06/03/20 第2回「院内感染対策中央会議」議事録            第2回「院内感染対策中央会議」議事録 1.日時   平成18年3月20日(月) 10:00〜12:00 2.場所   厚生労働省専用第16会議室 3.出席者  (構成員)  荒川 宜親、大久保 憲、岡部 信彦、賀来 満夫、               木村  哲、切替 照雄、小林 寛伊、武澤  純 (五十音順、敬称略)        (厚生労働省)谷口医政局指導課長、針田医療計画推進指導官ほか 4.議題   (1) 報告事項 (1) 新型インフルエンザ対策について (2) 医療安全対策について        (2) 院内感染対策サーベイランス事業について        (3) 院内感染対策地域支援ネットワークについて        (4) その他 ○針田医療計画推進指導官 小林先生が遅れておりますが、ただいまから第2回「院内 感染対策中央会議」を開催いたします。最初に、資料の確認をさせていただきます。資 料1「新型インフルエンザ対策について」、資料2「医療安全対策について」、資料3 −1「院内感染対策サーべイランス事業報告(概要)(案)について」、資料3−2 「院内感染対策サーベイランス事業年報・季報(案)」、資料3−3「院内感染対策サ ーベイランス事業年次推移」これは、荒川先生に提出していただいた資料です。議題の 「院内感染対策地域支援ネットワーク」に関する資料は添付しておりませんので、資料 3までとなっております。  本日は、倉田構成員と倉辻構成員が欠席です。小林構成員については若干遅れており ますので後ほどご紹介させていただきます。五十音順にご紹介させていただきます。  国立感染症研究所細菌第二部長の荒川宜親構成員です。東京医療保健大学医療情報学 科科長の大久保憲構成員です。国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦構成 員です。東北大学大学院医学系研究科教授の賀来満夫構成員です。国立国際医療センタ ーエイズ治療・研究開発センター長の木村哲構成員です。国立国際医療センター研究所 感染症制御研究部長の切替照雄構成員です。名古屋大学大学院医学系研究科教授の武澤 純構成員です。  続きまして、開催にあたり指導課長の谷口よりご挨拶を申し上げます。 ○谷口指導課長 指導課長の谷口です。先生方には、早朝からご出席を賜りまして誠に ありがとうございます。また、日ごろから院内感染の諸般につきましては大変ご指導を 賜っておりまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  いまさら申し上げるわけでもありませんけれども、院内感染対策は医療の中で大変大 きなテーマになっております。安全で安心できる医療の確保というのは、私ども厚生労 働省の大きなテーマです。その中の一分野を形づくる大きな柱だと私どもは考えており ます。これまでの取組みとしては、医療機関からの技術的な相談を受け付ける相談窓口 であるとか、医療従事者に対する講習会、また院内感染対策のサーベイランス事業、各 種の院内感染対策の関連施策をこれまでも講じてまいりました。  平成15年の、院内感染対策有識者会議報告書や、第1回中央会議において取りまと めていただきました提言等を踏まえ、今後の対策についてもずっと検討を続けていると ころです。  後ほど田原室長からご説明申し上げますが、国会に医療法の改正という大きなテーマ を出させていただいております。これは、医療提供体制全般に係る問題ですが、その中 で医療安全というのは大きな柱であり、さらにその中でも院内感染対策は大きなテーマ ですので、私どもとしても鋭意取り組んでまいりたいと考えているところです。  本日、お忙しい中ご出席いただきました第2回の会議におきまして、私どもとしまし ては、2つのことを考えております。1つは、今後対策を講じるにあたって必要となる 基礎資料を整備するとともに、ややもすると専門的な形になりがちな院内感染対策サー ベイランスの結果というものを、一般の方にもミスリーディングせずにご理解いただく ために、どのような形での紹介が望ましいのか。いずれホームページに掲載することも 考えておりまので、一般の方々にもちゃんと理解していただけるような形の、ミスリー ディングのない方策をご検討いただけないかということが1つです。  2つ目は医療機関ですけれども、それぞれの地域において院内感染対策について相談 できる体制を構築していただきたいと考えております。モデル的に実施をされている現 在の地域支援ネットワークというものを、今後いかに地域で展開させていくかというこ とについて、できましたら地域の医師の立場に立って、大所高所からご意見をいただけ ればと考えております。  本日、私どもからのお願いといたしましては、この2つのテーマを中心に、是非ご議 論いただきたいと考えております。本日お集まりの専門家の先生方の活発なご議論を通 し、今後の院内感染対策をますます充実していくことを私どもは期待いたしております。 甚だ簡単ではありますけれども、開会の挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろし くお願い申し上げます。 ○針田医療計画推進指導官 以後の進行は小林座長にお願いいたします。 ○小林座長 当院内感染対策中央会議の座長を仰せつかっております小林です。どうぞ よろしくお願いいたします。本日はお忙しい中を朝から恐縮ですが、私は遅れてしまっ て申し訳ありませんでした。皆様方のご協力を賜りまして、実りある円滑な検討を行っ ていきたいと思いますので、どうぞよろしくご協力をお願いいたします。  議事に入ります前に、当検討会の議事や資料の公開等の取扱いに関し、事務局から説 明をお願いいたします。 ○針田医療計画推進指導官 運営につきましてはあらかじめお断り申し上げますが、本 検討会については公開で行い、議事録につきましても、事務局でまとめたものを各構成 員にお目通しいただいた後に、ホームページに公開することとしておりますのでよろし くお願いいたします。 ○小林座長 議事に入ります。本日の進行に関しては、まず事務局から議題に関して説 明していただき、その後でそれぞれの議題に沿って、院内感染対策に関する認識やお考 えなどについて、特に先ほど指導課長からもお話がありました2つの点を中心にしなが ら、各構成員からご意見をいただきつつ議論してまいります。事務局の説明資料に関す る質疑についても、その際にお願いいたします。なお、本日は議題の前に報告が2つあ るということですので、それも含めて事務局からお願いいたします。 ○針田医療計画推進指導官 報告事項として、新型インフルエンザ対策及び医療安全対 策について、それぞれ担当課からご報告させていただきます。まず、新型インフルエン ザ対策について、健康局結核感染症課よりご報告させていただきます。 ○金成国際感染症情報専門官 昨今、報道等でもありますとおり、新型インフルエンザ 対策について、当省としても進めているところです。昨年11月に政府の行動計画とし て、新型インフルエンザ対策行動計画を策定しております。今後発生するかもしれない 新型インフルエンザについて、現在国としてどのようなことを進めているかについて簡 単にご説明させていただきます。  資料の1頁は、「新型インフルエンザ対策行動計画」ということで、11月に行動計画 を策定したときの概要版です。11月14日に、厚生労働省が中心となり、各省庁に関連 する内容を盛り込んだ形で行動計画を策定しております。これについては、まだ総論的 なところもありますが、骨格として国がやるべき内容について項目を指し示したという ものです。その中身の細かいところについては、ガイドライン等を作成するという形で 進めております。  11月14日の策定は、厚生労働省が中心となって行ったところですが、12月の時点で 関係省庁全体の行動計画として位置づけられ、推進されているところです。11月の時 点で閣僚会合があり、政府全体として、この行動計画を基に対策を進めていくこととさ れ、その時点では、厚生労働省となっていたクレジットについても、12月の時点で関 係省庁対策会議のものとして、正式に位置づけが変更されております。  1頁の下のほうに「新型インフルエンザ対策の推進体制」というところにありますよ うに、「鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」、これは14省庁を含む関係省 庁でなる対策会議になりますが、ここで行動計画を推進しているところです。  中身の概要をご説明いたします。5頁を見ますと、フェーズという考え方があります。 WHOで示しているインフルエンザのパンデミックに関するフェーズがあります。段階 としては1から6まで分かれておりますが、フェーズ6というのがパンデミック期とい うことで、世界的に大流行を起こす時期のことをフェーズ6としております。日本は、 基本的に1から6に従って対策を進めていくこととしておりますが、現段階は海外で鳥 からヒトに感染が確認されている時期で、フェーズ3になります。  日本としては、フェーズ1から6という段階にプラスして海外で発生している時期で あるか、日本で発生している時期であるかということで、さらに、フェーズ3A、フェ ーズ3Bという形で分けております。海外で発生している現段階がフェーズ3Aであり、 もし国内で発生した場合にはフェーズ3Bに変わるというように段階をさらに分けてお ります。  1頁に戻りまして、背景等については既に海外の状況等をご存じかと思いますので、 この部分については省略させていただきます。概要の中で、流行規模の推計をしており ます。報道等においても2,500万人という数字をお聞きになったことがあるかと思いま すが、全人口の25%が罹患した場合に、医療機関に受診する数を2,500万人と推計し ております。現在、対策の基として2,500万人という数字を使っております。  特に、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄に関しては、2,500万人という数字を使っ て備蓄を進めています。国と都道府県、あとは流通等になりますが、日本は相当量の流 通がありますので、400万人分程度は流通の中で確保できるだろう、といった推計の下 に最終的に2,500万人分を、平成19年度までを目標に備蓄することを計画しておりま す。  行動計画については80頁ほどになりますが、フェーズごとに政府が行う行動内容を 項目別に挙げております。行動計画の主な内容に書いてありますが、フェーズ3Aであ れば、まず行動計画を策定する、家きん等の対策を行う、タミフル等を備蓄する、ワク チンの鶏卵の確保等を行う、診療体制を整備する等の記載をしております。  