06/04/28 第24回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 第24回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 1 日時  平成18年4月28日(金)10:00〜12:00 2 場所  合同庁舎第5号館(厚生労働省) 職業安定局第1会議室(13階) 3 出席者    委員  公益代表  :諏訪委員、大沢委員、中馬委員、中窪委員        雇用主代表 :相川委員、中島委員(代理:佐藤日本商工会議所産業政 策部課長)、原川委員、輪島委員        労働者代表 :栗田委員、豊島委員、長谷川委員、古川委員、三木委員    事務局 高橋職業安定局次長、生田総務課長、宮川雇用保険課長、田中雇用保険 課課長補佐、金田雇用保険課課長補佐、戸ヶ崎雇用保険課課長補佐 4 議題  雇用保険制度の見直しについて 5 議事 ○諏訪部会長 皆様、おはようございます。ただいまから、第24回雇用保険部会を開催 いたします。本日の出欠状況ですが、林委員、塩野委員がご欠席です。また、中島委員 の代理としまして、日本商工会議所産業政策部の佐藤課長がご出席です。大沢委員は少 し遅れるということです。  それでは議事に入ります。本日の議題は「雇用保険制度の見直しについて」です。本 年1月26日の職業安定分科会におきまして、雇用保険制度全般の在り方について当部会 で検討し、必要に応じ、職業安定分科会に検討状況について報告する、とされたところ です。これを受けまして先月3日に、雇用保険制度の見直しについてのフリーディスカ ッションを行いました。本日はこれに引き続いて、雇用保険の適用並びに給付及びこれ に関する財政運営の在り方について、皆様にご議論をいただきたいと考えております。  進め方ですが、最初に事務局から、いくつかの項目に分けて資料をご説明いただきた いと思います。その上で、そうした点につきまして議論をしていただければと考えてお ります。もちろん、いろいろな事項は相互に関わっておりますので、後ほど気づいた点 などは、それぞれの箇所とは別にご発言いただいても結構だと思いますが、とりあえず 部分部分に分けて進めさせていただければと思います。なお、本日は12時までを予定し ておりますので、これから検討をしていきまして、やり残した部分は次回に回すという やり方で進めさせていただきたいと思います。まず、適用関係について、事務局からの 説明をお願いいたします。 ○田中雇用保険課課長補佐 それでは資料に基づいて説明いたします。お手元の資料は、 大きく分けて3つに分かれております。資料No.1「適用関係資料」、資料No.2「給付関 係資料」、資料No.3「財政運営関係資料」です。なお、お手元のパイプファイルの中に 前回からの資料を綴ってあります。今後もこのような形で綴っていこうと考えておりま すが、適宜ご覧いただくことがあるかもしれません。  適用関係について、資料No.1に基づいて説明いたします。雇用保険の適用については、 適用事業に雇用されている労働者は基本的に適用される、ということになっております。 暫定任意適用事業(農林水産業の5人未満の個人事業)については、入ってもいいし入 らなくてもいいのですが、その他の事業については、労働者を雇っていれば適用される ということになっております。  全員適用されるかということですが、適用除外部分もあります。我々のような公務員、 船員保険の被保険者、それから65歳以後に新しく雇用される方などは適用除外です。そ の他の方々についても、すべてということではなく、短時間労働者にどこまで適用され るかということで、以前から議論があったところです。  1頁に「短時間労働者への適用範囲の変遷」を載せておりますが、従前、雇用保険制 定時の昭和50年には、所定労働時間が通常労働者のおおむね4分の3以上かつ22時間 以上という要件、それに年収要件と雇用期間の要件を課しておりました。その後、多様 な働き方の動きが高まってきたという観点もあり、その範囲を順次広げているという状 況です。現在は平成13年の改正時と同じ考え方で、週の所定労働時間が20時間以上、 雇用期間が1年以上の見込みがあること。これは「見込み」ですので、雇用期間が1年 以上という意味ではなく、見込みがあるかどうかで判断をしております。  2頁の真ん中に、このような基準にしている「考え方」が示されています。雇用保険 は、自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定 等を図る制度であるとあり、全員というわけではないということです。一般に、保険と いうものは、同種類の偶発的な事故、雇用保険の場合であれば失業ですが、そういう危 険にさらされている方々に被保険者になっていただくというものです。現在は、週の法 定労働時間が40時間であること等を考慮して、その半分の20時間を適用の下限として います。  このような基準をカチッと決めているのは、雇用保険は強制保険であるということに 由来しております。雇用保険を強制適用としている理由は、そこに書いてあるように、 任意ということになると「逆選択」を引き起こすという問題点があります。したがって、 強制保険として運営しているわけです。  3頁は雇用保険基本問題研究会の資料です。雇用保険基本問題研究会の「雇用保険制 度の在り方に係る議論の整理」を前回の部会で提出して簡単に説明しましたが、この「議 論の整理」の適用部分について掲載しております。(1)〜(12)までありますが、前回も説明 しましたので簡単に説明いたします。論点はいくつかあろうかと思いますが、どこまで 適用させるかが大きな焦点であろうと思います。現在のところ「事業主に雇用され、事 業主から支給される賃金によって生活している者」を被保険者とする、という考え方で 国民のコンセンサスが得られているのではないかという論点が(1)です。以下論点があり、 例えば(3)では、いまの要件について、果たしてきちんとチェックできているのかどうか という問題提起がなされています。  また(6)では、現在被保険者として短時間労働被保険者と、それ以外の一般被保険者と いう区分けをしております。前回平成15年改正において、所定給付日数については、短 時間労働被保険者とそれ以外の一般被保険者を一本化したわけですが、適用要件につい ては分けているという現状になっていますが、これについて議論する必要はないのかと いうことが(6)です。  さらに(7)、(8)で、非典型労働者やマルチジョブホルダーの問題も提起されております。 それから、65歳以上の方の適用除外についてどうするかというのが(10)です。  あとは暫定任意適用についてです。冒頭に申し上げたように、農林水産業の5人未満 の個人事業については、暫定的に任意適用だということで既に30年ぐらい経っているわ けですが、それをどうするかという問題。また、公務員に対する適用について、公務員 制度の在り方に係る議論を踏まえなければ駄目ではないかと、このような論点になって います。適用関係については以上です。 ○諏訪部会長 ただいまの説明について、ご質問やご意見がありましたらお願いいたし ます。 ○三木委員 この中でも出ておりますが、1年と20時間という問題につきまして、極端 に時間の長い層と短くなっている層と二極化している、という傾向が最近指摘されてお ります。現実的に、20時間未満の非適用の方たちがどのぐらいいるのか、雇用対策上、 今後どういう予測を立てようとしているのか。そこら辺の実情をおさえた資料はあるの ですか。 ○宮川雇用保険課長 資料があるかどうかについては、手持ちも含めて即答できません ので、その点については改めて精査した上でご返答したいと思います。基本的に、20時 間という考え方そのものは、先ほど説明いたしたように、ある程度のところで線を引い た上で、そこ以上、そこ以下というのをきちんと分けなければいけない。入っていい悪 いというのを、事業主なり労働者なりの判断に委ねるということは、リスクの高い人だ けが入ってしまい、リスクの低い人は保険料を免れるために入らないという、いわゆる 逆選択の問題が起きるという観点から、現在20時間としています。その状況につきまし ては、先ほど言いましたように、資料をもう一度精査した上でお答えしたいと思います が、基本的には20時間程度、要は普通の働き方の半分程度の働き方ぐらいはしないと、 (1)の論点に指摘があるような「事業主から支給される賃金によって生活している者」と いう概念にそぐうのかどうか、雇用保険という形でそれを支援する必要性があるのかど うかという点が1つのポイントではなかろうかと思います。  雇用労働者(65歳以上役員、官公を除く雇用者数)から、被保険者数が何パーセント を占めているのかということですが、17年で83.4%という数字が手持ち資料にありまし た。雇用者数が4,213万人、被保険者数が3,514万人ということですので、その差の700 万人ぐらいが雇用者でありながら被保険者になっていない方。厳密には、その中には未 手続きの方も含まれ得るわけですが、そこには短時間の方がかなりの部分を占めている のではなかろうかと想定されます。また何か資料があれば次回に出したいと思います。 ○栗田委員 適用関係で、(10)の研究会報告の中の考え方ということで、例えば65歳以上 も雇用保険制度の対象とするということになれば、現状の中で、かなり難しい問題も抱 えるのかと思うのです。強制保険制度との兼合いからすると、65歳という、この部分の 考え方は研究会の中でどのようにされたのか伺いたいのですが。 ○宮川雇用保険課長 65歳云々という議論をする前提として、雇用保険そのものという よりは雇用政策、労働政策の考え方としてどうなのかと。