06/04/05 「第2回集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会の議事録の 掲載」について      第2回集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会                     日時 平成18年4月5日(水)                        15:00〜                     場所 厚生労働省専用第21会議室 ○事務局   ただいまから、集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会を開催いた します。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして、誠にあ りがとうございます。本日は前川委員と野中委員から、ご欠席の連絡をいただいており ます。前川委員の代理で、岡山大学の氏家良人教授にご出席いただいておりますので、 ご紹介いたします。また、事務局のほうで4月1日付の異動がありました。政策企画官 の勝又浜子でございます。  議事に入る前に、お手元の資料の確認をお願いいたします。議事次第と作業部会委員 名簿があり、資料1として「集中治療室における医療事故等について」、資料2として、 日本集中治療医学会の「ICUにおけるヒヤリ・ハット事例に関するアンケート調査」、 資料3として「第1回作業部会における主な意見」があります。資料4には(1)と(2)があ り、前川委員と武澤委員からご提供いただいた資料です。そのほかに参考資料1、参考 資料2があります。それでは平澤部会長に、議事進行をお願いいたします。 ○平澤部会長  皆様、本日は年度初めの誠にお忙しい中を、お集まりいただきましてありがとうござ います。また足元が悪い中、本当にありがとうございます。遠くから来ていらっしゃる 先生もおいでですので、熱心に、なおかつ時間には終わりたいと思いますので、どうか ご協力のほどお願いいたします。  議題1は、「集中治療室における医療事故の現状について」、関係資料がいくつかあり ますので、ひと通りご説明いただいた後に、まとめて質疑を行いたいと思います。まず 事務局から資料1について、ご説明をお願いいたします。 ○事務局  「集中治療室における医療事故等の現状について」は、第1回の会議にもお示ししま したが、その後日本医療機能評価機構から、医療事故情報収集等事業において、3月に 第4回目の報告がなされておりますので、それを中心にご説明したいと思います。  表紙には医療事故情報収集等事業についての概要がありますが、前回説明しましたの で、省略いたします。  2頁に報告件数があります。この第4回の報告は、平成16年10月から始められ、平 成17年12月までの情報をまとめておりますが、特に平成17年1月から12月までの1 年間について集計しているものです。2頁の(2)にありますように、医療事故事例の 報告状況としては、報告義務対象の医療機関のうち176の医療機関から1,114件の医療 事故が報告されております。開設者における内訳は、ご覧のとおりです。  3頁は、発生場所について整理したものです。中央よりやや上辺りに、ICU、CC U、NICUというのがあります。ICUは平成17年の1月から12月までの1年間に、 35件で、全体の3.1%です。前回は平成16年10月から平成17年9月までの1年間を お示ししておりましたが、その件数が36件で、全体の3.4%ですので、ほぼ同じ傾向か と思います。CCU、NICUについても同様です。  4頁は、発生場所と事故の程度を整理したものです。これも中央より上辺りに、IC U、CCU、NICUとあります。代表してICUを申し上げますと、35件のうち11 例が死亡です。これは全体の31%に当たり、ほかの発生場所よりも高くなっております。 また、これよりも件数が多いのは病室で、全体の477件に対して死亡例が62、13%の 割合となっております。  5頁はICU、CCU、NICUにおける入院・外来の別です。ICUの場合、基本 的に入院です。  6頁は医療事故ではなく、ヒヤリ・ハット事例の収集・分析・提供事業の結果です。 これは定点医療機関249施設から報告をいただいております。第15回、第16回を合わ せて6カ月間に、9万990件のヒヤリ・ハットの報告をいただき、記述情報としては 1,150件あります。  その結果、特にICUに関連するものは8頁にあります。これも前回お示ししたもの と同様です。ICUについては9万990件のうち、2,669件で、およそ3%を占めてお ります。CCU、NICU、その他の集中治療室を合わせると、5,156件となり、5.7% を占める状況です。これも前回ご説明したものと傾向は変わりません。  9頁以降は前回もお示ししておりましたが、ヒヤリ・ハット事例の記述情報のデータ ベースから若干漏れていたものがありましたので、3件ほどお示ししております。中身 については、もしご質問があればご説明するということで、省略させていただきます。 ○平澤部会長   ただいま、ICUにおける医療事故等についての集計結果をご説明いただきました。 続けて資料2に移ります。資料2として日本集中治療医学会の調査結果があります。今 日は前川委員がご欠席ですので、代理の氏家教授からご説明をお願いします。   ○前川委員(代)氏家先生   集中治療医学会の危機管理委員会の行岡委員長が、前回の会議でも示されたアンケー ト結果です。前回、お手元の資料の後ろのほうにお付けしたと思います。今回はそのま とめと、施設ごとの看護師数、スタッフ数との関連を追加して、資料としてお付けして おります。資料2を少し読ませていただきますが、前回と重複すると思います。  ICUはヒヤリ・ハット事例が発生しやすい医療現場と考えられるが、その実状は明 らかではない。2005年8月、日本集中治療医学会危機管理委員会と看護部会は合同で、 日本集中治療医学会専門医研修施設(190施設)に対して「ICUにおけるヒヤリ・ハ ット事例に関するアンケート調査」を行い、123施設(65%)より回答を得た。90%以 上の施設が「ICUで生じたヒヤリ・ハット事例を全て記録・保管している」と答えた。 これらは皆さんの資料の後ろのほうに、図表として載せてあります。  報告者は看護師が圧倒的に多く、「医師の割合は9%以下」の施設がほとんどであった。 ヒヤリ・ハットの中ではレベル1が最多であり、レベルが高いほど夜勤帯に発生する傾 向があった。全ヒヤリ・ハット発生率/患者日は、1%未満:18%、1%〜2%:25% があったが、10%以上の施設も9%あった。点滴、輸液に関するヒヤリ・ハット発生率 /患者日は高く、「1%以上」が20%の施設にみられた。20%以上の施設で輸液ライン の予期せぬ抜去が月に1回以上起こった。人工呼吸器の停止、IABPのバルンカテー テル破損等がわずかではあるが発生していた。  次に付けている表が以下です。  ICUの病床数を反映するICU看護師数で50人以上、40〜49人、30〜39人、20 〜29人、20人未満、また30人以上と29人以下(各頁下段左)、及び40人以上と29 人以下にグループ分けをして、問24から問47について再検討した。ここに載せている のは全体をまとめたもので、個別の輸液や機械での分け方もしているが、トータルの人 数での頻度数を示している。  全てのヒヤリ・ハット発生率/患者日は、ICU看護師数が多い施設、おそらく大病 院で急性期患者が多く、ICU利用率が高い施設と思われる所で少ない。看護師数が減 るに連れて、この値は増加する。しかし逆に20人未満の施設では、20〜29人、30〜39 人の施設よりこの値は減少傾向を示した。このことはICUにおける医療人間のコミュ ニケーションが良好に行われた結果が現れていると思われる。  これが今回付け加えた表です。次の頁の表を見ますと、50人以上と20人未満の所で のヒヤリ・ハットの件数は、どうも少ない傾向にあります。青が4%、次の濃い赤が1 〜2%の所で、その数が50人以上または20人未満では少ないようであるという結果が 出されております。  次の頁のベッド数との関係を見ますと、やはり10%以上のヒヤリ・ハットは、8〜9 床ぐらいの中等度の所に多いようであるという結果でした。  専従医の数との関係は、次の頁に書かれております。10%以上のヒヤリ・ハットの所 は、専従医が2〜3人の所でした。この辺りの傾向はあまりはっきりしないのですが、 はっきりした傾向としては、看護師数の多い所と少ない所はヒヤリ・ハットも少ないの ではないかというのが、行岡委員からのご報告でした。 ○平澤部会長   ただいまのご説明はお分かりいただけましたか。先生、パーセントというのを、もう 1回説明していただけますか。発生率/患者日というのはpatient dayで割って。   ○前川委員(代)氏家先生   ヒヤリ・ハットの発生数を患者日で割って、100%にしたものというように聞いてお ります。    ○部会長   そうすると、例えば1%というと、どういうことになるのですか。   ○前川委員(代)氏家先生   100回起こっているのですか。1%というと。   ○武澤委員   ヒヤリ・ハットの数を患者日で割っただけではないですか。   ○平澤部会長   patient/dayで割ったわけですね。では6床のICUで30日として、180日patient/day で2日起こればほぼ1%、2回起こればほぼ1%という感じですね。   ○前川委員(代)氏家先生   そうです。   ○部会長   わかりました。あと、よく分からなかったのが、専従医というのはいつも2人いると いうことですか。それとも全体でそのICUに属している専従の医師が何人いるかとい うことですか。   ○前川委員(代)氏家先生   そうです。   ○平澤部会長   この数を見ると、例えばICUの看護師総数が50人以上という所は、全体で7カ所 しかなかったのですね。   ○前川委員(代)氏家先生   そうです。   ○部会長   回答してくださった中では7カ所で、そのうちの4カ所、つまり50何パーセント、 60%をちょっと欠けるぐらいが、ヒヤリ・ハットとの発生率が1%未満だったというこ とですね。   ○前川委員(代)氏家先生   はい。   ○平澤部会長   いまのご説明の医療事故情報収集事業の抜粋と、集中治療医学会が行ったヒヤリ・ハ ット事例の分析について、何かご質問やご意見はありませんか。   ○落合委員   2点あります。統計学的な意義は、どのように考えたらよろしいのか、それが1点で す。もう1点は「結論」の1の「しかし」という所に、「ICUにおける医療人間のコミ ュニケーションが良好に行われた結果が現われていると思われる」とありますが、この 理由はどこにあるのでしょうか。   ○前川委員(代)氏家先生   統計的な意義というのは、どのようなことでお答えしたらよろしいのでしょうか。   ○部会長   例えば有意な差があるかとか。   ○前川委員(代)氏家先生   その処理はしていないと思います。   ○落合委員   する予定はありますか。ただ集めて何パーセントと言われても、その先が。   ○前川委員(代)氏家先生   代理で来ていて申し訳ないのですが、これは危機管理委員会で出したデータをそのま ま持ってきているのです。ですから、これが使えるかどうかというのは、ここでの論議 であると思います。集中治療医学会の危機管理委員会で出したものが、このような報告、 もしくはこのような推論で出しているということです。   ○平澤部会長   氏家先生は、危機管理委員会の委員でしたか。 ○前川委員(代)氏家先生   入っていません。ですから私は直接、このスタディには全くタッチしていません。   ○落合委員   わからないですか。   ○前川委員(代)氏家先生   これからしますと、おそらく推論であろうと思います。   ○落合委員   私にはほとんど推論で成り立っているようにしか見えないのですが、氏家さんはいか がですか。   ○前川委員(代)氏家先生   推論と、これはヒヤリ・ハットの事例なので、私が思うには、おそらくヒヤリ・ハッ トということ自体が、それをヒヤリ・ハットと捉える人と捉えられない人とがいますか ら、そのようなものからすると、非常に不安定なものであろうというようには思います。 ですから事故となるとまた違いますが、どのような意味があるかというと、1つのデー タとして集中治療医学会の危機管理委員会で出している資料として捉えてもらえればい いと思います。   ○落合委員   今ちょうど出ましたが、病院機能評価のほうの事故の定義みたいなものはありますか。 たぶん前回もやったのですね。   ○事務局   こちらのほうにはありませんが、簡単に言えば大きく3つのパートがあり、医療事故 について幅広くご報告いただいております。1点目は、いわゆる医療過誤と考えられる ものです。もう少し申し上げますと、誤った医療または管理を行ったことが明らかであ り、その行った医療または管理に起因して患者が死亡し、もしくは患者に心身の障害が 残った事例、または予期しなかった、もしくは予期していたものを上回る処置、その他 の治療を要した事案です。2点目は、誤った医療または管理を行ったことが明らかでは ないけれど、行った患者または管理に起因して患者が死亡したりしたような事案です。 3点目は、これ以外に医療機関内における事故の発生の予防、再発の防止に資する事案 ということで、軽症的な事案もご報告いただくことにしております。   ○部会長   ほかに何かご質問やご意見はありますか。   ○武澤委員   ヒヤリ・ハットを、医療システムの安全性を評価する基準にするのは、無理がありま す。例えばヒヤリ・ハットの件数が少なくても、事故が多い施設もあるかもしれない。 普通はヒヤリ・ハットの報告数が多くて、重大な事故が少ないというのが、いちばん望 ましいと思うのです。これでICUというシステム全体の評価をするのは、基本的に無 理なのではないでしょうか。それができないのでPronovostは、ICU死亡率が看護師 数や運営体制によってどれだけ違ってくるのかという研究を行ったのです。先生も先ほ どおっしゃったように、ヒヤリやハットする閾値の問題があるでしょう。そういう意味 ではこれで何かを評価するというのは、問題があるのではないかと思います。   ○前川委員(代)氏家先生   おそらくこの安全指針を作るに当たっては、やはりICUというのは、非常に事故が 多いのではないかというところから始まっていると思うのですが、その具体的なデータ はほとんどないのです。それが示されたのが病院機能評価機構での記述と、あとは集中 治療医学会でやっているものしかないわけです。その現状の中でどのようなことを考え ていくかということだろうと思います。   ○平澤部会長   確かにヒヤリ・ハットというのは武澤委員がおっしゃったように、そのICUが全く 医療安全に関心がなければ、ヒヤリ・ハットとして出してこないわけです。ですから見 た目で、ヒヤリ・ハットも起こらないような所だと評価されてしまうという危惧も、も ちろんあるわけです。ただデータがないとおっしゃっているので、ヒヤリ・ハットがそ れに近いと言えば近いのかなということで、出していただいたのだと思います。ほかに 何かありませんか。   ○落合委員   4頁ですが、先ほど事故が起こった場合の一般病室の死亡率が13%で、ICUが31% というご指摘がありました。この対象となった施設の事故ではなく、一般病室の死亡率 とICUでの平均死亡率は、何パーセントぐらいでしょうか。   ○事務局  そういう形では集計しておりませんので、現時点ではお答えすることは難しいと考え ております。   ○部会長   この前もちょっと話がありましたが、事故数、ベッド当たりというのは出ているので すか。   ○事務局  ベッド数当たり、あるいは患者数当たりの頻度というのは、こちらでも医療機能評価 機構でまとめていただきたいという希望はお伝えしておりますが、病院の基本的なデー タを取り始めたのが最近でもあるので、その分析や公表には、もう少し時間がかかると いうように聞いております。   ○平澤部会長   例えば日本のICUの病床数というのは、大学病院などでも全体のベッド数の1%か 2%ぐらいですよね。そうするとベッド数から言えば、ICUの100倍ぐらいの病室の ベッド数があって、そこで62名が亡くなっていて、その100分の1しかベッド数がな いICUで11人が亡くなっているわけですから、ベッド数当たりの頻度としては、一 般病床などよりもはるかに高いということですね。   ○落合委員   逆にICUの死亡率が平均60%だとしますと、事故で亡くなる方のほうのリスクが低 いなどというディスカッションが出てきますよね。   ○平澤部会長   ICUでの死亡率が60%というのは。   ○落合委員   いや、違います。それがベースにないと、どういう方を対象にして扱ったデータなの かというのが、はっきり分からなくなる可能性があるかと思います。同じ非常に小さな インシデントだけれども、重症の方が結果としてアクシデントにつながるようなICU の環境だったり、そのまま助かってくれる一般病床という扱い方はあるかと思います。 ですから同じリスクを取るのでも非常に小さなファクターが、死亡率に大きな影響を与 える可能性が出てくるので、そこの母集団との関係は、やはり見ておかないとまずいの ではないかという感じはいたします。   ○平澤部会長   それもなかなか難しいですよね。例えばICUに入室している患者は非常に全身状態 が悪いので、病室だったら同じ程度の過ちであっても、患者のほうで立ち直ってくれた かもしれないのに、ICUではそれが背中を押してしまって、亡くなってしまったとい うことはあり得ると思うのです。   ○落合委員   同じエラーでも、一般病棟ではインシデントのほうに入っていますが、ICUではア クシデントに入っているという可能性はあるかと思います。あまり話しても、データが ないので何とも言えませんが。   ○武澤委員   重症な患者のほうが院内感染を起こしやすいと、一般的には思いますよね。しかし実 際はそうではないのです。ですから、一概には言えないので、データを取ってみないと わからないでしょうね。ただ先生がおっしゃるように、可能性はありますよね。   ○平澤部会長   感染はそうかもしれませんが、仮にカテコルアミンの投与量を間違ったなどというと、 病棟よりもICUの患者のほうが、その影響を大きく受けやすいという可能性はありま すよね。 ○武澤委員   可能性はありますが、早く発見できるから早く対処できるということもあると思いま す。   ○部会長   この2つについて、ほかに何かありますか。   ○前川委員(代)氏家先生   いま先生がおっしゃった日本病院機能評価機構の事故の死亡数というのは、ベッド数 からすると、やはり集中治療部で圧倒的に多いのではないか、ということが読み取れる のではないかと思います。それは落合委員が言われたように、ちょっとしたことが後押 ししているのかもしれません。   ○部会長   資料1にあるICUにおける医療事故の対象になった所は、結構ちゃんとしたICU を持っていらっしゃる、国、自治体、法人の、どちらかというと大きな病院ということ でよろしいのでしょうか。報告義務対象の医療機関というのは、どういうクライテリオ ンでしょうか。   ○事務局   対象となっている医療機関は、大学病院の本院である特定機能病院と一般の大学病院、 また、ここに書いてありますように、ナショナルセンター、ハンセン病療養所、そして 国立病院機構が開設する病院というのが対象になっています。ハンセン病療養所等には ICUはないと思いますが、病院機構の病院であっても急性期を熱心にやっている所は、 ICUがあると考えております。   ○平澤部会長   この対象となったICUのベッド数の分布みたいなものは分からないですよね。   ○事務局  対象となっている医療機関の施設の特性というのは、今のところはっきり分かってお りませんので、医療機能評価機構のほうと少し話をしながら、どの程度整理して出せる のか話をして、またお出しすることができればお示ししたいと思います。   ○平澤部会長   資料1も資料2も本当に私どもが参考になる、あるいは必要となるデータとは、ちょ っと違うような気もしますが、現在の時点で入手可能で少しでも参考になるであろうと 思われるものはこれぐらいですので、これを少し頭の中に入れておいていただいて、次 の議論をするしかないと思います。よろしいでしょうか。  それでは資料1と資料2についてのご説明はいただいたということで、本日の主たる 議題である議事の2番目に移ります。本部会における検討事項と言いますか、この部会 で今後どういうことをやっていくのかということについて、皆さんのご意見を伺いたい と思います。この前も、そもそも指針の目的は何かというところから始まって、だいぶ 議論が百出したようなところがあります。資料3について、事務局よりご説明をお願い いたします。 ○事務局  資料3の前に、参考資料1と参考資料2をご覧ください。内容は説明いたしませんが、 参考資料1は集中治療に関する用語について、集中治療医学やICUの既存の資料をま とめたものです。参考資料2は前回もお示ししておりましたが、診療報酬における集中 治療室等の施設基準、あるいは先ほど部会長からお話がありましたように、この基準を 算定する施設数や病床数の数字がありましたので、参考にしていただければと思います。  それでは資料3に基づき、ご説明いたします。前回の作業部会における主な意見を、 いくつかの項目に分けて整理しております。指針の目的については、ICUの患者の安 全を確保し、医療事故を防止するとしてはどうだろうか。この指針の作成に当たっての 基本的な考え方については、ICUが非常に危険な部署であるということを前提に、ヒ ヤリ・ハット事故事例を減らしていこうという考え方で作成していくべきではないか、 ICUのあるべき姿をまとめ、医療機関がそれに近づく努力をする指針としてはどうか、 マニュアルではなく、システム的アプローチをした安全管理の指針にすべきではないか、 といったご意見があったように考えております。  想定されるヒヤリ・ハット事例と医療事故の要因については、次のような特徴がある のではないかということで、患者とのコミュニケーションをとることが困難、情報伝達 と実施確認をすることが必要である、多くの職種や診療科の医師が出入りをする中で職 種間の連携が必要である、ヒューマンエラーの要因が非常に強いという点があるのでは ないか。  指針の対象となる医療機関の範囲として、一般のICUのみを対象にするのか、CC U、NICU、PICUなどのそれ以外のICUも対象にするのか、診療報酬上ICU として評価されていないユニット(HCUやステップダウンユニット)も対象にするの か、中小病院のICUも対象にするのか、こういったご意見があったように思います。  2枚目ですが、指針に盛り込む項目として特にご議論があったのは、教育についてで す。リスクの予測と回避のための再教育が必要ではないか、感性のトレーニングを行っ てはどうか。