このような形で、行動計画の中には実施すべき内容を挙げているわけですが、特に海 外でヒト−ヒトが確認された場合のフェーズ4の段階において何をするかというところ が大きな対策になります。フェーズ4Aは国内非発生でありますが、海外でヒト−ヒト が確認された場合については、感染症法による指定と検疫法の強化、あとはワクチンの 生産開始等を進めていくこととしております。  本日の会議に関連する内容としましては、現在、院内感染対策ガイドライン、診断・ 治療ガイドライン、患者移送ガイドラインを作成中です。7頁から27頁に付けており ますが、これについては昨年12月26日版となっており、まだ(案)の段階です。ただ し、(案)の段階ではありますが、都道府県等にも配布して周知をさせていただいてお ります。  これらは、取り急ぎのものになりますが、いま、専門家の先生たちも含めてご検討い ただいているところです。今後、中身を精査検討し、さらにガイドラインを改訂し、提 示をさせていただきたいと思っております。検討については、大久保先生にもご尽力を いただいているところです。  ガイドラインでは、インフルエンザにおいても空気感染があり得るという考え方で、 院内感染対策について検討を進めております。この検討については、新型インフルエン ザについての専門家会議をつくっておりまして、大久保先生、岡部先生にもご参加いた だいているところです。今後、さらに検討を進めた内容について、随時ご提示させてい ただきたいと思っております。  そのほかには、12月16日に医療の提供体制の確保ということで、29頁から31頁に 当たる内容について周知させていただき、医療機関の方々においては陰圧病棟を持つ施 設で特に積極的にご協力いただきたい、という要請をさせていただいております。簡単 ではありますが、新型インフルエンザ対策の状況についてご報告いたしました。 ○小林座長 ご質問、ご意見はございますか。最後におっしゃっていた、ネガティブプ レッシャーの施設と、個室も結核病棟を含めて非常に限られた数のようですけれども、 それと実際にパンデミックになったときの対応はどのようにお考えになっておられます か。 ○金成国際感染症情報専門官 現在のところフェーズ4、フェーズ5の時点においては 隔離等を考えております。そこで、特に陰圧病床を使っていただくことを考えておりま す。フェーズ6という大流行期においては患者数が相当になりますので、病室隔離とい うことは困難と考えております。基本的には全医療機関で、通常のインフルエンザと同 じような形で診療していただくことを考えております。まず、フェーズ4、フェーズ5 についてはできるだけまん延防止、封じ込めを想定した対策をそこで重点的に行うこと を考えております。 ○武澤構成員 この前のICU学会でも問題になったのですが、4頁のフェーズ6B (国内発生)のタミフルの優先順位ということで、1番が新型インフルエンザの入院患 者、2番が罹患している医療従事者等と書いてあります。病院で実際の患者を診ている 人たちは、罹患していなくても罹患する確率はすごく高いわけです。その方たちが、実 際には重症な肺炎等々を起こした患者を助ける業務に入るわけです。その方たちに予防 薬を投与することは考えていないのでしょうか。  そうであるとすると、もしかするとかなりの医療従事者が、「そんな危険な所に予防 投薬なしでは行けない」と言って診療を拒否する可能性もあると思います。その辺のこ とはどのように考えるのでしょうか。 ○金成国際感染症情報専門官 現段階でフェーズ4、フェーズ5においては、接触のあ った方々に対して予防投与をする、というのは行動計画の中でも書いております。フェ ーズ6においては、確かに医療機関の従事者が接触する機会は多いと思います。そうす ると、投与期間はどうするのかというと、流行している時期はずっと飲み続けていただ くという話になりますので、これは実行上も困難を生じる可能性があると考えておりま す。感染している可能性があった場合に、速やかに飲んでいただくということで考えて おります。 ○武澤構成員 予防投与はしないけれども、ちょっとでも熱が出たらすぐに飲みなさい ということですね。 ○金成国際感染症情報専門官 はい、そうです。 ○武澤構成員 そうですか。ただ、働く医療現場の人はしっくりしないと思います。 ○小林座長 ジョン・ホプキンスのタイでのシミュレーションだと、周辺に早めに封じ 込めのために飲ませる、それによって抑えられるという結果を出しておりますが、その 辺とはちょっと矛盾しますでしょうか。 ○金成国際感染症情報専門官 封じ込めの考え方ですと、フェーズ4、フェーズ5のと きにいかにということですので、その時期については世界全体として封じ込めに協力す るという考え方をしております。フェーズ6というのは、世界的に大流行している時期 ですので、そこの部分だと各国とも予防投与は考えていないというのが基本的なスタン スです。 ○小林座長 フェーズ4、フェーズ5の場合は、いまのICUのような例で、そういう 所へリスキーな患者が入ってくるようであれば、周辺に予防的に投与するというのが基 本的な考え方ですか。 ○金成国際感染症情報専門官 いまWHOの中で、どういう形でやるのが効果的なのか というのを検討しております。また、それがどの地域で発生するかによっても対策が異 なるかと思います。いま、WHOのほうで専門家が集まって随時検討しております。こ の検討結果については今年の早い段階で出てくるかと思っております。 ○小林座長 岡部先生、大久保先生から追加していただくことはありませんか。 ○岡部構成員 フェーズ6になったときの病原性が、フェーズ4、フェーズ5と同じと いうことも言えないわけです。ですから、突然フェーズ6に行ってしまうこともあるけ れども、もしステップがあるならばそれを見ながらの判断もあります。先ほど専門官か ら説明がありましたが、フェーズ6になったらほとんどの人がかかることが前提になる わけなので、そうなると医療関係者に予防投与を全期間やるというのは安全性その他か ら考えれば無理なので、早期治療のほうが優先するだろうというのがいまの議論ではな いかと思います。 ○小林座長 封じ込めがうまくいって、その上でフェーズ6に動いていけば、そこでワ クチンの可能性がかなり出てくるわけですね。 ○岡部構成員 はい。おそらくその優先順位であった人たちが、もしワクチンがあると すれば先にワクチンを打っていただいて、前線に出ざるを得ないという考え方になると 思います。ただ、フェーズ4、フェーズ5の極めて早期の時点では、たぶんワクチンは まず間に合わないでしょうから、そのときは予防投与が優先になると思います。 ○小林座長 大久保先生はよろしいですか。 ○大久保構成員 結構です。 ○小林座長 また何かありましたら後でお願いいたします。続いて2つ目をお願いいた します。 ○田原医療安全推進室長 資料2により、医療安全対策についてご説明いたします。1 頁のように、これまでも、医療安全対策については各種施策を進めてまいりました。2 月10日に、医療法の一部を改正する法律案を提出しております。その中にも、医療安 全対策というのは1つの大きな柱になっておりますのでご説明いたします。  1頁の上にあるように、政府・与党の医療改革協議会により、昨年12月に「医療制 度改革大綱」がまとまりました。国民の医療に対する安心・信頼を確保し、質の高い医 療サービスが適切に受けられる体制を構築するために各種の措置を講ずるということで、 概要が大きく6つあります。1は、患者等への医療に関する情報提供を推進していく。 2は、医療計画制度の見直しを通じた医療機能の分化・連携の推進。3は、地域や診療 科による医師不足の問題への対応。4は医療安全の確保、5は医療従事者の資質向上、 6は医療法人制度改革ということです。基本的には、来年4月1日からの施行としてお ります。  医療安全の確保の部分について個別にご説明いたします。3頁は、医療安全確保の全 体の基本的な考え方等を整理しております。いちばん上の枠の中にあるように、「医療 における安全の確保」、「医療における信頼の確保」という従来の視点に加えて、「医 療の質の向上」という視点を一層重視した医療安全対策を推進することにしております。  右の枠の中が改正内容です。まず患者等からの相談に応じて助言を行う医療安全支援 センターの制度化をする。それから、医療機関の管理者に、医療安全確保を義務付ける。 具体的には、従来から医療機関の管理者に義務付けておりました、安全管理体制を充 実・強化するということ。そして、この会議とも関連の深い院内感染制御体制の充実を 図るというものです。また、医薬品や医療機器の安全管理体制を確保することも入って おります。医療従事者の資質向上とも関係してまいりますけれども、行政処分を受けた 医師等に対して再教育を義務化し、そして安全を確保していこうという考え方がありま す。このほか、国・地方公共団体の責務・役割の明確化を法律の中でいたします。  4頁は、いま申し上げたもののうち、医療機関の管理者に対する体制確保の義務付け になります。右側がその法律の内容になっております。「病院、診療所又は助産所の管 理者は、医療安全を確保するための措置を講じなければならない」と法律上にこのよう な規定を明記することにしております。具体的には厚生労働省令で定めることになって おりまして、その内容として(1)から(3)があります。(2)として院内感染制御体制の整備が 新設されます。  これについて詳しく申し上げます。9頁は、今後の医療安全対策について、医療安全 対策検討会議が設けられていて、その下にワーキンググループを設けて検討を行い、今 後どのような医療安全対策を進めていくべきかをまとめたものです。今回の医療法等の 改正については、この報告書を踏まえ、また社会保障審議会医療部会での議論を踏まえ て法案にしたものです。したがって、中身についてはこの報告書に沿って、これから具 体的に検討するということです。  資料の13頁、報告書の4頁のいちばん下に、当面取り組むべき課題として、医療の 質と安全性の向上という項目の中で、将来像のイメージを整理した上で、当面取り組む べき課題として、13頁から14頁にかけて整理をしております。特に、14頁の(2)医 療機関における院内感染対策の充実ということを謳っております。現在、特定機能病院 に対して専任の院内感染対策を行う者の配置が義務付けられておりますが、これに加え て、病院その他の医療施設(有床診療所、無床診療所、歯科診療所、助産所)といった 所において、院内感染制御体制を整備するという方針にしてはどうかということです。  具体的には、すべての病院等に指針とマニュアルを整備する。院内感染対策に関する 研修を行う。また、感染症の発生動向の院内報告をしてもらい、情報を共有する。その ほか、なお書きのところで、介護老人保健施設等についても、同様な体制を整備するこ とについて検討が行われるべきであるとされています。  