労働政策的な対象年齢も明確 にはされておりませんが、基本的には65歳以下の方、メインターゲットとしては、今ま では60歳までの定年制、それから65歳までの雇用確保という形での政策を中心にして おりました。65歳以降の労働政策として具体的にやっているものとしては、例えばシル バー人材センターによる、広い意味での就業も含めた雇用就業対策などを行っておりま したが、昭和59年に65歳以上を適用除外した形での整理をしたときと比べて、今後労 働政策がどうなるかと言う中で、考え直す機会が迫りつつあるのではないかという問題 意識を持ちつつ、こういう形での論点整理がなされたと理解しております。65歳以降へ の対処も検討すべきではないかという際に、「労働政策の対象年齢との関連も念頭に置 きつつ」と書いたのはそういう意図だったと理解しております。 ○大沢委員 遅れてきて大変申し訳ありません。議論をよく聞いていなかったので、よ い質問ができるのか分かりませんが。1点目は先ほどの、20時間未満の適用除外の労働 者が過去10年の間にどう変遷しているのか、増えているのか減っているのか教えていた だきたいのです。 ○宮川雇用保険課長 先ほどと同様の数字で比べてみますと、平成17年に83.4%、数 が700万人ぐらいでした。もちろん、これは短時間だけではなくて未手続きその他、65 歳は入っておりませんが、被保険者数との差です。ちょうど10年前の平成7年を見ます と、4,109万人の雇用者数に対して3,400万人の被保険者数で82.7%、その差も700万 人と、ほとんど変わっていないというのが状況です。 ○大沢委員 1つ懸念されるのは、もともと短時間は、80年代は既婚女性が多かったよ うに思いますが、その後、若者など、かなり多様な人材がそこに入ってくるようになり ました。いま私は出生率との関係も見ているのですが、実際に、就業形態によって結婚 や子ども数にも影響を与えているのです。これだけではそれほど影響がないかもしれま せんが、他の社会保険等の被保険者要件との関係で、全部をまとめて考えますと、こう いった要件を求めてしまうことが労働者を2つに分けてしまって、実は、それによって 生計を得ているような人が被保険者に入らない可能性が出てくる、ということも考える 必要があると思います。私はむしろ社会保険のほうを考えているのですが、社会情勢が 変わってまいりまして、短時間労働者が必ずしも被扶養者でないということを念頭に置 きますと、あまり要件を付けずに、すべての人がカバーされるような制度を将来的に構 築していくことが必要だと思っております。 ○豊島委員 先ほど課長が言われた言葉の中に、賃金で生活していると見るのか、見な いのかというような整理の言葉がありましたが、いま大沢委員が言われたように、賃金 で生活をしている、賃金も含めて生活の支えになっている等いろいろな形が広がってき ていると思います。先ほど話がありました65歳以降の考え方についても、この10年ぐ らいのさまざまな制度の変遷等を見ても、総収入で測るような見方が前提になって、さ まざまな制度の見直しがされてきているということがあります。そういう意味では、ま さに大沢委員がご指摘のとおり、見方を少し広げる、あるいは現実の変化に対応できる ような仕組みに変えるということが必要になってくるのではないか。どこで見るか、こ こで見るかという整理の仕方はもちろん承知しておりますが、全般の中で整理をして考 え方を詰めていかないと、後手後手になるのではないかという感じがしています。  もう1つ、適用とは関係ないのですが、この10年間の変化で見ると、関心があるのは、 適用されて失業給付を受け、支援をされる。支援された後に再就職をする。そのときに、 使用前、使用後ではありませんが、現実に今まで働いていた収入と再就職後の収入、そ このギャップが広がってきていると私は認識しております。ここの議論ではありません ので、適用並びに援助の在り方、その後のことを別なところでさせていただこうと思い ますが、認定、援助、支援、そして再就職、これはあくまでも生活が基盤だと私は思っ ていますから。生活全般を支える、そして就労を支えるという観点で十分機能するよう にしていけばいいのではないかと思っております。 ○輪島委員 いまの点ですが、私どもは常日頃そういうことを考えていないので、あま りよく分かりませんが、基本的には雇用なので、雇用関係がある、雇用の保険事項とい う観点の雇用保険というように整理して考えています。  それで教えていただきたいことがあるのですが、1点目は、いま特別会計の見直しの 関係で船員保険の見直しの議論が行われていると思いますが、それと雇用保険との関係 について、今どのような議論になっているのかを教えていただければと思います。  2点目は、適用に係る論点の(7)に、非典型労働者(週所定労働時間20時間未満又は雇 用見込み期間1年未満)と一応定義のような形になっていますが、雇用保険法上、非典 型労働者というというのは、こういう定義で見ていていいのかどうかを教えていただき たいのです。  また、マルチジョブホルダーがどれぐらいいるのかというイメージが湧かないのです が、数がつかめているのかどうかを教えていただければと思います。 ○宮川雇用保険課長 まず船員保険ですが、こちらは社会保険庁と保険局で所管してい ます。今回の特別会計改革、昨年の自民党による特別会計改革委員会、閣議決定、そし て今回の行政改革推進法案(現在審議中)の中で、船員保険については、今までの業務 上の、いわゆる労災部分と雇用保険部分と健康保険部分とを一体とした総合保険制度を やめまして、健康保険部分については公法人、労災保険や雇用保険相当部分については 一般制度で、ということを基本に考えるという形での方向性が、法案上あるいは閣議決 定上なされております。そして、私どもが聞いているところでは、関係者が集まった形 での検討会を今後行うことにより、その辺りの具体的な進め方が議論されるというよう に承知しているところです。  2番目、論点の中にある「非典型」に括弧を入れていることについてですが、私ども の制度はあくまでも、週所定労働時間が20時間以上で、雇用見込み期間が1年以上あれ ば入っていただかなければならない、それ以外の方は入れないという整理をしているの で、こういう人たちは非典型だと言うよりも、こういう方々の中には当然非典型の方々 が多いでしょうとか、いるでしょうという意味で書いております。特段、雇用保険制度 における非典型労働者という意味での定義づけをしたものではありませんので、その辺 りはそのようにご理解いただければと思います。  マルチジョブホルダーの資料はいま手元にないので、必要な資料があれば後ほど、あ るいは次回にでもお示ししたいと思います。 ○田中雇用保険課課長補佐 全就業者数の1%強ぐらいの人数だと記憶しております。 ○輪島委員 マルチジョブホルダーの方が雇用保険上適用になる程度に主と従があるの か、どうなのか。主が短時間被保険者で、もう1つは適用除外のような位置なのか。そ こら辺も分からないと実態がよく分からないので、適用については議論がなかなか難し いと思いました。  昨年労災保険で、事業所間の移動のところの通災の適用がありましたが、そういうと ころで労災のほうは措置をされているわけですから、雇用保険上どう見るのかというの は、少し議論は必要だと思いますが、実態がよく分からないので教えていただきたいと 思っています。 ○宮川雇用保険課長 その他の資料も、併せて次回用意したいと思います。 ○諏訪部会長 その際のお願いなのですが、マルチジョブホルダーには、いま輪島委員 が言われたような、主たる仕事をしていながら、ネット上で副業的に何かしているとい うようなものとは別に、今いちばん問題になっているし、他の先進国でも広がっている わけですが、1つ1つは小さくて短いけれども、いくつかを足すと、かなりの時間にな っているというパートタイマーみたいな方々の例なのです。したがって、ここがうまく 拾い出せるかどうか、ちょっと工夫をしていただければと思います。 ○長谷川委員 マルチジョブホルダーの話なのですが、輪島さんが言ったように、この 間労災保険の通勤災害では、時間が合算されて認めたわけです。ただ、給付のところは、 合算ではなくて片方だったと思うのですが。  雇用保険は実態がいろいろ混在していると思うのです。例えばシングルマザーの人た ちで、朝の早い時間はお弁当屋さんで働いて、一旦戻ってきて次はどこかで介護ヘルパ ーで働いてと、何箇所か持って働いているような人たちがいます。この人たちというの は、合算した賃金で生活しているわけです。その他、いま諏訪先生が言ったように、在 宅で何かやっているとかというものもあるのでしょうが、雇用保険で考えるときに、朝 2時間、次は3時間とかと細切れでやっているので、ここは本当に何らかの形で考えな いと、就業形態の多様化が非常に進んでいて、それを認めるとか認めないとかという話 ではなくて、現実にそれが存在しているわけだから、そこに対して、失業した場合にど ういう生活保障をしてやるのか。要するに、生活保護に頼らないで、どうやってある一 定の時期を保護するかということは、本当に考えなければならないのではないか。ただ、 捉えるのが非常に難しいと思うし、とかく、この雇用保険は過去にもいろいろと問題が あるわけですから、そこのところは慎重な検討はしなければいけないと思うのですが、 今回何らかの検討課題には入れる必要があるのではないかと思います。  もう1つは、私もよく分からないので少し先生たちにお聞きしたいのですが、(9)に請 負の話が出ています。最近、曖昧な雇用形態という形で、労働者なのか労働者でないの か曖昧な人たちがいるわけですが、これが非常に広がっています。だから、こういう人 たちの問題も何らかの形で。事務局からセーフティネットの在り方をどう考えるかとい うことで問題提起されているのですが、ここも少し議論の必要があるのではないかと思 います。