06/05/31 第3回集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会議事録     第3回集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会                     日時 平成18年5月31日(水)                        15:00〜                     場所 厚生労働省共用第8会議室 ○事務局  ただいまから「第3回集中治療室における安全管理指針検討作業部会」を開催します。 まだお見えになっていない委員の方も若干おられますが、定刻になりましたので始めさ せていただきます。  委員の皆様におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして誠にありがとうご ざいます。本日より新しい委員が出席されています。まだお見えになっていませんが、 日本医師会の役員交代に伴い、石井正三委員にご出席いただく予定です。後ほどご紹介 したいと思います。  議事に入る前に、お手元の資料の確認をお願いします。議事次第、座席表、委員一覧、 資料1から資料5、参考資料1、2です。よろしいですか。平澤部会長に議事進行をお 願いします。 ○平澤部会長  皆様、月末のお忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。早速、 第3回集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会を始めたいと思います。 議事次第に則って会を進めたいと思いますが、これまで作業部会を2回開催しています。 その作業部会において指針における目的や基本的な考え方、指針を対象とする医療機関 や患者の範囲について議論してきたところです。総論的なことをずっと議論してきたと ころですが、資料1にその意見を取りまとめています。事務局より資料1についてご説 明をお願いします。 ○事務局  資料1について説明します。資料1は第2回作業部会までの主な意見を整理したもの です。 1の「指針の目的」については、集中治療を受けているような重症患者の医療事故を防 止して、その安全の確保を図るとしてはどうか。想定する患者は、ICUで受けるのと 同じような治療を受けている重症患者も含めてはどうか。このような意見があったかと 思います。  2の「指針作成に当たっての基本的考え方」としては、4つ目の○で、ICUという 場所や施設にこだわるのではなくて、患者の視点から指針を検討すべきではないか。5 つ目の○で、広く集中治療を提供している部門が利用できるような指針を作成して、冒 頭に、「指針の読み方」や「利用の仕方」を記述してはどうか。6つ目の○で、一般病 棟とICUとでは指針は異なるけれども、一方で留意すべき点については共通項目が多 いのではないか。7つ目の○で、ICUとして特徴的なことを考慮していくべきではな いか。8つ目の○で、根拠を示して指針に沿った結果を後ほど評価できるようにすべき ではないか。9つ目の○で、指針の導入後、指針の有効性を評価できるようにすべきで はないか。このような意見があったかと思います。  2頁で3の「想定されるヒヤリ・ハット事例、医療事故」では、最後の4つ目の○に ありますように、ICUでは重症者がいるため、一般病棟ではインシデントとなること も、ICUではアクシデントになる可能性があるのではないか。こういう意見がありま した。  4の「指針の対象となる患者、医療機関等の範囲」として、前回、患者さんのことに ついてお話がありましたので、(1)患者の範囲という項目を1つ設けていて、「集中 治療を受けている重症患者」の範囲をどういうふうに考えるか。あるいは、「集中治療」 「集中治療を受けている重症患者」をこうしてはどうかという意見をまとめています。  (2)の医療機関の範囲としては、主として一般のICUを対象としてはどうか。診 療報酬上の施設基準をとっていない医療機関内での重症患者管理が重要ではないか。 「集中治療を受けている重症患者」の範囲によっては、診療報酬上ICUと評価されて いないユニット、中小病院のICUも対象になるのではないか。こういう意見がありま した。  3頁で5の「指針に盛り込む項目」として、この辺はあまり具体的な議論はしていた だけていなかったので、ご覧のとおりのような意見を整理しています。  資料1については以上ですが、補足として参考資料1、2をご覧ください。参考資料 1は前回もお配りした「集中治療に関する用語について」です。参考資料2は診療報酬 におけるICUの施設基準として、一般的なICUの管理料の施設基準はこれまでも用 意していましたが、ハイケアユニットのことも前回までに議論がありましたので、ハイ ケアユニットの入院医療管理料に関する施設基準も掲載しています。併せて重症度につ いての議論がありましたので、一般のICUについては3頁から重症度に係る評価表、 ハイケアユニットについては11頁以降に重症度等の評価表を載せています。これはい ずれも診療報酬の施設基準に関連したものですが、用意しています。  25頁で参考資料2−(3)は、これまでも説明した平成14年の医療施設静態調査に基づ くICUの施設数、病床数です。NICU等についてご覧いただいていますが、27頁を ご覧ください。これは先日、中医協のほうでまとめた資料です。主な施設基準の届出状 況として、特定集中治療室管理料等の施設基準を届け出ている医療機関、病床数をまと めています。ここで前回までに説明していた医療施設静態調査と比較していただくと、 例えば特定集中治療室管理料については、中医協資料では平成15年で473施設、3,536 床ということですが、25頁の平成14年の医療施設静態調査では654施設、5,194床と なっています。この差がどういうところに起因しているのかというのは、はっきりわか りませんが、平成14年のほうも、こういう診療報酬の基準を満たしている所について 医療機関に記入していただいていますので、求めている内容は一緒かと思います。医療 施設静態調査のほうについては、医療機関の自記式の調査ということも、原因としては あるのかもしれませんが、数字としては若干違っています。そのほかNICUや、広範 囲熱傷特定集中治療管理料における医療施設数、病床数については、そう大きな違いは ありませんので、一般のICUのところについては若干の違いがあるという状況を報告 したいと思います。  資料の説明は以上ですが、新しい委員の日本医師会の石井先生がお見えになりました ので、ご紹介します。 ○石井委員  日本医師会の石井でございます。4月から急遽参りましたので、議論の流れを勉強さ せていただきながら、よろしくお願いします。脳神経外科をやっています。多少、この 辺はかじったことはあるということで、よろしくお願いします。 ○平澤部会長  説明はよろしいですか。 ○事務局  はい。 ○平澤部会長  ありがとうございました。ただいま事務局から資料1に基づきまして、第2回の作業 部会まで先生方からお出しいただいた主な意見のまとめたものについて、ご説明をいた だきました。ここに書いてあることはこれで決まったというわけではなく、こういう意 見があったということを列挙していただいているわけですが、ご一読なさって、自分は こういう意見を提示したけれども、それが取り上げられていないということはあります か。もしなければ、特にこの中で問題となりそうなのは総論の総論にあたるところです。 指針の目的、指針作成に当たっての基本的考え方、指針の対象となる患者や医療機関等 の範囲といったことだと思いますが、これらについて何かご意見があったら、そのご意 見を承りたいと思います。今日で決まるというわけでは決してありませんが、皆さんの 考えを絞り込んでいく作業の中で、特に今申し上げたようなことについて、ご意見があ ったらいただきたいと思います。どうでしょうか。  「指針の目的」というのは、目的と、この指針がカバーするであろう患者さんの範囲 というのを想定して規定しているわけですが、大体、こういうことでよろしいとお考え ですか。いかがですか。武澤先生、どうですか。 ○武澤委員  良いと思いますが、集中治療を受ける必要がある重症な患者さんの安全を、どのよう に確保するかということを目的とするということですから、施設認定基準にこだわって いるわけではないというふうに判断していいのですよね。 ○平澤部会長  そうですね。それとは別物であるというか。あと想定する患者さんの範囲も杓子定規 にはいかないと思いますが、この指針がカバーするであろう患者さんというのは、皆さ んのご意見をまとめてこういう形になったと思います。集中治療室(ICU)の患者だ けでなく、ICUで受けるのと同じような治療を受けている重症患者も含めてはどうか という考えなのですが、大体、そういうコンセンサスでよろしいですか。 ○前川委員  「指針の目的」のところで、「集中治療を受けているような」と少しぼかした言い方 をしていますが、「集中治療を受ける重症患者」ではいけないのでしょうか。 ○部会長  そうすると、集中治療とは、ということですけれども。 ○前川委員  だから集中というのが規定されると、それを受ける重症患者ということで、別にぼか す必要はないように思います。 ○平澤部会長  いま先生がご覧になっている、資料1の2頁の4の(1)の患者の範囲というところ は「ような」は取ってあって、「集中治療を受けている重症患者」としてあります。そ れで3つ目の○に集中治療とはということで、「内科系、外科系を問わず」云々という ことがありますので、こういうことからすれば「ような」は取って、「集中治療を受け ている」というふうにしていいですか。 ○事務局  細かい文言につきましては、また最終段階でご議論いただければと思っています。別 途、資料4にそういったことも含めてまとめていますので、またその場でご議論いただ ければと思っています。 ○平澤部会長  そうすると「指針の目的」のところで、細部にわたる文言ということは後で議論する 余地があるとして、全体としてはこういうコンセプトでいい、ということでよろしいで すね。ここが先生方のコンセンサスを得ないと、また後になって戻ることになってしま いますので、よろしいでしょうか。  「指針の対象となる患者、医療機関等の範囲」というのも見てください。患者の範囲 は、「集中治療を受けている重症患者」の範囲をどう考えればいいかということ。その 下に、「集中治療を受けている重症患者」とは、「傷病または処置により生命危機にあ るが、適切な治療・看護により回復の可能性のある患者」とあります。  医療機関の範囲は、主として一般のICUを対象としてはどうかというのが皆さんの おっしゃったことだと思いますし、診療報酬上ICUとして評価されていないユニット も対象とするのか、中小病院のICUも対象とするのかということが議論になったと思 います。その意味で中小病院におけるICUというものの実態はどういうことかという ことで、飯田先生に調査していただいたということがあると思います。先ほど申し上げ ましたように、これは今までのご意見のサマリーですから、そういうふうにお聞きおき いただくということで、よろしいでしょうか。  議題2に入りたいと思います。これは今回の我々の作業部会の内容に関係する調査研 究について、2つの報告があります。