06/03/29 労働政策審議会労働条件分科会 第53回議事録    第53回 労働政策審議会労働条件分科会 日時 平成18年3月29日(水) 17:00〜 場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長 ただいまから、第53回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたしま す。本日は、久野委員が欠席です。本日は、前回に引き続き労働時間法制の関係につい て御議論いただきます。前回の議論において、委員より資料の追加等について御指摘が ありました。御指摘のありました事項について、事務局から追加資料が準備されました ので、その点について説明していただきます。 ○大西監督課長 資料No.1と資料No.1の参考資料2は前回お出ししたものと同じですの で、説明は省略させていただきます。参考資料No.1は追加資料ですので御説明いたしま す。1頁は、労働基準法の労働時間に関する監督指導の状況です。平成16年度は、12 万2,793事業場に定期監督を行っております。そのうち、労働時間に関する法違反とし ては、第32条及び第40条の労働時間が2万9,454件となっております。第37条の割増 賃金については2万299件という状況になっています。これらについて違反を指摘した 上で、必要な指導をそれぞれ行っております。  1頁の下のほうは、送検事件の状況としては78件で、第32条違反の労働時間は36 件、第37条の割増賃金は37件です。  2頁は、平成16年度における賃金不払残業に係る割増賃金の是正企業数です。1,437 事業場で、対象労働者数は16万9,111人です。支払われた割増賃金の合計額は226億 1,314万円となっております。以上が監督の結果です。  3頁は、労働者健康状況調査で、5年に1回やっているものです。普段の仕事で、身 体がどの程度疲れるかを尋ねたところ、「とても疲れる」又は「やや疲れる」と回答した 方が、平成4年の64.6%から平成14年には72.2%となっております。  4頁も同じく調査結果です。仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感 じる労働者の割合です。昭和62年の55.0%、平成4年の57.3%、平成9年の62.8%、 平成14年の61.5%となっております。平成14年の調査結果を少し分析してみたのが下 の棒グラフです。職場の人間関係については35.1%を筆頭に、仕事の量の問題が32.3%、 仕事の質の問題が30.4%、会社の将来性が29.1%という内容です。これは、3つまでの 複数回答ということでそこに書いてあるとおりです。  5頁は、自分の健康管理やストレスの解消のために会社に期待する事項です。円グラ フで、「期待することがある」が65.1%、「特に期待することはない」が31.2%という結 果です。期待する内容について具体的に問うたところ、「休養施設・スポーツ施設の整備、 利用の拡充」が33.9%、「がん検診や人間ドックの受診費用の負担の軽減」が32.6%、 「健康診断の結果に応じた健康指導の実施」が25.0%、「施設・設備等の職場環境の改 善」が22.2%、「超過勤務時間の短縮」が18.9%という状況です。  6頁は、疲労の回復状況別労働者割合と疲労・ストレスの解消法別労働者割合です。 平成9年の調査で疲労の回復状況について尋ねたところ、「一晩睡眠をとればだいたい疲 労は回復する」が41.6%、逆に「疲労を持ちこすことがある」が58.4%です。「持ちこ すことがある」者の内訳については、「翌朝に前日の疲労を持ちこすことがときどきある」 が42.7%ということで多くなっています。同じく、疲労・ストレスの解消法として、「睡 眠や休息をとる」が72.9%でいちばん多く、あとは「酒を飲む」、「ドライブ、旅行をす る」、「外食、買物をする」というのも3割程度あります。  7頁は、男女別に見た超過労働時間の分布です。これは、平成16年6月の所定労働時 間を超えて働いた労働時間数の平均で31.6時間、男性が36.9時間、女性が20.8時間と いうことです。分布で、0時間というのは残業をしなかった人ですから、それを除いた 49時間以下が53.8%という結果です。  8頁は、平成17年の調査です。1日の仕事で疲れて、退社後何もやる気になれないと いう人がどのぐらいいるかということです。下のほうに時間数が書いてありますが、50 〜74時間の方では、「いつもそうだ・しばしばある」が58.1%です。「いつもそうだ」と いうのは、同じところでいうと19.9%です。8頁のグラフは男女計ですが、9頁は男性 と女性に分けたグラフがそれぞれ出ています。いずれもグラフの真ん中に△で平均値が 書いてあります。統計表では「平均値」となっているのですが、8頁上の説明のところ に書いてあるように、「いつもそうだ」、「しばしばある」、「ときどきある」、「ほ とんどない」をそれぞれ数字に置き換えて平均を立てているものです。普通にいう日本語 の平均値とはちょっと意味が違うところは御留意いただきたいと思います。  10頁は、うつの関係です。抑うつ傾向得点と超過労働時間との関係をポイントにした ものです。50〜74時間では43.11点となっております。これは、ポイントごとにそこの ※に書いてあるように、どの程度問題があるかということをチェックシートで計算した ものです。ポイントが高くなるほど大変な状況になっているというものです。  11頁は、超過勤務の理由を調べたものです。全体については11頁の表に出ていると おりです。「最近の人員削減により人手不足だから」というのが50時間未満の超過勤務 で33.6%、50時間以上が37.3%です。「所定労働時間内では片付かない仕事量だから」 というものが、50時間未満では55.9%、50時間以上では79.8%になっております。  12頁は、脳・心臓疾患及び精神障害等による労災補償の状況です。平成12年度の請 求件数は617件、平成13年度は690件、平成14年度は819件、平成15年度は742件、 平成16年度は816件となっております。精神障害等に係る労災請求件数は平成12年度 は212件、平成13年度は265件、平成14年度は341件、平成15年度は447件、平成 16年度は524件となっております。それぞれ認定件数については四角いマークが付けら れているところです。  13頁からは、少子化対策などの関係です。少子化対策で何に期待するかをアンケート 調査したものです。「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進」が51.1%でいち ばん多く、2番目に「子育てにおける経済的負担の軽減」が50.5%、3番目に「子育て のための安心、安全な環境整備」が41.7%という順番に並んでおります。  14頁は、父親・母親の帰宅時間です。父親の平均的な帰宅時間は20.0時です。円グ ラフにあるように、19〜21時が35.5%、21〜23時が33.2%、23時から翌日の3時は 13.7%となっています。母親の平均的な帰宅時間は16.1時(16時6分)です。17時以 降の帰宅は38.7%となっております。  15頁は、育児・介護休業法における育児のための所定外労働免除制度等について、就 学前の子がいる女性の雇用者に、「利用していないができれば利用したい措置」を尋ねた ところ、「短時間勤務制度」が31.8%、「所定外労働免除」が29.8%、「始業・終業時間 の繰上げ・繰下げ」が28.4%となっております。  15頁の下の表では、時間外労働がある事業所のうち、育児を行う労働者について時間 外労働制限の規定がある事業所の割合が31.6%で、そのほとんどが小学校就学始期まで となっております。  16頁は、子の看護休暇の関係です。子の看護休暇制度がある事業所は26.5%です。そ の内容は、有給が33.9%です。この資料につきましては、先の育児・介護休業法の改正 により、子の看護休暇制度が義務化される前の数字ですので御留意ください。  17頁は、不払い労働時間の実態です。平均は、0時間を除いて35.4時間。超過勤務 手当が支給されない理由を聞いたところ、「その残業時間が法定労働時間内だから」が男 女計で12.7%、「残業時間に関係なく定額で支給されるから」が19.0%です。また、「自 分で納得する成果を出すための残業で残業手当申請をしていないから」が23.2%、「申 請しても予算の制約で支払われないから」が19.4%、「上司がイヤな顔をするので手当 を申請しにくいから」が12.4%という結果です。  以上簡単ですが、追加資料の御説明とさせていただきます。 ○西村分科会長 今回、時間外・休日労働を中心に追加資料を提出していただきました が、本日はそうした点を中心にして議論していただきます。また、労働者の健康確保の 観点からしますと、年次有給休暇の実効的な取得が大きな論点になると思います。そこ で、資料No.1「労働時間法制について」を参考にしながら、そこでの時間外・休日労働、 あるいは年次有給休暇について議論していただければと思います。 ○紀陸委員 資料No.1に大きく3つの項目があります。経営側の基本的な考え方を、そ れぞれの項目について述べさせていただきます。いちばん上の1の年次有給休暇の問題 で、特に(1)労働者の時季指定だけに任せるシステムが限界に来ている。かつ、年次有給 休暇のうち一定日数について、使用者が労働者の希望も踏まえてあらかじめ具体的な取 得日数を決定すると書かれています。私どもは、この点については企業の意向も踏まえ、 慎重に検討していただきたいと思います。基本的にいまの休暇取得の仕組みを変えるこ とになりますので、ここのところは慎重な検討をお願いしたいと思います。  (3)に、1週間程度以上の連続休暇を計画的に取得させること。あるいは、年休取得率 の低い者に計画的に取得させるための方策と書いてありますが、さまざまな企業があり ますので、法律でこういうことまで書く必要があるのか。例えば、労働時間等の設定改 善指針の中で取り上げるような事項ではないかと思います。  (4)のところに、時間単位での休暇の取得を認めるということが出ています。