どういう方法がいいのか、私も今のところ手持ちはありませんが、検討すべき 課題なのではないかと思います。  65歳以上の話は、あまり触れたくないけれども、年金の開始年齢との関わりが非常に 重要なポイントだと思うのです。だから、ここは労働政策との関係だと事務局も言われ たので、そういうことではないかと私も思っております。 ○宮川雇用保険課長 補足ですが、先ほど田中が述べた総務省統計局の平成14年の就業 構造基本統計調査によると、本業も副業も雇用者である者は約81万人で、全雇用者の 1.5%という数字はあるそうですが、その先の、先ほど先生が言われたところまでブレー クダウンできるかどうかは、もう少し精査して次回にでも出したいと思います。 ○諏訪部会長 言うまでもなく、他の諸外国では社会保険番号を持っていて、これで全 部名寄せみたいなことをしやすい国がありまして、そういう場合には、比較的簡単にマ ルチジョブホルダーズが上がってくるのです。ところが、日本の場合はなかなかそれが うまく補足できないところはある、それが一番大事な問題です。もう1つは、いま長谷 川委員も言われたようなインディペンデント・コントラクター、昔流に言えば一人親方 的な働き方に限りなく雇用に近いような場合にどうするか、そんなことがこれからだん だん問題になっていく課題なのかなというところです。適用関係で、ほかにいかがでし ょうか。 ○原川委員 基本的な質問なのですが、「短時間労働者」の対象者について「反復継続 して就労する者であること(1年以上引き続き雇用されることが見込まれること)」と ありますが、「1年以上引き続き雇用されることが見込まれること」は、実務上どうい うチェックで、どういう判断で行われているのか確認をしたいのですが。 ○戸ケ崎雇用保険課課長補佐 基本的には、雇用保険の資格取得届を事業主に出してい ただく際に、契約で決まっている所定労働時間をチェックします。そして、明らかに雇 止めをするのではなくて、仮に契約期間が1年未満であったとしても、原則としては更 新する予定だということであれば、1年を超えて雇用継続する見込みがあるということ で適用しておりますので、基本的には申告ベースで対応しています。 ○輪島委員 インディペンデント・コントラクターについては今年のILO総会で中心 的な議題になると聞いておりますし、状況によっては勧告ができるということのような ので、それを踏まえてどうするのかということにもなるのかなと思っています。  それから(12)の公務員の適用について。私どもが差し出た口を差しはさむべきものでは ないのかもしれませんが、私どもは、基本的には公務員も雇用保険の適用になる、とい うことのほうがいいのではないかと従来から主張しているところです。 ○中窪委員 先ほどの原川委員の質問との関連なのですが、短時間の範囲を平成13年に 拡大したときに、派遣労働者への適用ということも随分大きく議論された気がするので すが、その後実態として、特に登録型について、どの程度雇用保険に入っているのかと いうのは分かりますか。 ○田中雇用保険課課長補佐 前後で調べたものがないので、平成13年の後になりますが、 平成14年に派遣労働者でどれぐらい加入しているかというアンケート調査をとってお ります。これは前回の資料にも入れてありますが、加入している方が常用型の場合は 90.9%、登録型派遣の場合が85.3%と、かなり高い割合を示しております。 ○諏訪部会長 ほかになければ一わたり見ていきますので、次の項目に移りたいと思い ます。基本手当とそれに関する財政運営です。これをめぐって、事務局からまず説明を お願いいたします。 ○田中雇用保険課課長補佐 お手元の給付関係資料(資料No.2)と財政運営関係資料(資 料No.3)両方を用いて説明いたします。  まず、資料No.2の1頁に給付の体系が載っております。失業等給付を大きく分けます と、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付と4つの給付がございま すが、その中でも、求職者給付の中の一般求職者給付(基本手当)が最も重要な給付で あると考えており、予算額も最も多いものです。  一般求職者給付のうち、倒産・解雇による離職者には90〜330日の所定給付日数があ り、一般の離職者には90〜150日の給付日数があります。  財政運営ですが、全体として失業等給付の保険料は、いま労使折半です。農林水産業 や建設業等は1,000分の18ですが、その他の事業は1,000分の16です。基本手当の国 庫負担は、給付の4分の1です。  資料No.2の4〜5頁に「基本手当の概要」が載っています。基本手当は、失業認定を 受けた場合に給付をするという仕組みになっております。したがって、離職者は、4週 間に1回公共職業安定所に行って失業の認定を受けていただき、認定された分の給付を 行うということです。種類は、いわゆる倒産・解雇による場合と自分で辞めた場合は違 います。それから、就職困難者には給付が厚くなっているという状況です。これも、平 成15年度に上限額の見直しがあり、また、中高年層への重点化について改正を行いまし た。  6〜7頁に「基本手当に係る論点」を掲載しました。基本手当について、ここは非常 に問題である、というようなご指摘は、基本問題研究会の中ではなかったと承知してお ります。論点については、諸外国との比較等を基にして、現在の雇用保険制度の中の基 本手当の位置づけについて論証しております。  基本手当について確認された事項としては、(1)のa、失業中の生活の安定等、bの失 業者の早期再就職の促進という二面性があり、単に失業者の生活を維持するだけではな く、早く就職していただくということが基本手当の重要なポイントである、ということ が確認されております。そのための手法として、定率制がいいか、定額制がいいか、あ るいは定率制にしても、単純な定率制がいいか、それとも今のように、もともとの賃金 が低かった方には手厚く、賃金が高かった方には低くするという日本の方式がいいかと いうことについて議論がありました。しかし基本的には今の仕組みを維持することがよ いという結論になっていると考えております。  ほかの問題点として、失業認定の具体的な方法について、もっと見直すべき点がある のではないか、あるいは給付制限について、厳格化する必要はないかという論点があり ました。  8頁は現在の基本手当の支給状況です。平成12年度から載せておりますが、平成12 年度の支給金額は1兆8,929億円余、13年度と14年度は2兆円ぐらいでしたが、15年 度に大きな改正をし、また、景気も徐々に回復してきたため、15、16年と下がっている、 そして現在も安定的になっているという状況です。  財政運営について、資料No.3の1頁をご覧いただきたいと思います。先ほど申したよ うに、基本手当の国庫負担は4分の1です。雇用保険の国庫負担は給付ごとに違ってい るわけですが、この一覧表には、代表選手ということで基本手当の国庫負担について掲 載しております。これは失業保険時代から載せておりますが、失業保険制度が発足した 昭和22年当時、国庫負担率は3分の1でした。その考え方は非常にシンプルで、国と使 用者と労働者がそれぞれ等分の負担をするということです。昭和34年に、現在のように 4分の1になりましたが、平成4年、5年と一時的に下がり、平成10年には更に一時的 に下げたという経緯がございます。  2頁の「国庫負担率の改正について」で、経緯について簡単に書いてあります。昭和 34年に、現在のように4分の1になったわけですが、これは我が国の社会保障制度がど んどん整備されてきたという状況に応じ、社会保険制度全体を通じて、保険料率と国庫 負担率を再検討し、その結果、国庫負担率を3分の1から4分の1に引き下げた。同時 に保険料率も、1,000分の16から1,000分の14に引き下げております。  それから大分経ちまして平成4年、5年ということになりますが、これは平成4年改 正で同時に措置をしております。当時の状況としては、積立金の規模が非常に大きく、 財政的にはバブル景気等の影響により非常に安定期にありました。それも加味して、保 険料率と国庫負担率いずれも暫定的に引き下げたという経緯があります。  さらに、平成10年度は財政構造改革が非常に議論になっていた頃で、「財政構造改革 の推進に関する特別措置法」において、社会保障関係費についても、対前年度増加額を できるだけ抑制することが法案の中に盛り込まれたということを受けて、平成10年、11 年、12年、結果的には3年間国庫負担率を14%にまで下げたという経緯がございます。 なお、基本手当に関係して、国庫負担率については高率国庫負担制度があり、3頁に説 明資料を付けてあります。基本手当については以上です。 ○諏訪部会長 ただいまの説明に関してご質問、ご意見がありましたら、ご自由にお出 しください。 ○豊島委員 失業の関係で、倒産・解雇とその他事由で、給付のされ方や認定の仕方に 違いがあるのです。要するに、倒産・解雇という不慮の事故で失業したと。そのときは それでいいのですが、「その他事由」という考え方の中に、給付のスタートが遅いとい うことがあると思うのです。倒産・解雇は、もちろん会社の事情でやむを得なかったけ れども、自分の生活上の事情で、本人がやむを得ない場合もあると思うのですが、その ときに、どのくらい幅があるのか。例えば、本人が申請できるのか。いわゆる自己都合 と書いてあるということで、会社が「会社都合です」と書いてくれたというときに、そ れがどうなのかです。  もう1つは(4)と多少関係があるのかもしれませんが、ちょっと前に計算したので正確 に記憶していませんが、実際に半年間か1年間生活を維持する上で、一時金が入るか入 らないかというのは、やはり大きいような気がするのです。