第6  雇用のミスマッチの縮小のための雇用対策の推進

 依然として大きい雇用のミスマッチや地域差がみられる雇用失業情勢等に対応するため、地域における創業支援を充実するなど雇用情勢が厳しい地域に重点化した雇用対策を実施するとともに、成長分野への労働移動の推進や、労働者が職場定着しやすい魅力ある職場づくりを推進する。
 また、ハローワークにおいて、個々の求職者の状況に応じた個別総合的なサービスの提供や求人充足に向けたコンサルティングなど求人者サービスの充実を図るとともに、生活保護受給者及び児童扶養手当受給者に対する就労支援を実施する。

 雇用情勢が厳しい地域に重点化した雇用対策の実施 210億円(362億円)

(1)  中小事業主団体等による地域での雇用開発の推進(新規) 7.7億円
 地域における雇用の改善、2007年問題の対応等のため、中小事業主団体等による地域の実情を踏まえた高年齢者の活用、後継者の確保等を図る取組みを支援する。

(2)  地域の主体的な取組みに対する支援の推進 3.4億円
 地域における雇用創造のための構想を策定しようとする市町村等に対し、専門家による助言や参考となる成功事例の紹介等により、企画・構想段階から支援する。

(3)  雇用情勢が厳しい地域における創業支援の充実 40億円
 雇用情勢の厳しい地域において、失業者(雇用保険の受給資格者)が創業した場合の支援を拡充するとともに、大都市圏等からの移転に伴う経費を助成する。

 成長分野等における労働力の確保の推進 110億円(154億円)

(1)  成長分野への円滑な労働移動の推進 13億円
 労働移動支援助成金について、今後の成長産業や発展分野への労働移動が実現した場合の支援を拡充するなど円滑な労働移動を推進する。

(2)  労働者の定着を図るための雇用管理改善の推進 34億円
 中小企業におけるメンタルヘルス対策の取組みへの支援を充実するとともに、介護分野における標準的な雇用管理モデル策定の検討や労働者の健康確保など雇用管理改善に関する相談援助の充実等を図る。

 ハローワークのサービスの見直し・強化 268億円(367億円)

(1)  個々の求職者の状況に応じた個別総合的なサービスの提供 62億円
 再就職に向けた求職活動計画(就職実現プラン)に基づく個別相談援助、早期再就職の緊要度が高い求職者に対する専任の支援員による一貫した就職支援、長期失業を予防するための担当制による個別支援など、求職者の個々の状況に応じたきめ細かな就職支援を行う。

(2)  求人充足に向けたコンサルティングなど求人者サービスの充実 6.7億円
 未充足求人に対するフォローアップを確実に実施するとともに、労働市場の動向や求職者のニーズを踏まえた、就職に結びつきやすい求人条件を提案するなど求人充足の緊要度の高い求人事業主に対するコンサルティングを実施する。

(3)  生活保護受給者及び児童扶養手当受給者に対する就労支援の拡充 22億円
 生活保護受給者及び児童扶養手当受給者の自立支援プログラムの一環として、ハローワークと福祉事務所とが連携して行う就労支援について、生活保護受給者の就労支援対象者数を拡充するとともに、児童扶養手当受給者に対する支援の充実を図る。

(4)  ハローワーク情報プラザ、パートバンク等の再編
 ハローワーク情報プラザ、パートバンク等について、総合的な職業紹介サービスを提供する施設として再編し、各施設が提供しているサービスを集約するなど利用者の利便性の向上を図る。


第7  高齢者が生きがいを持ち安心して暮らせる社会の実現

 急速な高齢化に対応し、将来にわたって持続可能な介護保険制度を構築するため、予防重視型システムへの転換、新たなサービス体系の確立など、改正介護保険制度を着実に実施する。
 また、65歳までの雇用の確保や中高年齢者に対する再就職支援を推進するとともに、高年齢者の多様な就業機会の確保など意欲がある限り働き続けられる環境整備を図る。
 年金制度については、国民の信頼に応えられる持続可能で安心できる制度を構築するため、基礎年金国庫負担割合2分の1に向けて着実に引上げを行うとともに、制度を効率的に運営するため、社会保険庁改革を推進する。

