06/05/25 治験のあり方に関する検討会 第11回議事録 第11回治験のあり方に関する検討会 開催日: 平成18年5月25日(木) 場 所: 東海大学交友会館「阿蘇の間」 ○ 事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまより「治験のあり方に関する検討会」を開 催させていただきます。  議事に入ります前に構成員の先生方の異動と、本日の出欠について御報告させていた だきます。本日の会議より、これまで委員でおられました寺岡暉先生にかわりまして、 日本医師会治験促進センター長の岩砂和雄先生に委員に御就任いただいておりますので 御紹介申し上げます。なお、本日は景山委員が御欠席でございます。それから事務局で は、座席表には記載がございますが、総務課長、医政局経済課長が欠席をさせていただ いております。  本日は「治験における被験者保護」ということで、昭和大学医学部第二薬理学教室客 員教授の辻純一郎先生に参考委員としてお越しいただいております。前回、委員の先生 方の方から、治験制度の項目の中でさらに御議論いただきたいと思われる項目を事務局 にお伝えくださいますよう申し上げましたところ、幾つかございましたが、治験におけ る被験者保護についての御要望をいただきましたので、事務局からGCPの紹介をした 後に、今回は辻参考委員から被験者保護について理解を深めるためのプレゼンテーショ ンをしていただくこととしております。よろしくお願いします。  それでは池田先生、以降の議事進行をお願いします。 ○ 池田座長  おはようございます。委員の先生方にはお忙しいところお集まりいただきましてあり がとうございます。岩砂先生、よろしくお願い申し上げます。  それでは早速、事務局からまず配布資料の確認をお願いしたいと思います。 ○ 事務局  はい、それでは事務局から配布資料の確認をさせていただきます。  本日、机の上にお配りした資料でございますが、まず本検討会の議事次第、配布資料 一覧及び座席表となっております。その後ろの方でございますが、こちらの方が資料に なりますけれど、2枚目の配布資料の一覧をごらんください。  資料1が「治験のあり方に関する検討会」開催要綱。こちらは変更はございません。 2が「治験のあり方に関する検討会」委員名簿でございます。先ほど御紹介いたしまし た新しく委員に就任いただいた方のほかに、所属変更がおありになりました先生もいら っしゃいますので、その点も修正してございます。それから資料3でございますが、こ ちらは辻先生のプレゼンテーションの前に事務局の方から短時間でございますが、GC Pにつきまして簡単に説明をさせていただくものでございます。その後に資料4としま して「治験における被験者保護」ということで、プレゼンテーションをいただきます辻 純一郎参考委員の説明資料でございます。その後ろは参考資料が7つほどございます。 なお、「治験のあり方に関する検討会 中間まとめ(その2)」、これは1月でござい ますが、それを受けまして参考資料の4、5、6のとおり所要のGCPの省令改正等を 行いまして、4月1日付で施行されたところでございますので御報告をさせていただき ます。なお、先生方におまとめいただきました中間まとめの中に、「IRBの登録公開 制度の構築」といった宿題事項もございますが、これにつきましては現在事務局で検討 中でございますことを御報告させていただきます。配布資料の説明は以上でございます。 ○ 池田座長  よろしいでしょうか。委員の先生方、配布資料について何か不備な点がございました ら事務局までお申しつけいただきたいと思います。よろしいですか。  本日はただいま事務局から説明がありましたように、「治験における被験者保護」と いうことで最初に事務局から、被験者保護の規定であるGCP省令についての紹介を簡 単にしていただきたいと思います。その後、引き続きまして昭和大学の辻参考委員から 御説明をいただく予定にしております。その後、質疑の時間をとりたいと思いますので、 活発な御議論をお願いしたいと思います。  本日の議論は「治験における被験者保護」ということですので、医薬品等の承認申請 のために行う治験の範囲内で御議論いただくことになります。これまでもこの委員会で は折に触れて被験者の保護ということで委員の先生方から活発な御意見はいただいてお りますが、今回の御説明で被験者保護について理解を一層深めていただいて、この検討 会での共通の認識というものを持っていただき、今後のこの検討会の議論の基本的な骨 格になるような考え方を議論するために、重要な会になるのではないかと思っておりま す。  本日の議論の進め方についてはそれでよろしいでしょうか。よろしいですか。ありが とうございます。  それでは事務局からまず御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○ 事務局  はい、それではお手元の資料では資料3になりますが、スクリーンの方にもスライド で示させていただきます。辻先生の御説明の前に事務局の方から「医薬品の臨床試験の 実施の基準」ということで、GCPにつきまして簡単に御説明をさせていただきたいと 思います。  GCP、GCPと言っておりますが、これは「Good Clinical Practice」という英語 の略語でございます。  それで次のスライドでございますが、GCPと医薬品の承認申請ということでの、こ れは典型的なパターンでの流れということになりますが、通常新規物質の創製が行われ まして、その物質についてのいろいろな研究が行われます。これはものによりましては、 例えば長い間常温に置いておくと全然一定の品質が得られないというようなことです と、後々の動物での試験とか、ヒトでの試験をやりましたときに、何の物質の効果をみ ていたのかわからなくなるということが起こってまいりますので、最初の早い段階で物 理的な、化学的な性質等の研究というのが行われます。  それを受けました後に動物でのスクリーニングということで、いろいろなモデル動物 などを用いていろいろな病気に対する効果の見極めをしていく、発見をしていくという ことになります。その後に、非臨床試験ということで動物、ラットでございますとか、 場合によりましてはウサギとか大型の動物を使う場合もございますが、非臨床試験が行 われます。その非臨床試験の中には、もちろんスクリーニングの後をフォローする形で 薬理的な試験、詳細な試験というのもございます。毒性、ヒトに投与する前段階という ことになりますので、動物での一般的な毒性試験、これはいわゆる致死量と言いますか、 どういう量を与えたときにどういう作用が出るかというような毒性をみるということが ございます。そのほかに、もちろん抗原性ですとか、変異原性ですとか、そういう特殊 な毒性試験というものも実行されます。その後、ヒトでの臨床試験ということになるわ けです。ヒトに用いられる薬剤を開発ということになりますので、最終的な臨床試験の ステップというのはどうしましても避けられないということでございます。  したがいまして、特に薬事法の場合には、基本的には企業からの依頼を受けて臨床試 験が行われるということで、GCPという国際的にも整合化された基準に従いまして、 I相、II相、III相という形で少しずつステージを進めていくというような形で、慎重に ステップワイズに試験を進めていくという形になります。その上で、成績が出ましたら 承認申請に至るということでございます。もちろん、臨床試験のステップではどういう デザインで試験を行うかということと、手続的なものではGCPに従って実施するとい うことが重要でございますけれども、その出てきた結果も、従来のものに勝るとか、従 来の治療薬に比べて何らかの見どころといったものがなければ承認申請に至らないケー スももちろんあるかと思います。 次をお願いします。これはそのGCPにつきまして、後ほど辻先生の方からも御説明 があるかもしれませんが、事務局の方で経緯をまとめております。  平成元年に最初の「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」としまして、局長通知と いう行政指導の形でGCPが制定されたのが最初でございます。この前にはいろいろな 事件などもございまして、そういう気運を受けて基準をまとめていただいたものでござ います。その後、平成8年の5月に、これは後ほど御説明いたしますが、ICH-GCP という、日米欧での基本的な枠組みについて合意したということで、私どもの国もこれ に準拠してICH-GCPを取り込むことになったわけでございます。  そういう動きを受けまして、平成8年の6月に薬事法が改正されまして、GCPは厚 生省令、薬事法の下に規定されます厚生省令として位置づけられることになりました。 実際には法改正から10カ月近くたった平成9年の3月にGCPの省令は公布されまし て、平成10年の4月から施行されたものでございます。その後、平成14年の7月には 再度薬事法が改正されまして、いわゆる医師主導治験、企業の依頼ということだけでは なくて、医師主導の治験というものにつきましても薬事法の中に取り込む形で平成14 年の7月に改正が行われまして、平成15年の6月にGCPの省令が改正されたものでご ざいます。  それで次のページでございますが、この「ICH」という言葉も何回か出てきており ますが、日本とアメリカ、EUが医薬品の規制の調和を推進するということで、国際的 な会議を設けているものでございます。ちょっと長い英文になっておりますが、ヒト用 の薬剤のRegistrationでございますので、承認のためのテクニカルなRequirement、技 術的な要求文書の国際的な調和を図るというものでございます。  ICHの目的は、すぐれた新医薬品を不要なおくれなく患者・国民に提供する観点か ら、承認申請資料の国際的整合性を図ることでございます。これの一環としまして三極、 日米EUに共通する医薬品の臨床試験の実施に関する基準が、ICHの中では有効性分 野、品質分野、安全性分野というように分野が形式上分かれておりますが、その有効性 分野の中でGCPとして合意されたということでございます。ICHはいろいろな活動 をしておりまして、ウェブサイトもございます。日本語でのウェブサイトもございます。  次をお願いします。もう御承知の部分が多いかと思いますが、GCPの基本的な考え 方と言いますのは、1964年に世界医師会が定めました「ヘルシンキ宣言」がベースでご ざいまして、被験者の人権、安全及び福祉の保護、それから治験の科学的な質の確保、 それから治験の成績の信頼性の確保ということからなっております。  次をお願いします。私どもの薬事法の下に定められておりますGCP省令の特徴でご ざいますが、その前の通知で行政指導時代のGCPと比べまして、被験者となるべき者 に対するどういう特徴があるかということでございますが、5点ほど挙げております。 被験者となるべき者に対する治験に関する文書による説明と同意の取得ということで、 通知の段階では「口答または文書」ということになっておりましたが、「説明と同意の 取得」の部分は文書によるということになりました。  それから治験依頼者の責任範囲の拡大と強化ということで、多くは製薬企業、承認申 請をする方ということになりますけれども、そういう方の治験の進行状況等の管理につ いて責任範囲を拡大するとともに、進行状況をきちんと管理していただくことの強化が 図られているものでございます。  それから3番目は、治験審査委員会、IRBでございますが、これの機能の充実とい うこと。  4番目が、治験責任医師の責任と業務の明確化ということで、この辺は以前の治験総 括医師といったようなものとの対比でこういう形になっております。それから、医療機 関における治験事務局、医療機関の中では当然治験の事務局も必要でございますし、治 験にかかわりますほかのスタッフもおりますので、そういう点で治験の事務局を強化す るということが図られております。  それでは次をごらんください。一応、今説明申し上げましたのは、真ん中にございま すGCPの省令ということでございますが、実際には薬事法のほかの条文、特に第80 条の2のところには、治験の関連で立ち入り検査でございますとか、例えば中止を命令 することができるとか、そういう治験の関係で法律そのものに書かれている部分もござ います。それとGCPは、第80条の2の中の「実施については省令で定めたもので行わ れなければならない」という規定によって、法令という形になっています。そして、そ の下の方には通知としまして、行政的な指導、解釈についての運用の関係のものが出て おりまして、薬事法上のGCPに関します法令通知はこういう形ができているというこ とでございます。  それから次でございます。次は省令の構成でございますが、構成は何回も出てきてい る部分でございますが、第1章は総則、第2章が治験の準備に関する基準ということで、 治験の依頼をしようとする者による治験の準備に関する基準というものと、「自ら治験 を実施しようとする者による」という第2節の部分は、これは医師主導の治験の関係で ございます。第3章は、治験の管理に関する基準ということでございます。第4章が治 験を行う基準ということで、第1節に治験審査委員会、第2節は実施の医療機関、第3 節は治験の責任医師、第4節は被験者の同意ということでございます。