例えば35万円の賃金をもら っていて、一時金、いわゆるボーナスが2カ月分出ているというときに計算の基になる のが厳しい。先ほどの資料に基本手当の数字がいろいろ書いてありますが、大抵の方が 「このくらいしかもらえないのか」と。だから一生懸命に働こうとするわけで、それは それでいいのですが、そこを支えるという意味でどうなのかというのは、どうしても疑 問が続いているのです。結論的に言えば、やはり一時金も入れるべきではないのかなと いう気持があるのです。前半は質問、後半は意見です。よろしくお願いします。 ○宮川雇用保険課長 まず前半のご質問の件です。給付面は先ほどの5頁に書いてある ように、倒産・解雇による場合と自己都合、こう書いてありますが、倒産・解雇等以外 というのが正しい表現であり、その中には自己都合も入るということです。  こういう形で給付日数は決まっておりますが、いわゆる「自己都合等」の中には、例 えば定年、それから期間満了のようにすでに事前に予測されているような形のものは、 先ほど豊島委員からお話があった倒産・解雇のような不慮の事故とは違うであろう、と いう観点から給付日数を区別しております。ただ、いわゆる給付制限があります。雇用 保険では7日間という待機期間があり、この間は何も払われません。待機期間後支給さ れるということは原則にありつつも、自らの都合で辞めたことが明確な方、いわゆる自 己都合退職者には3カ月の給付制限があります。したがって、3カ月経って更に求職活 動をまだ続けていれば雇用保険が出る、という仕組みです。したがって、給付日数の考 え方の区別と、給付制限としての自己都合というのは範囲が違うとご理解いただきたい と思います。  ご意見として承りました一時金の取扱いについては、昭和59年の改正で現在のスタイ ルになったわけです。これについては当時も今も同じ説明ですが、賞与、ボーナス等の 扱いについては、一方で基本手当が非課税のものであるという観点で、例えばボーナス を含めた形での算定をしてしまうと、再就職に当たっての求人賃金、あるいは実際に毎 月もらっていた賃金と比べても相当高額になってしまう場合があり、かえって再就職意 欲を阻害してしまうという問題点が指摘されているとともに、賞与などにつきましては 企業によって、大中小とか、好況か不況か、そういう意味でのいろいろな差が大きく出 てしまうところです。  例えば中小企業が厳しくて、やむを得ず解雇され、当然のことながらボーナスも出て いなかったというような状況の方と、自己都合で大企業を辞めた方とを比べた場合に、 個々の失業者の問題、あるいは賞与等の支払い時期によって、それが入る入らないとい う問題もございます。そのような観点を総合的に考慮して、失業者について、毎月の賃 金レベルを基準とした生活保障を行いながら再就職の促進を図る、という考え方に立っ たということです。一応これは現在の説明です。 ○豊島委員 説明としてはわかりましたが、前半の質問について、今伺った上であえて 触れたいことがあるのです。その3カ月の給付制限が、率直に言えば厳しいのではない か、厳しい人がいるのではないかという意味です。突然何か家庭で、あるいは生活上の 事故があって働けなくなったというときに、その方がハローワークに行って、実は会社 が倒産したわけではないのですが、こういう事情なので早くいただきたい、というとき に何らかの手当ができるようにしていただけないか。そういう場合には、是非そういう ふうにしてあげたいという気持がある、ということを申し上げたかったのです。 ○三木委員 いま豊島委員が言われたところで、失業認定に当たって、職安に申請する 場合、自己都合かどうかということで実際に争いがある場合があります。特に個人紛争 が広がっている中で、争いがあってやっているときに、3カ月の待機期間ということに なると、率直に言って、その間の生活、そして実際に争いたくても争えない。経営者の 都合で辞めさせられたのに「自己都合」と書かれて、それで申請したらそのまま通って しまった、この矛盾というのはおかしいと私は思うのです。その点について、きちっと そこら辺がうまく。実際に権利として争う場合において、何らかの対応をしていかない と、争いたくても争えなくなる。ただ一方的に経営側の都合だけでやれるということ自 体が問題だと私は思います。とりわけ個人紛争が広がっているという状況の中で、その 点は是非議論の素材にしていただければありがたいと思っています。  一時金が中小と大企業で格差があると言っていますが、現実的に一時金も日々の生活 に補填されているのです。そういう意味からすると、そこの部分も本当にそれでいいの かという疑問もあるということ。そして、そこら辺をどう考えるかという議論は進める べきではないか、議論の素材にするのも1つの考え方ではないかと思っております。 ○戸ケ崎雇用保険課課長補佐 1点目のご指摘に対する回答になるかどうかわかりませ んが、実際、離職理由に基づいて給付制限がかかるわけですが、その離職理由の記載自 体は、本人確認も当然とるわけですが、事業主が行う。ただ、離職理由を書いた離職票 を持って実際に受給者がハローワークに行く際、受給地の安定所で、例えばこの理由で はないという話になれば、再調査をします。あとは安定所内部で審査会議を開いて、ご 本人の主張と事業主の主張を再度調査して、必要があれば離職理由を訂正して、給付制 限がかからないような理由に訂正するということもあり得ます。そのケースは結構ござ います。特にセクハラで給付制限がかかる、かからないの場合には、本人が実際にハロ ーワークに来てから申立てをするケースが多いものですから、そういうケースについて は給付制限はかからない、ということで変更になるケースもございます。 ○三木委員 そういう形で再調査を含めてやると今言われましたが、では具体的にそれ はどのぐらいのものか。実は、私どもで、事業主がこういうふうに申請しているので、 これでやりますという形で、本人の意向も聞かないでやっていたというケースもありま す。したがって、本人がそれで争っているとか、事実を裁判で争うとかという場合につ いては、きちっとそこは前提として救うべきではないかという気がします。その点は、 いかがですか。 ○戸ケ崎雇用保険課課長補佐 一応、そういうルールで動かしてはいるのですが、もし そういうケースがあれば、逆に我々のほうに教えていただきたいのです。当然、実際に 裁判にかかっているようなことを前提に置いているわけではありませんので、基本的に は、本人が申し立てれば再度調査します。通常は、離職票の交付安定所と実際の受給地 の安定所は違うものですから、調査を再度その事業所管轄の安定所にお願いするという 仕組みになっております。ですから、窓口で申立てを行えば、その結果やはり給付制限 がかかるというケースはあり得るかと思いますが、再度調査をするということは取扱い 上定めておりますので、そこについての仕組み自体は問題がないのかと思います。ただ、 実際にどういうケースがあるかというのは、具体的に見てみなければ分からないという 感じです。 ○三木委員 そこは問題があると私は思っておりますので、改めて申します。 ○大沢委員 2点あるのです。1点は、1年以上失業している者の割合は、増えている のか減っているのか、もし統計があったら教えていただきたいと思います。私の記憶で は、45歳以上の方で1年以上失業されている方が、失業率が全体的には下がっているに もかかわらず、一定以上いるか、あるいは増えているような状況が2、3年前にはあっ たように思ったのですが、それを教えていただきたいのです。  もう1つは、こういった手当が十分かという議論がありますが、今後の在り方として、 手当を支給するだけではなくて、再訓練などをして再就職に結びつくような努力も必要 なのではないかと思いました。ハローワークでインタビユーをしたときに、教育訓練は 受けたのだけれども、なかなか就職に結びつかないというのが40歳以上の失業者の例で した。諸外国では、例えば教育訓練を受けたということを条件に支給すると、それはデ ンマークの例ですが。そういう形で、失業保険にいつまでも依存せずに、再就職を支援 する。再就職支援と支給とを合わせて保障していく、という仕組みを考えている国もあ ると聞いておりますので、将来的には、手当と教育訓練とを組み合わせたような仕組み も考えたらいいのではないかという意見です。 ○宮川雇用保険課長 説明申し上げます。まず長期失業者ですが、手元の資料では、先 生がご指摘のように、平成13年以降割合が高まっております。いま持っているのは平成 16年の数字ですが、総務省労働力調査ということで、平成13年に26.1%が平成16年に は34.2%です。ただ、結果しかないので、何の数字がどういう意味なのかというのは、 次回にでもきちっとご報告したいと思いますが、いずれにしても、長期失業者の割合は、 平成16年まで高まっていたのは事実ではないかと思います。  もう1点の教育訓練との関係ですが、ハローワークの所長の指示に基づいて職業訓練 なりの教育訓練を受ける場合には、基本手当が出つつ訓練を受けられます。ただ、そう いう教育訓練を受けた結果として、結局それがなかなか活かせずに再就職に結びつかな いというのは、もう1つ、訓練の在り方に問題点があり得るのではないかと思っており ます。雇用保険を所管する立場からも、そういう教育訓練が、訓練後のものとミスマッ チせずに早期再就職していただけるような形での工夫努力が必要であるというのは、ま さにそのとおりではないかと思っております。 ○豊島委員 今、給付期間のうちに再就職できなかった人を集中的にケアするような仕 組みが何かあったような気がしたのです。