 改正介護保険制度の着実な実施と関連施策の推進 2兆396億円(2兆907億円)

(1)  持続可能な介護保険制度の構築 1兆9,621億円
 地域支援事業交付金の創設(新規) 494億円
 要支援・要介護状態になる前から介護予防サービスを提供し、効果的な介護予防システムを確立するとともに、地域の総合相談、権利擁護事業等を行う地域支援事業を円滑に実施するため、現行の介護予防・地域支え合い事業等を見直し、「地域支援事業交付金」を創設する。

 介護保険制度に係る国庫負担 1兆9,122億円
 介護報酬の見直しについては、平成17年度改定において実施した施設給付の見直しを踏まえて、次のとおり改定を行う。
【介護報酬の改定率】
 ・  全体改定率 ▲0.5%(▲2.4%)
(内訳)
 ・ 在宅分 平均▲1%
 在宅・軽度 平均▲5%
 在宅・中重度 平均+4%
 ・ 施設分 平均±0%(▲4%)
 ※  ( )は平成17年10月改定分を含めた率
 在宅・中重度は要介護3〜5。
 施設分は養護老人ホームを含む。

 政策・事業の継続的評価分析の実施(新規) 5.3億円
 介護保険制度改革に伴い創設される新予防給付サービス及び介護予防事業(地域支援事業)について、その実施状況や効果に関するデータを収集し、評価分析を行う。

(2)  介護サービスの提供体制の整備 515億円
 地域介護・福祉空間整備等交付金(市町村に対するハード交付金)の拡充 443億円
 地域密着型サービスを中心とする市町村の基盤整備を計画的に推進するとともに、介護施設における在宅支援の強化・機能転換等のための事業支援を行う。
 地域介護・福祉空間推進交付金(市町村に対するソフト交付金)の創設33億円
 地域における介護サービス基盤の実効的な整備を図るため、地域密着型サービス等の導入に必要な設備やシステムに要する経費などを助成対象とする交付金を創設する。

(3)  介護サービスの質の向上 36億円
 介護サービス情報の公表の推進 30億円
 介護サービスの質の向上、利用者の権利擁護等の観点から、介護サービス事業所が利用者に対し、サービス選択に必要な情報を公表する「介護サービス情報の公表」制度の施行に当たり、各都道府県における制度の円滑な導入を支援するとともに、全国的見地から、将来にわたり、安定的かつ継続的に制度運営を支援する体制を構築する。

 ケアマネジメントの質の向上 5.3億円
 介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質の向上を図るため、実務研修や資格更新の際の研修など、体系的な研修事業を実施する。

(4)  認知症対策の総合的な推進(再掲) 15億円
 地域住民に対する認知症の理解の促進、主治医等を中心とした認知症の地域医療体制の充実、早期段階に対応したサービスの普及、認知症介護の専門職員に対する研修の充実等、各ステージに応じた「認知症対策等総合支援事業」を推進する。

 高年齢者等の雇用・就業対策の充実 819億円(889億円)

(1)  65歳までの雇用機会の確保 464億円
 改正高年齢者雇用安定法を踏まえ、事業主への指導を徹底するとともに、継続雇用定着促進助成金の見直しを行う。また、「65歳雇用導入プロジェクト」を引き続き推進し、事業主団体を通じた支援を行う。

(2)  中高年齢者に対する再就職支援の推進 34億円
 中高年試行雇用事業について、対象者の要件等を見直し、再就職の緊要性が高い中高年齢求職者の早期再就職の促進を図る。また、中高年齢者の紹介予定派遣に係る活用事例集を作成して周知・広報を行うことにより、中高年齢者の紹介予定派遣の促進を図る。

(3)  いくつになっても働くことができる社会を実現するための施策の推進 247億円
 シルバー人材センター事業の推進 141億円
 高年齢者が生きがいを持って地域社会で生活するため、定年退職後等において、軽易な就労を希望する高年齢者に対し、高年齢者の意欲や能力に応じた就労機会、社会参加の場を総合的に提供するシルバー人材センター事業について、新たに、団塊世代を中心とした高年齢者に対する就業体験を実施するなど事業を着実に推進する。

