06/04/07 第12回労働政策審議会議事録 第12回 労働政策審議会 議事録 日 時 平成18年4月7日(金) 10:30〜12:00 場 所 厚生労働省17階専用第21会議室 出席者【委員】公益代表  菅野会長、今田委員、今野委員、齋藤(邦)委員、              清家委員、西村委員、林委員、横溝委員、和田委員  労働者代表 弥富委員、加藤(裕)委員、小出委員、古賀委員、              丸山委員、森嶋委員、山口委員        使用者代表 井手委員、岡部委員、加藤(丈)委員、齋藤(朝)                           委員、柴田委員、矢野委員 議 題 (1)平成18年度予算の主要事項について(労働政策関係)     (2)各分科会の審議事項の検討結果報告(建議・答申等) (3)その他 配付資料 資料1−1 平成18年度予算案の主要事項      資料1−2 アスベスト問題に係る総合対策      資料2   分科会及び部会における検討状況について      参 考 労働政策審議会諮問・答申等一覧   議 事 ○菅野会長   ただいまから第12回労働政策審議会を開催いたします。最初に議事に   入る前に、新たに委員になられた方のご紹介をさせていただきます。労働  者代表委員ですが、日本食品関連産業労働組合総連合会政策局長弥富委員   です。 ○弥富委員   弥富です。よろしくお願いします。 ○菅野会長   続きまして全日本自動車産業労働組合総連合会会長加藤委員です。 ○加藤(裕)委員   加藤です。よろしくお願いします。 ○菅野会長   また、本日欠席ですが、全日本運輸産業労働組合総連合会執行委員長土   屋委員、並びに全国電力関連産業労働組合総連合会長中島委員が新たに委   員に任命されています。   それでは、議事に移ります。本日の議題は2件あります。第1は「平成   18年度予算の主要事項について(労働政策関係)」、第2は「分科会及び  部会における検討状況について」であります。事務局からのご説明をお願  いします。 ○及川会計担当参事官   資料1−1の「平成18年度労働政策関係予算の主要事項」について説明   させていただきます。タイトルでは予算案となっていますが、ご案内のよ   うに政府原案のとおり成立しています。平成18年度予算として説明をさせ   ていただきます。   表1は厚生労働省予算の全体です。一般会計予算の全体額が20兆9,417   億円、対前年度1,239億円、0.6%の増となっています。   表2は厚生労働省一般会計の中で、大宗を占めています社会保障関係費   が20兆4,187億円、対前年1,947億円の増となっています。   表3は社会保障関係費の分野別の内訳ですが、医療、年金、介護、福祉   等と記載のとおりの額です。この中で雇用については4,325億円、前年度   に比べて335億円の減となっています。これは主として雇用保険の国庫負   担金が受給者数の減の見込み等によって、減少することによります。   表4は特別会計です。このうち労働保険特別会計は、労災勘定と雇用勘   定を併せたものですが、3兆9,992億円で、前年度に比べて1,302億円の減  となっています。   概要は以上ですが、政策体系別に見てまいりますと、目次の中で政策分   野別に平成18年度予算のポイントを5項目柱を立てています。この中で    「医療制度改革の推進」をはじめとして5つ立ててありますが、特に「次   世代育成支援対策の推進」、「若者の人間力の強化の推進と2007年問題へ  の対応」といったところで労働政策と深く関わってきます。主要事項とし  て、10本の柱を立てていまして、これはいずれの部分でも労働政策がいろ  いろな形で関与してまいります。以下、労働関係の施策、主なものについ  て、かいつまんで紹介をさせていただきます。   27頁以降が第2の柱、「少子化の流れを変えるための次世代育成支援対   策の展開」です。この中では29頁の3「仕事と子育ての両立など仕事と生   活のバランスのとれた働き方の実現」で、90億円計上されています。これ   は、(1)「子育て世代の仕事と家庭の両立支援」のため、育児休業取得  者や短時間勤務制度の適用者が初めて出た中小企業に対して、5年間の措  置として特別に助成金を支給していく施策を講じることにします。   また、2つ目の○に「マザーズハローワーク(仮称)」を設置するなど、   出産・育児で離職した女性の再就職支援を充実させます。   30頁(2)「仕事と生活のバランスのとれた働き方の推進」では、「労  働時間等設定改善アドバイザー」を配置して、中小企業事業主を計画的に  指導するなど、労働時間等の設定改善に向けた取組みを推進します。   また、「仕事と生活の調和推進会議」の開催等により、社会的な機運の   醸成に取り組み、短時間正社員制度、労働時間に比例した賃金制度等の普   及を図るためのモデル事業などを実施します。   (3)「パートタイム労働対策の充実」に関しましては、「短時間労働  者雇用管理改善等助成金」を抜本的に見直しまして、パートタイム労働者  の均衡処遇に向けた事業主の取組みへの支援を強化します。   32頁6「母子家庭等自立支援対策の推進」の一環としまして、母子家庭   の母等に対する職業訓練の推進という対策を進めてまいります。   33頁第3の柱として、「安心・安全な職場づくりと公正かつ多様な働き   方の実現」です。   アスベスト対策として、102億円が計上されています。ここでは建築物   の解体時等の飛散防止等の徹底を図るとともに、石綿含有製品の早期の代   替化に向けた対策を推進します。また、過去に石綿作業に従事した労働者   の健康管理対策等の充実・強化を図ります。さらに、労災保険法の時効に   よって、労災補償を受けずに亡くなられた労働者の遺族の方々に対して、   新たな救済措置として先般施行された救済法によって、給付金を支給して、   迅速な救済を図ります。なお、アスベスト対策として、政府全体の総合的   な対策の概要については、資料1−2としてお配りしていますが、説明は   省略させていただきます。   34頁2「安全に安心して働ける労働環境の整備」の施策では、(1)「  職場における安全衛生対策の推進」の施策として、「労働安全衛生マネジ  メントシステム」の普及の推進や、「職場における化学物質管理の促進」  のための施策を進めます。「過重労働による健康障害防止対策の推進」と  しては、地域産業保健センターにおける面接指導の充実を図るなどの対策  を進めます。   (2)「職場におけるメンタルヘルス対策」では、「事業場におけるメ  ンタルヘルス対策への支援」を行うとともに、産業医等を対象にメンタル  ヘルスに関する研修を実施するなど、職場におけるメンタルヘルス対策を   拡充します。   さらに、(3)「労災かくし対策の推進」を行い、(4)増加する個別  労働紛争に対応した紛争解決制度の運営を着実に推進します。   35頁3「公正かつ多様な働き方の推進」のための施策は、(1)に今国   会に雇用機会均等法の改正案を提出していますが、均等確保のための積極   的な行政指導を展開します。   36頁からが、「各世代に必要とされる職業能力の開発・向上の促進〜200   7年問題への対応〜」という第4の柱です。ここでは1番目に若者の職業   人としての自立の推進のための施策としまして、(1)で「実務・教育連   結型人材育成システム」の導入を行う企業に対する助成措置の拡充等によ   り、同システムの社会的定着を図ります。   (2)ニート等の自立を支援するため、各地域に若者支援機関のネット  ワークの中核としての役割を果たす「地域若者サポートステーション」を  設置して、専門的な相談等を行います。   (3)「若者自立塾」については、平成18年度は25箇所で実施して、  事業をさらに推進します。   (4)「学卒、若者向けの実践的能力評価・公証の仕組みの整備」のた  め、若年者就職基礎能力支援事業(YES−プログラム)の普及促進を図  ります。   また、37頁2の壮年者層の能力開発の推進では、(1)労働者の自発的   な能力開発を支援する企業に対する助成措置の拡充。(2)企業の教育訓   練担当者を育成する訓練カリキュラムの開発・普及を図る。(3)キャリ  ア・コンサルタントの養成を推進するなど、キャリア・コンサルティング   の推進を図ります。   3番目の高齢者のキャリア形成の支援としては、(1)地域における創   業や新分野展開に係る相談援助、または能力開発を実施する体制を整備す   るとともに、(2)高齢者の起業等を支援するため、そのニーズに応じた   委託訓練を推進します。   4番目の「キャリア形成支援のための能力開発基盤の整備」としまして、   幅広い職種を対象にした職業能力評価制度を整備するとともに、38頁に入   りますが、(2)民間の教育訓練機関の積極的な活用を推進します。   5番目の「団塊の世代の高齢化に伴う技能継承等の支援」のための施策   としましては、(1)2007年問題への対応を図るため、相談窓口を設置す   るなど、技能継承の問題に取り組む中小企業等を支援する対策を推進しま   す。   また、(2)若者によるものづくり技能大会の実施など、「ものづくり  立国」の推進のための施策を進め、(3)2007年問題をはじめとする状況  変化に伴う事業場における安全衛生水準の低下に対応するため、「ITを  活用した新しい安全衛生管理手法の開発」に取組みます。   39頁からが5番目の柱で、若者の人間力の強化の推進です。ここではま   ず第1に、「フリーター25万人常用雇用化プラン」を推進するための予算   が計上されていますが、(1)「ジョブ・カフェ等によるきめ細かな就職  支援」を行い、(2)全国のハローワークでフリーターの常用就職を促進  するため、担当制による一貫した就職支援措置を拡充実施します。   また、(3)若年者のトライアル雇用の対象者数を拡大するなどの施策   を進め、(5)「フリーターの正社員登用の促進」をするため、経済団体  の協力のもとに、モデル事業の推進等を行います。   40頁の(6)は、フリーター等の若者に対しまして、農業での就業を支   援します。   四角囲み2の「若者の働く意欲や能力を高めるための総合的な取組」で、   (2)全国のハローワーク等において、若者の就業をめぐる悩みに的確に   対応するカウンセリングサービスを提供する体制を整備するほか、先ほど   もご紹介申し上げました「地域若者サポートステーション」の設置、ある  いは「若者自立塾」事業の推進という総合的な取組みを行います。(4)   ボランティア活動など、無償の労働体験の活動実積を記録して、企業の採  用選考に反映されるようにするための「ジョブパスポート」の普及、充実   を図ります。   41頁3「学生から職業人への円滑な移行の実現」の対策としまして、(  1)「若者の募集採用方法等の見直しの推進」は、経済団体の協力による  モデル事業の実施などを行い、(2)「若者向けキャリア・コンサルタン   トの養成・普及の推進」を行います。   42頁からが6番目の柱であります「雇用のミスマッチ縮小のための雇用   対策の推進」です。1番目の「雇用情勢が厳しい地域に重点化した雇用対   策」としまして、(1)地域の実情を踏まえた、高年齢者の活用、後継者   の確保等に取り組む中小事業主団体等に対する支援を新たに行うととも    に、(2)地域における雇用創造のための構想を策定しようとする市町村   等に対して、専門家による助言などを企画・構想段階から支援する事業を   進めてまいります。また、(3)雇用情勢が厳しい地域において、受給資   格者の創業支援を拡充するとともに、大都市圏等からの移転に伴う経費を   助成します。   2「成長分野等における労働力の確保の推進」は、(1)労働移動支援   助成金について、今後の成長産業や発展分野への労働移動が実現した場合   の支援を拡充するなど、成長分野への円滑な労働移動を推進します。   43頁3「ハローワークのサービスの見直し・強化」としまして、(1)   長期失業を予防するための担当制による個別支援を行うなど、求職者の個   々の状況に応じたきめ細かな就職支援を行います。   また、(2)「求人充足に向けたコンサルティングなど求人者サービス  の充実」を図り、(3)「生活保護受給者及び児童扶養手当受給者に対す  る就労支援の拡充」を図ります。   44頁からが7番目の柱の高齢者関連の施策です。ここでは46頁2「高年   齢者等の雇用・就業対策の充実」で、(1)改正高年齢者雇用安定法を踏   まえて、事業主への指導を徹底するとともに、「65歳雇用導入プロジェク   ト」を推進します。   また(2)中高年齢者に対するトライアル雇用など、再就職支援を推進   します。(3)「いくつになっても働くことができる社会を実現するため  の施策」としまして、シルバー人材センター事業については新たに団塊の  世代を中心とした高齢者に対する就業体験を実施するなど、事業を着実に  推進することにしています。65歳を超えても働くことができるように、「  定年退職者等再就職支援事業(仮称)」を実施します。   49頁以降に8番目の柱である障害者対策です。ここでは、50頁から51  頁にかけまして、2「障害者に対する雇用・就労支援と職業能力開発の推  進」の対策で、(1)「雇用と福祉の連携による障害者施策の推進」対策  として、 地域障害者就労支援事業でハローワークが中心になって、福祉  等の関係者による連携体制を確立して、就職の準備段階から職場定着まで   の一連の支援を行う取組みを推進します。2つ目の○障害者雇用に実積 のある企業のノウハウを活用して、福祉施設における就労支援を行う事業 を実施します。51頁最初の○障害者就業・生活支援センターの設置箇所数  について、110箇所に拡充します。   (3)「多様な形態による障害者の就業機会の拡大」という対策としま   しては、「ITを活用した在宅就業支援団体の育成支援」、障害者のトラ  イアル雇用事業の推進などを行います。(4)「障害者に対する職業能力  開発 の推進」としましては、「公共職業能力開発施設における障害者職  業訓練」、「事業主や社会福祉法人等による実践的な職業訓練」を推進し  ます。3つ目の○の「障害者職業能力開発プロモート事業」で福祉施設、  養護学校等の関係機関の連携体制を確立することによって、障害者の職業  能力開発を促進する事業を政令指定都市において、試行的に実施すること  にしています。   58頁以降が第10「その他」で、いくつかの項目が上がっています。労働   関係としましては、1「国際社会への貢献」では、(1)ILOを通じた   活動の推進。   2「社会保険・労働保険の徴収事務の一元化を一層推進」。   59頁7、「ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策の推進」で   は、ホームレス就業支援事業の拡充を図ります。   また、新たに法務省との連携の下、8「刑務所出所者等に対する就労支   援事業」を実施します。   