とされて います。駆け足でしたが、平成17年度研究課題の成果の評価の説明は以上でございます。 ご審議をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  厚生労働科学研究費の配分や課題の採択、研究成果、その他が十分上がっているかど うかということですが、これは大体自己評価的な評価だと思いますが、委員の方でご意 見ございますでしょうか。 ○北村委員  修文が要るのではないかと思います。33頁の(8)の循環器疾患等総合研究事業の下 から3行目に「特に行政的に大きな課題である自殺問題については」と書いてあるので すが。 ○林研究企画官  ここは本日お配りした正誤表で修正させていただいております。 ○北村委員  これは「こころの健康」と混ざっていたのですね。 ○林研究企画官  はい。 ○矢崎部会長  そのほかにいかがでしょうか。 ○黒川委員  大したことではないのですが、国も大きな所は直っているから、百万円単位で書いて あるのですが、そんなお金を使っているのかと思ったのですが、千円単位の間違いかと。 ○笹月委員  3頁の「評価目的」の最後の段落に「政策支援的要素の強い研究課題では、学術的な 側面に加え、行政への貢献を明確にし、研究者が納得する評価指標を導入することが重 要である」とありますが、これはいろいろな研究者から常に不満というか、これだけき っちりやったのにというようなことが言われますので、これは総論的な書き方としては 非常に適切だと思いますが、具体的に評価をどういう指標でやるのかを研究者にもわか るようにしていただくと、研究者側の研究を進める上での指針にもなろうかと思います し、自分が行った研究に対する評価の受止め方にも納得できるというか反省というか、 そういうことにも役立つと思いますので、もっと明確にしていただきたいと思います。 ○林研究企画官  厚生労働科学研究費補助金に関しては、採択の前から、事前評価、中間評価、事後評 価をやり、その中で各専門家の先生方のご意見もいただきますし、行政からも施策とい う観点から見てどうかということでコメントを出しております。そのことが各研究者に はフィードバックされていますので、そこでかなりインタラクションはあると思います。 ○笹月委員  コメントがきちんとフィードバックされていればいいのですが、往々にして点数だけ、 学術的評価は点数は高いのだが、行政的評価の点数が著しく低いということに対する不 満をしばしば聞くものですから、中身についてコメントを付けていただければ納得でき るのではないかと思います。 ○矢崎部会長  中間・事後評価は発表して、いろいろなコメントをそれぞれの先生方に返していると 思いますけれども、それを徹底することですね。 ○今井委員  個別のことですが、27頁の「長寿科学総合研究事業」のことと、28頁の「子ども家庭 総合研究事業」のことで、両方とも評価をしているようなご報告をいただきました。長 寿のほうに関しては、かなり期待されるというコメントが入っているのですが、(6) の「子ども家庭総合研究事業」については、最後の「所要の成果を上げてきた」という フラットかな、みたいな評価になっています。これは54頁の「集計課題数」から「普及 ・啓発活動」までで長寿科学総合研究については、集計課題数も多いですし、論文数も 非常に多くなっています。また「特許の出願及び取得状況」なども大きいのですが、子 ども家庭総合研究事業のほうは、全部数値が非常に少なく、「施策への反映」が長寿の ほうが10件に対して、子どものほうは9件あります。普及・啓発に関しては長寿が58 件に対して、子どもが195件になっています。  こういう数値を見ても、子どもに関しては論文の選び方の問題なのか、いま小児科は 忙しくて論文を書いている暇がないのかよくわかりませんが、例えば施策への反映、普 及・啓発などについて社会的なニーズが非常に高い子どものほうに関して、今後の期待 の面も含めて、チョイスの仕方が合ってないのかよくわからないのですが、ちょっと乖 離しているかなという気がします。ニーズが多い分、所要の成果ではなく、できれば期 待できると言われるような評価がもらえるような方向に持っていく方法が考えられない かと思います。 ○林研究企画官  ご指摘ありがとうございます。いまの「所要の成果を上げてきた」というのは、30頁 の上のところだと思いますが、小児疾患臨床研究事業に対するコメントです。小児疾患 臨床研究事業というのは、薬などはまず効能をとるとすれば、成人で効能・効果、用法 ・用量が決まり、小児に対しては安全性が確認されていないということが添付文書に書 かれているというケースが非常に多いのです。それを小児にも安心して使っていただけ るように、そのギャップを埋めるための臨床研究を行うというのがこの事業の内容で、 そういうギャップが存在するところに対して、有効性・安全性を確認して、実際の承認 につなげていくという点で「所要の成果を上げた」という意味です。  子ども家庭全体としては、むしろ(6−1)の子ども家庭総合研究事業に書かれてい るように、多様な社会的課題、新たなニーズに対応する実証的な基盤的研究を行い、大 きく貢献をしてきたということが書かれていますので、そちらの評価のほうが、今井委 員が言われたところに該当するのかと感じました。 ○今井委員  ただし、こちらのほうも、「今後このような時代のニーズの変遷を先取りした云々」 とありますね。こういったことに関してはいかがでしょうか。 ○母子保健課(齋藤補佐)  母子保健課ですが、コメントを誠にありがとうございます。これまで社会学的な研究 も多かったものですから、それらがいろいろ普及・啓発、特に「健やか親子21」や「子 ども・子育て応援プラン」という国民的な運動、政府の少子化対策の支援のための普及 ・啓発に活用されてきたという側面が強かったのですが、同時に総合科学技術会議など からもご指摘があるような、例えば、不妊の原因究明や生殖補助医療、不妊治療の安全 性の確保や長期フォロー、小児疾患の原因究明や治療法の確立など、一層ライフサイエ ンス的な研究についても推進する必要がございます。 ○今井委員  予算というか資料1−1の7頁の公募申請の金額に関してもですが、長寿科学総合研 究事業の場合と子ども家庭総合研究事業に関して、少し数値を水増ししても3対1ぐら いなのです。子どもだけではなく、家庭まで含まれているわけですから、大人も入って いると思いますので、金額的にも少ない気がします。