そのほか、GC Pの関連では再審査等の関係もございますので、第5章にそういう基準もございます。 それから第6章には治験の依頼等の基準ということで、そういうものも定めてあるとい うことでございます。  それから最後のスライドでございますが、GCP省令の改正ということで、先ほど冒 頭でちょっと御報告をさせていただきましたが、先生方に中間まとめの2としてまとめ ていただいたものをもとに、実施医療機関が小規模であることの他に、専門的知識を有 する者の確保が困難な場合にも、実施医療機関の長が設置するIRBに代えて外部のI RBに調査審議を行わせることを可能とするということでございます。それから実施医 療機関の長が設置するIRBの審議において、より専門的な審議が必要と認めるときに は、当該専門的事項の審議を外部のIRBに行わせることができる。  それから3点目は、IRBは治験の実施の継続の適否について意見を求められたとき には、その内容の緊急性に応じて速やかに審査を行わなければならないこととするとい うことで、こちらはIRBの速やかな審査についての追加の責任を課すというものでご ざいます。それから4点目が、被験者に対する説明文書において、IRBの役割と当該 IRBにかかる情報を記載することとするというようなことでございます。  一応、事務局からの前座の説明は以上でございます。 ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。事務局の方からGCPを、多くの委員の先生方もも ちろん御存じだと思いますが、これからの辻参考委員のお話を伺う前の前段としてお話 をいただきました。それでは引き続きまして辻参考委員から説明をお願いしたいと思い ます。よろしくお願いします。 ○ 辻参考委員  辻でございます。それでは次のスライドをお願いします。  きょうはこちらに招かれたというのは、その真ん中あたりにありますけれど、たまた ま私が医法研というところがありますが、そこで補償のガイドラインをつくったり、そ れから個人情報保護法をやったり、それから日薬連の中の救済制度委員会というのがあ りますが、副作用被害が出た場合の救済の委員会があるんですが、そこの副委員長をや ったこと。そういうことからここに招かれたんじゃないかと思いますので、被験者保護 につきまして私見をこれからお話します。  次のスライドをお願いします。きょうの中身的にはここに書きましたように、被験者 保護にかかる事前規制とか措置、これにつきましては先ほど川原課長の方から御説明が ありましたので、そちらの方の割愛された部分があると思います。それから治験中の被 験者保護につきましては、医療側はもとより治験依頼者によるモニタリングとか監査と いうのがありますので、そのあたりも少し触れてみたいと思います。それから何よりも 治験中の補償責任というのが、きょうのテーマになろうかと思いますが、補償責任とい うのは必ずしも医薬品の副作用被害だけに限るんじゃないんですが、「治験に参加した ことにより」ということですから、限るんじゃないんですが、やっぱり多いのは副作用 というか、重篤な副作用被害がありますので、それをどう防ぐかということも事例を挙 げながらお話をしたいと思います。それから有害事象が発生したときには、不幸にして 発生したときには、被害者救済を速やかに行うということで、補償・賠償のところもこ れからお話をしようと思っております。  次をお願いします。それで次のスライドは治験とか臨床研究の必要性ということであ りますが、まず第一は人類への貢献ということでありまして、治験というのは子孫への 贈り物であるということであります。それから治験に参加するということは、医療によ りましても患者にとりましても最新医療へのアクセスということでありますので、やっ ぱり治験を促進しなければいけないということであります。それから治験を経ることに よりまして、医療の質が向上するということがあります。そうは言いつつも、初めてヒ トに使うことがありますので、市販する前の段階でありますので、被験者保護が極めて 重要だということになります。  それから、資源に乏しい我が国が継続的発展をしていくというときには、やっぱり治 験というのは数少ない分野じゃないかと思いますので、これの産業育成ということは非 常に大事ではないかと思っております。以前は日本の医薬品というのは欧米の物まねだ ったんですが、今では高脂血症治療薬とか、免疫抑制剤であるとか、気管支ぜんそく治 療薬であるとか、強心薬とか、あるいはアルツハイマーといったこういう薬が世界で使 われておりまして、まだまだ必要とする薬は必要でありますし、それからこれからもこ れが続く新薬を送り続けていきたいというのがあります。特に抗がん剤であるとか、リ ウマチの薬であるとか、あるいは鳥インフルエンザ治療薬というのはまだ開発していか なければいけないということであります。  次をお願いします。それできょうのテーマでありますが、「治験における被験者保護」 というと、この3つに集約できるのではないかと思います。一つは、自己決定権の尊重 ということであります。それで、生命倫理の4原則というのがありますが、害を与えて はいけないという無害原則というのと、それから善行原則、善いことをしなければいけ ないということ。それから自己決定原則と、それからもう一つが正義原則、こういう4 つの原則というのが臨床研究、あるいは治験の場合の大原則であります。中でも最も重 要視されているのが自己決定権ということでありますので、これはインフォームドコン セントということになりますが、これにつきましては後で少しお話をしたいと思います。  それから2番目が、患者さんのプライバシーの保護ということと、それと関係者の守 秘義務ということであります。これにつきましても少し説明をしたいと思います。それ から健康被害の防止でありまして、中でも重篤な副作用の被害をどう防止するか、初発 症状をどう発見し、早期対応をどうするかと。ここは極めて大事でありますので、これ につきましてもある程度具体的にお話をしたいと思います。それから4点目が、これに 関連するんでありますが、不幸にして有害事象が発生したという場合には、速やかな賠 償責任の履行であるとか、補償責任の履行ということになろうかと思います。この4つ の点が治験の場合の非常に大事な点ではないかと思います。  その中で特に被験者保護の中で、自己決定権の尊重というのは先ほど申し上げました が、後でまたお話をしますが、プライバシー保護のところにつきましては第9回のこの 会議で池田先生からスクリーニングにつきまして、これは患者の通常の診療受診におけ る同意の範囲内なのかどうかという御指摘があったんでありますが、この刑法の134条 1項の守秘義務というところが個人情報保護法が施行されたことに伴いまして、恐らく 中では注目されているところではないかと思いますので、そこを少しお話したいと思い ます。  それで守秘義務というのは2つありまして、国家公務員などのいわゆる公務員の守秘 義務というのが一つあります。これにつきましては一定の身分とか地位にあるために、 そうした身分上の義務として秘密を守る義務があるということで、その不履行が違反と して、犯罪として処罰されるという守秘義務が一つあります。それからもう一つの守秘 義務というのが、相手方との信頼関係を前提として取得した秘密を導入する場合に罰さ れる刑法であります。これが診療情報につきましては特に大きな問題になるんじゃない かと思います。  これにつきましては1999年の世界医師会リスボン宣言の8条でも同じようなことを 言っておりまして、その中で3つのことを言っているんですが、一つは患者の健康状態 とか症状とか診断とか予後、及び治療に関する本人を特定し得るあらゆる情報、並びに その他すべての個人的情報の秘密は患者の死後も守らなければならないという大原則を まず言っております。それからBとしまして、秘密の開示は患者本人が明確な承諾を与 えるか、法律にはっきりと規定されている場合のみ許されると。他の医療従事者への情 報開示は患者が明確な承諾を与えていない限り、業務遂行上知る必要がある範囲内で許 されるというのがあります。Cというのはデータ保護ですが、この3つを書いておりま す。  それで、個人情報保護法が施行されまして、これはプライバシー保護ということに焦 点が当たるわけですが、プライバシー保護ということと刑法の134条の医療関係者に科 しております守秘義務というのはほとんど同じであります。つまり、どういうことを言 っているかというと、守秘義務というのは一つは非公開性、それから2番目は秘密利益、 それから秘密意思があると。この3つの要件があるものにつきましては守らなければい けないということになります。  そうすると、カルテスクリーニングにつきましては患者さんの同意があった場合には 全く問題がありませんので、患者の同意を得た上でやるということであります。それで 正当な理由がなければ違法ということになります。その正当な理由というのは3つあり まして、一つは患者さんの同意がある場合、2つ目は法令に基づく場合、3つ目が正当 業務行為と、これが秘密の保持が解除される要件であります。そうしますと、患者の同 意を得た上でやるということが第一になると思いますね。  それから、望ましいカルテスクリーニングというので一つだけ挙げたいと思いますが、 患者さんの同意をせっかく取得して治験に入ってもらおうかなと思って、今度は見た場 合に選択条件とか除外条件に抵触するという場合が出てきます。そういう場合はこれは 残念ながらそこで断念となってしまいますので、そういうことを防ぐためにこういう場 合には、まず治験担当をされる先生の方から、治療法の一環として治験ということがあ りますよと。ただ、治験に参加するためには厳しい条件があるので、詳細はカルテとか 診療録を見ないことにはわからないということで説明していただいた上で、患者さんの 同意を得た上で、その上でカルテスクリーニングをやるということにつきましては全く 問題はないわけでありますので、そういうプロセスを積んでいただきたいというのがこ のプライバシー保護というところであります。なぜ必要かということにつきましてはそ このところに書きましたが、それはもう医療の原点だということであります。  それから次でありますが、インフォームドコンセントの歴史ですが、実はインフォー ムドコンセントというのは日本に入ってきたのが1960年代ですが、非常に古くからあり まして、プロイセンの国会でこういうことがありました。それはちょっとお話をします と、そこの図のところに見えますでしょうか。実は1898年にナイサーという方が梅毒の 血清治療を売春婦を使ってやったというのがあります。ところが被験者の方にその梅毒 が伝染してしまったということがありまして、ナイサーは譴責を受けるんですが、政府 は3つのことを言いました。実験は被験者に有益でなければいけないということ。それ から患者とか被験者は自主権を有し、みずから決定と。つまり、ここは自己決定権とい うことをもう1898年にプロイセンは言っているわけですね。それから、非治療的研究は 非倫理的であると。つまり、ここで言っていることはヘルシンキ宣言の底流に流れてい ることであります。それでプロイセン国会が1900年にガイドラインを出しまして、その 中で未成年者を研究対象としてはいけないとか、研究のあらゆる結果を説明の上、承諾 を得た上で行わなければいけないとか、適切な資料を開示しなければいけないというこ とを言っておりまして、これがインフォームドコンセントというか、臨床研究とか治験 なんかの恐らく原点ではないかという気がします。それで日本に入ってきたのは、唄孝 一先生が西ドイツの判例研究からこういうのがあるよというのが紹介されたというのが あります。  それからアメリカでは、実はこれもインフォームドコンセントの最初の事案というの はどういうものであったかと言いますと、アメリカでは「シュレンドル事件」というの が1914年にあります。これは胃がんの方が胃の全摘手術をするというときに、本人が嫌 がったものですから、組織検査だけしますよ、ということで胃の全摘をやってしまった と。これはそんなことは聞いていない、ということで患者さんが怒りまして裁判になり まして、判決がどういうことを言ったかというと、成人に達して正常な判断能力を有す る者はだれでも自分の体に何をされるのかを自分で決定する権利を有する。つまり、自 己決定権をアメリカでも1914年にシュレンドル事件で認めているわけであります。その 後に1957年にサルゴ事件というのがありまして、ここで初めて「インフォームドコンセ ント」という言葉が登場します。これは造語なんですね。それは大動脈造影によりまし て四肢麻痺になった方が、血管造影のリスクを聞いていないということで訴えたんであ りますが、そのとき初めてこういうインフォームドコンセントということを認めたのが 1957年であります。  それでこのインフォームドコンセントのドクトリンがアメリカで確立したのは1960 年のナターソン事件でありまして、これは乳がんの患者さんがコバルトの大量照射を受 けまして胸部に大やけどをしたと。その治療のリスクとか、他の治療法があるというこ とは聞いていないということで、選択肢に関する説明を受けていないということで訴え まして、これで認容されたと。このことでインフォームドコンセントの法理というもの がアメリカで確立すると。