以上、平成18年度労働政策関係予算の概要について、説明を申し上げま   した。よろしくお願いします。 ○山田労働政策担当参事官   続きまして資料2で分科会及び部会における検討状況についてです。今   通常国会に提出されている法案に関わる審議状況ということで、職業能力   開発促進法、中小労確法に関わるもの、男女雇用機会均等法に関わるもの   ということで、いずれも2月に審議会から答申をいただきまして、3月7   日に国会提出という状況になっています。   2頁、職業能力開発促進法、中小労確法に関わるものです。人口減少社   会を迎える中で、今後の我が国の経済社会を担う数少ない若者の能力開発   は、ますます重要になってきている。しかし、「現場力」の衰退が指摘を   されている状況の中で、若者を現場に導き、実践的な教育訓練を実施する   システムを立ち上げることが1つの主眼になっています。具体的には真ん   中枠囲い、企業が主体となって、「自社のニーズに即した教育訓練機関に   おける座学」と「一定期間、訓練生を雇い入れてのOJT」をやることを   組み合せた実習併用職業訓練を職業能力開発促進法に位置付けて普及させ   ることを含めた法改正の内容になっています。   5頁、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関す   る法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」です。下の枠囲いにあり   ますように、性差別禁止の範囲の拡大、妊娠等を理由とする不利益取扱い   の禁止、セクシュアルハラスメント対策、男女雇用機会均等の実効性の確   保、労働基準法の中で女性の抗内労働の規制緩和等々について行うとなっ   ています。以上です。 ○菅野会長   ありがとうございました。ただいまのご説明についてご質問等がありま   したら、お願いします。 ○山口委員   議題(1)と(2)に関連しているところで、意見と質問という形でよ   ろしいでしょうか。予算のところで、35頁ですが、公正かつ多様な働き方  の推進の中で、議題の(2)の中にもありましたように、均等法改正の審   議会議論がなされて今国会に法案が提出されているということですが、1   男女雇用機会均等の更なる推進の中で予算措置をされて内容が記載されて   いるとおり、かなりの議論が雇用機会均等分科会の中でされたと認識して   います。ここに記載のとおり、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの   問題等に対してや、そのほかの議題についても進展等がありましたが、最   大の課題でした間接差別については、労側として一貫して申し上げてきた   とおり、本当にこの最終的な取りまとめでいいのか、本当にこれで間接差   別というものが禁止できるのか、という不安は大きく残りました。それは   まず申し上げておきたいと思います。   審議会の議論の中で、使用者側の方も主張していたところですが、間接   差別に対しての概念といいますか、実態も含めて大変わかりづらい。わか  りづらいものについて法規制化することが難しいのだ、ということが何重   にも議論されたわけです。そこで、これからが質問です。一方での法制化   については国会で審議されるということですが、職場段階では 直接差別   がかなり減ってきた中で、この間接差別に関することが大きく問題になっ   ているわけです。行政としては、この辺に対しての指導というものを、も   う予算措置もされているわけですが、その中できちんとなされるのかどう   か。してほしいという要望が強いわけですが、具体的にどう取組まれるの   か、お伺いしたいと思います。 ○北井雇用均等・児童家庭局長   男女雇用機会均等法の改正法案につきましては、今お話がありましたと   おり、今国会に提出をして、審議を待っているところです。その中で、間   接差別禁止の問題が審議会でもいちばん大きな議論になり、なかなかその   コンセンサスを得るのが難しかったところを、何とか審議会でお取りまと  めいただいたことをもとに法案を提出しています。国会でも多分そこが最  大の論点になるのではないかと思っています。間接差別の問題は、この国  会で改正法案を成立させていただいた後に、きちんと必要な下位法令も作  った上で、改正法の周知という形で、しっかりと行政として取り組んでい  きたいと思っています。 ○山口委員   まず法案が通って、そのあと省令等の議論になって、それが固まってか   ら、それに基づいてということですか。段取りとしてはそういうことにな  ると思いますが、審議会が終わって、建議がまとまった段階で、あまり注   目されていないところが、新聞等マスコミでもとられて、注目されている   ところですが、時を待ってという以上に、この間接差別は大きな差別です   ので、これについて対応していただくことを重ねてお願いしておきたいと   思います。 ○柴田委員   経団連で、労使問題の担当副会長をしている柴田と申します。ただいま   事務局から、平成18年度の厚生労働省の予算についてご説明をいただきま  した。こういう厳しい時世で、いろいろご苦心があったと思いますが、よ  くまとまっていると一定の評価を差し上げたいと思います。労働行政につ  いて使用者側からいくつかお願いをしたいと思っているのですが、私から   は2点、要望という形で述べさせていただきたいと思います。   まず1点目は、若年者雇用の問題についてです。この問題に関しては、   3月31日に中野厚生労働副大臣が経団連にいらっしゃいまして、いろいろ   ご要望をいただきました。経団連としても、若者は時代を担う貴重な人材   ですので、彼らが自らを高め、成長し続けることができる環境をつくるこ   とは、社会全体の課題であると認識しています。私が委員長を務めてきま   した経営労働政策委員会は、経営労働政策委員会報告を、通称「経労委報   告」ということで、毎年報告書を作成していますが、その中においても、   若年者の雇用対策の重要性について言及をしています。今回、中野副大臣   のご要請を受けまして、毎週発行している会員向けの会報の今週号で、要   請内容を会員企業、団体に十分周知したところです。経財界としては、貴   重な財源を投入されるわけですから、現場の声をよく聞きながら、各種の   施策をしっかり実行していただくことが重要だと考えています。   ただ、現在では、結構地域間でのばらつきはありますが、我々がいる東   海地域等では、有効求人倍率の大幅な改善といいますか、むしろ厳しい状   態にありまして、若年者を雇用したくても応募者がないというような状況   も生まれています。企業側も処遇面などで対応を図ってきていますが、一   部、若年者の就労意識が成熟をしていない、という悩みも聞こえてきます。   今お話のありました改正職業能力開発促進法に盛り込まれている実習併用   職業訓練といった新たな採用、あるいは教育訓練の形態が広がるというこ  とで、こういった状況が改善されることを期待したいと考えています。た   だ、まだ雇用の拡大を図らなければならない地域、あるいは就労そのもの   を促進しなければならない地域等がありますので、それぞれ、その地方の   実情に見合った施策をお願いしたいと考えます。   2つ目は、高齢者雇用の問題についてです。4月1日から、改正高年齢   者雇用安定法が施行され、高年齢者雇用確保措置が義務づけられることに   なりました。