これも、 働く人にとってはメリットもあるのでしょうけれども、企業にとっては事業の適正な運 営や労務管理の運用の面で支障が出る場合もありますので、ここについても慎重な検討 をお願いしたいということです。  (5)で、未消化年休に係る年休手当を退職時に清算する制度ということが提起されてい ます。これも、いろいろな人がいるのでしょうけれども、働く人にとって年休の買取り を期待するという傾向が出る可能性があり、かえって年休の取得抑制につながってしま うおそれもあるので、この点については、すぐイエスというわけにはいかないのではな いかという感じです。  2の時間外・休日労働のところで、割増賃金の引上げのことが(1)に出てまいります。 この点については、私どもは基本的に簡単にイエスとは言えないということです。  特に(2)のところで、一定の時間外労働を限度基準を超えて云々とありますけれども、 平成15年度に特別条項の運用の見直しが行われております。この特別条項の運用が折角 制度として認められているものが、(2)のような考え方でいくと非常に使いにくくなって しまうことを私どもは懸念しております。この部分については、特別条項の運用をきち んと見ることが先ではないかと考えております。  (3)で36協定違反の罰則強化が出ています。すぐに罰則強化に行かないで、時間外労働 には36協定の締結が必要だということをもっと周知する必要があるだろう。これは、私 ども経営側の責任でもありますが、CSRを言われておりますので、経営側としても36 協定をきちんと結ぶ努力を続けていきたいと考えております。  3のフレックスタイム制・事業場外みなし労働時間制のところです。4頁の(1)のとこ ろは、基本的に規制緩和の方向が打ち出されており、私どもは賛成です。  (2)のところで、いちばん下の事業場外みなしというのは、現行の運用で、事業場の中 と外を分けて、事業場の外でやっている場合に、みなしの運用が行われているのですが、 ここの部分は内外通算でみなしができるような運用をお願いしたいと思っております。 事業場内の仕事が部分的にあるにしても、それが通例化しているというのが非常に多い と思いますので、内と外を分ける形ではなくて、通算でみなしができるような運用をお 願いしたいと思っております。  5頁以降の4はいろいろ論議がありますので、差し当たり前半の大きな3つについて 全部ではありませんが、基本的な考え方を述べさせていただきました。  1点申し忘れました。2頁目の時間外・休日労働のところの(1)の中で、時間外労働が 多くなった場合に代償休日を与える、という提案がなされております。これは、普通の 労働日にしわ寄せがきますので、ここのところは労使が個別に考えることであって、法 律で一律的にこうだということを示すのはいかがなものかという感じでおります。 ○渡邊佳英委員 2点申し上げます。年次有給休暇について、取得率がずっと下がって おります。平成5年ぐらいから、厚生労働省だかどの省だかわからないのですけれども、 祝日が日曜日に当たると月曜日が休みになるというのが導入されました。特にこの数年 は飛び石連休を全部なくして3連休にする。私は、成人の日は1月15日だと思っていた のですけれども、いまは8日とか9日という形で全部3連休になってしまっています。 例えば、飛び石だったら、その真ん中を休もうかとか、そういう年次有給休暇の取り方 がなくなってきているのが多いです。  いかに長期間休めるような体制を労使で考えていくか、ということのほうがいいので はないか。例えば、いままで夏休みは1週間だったのを10日ぐらい休めるようにすると か、あるいは2週間休めるような雰囲気づくりのほうが、より取得率の問題ではいいの ではないかと思います。  それから労働時間の問題で、時間外の賃金を上げることですけれども、これに関して は長時間労働の削減のために、使用者にペナルティを科すというような考え方だと思い ます。労働者にとっては、長く会社にいるほど給料が上がってしまうということで、か えって残業を促進するような懸念があるのではないかということで、この制度の導入に 関して私は反対です。 ○西村分科会長 2人の使用者側委員から意見が出ましたが、労働側はいかがですか。 ○島田委員 一つ根本的な部分があると思います。いま使用者側から言われた、年次有 給休暇は個人と言われたらある部分考えざるを得ないのですけれども、製造業は所定人 数・要員というのがあります。流通業はわからないのですけれども、その要員を考える ときに、本来は所定労働時間で考えなければいけないわけでしょう。そのために基本的 には所定労働時間というのがあるわけです。その例外として残業があるわけです。それ が、いまは所定外労働をやるというのが基本になっているわけです。  本来、残業は労働者個人が判断して行うのではなくて、上司が命じて初めて行う、と いうのが本来の法律の趣旨です。だから、割増率を上げると残業促進になるのではなく て、それは監督していないという話ですよね。勝手に労働者に任せているということで はないですか。所定内が基本であり、例外は重くしようというのが事務局の案だと思う し、労働側もその考えです。  また、いままで労使の話合いでやってください、それでできますということでやって きたけれども、結局できないからある部分は法的に規制しないと駄目ですよねという議 論になってきた。年次有給休暇の計画付与も労使でやってくださいと言ったけれども、 結局ヨーロッパ的な感覚は日本では生まれない、労使間でも生まれなかった。それだっ たら法律でやらない限り、長期休暇を取るなどということはたぶんできないでしょう。 強制しておいて緩めるのはいいけれども、最初から規制をしなければたぶんできないで しょうという感覚だと思います。私は、それが正しいと思っています。  なんでも経営のやりやすい方向であればOK、それ以外は駄目というのではなくて、 もともとは所定内で働くということが基本だということをまず認識してもらわないと話 にならないと思います。それで、本来経営は人数をカウントして採用しているはずなの です。 ○田島委員 島田委員の発言に関連してですが、割増率を引き上げたら残業促進になる と言っていますけれども、平成14年の厚生労働省の調査でも均衡割増賃金率、いわゆる 人を入れるかどうか、割増しをいくらにしたら均衡になるのかというと52%というデー タが出ています。ということは、割増率が52%以下だったならば、超過利潤を経営側が 受け取るという理解です。  松井審議官が進めていた、仕事と生活の調和に関する検討会議の資料を持ってきまし た。その中に、例えば連合総研の調査結果で、割増率を引き上げたら労働者自身にどう いう影響がありますかという設問に、「コスト増で残業抑制になります」という回答が過 半数に上っているわけです。人を雇い入れるよりは割増賃金を払う方が安いから残業が 恒常化しているという問題があるわけです。割増率を引き上げたら、労働者が残業代で 儲かるから残業が増えるのではないかというのは論として全くおかしいです。  ヨーロッパと比べても、アジアと比べても日本の25%は低いのだという認識に立たな いといけないのではないかと思います。本来的には時間外なしで、仕事がきちんと終わ るような要員配置ができていれば問題ないわけです。それができていないところに問題 があるのではないかと思います。その点はいかがかと思うのです。 ○谷川委員 私どもも、労働時間は大事な問題だと思っております。社員が健康で、な おかつ能力が発揮できるような環境をつくっておくことは大事だろうと思っています。  ただ、ヨーロッパや諸外国と比べて、日本の企業は雇用の確保の点においてかなり配 慮しているような状況にあるのではないかという感じがします。そういう中で、いまは 仕事自体の変化のスピードが激しいものですから、どの時点でどういう割合ですれば、 いわゆる所定の労働量と、所定のアウトプットがバランスするのかというのは非常に難 しい部分があります。  その辺の不規則性をカバーする部分は、ある程度残業でカバーせざるを得ない部分も あるかと思うのです。おそらく、その辺の模索については使用者側も、あるいは労働組 合もどの時点で人の配員であったりというようなことは検討しながらやっているような ことではないかと思います。罰則を強化すれば、本当にみんなが幸せになるのかという ことですが、そうはいかないのではないかという感じがします。 ○石塚委員 いまの意見に対してコメントいたします。一般論として、日本の企業の行 動様式が欧米の企業に比べて雇用を大事にする、それで労働者もそれを大事にする、と いうことが定着していると言われているわけです。ヨーロッパとアメリカを欧米と一概 に言いますけれども、私の理解ではヨーロッパの場合は、一遍人を雇うと解雇する規制 が厳しいように思います。もちろん国によって違いはありますが、そんなに簡単に解雇 できるような状況ではないのだろうと思います。現にフランスにおいてストライキをや っていますけれども、あそこは極端にしても、ヨーロッパでは基本的に雇った以上そん なに簡単に解雇はできないと思っています。  簡単に解雇できるということにおいて、一般的に言われているのはアメリカです。ア メリカにおいてもどの世界をとるかによって違います。私は、製造業の世界は知ってい るつもりですが、アメリカにおける製造業の世界では、レイオフする順番というのは、 いわゆるセニオリティ・システム、先任権制度がありますから、勤続年数の若い順から 切られるということがある意味では決まっているわけです。労働組合の仕事というのは、 そのセニオリティの単位をどうやって決めるのかということで、例えば基本的なローテ ィーンは切ろうという、そういう仕切り方をしている。一見アメリカにおいても、雇用 を簡単に切れるように見えますけれども、実はそこに一つのルールがある。  しかも、アメリカにおける問題点は、いま世の中の状況がかなり激しくて、日本にお いては付加価値を付けるような労働にシフトしてきている。そのため、一定の時間外労 働が必要だとおっしゃいますけれども、アメリカにおいて経営者のできることというの は、労働者に対して教育を与えることではないのです。アメリカにおいて基本的に経営 者のできることというのは、労働者をレイオフすることしかできないのです。