また、その他として、ICU独自の安全管理委員会をおくことが理想的で あるけれども、実際には難しいのではないか、患者や家族が医療安全に参加するシステ ムを考えてはどうか、こういったご意見があったように思います。先ほどの前川委員、 武澤委員ご提供の資料も踏まえ、資料3もご覧いただきながらご意見をいただければと 思います。 ○平澤部会長    資料3は、委員の先生方がこの前発言いただいたことを、事務方のほうでまとめてい ただいたものですが、よろしいですか。  それでは、このことについて皆さんで討論をする前に、前川委員と武澤委員からご意 見をいただいておりますので、資料4について武澤委員からご説明ください。 ○武澤委員   資料3に答える形で、一応の論点整理と言いますか、まとめたものが資料4−(1)です。 指針の目的は同じです。ICUの概念に関してはいろいろあると思いますが、そこに書 いてある言葉のとおりです。入室基準に関しては、疾患名を並べるやり方もありますが、 基本的には生命危機のある患者を収容します。では生命危機とはどう定義かというと、 やはり重症度分類をしなければいけないのではないかという考え方です。  基本的な考え方ですが、資料3の2に対応するものとして、医療事故密度が高いとい うことと、もともと患者は重症ですから、起こせば死亡リスクもあがり、そのために医 療費もかかるわけです。したがって医療事故対策としては、ICUはターゲット部署にな るでしょう。それから先ほども出ましたが、患者日で標準化すると、おそらくICUの 事故の発生率は高いでしょう。また重症なので予後が悪化する。しかし、ICUの特性 や重症度に違いがあった場合に、一体どういうように指針を作るかというのは、まだ決 まっていません。安全指針を作るに当たっては、医療環境や制度に関係する部分もある ので、それに対する提言をすることにもなるかというのが(ウ)の所です。  5番目が、ICUの中でのヒヤリ・ハットと事故の現状についてです。厚生労働省定 義ではヒヤリ・ハットと、医療事故と、過誤という3つしかありません。そのうちヒヤ リ・ハット事故の現状に関しては、(ア)はICUの医療特性がどういうものか、(イ) はどういう事故が起こるのかです。誤薬、感染、人工呼吸器に関する事故、事故抜去、 あるいは透析も含めた血液浄化に関係するもの、輸液ポンプに関するもの、IABP、LVAD、 PCPS、また、せっかくのアラームも白色ノイズになって誰も感知しないといったアラ ーム管理に関するもの、DVT等、いろいろな重点領域があると思います。これについ ては例えばアメリカのFDAでは、医療機器に関する事故事例を公開しています。ただ 日本には医療機器別の事故の頻度のデータが未整備なので、わからないかもしれません が、いちばん危ないところから押さえていくことになると思います。  指針の対象は先ほども言いましたように、まだ不明です。ICUとして施設認定を受 けている所だけにするのか、受けていないICUも含めるのか、NICU、CCU等々 も含むのかというのは、まだ十分には議論がされていません。  指針に盛り込む項目は、そこに箇条書きにしました。まず人員です。どんな人が管理 責任者なのか、働く人は専従なのか、専任なのか、兼任なのか、人数は、資格は。クラ ークを加えるかどうか、看護師も同じようなことが問われてきますし、臨床工学技士も 薬剤師の資格と適正配置が、指針に盛り込まれてくるのではないかと思います。  運営に関しては、指揮命令権が整備されているか、他科の医師が来て処方をして、そ のまま帰っていくようなことはないのか、どの程度、ICUの医師に責任と権限がある のか。closedとopenはどうか、専任の医師、専任のチームで患者を診ているのか、そ れともベッド貸しのICUになっているのかというのが2番目です。それから適正な人 員が配置されているのか。アメリカでは患者対看護師比が、厳しくなってきていますが、 そのような配置が出来るか出来ないか。またICUの中でリスクマネージャーは、どの 程度の能力をもって役割を果たすのかということに対する指針も要るでしょう。  環境・設備としては自然災害等々に関する耐火性や免震性。医療機器に関しては、ど の機械を対象にするのか。保守点検、機器の統一、作業手順書(FMEAも含む)です。  それから機器を新規購入をしたときの教育・研修義務いうのも盛り込むべきでしょう。 医薬品に関しては、エビデンスに則った使い方をされているか。つまりガイドラインを 利用しているかということです。また、希釈のやり方にもいろいろあります。クリーン ベンチの使用方法もありますし、薬剤の適正投与が行われているのか、その確認はどう するのか。例えばバーコードを使うといっても、バーコードにもいろいろありますので、 そういった機器の使い方や情報管理が可能か、誤接の問題も含めて、ルート管理をどう するか、輸血の患者確認などがあると思います。  感染に関しては、ガイドラインを作ってサーベランスを行い、アウトブレイクを起こ したときのクライシス管理が必要です。方法は大枠は決まっています。ただし、評価を しなければいけませんが、大体のフレームは描けると思います。  情報管理に関しては、勤務交代で情報漏れが起こります。実施入力がどれぐらいでき ているかも、問題でしょう。指示と実行との間には、かなりのズレがあります。薬もオ ーダーエントリーだけでは、30%か40%は誤薬が漏れてしまい、そこの事故は防げない と言われています。職種間での情報共有等々も含めて、ICU共通専用カルテ、電子カ ルテ化ということも関係するでしょう。Patient Data Management System(PDMS)を 利用すると、いろいろなデータベースとのコネクションができますし、患者情報を一括 して管理・共有化できます。しかもデータベース化されているので、パフォーマンス評価 をするときも使えますし、それぞれの手順がどう行われたかというトレースもできます ので、やはりPDMSの整備も必要でしょう。  教育・研修ですが、一般的医療従事者を対象とした安全管理研修は行わなくてもいい でしょう。それよりは、ICUでは、まず、リスクマネージャーを徹底的に教育・研修し てはどうか。リスクマネージャーがいないときは、管理者でいいと思うのですが、それ に対する徹底的な研修を行い、その人がそのあとでさらに現場の方々に教育・研修を行 うという形にしないと、若い看護師がわかっているのに、ICUの部長がさっぱり分か らないという、とんでもない状況もあり得るのです。そうではなく、やはり上から教え 込んでいくことが必要かと思います。  また新人や現任への安全教育も必要です。ICUでの安全管理教育というのは、シス テム的にはほとんど実施されていないと思うのです。意識の高いICUでは、リスクマ ネージャーが頑張ってやっているかもしれませんが、全体としてはそうではないと思う ので、どういうカリキュラムでやるのか。特に前川委員の感性トレーニングも大事だと 思います。また教材も開発しなければいけません。特に研修医等、新人が来たときのカ リキュラムや教材は提供しなければいけないと思います。オスキーでシミュレータを使 うというのも、1つの手でしょう。  事故が起こったときの報告・開示基準というのも、明らかにしておく。これはここで やる必要はないので、それぞれの病院でやればいいと思います。警察、マスコミ、機能 評価機構、関係省庁にどういう形で提示するのかということも、はっきりしておいたほ うが、良いと思います。クライシス管理というのは、気道確保ができないとか、急に心 臓が止まったとか、停電になったという異常事態が起こったときの行動指針も必要です。 医療安全に関する機器やシステムの開発も、やはりメーカーあるいは学会、医療施設と 一緒になって開発することも必要でしょう。  その他として、医療事故あるいはヒヤリ・ハットの報告体制ですが、残念ながら現在 の医療機能評価機構の分析能力というのは、あまり高くはないと思います。しかもIC Uに特化したような分析は、ほとんど出来ません。人員数からいって無理だろうと思い ます。「人員と費用は学会負担とする」と勝手に書いていますので、後から怒られるかも しれませんが、もし可能であればICU学会の理事長の命令で、ICU学会の人間を医 療機能評価機構に派遣し、そこでICUでの医療事故分析をしたり、医療事故事例の情報 共有や改善策作成のための支援が必要ではないでしょうか。  外国の報告システムは、あまり参考になるものはないとは思うのですが、一応調べて おいたほうがいいのではないかと思います。それと比較しながら、日本のICU全体の システムですね。先ほどの資料3の2、「単なるマニュアルではなくシステム的アプロー チにした安全管理の指針とすべきである」というのは、すごくいい発想だと思います。 要するにいろいろな階層があるので、行政は何をしなければいけないか、学会は、何を しなければいけないか、病院は何をしなければいけないか、各ICUの管理者、職員は 何をしなければいけないかというのを、項目化してマトリックを作ったほうがいいと思 うのです。この次ぐらいにマトリックスが出来上がったら、皆さんにからご意見をいた だこうかと思っています。 ○平澤部会長   皆さんにいろいろお聞きする前に、いくつか申し上げておきたいと思います。APA CHEというのはIIもIIIもありますが、ここでおっしゃっているのはAPACHEIIの 話ですよね。   ○武澤委員    そうです。   ○平澤部会長   それだったらやはり「II」とお書きいただいたほうがいいと思います。  もう1つ気になったのは、ヒヤリ・ハットを「H^2」と書いた所です。これもある意 味で公文書みたいなもので、一部の人たちが階級方言のように使っている表現を、こう いうものに使うのはいかがなものかと思います。やはり「ヒヤリ・ハット」と書いてい ただいたほうがいいと思います。  それからこのペーパーのポジションと言いますか位置づけは、この前の作業部会での 皆さんのいろいろなご意見をお聞きいただいた上で、武澤委員と前川委員がおまとめく ださったものと解釈していいですね。 ○武澤委員   そうです。氏家先生にも加わっていただきました。   ○平澤部会長   わかりました。それと皆さんとこれを見ながら議論をするところで、確認しておきた いのですが、2頁の7番に、「指針に盛り込む項目」というのがありますね。どの程度の ICUを想定して、安全管理指針を策定するかというのは、この部会としてはまだ議論 がある中で、先生方がおっしゃっている指針に盛り込む項目というのは、どのICUを 想定して、大体これがミニマムリクワイアメントとお考えですか。ここだけ先走ってい るというか、深掘りしてしまっているので、議論が噛み合わないところがあるのです。   ○武澤委員   これは特定治療加算を取っているICUを念頭に置いて作っています。ただ、この項 目は決まっているわけではないので、提案です。   ○平澤部会長   それにしても想定しているのは、一応特定集中治療管理加算を取っている程度のIC Uであれば、この程度のことはやらなければいけないという項目を選んでいただいたの ですね。そうすると皆さんはいろいろな意見があるので、一般病棟でICUと称してい る所まで含んだ安全指針というと、またこれとは違ってくる可能性がありますね。   ○武澤委員   全然変わってくると思います。   ○平澤部会長   ですから、ここだけは深掘りして、仮に特定集中治療管理加算を取るICUを想定し ての安全指針だったら、こういうことを盛り込まなければいけないのではないかという ことをお考えいただいて、列記してあるとお考えいただければいいと思います。  