06/05/16 労働政策審議会労働条件分科会 第56回議事録            第56回労働政策審議会労働条件分科会 日時 平成18年5月16日(火) 17:00〜 場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長 ただいまから、第56回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたし ます。本日は久野委員、平山委員が欠席されております。紀陸委員から、遅れて参加さ れるとの連絡をいただいております。また、渡邊佳英委員の代理として森さんが出席さ れております。  では、本日の議題に入ります。前回、前々回の分科会では、事務局に「労働契約法制 及び労働時間法制に係る検討の視点」を用意してもらい、検討の視点を素材として議論 をしていただいたところであります。前回の議論では、この検討の視点のうち、就業規 則を中心に御議論をいただいたわけであります。本日は2月23日の分科会で有期労働契 約等について議論をした際に、委員から資料の追加等の指摘があり、その指摘された事 項について事務局で資料の準備ができたということですので、まず、その点について説 明をお願いいたします。 ○大西監督課長 お手元の資料No.1の参考資料を説明いたします。有期労働関係で、第 51回の分科会で、御指摘を受けた事項で整理ができたものです。  1頁は、年齢階層別に見た場合です。年齢階層別に見ますと、25〜34歳のところで 76.6%が正規の職員・従業員となっており、最も割合が高くなっています。その上の15 〜24歳のところは、パート・アルバイトの割合が36.8%で高くなっております。これは 在学中のアルバイトも調査対象となっておりますので、このような高い数字が出ている のではないかと思われます。また、55〜64歳と65歳以上において、パート・アルバイ トや契約社員・嘱託が増えております。これは定年を迎えた方がこちらのほうに移行し ているためではないかと考えております。  2頁と3頁は男女別に見たものです。男性の場合は年齢によって正規の職員・従業員、 パート・アルバイトであるかが顕著に分かれております。女性の方の場合は、比較的波 がゆるやかになっています。  4頁は諸外国の状況で、これも御指摘を受けたものです。フランスとイギリスとドイ ツですが、フランスとイギリスについては、有期契約労働者は1990年代の後半に少し増 加しておりますが、その後、減少にやや転じているのではないか。ドイツは、ちょっと 増えたり減ったりしているという状況です。フランスについては、2000年を頭に有期契 約労働者数はちょっと減っていますが、この理由を調べてみましたが、はっきりしたも のは分かりませんでした。  5頁は働き方に不満や不安を感じていることがあるというものの中身です。これは前 回お出しした資料を再集計して用意したものです。5頁の上、有期契約労働者のうち、 現在の働き方に対する不満や不安の有無について男女別に分けたもので、「不満等あり」 が男性35.5%、女性は59.4%となっております。下のグラフは「正社員になれない」こ とを不満に掲げる労働者の割合ですが、男性23.6%、女性30.9%ということになってお ります。  資料の7頁と8頁は就業形態の変更についての割合です。有期契約労働者のうち正社 員に変わりたいという者はどのぐらいいるのかということで、この7頁でそれぞれ、い わゆる有期労働者の形態別に分類しているものです。契約社員の割合ですが、黒い棒と 斜線の棒になっているのですが、黒い棒の全体の高さの32.1%が「他の就業形態に変わ りたい」と言った人で、斜線になっているのが「正社員に変わりたい」という人の割合 です。契約社員の方の場合は、32.1%に92.0%を掛け算しなければいけないのですが、 契約社員の約29%の人が正社員に変わりたいと言っているということです。派遣労働者 の場合には、もうちょっと低く27%ぐらいです。臨時的雇用者の場合は、34.0%のうち 44.1%ですから15%ぐらい。パートタイムは、同じように計算して17.4%ぐらいになっ ております。左側のグラフの目盛りが全体の100%に対する割合となっております。  8頁では別の調査で類似のものがありましたが、それでも多少差があり、大体ですが 契約社員ですと26%ぐらい、パートタイマー(短時間)の方の場合は12%ぐらいが正社 員に変わりたいということで、雇用形態によって多少、正社員に変わりたい方について もばらつきが見られる、という結果となっています。 ○西村分科会長 前々回と前回と今回の3回で、一応労働契約法制の部分についての議 論を行うということでやりましたが、なるべく議論が進みますように、御協力をお願い いたします。では、前回の続きから御議論をしていただきたいと思います。 ○長谷川委員 議事の進行には協力をしたいと思っております。次のところに進むよう にしたいと思いますが、もしかしたら似たような意見を何回も言っているかもしれませ んが、今日次のところに進むに当たって、労働契約の原則と就業規則の扱いについてだ け、労側の見解をまとめた形で御報告をさせていただきたいと思います。  まず一つは、労働契約の原則と合意について、この間2回ほど議論してきましたが、 契約というのは両当事者の合意によって双方の権利義務関係に変動をもたらすものであ る。契約の成立や成立後の契約内容変更には、両当事者の合意が必要であるという原則 は、労働契約もしくは雇用契約においても変わらないと考えております。  しかし、労働者と使用者は力関係が対等ではないこと、そのため労使間の対等の合意 を可能にするツールを作ることが労働契約法の課題であると考えております。また、労 働者と使用者の力関係が対等でないからといって合意を正面から取り扱おうとしないの は、労働契約を規律する民事的法律の在り方としてふさわしくないと考えております。  次に、労働契約法における就業規則の扱いについてです。労側委員は、就業規則を利 用した労働契約や労働条件の決定・変更は、労働契約法で扱わない、労働契約の基本は、 あくまで労使の協議と合意だと主張してまいりました。これは就業規則をなくせという 意味ではありません。就業規則は現在でも、基本的には労働者の保護に資する制度であ り、今後も有用だとは考えております。しかし、就業規則の本来の役割は、監督行政の 補助手段や事業場の最低労働基準の設定であります。しかも、使用者が一方的に作成変 更することができるものであります。実務上、使用者が就業規則で、労働契約の内容や 労働条件を一方的に決定変更することが広く行われてきたために、裁判所は労働者と使 用者の合意が労働契約の基本であるにもかかわらず、なぜ使用者が労働者の合意なく就 業規則で一方的に労働契約内容を定めたり、労働条件を変更できるのかという理由を苦 心して考えてきたわけであります。就業規則法理と合意を基礎にする契約の基本原則は 相容れないと考えております。  労働者と使用者の力関係は対等でないので、伝統的な契約概念に委ねていれば適正な 労働契約内容を確保するのは難しくなります。しかし、だからと言って就業規則を契約 の内容にすれば、契約内容の適正性が確保できるとするのは安直すぎるし、また合意を 必要としない就業規則法理は、契約法理に馴染まないと考えます。だから労側委員は、 労働契約法に就業規則を入れることに反対しているということであります。この間、意 見が行ったり来たりとかいろいろありましたので、ひとまず、これまでの議論で労側が 言ってきたことを今日、冒頭にもう一度考え方を述べて、次の議論に入っていただけれ ばと思います。 ○原川委員 労使委員会のところですが、よろしいでしょうか。 ○西村分科会長 はい。 ○原川委員 前回言いそびれましたので、一言意見を言わせていただきます。「労使委員 会」のところで、2つ目の○に関してですが、「過半数組合がない事業場においては、労 使委員会の決議又は調査審議に一定の法的効果を与えることが考えられないか」という ことについてですが、中小企業の場合には、御承知のとおり、私どもの調査などでも労 組の組織率は1割かそれに満たない程度となっており、ほとんどの企業において労働組 合はないという状態です。  その場合に労使委員会の決議だけということになりますと、現在、特に中小企業では 裁量労働制の企画業務型の導入といったことも、労使委員会というハードルの高い制度 があるということが、どうにも進まない原因となっているということを考えますと、就 業規則の変更についての合理性の推定という法的効力を中小企業にも与えていただきた いというようなことからすると、やはり中小企業の実状を考慮し、仕組みを作っていた だきたい。  そこで過半数組合との合意だけではなく、過半数労働者代表、こういった制度もある わけですから、こういう制度も活用して、就業規則変更の合理性の推定という法的効力 を与えるように考えていただきたい。現実的な仕組みで対応できるようにお願いしたい ということです。  労働組合や労使委員会を基本的に容易につくれる大企業であれば、この就業規則の安 定性が法律的に担保される。一方で労働組合の少ない中小企業では就業規則の安定性が 法律によって担保されない。ただ労働組合をつくるかどうかというのは、別に中小企業 の責任ではなく、あくまでも自由に組織できることになっているわけですから、そうい ったことを考えますと、法の下の平等について問題があるのではないか。あまりにも不 公平ではないかと考える次第です。したがって、ただいまのようなお願いをしたいと思 います。 ○西村分科会長 では「重要な労働条件に係るルールの明確化」、3頁の真ん中辺りです が、それ以降について何か御意見をお願いします。 ○奥谷委員 「採用内定、試用」のところで、労働契約終了の中で試用期間終了後の本 採用見送りについて、どの程度の権限を与えるのというか、現在の判例がちょっと厳し すぎないかということです。これはこの間のフランスで暴動が起きたみたいな形の法案 と同じような、雇用創出と雇用の不安定化の両面があるのではないか。そうした件に関 してどうお考えなのか。 ○大西監督課長 「検討の視点」に書かれております試用期間中の解雇についても、解 雇に関する一般的なルールが適用されることは判例で確立しているわけです。そういう こともあり、試用期間中だからといって自由に解雇できるわけではない、自由にという か、解雇に関する一般的なルールを無視して解雇できるわけではない、ということを表 現しているわけです。  いまの御発言の内容はフランスですか。 ○奥谷委員 フランスの法律は流れましたよね。要するに3か月、いつでも使用者側は 試用期間中解雇ができると。それで学生たちが暴動を起こしたみたいな形。あれもかな り失業率が高いために、できるだけ使用者側が採用をするチャンスを与えるためにそう いう形を採ったけれども、結局いつクビ切られるかわからないということで、大変な、 ああいった暴動を起こしたわけであって。  ですから、そういうものを厳しくしてしまえば企業側は採用を控えてしまう。採用枠 を広げるのであれば、ある程度採用させて、駄目な人は辞めてもらうみたいな自由裁量 を与えていかないと。採用した者は必ず本採用にもっていかないといけない、という部 分というのは厳しすぎるのではないか。むしろ採用を狭めてしまうのではないか。