それから有床診療所、病院、患者が入院しているような施設については委員会を設け る。また、特定機能病院等の高度な医療を提供する体制については、組織的に院内感染 対策を行う部門を設置する、院内感染対策を行う担当者の配置を順次進める、といった 内容について、当面取り組むべきであるとされております。先ほど申し上げました省令 の検討、それから通知等において、このような具体的な内容を決めてまいりたいと思っ ております。  資料の5頁に、医療安全支援センターの制度化があります。現在は行政指導、通知で 都道府県に設置をお願いしております医療安全支援センターについて、法律に位置づけ るものです。左側の「医療安全支援センターとは」と書いてあるところの業務をご覧下 さい。患者や家族からの苦情・相談への対応、あるいは関係者の連絡調整、あるいは医 療機関に対する情報提供、指導・助言を行うといった業務を、現在実施していただいて おりますが、現状では、法律上の位置づけがなく、機能がはっきりせず、都道府県等で 取組みがいろいろ違っているところです。そのため、今回法律に位置づけ、都道府県、 それから保健所の設置市については医療安全支援センターを設置するよう努める、とい うことで努力義務を課す形にしております。  機能も明確にし、法律に苦情・相談への対応、そして必要に応じて医療機関の管理者 及び患者等に助言をするという機能があるとしております。その他必要な情報の提供や 研修を行うことにしております。医療機関の中で院内感染があるのではないかという状 況で、患者は院内感染かどうかはわからないかもしれませんけれども、少なくとも苦情 については、行政的な立場で相談を受け付ける機能が付与されるということです。  6頁は、医療機能情報の公表制度の創設です。医療機関に関する一定の情報について は、医療機関が都道府県に報告することを義務付けて、それを集約して都道府県が地域 の住民にわかりやすく提供する仕組みを作るというものです。左側の四角に現行制度が ありますように、患者が医療情報を得る手段としては広告等がありますが、見直しの視 点の左下の隅にありますとおり、必要な情報は一律に提供したり、あるいは情報を集約 化したり、あるいは相談・助言機能を充実するということが必要だということで、右の 改正後の制度として、医療機関に「一定の情報」について、都道府県への報告を義務化 し、都道府県ではインターネットで情報を提供していくこととしております。また、医 療安全支援センターにおいても、先ほど申し上げたような相談を受けたり、助言を行っ たりすることとしております。  ちょうど真ん中辺りの点線の枠で囲んでありますように、このような「一定の情報」 はもちろん医療機関でも閲覧を可能とし、直接住民に対して情報提供をするということ です。○の3番目にあるように、患者等からの相談に応ずる必要な措置を行うよう努め なければならない。これは努力義務ですけれども、いわゆる患者相談窓口を医療機関に も置くということで、医療安全支援センターでも、患者への相談に対応する、それから 医療機関でも、そういう措置を行うことを法律位置づけているわけです。  一定の情報については下の枠に書いてあるように、今後検討会で検討する予定です。 このほか行政処分を受けた医療従事者に対して、再教育を行うことにより、医療現場に 復帰する際には、安全についてもきちんと学んだ上で戻っていただくという改正を予定 しております。以上、医療安全対策についてご説明いたしました。 ○小林座長 ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○大久保構成員 医療安全を説明していただいた中で、院内感染に関するものもその中 に全部含めるというニュアンスだったかと思います。院内感染と申しますのは、すべて が医療安全の括りで包括できないところもあると思います。例えば、感染の中のかなり の比率で、患者自身の易感染性、あるいは患者自身が持っている微生物による感染がか なりあると思います。  それから、その微生物のヴィルレンシーといいますか、毒力というか、感染の強さと いうものも影響しているということで、院内感染が発生した場合にすべて医療安全の括 り、即ちインシデントとかアクシデントの括りでは言えない部分が相当あると思うので す。そういうものも含めて、こういう支援センターで扱っていくべきなのか、その辺が 少し曖昧だと思うのです。 ○田原医療安全推進室長 確かに曖昧な点はあろうかと思います。医療の安全と言った ときに、これも概念が明確に定まっているわけではありませんけれども、基本的には患 者の安全ということがありますので、そういうものを幅広く捉えるという意味では、院 内感染もその中に含まれるのではないかと思っております。また、医療従事者の安全と いうことも、医療の安全という概念の中に含まれる、という海外の考え方もありますの で、そういうことから院内感染のところについても、医療安全対策の一環として実施し てまいります。ほかの観点を入れるべきだということであれば、それはそれで具体的な 施策を構築する上でご指導いただきながら進めてまいりたいと思います。 ○大久保構成員 明らかに医療ミスといいますか、滅菌不良ですとか、抗菌薬の使い方 の間違い等であれば完全に医療安全の範囲ですけれども、そういうものではない患者自 身の都合、あるいは微生物の介在によるものというのは、そういう部分を少し分けて考 えるような仕組みを作っておかないと、発生した場合に住民側からの支援を求められた 場合に、医療安全だけの括りで判断しようとするとかなり無理があるような気がします。 ○田原医療安全推進室長 もう1点申し上げますと、医療安全というのは、事故が起こ った場合、あるいは事故の防止ということだけではなくて、先ほど基本的な考え方のと ころで申し上げましたように、医療の質そのものを向上していくという考え方を持って おりますので、何かミスをしたからということではなくて、医学的な理由でミスがなく ても感染してしまう、というようなケースも医療安全の中で取り扱うことを我々として はしていこうと考えております。 ○小林座長 おそらく大久保先生がご指摘のことは、全体的に感染の問題だけではなく て、ほかの医療事故に関してもどこまでをインシデントと認めて、どこをアクシデント とするか、それがはっきりしていないと相談を受けたときに困ります。医療というのは 絶対にリスクを伴ったものだと思うのです。リスクゼロの医療というのはないと思いま す。  だから、どこまでをいまの医療の限界とみて、後ほどのサーベイランスの結果の評価 のところにもつながってくる問題だと思いますが、ある所は細かいことを全部インシデ ントとして報告している、ある所はこれは当たり前のことだろうと言って報告していな い。基準づけがないと、例えば、患者からこういうことがあったからということで相談 があったときに、それは日常の範囲とせざるを得ないことですと言える、そのスタンダ ードは何か検討されているのでしょうか。 ○田原医療安全推進室長 それは院内感染だけではなくて、ほかの分野でも同じだと思 います。インシデントとアクシデントの違いという意味では、患者に影響があった、な かったという括りで分けられると思います。そもそもインシデントなのか、それとも全 く医学的な常識の範囲で起こり得るものなのかということの区別について明確なものは ありません。また、それを明確にすることができるのかどうか、というのはなかなか難 しい面があろうかと思います。その点については明確にできるのだと、それは明確にし た上で区別をしていって対策をしなければいけないのだというご意見があるのであれば、 そういうご指摘を踏まえて対策を考えなければいけないと思います。 ○針田医療計画推進指導官 院内感染の立場から、後ほど資料3でご説明させてもらお うと思っていたのですけれども、基本的に院内感染は院内感染なりの見方があるのかな ということです。しかしながら、医療安全というスキームは非常に重いといいますか、 重要なスキームですので、是非関係を持ってやらせていただきたいと思っております。  いま、インシデントとかアクシデントというお話がありましたけれども、まず、院内 感染はゼロではない。院内感染がゼロということはありませんので、そのベースライン というものがないと、医療安全の立場からも言及するのは難しいだろうということで、 今回資料3でご説明させていただきますサーベイランスの結果があるだろうと思ってお ります。その辺は、専門の先生方はよくご存じだろうと思いますけれども、若干誤解さ れることがありますので、その辺を本日うまくご説明できればいいと思っております。 基本的に医療安全に包含される部分もありますし、そうではない部分もあるということ かなと思っております。 ○小林座長 非常にいいまとめをしていただきました。医療安全全体の中で感染制御と いうことを考えていく、その共通分母というのはいっぱいあると思うのです。それは一 緒にやっていかなければいけませんし、それから大久保先生がご指摘くださいましたよ うに、また指導官がおっしゃったように、感染制御という観点からはまた別の要素もあ る。共通のところは大いにそれをお互いに活用していかなければいけないでしょうし、 特殊なところは、こういう委員会等が検討し、それで特別に対応していかなければいけ ないということかと思うのです。いま指導官がまとめてくれたとおりだと思います。後 ほどの感染率の問題とも絡んでくることになると思いますが、よろしければ先に進ませ ていただきます。  2つの報告を終わらせていただいて、次の議題に進みます。まず、議題2である院内 感染対策サーベイランス事業に関して事務局から説明をお願いいたします。 ○針田医療計画推進指導官 資料3−1と資料3−2を使ってご説明させていただきま す。院内感染対策サーベイランス事業については、そのデータ等に関して提供していた だいた医療機関に対して適宜戻し、情報共有を図ってきたところです。このような情報 に関しては、できるだけ一般の方にもアクセスできるようにしていただいたほうがいい のではないかということで、ホームページに載せる際に、概要ペーパーみたいなものも 設けてもいいのではないかという案を作りましたのでご説明させていただきます。その 概要ペーパーが資料3−1です。  非常に専門性の高い情報ですので、それをわかりやすくというのは非常に難しいので すが、今回は初めてということで(概要)の(概要)を作ってみました。趣旨としては、 この医療機関における院内感染対策を支援するためにこのサーベイランスがあるという こと。参加医療機関に対しては、それぞれの施設、又は全体の傾向について適宜閲覧で きるように情報の還元を行ってきておりますが、今回季報や年報という形でその概要を まとめたものになります。  この対象医療機関は、現在のところ参加を希望した200床以上の医療機関という形に なっております。