ここはこの前も非常に皆さんの意見が分かれたところで大変ですが、資料3は1から 5までありますね。項目が多いので、3つほどに分けて質疑を進めていきたいと思いま す。まず最初は、総論の総論です。指針の目的と指針における基本的な考え方について、 先生方のご意見をいろいろいただきたいと思います。いかがでしょうか。指針の目的は、 「集中治療室(ICU)の患者の安全を確保し、医療事故を防止する」ということで、 基本的なコンセプトとしてはいいと思うのですが、文言でおかしいとか、加えたほうが いいということはありますか。 ○飯田委員   前にも申し上げたのですが、いま武澤委員がおっしゃったように、特定治療加算の診 療報酬上の施設基準を取ったICUと限定するのであれば、もう議論をする必要はない のです。それも大事なことですが、それに加えて診療報酬上の施設基準を取っていない 重症患者管理が、非常に重要なのです。むしろICUの設備を持っている病院であって も、重症患者を見ている所としては、それ以外の所のほうが多いわけです。そこでの実 際の事故の事例も多いわけですから、そこでの指針というのは極めて重要なので、併せ て作っていただきたいのです。このICU治療室という定義を厳密にするのであれば、 もう少し拡げて「等」にしていただきたい。最初から目的を限定してしまうと議論にな らないので、そこだけはもう少し拡大してやっていただきたいと思います。   ○平澤部会長   いま飯田委員がおっしゃったのは、4番にも関係しているわけですね。   ○飯田委員   そうです。   ○平澤部会長   委員のご意見は、目的を「集中治療室(ICU)等の患者の安全を」というように、 「等」を入れるということですね。   ○飯田委員   そうです。   ○平澤部会長   いかがでしょうか。   ○落合委員   文言だけでいくのでしたら、「集中治療中の」というように部署を限定しなければ、す べてを含むような感じはいたします。   ○平澤部会長   「ICU」も取ってしまって、「集中治療中の患者の安全を」とする。そうすると集中 治療とは何ぞやということになる。参考資料1に、集中治療とは「内科系・外科系を問 わず、呼吸・循環・代謝などの重要臓器の急性臓器不全に対し、総合的・集中的に治療・ 看護を行い、回復させるのが主題」であると書いてあり、私もそう思います。それを行 う所がICUということになりますかね。そうすると1番の文言は4番を検討して、何 を対象にやるかということで、加えるかどうかということになると思うのです。   ○飯田委員   私はちょっと疑問なのです。もし、そういうように限定したのであれば、ICUとい うのはMOFを起こした患者を診るだけというか、いわゆるMOFを起こしていない術 後の患者は、対象にしないということになりますね。   ○部会長   MOFでなくても、単一臓器の不全でもいいと思います。   ○飯田委員   例えば食道がんでも肝臓がんでもいいのですが、臓器不全を起こしていなければ、そ の術後の患者は対象にしないということですか。   ○部会長   いや、そんなことはないと思います。対象にすると思います。   ○飯田委員   そうしたら、「臓器不全」という言葉は使わないほうがいいと思います。   ○部会長   これは日本集中治療医学会のホームページから取ったものですが、実際にインテンシ ブ・ケア・メディスンということになれば、こういう定義だと思います。ただICUに どういう患者が入っているかということになれば、こういうことを起こすハイリスクの 患者をモニターするためにも入っているということだと思います。   ○武澤委員   原因は臓器不全であっても何でもいいのであって、やはり死亡するリスクの高い患者 を診るのでしょう。腎不全があっても通常の生活をしている人はICUに入らなくても いいわけですよね。   ○部会長   それは慢性維持透析の話です。これは急性臓器不全ですから、慢性とはまた話が別で しょう。   ○武澤委員   尿が出ないだけだったら、別にICUには入らないですよ。   ○部会長   そんなことはないでしょう。   ○武澤委員   病室でも透析ぐらい出来るのです。やはり死亡するリスクが高い患者で、しかも回復 する可能性のある患者を入れるのがICUだと思うのです。それを日本語でどうやって 表現するかというのは難しいとは思うのですが。どういう治療を提供するかということ を前提に話をするから、ややこしくなるのであって、どのような患者が収容されて治療 を受けなければいけないかという観点から見ると、はっきりするのではないですか。   ○部会長   それは集中的な、いろいろな治療が必要な人ということですよね。   ○前川委員(代)氏家先生   資料4で一緒に意見を言わせてもらった立場でお話します。飯田委員の前回のご意見 も読ませていただきましたが、指針の目的として、「ICUの」と書いてあるわけです。 先ほど武澤委員は、特定集中治療加算を取っている所を想定しているということは言い ましたが、ここではICUの定義を、「傷病または処置により生命危機にあるが、適切な 治療・看護により回復の可能性のある患者を収容する病院内施設」と書いており、必ず しも集中治療加算を取っている特定施設というようには限定しなかったのです。ですか ら、そこでは病院によっては比較的幅広くとらえられるというように規定したわけです。   ○平澤部会長   しかし、その場合は「ICUの概念・定義」と書いてしまってありますからね。   ○前川委員(代)氏家先生   そうなのです。ですから特定集中治療加算を取っているものをICUと言うのか。病 院によってはそうではなく、術後の患者も含めたものが収容されるのが、ICUという ようになっているのだろうと思います。もし資料4のようなものが全部含まれたら、当 然それは特定集中治療加算の取れる施設になるし、そうでなければ取れない施設になる かもしれないとは思います。   ○平澤部会長   第1回の作業部会で飯田委員が、病棟でも重症患者を診ているというお話がありまし たが、私もそのことを考えていたのです。ただ重症度というのは、どこかでブツンと切 れるわけではなく、生命危機に面しているものから、ずっと軽いものまで連続的にある わけです。どこで切って重症患者とするかということは、施設によっても違うし、担当 している医師の感覚によっても違うと思うのです。この4番にも関係しますが、そうい うことは非常に多彩ですので、一応資料4も特定集中治療管理加算を取れるような感じ の、ICUで治療を受けている患者ということにしてあります。飯田委員、そういうコ ンセプトでは駄目ですか。   ○飯田委員   それが不要だと言っているのではないのです。それも大事です。それに加えて、病院 によって名前が違いますが、HCUや術後部屋と言われる所の指針もきちんと作らなけ れば、むしろそちらのほうが大事だろうと言っているわけです。いわゆるICUの施設 基準を取れる施設であれば、常時医師あるいは看護師がいて、逆にそれだけの人的、物 的な配置があるわけですから、患者の状態としては、リスクの高い患者が多いのは確か ですが、そうでない一般病棟の話です。一般病室で急変するという事もあるので、そこ までやるかどうかというのを議論しても結構ですが、そうではなく、いわゆるICU加 算を取っていなくても、施設基準を取っていないHCU的な病室が実際にはいくつもあ ります。むしろ、そちらのほうが多い。あるいは病棟の看護室の隣の、いわゆる術後部 屋で診ている所が多い。そちらのほうがむしろ大事で、危険な率も高いと思います。そ ういう所の指針をきちんと作らなければいけないと私は思っています。2段階でも3段 階でも結構ですから、そういうものを作っていただきたい。今日、武澤委員がおっしゃ ったことも、後でマトリックスができますから、マトリックスを作れば、それに対して できます。   ○平澤部会長   それは同じ基準を当てはめるわけには、なかなかいかないですよね。   ○飯田委員   2本でも3本でも結構ですから、まずマトリックスで作っておけばいいのです。全く 違うわけではないのです。共通項目が多く、分けなくてはいけない項目のほうが少ない と思います。   ○平澤部会長   ですから第1弾のコアとしては、特定集中治療加算を取っているようなICUを想定 して、安全指針を作って、それで先生がおっしゃるようなものが必要だと皆さんもおっ しゃるなら、それをたたき台にステップダウンとか、ナースステーションの隣にあるよ うな重症管理室バージョンを作ればいいのではないですか。最大公約数的なものは、な かなか作れませんよ。   ○飯田委員   気を付けなければいけないところは共通ですが、運営は全然違うのです。ですから、 そのまま置き替えるわけにはいかないので、並行してやらなくてはいけないと思ってい ます。ICUの施設基準を取った所を作って、それをちょっと書き直せばいいという話 をしているのではないのです。   ○部会長   いや、ちょっとかどうかは分かりませんが。   ○飯田委員   全然運営が違うわけですから、運営が違えば全部違うのです。   ○部会長   それは分かります。 ○飯田委員   この前も層別化というお話をしたと思うのです。やはり最低限は必要だと思っている のです。   ○部会長   落合委員、何かありますか。 ○落合委員   データがないのでわかりませんが、もし先生がおっしゃっているように、いわゆるI CUでない所での集中治療のほうがリスクが高いので、そのリスクを下げるためにやら なくてはいけないことがICUなのだ、ICUにしなさいというガイドラインになって しまったら、結局同じことになってしまいますよね。   ○飯田委員   違います。ICUにしなさいというガイドラインの話ではありません。   ○落合委員   患者の安全を確保するためには、看護師はこれぐらい必要ですよ、同じ治療をするの だったら、医師はこれだけ必要ですよというデータ結果が出てしまい、なぜ一般病棟の 集中治療のリスクが高いのかといったら、設備もないし、人もいないからだという結論 がデータで出たとしたら、結局、集中治療というのは、ICUでやらなくてはいけない ということになってしまいますよね。   ○飯田委員   逆に私が質問したかったのは、これは指針を作る会ではないのですか、基準を作る会 なのですか。何か話が混同しているのです。ここは診療報酬の算定基準を作るという話 ではないのです。   ○平澤部会長   誰もそんなことは言っていないでしょう。   ○飯田委員   いまの話ではそうなってくるのです。そういうお話をしているのではなくて。   ○落合委員   もし、夜間に医師がいないような施設ではリスクが高いのだというデータがあれば、 ガイドラインとしては24時間医師を用意しましょうと、そのようになりますよね。で も、それはやはりできないのだということを言われてしまったら、私はそれはガイドラ インではなくなってしまうのだと思います。   ○飯田委員   いや、違うのではないですか。例えば、離島では手術しないのですか。それでも、手 術が必要なのです。やってはいけないというなら、それでいいです。そうではないでし ょう。手術をそこでやらなければいけないのです。   ○部会長   そこまで言ってしまうと、そんな多様化したことにいちいち対応するような安全基準 というのは、なかなか作れませんよ。   ○飯田委員   そういうのをつくりなさいと言っているのではなくて、落合委員がやるなという話が あるのではないですかとおっしゃるから、そうではないでしょうということを言ってい るだけです。   ○落合委員   やるなではなくて、リスクを減らすためには、こういうガイドラインに沿った診療を しましょうということですよね。