厚生労働省の調査でも、すでに9割を超える企業で対応がな  されているということが明らかになっていますが、法律で一律に縛るので   はなくて、企業の実情に応じて柔軟な対応がとれる制度としていただいた   ことで、現場でも十分に準備を進めることができて、このように90%を超   える企業が対応することになったと思っています。一方で、この4月の時   点ではまだ労使の話合いの調整がつかず、希望者全員としない継続雇用制   度を就業規則で定め、今後、時間をかけて労使間で本格的に検討するとい  う企業もあります。人件費の経営に関する影響、あるいは働く側の働き方  に関する希望など、さまざまな事柄を検討しなければならないということ   から、一部で、そのようなまだ検討継続といった状況が生まれたものと考   えています。   「経労委報告」の中でも強調しましたが、今後、2007年から団塊の世代   が大量に60歳定年を迎えてきますと、技能あるいはノウハウの伝承といっ  た面から、いろいろな問題を各企業経営で生かさなければ大変であると認  識しています。こういった意味でも、高年齢者が年齢に関わりなく働き続   けることのできる環境を整備するという今回の改正高年齢者雇用安定法の   趣旨は、使用者側も十分承知していますし、評価しています。ただ、厚生   労働省におかれましては、企業の実態を十分把握していただき、あまり企   業に過度な負担を与えることのないように、この問題についてお取組みい   ただくよう要望させていただきます。私からは、以上2点でございます。 ○丸山委員   新年度事業に関わりまして、2つほど意見、要望を申し上げたいと思い   ます。1つは、アスベスト問題に関わってです。資料も提示されています   が、厚生労働省の検討会で、アスベストを原因とする疾患認定のための医   学的な判断基準がまとめられたところです。気になりますのは、中皮腫の   人口動態調査の死亡者数と労災認定数を平成15年の数字で比較してみます   と、878対85と大きく乖離していることです。   さらに、一般的に中皮腫と肺がんの発生は1対2と言われていますが、   労災認定のほうを見ますと、その比率にはなっていません。労災認定は年  々増えてはいますが、肺がん罹患者も積極的に認定するように要望してお  きたいというのが1つです。   もう1つは、被害者救済を目的としたアスベスト新法についてです。こ  れは来年度より民間事業者から費用徴収を行うことになっていますが、特  にアスベスト関連企業からの徴収については、過去の労災の発生状況を勘  案しないように要望しておきたいと思います。といいますのは、労災の発   生状況を勘案することは、アスベスト曝露による労働者を積極的に認定す  るという努力をした事業者が同業他社より多く負担するということになり   かねない。結果として、それが労災かくしにつながる恐れがあると思って   いるからです。アスベストの使用量と危険性を判断基準にしたらどうか、   ということを申し上げておきたいと思います。   もう1つは、新年度事業にはないのですが、最近、外国人の受入れ、あ  るいは移住労働者問題が大きな課題になってきていると私は認識していま   す。昨日もテレビで報道がありましたが、この問題は先進国も途上国も、   受入れ、流出いずれも問題を抱えていると認識しています。例えば日本で   も、日系ブラジル人や、あるいは研修、技能実習の名の下の受入れによる   労働の実態などを見ますと、やはり問題があるのではないかと思っていま   す。また、これは直接関係ないかもしれませんが、すでに帰化しても、在   日韓国人の方や朝鮮の方々、あるいは中国の方々の差別も非常に問題視さ  れているところです。こうした中で、一昨年、フィリピンとのFTAで看   護師の受入れが決まったわけです。さらに、これからFTAやEPAの2   国間、多国間の貿易交渉が進んで、物に加えて人の動きがますます盛んに   なるだろうと思っています。外国人の受入れについては、これまで、専門   的な知識、技能、医術といった職種に限定して、国内雇用との調整や国民   的な合意形成が必要だと主張していますが、特にFTAの今後の自由貿易   交渉に当たりまして、外国人労働者の受入れについて慎重に対応すべきで   はないかと思っています。こうした労働行政について、見解があれば伺い  たいと思いますし、意見を申し上げておきたいと思います。 ○鈴木職業安定局長   いまのは、外国人労働力の受入れの問題でした。現在、専門的・技術的   な分野では積極的に受け入れる、単純労働分野は慎重に対応すべきである、   という基本的な考え方で対応しています。いろいろ議論がありますが、い  ろいろな問題点があることも事実ですので、これは労働市場の問題だけで  はなく、いろいろな観点から議論しなければならない問題だろうと考えて   います。その中で、いま日本とフィリピンの間のFTAの話がありました。   これは、看護師、介護福祉士というものについて、一定の管理された形で   やるという前提で、これから話が進んでいくと考えています。 ○青木労働基準局長   アスベストについてお話がありましたが、確かに、ご指摘になりました  ような数字、中皮腫と、それに関する労災認定者の比率というのは、おっ  しゃったような差が相当ある、肺がんとの関係もそうだ、というようなこ  とです。私どもは、アスベストによる疾病、被災と、それに対して労災で   認定されるのだということについての周知が、正直に言って足りなかった   のではないかと思っています。同時に、医療関係者の間でも特殊な病気と   いうことで、診断も難しいということもありました。   そういうこともありましたので、この資料にもありますように、アスベ  スト対策としては、医療関係者に対する診断等についての研修をやったり、  過去に石綿作業に従事した方についての周知を図るといったことをやろ   う、ということでやっています。大きな社会問題になり、日本全国での注   目を集めたということもあって、非常に皆さん方の理解が進んだというこ  とで、相談窓口を労災病院などを中心に設けていますが、そういったとこ   ろを見ますと、ものすごい数の相談が来ています。労災の申請についても、   昨年末での途中集計時点では、例年の6倍ぐらいの勢いで申請が出ている   ということがあります。年度末のものはいま集計中ですが、もっと多くな   るのではないかと思っています。そういう意味では、技術的な研究や研修   と同時に、そういった周知もだいぶ図られている。これまでは、中皮腫の   場合、申請があったものは99%ぐらい認定されているのではないかと思い   ます。そういう意味では、申請がそれだけ多くなっていますから、認定も   相当多くなってくるのではないかと思っています。   アスベスト新法による企業からの徴収金のお話ですが、これは政府全体   として取り組んでいるわけですが、主管は環境省です。もちろん相談をし   ながら、具体的な詰めを検討しているということです。おっしゃったよう   な論理は非常に理解できるところで、私どもも、徴収金の基準が労災ばか   りに偏重しますと、おっしゃったように労災かくしにつながるような問題   が生じることもあるのではないか、という心配をしています。ただ、使用   量というお話も出ましたが、どれだけの責任を個々の企業に求めていくの   かという問題が基本ですので、それをどういう指標といいますか、証拠で   負担をお願いするかという問題に帰着するわけです。その中で、労災認定   というのも一定程度参考になるのではないかと思っています。