いま大沢委員が質問された関係なのですが、 給付期間中に一生懸命探したが見つからない、という人が登録すると、もうほとんどマ ン・ツー・マンというか、相対で面倒を見てくれて、就職できるような仕組みがあるや に聞いていたのですが、その実際はどのようになっているのか。例えばその何とかに私 が登録をしました。その後、どのくらいで就職ができるようになったのか。その前と後 とで調査されたものがあるのかないのか。あれば教えていただきたいし、なければまた 次にでも教えていただければと思います。  それから、先ほど三木委員が質問されたことに関連して、仕組みはいいのだけれども 現場がどうなっているかというのを教えてほしい、というような趣旨で話がありました。 大事なことは、失業者は雇用保険の仕組みを勉強して失業するわけではなくて、失業し てしまった。それで雇用保険をかけているけれども、お金を少しもらえるみたいだから、 失業期間中はお金をもらおうと思って行くと、ハローワークで説明を受けて「ああ、な るほど。ちゃんとしなければいけないのだな、頑張らなければ」と思って始めるわけで す。その際に、「あなたは自己都合になっていますけど、もしそれで少し違うというこ とがあれば、申立てできるのですよ」ということぐらいはやってやってもいいのではな いか。要するに仕組みと実際の齟齬がないように、つながるようにということは、配慮 としては行政側は必要になるのではないかと思います。 ○生田総務課長 長期失業者の関係ですが、これについて高齢協会に基金を作っており、 その基金の委託事業という形で民間の職業紹介事業者の方にお願いをして、再就職の支 援をしているところです。長期失業者が多い地域を選んで委託をしていますが、成果に ついては、今はまだ完全にまとまってはいなくて、途中段階です。それはありますので、 次回に提出させていただきたいと思います。状況はそういう就職支援を経ることによっ て、就職率が、ハローワークでそのまま就職支援が一切ないという状態であるよりは、 上がっているのは間違いありません。ただ、再就職の最終的な経路はハローワークの紹 介を経ているということで、職業紹介の前に、カウンセリングについて、そういう費用 をかけることによって、手厚くできることの効果が上がっているのではないかと考えて います。  私の担当でないので恐縮ですが、離職理由等の確認については、制度的にはきちんと 組み込まれていて、本人の申立てをきちんと確認して対応することになっています。い まのハローワークの体制は、本人から申立てがあれば即座に調査しますので、引っ張っ たりはしないというのが基本で、ほとんどのケースが短期に決着がついて、労働者の申 立てについては十分尊重して対応していますので、そんな変なことにはなっていないと 思います。ただ、ときどき個々の事例として問題があるとすれば、それはできるだけ早 期に決着できるように対応していきたいと考えています。担当のほうできちんとやると 思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○宮川雇用保険課長 付け加えさせていただきますと、雇用保険制度は必ずしも受給者 の皆さんよくご存じでないという意味で、実際に来られたときには初回のときに受給者 向けの説明会をさせていただいています。かなり長時間になることもありますが、そう いう中にいま委員がおっしゃられた話も含めて、懇切丁寧に中身を説明しています。特 にこの給付制限3カ月というのはかなり影響の大きい話ですので、そういう道があるの だということは、十分周知していきたいと思っております。 ○諏訪部会長 長谷川委員どうぞ。 ○長谷川委員 雇用保険はお金の入る話だから、なかなか難しいのですが、例えば失業 している状況は、会社の破産だろうが、会社更生だろうが、民事再生法だろうが倒産し て解雇されたということと、会社の合理化に希望退職で手を挙げて退職して、それで失 業しているという状態。もう1つは会社の中で最近パワハラだとかセクハラがあって、 それで辞めて失業し仕事を探しているという状況は、労働者から見たときは同じ状況で す。ただ先ほど言ったように、自己都合で退職している人たちの中には、いま言った人 たちとは違うような人たちがいるのですが、例えば(イ)と(ロ)の区分だけでいいの かなど。私も明確にいいとか悪いとか、直せという結論はないのですが、セクハラ、パ ワハラみたいなものは、ある意味で(イ)の分類のところにあると。それに近いような ものがあるのではないかと思うのです。だから面倒なのはモラルハザードが起きるとい うことに対して、こういうように区分けしているのだとは思うのですが、ここは非常に 難しいとは思いつつも、そういうこともある意味では1回は検討しなければいけないと いう感じはします。 ○諏訪部会長 いまの点について、実情を説明していただけますか。 ○田中雇用保険課課長補佐 実は概要の紙では「倒産・解雇等」と簡単に書いてありま す。特定受給資格者になるかならないかということですが、特定受給資格者の要件とし ては、省令上、かなり多めにとっています。解雇、いわゆる退職勧奨をされて辞めたと いうだけではなくて、先ほどお話いたしましたように、いわゆるセクハラのような形、 事業主等から就業環境を著しく害されるような言動を受けたなど、職種転換等に際して 労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないとか、賃金の未支払いが2 カ月以上になっているなど、さまざまな理由を列挙しており、必ずしも倒産と解雇とい う狭い領域で特定受給資格者を絞っているというわけではなくて、かなり広めにとって います。また、規定については次回にお示ししようと思っています。 ○諏訪部会長 いまの規定は121頁にある35条です。 ○輪島委員 財政状況ですが、17年度は一応いまのところまだ見込みというか、予算で しょうが、17年度は締まったので、どのくらいの見通しなのか。それが確定するのはい つごろになるのか、ということを教えていただきたい。それから国庫負担の関係で3分 の1、4分の1、また下がっているという時系列的な説明がありましたが、この下げた ときや、14.0から4分の1に回復した、この辺のスキームが法律改正によってするのか、 省令改正によってするのか、国庫負担率を動かす根拠は何なのかということを教えてい ただきたい。  3番目は昨日の新聞記事でしか確認していないのですが、自民党や公明党で少子化対 策なのでしょうけれども、いろいろな案が出ていて、基本手当の話ではなくて、むしろ その後の話のところに記述がありました。私どもとしては、ちょっとどうかなと思わな いわけではないような記事でした。その事実関係について教えていただければと思いま す。 ○宮川雇用保険課長 失業と給付の収支状況は資料No.3の6頁に掲げさせていただいて います。16年度までの決算数値ですが、17年度予算はこれから決算を締めて、具体的な 決算数値の作業を出して、それを公表できるのはおそらく9月から10月ぐらいの秋にな ろうかと思っています。できるだけ早く出せるものは出したいと思っていますが、スケ ジュール的にはそういう形です。  国庫負担率は法律事項で、平成4年、5年、あるいは平成10年のもの、それを基に戻 した場合、すべていずれも法律的な手当をしたもので、いわゆる政省令に落とされてい るものではありません。  先ほど輪島委員がおっしゃられたのは、少子化に関して、特に育児休業給付について、 具体的に言えば給付水準の引上げを公明党なり自民党なりの中での議論として挙げられ ているという記事があったわけです。具体的に申し上げますと、自民党の子育て支援対 策小委員会というところで、少子化対策に関する中間取りまとめということで、昨日取 りまとめたと我々も承知しています。その中には育児休業給付について、給付水準の引 上げということを提言提案されている内容だと。また公明党の少子化対策国民本部だっ たかと思いますが、その中にも同様に育児休業給付について、たしか公明党のほうの提 案が、本来の対策としては育児保険を提案しつつ、次善の策という形でこの育児休業給 付についての給付水準の引上げという項目が入っていたと理解しています。 ○諏訪部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○輪島委員 育児休業のところでコメントを言わせていただければと思います。 ○長谷川委員 給付のところの話なのですが、必ず雇用保険の話になると給付を引き下 げる話が出てきます。先ほど豊島委員も言いましたが、基本的にはいままで生活してき たのが、失業することによって所得がなくなる。そこを補うという保険制度だと思うの です。だからなるべく職を失った時点の賃金に近くあるべきだと、私は基本的には思い ます。それと、この間、随分雇用保険の見直しが行われてきたわけですが、これ以上引 き下げることはすべきではないのではないかと、労側から一言いっておきたいと思いま す。  それと先ほどの自己都合ではなくて倒産・解雇等のところで、パワハラとかセクハラ がそうだと理解した上で、もう1つ、どちらの責任でもない介護みたいな、労働者の責 任でもなく会社の責任でもない、どちらだかわからないけれども、しかし突然として介 護をしなければいけない。しかし、この会社では無理だというときに、その会社を辞め る。あと少しもっと労働時間の短い所を探すということだってあると思うのです。そう いうものはどういうように考えるのか、一気に自己都合だというように言えるのかどう なのか。そういう意味で育児だってそうだと思うのです。この会社はとにかく残業が多 く、年間360より多く700だと。とてもではないけれども、無理だと言って女性が辞め ることだってあると思うのです。そういうのもどう考えるのかというのは、ある意味で 少し考える必要があるのかなと思います。 ○輪島委員 いまの基本手当の給付率の関係ですが、基本的にこれまでの積上げのとこ ろできていると考えれば、失業中の生活の安定という話と早期の再就職の促進という2 つのキーワードの中で、ぎりぎりのところで折り合っていまの50%という水準にきてい るのではないかと思います。議論としてその水準について議論するということは重要だ と思いますが、いまそういう状況で50%の給付率になっているということも一方で大変 重い事実なのだろうなと、私どもとしては思っているということだけを申し上げておき たいと思います。 ○古川委員 公共職業訓練のことで教えていただきたい。公共職業訓練受給中というの は失業基本手当が出るわけですね。たしか最長2年ということなのですが、この2年と いうのは1つの訓練で2年なのか、いくつも組み合わせて2年できるのか。1つの訓練 としては大体どんな訓練が2年間なのか、ということを教えていただきたいと思います。 ○宮川雇用保険課長 正確な職業訓練の種類等で間違いがあれば後ほど訂正したいと思 いますが、おおむね意味づけとしては、離職者の場合は訓練を集中的にやって早く再就 職したいというニーズが当然ありますので、離職者向けの訓練コースというのはある程 度短くというか、2年間もかからずに、例えば6カ月とか1年とか。たぶん6カ月くら いが多いのではないかと、私自身昔能開局にいたときに感じたことがありますが、そう いう形でやっております。それから何回できるかということですが、昔はたしか1回と 理解しています。これはたしかもう1回できるように手続的に改正させていただいたと 思っています。離職者の訓練をどのくらいの期間やっているかというのは、後ほど能開 局の資料を提出させていただきたいと思います。おおむねそういうイメージだったと記 憶しています。 ○田中雇用保険課課長補佐 それに付け加えますと、最長、考えようによっては給付が 2年間延長されるということになるわけですが、私どもが調べてみたところ、給付が延 長されていた例として、長かった例でも1年ぐらいでした。給付を受けている方で2年 コースをとられている方は、相当少ないというか、ほとんど多分いないというように思 われます。おそらく1年以内で、いちばん多いのは6カ月ぐらいだと思います。 ○中窪委員 長谷川委員の発言とも絡むのですが、1つには倒産・解雇等として特定受 給者に当たるかどうかという判断基準があると思うのですが、それとは別に先ほどから 議論になっている、正当な理由なく自己都合ということで給付制限がかかるということ で、そちらについてもたしか基準がいくつかあったと思います。それをよく照らし合わ せて、これはこっちでこれはこっちで、こっちが中間ですという、そういうのがわかる ような資料を出していただければと思います。 ○宮川雇用保険課長 はい。それは整理して出させていただきたいと思います。 ○中窪委員 前回ご説明があったのかもしれませんが、自己都合のときに1カ月から3 カ月という法律があるのですが、これは実際上ほとんど3カ月になっているのでしょう か。それともその辺の幅はあるのでしょうか。 ○宮川雇用保険課長 3カ月という運営の仕方をしていまして、法律では1カ月から3 カ月ですが、運営上は一律に3カ月でやっています。 ○諏訪部会長 ほかに何かございますでしょうか。では、もう1つテーマがやれそうで すので、次のテーマに進めさせていただきます。次のテーマは高年齢求職者給付金、特 例一時金及び日雇労働求職者給付金とこれらの財政運営の関係です。お願いします。 ○田中雇用保険課課長補佐 順番にご説明いたします。9頁から「高年齢求職者給付金」 です。10頁です。高年齢求職者給付金ですが、これは同一の適用事業主に65歳以前か ら引き続き雇用されていた方が、65歳以上になりまして失業した場合、再就職する意思 があるという認定を行った上で、一時金を支給するという制度です。被保険者であった 期間に応じ30日または50日ということです。これについては65歳以上の方に対する給 付ということで、いくつか指摘が出されていますが、12頁に当部会からの報告にも問題 点というか、課題が指摘されています。10年度改正で11年度から給付率が半減された ばかりなので、直ちに見直すことは適当ではないが、将来的には廃止も含め見直しを行 う必要があるという提言をいただいています。また、14年度の部会報告においては、今 回の見直しというのがありますが、これは給付日数を減じた見直しを行ったわけですが、 その見直しにとどまらず、将来的には廃止も見直しを検討していく必要があるというご 指摘をいただいています。  11頁に戻っていただきますと、雇用保険基本問題研究会においても問題点が指摘され ており、2点ほどあります。65歳以上の問題ということなので、年金制度や65歳以降 の求職活動の実情、在職老齢年金との関係、社会保障給付への課税問題等とさまざまな 問題がありますが、これらを総合的に勘案して制度等を検討していくべきではないかと いう指摘。  65歳を境に世代間の恒常的な所得移転となってしまっている、というような問題点が 指摘されています。これは65歳になると、4月1日時点で64歳の方については保険料 を免除するということになっています。この制度との関係をどうするかということが論 点として挙げられています。支給状況については13頁です。  15頁「特例一時金」です。これは季節労働者の方に対する給付です。50日分の特例一 時金が支給されるということですが、制度の創設が雇用保険の制定時で、それ以来、基 本的なフレームは変えていません。論点と雇用保険部会、当部会からの提言は16、17 頁です。17頁に部会からの提言をいただいていますが、かなり厳しい指摘をいただいて います。11年度の部会報告では、将来的にはその在り方を検討する必要があるというこ とです。14年度の部会報告においては、今回は見直しの対象にしていないが、特例一時 金については失業がもともと予定されていた者に対する循環的な給付であり、他の雇用 対策等で措置することが適当なものであることから、今後その在り方について検討して いく必要があるという厳しい指摘をいただいています。  16頁に基本問題研究会の論点整理が4点ほど載っていますが、厳しく指摘をいただい ています。廃止を含めて検討すべきでないか、あるいは地域間が非常に特定地域に限ら れているので、地方自治体の施策ではないかと、かなり厳しく指摘をいただいています。 ちなみにいまの支給状況は18頁に掲げています。いわゆる給付と負担のバランスと書い てありますが、これは保険料の推計と特例一時金の給付額を19頁に掲載しております。 20頁は特例一時金の支給状況と基本手当の支給状況を、各県別にどれぐらい支給されて いるか、構成比はどれぐらいかというのを掲げています。特例一時金についてはいちば ん上の北海道、青森で受給者数、支給金額についても共に1番目と2番目ということで す。併せて受給者数、支給金額も共に7割以上です。やはり積雪寒冷地で給付が多いと いうことです。特例一時金は以上です。  「日雇労働求職者給付金」ですが、これは日々雇用されている方に対する給付という ことです。22頁以降ですが、賃金の日額に応じて等級が3等級に分かれています。論点 としては23頁にあります。基本問題研究会の中では、いわゆる給付と負担のバランスで すが、非常にアンバランスな状態が続いているということを指摘されています。給付額 に見合う保険料収入を確保することが望ましい、という考え方もあるということを指摘 されています。  給付と負担のバランスについては25頁に掲げています。24頁には支給状況というこ とで掲げていますが、支給金額はだいぶ少なくなってきて、現在16年度は180億円、12 年度は253億円ということですので、だいぶ減ってきている状況です。ちなみに日雇の 被保険者はいまは大体3万人ということです。 ○諏訪部会長 ここは積年の宿題がいろいろ溜まっている部分ですが、皆様からご質問、 ご意見等がありましたらお願いいたします。 ○輪島委員 1つ質問ですが、基本手当の給付と負担の割合はいくらで、それと比べて 特例一時金等がどうかということを教えていただきたいです。 ○宮川雇用保険課長 数値的に正確なものは後ほどお示ししたいと思いますが、基本的 には給付と負担は国庫負担分を除けば、すべて保険料で行っております。そういう意味 でいえば原則4分の1を除く4分の3で、過去昭和50年以来、給付と負担のバランスを 考えた場合に、残っているのがいまの積立金です。積立金以外の部分については保険料 は1000分の16に相当する、あるいは過去の部分についてもすべて給付していますので、 基本的には給付と負担は国庫負担を含めてバランスしているとご理解いただければと思 います。後ほど数字は出したいと思います。 ○輪島委員 バランスしているというのは1.0倍ということですか。 ○宮川雇用保険課長 正確に言うと1.0倍から国庫負担分を加えたものということです ので、給付と負担の割合という観点から見れば、給付のほうが上回っているということ ですので、1.数倍になるということです。理論的には基本手当のみで考えれば1.25倍に なるということにはなるでしょうけれども、過去の例からすれば、国庫負担率が下がっ たりということもありますでしょうから。それから単年度で見た場合には、あまり意味 がない数字になりますので、そういう意味では理念的には1.数倍になっていると、この 表を見ていただいたほうが分かりやすいのではないかと思います。 ○長谷川委員 この問題について、この間に審議会でどのような議論をしてきたのかと いうことと、結論、方向性を理解した上で述べると、この資料の中の16頁の(4)にも書い てあるように、季節労働者問題は積雪寒冷地特有の問題だとあり、まさにそういう話な のです。そこに通年雇用があればこういう問題は発生しないで解消できる。