問題が何であって、解決には何が必要かということを ここで示すわけですから。   ○飯田委員   ガイドラインというのは、ミニマムリクワイアメントではないのです。皆さん、ガイ ドラインの基準と混同しているのです。私の理解では、いまここで基準を作るのではな いのです。基準を作るなら、先生の理解があるかもしれませんよ。いまはガイドライン を作るのですから、こういうのを目指してやってくださいでもいいのです。いくつかの 段階があって、こういうのを目指してやってくださいでいいのです。こういう場合には、 こういうことに注意しましょう、ここにそれのやり方がありますよでいいわけです。   ○落合委員   注意しましょうだから、ある意味では24時間、医師を用意しましょうということで すよね。   ○飯田委員   そんなこと言っていませんよ。   ○落合委員   注意しましょうというのは、注意は非常に漠然なので、具体的に。   ○飯田委員   そういうことは言っていませんよ。24時間医師がいない所では、どういう運営があり ますかということを考えなければいけない。それが現実なのですよ。   ○平澤部会長   先生、それはある意味で私もわかりますが、やはりスキームとしては、いちばん典型 的で、それで認識されている形のICUから始めないと、なかなか作業が進まないと思 います。先生はナースステーションの隣でやっているのが多い、多いとおっしゃるので すが、それの実数だって、私は本当に多いのかと思いますし、ちゃんとした病院ならそ ういうのをICUに入れますよね。    ○飯田委員   ですから、ICUがある病院は入れます。ICUがない病院のほうが多いのではない ですか。データを見てください。これが物語っています。この重症度があるではないで すか。   ○平澤部会長   でも、先生、それでいくと、先ほど言ったように重症度というのはずっと切れ目なく 続いているから、一般の病床で治療を受けている重症患者には思いを及ぼさなくていい のかという話にもなっていますね。だから、どこで切って基準を作るかという話になっ ているではないですか。   ○飯田委員   ですから、2本ないし3本作ればいいのではないですか。細かくすればいい話ではな いですから。いわゆる術後でなくたって、急変する患者もいるし、急変して大部屋で亡 くなる方がいらっしゃいますよ。それはあり得ます。それまですべて作る話をしている わけではないです。   ○平澤部会長   ですから、極端になるとそうなってしまうので、私は最初はICUにおける安全管理 指針というのを作って、モディファイと言うと怒られてしまいますから、それを叩き台 にして、次のステップダウンなりハイケアユニットなりを作って、そこに至らないよう なところも、また次に考えるというようなことでいいのではないかということを、最初 に申し上げたわけです。   ○事務局   私のほうから1つ申し上げますと、今回と次回ぐらいまでは、まだ方向性を完全に集 約して、この会議でまとめるというところまでに至る必要はないのではないかと思って います。そういう意味で、こちらの方向でやるのだということまで決めなくて、ある程 度こういう考え方があるのではないかということを自由にご発言いただいて、それを事 務局のほうで整理して、またお示ししたいと思います。あまり言葉をしっかり定義した り、あるいは方向性を決めたりするという形になりますと、そこでなかなか議論が進ん でまいりませんので、こういう前提だったら、こういう考え方があるではないかなど、 そのように自由にご意見をいただければ、こちらで整理をしたいと思っております。   ○平澤部会長   わかりました。そうすると、まず最初の「指針の目的」という所から入っていって、 文言の所から4に飛んでしまっているわけなのです。ただ、このことについて、もう少 しご意見をいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。   ○加納委員   先ほど基準と指針のことをおっしゃっていましたが、これはあくまで指針ですよね。 基準を作ろうとしているわけではないですね。例えば基準というのはJISであったり、 そういうものであって、これはあくまでガイドラインですよね。ガイドラインというの は、私もいままでいくつかかかわってやりましたが、私の解釈ではそれは1つの目標で あって、ガイドラインを参考に各医療機関が自分の施設に合った、さらにその病院の中 のガイドラインというか、そういうものを作っていけばいいのではないかと思います。 部会長がおっしゃっているように、まずスタンダードとなるような典型的なものをやっ ていけばいいということで、いけないのでしょうか。基準ではなく、これはあくまでガ イドラインですから、それをやらなければいけないという話では全然ない。あくまで目 標なのではないかと思います。   ○平澤部会長   どうでしょうか。これは皆さんのご意見を聞いてということですので、まだご発言い ただいていない織田委員、内野委員、順番にご発言ください。   ○織田委員   私もそう思うのです。というのは、ここに集まっているのは皆さん、いわゆるICU の専門家であって、ほとんどの方は市中病院でやられている術後の重症患者を診る部屋 などに関しては、実態自体もわかっていないと思うのです。それをこの中で作っていく というのは、非常に困難だと思います。ですから、いまもおっしゃいましたように、い わゆるICU、それは病院の中心部門としてのICUですよね。そういう所を対象にし て、指定を取る、取らないは別にして、そういう所における安全管理をこのようにしな さいというガイドラインを作るということでいいのではないかと思います。   ○内野委員   部屋を論議しているのではなくて、患者を論議しているのだろうと思うのですね。例 えば飯田委員がおっしゃっているように、そういう場所でやっている人もいるし、そう いう施設もある。例えば特定機能みたいなものは、全部そのような施設を持っていらっ しゃるのだろうと思います。ただ、例えば私の所なども500床の病院で、ICUを持っ ていますが、コンスタントに動いているわけではなく、患者の状態によって波がある。 そのようなときには、専任などの問題はどう考えるのだろうとか、いろいろな問題はあ ると思います。  いま集中治療室というのを論議してしまうと、イメージがみんな違ってきてしまう。 まとまりがなくなってしまう。むしろ先ほど織田委員がおっしゃったように、集中治療 中の患者を治療するために、集中管理が必要な患者をするための施設として、どういう ガイドラインがいいだろう、というほうがまとまりやすいのではないかという気がして いるのです。 ○部会長   先生のおっしゃっている集中治療というのは、どういうことですか。   ○内野委員   ですから、集中治療というのは、先ほどから定義がありますようにICMですか、重 篤な患者を扱う治療に関する指針。それが要は大きさによって、部屋がユニットを持っ ている所もあるし、ユニットがない所もあるということなのではないかという気がする と思うのですけれども。   ○武澤委員   飯田委員のご意見は確かで、現実問題として、そういう患者がいるわけですね。すべ ての重症患者をICUに収容できないわけです。そうすると、いろいろな重症度の患者 がいて、もちろん理想的には、いちばん重症な患者はICUに入るのがいいのでしょう けれども、重症な人を病棟で診ることもあるだろうし、逆に軽症の人がICUに入って いることもあるわけですね。そうすると、ICUだけにこだわると、おそらく飯田委員 がおっしゃるように、事実上、病棟の重症患者がここから外れてしまうと。だけど、実 際にはそういう患者がいるわけで、毎日そういう患者を診なければいけないわけですよ ね。  そうすると、患者重症度に応じて、何らかの指針を作っていくか。もう1つ問題なの は、重症度に応じても、今度はスタッフ、人員配置、設備機器がまた変わってきますよ ね。すごく重症でも、1時間に何回アセスメントができるのだなどという話が入ってき ます。そうすると、それも含めて、ガイドラインを作るということになると、結構、大 変になります。ただ、せっかく飯田委員も入っていらっしゃるので、もしICUのもの をやるのだったら、ICU学会だけでやればいい話だから、そうでない方々も入ってい るから、折角の機会なので、施設認定を受けていないICUも含めて作るような努力をさ れたほうがいいような気がしますけれどもね。難しいと思いますけどね。 ○中島委員   私も、飯田委員のご指摘の点は非常に重要だと思っています。というのは、ICUで はないけれども、ICUに限りなく近い医療を行っているICU以外の場所というのは 非常にたくさんあるわけで、同じような環境がそこにはあると考えていいと思いますし、 そのような場所で濃厚な医療を受けている患者の安全を考えるのは非常に重要な課題で す。  ただし、これはICUバージョン、これはハイケアユニットバージョン、といった個々 の指針をこの委員会ですべて作るのは実際上は不可能です。一方、この委員会で作成し た指針は、各医療機関がそのまま使用することができませんので、それぞれの医療機関 でその実情や運用に合った指針や細かいマニュアルを作成することになります。従って、 ICUという名称の場所に限定しないで、広く集中治療を提供している部門が利用できる ような指針は1つ作成し、指針の冒頭にこの指針の読み方、利用のしかたを記述してお けば良いのではないでしょうか。細かい内容については、武澤委員が提案された項目で ほぼカバーされているのではないかと思うのです。  例えば、人員とか、運営の指揮系統については、ICUという明確な部門がない所で は体制や責任が曖昧になりがちであることから、ICU以外の集中治療を行っている部 門においても、ここで作成する指針を活用することは重要です。飯田委員が集中治療室 等とおっしゃったのは、そのようなご趣旨があるのではないかと思います。 ○前川委員(代)氏家先生   先ほども述べさせてもらいましたが、必ずしも特定集中治療加算をとっているICU だけではなくて、いわゆる病院でICUと認めている施設、そのようなところでこのよ うな重症患者を診ている病院内施設に対する指針というか、それを作っていくというこ とでいいのではないかと。そうすれば、飯田委員のご指摘の部分もかなりカバーされる のではないか。これは指針であって、その施設がそれにできるだけ近付くように、患者 の安全が達成されればいいわけですから、安全を達成するためにはこういうものが必要 だろうという指針を作っていけばいいのではないかと思います。   ○道又委員   私も、集中治療を受けている患者の安全確保というところが主眼で、場ではないと思 います。そうすると、かえってそのほうが簡単ではないかと思ったりもしているのです。 場などを特定していくと、確かに基準が出来上がっていく。何々がなければいけないな どとなっていくので、そうではないのではないかと思います。   ○北澤委員   実は不勉強で、前回のこの会議で聞くまで、要するに病院にICUと出ているものは ICUだと思っていたのです。でも、前回の会議でICUという名前でも、保険上の加 算を取っている所と取っていない施設があること、さらに機能的に、実質的にはICU でやられるべき治療を必要とする患者であっても、そうでないところで治療を受けてい る人が少なからずいるという実態があるということ。それが前回の会議のときにわかっ て、自分としてはちょっと驚きもありました。そういうことは、私の不勉強もあるので しょうけれども、意外に普通の人も、ICUといったらICUのことなのだろうなと思 っているのではないかと感じました。