アスベスト問題に係る総合対策
平成17年12月27日
アスベスト問題に関する関係閣僚による会合 |
平成17年7月以来、アスベスト問題に関しては、関係閣僚会合を開催して「アスベスト問題への当面の対応」を取りまとめ、その早急な対応を図ってきたところであるが、今般、アスベストによる健康被害に関する法的措置や平成18年度予算案等の内容が固まったことを踏まえ、「アスベスト問題に係る総合対策」を次のとおり取りまとめる。
今後、関係省庁は、緊密な連携・協力を図りつつ、本総合対策の効果的・効率的な実施を図るものとする。本対策を実施するに当たっては、関係者の意見を十分に聴取するとともに、中小企業に適切な配慮を行うものとする。
(1) |
救済新法の制定
アスベストによる健康被害者のうち、既存の法律で救済されない被害者を隙間なく救済するための新たな法的措置として、「石綿による健康被害の救済に関する法律案」を、平成18年の通常国会の冒頭に提出するとともに、法案成立後はその速やかな施行に努めるものとする。(詳細は、別紙のとおり)
なお、平成17年度中に、医学専門家による検討を踏まえ、救済新法に基づく給付の認定基準を定めるものとする。 |
(2) |
労災補償制度の周知徹底等
○ |
労災補償給付の認定基準について、救済新法の認定基準の検討と併せて、平成17年度中に改正する。
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○ |
アスベストによる疾病について、労働者が適切に労災補償給付を受けられるよう、医療従事者に対する医学的な情報の提供、国民からの相談対応等、労災補償制度の周知徹底等を図る。また、引き続き、労災補償給付の認定の迅速かつ適正な事務処理を実施する。
なお、中皮腫の診療のための通院費については、居住地等の近くに専門的な診療機関が確保できていないという実情を踏まえ、その支給範囲の拡大を図っている。 |
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(3) |
被害者救済に資する研究の推進等
○ |
中皮腫に対する抗がん剤「ペメトレキセド」の早期承認のため、薬事法上の承認申請に対し、有効性・安全性についての迅速な審査を行う。
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○ |
アスベストに起因する中皮腫について、国立がんセンター等において、大学病院、労災病院等の臨床データを収集・共有するための情報システムの整備等、早期診断・治療法の開発のための基盤整備を行うとともに、放射線医学総合研究所、理化学研究所等において、中皮腫の早期診断システムの確立に向けた研究等を引き続き行う。 |
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(1) |
既存施設におけるアスベストの除去等
○ |
飛散・ばく露のおそれがあり、かつ、児童、患者等が利用する等により、早急に対応すべき以下のような施設について、吹付けアスベスト等の使用実態調査の結果を踏まえ、地方公共団体等によるアスベストの除去等に対する支援を行う。
(1) |
学校その他の文教施設等 |
(2) |
病院、社会福祉施設、公共職業能力開発施設等 |
(3) |
かんがい排水施設等 |
(4) |
下水道施設等 |
(5) |
公営住宅その他の公的賃貸住宅 |
なお、地方公共団体所有の施設におけるアスベストの除去等については、特別交付税や地方債の活用を通じ、地方公共団体への財政支援を行う。(地方債を財源とすることができるよう、地方財政法の改正法案を、平成18年通常国会の冒頭に他のアスベスト対策関連法案と合わせた一括法案として提出)
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○ |
庁舎や防衛関連施設その他の国家機関の建築物等についても、緊急性の高いものから除去等を行う。
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○ |
民間建築物等について、多数の者が利用するものについて、吹付けアスベスト等の使用実態調査の結果を踏まえ、アスベストの除去等に対する支援措置を新設(優良建築物等整備事業の拡充)するほか、住宅におけるアスベスト除去費用等に対して地域住宅交付金等の活用を図る。
また、引き続き、飛散・ばく露のおそれのある建築物の所有者に対する指導を行う。
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○ |
これらの措置を講ずるとともに、使用実態調査によりアスベスト使用が明らかになった建築物について、飛散防止の措置状況等(除去された吹付けアスベストの処理状況を含む)のフォローアップを行う。
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○ |
事業者がアスベストの除去等を円滑に行えるようにするため、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫及び日本政策投資銀行に低利融資制度を創設する。
また、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫が無担保等融資を円滑に実施するため、無担保等リスクに係る上乗せ金利を引き下げるための出資金を中小企業金融公庫、国民生活金融公庫に交付する。
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○ |
私立学校、病院、社会福祉施設、農林水産業者が所有する施設等におけるアスベストの除去等について、既存の低利融資制度の活用を図る。
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○ |
また、アスベストの飛散による健康被害を防止するため、増改築時における除去等の義務付け、飛散防止対策についての立入調査等を行うことができるよう、建築物における吹付けアスベスト等の使用を規制することを内容とする建築基準法の改正を行う。(平成18年通常国会の冒頭に他のアスベスト対策関連法案と合わせた一括法案として改正法案を提出) |
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(2) |
解体時等の飛散・ばく露の防止
○ |