この後、ケネディ大統領の「消費者の4つの権利」というこ とが言われまして、同時的に日本に入ってきたと。これがインフォームドコンセントの 経緯であります。  それから愛知県のがんセンターの治験ということで説明しますが、そこでも臨床研究 の位置づけにつきまして何を言っているかというと、医学・薬学の進歩という公共の福 祉を促進し、患者に対し診断・治療上の便益をもたらす側面もあるけれど、反面では人 体実験の側面もあることから、倫理的に許容されるためには以下の要件が必要であると しまして、まず情報開示をし、被験者の同意を得なさいということ。2つ目に、プロト コルが科学的に基づかなければだめですよということ。3つ目が、専門的な知識とか訓 練を積んだ研究員によって一般に承認された手技・方法によって実施されなければいけ ないと。そういう一般原則がありまして、治験におけるインフォームドコンセントにお きましては当該行為が医療法に抵触していないということを説明しなさい。それから6 番目に、ほかに治療法がある場合にはそのことも説明しなさいと。それから治験の必要 性があることを説明しなさいということですね。それから治験薬の副作用と当該治験法 の危険性とか、当該プロトコルについての概要であるとか、被験者保護の規定等の内容 及びこれに従って医療行為をされるということを被験者の方に十分に説明した上でやっ ていないと、それは違法ですよということを言っております。これは先ほどお話のあり ましたGCP省令の51条記載の項目内容とほぼ一致する点であります。  それから日本でインフォームドコンセントが判例に使いましての、実は昭和46年の東 京地裁で行われましたが、承諾なき乳腺切除事件というのがあります。これは初めてイ ンフォームドコンセントということを認めた判決でありまして、ここからインフォーム ドコンセントというのは確立していったということであります。  次のスライドをお願いします。そこで、インフォームドコンセントの話をちょっとし た方がいいと思っているんですが、インフォームドコンセントの困難性というか、それ と同時にインフォームドコンセントの法理というか、リーガルドクトリンというのと、 求めております医療側からの情報提供のあり方ということと、それから医療現場の実際 のギャップというのがあります。  それからもう一点はインフォームドの困難性があります。一つは患者の意思決定の限 界ということ。それから時間の確保の困難性であるとか、それからがん告知の問題、こ ういうものがあります。それでたまたまこの前同期会がありまして、帽子を被ってきた ものですから、どうしたの?と言ったら、実はがんになってしまったと。それで、がん になって今は抗がん剤の治験をやっているんだと。それで純ちゃんが治験をやっている というのできょうは楽しみに来たよということで、いろいろと彼と話をしたんですね。 そうすると、そこでわかることはどういうことかというと、やっぱり先ほど言いました ように患者の意思決定の限界というところで言えることは、やっぱり記憶の限界がある ということなんですね。つまり、患者さんはドクターがお話しされたこと、説明したこ とをすべて覚えていない、正しく記憶できていないということなんですね。ここにGC Pで「文書同意」ということが今度新しく入った背景があるのではないかという気がし ますね。  それから、合理的判断の限界というのがありまして、患者の意思決定がしばしば合理 的ではないということがあります。そうすると、こういうことから御家族の方と御相談 くださいということをインフォームドコンセントしています。それから、患者さんとい うのは現在の利益の方を将来の利益よりも優先させるということがあります。例えば痛 みがひどいときには、とりあえず痛みから逃れたいという気持ちが優先するという、そ ういう問題があります。それから医療側から行きますと、今度は治療成績の提示法によ るバイアスの問題。つまり、80%生存率で話をするのか、20%の死亡率で話をするか、 やっぱりバイアスがかかってきます。そうすると説明の仕方は非常に難しいなというこ とであります。  それから彼が言っておったんですが、やっぱり患者というのは混乱とか恐怖であると か、あるいは不安であるとか、何で俺ががんになったんだ、という怒りがあると。そう いう抱えたときに、やっぱり一般の治療と違って治験に入るとCRCの方が受け止めて くれると。それで懇切丁寧に悩みを聞いてくれる。中には頭の毛が抜けるということは、 これをやっぱりわかっているけど何とか訴えたいと、そういうグチを聞いてもらいたい。 そういうときにやっぱり医療ではできないけれど、一般の医療では望むべくもないけれ ど、治験に入ったおかげで大変親切に教えてくれて非常に心安らぐんだよ、ということ を彼が言っておりまして、ここが恐らく我々がお願いしておりましたCRCの養成とい うところにも非常に意義があったんだなということを感じた点であります。  それから次はインフォームドコンセントの問題としまして、医療側はどれだけの情報 を提供すべきかと。つまり訴訟リスクとの関係ですね。それからもう一つは、どのよう な医師・患者関係に基づいて情報を提供すべきかという問題。それから医学的事実と患 者の価値観との折り合いの問題、いわゆるどこで接点を持ち込むかというところがあり ます。私も去年1月に、2月のはじめころですが網膜はく離になりまして、それであと 数時間で失明だということで手術をしたんですが、そういうときにやっぱりなかなかと りあえずのことしか聞けないわけですね。そういう観点からいきますと、ではインフォ ームドコンセントというのが「説明と同意」というように訳されますけれど、これはど うも正しくないんじゃないかという気がしています。  そういう点で、李教授が言っていますが、ここに書きましたように、患者さんと医療 側が治療のゴールを決めて、そのゴールを達成するために共同して治療方針を決めるこ と。こういうような理解の方がインフォームドコンセントとしてはいいんじゃないかと 思います。ですからカタカナの「インフォームドコンセント」と横文字の「informed consent」とちょっと違うところがあるんですが、インフォームドコンセントというのは なるべく和訳をしないでそのまま使った方が間違いがないんじゃないかなという気もし ております。  次をお願いします。それで事前規制とか措置につきましてはここに書きましたように、 まずヘルシンキ宣言があるということであります。これはプロイセンの国会が規定した ことを踏襲しておりますが、1964年にヘルシンキで宣言されたものがあります。それか ら、これを具体的に反映するものというのがベルモントレポートがありますので、これ につきましては3原則ありますので、後でまた御説明しようと思います。  それから薬事法とかGCP省令による規制につきましては、先ほど川原課長の方から 御説明がありましたので、これは割愛するということ。  それから次は治験審査委員会によります審査ということで、倫理的な配慮とか、科学 的な妥当性の有無とか、プライバシーの保護などを治験審査委員会の方で審査するとい うことであります。  次をお願いします。それから薬事法の改正と新GCPの施行のところでありますが、 ここのところもお手元にありますように、もうおおむねのところは川原課長の方から御 説明がありましたけれど、上のところの2段目あたりですが、1996年の医薬品安全対策 検討会の中間報告を受けまして、それで薬事法が改正されて、ここで初めてGCPが課 長通知からいわゆる遵守義務が法制化されたということであります。それで1996年11 月に最終報告が出まして、この報告書の中にインフォームドコンセントの方法であると か、人権保護のあり方、関係者の役割であるとか、承認審査体制とか、後に加わったの が市販後対策の充実強化の提言などがされたわけであります。これを受ける形で1997 年に中央薬事審議会GCP答申が出まして、ここはICHとの整合性を図ったり、それ からここで初めて被験者に対する補償制度の提案と。いわゆる無過失責任の導入という ことと、立証責任の転換ということが提言されたわけであります。これを受けまして3 月に新GCPの関連通知が出たということであります。  それでこの後に2年かかったんですが、1年間はそのままにしていたんですが、どう しても保険の設計をしなければいけない、商品設計をしなければGCP違反になってし まうということで、何とかガイドラインをつくってくれないかということから、1998年 の5月ぐらいに、医法研の中に特別研究部会を立ち上げましてそれぞれ検討しまして、 99年3月に医薬品企業法務研究会の補償のガイドラインというのを公表しまして、これ を受けた形で大手損保から4月以降に新治験保険というものが順次商品化されたという 経緯であります。  次のスライドをお願いします。次のスライドは中央医薬品答申のGCP3-14には、 ここに書いてあることは見ておわかりのように、無過失責任導入ということ。つまり、 補償制度の提案をしているんですが、この無過失責任導入するにつきましてはGCP省 令、いわゆる省令でやるということができません。つまり、立証責任に転換するとか、 それから補償責任を科すということはこれは立法措置になりますので、そこでGCP省 令の14条は今度は履行確保措置という、いわゆる保険のことを書いたわけですね。それ でその課長通知の中で、その14条に書いてありますような中身については説明するとい う形をしたわけです。ここのところが補償賠償の混乱を招いた一番の問題ではないかと、 個人的には思っているんですが、そういうのがあったということであります。  次をお願いします。次に治験中の対応でありますが、治験中の対応につきましてはこ こに書きましたような、重篤な副作用被害の早期発見、それから適切な初期対応、これ が大事ではないかということですね。つまり、重篤化を防止するということが非常に大 事ではないかと思います。それで、もちろん補償責任が生じるというのは、問題となる のは治験薬には限らないんですが、ほとんどすべてと言っているものが重篤な副作用と いうことになります。そうすると、やっぱり中でも重症型の薬疹になりますので、現在 のプロトコルでは本当に大丈夫ですかという問題がありまして、さらなる工夫が要るん じゃないかということで、一つ後で御説明をします。  それから緊急時対応の必要性ということで、これはGCP省令35条等に書いてありま すが、こういう問題がある。それから、治験依頼者側のモニタリングというものがあり ます。今までは人が行ってやっておったんですが、最近ではEDCということで、セン トラルモニタリングができるようになりましたので、これについても愛知県がんセンタ ーの治験事故などを紹介しながら、こういうのがあったらあるいは防げたかもしれない というのをちょっと紹介したいと思います。  それからEDCによる活用ということ、これは期間短縮とか、コスト削減とか、ある いは質の向上とかあるんですが、最も大きな威力を発揮するのはヒューマンエラーの防 止ということであります。  次をお願いします。そこで重篤化防止が重要ということで、では頻度が高くてやっぱ り重篤な副作用はどういうものがあるかというと、それが補償責任問題になるんですが、 補償金を払うということで問題になるんですが、ここに書いたような疾病ということに なります。それで実は補償というのはそれほど多くはございません。補償金を払うよう な事案というのはそんなに多くはありませんで、実はこれをつくる前にアリセプトとか パリエットの開発ということでアメリカ・ヨーロッパに私は行ったんですが、そのとき に補償責任をやっているのはイギリスのABPIが補償責任をやっていますが、そこに 行きましてそこの法律事務所の方から、ではどれぐらい補償案件があるんだという話を 聞きました。そうしたら、そのときに1990年から1995年までの5年間で延べ被験者数 が41万人登録されました。そのうち21件に補償しております。ですから比率的には非 常に少ない。それでイギリスのABPIの補償はあくまでも後遺障害が残る以上として いますので、そのレベルであるということですね。それで、その案件一つ一つを見ます と、ここに書きましたようなやっぱり疾病ということになります。  そこでちょっと意地悪い質問をしまして、ショックとかアナフィラキーショックもあ るはずなんだけれど、それはどうなんだということを聞きましたら、それは医療過誤だ からそれは対象にはならないんだという話をしまして、このところはGCP省令の6条 であるとか、35条の施設の要件であるとか、あるいは責任者要件であるとか、こういう ことが守っていただければこのあたりはちゃんと措置できますので、そういうことであ ります。  次をお願いします。それで例えば皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症というのがあ りますが、こういう場合ですがデータによりますと大体どれぐらい出るかというと、中 毒性表皮壊死症につきましては100万人当たり年に大体2.9人ぐらいですね、日本で。 それからTENにつきましては、年に大体0.8〜1.2人と出ています。つまり、極めてま れな疾患であります。  そうすると、現在の添付文書もそうでありますし、プロトコルもそうなんですが、ど う書いてあるかというと、「予想される副作用としてスティーブンジョンソン症候群と か、TEN」と書いてあるわけです。措置としては「直ちに投薬を中止し、適切な措置 を行うこと」と書いてある。