ただ、おっ   しゃったような懸念がありますので、それをどういうふうに具体的な仕組   みとしていくかということは、政府の中で検討していきたいと思っていま   す。 ○齋藤(朝)委員   商工会議所から出席させていただいている齋藤です。3点ほどあります   が、1点は、先ほど山口委員がおっしゃった間接差別のことです。これは、   概念について十分な周知期間や経過措置を導入して、中小企業が混乱を招   かないように配慮していただきたいと思っています。具体的にどういうこ   とかはっきりわからずに、というようなことで進んでいくと問題が起きる   のではないかと思いまして、お願いしたいと思います。   2つ目は、審議会などでの議論の進め方についてです。各分科会や部会    の審議状態をお聞きしますと、本来その業種に規定する大本の法律改正の   中で総合的に議論すべきものであるにもかかわらず、雇用に関する部分の   みが労働政策審議会の分科会等で議論され、全体として整合性をとるのが   難しいことがあります。   また、法律で国の施策として実現すべきとされている政策目標を決定す   る際に、企業や雇用状況の把握がまだ不十分であると事務局が認めている   にもかかわらず、数値目標が導入されてしまったりなどということがあり   ますので、結論を急がないでいただきたいと思います。あまり急ぎますと、   数値が適当でない場合も出てくるのではないかという心配があります。こ   の問題は、職業安定分科会と、その下にあります基本問題部会において議   論されました、介護雇用管理改善等計画のときに出たお話です。   今年度は、最低賃金の制度の問題、労働時間のあり方、労働契約法、雇   用保険三事業の廃止を含めた徹底的な見直し等について議論されるように   思いますが、これらの議件に関しましては、拙速を避けまして、是非十分   に議論を尽くしていただきたいと思います。   3点目は、今後の議論についてです。わが国の経済は、幸いに全体とし   ては明るさが出てきたと思いますが、地域とか中小企業などはまだまだ厳   しい状態が続いていまして、格差というのでしょうか、いいところと悪い   ところがかなり差が付いているように思います。その中で、雇用形態の多   様化や、いろいろな事情によりまして労働関係の法律が大きく見直されて   いますが、各企業の実情は、大企業、中小企業といった括りだけでなく、   いわゆる業種によっても大きな違いがありますので、見直しに当たりまし   ては、その企業の労使が主体的に対応できるような、労使の自治を基本と   することもあるのではないかと思います。わが国の99.7%は中小企業です   ので、その実態を十分に踏まえた内容でなければいけないと思っています。   以上3点、中小企業からの商工会議所としての意見を述べさせていただき   ました。 ○小出委員   私は、若年労働者問題を含めた賃金の格差問題という視点から触れてみ  たいと思います。この数年間、どういう構造になっているか。派遣、パー  ト、この辺りの関連は雇用がかなり増大していることは間違いないと思い    ます。特に、ものづくり産業においては、パートに代わって派遣、請負労   働者が相当増えてきた。私が非常に気になっているのは、その中に多くの   若年労働者が含まれていることです。確かに今回出されているニートある  いはフリーター対策は、これはこれで私は否定をする気持はありません。   ただ、ものづくり現場においては、圧倒的にその辺りが増えてきている。   例えば1つの労働組合の中にも派遣、請負が半数以上を占めるようなもの   があり、それがいまだに加速をしている。そういうことが起こっています。   もう1つ、サービス関係においてはパートが圧倒的に増えています。こ   のパートの概念というのが、従来は共働きのためのパートという概念が強   かったのですが、ここにも若い労働者がものすごく増えているわけです。   私は、日本の社会の中でそれが雇用の1つのベースになりつつあるのでは   ないかと思うのです。これを全部解消するなどということは、もうこれか   ら先、成り立たない。それに対して賃金という労働条件の視点から見たと   きに、いままでは大手と中小の格差ということで二極化ということが起こ  っていましたが、さらにそれよりも低いところに賃金の水準があると思う   のです。これに対して、若者を積極的に正規社員に振り替えようとか、そ  んな夢のようなことをいくら語っても仕方ない。私は、日本の経営者には   そういう視点はほとんどないと思うのです。派遣とか請負労働者というの   は、いま人件費として会社が管理していないのです。現実には経費なので   す。大手の経営者に聞いてください。自分のところでどれだけ派遣、請負   を持っているかということは、本社に行ってもほとんど把握していません。   現場でしかわからない。こんな実態にあるのです。これが、日本の産業の   経営の中である程度確立されつつある。だったら、それに対して、きちん   とした賃金というものをどう管理していくかということで、例えば均等待   遇の問題とか、最低賃金の問題とか、そういうことをきちんとしていくと   いうことが先にありきではないか。   例えば派遣とか請負とかパートは、いま200万円以下です。これで正直   言って結婚できますか。このことが少子化につながっていくということに   なるのです。ここでニートとかフリーターとかを入れるのは、きれい事の   対策。現実にこれが本当にうまく進んでいるのかどうかを考えると、もっ   と違う視点からそういう問題をきちんと整理していく必要があるのではな   いかと思います。 ○鈴木職業安定局長   いま非正規雇用のお話がありました。確かに、例えばハローワークで見   ても、求人ベースで見ると正社員の求人のほうが増えています。ただ、非   正社員が増えた大きな原因として、やはり景気の動向はあったのだろうと   思っています。ごく最近の動向を見ますと、求人はそうなのですが、就職   のほうは、非正社員に比べて正社員の求人が増えてきています。これから   雇用情勢がよくなる中で、もうちょっと正社員の就職が増やせるのではな   いかという感じがしています。きれい事というお話がありましたが、フリ   ーター20万人雇用プランというものがあります。当初はどうなるのかと心   配していたのですが、これは、今のところ確実に目標は達成できるだろう   と思っています。非正社員の求人は来るのですが、なかなかそれを充足で   きない面もあります。そういうときに、求人条件についても企業のほうに   お願いしてできないかという取組みを、これからすることにしています。   大臣からも、なかなかミスマッチで、正社員を希望する人が多い中でその   求人が少ないということになると、なかなか就職も進まないので、正社員   の求人の確保や求人条件の緩和の問題といった対策も進めるように言われ   ていますので、そういった取組みはしていきたいと考えています。 ○小出委員   そういう現象が出ることはわかっています。けれども、圧倒的に派遣、   請負はさらに増えているのです。それとのバランスを考えたら、わずか20   万人といっても、20万人以上現実に増えているわけです。   もう1つ、最近の現象として私が非常に関心を持っているのは、ものづ   くりの産業の中で派遣、請負はある程度敬遠する企業が出てきたことです。   これは、技能が継承されないということで、技能継承という視点から若い   者を採ろうとしている。