今までも断片的にはお聞きしましたが、前川委員 が主任研究員となっている厚生労働科学研究「集中治療部(ICU)における医療安全 管理指針策定に関する研究」についてです。先ほど申し上げましたように、これまで一 部紹介していただきましたが、平成17年度の報告書がまとまりましたので、前川先生 よりご紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○前川委員  お手元に配ってある黄色の分厚いものですが、平成16-17年度でまとめさせていただ きました。第2回は私は失礼して氏家先生に来ていただきましたが、今まで第1回、第 2回の中でおおよそ述べてきたものです。それをまとめた資料2を見ていただければと 思います。主任研究者、分担研究者、協力研究者ということで、ここに挙げている方々 からいろいろご協力いただき、あとは日本集中治療医学会の危機管理委員会と安全管理 委員会の2つの委員会にいろいろお手伝いいただきました。1つは日本集中治療医学会 の専門医指導施設を主に対象としてアンケートを集め、危機管理委員会で集めたアンケ ートもまとめ、その2年間のアンケートの調査結果が黄色い冊子の中に載っています。  平成17年度はヨーロッパ、アメリカ、カナダを視察しました。医師、ナース、臨床 工学技士の3名体制で2チームに分かれて現場に入りました。向こうで良いところだけ でなく悪い部分というか、大変な部分も含めていろいろ意見を伺ってきましたが、最終 的ガイドラインに入れる中で、日本人としての少しニュアンスの違うような部分もたぶ んあるだろうということから、視察の中でそういうことも含めていろいろ検討した結果 を載せています。  私たち研究班で、一応の案というものを作ってみたのが資料2の4頁から8頁です。 これは参考にしていただければと思います。基本理念、その他は先ほどディスカッショ ンされましたが、それ以外に、1の1)のICUでインシデント事例が多い背景・要因、 2)のICUで生じる可能性があるインシデントの現象、3)のICUにおけるインシ デントの原因別分類、この2)と3)は入れ換えたほうがいいかもしれません、こうい うものを抽出してきました。  5頁で、2は「ICU設置基準の遵守」ということ。これは医師、看護師、臨床工学 技士、薬剤師、病棟内クラークといった人的なところも含めて書きました。  6頁で、3は「ICUにおける医療安全管理の確立と責任体制」ということです。専 任のリスクマネージャーがいることが望ましいのですが、具体的にはたぶん難しいだろ うということで、誰がそれの対応をするかということです。2)の安全管理委員会的な ものを作るべきだろうと思います。他施設との連携ということで3)に書いてあります。  4は「ICUにおける医療機器の管理体制と安全管理指針」ということで、この辺の ところは今日もご出席の加納先生が、医療機器関係については以前からずっと作ってお られたので、それを少しまとめたという形になっています。医療機器の保守・点険管理 上の注意点と、医療機器の使用上の注意点を簡単に書いてあります。  5は「ICU専門看護師、専門医師の育成と安全管理教育プログラムの作成」で、こ ういうものが今後必要になってくるだろうということ。6は「医療者間のコミュニケー ション」ですが、特にICUでの安全管理という意味では、人的なところが非常に大き な要素になっていますので、そういうものも要るのではないかということです。7はあ まり大きなものにはならないと思いますが、「患者、患者家族へのICUに関する情報 提供」も含まれるのではないかと考えられます。  参考文献のいちばん最後のところは、 アメリカのCritical Care Medicineが出して いるEvidence Based Medicine的な背景による診断とか治療とかいうもののガイドライ ンでかなり厚いものが出ていますので、この報告書には入っていませんが、今日の資料 の中に入れておきました。  いちばん最後に図がありますが、これは厚労省が最初に作られた安全ガイドラインの 基本概念図のようなものを、ICUという意味合いでの少しモディファイしたもので、 これは発表するときに作ったスライドの原稿をそのまま持って来ています。以上です。 ○平澤部会長  ありがとうございました。科研費でいろいろ検討していただいて、アメリカとカナダ を見学し、それも含めて、4頁には「集中治療部における医療安全管理指針(案)」と いうことで、この研究班としてまとめていただいたものを説明していただきました。  先ほど資料1で皆さんにお話をした「指針の目的」というところで、皆さんから、コ ンセンサスを与えていいだろうと言っていただいたことに関しては、これは大体同じよ うなことを想定して、この安全管理指針を作っていただいたと理解してよろしいのでし ょうか。 ○前川委員  そうですね。どちらかというとまだそこまで、この研究班で詳しく目的とか基本概念 的なものは考えていませんでした。現場で働いている医師、ナース、臨床工学技士の方 たちにメンバーになっていただきましたので、どちらかというと現場サイドのものがメ インになっている、と思っていただいたほうがいいと思います。 ○平澤部会長  これは、いまお話を伺うと、先ほどあったICUの患者だけでなく、ICUで受ける のと同じような治療を受けている重症患者という部分については、これを少しモディフ ァイしなければいけないということですか。 ○前川委員  そうですね。たぶん、そういう形になると思います。飯田先生が1回目からずっとお っしゃっている層別化という意味合いでは、どちらかというと、ある程度のスタッフが ちゃんと揃ったICU、というイメージをしていただいたほうがいいと思います。 ○平澤部会長  それを基本にして、また少し他の所で行われている集中治療に関しては、それを基に してモディファイすればいいのではないかということだと思います。いま、ご説明いた だいた資料2の科研の総合研究の報告書について、何かご意見はございますか。 ○前川委員  少し追加しますと、私はヨーロッパに参りました。オランダのロッテルダムのエラス ムスメディカルセンター、スウェーデンのカロリンスカ大学の、これはニューロインテ ンシブケアのユニットです。もう1カ所はドイツのベルリンにあるキャンパスが4つあ る大きな病院でした。それぞれの施設できちっとしたものができているかというと、必 ずしもそうではないという印象を受けました。たぶんヨーロッパも今からきちっとした ものが出てくるのではないかとは思ったのです。「冊子になったようなものがあります か」と聞いたのですが、どこもそういうものは出していただけませんでした。 ○加納委員  ベルリンの病院のシャリテです。 ○前川委員  シャリテですね。 ○平澤部会長  向こうのほうが、かえって問題があるところもあるとおっしゃったのですか。 ○前川委員  そうですね。例えば教育のところなどもそれなりにはやっているのですが、すべてを カバーするような教育ができているかというと、そういうものでもない。だからそれぞ れの施設によって工夫はしながらやっているとは思いましたが、そんなに組織立ってこ ういうものができているとは思えなかったです。  あとインフォームドコンセント的なものは、ヨーロッパに関しては患者さんが入院さ れる時に大きくとるという形で、あまり細かく輸血する時にとる、何をする時にとると いうことではないようです。あれはアメリカ的な考え方で、裁判がバックにあるという 感じですから。ヨーロッパのほうはどちらかというと、医師とのコミュニケーションと いう意味合いで信頼されて、それでインフォームドコンセントをとっているという雰囲 気であったと思います。 ○平澤部会長  先生、ヨーロッパのICUというのは、運営形態としてはオープンICUなのですか クローズドICUなのですか。 ○前川委員  クローズドです。病院外から患者さんが入ってくるという感じではありません。もち ろん救命センターのICU的な所は、またちょっと違うのかもしれません。そういう患 者さんの受け入れをエラスムスは少しやっていました。でも大半の患者さんはそうでは なく、院内からだと思います。 ○平澤部会長  ICUの中におけるオーダーの出し方ですが、それはどうですか。 ○前川委員  オーダーは、専任の医師がいる所はそれなりにICUの医師が出していたと思います。 ○平澤部会長  それによっても、ちょっと違うのかなと思ったのです。ありがとうございます。いま、 前川先生から研究班のご報告がありましたが、何かご質問、コメントがありますか。こ の研究成果を踏まえて、一応、この研究班なりに「医療安全管理指針(案)」というの を提示していただいていますが、これは、いまお話があったように、基本的にはICU というある程度ちゃんとした組織がある所での指針、と理解していいということだと思い ます。 ○前川委員  言葉の言い回しで、「すべきである」と「望ましい」という言い方で少し強弱を付け て書きました。 ○平澤部会長  ありがとうございました。よろしいですか。次にもう1つの調査研究ですが、過去2 回のこの作業部会において、中小病院というか市中病院でのICUがないような所でも、 ICUと同じような治療を受けている患者がいる所もあるので、そういう患者さんも対 象にすべきだというご意見がありました。一方では、そういう中小病院の集中治療室と いうのは、一体どうなっているのかという質問がありました。そこで飯田先生に全日本 病院協会で実態調査をしていただいたということですので、飯田委員より、その概要に ついてご報告をお願いします。 ○飯田委員  まだ完全にまとめきっていませんので、中間報告というか概要報告させていただきま す。資料3にありますように、全日本病院協会の会員病院2,141にアンケート調査しま した。これは連休前に作ったのですが、連休中に配るとなくなるだろうということで、 連休明けにということもありましたけれども、本日に間に合わせるために5月2日から 15日のちょうど忙しいところでやりましたので、いろいろ厳しい問題があります。  調査用紙は郵送して、時間の節約のために記入していただいてファックスで回答をい ただきました。調査項目がここに書いてありますが、エクセルのシート3枚にぎっしり 書いてあり、ワードの文章にすると10枚になってしまい、たぶん書いてくれなくなり ますから、いかに項目が多いのを少なく見せるか苦労してやりました。  運営主体、標榜科目、所在地、都道府県、病床数、全体の平均在院日数、施設基準あ る病床に関してICU、SCU、HCU、施設基準が無い病床に関して独立しているか 一般病棟内か、について次のことを聞いています。  病床数、重症患者管理専従麻酔医数、その他重症患者管理専従医師数、専従医の専門 ((1)麻酔 (2)集中治療 (3)脳神経云々)、ICU専門認定看護師、研修医数、非常勤重症 患者管理医師数(常勤換算)、当直体制((1)専従医 (2)担当医 (3)専従医on call (4)担当 医on call (5)その他)、重症患者管理病床の看護師勤務体制は独立か、看護基準(何対 1看護)ということで、実数を書いたり古い基準を書いたりしたのもありましたので、 ここは調整しています。看護助手の配置数、クラークの配置数、臨床工学技士(人)、 収容患者数、在室日数((1)1日以内何% (2)2日以内何% (3)5日以内何% (4)7日以内 何% (5)14日以内何% (6)14日超何%)、平均在室日数、病床稼働率などです。  