これで本当に大丈夫かという話なんですね。それで極めて 発症はまれですから、見たこともないお医者さんが多いということ。それで初期の診断 というのは大体ヘルペスとか、水痘となっています。これは早期の鑑別診断というのは 必ずしも容易ではないんですが、病理組織学的には可能です。したがいまして、生検皮 膚を持ちました迅速病理組織診断法では、生検当日のうちに重症化するかどうかという ことが予測できます。したがって、以後の重症化防止に向けた適切な早期の集中治療を 行うことができます。したがって、そういう点でやっぱり重篤な副作用のときにはそう いう手当まで用意しておかなければいけないんじゃないかという気がします。  次のスライドをお願いします。それで重症型薬疹を疑わせる兆候につきましては、4 つのことを気をつけなければいけないんじゃないかと。今日は専門家の方がおられます ので、法律家がヘンなことを言うとちょっとおかしいんですが、まず高熱があるという ことですね。それから粘膜疹を認めるということ。それから全身の広範囲にびまん性の 発赤があるということ。それから水泡形成があるということ。この4つの兆候がありま すところは重症型薬疹ということがありますので、治験なんかの場合に実はスティーブ ンジョンソン症候群であるとかTENなんかがあるということが予測されるということ がありましたら、通院患者の場合ですが、入院患者の場合にはCRCがよくみるという ことですが、通院患者の場合にはこういうことがあったら治験管理センターの方に電話 をくださいと。電話をもらいまして、それでいろいろ話を聞きまして、熱があるかどう かとか、粘膜はどうとか聞きまして、それでちょっと熱がありますねとか、粘膜にも炎 症がありますというようになりますと、では万が一と思うけれど、きょうは来れません かと。例えば昭和なんかの場合だったら、東分院が眼科と皮膚科が同じ病棟にあります ので、そこのところで、専門の確認をした方がいいので、きょう来れませんか、という ことですぐに事務の方に電話しまして、そこで外来の方で眼科とか皮膚科の専門医に診 てもらうというようなそういう手当をして、とにかく重症化を防ぐということが大事で はないかという気がしております。  それから次であります。これは愛知県がんセンターでの治験事故、これは1988年の事 故でありまして、2000年の3月24日に判決があったんですが、これは6年半の審理を 経ましたんですが、そのときはこれは用量規制因子というのが血小板減少なんですね。 それでこれはそこの下の方にバーがありますが、13000のところを切りますと、これは ちょっと危険ラインを超えるということでありますので、この当時はEDCはなかった んですが、今だと進んだEDCなんかの場合ですとセントラルモニタリングができます ので、治験依頼者も病院の治験センターもこれを見えるわけなんですね。数字だけだと 見えないんですが、この段階で最初の切った段階で、先生、大丈夫ということをアナウ ンスできるわけですね。そういうことが最近ではITを使えばできるようになったとい うことであります。  それでこの愛知県がんセンターの治験事故ではどういう判決を言っているかというこ とは、当時既に標準的な治療法であるPVB療法が確立し、これを実施する障害となる 事情は存在しなかったにもかかわらずインフォームドコンセントに違反し、これは言っ ていなかったんですね。それでプロトコルに違反して、その使用結果をケースカードや 連絡表に虚偽記入して治験依頼者に報告し、その治験薬を使用した化学療法の副作用に よって患者を死亡させたことについて、これは不法行為法並びに債務不履行責任がある よということで、慰謝料3千万円と。葬儀に100万円、弁護士費用300万円の認容した という事案であります。  ここで何が大事かというと、やっぱり重篤化防止には具体的な記載をしなければいけ ないということ。それから次は、やっぱりCRA、つまりモニターによる直接閲覧の重 要性ということではないかと思います。それからこの判決では担当医師が標準的治療法 のPVB療法を知らなかった、未経験であるということを問題としていますので、そう するとGCP42条が言っております、責任者の要件にもかかるところを言っている。つ まり、私は何が言いたいかというと、GCP省令は非常にいいことがたくさん書いてあ るんです。その根拠となる中薬審答申にもいいことは書いてあります。これを関係され る方にぜひ何回も繰り返し読んでいただきたいと。そうすれば事故というのは被験者防 止にはつながるんじゃないかということであります。  次であります。それで私ども製薬メーカーのときには製薬メーカーのIRBの委員を しておったんですが、最近は医療機関側のIRBの委員をしています。そのときにIR Bの委員として何を見るかというと、そのベースとなるのがベルモントレポートです。 それは3つありまして、一つは人格の尊重であります。つまり、個人を自律的な主体と して扱うということであります。そうすると審査の視点というのは、そこのIRBのと ころに書きましたが、そこに書いてあるようなことをみるということですね。それから 原則2というのは善行でありまして、己の欲することを人にも施せということです。そ れから3点目が、正義ということであります。この3つのところを絶えず繰り返しなが らやっていくということであります。そういう点で後でまたIRBにつきましては私見 がありますので、ちょっと説明をしたいと思いますので、ベルモントレポートにつきま しては簡単に御紹介ということであります。  次をお願いします。IRBの責務でありますが、次の資料に基づいて審査し文書によ る意見を提出しなければいけないというのがGCP32条に書いてありますので、そこに 書いてあることはこの5項目ということになります。  それから次のスライドをお願いします。役割はまず第一の役割は、研究対象者、被験 者の権利と福祉を保護する役目があるということです。それから、したがって審議は上 記目的に適う内容であること。そうすると、IRBの委員というのは何をやるかという と、当該治験の科学的妥当性、それから倫理的妥当性、並びに医学的妥当性の審査を行 うんだと。それでその意見を述べるんだということになります。  それからIRBというのは審査の場でありまして、決して情報収集の場ではありませ ん。このあたりは必ずしも十分に認識しておられる委員ばかりとは限らない、というの が現状ではないかという気がします。それから、効率的な運営をするためには、先ほど 課長の方からも御案内がありましたように、やっぱり支援室の周到な準備とかが大事だ と。つまり、治験事務局の周到な準備というのが大事であります。したがって、マンパ ワーの足らないところは外部にそこをお願いするということになります。それから、ピ アレビュー会議、これは実は東大なんかの場合はやっておりますが、ピアレビュー会議 なんかを、これは審査ではないんですが、ピアレビュー会議をしたり、あるいはワーク シートの活用であるとか、あるいはアメリカなんかで盛んなんですが、主任審査委員制 度ということで、主任審査の方を決めまして、その方がIRBの説明をすると、プレゼ ンテーションをすると。それから審査するということになりますと、非常に中身的にも 効果的な審査ができるということであります。そういう点では現状ではやっぱり課題も 幾つかあるんじゃないかと。特にやっぱり委員の教育の場であると。答申で出ています が、場がないということがあります。  次をお願いします。それからIRBの現状と課題ですが、ヘルシンキ宣言がこれはベ ースになりますが、その本来の責務を果たしているかどうかということで、またこれは 私見なんですが、研修システムとか登録制度というものを、この議論でも出ております が、やっぱりした方がいいんじゃないかと思います。  それから専門委員の不足につきましての問題につきましては、今回の改正で一部目途 がついたんであります。それからもう一つ、非医学・薬学専門家が入っている意味なん ですが、これは何で委員に入っているか。つまり、これはやっぱり専門家だけの議論に なりますと、集団浅慮とかリスキーシフトと言いますが、危険偏向をそういうことを避 けると。つまり、一般の目で物事を見ると。外部の目で物をみるということで入ってお りますので、そういう方々の重要性ということも十分に認識しなければいけないと。  ただ、こういう方々に入ってもらうときには大事なことは、IRBは何をするところ か、治験はどういうことをやるのかとか、そういうことはやっぱり教育しないと、来て も会議に出てもわからないと言われます。それから皆が白衣だと、それに圧倒されてし まって意見を言えないと言われます。したがって、IRBの委員会ではなるべく白衣を 着ないで、こういう背広を着てやりなさいという話もするんですが、やっぱり一般の方 の委員の方は白衣に対して抵抗感がありますので、そういうことも大事ではないかと。 それからIRBの委員を選ぶときにはやっぱり独立性が大事なので、悪魔の代弁者と言 いますが、Devil' advocateを選ぶ必要があるんじゃないかと。このあたりが今後の課 題ではないかなという気がします。  次をお願いします。そこで、これは私が持論を出しておりまして、完全な形のセント ラルIRBをつくった方がいいんじゃないかということです。つまり、どういうことか と言いますと、全国に15〜20ぐらいのセントラルIRBをつくってしまうということで すね。そこで領域別のIRBをつくりまして、当該治験の科学的・倫理的妥当性、基本 のことはそこでやってしまう。それから、実施施設の要件ということはそこで全部審査 してしまうということです。  それで、施設のIRBというのはこれは必要だと私は思っておりますので、倫理委員 会と言ったと思うんですが、自分のところでやれるかどうかということと、それからそ の責任医師としてその先生が大丈夫かどうかということは、それはセントラルではちょ っとわからないので、個別でやっていただきたいと。例えば愛知県がんセンターの治験 事故、愛知県がんセンターというのは施設としては非常に立派な施設です。たまたま問 題を起こす先生が問題だったんです。ですから、そういうことに関しましてはやっぱり 外部ではわからないんですね。したがって、2段階審査の方がいいんじゃないかと。そ のことの方がより密度の高い審査ができるんじゃないかということで、こういう私見を 出しております。それは専門委員の不足につきましては、今度ある程度できましたけれ ど、現在の制度でもこれに近いものができるんじゃないかということで、運用次第によ ってはこれに近いものができるかなという期待はしております。  次をお願いします。次に補償責任と賠償責任でありますが、まず押さえておきたいこ とは、治験との因果関係がなければそれは補償責任・賠償責任が生じないと。それは絶 対責任ではないということですね。したがって、まず因果関係が大前提です。これは押 えておかなければいけない点だと思いますね。  それから賠償責任というのは、これは違法性を前提とする。つまり、民法709条であ るとか、あるいは415条とかの法的責任ということであります。ところが、補償責任と いうのはそうではなくて、適法行為にかかる損失補てんの問題なんですね。ここが違う んだということです。したがって、補償責任を考える場合には、治験との因果関係がま ずあるかどうかということを考えていただいて、あるとその中で今度は賠償責任を負う 者がいないかどうかと。負う者がいないとき初めて補償責任が問題になるということで すね。  それで、何で補償のことがなったかということにつきましては、イギリスの例もちょ っとお話をしたいと思いますが。次のスライドをお願いします。補償制度を持つ国は非 常に少ないんですね。アメリカなど多くの国は賠償責任だけです。アメリカも一つだけ、 全くないかというとそんなことはありませんで、アメリカも実はワクチンに関しまして は補償制度を持っています。というのは、ワクチンでPL訴訟が起こりまして、だれも つくらなくなってしまった。もうワクチンをつくらなくなったということで、これはあ かんということで、ワクチンに関しましては立法による被害救済をしています。これは 非常に例外的にしている。だけどアメリカにつきましては、それ以外についてはすべて 賠償一本であります。  それで次にイギリスなんですが、イギリスが何でこのABPIがつくったかという経 緯をお話をした方がいいと思いますが。イギリスはサリドマイド事件を契機にしまして、 ピアソン委員会を立ち上げます。それで1978年にピアソン報告が出ます。そのピアソン 報告は何を言っているかというと、医療被害は立証の困難性から他の過失事件に比べて 被害者側の立証の成功率が極めて低いと。それで社会的補償給付を受けた一部の者を除 いて、被害者の多くはいかなる現金給付も受けていない。したがって、立証責任の転換 とか、無過失責任性の導入を提言したんですね。  ところが、一方でその報告書に書かれていることは、何を言っているかというと、無 過失責任の導入は防衛医療とか医師の萎縮をもたらす可能性があるので、立法化は望ま しくないと言っているんです。当面は見送った方がいいと。そういうことを受けまして 答申をしたんですが。例外としまして、ここが治験にかかわるところなんですが、例外 として社会の利益のためにみずからを医学上の危険に晒しておくと。つまり、医学的な ボランティアですね。