要す るに就業のチャンスを逃がしてしまうのではないかということです。 ○大西監督課長 どこまで広げるか狭めるかというのは、この審議会の場で御議論いた だければ。そちらはこちらで議論いただくべき事項だと思います。ここに書いてあるの は、現在試用期間中を理由として、全く自由に解雇できるわけではないですが、試用期 間であるということでも合理性があれば解雇できる、合理的な理由がなければ解雇は無 効であるという、一般的にそこは試用期間中でも適用されるということと、試用期間で あるということは合理的であるかどうかの判断の中に含まれている、ということの運用 をベースに考えているわけです。ですから、極端にフランス方式のように全く、ばっさ り自由でもないし、全く制限しているわけでもないということです。 ○奥谷委員 もちろんそうですが、現実に、かなり判例が厳しく、ほとんど試用期間中 の解雇はできない状況になっているわけです。これをもう少し幅をもたせてはどうかと いうことを申し上げているわけです。 ○西村分科会長 そういう見解について、労働側の委員の方はいかがですか。 ○田島委員 一点は、まずフランスの場合には暴動ということではなく、学生や労働組 合や野党が整然とやっている。一部映像であったと思いますが、私は当然の行動だと思 っています。いろいろな形の意思表示の方法はあるのですから、暴動と決めつけるのは 少しおかしいと思います。私は解雇しやすくすることによって雇用が進むとは思わない。 その論証があれば公益委員の先生方に出していただければと思います。  ただ日本の場合は有期雇用がずいぶん進んでいて、逆に解雇しやすくなっている有期 雇用の人たち、非正規の人たちが女性では5割を超えていますし、全体でも16%あるわ けです。そういう人たちが、更新拒否ということでの雇用調整が実質的に進んでいるわ けですから、そういう意味では、日本がとりわけ解雇規制が厳しいとは言えないだろう と思います。整理解雇、要員抑制そのものも、別に解雇してはいけませんよということ ではなくて、しっかりと条件やルールに則ってやれば、それはできますよという、逆に 言えばそういうルールだろうと思います。  もう一点は、原川委員は何を言っているのか、ちょっとよくわからなかったのです。 中小企業の労働組合はたくさんありますが、企画業務型裁量労働制を提案された職場は、 はっきり言って1,000近くありますが1か所もありません。中小企業の企画業務型導入 が進んでいないのは労使委員会の制度が難しいからだと言いましたが、私はそうではな いだろうと。中小企業においては1年単位とかの変形労働時間制で十分賄っているから 企画業務型が進んでいないだけであって、それを労使委員会の煩雑さがあるから進んで いないというのは少し認識の違いになるのかなと。それから、現実的に仕組みを考えて 行ってほしいという発言がありましたが、私は大企業だろうと中小企業だろうと、やは り労働基準法という一つのルールはしっかり守って企業運営をする。あるいは、労使関 係を守っていくのは当たり前のことであって、それが繁雑だからということで、どんど ん緩めるのはおかしいと思います。したがって、後半の現実的な仕組みを考えてほしい というのは、何の現実的な仕組みなのかわからなかったので、原川委員にどういう意図 なのかをお聞きしたいのです。 ○原川委員 先ほど言いましたように、過半数労働者代表という制度もあるわけですか ら、そういう制度を労使委員会というものだけではなく、選択肢として使えるように、 そういう意味で現実的な仕組みという言葉を使ったわけです。 ○奥谷委員 先ほどの御意見の中に、非正規社員において契約を繰り返していきますと、 実質的な無期の雇用と同じ扱いになってしまいますね。そうすると解雇規制をかなり受 けるわけで、そう簡単に、何といいますか、「契約が切れましたから、はい、終了です」 というわけにもいかなくて、本人が同意しない限りは解雇できないという規制を受けて いるわけです。ですから、言われていることは現実とはそぐわないと思います。 ○西村分科会長 それは有期のところでも議論をしていただきます。 ○石塚委員 飛びますが、労使委員会でもよろしいですか。 ○西村分科会長 はい。 ○石塚委員 労側にとって、労使委員会は非常に大きな論点であります。冒頭長谷川委 員から申し上げたように、労側としては就業規則の問題に関して存在を否定しているも のでもないし、現に機能していることは認めています。それは労働条件というものを集 団的に処理しなければいけないということにおいては、極めて明解な存在理由はあると 思っています。ただそれを労働条件変更のツールとして、一方的に使うことに関して反 対意見を言っているのです。したがってこの問題、労使委員会の扱う事項を私どもとし ては問題にしたいと思っています。  労使委員会ということは、もともと今の過半数代表制の問題点がそもそもあって、そ の議論というのは、いっぺん労働契約法の世界から切り離した格好で、従業員代表制な り、労働者代表制を考えるべきだろうというのが基本的な考え方です。したがって、先 ほど言ったように就業規則を使って労働条件変更という問題と、それから代表制という 問題を切り離す立場ですから、最も端的に言えば、労働契約法の議論をするときに、就 業規則の変更に関係して労使委員会を出すことに対して、我々は違和感を持っていると いうことです。  そもそもそういう立場に立ちますので、本来、現行の過半数代表という問題、労働者 代表という問題を労働契約法とは別に議論したらいいと思います、というのが基本的な 我々の立場です。ここは突っ込んでいけば突っ込んでいくほどいろいろな議論が出てき ますので、まず契約法を議論するのであれば、私どもとしてはそういう立場を採りたい。 ○田島委員 いまのに関連して、先ほど長谷川委員が、いわゆる労使の非対等性、その 対等性を担保するためにということを強調されていたと思いますが、事務局からの労使 委員会は、本当に労使が対等にという担保が全く見えない。労働組合の場合は団結権と か、意思統一や内部の意見交換を踏まえてきちんと意見反映はできるわけですが、そう いうものがない中で、労使委員会に労働組合と同じような法的効果を与えるのは、いか がなものかと。事務局として、その対等性の問題をどう考えて、今回こういう形でペー パーが出てきたのかよくわからないのです。 ○大西監督課長 一言だけ説明いたします。この労使委員会は労働組合と違って、団体 権、団体交渉権がないことは共通の理解に立っているのではないかと思います。そうす ると労使委員会の役割として、どのような法的効果を与えるのかが御議論になるだろう ということも、私ども理解しているつもりです。  3頁の上から3つ目の○、労使委員会でいうと2つ目の○のところには、過半数組合 については、いわゆる推定という法的効果を与えるという付与ということと、労使委員 会のところでは一定の法的効果。これはどんなものなのかというのは、御議論の対象に なるのではないかということで書き分けているという理解です。  また、労使委員会はどういうものなのかということについては、3つ目の○で、法的 効果との関係で「労働者代表の委員の民主的な選出手続」ということについて、どのよ うに確保していくかというのは御議論になると考えております。2番目の○の法的効果 と、3番目の○の民主的な選出方法というのは両方一体となって、より民主的な選出手 続が確保されれば、より強めの法的効果を与えてもいいのではないかなと。そうでない ときは、そうではないというのは御議論になる。まさに御議論していただくべき事項で はないのかと考えております。 ○長谷川委員 石塚委員が言ったように、労使委員会はどこで登場してくるかが重要で す。労使委員会がどこで登場してくるかというのは、労働条件を変更するときに就業規 則を使うわけです。就業規則を使って、その労働条件の変更を行おうとするところに、 就業規則の合理性を推定させるために労使委員会を使うわけです。そうすると先ほど石 塚委員が言ったように、就業規則は使わないということですから、必然的に労使委員会 の必要性はないという意味です。労働条件の変更は、労働組合が団体交渉で、協約でで きるやり方が一つあります。また労働者と使用者の個別合意でできます。それでできる わけですから、あえて就業規則を使って、労使委員会をつくって、合理性を推定する必 要はないというのが労側の意見です。 ○荒木委員 労働組合のある所はいいのですが、労働組合のない事業場もたくさんある と思うのです。その場合に現状のとおりだと、過半数代表者の意見を聞くだけで就業規 則の変更はできますが、そういう現状でよろしいという認識でしょうか。 ○長谷川委員 これはそもそもの議論なのですが、労働契約とは何か。労使の合意です ねと前からずっと言っているわけです。それで労働条件の変更も先ほど言ったように、 基本的には労働者と使用者の合意ですねと。もう一つあるのは、集団的には労働協約を 使ってのやり方があります。私は基本的にその二通りだと思うのです。先ほど私は冒頭 に述べましたが、使用者が一方的に作る就業規則が、なぜ労働契約の内容になるのかに ついては、やはり理論的には不明確です。就業規則は労働基準法の中に登場してくるわ けで、それは労働基準法の中に置いといていいのではないですか、というのが私どもの 考え方です。何か無理があるのでしょうか。 ○岩出委員 このたたき台の視点で、位置づけが「就業規則をめぐるルール等の明確化」 の中に労使委員会が出てくるので、誤解を招いていると私は思っています。第49回の資 料1頁に労使協議が出ています。私は前にも議論しましたが、現実は労働基準法だけで はなく、高齢者雇用安定法、特許法、会社承継法、育児介護休業法、派遣法等々、かな り膨大な量の法律が出てくると思います。その中で、36協定を待つまでもなく、さまざ まな労使協定ないし労使協議が要請されている。それがいま荒木先生が言われたように、 いまの現状で充実した労使協議がなされ、あるいは過半数代表の意見が反映されている のかということを考えると、就業規則だけにとらわれず、全体のいま労働立法の構成は 労使自治に任され、労使協定に任されている部分が増えてきましたから、その中でより 一層労使委員会的なものによって両者の意見を反映させることが必要になっている。い まだに、なぜ反対されるのかわからないですけれど。たまたま置いてあるからザーッと 進むかもしれませんが、全体の労働立法の流れが労使自治、労使協定、過半数代表の意 見を反映して、なるべく職場に則したものにしていこうという発想に立って、という流 れが決まっていますから、私は必要性があると考えております。あとは中身の問題で、 決議要件や選出手続という議論をすべきであろうと考えております。 ○渡辺章委員 うまく言えるかどうかわかりませんが、合意だという場合に、使用者側 が、この条件で雇いますというものをルールブックで作って、それを就業規則と言うか 言わないかはともかくとして、賃金、労働時間、退職に関する事項、その他、「うちの会 社で働いてもらうときには、この条件です」と言って、労働条件の内容を契約と同時に 申し込む自由は使用者側にもあるわけです。それで労働者は、これは気に入らないと言 っては雇ってもらえないかもしれないから、多少不満でも全体を見て契約をする。そう いう契約を一人一人とする。