しかし、通 年雇用ができるような産業だとか、そういう状況でない場合に、この制度だけを廃止し て何が起きるのか、それをどう捉えるのか。  今日のペーパーでは地方自治体の施策ではないか。そういう意味で、ズバリ北海道問 題だから北海道の話でしょうと言えばそうなのだと思いますが、現実に春になればその 人たちの雇用はまた出てくる。そして春になれば働いて、また冬の3カ月ぐらいになる と、そこは全く仕事がなくなる。それでその3カ月は彼らは収入がないので生活が大変 困難になってくる。この話は別な所でも若干お聞きしたのですが、長い問題だったと聞 いており、なかなかいい手当が出なかった。何か産業が起きたかというと相変わらず何 をやっても失敗で成功していないというのです。そういう状況でこの見直しだけをバサ ッとやることが、本当にいいものなのかどうなのかということについて、北海道のこの 季節労働者にとっては、非常に生活する上で深刻な問題なのではないかと思います。 ○中馬委員 私はただ教えてくださいということだけなのです。この20頁の図で、平成 16年度の表が出ているわけですが、この問題を深刻にやるということでしたら、時系列 的な傾向、あるいは景気循環に応じて産業構造がどうなっているか、もう少し中長期的 な資料を提供していただいたほうが、バイアスがかからなくていいのではないかと思い ました。特に90年代以降どうなったのか、以前と変わったのか、そういう辺りを知りた いと思います。 ○宮川雇用保険課長 90年代以降の資料については適宜、次回までに提出させていただ きます。 ○長谷川委員 原川委員、この地域というのは何か産業が通年的に起きるとか、起こす ものってあるのですか。そこが重要だと思います。 ○原川委員 そうですね、地域の産業振興という観点からすれば、産業クラスターの育 成などは経済産業省、中小企業省では行われていると思います。ここ長らく北海道や青 森の状況を見ると、なかなか全体として景気もよくならないし雇用情勢もよくならない ということが続いていて、そこは地域の中では非常に大きな問題になっているというこ とは我々も認識をしています。 ○高橋職業安定局次長 いまの特例一時金にかかわっての特に北海道、青森における問 題というのは地域雇用の問題で、いま全体的に雇用失業情勢は改善してきて、有効求人 倍率で見ても全国的には1倍を超えて3カ月、今日発表がありましたが4カ月を維持し ている中で、北海道から青森も含めた7つの道県では、なかなか全国的に見て改善して いるにもかかわらず、もちろん改善はしていますが非常に足どりが弱いということです。 それで7道県について、少し重点的に雇用対策を推進していく必要があるのではないか ということで、その取組みを始めたわけです。その中で、各地域がそれぞれの地域を今 後どうやっていくのかという戦略なり、取組みなしでは問題の解決にはなかなかならな いだろうということで、7道県ごとに地域雇用戦略会議を設置させていただいて、地元 でのいろいろな取組みを活発化させようということで始めたわけです。  それで一昨日、青森県でこの戦略会議があり、私も出席させていただきました。青森 県は北海道の問題ともやや共通する部分があると思いますが、産業構造で見ると農林水 産業と建設業の比率が圧倒的に高いのです。まさに季節労働者問題の大きなポイントと してこの建設業の問題があると同時に、その背景には公共部門依存型の経済構造が結果 として残されてしまっている。この問題を解決していかないことには、県全体の雇用を 考える上では避けて通れない。ひいてはこの問題に結び付く話で、そういう中で地域地 域で全国的に同じような取組みをやってみても、北海道なり青森なりはハンディがある わけです。その中で競争していくためには、地域独自でどういう資源があるのか、それ をよく踏まえた上で、それぞれの地域の独自の戦略を考えていかなければならないとい うことについては、特に青森県の知事さんも積極的に検討して、青写真作りをやってい くということを言われています。  いちばんのポイントは1つは製造業の比率が非常に低い。製造業をただ誘致しようと 考えたところで、これは国際競争の場ではそう簡単ではない。皆さん苦悩があることは あると思いますが、問題がどこにあるかということは皆さん相当深く認識をされておら れます。そういう意味でこの問題を考える上では、まさに長谷川委員が言われたように、 1つは通年雇用対策を着実に進めていけるような仕組み、それを支える産業構造の転換 をどう進めていくか。これを我々も政策的にどこまで支援できるか、そういうものを当 然含めて考えていかなければならない問題だろうと思っています。 ○中馬委員 北海道の問題は、いま起こっている状況をどのようにしてより鮮明に解像 度を上げて見えるようにするかという観点から、こういう形で救うというのはややボヤ ッとさせる。そうすると、さまざまな補助金が北海道に流れたりしているという状況で、 地域的にどんな問題を抱えているかということがより鮮明に見えるようなある種の指標 の作り方、雇用保険制度の作り方、あるいはより自己完結型に地域で何が起こっている のか。いま北海道でこういう問題が、青森で起きているのだったら、雇用保険でこうい う形でやるのではなくて、もっと包括的にいろいろな指標が一括して状況が見えるよう な形の、ある種の自己完結性を重んじるようなタイプの指標がとれて、そういう制度で あったほうがズルズルいかなくてよさそうだなという気がするのですが、その辺りはど うですか。 ○長谷川委員 安定局から言われましたように、7の都道府県は雇用戦略会議の県なの です。その中に北海道と青森が入っているわけですが、そこにはおそらくいま厚生労働 省からいくいろいろな助成金は重点配分だと思うのです。あとパッケージなどもやって いるわけですが、経産省からもおそらくいっていると思います。だから、もう少しそう いうものを見ながら、公共事業、建設業に依存した体質から変えるということを、もっ と精力的にやりながら、労働者にもこうですよというメニューを示して、早く変えまし ょうと言わない限りは、この地域というのはほかの先生に聞いたところ、何をやっても 失敗をする。いろいろなことをやるのだけれども、なぜか失敗するのだそうです。そう すると、成功させるためにはどうしたらいいのかというのは、まさに雇用戦略会議等で 議論してもらいながら、方向性を示して、こういうズルズル型は、あるところで整理す るということが必要だと思うのです。  もう1つは、昨日テレビでどこかのすごい山中の話をやっていて、東京の商社とジョ イントして産業を起こして、地方にはこんなものがあったのかという産業起こし、村起 こしの話が報道されていましたが、まさにパッケージの事業というのはそういう事業だ と思うのです。だから、そういうところをもう少し推し進めながら、雇用保険のほうで も今こういうことをやっているので、それをある一定の時期に精査して見直すという方 向性がないと、ただもうズルズルだから駄目だでは、現地が納得しないのではないかと 思います。 ○中馬委員 企業の中でもそうかと思うのですが、やはり局所的に一つひとつの小さい まとまりごとにされてきた指標も、もうそういう問題ではなくなっているわけです。で は大局的にやったらどうなるのだろうか、大局的にやるためにはどういう指標をとらな ければいけないのか。それはさまざまな省庁からお金が出ているのだけれども、その政 策効果はどうだったのだろうかということを見るためには、包括的なパッケージで見な いと、無理なのではないかと思います。 ○長谷川委員 そうですね。 ○中馬委員 それでズルズルいっている例というのは、いくつも世の中にあるのではな いかという気がするのですが。 ○大沢委員 確かにそのとおりだなと思うと同時に、そういうことを戦略的にやって効 果が出たら、こういう補助は要らないと思うのです。保護を最初に外してうまくいくの かというと、労働者にとってはやはり犠牲者であって、生活がかかっているわけです。 まずは問題設定をして効果を出して、その後で効果が出たら保護を外すという順番に。 何かいまの議論を見ていると、とにかく抑制で、保護をしているからいつまでも頼る、 という考え方だけが優先的に語られてしまいますが、いろいろなところで歪みがあるか ら犠牲者が出ていて、結果として、生活保護に頼らなければいけない人がたくさん出て きていると思うのです。  そこの構造変化に対して、大手企業の人たちは、比較的数が多いので救われているよ うなところがあるのですが、主婦やマルチジョブホルダーといった人たちの声がなかな か届かなくて、非常に苦しい状況にあって、そういう人たちが自己都合で辞めていくと いうところは、あまりここで議論されないのです。全体的に見ていくと、問題が保護さ れる人が増えたことにあるわけではなくて、それを作り出している構造の中に歪みがあ るので、まずはそこで、例えば女性の活用を進めるとか、いろいろな形があると思うの です。そこをもう少し論じた後で、雇用保険が果たして十分かとか、議論をすべきかと。 今日の議論を聞いていると、本当に保護をいま必要としている人がいるのだという現状 について、議論する必要もあるのではないかと思いました。 ○宮川雇用保険課長 ご参考までにこの論点の(3)の中の議論として、このように指摘さ れている点については、これが実質的には休業補償の役割をしており、そういう意味で は労働者保護という観点もあるわけです。事実上事業主が本来払うべき休業保障を、い うならばほかの地域の事業主及び労働者の雇用保険料でやっているのではないか、とい う意味での地域間の公平性という問題をおそらく頭に入れて、これをまとめていただい たのだと私自身は思っております。いずれにしてもこういう在り方がいいのかどうか。 もちろん具体的にこれをいじれば、現実にいま受け取っていただいている方々への生活 に直結するというのはもちろんですが、その効果としては本来事業主が果たすべき役割 を果たしていないので、この制度があるためにそれに温存しているのではないか、とい う問題意識があったのではないかと拝察しています。 ○長谷川委員 それはほとんどが建設労働者なのだけれども、冬の間も建設の仕事がで きるような開発はしているという話も聞いています。だからそういうことをやれば、そ の3カ月間でも仕事ができるのだと思います。本来は事業主がきちんと保障をしていれ ばいいのです。でも春になればその労働者は必要になってくるわけです。春からずっと いって、冬になって、その冬の間の建設業の屋外作業ができないために、その間だけを 雇用がないという話なのです。もう1つは作業構造の転換をしながら、山のように公共 事業に頼っていた建設業が転換されていると思うのです。だから、ここの問題をもう少 しいろいろな角度から議論しないといけないのではないですかと私は言っているのです。  先ほど原川さんに振ったのは、企業も努力をしなければいけないのではないですかと いう意味もあったので、産業構造の転換に事業主も努力する。それと3カ月の冬期間仕 事ができるものをどう変えていくのか、という開発も必要なのではないかと思います。 ○中馬委員 なかなかコミュニケーションが難しいなという気がします。大沢委員のお っしゃったことに関して、発言の意図は雇用保険制度の中でできることは何だろうか。 それはある種構造の一端をもっと解像度を上げて、多くの人たちがわかるような指標化 という形が望ましいだろう。そのためには自己完結型に何が起こっているかということ をうまく表現するような形にしたらどうだろうか、ということを申し上げているわけで す。それをやめたほうがいいと言っているわけではなくて、もう少し鮮明に世の中で何 が起こっているのかということが分かるようにする。経産省やいろいろなところのお金 もいっているでしょう。そうすると、地域の方だけに任せておいたら、おそらく良いア イディアは出ないだろう。もっと広い範囲の人たちのアイディアを結集するためには、 もっとわかりやすいコミュニケーションの指標が必要だろう。その指標を作るというこ とでもう少し努力をしてみたらどうかという、その程度の話なので、コミュニケーショ ンが難しいなという感じです。 ○長谷川委員 よく理解しています。先生たちの言っていることはどういうことかとい うのは理解しています。 ○豊島委員 先ほど来言われているような景気の変動、地域的な企業の在り方について 聞いていて思うのは、決定的なことは構造上の問題がいろいろあります。この場合はま さに自然の条件で自然的な条件でこういうことが起きているとなると、では、それを地 域に任せるべきかというと、地域に任せるだけでは足りないということで、国としての 援助がさまざまにされている。さまざまにされているのが各省からいろいろな形で出さ れているけれども、要するにどういうものがどういうところから出されているか、とい うことを一言でいえば、国の金がその地域にいくらトータルで入っているのか、その使 い道はどうなのだということをクリアにすべきだと。そして、みんなで判断して実際の 支援として機能するようにしようという趣旨だと思うのです。  ですから、ここの場合は雇用保険全体もそうですし、休業保障という話が出ましたが、 私は労側の立場に座っているのですが、企業主と労働者が双方負担しているところで雇 用保険を見るときに、そこにある事業主の責務に帰すべき問題ではないことなわけです。 数字が出ていますが、南のほうにはない問題なわけなので、それはあくまでも国として 国民全体で支えるという関係、国民の中には企業全体も入るわけですから、そういう仕 組みは仕組みとして維持しながら、いま中馬委員が言われたような形で。  いつもここで議論になるのは雇用保険の狭い世界ではなくて、いま社会構造上さまざ まな地域的な事情の違いで、全体で見なければいけないというように必ず広がっていく 議論が多いのです。そういう全体を見た上で、私ども雇用保険の世界ではこうしていこ うと考えていかないと、木ばかり見ても森が見えない。森が見えないもどかしさで、隔 靴掻痒みたいな議論をして、ここの雇用保険の世界の中に関係する議論にならざるを得 ないところに辛さがあるから、ほかの所にもいろいろ言えるような、メッセージを送れ るような何らかの中身が出てくればいいのではないかと、感想的なことですが思ってい ます。 ○栗田委員 積雪の寒冷地特例一時金はこの寒冷地特有の問題だ、というようにこの研 究会の中でも言われていて、その受給者も大半がそうなのです。私は植林に関係してい るのですが、実は沖縄や鹿児島、離島に特有な、例えばサトウキビができる収穫のとき に工場を集中的に回して、そこで働いている人を確保しなければいけないということか ら、そういう離島で働いている人たちがかなりいます。それは単なる積雪の寒冷地の問 題だけではなく、農業の自給率の問題も出てきます。そこのところは全般的に政策でど うしていくのだというところも、視点としては必要ではないかという気がしています。 ○原川委員 先ほどの企業の責任という点で言わせていただきますと、豊島委員が言わ れたように、これは1つ大きな原因は自然現象ということがあるわけです。その地域の 企業もその自然現象によって仕事がないということがあって、こういうような季節労働 者の働き口が非常に狭くなっているということがあると思うのです。したがって、企業 も存在するということがまず第一であって、存在する限り、企業に従来から勤めている 労働者は雇用されることによって生計が立っている。その人たちの雇用を守るという意 味で、企業は存在しなければならないということもあるわけです。  こういう季節労働者問題を企業の責任に帰することは、私はきつすぎるのではないか と思います。要はいまも出ましたように、こういう季節労働者問題については対策はも ちろん必要だと思っており、それをこの論点でも指摘されているように、循環的な給付 になっているということを、雇用保険制度で行うのがいいのかどうか。あるいは一般対 策で行うべきなのか、そういうところも重要な問題であると思っています。 ○諏訪部会長 まだいろいろとあろうかと思いますが、そろそろお時間になってきたと 思います。最後の点は高年齢者の問題等もありますので、また少しその辺は次回に、そ の部分等は議論をしていませんから議論をさせていただいて、残った問題をと思います。  ただいま皆さんにご議論いただいた部分は、大変重要な論点がたくさん含まれていた と思います。短期特例被保険者の問題は、いわばカンフル剤です。ところがそのカンフ ル剤を延々と打ち続けてきたというのは、どこかに制度としてもゆがみがあるわけで、 全体としても問題がありますが、雇用保険としては非常に問題で、制度としてはやはり 考えるべきであろうかと思っています。その場合には、例えば大沢委員がおっしゃった ように、もう少し教育訓練という方向に向けていく。つまり、外で働けない、無理に屋 内で働くという形にするよりは、春になったらさらに生産性が高く働けるようになるた めの教育訓練の方法としてドッキングさせて給付するとか、さまざまな考え方もあろう かと思われます。  いずれにしても論点、問題点を繰り返し議論して、19頁にあるように、かつては給付 と負担の割合が10倍ぐらいでしたが、これが5倍ぐらいにまでいろいろな関係の皆さん のご努力やその他の事情によって、いま変わってきました。いずれにしてもこういうや り方がいいのかどうか等は、さらに詰めて、そろそろ考えていかなければいけない時期 ではないかと思われるわけです。いずれにしても全体、そのほかにも矛盾があるのは、 ここだけではありません。制度全体をどのように再設計していくかという議論をする中 で、皆さんにも今後とも有益なご意見を賜ればと思っております。  それではほかに特にご意見はございませんでしょうか。 ○輪島委員 先ほどの育児給付の件で気になっていて、次回の日程で育児休業給付のと ころがあればそのときに正式に申し上げたいと思いますが、いまの新聞報道だけで言う と、本当にそのことが、つまり給付率を上げるということが本当にいいことなのかどう か。1つは40%が給付率になっていますが、それをさらに上げるということは、基本手 当の50%に限りなく近付けるのか、またはそれ以上にするのかということになると、む しろそういうことであればそれは国庫負担でやるというようなことも考えるべきだろう。 雇用保険の中でやるということではないのではないか。また、もう1つ、原則論ですが、 育児休業を取れる人と、取れない人がいらっしゃるわけです。少子化対策全体の中で育 児休業給付に特化することもさらに問題だと私は基本的に思っておりますので、その点 だけ、今日申し上げておいて、審議会で使用者側がそういうふうに言っていたと、役所 のほうからご説明をいただきたいと思っています。 ○諏訪部会長 それもまた構造的な問題が背景にありまして、議論し始めますと大議論 になる論点だろうと思います。今日は時間の関係がありますので、また育児休業給付を 議論する際に、是非本格的に論じていただきたいと思います。よろしゅうございますか。  それでは本日は以上で終了させていただきまして、次回、引き続き雇用保険の適用並 びに給付及び財政運営の在り方について、ご議論を継続させていただきます。日程につ いては事務局から調整の上、ご連絡させていただきます。  最後に本日の議事録の署名委員ですが、雇用主代表を相川委員に、労働者代表を古川 委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中 をご参集いただきまして、大変ありがとうございました。  照会先   厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係   TEL 03(5253)1111(内線5763)