それから臨床研究の被験者なんですが、これらに対して特別の無 過失責任による救済を考慮すべきと言ったんですね。これを受けた形でイギリスがAB PIがガイドラインをつくったわけです。それでイギリスもABPIの補償のガイドラ インというのは、あくまでも死亡もしくは後遺症が残る場合だけです。したがって、一 過性のものについては補償しないということになります。これが最初にできた実施基準 の補償ガイドラインであります。  それでニュージーランドはもともとあそこは1972年の事故補償法というのがありま して、あらゆるアクシデントにつきまして補償する制度になっておったんですが破綻を しまして、1992年に事故リハビリテーション補償法という保険法に変えたんですね。そ のときに医薬品は対象外になったんです。それを受けました形で1997年の12月にニュ ージーランド製薬協がイギリスのABPIのガイドラインをそのまま踏襲したガイドラ インをつくって自主的にやっているというのがあります。  それでオランダは1999年12月に薬事法を改正しまして、治験依頼者に賠償責任プラ ス補償責任履行を確保するために保険だけをつくる。つまり、GCPが言っていること と同じことを言っています。  それからドイツはどうしているかというと、これはファルムプールがありますけれど、 これはあくまでも賠償責任、危険責任でありまして、補償責任ではありません。あくま でも危険責任に基づく賠償責任をやっているということで、補償責任をやっている国は 非常に少ないんだと。  それで日本はつくってほしいということがありましたものですから、私が部会長にな りまして医法研の補償ガイドラインというのをつくったということがあります。これを 受けまして、現在では保険が商品化されまして、それに基づいた運用がされていると。 補償・賠償に関しましてもこれに基づいてやっているということであります。  次をお願いします。医法研の補償のガイドラインにつきましては、大きな特徴が2つ ありまして、健康な方、フェーズI、健康な方を対象とした試験というのと、それから 患者を対象にした試験に分けています。これはイギリスもニュージーランドも同じ分け 方をしています。それで健康な方を対象とした試験の場合には、医療費につきましては 全額製薬メーカー側が、治験依頼者側が負担すると。他方、患者さんを対象にした試験 につきましては、健康保険が使えますので健康保険等からの給付を除く患者さんの自己 負担額を後に償還すると。ここがちょっと違うところであります。  それから入院を必要とする程度以上のレベルになりましては、医薬品副作用被害救済 制度と同じなんですが、入院に伴う実費をみるということで、医療手当を用意していま す。これは3万ちょっとになります。 それから今度は健康被害があった場合ですが、健康人の場合、フェーズIの場合には 政府労災に準じて補償金を払う。これは1級から14級まであります。したがって、休業 補償金なんかも用意しています。ところが、患者さん対象の治験の場合にはそうじゃな くて、これは後遺障害が残った場合だけにみますよと。それで1級と2級。これは医薬 品副作用被害救済制度に準じてあるということになっています。ここがちょっと違うと ころであります。したがって、休業補償なんかはないということになります。  それから死亡案件につきましては、これは遺族補償金、あるいは葬祭料を払うと。こ れは一緒であります。この救済制度はすべて軽度のものにつきましては一括払いなんで すが、重いものつきましては年金払いをしているんですが、医法研のガイドラインはち ょっと工夫しまして、これは製薬メーカーがM&Aをやったりつぶれる場合もあるでし ょう。保険会社もそうでしょうということで、すべて一括払いにしています。したがっ て、救済制度を参考にしておりますが、一括払いと一次払いのところのつなぎのところ はスライド調整をしまして、原価計算をしまして新しくテーブル表をつくって提示して いるということがあります。これが医法研のガイドラインの概要ということになります。  もし必要があれば、これは別に隠しているものではありませんし、補償・賠償と個人 情報保護法対応の実務という本に、ここのところにガイドラインとかテーブル表も公開 していますので、特に隠す必要はありませんが、きょうはちょっと用意はしておりませ んが、そういうものがあるということです。  次をお願いします。健康被害と対応のポイントでありますが、まず因果関係がなけれ ばそれはあくまでも偶発事象でしょうと。だから因果関係をまずみてくださいと。それ から、賠償責任があったらそちらの方が給付は厚いですから、賠償責任の履行の確認が 先ですよということです。  それから今度は賠償責任が当然のことながら賠償案件というのがありますから、プロ トコルにも若干のミスがある、医療側にもミスがあるというときには、この責任条項が ありますので、そういう場合は原因者負担ということで過失割合に応じて負担してくだ さいということであります。 それから医法研のガイドラインの考え方というのは、医療費を払うということにつき ましては、これは保険の転嫁はしておりませんので、これは企業側で払えますので、そ れにつきましては治験担当医師の意見を参考に、メディカルドクターなどの判断で速や かに払ってもいいよというようにしています。しかし、補償金の支払いということにな りますと、これはやっぱりより詳細な情報を集めて、ちゃんとした手続を踏む必要があ りますので、この場合には補償金の支払いにおきましては社内の判定委員会というとこ ろで因果関係というものを判定していただいて、外部委員に入っていただきまして、そ こで責務を果たすというようにしております。そこはちょっと違うところであります。  次をお願いします。それからこういう問題を考える場合に、よく私は言うんですが、 法律を考える場合の大事な視点は2つありますよと。例えばGCPに書いてないからや っていいんじゃないかとか言われるんですが、そうじゃないんだと。法律というのは後 追い的な側面があります。したがって、その法律を考える場合にはまず第一条、立法の 目的がありますので、第1条を読み込めということを言っています。つまり、保護法益 は何かということですね。その法律の保護法益は何かということ。それから、だれから それを守るのかと、この2つのことを忘れた議論というのはナンセンスなんですね。で はGCPとは何かと。GCPで保護法益は何かというと、これはやっぱり被験者の保護 です、一つは。もう一つが、データの質の確保なんです。その原点でGCPを定めてい るということを理解すれば、何をやっていけないかということはおのずから書いてなく てもわかるということなんですね。そこのところをぜひ御理解いただきたいと思います。  次をお願いします。さて、法律の世界の約束ごと、これは大学では教えてくれないん ですが、実務をやりながら法務部に行きましていろいろなドクターなどにもお逢いする ことがあったものですから、そういう方々に法律の話をするときにどうやって法律を理 解してもらうかというところで苦労したところなんですが。まずお話をすることは、法 律上の当事者関係、つまり被害者・加害者とか、売主・買主という当事者関係ですが、 その当事者関係はすべて権利と義務の関係に置き換えることができますよ。つまり、だ れにどういう権利、どういう義務が生じるかというように置き換えると、それまで見え てこなかった条文の中身が見えてきますよと。  それから2番目の約束ごとは、その権利と義務ということを規定しています条文は、 a+b+c=xと書いてあるということ。つまり、aとかbとかcというのを法律要件と いって、xを法律効果と言います。それで民法709条の損害賠償請求をするときですが、 どう書いてあるかというと、「故意又は過失に因りて」、つまり故意とか過失が「a」 ですね。それで「因りて」というのは因果関係、これは「b」です。それで「他人の権 利を侵害したるものは」というのは、これは「c」ですね。それで「賠償しなさい」と いうのが「x」で、法律効果です。つまり、この様に書いてあるんだと。これが2つ目 の約束ごと。  それから3つ目の約束ごとは、自分に損害賠償請求権があるんだというのが主張責任 と言います。何となれば、こういう証拠があるじゃないかと。それは立証責任と言いま す。これはすべて権利を主張する側にあるんだということです。それで基本的に損害賠 償請求をするというときには、被害者側が相手側の過失を立証しなければ損害賠償をも らえないようになっています。ここのところが先ほどピアソン委員会でも報告があった ように、やっぱり限界があるわけですね。そこで治験に参加していただくんだから、や っぱりそういうことを待たなくても何とか救済しましょうというのがGCP踏襲の考え でありますので、それが医法研のガイドライン、あるいは考え方であるということで御 理解いただければと思います。  次をお願いします。使われる法律としましては製薬企業を相手にするときには、これ は賠償責任ですが、不法行為法というのとPL法を使います。それから医療機関を使う という場合には、不法行為法に加えまして、契約法を使うということ。それから院内製 剤があるときにはPL法も使いますし、新しくできた消費者契約法も使えますというこ と。  次をお願いします。それで因果関係の判定につきまして、治験との因果関係が一番問 題になるんですが、これは補償における治験との因果関係であって治験薬との因果関係 ではないわけですね。そうすると、治験との因果関係というときに、一番難しい問題な んですが、どういう問題があるか。それから何を考えなければいけないかというと、や っぱり因果関係の成立の5要件というのがあります。そこに書きましたように、関連の 一致性とか、時間性とか、あるいは強固性とか、特異性であるとか、整合性というこう いう5つの要件があるんですが、このすべてが揃えば因果関係があると言えるんですけ れど、揃わないからといって「ない」とは言えない。これが一番難しいところですね。 そうすると、総合的に勘案して常識から言ってあるかどうかということを判断するしか ないんじゃないかと思いますね。  それで、そうは言いつつも、どうも今のところ製薬企業としては担当医師にちょっと 因果関係の判定を急ぎすぎる面があるんじゃないかと。そのために場合によっては有用 なものがドロップしているんじゃないかという懸念もあるのではないかと思います。も うちょっと常識で考えてもいいんじゃないかという気がしますね。  次をお願いします。それで因果関係に基づく副作用の同定法なんですが、副作用につ きましてはおおむね5つの分類をしておりまして、要件としてはこれが恐らく一番ポピ ュラーなものではないかと思います。これも私見ですが、医薬品の副作用かどうかとい う判断する場合には、これを使ってもらえばいいということになります。  次をお願いします。それで、何で製薬メーカーは急ぐかということになりますが、あ るいは何でもかんでもやってしまうかというと、どうも副作用の答申GCP2-49のと ころですが、ここに私はちょっといろいろ思っているんですが、因果関係につきまして 「少なくとも合理的な可能性があり」という言葉が入っているんです。ところが、ここ の文言がスッポリ抜けてしまって因果関係を否定できなかったら副作用だという、どう もそういう短絡的に考えてしまう人が多いんじゃないかと思います。これはあくまでも 「合理的な可能性がある」というキーワードがあるということを忘れないで判定してい ただきたいと思っています。  それと後で遡って救済すればいいわけですから、そういう点で副作用の同定法につき ましては、一つはアルゴリズム法というのがあります。これは市販薬みたいにデータが あるときにはこのアルゴリズム法というのもいいんですが、治験のように情報が不足し ている場合はアルゴリズム法をやってしまいますと、ほとんどの場合が否定できなくな ってしまいます。したがって、必ずしも正しい判定にならないということで、私は討議 法がいいと。それで専門家を入れまして討議法で因果関係の判定をする、これがいいん じゃないかと思っています。そのときに大事なことは、どうして因果関係を否定できる のかということ。あるいは、そのエビデンスを残す。議事録を残す。ここが大事ではな いかという気がします。  次をお願いします。それでイギリスの治験事故、これをちょっと簡単にお話をします が、フェーズIで治験事故が、今年の3月13日に治験事故がありました。これは8名の 方に投薬されたんでありますが、実薬を投薬されました6名の方全員が多臓器不全にな りました。ICUに運ばれて、1名の方はどうも手足の切断まで行くんじゃないかとい う、そういう非常に重篤なシリアスな事案が起こったんですが、こういう事案があった ということです。それで何が問題になっているかというと、プロトコルの問題とかいろ いろな問題があるんですが、これにつきましては今究明委員会ができていますので、ま た委員の人も知っている人がいますので、そちらの方から順次情報をもらおうと思って おりますが、こういう事故があったということです。それで、こういうことがないよう にしないといけない。そういう点でも少し、このIRBで本当にできるのかなという気 が、ここでもできなかったものができるのかなという気もちょっとしているところです。  次をお願いします。それでこの用量設定の問題につきましては、これはLD50の1/ 500にしていますが、ちょっと高いかなという気もするんですが、そんな大きな用量設 定問題になるんじゃないかと思うんですが。