そこで、そのことに関して言えば、いま加納委員 や中島委員が言われるように、要するに患者としては同じなわけですから、そういった 医療上の必要性がある患者に対して、どういう治療をやっていくのが望ましいのかとい う点では、おそらく1つのあるべき姿はあるでしょうし、そういったものを国のこうい った検討会でまとめていくということには、意義があると思います。  それで、何々バージョン、何々バージョン、あるいは病院によって、例えばうちの施 設は保険上のそれは取っていないのですが、どうしたらいいのだろうかみたいなことは、 現場ではあるとは思うのです。そういったときでも、もし今回示される指針ができたな らば、そこにできるだけ近付けるような努力を病院内でしていただくように、この指針 ができたときに、いろいろな先生がお知らせしたり啓発したりする、というようになっ ていけばいいのではないかと感じました。 ○平澤部会長   皆さんがおっしゃっているのは、大体同じ方向に向いてきたかと思いますが、要する に特定治療加算を取っているICUということではなくて、集中治療という定義はどこ かにフットノートでも書く必要があるかもしれませんが、集中治療を受けている患者の 安全を確保して、医療事故を防止するにはどうしたらいいかというガイドラインを作る ということですね。そういうコンセプトでよろしいですか。それで、指針作成に当たっ てはということに関しても、いまいろいろご意見をいただきましたが、基準ではなくて 指針なので、こういうことを作って、それを各医療機関でいろいろ咀嚼していただくと。 それに近付くべく努力をしていただくという感じでしょうかね。  時間の関係もありますので、次に移りたいと思うのですが、「想定されるヒヤリ・ハッ ト事例、医療事故」、「指針の対象となる医療機関の範囲」です。資料3の4の「指針の 対象となる医療機関の範囲」については、先ほどのお話だと、皆さんがどこを対象にす るということではなくて、その患者がどこにいても重症患者であって、集中治療を受け ているような患者を対象にするということです。そのようにしたほうがいいという意見 が大勢を占めていたと私は思いましたので、医療機関の範囲は、この際あまり問題にな らないということですかね。  「想定されるヒヤリ・ハット事例、医療事故」というのは、どういうことでしょうか。 「ヒヤリ・ハット、医療事故の要因としてICUには以下の特徴があるのではないか」。 これは検討項目というよりは、この指針を作るに当たっての重症患者の治療に付随した ヒヤリ・ハット、医療事故の要因としては、ほかと比べるとこういうことが特徴的にあ る、ということを挙げていただいたということですかね。 ○事務局   3番目の想定される医療事故等の項目は、先生方のご意見として、こういう特徴があ るのではないかという整理をしましたが、狙いとしては、こういう医療事故が具体的に 発生していて、それをこの指針でこのぐらい防止できますということを、具体的に列挙 していただけると、実際の指針を使う側でも、こういうことをすればこういう事故が防 げる、あるいはこういう事故を防ぐために、こういうことをするのだという目的意識が はっきりするのではないか、ということで設けた項目です。   ○平澤部会長   日本で、例えば多くの職種、多くの診療科の医師が出入りすると言いますが、closed でオーダーを出しているICUというのは、圧倒的に少ないですよね。やはりopenで、 各科の先生方が入り交じって出しているという所がほとんどですね。   ○道又委員   これは前回の意見というか、考え方の中で出てきたものでしたか。   ○事務局   前回の会議のときに、ICUでの事故というのは、このような特徴があるのではない かというご意見があったので、ここでまとめております。   ○落合委員  意見ではなくてデータではないですか。 ○事務局  データではなくて、単なる意見です。ですから、最終的に報告書、あるいは指針をま とめていくような場合には、データに基づいて、表現をさらにきちんとしたものにする ことは必要かと思いますが、まずは前回のご議論を踏まえて、今回またご議論していた だくということで、前回のご意見、感想、あるいはこれまでの経験を踏まえておっしゃ っていただいた意見だということでも少し書いて、ご議論いただくときの材料にできれ ばということで、ここに整理をしております。 ○落合委員  これをやったら良くなるなどということは、データがないのに書けないと思うのです。 ガイドラインというのは、あくまで導入して、その結果、1年後、2年後に再評価をし て、リスクがこれだけ減ったのだ、だからこのガイドラインは有効だったのだと、そこ まで行って初めてガイドラインになるわけですよね。だから、思いつきでみんなが出し た意見をデータとして、効果があるか、ないかなどということは書けないと思うのです。 ○事務局  我々のほうとしては、日常の医療現場でこのように感じているということをおっしゃ っていただければ、それに基づいたデータも我々のほうで探したりしようということで、 こういう通常の感想的なご意見も書いているのですが、最終的に報告書をまとめる段に なって、やはりそういうデータはないということになれば、それは報告書、あるいは指 針のほうには反映できないということですので、その過程ということで、一応、当初と してはデータに基づいていろいろなことをおっしゃっていただくことが必要だと思うの ですが、経験則でこのような印象を持っているということをこの場でおっしゃっていた だければ、それはそれでまたそういうデータがあるかどうかということを事務局のほう で調べて、ご提示する。そういう過程の表現といいますか、ご意見ということでご理解 いただければと思います。 ○平澤部会長   「医療事故の要因としてICUには以下の特徴があるのではないか」と書いてありま すから、皆さんがフリートーク的にそのときおっしゃったことをサマライズしていただ いているという解釈でよろしいのではないかと思います。いまここで挙げていただくと して、先生方が普段見ていらっしゃって、そのほかに何か特徴的なことはありますか。   ○落合委員   先ほど先生が重症度について、切れ目がないというお話をされていましたが、たぶん 各病院で安全指針というのが病院内にあると思うのです。今日、私も自分で確認しまし たが、こんな分厚い指針があるのですね。それとICUの指針が違うのかといったら、 それは一緒だと思うのです。安全を守る、良くするという意味では、いわゆる一般病棟、 一般外来の指針も普遍的だと思うのです。その中で、ICUに特徴的なことを考えるの がこの部会だと私は思っているのです。そうすると、先ほど武澤委員がおっしゃったよ うに、密度が高い、だから、リスクが高いというだけなのか。結局、根っこは一緒だと いうことなのか、違う要因があるのかどうかというのは、どこかできちんと調べなくて はいけないのかなという感じはいたします。   ○平澤部会長   それはデータがあるのか、ないのかわかりませんが、資料4−(1)の武澤委員と前川委 員にお求めいただいた「ICU医療の特徴」という所に、例えば生命維持に直結する医 療機械や薬剤を使用するのが多いので、それは一般病棟とは違って、それに付随したリ スクというのは、ICUの中で特徴的にあると思いますね。   ○武澤委員   マニュアルだけを作っても、結局、駄目なのでしょう。今度はこんな良いものを作ろ うと思っても駄目でしょう。それだけだと事故は防げないのですね。単なるマニュアル やガイドラインでは何の解決にもならないのだという認識の上に、では何をするか。各 病院にどういうものを提供するのか、行政は何をするのかという全体的な取組みの中の システムというか、提言というか、そういうものを作っていかなければいけないと思う のです。だから、医療事故イコールマニュアル、それでオーケーとは絶対ならないとい うことですよね。   ○落合委員   あるアメリカの施設で誤薬が多いと。どうしようかというときに、いろいろなアイデ ィアを出したのです。最終的に有効だったのは、デジカメで患者の顔写真を撮って、全 部ラベルに小さく貼っておくのです。そうすると、医療人もわかりますし、本人も「こ れ、僕じゃない」というように、それがいちばんリスクを下げた。ですから、誤薬を防 ごうとマニュアルに書いてあるのは、指差し確認で2人でチェックとありますが、結果 にはそんなのは関係ないのです。最終的にはそういう全然違うアプローチのほうが大事 なのではないか、という事例がありますね。   ○平澤部会長   いまのお話を聞いていてふと思ったのですが、一般的な医療安全のためのガイドライ ンもあるという前提に立って、集中治療を受けている患者についてのところだけを特化 して作るということですよね。一からということですか。   ○武澤委員   いや、それはないでしょう。   ○平澤部会長   一から。   ○武澤委員   本になっているガイドラインはたくさんありますが、有効なのはほとんどないのでは ないですか。   ○平澤部会長   有効かどうか、このコンセプトとしてはどうなのですかね。   ○事務局  いや、一からといっても、一般病棟、あるいはそれぞれの診療科に適用されるガイド ラインというものは、ある意味、公的なものは全くないというように考えていただいて いいのではないかと思います。一応ここはICU、あるいは集中治療が必要な患者の治 療を行う上で必要なガイドラインを、一からというか、最低限のものだけでもまとめて いただければ、現場で医療に従事されている方に役に立って、それが患者の安全に貢献 すると、そのように考えています。必ずしも一から作る、あるいはICUのところだけ を作るということではなくて、患者の安全確保のために必要なものはある程度盛り込み たいと、そういう考えです。 ○飯田委員   2つあります。1つはあとから言った、ガイドライン作成には、できればエビデンス、 データがあったほうがいいと思いますが、なければしょうがないと思うのです。なけれ ば理論的に考えて、一部は推測でも結構ですが、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響調査)の考え方がこれですから。頻度がわからない場合に、頻 度をある程度数量化して当てはめてやっているわけですから、いかにも理論的に見えて いるのですが、数字には根拠がないわけですが、これもしょうがないと思うのです。こ の場合も、頻度のデータがあればいちばんいいので、あれば出していただいて、それを 基にすればいいのですが、なければ目の子でいいから、段階(grade)を付けてやるし かないと思います。  質問なのですが、集中治療、事故でもいいのですが、その要素(要因)と、手術室の 中の要素と違うのかどうか。確かに手術というのは侵襲を与えているということはあり ます。それを除いたら似ているかなと思うのですが、何か違いがあるのでしょうか。そ の辺を質問したいと思います。 ○平澤部会長   まず先生、ICUに入っている患者で、外科系の手技とか侵襲を受けない患者のほう が圧倒的に多いのではないですか。   ○飯田委員   手術室では、侵襲を加えるということはあるのですが除いて、ヒヤリ・ハット事故の 要素として、時間の経過ももちろん違い、それはあるのですが、要素としては大体似た ようなものかと思っているのですが、要素もかなり違いますか。   ○平澤部会長   麻酔もかかってます。   ○飯田委員   もちろん、そうです。そういうのを除かれていますよね。   ○平澤部会長   それから、臓器障害を発症している人は、ICUに比べると、手術場では圧倒的に少 ないですね。