なぜなら ば、極めて硬直的な労働慣行があるからです。  私も、時間外を100%駄目とか良いとかと言う気はありませんけれども、その辺のア ローワンスといいますか、そのほかにおいて非常に雇用の確保に役立ってきたというこ とを100%否定する気はありませんけれども、雇用を大事にしたがゆえにこの時間外労 働というのは、もっと柔軟に扱えということについては少し違和感を覚えます。これは 私の意見です。 ○紀陸委員 割増率の問題を考える場合に、賃金のレベルを考慮に入れる必要があるの だと思います。25%がいいとか30%がいいという論議もさることながら、賃金水準自体 がどのぐらいのレベルにあるかということを考えて、トータルの人件コストの重さも考 慮に入れていく必要があるだろう。アジアと比べても、という話が出ましたけれども、 それであれば余計アジアと日本の賃金の水準の差を考慮に入れた上で論議をする必要が あるのではないかと思います。 ○八野委員 確かに、ここには法制について年次有給休暇から順番に出ているのですけ れども、もともとは仕事と生活の調和ということを目指さなければいけないのではない か、ということを本題としてやっているわけです。企業が生産性を上げ、利潤を上げて いくのは基本的ですが、生産性の向上は、人間、そして労働時間というものが大きく関 わります。いま経営側から問題の指摘を受けたところは、本当にそれを目指す考えから 生じたのかどうなのか、というところをもう一度問うていきたいです。  もう一つ、いままでは日本の生産性向上やGDPの上昇は、製造業が大きな役割を果 たしてきていましたが、労働人口から見れば、サービス業の労働人口が増えてきている。 そのため、いままでの考え方で労働時間を見ていいのかどうか、そこは考える必要があ るだろうと思います。休みが土日・祭日ということで言っていましたけれども、365日 の働く時間が与えられ、その中で休みをどうやって取っていくのかという中で所定労働 時間を決めている職場もあります。  そういうものをトータルで考えたときに、これからワークライフバランスを目指す日 本の労働法制、労働時間法制がどうなのかということを考えていくべきなのではないか。 そうすると、いま挙げられている問題がどうやってクリアできるのか。時間外の割増し も、いまの現状の企業の生産性と、賃金の水準と、割増率ということで見るのではなく て、これから先はどうなのだ、いまは人口減少で問題があるではないか、企業もこれか らは優秀な人材をなかなか採れなくなってくるのではないか。そういうところで、いま いろいろな工夫を労使で又は企業でされているところがあります。いまの時点で割増率 が高いとか低いではなくて、これから日本が良い労働環境の中でやっていくために、割 増率がいまのままではなく、さらにあげていってもいいのではないか。  もう一つ、時間外というのは先ほど36協定という話が出てきました。もう一つ重要な のは、そこにマネジメントがされているかどうかです。業務量が増えて、それをコント ロールする管理監督者に、きちんとマネジメントする能力がある者が就いているのかど うか。そういう人事制度が労使できちんと運用されているのか。これは、労働組合にも 責任があると思いますが、運用されているのかどうかというところにも行き着いていく 問題なのです。割増率は一つのものであって、年次有給休暇の計画取得もいまはされて いない、という日本の労働環境の低さをもう少し普通にしようよ、いまのは低いのでは ないか、という考え方で見ていったらどうなのだろうかと考えます。 ○奥谷委員 いまのは大変いい意見だと思います。いままでの流れで9時〜5時という、 まして土日休み云々、祝日休み云々という流れの中で、いまはサービス業のほうが製造 業よりも働いている人たちの割合が高くなっているわけです。時間と生産が正比例する というのは製造業の考え方であって、特にサービス業の知的産業的なものというのは、 時間と生産性が計れないわけです。  そうすると、残業の割増しが何パーセントであるかどうかというのは、いまおっしゃ った中でこれから企業が人を採用するのに厳しくなっていくと思います。特に優秀な人 たちについては。そうしていくと、企業が個別で考える問題だと思うのです。うちは何 10%アップする、うちはどうすると賃金を含めて企業の労働者に対する環境をどう与え るかということも、それをいちいち法律でどうのこうのと規制することよりも、各企業 の競争に任せれば、優秀な人材を採りたいと思えば、いま普通に考えているよりも、違 う形で企業の競争の結果が出てくるわけです。  そういう意味で、法制でどうのこうのとするよりもむしろ企業側に任せることによっ て、労働者側はどこの企業が自分に適しているかというのを選択するわけです。その選 択の多様化をもっと与えたほうが労働者にとってプラスになるのではないでしょうか。 ○八野委員 私が言っているのは、企業でそれぞれ考えてくれということではなくて、 私はミニマムの基準だと思っていますから、これは法制化すべきであります。いまのは、 低いということを前提にして話をしています。 ○奥谷委員 その25%というのが、日曜日に出ると50%アップとか、時間外が25%と いうのが低いか高いかというのは、どこで低いか高いかとおっしゃっているのかが私に はわからないのです。労働者側の方で、もしそこがあれば教えていただきたいのです。 ○田島委員 これが低いか高いかだったら、私は低いと思います。それより問題は、前 回出された資料No.1の参考資料No.2の有給休暇の取得率も、この10年間で10ポイント も下がってきています。時間外労働が恒常化してきているという問題もあります。休み を取ろうと思っても、出る仲間に迷惑をかけるとか、休んだらその後に出てきたときに 自分の負担が増えてしまうので結果として休めないというのが実情です。  労働組合のない所では、本当に自分の意思では休めないような現実があります。しか し、法律で保障されているのが権利として行使できていないというのはやはり本物では ないでしょう。それを行使できる環境づくりのためには、きちんとした要員配置を企業 の責任できちんとやらなくてはいけないです。  もう一つは時間外労働です。本日も監督課長から説明がありましたけれども、2頁の 不払残業は、平成13年から平成16年に向けて増加傾向にあります。3頁の仕事の疲れ についても、「とても疲れる」と「やや疲れる」を合わせた「疲れる」が、増加傾向にあ る。この現実をどうするかということを本当に考えていかないといけないだろうと思い ます。そういう意味では、長時間労働を抑制するためにも、連合総研のデータは確かだ ろうと思います。割増率を引き上げたほうが抑制効果がありますというデータも出てい るわけです。  そういう意味では、先ほど谷川委員が言われたように、100の人員で、ずうっと100 の仕事があるわけではなくて、120が出たときの残業まで否定しているわけではない。 しかし、100の仕事が恒常化しているのに、80の要員しかいないという現状が出ている のではないか。それはなぜかといえば、割増率が低いという問題、それから権利として の有給休暇取得が行使できないような要員不足の問題を真剣に考えていく時期ではない かと思っております。これは、間違っていますか。 ○奥谷委員 間違っているよりも、先ほどおっしゃったようにマネジメントにかなり問 題があると思います。仕事に対してどれだけ残業をすればいいかという、その仕事の中 身に対してどう判断するかということは、ある程度マネジメントをきちんとしておかな いと、勝手に自分で残業をしてしまう人もいるわけです。まさに残業代を稼いで生活費 にしている生活給になってしまっている部分もあるわけです。  これは、基本的にマネジメントをしてきちんと仕事の中身を押さえて、それで働く側 にとってそれだけの残業を要請するというのは労使共にというと変ですが、いいかげん な部分がはっきり言ってどこの企業にもあると思います。そこが大きな問題になってい るのではないかという気がしています。 ○新田委員 要するに長時間労働はよくないと思ってもらえるのかどうかです。長時間 労働を会社や工場で働く人たちにより高い力を発揮させるためには、いまのまま捨て置 いていいのだと思っている、としか聞こえないのです。たしか時間外割増率については 規制緩和どころか、25%以上は規制がないですね。深夜労働で倍額払ってもいいのです よね。そんな会社はどれぐらいあるんですか。  労働者が「あっ、この会社はいい会社だ」と選択できるというときにさまざまな要素 があるでしょうけれども、例えば働くことについて、所定労働時間は世間並みだけれど も、それを外れる子供との時間とか、地域の時間とか、自分の時間を割く分については これだけ残業代を渡さなければいけないと思っている、という情報が見えるというのは 聞いていないです。  どのようにしたら、いまの状況を変えられるのか。紀陸委員は、新しい働き方の部分 はまた議論があるからとおっしゃいましたけれども、それまでの条件についてはみんな ノーですよね。言ってみれば受け入れられない、という感じです。そして、その次のと ころの新しい制度はOKなのでしょう。是非是非ということなのでしょう、そうではな いのですか。  諸悪の根源の長時間労働をどのように根絶するのですか、ということを聞かせてもら わないと、「うん、なるほどわかった」ということにはならないと思うのです。理屈より も、気持のほうが先に出るかもしれないけれども、具体的な提案を聞かせていませんね。 そろそろ時代は変わっているのでしょうし、子供と朝飯を食べられないとか、晩に帰っ たら寝ているとかいろいろな問題が起こっていることも含めて、家庭のありようまで問 われているということが言われて、ワークライフバランスとか、仕事と生活の調和とか いろいろな言葉が出てきているいまになって、その基本をどのようにするのかというこ とを先に議論してみたらどうでしょうか。これからの労働法制というか、働き方という か、そのことがすれ違っていて、利害だけで議論しようとしたら噛み合わないと思いま す。やはり、長時間労働をどのように排除していくのか。それは競争もあって大変です し、利益も上げて株主にも応えなければいけないということもわかります。