問題は、柴田委員もおっしゃっていましたが、現   実にそこに人が集まらないことなのです。そういうことに対して、今ここ   で出されて、いろいろなことをやっていますが、そこに行かないのです。   こういう問題を現実にどうするのですか、ということなのです。そういう   ことを考えれば、もっと違う視点からこの問題に取り組んでいかないと、   本当に日本の社会そのものがおかしくなるのではないか。ここ3、4年で、   派遣、フリーター、パートが増えたのです。これは放っておけばなくなる   という、そういう社会ではなくなってきていると思う。これに対してもっ   と違う視点からきちんとやっていかないと、ますますおかしくなるのでは   ないでしょうか。 ○戸刈事務次官   この問題は我々も対応は必要だと思っていますが、政府主導でとても解   決できる問題ではないのではないかと思っています。企業にとっては、賃   金原資は一定ですから、企業の利益の中から賃金に回す比率をさらに高め   ていくということをするのか。それが可能であれば、毎年毎年、賃金を改   定する際に、正規の労働者よりも非正規の労働者の賃金をより高くしてい   くということかもしれませんが、今のグローバル化の中で、日本の国内企   業がそういった企業行動を取れるのかということになると、そこはもう一   定の限界があるわけです。そうなると、一定の賃金原資の中で正規労働者   と非正規労働者の間の賃金の分配をどうするのかと、こういう話になって   くるので、それはもう政府に投げられるだけではなく、あるいは使用者に   要求されるだけではなく、やはり組合としてもきちんとその問題をどう解   決するのかを考えていただくことが不可欠ではないかと思います。これか   ら少子高齢化、もう実際に人口減少社会ということになっているわけです   から、そういった中で1人1人の労働者がもっと意欲を持って、納得して   働ける職場環境なり、労働条件にしないといけないと思います。   それから先ほどからお話ありますが、やはり結婚して子どもを作れる労   働条件、賃金でなくてはいけないというふうにも思っています。ただ、そ   れは政府で音頭を取ってもやはり社会的なコンセンサスがないととてもで   きない問題なので、そうした問題意識を、いまこういう予算のお話もあり   ましたので、労働組合側も非常に強い問題意識として持っておられること   はかねてから認識しています。この問題については政府だけということよ   りは、むしろ政府と組合と、それから使用者側、あるいは組合の組織力の   及んでない人たちがどう考えているのか。その辺りがきちんとした議論が   できるようなことを真面目に考えていくということが基本ではないかと思   います。 ○菅野会長   いまの問題に関連して、どうぞ。 ○弥富委員   いまのご発言の均等処遇・均衡待遇に関してですけれども、いま労働側   と使用者側と行政ということがございましたが、この問題に関しては法制    化、均衡待遇・均等処遇原則の法制化ということで、この労働政策審議会   で取組むべきではないかと考えております。やはりこの問題については男   女間だけではなく、パートさらには若者や派遣労働者、いろいろなものが   絡んでおりますので、是非この審議会で取り組んでいただけたらと思って   おります。 ○戸苅事務次官   そういった議論をしていただけるというのは大変ありがたいことです。   パート労働者だけでなく、非正規というか、非典型というかあるいは契約   労働、派遣労働、請負労働、いろいろな契約ありますので、おそらく検討   する場としては労働政策審議会がいちばん適当なのだろうと思うので、ご   議論いただくということであれば、私たちも是非お願いしたいと思います。   これは公労使の委員の方々、受けとめていただければということだと思い   ますが。 ○加藤(裕)委員   いまの議論に若干関係があるかと思いますので、私のほうから少し申し   上げたいのですが、最低賃金制度についての要望です。今日は、分科会等   の報告あるいは法案審議の現状等のご報告がありました。その中にはもち   ろんなかったわけですが、最低賃金部会で10回を超える審議を重ねてきて   いるわけですが、経営側の意見がまとまらないということで、部会の答申   に至らなかったというふうに私どもは聞いております。いまも話がありま   したように、とりわけ日本の最低賃金制度において、産業別最低賃金制度   については産業の実態等に合わなくなってきている部分もある。つまり、  いまありましたような、派遣とか請負といったような新しい働き方、そう  いったものに対応するようにしていかなければいけないという認識を私た  ちも持っているわけです。特に、そういう点でいま部会の中で、すでに公  益側の試案が提示をされているとも聞いております。その中にそうした発  想に立って、産業別最低賃金を発展的に組み直していこうという発想が入  っていると思いますので、是非積極的な議論を進めていただきたいと思い  ます。   いまも中小企業の実態や、あるいは非典型雇用の多様な働き方の実態を   小出委員からも申し上げたわけですが、やはりそこにもう一つ政府として   是非見ておかなければいけないのは、この二極化をこれ以上どんどん進め   てはいけないという認識。これは労使ともに持っていると思います。その   中でも、地域別最低賃金も特に欧州に比べて水準が極めて低いものである   ということで、実質的にその二極化を防止するような形。あるいは今あり   ましたように、学生がパートでどんどん入ってくるとか、そういうところ   に対して機能していないのではないかという面もあるわけです。社会のセ   ーフティネットとして本当に機能するようにするためには、その水準につ   いても単に上げ幅の問題でやっていくのではなく、その水準がどうかとい  う、生活保護とかそういうこととの見合いとか、その辺を含めて、是非考  えていただく必要があると思いますので、よろしくお願いしたいと思いま  す。   折角ご指名いただきましたので、もう2つほど申し上げたい。1つは、   省庁間の連携ということです。いまも柴田委員、小出委員からもありまし   たように、なかなか若い人たちが採れないという、これは私ども自動車産   業でも非常に深刻な事態になっております。私は実は別途、中央教育審議   会にも参加をさせていただいているのですが、その中でやはり職業意識と   いいますか、そういうものの醸成のために、様々な仕組みを作って努力を   されているわけですが、特に高校の卒業生の実態を見てみますと、やはり   ミスマッチが相当あるように聞くわけです。つまり20年前か30年前はそれ  ぞれの高校の校長先生や、あるいは職業担当の先生方と企業とのパイプが  しっかりと機能していて、何とかして就職をさせてあげようという、そう  いう情報収集というものがしっかりされていた。最近はその辺が非常に薄  くなっているのではないか。それから企業側も、そういったきめの細かい  リクルート体制、そういうものになかなか人が割けない、お金が割けない  、むしろ派遣で頼んだほうがコストも安いということで、その辺の、きめ  の細かいパイプが少し途切れているのではないかというように私は考えて  いるわけです。そういう意味で、是非その辺をどのように再構築していけ  ばいいのか。こういう時代ですから、決して顔と顔ということだけではな  く、ITの活用とかいろいろあるとは思うのですが、その辺を大いに意識  をしていただく必要があるだろうと思います。   