資料2−3

「振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会」
第2回資料
「作業現場での振動ばく露状況」


1:はじめに
 平成11年度中に労災支給決定が行われた振動工具別内訳は下記のように示されている。

(単位:人)  
振動工具
1  さく岩機 229
2  チッピングハンマー 8
3  鋲打機 0
4  コーキングハンマー 0
5  ハンドソー 0
6  ベビーハンマー 1
7  コンクリートブレーカー 27
8  スケーリングハンマー 0
9  サンドランマー 6
10 チェンソー 229
11 ブッシュクリーナー 34
12 エンジンカッター 3
13 携帯用木材皮はぎ機 1
14 携帯用タイタンパー 2
15 携帯用研削盤 26
16 スイング研削盤 1
17 卓上用研削盤 0
18 床上用研削盤 0
19 ピックハンマー 143
20 多針ハガネ 0
21 オートケレン 0
22 電動ハンマー 7
23 コンクリートバイブレーター 127
24 バイブレーションドリル 13
25 バイブレーションシャー 0
26 ジグソー 0
27 インパクトレンチ 11
28 サンダー 34
 他 10
 計 912

 この振動工具別内訳から、建設現場で多く使用されている「さく岩機」「コンクリートバイブレーター」「コンクリートブレーカー」「バイブレーションドリル」「インパクトレンチ」使用による労災認定が多いことがわかる。このことから、建設現場で使用されている工具の振動レベルが高いか、工具使用時間が長いことが想定できる。

 そこで、現在、建設現場で使用されている上記の工具と林業で使用されているチェンソーの振動ばく露実態調査(工具ごとの振動レベルの測定と実際の工具使用時間測定)を実施した。


2:測定方法
2.1:工具別のばく露振動レベル測定
 今回の測定では、アメリカLarson Davis社のHVM100の人体振動測定装置を用いて現場での振動工具の振動レベルの測定を実施した。使用した測定装置は次の物を用いた。

図

工具ハンドルの振動 周波数補正後の振動

 工具ハンドルから作業者の手にばく露される振動は、上記のように測定・評価し、周波数補正振動加速度実効値を求めた。

2.2 工具別振動ばく露時間の評価
 建設現場での作業者の胸ポケットにICレコーダーを入れて、半日あるいは1日作業をしていただき、工具騒音を録音したICレコーダーを回収し、ICレコーダーで録音した騒音をパソコンに取り込み、下記のように工具使用部分の音から半日あるいは1日の実工具使用時間を求めた。

図


3:測定した工具等

図
電動ドリル


図
インパクトレンチ


図
コンクリートブレーカー


図
インパクトレンチ


図
コンクリートバイブレーター


図
コンクリートブレーカー


3.測定結果

 実際に工事現場で働いている労働者に録音機を付けて1日仕事をしてもらい、録音データを得る。その録音データを聞き、工具を使用している音がする部分を抜き出しその日使用した工具の使用時間を調べる。1日8時間労働を基準としているため、録音時間を8時間に換算し、同時に工具使用時間もそれに合わせて比率計算により換算する。この方法により1日8時間労働での実際に使われた1日の工具使用時間を求める。データの取得日数は1日目に5人、2日目に2人、3日目に5人、4日目に2人の計4日間14人である。また、各日で使用している工具は異なる。

 各日で使用した工具の使用限度時間をその工具の振動の大きさから計算により算出する。各工具の1日の使用限度時間(t)を求める式は 労働時間、 8時間等価振動加速度値、ahv=工具の3軸周波数補正振動加速度実効値とすると以下のように表される。

t = T*[A(8)/ahv]^2


図


A(8)=2.5とした場合
図

A(8)=5とした場合
図


4.結論
 本調査では実際に使用している工具の使用時間からの振動障害発病の危険度の調査した。その結果、以下の事が明らかとなった。
1)工具を使用する作業者が実際に工具を使用している時間は2時間を大きく越えている。
2)工具の使用限度時間から見ても作業者が実際に工具を使用している時間は限度を大きく越えている。
3)以上の点から手持動力工具の使用者の振動障害の発症の可能性は高く、長時間続ければ発症する恐れがある。よって、低振動工具の選択、使用時間を減らす等の対策を取り入れた作業管理を考える必要があると思われる。

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