ただ、新しい分子標的薬物に対しましてこ の基準が当てはまるかどうかという、そういう問題は感じています。  それから、これはプロトコルでは2時間で8名の投薬となっていたんですが、プラセ ボに当たった方の証言を聞きますと、2分間隔でやったと。採血をして2分間隔で打っ ていたということですね。つまり、十数分で終わっているんですね。そうすると、例え ばプロトコル上問題があるんじゃないかという気がちょっとしていますが。それから投 与法も静注が本当によかったのかどうかということですね。この問題は今後の検討に出 ますということになろうかと思います。  次をお願いします。それでウェブサイトでバイオベンチャーの会社の話で出ています が、ここに書いていますようなことを言っているんですが、おいおい情報が入ってきま したら出てくるんじゃないかと。ただ、ここで問題になったのは、今患者側の補償に対 しまして企業側から1万ポンド提示していますが、これに対しては不満があるというこ とを患者側の弁護士が言っていますし、それから保険が必ずしも十分に担保されていな いということで、今後保険を義務化しなければいけないんじゃないかということもイギ リスでは少し議論になっているということを聞いております。これにつきましてはまた 詳しいことは次の機会に。  次をお願いします。それで、何でこういう失敗が起こるかという話なんですが、これ は失敗の原因ということで、1〜10ぐらいの失敗の原因があるんですが、2〜6のとこ ろ、これは個人責任が大きいところなんですが、これに加えて組織的に加わるんですが、 これはやっぱりヒューマンエラーなんですが、ヒューマンエラーをどうやって防ぐかと いうことが治験でも非常に大事になってくると。  次をお願いします。それで医療事故の防止、治験事故の防止も重なるんですが、医療 事故防止ということで、ミスを犯すのが人間だということです。だから、あってはなら ないこととよく言うんですが、それはちょっと間違いでありまして、ミスを犯すという 前提で物事を見ておいた方がいいということですね。それから個人責任から組織的な問 題としてとらえた方がいいんじゃないかと思いますね。そういうことであります。それ からもう一点は、詳細な説明文書による患者さん自身にもやっぱり事故防止に参加して もらうということが非常に大事ではないかという気がします。  次をお願いします。それで法的責任にこういうことがあります。それから社会的責任 がありますということで。  次をお願いします。それで医療システムにつきましてはやっぱり発展途上だと思いま すので、ここに書いたようなことを踏まえまして、次のEDCというところに行きます。  次をお願いします。それでEDCのメリットにつきましては、一番大きなメリットは ヒューマンエラーの防止です。これが一番大きいと思います。そのほかに有害事象の早 期発見であるとか、先ほど御紹介しましたように愛知県がんセンター治験事故なんかも、 もしこれが導入されておれば、あるいはもっと早い段階で防げたんじゃないかという気 がしますね。  それから直接閲覧というのをやっておりますが、これはクエリー処理と言いまして、 要するに逸脱なんかで、これは違うんじゃないですか、ということでモニターが医療機 関に来まして一回一回確認に行くことが多いんですが、これがそのたびにカルテなんか の元資料を見るわけですが、プライバシーの保護上もこういうことをやりますと減りま すので非常にいいんじゃないかと思います。そういう点でEDCの導入メリットがある んですが、ただ、まだまだなかなか難しいところがありまして、インフラ整備であると かCRFの標準化などが進めばもっともっと電算化が進むんじゃないかという気がして います。あとはCDISCなんかもやっています。それからinter operabilityのソフ トなんかの開発が進めば、このあたりはもっともっと進むんじゃないかなという気がし ています。  次をお願いします。それで、これがEDCを使うとこうなりますよということで、こ れは実際にEDCを使って申請をされました事案の紹介。  次をお願いします。それでEDCとは何かというと、つまり紙のものを電子化すると いうことですね。したがって、スピードが早くなるということと、それからクエリー処 理とかやってくれますので、データマネジメント機能とか持っていますので、そういう 点で非常にスピードアップが図れるしヒューマンエラーが防げるということです。  次をお願いします。結果的には期間が短縮でき、コストも削減できる。導入費はかか るけれどできるということでございます。  次をお願いします。これに関しまして、これは最後のところでありますが、治験活性 化に向けまして被験者保護と並べて4つの提案をしています。一つは、契約書を初めと する各書式の標準化の推進です。私が例えばセンターにおりますが、契約書を結びます。 そうすると法務の方が、せっかく補償の条項が書いてあるのに、(ただし、医療側の故 意過失を除く)と入れてくれと来るんですね。これは賠償の話なんです。だから、それ は賠償の話だよということをモニターに言いましても、モニターにはそれはうまく伝わ らないんですね。したがって、そういう場合にはメーカーの法務担当者にも来てもらっ て、これはこうだよということで直すんですが、非常に無駄なことをやっていますので、 そういう点では標準契約書をつくってしまうということが非常に大事ではないかと。こ れによって無駄な病院側とのやり取りが減りますので、いいんじゃないかと。  それから2つ目が、本格的なセントラルIRB制度をつくると。2段階方式です。  それから先ほどから言っていますInformation & communication Technologyという IT化を進めていくということ。  それから4つ目が、治験中核病院をつくるということですね。そこに対しまして、ヒ ト・モノ・カネを集中投下する。つまり、日本人というのはおらが町にも空港をという 話なんです。これではだめだと。つまり、ハブ空港をつくる。治験のハブをつくるとい うことなんですね。したがって国立病院であるとか、大学病院の中から基盤整備された ところに、そういうところから指定をして、そこにヒト・モノ・カネを集中投下すると。 そうしますと、そこに優秀なCRCも集まりますし、それから治験に熱意のある先生方 も集まってくると。そうすると被験者も、例えば肝炎の治験なら国立長崎医療センター をキーステーションにしまして、そこに行けば肝炎の治験を受けられるんだよと。例え ば、あそこならLネットというのが22の施設で肝炎治療では結んでいますから、そこに 行けば、肝炎治験を希望するならそこに行けばいいんだよ、ということを広く布告すれ ば被験者も集まると。被験者にとっても便利だと。メーカーにとってもそこでデータが たくさん集中しますから、集まるということで、恐らく治験の効率化ができるんじゃな いかと。ここが一番大きなポイントではないかという気がしています。  次をお願いします。まとめです。自己決定権の尊重ということですね。それでプライ バシーの保護ということと、それから守秘義務の徹底ということ。それから健康被害の 防止、つまり重篤な副作用防止、これを徹底するということ。それで3点目は、不幸に も健康被害が出たときには速やかに補償責任、あるいは賠償責任を果たすと。これに尽 きるんじゃないかということで、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。 ○ 池田座長  はい、辻先生、ありがとうございました。今の最後のまとめにありますように、治験 における被験者保護という立場から言うと、やはり自己決定権の尊重、患者のプライバ シー保護と守秘義務、さらに健康被害の防止、あるいは賠償責任や補償責任の速やかな 履行というような、そういう被験者保護の4原則というようなことを中心にお話をいた だいたわけですが、残った時間で委員の先生方から御議論をいただきたいと。あるいは この問題は非常に重要なもので、今後この検討会で基本になる事柄ですから、先生方と 共通の認識を持とうということでございますので、特にこの点はどうなのかというよう なことで御議論がございましたらぜひお願いしたいというように思いますけれど、いか がでしょうか。どうぞ。   ○ 加藤委員  辻先生、ありがとうございました。最後の私見という、スライドでは44番目のところ に提案をいただいた本格的なセントラルIRBの導入の2段階の提案、私はこれは賛成 でございます。それで、きちんとしっかりとしたIRBの制度というものと、各施設で 行うIRB、本来の、そういう両方の2段階でやるということについて御提案いただい たり、あるいは治験中核病院の指定、どこでも、だれでも治験がやれるというのは危な 過ぎるという感覚を持っているので、一定の治験中核病院の指定のようなことを進めて いくべきだというように考えるんですが、このことについてはどういう問題点があるの か。実施に当たって、こういうことはいいと考えれば速やかに実施に移していけばいい と思いますが、厚労省などと折衝されたりいろいろとしてこられたかと思いますが、ど ういう点が壁になると言えばなるんでしょうか。   ○ 辻参考委員  セントラルIRBにつきましては、恐らくフランスがこういうのに近いことをしてい るんですね。それでフランスの場合もやっぱり国の補助がないと、やっぱりIRBとい うのはお金がかかるわけなんですよ。したがって、国家の助成がないとセントラルはで きないということですね。やっぱり一定のレベルの先生方をお願いしようと言いますと、 今、医療機関が払っていますのはIRBの先生方には恐らく1時間当たり2万円ぐらい しか払われていないんですよね。それでは本当に確保できるのかという話なんです。膨 大な資料を見なければいけない。しかも時間を取られてしまうわけですね。そうすると、 やっぱりある程度手当してあげないとなかなか確保できないんじゃないかという問題 が。ボランティアだけではできないんじゃないかという問題がありますので。恐らくあ れは研修も要りますので。そうすると、やっぱり国家の助成がないとセントラルは難し いのかなと。そうしないと、学会なんかでつくろうという話をするんですが、やっぱり 財政基盤でできなくなってしまうんですよ。  私は施設設置型のIRBというのは当然要ると思うんです。それはあくまでも二次的 なものをみればいいということで、やっぱり基本的なところは独立型がいいと思ってい ます。やっぱりヨーロッパ型がいいと思っているんですよ。そうすると、独立型をつく るなら財政的基盤がないと運営できないので、その問題が一番ネックになるんじゃない かと思います。  それから後者の治験中核病院の指定の話のところは、実はちょっと言葉足らずだった んですけれど、治験中核病院をつくりまして、そこを核として地域治験ネットワークを 結んでいくという発想なんですよ。ですから、例えば長崎医療センターなら長崎医療セ ンターをやって、そこの傘下に地域治験ネットワークをつくっていくというそういう発 想なんですね。したがって、必ずしもクリニックによる治験を否定しているわけじゃな くて、例えば生活習慣病であるとか、あるいは透析患者なんかの治験だとやっぱりそう いうところじゃないとやれませんので、あるいは市販後調査とか、あるいは生活習慣病 とか、そういうものにつきましてはやっぱりクリニックの協力がないとできませんので、 だから中核病院をつくってそこで研修とかはそこでやりますよと。それで、そこでまた ネットワークをつくっていきます。何かあったら相談すると。そういう形のハブをつく るという趣旨です。   ○ 池田座長  この点について何か先生方から御意見はございますか。今、IRBの制度、これにつ いてはこれまで随分議論をさせていただいたんですけれど、今一つ大事だったのは、治 験の中核病院の指定というか、治験を非常にスムーズに、そしてなおかつ安全にやって いけるような仕組みづくりというようなお話を言っていたんですが、この点についてい かがでしょうか。   ○ 吉村委員  吉村ですが、中核病院などをつくった場合に、そこで治験をやるとすると被験者の方 が非常に偏ってくる可能性はないんでしょうか。   ○ 辻参考委員  やっぱり治験に参加する方は日本の国民だと、大体治験に参加する方というのは一般 の薬だと18%ぐらいなんですね。それで、必ずいらっしゃるんです。ただ、リウマチの 薬とか抗がん剤みたいにいい薬がないという場合には、これは8割と高くなるんですね。 そういう人はどこに行けばいいかということなんですね。それで、多少遠くても行くと いうそういう患者もおりますし。それから、そこで言いましたように、国立病院、今は 160ぐらい多分あると思いますが、そのうちの半分ぐらい。それから大学病院、これは 今は80ぐらいあるんでしょうか。そこをまず押えてしまえば、アクセス圏の問題という のはそんなに問題はないんじゃないかと。そこを核として地域治験ネットワークをつく っていけばいいわけですから、そんなに問題はないんじゃないかという気はしています。  それから、何で中核病院をつくるかというと、中核病院をつくりますと、私は「治験 の甲子園」と言っているんです。つまり、甲子園を目指す競合校に好い選手が集まるん ですよ。だから、やりたいという先生方、あるいは優秀なCRCをそこに集めてしまう ということで、もっともっと治験に参加する方も安心して参加していただける。