アスベストの大気環境への飛散防止対策として、大気汚染防止法令の整備を行い、規制(都道府県知事への事前届出等)の対象となる建築物の規模要件の撤廃等(平成18年3月1日施行)に加え、アスベストを使用しているプラント等の工作物についても、解体等の作業に伴う規制の対象に追加することを内容とする大気汚染防止法の改正を行う。(平成18年通常国会の冒頭に他のアスベスト対策関連法案と合わせた一括法案として改正法案を提出)
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○ |
石綿障害予防規則の改正を行い、アスベスト取扱作業において、アスベストに関する専門的な技能講習を修了した作業主任者の設置を義務付けるとともに、技能講習の実施による作業主任者の確保に努める。
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○ |
建築物の解体時等におけるアスベストの飛散・ばく露を防止するため、解体業者等に対する研修の実施や相談窓口の設置のほか、解体作業に従事する労働者に対する特別教育の実施、建材中のアスベスト含有率を測定する分析機関の育成、大気中の濃度を測定する地方公共団体の測定技術者の育成等を行う。あわせて、現場でのアスベスト建材の識別に役立つ資料を作成する。
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○ |
アスベストの飛散抑制に資する技術の研究・開発を支援するとともに、飛散防止マニュアルを作成する。
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○ |
石綿障害予防規則等関連法令の周知を引き続き行う。また、労働基準監督署による事業場に対する監督指導等のほか、解体等作業現場において飛散防止、ばく露防止対策の実施内容等を掲示するよう指導を行う。 |
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(3) |
アスベスト廃棄物の適正な処理
○ |
アスベスト廃棄物等の円滑かつ安全な処理を促進し、処理施設を確保するため、高度な技術により無害化処理を行う者について環境大臣が認定する制度を新設することを内容とする廃棄物処理法の改正を行う。(平成18年通常国会の冒頭に他のアスベスト対策関連法案と合わせた一括法案として改正法案を提出)
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○ |
アスベスト廃棄物処理施設(溶融施設、破砕施設等)を所得税・法人税の特別償却の対象施設として追加する等の税制上の措置により、アスベスト廃棄物の無害化処理を促進する。また、無害化処理の研究・技術開発を支援する。
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○ |
非飛散性アスベスト廃棄物の適正処理を促進するため、廃棄物処理法令の整備を行い、廃棄物処理事業者が遵守すべき処理基準に飛散防止のための措置等を盛り込むとともに、解体作業等によるアスベスト廃棄物の発生情報が確実に把握されるよう、産業廃棄物管理票や委託契約書にアスベスト廃棄物である旨の記載を義務付ける。
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○ |
市町村によるアスベスト含有家庭用品が廃棄された場合の安全かつ確実な処理方法を定めた対策指針を今年度中に決定する。
また、市町村等によるアスベスト含有家庭用品を処理するための施設の整備を推進する。 |
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(4) |
アスベストの早期全面禁止
民間事業者等による実証事業等に対する支援等により、例外的に使用されるアスベスト含有製品の早期の代替化を促進するとともに、全面禁止を前倒しして、関係法令の整備を行い平成18年度中に措置する。 |
(1) |
実態把握と国民への積極的な情報提供
○ |
大気中のアスベスト濃度測定については、建築物の解体現場周辺等における実測調査を引き続き実施する。
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○ |
通常の室内等の低濃度環境におけるアスベスト濃度測定技術の確立を含め、建築物室内のアスベスト濃度指標の設定に資する基礎的な調査研究を行う。
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○ |
また、アスベストに関する情報を消費者等に適切に提供するため、住宅性能表示制度において、室内空気中のアスベスト繊維の濃度測定や吹付けアスベスト等の使用状況を表示する仕組みを整備するとともに、建築基準法令の改正内容等を踏まえ、(1)宅地建物取引業法上、アスベスト調査に関する事項を取引の際の重要事項説明の対象とすること、(2)アスベストを建物の鑑定評価実務に的確に反映する方策についての検討を行う。
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○ |
中皮腫で亡くなられた方について、職業歴の有無、初期症状、確定診断の方法等を把握等するための調査研究を引き続き行うとともに、一般環境経由によるアスベストばく露による健康リスクが高いと考えられる地域について、周辺住民に対する健康被害に関する実態調査を実施する。
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○ |
アスベスト含有家庭用品についての情報提供を引き続き行うとともに、アスベスト含有建材について、識別方法等についての情報のデータベースを整備する等、情報提供を推進する。 |
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(2) |
健康相談等による対応
○ |
アスベストによる健康被害についての国民の不安に対応するため、保健所、労災病院、産業保健推進センター等において健康相談に対応するとともに、労災病院に設置された「アスベスト疾患センター」において、医療関係者からの相談への対応を引き続き実施する。
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○ |
調査研究の結果等を踏まえ、アスベスト取扱作業従事者に対する健康管理手帳の交付要件等の見直しを行う。また、船員であった者に対する健康管理制度(平成17年12月15日より手帳の交付申請の受付開始)を実施する。
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○ |
事業者に対し、アスベスト関連作業に従事し退職した者に対しても健康診断を実施するよう要請するとともに、事業者の廃業等で健康診断を受けられない退職者については、平成18年度に臨時の無料健康診断を実施する。
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○ |
このほか、「石綿に関する健康管理等専門家会議」において検討し、その結果を活用して、一般住民等の健康管理の促進を図る。 |
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17年度補正予算案額 |
: |
388億円 |
18年度予算案額 |
: |
93億円 |
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○ |
「石綿による健康被害の救済に関する法律」(18年2月3日成立)
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17年度補正予算案額 |
: | 1,417億円 |
18年度予算案額 |
: | 29億円 |
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○ |
地方自治体の取組への支援
(地方財政法改正※) |
○ |
国の建築物等について除去等実施 |
○ |
民間建築物における取組への支援
(助成措置の新設+中小企業等を対象とした低利融資制度の創設) |
○ |
吹付けアスベスト等の使用規制
(建築基準法改正※) |
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○ |
飛散防止のための規制の拡充
(大気汚染防止法改正※) |
○ |
石綿障害予防規則等の周知・指導 |
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○ |
アスベスト廃棄物の無害化処理推進
(廃棄物処理法改正※+税制上の措置の新設) |
○ |
廃アスベスト適正処理の規制強化 |
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○ |
解体現場周辺の大気中濃度測定 |
○ |
室内アスベスト濃度指標設定に資する調査研究 |
○ |
健康被害者の実態調査 |
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○ |
国民の健康相談への対応 |
○ |
健康管理手帳の交付要件等の見直し |
○ |
アスベスト関連の作業に従事した退職者への健康診断の実施 |
○ |
一般住民の健康管理の促進 |
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(注1) |
※は18年2月3日成立。 |
(注2) |
18年度予算額は、関係閣僚会合を構成する関係省庁による対策に係る金額。 |
(注3) |
18年度予算額においては、施設整備等経費の交付金等(約1.4兆円)の内数となっているものについては含まれていない。 |
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目的 |
: |
石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害に係る被害者等の迅速な救済を図る。 |
施行日 |
: |
基金の創設 |
平成18年2月10日 |
救済給付の支給 |
平成18年3月27日 |
事業者からの費用徴収 |
平成19年4月1日 |
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労災補償等による救済の対象とならない者に対する救済給付 |
事業者
(2) |
一定の要件に該当する事業主(石綿との関連が深い事業主)から追加費用を徴収 |
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国
○ |
平成17年度補正予算により基金に拠出 |
○ |
基金創設時の事務費の全額及び平成19年度以降は事務費の1/2を負担
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地方公共団体国
○ |
国の基金への費用負担の1/4に相当する金額を平成18年度以降一定期間で基金に拠出 |
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└────┐ ↓ |
│ ↓ |
┌─────┘ ↓ |
石綿健康被害救済基金
(独)環境再生保全機構に設置 |
救済給付
・ |
医療費(自己負担分) |
・ |
療養手当(約10万円/月) |
・ |
葬祭料(約20万円) |
・ |
特別遺族弔慰金(280万円)
(法施行前の死亡者の遺族に対する救済給付) |
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(独)環境再生保全機構、保健所、地方環境事務所で受理(平成18年3月20日〜) |
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労災補償を受けずに死亡した労働者の遺族に対する救済措置 |
〔特別遺族給付金の支給〕
(1) |
対象者 |
: |
指定疾病により死亡した労働者(特別加入者を含む。)の遺族であって、時効により労災保険法に基づく遺族補償給付の支給を受ける権利が消滅したもの。 |
(2) |
給付額 |
: |
特別遺族年金 原則240万円/年
※ |
特別遺族年金の支給対象とならない遺族には一時金を支給する。 |
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(3) |
財源 |
: |
労働保険特別会計労災勘定から負担する。平成18年3月20日〜申し込み受理 |
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