そういう人は特別な場合でないと手術しませんから。   ○飯田委員   患者の状態がそういうことではなくて、エラーの種類ですね。要素はどの程度違うの かという質問をしたわけです。   ○平澤部会長   ですから、人工臓器に関係した要素というのは、手術場ではあまりないですよね。麻 酔科の先生、どうですか。   ○落合委員   データとしては持ち合わせがないのですが、いわゆるガイドラインで私たちが普段や っているのは、パッケージを開け間違えたなどという部分とか、物に直結しているもの が非常に多いですね。一時期、患者誤認をどうしようかとか。 ○部会長   それは手術場の中でということですね。 ○落合委員   はい、そうです。手術室で扱っている商品は、多品目高額なのです。たぶん病院の中 でいちばん特徴的な部分は、人工物も含めて、非常に高額で多品種にわたるものを使っ ていますので、それを落とす、壊す、誤って開けてしまうなど、そういう誤操作が非常 に多いので、そういうものに注目したガイドラインがいっぱいありますね。でも、手術 そのもの、麻酔そのものに関しては、医師の裁量に任されていますので、その診療行為 に対するガイドラインはないですね。だから、基本的には周辺部分だけです。 ○道又委員   看護師が患者にかかわって、それでエラーを起こすという頻度は、オペ室は圧倒的に 少ないのだと思うのです。あとは起こしている種類に分類をしていくと、そんなに変わ らないと思いますが、細かなところではだいぶ変わってくるという。患者に接している 時間の中で起こってくることがたくさん出てくるので、それがICUのほうがオペ室よ りは圧倒的に多いと思います。 ○織田委員   もう1つは、患者側の要因ですよね。麻酔中は患者は全く寝ていて、全然、事故の原 因になることはないですが、自己抜去などは、ICUでないとまず起こらないと思うの です。   ○平澤部会長   あと術中は複数の目が届いているのですが、ICUでは放っておかれると言っては語 弊がありますが、目が届かないときがありますね。 ○飯田委員   集中治療室で起こる段階があると思うのです。 ○部会長   段階というか、中身が違うでしょうね。ですから、手術場と共通のガイドラインとい うことではないと思います。 ○飯田委員   何が違うのかなと思いまして。   ○部会長   資料3の4の「医療機関の範囲」というのは、先ほどお話がありましたが、それでい いと思います。対象となる患者がCCU、例えばNICU、PICU等のことはさてお いて、ジェネラルICUみたいな所でやられているのと同じような集中治療を受けてい る重症患者、というコンセプトでよろしいですね。ここまでやってしまうと、また違う 世界になってしまいますので、コロナリー・ケア・ユニットもそうではなくて、GIC U、場所は特定しないけれども、ジェネラルICUで重症治療を受けるのと同じような 治療を受けている重症患者の安全を確保して、医療事故を防止するような指針を作ると いうことでよろしいですか。   ○北澤委員   今日の議論でよくわかったのですが、卓袱台ひっくり返し的になってしまうかもしれ ないのですが、だとしたら、保険上の施設基準というのは何なのかというのが、ちょっ とわからなくなってきたのです。要するに同じ医療上の必要性がある患者がいるのであ れば、それが保険の加算のある施設にいる人もいるし、そうでない所にいる人もいると いうのが現実であると伺ったのです。だとしたら、施設基準自体に、こうあるべしとい う根拠といいますか、そういうのがあるのか、ないのか、ちょっとよくわからなくなっ てきたのです。このことは、いま話し合っている指針作りとは直接は関係がないのかも しれないのですが、要するに私ども一般の人が、集中治療室とかICUとかいうように して、病院に入ったり行ったりしているときに、これからはここのところは保険で認め られているところなのですか、そうではないのですかみたいなことを聞かなければなら ないのかと、ちょっと疑問に思ったものですから、これはこれからの基準とはやや反れ る問題なのですが、例えばこの指針ができたときに、広報などで広く知らせる場合には、 そういうことがいま日本であるのだということを説明しておいてもらいたいと思いまし た。これは感想なので、のけておいてもらってもいいのですけれども。   ○平澤部会長  ただ、事実としては、いま多くの病院で、自分たちの病院はこうこうこういう管理加 算を取れる資格は持っていますよ、というのは書いてあるのです。だから、そこを見て、 例えば集中治療が必要な病気だけど、ここは管理加算を立てていないのだなということ は認識して、そこの病院に行くということもあり得ると思います。 ○事務局  診療報酬上の評価というのは経済的な評価ですので、これだけのスタッフと機材など を整えてやっている所は、通常のICUに比べて高い診療報酬をお支払いしましょうと いうことですので、必ずしもそこに質的な差があるということではないのだと思うので す。よりスタッフを配置して、機材もこれだけの基準を整えた所については、それに見 合うだけの診療報酬の加算を加えましょうと。ですから、その加算がない所もICUは きちんとやっていらっしゃって、それに加えてこれだけの所はその分だけ上乗せしてあ げましょうと、そういう考え方だというように私は理解しております。 ○北澤委員   ということは、ここではあくまで機能としてのICUのことを話していく、という理 解でよろしいですか。 ○事務局  私もそう思っておりますし、どちらかというと、機能について十分、議論をしていた だいて、それが今度は経済的な評価につながっていくのだと思っております。 ○武澤委員  事故防止、患者安全機能が第一です。 ○事務局  我々のほうの観点からは、そういうことです。あと質の部分については、当然考えて はいるのですが、そこの部分はまた別途評価されるのかと思います。 ○武澤委員  いま室長がおっしゃったように、いままでは投下したもので中身を保証しようという ことではないですか。室長が言った点はそうではなくて、患者を安全にするために、い ったいどれだけのものが必要なのか。それが最終的にはもしかしたら新たな施設基準に なるかもしれないだけです。つまりICUで提供される医療の発想が逆転したということ でしょう。そういう意味では、様々な重症度の患者がいろいろな所で診られるわけです。 そのときに、どういう安全基準を守らなければいけないかということをここで作ると。 それはICUにいるときもあるだろうし、一般病棟のときにもいるかもしれない。少な くともこういう重症度があったときには、それぞれの重症度に応じた安全体制というか、 そういうものを供給しなければいけない。それが発展すると新しい施設基準になるのか もしれない。あるいはICUになったり、HCUになったり、病棟ICUになったりす るかもしれない。という認識でいいのですよね。 ○事務局  それがいいかどうかというのはあれなのですが、診療報酬上の評価というのは全く別 の観点です。過去、診療報酬上の施設基準ができることによって、質を高めるという面 はあるのではないかとは思いますが、それよりも、まず内容についてご議論いただいて、 それが経済的な評価につながっていく。本来はそちらのほうが通常の考え方で、内容の 評価がなかなか難しいというところから、診療報酬上の評価が先に行っているところも あって、このICUの加算というのはそういう面はあるかもしれませんが、ここで少な くとも安全管理の部分について、ある程度の指針がまとまれば、またそれは経済的な評 価を行う上でも参考にはなるのではないかと思っております。 ○平澤部会長   3と4については、今日のところはそのぐらいにして、資料3の2枚目の「指針に盛 り込む項目」というのは、ここにも書いてありますが、先ほどの資料4−(1)の前川委員 と武澤委員のご意見をまとめたものにかなり詳しく書いてありますし、重症患者を診る ということに関しては、いまの時点でも大体、基本的な考えはこれでいけるのではない かということですよね。資料4−(1)、資料3の5の所で列記してあること以外に、何か もっとこういうこともあったほうがいいのではないかということはありますか。5の (8)の「その他」の「ICU独自の」はいいですが、次の○の「患者や家族が医療安 全に参加するシステムを考えてはどうか」、これはこの前、具体的にはどういうご提案だ ったのでしたか。どなたか、おっしゃっていただいたのでしょうか。   ○事務局  ちょっと調べます。 ○平澤部会長  何かほかにありますか。武澤委員などに相当詳しく列記していただいてありますが、 どうなのでしょうか。 ○飯田委員  「想定されるヒヤリ・ハット事例、医療事故」の所に書いてあることに関連するので すが、逆に言えば、そういうことが防げるような仕組みと言えるということだと思うの です。特にこの情報共有ということは、情報システムをどこに構築して、どう使ってい くかは非常に重要なところなので、そこはあるべき姿が理想なのかわかりませんが、そ ういうことを書き込む。どこかに書いてあったのですか。実施とか確認とか、その辺が 非常に漏れやすいので、そういうことを書いていただきたい。 ○平澤部会長  資料4−(1)の3頁の(キ)という所ですか。 ○飯田委員  そうです。実際に満足できるものはないわけです。一生懸命頑張ってもどうしてもで きなくて、半ば諦めてしまっているわけです。この部会でそういう情報システムに関す るガイドラインを作っていただければありがたいです。実際の教育はどうしたらいいか 困っており、そういうことも非常に大事なので、是非これはお願いしたいと思います。 ○平澤部会長  ここに書いてもらってありますので、その重要性は皆さんおわかりだと思います。ほ かに何かありますか。 ○事務局  先ほどの「患者や家族が」云々という下りは、前川委員からご説明をいただいたとこ ろに、そういうコメントがあり、「患者・家族も参加していただくシステムエラーに関し ては、問題を解決するためのアプローチをして、マニュアルはできるだけ最小化すべき ではないか」、そういうお話がありましたので、それを基にしております。 ○飯田委員  それは耳に聞こえはいいのですが、患者参加、家族参加も結構なのですが、気を付け なければいけないのは、患者に確認させろというわけのわからない対策案を出すところ もあります。患者および家族によく説明し、理解いただくという意味では大賛成なので すが、確認まで彼らに依頼するような仕組みはやはり危ないのです。いろいろなところ の発表を聞くと、大体そういうのが出てくるのです。それは十分注意してください。 ○平澤部会長  患者・家族に確認というのは、どういうことですか。 ○飯田委員  要するに、これは私の点滴ですねと。 ○平澤会長  そこまで家族に分担させてしてしまうということですね。 ○飯田委員  そういうのが結構多いものですから、私はちょっと危険だと思いますので、その辺は よろしくお願いします。 ○平澤部会長  そこまではおっしゃっていないのだと思いますよね。 ○事務局  具体的にはお話されていないので、むしろこの場で具体的にご議論いただければと思 っております。 ○平澤部会長  指針に盛り込む項目に関して、ほかに何かありますか。具体的な作業に入る前にコン セプト、対象をどうするか、中身はどういうものになるかということで、まず入口の所 でいろいろご議論があって、なかなか実際的な作業になりません。ただ、武澤委員とし ては資料4−(1)に書いてくださったのは、もう出発してしまっているようなところがあ りますが、いざ出発すればこれが参考になると思いますけれども。 ○中島委員   武澤委員のドラフトの項目の中で、私が見落としているだけかもしれないのですが、 ICUで多いインシデントの1つとして、事故抜去という項目は書かれていますが、そ の予防方法の一つである患者の安全確保のための抑制については盛り込まれていないよ うに思います。ICUはこのことを避けて通れない最たる場所です。例えば、医療機能 評価機構の認定基準の中にも抑制ガイドラインの作成が含まれていますし、諸外国でも、 たとえばイギリスのクリティカルケア看護協会から抑制に関する声明文が出されていま す。また、この点は患者さんや家族の理解が必要な部分でもありますし、このことに関 する項目が必要ではないでしょうか。 ○平澤部会長  どこに入るのですかね。 ○中島委員  このドラフトの中の項目では見つけられないのですが、あらゆるルート、気管チュー ブなどの事故抜去につながる要因ですので、1つそういう項立てがあってもいいのかも しれません。 ○部会長  武澤委員、どこに入りますか。 ○武澤委員  抑制して事故を防ぐのでしょうけれども、抑制自身は事故ではないですからね。だけ ど、確かにそうなので、いろいろな方法はあると思うのですが、抑制というのは1つの 手段になりますからね。それをどのように、安全の意味と治療効果と患者の人権と。 ○中島委員  患者の安全確保と人権の問題の両方の問題をクリアするためにも、適切な指針が必要 になります。また、抑制には物理的な抑制だけでなく、セデーションというケミカルな 抑制も含まれています。 ○部会長  そうすると、事故抜去に関連してですか、そこで抑制との関係を記載すればいいので はないですかね。 ○道又委員  資料4−(1)の3頁の(サ)で、安全・衛生器具というところであってもいいのですよ ね。こういう所に入ってもいいのかもしれない。抑制用具というか、そういう形で盛り 込んでいってもいいのかもしれない。 ○織田委員  「安全確保のための患者管理」という項目を1つ設けたらどうですか。その中に入れ 込んでもいいのかもしれない。 ○加納委員  「開発」という言葉がありますが、そこまではちょっと大変なので、「導入」ではない でしょうか。医療安全対策製品は例えば機械関係では、既にもうあるわけです。……が できた。ただ、そういう製品は一般に効果であるがゆえに採用されないことがある。そ の普及には診療報酬加算があるなどの後押しが必要かと思います。ともかく、そういう 対策製品はあるので、そういうものを紹介するだけでも十分意義があると思います。で すから開発というより導入かなと思うのです。 ○武澤委員  もともと開発も大事ですが、導入も大事です。 ○部会長  ガイドラインの中では開発ではないですよね。導入や適応など。文言のところは追々 直っていくと思います。 ○落合委員  繰り返しになるのですが、いつもガイドラインを作って作りっぱなしになってしまう ので、その効果をきちんと評価できるような内容を、例えばガイドラインの中ではこう いう事項を調べてくださいとか、最終的にはガイドラインを使った施設を対象とした調 査結果をもう1回フィードバックするようなシステムまで、ここは扱っていただいたほ うがいいかなと。そうでないと、また出しただけで終わりという。 ○武澤委員   どうやって評価するのですか。 ○落合委員  わからないです。 ○部会長  前の値というのはどうするのですか。前のデータ。 ○落合委員  これは集中治療学会が中心となってデータを取るかもしれませんが、事故抜管が、こ のガイドラインを使っている施設で何パーセント、使っていない施設で何パーセント、 そういう調査をすることは必要になってくるのではないですかね。 ○部会長  使っている、使っていない所でですね。 ○落合委員  でないと、何10頁にわたるガイドラインを本当に導入する価値があるかどうかとい うのは、たぶんどの施設も考えることだと思うのですが、そういうことがないわけなの で、それは作っていかなければいけないと思うのです。 ○平澤部会長  評価ですよね。 ○武澤委員  評価システムをどう作るかというのは、ものすごく難しい。 ○道又委員  たぶん効果がわからないからですね。ガイドラインを作っても、国が出しているガイ ドラインなんて、別にそんなものは役に立たないからというのがほとんどで、なぜ使っ ていないのかというのが詳細に出てきたことはほとんどないですよね。 ○落合委員  本当に効果があったかという答えが知りたいですね。 ○平澤部会長  ガイドラインができて、それを発表する前に、また戻りたいですね。 ○落合委員  抽象的な言葉で結構ですので、そういう項目を含むというようにしていただきたい。 ○武澤委員  この中に評価というのを入れなさいというわけですね。 ○落合委員  はい。自分の施設の中で、きちんとヒヤリ・ハットを分析して評価するのだと。それ がガイドラインの中にあるべきではないかと思います。 ○平澤部会長  先ほど事務のほうからおっしゃっていただきましたが、別に今回でベーシックコンセ プトが決まらなくてもいいというお話でした。今日、第2回目としてやっていただいて、 指針の目的といいますか、それが集中治療を受けているような重症患者の安全を確保し て、医療事故を防止するという感じで作りましょうということでは、大体ご意見の一致 を見たと思いますので、それだけでも今日は大変な進歩だと思います。全体を通して、 ほかに何か言い残したことはありますか。 ○武澤委員  説明するのを忘れたので、一応、説明だけさせてください。資料4−(2)ですが、これ は厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業のときに私たちが収集したデータで、 4枚目の左側にSMRと書いてありますね。スタンダダイズモータリティレート(標準 化死亡比)で、半年のデータですので、1年になるとこれはもっと動くかもしれない。 赤が名古屋大学で、全体はこのバラツキの中にありますと。だから、SMR1というこ とは1980年代のアメリカの患者の重症度で見た場合に、予想した通りに死亡すると1 だと。つまり、アメリカの治療成績と一緒だということになります。から、1より低け れば治療成績が良いと。ただ、これだけバラついています。  次がオランダです。オランダも同じようにパフォーマンス評価をやっていて、Aから PまでがICUなのですが、病院死亡率がパーセントで書いてある。右側にSMRが書 いてあります。バーが実際の死亡率、リスク調整すると赤い点になってきて、大体1の 所に近づく。それでもバラつきがあります。オーストラリアはリスク調整しないと、こ んなに死亡率がばらつきます。それをリスク調整すると、バラツキは少なくなりますが、 1つだけSMRが異様に高い施設があります。そうやってオーストラリア、オーストリ ア、日本の一部でもSMRを使ったICUの機能評価がされています。  次はオーストラリアですが、ICUの再入室率。このぐらい再入室しています。  それから、ICU入室患者の重症度評価にはいろいろな方法があるので、APACHE IIに関しては次の頁、これは院内感染対策サーベランス事業の中で私たちが使っている 入力システムです。これを入力すると自動的に点数計算してくれます。DPCから取っ てくれば、患者の退院時転帰もわかります。重症度評価をする方法はAPACHEとS APSIIがあって、SAPSIIIが次の頁に書いてあります。左側のエンターの赤いボタ ンを押すと、中に入れる。これらは患者の退院時の生き死を予測するためのスコアリン グで、これによって入室時重症度を決めることもできます。軽症な人間をICUに入れ ている所は評価を下げるということと、治療成績を間接的に見ることもできます。IC Uのパフォーマンス評価とICUの適正利用という2点で、重症度評価が使われている。  ただ、日本はないので、医療事故対策とダイレクトにICUのSMRが相関するかど うかわかりませんが、もしそのような機能評価をするのであれば、APACHEIIIです。 ○平澤部会長  それ以外の新しいのはアベイラブルではないのですか。 ○武澤委員  いや、SAPSIIIが2、3年前から。これはアフリカも中国も、全部入っていますか ら、日本だけSAPSIIIに入っていないのです。ですから、SAPSIIIに入るか、ある いは日本版のAPACHEを作るほうがいいのではないかと。オーストリアは毎年1回 その予測式が正しいかどうかをキャリブレーション(評価)しています。この委員会と は直接関係ありませんが、それも併せてやっていかないと。単に事故症例だけ取ってき て、多い、少ないとやっていても駄目ではないですかね。 ○平澤部会長  オーストリアでできて、日本でできるかというのは、数、面積、地域など。 ○武澤委員  患者情報システムを整備するということだと思うのです。それがあれば、どんな状況 でもデータは取れます。手書きでやらなければいけないシステムになっているから大変 なのです。だから、電子カルテ化するとかDPCに入るということになると、自動的に データを取り込めるので、現場での入力なしにデータが取れると思うのです。だから、 省力しながら、データが取れるという形にしていく。パフォーマンス評価と事故対策と 2段構えというか、両方やっていかないと。以上です。 ○平澤部会長  アメリカ集中治療医学会はARDSネットワークというのがあって、それで全米の主 たるICUのデータは全部入力してあって、ポンとデータを押せば出るのです。ただ、 私はこの前行きましたら、米国集中治療医学の本部は事務局員だけで63名いるのです。 日本は2人ですからね。だから、このような統計に従事してくれる可能性のあるマンパ ワーが圧倒的に違います。日本ではなかなかできませんよね。 ○前川委員(代)氏家先生  病院のそれぞれのICUで、日本のICUはメディカルの人しかいませんよね。 ○平澤部会長  最近は病棟クラークなどが配置されているところもありますね。 ○前川委員(代)氏家先生  病棟クラークなど、統計的な人たちがやはり圧倒的に多いですよね。医師は医療をや っていて、データはほかの人が取っていくというようにしていかないと、とてもではな いけど、できないのではないですか。 ○武澤委員  やはり医療安全にはお金がかかるというのも、ちゃんとこの中に入れましょうよ。 ○平澤部会長  それはそうですね。それは私も痛感していますので。今日はお忙しい中お集まりいた だき、実りある議論をいただいたと思います。時間もまいりましたので、本日の議論は これまでとしたいと思います。次回の検討会の日程について、事務局からご連絡をお願 いいたします。 ○事務局  次回の日程については、5月31日(水)15時から17時ということで決まっており ます。会場はまだ未定ですので、決まりましたらお知らせをしたいと思います。また、 第4回を7月から8月にかけて予定しておりますので、改めて日程調整をさせていただ きたいと思います。次回の提出資料の作成に当たっては、事前に何人かの委員の方にご 相談をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。また、各委員の 方々からも、こういう資料があるのだけれどもというのがありましたら、事務局にお知 らせいただければ、それを資料に反映したいと思いますので、よろしくお願いいたしま す。 ○平澤部会長  本日はこれで閉会したいと存じます。お忙しい中ご出席いただきまして、ありがとう ございました。 (紹介先) 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室  医療安全対策専門官 小林 03−5253−1111(2579)