こちらのほうも平準化するという か、見ていただけるとうれしいなと思います。 ○林研究企画官  来月、平成19年度の概算要求に向けて案をまとめて、ここでご審議をいただく予定で すので、その中でそういう点も考慮してご説明したいと思います。 ○今井委員  ありがとうございました。続いてですが、40頁の(12)こころの健康科学研究事業と いうのがありますが、これの真ん中の上のパラグラフの最後の辺りで「新たな課題が山 積している」というところがあって、最後の行に「神経・筋疾患分野においては、脳の 役割という観点から、神経・筋疾患に関して云々」という言葉があります。この中の「こ ころの」という言葉が、例えば「広汎性発達障害等」というのがありますが、発達障害 などに関しては、脳、特に海馬の問題の部分もかなりはっきりしてきていますし、脳の 科学がかなり発達したので、こころと言われている所が実は生化学的には脳なのだとい うことが、だいぶわかってきています。できれば「こころ(脳)」というのをタイトル に入れていただけないか。かなり脳生理学者などが、今やっている研究を外に出しやす くできるような方向に行けないかと思います。 ○障害保健福祉部(武井補佐)  障害保健福祉部企画課です。ご指摘ありがとうございました。特に委員がご指摘の脳 科学の分野は、いま急速に研究が進んでいるところかと思います。社会的要請が強い分 野については、いわゆる発達障害というのでしょうか、そういった疾患群に対する研究 も、最近は非常に進んでいると認識しております。  ご指摘のワーディングというか、ネーミングについては、大きな改正のときに議論を したという経緯もありますし、いま行っているのが研究内容としては精神疾患分野と神 経・筋分野という大きな領域を取り扱っておりますので、そうした分野との整合性もあ るかと思いますので、ご指摘を踏まえていろいろ検討させていただきたいと思いますが、 現状はこころの分野に入っているのは、そうした疾患群を含めた研究であると認識して いただければ幸いです。 ○今井委員  分科会ではなく、いわゆる審議会のときだったと思いますが、来年度予算を取るとき に、「こころ」みたいな曖昧模糊とした言葉が使ってある所は、予算が削減されていっ た気がするのです。できればかなり具体性のある所に予算が多く入っていたような気が します。そういうことも含めると、「こころ」というのを取ってくれと言っているわけ ではなく、できれば脳か、括弧で入れるなり、かなり機能で来ているというのが表現で きるような方法に、今すぐとは申しませんが、検討していただけばと思ったのです。 ○障害保健部福祉部(武井補佐)  いまのご指摘ですが、実は「こころ」の分野は、昨年度の総合科学技術会議で、「こ ころ」としての高い評価を得ておりますし、予算的にも増加しておりますので、そうい う意味では社会的に非常にニーズが高い研究領域であると認識しております。 ○外口技術総括審議官  委員のご指摘ですが、おそらくは現場の研究者の方々にうまく伝わってないとか、そ ういうことも含まれていると思いますので、実際に研究を呼び掛ける際、それから我々 が研究を説明する際に、具体的な例示を示していく。その際に委員のご指摘のような具 体的な脳の研究などがちゃんと入っていることを含めてという、我々のコミュニケーシ ョンのやり方が悪いというのもたぶん入っていると思いますので、そこも含めて内部で どう表現すればいちばんいいのか。政策ニーズを引き起こせるのかも含めて、よく検討 したいと思います。 ○今井委員  わかりました。 ○金澤委員  別のことを伺いたいのですが、1頁に「目的志向型研究という役割をより一層明確化 し」という大変大事なことが書いてあって、私もこれは大変大事なことだとは思ってお ります。現実には、こころの健康科学でも大体そうなのですが、かなり大きな枠を作っ て、そこに公募型で、ここから先は公募になるのです。大枠がこういう目的のものにつ いて研究テーマを自分で設定してから出してこられる部分もあるわけです。そういうも のが評価をしていくときに本当にミッション・オリエンテッドであったかということの 評価はどこかでしなければいけないのかなと思います。  そういう目で拝見したところ、7頁の「評価方法」ですが、実際これをどのように評 価されたかというのは、先ほど矢崎部会長が「自己評価ですね」とおっしゃったのはま さにそうなので、自己評価のように見えるのですが、それがある意味では明確になって いないと思われます。つまり、7頁の2)の最初の3行の最後の「作成した」と、これ は主語がない作成になっているのです。この辺をはっきりさせたほうがいいような気が します。もっと言いますと、ミッションを立てたのですが、本来、実際にはそれに適切 な公募がなかったと。そういうことだって、1つのミッションを作ったことの評価がな されるべきかもしれないですね。その辺をどう考えるかということだと思います。ちょ っと妙なことを言いましたけれども。 ○林研究企画官  お答えになっているかどうか自信がないのですが、行政政策との関連性、あるいは事 業の目的に対する達成度というところは、具体的な内容で申しますと、例えば53頁の2 番目のパラグラフに書いてあるような、行政政策の形成・推進に貢献する基礎データを 集めたとか、それが実際に治療ガイドライン、あるいはいろいろな施策に活かされる報 告書、県への通知、医療機関へのガイドライン、そういった形で結実したかどうかとい うところが1つあると思います。  それから、私どもがいま総合科学技術会議といろいろお話をさせていただいている中 で指摘されていることに、基礎研究を積み重ねてきているけれども、それをいかにスム ーズに出口、応用につなげていくかということがあり、そこのところの推進が厚労省の ミッションとして大きいと思っておりますので、実際に医薬品・医療機器の承認を加速 するために役に立つような成果が得られているのであれば、それもやはりミッション・ オリエンティットな成果だと考えております。  先ほど、7頁のところで主語がないというご指摘でしたが、一応これは、所管課のほ うで評価委員会の先生方のご意見も聞きながら用意したものを、厚生科学課でとりまと めたものです。今日ご審議をいただいて、もしご了承いただければ、表紙にありますよ うに科学技術部会として、こういうご評価をいただいたということになります。 ○黒川委員  先ほどの今井委員の話もあるのですが、「こころ」というのは、行政的な区分がある 程度あるのかなと。金澤委員が言ったように要するに精神・神経センターみたいなもの があるでしょう。