だから、そ こをどのようなバランスにするのかということではないかということはわかっているつ もりなのです。わかった上でどうかということです。  これはつい最近見たのですけれども、アメリカのコーヒーチェーンの経営者が、従業 員に投資しなさいと。従業員が機嫌良くしっかり働いたら、必ず業績にはね返る、と言 っているという記事を見ましたが、日本ではあまり聞かないですよね。だから、奥谷委 員がおっしゃったように、こうだというのをどんどん示していくような風潮が見えてい るならばこんな議論は要らないかもしれないのではないかと思います。 ○松井審議官 いまの議論に役に立つかどうかなのですが、実態論のほうからちょっと。 基準法の条文にちょっと戻っていただきたいのです。第32条の書き方は、「使用者は、 労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」と なっています。使用者はさせてはならないというのは、使用者は労働時間を管理する義 務がある、ということを前提にしています。これを適正にやっているかどうかというの が先程来からの問題です。それに労働者が協力するかというのは二次的であり、労働側 が労働時間を管理するという法制にはなっていない、というところをまず考えていただ きたいということが一つです。  割増賃金は第37条ですが、「使用者が・・・のときは通常の労働時間又は労働日の賃 金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算 した割増賃金を支払わなければならない」となっております。つまり、一定の範囲で支 払えという命令がある中で運用されている話なのです。それを、そういう割増しについ て全然制限をなくせという話なのか、少なくとも2割5分から5割の間でということで すが、政令は2割5分に張り付いておりますから、それを操作するというのか、もっと 弾力化しろというのかということを少し頭に置きながらやっていただくと、もう少し整 理できるのではないかということです。  あくまで法律条文は、いま国法として施行されていますから実態との乖離は多少ある としても、これを正しいものとして議論しておりますから、これらをどうするかという ことに最終的には議論を収斂させていただかないと、なかなか議論が進まないというこ とも頭に入れておいていただきたいと思います。 ○岩出委員 前回の資料No.1の参考資料No.2の22頁で、現実に企業の中に時間外25% を超す、あるいは休日労働35%を超す企業が出ています。その事業場の割合は出ている のですけれども、適用労働者の割合を知りたいというのが一点です。こういう企業では、 現実に割増率を上げると生活残業が増えているのかどうかという形の資料があるのかど うか、もしあればお示しいただきたいと思います。 ○大西監督課長 後ほど詳しく調べてはみますが、この資料の労働時間等総合実態調査 結果の中に、労働者の数を把握しているという項目はなかったと記憶しております。 ○田島委員 本日、課長から説明のあった追加資料の11頁に、いま松井審議官がおっし ゃられた法文どおりでいうと、例えば3つまでの選択で、主な超過勤務理由の中の、い ちばん多いのが2段目にある「所定労働時間内では片付かない仕事量だから」というの が多いというのは、法の精神からしておかしいのではないかと理解します。いわゆる行 政側として、こういう長時間労働の問題や、有給休暇が10年間で10ポイントも落ちる ような事態で対策的なことを考えていることがあるのかどうか。行政としてできること をやっても改善がされないという現実があるのかどうなのかお聞かせください。 ○大西監督課長 いろいろな御指摘があったかと思いますが、私どものほうといたしま しては、超過勤務の削減については、適正な労働時間の把握をしていただきたいという ことであるとか、あるいは賃金不払残業をなくしていくというキャンペーンを実施して いくということで、やはり長時間労働と申しますか、いわゆる過重労働に当たるような 長時間労働をなくしていくということは精一杯やっているところです。  年次有給休暇については、制度としての計画年休制度にお触れいただき、計画年休制 度のほかに取得促進のためのキャンペーン等を実施しているところです。そのほかに、 今回の研究会の御報告ということで出させていただいております諸項目についても、審 議会の場で引き続き御議論いただければありがたいと考えております。 ○長谷川委員 この審議会は、これからもしばらく続くのだと思うのです。労働時間の あり方について見直すところがあるかどうかという議論だと思うのです。事務局からは、 早々と年次有給休暇から始まった項目が出されていてなかなか議論しにくいのですが、 なぜいまの時期に労働時間の見直しが必要なのかという、そもそもについての現状認識 が労使の中できちんと一致することが必要なのだと思うのです。  前回も申し上げましたけれども、いま我が国社会で何が問題になっているのかという と、一つは少子化の問題です。それと我が国の財産である国民の過労死、過労自殺が非 常に増加している。そのことが大変大きな問題になっています。もう一つは教育の問題 です。文科省が教育体系の見直しをやっているみたいですが、我が国の教育の問題がい ろいろ問われている。  そのときに、労働時間とそれらのことはどういう関係があるのかという見方をしなけ ればならないのではないかと思うのです。少子化で言えば、女の人が子供を産まない限 りは子供は生まれてこないわけです。今日の追加資料の14頁に父親と母親の帰宅時間が 書いてあるのですが、父親の平均的な帰宅時間は20時で、19時から23時の間に帰宅す る割合が68.7%、23時から翌朝の3時に帰宅する割合が13.7%。働く母親の平均的な 帰宅時間は16.1時で、17時以降の帰宅は38.7%。子供と夕飯を食べよう、朝ご飯を食 べようといったって、いつ食べるのですか。母親はちゃんと子供と向き合ってご飯を食 べているわけですよ。だから、16.1時と出てくるわけですね。父親は何ですか、19時か ら23時の間に帰宅する割合が68.7%、23時から翌朝の3時に帰宅する割合が13.7%、 これはいつ子供とご飯を食べるのですか。それでいて、子供の問題がいろいろなってき たときには、「家庭でご飯を食べる時間もないじゃないか。やれ」と言われたって父親が、 いつもいつも子供がお風呂に入って寝たころ帰ってきて、というような話です。  そうすると、労働時間というのをどう考えましょうか。それぞれお父さん、お母さん がいるところもあるし、お父さんがいなかったり、お母さんがいなかったりするところ もありますが、家族でご飯が食べられるような、夕飯が食べられるような、そういう働 き方と家庭生活の過ごし方がありますねということだと思うのです。  もう一つ、12頁は脳・心臓疾患、精神障害に係る労災状況がずっと書かれていますし、 10頁、11頁ではうつと労働時間の関係などが記載されていますが、結果的にこの統計は、 やはり時間外労働が長くなると、脳疾患、うつなどになりますねということは、誰が見 たって否定できない事実だと思います。私は、この長い労働時間は何とか改善しなけれ ばならないのではないですか、という濃いメッセージを出しているのだと思うのです。  今回、労働時間を考えるときに、365日という年単位で考えるのか、それとも週単位 で考えていくのか、与えられた時間というのは365×24しかないわけですよね。その時 間を仕事と自分の睡眠時間と家族の生活というものに対して、どうやって振り分けてい くのかという議論を、労使は真摯にしなければならないと思います。我が国の企業が国 際競争において一生懸命努力しているというのは、私もよくわかります。日本の経営者 は、本当によく頑張っていると思うのです。でも、企業の中で働いている、会社で働い ている労働者は、企業だけのための人ではないわけです。我が国の財産なのですよ。こ の財産は8時間睡眠したら、朝またちゃんと働けるような状態に戻るということが必要 なのです。その時間の分け方を年で考えるのか、1日で考えるのか、週で考えるのかと いう割振りの議論だと思うのです。  だから、私はお互いにこの現実はしっかり双方で認識しながら、いまの基準法で対応 できるのかどうなのか。私は基準法がきちんと守られていれば、このように過労自殺や うつなどは起きてこなかったし、家庭が崩壊してきたり、子供の問題が言われたり、女 の人が子供を産まなくなったりということはないのだと思うのです。だから、とにかく 労働時間とそれらの問題について、どうバランスをとるかということについて、議論を きちんとすることが私たちに与えられた任務ではないかと。  前回も言いましたが、私はみんなが健康で、かつ企業も我が国の中で発展して、企業 の業績が上がれば、むろん労働者に分配されてくるわけですから、それは労働者にとっ ても良いことです。だからといって、24時間あるうち全部働けと言ったら、これは奴隷 的な働き方としか言いようがないですよ。24時間をどのように割っていくのか。365× 24をどう割っていくのかというのを、時間と年休で考えてみましょうと、私はまずここ の認識は共通させておくことが必要なのではないかと思います。その上で、現行法の問 題点は何なのかということについても考えなければいけないのではないか。  企業の置かれている状況は、非常によく理解しています。しかし、私たちは一方で労 働組合ですから、日々うつになったり、本当は2人目だって3人目だって子供を産みた いのですが、このままでは産めないと言って、1人でもうやめたという人たちの話とか、 いつもお母さんと子供だけでご飯を食べているという人たちの声を聞くわけですよね。 それらに対して、どのような方向を示すのかということが大変重要だと思います。 ○平山委員 仕事と生活の調和を求めるというのは、労と使でそんなに違っていること はないと思うのです。やはり調和を求めていく。では、どういう形で求めていくかとい うことだと思います。この前、春期交渉をやりましたが、例えば我々の所の年休、これ は制度ではなくて取得自体を増やす努力をしてくれ、あるいは半日年休を倍増してくれ などという要求がきて、これは全部聞きました。