運用に関して、48時間以内の再入院患者数、常時〜2時間毎観察患者の収容比率、重 症患者管理病床での院外救急患者比率、重症患者収容基準(あり・なし)、重症患者管 理責任者((1)専従麻酔医 (2)専従医師 (3)主治医 (4)その他)、入退室決定者((1)専従麻 酔医 (2)専従医師 (3)主治医 (4)看護師 (5)その他)、CC,M&M等のカンファレンス( (1)1日1回以上・(2)必要に応じて実施)、CC,M&M等のカンファレンス((1)重症患 者のみ・(2)他の患者と一緒に実施)、定時的に医師・患護師等間のカンファレンスまた は申し送りをしている(はい・いいえ)、医師から看護師への指示((1)口頭 (2)オーダ リング (3)指示簿)を頻度順に記入してください。以下、全部読みませんが、収容患者 重症度、人工呼吸器、血液浄化装置、人工透析装置、IABP、PCPS装置の数、設備云々、 どんな医療機器があるかないかなどです。  ITがどうなっているか。これはかなり大事なので、情報システム((1)電子カルテ (2)フルオーダ (3)薬剤 (4)検査 (5)輸血 (6)看護支援)、情報システム開発((1)パッケージ (2)一部改良 (3)大部分改良・開発 (4)独自開発 (5)その他)、重症患者管理病床区分に独 自のシステム(あり・なし)などです。  安全管理もかなり詳しく聞いています。独自の安全管理指針(マニュアル)(あり・ なし)、作成又は最終改訂日、専従安全管理者(あり・なし)、重症患者の安全管理の 研修/教育(あり・なし)、ある場合の頻度 何回/年、栄養サポートチームが関与し ているはい・いいえ)、病床(病棟)で注射ミキシングは誰がしますか((1)薬剤師 (2) 看護師 (3)医師 (4)その他)、以下、ミキシングする場合の薬剤は何か、定数管理をきち んとやっているか、輸血管理の責任者、機器・設備の定期点検をやっているか、与薬業 務は主に薬剤師かどうか、インシデント/アクシデント対策、RCA、FMEAを年間 何件やっているかなどです。  成果指標としては、これは成果指標と言っていいかどうか問題がありますが、抑制率、 転倒転落の件数、カテーテル、ドレーン等の自己抜去件数、気管内挿管チューブ自己抜 去件数、院内感染発生率、褥瘡発生率、その他の成果指標などです。こういうことで聞 きました。  全日病では情報や安全や質でいろいろアンケート調査をやっていますが、かなりしつ こい調査でも14、15%返ってきますけれども、今回は時期的に期間が短いのと、ICU、 重症患者管理とテーマがかなり特殊だったのと、会員病院の中には療養型とか、あまり こういう重症患者を扱っていない所が多いので、両方加味するとこうなるのだろうと思 いますが、有効回答数は132で回収率は6.2%です。いつものより約半分の回答率です。 それでも短い期間に返ってきてよかったなと思っています。  概要だけお話しますが、施設基準を持っているのはICUが14、SCUが1、HCU が2です。施設基準はないけれどもICUとして運営しているのは38、SCUは22、 HCUは23ということです。会員病院の層別ですが、2,141のうち1,780が医療法人あ るいは特定医療法人です。個人が162、公益法人114、公的もありますが7です。7の うち4回答してくれました。ですから完全な民間だけではありませんが、公的が4ある 以外は返ってきたのは全部民間です。診療科はいろいろあります。全国各地から回答が 寄せられています。  時間がありませんので全部お話しませんが、施設基準がない所でも当然透析とか IABPをやっている所もありますし、PCPSも独立した所あるいは一般病棟でも一部で はやっています。情報システムも施設基準がある所もない所も、電子カルテ、フルオー ダ、薬剤、輸血、その他やっている所があります。これは割合細かく数字が出ています。 情報システムの開発もパッケージを入れた所と独自の開発をした所の両方あります。ミ キシングも薬剤師がやったり看護師がやったりで、医師がやっている所は少ないですが、 やっている所もあります。手術室のことも聞いていますが、手術室は麻酔医がやってい るためか医師がやっている所が多いようです。ミキシングは抗腫瘍剤、循環薬、抗生剤 が多いです。輸血の菅理者もいろいろあります。  ということで、これからもう少しクロス集計などもしなければいけませんが、施設基 準がある所がむしろ少ないので、施設基準がある所とない所との比較の統計的なものは、 あまり意味がないかもしれません。前からお話していますように、施設基準のない所で かなりの重症患者の管理をやっていますので、ここでの安全管理指針というのは非常に 重要だろうと思っています。以上です。 ○平澤部会長  ありがとうございます。これは先生、もう15日に締め切っていますが、回収率が今 後増える可能性はあるのですか。 ○飯田委員  その後待っているのですが、あまり増えていません。もう1回問合せしていますが、 あまり期待はできないと思います。というのは、いま言った母集団が重症患者をやって いる所のほうが回答してくれているのだろうと思いますから、また全体の総数との割合 で検定しますが、多少増えるぐらいだと思います。 ○平澤部会長  先ほど少し申し上げましたが、先生にこのことをやっていただいたほうがいいのでは ないかという意見が出たのは、この作業部会の委員の先生方が、中小病院での重症患者 管理というのはどういう実態なのか知りたいということでしたので、いまのお話だと全 体像がつかめないような可能性がありますね。 ○飯田委員  ですから、全日病の母集団の分布がわかりますし、回答したのがそもそもどういう割 合で返ってきたかというのもわかりますので、統計的に検定して有意差があるかないか というのは無理だと思いますが、全体の中の、少なくとも回答した病院の背景がわかり ますから、ここでは固有名詞は出しませんけれども、我々にはどこから返ってきたかわ かります。 ○平澤部会長  それはそうですけれども。 ○飯田委員  少なくとも民間病院でのデータというのは確かなわけです。あるいは施設基準を持っ ている病院と持っていない病院という意味での、持っていない病院のデータという意味 では、実態としては意味があると思います。 ○平澤部会長  わかりました。いずれにしても、この次の時はもう少し詳しくおまとめいただいてご 報告いただけると思いますので、それを伺ってから、また我々としては中小病院におけ る実態というのを理解した上で、そこにおける重症患者の安全管理をどうするかという ことを議論する資料にさせていただきたいと思います。よろしいですか。 ○落合委員  この全日病の病院の分布というのは、どのあたりに対象が絞られているのでしょうか。 ○飯田委員  返って来たのは35〜599床です。平均で163.5、メディアンで148です。 ○落合委員  かなり広範囲ですね。 ○飯田委員  そうです。 ○平澤部会長  よろしいですか。ありがとうございました。次に本日の主たる議題である議題3に移 ります。集中治療室(ICU)における安全管理指針(たたき台)について、これはこ の作業部会の目的そのものなのですが、これについてまず事務局よりご説明をお願いし ます。 ○事務局  資料4、安全管理指針について(たたき台)ということで用意しています。資料1に これまでのご意見をまとめ、それを最終的な形ではこういうふうになるのではないかと いう感じで書いていますけれども、まだ決定的な表現では書いていませんので、こうい うものをご覧いただきながら、これをさらに精査、ご検討いただくというつもりでまと めています。  また、先ほどご紹介した意見の中に、安全管理指針の冒頭に指針の読み方や利用の仕 方を記述してはどうか、というご意見がありましたので、最初の1枚目はそういうもの を念頭において、この指針はどういう形でできたのかをまとめています。2頁、3頁を 別紙として、安全管理指針そのものの結論的なところを書いていく。そういう大きな構 成をしています。  1頁で前文にあたるようなところですが、1の「はじめに」では、この指針の作成に 至る経緯を書いています。2は、これまでご議論いただいていたヒヤリ・ハット事例や 医療事故の状況、あるいはICUの病院数などの実態について書いていきます。3は 「指針の作成にあたっての基本的な考え方」として、先ほど少し意見の中にありました ように、場所や施設からの視点ではなく、集中治療を受けている重症患者の安全性を確 保するという視点から作成をしてはどうか。目的については先ほど申し上げたような目 的にしてはどうかというところで、今後、意見を集約していただければと思います。  4は「指針の対象となる患者、医療機関の範囲」で、先ほどまとめていた意見のうち、 結論となるようなところについて書いていますが、まだまだ固まっていませんので、例 えば「集中治療を受けている重症患者を対象としてはどうか」という表現になっていま す。対象となる医療機関については、例えば重症患者に対して集中治療を提供するため、 特定の治療室を設けている医療機関を対象としてはどうか。診療報酬における施設基準 を満たさないICUで集中治療を行っている場合をどのように考えるか、ということも 論点になろうかと思います。評価のところについても言及しています。  2頁ですが、これは指針の本体になります。先ほどの前文で経緯や考え方を整理しま すけれども、その最終的な結論について、目的や指針の対象となる患者さん、医療機関 の範囲等を記載し、3の「安全管理指針」として幾つかの項目について記述していって はどうかということです。 (1)のスタッフについては、医師や看護師の数や能力。臨床工学技士、薬剤師の関与 をどういうふうに考えていくのか。また(2)の運営について、管理責任者や安全管理 者を配置するという提言が、前川先生のレポートの中にもありましたので、これからど ういうふうに考えていくのか。(3)の環境・設備について、どういうふうに考えてい くのか。(4)の医療機器について、その範囲や適正使用、保守・点検をどういうふう に考えていくのか。(5)の医薬品についても適正使用についてどういうふうに考える か。 (6)の感染制御や(7)の情報共有、(8)の教育・研修といったものをどういうふ うにして考えていくのか。これまであまりこの辺は議論されていませんので、こういう 投げかけで、本日さらに議論を深めていただければと思っています。私のほうからは以 上です。 ○部会長  ありがとうございます。いま、事務局から説明がありましたように、資料4の1頁目 は解説と言いますか前文と言いますか、そういうことが書いてあって、別紙のほうは、 それに基づいて安全管理指針の具体的なスキームと言いますか項目と言いますか、そう いうのを挙げていただいたということです。  全体の構成につきましては、また後からご議論いただくことにして、まずこの安全指 針についてという1頁目のことについて、何かここは違うのではないかというようなこ とがありますか。こういう感じで安全管理指針について考えていこうというお話ですが、 いかがですか。 ○飯田委員  最初の総論で確認したと思いますが、「ICUにおいて」と言うと何か施設になって しまっているので、ここをきちんと書いておいていただかないといけないと思います。 ○平澤部会長  何番目のところですか。 ○飯田委員  資料4の頭もそうだし別紙もそうです。全部集中治療室となっていますので、先ほど 来、集中治療室の患者の管理ということでありますと、場所で規定してしまうとどうし てもそちらに誘導されてしまう。