そうすると、外から見ると、こころの所の記述に突然、神経とか筋の 話が出てきているのはそういうことかなと分かったのですが、あまりつながっていない ですよね。確かに今井委員がおっしゃるように、こころの問題が科学的にわかって、脳 の話だと言うのですが、やはり何かドキドキしたり、いろいろなこころの問題というの は、そこをわざわざ脳の機能だと言うと、子どものいまの問題も、一般にはかなりわか りにくいのではないですか。それがデジタル化した科学的な話ではないかという気がす るので、この辺の記述はちょっと考えたほうがいいのではないかと。  普通から見ると、神経とか筋は特に難病も多いし、そういうのはすぐにある程度、聞 いている人はどういう反応を起こすかわからないのですが、「こころ」というのは「こ ころ」で、すごくあるのではないかという気がします。行政的な区分で言われても困る のですが、記述はもう少し考えたほうがいいかもしれません。 ○金澤委員  それは実はこの「こころの健康科学」という言葉ができた過程を知っているものです から、いまはもうこれは変えようがないと思うのです。ですから、お願いなのですが、 神経とか筋肉のことは、この事業からいくと付足しだというようには思われないような 書き方にしてほしいのです。あるいは、分離したほうがいいのではないかという言い方 はされないような記述にはしていただきたい。それ以上は申しませんから、どうぞ。こ れはほかの専門家でない方々がお作りになった言葉ですから、こちらがきちんと理解し てやればいいのではないかと思っているのです。しょうがないですね。ここではない行 政のところで作られた言葉ですから、揚げ足を取らないようにしていただきたい。 ○黒川委員  だから、金澤委員が言った40頁から41頁の記述の仕方が、ちょっとミスリードみた いで、何か整合性がないような気がします。 ○矢崎部会長  貴重なご意見をいただきましたが、所定の時間が過ぎておりますので、一応、本日の 議論はこれまでにして、先生方の所に意見書がありますので、もしあとでご意見があれ ば、それをまとめるのにまた会を開くのも大変ですので、6月16日までに事務局に送付 いただいて、今日いただいたご意見とその後日いただくご意見とを勘案して、事務局と 私で報告を受けて、最終的な科学技術部会が作成したということになります。ご意見を 慎重に取り扱いまして、最終的なバージョンを私の責任で作らせていただきたいと思い ますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、事務局のほうで意見をいただいて、今日 のご指摘を含めて、最終的なものを作るように作業を進めていきたいと思いますので、 よろしくお願いいたします。  続きまして、「疫学研究指針の見直しに関する専門委員会の設置について」です。ま ず、事務局からお願いします。 ○林研究企画官  事務局から説明いたします。議題2は、「疫学研究指針の見直しに関する専門委員会 の設置について」お諮りをするものです。資料2の1の「設置の趣旨」ですが、疫学研 究の適正な実施を目的に、平成14年6月に「疫学研究に関する倫理指針」を文部科学省 と共同で策定しております。この指針の中に、その後の科学技術の進展や社会情勢の変 化等を踏まえて必要な見直しが行われるよう、施行後5年を目途に見直しを行うことが 規定されており、施行から5年目に当たる平成19年6月30日までに見直しの検討を行 う必要があるため、当部会の下に専門委員会を設置して、検討を行っていただきたいと いうものです。  2の「検討課題等」ですが、検討課題としては、疫学研究指針の運用状況や遵守状況 を調査して、その結果も踏まえつつ、必要な見直しを検討していただくことを考えてお ります。  3の専門委員会の「構成」ですが、疫学研究者、医療関係者、法学・倫理学専門家等 が考えられます。厚生科学審議会科学技術部会運営細則で、こういった委員会の委員及 び委員長は科学技術部会長が指名することとされておりますので、今後、矢崎部会長と よくご相談をしたいと考えております。  4の「その他」としては、この指針は文部科学省との共同告示であることから、本委 員会と、おそらく文部科学省のほうにも同様な委員会が設置をされることになると思い ますので、そちらと合同開催していただくなどして、文部科学省ともよく連携をとりつ つ、議論を進めていく必要があるだろうと考えております。簡単ですが、説明は以上で す。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  疫学研究指針につきましては、5年を目途に見直しを行うということで、この5年間 の経緯を見て、見直すところは見直すという作業をする専門委員会の設置ということで すが、何かご意見はありますでしょうか。お認めいただけますでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、私どものほうでこの専門委員会を設置さ せていただきたいと思います。決定次第、委員の皆さんにご連絡いたしたいと思います ので、よろしくお願いいたします。  続きまして「平成19年度戦略研究課題について」ですが、まず事務局からお願いしま す。 ○林研究企画官  「平成19年度戦略研究課題について」は、関係する資料は資料3と黒川班でおまとめ いただいた戦略研究ガイドブックの冊子。それから、いまお配りした評価結果の1枚紙 です。なお、また細かい訂正で恐縮なのですが、この戦略研究ガイドブックの2頁の「は じめに」のいちばん下。先生方にお配りしているのは訂正してあるかと思いますが、日 付が「平成17年3月31日」となっているのは「平成18年3月31日」の間違いですの で、訂正をお願いいたします。  前回、部会でお示しした平成19年度戦略研究の候補課題が5つあったかと思います が、その後、新たなものは出てまいりませんでしたので、この5つについて厚労省内の 科学技術調整官による評価を行いました。それを私から説明する前に、いま出ている5 つの候補課題について、提案課の担当者から、それぞれ概要を説明いたします。 ○障害保健福祉部(武井補佐)  資料3の2頁、3頁から説明させていただきます。「感覚器戦略研究」の提案という ことで、感覚器については情報の80%が目から入ってくる。また、聴覚器の領域につい ては、コミュニケーションにおいて非常に重要な役割を担っているということで、個々 人のQOLを考える上では、感覚器は非常に重要な分野であると考えられるかと思います。 