あるい は、治験に参加しようという意欲がわくんじゃないかという気がしていますので、今先 生がおっしゃっているような懸念はそれほどしていません。   ○ 池田座長  ありがとうございます。よろしいですか。どうぞ、望月委員。   ○ 望月委員  セントラルIRBの方の2段審査の方でちょっとお聞きしたいんですが、私も非常に 専門的な新しいタイプの試験薬についての治験について審査する場合に、そういう領域 の専門家がいる治験審査委員会というので審査するということについては非常に大事な ことだと思っています。それで、もう一つの2段目のところの院内で、治験を実施する 施設の中でのさまざまなインフラも含めた部分の審査のところで、ちょっとどういう方 策があるのかというのをお聞きしたいんですが。  被験者の保護という中で非常に重要なものの中に、治験実施者の資質の審査というの があるような気がしたんですね。それで、いろいろな被害の中で、実施者の資質がもう 少し担保されていれば被害を早い時点で食い止められたのではないかという先ほどのお 話もありましたので、治験の実施者の資質の審査をその治験を実施する施設の中で治験 審査委員会で行っていくというときに、やっぱり何となく不安な部分もありまして、そ の審査がきちんと行えるというためにはどういうことを確保しておくということが必要 なのか、何か御提案があったら教えていただきたいと思います。   ○ 辻参考委員  そのことにつきましては確かにおっしゃるような懸念がありますので、だからこそ外 部委員を入れるということなんですね。それで私が言っているのは、あそこで「devil ’advocate」と言いましたが、つまり権威ある代弁者なんですよ。つまり、専門家であ る医者とか薬剤師に対して堂々とわたり合って意見を言えるような見識のある方です。 そういう人を選んでいくしかないと思います。  それともう一点は、やっぱり登録制とか透明性、そのことによってやっぱり外部に出 るということになりますとこれは責任が出てきますので、ちゃんと見ていますよという ことになりますので、そういう点で外部の意見としてはいいんじゃないかと思います。   ○ 池田座長  望月先生のおっしゃられたのは、実施する人の資質というものをどのように評価する かという、そういう点ですね。例えばIRBで治験のプロトコルに関して十分に議論し て、重篤な副作用が仮に起こったときにも、それを最小限に止めるようなリスク管理も されているようなプロトコルでやろうという場合、それはそれでいいであろうと。それ は審査できるけれど、しかし実際にそれを実施する医師がいるわけですね。その人たち の問題ということを望月委員は指摘されたんですね。そのように私は伺ったのですが、 その辺はいかがでしょうか。実際に治験を実施していく現場での大きな問題の一つにな るかと思いますが。   ○ 辻参考委員  一つはやっぱり院長の責任でやるしかないと思っています。それからもう一つは、看 護師を入れるということなんですよ。なるべく、それも婦長ではなく、そうじゃない人 を入れる。つまり、看護者が一番見ているんですよ、正直に。だから看護師の視点とい うのは大事ではないかという気がしている。そういう院長の責任でやるんだと、あくま でもそれを、今おっしゃっていることは。そうすると、うちの場合は看護師を入れよう かなとか、そういう工夫だと思いますね。それしかないと思います。外部ではできない と思います。   ○ 池田座長  よろしいですか、望月委員。   ○ 望月委員  まだ十分に理解し切れていないところがないわけではないんですが、多分今回のこの ケースではそういう御意見だということで、また別の機会に。   ○ 吉村委員  吉村です。別の問題で御意見をお聞きしたいんですが。  そういう2段階審査だと非常に手間がかかってきますね。一般には。なぜかと言うと、 今言われたように非常に有能な人を治験審査委員会に入れようとすると、そういう人た ちは非常に多くの仕事を抱えていることが普通であって、したがってそういう人を委員 として集めることだけでさえかなり大変であると。しかも、ではほかの人はと言われる と、ほかの人でやっぱり有能さを非常に求めているとなると、そのネックが物すごく大 きいと。それで、もしあり得るとしたなら、それに対する対策として挙げるとすれば、 僕はそういう人の責任範囲というか、仕事のようなものを非常に限定的なものにして、 そのかわりに比較的短時間でなるべくできるような形のものにして、しかもそういうと ころを担当している先生方がわかるようにしなければいけないんじゃないかと。そのた めには一つはガイダンスというか、ガイドラインというか、そういうことをかなりはっ きりすることと、それからそれを教育するシステムみたいなものをつくらない限りは、 多分屋上屋になってもう収拾がつかなくなるんじゃないかという印象を私は持っている んですが、それについての御意見をお聞きしたいんです。   ○ 辻参考委員  これにつきましては、実は二重審査ということでオーストリアは失敗しているんです ね。これはなぜ失敗したかというと、責務をはっきりしないからなんですよ。それで何 をやる、どこまでやるということをはっきりすれば、それは二重審査がないわけですか ら、これはもっと早くなると思います。逆に私の提案をやれば、日本のIRBの審査は 恐らく数カ月早くなる、もっと早くなる、1カ月ぐらいから1カ月半ぐらい早くなるん じゃないかと思っています。  それから教育システムも確かにおっしゃるとおりなんですね。   ○ 池田座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。   ○ 生駒委員  先ほどの治験中核病院のことなんですが、この治験中核病院に限らず治験専門病院と いうようなことも含めて現在いろいろな関係部署等々で議論されつつあるというところ かと思っておりますが、実際に現在の治験と言いますのは患者さんがいわゆる治療を目 的にそこの病院にかかって、非常に適した対象患者ということで治験に入ってくる。当 然同意があるわけですが。その治験が終わった後にまたその病院でやるフォローの診療 というのは受けられるわけですね。ですから、この治験の中核、あるいは専門病院とい うときに、治験だけでそこに入って、ではその後のフォローはどうするんだろうかとか、 その辺がきちんとしたシステムがなされた上でこういうものができるべきではないかと 思っております。   ○ 辻参考委員  フォローにつきましても、先ほどちょっと補足したように、地域治験ネットワークを つくっていくという話をしたのは、そういうフォローの仕方があるんじゃないかと。も ちろんそこがずっと行ってもいいよということがあれば、それでもいいと思いますね。 何でこんなことを言っているかというと、前回の森委員のお話だったと思いますが、や っぱり韓国とか中国というのは規模が違うんですよ、ベッド数が。しかも中国ならこれ は皆保険ではありませんので、治験が唯一の治療機会だという人がいっぱいいるわけで すね。そうすると、そういうところと互角に対応できなくなってしまう。だから、やっ ぱりそういう中核病院をつくっていかないと立ちおくれるんじゃないかという懸念をし ているわけです。だから治験の外来は今はあります。外来に加えて、やっぱり治験病棟 ぐらいまで整備していくというぐらいの気持ちでやらないと、なかなか諸外国に負ける んじゃないかという懸念を持っているということです。   ○ 池田座長  よろしいですか。今少し患者さんの立場からすると、治験に入った後でその患者さん はどのような治療を継続して受けるのかなということに対して、まだ問題はあるような 気がするんですが。そういう立場からすると中核病院、あるいは中核病院を中心に形成 されたネットワークの中で、その医療施設でとにかく治験をどんどんやりなさいと。そ こに通っている患者さんたちが中心になって治験が展開されるんだという、そういう考 えに先生はお立ちでしょうか。そういう理解でよろしいですか。そのほかいかがですか。   ○ 木村委員  別の話題でもよろしいですか。いろいろこれは議論が尽きないところだと思いますが、 補償についてちょっとお伺いしたいんですが。  スライド22で、これは「治験との因果関係がなければ補償責任・賠償責任は生じない」 と明確に書かれているんですが、この治験との因果関係で治験薬ではないということも おっしゃっていただいたので非常にわかりやすいんですが、この因果関係というところ、 これはいつも議論されるところだと思いますが、例えばこれはスライド25で「補償金の 支払いはより詳細な情報を集め、社内判定委員会の責務で決定する」と。この判定委員 会には外部委員も入れるということもおっしゃったと思いますが、それがどのように行 われているかという実情、そこら辺をお聞きしたいということと。  それから、スライド27では「法律の世界の約束ごと」ということで、「主張・立証責 任はすべて権利を主張する側にある」と。ですから被験者が補償を要求したときには、 その因果関係を被験者が立証しなければいけないというような、そういうニュアンスに 取られかねないような流れになっていると思います。そうしますと、これは逆に被験者 の保護という立場からはかなり離れていくんじゃないかと思いますが、そこら辺のとこ ろの考え方をもう少し御説明いただきたいと思います。   ○ 辻参考委員  後者のところはちょっと誤解だと思いますが、後者から行きますと、今の現行の法律 に基づいて損害賠償を請求するときには、主張責任・立証責任は権利を主張する側にあ りますよという建前、これは世界皆共通なんですよ。それでは限界がありますねという ことで、ピアソン委員会で、イギリスの場合は事件などがあったものですから、何とか 立証責任を転換するとか、無過失責任を導入しましょうという報告があったわけですよ。 だけど立法化というのはやっぱりなかなかなじまないんじゃないかということから、治 験の場合は自主基準でやろうということでABPIができたわけです。ですから、今お っしゃっていることと全く反対の話でありまして、なかなか立証責任は厳しいわけです よ。だから何とか参加していただくんだから、みずからやりましょう、補償しましょう ということが医法研のガイドラインの立場だということなんですね。だから、それは反 対であります。  それから判定委員会のところは、実は最初は医法研でガイドラインをつくったときに は製薬協方式で副作用の概要があって、それから詳細調査がまずあるんですね。概要が あって、それから詳細調査というのがあったんですね。これは2段階だったんですね。 ところが実際に有害事象が出まして、いろいろな相談を、結局医法研のガイドラインを つくったものですから、よそのメーカーさんの補償のシリアスのときには相談に乗るこ とがあったわけですよ。あるいは医療機関から相談に乗ることがあったわけですね。そ うすると、その事案をみていきますと、ちょっとやっぱり2段階ではとてもじゃないけ れど情報が足りないなと。つまり、適正な判断をするためにはまず情報が必要なんです よ。その情報がまずあって、それに知識と経験とセンスが要るんですよ。それで、その 知識はどうしても不足するところは専門家を呼ぶと。だから外部委員で、例えば皮膚科 の領域なら皮膚科のその領域に詳しい先生を呼んでくる。あるいは薬剤に詳しい先生を 呼んでくる。専門の外部委員を呼ぶというのはそういう意味なんですね。  それから経験というのは、過去の事例とか、あるいは類似薬の副作用の事例とか、そ ういう経験をみるということなんですね。ですから第一段階の情報が不足するというこ とがありますので、それでいろいろ開発の人とかと相談して、やっぱりこういう類型が 要るねということで類型をつくったんですね。それで必要な情報というのがあります。 それで開発の人とも相談しまして、それで6類型をつくったんです。その6類型をつく ったら医療機関側からも、それは一般に公開してよ、皆共通じゃないかということで、 それで2000年にこの本を出したんです。説明会をやった後に本を出したんですが、その ときにこれは公開してもいいやということで、CD-ROMとしてこの本に入れたわけで すよ。治験にかかる補償・賠償のQ&A。これは全国でやった説明会のときもQ&Aを 受けたんですが、その最後のところに今おっしゃっている情報につきましては入れたん です。それでその社内の判定委員会はどうしているかというと、そういう外部の専門家、 医学・薬学の専門家、その疾患に特有の専門家を呼んでくるんです。それからもちろん 外部の弁護士も入れます。入れて、それで履行確保する必要があるので、補償金案件な んかの場合には損害保険会社の人もオブザーバーで入れてある。そこで議論して、それ でこれはこういう理由でないねとか、そういうことで。これはやっぱり偶発事象ではな いかということで、これは補償にはならいませんと。やっぱりエビデンスをちゃんと書 いて、それを病院の側にIRBの方に届けると。こういう手続をやっています。   ○ 岩砂委員  先ほどの問題ですが、ハブ病院をつくられるということで、それは非常にいいんです が、今の病院の経営状態ではとてもとても一人のドクター、2人、3人のドクターがこ ういうものだけを診れるということはとても不可能でございます。例えば月・火・水・ 木・金・土とある場合でございますが、毎日毎日患者さんは何かあったときにはその病 院を訪れなければいけない。