分けるのなら分けても結構ですが、そうでないところ と両方書いていただきたいと思います。 ○平澤部会長  「集中治療を受けている重症患者の医療安全対策」というような文言ということです ね。ICUとしないでということ。 ○飯田委員  そうです。 ○平澤部会長  この点、いかがですか。先ほどの皆さんのコンセンサスからいうと、そういうことに なるかと思いますが、ほかに何かございますか。あとは資料4のことをお考えいただく 資料として、いま先生方にお配りしたと思いますけれども、前川委員、武澤委員からお 出しいただいた「別添」と書いてある資料です。このことについて前川先生からご説明 いただけますか。 ○前川委員  これはGRMガイドラインと書いてありますが、これはタイトルが間違っていて、I CUの安全管理ガイドライン概要といった感じで、これも案としておいていただければ と思います。第1回、第2回と前からずっと検討してきた内容的なものを武澤委員と一 緒にいろいろ検討して、おおよそこういうものがあるのではないかということで、先ほ どの厚労省のほうでまとめられた、資料1の5の「指針に盛り込む項目」ともオーバー ラップすると思います。  流れとしては、ドメイン、大項目、中項目、小項目という形で、構造としては「人」 「もの」「環境」です。それからプロセス、アウトカム、どういう所が担当するか、評 価、行程表など、こういうものを流れ的に作っておくと、今からの作業もやりやすくな るということで、武澤委員と一緒に考えてみました。以上です。 ○平澤部会長  「別添」というのをご覧いただいて、何かご意見があれば承りたいと思います。複雑 な表で、いま見てすぐというのも難しいかもしれませんけれども。 ○前川委員  例えば資料1の5のスタッフというところが、たぶん「人」のところに当てはまるの だと思います。環境、設備は「もの」と環境のところです。医療機器も「もの」のとこ ろに入ります。薬剤も「もの」です。感染制御はこの中には入っていないかもしれませ ん。全部がカバーできていないところもあると思いますが、そういう形で厚労省のほう でまとめていただいた資料1の5のところと、それなりにオーバーラップできると思い ます。 ○内野委員  薬剤管理というのは、薬剤師がどう関与するのかというのが抜けているのではないか と思います。 ○前川委員  たぶん、あちこち抜けている部分はいっぱいあると思います。 ○内野委員  現実的に、いろいろ関与している所と関与していない所があります。例えば注射の混 合をやっている所もあるし、やっていない所もありますから、1番上の配置数というの をどうお考えなのか。実際に本当に配置数を出してしまうと、臨床工学技士を施設によ って常時配置するか、しないかというのがあると思います。それは薬剤師もそうだと思 います。 ○前川委員   その辺は、飯田先生の層別化というところにもつながってくると思いますが、「こう あるべきである」という書き方と「望ましい」という書き方で、ガイドライン自身はた ぶん作らないといけない。こちらで挙げましたのは、一応、項目的なことだという把握 で見ていただければと思います。 ○平澤部会長  別添というのは、ガイドラインの各項目を考えるときに、こういうものも考慮した上 で考えてくださいという、項目立てということでいいのですね。 ○前川委員  そうです。それで例えば「人」というのでも、管理者、専従医師、ナース、臨床工学 技士、薬剤師などいろいろな方がおられます。そういう意味合いで、考える上での頭の 整理というつもりで見ていただいたほうがいいと思います。 ○平澤部会長  これもなかなか難しい。例えば医療機器材と書いてあって、患者監視装置というのが 書いてあって、非観血的血圧測定というのは字が間違っているかもしれませんが、モニ タリングとかSpO2というのと患者監視装置というのは、どういう関係にあるのか。 SpO2とLVADが一緒に書いてあるのは、少し乱暴だなという気がしないでもありませ ん。 ○前川委員  先生がおっしゃるように、これは完全なものではありませんので、とりあえず挙げて いったというのが現状です。 ○平澤部会長  わかりました。これも参考にしていただきたいと思います。部会長の不手際もあって 揺れていますが、資料4に関していかがですか。タイトルのところは先ほど飯田委員か らお話がありましたので、それはコンセンサスを得ていると思われる記述に変えたほう がいいと思いますが、そのほかのところでは大体こんな感じで行うということで、よろ しいでしょうか。  次に資料4の1頁目のこういうことを踏まえて、安全管理指針は、全体としてはこう いう形になるのではないかというのを別紙に書いていただいていますが、これについて 議論したいと思います。1、2、3とあり、3はまた詳しく分けて(1)から(8)ま であります。一遍にやるのは大変ですので、3つに分けて先生方のご意見を伺いたいと 思います。資料4の別紙の安全管理指針そのもののたたき台ということで、1、2、3 の(1)スタッフ、(2)運営について、ここまでのところで先生方のご意見を伺いた いと思います。  1の「指針の目的」というのは、先ほどの前文を踏まえて書けばそれでいいかと思い ます。2の「指針の対象となる患者、医療機関の範囲」も、先ほどから繰り返して言っ ているようなことを書けばよろしいかと思います。3の「安全管理指針」で、患者の安 全を確保する観点から、ICUにおいて集中治療を提供するにあたっては、以下の体制 を確保することが望ましいということが書いてあり、(1)スタッフ、(2)運営につ いてとなるわけです。先ほどのご意見によれば、「患者の安全を管理する観点から、I CUにおいて」というところを何とかしなければいけないわけです。場所を規定しない ということでした。これは、そうすると重症患者に対する集中治療を提供するにあたっ て、ということになりますか。どうなのでしょう、そういうことでよろしいですか。 ○落合委員  何回も繰り返して申し訳ないのですが、総論としては、集中治療中の安全を確保する というのは今回の指針だと思いますけれども、これは管理体制の話とかいろいろな部分 が入ってきますので、いつまでも総論だけでは話が進みません。集中治療を集中治療室 でやっている施設と、集中治療を集中治療室でやっていない施設というご意見がありま したから、その分布はわかりませんけれども、基本としては集中治療を集中治療室で提 供している施設の話と、そうでない話というのを分けない限り、これは永遠に具体的な 話には進みません。例えば手術中の安全を確保するためには手術室なしには話せません ので、同じような観点から、集中治療を集中治療室で提供している施設が1、そうでな いのは2というふうに分けて、話を進めるべきではないかと思います。 ○平澤部会長  そういう意見も前から出ていますし、それが実際的かなというふうに思いますが。両 方共通するところもあるでしょうし、それから先に話が進めば、ICUというソリッド な形が出来上がっている所で集中治療をやる場合と、そうでない場合では、また違う視 点から安全管理の指針を出さなければいけないというところもあると思います。皆さん も大体そんなふうにお考えでないかと思いますが、そういう考えでよろしいですか。 「ICUにおいて集中治療を提供するにあたっては」というところも、表現として2つ に分けて考えなければいけないということですね。いかがですか。 ○前川委員  層別化するとして、2段目というか、ICUの施設を持っていなくてICUをやって いる所というのは、とりあえずICUそのものがある所のものを作って、その一部分を 読み替えていくというやり方のほうが、たぶん具体的だと思います。いずれにしても層 別化した形のものは作るとして、ここで出来るかどうかは分かりませんけれども、きち んとしたものをとりあえず作って、それで読替えをするなり。多分そういうものを提供 して、それぞれの施設でそれを参考にして作るというような形です。これは最初から飯 田委員がずっとおっしゃっていますので、やはりそういう現場があるわけですから、そ ういう考え方ではいかがでしょうか。 ○平澤部会長  それも今まで何回か出たお話ですので、ある程度まとめなければならない期日が決ま っている中で、現実的にこの安全管理指針を策定するためには、やはりICUというこ とをイメージした上で、そこの安全を確保するという観点から作って、ICU以外の所 で重症患者を診ている場合はどうするかというように、次の段階で必要な部分をモディ ファイする、という作業過程でいくよりしようがないのではないかと思うのです。皆さ ん、そういうことでよろしいですか。とりあえず今後の作業のやり方は、そういうこと にしたいと思いますが。 ○飯田委員  作業の手順ややり方はどうでもいいのです。アウトプットとしては、層別化したもの を作っていただきたいということを再三言っているので、時間がなければという話をさ れては困るわけです。時間はもう決まっているわけですから、その中でやっていただき たいと思います。ICUの施設基準のある病院でも、ICUでない所で重症患者の管理 をやっているわけですから、それも大事なのです。中小病院だけではないということも、 再三言っているわけです。中小病院のために作ってくれと言っているわけではありませ んから、是非よろしくお願いします。 ○平澤部会長  ただ先生が統計を出してくださった数と、特定集中治療室管理加算を取っている数と では、特定集中治療室管理加算を取っている数のほうがうんと多いので、とりあえずそ ちらをちゃんとしたほうが、それによって裨益する病院も多いわけです。きちんとした ものを作って、それを基にICUがない病院のことをこの作業部会ではやるということ でよろしいのではないですか。 ○飯田委員  数は加算を取っていない病院のほうが、実際には多いのです。 ○前川委員  1番の目的の中で、施設基準的なものではなく、患者さんが対象だということは明言 されますので、そこのところは多分クリアできると思うのです。それで先生がおっしゃ っているように、2段階方式なら2段階方式で作り上げるという形であれば、大体の方 向性はできるのではないでしょうか。 ○飯田委員  手順はどちらでも結構ですから、そこまでやっていただきたいということを確認して いるわけです。先ほど来、時間がないというようなお話が出てくるので、それでは困る と言っているわけです。 ○平澤部会長  それはやりたいと思います。これから先は、とりあえず第1段階として、ある程度機 材も揃っているICUというスペースにおいて、重症患者を診る場合の安全管理指針を 策定するというスタンスで、議論を進めていただきたいと思います。ここもそういうこ とで読み替えることにして、とりあえず「ICUにおける集中治療を提供するにあたっ ては、以下の体制を確保することが望ましい」という形にしておきます。  (1)の「スタッフ」については、ICUにおける医師の数や能力についてどのよう に考えるか、ICUにおける看護師の数や能力についてどのように考えるか、ICUに おける臨床工学技士の関与をどのように考えるか、ICUにおける薬剤師の関与をどの ように考えるかということについて、具体的な内容を盛り込むということですね。  そして今ご議論いただいているのは、(2)の「運営について」までです。ICUの 管理責任者や安全管理者を配置することについてどのように考えるか、ということを盛 り込むというところまでで、何かご意見はありますか。