 定年退職者等再就職支援事業(仮称)の実施(新規) 14百万円
 65歳を超えても働くことができるよう、事業主に対して高年齢者を雇用することの利点を啓発するとともに、高年齢者の多様なニーズに対応した求人開拓や面接会を実施する。

 持続可能で安心できる年金制度の構築 6兆6,446億円(6兆2,596億円)

   ○  年金給付費国庫負担金 6兆6,446億円
(I 平成18年度予算案のポイントに掲載)

   ○  社会保障協定の推進 31百万円
 国際的な人的交流が活発化し、企業間の国際競争が激しさを増す中で、日本と外国の年金制度等への二重加入の回避と年金の受給権確保を図るため、社会保障協定の締結に向けた取組みを着実に推進する。

   (参考)平成18年度の年金額について
 平成17年の消費者物価指数は1月〜10月までの実績値は▲0.2%である。仮に平成17年の物価が下落した場合には年金改正法の規定に基づき、物価スライドにより年金額が引き下げられることとなる。
 ・  年金額への影響(▲0.2%の場合)
 






  (平成17年度)   (平成18年度)
【サラリーマン世帯の標準的な年金額】
 厚生年金(月額) 233,300円  → 232,825円
【老齢基礎年金】
 国民年金(月額) 66,208円  → 66,075円








 安定的で効率的な年金制度の運営の確保等
<社会保険庁改革の推進> 4,952億円(5,324億円)

   効率的で質の高い社会保険サービスの実現と国民の信頼回復に向けて、平成20年10月を目途に社会保険庁を廃止し、公的年金は新たに設置する厚生労働省の特別の機関において、政管健保は国から切り離し新たに設置する公法人において、それぞれ運営を担うこととするなど、解体的出直しを行うこととし、次期通常国会に改革関連法案を提出する。
 また、新組織の発足に向けて、国民サービスの向上、保険料収納率の向上、予算執行の無駄の排除等の取組みを徹底することとし、もう一段の業務改革・組織改革・意識改革を総合的に推進する。

(1)  国民サービスの向上 24億円
 年金加入記録通知の送付(新規) 65百万円
 被保険者が、将来の年金受給権について意識し、年金制度の重要性を再認識していただけるよう被保険者期間の中間点(35歳)における年金加入の状況の送付を実施する。

 年金受給等手続の改善・簡素化 23億円
 年金請求者の利便性の向上を図るため、年金支給年齢に到達する直前に、あらかじめ年金加入履歴等を記載した「裁定請求書」を送付するとともに、住民基本台帳ネットワークシステムを活用して生存確認を行うことにより、現況届の提出を省略する。
 また、国民年金の全額免除又は若年者納付猶予の承認を受けた被保険者から事前に申出があった場合には、平成18年度以降、所得要件を満たせば申請書の提出を省略できる仕組みを導入する。

(2)  保険料収納率の向上 155億円
 国民年金保険料収納対策の強化 140億円
 年度別行動計画に基づく納付督励活動の徹底した進捗管理と達成状況の検証による着実な収納対策の実施により、より効率的で効果的な徴収業務を全国的に展開し、保険料の収納対策を強化する。
 具体的には、市町村からの所得情報を活用した効率的な強制徴収及び効果的な免除勧奨の実施、国民年金推進員による戸別訪問活動の強化等により、保険料収納対策を一層強化するとともに、クレジットカードによる国民年金保険料の納付を可能とするなど、保険料を納めやすい環境づくりを進める。

 「市場化テスト」のモデル事業の大幅な拡大 15億円
 平成17年度から実施している市場化テストのモデル事業のうち、厚生年金保険・健康保険の未適用事業所の適用促進事業及び国民年金保険料の収納事業について、実施対象社会保険事務所を大幅に拡大する。
 未適用事業所の適用促進事業 5事務所 → 104事務所
 国民年金保険料の収納事業 5事務所 → 35事務所

(3)  予算執行の無駄の排除
 社会保険オンラインシステムの見直し 1,415億円
 社会保険オンラインシステムについて、競争入札を可能とし運用調達コストを削減するため、平成17年度に策定する「社会保険業務に係る業務・システム最適化計画」に基づきオープン化(専用機器から汎用機器への移行等)を図ることにより、汎用性のある効率的なシステムを構築する。