また参加の形態としては、このサーベイランスは5つの形態で運営し ています。集中治療部門(ICU)サーベイランス、検査部門のサーベイランス、全入 院患者サーベイランス、外科手術部位感染部門(SSI)サーベイランス、新生児集中 治療部門(NICU)サーベイランスという5つの形態にしております。  その全体を取りまとめると、平成16年の状況として、約80万人を対象に、病院では 347箇所の菌の状況を調べたものに関しては2万5,000人強ということになっておりま す。それぞれのサーベイランスによって、その見方、コンセプトが異なりますので、一 概に単純計算するのがいいのか、問題はあるのかなと思いますけれども、全体の流れと してはこんな感じになっております。また、それぞれのサーベイランスについては次の 頁以降でご説明させていただきます。  1枚めくりまして集中治療部門(ICU)のサーベイランスについてです。これに関 しては、集中治療室に入室したすべての患者を対象にして、この患者の重症度と感染の 状況、また感染のリスクや重症度のリスクなどを把握することを目的に運用しておりま す。特徴としては、集中治療室という場所に注目したサーベイランスであること。また、 入院する前に感染症を持っていたというのは、いまの安全の話でも出てくるかもしれま せんが、そういうこととの差別化を図るといいますか、より精度を上げるためには、集 中治療室入室48時間以降を対象にしていく、という運用をしていきます。また、いく つかの感染率、種類等々の日数を解析しております。  平成16年の年報を見ますと、1万人強の患者を対象にし、その中の435名に感染が ありました。専門の先生方もいらっしゃいますので、後ほど補足等をお願いしたいと思 いますが、ICUの中でいちばん多かった感染症は肺炎でした。その肺炎の中の起因菌 はMRSAがいちばん多かったというものが出てきました。これは、年次を追っていく ことにより、さらなる傾向が出てくるのではないかと考えています。対象は、全国の 200床以上で、ICUを持っている所になっています。以下いくつかの解析はこんなこ とをやっているという概要ペーパーになります。  次をめくると検査部門です。検査部門に関しては、臨床分離された薬剤感受性のパタ ーンや動向に着目してサーベイランスを行っております。特に抗生物質への感受性のデ ータを収集しております。特徴としては、血液、髄液に関するサーベイランスであると いうことになっております。基本的に血液、髄液に細菌等は入っていないことになって おりますので、あれば感染があったということになるのかと思います。  平成16年の状況ですが、12万人より、検体の数は16万件。重複がありますので16 万件ということで、そのうち2万人強の方から病原菌が出たということです。もともと 検査ですので、どんな病原菌があるのかというものを調べるところですので、当然高い ということになります。特徴としては、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌やVREの 報告はないということになっています。この参加医療機関も、先ほど言ったのと同じよ うに、参加を希望した200床以上の医療機関で、報告施設は240となっております。  次の頁で3つ目です。全入院患者に関するサーベイランスです。これも、薬剤耐性状 況等々を調べるために、MRSA、VRE、ペニシリン耐性肺炎球菌、カルバペネム耐 性緑膿菌等のデータを収集しております。この特徴としては、全入院患者を対象にして やっていくということです。  平成16年の状況は、65万人の患者が対象となり、その感染症は4,000人強というこ とです。入院患者のうち、耐性菌の感染率は約0.7%、罹患率でいけば0.5%ぐらいで した。最も多かったのがMRSAでした。これも、年次推移等々を追って増えているの か、減っているのか、基本的にそのベースラインみたいなものがいままでよくわかりま せんでしたので、そういうものを調べるために役立つサーベイランスという形になって います。これは全国70の医療機関で協力をいただいております。  次は、外科手術部位感染部門(SSI)です。これは、手術後の創傷部位における感 染の状況を調べるものです。特徴としては、手術後30日間経過観察を行い、耐性の有 無にかかわらず、その外科手術部位の感染を把握していくものなどをやっております。 平成16年については、5,000人弱の患者で、その感染は228名です。直腸、胆道系、 小腸、大腸、胃の術後に比較的多かったとなっております。参加医療機関は10病院、 患者数は約5千人となっております。  次の頁は5つ目のサーベイランスである、NICUのサーベイランスです。これも、 NICUという場所に注目したサーベイランスです。耐性菌の有無にかかわらず、小児 集中治療室における感染が対象です。平成16年度は1,600人強の患者のうち、111名 の感染が対象になっております。新生児においては、出生体重が1,000g未満で多く、 出生体重の増加とともに低下する傾向が見られるけれども、2,000g以上で再び増加す る傾向があったとなっております。報告数に関しては200床以上の、希望する病院、10 病院で2千人となっております。  これは粗々の概要です。資料3−2がホームページに載る可能性の高いものになりま すけれども、いきなりここを見ても一般の方はわからないということで、この概要の概 要を付けさせていただこうということを考えております。もっと細かい菌別の対応等に 関しては、資料3−2をご覧いただければと思います。私からは以上です。 ○小林座長 荒川先生から何か追加していただくことはありますか。 ○荒川構成員 ただいま、針田指導官から説明がありましたけれども、補足として少し 紹介させていただきます。院内感染対策サーベイランス事業は、2000年の後期から厚 生労働省の事業としてスタートし、かれこれ6年経ちます。当初は、各施設からフロッ ピーディスクにデータを入れていただいて、厚生労働省に提出していただいて、それを 集計解析し、紙ベースで各施設に返還しておりました。  これでは、非常に労力と経費がかかりましたので、そこを省力化するために、平成 15年度の後半から平成16年度にかけて、順次ホームページを介して電子ファイルの形 で提出していただくようにいたしました。そのデータを集計したものを、また紙ベース で返すのは大変ですので、各医療施設のパスワードとIDでホームページにアクセスし ていただいて、そこから自分の施設のデータ及び全体の集計のデータをPDFファイル としてダウンロードしていただいて、各施設で活用していただけるようになりました。 この結果、非常に迅速な集計と、データの還元が現在は構築できております。  いま現在のホームページは、2001年の分まで出ておりますけれども、その以後の一 般公開分のデータはまだ公開されておりません。本日は2002年以降のデータについて 図表等を整理いたしましたので、それについてこの形で公表してもいいかどうかも含め て皆さんのご意見、ご確認をいただきたいと思っております。私から、このサーベイラ ンスの概要について少しご紹介させていただきます。  集中治療部門は、先ほど紹介がありましたようにICUに入室した患者について調査 をしております。資料3−2の表を見るとわかりますように、最初のほうに参加施設数 あるいは患者の数のリストがありますが、ICUにもいろいろな機能の施設があります ので、患者の重症度によって総別化して、感染症の有無で転帰がどう影響を受けるかと か、そういう視点で集計解析がされています。 ○小林座長 重症度というのは、どういう。 ○荒川構成員 一応、いまはAPACHEスコアを使って、患者の重症度を層別化しまして、 予測死亡率と実死亡率の差が感染の有り無し、あるいは耐性菌による感染の有り無しに よって、どう影響を受けるかについて集計がされています。概して申し上げますと、私 の用意しました資料3−3の最後の2枚がICUです。3頁は各年度ごとに集計がされ ていまして、例えば耐性菌による感染、感性菌による感染、感染を起こしていない非感 染の症例と比較しますと、これは全体的な集計ですが、耐性菌による感染症を起こしま すと、標準化死亡比が高くなる。 ○小林座長 すみません。感染率と罹患率はどう違いますか。いまおっしゃっているの は罹患率ですか、感染率ですか。 ○荒川構成員 これは感染率です。 ○小林座長 感染率は、罹患率と違いますか。 ○荒川構成員 新規のもので、一応ICUで感染を起こした。 ○小林座長 コロナイゼーションという意味ではないわけですか。 ○荒川構成員 ないです。感染症と判断した。 ○小林座長 そうすると、罹患率とどう定義が違うのでしょうか。 ○武澤構成員 ICU入室48時間以降に新たに発生した感染症です。それが、ここに 出ている数字です。 ○小林座長 罹患率というのは、持ち込みを含めてということですか。 ○武澤構成員 罹患率ではなくて発生率と考えればいいと思います。だから、既に感染 している患者は入っていないのです。 ○小林座長 かなり罹患率と感染率の差が出ていますが、どういうことですか。いまご 説明いただいたのは3頁ですが、2頁です。 ○荒川構成員 これは全入院部門のサーベイランスの推移です。 ○小林座長 ですから言葉をはっきりしていただかないと。ここで言う罹患率と感染率 と、これがもしかしたらコロナイゼーションという意味なのでしょうか。 ○荒川構成員 違います。全入院患者のサーベイランスについても、要するに新たに感 染を起こした患者については、罹患率という形で集計しています。感染率のほうは、前 の月から感染を持ち込んでおられる方について集計をして、その動向を出しています。 ○小林座長 そうすると3頁の感染というのは、持ち込みを含んだということになりま すか。そこの言葉をきちんとしていただかないと、データを読むのに。 ○武澤構成員 日本語にするから、おかしいのですね。プレバレンスとインシデンスと いうことです。 ○針田医療計画推進指導官 事務局からわかりやすい言葉、なるべく片仮名はやめてく れという話をしていましたので、そこら辺の補足があったかと思います。また、各サー ベイランスにおいて定義といいますか、条件がかなり異なっていますので、それは申し 訳ありません。今後、整理していきたいと思いますが、要はこういった形でサーベイラ ンスをやっていますといったものを、ある程度一般の方にわかるようにしたい。細かい 定義については、ある程度精度を高めて、注を付けるような形の対応を考えていきたい と思います。そういうことのサーベイランスの定義は同じ言葉を使っているけれども、 48時間を入れるかどうかといったものが異なっているのは事実ですから、これはもう 少し。 ○小林座長 あとで、一般向けにどういうふうにそのデータを公表するかは次のステッ プとして、まず我々がどういう状況かを理解しなければいけないと思いますので、途中 で申し訳ありません。 ○荒川構成員 この資料3−3は、各部門の概要、特に注目すべき点についてご紹介し ていますので、頁によって言葉の定義が若干。例えばICU部門で申しますと、48時 間以後に感染を起こされた患者についての調査結果ですし、全入院部門については先ほ ど申し上げましたように、新たな感染の患者は罹患率という形で集計していまして、前 から感染症を持っておられる患者の動向については、感染率という形で集計しています。 この集計の方法は、各ホームページに掲載した時点で、どういう対象をどういう形で集 計しているかも併せてそこには掲示しますので、そこでは誤解を避けることが可能だと 思います。  耐性菌の感染症を起こされると、非感染あるいは通常の感染期の耐性を起こした患者 よりも、標準化死亡比が重症度に関係なく、概して高くなること。その右の図も、感染 症を起こさない患者と比べまして、感染症を起こした患者ではICUに在室する日数あ るいは平均在院日数が有意に延長することが、ICUの集計で確認されています。 ○小林座長 武澤先生に伺ったほうがいいかもしれませんが、感染があると死亡率が高 いのか、ハイリスクの患者に感染が起こるから、数字は結果として死亡率が高く出てい るのかのデータはあるのでしょうか。 ○武澤構成員 あります。そういう質問をよく受けるので解析したのですが、死亡のリ スクの高い重症な患者は感染してもしなくても、あまり死亡率には関係がないのです。 だから予測したとおりに、重症度に応じて実際には死亡するということです。問題IC U入室患者では重症の低い患者で院内感染が起きた場合には死亡リスクが上がるのです。 ですから、私どものターゲットとしては、むしろ重症度の低い患者での院内感染の予防 に力を入れるべきだ。だからといって、重症な患者の感染対策をしなくても良いという のではないのですが、重要なのは重傷度の低い患者に感染対策を重点的に実施すること だろうと。 ○小林座長 それはAPACHEで。 ○武澤構成員 はい。層別化してやった解析でそういう結果が出ましたので。 ○荒川構成員 いまのことは後ほど申し上げる予定でしたが、続けて報告をさせていた だきます。  4頁もICUのデータから掻い摘んでみたものですが、概してこの数年間の動向を見 ますと、感染症の発生は概ね一般的にはコントロールされているのかなという印象を受 けます。ただ、肺炎についてはジワジワではありますが、増加傾向があるのではないか ということが窺えます。その下のICUにおける感染症の場合、耐性菌というのは多剤 耐性の菌、MRSAとか多剤耐性緑膿菌といったものを定義をしまして選んだわけです が、そういうものと通常の感染菌、あるいは単剤の耐性菌の比率を見ていきますと、I CUにおける感染症で耐性菌による感染症の割増が、徐々に増加してきていることが窺 えます。その中身を見ていきますと、その右ですが緑膿菌その他、一般的なICUで感 染症を起こし得る菌については、大体概ね横這いか緑膿菌は若干低減化傾向が見られま すが、MRSAについては2001年以降に徐々に増加するような傾向が見られています。 2000年のデータは件数が少ないものですから少しあてにはなりませんが、2001年以降 のデータは1年間を通してまとめたデータであります。そういった傾向が見られるのが ICUの特徴です。  先ほど申し上げましたように、これを整理すると集中治療室で発生する感染症の大半 は肺炎で、その起炎菌はMRSAである。耐性菌による感染症を発症した患者では、在 室日数、在院日数が延長する。耐性菌による感染症が発生した場合あるいは一般的に感 染症が発生した場合も含めて、APACHEスコアが軽症から中症度の症例では、死亡率が 増加する傾向が見られるということです。ICUでは肺炎とMRSAについては今後、 監視の強化が必要であるということです。以上がICUの概要です。 ○小林座長 何かご質問はありますか。武澤先生、補足はありますか。 ○武澤構成員 ありません。 ○小林座長 いまの最後のグラフのMRSAの頻度の、それぞれの対象数はどのくらい ですか。 ○荒川構成員 2001年以降は。 ○小林座長 1万例ぐらいですか。 ○武澤構成員 1年間でICU入室患者1万人のうちで感染を起こしたのは、肺炎が 3%ですから、そのうちのMRSAが3分の2から4分の3ぐらいの割合です。 ○小林座長 全体が1万例ぐらいですか。 ○武澤構成員 そうです。 ○小林座長 ほかには何かありますか。一応、ご質問、ご意見などを伺って、そのあと で順次まとめていきたいと思います。  1つ。これも武澤先生でしょうけれども、いまのは肺炎が多いという話でしたが、C DCのデータに比べると確かに日本は肺炎が高くて、ブラッドストリームインフェクシ ョンが極端に低いし、UTIが低い原因は本当なのか、サーベイランスの質の問題なの かはどうなのでしょうか。 ○武澤構成員 おそらく、肺炎は高いと思います。それは事実だと思います。ただ、ア メリカのレファレンスの内科・外科混合ICUという特殊な、どちらかといったら普通 の機能別になったICUからはずれた患者が入っているところですから、それがいった いどの程度の感染対策をやっているのかやっていないのか、良いのか悪いのかはわかり ませんが、一般的なアメリカのICUという言い方で比較するときには少し問題がある ことが1つです。  血流感染や尿路感染は、アメリカの場合はICUを出てからも一般病棟でフォローし なければいけないのです。私どもは人手がないものですから、そこまではできなかった のです。ですから、病棟に帰って1週間で尿路感染が出てくると、これはICUで獲得 した尿路感染として本当は認定しなければいけないのです。それがやられていないもの ですから、当然低めに出てくる。ただ、それにしてもかなり低いので、おそらく日本は 血流感染と尿路感染の対策はいいのかなと勝手に思っていますが、肺炎は悪いのでしょ う。そういう意味では、肺炎を重点的にターゲットにして対策を練っておかないとです ね。 ○小林座長 特にMRSAの肺炎は賀来先生、薬も効きにくく、いちばん治療効果がな いということですね。何かなければ先に進みます。 ○荒川構成員 続きまして、検査部門の概要についてご紹介します。検査部門は、2004 年の時点で血液と髄液を合わせて16万3,000件の情報が寄せられています。この細か い資料は24頁以降に出ています。この血液分離菌、髄液分離菌を見る場合は、必ずし も感染症を起こしたものではないものが含まれています。特に皮膚に常在するようなブ ドウ球菌属のようなものについては、穿刺時の皮膚からの汚染というものも若干含まれ ますので、公表する資料の23、24頁には海外の文献等を引用しまして、大体個々の菌 が血液で分離された場合にそれが汚染菌なのか、あるいは実際に感染症を起こしている 菌なのかといった資料も付けてありまして、これを見ながら数値のほうを解釈していた だくことをお願いしています。  血液、髄液の概要ですが、26頁以降に出ていますように、血液でいいますとどうし てもブドウ球菌属は頻度としては高くなりますが、皮膚に一般的に常在しない大腸菌、 肺炎棹菌、緑膿菌というものが上位にランクされてきています。これは多分、末期の患 者等では、自分で持っておられた腸内の菌が血液中に侵入して、こういう状態を起こし ているものと推察されます。あと、時々マスコミ等で過去に問題になりましたセラチア なども0.2、0.3%の頻度で血液から分離されています。この概要ですが、2002年以降 については資料3−3の1頁に少しまとめてみました。血液から分離されたもの、ある いは髄液から分離されたものの両方を合算したデータですが、血液から分離される、あ るいは髄液から分離される黄色ブドウ球菌でMPIPCにS以外と判定されるものの推 移は、日本の血液から分離されるものについては、大体60〜70%の間を横這いできて いまして、急激な増加というのは、いわゆるMRSAについては起きていないだろうと 推察されます。肺炎球菌についても、血液、髄液から分離されるものについてペニシリ ンに対する感受性で見た場合、2002年以降は2001年に比べると高いような傾向が見ら れますが、本当にこういう傾向があるのかはもう少し状況を見てみないと何とも言えな いことがあります。あと、インフルエンザ菌については、ペニシリンに対してS以外が かなり増えてきているような傾向がありますので、これは今後も引き続き監視をしてい く必要があると思っています。  緑膿菌は、イミペネム、レボフロキサシン、モダシン、セフタジジムですね。それか らアミカシンに対する耐性株の割合を見ていきますと、大体イミペネムでは2、3割。 レボフロキサシンやモダシンに対しては2割ぐらい。アミカシンに対しては1割弱とい うところで、概ね大きな変動はないのではないかと考えています。ちなみに、多剤耐性 緑膿菌について言いますと、イミペネム、レボフロキサシンを含むフルオロキノロン、 アミカシンの三系統の耐性を獲得したものについては大体1〜3%の間をこの4年間、 横這いできています。あと、欧米で問題になっている第三世代セファロスポリン耐性の ESBL産生菌については、概して大腸菌もクレブシェラも、横這いか減少傾向にある のではないかということがサーベイランスで推察されました。検査部門については以上 です。 ○小林座長 どうもありがとうございました。例えば、S.aureusでMPIPCにS以 外というのは、MRSAのことですか。 ○荒川構成員 一応、MRSAにほぼ該当するであろうと考えていますが、中にはそれ に合致しないものも含まれると思いますので。 ○小林座長 例えばこれで見ると横這いで、先ほどのICUは動きがあると。あるいは 1施設でアウトブレイクがあって、それで引きずられているという原因はなく、全体的 に散らばっていますか。 ○武澤構成員 実は1施設、ちょっと飛び抜けているところがありますが、患者の重症 度も。 ○小林座長 1年間、一施設全身体で20例ぐらいのものですね。 ○武澤構成員 はい。だから大きく影響はないと思うので、全体的な傾向はこれでよい かと思っていいと思います。 ○小林座長 ただ、数例あると大きく動くような対象例数ですね。時間が少し迫ってま いりましたが、このデータに関してはまずどういうところに着眼すべきかということと、 事務局のほうで予め概要案を用意してくださいましたので、場合によっては時間がなけ れば、またあとでいろいろとメールでやり取りをさせていただいて、付け加えるところ は付け加えていただくようにしないといけないかと思います。