法律では契約は一人一人だけれども、統一的な労働条件、 その事業場に適用される労働条件については、当社はこうしますという、いわば雛形を 作って労働者一人一人に示して、嫌だったら辞めてもらう、良かったら就職してもらう という形で労働契約ができる。そのルールブックが就業規則で、しかし、そうすると使 用者が提案するものだから、何が書いてあるかわからないから、内容が合理的なもので あるという内容的な面で司法審査、あるいは法規定で規制する。  それと同時に、今度は内容だけではなく手続も民主的なものにしようということで、 一人一人ではなく、その事業場の労働者から何らかの形で、全体的な意思が表明できる ようなシステムを作ろう。組合がある場合にはその組合にお任せします。しかし、それ は20%にも足らないわけですから、残の80数パーセントの労働者のためには、どうし たら全体的な意思をまとめて内容チェックや何かができるかというと、やはり何々委員 会か何々協議会か、何かつくらなければならないのではないでしょうか。そうやって一 つ一つの合意ができる限り合理的なもの、利害調整が事前にできるようなものに高めて いこうというシステムなのであって、まさしく就業規則の中でそういうシステムを作っ ていくということが、契約法制としては重要なことではないでしょうか。  いくら契約の合意を強調しても、就業規則という制度が現実問題としてなくなること は考えられないわけですから、それを協約に高めていくのが組合の役割ですが、そうも いかない企業が80%以上の労働者数があるわけですから。全体で考えれば、いま私が申 し上げたような考え方の筋道になるのではないかと思うのです。それを労使委員会とい うか、石塚委員の言われる従業員代表というか、それはまた別ですが、私は契約と就業 規則との関係、契約と協約との関係はそういうように思うのです。いかがでしょうか。 ○西村分科会長 いかがでしょうかと言われると、議論がそこで、多分1時間半かかっ てしまいますので。 ○長谷川委員 そこに戻るから、渡辺委員はそう言ったということに止めておきます。 労使委員会ですが、岩出先生が言っているのは現行の過半数代表制であり、私は労働契 約法の議論をしているわけです。労働契約法の中の労働契約の変更のときの労使委員会 をここで言っているのですよ。先生が言われているように、現行の労働基準法に出てく る過半数代表やいろいろなもの、大体70項目以上はあるでしょうね、倒産法制まで入れ ると。そういうところに出てくる、要するに過半数代表は問題があるという認識は全く 一緒です。それは先生と一緒です。  最近の新聞報道で労働者代表を無断で記載というのがありました。こういうことがあ る、というのは前から言われていたわけです。誰が労働者代表になっていたかわからな いで、36協定の判子を知らないうちに誰かが押していたという話もよく聞く話でありま して、いまの労働者代表は問題がある。この労働者代表の問題は、どこかで議論しなけ ればいけないのですが、それとここの労働契約の変更のときの労使委員会を、一緒に議 論できないと思うのです。そこのところの問題は先生と同じ認識を持っていますので、 現行の労働基準法に出てくる過半数代表について問題があるので、もう少しきちんとし た労働者代表制を作るべきだという議論は、私はどこかできちんとやるべきだと思って います。 ○西村分科会長 それでは3頁以下のほうでお願いいたします。 ○小山委員 次にいくために質問をしたいと思います。3頁の「重要な労働条件に係る ルールの明確化」の中の最初の項目、「重要な労働条件に係る事項の説明」というところ で、○の最後のほうに、「使用者は当該労働者に対し、書面で明示の上説明するものとす ることが必要ではないか。また、そのような手続を経た場合に、一定の法的効果を与え ることが適当か」というように書かれています。この一定の法的効果を与えるというの は、どういうことを意味しているのかお聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 法的効果はいろいろあると思います。そこで「例えば」と書いてある 自律的労働時間制度、これはまた後で議論されるのですが、そのような労働時間制度に ついて大きな変更を与えた、変更を議論する場合には書面でやっていただいて、書面が あるということをもってそういう制度に入っていくという、そういう法的効果というの も一つの例として考えられるのではないか。重要な労働条件に係る事項の説明をどうい う場面で、書面でやっていただくかというのは御議論があると思います。  例えば、出向、転籍のときに書面でやっていただくのがいいのかどうか。そういう場 合には、どういう法的効果がいいのかというのは、まさに、いま私が申し上げた自律的 労働時間制度のことも含めて、それぞれの場面で、こういう場合はこういう強い法的効 果、こういう場合はちょっと弱めの法的効果というのを含めて御議論いただければ有難 い。論点ということで出しました。 ○小山委員 確認ですが、例えば一つの課題について、書面で提示していなかったとす れば、その項目については無効であるとか、そういう効果を言おうということですか。 ○大西監督課長 基本的にいま言われたようなことも含まれると思います。ただ、すべ ての場合書面でないと駄目になるとかという話ではないわけです。どういうのが「重要 な賃金、労働時間等の労働条件の変更」に当たるのかという、その場面を区切っていた だいて、その上で、そこについてどういう効果を与えるのかというのが適当か、という ことだと思います。そういう意味で、すべての場合に、いま言ったような効果が与えら れるというわけではありません。 ○小山委員 関連していまのところですが、逆の場合、例えば書面で示したと、当該労 働者はそれで合意したつもりはなかったのだけれども、書面で示されたことが新たな契 約内容なのだということで確定してしまう、というような場面が起こった場合、労働者 にとって逆に不利、それを覆しにくいという不利な面も出てくるおそれがあるのではな いか。とすれば、そういうことに対する対応をどのように考えておられるのか、という ことをお聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 もし具体的な想定があるのであれば、ここでまさに御議論をいただき たいことです。ただ現在でも入職時には労働基準法15条において、労働条件の明示、書 面でこれこれやりなさいという規定があります。それについて、今は入職時しかそうい うものがありません。途中の場面においても、非常に大きく労働条件が変わるような場 合、紛争防止といった観点から、書面で確認していくことは重要ではないかと考えてお ります。  そうした場合、例えば間違ってサインしたとか、そういうのがあるのであれば、それ はその時の場面で、それは勘違いだったということで救われるのか、それはいろいろな 場面があると思いますので、どういうのがいいのかというのは、できれば具体的に御議 論いただければ有難いと思います。 ○渡辺章委員 よくインフォームドコンセントといいますよね。これだとインフォーム だけで法的効果が生ずる、というのが小山委員の御質問だろうと思うのです。私も同じ 思いで、インフォームの形式を書面にすればコンセントしたことになるのかということ が、常々疑問に思っており、ここのところをもう少し説明してほしいと思っていたとこ ろなのです。 ○西村分科会長 御説明することではないのでしょうけれど、書面で示したからといっ て合意が成立することは考えられないのです。そういうような変更の合意が常に成立す るとは限らないと思います。もちろん、わかりましたと言って合意することもあるだろ うと思いますが、書面で示すことと、変更についての合意は全く別な話です。だから、 法的にどういうような効果を見つけたらいいのか。あるいは、そういったことを考える べきではないのか。そういう議論の素材として提示されていることだと思います。 ○田島委員 いまの関連ですが、「出向、転籍、転勤」の4頁のところに、いわゆる当該 企業内の配置転換と同視し得る出向について「個別の承諾を要せずして出向を命じるこ とができることとすることが考えられないか」ということは、これは出向でさえも本人 の意向に関わりなく、定義をすれば成立するような書き方がその下にも出てくるわけで す。「重要な労働条件に係る事項の説明」のいわゆる個別的な課題で、そうすると労働者 の意向が重大な変更に関わって、同意や合意が全く無視された流れになっているのでは ないかと読めるのですが、その点はどうなのでしょうか。出向でさえそうですよ。 ○西村分科会長 そういうケースは実際にありますか。使用者側委員の方、出向、転籍 についてどうでしょうか。 ○山下委員 弊社の場合は、通常は出向のみならず人事異動等、いろいろ変更があった 場合は、普段の慣行として書面に書きまして、基本的には本人の同意を得て、サインを いただくというプロセスを行っております。そういう意味では、特に問題は生じません。 そういう場合、出向もいろいろなケースはありますが、当然本人の合意を得、サインを いただきます。実務上、弊社の場合はということになりますが、特に問題は起こってい ないと理解しています。 ○石塚委員 この点について問題に思っているのは、4頁のいちばん最初の○で「当該 企業内の配置転換と同視し得る出向について」というのがよくわからないのです。勝手 に解釈して意見を述べさせていただきますと、出向に関して私は労働組合ですからいろ いろな経験を積み重ねてきていますが、理屈上から考えると、ある労働者に対する指揮 命令権が第三者に渡るわけです。民法上からすれば、それはおかしいと思うのです。た だ判例からいくと、出向に関しては事前に包括的に、要するに相当幅広い権限を与えて いるのが現実です。  ところが実態論からいくと、出向によってどのような状況が起こり得るのかというこ とに関して、もっと注目すべきだと思っております。現に判例の中でも出向権の濫用法 理、濫用という問題が出されたと思います。ですから出向について、出向の必要性、対 象人員の合理性、出向先の労働条件の変更の程度等々を鑑みて、必要があれば出向を命 ずることができると思いますが、何か、一般的に、出向は別に個別の要らないよ、みた いなことを受け止められるようなことになってしまうと、現実の判例法理はもっときめ 細かく見ているような気がするのですね。ですから、そこをいかにも何か、個別の同意 は要らないよ、みたいな感じで受け止められるような書きぶりというのは、私ども実態 を見てきた立場としては、どうかなと。  同じ出向でも千差万別であるのです。なるほどこれはと、うなずかざるを得ない出向 もありますし、労働組合としては雇用を確保するために、出向をいわば是認してきた歴 史もあります。また労使交渉の中で、あまりにもひどい出向に関してはきちんと労働条 件を交渉してやってきたことがあります。出向という言葉は一つ一つの言葉であります が、千差万別ですからね。少なくとも、本人同意なしでいく出向は事前に認めたらいい のだ、みたいなことで受け取られるメッセージは困ると労側としては言いたい。 ○松井審議官 事実はそうです。4頁で言われている一つ目の○、当該企業内。言葉だ けですから、それをそういうように感じられるというのはわかりましたが、書いてある のはここにありますように、企業内の配置転換と同視し得る出向ということで、すべて の出向という提案はしていません。