(4)  組織改革・職員の意識改革
 組織改革・職員の意識改革の実施
 国民の意向が十分に反映されるとともに、適正かつ効率的で透明性のある事業運営を確保するため、平成20年秋目途の年金新組織の発足に先行して、「年金運営会議」を設置するとともに、会計・業務・個人情報管理全般についての特別な監査体制を整備し、それぞれ外部専門家の登用を図る。
 さらに、効率的な業務運営等を実現するため、新たな人事評価システムを導入し、能力主義・実績主義に立った人事・処遇の実施を通じて、職員一人ひとりの意識改革を徹底する。

 年金事務費の取扱いについて
(I 平成18年度予算案のポイントに掲載)


第8  障害者の自立支援の推進、生活保護制度の適正な実施

 先の特別国会で成立した障害者自立支援法に基づき、障害者が身近な地域で自立した生活を送れるよう、新たな障害福祉サービス体系として、ホームヘルプサービスや生活介護等の介護給付、自立訓練や就労移行支援等の訓練等給付を提供するなど、必要なサービスを確保するとともに、地域生活支援事業の創設を行う。
 また、雇用と福祉の連携による障害者施策の推進や障害者の多様な就業機会の拡大を図るとともに、障害者に対する職業能力開発を推進する。
 さらに、生活保護受給者の自立・就労を支援するため、福祉事務所等における自立支援プログラムの導入を一層推進するほか、引き続き生活保護基準の見直しを図る。

 障害者の自立した地域生活を支援するための施策の推進 7,996億円(7,445億円))

(1)  新たな障害福祉サービスの推進(介護給付及び訓練等給付等) 4,131億円
 介護給付・訓練等給付等については、制度の見直し及び直近までのサービス量の増加を踏まえて所要額を確保するとともに、その報酬単価については、平成18年4月から▲1.3%とする。
 ただし、居宅系サービス及び新体系サービスについては、▲1.0%とし、併せて旧体系からの移行施設については移行時支援措置を講じる。

(2)  障害者に対する良質かつ適切な医療の提供 930億円
 障害者の心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療(精神通院医療、育成医療、更生医療)等を提供する。

(3)  障害者の地域生活支援の推進 200億円
 地域生活支援事業の実施
 市町村等が主体となり、移動支援や地域活動支援センターなど障害者の自立支援のための事業(地域生活支援事業(平成18年10月〜))を実施する。

 発達障害者に対する支援
 在宅の自閉症等の特有な発達障害を有する障害者とその家族に対し、相談、助言、情報提供、就労等にかかる支援を総合的に行う「発達障害者支援センター」の充実を図る。(地域生活支援事業(200億円)の内数)

(4)  障害者自立支援法の円滑な施行の推進 129億円
 低所得の利用者への対策として社会福祉法人が行う定率負担の減免に対する公費助成、自治体による制度を円滑に施行するための事業等を実施する。
 利用者負担の軽減策について
 障害福祉サービスに関する利用者負担については、その負担の軽減を図る一環として、負担上限月額を以下のとおりとする。
 




一般  37,200円
低所得II 24,600円
低所得I 15,000円
生活保護世帯 0円





 社会福祉法人等減免事業(新規) 36億円
 低所得者にきめ細かく配慮するため、社会福祉法人等が定率負担の減免を行う場合の助成を行う。

 障害者保健福祉推進事業等(新規) 35億円
 障害者自立支援法施行当初において、自治体が行う支給決定等システム改修、制度の普及啓発や広域的な対応等に必要な経費の助成並びに障害者の保健福祉の推進に必要な先駆的・革新的なモデル事業に対する助成を行う。

 障害者就労訓練設備等整備事業(新規) 20億円
 既存の障害者施設等が就労移行支援等の新たな障害福祉サービスを実施するために必要な設備等を整備する場合の助成を行う。

 障害者に対する雇用・就労支援と職業能力開発の推進 138億円(141億円)