これは別に経営側と従業員が相対して、 言われたからやるとかいうことで、取るとか取らないということでやっているわけでは なくて、やはり従業員の意向・意思・価値観がある。それを判断しながら、応えようと いうことをやっているわけです。  やはり年休取得も少ないといって組合から取得率向上を要請されているわけですが、 いろいろな工夫はしてきて、例えば半日年休はいままで年間12回やっていましたが、今 度は24回に倍増します。なぜやるか。12回が、仕事と取得のバランスがきちんととれ ながら、これを倍増したってそのバランスがちゃんととれるというのを確認した上でや っている。  先ほどのお金に変えたらどうだという話ですが、これは絶対勘弁してほしいと思って いるのです。我々の所は福祉休暇制度というのを持っていて、年休を取得できなかった ら、ある限度、年間50日までは使える休暇制度を10何年前に作りました。これを使う のはすごく制限していて、本人の病気と家族の病気しか使ったら駄目と、5日以上とし ているのです。ただ、それでも年間に個人ベースで300人ぐらいはこれを使っています。 すごく役に立っている仕組みになっています。これは1年当たり5日しか積み立てられ ないので、50日積むのに10年かかりますが、今度はこれを子の育児まで広げようと。 もっと早くやってもよかったかもしれないのですが、そのようなことをやる。これは労 働組合からの要求もありますが、従業員と会社の間のニーズが合っている、こういうこ とでやる。いろいろな工夫の仕方はあるのだろうと思うのです。  私は前回出ませんでしたので、この資料だけ見ましたが、この研究会の報告を見させ ていただいて、法制ということで本当にこんなことまで議論するのかなと。正直言って、 例えば会社の労務管理屋とか労働組合というのはどこに行ったんだ、みたいな感じはし ます。特に年休のところで言えば、工夫のしようというのは、この前、時短促進法から 法律を変えていく、ガイド法を作ろうという話で、これから指針も出るということです が、そういう中でできるだけ具体的な事例のガイドをどうできるか。もっと先進的な例 が、企業としては現実に日本の中には先生がいっぱいいると思います。我々もそれを学 びながらやっているところがあります。そういう中で、こういうことを法制化しようと いう前に、やれることが日本の中に随分あるのではないか。先進事例があるのではない かと思います。これが一つです。  それと、長時間労働がいいのだとか、不払残業がいいのだということを誰も言っては いないと思っています。それはきちんとした就業規則の中で、きちんと働いてもらう。 仕事のやりがいというのは、従業員はいまほとんどの会社が気持をモニタリングしてい ると思うのです。やはり仕事のやりがいは、すごく求めています。そういう仕事の与え 方というのは、相当に気を使うという言い方はおかしいのですが、意識しながらマネジ メントはしている会社が随分増えていると思います。そうでなければ、会社は業績だけ で評価されているということではないと思います。最近の若い人の価値観からすると、 会社を評価するという面も高くなっている。法律にもとるようなことは、基本的にはや らないというのが大原則。ただし、これから先を考えたときに、仕事と生活の調和とい うこともさることながらもっと大事なことがあると思うのです。やはりこの日本の中で 働く場所があるのだ、というのが大前提だと思います。  先ほどの決まった仕事に対しては決まった人がちゃんといるべきだ、これはそのとお りです。だけど、マーケットは国境を越えたマーケットで、いろいろなことが短期的に 起こって、どんどん変わってきます。ドーンと需要が落ちたり、ドーンと上がったり、 供給サイドの事情もものすごく変わる。そういう中で事業をやって、働く場所をきちん と確保しながら、従業員にもちゃんと働く場所をなくさないようにする。雇用の確保と いうことよりは、本当にいちばん力を持った仕事で働ける場所をどうやってなくさない かというのは、すごく大事なのだと思うのです。  確かに先ほど奥谷委員が、サービス産業が知的だと言われていましたが、この10数年 は、世界の中で生き残るためにどうしようというのを随分追求してきた時期だったので す。そのとき、世界の中で勝ち残るために、自分がいちばん得意な職場を離れた人はも のすごく多い。すごい合理化をやってきました。という中で今があるということなので すが、ただ収益を上げればいいということだけを求めているのではないのだろうと思い ます。働く場所をきちんとこの国で維持するのだと。供給サイドの事情もすごく変わっ ていますから、世界的に変わっているので、やはり国際競争力という視点を抜いてもの を考えるということ、これはできないですね。企業が存立するというのは、収益を上げ る、上げないというのではなくて、働く場所がきちんとあるということ、そういう中で、 その力は絶対なくしてはいけないというのが大前提だと思います。それもきちんと踏ま えていただいて、こういう議論をするというのが、いちばん根っこにあるのだと思いま す。 ○奥谷委員 先ほど審議官がおっしゃったように、労働基準法は昭和22年にできている わけですね。古すぎるというか、50年以上経っているわけですよね。それがそのまま、 いまなおあること自体が、やはりこれは根底から見直さないと、昭和22年というころは 先ほど言った国際競争力というか、そういった時代ではなかったわけですし、むしろ経 営者が悪で労働者が善という、労働者保護という立場で作られた労働基準法だと思うの です。いま、いかに労使が対等になっていくかという時代の中で、さまざまな部分で、 基準法自体がもう時代遅れになってきていると。これを変えていかない限り、この根底 がガーンとある限りは、いくら労使がどうのこうのと、例えばいろいろな企業をどうの こうの作っても、労働基準法の基本が変わらない限りは、何も新しいものができないと いうことだと思います。 ○新田委員 どこが不具合なのですか。日本の労働基準法は、労働者にとって世界の中 で飛び抜けて良い条件でしょうか。ごく普通ですよね。根底から変えなければいけない というのは、何をどう変えようと考えておられるのか、というのを聞かせていただけま すか。 ○奥谷委員 まず、今回の罰則を強化するとか何とかというようなこと、むしろ労使協 約で、さまざまな企業、いろいろなやり方も含めて、それぞれさまざまな形態があるわ けです。個人も含めて、企業も個別になって競争している時代になってきて、そこで全 員一致で、こうあるべき論で括られてしまうこと自体が時代に合わないということです よ。ですから、個別の企業及び個人という部分で、どうやって労使が契約していくなり 何なりという部分ですね。組合の団体と企業もあるでしょうし、また個人と企業という 契約もあるでしょう。ですから、いろいろさまざまな形態というか、多様化というか、 そういった時代の流れに即していないというのが、基本的に労働基準法があるというこ とですよ。 ○岩出委員 論点整理の2頁の時間外・休日労働の(1)の代償休日の話ですが、これ自体 のこととは若干違うのですが、現在たしか時短マニュアルの一環として、代休清算とい うのですか、そういうのは違法ではないということで、推奨されているのではないかと 思っているのです。それが言ってみれば、時短により労働者に休日を与えて、健康を回 復させるという側面と、片方で経営者に対してのコスト削減というのですか、その要請 が2つ調和できる、1つの制度だと思うのです。そういう意味で、単に義務付けだけで はなくて、片方でそういった代休清算を進める。  そのときのネックは、実際には賃金の全額払の中で清算できない場合が多いのです。 そこで、ちょっとずらして、翌月でもできるとか何か柔軟性をもたせていただくと、実 効性も高まるし、労働者も休めるし、使用者も賃金コストのアップを抑えられるといっ た効果が出てくるのだと思っているのですが、その辺の検討はどこかでなされたことは ないでしょうか。現行法では、賃金は全額払の中でやらないと違法になってしまうので すよね。賃金不払いになってしまうわけですよね。代休清算というのは、翌月繰り越し てしまえば、結局、実際問題忙しいと、その月内では代休も取れない、清算もできない という形で、現実に使われないということになってしまっているのだと思うのです。意 味はわかりますか。 ○大西監督課長 いわゆる代償休日と書いてある制度について、賃金支払いを後ろに遅 らせて、取らせてもいいということですね。そういうことも、もちろんあり得ると思い ますし、具体的な制度設計のお話も入っていると思いますので、やはり分科会の場で、 今後さらに議論をしていただければありがたいと考えております。 ○岩出委員 実態を言うと、現行法で違法なはずなのですが、行われている所が結構あ るのです。それはいま制度的保障がないから、真っ黒でやっているのですが、現実には 結構普及していて、ちゃんと合法化してもらえれば使えるのではないかと思っているの ですが、そういうのを垣間見ているものですから。 ○松井審議官 後れ馳せながら、先ほど奥谷委員が言われた点です。またこれは法律の 説明で恐縮なのですが、基準法は通説として憲法27条に基づいているというように言っ ています。27条にどう書いてあるかといいますと、特に2項なのですが、「賃金、就業 時間、休息、その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という憲法の命 令があって基準法ができているとなっております。基準法の中で、いま言われた精神の ようなことが1条、2条辺りに書いてあるのです。まさに根本的な話ですね。まずそこ で1条は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきも のでなければならない」という精神を謳って、2項で「この法律で定める労働条件の基 準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この法律を理由として労働条件を低 下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と あります。