これはホームページで一 般に公開するということで、専門的な内容を含んでいて判断が難しいところがあります から、その辺をどう注意して、いままでもかなり専門的なところを突っ込んで話をして いたわけで、それを一般的に誤解のないようにご理解いただけるようにホームページで 紹介するにはどうしたらいいかというご意見を賜りたいと思いますし、さらに先ほど法 律的なお話もありましたが、現在の限られた医療資源をいかに有効に活用していくかの 問題も含めてまとめないと次のネットワークのことに話が進められないと思いますので、 10分ぐらいで議論させていただきたいと思いますが、何かありましたらどうぞ。 ○木村構成員 一般に公開するには中身が非常に詳しすぎて、むしろ解釈なり理解なり が難しいのではないかという印象がありますが、いかがでしょうか。 ○小林座長 それは、事務局でもいろいろ配慮していただいていまして、そのことで指 導官から何かありますか。 ○針田医療計画推進指導官 折角やっているというのは非常に大事なことだと思います。 実際に院内感染が起こったというと、いままでにもありましたが日常にないことが起こ ったのではないかという誤解をする方もいらっしゃる。感染症ですので、ある程度の頻 度があって当たり前だと。ただ、その頻度をいかに下げていくか。その下がり具合、上 がり具合をどう国民に理解していただくかは、ある程度専門性の高い情報を流すのも大 事かなと思ったのですが、いまお話を聞きましたら難しい部分はあるのかなと感じてい ます。しかしながら、少しずつ情報を出しながら、こういうところはわかりづらいとい うのを変えていけば、いつかはわかりやすいものになっていくのかなと思いますので、 また事務局もしくは座長に「こうしたほうがいいんじゃないか」というアイディアをい ただければ、適宜変えながらといった方向でいきたいと思いますので、よろしくお願い します。 ○小林座長 議論は続けさせていただきますが、おそらくどれをどう採用するかまでは 今日は議論できないと思いますので、事務局(案)をお待ちいただいて、「この部分は 付け加えたほうがいいんじゃないか」「これは難しいから、カットしたほうがいいんじ ゃないか」というご意見を。荒川先生が中心にまとめてくださった今日の膨大な資料か ら、いますぐ読んでいただくのは難しいかと思いますので、そんな方向で全体的なお話 を伺えば、いまの木村先生のようなことはご尤もだと思いますし、あまり難しいことを 載せてもおわかりいただけないし混乱を招くことにもなるかもしれないので、何かその 方法論を含めて。 ○岡部構成員 公表するに当たっては、ターゲットがどの辺にあるかという意識をデー タを出す側は持っていないと思います。広く一般にという一言で言ってしまうと、誤解 を生じる可能性があると思います。 ○小林座長 公開する対象ですね。データの内容ではなくて。 ○岡部構成員 対象とするターゲットです。ですから、専門家ですら見られないので、 専門家を対象にした広い公開というのも一般公開ですし、一般の国民の方も含めて全部 知っていただく意味での公開なのか、その辺の議論は必要ではないかと思います。 ○小林座長 その辺はいかがでしょうか。 ○賀来構成員 途中からですが、公開についてはこの資料自体は素晴らしいといいます か、これまでの努力をなさった資料で、ICUも武澤先生を中心に非常に素晴らしい資 料をまとめられているのですが、例えば先ほどICUの中で緑膿菌自体が下がってきて いましたよね。もし、あのデータが公表されてしまいますと、緑膿菌自体が少し低下し ているのかなという印象を持ってしまう方もいるかもしれません。実際には多剤耐性緑 膿菌は、いろいろな大学で問題になっていますので、いま岡部先生も言われましたが誰 が見るかによっては見方もすごく変わってきますし、米国も英国も欧米もかなりサーベ イランスの公表の仕方については極めて議論があるところで、慎重に対象者は誰か、あ るいは専門家の中でも一度議論して自分たちの中でもグローバルというか、広い意味で のサーベイランスとローカルサーベイランスとの違いとか、そのあたりも含めて慎重に 議論されたほうがいいと思います。 ○小林座長 緑膿菌は、先生のデータでも下がってきていますね。 ○荒川構成員 そうですね。多剤耐性については、2、3%ぐらいというのが大体の傾 向です。資料3−3の2頁の全入院部門のMRSAとか特定の耐性菌に焦点を当てた感 染症のサーベイランスで見ていきますと、MRSAはICUと同じように感染率/罹患 率が上昇傾向にありますが、いちばん右のカラムも多剤耐性緑膿菌による感染率/罹患 率についてはこの3年間を見る限り、減少してきている。これは、いろいろマスコミ等 や専門家の間で話題になっていますので、臨床の現場でかなり皆さんは注意をしておら れることを反映している気がします。ただ、MRSAについては対策を一生懸命にやっ ておられるにもかかわらず、十分にコントロールがうまくできていないのではないかと。 ○小林座長 これはICUのデータですが、全国的なMRSAの感染率が、サーベイラ ンスの結果ではあまり変化していない、むしろ減少傾向にあるのです。このサーベイラ ンスは対象が100万以上の症例です。 ○荒川構成員 これは感染症と診断をするところの難しさもあると。 ○小林座長 だから、これだけからMRSAが増えていると言うことが気になりますの で、先ほどからそのことを指摘させていただいているのです。特に公開されるデータの 中で、本当に日本はMRSAが増えているのか。緑膿菌の耐性株が減っていることも、 同じような意味で問題かもしれませんが、その辺の。 ○針田医療計画推進指導官 私がよく聞かれるのは「院内感染は増えているのですか」 「MRSAは増えているのですか」がいちばん注目を浴びる部分で、あるサーベイラン スでは増えていますし、あるところでは増えていませんとか、思ったよりも増えていな いという話もあるかなと。ただ、それは聞く人によっては受け取り方が全然違う。私が 喋ることがきちんと伝わらなくて、あとでどう思っていたのですかと出てきますので、 それをある程度データでお示しする。いま、うちのほうでやっている事業としてはこれ だけのものをやっていますので、こういった事業からこういう結論が出ましたといった ところ、その間が飛んでいるのですが、そういったものをお示しできればと思っていま す。基本的に一般の方々が、院内感染はどうなのかと。対策が取られてきたので増えて いないのがいちばん素晴らしいことだと思いますが、その裏付けデータがなかった。そ れについてはデータがある程度出てきたけれども、翻訳が難しいのでつながらないとい うのが本当かなと。また、いろいろ学会とか研究者の方々が独自に大規模なサーベイラ ンスをやってデータが出てきていまして、若干違いが出ているのもあろうかと思います。 将来的には、そういったものとの整合性も考えられればいいと思いますが、いまの事務 局としての思いは、できるだけこういう状況にありますという現状を国民の方にお伝え し、その変化の中で増えています、減っています、対策が取れています、取れていませ ん、というようなものを言えればと思っています。そこまではまだかなり先の話になる かもしれませんが、こういうものがあるといったものはお示しできるかなと思います。 いまはそんな感じです。 ○小林座長 まだまだ議論をしなければいけないと思いますが、最初に木村先生がご指 摘になったようにあまり難しいデータを出してもわかっていただけないのではないかと いうことと、岡部先生のおっしゃった対象を考えていかなければいけない。CICDと か、ある程度の専門の人を対象にするものだと、こちらのデータをかなり検討してから。 前回このデータが公表されたというか検討されたときも、データの質がどうかというこ とが議論の対象になったかに覚えていますし、この中で全病院的な感染率が調査されて いますが、異常に低いのです。これがスタンダードといいますか、指標になってしまう とデータとしてセンセーショナルなことにもなりかねませんから、その辺は少しこの会 議等でも、または別の適当な会議があればそれでもいいのですが、データの質というか バックグラウンドに何があるかを解析した上で専門家対象のデータを出していかないと。  荒川先生のお話で、検査側のデータというのはこういう性質のもので、こうだとはっ きりした形での注釈がないと誤解を招く結果にもなりますし、データとして一度発表さ れると数字だけが走っていってしまいますので、特にそういうものはいろいろなところ で引用されることは十分に考えて、岡部先生がおっしゃったようにどう扱うか。賀来先 生のご心配もそうだと思いますが、いかがでしょうか。その辺はもう少し検討した上で、 専門的なデータとして何らかの形で公表していくことは感染制御に携わる方たちにとっ ては有効だと思いますが、一般向けの公開の内容としては恐縮ですが、今日のところを 事務局で少しお汲み取りいただき、まとめていただいて、こういうことをやって、こう いう状況だという原案にあるような範囲にとどめておかないと、検討の時間が足りない ような感じがします。 ○荒川構成員 一応、一般の方に対する紹介というか報告としましては、それぞれの部 門の資料の最初の頁に概略が書かれています。さらに、内容を詳しく見てみたいという 医療従事者や病院関係者に対しては後ろの資料を見ていただいて、どういうものかを確 認していただく趣旨になっていますので、一般向けに対する部分と専門家に対する部分 はホームページでは分けてはいます。 ○小林座長 いかがでしょうか。 ○木村構成員 その辺の技術的なところを配慮していただければ、当然だんだん深いペ ージで詳しいデータを見られる工夫は考えておられると思いますが、そうすると少し見 やすくなると思います。 ○小林座長 岡部先生、いかがでしょうか。 ○岡部構成員 わかりました。おっしゃるとおりだと思います。 ○小林座長 いま、荒川先生がおっしゃったような形で段階的に、専門的なデータを場 合によっては見られる。それは時期的に少し遅れることになるかもしれませんが、そう いう構成でホームページに公開していく方向性でよろしいですか。切替先生、何かあり ますか。 ○切替構成員 いいと思います。 ○小林座長 では、この問題はそういうことで進めさせていただきます。  医療資源活用の問題はいかがでしょうか。こういうことに絡んで、これを考えおきい ただいて、数字というかこういうことをやって、これに結び付けてどういうふうに今後、 医療資源を有効活用していくかは委員の皆様からメールでご意見を伺うことでよろしい でしょうか。そういうことで進めます。  あまり時間がありませんが、議題2の院内感染対策地域支援ネットワークについて検 討したいと思います。針田指導官からお願いします。 ○針田医療計画推進指導官 この地域医療ネットワークについては、地域の医療機関が 相談する先がなかなかないのではないかという話が有識者会議の報告書にありまして、 それを踏まえてモデル的に全国のいくつかの地域でやっていますが、それについて切替 先生に整理していただいたという話を聞いていますので、お願いしたいと思います。 ○切替構成員 いまご説明いただきましたように、院内感染対策地域支援ネットワーク は平成16年から開始されたモデル事業です。