だから、それは丁寧にしろということだと思います。  もう一つは、不合理でないものが、つまり不合理なものであると駄目ですよというよ うにしませんかと書いて、いま言われたようなことを、この不合理という用語とか、企 業内の配置転換と同じようなものというものに関して、同意なしにやるということはい かがでしょうかと聞いているつもりなのです。いかにそういう言葉をやったとしても、 出向というものが、いきなり何でも同意なしでできると読めると言われるのは評価でし ょうけれど、提案は、要件を一生懸命かけるということがどういうことで、どんなふう に感じられますかということを、問いかけていると見ていただけませんか。文言はそう 書いてあるということです。それが書き足りないとか、そういうことで誤解を受けると いう評価かなというように受け取れますが、裸でやっておりませんということを了解い ただきたいと思います。 ○八野委員 今のところですが、意向打診とか書面ということが書かれていますが、本 来こういう変更というのは、労働者の協議と合意によるべきであろう、というのが原則 ではないかと思います。それがここの中には一切書かれていない。  先ほど前提で、書面で示すということだけでは合意に至らないということがあったと 思うので、その全体の考え方を、この重要な労働条件に係る明確化というところでは、 きちんと確認をした上で行っていくべきなのではないかと思います。これは意見です。 ○松井審議官 この文章構成の中の説明なのですが、今度お願いしています契約法制と いうのは、労使がどういうルールに基づいて物事を決めていくかという基本を示すべき ではないか、ということをスタートにしています。ここにありますように企業内での配 置転換と全く同じようなものと認められるような出向、形の上で企業にはいくのだけれ ども、企業内の配置転換と同じように認められる出向については、最終的には労使の合 意についての揉め事はいま裁判制度でやる。  つまり、民法や商法の最終解釈は裁判官にやっていただくことになっていますが、そ のときに考えるいちばんの枠組みは、こういう枠組みを法律で提示すると裁判官が縛ら れるわけです。まず、この出向が企業内での配置転換というものと同じだと認定して、 さらに不合理でないというように客観的に認める。そのときに労使がどういうやり取り をしたかを考えて、不合理でないということになれば、当該事案で個別に労働者が承諾 をしていない場合でも、出向を認めてあげるという処理をする枠組みを提示しませんか、 という条文を作りましょうということであります。そういったものが動いていけば判例 が積み重なっていく、という枠組みで提案しているということが分かっていただけると。 ○新田委員 そんな煩わしいことを裁判官に委ねないほうがいいですよ。 ○松井審議官 だけど、全部は法律で書けませんから。 ○新田委員 ちょっと待ってください。全体として、例えば、先ほどもあったのですが、 提示して説明したことで出向などが有効になる、と。要するに、なんでこんなに、まあ、 言ってみれば、もっと丁寧に会社に対応させないのかと。働く人間一人一人について、 大きな労働条件の変更ということについて、あるいは出向というのは、出向先の勤務条 件、労働条件、全部その条件にいくわけでしょう。転籍は、それこそ身柄をみんな移し てしまうわけですよ。大きなことについてもっと丁寧にやるということを基本に、この 契約を考えようということがあっていいのではないかと。  そうすると、私の基本原則は、やはり合意に至るために丁寧にやるということを労働 契約法の基本にする、ということがないといけないではないですか。 ○松井審議官 中身は言われる意見だと思います。条文の説明だけですが、一定の法的 効果と書いてあるのは、どういう効果を与えるべきかを議論していただきたくてやって いるのであって、合意を推定するなどということまでは書いていません、ということで 理解していただきたいのです。ですから、こういうものに法的効果を与える必要がある かどうかを議論していただきたいのです。いま言われたように、ないというのも一つの 意見ということでお聞きしたいということです。そこまでわかっていただきたいのです。 合意とまでは言っていませんから。 ○新田委員 過去の説明で言えば強弱と言われたのですかね。 ○松井審議官 はい。 ○新田委員 何が強弱ですか。そういうような物の言い方というのは、結局混乱するだ けではないですか。 ○松井審議官 確かに隠しているというように見えるかもわかりませんが、法的効果と いう場合、例えば一般論で言いますと、こういうようになったときには、全く一般論で すよ、直ちには取り消せないというようなやり方もあるかもわかりません。法的効果で すよ。取消というように働く、一定期間クーリングオフを置かないとかですね。ただ、 一応言われたように合意を推定するとか、合意したものとする、みなす、推定するとか、 いろいろなレベルのやり方はないでしょうかというぐらいのつもりなのです。  だけどどれかを明示していないから疑心暗鬼に陥るという主張というか、御意見はわ かる気がするのです。だから丁寧に言わなければいけないのはわかります。一定の法的 効果と書いていないのは、こんな事象について効果を聞くということ自体、よろしいで しょうかと聞いているというようにお願いしたいのです。法的効果はいろいろあります が、いま申し上げたように、取り消すとか、絶対に認めるとか、そんな意味なのです。 ○新田委員 意味はわかっているのですが、全体としてのトーンがこういうことでいけ ば、という心配をするわけです。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) 感想を申し上げたいと思います。この「重要な労働条件 に係るルールの明確化」は、先ほどから労側の皆さんがおっしゃっているのと同じ感想 を持つところがたくさんあります。基本的にルールの明確化と言っていますが、実際に は、ほとんど現行の法規制にあるものばかりではないのかという認識を持っています。 ですから、わざわざ書面での明示をする必要があるのかどうか、書面でなかったら無効 か、あるいは書面だけで合意とされてしまうのか、といった不安が労側にもあるように、 我々使用者側としても全く同感で、書面だけで何で実効性が本当に上がるのかというと ころは、全く同感するところだと思っています。  先ほどの出向についての箇所ですが、これは実は今でもできるのではないかと思って いて、なぜ、こうやって新しく書く必要があるのかと思っているところです。そういう 意味で、わざわざルールの明確化と言っておきながら、全体的にあやふやだという指摘 もありましたように、全体的によくわからないという感想を持っています。  これは質問なのですが、「労働条件の変更に係るルール」というところがあります。考 え方として新しいのかどうかよくわかりませんが、教えていただきたいと思っています。 労働条件の変更の申入れに対し、異議をとどめて承諾した場合は、異議をとどめたこと を理由に解雇できないとあります。本来、現行法の民法でいけば、異議をとどめて承諾 というのは拒否に当たるはずですので、これを変えろと、要は新しい承諾だというふう に認識しろということなのか、これまでの説明でも、ここについてはさらっとしてしま っていて、新しいものなのかよくわからないところです。 ○大西監督課長 いま、おっしゃっていただいたとおりです。民法を変えようというこ とです。普通、使用者がこうですよと言って、「それは嫌だけど、こういう条件ならいい よ」というのが、いまの民法ではストレートに読むとできない可能性があるわけです。 実際にはそんなきれいでなくて複雑になっていますが、こういうキャッチボールができ ないようになっているのを、労働契約においてキャッチボールができるようにしようと いうことですので、その範囲では民法の特例という、いまの御理解で結構です。論点と して挙げているのはそういう意味です。ですから、いままで議論していた「それはちょ っと嫌なんだけれども、やる」というときに、すぐ解雇にいってしまうのではなく、一 応、そこでつないでおいた上で議論してくださいということです。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) 報告書としては、あまりはっきりとは言われていなかっ たところだと思いますが、ここは独自に入れたということなのでしょうか。 ○大西監督課長 報告書は前提としないという話だったので、報告書との関係について は触れないのですが、現実問題として紛争の実態を見ていると、「労働条件で、この変更 を呑まないのだったら解雇ですよ」ということがあるのであれば、解雇するというのは 労働者にとって大変ですけれど、使用者にとっても解雇してすったもんだするよりは、 この条件を呑まないのだったらすぐ解雇だという話でなく、「渋々承諾するけれど、もっ と議論させてくださいよ」と言える制度として、1つ目の○でそういう制度を民法との 関係で整理した上で、2つ目の○で、今度4月から始まった労働審判制度などに労使で 行っていただいて、そこで議論して整理していただく。そういうことで雇用がちゃんと つながっていくように、しかも早く解決するような仕組みとして、実態を踏まえて御提 案申し上げているということです。 ○石塚委員 4頁の3つ目の○で、いつも労側は文句ばかり言っていますけど、いいこ とが書いてありますので、逆に希望を申し上げておきたいと思います。先ほど出向とか 企業内における配置転換という議論をしましたが、ここで「転居を伴う配置転換等につ いても、その権利を濫用してはならない」とあります。私どもとしては大賛成なのです が、判例法理でいくと、転居を伴う配置転換について、労側に厳しい判決をベースにし て判断が下されるケースがあるように、私は思っているのです。具体的に言うと、20年 前の東亜ペイント事件最高裁判決です。あれがあるがために通常甘受すべき程度という のが、かなり広く解釈されてしまっているような気が私どもはしています。  それは判例ですから、しようがないと言えばしようがないのですが、20年前と今と比 べたとき、働き方と家庭生活とのバランスなど、いわゆるワークライフかライフワーク か何でもいいですが、要するにいろいろなバランスを取ろうという時代になってきてい るわけですから、通常甘受すべきというのが、20年前の通常甘受すべき程度と、今の通 常甘受すべきとで違っているのだと思います。ここらを権利濫用としか書いていません が、もう少しそういった観点を考えて、作るのであればやっていただきたい。これは希 望ですので特にコメントを要求しません。 ○長谷川委員 それとまた違う話ですが、労働契約法を議論するときに、ある意味では 判例をそのまま契約法に持っていくということと、労働側からは、労働者保護の視点が 必要だというのは必ず言うわけです。そうすると判例よりも、もう少し上回るものとい うことになる。それと判例もすごく古い判例もあるわけで、現実的な、もう少し今日的 な労働者保護も必要なのではないかと労側は思うわけです。  いまの配転、出向、転籍などについても、判例は配転と出向と転籍の扱い方が微妙に 違うわけです。