(1)  雇用と福祉の連携による障害者施策の推進 11億円
 地域障害者就労支援事業の推進 40百万円
 ハローワークが中心となり福祉等の関係者による連携体制を確立し、就職の準備段階から職場定着までの一連の支援を行う事業を推進し、障害者の福祉的就労から雇用への移行の一層の促進を図る。

 企業ノウハウを活用した福祉施設における就労支援の促進 26百万円
 障害者雇用に実績のある企業関係者の知識・経験等を活用して、福祉施設に対し、企業で働くことについての理解の促進、就労に向けての支援のノウハウの向上を図る事業を、都道府県労働局において実施する。

 障害者就業・生活支援センター事業の拡充 10億円
 障害者に対する就業及び日常生活に係る相談、助言等を実施する「障害者就業・生活支援センター」の設置箇所数を拡充する。
  90箇所  →  110箇所

(2)  ハローワークによる相談・支援体制の充実・強化 11億円
 障害者一人ひとりの障害の態様や適性に応じた就労支援を実施するため、専門的な知識・経験を有する者をハローワークに配置するなど、障害者に対する相談支援体制の充実・強化を図る。

(3)  多様な形態による障害者の就業機会の拡大 14億円
 ITを活用した在宅就業支援団体の育成支援 49百万円
 先駆的に在宅就業支援に取り組んできた団体のノウハウを活用し、新たに支援に取り組む団体へのノウハウの提供等を行い、障害者の在宅就業のさらなる普及を図る。

 障害者試行雇用事業の推進 9億円
 事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させ、常用雇用へ移行するため短期間の試行雇用を実施して、障害者雇用を推進する。

(4)  障害者に対する職業能力開発の推進 60億円
 公共職業能力開発施設における障害者職業訓練の推進 45億円
 障害者職業能力開発校が未設置の地域において、職業能力開発校に知的障害者等を対象とした訓練コースを設定し、障害者の職業訓練を推進する。

 事業主や社会福祉法人等による実践的な職業訓練の推進 15億円
 企業、社会福祉法人等の多様な委託訓練先を開拓し、知的障害者、精神障害者等の障害の態様に応じた職業訓練を推進する。
  委託訓練対象者数 6,000人  →  6,300人

 障害者職業能力開発プロモート事業(仮称)の実施(新規) 26百万円
 福祉施設、養護学校等の関係機関の連携体制を確立することにより、障害者の職業能力開発を促進する事業を政令指定都市において試行的に実施する。

 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備 137億円(82億円)

   心神喪失者等医療観察法を適切に施行するため、引き続き、指定入院医療機関の確保を図るとともに、医療従事者等の研修を行うなど医療の提供体制の整備を推進する。

 自立支援に重点をおいた生活保護制度の適正な実施 2兆611億円(1兆9,366億円)

(1)  自立支援プログラムの着実な推進 150億円
 生活保護受給者の就労自立(就労による経済的自立)、日常生活自立(日常生活において自立した生活を送ること)及び社会生活自立(地域社会の一員として充実した生活を送ること)を目指す「自立支援プログラム」の福祉事務所等における導入を一層推進するなど、引き続き適正化を進める。

(2)  生活保護基準の見直し
 生活扶助費
 国民の消費動向や社会経済状況などを総合的に勘案し、前年度同額とする。

 老齢加算の段階的廃止(最終年)
 平成16年度からの3年間で段階的に廃止する。

 母子加算等生活扶助基準の見直し(2年目)
 16〜18歳の子どものみを養育するひとり親世帯について、母子加算の支給額を平成17年度からの3年間で段階的に廃止する。また、多人数(4人以上)世帯の生活扶助基準額について平成17年度からの3年間で適正化を図る。


第9  国民の安心と安全のための施策の推進

 医薬品等の安全対策については、市販直後の使用状況等の情報を収集・評価し、迅速な安全対策を講じるほか、医薬品・医療機器審査の充実・強化、薬剤師の資質向上、血液対策、麻薬・覚せい剤対策等を推進する。
 また、残留農薬等ポジティブリスト制度の導入、輸入食品の監視体制の強化、消費者等との食品安全に関するリスクコミュニケーションの充実など食品の安全対策を推進する。
 あわせて、安全な水の確保、健康危機管理体制の強化、自殺予防対策を推進する。