スタッフについては医師、看護 師、臨床工学技士、薬剤師ということでいいですか。あと何かありますか。 ○前川委員  クラークなどを入れるかどうかですが、そこまで規定すると、なかなか難しいと思い ますので、絶対的に必要なスタッフという形でよろしいのではないでしょうか。 ○平澤部会長  ほかにご意見がなければ、次の議論に移りたいと思います。(3)の「環境・設備」、 (4)の「医療機器」、(5)の「医薬品の使用」については、こういう考えで盛り込ん でいこうではないかということで、安全管理指針のたたき台がここに示されているわけ です。  (3)の「環境・設備」については、安全確保の面から面積、空調、給排水、医療ガ ス、電源などをどのように考えるか。(4)の「医療機器」については、重点的に保守 管理を行う医療機器の範囲をどのように考えるか。医療機器に対する適正な保守・点検 管理をどのように確保するか、医療機器マニュアルの整備、アラームの設定等。使用に あたって特に留意すべき医療機器の範囲についてどのように考えるか。医療機器の適正 使用をどのように確保するか。(5)の「医薬品の使用」については、医薬品の適正使 用をどのように確保するか。注射薬の調整、適正投与量、ルート管理等とあります。  まず(3)の「環境・設備」に取り上げるべきものとして、「面積、空調、給排水、 医療ガス、電源など」と書いてありますが、ほかに取り上げなければいけないことはな いですか。 ○石井委員  話の流れは大体お聞きしていたのですが、この文章をずっと見ていきますと、いま問 題になっている情報の電子化、その共有化とか、そういう今後のあるべき姿というもの が、どこにも入っていないような気がするのです。 ○平澤部会長  ここは資料4の3頁の(7)の「情報共有」、「ICU内の医療従事者間の適正な情 報伝達、実施確認をどのように確保するか」のところで議論ができるのではないでしょ うか。 ○石井委員  そうも思うのですが、聞きづらいのです。環境・設備ということでいろいろな機材の ことを言っているのに、そこに何もなくて、情報共有だけにガイドを作ってもしようが ないだろうという感じがするのです。かといって今すぐ全部電子カルテのフォーマット ができているわけでもないでしょうし、それが汎用性のあるものに育っているとも思え ないので、どの辺でどのぐらいにするかという、現状と希望の両方をわかるように書く 必要があるのではないかと思います。 ○平澤部会長  武澤先生、どうでしょうか。 ○武澤委員  おっしゃるとおりだと思います。情報伝達やオーダーもそうですし、もし何かの治療 をしようと思ったときに、すぐにガイドラインが出てくるように電子情報を上手に使う とか、患者情報処理システムと既存のデータベースから、データを取ってくるような情 報処理機能がICUの中にあったほうが良いと思うのです。ただ先ほど先生がおっしゃ ったように、予算措置も必要ですから、すぐにできるかどうかは別としても、将来的に はやはりそういうものが望ましいのでしょう。何らかの形でそこを踏まえるということ は、大事だと思います。 ○平澤部会長  (7)に含めるのではなく、例えば(9)として、そういうことを項目立てで挙げる ということですか。 ○前川委員  (7)の情報のハードの部分が「環境・設備」に入ってくるという考え方ですよね。 ○石井委員  そういうことです。 ○前川委員  ですから、ここでも「IT」ということを一言入れておけばいいということですね。 ○平澤部会長  そうすると、(3)の「環境・設備」の「安全確保の観点から」に、「IT」という 文字も入れてもらいたいということでよろしいですか。 ○石井委員   そういうことです。 ○平澤部会長  では、そうしたいと思いますが、よろしいですか。 ○石井委員  そのようにすると本当は「スタッフ」のところに、そういうスペシャリストというこ とが出てくるのですが、そこまで全部言うと、いま現在の話と近未来の話がごっちゃに なりますから、いまみたいなやり方でいいと思います。 ○平澤部会長  ミニマム・リクワイアメントなのか、理想までかなり含んだものなのかということに なると思いますが。 ○石井委員  なぜこんなことを言うかというと、結局医療全体のコストを考える際に、ここに何も 書いてなければ、医療費をもう1回削減してもできるではないかというような話になっ たのでは困るということです。ちょっと穿った言い方をして申し訳ないのですが、入れ たほうがいいだろうということで申し上げました。 ○前川委員  このマニュアル自身が永遠のものではなく、5年ごとぐらいにリニューアルしていく というか、見直しをかけていくということが、最初からの考え方の中に入っています。 その中でエビデンスは、今いろいろな意味合いでほとんどないのです。「べきである」 的なところに関しては、5年ごとに見直していく中でエビデンスをつくっていくという ことを考えていったほうがいいと思うのです。「望ましい」ようなところは、それから 切分けをしていってエビデンスが出てくれば、「べきである」という方向に移していく という形ですから、ずっと永遠に続くものではありません。 ○石井委員  では、先ほどの形でいいと思います。 ○平澤部会長  よろしいですか。(3)の「環境・設備」に、ITなどの環境・設備についてどのよ うに考えるかということで、「IT」を入れていただくということですね。それから 「医療機器」は、かなり具体的に書いてありますが、これはこういう項目でよろしいで しょうか。加納先生、どうでしょうか。 ○加納委員  班研究の指針案でもこういう形で、作りましたので、こういうことでよろしいと思い ます。網羅していると思います。 ○平澤部会長  例えば今、高度先進医療をやっている病院では、ME室をつくらなければいけないよ うな感じになっていて、みんなつくっていますが、そことICUにおける医療機器の保 守管理というのは、どういう関係になるのですか。先生がお考えになっているイメージ としては、そういうものとは独立した感じで、ICUの中の医療機器は保守管理を行う べきであるというお考えですか。それともICUにおける医療機器の保守管理も、病院 全体のME室の指揮下に入るべきであるというお考えですか。どちらでしょうか。 ○加納委員  両方です。まず厚生労働省のほうから提案されている医療機器管理室といったセント ラルなものは、必要だと思います。それはもうICUに限らず、病院全体の機器管理を するものです。一方、今回ヨーロッパの病院を視察してきたわけですが、セントラルな 大きな所と、ICUの中に小さいマシンショップというか、そういうサテライトの場所 がありました。そこはICUの医療機器のプライマリーなトラブルの処理をしたりする 所で、本格的な修理はセントラルに持って行くという形になっています。ですからIC Uの中にもサテライトみたいなものがあって然るべきかと思います。日本でも施設によ りますが、大体ICUのすぐそばに人工呼吸器の器材室があったりします。ICUで使 うことが多いですから、そこですぐに対応して、そこにスタッフがいるというような形 をとっている施設は、結構あると思います ○平澤部会長  例えば、臨床工学技士会などで統計があったら教えていただきたいのですが、日本の ICUでは、臨床工学技士は配置されているものなのですか。 ○加納委員  いいえ、現状では専任で置いている所のほうが、たぶん少ないと思います。大体が兼 任です。その場合、術後に患者さんがICUに来て、最初のセットアップのときまでは いて、定期的に回ってくることはありますが、常駐はしていない。そういうオンコール の体制が多いと思います。ただ、それが非常に問題なのは、ほかのことを兼任していま すと、病院全体のアクティビティが上がってしまうと、例えば手術室とか、あちこちに 張りつきになってしまうので、ICUで何かあってもすぐに対応できないということも 起こるのです。ですから専任化というのは、やはり必要ではないかと思います。 ○石井委員  いま加納先生は、「ヨーロッパ」という言い方をされましたが、具体的にどこの話か 教えていただけますか。 ○加納委員  先ほど前川先生からもお話がありましたが、今回はオランダのロッテルダムのエラス ムス大学の附属病院と、スウェーデンのストックホルムのカロリンスカ大学病院と、ド イツのシャリテ病院です。いずれもかなり大きな病院であることは確かです。それも日 本にはないぐらいのかなり大きな規模の病院で、いま言った所は全部同じような形でし た。多少システムは違いますが、基本的にはそういう形でやっているようです。 ○石井委員  なぜお聞きするかというと、来月オランダの厚生大臣が、日本の優れた医療保険シス テムについて勉強に来たいということで、日本医師会にいらっしゃるという話なのです。 お互いが勉強し合うということで、どの国のどういう話かということを聞いていれば、 話題にできると思ったのです。 ○武澤委員  例えばオランダだったら、ICUのベッドは何パーセントですか。いまの日本だった ら、病院全体の1%ではないですか。1,000床だったら10床のICUです。500床だっ たら5床です。オランダはおそらくもっと多く、5〜10%ぐらいですよね。そのぐらい のICUがあれば、人工呼吸器を管理するにしても、あるいは薬を管理するにしても、 そこに人を配置しても十分仕事はあるし、採算性もありますし、安全性も確保されます。 ところが日本のように5床しかない、6床しかないという所に、臨床工学技士をサテラ イトに配置してしまって、ICUで人工呼吸器と透析の機械の管理だけをやればいいと いうのは、あまり効率がよくないですよね。  別に効率が悪いということだけを言っているのではありません。そもそもICUのベ ッド数がなぜこんなに国際的に違うのかという議論が、本当は片方にあるはずなのです。 なぜ日本は1%なのか。オーストラリアだってもっと多いわけです。先進国では日本が いちばん少なくて1%です。同じぐらい少なかったイギリスだって現在は3〜4%です。 イギリスでは医療費を増やして、ICUの数を増やしていったわけです。なぜ日本だけ が少なくて、こんなに平均寿命が長いのか。もしかしたら、日本の医療体制が良いのか もしれないけれども、やはり変ですよね。アメリカだったら1,000床の病院に150床ぐ らいのICUがあるのに、日本は10床しかない。ヨーロッパだって、おそらく30〜50 床ぐらいのICUはあるわけです。サテライトに人を配置して別個の管理をしなければ 駄目だというのは、欧米では当たり前のことなのです。その構造が基本的に日本とほか の先進国とは違うのです。その辺が一体何なのか。この体制で良いということであれば、 別にいいのですが。 ○加納委員  ヨーロッパのICUでは、日本の臨床工学技士に近い、バイオメディカルエンジニア みたいなスタップがいるのですが、やっている範囲が違うのです。ヨーロッパやアメリ カの場合、メンテナンスが中心なのです。例えば人工呼吸器を見たり、法的な範囲は少 し限られていますが、透析の機械を見たりといった、いわゆるオペレーションの部分も、 日本の臨床工学技士はやっているわけです。  確かにおっしゃるように、ICUの病床数でも割合は全然違いますが、たとえ5床で あっても、そこでメンテナンスも含めて透析もやる、人工呼吸器もやるという状況があ るわけです。つまり、メンテナンスだけの専任ではなく、それも含めた形の臨床業務も やる。