今回の事務局の試案だと、労働者の意向打診というのがありますが、意 向打診でなくて、労働者と誠実に協議して合意する、ということが私は必要なのではな いかと思います。  いま、石塚委員がワークライフバランスの観点から話をしましたが、まさに少子化に どうやって歯止めをかけようかと政府も大議論しているわけで、家族が一緒に暮らさな い限り歯止めはかからないわけです。そうすると、そういうワークライフバランスに配 慮したものも必要だと思います。  今回、国会に能力開発促進法も提出され、第8次能力開発計画なども出ているわけで すが、ある意味では企業が最近、能力開発をかなり個人ベースにしているところもあり ます。あるいは大学院に行ってスキルアップしようと努力している人もいる。そういう のも考慮されるべきだと思います。そういう意味では、むしろ出向や転籍や配転という のは意向打診ということより、もっと協議して合意するなど、新しい契約法を作るのだ ったら、それぐらい踏み込んでもいいのではないかと思います。事務局のより私の意見 のほうがずっと時代に合っているのではないかと思います。それと、そういうことを拒 否したときのルールをどうするのかも、考えておかなければいけない。  もう一つ、労働条件の変更のところで出てくるのですが、先ほど経営側の方も言われ ましたけれども、例えば訴訟の場面になったときに、労働条件の変更を提起しているの は使用者側ですよね。そうしたら労働者が変更は受け入れられないと異議を出した場合 に、その内容の合理性は、むしろ使用者が訴訟を起こして合理性を判断してもらう、費 用も全部使用者が出すということだって考えられないわけではない。私は変更するほう が色々な負担を負うべきではないかと思うし、立証責任も変更するほうが負うべきでは ないかと考えます。  研究会報告をベースにしないという主張は、あれだけ日本に冠たる有識者が1年以上 もかかって研究したわけですから、それは悪いけれども、この「検討の視点」よりもな かなか労側としてはいいなと思うところ、参考になるところが所々にあるわけです。そ のいいところを取り入れてくれればよかったのですが。悪いところを取り入れた例とし て、あそこで言われていた雇用継続型契約変更制度というのがありますね。あれと、今 回、事務局で出しているものは同じではないですか。違うのですか。 ○大西監督課長 雇用継続型変更制度は、基本的に私の理解するところでは、労働条件 を変更し、労働者が拒否し、そしたら解雇しますと言ったところで解雇の効力が停止す る、というのが基本的なベースになっていたと思います。ただ、そうすると、解雇する と言ったところで議論がスタートするので、そこの点はもう少し前に戻して、変更しま す、異議を言いました、そしたら解雇したら駄目ですと。要するに解雇の効力が停止す るのでなく、解雇したら駄目ですということで、継続というところに力点を置いたとい う意味で少し違うのではないかというところです。 ○長谷川委員 これを訴訟に持ち込んだときに、訴訟費用は全部労働者が持つのですか。 労働審判のことが書いてありますが、労働審判に持っていくのは労働者が持っていくの ですか。訴訟費用はどうなるのですか。それも全部労働者ですか。 ○大西監督課長 それは制度を労働審判に持っていくというところを、御了解いただい てからの御議論だと思いますが、いま、ここの時点では、それについてはどちらとも触 れていないということです。 ○長谷川委員 変更したい人が合理性を訴訟で争うというのは考えられないのですか。 ○大西監督課長 それは、もちろん御意見として考えられると思います。 ○長谷川委員 それで訴訟費用も使用者が持ち、立証責任も全部使用者が持つというの は、考えられないわけではないのですね。 ○大西監督課長 御意見としてもちろんあると思いますが、一応、ここでは、そこまで はっきりとは触れていないということです。 ○長谷川委員 良いとか悪いということでなく、そういうのも考えられるのではないか と聞いただけです。 ○岩出委員 いまの「労働条件の変更に係るルール」ですが、私の理解するところ、先 ほど来出ていたように、民法の原則に反することを裁判所はやってきたと思います。実 際には異議をとどめた承諾と言って、例えば出向とか配転に応じて、そういった形で係 争してきたことは多々あったと思います。実際、労働判例というのは、合意解約の退職 のときの意思表示の承諾と申込みの承諾の関係でも、普通の民法では考えられないこと をやっているわけです。  同じように、私がもっと心配しているのは、例えば日本ヒルトンホテル事件です。こ ういうことが現実に起こるのは、シフト変更とか有期雇用で条件変更を申し立てられて、 応じないと切られてしまう。そういう意味では解雇だけでは範囲が狭いのではないか、 有期雇用の更新ケース段階で言ってもこれが適用されなければ、本当は労働者の保護に 耐えないのではないかと私は考えているのですが、いかがですか。 ○田島委員 その次のところに「労働審判制度等において解決を促すための必要な改善 策」とありますが、この意味がわからないのです。労働審判制度というのはもう制度と して出発していますし、労働者が持ち込もうと言えば持っていけるわけです。改善策と いうのは何を言おうとしているのか、わからないです。 ○大西監督課長 例えば制度の仕組みとして手続を明確化するとか、そういうのが必要 であれば改善をしていくということであって、ここは今のままでいいよということであ れば、それは御議論を経て労働審判制にいきましょうということを書いて、それで終わ りになるということも考えられるのではないかと思います。 ○島田委員 この変更ルールというのを作らなければいけないのは分かるのですが、労 働側からこんなことを言うのはおかしいかもしれないですが、みんなが条件をある程度 認め、何人かが嫌ですと言いながら、もしこれを「いいよ」と言ったら解雇できなくな るわけですよね。そうすると、会社の中で違う働き方が起こるわけです。その人は嫌だ けど働いていて、最後は訴えないと自分の言うことを聞いてもらえない。逆に、もし訴 えてそれが認められたとします。その人だけが認められて、あと全体の同意した人たち は認められないことが今度は起こるわけです。ということは、企業の中で何種類もの働 き方を認めてもいいのですよということになる。この方策を採ればそういうことになる。 解雇できないというのはものすごくうれしいのですが、実際に考えていったときに、ど ういうことが企業内に起こるのだろうか。「言った者勝ち」という話も起こるのかなとい う気がしますが、その辺はどうなのですか。 ○岩出委員 ここにも書いてありますけれど、先ほど言ったように異議をとどめて配転 の申出とか、異議をとどめて出向に応ずるとかは、今、多々起こっていると思います。 いまさらの問題でないと私は思っていますが、違うのですか。私の認識が違っていたら 教えていただきたいのです。民法の議論だったら、異議をとどめた承諾というのは拒否 なのだから、本当は解雇理由になるかもしれないけれど、現実には行われているわけで す。 ○秋山調査官 補足させていただきますが、ここの検討の視点の「労働条件の変更に係 るルール」で書いていたのは、検討の素材ということで、あまり長い文章を書いても読 みにくいということもあって端折っています。念頭に置いているのは、例の研究会報告 で言えば、雇用継続型契約変更制度で考えていたように、就業規則の法理だとか集団的、 統一的な処理ではできないというか、個々の労働条件は決まっていて、例えば賃金が決 まっているとか契約形態が決まっているとか、個別に決まっているものを個々の労働者 との関係で変えたいときに、当然申込みをするわけですが、申出に対して、とりあえず 承諾・異議を述べながら働いていれば解雇する必要はないという視点で書いていますか ら、ちょっと限定的なことを掲げています。 ○松井審議官 島田委員の質問について、前の質問とも絡めてですが、ここで議論する 契約法の性格をどんなものにすべきか、という議論に関係しているのではないかと思い ます。労働基準法というのは罰則付きで、こういうふうにしなければならないという命 令を国民全体に出していて、これに反すると処罰しますよということで、命令調で物事 をコントロールしようとする法体系です。契約法というものを議論するにあたり、そう いうものを作りますか、どうですかというのをまず議論しなければいけない。とりあえ ずは基準法というものがあるから、労使自治で自分たちがルールを作るときに、当然、 基準法も労働安全衛生法も守った上で、どういうルールでやれば物事がうまくいくかと いう、その目標的な法律を作りませんか、ということで始まっていると認識しています。  その時に、基準法あるいは刑法のように、しなければ罰するという法律でいくのか、 民法や商法のように、世の中としてこういうふうにやってもらうと有効に労働契約は成 立します、こういうふうにすると契約は終わりますというルールを示して、そのときに、 こんな要素を満たせばどうでしょうか、というのを提示しようというのがこの案なので す。そこで最初の答えです。  2番目は、そういうふうにしておくと、一罰百戒みたいな言い方で乱暴ですけれども、 こういうやり方をして裁判にかかってしまい、コストをかけて採算が合わないし、従業 員のいろいろな差が起こると大変だということで、裁判というのは個別に起こった問題 を解決する力しかないのですが、国民の良識によってそういうものが出てくれば、同じ ものについては調整しようという力が働くのではないか。商法とか民法では、そういう 擬制のもとに民事裁判というのは成り立っているのです。それと同じ手法を使わないで すかという提案なのです。  ところが、それだけでは不足だから、基準法的な性格を持たせた法律を作るべきだと いう御意見もあり得ると思いますし、いやいや、民法的な形でいいし、さらにいろいろ なルールがあるのだから絞って、本当に困ったところだけルール化すればいいのではな いかという、やや使用者的な発想もあるということで、まさにいま言われたのは、ここ の法律をどういうふうにするかの本質的な議論だということで、了解いただけたらと思 います。 ○岩出委員 ここは、期間の定めのない契約法を前提とした解雇だと思うのですが、も ちろん中途解約の場合もあるでしょうけれども、更新のときに条件変更を申し出られて 追いやられる有期労働者に対しては、配慮はしないのでしょうか。検討されていないの でしょうか。 ○大西監督課長 その点についてはここには書いていませんので、この場で御意見とし て承って、それを入れるほうがいいかどうかということを御議論いただければと思いま す。 ○奥谷委員 「その他の事項」の競業避止とか兼業禁止とか、秘密保持及び個人情報保 護に関するルールというのは、「明確化することが考えられないか」とありますが、これ は労働者に対する義務を持たせるというか、そういったことは考えられないのでしょう か。義務のルールの明確化ということです。 ○大西監督課長 具体的に個々のところについては、この「検討の視点」ではどのよう なルールを定めるかも含めて、御議論いただきたいと考えています。いま言われた義務 というのは、具体的にはどういうことをイメージされているのでしょうか。 ○奥谷委員 ですから、例えば副業とか兼業とか、競業相手のところに何か秘密保持の ものを持ち込むとか、そういった部分の場合は解雇に値するとか、そういった義務のル ール化というのはあるはずだと思いますけれども、そういったものがこれにはないので す。