 医薬品・医療機器の安全対策等の充実 115億円(122億円)

(1)  安全対策の推進 5.7億円
 市販直後の医薬品の安全対策の推進(新規) 13百万円
 新規性が高く、国内の治験症例が少ない新医薬品について、市販後一定期間、使用状況や副作用等の臨床現場の情報を、国が直接収集し評価することなどにより、安全対策の一層の強化を図る。

 重篤副作用疾患の早期発見、早期対応の推進 44百万円
 重篤な副作用の早期発見、早期対応のため、関係学会等との連携の上、初期症状、典型症例、診断法等を包括的にとりまとめた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(4年間で120疾患)を作成し、医療機関や患者等に情報提供する。

(2)  医薬品・医療機器審査の充実・強化 12億円
 遺伝子利用技術に対応した審査体制の整備(新規) 11百万円
 ゲノム薬理学を利用した新医薬品について、承認審査に関する指針の作成に向けた検討を行うとともに、遺伝子診断用の体外診断薬について、臨床性能試験の実施基準や評価指針を策定し、審査の迅速化、開発の効率化を図る。

(3)  薬剤師の資質向上対策の推進 3億円
 4年制卒薬剤師の研修の充実 1.4億円
 薬学教育6年制の実施に伴い、既卒薬剤師を対象に、現行4年制では履修していない医療薬学、実務実習について、教材の作成などの環境整備等を進める。

 専門薬剤師研修の実施(新規) 1.1億円
 がん薬物療法等の専門分野における高度な知識・技能を有する薬剤師を養成するため、一定の実務経験を有する勤務薬剤師を対象に研修を実施する。

(4)  安全、安心な血液製剤の供給確保 7.9億円
 少子高齢化による構造的な献血者の減少傾向、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者の発生に伴う海外滞在歴による献血制限の強化の中で、血液製剤の安定供給を確保するため、若年層に対する献血推進、事業所等における集団献血の拡大、複数回献血者の確保を柱とした献血構造改革を推進する。

 医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化 62億円(54億円)

  ○  先端医療の実用化 15億円
 基礎研究成果について実用化の可能性を探り、画期的医薬品・医療機器等を提供する機会を増加させるための探索的な臨床研究等を推進する。あわせて、ゲノム研究の成果を活用し、ゲノムレベルでの個人の特性に応じた最適な処方を可能とし、より安全・安心な医療技術の提供の実現を図る。
 また、次代を担う子どもに科学的根拠に基づく先端医療を提供するため、小児医療分野における質の高い臨床試験を実施する。

  ○  治験を含む臨床研究基盤の整備 23億円
 医薬品の承認に不可欠な治験を推進するため、治験基盤の強化・充実を図り、国際競争力のある創薬環境の整備を行う。あわせて、根拠に基づく医療(EBM)の推進に不可欠な人材育成を行い臨床研究の質の向上に努める。

  ○  効果的医療技術、萌芽(ほうが)的先端医療技術の確立研究の推進 25億円
 民間企業との連携のもと、トキシコゲノミクス技術やナノテクノロジーを活用した、より安全かつ効率的な医薬品・医療機器の開発に資する研究を推進する。

 麻薬・覚せい剤等対策の推進 8.8億円(9.2億円)

  ○  薬物乱用防止対策の推進 84百万円
 最近、乱用が拡大している、違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の実態を把握し、青少年を中心に啓発活動の強化を図るとともに、薬物再乱用防止のため、薬物依存・中毒者の家族に対する支援事業を行う。

  ○  取締体制の強化 5.4億円
 巧妙化する薬物密輸入事犯に機動的に対処するため、取締体制を強化する。

 国民の健康保護のための食品安全対策の推進 157億円(157億円)

(1)  食品衛生法に基づく基準の策定等の推進 17億円
 残留農薬等ポジティブリスト制度の推進 5.7億円
 基準が策定されていない農薬等が残留する食品の流通を原則禁止する「ポジティブリスト制度」を施行(平成18年5月29日)するにあたり、分析法の開発や摂取量の調査等を計画的に実施し、制度の円滑な運用を推進する。