いま言われたように、例えばこの考え方がもっと多様化しているのだから、 こういったものを根本的に直せというのか、あるいはこういう考え方の下で施行されて いるいろいろな条文について、いま法違反がたくさんあるという状況がもう一方である わけです。そういう状況の中で、どのように整理するかを大いに議論していただきたい と思うのです。ですから、言われたあるべき姿、将来像をにらんで、どういう組合わせ をするかということが本当に必要になってきているという認識でおりますので、その辺 をもう少し踏まえてやっていきたい。 ○西村分科会長 残されたテーマは4頁以下に3、4、5とありますので、その点につ いて何か御意見等がありますか。 ○岩出委員 4頁のフレックスタイムです。ある所で書いたこともあるのですが、特定 の曜日に限っては部分的フレックスタイムという逆のほうで、フレックスタイムをある 特定の日に逆に解除して、固定制にするとか、一定の要件の下で、そういうのは現在で きなくなっているはずなのですが、その辺を柔軟に制度化すると、もっと活用できるの ではないか。例えば一定の時期だけは、固定的にちゃんと来てほしいとか、会議がある とか、ありますよね。一応コアタイムでカバーできる部分もあるのですが、単純フレッ クスというのもありますし、そういったいわゆる部分的解除、例外的解除などというの を、恣意的にやってはまずいと思うので、一定の要件をかぶせた上で導入したらどうか と考えておりますが、その辺も検討いただければと思っています。 ○原川委員 ちょっとタイミングが遅くなりましたが、中小企業の平均残業時間につい て、調査したデータを御披露したいと思います。私どもは毎年、約5万企業ぐらいを対 象に労働事情実態調査をやっており、大体2万企業ぐらいが回答してくる。そのうちの 6割、3分の2が30人未満の中小・零細企業という回答の調査なのです。月当たりの平 均残業の時間を見ると、平成16年4月1日の調査では、残業0時間が33.1%で、これ が3分の1を占めます。1時間から10時間未満が27.1%。したがって、これを足せば 10時間以下が6割という結果になります。  16頁の前回の「労働時間に関する現状」という資料の16頁と比較をしてみると、こ れは法定時間外労働の実態で、平均が大体15時間となっていますが、私どもの調査では 平均は9.26時間ということです。業種によっても違うのですが、いま全体の合計を申し 上げており、20時間以上は全体の20.1%、これは事業所ベースです。ただ、業種で、例 えば金属・銅製品、機械・器具といったものづくり系統は、やはり国際競争が激しいと いうこともありますし、また中小企業の場合には下請が多いということもあり、この20 時間以上が機械・器具製造業の場合には42.4%、金属・銅製造業の場合には34.5%を占 めるということです。この点の業種、あとは情報通信、IT関係は20時間以上が48.9%、 運輸が43.9%という高い比率の業種もあります。  先ほどから聞いていると、仕事と家庭、あるいは生活の調和ということが非常に重要 だとは認識しております。現に我々はいま厚生労働省に協力して、次世代育成支援対策 のガイドブックなどを作っていて、そういうところで仕事と生活の調和ということの普 及を始めて、1年ぐらい経つところです。それぞれ一生懸命やっているのですが、中小 企業の反応としては、中小企業まで、底の底までは景気の回復はまだ行き渡っていない ということ、あるいは地域のばらつきもありますし、業種のばらつきもある。同じ地域 や業種や規模でも、二極化していると。そのようないろいろな条件があって、理念はわ かるのですが、現在の雇用を維持するので精一杯だという声も多く聞こえてくるわけで す。  私どものほうは、先ほど平山委員がおっしゃいましたように、法律で何でもかんでも 規制するということは賛成できないと考えており、現実に少し時間がかかっても、地道 に仕事と生活のバランスというものをとるような環境整備をしていきましょう、という ことを呼びかけているのであって、現実を踏まえて行っていくことが非常に重要である と思っています。それを法律で一律に画一的に規定して規制して、それが守られなけれ ば重い罰則をかけるというのは、それには賛成できないと考えております。以上です。 ○八野委員 いまずっとお話をお伺いしていて、よくこういう場面で、日本の経済を考 えるときに国際競争力という言葉が出てきます。それはこの15年間、労使ともにかなり 苦しい思いをしながら、いま景気回復の入口に立ってきたというところはあると思いま す。それをやるために、経済的な規制、または会社法や商法などを含めてかなりの規制 緩和をやりながら、そういうものを行ってきているところも実はある。それと金融面で のいろいろな緩和措置などもやってきた。それは日本の経済を引き上げるための策とし てやってきたことです。  そういうところで、今度は労働というところから見ていけば、先ほど雇用の場という こともありましたが、労働事情はこの15年間の中で、かなり様変わりをしてきていると いうことは言えるのではないかと思います。確かに、いわゆる非典型と言われている人 たちも、ここまで増えてきましたし、そういう雇用形態の構造もある。ここで見てきた、 いわゆる労働時間に絡む年休の問題であるとか、時間外の問題であるとか、または先ほ どの36協定の違反の件数であるなどということも、かなり増加傾向にあるのではないか。 それと労使という対等の立場で話し合える場があるところは、先ほどお話があったよう に、労使の中で話合いをしながら、さまざまな工夫をやっていくことはできるだろう。  ここで決めていくのは、先ほどから出ているように、法律というもので決めていくと きに、我々日本で働く労働者のミニマム基準というのは、どういうものを持っていくべ きなのかというところを見ていく必要があるのではないでしょうか。そういうときに、 年休の計画的な付与、または時間外の割増率の問題などの問題の提起もある。中小の職 場や労働組合がない所も非常に多くあるわけなので、そういう職場の労働者も含めて、 労働条件というものをどうしていくのかということを考えていく必要があります。  私の組織は20万そこそこの組織ですが、そこの中で大型共済という給付をやる制度が あります。月に2回ほどチェックをしなくてはいけなくて、必ず月に1回、自殺という ものが出てくる。これは本人だけではなくて、ご家族の中にも出てくる。理由はいろい ろ、確かに長時間労働だけが問題になっているのではありませんが、やはり労働時間と いうものは非常に重要な要素になる。それについて、いままで問題があるのであるから、 それをクリアにするためにどうするのか。労使の中だけで、進んでいる所はいろいろな ことが話されて、そのような職場だけが良くなっていっていいのかどうか。法律という ミニマムのところにどこまで盛り込めるのか。いまのままでは駄目だと思うのですが、 どこまで盛り込んでいくのかということを考えていく必要があるのではないか。いまの お話をずっと聞いていて、そのように思いました。 ○山下委員 提案なのですが、この資料のつくり込みもそうなのですが、意外と違反を している悪い部分とか、ほとんどのデータが平均値という形でしか示されていないとい うのがあるかと思います。企業の形態もここまで多様化し、いろいろな意味で競争力等、 労働の形態、ワークライフバランスに関する考え方、いろいろなものが多様になってき ているので、企業の中でもそういうものに対して、うまく対応している企業と、そうで ない企業がある。すなわち、そこもすごく多様化していると思うのです。そこで悪い現 象も起こっていると思いますが、同時にいわゆる競争力を高めるという意味でも、うま く対応している企業もたくさんあると思います。  ですので、平均値とか悪い方面だけでものを見るのではなく、例えば先ほどの平山委 員のような例もありますし、企業として、いまどのように対応しているのか、もしくは 過去こういう状況があったけれども、それにこのように対応したので、いま残業時間、 もしくは労働時間が減りました、というような企業もあると思うのです。厚労省のほう で、そういう企業を把握されているのであれば、そういう企業のケーススタディみたい な形で紹介していただく、もしくはこういう場にそういう企業に来ていただいて、プレ ゼンテーションしていただくなど、一つの事例を見てやり方を具体的に考えていくとい うことも、一つの方法としてあるのではないかと思います。あと、この議論にどのぐら い時間をかけられるかというスケジュールもあると思いますが、いまは平均値だけで現 象を全部捉えられるような時代ではないと思います。 ○西村分科会長 先ほど紀陸委員から、5頁以降はまだ先の話であるという話があった のですが、どうぞ。 ○紀陸委員 基本的に「労働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されるこ とがふさわしい労働者」、これは我々はウェルカムで、是非ともお願いしたいと思ってお ります。6頁の2番目で、「労働者本人が同意していること」。これは私の私見ですが、 仕事の性格などというものが、裁量的な内容、賃金レベルが高いとか、客観的な条件を 前提にしている制度であるので、個人の同意は本当に必要なのかどうかという点が、ち ょっと問題ではないかと思うのです。いわば管理・監督職に準ずるレベルを考えている わけですので、そうした場合に、本人がイエスだとかノーだとかいうことが、制度の同 意の要件になり得るのかどうか。ここは本当にこういうことを要素にしていいのかどう か、疑念があるところなのですね。 ○平山委員 同じ4の件についてですが、いま紀陸委員から話があった点で、時間と成 果の量り方、それをどう処遇に反映させればいいのか、本人の意思など、確かにそれは どういう仕組みの中でやっていくかということはあるかもしれませんが、基本的に時間 制約を受けない労働の仕方、こういう働き方をする人がいるということが必要なのかど うか、ということはあると思うのです。国際的に見て、いろいろな物材の供給構造がも のすごく変わってきていますから、先ほど奥谷委員が製造業は時間で測れるけれど、と 言われましたが、申し訳ないのですが、いまの日本の製造業というのはそれでは生きて いけませんので、これは知的労働で生きています。  