また、今年の4月から施行された障害者自立支援法ですが、こうした感覚器による障害 者の社会参加を促進するという、重要な社会的な任務も担っているということがありま す。  こうした背景を踏まえて、当方の障害保健部といたしましては、研究テーマとして2 頁にありますように、視覚・聴覚障害者を20%低減させるとともに、障害者の社会参加 を促進する介入・支援手法の確立に関する研究、というものを提案させていただいてお ります。研究対象者としては感覚器の障害者で、主な疾患として、いま想定しているの が緑内障や加齢性黄斑変性等です。いままで得られた治験が2頁の欄に書いてあるよう に、正常眼圧緑内障、網膜血管新生抑制機構に関する科学的な治験を得ております。こ うした治験をベースにして、感覚器障害の予防・診断・治療に関する戦略研究の創設と いうことを考えております。  具体的には3頁ですが「感覚器戦略研究」として、研究課題はいま申し上げたような テーマに対して、具体的な研究として視覚研究については予防、治療法の開発というこ とを念頭に置いて、主に多施設の臨床介入研究による疾病の進行抑制、治療法の確立と いうことを目指すものです。聴覚領域においても、同様のスキームで進めるということ を考えております。研究目標については、先ほどの研究目標を達成することによって、 成果として、いちばん右側にありますように、「感覚器疾患を克服し、生涯にわたる安 心・安全の確立」を目指す内容となっております。以上です。 ○母子保健課(齋藤補佐)  まず、資料の4頁、5頁の「確実、安心な妊娠・出産のための戦略研究」の提案、「生 殖補助医療の標準化と短期的・長期的安全性確保のための研究」の説明をさせていただ きます。少子化問題を解決するためには、あらゆる視点から多くの取組が必要なわけで すが、科学研究についても、インパクトのあるものを集中的に実施する必要があるわけ です。そこで、私どもとしては、少子化対策のための研究として、どういうものがある のかということを考えてみました。少子化対策としての科学技術研究の視点ですが、こ れはやはり子どもとその家族を大切にすること、妊娠・出産から子どもの成長・発達に 応じて、重点的に実施すること。すなわち、1人でも多くの子どもが健やかに生まれ育 ち、活力ある社会をおくれることができるように支援する、そういった視点の科学研究 を推進することが求められていると存じます。  先ほどご審議いただきましたように、これまで厚生労働省としては「子ども家庭総合 研究」という、とても小さな研究予算の枠組みの中で、周産期医療、小児医療、女性の 健康といった研究を行ってきたところで、臨床現場や行政政策の基盤となるような着実 な成果は生まれてきたわけですが、先ほど今井委員からもご指摘がありましたように、 研究費の総額は6億円となっており、厚生労働省の科研費422億円の中の1%にしかす ぎないといった現状があります。そうすると、総合科学技術会議からも求められている ような、国として行うべき「次世代健全育成」のための大規模な科学研究をするために は、額的にも極めて不十分な状況があります。  そこで、私どもとしては今回、戦略研究ということで課題を提案させていただいてお ります。日本のカップルの10組に1組は不妊に悩んでおられるという現状があります。 65人に1人が生殖補助医療、いわゆる不妊治療により生まれております。そうしたこと から、厚生労働省としても、こういう子どもにめぐまれずに悩んでいるご夫婦に対して の特定不妊治療費助成事業を行っており、その拡充に努めてきてはいるのですが、こう いった不妊治療の世代を超えるような影響に関しての科学的な研究評価は、国としても 緊急を要する課題となっております。今後も、こういった不妊治療、生殖補助医療につ いてはニーズが増加することが予想されておりますので、こういった生殖補助医療によ って生まれた子ども、あるいは妊婦の心身の健康を守ることが日本の将来のための緊急 的な課題で、次世代につながる重要な課題です。  そこで、生殖補助医療、不妊治療が急速に広まっている中で、その標準化された手法、 評価基準、子どものフォローアップなどに関して整理するために、戦略研究として提案 しております。こちらにお示ししたとおりですが、不妊治療によって産まれた子どもの 長期予後の検証、長期コホートによっての継続的調査体制の構築、生殖補助医療の標準 化、短期的・長期的安全性の確保についての研究の実施をして、特に不妊治療によって 生まれた子どもを幼児期・学童期の精神・情緒的な発達を中心として全国的に予後調査 をする必要があります。また、これが軌道に乗ってまいりましたら、将来的には生殖年 齢まで調査をすることを目指します。  さらに、生まれた子どもの心と体のカウンセリング体制を実施するための研究を推進 してまいりたいと思います。これらの研究を推進することにより、医療技術の改良と標 準化が図られて、生殖補助医療による負担軽減が図られます。大まかに申しますと、成 功率としては30%アップ、それから、多胎率は30%減少、不妊治療にかかわる経済的な 負担としては30%減少することが見込まれ最終的には妊よう力の向上と健全な次世代 育成につながる、というインパクトがあります。  次に資料の6頁、7頁のもう1つの課題「次世代健全育成戦略研究」です。こちらは 「子どもの健やかな成長・発達を阻害する小児疾患の克服のための科学的基盤研究」で す。小児の慢性特定疾患として登録をされている子どもの数は、ここ6年間で延べ75 万人です。その多くは先天異常です。小児の先天異常は決して稀なものではありません で、疾患により出現頻度は異なりますが、慢性肉芽腫症、ムコ多糖症の1・2・6型、 またアデノシン・デアミナーゼ欠損症、遺伝性白質ジストロフィー、フェニルケトン尿 症、血友病、さらにはSIDS(乳幼児突然死症候群)の原因疾患にもなっております有機 酸代謝異常症や塩基喪失型の先天性副腎過形成など、全体で出生児の3〜5%は見つか ります。この研究により、年間1万人以上の子どもを救うことができるようになります。  現在行われているような、例えば酵素補充療法といったものは、非常に頻回な酵素補 充を一生継続する必要がありますので、患者・ご家族の負担が大変大きいわけです。そ の点、例えば遺伝子治療については、これは疾患が根治しますので、完治し、健康な体 となることができます。