「ルールを明確化することが考えられないか」となっていますが、要するに使用者だ けでなく労働者に対しても義務が発生するべきだと思います。 ○大西監督課長 具体的には御意見として承って、この場でまさに議論していただきた いことではないかと思います。ただ、競業避止とか兼業禁止については、一般的に現在 でも労働者に多少義務的なものがかかっていると理解しています。それを、いま言われ たような解雇までいくのかどうかというところは、まさに御議論になるのではないかと 思いますので、そこはまとまればルールとして明確化していくという手順になると思い ます。 ○長谷川委員 3頁に戻って、「重要な労働条件に係る事項の説明」の1つ目の○のとこ ろで、「労働者にとって特に重要な賃金、労働時間等の労働条件の変更(例えば、自律的 労働時間制度を適用するときも含まれる。)」と書いてあります。これは何でここに自律 的労働時間制度が出てくるのか説明してください。 ○大西監督課長 後ろのほうで出てきているのです。後ろのほうで出てきているところ を前に書いていないと、書いていなかったではないかと言われるかもしれないと思いま して、「含まれる」という不思議な表現になっていますが、そういうことですので、前か ら読んでいただいていますけれども、全部が一体的なものとして御理解いただきたいと いうことです。 ○長谷川委員 労働条件の変更については、使用者の労働条件の変更だけが書かれてい るのですが、変更請求は何も使用者だけでなくて労働者にもあると思いますが、それは 検討しないのですか。ここだと使用者しか書いてありませんが。  「その他の事項」で奥谷委員が言ったのですが、これは付随義務だと思いますけれど も、これは安全配慮義務など使用者にもあります。だから、ここはその他の事項として、 安全配慮義務だとかをどうするかということも検討項目に必要です。 ○西村分科会長 そう思いますね。「その他の事項」までいったのですが、「労働契約の 終了の場面のルールの明確化」、要するに解雇の問題ですが、時間の都合もありますので 是非その話に進みたいと思います。 ○岩出委員 2頁のいちばん上の○で「労働者が安心して働くことができるように配慮」 というのは、安全配慮義務を含んでいるということでしたよね。 ○大西監督課長 ええ。私どもとしては、いわゆる判例で安全配慮義務と言われている ものについては、2頁の○の1番目の「安心して働く」というところに含まれていると 理解していますが、いまの長谷川委員の御発言は、そうではなくて、要するに「その他 の事項」として安全配慮義務というのを議論してはどうかという御意見だと思いますの で、そこのところはこの場でまさに御議論していただくべき事項であると考えています。 ○田島委員 もう1点、雇用契約の終了にいく前に、いま長谷川委員の言った労働者の ほうから変更があるという場合に、今回のこれが基本的に崩れてくるのかなと思います。 使用者側のほうは書面で明示すれば一定の法的効果ということで、本当にいいのですか ということです。そうではなくて、これは労使がきちっと協議して合意するという前提 に立たなければ、いわゆる変更は利かないですよという形に持っていかないと、辻褄が 合わないと思います。その点は事務局としてどう考えていますか。 ○大西監督課長 合意についての御意見としては、要するに書面だけでやるのでなく、 合意をした上で、例えば書面で説明するとか、そういうような構成がとれるかどうかと いう御意見であったかと思います。  あと労働者からの事業主への変更請求権については、一応、ここのところでは明確に は触れていません。もう一つは、抽象的な話ですが、例えば1頁のいちばん下の「誠実 に義務を履行しなければならず」というところに、もしかしたら入ってくるのかもしれ ませんが、そのほかのところにも入れていくべきだという御意見として承って、それに ついても是非、この場で入れるのがいいかどうかを御審議いただきたいと存じます。 ○田島委員 使用者側は書面を明示すれば一定の法的効果ですよと、では労働者側も変 更権がありますよというときに、書面だけで本当に一定の法的効果というところは辻褄 が合うのですか、と私はお聞きしているのです。 ○長谷川委員 書面だけではない。 ○大西監督課長 ですから、ここのところは使用者が一方的に書面を出せば、それでス ッといくのは変ですよねという御指摘ですが、それはそうであるとすれば当然、そこで まず合意があって、ただ、合意の内容について、もちろん使用者が一方的に書面を出せ ばそれで全部オーケーというのはあり得ないので。そうでなく、基本的には3頁の真ん 中のところで、重要な労働条件に係るルールの明確化ということで、「労働者にとって重 要な労働条件の変更等が円滑になされることも、労働契約の円滑な継続を図るために重 要であるので」ということですから、ルールの変更というのはどこかで行われて、これ について書面で確認的に明示するという考え方も、十分この中に入っています。ですか ら、そういうのを基本にして御議論いただいてもよろしいのではないかと考えます。 ○奥谷委員 先ほどの安全管理の部分のところですが、企業の安全配慮義務を規定する のであれば、労働契約法制は労使双方の部分になっているわけですから、労働者も自分 の自己健康管理を義務づけるなど、双方のルール化というのはあって当然だと思います。 使用者側だけに義務づけるのはおかしいわけで、働く側の自己管理といったことも必要 なわけです。 ○西村分科会長 労働契約の終了の場面について議論いただきたいと思います。 ○小山委員 「解雇に関するルールの明確化」のところの最初の○で、「判例法理(4要 素)」という記載がされています。先ほどから話題になった研究会報告でも、「4要件・ 4要素」というような書き方もされていたかと思います。これはどういう意味合いで、 この4要素を明確化することが必要ではないかという書き方をされているのかというこ とです。我々は当然、4要件として議論していくべきだと考えていますので、そのこと についてお尋ねしたいと思います。 ○大西監督課長 4要件・4要素は、御承知のように高裁の判決や地方裁判所の判決で いろいろ出ている中身です。私どもの提案としては、この4要素というのは最近の地裁 の判例では、こういうのが多いのではないかということです。もちろん、4要件と4要 素の違いというのは、4つ全部やっていなければいけないのか、4つのうち、今回の場 面で必要なことをやっていればいいのか、そういった違いであると思います。それにつ いて4要件にするのか4要素にするのかについては、是非、この場で御議論いただきた いということで、いま4要件にすればいいという御意見を頂戴した、と理解させていた だきたいと思います。 ○西村分科会長 こういう問題について、使用者側の委員はいかがですか。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) 結論から申し上げますと、基本的にこういう考え方につ いては賛成できないと思っています。もともと判例法理と言うからには、基本的に濫用 の法理を定めるという考え方だと思いますが、これは基本的に解雇が自由という前提で ないと、おかしなものになるのではないかと思っています。もともと労基法の18条の2 ということで、解雇が制限されているという前提でいるわけですから、これは濫用の法 理というのをなぜ定める必要があるのか、バランスのおかしい議論ではないかという感 じを持っています。 ○渡辺章委員 労働者の責めに帰すべき事由に基づく場合は、労基法18条の2の客観的 合理性というのが必要だという一般原則の適用になるわけですが、経営上の理由に基づ いて解雇する場合には、特に労働者の責めに帰すべき事由ではなくて、会社側の都合で 雇用を終了させるということです。ですから、その客観的合理的理由というものを、さ らに具体的に、どのような要件なり要素なりが揃うことが必要かという意味で、労基法 18条の2に既に解雇の一般的制限規定がありますから、特に整理解雇だけについて特別 の要件を加重する必要がないということには必ずしもならない。つまり、その解雇が使 用者側の責めに帰すべき事由によって行われることであって、労働側の責任で解雇が行 われるのではないのですから、こういう特別な要件なり要素なりを考える必要があると いう、そういう文脈の議論だと思いますが、ほかにも御意見があるかもしれません。 ○荒木委員 いま、使用者側委員のほうから、既に労基法18条の2があるので、整理解 雇に当たって考慮すべき要素を示す必要性はないのではないかということでしたが、私 はルールの明確化ということを考えると、実際に裁判になると必ず4つの要件ないし要 素を考えて整理解雇の有効性を判断していますので、そういう確立したファクターがあ るのであれば、それを明確にするのが紛争の防止、紛争の早期解決についても有効では ないかと考えています。  4要件か4要素かという話がありますが、最近の裁判例で「4要件」という言葉を使 ったものもありますけれども、そういう判決は必ず最後に「以上の4要件を総合考慮し て判断する」となっています。したがって、裁判例のかなりのものは「4要素」という ことを明示していて、そうでなく4要件を使ったものも4要件を総合考慮するというこ とを言っていますから、現在の裁判例は4つの要素を考慮して判断しているとしていい のではないかと、私は個人的に思っています。 ○田島委員 いまの4要件と4要素ですが、冒頭に監督課長が言ったように、4つの要 件をきちっとクリアーすべきなのか、あるいはその4つの要素を踏まえて全部クリアー していなくてもということが、要件と要素の大きな違いだろうと思います。最近の流れ は要素が多いとか、あるいは総合考慮という形で出ましたけれども、先ほど渡辺委員も 言われたように、今回のこの整理解雇は経営者側の理由で解雇されるわけです。そうい う意味では4要件としてしっかりと踏まえた形にしておくのが、ここは当たり前のこと ではないかと思います。最近の判例の流れが、いわゆる要素の流れがありますからとい うのでそれに追随するのだったら、別に契約法は必要ありませんよ、判例法理でやりま しょうと労側は考えます。そういう意味で、あるべき姿としては4要件だというのが、 一つの流れではないかと思います。公益の先生方、いかがでしょうか。 ○渡辺章委員 もう一つ、要件にしても要素にしても4つということですが、最近はそ れらに加えて、解雇が仮にやむを得ないとしても、その解雇による打撃を使用者がどの ように軽減したか。例えば特別退職金を付けるとか、あるいは再就職のための懇切丁寧 な斡旋とか、再就職のための訓練費用を一定期間出すとか、そういうことも総合考慮し て、やむを得ないかどうか、いうならば5つ目の要素がだんだん出てきている。そうな ると、4要件というふうに、リジットにしていいものなのか、ということ自体が問われ る時だと私は理解しています。  以下は私の見解ですが、私が要件と考えるのは、労働者、労働組合との協議という手 続だけはきちっと要件としておいて、あとは考慮要素として重要なものを3つほど例示 するという形で、1要件3要素説なのです。そういう意見もあったということを留めて おいていただきたいと思いますが、皆さんにも考えていただきたいと思います。 ○谷川委員 ここの整理解雇のところですが、おそらくこれからの経済社会の中では、 いろいろな事情で整理解雇という場面に直面するのだろうと思います。私どももこうい う場面に直面すれば、ここにある4つの要素というのは、ある判断の要素に入れていま す。特にそういう当該者の理解、納得を得るということになると、私どもでは解雇の回 避措置というか、それに至るどれだけの改善努力をしていたかということは、かなりの ウエイトを占めて説明していかないと、なかなか理解してもらえません。ですから、こ れらの4つの要素のウエイトというのはかなり変わっていて、おそらく、そういういろ いろな社会経済状況によって変わるのだろうと思います。私は、いま渡辺委員の言われ たような感じで、こういう4つの要素について、とにかく理解を得るということではな いのかなという感じがしています。 ○西村分科会長 次のテーマで、4頁のいちばん下の「解雇の金銭的解決の仕組みの検 討」についてはいかがですか。 ○小山委員 この金銭解決は、前回の労働基準法改正のときに結論が出て、あれは駄目 になったというふうに私は認識していますから、「いまさら何だ、反対です」ということ を言う以外、あとは議論のしようがないと思っています。 ○西村分科会長 使用者側委員の方々は、こういう問題についてはいかがですか。 ○原川委員 私どもは、経団連の紀陸委員もこの前言われましたが、前から紛争解決の 選択肢を広げるという意味、あるいは解雇事件の早期の妥当な解決を可能にするといっ た意味から、この解雇の金銭解決というのは早急に実現していただきたいと考えていま す。 ○田島委員 いまの原川委員の意見に質問なのですが、金銭解決が必要という出張に対 しては、不当な解雇をやめればいいでしょう、というふうに何でならないのかと思うの です。 ○原川委員 そこは双方の言い分があるところで、人間ですから、取りようによって争 いになるし、そういう考え方というのは賛同できませんね。 ○田島委員 労使の意見の違いとか見解の相違とか、いろいろあると思いますけれども、 それが裁判所という第三者機関で、この解雇は無効ですよというふうに出されれば職場 に戻れますよ、というのが前提としてなければ、労働者のほうも争って頑張りましょう と、これはなかなかならないです。そうは思いませんかね。 ○西村分科会長 公益委員の方、この点についていかがですか。 ○岩出委員 労働審判制度の協議会で裁判官と懇談する機会があって、その中でまさに 立法者の意思とは外れているかもしれませんけれども、東京地裁が当局に宣言している のは、両者が嫌だと言っても金銭解決の審判を出すことがあると言っています。その時、 どういう場合にそういうのを出すかと質問したことがあったので、紹介させていただき ます。  まさに先ほどから出ているように、前回の議論でも我々は言いましたが、解雇にも理 由の強弱があるということをはっきり言っている。だからオール・オア・ナッシングで はないのではないかということが一点あります。あと、既に後任者が決まっている場合 や会社の規模が非常に小さい場合、あるいは能力的には他社で働くことも十分可能とい う場合は金銭解決を言うのではないか。実際に戻っても会社がほとんど機能していない 場合とか、あるいは他社で勤務している場合、元の職場に戻れるかどうかも含めて判断 するという見方をしています。  私もそのような意見に賛成で、前回の議論のときにも、議論しましたけれども、かな りグレーゾーンの解雇事件というのはいっぱいあるわけです。それを白か黒かで決めて しまうのは妥当ではないのではないか。より早い解決を求める意味でも、こういった金 銭解決は必要ではないかと考えています。 ○新田委員 岩出先生にお伺いしますが、それは公式のものですか。 ○岩出委員 公式のものです。東京弁護士会の会報のリブラルというのに出ています。 私がインタビューした記事です。 ○田島委員 いまの問題を岩出先生が言われましたが、その場合には当事者の意思とい うのが関わってくると思います。和解でもね。 ○岩出委員 出しています。 ○田島委員 出しても、それは拒否できるわけですから。 ○岩出委員 もちろんです。 ○田島委員 したがって金銭解決というのは、労働者側、使側双方の意思が反映される わけです。ところが、今回出しているのは解雇が無効とされた場合であっても、労働者 が戻りたい、金銭解決は嫌ですと言っても戻れませんよということですから、いまの労 働審判の中身とは全く異質だと思います。労働争議でもたくさんあります。こんな職場 に、会社に戻りたくないというときには金銭で和解する場合があるけれども、その場合 には労働者本人の意思が反映されているわけです。ところが、この場合の本人が戻りた くても戻れないというのは、これはちょっと違うのではないでしょうか。したがって、 労働審判の場合には不満だったら、いわゆる本訴で争っていけるわけですから、それは 全く異質の問題を今回は投げかけているなという気がします。いかがですか。 ○長谷川委員 私がこの労働契約法が始まったときから終始一貫して言っているのは、 いま岩出先生が言われたように、先生が弁護士であるが故に、そして東京地裁で労側弁 護士と使側弁護士と東京地裁とで、そういう会議をやっていたわけです。それは先生し か知らないのです。労働契約法というのはある意味では消費者契約などに似ているから、 このメンバーでは非常に無理があると私はずっと言ってきたわけです。  例えば、民訴の人や民法の人や裁判所の人たちがいると、そういう人たちからいろい ろな話が聞けて共有化されて、どういう労働契約法がいいのかとなります。ましてや解 雇の金銭解決という訴訟の場面における扱い方について、解雇無効の訴訟というのは解 雇無効の地位確認です。要するに無効の場合は、自分がA会社の社員であることの地位 を確認するわけでしょう。それでも職場復帰できないというふうに解雇の金銭解決をや るとすれば、いかなる理屈付けをすればそういう制度ができるのか。訴訟の場面でどう いうふうなことが展開されるのかということは、ちゃんと聞かないとわからないです。 それは先生しかわからないのですから、もっと説明してもらわないといけない。  それと私が聞くところによると、確かではないですけれども、裁判所は全部金銭解決 の金額を法律に書いてこいと言っているみたいです。だから、無効であっても職場復帰 させなくてもよい金額はどのくらいなのか、まさにすごく問われてくるわけです。地位 確認されて、会社の社員たる身分が確定されて、本来だったら会社でもう10年も20年 も働けるかもしれない可能性を持った社員が、金銭で解決するときの妥当な金額はいく らなのかというのは絶対あります。そこも含めて使用者の人たちが、解雇の金銭解決が ほしいと言うのかどうなのかというのは、本当に聞きたいと思います。  最近のニュースで言われているのは、労働審判で解雇の紛争が1か月でできたという のです。すごく早いです。労働審判制度ができて和解でできるのだったら、金銭解決制 度導入よりもそっちのほうがずっといいのではないですか。 ○小山委員 次の項目にいきたいと思います。契約の終了に関わる点で、逆にここに書 いていないのですが「お前、辞めろ」と言われて、「わかりました。辞めたくないけれど も私は辞めます」と言ってしまった例は、よく労働相談であるのです。そういう退職を 強要され、そこで「うん」と言わざるを得なくて、あとになって後悔するという事例に 対する救済等という事項についても、この契約法の中に明確にルール化していく必要が あるのではないかと思いますので、そういう御議論も是非お願いしたいと思います。 ○長谷川委員 あともう一つ、解雇の18条の2というのは、解雇権濫用法理ですよね。 18条の2をもう少しよくするために正当事由説に直すことだって、一つの考え方として あるのではないか。例えば契約関係を維持し難い正当な理由があるとか、そういうふう な書き方だって検討してもいいのではありませんか。 ○西村分科会長 だんだん時間がなくなってきているのですが、「有期労働契約をめぐる ルールの明確化」について、いかがですか。 ○奥谷委員 先ほど申し上げたように、非正規社員が何回も契約を繰り返していくと、 実質正社員と同じに解雇規制を受けてしまうという部分は、どうでしょうか。何のため の契約社員なのかわからないという感じです。 ○田島委員 先ほども質問したのですが、何度も契約を繰り返している人を、逆に何で 有期にしなければいけないのですか。もう同じように働いているのですから、期間の定 めのない労働者として権利保護があって当たり前でしょうと私は思います。しかし、そ うはならなくて10年も20年も有期で、更新のたびに、例えば胃が痛んだり悩んだりし ている労働者がたくさんいるわけです。そういう人たちは有期でなく、もうヨーロッパ のように、何度も繰り返すような有期はなくしていきましょう、という形の契約法を作 っていかないといけないだろうと思います。期間の定めのない人と有期で、労働条件等 の格差がさまざまな形で出ているわけですから、そういう意味では、私はそういう形に していくことが必要だろうと思います。 ○奥谷委員 でも、前提とする能力というものがありますね。その能力が陳腐化してい った場合。 ○田島委員 能力があるから何度も繰り返すわけです。 ○奥谷委員 だけど何回か繰り返す前に、5年経って能力が陳腐化し、この仕事に対し て無理だといった場合に契約解除はできるわけであって、それをずっと正社員として続 けていかなければならないというのは、おかしいのではないですか。 ○田島委員 それは今日示されたデータで、それが一般的でしょう。そういう労働者を 育てるのも経営者の資質のはずでしょう。 ○奥谷委員 そこまで全部経営者が。 ○田島委員 どんな労働者でも経営者というか企業に貢献しているし、貢献しようとい う意欲はみんな持っているわけです。とりわけ中小企業などは、これからはいかに良い 人材を逃がさないようにするかというのが、一つの企業の発展する要素だろうと思いま す。そういう意味では、何度も繰り返すような有期があること自体がおかしいよ、とい う形にしていく必要があると思います。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) その考えですが、考え方の一つとしてあると思いますけ れども、その逆というのもあるのではないかと思っています。基本的には有期というの はもともと期間を定めて本来は雇っているわけですから、雇止めという議論をする際に、 何で雇用を継続しなさいという方向だけで議論されてしまうのかというのは、企業の実 務からすると非常に難しいものがあって、むしろ場合によっては有期の雇用を継続しな いということに伴って、もし損害が生じるのだというのであれば、損害賠償できるとい う方向の議論にはなぜならないのでしょうか。  質問ですが、雇用を継続させるという方向でしか今は有期雇用継続云々という議論が なされていないのですけれども、実務的に言うと、要は契約を継続したくないといった ときに、本人は結局、受けるか受けないかしか選択がないのです。そういう意味でいく と、むしろ損害賠償ということできちっと整理してもらって、そこで雇止めをするとい うことが現実的な声としては非常に強いのですが、そういう議論というのはされないの でしょうか。 ○奥谷委員 先ほどの義務のルール化と一緒ですよ。