例えば鉄鋼業で言うと、中国は最新鋭の設備を持っています。日本の4倍の能力を持 って、3.5倍ぐらいの物を作っています。中国と同じ働き方で、同じ物を作っていれば、 もう日本の鉄鋼業は完全に駆逐されています。これはたぶん現実の問題としてあります。 いま需給バランスがタイトだからあれですが、崩れ始めれば即。ただし、間違いなく日 本の鉄鋼は世界のほかの国が絶対作れない物を、たくさん作っている。これは知的労働 なのです。商品を研究し、開発し、世界最先端の品物を出して、それがいろいろな消費 材に加工されて、世界最先端で、その業界も競争力があるということで生き残っている。 生き残ってきたし、いまも中国は3倍、4倍作ろうが、力はまだこちらが持っています。 これはやはり知的労働で、競争力を持って、働く場所、関連企業群まで含めてたくさん の人の働く場所を確保してきています。時間だけで測れない知的労働が、日本で働く場 所を創り維持しているのは現実の問題です。  そういう意味で言えば、処遇と働き方の関係だけでこれを論じるということではない と思います。いろいろな評価の仕方をしたり、納得性というときに、そういう形という のはあるかもしれないのですが、そもそもそういう働き方が必要な供給構造というのは、 たぶん10年前とはおおよそ違う、いろいろな物材の供給構造が変わってきています。中 国と競争しなさいと言われたら、同じ品物では日本は競争できません。労務費などは圧 倒的に違います。そういう国際競争をしている部分というのが、いま日本の産業にいっ ぱいあるということです。たぶんそれは知的労働でリードしているから、日本で働く場 所を持っているということだと思います。この議論は、そういう観点からも、労働時間 管理や労使の関係などということだけで論ずるのではなくて、根っこのところをどう踏 まえるかというのはすごく大事な点だと思います。 ○渡邊佳英委員 先ほどの労働基準法の昭和22年という論議ですが、そのころの労働は 1次・2次が6割・7割で、サービス産業は3割ぐらいだったと思うのです。そういう ときの労働基準法というのは、やはり時間管理という形でやっていけばいいと思うので すが、先ほど平山委員が言ったように、知的労働というのが非常に増えてきている。そ ういうときに、時間管理の人と知的労働というのを分けていかなくてはいけない、とい うのが私としての意見ですし、特にこの数年というか、10年ぐらいですね、携帯電話と インターネットの普及は働き方を全く変えていますよね。例えば私のこの携帯電話でも、 マナーモードになっているからあまりビービー言わないですが、年がら年中メールから 何から入ってきているわけですね。ですから、もう会社にいて働くというのではないの です。どこにいたって働かなくてはいけないような時代になってきている。そういうと きに、いわゆる時間労働者と、いわゆる知的労働者をどのように管理するかということ を真剣に考えていかないと、働き方もいままでと全く違っていますので、その辺のとこ ろは是非みんなで論議していきたいと思っています。  特に新しい労働時間法制というのは、我々としてもうまい使い方をすれば、中小企業 で使えると思いますので、そういう面ではいいのですが、それに年収要件というのが入 っているのです。これは大企業と中小企業と、ものすごい年収が違ってしまうわけです から、そのような年収要件というのは若干無理があるのではないか、というのが私の個 人的な意見です。以上です。 ○岩出委員 戻ってしまうのですが、先ほどちょっと言いましたが、4頁の3のフレッ クスタイムです。実は現行のフレックスタイムでは、始業及び終業、両方が自由だとい うことになっているわけですが、現実的には後ろはまあいいやという感じで、立ち上が りは一斉にしたいという会社があるわけです。まだ、それにできないわけです。コアタ イムを調整すればできるのでしょうけれども、そういう意味ではフレックスタイムの要 件をもうちょっと緩和しても、それなりの技術的な運営ができて、導入もしやすいかな という印象を持っているのが一点です。  それから、年次有給休暇の(1)、「一定の日数を与える」、これは使用者側が与えるわけ ですよね。最近、退職のときにまとまって60日、40日ぐらい取って困ってしまう、と いう相談がよく来るのですが、それはいままで消化していなかったから悪いのだと言っ ているのです。そういうことは積極的に会社側のほうのイニシアチブで、繁忙期がある 企業に限ってでしょうけれども、どちらかというと暇なときに取ってもらうということ で、積極的に休ませるという意味では、使用者側にとっても有益だし、労働者にとって もちゃんと確実に休暇が取れるという二重の効果があると思うので、私は賛成だと思い ますので、検討いただきたいと思います。 ○小山委員 先ほど紀陸委員から、5頁の4の「自律的に働き、かつ、労働時間の長短 ではなく」という、この新しい制度についてウェルカムだというお話がありました。お 聞きしたいのは、前々回もこの問題点を申し上げたのですが、経営側にとって、この制 度がなぜ良いのか。もちろん、それがまた労働者のためにも良いのだ、というお考えで なければならないだろうと思っているのですが、前回のとき、日本が国際競争に勝って いくためには、やはりこういう制度を入れなければいけないのだということもおっしゃ った。それはなぜなのかというところをお聞きしたいのです。  一つは、そういう「労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることが ふさわしい労働者」、そういう本当に自律的に働く労働者の働き方というのが、国際的な 競争力を高めるのだという意味合いなのか、あるいはコストの問題で、人件費コストと して残業代を過剰に払っていると、労務費コストが高くなり国際競争に負けてしまうと いう観点なのか、あるいは違う意味合いがあるのか。そこのところを是非お伺いしたい と思うのです。 ○紀陸委員 例え話で話せば、エジソンの知人が息子さんを連れてきて、「我が息子に人 生の指針を教えてくれ」と言ったのです。エジソンいわく、「時計を見るな」。結局、そ れは要するに一生懸命何かやるときに、時間ばかり気にしていて、メシの時間だから帰 りましょうとか、そういうことでは個人の能力レベルは全然上がらないと、そういう話 ですよね。私どもも、先ほど平山委員が言われたように、日本で企業も個人もレベルを 上げていくときに、どういう働き方をしたらいいのか。決して残業代を払わないように、 それでコストの抑制を図るということではなくて、いろいろな仕事が出てきている中で、 自分で働き方の管理ができるような内容については、いわゆる8時間労働の規制でなく ていいだろう。ただそれだけの話なのです。めったやたらにこういうのがどんどん広が るとも思っていませんし、そういうことが必要な仕事、あるいはそれができる条件の人 については、8時間ということから解放してもいいのではないか、ただそれだけの話な のです。  そのほかに、先ほど長谷川委員が何の理由でこの基準法改正の議論をするかというこ とを言われましたが、私どもとしては経営側の皆さんがいろいろ述べられているように、 完全に競争条件が前と違っているわけですよね。個人のレベルも上げなければいけない ということが、まずあります。しかも、これがずっと生涯続くということではなくて、 仕事の内容によって、という限定が付いているわけですね。それだけ個々人のレベルア ップが必要な時期というのもあるでしょうし、仕事の性格によって、それが求められる ものもある。その条件に合う場合だけ、一律的な管理から外すというだけの話で、その 他の問題を全部見切っているという話ではありません。  悪いところはきちんと管理していかなければいけないし、健康管理も確かに必要だと 思っています。でも、それは我が社のこういう仕事については、こういうことでやりた いということを認めていかないと、具合が悪い社会になっているのではないかという話 なのです。だから、その部分にだけ法改正の風穴を開けていただければいいという話で、 ただそれだけで、あまり大げさに考えていただかなくてもいいのではないかと思ってい ます。 ○長谷川委員 重大なことです。 ○紀陸委員 さりげなく変えてきてしまえばいいかなと。 ○石塚委員 小山委員に成り代わりまして、反論ではありませんが、いろいろな議論を するときにやや誤解があるのではないかと。私は製造業でありますし、ブルーカラーワ ーカーの組合の出身の人間です。先ほどの議論の中で、時間管理をしている労働者と知 的労働者という区分をお聞きしましたが、私たちはそんな感覚は全くないのです。とい うのは、先ほどたまたま平山委員が鉄鋼業の出身でありますから、ケーススタディ的に おっしゃっていましたが、時間管理をきちんとしながら、その中でいかに創造的に働く のか、物をつくり込んでいくのか、品質をやっていくのか、ということでは中国に太刀 打ちできるはずがないのです。だから、形式的時間で管理するとかしないではなくて、 少なくとも日本のものづくり産業の中核にいる人間は、ブルーカラーだろうが、ホワイ トカラーワーカーだろうが、自分の知的熟練をもって、まさに知的労働としてやってい るつもりなわけであります。であるがゆえに、中国に真似できない高付加価値製品を持 ってやっているわけです。しかも、それを単に時間がきたから、「はい、帰ります」とい うことではないのです。いかに創造的にそれをやっていくかということで、私としては 日本の製造業はおそらくそこで国際競争力というのが担保できているのではないかと思 っています。  ですから、これはこれからの議論でやっていくと思いますが、時間管理労働者と知的 熟練労働者を分けるなどという考え方、私としてはそもそもその考え方自身が極めてお かしい。まさにそれは時間管理する、しないというのはある意味では形式な話になりま すので、根っこのところはまさにそこの議論をやった上で、本当に何が必要なのか。そ こをまず議論していただかないと、物事を立てる基本的な角度が間違ってしまっている のだと思います。それが一点目です。  もう一つは、5頁の4の(1)に書いてありますが、4つ目の議論の出発点が(1)の3行か ら始まっているのです。