ですので、子ども家庭総合研究では、先行研究としてDNAチッ プを利用しての遺伝子診断の標準化といった研究を実施してきたところで、その成果も 踏まえて、課題1はポストゲノムの成果を利用して、従来は1日に少しずつしか調べら れなかったような遺伝子を大量に探索するシステムであるハイスループットシステムの 確立と標準化によって、幅広く疾患関連遺伝子を見つけて、この実験系によって1つの 遺伝子の関連遺伝子がわかり、その他の遺伝子への影響を見て、関連遺伝子のネットワ ークを確立して、単因子遺伝の治療につながるような創薬ターゲット遺伝子を見つける と。これは世界でも、日本が先陣を切ることのできる研究領域となります。  また、課題2としては、これは先ほどのような根本治療法のない先天異常単一遺伝子 異常疾患ですが、そのための遺伝子治療のベクターの改良と導入を行う。そういった臨 床研究によって、完治と障害の予防、生存率が高まりますので、先天異常によっての恒 久的障害そもそもを予防できる。また、患者とその家族のQOLが高まります。  課題3としては、5年程度継続するような追跡のためのコホート研究で、治療を受け た群と受けない群で比較をして、疑い児を含めてフォローアップ体制の確立を目指すと いう研究を実施してまいりたいと思います。5年後の研究のアウトカムとしては、子ど もの先天異常の根治、患者・家族のQOLの改善、最終的に社会的なアウトカムとしては、 病気を持つ子どもと家族を大切にする活力のある社会の構築、さらに言えば、社会的な インパクトとしては1人でも多くの子どもが健やかに生まれ育ち、活力のある社会をお くることができるように支援するための科学研究の推進。  これまでは不治の病とされてきたようなこうした疾患ですが、それらが完治できるよ うな技術開発も行い、1人でも多くの子どもとその家族を支援することで、子どもを大 切にする日本社会の姿勢を示す。そして、こうして社会の安心感を醸成するということ で、最終的には安心して子どもを持つことができることにつながると考えております。 以上です。 ○疾病対策課(牧野係長)  続きまして、腎疾患の戦略研究について、疾病対策課の牧野より説明させていただき ます。腎臓を患われた患者の最終的な腎不全に対する治療として、現在、我が国では血 液透析が非常に普及しており、これは患者に大変な安心を提供しているとは思います。 ただ、血液透析にも問題点があります。1つは患者にとっての問題点で、例えば週3回 透析病院に通わなければならないことで、働きに行けない、生活の質が煩わされる、あ るいは食事や飲水の制限がかかってきてしまいますので、そういった意味での生活の質 の問題があります。また、災害、地震などが起こったときに、不安を覚えているという 面もあります。  もう1つはお金の面なのですが、血液透析にかかる医療費は国民医療費の約5%、1 兆3千万と非常に大きな額で、1人あたりも大きいですが、全体の中での占める位置も 非常に大きくなっており、血液透析を最終的な治療として捉えつつも、こちらに患者を 行かせないための工夫が必要なのではないかと考えております。そういった中で、血液 透析は現状では毎年、35,000人の患者が新規に導入されていて、こちらも年々増加傾向 になっている。それらにどのように取り組んでいくかを考えている戦略研究です。  2枚目の絵ですが、腎臓の病気というのはどのように進むか。こちらはよく世間で言 われていることで、透析導入の原因疾患では糖尿病が多いと言われていますが、これは 決して糖尿病だけの問題ではないということを強く申し上げたいと思って、このように 書きました。  腎臓の病気、原疾患としては糸球体腎炎、糖尿病、高血圧などといった多々の病気が ありますが、これが有症化してくると、いわゆる慢性腎疾患、蛋白尿が出て、血圧が動 いてクレアチニンの値が上がってくるという慢性腎疾患の状態になってきます。こちら は、この状態に対してのある一定の介入をすることで、腎臓の破壊の予防ができるとい うことがある程度、学問的見知から得られていると伺っております。しかし、そこの然 るべき対処をとらないことで、腎疾患が進行していくと、CRF(慢性腎不全)に至り、そ この終末像に対しては腎代替療法が行われる。こういう腎疾患の進行、マーチのような ものがあります。  この中で、最も対策をとるべきであると思われるところが、真ん中にあるCKDである ということです。そこの有症化、つまり発症、そしてCKDからの進行の両面に対する介 入を行って、腎疾患の進行を予防していき、最終的には腎代替療法、主には血液透析で すが、そこへの移行を阻止していくための介入の方法を検討したいと考えているのが、 腎疾患の戦略研究であります。  具体的な手法としては、絵の右側のように、治療対象となるCKDの症状を明確に捉え て、そちらに対して早期発見・早期治療を行ったり、患者に自己管理をしていただく。 血圧の管理、食事の管理をしていただいたり、普及啓発などといった大きな形で全国民 的なターゲットとした動きを含めて、CKDの管理をしていく、疾病管理をしていくこと によって、血液透析などへの導入を予防していこうと考えております。そのアウトカム としては、血液透析までの期間の延長、透析が導入される患者が増えないようにしてい くといったところで、評価できるかと考えております。  課題1ですが、1点目は「CKD患者のスクリーニング手法の確立」としました。これ はCKDという概念は確かにありますが、こちらの概念を明確に仕切るようなエンティテ ィとしての数値化などといったものは、まだ日本においては確立してはいないと伺って おり、またそれを発見するための手法、検診などといった部分も煮詰めていくべきであ るといった部分の研究です。  2点目は、そのCKD患者を進行させないための血圧管理、蛋白尿の管理といった部分 の介入研究、こちらは経過観察的な研究は過去に多々行われていますが、積極的な介入 研究が日本で大きく行われてはいませんので、その手法の評価を行うために研究すべき だと考えております。その結果、最終的に国民の享受できる利益としましては、QOLの 向上、そして医療費の改善といった効果が期待されると考えております。以上です。 ○老人保健課(福原補佐)  続きまして、老人保健課の福原でございます。資料の10頁、11頁の説明をさせてい ただきます。当課で提案させていただきますのは「運動器の機能向上のための戦略研究」 と題して、「高齢者の運動器の機能を維持・向上させる臨床介入手法の開発研究」です。 