 食品添加物の計画的な安全性確認の推進 11億円
 長い食習慣等を考慮して使用が認められている既存添加物や国際的に広く使用が認められている食品添加物について、毒性試験等を計画的に実施し、食品添加物の安全性確保を推進する。

(2)  消費者等への情報提供の充実 44百万円
 食品安全に関する情報提供や意見交換(リスクコミュニケーション)の充実 29百万円
 食品安全に関する施策について国民の理解や信頼を構築するため、的確な情報提供や消費者等との意見交換会を行うなど、リスクコミュニケーションの取組みを充実する。

 健康食品対策の推進 8百万円
 消費者が健康食品を適切に選択できるよう、適切な利用方法や食品の機能に関する十分な情報提供を行う。

(3)  輸入食品等の安全対策の強化 125億円
 輸入食品の監視等の強化 19億円
 残留農薬等のポジティブリスト制度の施行にあわせて、検疫所が行う輸入食品等のモニタリング検査等についても、新たな分析法を導入するなど検査項目の大幅な増加への対応を図り、輸入食品の安全対策を強化する。

 食肉の安全確保対策の推進 33億円
 BSE対策を推進するため、と畜場におけるBSE検査キットについて引き続き国庫補助を行うとともに、米国及びカナダにおける対日輸出施設の査察、ピッシングの中止に必要な設備整備等を行う。

(4)  食品安全に関する研究の推進 14億円
 先端技術を融合・応用した検出技術の開発や科学的根拠に基づいた安全性に関する調査研究、食中毒、食品テロ等の危機管理に関する研究など食品安全確保に資する研究を推進する。

 安全で良質な水の安定供給 850億円(902億円)

  ○  水道施設の整備 849億円
 すべての国民に安全で良質な水道水の安定的な供給を行うなど、「水道ビジョン」(平成16年6月策定)の実現に向けた取組みを推進する。

 健康危機管理体制の強化 12億円(29億円)

  ○  国際健康危機管理ネットワーク等の推進 68百万円
 SARS等の新興感染症や生物製剤テロによる国民の健康被害を最小限にするため、感染症等の発生動向の監視評価、健康危機管理に当たる人材育成等に関する研究を推進する。また、テロ対策に係る公衆衛生上の情報交換や国際協力について協議するため、世界健康安全保障閣僚級会合等を我が国において開催し、我が国を含む国際的な健康危機管理ネットワークの強化及びテロ対策の充実を図る。

  ○  国立感染症研究所における危機管理体制の強化 1.5億円
 国立感染症研究所の危機管理能力の強化を図るため、国内外での未知の感染症等発生時におけるWHO等が編成する広範な疫学調査チームに積極的に参加し、国際的な感染症の情報収集、解析、還元及び情報提供を行う。また、病原体のゲノム情報の蓄積、データベース化や科学的解析を引き続き推進する。

  ○  地域健康危機管理対策の推進 10億円
 地域における多種多様な健康危機事例に的確に対応するため、実地訓練マニュアルの作成や訓練教材の開発、広域連携体制の整備等、健康危機管理対策を推進する。

 自殺予防対策の推進 9.1億円(7.8億円)

(1)  自殺予防総合対策センター(仮称)の設置 22百万円
 総合的な自殺予防対策を実施するため、国内外の情報収集、Webサイトを通じた情報提供や関係団体等との連絡調整等を行う自殺予防総合対策センター(仮称)を設置する。

(2)  自殺予防に向けた相談体制の充実 2.8億円
 電話による自殺予防相談関連施策の実施 81百万円
 「いのちの電話」において、フリーダイヤルによる相談の実施や相談員の研修などを行う。

 メンタルヘルス相談実施体制の整備(再掲) 2億円
 地域産業保健センターにおいて、保健所等地域の保健機関と協力し、労働者及びその家族を対象としたセミナーや相談会を実施する。
 また、産業医等を対象にメンタルヘルスに関する知識、対応方法等について研修を実施する。

(3)  自殺予防の普及啓発 3億円
 こころの健康づくり普及啓発事業の推進 75百万円
 都道府県において地域の実情に即したPR活動を行うことにより、地域におけるこころの健康問題に関する正しい知識の普及啓発を推進する。