本年が2年目に当たります。地域の専門 家から構成されるネットワークを構築して、地域における支援体制の整備を図り、規模 の大小を問わず、医療機関等が速やかに相談や助言を受けることができるような体制を 整備すること。さらに、各ネットワーク間でお互いに情報交換をして、それぞれの支援 活動の質を高めていくことを目的として、事業活動を実施しています。モデルとして参 加していただいている地域は、全国10道県と1政令都市です。  地域支援ネットワークへはそれぞれの状況に応じて、さまざまな支援活動を実施して います。本年度の活動状況を1年目の活動状況と比較しますと、質量ともに飛躍的に向 上しています。ネットワーク事業も2年目に入って、活動の方向性が見えてきたように 感じます。すなわち、「院内感染対策地域支援ネットワーク活動は、地域医療における インフェクションコントロールチーム活動である」と言うことができるかもしれません。  ご存じのように現在、我が国の大きな病院ではインフェクションコントロールチーム が、それぞれの施設内での院内感染対策の相談窓口や教育事業などの機能を果たしてい ます。ここ数年で、著しく日本の院内感染対策活動が活発になり、質も向上してまいり ましたが、インフェクションコントロールチームはまさにその活動の原動力として機能 しています。今回のモデル事業で明らかになってきたことは、院内感染対策地域支援ネ ットワークが、地域全体の中小規模病院や老健施設などにおけるインフェクションコン トロールチームの活動を肩代わりできるようになってきていることだと思います。  ネットワーク活動は、地域の実情によってさまざまな活動形態となっています。特に 大きな違いは、支援ネットワーク活動拠点、すなわち実際の活動の中心となる組織がど こなのかということ。それと、ネットワークの運営の中心となる支援委員の構成が、ど のようになっているかの2点です。支援ネットワークに参加している組織として、地方 衛生研究所などの地方自治体、医師会や病院協会、大学医学部や地域の中核病院等があ り、これらの組織がお互いに協力し合ってネットワークを構築しています。しかし、実 際はそれぞれの地域によってネットワーク活動の中心となる組織が異なっています。ネ ットワークの支援委員の構成も、それぞれの地域で異なっています。地域の医療現場で、 インフェクションコントロールチーム活動を実際に行っている専門家で構成されている 場合もあります。また、医師会、歯科医師会、看護協会、保健所、行政、大学の代表者 から構成されている場合もあります。さらに、大学や地域中核病院の感染症科や感染制 御部が活動の中心になっている場合もあります。それぞれの地域で、状況に適したネッ トワークを構築しています。  医師会や病院協会が活動の中心となっている地域は5地域あります。地域によって活 動内容には違いがありますが、非常に熱心な地域ではネットワークと医療現場との距離 感が少なく、ネットワークの裾野の広さを感じさせ、今後ネットワーク支援活動のモデ ルになるような活動をされています。大学等が活動の中心となっている地域は5つあり ます。このうち、活動が盛んな地域では大学等が地域内の各医療施設を取り込んだネッ トワーク活動を展開しています。ネットワーク活動に大学が加わることも重要であろう と考えます。ただし、問題点としてどれだけ裾野を広くできるのかが課題として残りま す。大学がネットワーク活動の中心となる場合では、地域の医療現場の専門家に広く参 加していただく努力が肝心ではないかと思います。また、院内感染専門家が比較的少な い地域では、ネットワークの支援委員の人選にご苦労されています。県外の大学に全面 的に活動を委託している地域もあります。このような地域では、今後専門家をどのよう に育成していくかが重要だと思われます。  地方衛生研究所が活動の中心となっている地域は1つあります。この地域ではインタ ーネットをうまく利用して、相談業務と啓発業務活動を行っています。今後は、感染症 専門家及び医療関係者のインフェクションコントロールチームのメンバーから登録メン バーを募って、裾野を広げていく方向で活動が進んでいます。  次に、ネットワークの活動について簡単にご紹介します。ネットワークの活動内容は、 現時点では院内感染相談と普及啓発事業が中心です。普及啓発事業はパンフレット、書 籍、セミナーに加えて、ホームページを作成しています。どの地域もネットワーク活動 自体の広報に腐心され、特に広報活動も含めたセミナーなどの啓発事業を重点的に実施 していました。ネットワーク主催のセミナーや講習会には、毎回大変多くの医療関係者 が聴衆として集まっており、医療現場における院内感染対策の関心の高さを改めて感じ させます。また、いわゆる「困ったこと」に代表される院内感染事例相談は、相談が活 動の中で重要性を徐々に増してきているのが現状です。  最後に、大変成功しているモデル地域を例に取って、活動状況をご説明します。この 地域では、病院協会にネットワークの窓口を設置しています。地域内の10カ所の中核 病院で、それぞれインフェクションコントロールチームの中核メンバーとなっている 10人の医師が、支援委員として活動しています。活動の中心は、院内感染相談業務と 普及啓発事業です。普及啓発事業としては、中小規模の病院及び高齢者施設を対象とし た教育セミナー、例えば去年は152施設が参加しています。それから、冊子などの資料 配付、これは本年度の例ですが、1,700部ほど冊子を作りまして、421施設にお配りし ています。それから相談事例のQ&Aをホームページに掲載しています。このQ&Aは、 非常に質の高い回答が掲載されており、大変参考になります。この地域の活動を見てみ ますと、院内感染支援ネットワークが地域全体の中小規模病院などの医療施設の、いわ ゆるインフェクションコントロールチーム活動を肩代わりしていることを実感できます。  なぜ、このモデル地域が短期間に大変有効なネットワーク事業を展開することが可能 になったかはいくつかの理由があると思いますが、1は支援委員がすべて医療現場で実 際に活動している専門家であること。2は、この地域では多くの院内感染対策の専門家 が既に活躍しておられること。3は、支援委員が地域内の各地方から集まり、地域的な 偏在がないこと。4は、地域の病院協会の大きな支援があること等ではないかと考えら れています。以上で、ネットワーク活動状況のご報告といたします。 ○小林座長 どうもありがとうございました。いろいろと情報をきちんとまとめていた だいています。何かご質問はありませんか。地域性ネットワークを作らなければならな い、いちばんの元になった議論は、異常な感染なのか正常範囲の感染なのかということ で、従来の体制で行政に報告するとすぐマスコミにリークされて大騒ぎになってしまう。 これは、なんとかしてもらいたいという意見があってのことですが、先生の調査の中で その辺の基準をわりあいに明確にしているネットワークはありますか。 ○切替構成員 大変難しい話ですが、先ほどから言っておられるように基準づくりとい うのはこの支援ネットワークではあまりそぐわないと思いました。むしろ、私たちの大 きな病院でインフェクションコントロールチームに何かしなければいけない事例や相談 事が毎週のように集まってきますが、それと同じぐらいのレベルになりつつあるところ がいくつかある段階だと思います。もう少し言い方を換えますと、MRSAの保菌者が 少しいるからといって、慌てなくてもいい状況なのに相談するような場合もありますが、 お互いにその地域の中でいろいろと勉強しながら、ベースラインを決めていくことでは ないかと思います。そのためには、きちんとした先ほど来出ているサーベイランスの情 報が、一般の病院の先生方も普段から見られるような状況になっていただければと思い ます。 ○小林座長 大久保先生が中心になって、以前その原案的なものを作ってくださいまし たが。 ○大久保構成員 そのときの基本的な考え方は、いま先生がおっしゃられたとおりです が、当時は保健所には相談窓口がなくて、保健所に対しても何かが起きますとそれは報 告になってしまうのです。そうすると、それに対して指導という非常に垣根の高い状況 だったのですが、報告ではなくて相談をして、相談に対して指導ではない支援をしてい ただくというスタンスでこれが始まったと思います。ですから、そういう意味で気軽に Q&A等で相談できることが実現しかかっているということをお聞きしまして、大変い いと思います。保健所が構成員であるという地域があったと思いますが、それは保健所 の活動とは全く別な形で動いてきているかどうかをお聞きしたいのです。 ○切替構成員 ある地域では、地域の実情によってということだと思いますが、どうし ても保健所がリードを取らなければならないような状況がまだ存在する所があると思い ます。保健所が、どうしたら指導ではないような相談業務ができるのかということでか なり腐心されていまして、現実的にはインターネットのホームページを新たに作って相 談業務、Q&Aを作っていったり感染症の情報、MRSAとは何かというような一般的 な感染情報を混ぜていったりということで、ご苦労されていると思います。ただ、行く 行くは少しずつそういう地域も裾野を広げていって、例えば大学の先生方、大きな病院 の先生方、その次にはもう少し中核になるような先生方に活動の場を広げていけばとい うような状況だと思います。少し時間はかかると思います。 ○大久保構成員 こういう各地のデータを中央の先生のところに集めて、それをフィー ドバックすることも謳っていたと思いますが、その辺はどういうふうに動いていますか。 ○切替構成員 実際、インターネットでの接続、各事例の情報を収集するというのが具 体的にうまくいき始めたのは本当に今年になってからで、ネットワークの環境も整備し ました。ただ、一時すべてをeメールなりペーパーレスで話を進めていこうという当初 の計画だったのですが、むしろファックスが主な相談の中心になっています。場合によ っては電話ですが、紙が相談の情報の中心になっていますので、それをどうしたら電子 化できるのかなということで、もう少し時間がかかると思います。 ○小林座長 いまお話になった情報は、何か見られる発表論文になりますか。 ○切替構成員 いま言っていることは、もちろん報告書にはなりますし、例えば事例報 告に関してはある地域は、我々でもかなり参考になるような内容です。そこの地域では 回答が複数回答をそのまま載せていただいて、インフェクションコントロールチームの 活動されている方にとっては非常に参考になると思います。 ○小林座長 と申し上げたのは、この中央会議というのは全国的なネットワークを支援 していく。その上では、バランスを保つような支援もしなければいけないだろうという ことが最初からの課題にあるわけです。