もう1つ、労働時間法制についてです。時短促進法が今度変わりました   が、現実に実態としては各産業、特に製造業等は労働時間が非常に増えて   います。両立支援等のいろいろな方策もございますが、まずはやはり勤労  者が会社で過ごす時間を減らしていくという、このことがありませ んと、  繰り返しになって申し訳ないのですが、例えば教育の視点でも、地域や家  庭の教育力の強化というのが今とても大きな課題になっています。次の世  代を育てていく、そういう視点でもあまりにも今は、日本はプアーである  と、私たちは思わざるを得ないわけです。是非この新しい法のもとで産業、  企業、これは企業側にも是非お願いしたいのですが、総労働時間の短縮あ  るいは休み方、働き方、この辺の改善。私たちもいろいろな要求はしてい   ますが、行政サイドからもその辺の抜本的な強化というものを是非お願い  をしておきたいと思います。 ○矢野委員   ちょうど良い機会ですので、何点か申し上げたいと思います。最初は、   雇用保険制度の改革の問題です。その制度の見直しがもう始まっているわ   けですが、私どもは雇用保険の本体事業については、失業による所得の喪   失に対する補償という本来の目的に限定する方向で制度を見直すべきだと   思います。雇用情勢がずっと悪かったのですが、いま改善の方向に向かっ   ていて、保険料率も、この間上がったままになっているのですが、そうい   った見直しにつなげるような改革が必要だと思っています。国庫負担の見   直しについてもいろいろな意見が出されているようですが、労使の意見を   十分取り入れて、対応していただきたいと思っております。   雇用保険三事業のほうですが、基本的な考えは、事業主の相互支援事業   として適切なもの、これを精査の上見直していく、廃止も含めた合理化し   ぼり込みを徹底していくことと思っています。雇用安定事業について言え   ば、労働移動支援あるいはミスマッチ解消、早期再就職支援という視点で   す。能力開発事業について言えば、社会のニーズに合致した能力開発メニ   ューへの見直し、事業運営に当たっては民間活力の活用といった運営の効   率化の視点というものが必要だと思います。廃止を含めた徹底的な見直し   という観点ではありますが、現状すでに事業として継続されているわけな   ので、実際の見直しに当たっては、一律画一的ではなく、個別の判断が必   要だと思っております。例えば、廃止したときのデメリットも十分検討し   ていくことが大事ではないかと思っております。   2点目は、労働福祉事業ですが、これも特別会計の改革の一環として廃   止も含めた徹底的な見直しを行うことになっています。長年にわたる民間   企業労使の努力が実って、その事故が減ってきているわけですね。その結   果、労災保険の平均料率は着実に低下している傾向にあります。しかし、   労災保険率に占める労働福祉事業費用の割合を見ると、平成元年度は13.3   %なのです。つまり11.3厘分の1.5厘です。平成18年はどうかというと、   これが20%になっている。1.5厘が1.4厘になったのですが、分母は7.0い  うことで、20%に増加しているのです。これはやはり労働災害防止に向け  た企業のインセンティブを阻害していると思います。是非聖域を設けるこ  となく、個々の事業を、これまた個別の判断が必要なのですが、精査して、   大胆な見直しを断行するよう、よろしくお願いしたいと思います。   それからアスベスト新法ですが、迅速な対応を政府がなさったというこ   とに対しては、敬意を表したいと思っています。今後、細部の詰めがなさ   れていくわけですが、是非制度設計を十分納得性のあるものにしてほしい   と思います。施行後5年以内に見直しが行われることになっていますが、   その際は産業界の意見も十分に踏まえるべきだと思います。また、政府が   引き続き明確な役割を果たしていくことも、この施策の性格上、今後とも   必要なことであると思っております。   先ほど加藤委員から、最低賃金制度の話がありましたが、公益試案につ   いては産別最賃を廃止するという点では評価できるわけですが、その内容   を見ると、屋上屋を架すことには変わりがないのではないかと、もう少し   検討が必要だということで、継続審議になっているので、私どもとしても   今後は試案の具体的内容を詰めながら判断をしていきたい、このように思   っております。以上です。 ○古賀委員   いま矢野専務からも、雇用保険制度について使側の見解がございました   ので、労働側としても少しその点についての見解を述べたいと思います。   その件と、あと2点、合計3点について意見提起をさせていただきたい    と思います。   まず、雇用保険制度の国庫負担のあり方についてですが、雇用保険制度   の国庫負担というのは雇用政策に関わる政府の責任を具体化するものとい   うように、私たちは考えています。さらに国庫負担のあり方の見直しは、   先ほど矢野委員からもありましたように、労使の雇用保険料率にも大きな   影響を及ぼす、雇用保険制度全体にも関わる極めて重大な課題と思ってお   りますので、是非この雇用保険制度の国庫負担のあり方については、関係   労使の意見を十分踏まえて慎重に検討をいただきたいことを申し上げてお   きたいと思います。   雇用保険制度の2つ目は積立金の問題です。雇用保険制度の国庫負担の   あり方の見直し論議というのも、基本的には積立金残高が大きくなってい   るではないか、多くなっているではないかという視点があると思います。   しかし、雇用保険制度というのは失業者の多い、少ないということで、や   はりズレが出る問題でして、失業者が出たときに、積立金の残高が少ない、   それに対応できない、こういう性格を持っていると思います。現行制度で   は1、2年分の積立金の残高は必要としていますが、私たちとしては財務   状況などを踏まえると、1年分程度の積立金残高を過度に増やさないよう   に、何らかの工夫をする必要があると思います。適正な積立金残高という   ことについても、少し検討をする必要があるのではないかと考えておりま   す。   3番目は雇用保険三事業についてです。私たちとしては雇用対策の中心   的な役割を担っていると思っておりますが、確かにこれまでずっと続けて   きた経過の中で、抜本的な見直しということも片方では必要だと思ってい   ます。雇用や就業に資するかどうかという視点からの抜本的な見直しを進   める。片方では、やはり必要な事業についてはきちっと残していく。そん   な視点での検討をお願いしておきたいと思います。   大きな2点目は、この雇用保険三事業とも多少関わるのですが、季節労   働者の冬期の雇用保護制度についてです。2007年度で季節労働者の通年の   雇用安定給付金制度が廃止される方向づけとなっています。しかし、公共   事業が大幅に削減されている今の実態、あるいは建設労働者を中心として、   北海道には14万を超える季節労働者がいる現状に、何らの手当てもされぬ   ままに制度だけ廃止することになれば、大きな混乱が起こることが懸念さ   れるのではないかと判断をしております。制度の継続については、昨今の   雇用保険三事業の状況から見ても難しいことは認識をしておりますが、北   海道ではこの制度がセーフティネットとして重要な役割を果たしている。   そういう意味から、是非そのことを重視をしながら、厚生労働省としては   季節労働者の雇用の安定の観点から、通年雇用につながる何らかの措置に   ついて、是非検討をお願いしておきたいと思います。   