むしろ、そちらのほうが本当は大事ですよね。メンテナンスは緊急なトラブル処 理以外、定期的なチェックなどは余裕がありますから、臨床の仕事の比較的少ないとき に、そういった定期的なプリベンティブメンテナンスみたいなことをやる。そうすれば、 決して遊ぶことはないと思います。 ○武澤委員  いやいや、そんなことを言っているのではないのです。業務範囲を広げれば、仕事は いくらでもあるわけです。ICU専用の臨床工学技士として特別に育成すれば、いろい ろなことができます。しかも医療機器に関することは全部やりますと。 ○平澤部会長  育成しなくても、いまの臨床工学技士でできるはずなのです。それと日本におけるI CU内の適正な病床数をめぐってというのは、この作業部会の外の話です。この作業部 会では現実を踏まえて、たかだか全病床数の1%しかない日本のICUにおいて、安全 管理を確保するにはどういうことをやるかというスタンスでやってください。またそこ まで戻ってしまうと。 ○武澤委員  広げようと言ったのではなくて、そういう状況がありますねと言っただけです。 ○平澤部会長  どちらがいいかは分かりませんからね。 ○前川委員  先ほどの医療機器については、ICUという意味である程度決めておいたほうがいい と思います。ICUという意味では、生命維持装置とモニター(患者監視装置)という 2点ぐらいに絞っておかないと、5年先にまた何だかんだと言い始めると。基本的なと ころを決めておいて、その枠内で物事を考えることにしておいたほうがいいと思うので す。 ○平澤部会長  もう1つ皆さんに確認しておきたいのですが、(4)の「医療機器」の医療機器マニ ュアルの整備というのは、「整備をすべきである」という文言を入れれば、それでいい のですか。それとも医療機器マニュアルというものもこの作業部会で作ろう、あるいは ほかから、もうすでに出来ているものをこちらに持ってきて示そうということですか。 ○前川委員  報告書の中のかなりの部分に、もうすでに出来たものが入っています。 ○平澤部会長  そうすると、それを皆さんで。 ○前川委員  参考にしていただくなり、そういうものを取り出してきていただいて、各病院の中に 置いていただくということです。要するに、現場で使えないと意味がないと思いますの で、こういうものは厚生労働省のホームページに載せていただいてもいいと思うのです。 安全管理のホームページに載せていただいて、全国どこの病院からでも取れるようにす る。やはりそういう情報提供はしたほうがいいと思います。そのたびにそれぞれが考え て、それぞれがまた作ってということでは、キーに打ち込むだけでも大変な努力をして、 エネルギーを使って、皆さん忙しい思いをするわけですから、あるものは提供するとい う形がいちばんいいのではないでしょうか。 ○平澤部会長  「医療機器」のところは、それでよろしいでしょうか。あと、この安全管理指針の中 の(5)、「医薬品の使用」の医薬品の適正使用をどのように確保するかということで は、そこに3項目書いてあります。内野先生、何かご意見はありますか。 ○内野委員  基本的にこの「適正使用」が何を考えているのかが分からないのです。現実的には情 報の伝達が実はいちばん難しい問題なのです。医師から薬剤師が関与するにしても、通 常は処方箋が起きてくるのがごく当たり前の話で、ICUに限った話ではないのです。 私が考えているのは、いわば病院の中の1つの病床にすぎないという考え方で、ほとん どどこの病院でも、そうやって動いているのだろうと思うのです。先ほど武澤先生がお っしゃったように、1%しかないのに常駐するなどというのは、まず考えにくいわけで す。通常、薬剤師が常駐するのは、大体1病床看護単位ぐらいなければ、常駐すること はあまりないと思うのです。それでも今はほとんどないと思います。  現実的に本当の適正使用ならば、医師が処方箋を書いて、そのときに注射薬の処方箋 を書いてきっちりやれば、薬剤師も情報伝達はそのまま非常にうまくいくわけです。た だICUの特殊なところは、緊急性のあることだろうと思います。そうすると、例えば ICU病棟の薬の管理は、どなたがやるのかということになります。最近では一般的に 多くの薬剤師が、週に1回ぐらいは自分の病院の点数配置的なものに対してモニターし ていると思います。  ですから管理的な問題と、私がいちばん言いたいのは、情報伝達をどうするかです。 先ほどの飯田先生のお話にもありましたが、看護師に口頭指示ということは未だにあり ます。医薬品の調整をするならば、今かなりの施設で注射薬の混合が始まっていますが、 注射の混合は時間さえ合えば、きっちりと定期的なものができると思います。緊急性の ものは、いわゆるICU病棟の中にあるものを使わなければならないということで、た ぶん動いているのは、この二本立てだと思うのです。  もう1つの問題は、医療機器と同じように使用にあたって留意すべき医薬品を、どう いうように教育するかということです。ICUの病棟というのは、医薬品の数は基本的 にものすごく少ないのです。むしろトラブると致命的になるという話のほうが大きいだ ろうと思います。ですから患者さんの重症度によって1日2回ぐらい点滴を替えるとか、 そういう通常の薬剤の調整は、当然薬剤師が関与すればいいと私は思いますが、緊急性 のあるものに関しては、やはり病棟の中で口頭指示みたいな形でやるしか、ガイドライ ンを出すまでの今の状況ではないと思います。  そして、いちばん重要なことは、薬の使い方です。インフィージョン・ルートなどに 対する全体のケアだと思います。それは果たして教育になるのか。日本病院薬剤師会で もかなりの部分で、間違いやすい医薬品のCD−ROMなどを出していますし、取違い などが起きやすいものはどうするのだろうかというのも出しています。それはもう繰返 しだと思います。ですから1つには教育にあるということで、私はもう一度留意すべき 医薬品をある程度指定すべきだと思います。物をリストとしてお出しして、これはこう いう物と間違いやすいと。もうかなりの部分で、インシデントレポートやヒヤリ・ハッ トなどがあるので、そういうものから抽出してくれば。やはり投与速度はこのぐらいで やるのだというようなものも必要なのだと思います。 ○平澤部会長  薬剤師が常駐するのは病棟単位だとおっしゃいますが、1人の患者さんに使っている 薬の種類というと、例えば病棟では朝晩抗生剤を2回静注するだけなのに、ICUで治 療を受けている患者さんは、場合によっては30種類ぐらいの注射を受けているような ところもあるわけです。ですから一概に患者の数だけで薬剤師が常駐する必要性という のは論じられないのではないですか。 ○内野委員  私が申し上げたいのは、ICUの薬というのは、患者さんの重症度によって、ものす ごく変わるわけです。その患者さんがほかの病棟へ移ったら、もうその薬は全く出なく なるわけですから、当然薬剤師が関与して全部やっていると思うのです。しかしある程 度軽症の患者さんが移ってくるときには、30種類使っている患者さんでも最後は2とか 1ということになるのではないでしょうか。 ○平澤部会長  そうすると、その人はもう一般病棟に移ってしまうわけです。 ○内野委員  ですから30種類使っているのが、常に常在的にあるというようには、なかなか思い にくいのですが。 ○平澤部会長  それはICUがどのぐらいの重症度を診ているかによるのでしょう。私の周りでイメ ージすると、そんな感じですよ。 ○内野委員  先生とお話をしていると、先生の重症度は一般的にはかなり開きがあるのではないで しょうか。 ○平澤部会長  具体的に今、ICUに薬剤師が常駐している割合のデータはあるのですか。 ○内野委員  今のところ、とったことはありません。ICUという特殊な作業についてはしたこと がないのです。大学病院で本当にいるかどうか。一般病院で常駐している所は、ほとん どいないと思います。まずは大学病院だけのデータをとるなら、いわゆる特定機能病院 ですよね。特定機能病院をとるならば、ICUに薬剤師がいて、ICUの薬品の品目数 だとか、そんなに大変なことではないのです。この間からの論議をずっと伺っていると、 私の所は一般病院ですが、いわゆる一般病院では、患者さんの薬品数はそんなに多くな いのです。少なくとも大学病院と一般病院とは、かなり開きがあります。確かに私も理 想的には、絶対的に置いたほうがいいと思います。ただし、それでは24時間いるのか といった問題が、かなり出てくると思うのです。現実的にいま日本で薬剤師が病棟に常 駐している例だって少ないですから。そういう点でかなりの開きがあるのです。ものす ごく差があると言ったほうがいいと思います。 ○平澤部会長  先生のご意見は、むしろ(5)の「医薬品の使用」に、誤投与しやすいような薬のリ ストみたいなものも入れたほうがいいのではないかというご意見ですね。 ○内野委員  そのほうがいいと思います。もう1つは、薬剤師を関与させるためには、処方箋が起 きない限り、処方箋というのは薬剤師しかいじれませんので、やはり処方箋をちゃんと 起こして、注射薬を調整しろというような形で。指示箋ではなく、実際は処方箋で動か さないと、やはり法的な規制がないですから。もう1つは、緊急性があれば、それは病 棟の中で指示という形になると思います。 ○前川委員  ICUの中での薬剤は、今おっしゃったように予定が立つものと予定が立たないもの とがあって、その二本立てでいくのか、それとも一本立てでいくのかということです。 やはりいちばんコントロールが難しいのは、事後処理をしないといけないような、緊急 性の薬剤です。どうしてもその管理ができないということで、実は私の所でいろいろ検 討をして、全部事後処理ができるシステムを作りました。それをコンピューターに入れ ておけば、事前のものは全部管理できますので、あとは指示箋というか、ノートに全部 書いておけば、ナースがそれを受けて棚から全部持ってきて、ただ使ってボックスに入 れるだけなのです。次の日に医事課の方が来て、コンピューターに入力します。そうす ると、維持管理から薬剤管理から、もう全部終わるのです。  そういう形ができてからは、事故も非常に少なくなりましたし、誤投与もほとんど起 こらなくなりました。そういうプログラムなりを皆さんが使えるような形にすると、事 後処理の部分だけで二重に構造を作る必要がなくなりましたので、非常にシンプルにい くようになりました。現実的にはそのプログラムを皆さんが使えるようにすればいいこ とではあると思います。すぐには無理ですが、救命センターや手術場やICUといった 所では、たぶん使えると思います。 ○内野委員  一般的には伝票で動かすという形になるので、結局指示は誰が出して誰が受けたかと いうのは、いつもかなり問題になるのです。 ○前川委員  口頭指示はもう一切駄目で、必ず書込みをしてナースが受けるという形です。緊急性 があって、心臓が止まっていてという場合はもちろん違いますが、それ以外は基本的に 取らないということです。それをやらない限り、どうしても誤投与になるのです。 ○落合委員  今回はエビデンス、あるいはエビデンスを基にして安全指針を作るということだった のですが、いまの議論は、ICUでの事故は薬関連が非常に多くて、もし薬剤師が関与 することによってそれが減らせるのだ、という印象を一般常識として持っているのであ れば、それは指針に組み込むべきです。これは経済性の話をしているわけではなく、安 全性の話をしているわけで、そういう観点で議論をされたほうがよろしいかと思います。 ○前川委員  安全性はかなり担保できます。 ○落合委員  薬剤師が常駐することによって、安全性が担保できるという。 ○前川委員  いまのは薬剤師が必ずしもおられなくてもということです。薬剤師は24時間交代で、 3人なら3人でやっているわけではないですよね。ほとんど1人おられるか、おられな いかというのが今の現状ですから、24時間カバーしているICUというのは、たぶん日 本では2、3しかないのではないでしょうか。 ○落合委員  もし24時間いることによって。 ○平澤部会長  時間の関係もありますので、部会長として会を進めたいと思います。医薬品のICU における誤投与ということで、中島先生、何かデータをお持ちですか。 ○中島委員  データと言うほど、ICUに特化したものではありませんが、我が国でも諸外国でも、 インシデントレポートの第1位、半分は薬、メディケーション・エラーですから、まし てやハイリスクの薬ばかりを使っているICUで、これが例外的ということはないと思 います。やはりプライオリティとしての課題です。またハーバードスタディで実際に起 こった有害事象でも、手術の次は薬ですので、本院でもかなり重大な有害事象をいろい ろ検証している委員会がありますが、これはもう合併症とハイリスクの薬がトップです。  私も一般病棟やICU全体を見る立場からしますと、やはりICUというのは、非常 に特別なやり方をせざるを得ない場所なのです。例えば薬は保管管理ひとつ取っても、 一般病棟では定数配置を禁じている薬を、そこに置いてあるということがあります。ま た、先ほど口頭指示が危ないと言われましたが、指示出し・指示受けも、実際に口頭指 示でいっぱい事故が起こっています。それを禁じたとしても、患者さんの病態が刻々と 変わるものですから、いろいろな独自のシステム、例えば鉛筆書きで次々消しては、い つ誰が受けて最終が何だかわからないようなやり方の中で、今度は指示を受けた看護師 さんが実際に事故を起こしている病院もあります。  それから優秀なドクターとナースが働いていますから、薬を稀釈するときの指示も、 医師が何の薬を何ミリ/アワーと書けば、稀釈する溶液から、量から、シビンジから、 看護師が阿吽の呼吸でやっているのです。ただ、その阿吽の呼吸というのは、本当はよ くないと思うのです。どこにも明文化はされていないという独自のやり方を、結構いろ いろな所でやっていると思うのです。  投与方法も普通は静脈ルートが1つなのに、動脈もあれば硬膜外もあれば、いろいろ なルートが入っているということで、非常に特殊で危険な状況です。これに一般病棟と 同じルールを適用することは不可能です。これで安全を確保しようと思うのならば、本 当に安全のことを考えるのであれば、やはり何らかのブレークスルー的な対応も、この ガイドラインに書く必要があると思います。その1つが先ほど前川先生がおっしゃった ような、事後処理がちゃんとできるということです。もう1つは、薬剤師を置ければ置 いたほうがありがたいということです。そういう切り口からも、ここのところはかなり 力を入れて書く必要があると思います。これは医薬品適正使用と言うよりは、医薬品を 安全に投与するために何が問題で、どうするかということではないかと思います。 ○平澤部会長  ここはかなり大切であるという認識は、皆さんもお持ちだと思います。では、ここは 力を入れて検討しなければいけないということだと思います。 ○石井委員  ここの話の全体を見ていると、IT化を含めた話が半分あって、その中身はオーダリ ングシステムの話ですよね。事前か事後かを含めて、そこで検証できるような状態にし ておいたほうがいいのではないかというのが、前川先生のお話だったような気がします。 ○前川委員  そうです。ちょっと厚生労働省にお聞きしたいのですが、薬のアンプルにバーコード が付くというのは、いつからでしょうか。 ○事務局  医薬・食品局のほうからお答えします。いま現在、箱には書いてありますが、箱の中 に入っているすべての医療用薬品のアンプルなどに、バーコードを付けることを検討し ています。具体的にどういうやり方でやるかというのは、現在パブリックコメントをと っているところです。このパブリックコメントが終わるのが、来月の半ばぐらいですの で、その後内部検討や関係者との意見調整をした上で、通知を出したいと思っています。 ですから今年の後半ぐらいには、通知が出ると思います。一応我々として考えておりま すのは、注射剤については通知から大体2年ぐらいで行き渡るようにしたいというのが、 いまのところのスケジュールです。 ○前川委員  それが付けば、管理はそれなりに。 ○平澤部会長  バーコードで使っているようなバーコードリーダーをはじめとするシステムが、IC Uに入るのは、また別問題ですよね。 ○前川委員  もちろん、それはそうです。 ○石井委員  コストの面も結構あります。 ○内野委員  先ほどから伺っていると、要は投与量などをチェックするのは、基本的に薬剤師がや ればいちばん適正なわけです。結局私が先ほどから言っているのは、処方箋が起きない と情報がこないわけですから、見られないわけです。ですから、そういうところで第三 者的に薬剤師が処方監査をきちんとするべきだし、必要不可欠だと申し上げているだけ なのです。常駐すればストレートに見られますから、当然混合もしますし、何もすると いうことで、当たり前の仕事だというように考えています。ただ理想はそうかもしれな いけれども、いまの日本の現状では無理でしょう。 ○平澤部会長  そこは指針のところで、「ねばならない」であるか「した方がよい」であるかという 表現の変え方でいくより、しようがないということですね。時間の関係もありますので、 残りの(6)(7)(8)の「感染制御」「情報共有」「教育・研修」について、こう いうことを入れたほうがいいのではないかということで挙げてありますが、このことに ついてご議論いただきたいと思います。ICUにおける感染制御というのは、集中医療 医学会のガイドラインに出しましたよね。 ○武澤委員  国立大学附属病院ICU協議会です。 ○平澤部会長  国立大学ですね。先生がおやりになったのですか。 ○武澤委員  当時、東北大学ICUの松川先生です。 ○平澤部会長  それは使えそうですか。 ○武澤委員  エビデンスに基づいていますから使えますよ。 ○前川委員  かなりしっかりした文献も付いたものです。何年前ですか。 ○武澤委員  3年ぐらいに。 ○平澤部会長  使えますかというのは、向こうのクオリティもそうですが、こちらのイメージにフィ ットするかという意味も含めてです。 ○武澤委員  作り方はEvidence-based Clinical Practice Guidelineの手順を取っていますので良 いと思います。問題は、作ってもちゃんと読んで実施してくれているかどうかが、いち ばん問題です。 ○平澤部会長 それはこれから先の問題なので、とりあえずはこれを入れて、それを各病院で使ってい ただければいいわけです。 ○武澤委員  ただ一部、アップデイトしたほうがいいかもしれませんね。 ○平澤部会長  リバイズしたほうがいいですね。「情報共有」の中には、例えばICDがいなければい けないとか、そういうことも書いてあるのですか。 ○武澤委員  組織体制も書いています。権限も責任も書いています。 ○平澤部会長  「情報共有」については、先ほど石井委員からもお話がありましたが、これはどうで しょうか。いままでのことと比べると、この(6)(7)(8)はまた総論的なことに 戻っているようなところがありますね。 ○前川委員  情報共有部分は、1つのICUの中での話と院内、できれば日本全国という、その辺 を少し切り分けておかれたほうがいいような気がします。先ほども言いましたように、 安全管理に関して本当にいいプログラムがちゃんとできれば、生命維持装置などの医療 機器に関しては、共通で使っているわけですから、そういうものはやはり情報が取れる ようにやっておいていただければ、いちばんいいのではないでしょうか。 ○平澤部会長  ここには患者さんへの、患者さんの家族への情報提供というか、インフォームドコン セントは入らないのですね。 ○前川委員  インフォームドコンセントのとり方も、施設でそれぞれ全部違いますから、何か統一 したようなものがあれば、楽にはなると思います。 ○武澤委員  「情報の共有」と言った場合に、標準的な治療法が共有されていますというのも1つ ですよね。その施設独自でしか行わないような治療法をやったのでは、事故が起こる可 能性もあります。それがまず1つです。標準的な治療方法あるいは診断も含めて、そう いう医療情報がちゃんと共有化されているかということです。  それから、今、問題になっているのは、看護師さん同士の申し送りです。医師でもそ うですが、そこで情報が抜けるのです。それでやらなければいけないことをやっていな かったり、やらなくてもいいことをやってしまったりということがあります。  もう1つは、ICU、特にオープンICUが多いのですが、ICUでやっている医師 とほかの診療科の医師とのコミュニケーションが悪いのです。しかも、それで患者がど ちらの話を聞くかという問題も起こって、トラブルが起こった後さらに大きなトラブル になっていくということがあるわけです。その辺で情報の共有化を入れようというのは、 ここに書いてあるとおりでいいのですが、ICU内外の医療従事者間の適正で的確な情 報伝達をどうやって担保するかというのは、やはりすごく難しい課題です。 ○平澤部会長  大きな意味で共有というのは大切だと思いますが、ここはそういうコンセプトで議論 をするということでいいと思います。  (8)の「教育・研修」については、ICU内の医療従事者に対する教育・研修をど こが行うかということもあるのですが、日本集中治療医学会ではICU・CCU・ナー スセミナーということで、ナースの人たちのレベルアップのためにセミナーをやってい ます。医師に対しても、今年からセミナーをやるようなことになっているようです。織 田先生、その辺りのことを説明していただけますか。 ○織田委員  医師のほうは生涯教育の一環として、専門医がもう少し標準治療に関する知識を高め ようということで、今年の8月に初めて第1回を予定しています。 ○平澤部会長  道又先生、このICUのナースというのは、今後専従化、専門化を目指すのですか。 日本看護協会としては、どう考えていらっしゃいますか。 ○道又委員  日本看護協会は、専門性を高めた者は専従になってほしいと思います。あとは臨床病 院の管理の問題です。それを望む管理者と望まない管理者がいますから。 ○平澤部会長  管理者というのは、看護部の管理者という意味ですか。 ○道又委員  そうです。あるいは病院長も含めてということです。基本的にはそうです。本来、私 たちの協会でそういう制度を作っているという考え方では、専門家を輩出するというこ とは、いわゆる専従ということを前提にして考えているわけですが、現実的にはそこに ずれがあります。 ○平澤部会長  日本集中医療医学会の会員の約30%が看護師さんですよね。しかし、その人たちの 30%の中のコアの人たちは代わらないけれども、あとの人たちはぐるぐる代わっている というのが現実ですよね。 ○道又委員  そうです。最近、病院によっては私たちがやっているような認定看護師の認定資格を 得たら、ICUから出なくてもいいという部分もあるのです。