当課としましては「生涯にわたって元気で活動的に生活できる社会の実現」、これを目 指しての高齢者の運動機能の維持・低下予防こそ、今後、行政が取り組むべき最重要課 題であると考えております。仮にがん、生活習慣病、これに対する対策が目標とする数 値まで到達できたとしても運動器が障害されておれば、元気で活動的な生活をおくるこ とはできません。  事実、要介護状態となる主となる疾患の第2位が関節症、第4位が骨折となっており、 こういった実態を踏まえ、11頁のように、骨折・転倒、骨粗鬆症、関節症といった3疾 患をターゲットとし、高齢者の健康寿命の延伸を目指す臨床介入研究を提案いたします。 具体的に申しますと、骨折・転倒に関しては、これを20%から25%減少させます。膝関 節症に伴う要介護患者数を20%から25%減少させます。骨粗鬆症に関しては、これに対 しビスホストネート等の薬物療法を行い、これを改善させます。こういった数値目標を 達成するため、研究の実施主体であります日本整形外科学会および「運動器の10年」日 本委員会等と協力して、日本全国で大学、開業医、その他臨床医等が一体となり、研究 を推進してまいりたいと考えております。以上です。 ○林研究企画官  いま各課から説明のあった各候補課題について、提案局に所属していない科学技術調 整官に、この戦略研究ガイドブックに示された観点、具体的には資料3の1頁の1つ目 の○に9つ並んでおります。このそれぞれの観点から書面評価を依頼した結果が本日、 各先生方にお配りをさせていただいた1枚紙です。点数しか書いてありませんので、私 のほうからそれぞれ簡単に注釈を付けさせていただきますと、感覚器障害に関しては、 視覚・聴覚障害は国民のQOLを脅かす重大な健康障害であり、日本も超高齢社会を迎え つつある中、喫緊の課題だろうということで、効果的な治療介入が必要であると。この 分野は先行研究もあり、改善可能性はあるけれども、いま説明のあった数値目標につい ては、ちょっと検討が必要かもしれない。今後、さらに課題を明確にして、成果目標、 研究計画立案に取り組むべきではなかろうか、というのが調整官の総意です。  子ども家庭に関しては、1番目は社会的関心は高いのですが、この内容では少子化対 策におけるアウトカム、インパクトはやや弱いのではなかろうかということと、先行研 究の知見の集積が明らかでないために、いろいろ課題はありますが、まずは生殖補助医 療の安全性評価を実施すべきではなかろうかという意見です。  子ども家庭の2番目は、遺伝子治療の提案です。いまほかの遺伝子治療もこの部会で ご審議をいただいているところですが、遺伝子治療は長期的な安全性が十分確認されて いないものもありますので、実現可能性が低いのではなかろうかということと、また次 世代の健全育成にどの程度貢献するのか、さらに政策としてどのように実施していくの かというところがよく見えない、という評価でした。  腎疾患に関しては、慢性腎疾患における血液透析導入について、エビデンスに基づく 効果的な政策が必要。生活習慣病由来の腎疾患も増加しており、頻度の軸にも合ってい るのではないか。今後、具体的な成果目標、研究計画立案に取り組むべきではないかと いう意見です。  最後の運動器は、超高齢社会にマッチした課題ではありますが、リハビリの効果がイ ンパクトのあるアウトカムにつながるのかどうか。また、運動介入研究の成果を全国展 開できるかどうか、というところに課題を残しているのではないかということでした。  以上のような結果、私どもとしてはいちばん評点の高かった順に、感覚器戦略研究と 腎疾患対策戦略研究の2つに絞れるのではないかと考えておりますので、これについて 本日ご審議をいただければと思っております。  最後に、本日ご欠席の岩谷委員から、感覚器戦略研究を推す旨のご意見をいただいて おりますので、ご報告を申し上げます。事務局からの説明は以上です。 ○矢崎部会長  それでは、委員の皆様のコメント・意見をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょ うか。 ○加藤委員  これは絞り込みを行ったけれど、ここまで絞っていいかどうか、もう一遍検討しろと いう趣旨なのですか。 ○矢崎部会長  いまの事務局の感覚器と腎疾患に絞られたことに対して、この部会でご承認いただけ るかどうかということです。 ○加藤委員  生殖補助医療について、長年、審議会をやっているのですが、いちばんの問題は生殖 補助医療を受けた患者が病院からドロンしてしまって、結果がわからないと。したがっ て、追跡調査ができないというので、何年議論をしても、本当に生まれた子どもが幸福 だったかどうかというデータが非常に乏しいのです。これだけは何とかしてくれないと、 いつまで経っても虚しい議論を続けることになるので、できたらこのデータだけは、こ の機会に確立できるように処置をとっていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  いまのは夫婦間でない生殖補助医療を言われたのですかね。普通の夫婦間の生殖補助 医療で生まれたお子さんは、そういうことはあるのでしょうか。 ○加藤委員  いや、矢崎部会長と一緒にやった委員会でも、追跡データが非常に少ないということ が問題になっていて、今回の計画でそれが完全にカバーされるのかどうかわかりません が、とにかく追跡データを作っておかないと、今後の審議が事実上できないという感じ がいたします。 ○木下委員  ただいま評価結果の点数が出ておりましたが、これは各研究内容を詳細に見れば、お そらくみんな100点ではないかと思います。ここでの差でもってどうだというよりは、 もっと国家的政策として、厚労省の政策全体の中でどの様な位置付けにあるのかの視点 で選考していただきたいと思います。私は積極的に子ども家庭総合研究を、この際是非 1つは入れていただきたいと思っている1人です。  その理由は、少産・少子化の対策は国家的な政策の1つです。先ほどの資料で人口学 的な研究から出生率回復の条件についての記述がありました。出生率を回復するために、 第1児出産の早期化、女性が早く産むようにと提言されていますが、それは無理な話で、 現在はとにかく結婚しないのです。結婚しないし晩婚化です。何歳で結婚しても妊娠す るかと思うと大間違いで、42歳を超えたらまず難しい。成功することは極めて奇跡的な ことです。そういうことから出生率の減少傾向はとどまるところはないと思います。  そういう中で、不妊というのは、子供を産みたいけど出来ないカップルですから、患 者の中で最も熱心な方たちです。