3点目ですが、労働行政全般にかかわる労働基準監督署の統廃合につい   て、少しお願いをしておきたいと思います。数年前から地域での労働基準   監督署が統廃合されております。かつ、また今回国会で審議されている行   革推進法等々の関係で、ハローワークや労働基準監督署などの見直しも当   然その中に入ってくると思います。言うまでもないことですが、労働基準   監督署というのは臨検監督を通じて、労働基準法など労働関係の履行を確   保しながら、最低限の労働条件を保障するため必要不可欠な機関です。現   下の労働基準法違反等々も発生する現状においては、労働基準監督官の増   員や機能の強化、むしろ労働基準監督行政は拡充強化されるべきだと私た   ちは思っております。働く者が直接に接することができるハローワークと   か労働基準監督署については、是非行政サービスの低下を招くことのない   ような観点からの見直しをするのであれば、慎重にすべきことを要望申し   上げておきたいと思います。   最後に、先ほどの議論について是非お願いをしておきたいと思います。   労働側としては格差の問題や、あるいは均等処遇・均衡待遇の問題につい   て課題提起をさせていただきました。そして次官からも、次官としての、   それに対する見解の提起をいただき、私たちは再度申し上げますが、非常   に大きな、日本全体の課題と思っております。先ほど次官も、少し合意が   取れれば、この審議会で議論することはやぶさかではないということもご   ざいました。是非このことに対して、この労働政策審議会で取り組んで議   論をするようなことを、菅野会長、お取り計らいをいただければありがた   いと思っております。以上です。 ○森嶋委員   時間がないところで恐縮ですが、私から労働契約法について要望という    か、要請といいますか、いくつか申し上げておきたいと思います。労働契   約法については労働条件分科会で近々論議されるように聞いているわけで   すが、労働契約法そのものについては、私たちは否定する立場にはありま    せん。長年にわたってその必要性を訴えてきたわけでありますから、基本   的には歓迎をしたいと思っています。ただ、この労働契約法そのものは、   私どもとしては労働基準法や労働組合法といった、いわゆる重要な法律と   関連して極めて重要な法律であるという認識でいます。そういった意味で   は、この契約解除にはかなり慎重であるべきと思っています。中身につい   ても、非常に専門的な知識も含めて多様な分野にわたっておりますから、   そういった意味では会をまず慎重に行っていただきたいというのが、1つ   であります。そして具体的な中身で言いますと、とりわけ労使委員会の扱   い等について出ているわけですが、私どもとしては、これまでの日本にお   ける集団的労使関係をどのように煮詰めるのかということ。そしてまた新   しくいま考えられている労使委員会の扱いといいますか、その位置付け、   対等制の問題とか、どこがどうやって具体的にシェアを取って、そういう   労使委員会というものが設置されるのかというような問題について、大き   な懸念を持っております。そういった意味では、これも今後の私どもとし   ては重要な課題だというように認識しておりますので、慎重な議論をすべ   だという立場におりますので、今後の論議を慎重に取り計らっていただき  たいことを特に要望しておきたいと思います。 ○菅野会長   先ほど、この審議会の議題として格差問題とか、均等・均衡待遇の問題   を取り上げるべきだという労側の要望があり、事務次官のご発言がありま   したが、これについて公益あるいは使用者側から何かご発言がありました   ら、お伺いしておきたいと思います。いかがですか。 ○矢野委員   論議することは私どもやぶさかではないのですが、格差という問題、少   しちゃんとした調査が必要ではないかという思いがしております。格差が   広がっているという説と、広がってないという説が、あまり強烈な数字的   な根拠に基づかずに論議されているように思うのです。二極化という言葉   を伺いますと、非常に強いメッセージなのですが、ちょうどその所得なら   所得の分布がフタコブラクダみたいになっている。こういう印象を与える   のです。果たしてそうだろうかという疑問には、やはり応える必要がある   だろうと思います。   むしろ私は分布が広がってきている。羊蹄山みたいな形だったのが、冨   士山のように裾野が広がっているのではないか。そういう見方が言えるの   ではないかとも思うわけです。その所得格差を論ずる根拠がいろいろ言わ   れておりますけれども、十分説得力があるかどうか。そういうことも含め   まして、是非その基礎的な調査、それに基づいた議論をするということに   していただきたいと思っております。   いろいろな場で均等、組合の皆さんは均等処遇という言葉を使い、私ど   もは均衡待遇という言葉を使って、公正な処遇をやるということを申し上   げているわけです。そういう点について意見の一致できることがあるなら   ば、それはやぶさかではありませんが、出発点のところで少しきちっとし   た調査をお願いしたいということを申し上げておきます。 ○戸苅事務次官   いま政府のほうでどういう動きがあるかといいますと、1つはすでにご   案内のとおりですが官邸主導で再チャレンジというのをテーマに、各省関    係の局長を集めて勉強会が始まっているということがあります。それから   経済財政諮問会議でも、やはりグローバル化の中でこの問題をどうしたら   いいのかという議論もあり、要するに機会の平等なのか、結果の平等なの   か、ということも含め、いろいろな所でいろいろな議論がある。それから   少子化に絡めて、ニート、フリーターあるいはアルバイト、パート、こう   いった人たちと正規雇用者との間の出生率に相当な差がある。少子化とい   う観点から問題ないのか、社会的な構成という観点から問題があるのか、   いろいろな議論があり、正直言って私たちもどう議論を整理していいのか、   あるいはどういう観点から切り込んでいくのかというところまで、まだ整   理が十分しきれてないわけです。いま矢野委員からお話ありましたが、私   たちもできるだけの資料は準備させていただきたいと思っています。折角   の場ですから、予めこういう方向でというよりは、いろいろな観点からい   ろいろな議論をいただくこともよろしいかなと思います。あまりこういう   観点でということではなく、私たちもできるだけの努力をして、資料は用   意したいと思います。一度議論していただいた上で、あとどうするか、道   はあるかなと思っています。  ○菅野会長   その点は、いつどういう形でというのは私どもにお任せいただければと   思います。そのほか何かご発言ありますでしょうか。時間がまいりました   ので、本日はこの辺で閉会とさせていただきたいと思います。最後に、本   日の会議に関する議事録については、当審議会の運営規定第6条により会   長のほか、2人の委員に署名をいただくことになっています。つきまして   は労働者代表委員の加藤委員、それから使用者代表委員の岡部委員に署名   委員になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。   では本日の会議は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係 内線7717