しかし、あってもそれは それで関係ありませんというのもあります。そこは痛し痒しという現実があります。 ○前川委員  認定看護師を取られても、配置代えをかなりやっているようで、実際に取った方はI CUにいたいけれどいられないというのが、かなりのパーセントだと思います。そんな ことで困っているという話を聞いて、何とかいい形ができないかという相談を受けたこ ともあります。 ○平澤部会長  しかし、それはある意味で日本の文化みたいなところがあります。ちょっと話は違い ますが、救急救命師の資格を持っている人が、また火消しのほうに回るということだっ て起こっていますから。 ○北澤委員  私は医療従事者ではないのでよくわからないのですが、(7)(8)の「情報共有」 「教育・研修」が大事だというのは、今日の議論でもよくわかりました。では、どのよ うにすればいいのかということについて、この指針で書き込めるかどうかというのが、 いまの議論ではよくわからなかったので、その辺りについて教えてほしいと思います。  それから今日配られた表のほうで、最後に「評価」や「行程表」というのが出ていま すね。指針を作る以上、何年かに一度は見直してリバイズしていく必要があると思うの です。その際に何を指標としてこのガイドラインというか、安全指針がよかったかどう かというのを見るのかというのが書き込まれていないと「こうやったらいいですよね」 と言って、それで終わりということになると、非常にもったいないと思います。 ○平澤部会長  資料4の1頁の5番に、「資料に対する評価及び見直しについて」ということも考え て、安全管理指針を作りましょうという基本方針が書いてあります。ただ実際に「別紙 」と書いてある資料4の2頁以降に、それを具体的にどのように実行するかは書いてあ りません。どういう項目立てになるかはわかりませんが、最後のほうに、指針に対する 評価及び見直しに関する項目も立てていただいて、それも指針の中に書き込むというの が、これとの整合性もあってよろしいかと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○石井委員  前半の話のお答えがないと困るでしょうから。私たち日本医師会の中でいま検討中と いうか、勉強中のことですので、結論と取られると困るのですが、中間的な話で言えば、 IT化のメリットとどう進めるかということは、一応我々も会内で議論を進めていると ころです。当然やるべしという大命題も、政府のほうからいただいているわけですから。 1つは、データベース化はメリットがあるだろうと。ただしセキュリティとの裏表があ ります。もう1つは先ほども議論になったように、オーダリングシステムです。指示、 処方といったものが電子化されて、誰でも見られて共有化できるというのは、意味があ るだろうと。また、電子請求については日本医師会がオルカというものを作ってやって おり、これもそういう方向が見えてきています。  いちばん方向が見えないのが、電子カルテです。電子カルテについては最初に言った ように、メディカルクラークやいろいろなスタッフ、機材のコストを抜きにして進める べしといくらやっても、むしろ今度は現場の過重労働が増えていきます。それに時間を とられれば患者さんを診られないというのが、本当に正しい方向なのかどうかすら難し いというのが現状かと思います。中間的な話で言えば、韓国の電子化の進め方というの がよく引合いにされますので、先日、韓国の医師会長にお話申し上げて、見学会をやら せてもらえないかと申し入れましたら、快く受けていただきました。答えがどのぐらい 出るかはわかりませんが、見た結果を持ってこられれば持ってこようと思っています。 それで北澤委員のお答えにしてもらえればと思います。 ○飯田委員  いまの件もそうですが、いまお話を伺っていて「別紙」について危惧を覚えるのは、 ガイドラインと言いながら、どうも施設基準に引っ張り回されて、その話ばかり言って いるような気がして、非常に心配なのです。それが必要ないと言っているのではありま せん。それも必要かもしれませんが、そういう話ではなく、どういう機能を求めている のかということが、あまり書かれていないのです。医師が、看護師が、認定看護師が、 臨床工学技士が、薬剤師が何をするかということが、ここに書いていないわけではない けれど、見ているとどういう人が何人配置されているか、常勤か、専従か、専任か、あ るいはどういう機械があるかという話になっているのです。これは非常にいい資料だと は思うのですが、別添は構造の、しかもハードのことばかりが議論されていて、ハード の中の仕組み、ファームウエアの話があまり出ていないのです。ファームウエアやプロ セス、運用が大事なので、ここをもう少し落とし込まないといけないと思います。  アウトカムに関しては非常に難しいので、アウトカムをあまり言い始めると。私も非 常に興味を持って勉強をしていますが、アウトカムにはいろいろな考え方もありますか ら、できればちょっと触れるぐらいにする。泥沼になって、それこそ時間がなくなって しまいますから、ここは書ければ書くということにする。ハードや人を含めた構造に関 しては、異論はあまりないと思うのです。望ましいという書き方とマストには議論はあ るにしても、層別化ということはあるにしても、それは問題はないので、むしろ仕組み、 ファームウエアと運用を、もうちょっと落とし込んでいただきたいと思います。  では、その中で何が大事か。もちろん、これには石井先生の情報システムということ もあるのですが、ハードのことを入れるのではなくて、仕組みとして情報システムをど う扱うかということです。いまの北澤さんのご質問、あるいは先ほどの薬剤の件に答え ると、当院ではICUの施設を持っておりません。いわゆる術後部屋でやっていますが、 病棟を含めて情報システムの電子カルテを構築して、全職員参加型のカルテを作ってい ますから、医師も薬剤師も全部そのカルテが見られるのです。ですから薬剤に関しては、 うちは独自に構築したものを持っていて、誰がいつ処方したか、どこを変更したかとい うのもわかるようにしています。そうすると最初のデータがわかるのです。  ただ、バーコードを使って云々のところまではやっておりません。いちばん最初のデ ータは、本当は患者さんの所に注入するときも問題なのです。バーコードを使ったいろ いろなシステムがありますが、日本でも実際にはうまくいっていないのです。私もつい この間、韓国に行ってきました。アメリカでもそうです。仕組みはあるのですが、大事 なところでは実際にちゃんとはやっていません。それは運用が大変だからです。全部は できませんので、うちもICタグの実証実験を今年始めようと思っています。輸血と手 術室の薬剤に関してやろうかと思って、いま準備をしております。それができれば、も っと簡単になります。ただ、そこまでやるべきだということではなくて、やれたらいい なという話になると思います。  情報システムに関しては、もうこれからは必須だろうと思っています。ただ投資効果 があるかないかというと、正直言っていまはありません。うちもかなりお金をかけてや っていますが、実験と思ってやっています。 ○平澤部会長  安全管理のメリットはどうですか。 ○飯田委員  非常にいいです。いいけれども、書きたいけれども、それをやるべきだという書き方 ではできないということです。うちはやってよかったと思っていますし、情報が共有で きますから、どれがいちばん新しいデータかというのもわかります。ただ口頭指示はい けないといっても、それは無理です。一定の割合がありますし、では24時間全部薬剤 師がいるかというと、いるわけがないので、そういうときにはしようがないので、あと はその時にどうするかという仕組みがあればいいと思うのです。ですから情報システム をいかに使うかということと、先ほど来お話にある標準化と情報の共有というのは、情 報化しかないのです。 ○平澤部会長  わかりました。 ○前川委員  ITで考えておかないといけないことは、もしそれがダウンしたときに、どうしよう もないということです。もちろんバックアップを取りながら物事をやっていかないとい けないということと、やはり教育という意味合いで、それがないとできないという現場 のスタッフが育ってしまうということも、頭の中に入れて考えておかないとと思います。 例えばいまから大災害が起きたときに、電気系統が全部やられたら、現場は完全に動か ないということが起こり得ますので、非常に相反する部分ですが、そのことは多少考え ざるを得ないかと思います。東南海地震などが起こりますと、高知県、徳島県、和歌山 県、名古屋も全部含めて大阪までやられると言われています。そうなったときは、まず 完全なお手上げです。そうなると非常に難しいとは思いますが、多少マニュアルのとこ ろも残しておかないといけないのではないかと思います。 ○平澤部会長  いろいろなご意見をいただきましたが、資料4についての皆さんからのご意見を伺う のは終わりにしたいと思います。第3回が始まる前と終わりに近づいてきた時点とでは、 だいぶ先が見えてきて、少し具体的になってきたような気がします。この3回、いろい ろな議論をしていた中で、先ほど落合委員がおっしゃったように、とりあえずはICU という場所をイメージしておくと。その上で別紙にあることについて、いくつか追加し たほうがいいというご意見もありましたし、それを書く場合のスタンスについてのご意 見もありましたので、そういうことを踏まえた上で、ICUということをイメージしな がら作って、それから後、ICU以外の所で行われている、重症患者に対する集中治療 の安全性を担保するためにどういうことをしたらいいか、という流れで全体の作業を進 めていきたいと思います。それでよろしいですね。  それでは時間もきてしまいましたので、本日の議論はこれまでとしたいと思います。 次回以降のスケジュールを含めて、事務局から連絡をお願いいたします。 ○事務局  資料5をご覧ください。これまで検討していただいたスケジュールと、今後の予定に ついて整理をしております。本日は第3回目、5月31日ですが、次回の予定は7月20 日ということで、皆さんにもご了解をいただいております。会場が決まりましたら、ま たご連絡をしたいと思います。  第4回は、先ほど飯田先生からご報告のあった調査結果のご報告をいただいて、併せ て指針の素案みたいなものも、もう少し具体的にご提示できれば、それに基づいてご議 論いただきたいと考えております。その後は9月、そしてうまくいけば年内、もう一度 ご議論が必要であれば年度内ぐらいには、報告書がまとまるのではないかと考えており ます。第5回については9月下旬で、大体20日以降ぐらいで調整したいと思っており ます。  次回の提出資料の作成に当たっては、事前に何人かの委員にご相談させていただきた いと思いますので、よろしくお願いいたします。また、必要な資料がありましたら、事 務局のほうに申し付けていただけましたら、次回までにご用意したいと思います。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○平澤部会長  本日はこれで閉会したいと存じます。大変お忙しいところご出席いただきまして、あ りがとうございました。 (紹介先) 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室  医療安全対策専門官 小林 03−5253−1111(2579)