ですから、それだけお調べいただいたものを少 なくとも構成員の皆様方に情報として流していただいて、それを踏まえてどういうふう に支援していくのか。その辺は賀来先生がいちばん最初からいろいろとやっておられる ので、今後の進め方について先生のご意見はいかがでしょうか。 ○賀来構成員 いま切替先生が言われましたように、各10のモデル地区がそれぞれ素 晴らしい活動をなさっていると思います。以前から、私どもは東北地区でのネットワー クをさせていただいていますが、1つはいま小林先生が言われましたように構成局と一 緒に、ある機関病院を東北6県を東北構成局の方々と一緒にラウンドを兼ねた講習会、 あるいは研修会を企画しました。それは非常に効果的で、いろいろな病院から是非今後 も続けてもらいたいと。ワークショップも南東北、北東北とさせていただいたのですが、 いま小林先生が言われましたように全国的に見ますと構成局がそれぞれのブロックにあ りますので、先ほどは保健所でしたが、そういったところが少しキーステーションとい うか、そういったところとも連動していくといろいろな地域に格差がないような形で伸 びていかれるのではないかと思いまして、東北構成局というような組織も一緒にされる と、私は昨年の1年間を活動させていただいて実感として、6県全体がレベルアップし ていくようなことを感じましたので、参考までに述べさせていただきます。 ○小林座長 ありがとうございました。それと大きな病院が協力して、ネットワークの 中心になっているという調査結果がありましたが、将来の問題としてこれもまたご検討 いただきたいと思いますが、まだそういうネットワークが構築されていない地域にも専 任の担当者を置いているような大きな病院はあると思います。そういう病院が中心にな って、いま先生のお話にあったような相談窓口的な役割を果たしてくれれば、全国的な ネットワークがさらに前進していくだろうと思いますが、その辺を含めて事務局から何 かありますか。 ○針田医療計画推進指導官 このネットワークに関しては、正直、何もないところから 始めたと思います。要は、本当に住んでいる地域であれば東北地方とか九州の北のほう とか、いくつかあったのですが、それが本当にオールジャパンで適用できるのかといっ たものがありまして、10カ所ぐらいのモデル事業をやっていただいて見てもらったと。 それは、決して先駆的な地域ばかりではないと理解しています。その中で切替先生がい いところをまとめていただいて、こうすればどこの地域でもできるのではないかと。た しか昨年の今頃ですと、ほとんど始まったばかりで何をしたらいいかわからないという 話だったと思いますが、今回は少しは動いてきた。おそらく来年度ぐらいになれば、あ る程度のまとめができてくるのかなと。そういったものを各県、各病院にお渡しできる ような形になれば次のステップに入れるのかなと。  また、同じ話ではないかもしれませんが、先ほど話にありましたが、いま医療安全の ほうもいろいろな検討をしています。院内感染についても検討するスキームを持ってい ますので、やっていきたいと思います。 ○小林座長 木村先生、武澤先生、そういうネットワークという意味では、今後の進め 方に関して何かありますか。 ○木村構成員 なかなか動き出すのが難しいだろうと思っていたのですが、いま切替先 生のお話を聞いて非常に順調に動き出してきているのを知って大変安心しました。是非、 もっとこれをいろいろな地域に広げていったらいいのではないかと思います。 ○武澤構成員 中央で情報を集めてフィードバックするシステムはいいのですが、医療 事故は医療機能評価機関がやっていますよね。医療安全の中の院内感染のフレームワー クをどうするかの問題は残っていると思いますが、そことの関係をどうするかがあると 思います。それから、地域医療安全センターを今度作りますよね。そことの関係をどう するかのシステム的な問題にまだ不明確なところがある。それから、この医療計画の中 で地域の機関病院というかリーディングをする病院も決めていきますよね。その中にこ のセンターを地域医療をやっているところに認定してあげる形にすると、もう少し制度 的にバックアップできるのかなと。だから、その辺の枠組みをもう少し整理されたほう がいいのかなと思います。 ○小林座長 荒川先生、サーベイランスをまとめていただいているお立場から今後の進 め方、岡部先生もそんなお立場からいかがですか。 ○荒川構成員 こういう組織なり仕組みを運用する場合は、事務局機能が非常に大事に なると思います。その事務局機能をどこが担うか。これもボランティアベースで担うの ではなくて、地域支援ネットワークの事務局機能を担うところを、法律とまでは言いま せんが何かそういう仕組みを作ってバックアップしていく形にしていかないと、現場の 方は非常に多忙な方が多くて、なかなかこちらのほうに力が入らなくなるのではないか と思います。  もう1つは、私のところにもしょっちゅうメールとかいろいろなことで問合せが来ま すが、結局私どもですべてに対応しきれませんので、もし地域の支援ネットワークの核 になるようなところを教えていただければ、そちらのほうにご紹介することも可能です ので、是非それはお願いしたいなと思います。 ○小林座長 そこで処理しきれないことを先生のほうに回していただくネットも必要か もしれません。岡部先生は何かありますか。 ○岡部構成員 活動が進んでくることは非常にありがたいことになるのではないかと思 います。私がいちばん最初にこれを痛感したのは、世田谷のセラチアのときに小さい医 療機関とはいえ有床診療所で、そういうところで院内感染に対する相談を持ちかけよう がなかったのが実情だったと思います。ですから、そういう方々が利用できて、届けと いうことになると切替先生がおっしゃったように非常に届けにくい、連絡しにくくなる ことですから、そこら辺がフランクにできるような構造を是非進めていただければ、院 内感染対策にストレートに結び付いていくと思います。 ○小林座長 大久保先生、何かありますか。 ○大久保構成員 先ほどの医療安全のときのご説明に関わってきますが、いま言われま したように地域医療センターをいま医療機能評価機構でやっているものと、どのように 結び付けていくかが非常に大切なことだと思います。 ○小林座長 賀来先生はいかがですか。 ○賀来構成員 いま、先生方がおっしゃったことで尽きると思います。 ○切替構成員 一言よろしいですか。今回モデル事業ということで、むしろそれぞれの 地域にお任せしてしまったというか、それぞれの地域の状況に合わせて本当に皆さん方 がそこでいろいろ腐心されて作られたネットワークで、オールジャパンでは全くないわ けで、それぞれかなり個性がある。その次に、本当は自分の地域は全国的にはどんな感 じなのだろうというところが必要なので、次の段階で適切に情報を皆さんに共有してい ただく。そのためのサーベイランスシステムの情報還元を、モデル事業の間は、例えば 私たちが荒川先生を中心にやっていただくということだと思います。 ○小林座長 予定は事務局でご検討いただいているでしょうけれども、いまのお話を踏 まえると先ほど申し上げたように、先生のところの調査の結果をできるだけまとめてい ただいて、構成員にそれを見ていただいて、いま切替先生がご指摘になった今後どうい うふうに全国レベルのネットワークを構築していくかを、できれば半年ぐらい先に一度 会議を開くことで事務局に調整していただくペースでいかがでしょうか。併せて、今日 のいろいろ出ましたご意見等々はすみませんが、事務局のほうでまとめていただいて、 それをお回しいただいて、さらに付け加えるご意見があれば承って、最終的にはそのま とめは事務局と座長である私にお任せいただければと思います。そのことも併せてご了 承いただきたいと思います。今後のこと等を含めまして、事務局からお願いします。 ○谷口指導課長 今日は、大変ご熱心な討議をありがとうございます。お願いしました 2つとも、かなりいいご意見をいただきまして私どもは大変助かっています。サーベイ ランスに関しまして議論の中でも出てまいりましたが、一般の方々、医療機関の方々、 本当の専門家の方々は峻別して、情報をどのように提供していくかは大変大事な話だろ うと思いますので、この辺をもう少し考えさせていただきまして、またお諮りをしたい と思います。  ネットワークの関係は平成16年度から始まりまして、正直をいいましてここまで先 生方のご努力で、期待以上のものができているのは我々としても嬉しい誤算でした、と 言うと失礼かもしれません。そうなると我々は欲張りでして、ある程度エバリュエーシ ョンができるだろうか。もし、できるのであれば、何かそういったもので地域差はある にせよ、いいものができているのであればそれが全部スタンダードになるようなものが 可能であれば、先生がおっしゃいましたようにいずれまとめていただいて、それを我々 としては均てん化していく方策を取れるのではないかと欲深いのかもしれませんが、そ ういう期待ができた感じがしています。  あと、ご指摘いただいた医療安全の関係で支援センターとのデマケーション、棲み分 けをどうしていくかは私どもに課せられた宿題として、安全室とも相談をしていきたい と思います。ただ、医療法改正という話も申し上げましたが、その中で従来の大病院と いったところだけではなくて、極端な話、無床の診療所にすら院内感染制御体制の整備 というものが求められることになります。そうなりますと、例えばパッと頭に浮かぶの は透析です。そういったところでの院内感染体制は、かなり頭を悩ませて義務化された のでどうしたらいいのかという相談される先生方が増えてくる気がしますので、そうな りますとますます地域でのネットワークをどのように組んでいくのかが喫緊の課題にな ろうかと思います。そういうことも含めて個別にご相談させていただきながら、是非こ の事業については私どもの期待以上にいいものができそうな気がしますので、大所高所 のご指導を賜りたいと思います。よろしくお願いします。 ○小林座長 どうもありがとうございました。今後の進め方等は。 ○針田医療計画推進指導官 また座長と相談させていただきながら、今日の議論をまと めまして進めさせてください。 ○小林座長 長時間にわたって、時間が短く感じられるような素晴らしいご議論をいた だきまして、どうもありがとうございました。御陪席の皆様方も、長時間ご苦労さまで した。いろいろ皆様方の力で感染対策、患者サービスを向上させていきたいと思います。 是非、そういう意味でもご協力いただければと思います。構成員の皆様方には、本当に どうもありがとうございました。また、メールでやり取りをさせていただきたいと思い ますので、どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。 (以上) 照会先:厚生労働省医政局指導課     院内感染対策担当(片岡、コ本) 電話 :03-5253-1111(内線2771)