「仕事を通じたより一層の自己実現や能力」云々、「自律的に働 き、かつ、労働時間の長短ではなく成果などに」云々、「労働者が存在する」、ここから すべてが始まっているわけです。私が現場にいる実感としての話は先ほど言ったとおり ですが、本当にこれが存在するというように言えるのかどうか。研究会報告では、傍証 として、資料の例示はいわゆる裁量労働者の意識調査を持ってきてやっていますよね。 企画業務型裁量制にしても、専門業務型裁量制にしても、我が国において現に入ってい る領域は、すごく低い割合にしかすぎません。その中における意識を取り上げてきてみ て、もっと時間に縛られないものがあったように言っているわけですが、これは少し無 理があるのではないかと。もう少し客観的に本当にこれが要るのか、存在するというこ とをまず証明というか、示してもらわないと、議論に入れないのではないかと私として は思っています。これは意見です。 ○平山委員 同じ業界で申し訳ないのですが、彼が言った知的であるかどうか、この言 葉遣いは彼が言ったとおりですから、私が先ほど言ったことは誤解がないようにしてい ただきたいと思います。ただし、はっきりしているのは仕事の質で、その人というわけ ではありません。その人ではなくて仕事の質で、時間管理で仕事と人がマッチングして いる部分と、仕事と人が時間管理ではないほうが、はるかに成果が。本人に委ねて、例 えばもちろん業務の指示はしますよ。何か月、あるいは何週間で、これを解きなさい、 これを開発しなさい、チームを組みなさい、あなた1人でやりなさいと。ただし、時間 管理ということは、先ほどどなたかが言われましたが、基本はやはり下命ですよね。あ るいは、きちんと把握することですよね。ということを外れて、ある期間の中に集中し てということは、別に研究や開発などに限らず、営業部隊であろうが、企画部隊であろ うが、いろいろなところでそういうポジションに立つ仕事があるということです。たぶ んそれはいちばん成果として、これは処遇のための成果であって、本当の目的に向かう 結果を出すという意味では、本人にその裁量を任せて、時間管理から外れて、ある時期 は没頭してもらうということが成果を生むと、こういう仕事は間違いなくあります。 ○田島委員 平山委員や紀陸委員がおっしゃった内容で、日本ではやはり裁量労働制と いうのがあるわけです。お二人がおっしゃられたのは、裁量労働制で十分だろうと思う し、裁量労働制ではなくて、適用除外にしなければいけない理由には全くならないと思 うのです。なぜ適用除外が必要なのかということについては、私は全然説明にはなって いないと思うのですが、いかがですか。いまおっしゃられたのは、裁量労働制で十分だ ろうと思いますが。  しかも、裁量労働制に関して言わせてもらえば、今日資料は出ていませんが、今田さ んがおられる労働政策研究・研修機構が最近ホームページで、裁量労働制について、実 際のデータを見たら、実際のほうがみなし労働時間より長く働いているとか、本当に自 分たち自身がきちんと処遇されているのかという疑問も出ているというデータも出てい るわけです。そうすると、穿った見方をすれば、小山委員が言ったように、結果として は時間外手当のカットにしかつながらないことになるのではないかと思うのです。その 点でも、やはりなぜ新たな制度として導入しなければいけないのかというのは、ちょっ とわからないですね。 ○平山委員 これは私の間違いがあるかもしれませんが、裁量労働は、基本的には大き くは労働時間管理が根っこにあった上での仕組みだと思います。いまの御質問はそうい うことですよね。 ○田島委員 したがって、いまの制度では、時間の枠がはめられていなくて、自分の裁 量で柔軟な働き方ができるはずなのです。単に8時〜5時の勤務ですよということでは ないので、いまの裁量労働制で、おっしゃられたことについては、きちんと充当してい るのではないかと思うのです。これは意見です。 ○谷川委員 いまのことについて、私も意見なのですが、結局これは軸足をどちらに置 くかなのだろうと思うのです。やはり労働者というのは、時間管理をするというすべて の基準の中から見ていくのですか、あるいはこの趣旨に書いてあるような、仕事を通じ たことによって、一層の自己実現能力を発揮というのは、もうほとんどの働く人たちは そういう気持で仕事をしているだろうと思っているのです。  しかし、それでもその中でなおかつ、時間管理があって、成果と能力の伸長が比較的 管理をしやすい人たちもいますね。もしかすると、そうでない人がかなり増えてきてい るのでしょうね、あるいはその境界上にいる人がかなり増えてきているのではないでし ょうかね、という感じはするのです。ですから、私はそういういまの労働実態に合った、 もう少し自主管理ができるような幅を広げてはどうでしょうかという感じなのです。 ○長谷川委員 先ほどから言っているのですが、労使でその軸足が揃っていないのです よ。だから、中身に入る前に、やはりここのところをきちんとしないといけない。私は もう一つ、使用者の皆さんに聞きたいのですが、ここにいらっしゃる皆さんの会社は立 派な会社だと思うのですね。だから、おそらく使用者のほうが労働者に対しても、非常 に良好な関係をおつくりになっている。しかし、現実に我が国の企業がみんなそうでは ないわけですね。だから、結果的に本来は労働基準法で、時間外労働については割増賃 金を払いなさいと言ったのに、払わない企業が続々出てきてしまったのです。  それから、メンタルヘルスでは、うつとかそういう人たちがいっぱい出てしまったわ けですね。これは放置できなくなってきて、いま何かしなければいけないということで、 この間の労働安全衛生法の改正があったわけですね。企業の自由に任せてくれと、奥谷 委員などはいつもそうおっしゃるのですが、できるのだったらそれでいいのですよ。で も、実際こういう法律があったって、労働基準法という最低の法律すら守れない所が、 いっぱいあったじゃないですか。それで、私たちに任せてくれって言ったって、それは 違うのではないですかと、これは事実だと思うのです。  だから、労使自治と言われても、労使自治ですべてができて、本当に誰も過労自殺が なくなりましたと、職場の中でうつの人なんかいなくなりました、みんなが生き生きと 働いていますと言って、労災なんか全然なくなってきたら、「そうですね」とみんな言い ますよ。でも、最低基準の労働基準法すら守れないこの実態は何ですかと、ここのとこ ろはきちんと押さえなければいけない。  それから、人間が持っている時間は24時間しかないのですよ。24時間の中で、どれ だけ働くかは、基準法で最低決めましょうということですよ。我が国は法治国家ですか ら、いろいろなルールをみんなで決めましょう、そして守って我が国をちゃんと豊かに していきましょうというので、いっぱい法律がある。労働基準法だけではないですよ。 会社だって、会社法から何からいっぱいあるわけです。  労働基準法ができたのは昭和22年と言いますが、昭和22年のままではないですよ。 労働基準法は何度も法律改正して、もっと言えば、この10年間、基準法は規制緩和して きたわけですよ。だから、昭和22年と一緒だと言われると、冗談じゃないなと。いまま で、この審議会は何をやってきたのかといえば、規制緩和をいっぱいしてきたではない ですか。企画業務型裁量労働制も専門業務型裁量労働制もつくってきたわけでしょう。 特に週40時間としたときに、労働時間法制はかなり変えたんですよ。それで、皆さんが 使いやすいように、やはり企業社会に合うように、随分変えてきたのです。それは労働 側だって、そういうことがわかってきたから、一緒に審議してきたわけですよね。  でも、現実にいま何が起きているのかと言えば、「お父さんが家に帰れない人がいっぱ いいるでしょう。家族と夕ご飯を食べられないお父さんがいっぱいいるじゃないですか。 それ、どうするんですか。その議論をしてください」と。それで、そういうことがもう なくなりました。教育も良くなりました。みんな元気ですとなったら、それはもう労使 自治に全部委ねたっていいのではないですか。私はそう思いますよ。  人間には1日24時間しかないのです。この24時間をどうするかということで、最低 のルールとして8時間労働を守りましょうと。それ以上でも、それ以下でもないですよ。 そのほかに、いっぱい例外があるのではないですか。週40時間、1日8時間以上労働さ せてはならない。ただし、36協定があれば、できることが山のようにあるわけではない ですか。だから、私はちょっと違うのではないですかと言いたいのです。メンタルヘル スとか過労自殺がなくなったら、本当にみんな自由にできるでしょうが、いまは無理で す。 ○西村分科会長 残念ながら、時間がまいりました。前回と今回とで、ざっとした話で すが、労働時間法制について一通り御議論いただいたわけです。また、労働契約法制の 関係についても、労働契約の成立から始まって、最後のところまで一通り見てきたわけ です。そこで、今後さらに検討を深めていただくという観点から、次回の分科会では事 務局に論点を整理していただいたものを用意してもらいたいと思っておりますが、その 点についていかがでしょうか。よろしいでしょうか。そのようにしていただきたいと思 います。 ○小山委員 お願いがあります。先ほどの労働時間の中で、過労死、あるいは脳・心臓 疾患及び精神障害に係る労災補償状況の中で、いわゆる管理・監督職、労働時間の適用 除外になる方は何割ぐらいいらっしゃるのか。そうしたデータを次回、是非教えてくだ さい。 ○西村分科会長 過労死、過労自殺の対象になっている人たちの労働者の分類というこ とですか、そういうことをお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会ですが、4月11日(火)17時から19時まで、 厚生労働省17階専用第21会議室で開催する予定です。どうぞよろしくお願いいたしま す。 ○西村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。本日の議事録の署 名は、八野委員と平山委員にお願いいたします。本日はお忙しい中、ありがとうござい ました。                       (照会先) 労働基準局監督課企画係(内線5423)