調子が狂ったときに。そのときにその先生がいらっしゃら ないということはいくらでも起きるわけでございますので、やはり「かかりつけ医」と いう言葉はともかくとしましても、そういうことに非常に専門性に長けた委員の先生方 と連携をされます。そうすると月・火・水・木・金・土といつもその先生はいるわけで すから。例えば私も皮膚粘膜がん症候群、これを私も診ております。パッと診ただけで、 これはおかしいとピンと来ました。そしてまた軽いものをもう一人診ております。  そういうことで私も小さな病院をやっていますが、やはり毎日毎日診ているのと、き ょう診てもらおうと思ってもその先生はそこにいらっしゃらないということが起きます ので、ハブ病院をつくる、そしてそこで症例を集めてそこでディスカッションをする、 これは非常にいいことですが、やはりハブ病院プラス関連医療施設、何でも結構ですか ら、それを持たないととても今の経済状態ではやっていけないというのが私は現場であ ると思います。以上です。   ○ 池田座長  先生は特に生活習慣病の薬の治験なんかのことでちょっと触れられたんですが、その 場合に先生もおっしゃられたように、治験ネットワークの中には当然個人で医院を開業 されている方たちもそのネットワークには入ると、そういうことですね。そういう理解 でよろしいですね。   ○ 辻参考委員  はい、そうです。   ○ 藤原委員  辻先生に2つほど質問があります。まず、今は補償の話になったのでその補償に関連 して2つなんですが。今の世界的に治験が一番進んでいる、実際に世の中の新薬の供給 元はほとんど米国のはずなんですね。それで米国では先ほどの話にもあったように、補 償制度というのは未だに導入されていないと思うんです。Institute of Medicineが2002 年ぐらいにレポートで、早くそういうのを入れなさいと言っているにもかかわらず、未 だに正式に入っていないということですね。だから世界の新薬を本当につくっているア メリカでは相変わらず補償制度を導入しない要因というのが何かあるなら御教授願いと いうのが一つ目の質問。  今、私どもは医師主導治験というのをやっており、幸いなことに今回は日本医師会治 験促進センターの研究費をいただいて実施しているのですが、薬の副作用被害救済制度 の中から抗がん剤は排除されていますように、がん診療は補償とは余り関係がありませ ん。ほかの循環器とか小児の方々は日医の治験保険で補償金が担保されています。将来 的に日医の傘下でやらない医師主導治験も増えてくるとは思いますが、そういう場合に は相変わらず補償というのは医師向けの治験保険がない現状ではどうやりようもないん ですね。そこに関して何か改善策とか、医師主導治験で日医の治験促進センターから研 究費をいただかないような場合に、どうやって将来的にその補償の部分、特に補償金の 部分もそうでしょうし、医療手当というのも今は医療機関側の自己裁量に任されている んですが、それをうまく改善していく仕組みというようなものが先生に提言がございま したらお聞きしたいのですが。   ○ 辻参考委員  アメリカの事情ですが、アメリカは一番大きいのは、唯一のこれが治療を受ける機会 だという側面が大きいんじゃないかという気がしますね。ただ、アメリカは皆保険じゃ ないというところが一番大きいんじゃないかという気がするんですね。ただ、抗がん剤 とかリウマチとかそういういい薬がないという場合には、逆にリッチな方がどんどん来 ます。ですからそこのところが一番大きいんじゃないかな。補償のところは訴訟大国な ので、やっぱり嫌がるんじゃないか、抵抗があるんじゃないかなという気がしています ね。だからワクチンであったように、供給がなくなると慌ててつくるんでしょうけれど、 まだそこまで行っていませんので、やっぱりあるんじゃないかと。  それから医師主導治験のところの補償をどうするかというところは、これは賠償責任 につきましては今の医賠責保険でカバーできるんですが、補償というのはそもそも補償 責任というのは、これは損害保険会社にとってちょっとおいしくないんですね。なぜか と言うと、これは保険というのはあくまでも民間保険ですから、保険というのはあくま でも同じリスクをどれぐらい集まるかという話。それがどれぐらいの比率で起こるかと いう発想ですから、そこから逆算して保険料を決めるわけですから、これをもし保険で やろうとすると保険料が相当高くなってしまうんじゃないかと。では製薬メーカーの保 険をなぜ受けているかというと、これは将来の生産物賠償責任保険につながるわけです ね。だからそこの前提として受けているわけでありまして、必ずしも保険はもうかるか ら受けているわけではなくて、将来のPL保険のつなぎで受けているわけです。ですか ら、もしこれがおいしい保険ならガイドラインはつくらなかった。アメリカの保険会社 ではなんぼでもするんですよ。ところが未だに保険があるというのは、補償責任の保険 をやっているのは日本の損保の一部と、それからドイツのゲーリングとか、もうごく一 部の保険会社しかやっていないというのはそういう事情がある。だから、補償責任まで カバーする保険ができるかというと、非常にこれは難しいなと思います。鈴木課長あた りで何か御提言がございましたら、どうぞ。   ○ 鈴木研究開発振興課長  今、藤原委員の方から御指摘いただきましたように、医師主導の治験については治験 促進センターの方で保険会社と相談してつくっていただいております。それ以外の医師 主導の治験について、仕組み的に公式に配慮しているわけではないと思いますが、具体 的にどうカバーできるのか、それは会社の方の事情もありますので、ちょっと相談をさ せていただきたいと思います。   ○ 池田座長  ありがとうございます。そのほか何か、委員の先生方から。どうぞ。   ○ 今井委員  今井です。ちょっと違う話をしてもよろしいですか。この患者さんの自己決定権が尊 重されることが一番大切というお話だったんですが、私も治験を受けまして自己決定権 が尊重されるためには、具体的に言うとまずどういう説明文書で説明されるか。それか ら先ほど先生がおっしゃっていましたが、担当医師がどういう言い方をするかという、 そのバイアスの問題というのはすごく大きいと思うんです。もう一つが、止めたいとき に止められるというのが、いかに言いやすいかというのがあると思いますが。  説明文書の規定、ちょっと先生にお尋ねするのがいいのか、どなたがいいのかわから ないんですが、説明文書にこういうことを書きなさいという規定のところに、「他の治 療法に関する事項」というのがありまして、確かにこういう治療法がほかにありますと いう説明はされるんですが、お薬の場合に既存のお薬と新しい治験薬とがどのぐらい、 比較データみたいなものがないと、その治験薬については確かにすごく説明されたんで すが、患者としては選びようがないというところがあったんです。これについて以前に 藤原先生から何か御指摘なさっていたような気がするんですが、お願いすると「比較デ ータは出せません」と言われてしまいまして、これはどうしてだめなのかということが 一つ。  それから、止めたいときに止めたいという部分では、私の場合はSMOから派遣され てきたコーディネーターさんがついていたので、お話をするたびに「いいですか」とい うような、いつでもいいんですよ、というようなことを言ってくださって非常に心強か ったんですが。コーディネーターさんが入っていないような治験の場合に、患者さんは、 特に長らくおつき合いのある先生に勧められた場合にすごく断りにくいと思うんです が、それをサポートするような仕組みはあるんでしょうか。その2つについて。   ○ 池田座長  いずれも患者さんの立場からすると非常に重要な問題だと思いますので、自己決定権 と言ってもやはり先生がおっしゃられたように非常に困難ですよ、決定するということ は。病気についてはある程度理解があったとしても、医療の知識というのは必ずしも十 分でない患者さんが多いわけですから、そこで先生も医療側の情報提供の質と量という ようなことをちょっと触れられましたが、その点についての重要な質問だと思いますの で、もし先生お答えになられたらお願いしたいと思います。   ○ 辻参考委員  これはおっしゃったように、CRCには言いやすい、お医者さんには言いにくいけれ どCRCには言いやすい、あるいは看護婦さんに言いやすいということがありますので、 そういう方がなるべく関与していただくということが非常に大事ではないかという気が します。むしろ今の話はドクターの先生の方から回答をいただいた方がいいと思います ので、藤原先生とかお医者さんの方からお願いしたいと思います。   ○ 池田座長  藤原先生どうですか。医師側の問題が多いと思いますが。   ○ 藤原委員  主治医の問題に尽きると思いますので、その医者がちゃんとその人のことを考えてや っているかどうかなので、そういうシステムという問題より資質の問題の方がちょっと 多いような気がするんですが。  それで同意説明文書の中にはがんセンターにおきましてもちゃんとフォームがあっ て、特に僕らが見るときには現在受けている標準的治療とするところの中身をいかにき ちんと書くかですね。できればネガティブなデータをたくさん入れるとか、標準的治療 のデータはこうだから、読んだらそっちに入りたいという感じにする方が本当は。だか ら治験薬じゃない方に入りたいというぐらいの書きぶりにしっかりと書いた方が本当は いいぐらいで。そこは治験審査委員会の先生方がそういう見方をきちんと治験審査委員 会の審査の段階でされるというのが重要なところだと思います。  それから断りにくいところは、私もたくさん患者さんに治験を依頼するときに、多分 断れないだろうなと思うので、やっぱり辻先生がおっしゃったようにコメディカルの人、 看護師さんとか、一番いいのは看護師さんだと思いますが、そういう人を通じて自分の 意見を後から医師に伝えてもらうのが良いのではないでしょうか。医者の行動をうまく 制御している看護師さん、長く勤めている人が良いと思いますが、そういう方を利用さ れるシステムというのは大事だと思いますが。   ○ 池田座長  では木村先生から御意見を伺いましょう。   ○ 木村委員  木村ですが、やっぱり私も患者さんに頼む立場なんですが、同じようなことがあると 思いますね。それでやはり医者が言いますと、患者さんはその場では納得してくれるよ うなそぶりをするんですが、やっぱりそれではちょっと不安ですので、CRCの方に後 でゆっくり話をしてもらうと。そうすると大体そこで本音が出て、断ることも結構あり ますね。そういうところは重要だと思います。それで医者だけが言って、そこでもうイ ンフォームドコンセントだというわけにはいかないだろうと思いますね。  それからあとは治験薬の説明文書に、治験薬の説明と標準治療薬の説明がありますが、 それは本当に書き方によっていくらでも誘導できるという怖さがありますので、そこら 辺はかなり注意してやらなければいけない。これは本当にまさに医療側の問題だろうと 思います。それでIRBではそういうところをかなり私たちも注意してチェックするよ うにして、治験と標準治療との比較がなるべくできるようにしたいわけですが、実際に 比較表をつくってというのはなかなか難しい面があるんです。データの質の問題もいろ いろありますので。ですから、そこは話を直接しながら説明するようにしていきたいと 思っています。    ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。本当に自己決定権と一言で言いますが、これは非常 に難しいissueだというように思いますし、そしてまた一番重要な被験者保護の立場か ら言うと非常に重要な問題だというように思いまして、やはりどれだけ説明文書の中に そういうものを本当に盛り込むかということは、それぞれの医療施設のIRBの審査も 含めて考えていかなければいけない問題なんじゃないかと思います。  本日は先生方に辻先生のプレゼンテーションをお聞きして、被験者保護というものに ついて考えていただいて認識を共通のものとして持とうということでこの会を持たせて いただいたわけですが、先生方には共通の認識をお持ちいただけたらというように思い ます。  一応、時間ですのでこれできょうの議論を打ち切りたいと思いますが、きょうはこの 問題に限って議論をしようということで、議題はこれのみでございますので、これ以上 の議題はございません。事務局から連絡がございましたらお願いしたいと思います。   ○ 事務局  はい、どうも辻先生にはありがとうございました。事務局からの連絡でございますが、 次回以降の議題につきましては冒頭で申し上げましたように、現在この検討会からの宿 題として取り組んでいる事項などがございますので、それの対応状況なども踏まえまし て座長と相談して決めさせていただきたいと思います。日程につきましても日程調整を 行った上で後日連絡をさせていただければと思います。   ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。それでは先生方にはお忙しいところお集まりいただ きましてありがとうございます。本日の検討会はこれで閉会としたいと思います。辻先 生、どうもありがとうございました。 (終了) 照会先: 厚生労働省医薬食品局審査管理課 TEL 03-5253-1111(内線2745) 担当者 森岡、山脇