少なくともそういう方たちに手を差し延べることは極 めて大事であります。そのような意味での不妊症の治療、つまり生殖補助医療は極めて 重要な位置になると思います。  一方、世界の他の国をみても北欧やフランス・オランダでは確かに出生率が上がって おりますが、これはいわゆるシングルマザーが増えているからです。そういう社会的な 環境を日本で許して、積極的に進めるというのであればそれは可能かと思います。しか し、我が国では結婚したカップルが子供をほしいのに産めないことに対して、手を差し 延べていくべきだと思います。しかし、ただ妊娠できればいいというわけではありませ ん。例えば体外受精のことを考えますと、胚を3〜4個子宮に返せば成功率は上がりま すが、多胎妊娠が増えます。それは早産・未熟児をつくることになり、また知能発育等 に問題がおこることがあります。  その視点からも、明確な基準を設けていくことは極めて大事であります。受精胚をつ くることは80%か90%可能なのですが、できた胚を子宮に戻して、着床して児が育って いくというのは、良くてわずか2割から3割なのです。まだまだ大きな問題があります。 したがって、不妊治療に関し標準化して、生まれた児のフォローアップスタディをして、 どういうことが問題なのか検討するスタディは必要です。  出てきた研究課題は、どれも全く問題ないものであろうと思いますが、私は何とか「子 ども家庭総合研究」を1つは入れていただきたいと思います。 ○黒川委員  これは事務局の話なのですが、資料3に書いてあるように、いまのような木下委員が おっしゃった問題があって、それは厚生行政的にはすごく大事な研究だから、公募する とかいろいろなことがあります。3にある戦略研究とは全く違った新しいカテゴリーで、 私は3年間ヒアリングしてやっているので、資料の黄色のガイドブックがあって、こう いうやり方でやるのに適しているかという話で、大事なのは全然別のカテゴリーである と思います。そこのフレームで検討してもらったのだと思うので、先生のおっしゃるこ とはもっともだと思います。  いま結婚した人の夫婦で子どもがほしい数というのは、大体2.58です。実際あるのは 2.11です。このギャップをどうするかというのが1つの課題なのですが、いろいろ調べ てみると、女性が35歳を過ぎると、経済的・社会的な理由よりは、もう圧倒的に医学的 な理由で子どもができないという人が多いので、そういうこともわかった上でどうする かというのはすごく大事で、35歳以下は社会的・経済的な理由というのがマジョリティ ーになってきます。だから、そういう話も考えなくてはいけないと思います。  先生がおっしゃるとおり、日本の場合、いまの子どもの嫡子でない人が1.8%ぐらい でしょう。まだ増えていると思います。アメリカ・ヨーロッパはいま40%ぐらいだし、 北欧がいま50%を超えているから、そういう社会になってくるのかどうかはちょっと別 として、いろいろな側面があるなというのは確かで、この評価がこのカテゴリーでとい うのは、そういう意味で言っているわけでしょう。だから、ガイドブックみたいな話、 これはかなり詰めてきているので、これに合うのは何かという話であって、先生がおっ しゃっているような研究は、当然やると思います。 ○林研究企画官  事務局からコメントさせていただきますと、いま黒川委員からお話がありましたとお り、今回の5つの課題について、調整官会議で行ったのは、戦略研究になじむかどうか という観点からの評価です。子ども家庭のテーマが行政的に重要だというのは、もちろ んですが、先ほど申し上げましたように、アウトカム、インパクト、先行研究の集積な どから見て、今回はまだプリマチュアなのではなかろうかということです。  したがって、子ども家庭については、別途、これまでの知見としてどういうものがあ るかということをレビューを行い、その結果に基づいてどういう展開を図っていくべき かの検討を、この戦略研究とは別にやらせていただきたいと考えております。 ○木下委員  戦略型研に関して、ここに書いてあるようなクライテリアに合わないのであれば、こ れは話になりません。今後、他の研究課題でも結構ですが、予算が付くような研究課題 として是非採用を願います。その辺のバックアップをしていただいた上で考えていただ きたいと思います。 ○笹月委員  いまの件ですが、例の「生殖補助医療研究推進のための胚の取扱い」というのをやっ ていますね。今度は、それを実際に子宮に戻す、いわゆる医療とする場合に、実は生殖 補助医療はいま65人に1人はそうだというぐらい、あたかも確立した医療として、何の 制約もなく行われているわけですね。それに当然、将来何かルールができるだろうと。 そのためには、いまいろいろな方がおっしゃったように、生殖補助医療で生まれた人た ちの将来がどうなのかというフォローアップですね。可能性としては、よく指摘される のは、メチレーションの問題でレチノブラストーマ(網膜芽細胞腫)が増えるのではな いかなど、いろいろなことが言われますけれども、やはりフォローアップは早くスター トしたほうがよいと思います。ですから、この戦略的研究とはまた別枠で、そういうこ とが非常に大事であることをここでひとつご了解いただいて、何か次のあれを考えてい ただくというのがいいのではないかと思います。 ○今井委員  関連なのですが、私もいま笹月委員がおっしゃったようなことでいいと思いますので、 このチョイスに対しては別に文句はないのです。ただ、1つだけ質問があるのですが、 いまの生殖補助医療に関しての点数の中のいちばん最後、アウトカムの前に「緊急性」 というのがありますね。この緊急性の所の25というのが、何か点数が低すぎるという感 じがするのです。  いま既に、いわゆる社会的には子どもが少ない、少子に関して、子どもを増やしてい く一方で、少子でいいから、いわゆる良質なという言い方をしていいのですかね、そう いう子どもを育てていくという方向も模索する、という状況もあります。いま笹月委員 のお言葉もあるのですが、そうすると特に体外受精などの場合は、最初から胚そのもの が良質な胚である必要が出てきたりして、この問題はかなり深いと思うのです。ですの で、そういう点では今回のこの戦略研究には合わないかもしれませんが、早めに胚を選 べるという点でも大切なことだから、やはりこれは研究が必要だと思います。  