労使は対等で契約というもので成 り立っているのであれば、反対にこちらがもう1年やってほしいと言っても、ポンと辞 めてしまったり、他にヘッドハンティングされたりするわけです。そういった場合に企 業が受けるダメージというのは、そういう賠償を請求できるわけではないですか。そう いった場合の労働者側だけの保護というのはおかしいのではないですか。企業側も保護 していただきたいということです。 ○長谷川委員 聞きたいのですが、どこかに保護されていますか。損害賠償できないと どこかに書いてありますか。書いてあれば保護されているかもしれませんが、私の拙い 法知識で言うと書いていないから、おそらくできるのだと思います。 ○奥谷委員 でも、これはよほどでないと訴訟できませんよ。まず受けません。 ○長谷川委員 企業側は労働者に損害賠償できないと書いてありません。 ○奥谷委員 企業側が保護されていないということですか。ではこれから、この労働法 制ができるのであれば、ここにちゃんと労働者と企業の対等な義務のルール化というの を、解雇に対しても何に対しても明確にするべきです。そういった反するものがあるわ けですから。 ○田島委員 労働契約法そのものは、いかに労使が対等な形でのルール化をするかです から、それは奥谷委員が言っているとおりだろうと思います。ただ、古いデータに確か 出ていると思いますが、何で有期として雇い入れるのか、期間の定めのない労働者にし ないのですかといったら、コストが安上がりで済むし雇用調整が容易で、繁閑に応じた 調整ができるという形で、結局は経営者にとってのコスト削減に大きく役立っているか らというのが大きな流れなわけです。そういう意味では均等処遇の問題とか、何度も有 期を繰り返すのは本当にいいのか。  先ほどの今日示されたデータで、フランスあるいはイギリスの例を見れば、これから 急激にグローバリゼーションで競争時代なのだということで、国際的に有期が増えてい るかといったら、そうでなくて、ドイツでさえそんなに急激に増えていないわけです。 日本はあまりにも有期が増え過ぎて、異常な世界にきているのではないかという気がし てならないのです。 ○廣見委員 この問題は、確かに実態との関係もありますので、有期の問題は非常に重 要だろうと思っています。基本的にいろいろ更新が繰り返されて、普通の期間の定めの ないような人と同じようになっている人を捉えて考えてみると、それはなぜ有期にして いるのか。しかも労働条件は非常に違うというのが大方の実態なのです。そこは経営者 側とすれば、その状態をもしも基本的に有期だけ、期間だけということでいくなら、全 く期間の違いだけで労働条件はすべて期間の定めなき労働者と同じ実態になっているか。 そうなっているなら、それは一つの言い方だと思います。  しかし、現実はそんなことには絶対なっていない。非常に大きなアンバランスがある わけで、そこは使用者側もよく見ていただいて、実質的に更新が繰り返されているよう なものは、それは一体何の理由で更新されているのかとなるわけです。そこは実態を十 分考えていくと、ここに書いてあるようなことをやらないと、そういう人たちの保護に ならないとなるわけですから、私は是非これはやるべきであるし、非常に重要な問題だ ろうと思っています。 ○奥谷委員 かなり業界によって違うと思います。金融関係、特にいま証券関係ですと 3年か4年しかいないというのです。どんどん代わっていく。本当にグルグル大手町界 隈の中で人が動いている。ですから、いくら終身雇用で云々とか言っても、働く側の本 人がキャリアパスという形で3年ごとぐらいで代わっていく今の現状を見て、むしろ、 どうやって押し止めるかというところで、いま、かなりの人材不足が起こっていること を聞きました。ですから業界によって違うのではないでしょうか。 ○新田委員 いま廣見先生が言われたところを、ここでイメージして考えていくことが 大変重要ではないかというのが私の考えです。奥谷さんの言っている人たちは、それこ そ買手市場で、ものすごく有能で高技能を持った人たちのことです。買手市場のことを 私は言っているのではありません。まさに先ほどおっしゃっている2か月ごとに何で更 新するのか。同じ仕事をしているのに給料は違うのか。派遣だと言われて派遣条件がこ うだと決まっているのに、これもやってと言われて、どうして上乗せがないのとか、さ まざまに困っている実態がいっぱいあるところをどう考えるのですかというのが、もう 一回言いますけども、ここで考える、いま現実に起こっている大きな問題ではないかと 私は思っています。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) 誤解をされてしまっているようなので。先ほどの趣旨は、 基本的にここでは有期労働契約をめぐるルールの明確化ですから、雇止めに関して5つ ありますが、継続を前提とした提案しかないので、それについてもう少し他の検討も加 えてもいいのではないですか、ということで言ったつもりです。  それから、先ほど労働側のほうの御意見としてあったのですが、その際に有期の雇止 めということと、正社員と非正規社員の均等待遇は全く別の議論だと思っています。こ のルールの明確化を議論するときに、それを持ち込むとごちゃごちゃになってしまうの ではないかと思いますから、それをきちっと整理して、分けて議論すべきではないかと 思います。 ○長谷川委員 有期のところは、いま使用者側の方も問題意識を持っているように、実 際、何が起きているかというと、パートタイマーも有期です、契約社員も有期です、派 遣も有期です。そういう意味では非正規社員、非典型社員のところで、有期のことが非 常に問題として起きていることは事実だと思います。このように、我が国で有期契約労 働者をずっと増やしていっていいのかどうなのかというのは、いろいろなところで議論 が行われています。今回の労働契約の明確化のところで、有期雇用契約というのはどう いうふうに考えるのか。雇用というのはどういうふうに考えるのかということを、きち っと出さなければいけないのだと思います。  私たちは労側ですから、労側は、雇用というのは期間の定めのない雇用が原則でしょ うということです。有期というのは例えば産休代替だとか、何かそういうふうに合理的 な理由があるときが有期ですねということを、きちっと明記しながら、入口や出口で規 制するのか、ある一定のルールを作らない限りは、私は有期のところは問題解決になら ないと思っています。それと、そちら側も言ったように均等対遇の問題は、別項目をき ちっと起こすことが必要なのではないかと思います。 ○岩出委員 2頁のいちばん上の○で、当初の議論では「均衡を考慮する」という中に、 いわゆる均等待遇と言葉は違いますが、意味合いとしては入っていると私は理解してい ますが、よろしいですね。 ○今田委員 この有期契約というのは多様化が進行して、これが大きな問題になってい るということだろうと思いますが、この働き方についての評価です。できるだけこうい う働き方はしないほうがいい、できるだけ抑えたほうがいいという考え方なのか、これ は産業及び働いている側双方から、こういう働き方というのが、それなりの必要性を持 っているという観点で、この有期あるいはパートというのを捉えるかということで、こ のルール化ということが基本的に違ってくると思います。  いまの働き方からいくと、奥谷さんの議論から言っても、そういう働き方を必要とし ているけれど留まってくれないというというのは、企業サイドはかなり、この働き方に ついてポジティブに捉えているわけですから、少なくともそういうポジティブな存在に 対しては、きちっとしたルールを敷いて、働いている人たちのいろいろな不都合を、で きるだけ排除するという形での労働契約法制の中でのルール化に対して、非常に積極的 になるというのが基本的には筋だろうと思います。  労働側にとってはいろいろあるでしょうけど、このデータから見ても、要するに有期 とかパートにおいて、働いて継続したいという現実的なデータが出ています。これをど う評価するのかもいろいろ議論はあると思いますが、パートとか有期という働き方につ いて、留まりたい、あるいは現状のまま正規にいきたいというわけでは必ずしもない。 そういう勤労者の意欲というものは現実として受け止めるべきです。だからこそ、こう いう働き方についてはノンコントロールで企業の思うままにという状態を、どうにか回 避しなければいけないというスタンスで、労働側はこの問題に取り組むことが必要なの ではないかというのが私の意見です。 ○西村分科会長 最後「国の役割」について一言ずつ、いかがですか。 ○田島委員 一点だけ発言させていただきます。雇用形態について自分たち自身が就職 するときに、働く側の労働者のほうにその選択する権利が、いま本当にあるのですかと いうことです。どうしても使用者側の求めに応じたパートや契約、派遣で就職せざるを 得ない。自分の選択権がなかなか実現できていないところに、いちばんの大きな問題が あるだろうと私は思います。 ○西村分科会長 国の役割について特にございませんか。 ○森氏(渡邊佳英委員代理) この「国の役割」というところについては、あくまでこ れは労働契約法ですので、基本的には国の必要な指導、助言というのはあってはならな い。むしろ行う必要がない形で作るのが筋ではないかと思っていますので、あえてこう いう表現は要らないのではないかと思っています。 ○西村分科会長 この点について、いかがですか。 ○廣見委員 あまりにも建前論過ぎるのではないかと思います。いかに民事規定であっ ても、その実態を見ながら適切な状態にどう持っていくか。国は国としての立場があり ますし、強権的発動というのは別にして、今までもそういうような中で判例法理等も見 ながら一定の紛争解決、その他のことについても、当然、指導、助言みたいなことはや ってきている。それも一つの役割だろうと思いますので、いささか今の議論は表面的す ぎるのではないかという感じがします。 ○岩出委員 同じ意見ですが、例えばよく比較されるのは、借地借家法とか労働契約承 継法は民法の特別法と言われています。こういうものも指針が出たりモデル規定が出た りしていますので、国の関与は必要だと私も考えています。 ○渡辺章委員 加えて、いまの民事法規に、行政上の一定のガイドラインなり、指針な り、指導なりがないというほうが少ないです。消費者契約法を見ても、いま言われた法 律を見ても、民事法だからそれは油と水だということにはならない。それを適正に運用 していくために一定の指導や助言がある。その内容は問題ですけれども、それ自体を否 定するということは暴論だと思います。 ○西村分科会長 時間がオーバーしていますので、今日はこれで終わらせていただきま す。次回の日程について事務局からお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は5月23日(火)10時から12時まで、場所は 厚生労働省17階専用21会議室で開催する予定ですので、よろしくお願いします。 ○西村分科会長 本日の分科会は、これで終了します。本日の議事録署名は島田委員、 山下委員、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。 (照会先) 労働基準局監督課企画係(内線5423)