 事業場におけるメンタルヘルス対策への支援(再掲) 2.2億円
 事業場の要請に応じてメンタルヘルスに関する専門家を派遣し、指導助言を行うとともに、管理監督者等に対する研修等を実施する。

(4)  自殺問題に関する総合的な調査研究等の推進 3億円
 データの収集と分析による自殺の実態把握を行うとともに、自殺関連予防プログラムの開発や労働者のメンタルヘルス等に関する研究を推進する。
 また、労災請求された自殺事案等について、自殺原因や経緯などの調査・分析を行う。


第10  その他

 国際社会への貢献 254億円(269億円)

(1)  国際機関を通じた国際的活動の推進 172億円
 世界保健機関(WHO)等を通じた活動の推進 110億円
 世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)への拠出等を通じ、SARSや新型インフルエンザ等の新興・再興感染症、エイズ、結核等への対応や食品の安全対策の国際的な活動を推進する。

 国際労働機関(ILO)を通じた活動の推進 59億円
 国際労働機関(ILO)への拠出等を通じ、労働者の基本的な権利の実現、人材育成等の国際的な活動を推進する。

(2)  開発途上国等に対する国際貢献等の推進 36億円
 ASEAN諸国やアフリカ諸国等に対し、保健医療、福祉分野への支援、労使関係の安定化、人材養成に関する支援などの協力を積極的に行う。

 社会保険・労働保険の徴収事務の一元化の推進 31百万円

  ○  社会保険・労働保険の徴収事務の一元化の推進 31百万円
 事業主の利便性の向上及び行政事務の効率化を図るため、社会保険と労働保険の徴収事務の一元化を一層推進する。

 戦傷病者・戦没者遺族の援護等 517億円(570億円)

  ○  戦傷病者等の妻に対する特別給付金の継続支給(支給事務経費) 36百万円
 現行の特別給付金国債が最終償還を迎えることから、国として改めて特別の慰藉(いしゃ)を行うこととし、戦傷病者等の妻に対する特別給付金(額面100万円の10年償還の国債)を継続して支給する。

  ○  海外未送還遺骨の集中的な情報収集 29百万円
 戦後60年が経過し、年々未送還遺骨の情報が減少していることから、民間団体等の協力を得て、激戦や玉砕のあった地域の遺骨情報を積極的かつ集中的に収集することにより、遺骨収集の推進を図る。

 中国残留邦人等の支援 16億円(16億円)

  ○  中国帰国者等受入施設の再編・整備 7.3億円
 中国帰国者等の減少に伴い帰国直後に初歩的な日本語教育等を行う定着促進センター及び自立研修センターを縮小し、支援・交流センター(就労に結びつく日本語習得支援等を中長期的に行う。)を拡充する。

 原爆被爆者の援護 1,566億円(1,566億円)

  ○  保健、医療、福祉にわたる総合的な施策の推進 1,566億円
 原爆被爆者に対する健康診断の実施、医療の給付及び諸手当の支給のほか、在外被爆者に対する支援、調査研究及び国立原爆死没者追悼平和祈念館の運営等を行う。

 生活衛生関係営業の指導及び振興の推進 17億円(17億円)

  ○  生活衛生関係営業の振興のための支援 17億円
 経営の健全化、衛生水準の維持向上を図るため、全国生活衛生同業組合連合会等における経営革新、消費者サービスの向上や健康増進のための自主的活動を支援する。

 ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策の推進 33億円(32億円)

  ○  ホームレス就業支援事業の拡充 3.6億円
 個々のホームレスの就業意欲等の把握・見極めを行うとともに、基礎的な労働・生活習慣の体得等を支援する事業を実施する。

 刑務所出所者等に対する就労支援の実施 1.7億円

  ○  刑務所出所者等就労支援事業の実施(新規) 1.7億円
 法務省との連携の下、刑務所出所者等に対し、職業相談、職業紹介や協力雇用主を対象とした求人開拓等を行うとともに、試行雇用奨励金の支給や職場体験講習などを更生保護法人に委託して実施する。

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