一方で、次世代健全育成戦略研究のほうは、前回ご質問しましたが単一遺伝子病の場 合、例えばAPRT欠損症、その他突然変異箇所も、これは例えば生殖医療で胚を選ぶとき などにも何番のというのはちょっと覚えていないのですが、既にコドンの番号もわかっ たりしているので、そういう遺伝子病は外すことができます。したがって、今回はでき なくても早めに生殖医療のほうの研究をしていただきたい。次世代のほうに関しては、 いまいちばんメジャーというか、問題になっている、前回も申しましたけれども、発達 不全、発達障害のお子さんたちみたいな、遺伝子系で言えば、多因子遺伝病のほうにむ しろ焦点を当てていただきたいと思うのですが。25はどうなりましたか。 ○林研究企画官  この緊急性25というのは、少産・少子化問題を生殖補助医療によって解決をすると考 えれば、それはあまり緊急性が高くはないのではないかと。というのは、少産・少子化 には、生殖補助医療以外にもいろいろなファクターがあって、そういうものがどれだけ 寄与しているのかということも明らかにした上で、全体としてどうかを考えなければい けないわけで、その中でこの課題は、生殖補助医療だけを取り上げたような形になって いますので、そういうことでは緊急性が高くないという評価だったと理解しております。 ○今井委員  でも、そう言うとほかのもそうではないかと。 ○矢崎部会長  議論は尽きないところですが、生殖補助医療といった場合に、夫婦間の生殖補助医療 から非配偶者間の生殖補助医療、それからサロゲートマザーのような生殖補助医療まで、 極めて幅広い領域があります。これについては、生殖補助医療のあり方ということで、 生殖補助医療として、我が国でどこまで国民的なご理解を得て、医療として定着させる かという議論を、加藤委員と本当に延々といたしました。  これについては、いまの議論の中で木下委員が言われた、あるいは加藤委員の言われ た、それによって生まれた子どもが、その子どもにとって本当に幸せだったのかという 議論もありまして、最終的にはまとめて、これはある程度国会で議論していただいて国 民のコンセンサスを得るという段階で、いまストップしてしまっているのです。  ですから、これは重要な課題ですが、これをいわゆる戦略研究として、一般的に幅広 く研究を進めるテーマにはなじまない可能性があると、私は感じました。それで、いま のご意見に沿って、やはり生殖補助医療のあり方というのは喫緊の課題でもありますの で、これを我々科学技術部会として折角出した結論に、今後とも、もっと議論を進めて いただきたいという意見を申し添えて、戦略研究ということは今回はご議論がありまし たが、従来の糖尿病、がん、エイズ、こころの問題、自殺ですね。そのテーマに引き続 いては、黒川委員がおっしゃられた戦略研究という今までの考え方からは、感覚器障害 研究と腎疾患対策戦略研究を採択させていただいて、いまご議論いただいたものについ ては改めてアピールしていくということでお認めいただけますでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、そういう戦略研究の課題を採択させてい ただきます。最後に、遺伝子治療臨床研究について、よろしくお願いします。 ○林研究企画官  資料4ですが、東京大学医科学研究所附属病院から、遺伝子治療臨床研究の実施計画 の変更報告が1つ出てきております。1頁ですが、課題名は「腎細胞がんに対する免疫 遺伝子治療−IV期腎細胞がん患者を対象とするGM-CSF遺伝子導入自己複製能喪失自家 腫瘍細胞接種に関する臨床研究」ということで、総括責任者は東京大学医科学研究所附 属病院内科の山下教授です。  2頁から研究の内容が書かれておりますが、4頁の真ん中辺りに変更内容が記載され ております。1つは研究実施期間が当初、平成18年3月31日まででしたが、これをさ らに2年間延長して、平成20年3月31日までとするというものです。研究期間を2年 間延長する理由としては、これまで4人の患者に接種が完了して、うち生存中の2名の 患者を入院または外来において観察中であるということで、接種終了後もこの生存中の 患者の経過を、引き続き詳細に観察する必要があるためということです。現在までのと ころ、GM-CSF遺伝子導入自家腎癌細胞皮内接種の安全性と、患者体内における抗腫瘍免 疫誘導の事実が確認されているということが書かれております。このほかに、総括責任 者以外の研究者に異動がありまして、それも併せて届け出られております。  今回の変更で、この報告書は1カ所誤りがありまして、2頁の上から2つ目のカラム に研究実施期間のところがあります。変更前が「平成10年8月10日から平成18年3月 31日まで」ですが、変更後は2年間の延長ですので、「平成10年8月10日から平成20 年3月31日まで」というのが正しい記載です。報告は以上です。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  従来、続いていた遺伝子治療の実施期間の延期ですが、何かコメントはありますでし ょうか。それでは、この変更をお認めいただいたということにします。以上で、これま での議題はすべて終了いたしましたが、事務局から連絡はありますか。 ○林研究企画官  前回部会でご審議いただいた、「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等 の実施に関する基本指針」をお配りしております。6月1日付で関係機関等に通知をさ せていただきました。また、日本学術会議に作成を依頼しておりました、この基本指針 の中で定めている「機関内規程」の策定の手引きとなる「動物実験の適正な実施に向け たガイドライン」についても、6月1日付で取りまとめられましたので、併せてお配り させていただいております。これは今日、委員のお手元にはお配りしておりますが、今 後、厚労省のホームページにも掲載して、周知を図っていくこととしております。  最後に、次回の科学技術部会ですが、7月27日(木)15〜17時で、場所は厚労省9 階の省議室を予定しております。正式なご案内については、詳細が決まり次第お送りさ せていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。 ○矢崎部会長  今日の部会をこれで終了いたしますが、先ほどの評価についてのご意見を、6月15 日まで事務局にご送付いただいて、それで最終的な報告書を作成したいと思いますので、 よろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -